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AI時代に変化するSaaSビジネスモデル

AI時代に変化するSaaSビジネスモデル

Ximera Media Next Trends #59|Ikuo Morisugi| 2024.03.29

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はじめに

近年、AI技術の急速な進展は、産業界全体に革新をもたらしています。中でも、SaaS業界は、AIの進化によって特に大きな変革を迎えています。これまでのSaaSのビジネスモデルは、主にサブスクリプションベース、月額もしくは年額利用料金に基づいていましたが、AIの台頭はこれらのモデルを再考させるきっかけとなっています。本稿では、AI時代におけるSaaSビジネスモデルの変遷に焦点を当て、背景、現在直面している課題、そして将来的に予想される変化について取り上げていきます。これにより、業界関係者が変化に適応し、新たなビジネスチャンスを捉えるための理解を深めることが目的としています。

背景

AIの急速な進化と普及は、SaaS業界におけるビジネスモデルの変化を加速させています。この背景には、以下の要因が考えられます。

  1. AIのコスト低下とサービスの飽和:技術の進歩により、AIのコストは顕著に低下しており、これにより多くの企業がAI技術を取り入れることが可能になっています。例えば、OpenAIのAPIサービスは、度々APIリクエストあたりにかかる料金を下げています。同時に、SaaS市場にはソフトウェア単体で価値を提供するサービスは増え続け、ソフトウェアのみで大きな差別化をはかることが困難になったこともあり新規SaaSの参入数は減少してきています。
  2. AIによる最適なサービスの取捨選択:AIの進化は、ユーザーが自身のニーズに最適なサービスを簡単に見つけられるようにする一方で、有償のSaaS提供者に対してはより高い価値提供を求めることになります。ChatGPTのようなAIアシスタントは、ユーザーの複雑な要求を理解し、適切なサービスを推薦することができるため、様々なサービスを横断的に比較しベストな提案をできるようになります。ある程度要件が固まっていることが前提となりますが、現在でもChatGPTに「XXX人のエンドユーザに対してXXXの用途、予算XXX万円以内で、Eコマース向けのマーケティングオートメーションのおすすめツールを提案して」と問いかければそれなりの回答が返ってきます。よりツール提案に特化したLLMができれば今後さらに精度高くユーザ需要に答えてくれるはずです。
  3. ソフトウェアのコモディティ化:AI技術の普及は、従来は専門のSaaSサービスが提供していた簡易的な機能を内製化する動きを加速させています。例えば、Google Spreadsheetのようなツールでスクリプトを組んで行っていたようなタスクは、ChatGPTにデータ処理を行わせれば可能になっています。AIが進化していくと外部のSaaSを有償で使うよりも、AIがスクラッチで開発したツールの方が早く・コストも低い状態を実現する可能性があります。自社開発 vs 外部サービスの図式は従来までは自社開発はコストが高く・遅いというイメージでしたが、AIの進化により自社開発が外部サービスに対抗できるオプションになりえます。

このようなAIネイティブな時代の到来は、SaaSビジネスにおいて以下のような新たな課題を生むことになります。特にビジネスモデルで大きな変化があるのは、従量課金モデルの台頭と固定費モデルのSaaS料金の価値低下です。

OpenAIの料金体系に見られるように、AI技術を取り入れたサービスでは、B2C向けはChatGPT Plusのように月額料金制が採用されるものの、B2B向けには利用した分だけ支払う従量課金モデルが積極的に採用されつつあります。AIネイティブな価値提供を行う企業は、このモデルを通じてユーザーにコストパフォーマンスの高いサービスを提供しています。月額/年額の固定費モデルの料金体系は、従来SaaS業界で広く採用されてきましたが、従量課金の台頭によりその正当性が問われています。

固定費型モデルでは、サービス提供者は一定のマージンを見込むことができますが、従量課金モデルの方がユーザーにとって魅力的であると認識されるようになると、そのマージンやコストを正当化することが難しくなってきます。例えば、平均的な中堅B2B SaaS企業は、年間の収益(ARR)の約90%をコストに費やしています。その内訳は、市場投入戦略と実行に25%、研究開発に24%、管理および雑費に15%、ウェブサイトのホスティングと実装に13%、顧客維持に10%と言われています。現在かかっているコストは固定費型モデルが故に一定程度のチャーンレートを考慮すれば、ある程度収益が予測できるのでコストをかけ続けることが可能ですが、従量課金モデルになると不確実性が高くなり同じようなコスト構造の維持はし難くなります。

こうした背景から、今後SaaSを提供するにあたり、起こりうるリスクを明確化した上で、サービス提供にかかるコストを下げ、汎用AIではカバーできない自社のアセットや強味を発揮したサービスを提供し、従量課金モデルの採用を検討していくことが必要になってきます。この背景を踏まえて企業が変化していくためのソリューションが徐々に登場しつつあり、本稿ではその事例として起こりうるリスクおよびコストカットとしてのソフトウェア開発プロセスの超効率化のサービス、および従量課金ベースへ適応していくサービスを取り上げます。

ソフトウェア開発プロセスの民主化: Poolside AI

Poolside AIは、元GitHub CTOのジェイソン・ウォーナーさんが2023年4月に設立したスタートアップであり、ソフトウェア開発者向けの大規模な言語モデルの訓練とそれを利用した開発プロセスの変革に焦点を当てています。Poolside AIのモデルは、自然言語でコードを作成することが可能であり、将来的にコーディング経験が少ない・もしくは全くない人々でも有用なソフトウェアを作成できる可能性を提供します。

現状ChatGPTなど汎用AIでもクラウドインフラを組み合わせることで、簡易的なWebアプリケーションは作ることは可能ですが、出力されるものは不安定で運用・保守もままならないことが多く、実用に耐えるレベルに至っていません。Poolside AIは、汎用LLMとの差別化をするため、ソフトウェア開発に完全に特化した大規模な言語モデルをトレーニングし、実際のソフトウェア プロジェクトの数万件で数百万のタスクを完了することでモデルを改善することに重点を置いています。また、ソフトウェア開発者が日常業務でコードの最適化やバグ修正を支援するLLMの開発にも注力しています。こうしたソフトウェア開発に特化したAIサービスが提供されることで、ある程度複雑さをもつソフトウェアが実用レベルで開発・運用できる可能性があります。

Poolside AIはフランスでクラウドインフラを提供するScalewayと協力して自社モデルの開発と訓練に必要な大規模GPUトレーニングクラスターの構築に取り組んでいます。GPUクラスターやデータセンターへの投資は高くつきますが、AIモデルの訓練に必要なGPUへのアクセスがますます競争が激しくなっている現在では計算資源の獲得のために必須となっています。

Poolside AIが掲げるソフトウェア開発の3ステップ 参照:
Poolside AIが掲げるソフトウェア開発の3ステップ 参照: Poolside AI

Poolside AIの長期的ビジョンとして、大きく3つのStepを想定しています。第1ステップは、Human-led / AI-assisted な状況で、人間が作ろうとするものに対してAIがコードを提案・修正していく形で、github Copilotの考え方に近しいものです。第2ステップとして、AI-led / Human-assisted で AIがスクラッチでソフトウェア開発し、人間とレビュー/フィードバックを相互に繰り返して継続改善を行うモデルがあげられます。第3ステップが最終段階で、第1 / 第2のステップをソフトウェア開発領域を超えて広がっていく未来を想定しています。第2ステップが訪れるだけでも、多くのコードを書けない人が実用レベルのソフトウェアを提供することが可能になるため、業界に大きな変化をもたらす可能性があります。

Poolside AIは、2023年8月にSeedラウンドでフランス国営ファンドのBpifranceなどから1.26億ドル(約190億円)の資金調達を行い、アメリカからフランスに本社を移転しました。この移転は、フランスのマクロン大統領が新たなAIプレーヤーを奨励・誘致するために500億ユーロの計画を発表した数か月後に行われました。アメリカへのAI技術依存を懸念するヨーロッパ地域にとってフランスの国策は非常に興味深い内容となっています。

従量課金モデルへの適応: OpenMeter

OpenMeterは、エンジニア向けのオープンソースの使用量計測ソリューションであり、2024年3月にリリースされました。従量課金モデルで提供されるソフトウェアサービスにおけるユーザの利用拡大や縮小の動きを計測し、離脱の可能性を検知します。こういった利用状況の可視化を容易にすることで、最終的には経営陣がユーザ中心のアプローチによってビジネスを成長させることを可能にするのが、OpenMeterのビジョンです。

近年LLM、GPU、各種ソフトウェアが利用するクラウドサービスや吐き出すログなどサービスの技術スタックは複雑になってきており、開発チームがリアルタイムに使用量を計測する機能の開発と保守・運用に多くの時間とリソースを投資せざるをえませんでした。

それに対して、OpenMeterを導入することにより、上記の各ユーザのサービス使用量を計測・課金を行うプロセスを容易に組み込むことができ、運用効率を向上させ、エンジニアリングチームがコア機能の開発に集中できるようになります。

データ収集・計測・利用制限・指標管理・課金まで従量ベース課金に必要な技術スタックを一括して提供 参照:
データ収集・計測・利用制限・指標管理・課金まで従量ベース課金に必要な技術スタックを一括して提供 参照: OpenMeter

OpenMeterは、イベントストリーミング技術により、リアルタイムで信頼性が高く、費用対効果の高い使用量のトラッキング・使用量にもとづいた課金機能を提供しています。データの収集や課金のいずれも外部サービスとの連携を進めており、PostgreSQL、Langchain、Stripe、OpenAIなどとの組み合わせを容易にするSDKやテンプレートを提供しています。

OpenMeterのテクノロジー自体はオープンソースで提供されていますが、これをクラウドでホスティング・メンテナンスが可能な基盤を有償で提供するビジネスモデルを採用しています。

OpenMeterは2024年3月にY Combinator、Haystack、Sunflower Capitalなどから300万ドル(約4.5億円)の資金調達を行い、AIベースでSaaSやIoT分野でサービス提供する企業を中心にさらに拡大を図っていくものと考えられます。

おわりに

AI技術の進化により、SaaS業界は大きな変革期を迎えています。従来のサブスクリプションベースのビジネスモデルは、AIの台頭により再考される必要がある時代となりました。AIによるコスト低下、サービスの飽和、最適なサービスの選択支援、そしてソフトウェアのコモディティ化は、SaaS提供者に新たな課題を提示しています。従量課金モデルの台頭と固定費モデルの価値低下は、SaaSビジネスにとって今後起こりうる大きな変化です。この変化に対応するため、SaaS提供者は従量課金モデルへの適応や、AIではカバーできない独自の価値提供を模索する必要があります。Poolside AIやOpenMeterのような新たなサービスは、この変革期におけるソリューションの一例を示しており、SaaS業界の将来像を示唆しています。AI時代においても、SaaS業界が持続的に成長し続けるためには、変化に柔軟に対応し、革新を続けることが求められます。

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