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ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性

ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性

Ximera Media Next Trends #54|Ikuo Morisugi| Nov 1, 2023

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はじめに

メディアやコマース関連のトレンドとそれを巻き起こすスタートアップや事例を追いかける連載シリーズXimera Media Next Trendsの第54回となる今回は「ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性」を取り上げます。

一部の組織、専門家、富裕層などにしか利用できなかった専用品や専用サービスが、技術進化により誰でも利用できる形に展開される流れはあらゆる産業で起こっている現象です。

例えば、現在のインターネットはアメリカ国防総省で専用のネットワーク(ARPANET)が作られ大学や研究機関で運用されたことが起源になっています。これが時代が経つにつれ、プロトコルの標準化や大学間や企業間でのネットワーク化が進んだこと、電話線を利用したダイアルアップの仕組みができたことで、一般の人々も使えるようになっていきました。

ファッションでも同じように、19世紀末頃は、オートクチュールと呼ばれる、デザイナーが手掛ける高級仕立てオーダメイドのアパレルが富裕層のみに提供されていましたが、1970年代よりパターン化された型紙から大量受注して生産する方式のプレタポルテと呼ばれるデザイナーが手掛ける既製服が台頭しました。プレタポルテの登場によって、オートクチュールに手が出なかった一般大衆が、今では当たり前のように高級メゾンの服を着用できるようになりました。さらに、近年ではユニクロやH&MやZaraなどプチプラファッション企業が、プレタポルテのデザイナーを起用して大量生産を背景にさらに安い価格でデザイナーズアパレルを提供するなど、汎用化・大衆化の流れはさらに加速しています。

上記は専用品/サービスの技術進歩による汎用化の例ですが、この次に起こったのが各個人へのコンテンツ最適化です。AmazonやTikTokのように、自分の好みや嗜好にあわせたコンテンツが推薦されるレコメンドシステムは統計学や機械学習の技術進歩の成果として活用されていますし、ファッションで言えば自分の体型にあったオーダーメイドシャツが画像認識技術によってオンラインでも計測可能となりました。

このように専用 => 汎用 => 個別最適化 への流れは、人間は一人一人体形から考え方まで異なることを考えると、起こるべくして起こっていると考えられます。直近でも、LLMのように汎用AI => 各ドメインに最適化されたAI が開発されているように、より専門的/個別的な体験の提供が進んでいます。

次世代で起こりうる個別最適化(ハイパーパーソナライゼーション)

主に実用化されメディアやコマース業界で個別最適化の技術として広く利用されているのは、コンテンツパーソナライゼーションです。TikTok/Youtube/Netflixなどの動画レコメンド、Amazonのおすすめ商品、ニュースサイトで次に読むべきニュースまであらゆるところで利用されています。

コンテンツパーソナライゼーションはユーザエンゲージメントやリテンションに直結するので、優先的に技術進化が起こってきましたが、ユーザエクスペリエンスにおいて個別最適化がまだされていない領域も残っています。

特にビジネス的に重要でまだ普及していないのは、ユーザインターフェースの個別最適化です。コンテンツは自分の好みになっている一方で、製品やサービスの価格の提示方法は個人毎に受容性が異なるはずなのにほとんどの場合均一です。またなにか購入する際の入力方法(例えば、eコマースサイトの住所・氏名などを入力するフォーム)もあらゆるユーザに対して画一的なユーザインターフェースが提供されています。

現代のシステムは、アプリやWebサイトやメールなどUIを部品化し、基本的なフレームを決めた上で、その制約の中でほぼコンテンツのみがパーソナライズされ配信されています。次に進化が起こるとすれば、各ユーザに個別最適化されたユーザインターフェースが提供されることになると考えられます。例えば、「人によって価格提示の方法(フォントサイズ、色、表示場所など)が変わる」、「目の見えない人には自動で音声入力モードに切り替わる」、「eコマースサイトで人によって入力しやすい順番にフォームの順番・フォントサイズ・カラーが変わる」、などが挙げられます。

特にサービスや商品の購入を意思決定する際の入力/出力に関するユーザインターフェースは、人々の需要やビジネスの改善可能性を鑑みると、大いに最適化される余地があります。具体的にどのような可能性があるのかについて本稿では価格提示に関する事例を取り上げていきたいと思います。

事例: 価格心理とパーソナライズの可能性

商品価格の提示の方法によって、同じ価格であっても人間の受け取り方は大きく異なります。これまでの研究で、人間は下記の要素によって価格の安い/高いを判断する Reference Price(参照価格)という概念があることが明らかになっています。

  • Previous Prices: 同じ商品の過去価格
  • Advertised Prices: 提供側から提示された価格
  • Estimated Price: 自分が想定する価格
  • Adjacent Prices: 類似した商品の価格
  • Nearby Numbers:(たとえ商品の価格でなくとも)近くにある数字

参考: nickkolenda(PDF)

例えば、「価格のフォントサイズは小さいほど心理的な価格も安く感じる」、「男性は赤いフォントカラーで価格を見せる方を好む」など参考文献には無数の価格受容性を上げるためのTipsが記載されています。

Nearby Numbersの例: 製品価格と全く関係がない社会保障番号の下2桁が高いほど、同じ商品に対してより高い価格を支払おうとする相関がある 出典:
Nearby Numbersの例: 製品価格と全く関係がない社会保障番号の下2桁が高いほど、同じ商品に対してより高い価格を支払おうとする相関がある 出典: Nick Kolenda

これらのTipsを画一的に実装するだけでも、おそらく統計的に有意にコンバージョンが上がると考えられます。一方で、本当に全男性に赤いフォントを提供することが最適解となるかはわかりません。色弱の方に提供する際には、赤いフォントではない方が良いかもしれません。また、価格を提示する場所にしても、ある人は右側の方が認識しやすく、ある人は左側の方が認識しやすいかもしれません。

統計的な有意性は汎用化する際の一つの基準として使う分には問題はありませんが、やはりユーザ個別の事情や好みを吸収しきることはできません。各個別のユーザの行動や嗜好にあわせて使うべきTipsを出し分けていくことが、より最適なユーザ体験になっていくと考えられます。

また価格自体を在庫状況・繁忙時期などを考慮して、動的に変えていくダイナミックプライシングはホテル業界や航空業界などではすでに行われていますが、今後はユーザ側の個別事情も加味してさらに最適化されていくことも考えられます。例えば、ユーザが何か成し遂げて達成感がある時と、忙しい時では同じ商品を同じ価格で出したとしてもコンバージョン率は変わりますし、給料日直後と給料日前でも価格の受容性は変わるはずです。ユーザに受け入れられる価格の最適化を行うことで、最適なオファーをユーザに提示しつつビジネス価値(売上の最大化、機会損失の解消)を上げていける可能性があります。

現在はユーザ状況を踏まえた価格の表示方法や動的な価格変動だけでも、上記のような要素を考慮できているサービスはほとんどありませんが、汎用AIや専用AIが次々と生まれている状況を考えると、今後こうしたユーザインターフェース領域の最適化ソリューションが出てくると考えられます。

おわりに

今回は「ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性」についてとりあげました。

今回取り上げた価格の提示方法や動的な価格提供という観点だけとっても、ユーザとの関係性の向上やビジネス価値の改善に大きな余地が残っています。これが実際に実行できるまでにはまだ時間はかかると考えられます。一方で、肝心のユーザ毎の状況を理解するデータについては、本連載#53で取り上げたRewindであったり、ストレスや脈拍や睡眠時間などを測定できるスマートウォッチであったり、視線や指先の動きをトラッキングするXRデバイスであったり、要素だけでいえば取得できる製品/サービスも増えています。

デバイスもOSもアプリケーションもさらに進化が起こり、ユーザの物理的・心理的な状況把握はデータの収集とAIによる分析でそこまで遠くない未来に実現される可能性があります。その時には本稿で取り上げた価格やフォームのUIの最適化だけなく、あらゆるフォームファクターが各ユーザに最適化される「ハイパーパーソナライゼーション」が実現されるかもしれません。まだ現実感のない夢物語のようですが、LLMが近年ここまで急速に精度を上げてくることを多くの人が予想できなかったように、起こりうる可能性があるものとして捉えるべきかと考えます。

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