# ximera — 全記事フルテキスト > キメラは、新聞社・ウェブメディア・コンテンツをつくり届ける人のための事業戦略を、データの側面から支えるサービスを提供しています。価値ある情報が、より広く伝わるために。 本ファイルは 270 本の全文です。出典表記の推奨形式:「ximera (https://ximera.com)」 --- ## AIが変革するニュースルーム:メディア戦略における光と影 URL: https://ximera.com/posts/ai-2 公開日: 2026-08-18 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: AIはニュースルームに変革をもたらす。効率化と新たな価値創造の光、誤情報や倫理的課題の影。メディア企業はAIの光と影を理解し、戦略的な打ち手を講じる必要がある。 人工知能(AI)技術の進化は、メディア業界、特にニュースルームの運営とコンテンツ制作に不可逆的な変革をもたらしている。この変革は、効率化や新たな価値創造の機会を提供する一方で、誤情報の拡散、倫理的課題、雇用の変化といった複雑なリスクも内包する。メディア企業は、AIがもたらす「光」と「影」の両面を深く理解し、戦略的な打ち手を講じる必要がある。 ## AIがもたらす生産性向上と新たな価値創造 AIは、ニュースルームの日常業務を効率化し、ジャーナリストがより創造的な活動に注力できる環境を創出する可能性を秘めている。その具体的な効果は多岐にわたる。 ### コンテンツ生成・編集の効率化 AIは、定型的なニュース記事の自動生成、記事の要約、多言語翻訳、見出しやリード文の最適化など、コンテンツ制作の初期段階から最終段階までを支援する。これにより、速報性の高いニュース配信や、多様なフォーマットでのコンテンツ提供が可能となり、読者へのリーチ拡大に貢献する。 ### データ分析とパーソナライゼーション AIを活用したオーディエンスデータの分析は、読者の行動パターン、興味関心、消費傾向を詳細に把握することを可能にする。このインサイトに基づき、個々の読者に最適化されたコンテンツをリアルタイムで推奨することで、エンゲージメントの深化とロイヤルティの向上を図れる。また、記事のパフォーマンス分析を通じて、コンテンツ戦略の最適化にも寄与する。 ### ジャーナリストの役割変革と創造性向上 AIがルーティンワークを代替することで、ジャーナリストはデータに基づいた深い調査報道、複雑な問題の分析、独自の視点でのストーリーテリングなど、人間ならではの創造性と批判的思考を要する業務に集中できる。これにより、ジャーナリズムの本質的な価値を高め、読者に質の高い情報と洞察を提供することが期待される。 ## AIが突きつける課題とリスク AIの導入は、メディア企業に新たな機会をもたらす一方で、無視できないリスクと課題も提示する。これらの課題への対応は、メディアの信頼性と持続可能性を確保する上で不可欠である。 ### 誤情報・フェイクニュースのリスク AI、特に生成AIは、誤情報やフェイクニュースを大量かつ高速に生成・拡散する能力を持つ。これは、メディアが長年培ってきた信頼性を根底から揺るがす可能性があり、情報の真偽を検証する新たなメカニズムと、AIが生成したコンテンツに対する透明性の確保が求められる。 ### 倫理的・著作権的課題 AIによるコンテンツ生成は、既存の著作物の学習データ利用に関する著作権問題や、AIが生成したコンテンツの帰属、責任の所在といった倫理的課題を提起する。また、AIのアルゴリズムに内在するバイアスが、コンテンツの内容や読者への提供方法に影響を与え、特定の視点や情報を偏重するリスクも存在する。 ### 雇用の変化とスキルセットの再構築 AIによる業務の自動化は、ニュースルームにおける一部の職務を代替し、雇用の構造に変化をもたらす可能性がある。メディア企業は、従業員のリスキリングとアップスキリングを積極的に推進し、AIと協調して働くための新たなスキルセット(プロンプトエンジニアリング、AIツール活用、データリテラシーなど)を育成する必要がある。 ### 信頼性の維持と透明性の確保 AIが生成したコンテンツや、AIが関与した編集プロセスについて、読者に対して十分な透明性を確保することは、メディアの信頼性を維持する上で極めて重要である。AIの利用方針を明確にし、AIが生成したコンテンツにはその旨を明記するなど、読者の理解と信頼を得るための取り組みが不可欠となる。 ## Ximeraが提言するメディア企業の戦略的打ち手 AIの時代において、メディア企業が競争力を維持し、持続的な成長を実現するためには、以下の戦略的な打ち手を講じるべきである。 ### AIガバナンスと倫理ガイドラインの策定 AIの導入に際しては、その利用目的、範囲、責任の所在、倫理原則を明確にするためのガバナンス体制を確立し、詳細なガイドラインを策定することが不可欠である。これにより、AIの潜在的なリスクを管理し、メディアとしての社会的責任を果たす基盤を構築する。 ### 人材育成とリスキリング AI時代に対応できる人材を育成するため、ジャーナリストや編集者、データ担当者に対して、AIツールの活用方法、データ分析、AI倫理に関する教育プログラムを体系的に提供する。AIを「道具」として使いこなし、人間の創造性と判断力を最大限に引き出す能力を養う。 ### データ主導のAI活用と効果測定 AIの導入効果を最大化するためには、データ主導のアプローチが不可欠である。AIが生成したコンテンツのパフォーマンス、読者エンゲージメント、収益への貢献度などを継続的に測定・分析し、その結果に基づいてAIの活用戦略を最適化する。リアルタイムでのフィードバックループを構築し、アジャイルな改善サイクルを回すことが重要である。 ### 人間とAIの協調モデルの構築 AIを単なる代替手段としてではなく、人間の能力を拡張する強力なパートナーとして位置づける。AIが効率的な情報処理や定型業務を担い、人間が批判的思考、倫理的判断、創造的なストーリーテリングに注力する「人間とAIの協調モデル」を構築することで、ジャーナリズムの質と生産性の両面を向上させる。 ### 技術投資とパートナーシップ AI技術は急速に進化しており、メディア企業は最新の技術動向を常に把握し、必要な技術投資を戦略的に行う必要がある。また、AI開発企業や研究機関とのパートナーシップを積極的に構築し、最先端のAIソリューションをニュースルームに導入する道を模索することも有効な打ち手となる。 AIはメディアビジネスの未来を左右する重要な要素であり、その潜在能力を最大限に引き出しつつ、リスクを管理するための戦略的なアプローチが不可欠である。メディア企業は、AIを単なる技術トレンドとしてではなく、事業戦略の根幹に関わるテーマとして捉え、能動的な変革を推進すべきである。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/08/a-new-book-looks-at-how-ai-is-rewiring-the-newsroom-for-better-and-worse/ --- ## 日本の出版社が偽ニュースサイト対策に導入する「暗号署名」の戦略的意義 URL: https://ximera.com/posts/japan-publishers-crypto-signature-fake-news 公開日: 2026-08-18 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 日本の出版社が偽ニュースサイト対策として導入する「暗号署名」技術の戦略的意義を解説。コンテンツの真正性保証、ブランド価値向上、収益モデル保護への影響を分析し、メディア企業が取るべき打ち手を提言する。 ## 偽情報がもたらすメディアビジネスへの脅威 デジタル化が進む現代において、偽情報(フェイクニュース)は社会全体に深刻な影響を及ぼしている。特にメディア業界にとって、偽情報はコンテンツの信頼性を損ない、ブランド価値を毀損する喫緊の課題である。偽ニュースサイトは、正規のメディア企業のコンテンツを模倣し、誤解を招く情報を拡散することで、読者の混乱を招き、ひいてはメディアの収益基盤をも揺るがしかねない。 このような状況下で、日本の出版社が偽ニュースサイトに対抗するため、コンテンツの真正性を保証する「暗号署名」技術の導入を進めている。これは、デジタルコンテンツの信頼性を確保し、読者が安心して情報にアクセスできる環境を構築するための重要な戦略的打ち手となる。 ## 暗号署名によるコンテンツの真正性保証 ### 暗号署名のメカニズム 暗号署名とは、デジタルデータが特定の送信者によって作成され、かつ改ざんされていないことを証明する技術である。具体的には、コンテンツのハッシュ値(データの指紋のようなもの)を算出し、それを送信者の秘密鍵で暗号化して「署名」として付与する。受信者は、送信者の公開鍵を使ってこの署名を復号し、復号されたハッシュ値と受信したコンテンツのハッシュ値を比較することで、コンテンツの真正性を検証できる。 この技術は、以下のような特性を持つ。 - 非改ざん性: 署名されたコンテンツが改ざんされた場合、ハッシュ値が一致しなくなるため、改ざんを検知できる。 - 送信元認証: 署名が特定の秘密鍵によって作成されたことを証明できるため、コンテンツの提供元が正規のものであることを確認できる。 ### メディアコンテンツへの適用 メディアコンテンツに暗号署名を適用することで、読者はその記事が正規の出版社によって公開されたものであり、かつ途中で内容が改ざんされていないことを技術的に確認できるようになる。これにより、偽ニュースサイトが正規のコンテンツをコピーして内容を改変したり、あたかも正規のメディアであるかのように装ったりする行為への有効な対抗策となる。 ## 日本の出版社における取り組みとその意義 日本の出版社は、この暗号署名技術を導入することで、自社のコンテンツが正規のものであることを明確に示し、読者の信頼を確保しようとしている。これは、単なる技術導入に留まらず、メディアビジネスにおける以下の戦略的意義を持つ。 - ブランド価値の維持・向上: 偽情報が蔓延する中で、真正性が保証されたコンテンツを提供することは、メディアブランドの信頼性と権威を強化する。 - 読者エンゲージメントの強化: 読者は安心して情報にアクセスできるようになり、メディアに対する信頼感が向上することで、長期的な読者エンゲージメントに繋がる。 - 収益モデルの保護: 偽ニュースサイトによるコンテンツの不正利用や広告収益の横取りを防ぎ、正規のコンテンツに対する正当な対価を確保する上で重要な役割を果たす。 - 業界全体の信頼性向上への貢献: 一部のメディアがこの技術を導入することで、業界全体として偽情報対策への意識が高まり、デジタルコンテンツの信頼性向上に寄与する可能性がある。 ## メディア企業が取るべき戦略的打ち手 暗号署名技術の導入は、メディア企業がデジタル時代におけるコンテンツの信頼性を確保するための強力なツールとなる。しかし、その導入と運用には戦略的な検討が不可欠である。 - 技術導入の検討と評価: 自社のコンテンツ管理システムや配信プラットフォームとの連携可能性、導入コスト、運用負荷などを総合的に評価する。 - 業界標準化への貢献: 暗号署名技術が広く普及するためには、業界内での標準化や共通基盤の構築が重要となる。関連団体や他社との連携を模索し、エコシステムの形成に貢献することも視野に入れるべきである。 - 読者への啓発: 暗号署名がどのように機能し、読者にとってどのようなメリットがあるのかを分かりやすく説明し、技術的な信頼性を読者体験に結びつけるためのコミュニケーション戦略が求められる。 - 多角的な偽情報対策: 暗号署名は強力なツールであるが、偽情報対策はこれ一つで完結するものではない。ファクトチェック体制の強化、AIを活用した異常検知、プラットフォーム事業者との連携など、多角的なアプローチと組み合わせることで、より強固な対策を構築できる。 ## まとめ 日本の出版社が偽ニュースサイト対策として導入する暗号署名技術は、デジタルコンテンツの真正性を保証し、メディアブランドの信頼性を維持・向上させる上で極めて重要な戦略的打ち手である。メディア企業は、この技術の可能性を理解し、自社のビジネス戦略に組み込むことで、偽情報が蔓延する現代社会において、読者に価値ある情報を提供し続ける責任を果たすことができる。これは、メディアビジネスの持続可能性を確保し、デジタルエコシステム全体の健全性を高めるための不可欠な一歩と言える。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/08/japanese-publishers-are-fighting-imposter-news-sites-with-a-cryptographic-signature/ --- ## ソーシャル動画データが示す、ワールドカップにおける「瞬間を捉える」戦略 URL: https://ximera.com/posts/world-cup-social-video-strategy 公開日: 2026-08-18 著者: Tubular Labs 概要: ワールドカップにおけるソーシャル動画戦略をTubular Labsのデータから分析。メディア企業とインフルエンサーの比較、非スポーツ系コンテンツの成功、最適な動画尺と投稿時間の重要性を解説し、飽和したエコシステムで注目を集めるための戦略的打ち手を提示する。 FIFAワールドカップは、世界で最も視聴されるスポーツイベントである。今年はカナダ、メキシコ、米国各地で開催され、メディア企業やサッカーファンはソーシャルメディアにおけるその文化的影響力をいち早く活用した。 オンライン上で誰もが注目を競い合う中で、どのようにすればオーディエンスを惹きつけられるのか。Tubular Labsは北米のクリエイターのデータを分析し、金メダル級のソーシャル動画戦略について考察した。 ## あらゆる接点で成果を出す:量より質 ワールドカップ期間中、北米で最も再生されたソーシャル動画は、ESPNのような主要なスポーツ放送局ではなく、インフルエンサーのiShowSpeedが投稿したリール動画であった。この動画はアルゼンチン対カーボベルデ戦に対する彼のリアクションをフィーチャーしたもので、2.4億回再生を記録した。 では、実際に議論を主導していたのはメディア企業とインフルエンサーのどちらだったのか。その真実はTikTokのデータに隠されている。インフルエンサーのコンテンツはTikTokで多くの注目を集め、24.4万本の動画で合計163億回再生に達した。しかし、メディア企業はわずか1.5万本の動画で47億回再生を記録し、動画あたりの再生回数で優位性を示した。インフルエンサーはメディア企業よりも16倍多くワールドカップ関連動画を投稿したにもかかわらず、再生回数は3.5倍多く生成したに過ぎない。 テイクアウェイ: 量はリーチを増やすが、編集主導の動画はより効率的である。知名度、編集権威、そして配信インフラは、飽和した環境において強力な推進力であり続ける。 ## スポーツを扱わなくても会話に参加できる 48の代表チームが参加するワールドカップは、単なるスポーツイベントではなく、グローバルな文化現象である。大会期間中の総再生回数ではスポーツメディアが首位を獲得したが、あらゆるカテゴリーのブランドやクリエイターが、この文化的な瞬間に独自の解釈を加え、成功を収める方法を見出した。 Instagramのデータを見ると、北米の非スポーツ系パブリッシャーは、ワールドカップ関連コンテンツで16億回再生を記録した。これはわずか1万本の動画で達成されたものである。彼らのコンテンツは、ファン文化、国民性、そして自国開催の大会という壮大なスペクタクルに焦点を当てていた。 テイクアウェイ: もしあなたのカテゴリーが主要なライブイベントと自然な重複を持つのであれば、あなたの視点を待っているオーディエンスが存在する。あとは、あなたのオーディエンスに響くアングルを見つけるだけである。 ### 成功事例:飲食ジャンル 飲食ジャンルは、ワールドカップ関連動画カテゴリーで再生回数上位5位にランクインした。このカテゴリーのクリエイターは、9,776本のInstagram動画で7.6億回再生を生成した。彼らはどのようにしてこれを達成したのか。飲食クリエイターは、カクテルレシピ、テールゲートパーティーのヒント、そして大会に参加する国の料理を紹介する動画など、すべてのファンが共感できるコンテンツで、ワールドカップを彼らのカテゴリーにおける文化的な瞬間に適応させたのである。 ## オーディエンスが実際に視聴する動画に合わせる 適切なコンテンツを作成するだけでなく、オーディエンスを楽しませ続けるためには、適切な動画の長さも同様に重要である。 TikTokでは、最適な動画時間は1〜2分であった。しかし、北米のクリエイターは圧倒的に0〜30秒の動画を多く投稿していた。 テイクアウェイ: 魅力的な動画を作成する際に、仮定や推測に頼るべきではない。分析データを使用して動画の長さをオーディエンスの好みに合わせ、より良い視聴体験を提供することが重要である。 ## オーディエンスが実際にスクロールしている時に投稿する ワールドカップは複数のタイムゾーンにまたがるダイナミックな大会であり、試合の進行に合わせるのと同じくらい、オーディエンスに合わせることが重要である。 Instagramのデータを見ると、クリエイターが投稿した時間とオーディエンスが視聴した時間の間にいくつかの乖離が見られた。 - Instagramへの動画アップロードは、東部時間の正午から午後7時の間にピークを迎えた。 - しかし、動画あたりの再生回数は、東部時間の午前7時にピークを迎えた。 テイクアウェイ: 動画のパフォーマンスを監査し、オーディエンスがスクロールしている時間に合わせることが重要である。高パフォーマンスと低競合の組み合わせを見つけ、コンテンツの空白機会を発見すべきである。 ## 主要な学び:飽和したエコシステムで瞬間を制する方法 - 編集権威は依然として重要である: メディア企業はインフルエンサーよりも動画あたりの再生回数を多く獲得している。 - 誰もがこのゲームに参加できる: 注目を集めるためにスポーツを扱う必要はない。単に会話を自身のニッチに適応させればよい。 - オーディエンスにコンテンツを導かせる: データを使用して動画のフォーマットを決定すべきである。 - タイミングがすべてである: オーディエンスが実際にアクティブな時に投稿し、推測に頼るべきではない。 主要な文化現象において、オーディエンスを深く理解することは極めて重要である。次の機会に注目を集めるチャンスを逃すべきではない。 出典: Tubular Labs https://tubularlabs.com/blog/world-cup-social-video-data/ --- ## AI活用におけるニュースルームの多様な戦略:3つの先行事例から学ぶ URL: https://ximera.com/posts/ai-3 公開日: 2026-07-31 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: AI活用におけるニュースルームの多様な戦略を、海外の3つの先行事例から分析。コンテンツ生成、読者エンゲージメント、ジャーナリズム支援の各パスを詳細に解説し、日本および地域メディアが取るべき具体的な戦略的打ち手を提言する。 AI技術の急速な進化は、メディア業界に不可逆的な変革の波をもたらしている。コンテンツ制作から配信、読者エンゲージメントに至るまで、あらゆるプロセスにおいてAIの導入が検討され、実践され始めている。しかし、AI活用に単一の「正解」は存在せず、各ニュースルームはそれぞれのミッション、リソース、オーディエンス特性に基づき、独自の戦略を模索しているのが現状である。 本稿では、海外の主要メディアが採用する3つの異なるAI活用パスを分析し、その戦略的インサイトを日本のメディア経営層、編集者、プロダクト担当者に提供する。AIがもたらす機会と課題を深く掘り下げ、メディアが持続可能なジャーナリズムの未来を切り開くための具体的な打ち手を考察する。 ## ニュースルームにおけるAI活用の現状と課題 AI技術は、自然言語処理、画像認識、データ分析といった分野で目覚ましい進歩を遂げ、メディアコンテンツの自動生成、パーソナライズされた情報配信、編集ワークフローの最適化など、多岐にわたる応用可能性を秘めている。 一方で、AIの導入は新たな課題も提起する。例えば、AIが生成するコンテンツの品質管理、誤情報の拡散リスク、倫理的な問題、著作権、そしてAIツールを使いこなすためのジャーナリストのスキルシフトや人材育成は、多くのニュースルームにとって共通の懸念事項である。また、初期投資コストや運用コストも無視できない要素だ。これらの課題に対し、各社はどのように向き合い、独自の戦略を構築しているのか。 ## パス1: コンテンツ生成と自動化による効率化戦略 一部のニュースルームは、AIを定型的なコンテンツ生成とワークフローの自動化に特化させることで、ジャーナリストの負荷を軽減し、より高度な分析や調査報道にリソースを集中させる戦略を採用している。 ### 事例1: 定型レポートの自動生成とジャーナリストの解放 このパスを代表する事例として、米国の主要通信社や経済メディアが挙げられる。彼らは、企業の決算報告、スポーツの試合結果、気象情報、選挙速報といったデータドリブンな記事の自動生成にAIを活用している。例えば、大量の構造化データを取り込み、事前に定義されたテンプレートとルールに基づいて、人間が書いたような自然な文章を瞬時に生成するシステムを構築している。 この戦略の主な目的は、速報性の向上と生産性の最大化にある。AIが定型的な情報伝達を担うことで、ジャーナリストは反復作業から解放され、より深い洞察を伴う分析記事、独占的な調査報道、あるいは複雑な背景を掘り下げるルポルタージュといった、人間ならではの創造性と判断力が求められる業務に集中できる。結果として、ニュースルーム全体のコンテンツ品質と多様性が向上し、競争優位性を確立する。 メリットは、コンテンツ生成の高速化、人件費の最適化、そして大量のニッチな情報ニーズへの対応能力の獲得である。一方で、AIが生成するコンテンツの事実確認や文脈理解の限界、誤情報の生成リスク、そしてジャーナリストがAIとの協業を通じて新たなスキルセットを習得する必要性といった課題も存在する。 ### 地域メディアへの示唆 地域メディアにとって、この戦略は特に有効な打ち手となり得る。限られた人的リソースの中で、地域イベントの速報、議会記録の要約、観光施設の営業時間やイベント情報の更新、地域の気象・交通情報の定期的発信など、定型的な情報発信業務は多岐にわたる。これらをAIで自動化することで、記者や編集者は地域特有の深い課題を掘り下げた調査報道や、住民との対話を通じたコミュニティジャーナリズムに注力できる。 具体的には、地域のオープンデータ(人口統計、産業データ、災害情報など)を活用し、AIが自動で地域経済レポートや防災情報を生成するシステムを構築することが考えられる。これにより、人手不足の解消と同時に、地域住民にとって価値の高い、タイムリーな情報提供が可能となるだろう。 ## パス2: オーディエンスエンゲージメントの深化とパーソナライゼーション戦略 別のニュースルームは、AIを読者一人ひとりのニーズに合わせたコンテンツ提供とエンゲージメントの深化に活用する戦略を進めている。これは、読者の滞在時間延長、購読者獲得、そしてロイヤルティ向上を目指すものである。 ### 事例2: AIによるコンテンツ推薦と読者体験の最適化 このパスを追求するメディアは、読者の閲覧履歴、興味関心、行動パターンをAIが分析し、パーソナライズされたニュースフィードや記事推薦を行うシステムを構築している。例えば、ニューヨーク・タイムズやガーディアンといった大手メディアは、AIを活用して読者ごとに最適な記事を提示し、ヘッドラインやサムネイルのA/Bテストを自動化することで、クリック率やエンゲージメント率の最大化を図っている。 また、AIを活用したチャットボットを導入し、読者からの質問に自動で回答したり、特定のテーマに関する情報を提供したりすることで、読者とのインタラクティブな関係を構築している事例もある。これにより、読者は自分にとって最も関連性の高い情報を効率的に得られるようになり、メディアへの満足度と信頼感が向上する。 この戦略のメリットは、読者のエンゲージメント指標(滞在時間、ページビュー、共有数など)の改善、購読者獲得の効率化、そしてデータに基づいたコンテンツ戦略の策定が可能になる点である。一方で、読者のプライバシー保護、アルゴリズムによるフィルターバブルの形成、そして推薦システムの透明性といった倫理的・社会的な課題にも直面する。 ### 地域メディアへの示唆 地域メディアにとって、地域住民の多様な関心事に対応し、エンゲージメントを深めることは極めて重要である。AIによるパーソナライゼーションは、地域コミュニティとの関係を強化するための強力なツールとなり得る。 例えば、地域住民の年齢層や居住地、過去の閲覧履歴に基づいて、地域のイベント情報、子育て情報、高齢者向けサービス、特定の産業ニュースなどをパーソナライズして提供することが考えられる。また、AIチャットボットを活用して、地域の観光情報や行政サービスに関する住民からの問い合わせに24時間対応することで、利便性を大幅に向上させることができるだろう。これにより、地域住民のメディアへの愛着を育み、デジタル購読モデルへの移行を促進する戦略的打ち手となる。 ## パス3: 内部ワークフローの改善とジャーナリズム支援戦略 さらに別のニュースルームは、AIをジャーナリズムの質向上と編集業務の効率化に特化させる戦略を採用している。これは、ジャーナリストがより深い調査や分析に集中できるよう、AIが強力なサポートツールとして機能することを目的としている。 ### 事例3: 調査報道支援と編集業務の効率化 このパスを実践するメディアは、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)やプロパブリカ(ProPublica)のような調査報道機関に多く見られる。彼らは、AIを大量の非構造化データ(文書、音声、画像など)の分析、音声の文字起こし、ファクトチェックの支援、そしてコンテンツのタグ付けや分類といった用途に活用している。 例えば、数百万ページに及ぶリーク文書の中から特定のキーワードや関連性をAIが抽出し、ジャーナリストが調査すべき重要な手がかりを提示する。また、インタビュー音声の自動文字起こしは、記者の時間を大幅に節約し、より正確な引用を可能にする。AIによるファクトチェック支援ツールは、情報の真偽を迅速に検証し、誤報のリスクを低減する。さらに、過去の膨大な記事アーカイブをAIが自動でタグ付け・分類することで、関連情報の検索性が向上し、過去の知見を現在の報道に活かしやすくなる。 この戦略のメリットは、ジャーナリズムの質と深さの向上、編集者の負担軽減、そして情報の正確性の強化である。一方で、AIの解釈能力の限界、学習データの偏りによるバイアスの発生、そしてAIが提示する情報をジャーナリストがどのように検証し、最終的な判断を下すかという倫理的ガイドラインの策定が重要な課題となる。 ### 地域メディアへの示唆 地域メディアにとって、限られたリソースの中で質の高い調査報道を行うことは大きな挑戦である。AIをジャーナリズム支援ツールとして活用することは、この課題を克服するための有効な戦略となる。 例えば、地域の議事録や行政文書、企業の公開情報といった大量のテキストデータをAIで分析し、地域課題の背景にある構造的な問題や、潜在的な不正の兆候を早期に発見することが可能になる。また、住民からの情報提供やインタビュー音声をAIで文字起こしすることで、取材プロセスを効率化し、より多くの声を取り入れることができるだろう。過去の地域記事アーカイブをAIで整理・分類することで、地域史や特定のテーマに関する深い知識を容易に引き出し、現在の報道に厚みを持たせることも可能だ。 これにより、地域メディアは、限られたリソースでも深いインサイトを伴う調査報道を強化し、地域社会の課題解決に貢献するジャーナリズムを実践できる。これは、地域情報のデジタル化推進と、ジャーナリストの専門性向上にも繋がる戦略的打ち手となる。 ## 日本および地域メディアが取るべき戦略的打ち手 海外の先行事例から学ぶべきは、AI活用に画一的なアプローチは存在せず、自社の特性と目標に合わせた戦略が不可欠であるという点だ。日本、特に地域メディアがAIの恩恵を最大限に享受し、持続可能な成長を遂げるためには、以下の戦略的打ち手が考えられる。 ### AI導入に向けたロードマップ策定 まず、自社の強み、弱み、機会、脅威(SWOT分析)を明確にし、AI活用の具体的な目的と目標を設定することが重要である。コンテンツ生成の効率化、読者エンゲージメントの深化、調査報道の強化、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッド型アプローチか。目標が定まれば、それに合わせたAIツールの選定、導入計画、予算配分を具体化する。最初から大規模なシステムを導入するのではなく、スモールスタートで特定の業務からAIを導入し、その効果を検証しながら段階的に拡大していくアジャイルなアプローチが望ましい。 ### 人材育成と組織文化の変革 AIを導入する上で最も重要な要素の一つは、人材育成である。ジャーナリスト、編集者、プロダクト担当者全員がAIの基本的な仕組み、能力、限界を理解し、AIツールを効果的に活用できるリテラシーを身につける必要がある。社内研修プログラムの実施や、外部の専門家を招いたワークショップの開催が有効だろう。また、AIエンジニアやデータサイエンティストといった専門人材の採用、あるいは外部パートナーシップの構築も検討すべきだ。ジャーナリストとAI開発者が密接に協業する組織文化を醸成し、AIを「脅威」ではなく「強力なパートナー」として捉える意識改革が求められる。 さらに、AIが生成するコンテンツの品質管理、誤情報のチェック、そしてAIの倫理的な利用に関する明確なガイドラインを策定し、全社員に周知徹底することが不可欠である。透明性と責任あるAI利用は、メディアの信頼性を維持する上で極めて重要となる。 ### 地域特化型データの活用とコミュニティとの連携 地域メディアは、地域に根差した独自の強みを持っている。この強みをAI活用に結びつけるためには、地域特化型データの収集と活用が鍵となる。地域の行政機関、教育機関、企業、NPOなどと連携し、地域固有のデータセットを構築することで、AIが地域にとって真に価値あるインサイトを生み出す基盤を築くことができる。 また、AIを活用した地域コミュニティとの新たな連携モデルを模索することも重要だ。例えば、住民参加型のAIプロジェクトを立ち上げ、地域の課題解決にAIを共同で活用する試みや、地域住民のニーズをAIで分析し、それに合わせた情報サービスを開発するなどが考えられる。これにより、メディアは単なる情報発信者ではなく、地域社会の課題解決を支援するプラットフォームとしての役割を強化できるだろう。 AIはメディア業界に不可逆的な変化をもたらす。各ニュースルームは、自社のミッションとリソースに基づき、最適なAI活用戦略を策定する必要がある。地域メディアも、これらの先行事例から学び、地域に根差した独自のAI戦略を構築することで、持続可能なジャーナリズムの未来を切り開くことができるだろう。これは、単なる技術導入に留まらず、ジャーナリズムのあり方そのものを再定義する戦略的打ち手となる。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/how-three-newsrooms-are-charting-different-paths-for-ai-use/ --- ## AI Overviews導入後の非営利ニュース組織における検索トラフィック動向分析 URL: https://ximera.com/posts/ai-overviews 公開日: 2026-07-31 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Google AI Overviews導入後、一部の非営利ニュース組織で検索トラフィックが増加。信頼性、専門性、ニッチなトピック対応が要因か。AIがメディアに与える影響の多様性を示唆。 GoogleのAI Overviews導入は、ニュースサイトへの検索トラフィック減少を引き起こすとの懸念が広がる中、一部の非営利ニュース組織では、むしろ検索トラフィックが大幅に増加していることが明らかになった。この予期せぬ動向は、AI Overviewsがメディア業界に与える影響が一様ではなく、特定のセグメントにおいては異なる結果をもたらす可能性を示唆している。 ## AI Overviews導入前の懸念と現実 AI Overviewsは、検索結果ページ上でAIが生成した要約を提供することで、ユーザーが元記事にアクセスする機会を減少させると広く懸念されてきた。特に、広告収入に依存する商業メディアにとっては、トラフィックの減少は収益に直結する深刻な問題と捉えられていた。 しかし、実際のデータからは異なる側面が浮かび上がっている。複数の非営利ニュース組織が、AI Overviewsの導入後、Google検索からの流入が顕著に増加したと報告している。これは、AI Overviewsが必ずしもすべてのニュースコンテンツのトラフィックを奪うわけではないことを示唆する。 例えば、地域に根差した調査報道を行う非営利メディアであるThe Connecticut Mirrorは、AI Overviews導入後、Google検索からのトラフィックが大幅に増加したと報告している。同メディアは、コネチカット州の政治、経済、社会問題に特化した深い分析記事を提供しており、その専門性と信頼性がAI Overviewsによって高く評価された可能性がある。AIが複雑な地方政治の動向や政策の詳細を完全に要約しきれない場合、ユーザーはより詳細な情報を求めてThe Connecticut Mirrorの記事へと誘導される。 ## 非営利ニュース組織におけるトラフィック増加の要因分析 このトラフィック増加の背景には、いくつかの要因が考えられる。 ### 信頼性と専門性の評価 非営利ニュース組織は、しばしば深い調査報道や専門性の高い分析記事を提供している。AI Overviewsがこれらの信頼できる情報源を要約する際に、その権威性を認識し、ユーザーを元の記事へと誘導している可能性がある。AIが複雑なトピックを完全に要約しきれない場合、ユーザーはより詳細な情報を求めてクリックする動機付けとなる。 ### Googleのアルゴリズムの進化 Googleは、検索結果の品質と信頼性を重視しており、AI Overviewsにおいても、誤情報の拡散を防ぎ、権威ある情報源を優先するようアルゴリズムを調整している可能性がある。非営利ニュース組織は、その性質上、客観的で事実に基づいた報道を行うことが多いため、アルゴリズムによって高く評価されているのかもしれない。 ### ニッチなトピックへの対応 非営利ニュース組織が扱うテーマは、特定の地域や専門分野に特化していることが多い。AI Overviewsがこれらのニッチな質問に対して、関連性の高い非営利メディアのコンテンツを提示することで、新たな読者層の獲得に繋がっている可能性も考えられる。The Connecticut Mirrorの事例のように、特定の地域に特化した深い情報ニーズを持つユーザーにとって、AI Overviewsがそのニーズに合致する非営利メディアのコンテンツを効果的に提示していると考えられる。 この現象は、AI Overviewsがメディア業界全体に与える影響を評価する上で、より詳細なデータ分析とセグメントごとの検証が不可欠であることを示している。非営利メディアが持つコンテンツの特性が、AI時代における検索エンジンの振る舞いとどのように相互作用しているのか、今後の動向が注目される。 --- ## Google検索トラフィック激減が突きつける、パブリッシャーの「Google離脱」という究極の選択 URL: https://ximera.com/posts/google-google 公開日: 2026-07-31 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Google検索トラフィック激減がメディア業界に突きつける「Google離脱」という究極の選択。その背景、パブリッシャーへの影響、そして国内メディアが取るべき戦略的打ち手を詳細に分析する。 近年、メディア業界において、Google検索からのトラフィックが大幅に減少しているという深刻な課題が浮上している。この傾向は、一部のパブリッシャーがGoogleとの関係性そのものを見直し、検索エンジンからの「離脱」という極めて戦略的な選択肢を検討するまでに至っている。これは、デジタルメディアの収益モデルと読者エンゲージメント戦略に根本的な変革を迫る動きであり、メディア経営層、編集者、プロダクト担当者にとって、その背景と将来的な影響を深く理解することが不可欠である。 ## Google検索トラフィック激減の背景と現状 ### 検索エンジンの役割変容 Googleは長らく、ウェブサイトへの主要なトラフィックドライバーとして機能してきた。しかし、その役割は近年大きく変容している。かつてはユーザーを外部サイトへ誘導する「リンクエンジン」としての側面が強かったが、現在は検索結果ページ(SERP)上で直接回答を提供する「アンサーエンジン」へと進化している。具体的には、以下の機能がその傾向を加速させている。 - Featured Snippets(強調スニペット): 検索結果の最上部に表示される、質問に対する直接的な回答。これにより、ユーザーは記事本文をクリックすることなく、疑問を解決できる場合が増加した。 - Knowledge Panels(ナレッジパネル): 特定のエンティティ(人物、場所、物事など)に関する情報をまとめたボックス。これにより、ユーザーは検索結果ページ内で包括的な情報を得られる。 - AI Overviews(AI概要): 生成AIが検索クエリに基づいて要約された情報を提供し、ユーザーが外部サイトへ遷移することなく疑問を解決できる機能。この機能は、特に情報収集の初期段階において、ユーザーのサイト訪問を大幅に抑制する可能性を秘めている。 これらの機能強化は、ユーザーの利便性を向上させる一方で、パブリッシャーのサイトへのクリック数を減少させている。ユーザーはSERP上で必要な情報を得られるため、わざわざ元の記事にアクセスする必要性を感じにくくなっている。この変化は、Googleが自社プラットフォーム内でのユーザー滞在時間を最大化しようとする戦略の一環と捉えることができる。 ### パブリッシャーへの影響 Google検索からのトラフィック減少は、パブリッシャーのビジネスモデルに多大な影響を及ぼしている。特に、広告収入に大きく依存するメディアにとって、トラフィックの減少は直接的な収益減に繋がる。例えば、ページビュー数に応じたインプレッション広告収入が減少するだけでなく、アフィリエイト収入やリード獲得機会も減少する。また、新たな読者の獲得機会が失われることで、ブランド認知度の向上や、直接的な読者関係の構築が困難になるという課題も抱えている。これは、新規ユーザーがGoogle検索を介してメディアを発見する機会が減少することを意味する。 この状況は、パブリッシャーがGoogleという単一プラットフォームへの過度な依存から脱却し、より多様なトラフィック源と収益モデルを確立する必要性を強く示唆している。データ主導の意思決定に基づき、読者の行動パターンやコンテンツ消費傾向を深く分析し、新たな戦略を策定することが急務となっている。具体的には、どのチャネルからどのような読者が流入し、どのようなコンテンツにエンゲージしているのかを詳細に分析し、そのインサイトを次の戦略立案に活かす必要がある。 ## Googleからの「離脱」という選択肢の検討 Google検索からのトラフィック減少が続く中、一部のパブリッシャーは、Googleからの「離脱」という極めてラディカルな選択肢を真剣に検討し始めている。これは、単なるSEO戦略の見直しを超え、メディアの存在意義と事業戦略の根幹に関わる決断である。 ### 離脱の動機 パブリッシャーがGoogleからの離脱を検討する主な動機は複数存在する。 - Google依存のリスク: トラフィックの大部分をGoogleに依存することの脆弱性。Googleのアルゴリズム変更一つで事業が揺らぐリスクを回避したいという思惑が強い。過去にもコアアルゴリズムアップデートによって、多くのメディアがトラフィックを大きく変動させてきた経緯がある。 - コンテンツ価値の「搾取」: GoogleがパブリッシャーのコンテンツをSERP上で直接利用し、あるいはAI学習データとして活用しながら、十分な対価やトラフィックを提供しないことへの不満。特にAI Overviewsの導入は、この不満を一層増幅させている。 - 直接的な読者関係の強化: Googleを介さず、読者と直接的な関係を構築することで、より強固なコミュニティ形成や、サブスクリプションモデルへの移行を促進したいという戦略。これは、広告収入に依存しない安定した収益基盤を構築するための重要な打ち手となる。 ### 離脱がもたらす潜在的影響 Googleからの離脱は、短期的に見ればトラフィックと収益のさらなる減少という大きなリスクを伴う。しかし、長期的には以下のような潜在的なメリットも考えられる。 - ブランドの自律性確立: Googleのアルゴリズムやポリシーに左右されない、独立したブランド価値の構築。これにより、メディアは独自の編集方針やビジネスモデルを追求しやすくなる。 - 直接的な読者エンゲージメント: ニュースレター、アプリ、会員制サービスなどを通じて、読者との深い関係性を築き、ロイヤルティを高める機会。これにより、読者のLTV(Life Time Value)を最大化することが可能となる。 - 収益モデルの多様化: 広告収入に代わる、サブスクリプション、イベント、ECなど、より安定した収益源の開拓。例えば、専門性の高いコンテンツに対する課金モデルや、地域コミュニティに特化したイベント開催などが考えられる。 - AI時代におけるコンテンツ戦略の再構築: AIが模倣できない、独自の視点、深い洞察、地域に根ざした情報など、人間ならではの価値を持つコンテンツに注力する戦略。これにより、メディアはAIとの差別化を図り、独自の競争優位性を確立できる。 この選択は、メディアが自らのアイデンティティとビジネスモデルを再定義し、デジタルエコシステムにおける自律的な存在として生き残るための「打ち手」となり得る。ただし、その実行には周到な戦略立案と、読者との関係性を再構築するための多大な投資が必要となる。 ## 国内メディアへの示唆 このグローバルなトレンドは、日本のメディア、特にリソースが限られがちな地方メディアにとっても、喫緊の課題として捉えるべきである。国内メディアが、この変化の波を乗り越え、持続可能な発展を遂げるための戦略的打ち手を考察する。 ### 国内メディアの現状と課題 日本の多くのメディアも、Google検索からのトラフィックに大きく依存している。特に地方メディアは、デジタル化への対応が遅れがちであり、専門人材や技術リソースの不足が課題となっている。地域密着型の情報提供という強みを持つ一方で、デジタル上でのプレゼンスや収益化モデルの確立に苦慮しているケースが多い。例えば、SEO専門人材の不足や、データ分析ツールの導入・活用が進んでいないといった実情がある。 ### 国内メディアが取るべき戦略的打ち手 - データ主導の読者インサイト分析とコンテンツ戦略: 読者が何を求めているのか、どのような情報に価値を感じるのかを、アクセスデータ、アンケート、ソーシャルリスニングなどを用いて深く分析する。そのインサイトに基づき、地域に特化した独自の視点や深掘り記事、生活に密着した実用情報など、AIには生成できない人間ならではのコンテンツを強化する。これにより、読者のエンゲージメントを高め、直接的な関係構築の足がかりとする。具体的には、地域の歴史や文化に関する詳細な解説、地元住民の生活に役立つ行政情報、地域経済に特化したビジネス分析などが挙げられる。 - 直接的エンゲージメントチャネルの確立: Google検索に依存しない読者獲得・維持戦略として、ニュースレター、LINE公式アカウント、地域限定の会員制サービス、イベント開催などを積極的に活用する。読者との双方向コミュニケーションを重視し、コミュニティ形成を通じてロイヤルティを高める。例えば、地域課題に関する読者参加型企画や、地元事業者とのコラボレーションイベント、読者限定のオフライン交流会などが考えられる。これにより、読者を単なる情報消費者ではなく、メディアの共創者として巻き込むことが可能となる。 - プラットフォーム戦略の再考と多角化: Google以外のプラットフォームとの連携を強化する。具体的には、Facebook、X(旧Twitter)、InstagramといったSNSプラットフォームを、単なる情報発信ツールとしてだけでなく、読者との交流や新たな読者層開拓の場として戦略的に活用する。また、Yahoo!ニュースなどのポータルサイトとの連携も引き続き重要である。さらに、地域に特化した独自のアプリ開発や、他地域の地方メディアとの連携による共同プラットフォーム構築も視野に入れるべきである。例えば、地域特化型SNSの活用や、音声コンテンツ(ポッドキャスト)の配信も有効な打ち手となる。 - AI時代におけるコンテンツ価値創造の再定義: AIが生成できる一般的な情報ではなく、現地取材に基づく一次情報、地域住民の生の声、歴史的背景、文化的な深掘りなど、地域メディアだからこそ提供できる「唯一無二」のコンテンツ価値を追求する。これにより、情報の希少性と信頼性を高め、読者が「このメディアでしか得られない」と感じる体験を提供する。具体的には、地域の職人やアーティストへの密着取材、地元食材の生産者レポート、地域イベントの舞台裏紹介などが考えられる。 - 地域メディア間の連携と共同事業: 複数のメディアが連携し、技術投資の共有、共同での広告営業、コンテンツの相互提供などを行うことで、個々のリソース不足を補い、規模の経済を追求する。これにより、プラットフォーム事業者との交渉力を高め、新たな収益モデルの創出も期待できる。例えば、共同で地域特化型データプラットフォームを構築し、地域経済分析レポートを有料で提供するといった事業展開が考えられる。 ## 結論 Google検索からのトラフィック激減は、メディア業界全体に構造的な変革を迫るものである。特に地方メディアにとっては、この変化を既存のビジネスモデルを見直す好機と捉え、Googleへの依存度を低減し、読者との直接的な関係性を強化する戦略を構築することが急務である。データ主導の意思決定に基づき、地域に根ざした独自の価値を創造し、多様なチャネルを通じて読者と深くエンゲージする「打ち手」を講じることで、持続可能なメディア経営への道筋を切り拓くことができるだろう。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/search-traffic-has-declined-so-much-that-some-publishers-are-considering-opting-out-of-google-entirely/ --- ## ニュース購読料のアルゴリズム設定が示すメディアの価格戦略転換と購読者コミュニケーションの課題 URL: https://ximera.com/posts/media-pricing-strategy-algorithm 公開日: 2026-07-31 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: ニュース購読料のアルゴリズム設定は、メディアの価格戦略転換を示す。データ主導のLTV最適化は収益最大化に貢献する一方、購読者とのコミュニケーション、不信感、公平性への懸念といった課題を提起する。透明性の向上と価値の強調が信頼構築に不可欠であり、倫理的側面も考慮した戦略的アプローチが求められる。 ニュース購読の更新メールに「この価格はアルゴリズムによって設定されました」という文言が追加された事例は、メディア企業が収益最大化と購読者維持のため、データ主導型の価格設定戦略へと移行している現状を明確に示唆する。この戦略は、個々の購読者のLTV(顧客生涯価値)を最適化する可能性を秘める一方で、購読者との慎重なコミュニケーションが不可欠となる。 ## アルゴリズムによる価格設定の戦略的背景 メディア企業がアルゴリズムベースの価格戦略を導入する背景には、従来の画一的な料金体系では捉えきれなかった購読者の多様な価値を最大化し、持続可能な収益モデルを確立するという明確な意図がある。このアプローチは、購読者のエンゲージメント、支払い意欲、過去の行動履歴といった多角的なデータを分析し、個々の購読者にとって最適な価格を提示することを目的とする。 ### ダイナミックプライシングへの移行とデータ活用 従来の固定価格モデルから、リアルタイムな市場状況や個々のユーザー属性に応じたダイナミックプライシングへの移行は、メディア業界における重要なトレンドである。アルゴリズムは、以下の多岐にわたるインサイトを基に価格を決定する。 - 購読者の利用頻度: サイトへのアクセス頻度、記事の閲覧数、滞在時間。 - コンテンツ消費傾向: 特定のジャンルや著者の記事への関心度、動画コンテンツの視聴履歴。 - 居住地域: 地域ニュースへの関心度、地域ごとの購買力。 - デバイス利用状況: モバイル、デスクトップ、タブレットなど、利用デバイスの種類と頻度。 - 過去の購読履歴: 購読期間、過去のプロモーション利用状況、解約履歴。 - 競合他社の価格設定: 市場における類似コンテンツの価格動向。 これらのデータを総合的に分析することで、新規購読者の獲得単価の最適化や、既存購読者の解約率低減に貢献することが期待される。例えば、エンゲージメントの高い購読者にはプレミアム価格を提示し、解約リスクのある購読者には特別割引を提供することで、LTVの最大化を図る。 ## 購読者の反応とコミュニケーションの課題 「アルゴリズムが設定した価格」という直接的な表現は、一部の購読者に混乱や不信感を与えている。透明性を確保しようとする意図は理解できるものの、その伝え方には慎重な検討が求められる。 ### 不信感と公平性への懸念 購読者は、価格がどのように決定されたのか、自身がどのように評価されているのかについて、より詳細な説明を求める傾向にある。価格設定の根拠が不明瞭である場合、以下のリスクが生じる。 - 不公平感の醸成: 他の購読者と比較して自身が高い価格を提示されたと感じた場合、不公平感を抱き、メディアへの信頼が損なわれる可能性がある。 - プライバシーへの懸念: 自身の個人データがどのように価格設定に利用されているのかについて、プライバシー侵害の懸念が生じる。 - ブランドイメージの毀損: 購読者との関係性を軽視していると受け取られ、ブランドイメージが低下するリスクがある。 ### 信頼構築のための戦略的コミュニケーション メディア企業は、アルゴリズムによる価格設定のメリット(例: 個々のニーズに合わせた価値提供、パーソナライズされた体験)を明確に伝え、購読者との対話を深める戦略が必要となる。具体的には、以下の要素を考慮すべきである。 - 透明性の向上: 価格設定に利用されるデータの種類と、それがどのように価格に影響するかを簡潔かつ明確に説明する。 - 価値の強調: アルゴリズムによる価格設定が、購読者にとってどのような付加価値をもたらすのかを具体的に提示する。例えば、パーソナライズされたコンテンツレコメンデーションや、より関連性の高いニュース体験など。 - 選択肢の提供: 購読者が自身のデータ利用設定を管理できるオプションを提供し、コントロール感を与える。 - フィードバックの収集: 購読者からの価格設定に関するフィードバックを積極的に収集し、アルゴリズムの改善に活用する。 ## メディア企業への示唆と今後の展望 この動きは、メディア企業が購読者との関係性を再構築し、データとテクノロジーを駆使した新たなビジネスモデルを確立する上で避けて通れない課題である。 ### データ主導の価格最適化と倫理的側面 単なる価格提示に留まらず、アルゴリズムがもたらす価値や公正性を購読者に理解させるための、洗練されたコミュニケーション戦略が不可欠である。価格設定アルゴリズムの透明性と説明責任をどのように果たすか、倫理的な側面も考慮に入れる必要がある。 - アルゴリズムのバイアス: アルゴリズムが特定の購読者層に対して不当な価格設定を行わないよう、定期的な監査と調整が必要である。 - データガバナンス: 購読者データの収集、利用、保管に関する厳格なポリシーを策定し、プライバシー保護を徹底する。 - 法的・規制遵守: 各国のデータ保護規制(例: GDPR、CCPA)を遵守し、法的なリスクを回避する。 データ主導の価格最適化は、メディアの持続可能な成長を支える強力なツールとなり得るが、その導入には周到な計画と購読者インサイトに基づく戦略的アプローチが求められる。テクノロジーの進化と購読者の期待値の高まりの中で、メディア企業は透明性と倫理性を両立させながら、新たな価格戦略を構築していく必要がある。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/this-price-was-set-by-an-algorithm-news-subscribers-are-surprised-by-a-new-line-in-their-renewal-emails/ --- ## ニュースレターをデジタル成長エンジンへ変革する戦略:Rough Draft Atlantaの事例から学ぶ URL: https://ximera.com/posts/rough-draft-atlanta 公開日: 2026-07-31 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Rough Draft Atlantaの事例から、ニュースレターをデジタル成長エンジンへ変革する戦略を考察。読者との直接関係構築、データ活用、収益化の機会創出など、地域メディアが持続可能なビジネスモデルを構築するための具体的な打ち手を提示する。 デジタルメディアが激変する現代において、ニュースレターが単なる情報配信ツールから、メディアの持続的な成長を牽引する中核エンジンへと進化を遂げている。米国アトランタのパブリッシャーRough Draft Atlantaは、このニュースレターの戦略的価値をいち早く認識し、編集ワークフロー、オーディエンス開発、広告戦略といったメディア運営の根幹を再構築することで、デジタル変革を推進している。本稿では、Rough Draft Atlantaの事例を起点に、ニュースレターがなぜデジタル成長エンジンとなり得るのか、その戦略的意義と具体的な打ち手を考察し、日本のメディア、特に地域メディアへの示唆を提示する。 ## ニュースレターが持つ戦略的価値 デジタルメディアを取り巻く環境は、サードパーティCookieの段階的な廃止、プラットフォーム依存の深化、そして読者の情報過多によるエンゲージメント低下といった課題に直面している。このような状況下で、ニュースレターは以下のような戦略的価値を発揮し、メディアの新たな成長機会を創出する。 - 読者との直接的な関係構築: ニュースレターは、読者のメールボックスに直接コンテンツを届けることで、プラットフォームを介さない強固なファーストパーティ関係を構築する。これにより、メディアは読者のロイヤルティを高め、長期的なエンゲージメントを促進することが可能となる。例えば、購読者限定の速報や深掘り記事を配信することで、読者はメディアとの特別なつながりを感じ、継続的な購読に繋がる。 - パーソナライゼーションとエンゲージメントの深化: 購読者の興味関心や行動履歴に基づいたパーソナライズされたコンテンツ配信は、読者の満足度を高め、開封率やクリック率の向上に寄与する。これにより、読者はメディアに対してより深い信頼と愛着を抱くようになる。具体的には、読者が過去にクリックした記事のカテゴリや閲覧履歴に基づいて、関連性の高い記事をニュースレター内でレコメンドする施策が考えられる。 - データ収集とインサイトの獲得: ニュースレターの運用を通じて得られる開封率、クリック率、購読解除率といったデータは、読者の行動や嗜好に関する貴重なインサイトを提供する。これらのデータは、コンテンツ戦略の最適化、オーディエンス開発の改善、さらには新たな収益モデルの構築に不可欠な情報となる。例えば、特定の記事リンクのクリック率が高い場合、そのテーマに対する読者の関心が高いと判断し、今後の記事企画に反映させることが可能である。 - 収益化の新たな機会創出: ニュースレターは、ターゲットを絞った広告配信、プレミアムコンテンツへの誘導、イベント告知、さらにはサブスクリプションモデルの導入といった多様な収益化機会を提供する。特に、エンゲージメントの高い読者層へのリーチは、広告主にとって高い価値を持つ。具体的には、特定の地域に特化したニュースレターであれば、その地域の飲食店や小売店からの広告出稿を募り、高い費用対効果をアピールできる。 ## Rough Draft Atlantaの変革アプローチ Rough Draft AtlantaのパブリッシャーであるKeith Pepper氏は、ニュースレターの持つこれらの戦略的価値を認識し、メディア運営の根幹をニュースレター中心に再構築した。原文からは具体的な施策の詳細までは読み取れないものの、「編集ワークフロー、オーディエンス開発、広告を再構築した」という記述から、以下の変革アプローチが推察される。 ### 編集ワークフローの再構築 従来のウェブサイト中心のコンテンツ制作から、ニュースレターを主要なアウトプットと捉えるワークフローへの転換を図ったと考えられる。これは、ニュースレターの特性(簡潔さ、パーソナライゼーション、定期性)に合わせたコンテンツ企画、執筆、編集体制の構築を意味する。例えば、ニュースレター向けに特化したオリジナルコンテンツの制作、既存コンテンツのニュースレター向け再編集、あるいはニュースレターの配信スケジュールに合わせたコンテンツ公開戦略などが考えられる。具体的には、日々のニュース速報はウェブサイトで公開しつつ、週末にはその週の主要ニュースを深掘りした解説記事や、ニュースレター購読者限定のインタビュー記事を配信するといった差別化を図る。 ### オーディエンス開発の強化 ニュースレター購読者の獲得と維持を最重要課題と位置づけ、オーディエンス開発戦略を強化したと推測される。ウェブサイト上での購読促進、ソーシャルメディアを活用したプロモーション、オフラインイベントでの購読者獲得キャンペーン、あるいは既存購読者からの紹介プログラムなどが考えられる。また、購読者のセグメンテーションとターゲティングを通じて、より質の高い読者層を育成する戦略も含まれるだろう。例えば、ウェブサイトの特定の記事を読んだユーザーに対して、そのテーマに関連するニュースレターへの登録を促すポップアップを表示したり、地域イベントでニュースレター登録ブースを設け、特典を付与したりする施策が考えられる。 ### 広告戦略の再定義 ニュースレターの広告価値を最大化するための戦略的な見直しを行ったと考えられる。これは、ニュースレターの読者層のデモグラフィックや興味関心に基づいたターゲティング広告の導入、スポンサードコンテンツの企画、あるいは特定のニッチな読者層にリーチしたい広告主への提案強化などが含まれる。エンゲージメントの高いニュースレター購読者への広告配信は、広告主にとって高いROI(投資収益率)をもたらす可能性があり、新たな広告収益源の柱となり得る。具体的には、Rough Draft Atlantaがアトランタという特定の地域に特化していることを活かし、地域の不動産会社や自動車ディーラーに対し、高所得者層が多いとされる特定のニュースレター購読者層への広告枠を提案する。また、特定の文化イベントに関するニュースレターであれば、そのイベントのスポンサー企業からの広告を掲載するといった、文脈に沿った広告展開も有効である。 ## 日本のメディア、特に地域メディアへの示唆 Rough Draft Atlantaの事例は、日本のメディア、特に地域に根差した新聞社やニュースメディアにとって、デジタル変革を推進する上で重要な示唆を与える。地域メディアは、その特性上、読者との距離が近く、地域コミュニティとの結びつきが強いという強みを持つ。この強みをニュースレター戦略と組み合わせることで、新たな価値創造と持続可能なビジネスモデルの構築が可能となる。 ### 地域情報の価値再認識とニッチなニーズへの対応 地域メディアは、全国メディアではカバーしきれない、地域に特化した詳細な情報やローカルニュースを提供できる唯一無二の存在である。ニュースレターを通じて、特定の地域イベント、店舗情報、行政サービス、文化活動など、読者の生活に密着したニッチな情報ニーズに応えることで、読者のエンゲージメントを飛躍的に高めることができる。例えば、特定の学区のPTA向けに特化したニュースレターで学校行事や教育情報を配信したり、地域の商店街の最新情報やクーポンを配信するニュースレターを提供したりする。 ### 読者コミュニティの形成とエンゲージメントの深化 ニュースレターは、地域住民との直接的なコミュニケーションチャネルとして機能し、地域コミュニティの形成を促進する。読者からのフィードバックを募る、地域課題に関するアンケートを実施する、読者参加型の企画を募るといったインタラクティブな要素を取り入れることで、読者はメディアを「自分たちのもの」と捉え、より積極的に関与するようになる。これは、地域メディアの存在意義を強化し、ロイヤルティの高い読者基盤を構築する上で不可欠である。具体的には、ニュースレター内で地域の課題に関する読者アンケートを実施し、その結果を記事として公開することで、読者の意見がメディアに反映されるプロセスを可視化する。また、地域メディア主催のオンラインイベントやワークショップへの招待をニュースレター購読者限定で行うことも有効である。 ## 戦略的打ち手としてのニュースレター活用 ニュースレターをデジタル成長エンジンとして機能させるためには、以下の戦略的打ち手を講じる必要がある。 - データドリブンなコンテンツ戦略: ニュースレターの開封率、クリック率、購読解除率といったデータを継続的に分析し、読者の反応が良いコンテンツの傾向を把握する。このインサイトに基づき、コンテンツの企画、制作、配信タイミングを最適化することで、読者エンゲージメントを最大化する。例えば、特定の曜日や時間帯の開封率が高い傾向にあれば、その時間帯に重要なニュースレターを配信する。また、特定の記事カテゴリのクリック率が高い場合、そのカテゴリのコンテンツを増やすといった意思決定を行う。 - CRM(顧客関係管理)との連携: ニュースレター購読者を単なるメールアドレスとしてではなく、個々の読者として捉え、CRMシステムと連携させる。これにより、読者の属性、行動履歴、関心事を一元的に管理し、よりパーソナライズされたコミュニケーションを実現する。具体的には、読者の居住地域、年齢層、購読している他のニュースレター、過去のイベント参加履歴などをCRMに蓄積し、それらの情報に基づいて個別のニュースレターコンテンツや広告を配信する。 - A/Bテストによる最適化: 件名、プレヘッダー、コンテンツのレイアウト、CTA(Call To Action)の文言、配信時間など、様々な要素についてA/Bテストを繰り返し実施する。データに基づいた継続的な改善サイクルを回すことで、ニュースレターの効果を最大化する。例えば、同じ内容のニュースレターでも、件名の表現を複数パターン用意し、どちらが開封率が高いかをテストすることで、より効果的な件名作成のノウハウを蓄積する。 - 専任チームの設置と専門知識の蓄積: ニュースレター戦略を推進するためには、コンテンツ制作、オーディエンス開発、データ分析、広告営業といった専門知識を持つ専任チームの設置が望ましい。これにより、戦略の一貫性を保ち、ノウハウを蓄積し、迅速な意思決定と実行を可能にする。例えば、ニュースレターの編集者、データアナリスト、マーケターが密に連携し、週次でニュースレターのパフォーマンスレビューを行い、次週の配信計画に反映させる体制を構築する。 ## 結論 Rough Draft Atlantaの事例が示すように、ニュースレターは単なる情報配信ツールではなく、デジタルメディアの持続的な成長を支える戦略的なエンジンである。読者との直接的な関係構築、エンゲージメントの深化、データに基づくインサイトの獲得、そして新たな収益機会の創出といった多角的な価値を提供する。日本のメディア、特に地域メディアは、この変革の波を捉え、自社の強みと地域特性を活かした独自のニュースレター戦略を構築することが求められる。編集ワークフローの再構築、オーディエンス開発の強化、広告戦略の再定義といった包括的なアプローチを通じて、ニュースレターを中核としたデジタル変革を推進し、新たなメディア価値を創造する「打ち手」を講じるべきである。 出典: Digital Content Next https://digitalcontentnext.org/blog/2026/07/30/how-one-publisher-turned-newsletters-into-a-digital-growth-engine/ --- ## Tubularの2026年第2四半期グローバルニュースインサイト URL: https://ximera.com/posts/tubular-2026-2 公開日: 2026-07-31 著者: Tubular Labs 概要: Tubular Intelligenceの2026年第2四半期データに基づき、APAC、LATAM、EMEA、北米におけるニュース&政治系動画の最適な長さ、投稿時間、トレンドハッシュタグ、高パフォーマンス記事を分析。データ主導のコンテンツ戦略の重要性を提言する。 Tubular Intelligence(チュブラ―・インテリジェンス)の2026年4月から7月までのデータを用い、APAC(アジア太平洋)、LATAM(ラテンアメリカ)、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、および北米における動画の長さ、投稿時間、トレンドハッシュタグ、および高パフォーマンス記事を分析し、現在エンゲージメントを牽引している要因を明らかにした。以下にそのデータが示す内容を報告する。 ## 最適な動画の長さ YouTubeにおいて、APAC地域のニュース&政治系パブリッシャーは、動画1本あたりのエンゲージメントが最も低い動画の長さに注力している状況が確認された。データは、エンゲージメントが0~30秒の短尺と15~20分の長尺という両極端で最も強いことを示しているにもかかわらず、同地域のパブリッシャーはアップロードの4分の1以上を2~5分の中尺帯に投入しており、データが指し示す最適な動画の長さを逸している。 考察:優れた動画はどのような長さでも制作可能であるものの、即座に注目を集めるクイックヒットクリップと、より深いエンゲージメントを生み出す長尺の解説動画の成功は、中尺コンテンツに大きく依存するパブリッシャーが、インパクトを犠牲にしてアウトプットを最適化している可能性を示唆している。 ## 最適な投稿時間 LATAM地域を見ると、ニュース&政治系パブリッシャーは午後の半ばに最も多く投稿しているが、エンゲージメントのピークは午前中であり、この2つの時間帯はほとんど重なっていない。 考察:同地域で最もパフォーマンスの高い時間帯は、競合が最も少ない時間帯の一つでもあり、動画1本あたりのエンゲージメントが最も高まる午前中の枠に投稿されるアップロードはごくわずかである。配信時間を早めるパブリッシャーは、競合する投稿数がはるかに少ない中で、動画1本あたりのより強力なエンゲージメントを獲得できる可能性がある。 ## EMEA地域におけるTikTokの最も視聴されたニュース&政治系ハッシュタグ EMEA地域では、最も視聴されたニュース&政治系ハッシュタグは、世界的な政治的争点、放送局のブランディング、そして国境を越えた発見を広げる多言語タグが混在している。 考察:3つのパターンが際立っている。 ・第一に、米国の政治は世界的な関心事である。#donaldtrump と #trump の両方がEMEAのトップ12に入っており、米国大統領が同地域で最も視聴されるニューステーマの一つとなっている。 ・第二に、ブランドタグがその存在感を超えて機能している。#bbcnews や #tagesschau のような放送局のハッシュタグは、ごく少数のクリエイター、時には1人のクリエイターによって使用されているに過ぎないが、認知度の高いタグが発見とブランド権威の両方を促進することを証明している。 ・第三に、言語が発見を分断している。英語の #news の隣に、ドイツ語の #nachrichten、スペイン語の #noticias、フランス語の #sinformersurtiktok が並んでいる。パブリッシャーは分類のためではなく、検索可視性、ブランディング、およびパフォーマンス追跡のためにタグ付けを行っている。 ## 米国のニュース&政治系パブリッシャーによる最も人気のある動画 過去数か月間の注目すべき2つの動画は、動画が異なる2つの方法で注目を集めることができることを示している。Fox News(フォックス・ニュース)の暴力的な出来事の映像は視聴者を集め、一方ABC News(ABCニュース)のハッピーエンドのスペクタクルは人々の議論を巻き起こした。 ・Fox Newsによる最も視聴された動画 視聴回数: 2億4,700万回 | エンゲージメント数: 590万回 ・ABC Newsによる最もエンゲージメントの高い動画 視聴回数: 6,570万回 | エンゲージメント数: 980万回以上 考察:ここでは、リーチとエンゲージメントが逆方向に作用した。Fox Newsは視聴回数を獲得し、ABC Newsは動画を活性化させるシェアを獲得した。コンテンツを選択する前に、どちらの戦術が自社のオーディエンスエンゲージメント戦略により適しているかを決定すべきである。 各地域において、一つの明確なパターンが示されている。ニュース&政治分野におけるパフォーマンスは、何を扱うかだけでなく、どのように、いつ、どれくらいの速さで配信するかにかかっている。APACにおける短尺と長尺コンテンツ間の乖離、LATAMにおける未開拓の早朝エンゲージメント時間帯、そしてEMEAにおける多言語かつブランド主導のハッシュタグによる発見に至るまで、オーディエンスの行動は測定可能であり、戦略的かつ実行可能である。パブリッシャーとブランド双方にとって、機会はより多く公開することではなく、よりスマートに公開することにある。これは、コンテンツ戦略を実際のオーディエンス行動、プラットフォームのメカニクス、および地域のニュアンスに合わせることを意味する。自社の地域に特化したニュース&政治に関するさらなるインサイトを発見したい場合は、Tubular Labs(チュブラ―・ラボ)に今すぐ問い合わせることを推奨する。 出典: Tubular Labs https://tubularlabs.com/blog/tubulars-global-news-insights-from-q2-2026/ --- ## 読者の代わりにブラウザが読む — エージェンティック・ブラウザがメディアに突きつける3つの断絶 URL: https://ximera.com/posts/agentic-browsers-media-impact 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: ChatGPT Atlas、Perplexity Comet、Dia。閲覧そのものを代行するブラウザが、検索に続く新しい中間層として立ち上がっている。クリック・計測・広告の3つの断絶を整理し、IAB Tech Lab の Trusted Server など業界の対処と、日本のメディアが今の規模のうちに準備できることをキメラの視点でまとめる。 検索が中間層になった、という話はもう共有されています。次に起きているのは、閲覧そのものが代行されるという変化です。 ChatGPT Atlas、Perplexity Comet、The Browser Company の Dia。いわゆるエージェンティック・ブラウザは、ユーザーの代わりにページを開き、読み、要約し、フォームを埋め、タスクを完了させます。読者がサイトに来ないのではなく、読者の代理人がサイトに来る。この違いが、メディアの事業構造にどう効くのかを整理します。 ## 現時点の規模は小さい 先に規模感を確認しておきます。Digiday が2026年に報じた[取材記事](https://digiday.com/media/no-playbook-just-pressure-publishers-eye-the-rise-of-agentic-browsers/)のなかで、あるパブリッシャーはこの脅威を「3%の問題」と表現しています。他の課題に比べれば管理可能だ、という認識です。ブラウザ市場全体では Chrome が世界でおよそ70%を占めており、専用のエージェンティック・ブラウザの利用者はまだ限られます。 ですから、今すぐ事業計画を書き換える話ではありません。ただし、準備を後回しにしてよい話でもない。理由は2つあります。 ひとつは、この機能が専用ブラウザに閉じないことです。Google は Chrome に Gemini の機能を組み込みつつあります。専用ブラウザの利用者数を追いかけているうちに、既存ブラウザの標準機能として同じことが起きる可能性があります。 もうひとつは、影響が「流入が減る」という単一の形では現れないことです。以下の3つの断絶は、別々のタイミングで、別々の部署に効いてきます。 ## 断絶1:クリックの断絶 もっとも分かりやすい影響です。エージェントがページを読んで要約を返すなら、読者はページを開きません。検索結果での AI 要約と同じ構造が、ブラウザという最後の砦にまで及ぶということです。 Digiday の記事では、元パブリッシャーで現在は Alvarez and Marsal に所属する Amir Malik 氏が、AI はブラウザベースの Web 体験の衰退を加速させるものであり、消費者の行動は「目的地としてのサイト」から「プロンプトを起点とする経路」へ移ると述べています。 これは既存の議論の延長です。打ち手も既に整理されています。プラットフォーム経由に依存しない読者関係を作ること、要約されて終わらない体験を自社側に置くこと。キメラでも[メディア事業の再設計](/posts/first-party-multichannel-business-model-2026)などで扱ってきた論点です。 ## 断絶2:計測の断絶 こちらのほうが、実務上やっかいです。 エージェントによるアクセスは、人間のアクセスと同じ経路で発生します。同じブラウザから、同じユーザーエージェントで、同じようにページを読み込む。従来のボット判定は、こうした「人間の代理として動くクライアント」を想定して作られていません。 結果として、次のような事態が起きます。 - ページビューは記録されるが、その先の行動が起きない - 平均滞在時間やスクロール深度の分布が、静かに歪む - 直帰率が上がった原因が、コンテンツの問題なのか、エージェント経由の増加なのか判別できない 計測が歪むことの本当の怖さは、数字が下がることではなく、下がった原因を誤診することです。編集がコンテンツの質を疑い、プロダクトが導線を疑い、実際にはトラフィックの構成が変わっただけ、ということが起こり得ます。 だからこそ、規模が小さい今のうちに、エージェント経由のアクセスを分類できる状態にしておく価値があります。3%のうちに分類の仕組みを作れば、それが10%になったときに慌てずに済みます。 ## 断絶3:広告の断絶 3つ目は収益に直結します。Digiday の記事では、現在の広告システムが人間のトラフィックと AI のトラフィックを区別できない点が指摘されています。LLM に対して広告を配信しても意味がなく、Perplexity の Comet のように広告ブロック機能を内蔵しているブラウザもあります。 IAB Tech Lab の CEO である Anthony Katsur 氏は、エージェンティック・ブラウザを LLM にとってのデータの「トロイの木馬」と表現し、慎重に対応すべきで、これらのブラウザからのアクセスを拒否することも選択肢だと述べています。業界団体のトップが遮断を選択肢として挙げている、という点は記録しておく価値があります。 対処の動きも始まっています。同記事によれば、米欧の少なくとも6社のパブリッシャーが、IAB Tech Lab の Trusted Server の枠組みを試験導入しています。広告配信の処理をサーバーサイドへ移し、ブラウザ側でのブロックの影響を受けにくくする方向です。 ただし業界として統一されたプレイブックはまだない、というのが同記事の結論です。 ## 日本のメディアが、いま準備できること 規模が小さい段階でやっておくと安いものから並べます。 1. アクセスログにおけるエージェント判定の準備 まずは分類できる状態を作ることです。エージェンティック・ブラウザ由来のアクセスを、既存の「直接流入」に混ぜたままにしないこと。分類ができていれば、あとから遡って傾向を分析できます。 2. 指標の異常を「原因不明」で放置しない運用 滞在時間や回遊率が説明のつかない動き方をしたとき、コンテンツ要因とトラフィック構成要因を切り分けて検証する手順を、あらかじめ決めておきます。これは分析体制の話であり、ツールを入れれば解決する話ではありません。 3. 広告配信のサーバーサイド化の検討 すぐに移行する必要はありませんが、自社の広告配信がどこまでブラウザ側の処理に依存しているかは把握しておくべきです。依存度が高いほど、この変化に脆弱です。 4. アクセス方針の意思決定を先に済ませる エージェントのアクセスを許可するのか、条件付きにするのか、拒否するのか。これは技術の問題ではなく事業の判断です。[AI クローラーの課金インフラ](/posts/ai-crawler-payment-infrastructure)の議論と地続きであり、同じ場で決めるべきです。 ## 私見:問われているのは「代理人に何を見せるか」 エージェンティック・ブラウザを、流入を奪う敵として捉えるだけでは、判断を誤ると考えています。 読者の代理人がサイトに来るという構造は、裏返せば、代理人に対して何を提示するかを設計できるということでもあります。要約されて終わる記事しか置いていなければ、要約されて終わります。会員登録した人だけが使える機能、データベース、継続的な更新、コミュニティ。代理人が持ち帰れないものを自社側に置いているかどうかが、この局面での差になります。 「3%の問題」のうちに考えておく価値があるのは、遮断の設定より、この設計のほうだと思います。 ## 参考 - [No playbook, just pressure: Publishers eye the rise of agentic browsers(Digiday)](https://digiday.com/media/no-playbook-just-pressure-publishers-eye-the-rise-of-agentic-browsers/) - [Digital News Report 2026 Executive Summary(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026/dnr-executive-summary) --- ## AIに使われた分を、誰が払うのか — Cloudflare の Pay Per Use と RSL が作りはじめた「クロール経済圏」 URL: https://ximera.com/posts/ai-crawler-payment-infrastructure 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 2026年9月15日、Cloudflare は AI クローラーの既定を変える。学習・エージェント用途のクローラーは広告掲載ページから既定でブロックされ、Pay Per Crawl は使われ方に応じて課金する Pay Per Use へ移行する。Stack Overflow の HTTP 402 実装、RSL 標準との違い、そして日本のメディアが今週のうちに確認すべき設定を、キメラの視点で整理する。 検索流入が減ったという話は、この1年で十分に語られました。キメラでも[AI Overviews 時代に編集が取るべき5つの戦略](/posts/ai-overviews-newsroom-strategy)などで扱ってきたテーマです。 一方で、あまり議論されていない側があります。減った流入の裏側で、自社のコンテンツは AI に読まれつづけているという事実です。読まれているのに、対価も、読まれた記録も、コントロールも、多くのメディアの手元にはありません。 ここに市場を作ろうとしている動きが、2026年に入って具体的なインフラになりました。本稿では、その動きを整理し、日本のメディア事業者が今週のうちに確認できる論点まで落とします。 ## 2026年9月15日に何が変わるか Cloudflare は2026年7月1日、AI クローラーの取り扱いについて既定を変更すると発表しました([TechCrunch の報道](https://techcrunch.com/2026/07/01/cloudflares-new-policy-pushes-ai-companies-to-pay-for-publishers-content/))。要点は次のとおりです。 - 適用開始は2026年9月15日 - 対象は、新規の Cloudflare 顧客、既存顧客が新たに追加するサイト、および無料プランの顧客 - AI 企業に対し、検索用のクローラーと、学習・エージェント用途のクローラーを分離することを求める - 用途が混在したクローラーは、広告を掲載しているページから既定でブロックされる。サイト側が設定を変えれば許可できる ここで押さえるべきは、既定値が変わるという点です。これまでは「開けておくか、止めるか」をサイト側が能動的に決める必要がありました。9月15日以降、対象となるサイトでは、何もしなければ広告面が AI 用途のクローラーから守られる状態が出発点になります。 Cloudflare 側が挙げている背景の数字も、この変更の必然性を示しています。ボットのトラフィックは既に人間のトラフィックを上回っており、AI クローラーのトラフィックのうち半分以上は、内容が変わっていないページの再取得だといいます。つまり、サーバー負荷の相当部分が、新しい情報を取りに来ていないアクセスによって発生しているということです。 ## Pay Per Crawl から Pay Per Use へ もうひとつの動きが、課金モデルの前進です。 Cloudflare が先行して提供してきた Pay Per Crawl は、クロール(取得)の回数に対して課金する仕組みでした。これが Pay Per Use へと拡張されつつあります。取得したかどうかではなく、そのコンテンツが実際にどう使われたかに応じて支払いが発生する設計です。具体的には、AI の回答結果に自社のコンテンツが現れたときや、エージェントが特定のタスクのために有料の情報を購入したときに、支払いが発生します。初期のパートナーとして Ceramic.ai と You.com が挙げられています。 これは、メディアにとって意味の異なる転換です。クロール課金は、言ってしまえば通行料です。使われ方の価値とは無関係に、アクセスの回数で決まります。一方、使用ベースの課金は、自社コンテンツが AI の回答のなかでどれだけ機能したかに連動した収益になります。後者が成立するなら、「引用されやすいコンテンツ」への投資が、直接の収益として跳ね返る構造が生まれます。 ただし、これはまだ立ち上がりの段階です。パートナーの数も、単価の水準も、公開されている情報は限られます。過度な期待は禁物ですが、方向としては、AI 経由の露出を計測して収益化する市場が形になりつつある、と見るのが妥当です。 ## Stack Overflow は実際にどう入れたか 概念だけでは判断できないので、実装した側の記録を見ます。Stack Overflow は2026年2月、Cloudflare と組んで Pay Per Crawl を導入した経緯を[公開しています](https://stackoverflow.blog/2026/02/19/stack-overflow-cloudflare-pay-per-crawl/)。 同社が挙げている動機は明快です。従来の「開放するか、遮断するか」の二択が機能しなくなった、という認識です。ボットは正規のトラフィックを装うほど高度になり、ブロックリストの維持は追いつかない。しかも広告のインプレッションを消費していく。この状態で、コミュニティのためのアクセスは保ちながら、商用の学習利用からは対価を得たい、という要求に応える手段が必要でした。 実装は、Cloudflare のボット分類と WAF ルールの上に構築されています。特徴的なのは、アクセスを単純に拒否するのではなく、HTTP 402(Payment Required)を返す設計です。 そして興味深いのが初期の観測結果です。Pay Per Crawl を有効にしたところ、402 を受け取った時点でトラフィックの送信を止めたボットがあった、と同社は報告しています。つまり、支払ってでも取りに来る相手と、無料でなければ来ない相手が、この時点で分かれたということです。同社自身、これを「収益化の仮説を検証する実験」と位置づけています。 Cloudflare の担当者の言葉として引用されているのは、自分のコンテンツに何が起きるかは自分が決められるべきだ、という趣旨のものです。Stack Overflow 側は、大がかりな個別契約を経ずに自社の条件でアクセスを開放できる点に価値を見ています。この「大型ライセンス契約か、無防備な開放か」の中間を作る、という位置づけが、多くのメディアにとっての実際的な意味だと思います。 ## RSL という別の系統 同じ問題に、別のアプローチで取り組んでいるのが RSL(Really Simple Licensing)です。コンテンツのライセンス条件を機械可読な形で提示し、条件を満たすかどうかでクローラーのアクセスを制御する標準で、[The Register の報道](https://www.theregister.com/software/2025/09/11/new-rsl-spec-wants-ai-crawlers-to-show-a-license-or-pay/1292571)によれば、新設の非営利団体 RSL Collective が運営しています。参加企業には O'Reilly Media、Reddit、Yahoo、Ziff Davis、Medium、wikiHow などが並び、Fastly や Quora は Collective には参加せず支持を表明する立場です。 robots.txt との違いは、RSL がボットに対して認可ヘッダーの提示を求める点にあります。robots.txt は守る相手にしか効かない宣言でしたが、RSL は交渉の手続きを仕様として定めています。 ただし、実際に止められるかどうかは別の話です。同記事では、RSL の実効性が Fastly、Akamai、Cloudflare といった CDN 側の執行に依存することが指摘されています。共同創設者の言葉としても、ルールに従わない事業者は当然いるという前提のうえで、大手 AI 企業の多くは公正な対価の必要性を理解しているはずだ、という見通しが語られています。 整理すると、両者は競合ではなく層が違います。RSL が条件の提示と交渉の共通言語をつくり、CDN 側の仕組みがその執行を担う。メディアから見れば、どちらか一方を選ぶ話ではなく、条件を決める作業と、経路上で守らせる手段を確保する作業の両方が必要になります。 ## 日本のメディア事業者が確認すべき5点 ここからは、キメラとして実務に落とした場合の論点です。 1. 自社サイトが Cloudflare の経路上にあるか、そして既定変更の対象になるか 9月15日の既定変更は、新規顧客・新規サイト・無料プランが対象です。既存の有料契約で運用中のサイトは、自動的に設定が変わるわけではありません。まず自社がどの立場にあるかを確認してください。CDN が別ベンダーであれば、そのベンダーの同種の機能の有無を確認することになります。 2. robots.txt の記述だけで方針を語らない 多くのメディアの AI 方針は、robots.txt に書いた許可・不許可で表現されています。これは宣言であり、経路上の強制ではありません。方針として何を許し何を許さないのかと、技術的に何が強制できるのかを、分けて把握しておく必要があります。 3. 検索クローラーを巻き込まない設計にする これが最も事故が起きやすい点です。用途が混在したクローラーへの対応を誤ると、検索の露出まで落とすことになります。Google の場合、検索用の Googlebot と、学習用途をオプトアウトできる Google-Extended が分かれています。この構造を理解しないまま一律に遮断すると、減っている検索流入をさらに自ら削ることになります。 4. 広告面とコンテンツの切り分けを決める Cloudflare の既定変更が広告掲載ページを起点にしているのは示唆的です。広告で収益を得ているページを、対価なしに AI の学習・エージェント利用に供する必然性はない、という考え方です。自社のどのページが広告面で、どのページが会員向けで、どこまでを開放するのか。この線引きは技術判断ではなく、事業判断です。 5. 「いくらなら通すか」を決める材料を持つ Pay Per Use のような仕組みが立ち上がったとき、単価を決める根拠が必要になります。自社コンテンツが AI の回答にどれだけ現れているか、そこからどれだけの再訪や登録が生まれているかを、事前に計測しておくことが交渉材料になります。この計測の話は別稿で扱います。 ## 私見:これは「守り」ではなく価格形成の話 この一連の動きを、AI から自社を守る防御策として捉えると、判断を誤ると考えています。 無料で無制限に開放するか、完全に遮断するかの二択しかなかった状態では、コンテンツの価格は0か無限大しか存在しませんでした。価格が存在しない市場では、交渉も、投資判断も成立しません。Cloudflare の仕組みも RSL も、その中間に価格をつけるための装置です。 価格がつくと、次に問われるのは「自社のコンテンツはいくらなのか」です。ここで効いてくるのが、AI が再現しにくい一次情報を持っているかどうか、その情報が実際に引用されているかどうか、という点です。結局、[AI 時代の編集投資の話](/posts/dnr-2026-editorial-investment-shift)に戻ってきます。 なお、ximera.com 自身は現時点で、検索エンジンにも AI クローラーにも開放する方針を robots.txt に明示しています。キメラの事業は、コンテンツの閲覧課金ではなく、メディアのデータ活用支援にあるためです。方針は事業モデルによって変わります。他社の設定をそのまま真似ることには意味がありません。 ## 参考 - [Cloudflare's new policy pushes AI companies to pay for publishers' content(TechCrunch, 2026年7月1日)](https://techcrunch.com/2026/07/01/cloudflares-new-policy-pushes-ai-companies-to-pay-for-publishers-content/) - [Why Stack Overflow and Cloudflare launched a pay-per-crawl model(Stack Overflow Blog, 2026年2月19日)](https://stackoverflow.blog/2026/02/19/stack-overflow-cloudflare-pay-per-crawl/) - [New RSL spec wants AI crawlers to show a license or pay(The Register, 2025年9月11日)](https://www.theregister.com/software/2025/09/11/new-rsl-spec-wants-ai-crawlers-to-show-a-license-or-pay/1292571) --- ## AI ライセンスの実額と、1,700対1という非対称 — 契約が取れても流入は戻らない URL: https://ximera.com/posts/ai-licensing-deals-reality 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: News Corp と OpenAI の5年2億5,000万ドル、Thomson Reuters の3,300万ドル。Digital Content Next がまとめた AI ライセンスの実額と、OpenAI で1,700ページに1回というクロール対クリック比を読み解く。ライセンス済みのパブリッシャーですらクリック率が8.8%から1.3%へ落ちた事実が意味するものを整理する。 AI 企業とのライセンス契約は、いくらで成立しているのか。そして契約を結んだメディアには、何が起きているのか。 Digital Content Next(DCN)が2026年6月9日に公開した[分析](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/06/09/mapping-publisher-value-in-the-ai-marketplace/)(Rande Price 氏、DCN リサーチ担当VP)に、この2つの問いに答える数字が並んでいます。日本ではあまり紹介されていない内容なので、要点を整理し、そこから読み取れることを述べます。 ## 契約は「数十社」の世界 まず市場の規模感です。 - OpenAI がパブリッシャーと結んだ契約は約35件 - Perplexity は約20媒体 - Microsoft の Publisher Content Marketplace に招待されたのは8社 世界に無数にあるメディアのうち、直接契約に到達しているのは数十社です。この時点で、大半のメディアにとって「AI ライセンス収益」は現実の選択肢ではありません。 ## 実額 公開されている契約額は次のとおりです。 | 当事者 | 金額 | |---|---| | News Corp と OpenAI | 5年で2億5,000万ドル | | Thomson Reuters | AI ライセンス収益として3,300万ドル | | People Inc. と OpenAI | 年間1,600万ドル以上 | | Amazon と New York Times | 年間およそ2,000万ドル | 大きな数字に見えます。ただし、これらは世界最大級の報道機関の数字です。News Corp の5年契約を年額に均せば5,000万ドル。同社の事業規模から見れば、屋台骨になる金額ではありません。 つまり現状の AI ライセンスは、大手にとっては補助的な収入、中小にとっては存在しない収入、という分布です。 ## 契約しても、クリックは戻らない この分析でもっとも重要なのは、次の数字だと考えています。 2025年のクリック率の変化として、ライセンス契約を結んだパブリッシャーで8.8%から1.3%へ、契約のないパブリッシャーで0.8%から0.27%へ低下したことが示されています。 契約の有無にかかわらず、クリックは落ちています。しかも、もともと高かったライセンス済みの側のほうが、下落幅は大きい。 ここから言えることは明確です。ライセンス契約は、流入の減少を止める手段ではありません。流入とは別の対価として設計されている、ということです。 「AI 企業と組めば、引用元として送客してもらえる」という期待は、この数字を見るかぎり成立していません。 ## クロール対クリックの桁が違う もうひとつ、構造を示す数字があります。何ページ分のクロールに対して1回の参照が返ってくるか、という比率です。 | AI 事業者 | クロール対クリック比 | |---|---| | Perplexity | 369ページに1回 | | OpenAI | 1,700ページに1回 | | Anthropic | 約73,000ページに1回 | 事業者によって2桁の差があります。そして最も送客する Perplexity でも、369ページ読まれて1回です。 これは製品の設計思想の違いを反映していると考えられます。回答のなかで出典に誘導する設計か、回答を完結させる設計か。どちらが正しいという話ではなく、メディア側から見れば、相手によって「読まれ方」の意味がまったく違うということです。 自社サイトへのクローラー別のアクセスを分類していないと、この違いは見えません。[AI 経由トラフィックの実像](/posts/ai-referral-traffic-reality)で書いた分類の話は、ここにも効いてきます。 ## DCN の主張:対価は「検索の代替」で測るべきではない 同分析の中心的な論点は、パブリッシャーのコンテンツが AI システムの複数の層で価値を生んでいる、というものです。 具体的には、モデルの学習、ファインチューニング、事実の裏づけ、最新情報へのアクセス、回答の信頼性。これらすべてにコンテンツが寄与しているのに、検索的な参照(retrieval)だけを基準に対価を計算すると、貢献を大幅に過小評価することになる、という主張です。 この整理には説得力があります。上で見たクリック率の低下は、裏を返せば「コンテンツは使われているが、参照としては現れていない」状態です。参照回数を基準にした対価計算は、この使われ方を捕捉できません。 ## 収益化の実務は、まだ分断されている もう1本、DCN が2026年4月6日に公開した[論考](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/04/06/turning-ai-content-usage-into-revenue/)(Supertab の Joseph Varvara 氏)は、実務側の課題を指摘しています。 AI による利用を検知できるようになった一方で、それを収益に変える工程が分断されている、という指摘です。分析、法務、営業、経理がそれぞれ別に動いており、コンテンツへのアクセスを請求可能な事象に変換する統合された仕組みがない。結果として、AI 収益化の取り組みは断片的で、規模を出せないままになっています。 同論考が挙げる必要な要素は4つです。AI トラフィックの識別と分類、ライセンスモデルの柔軟な試行、利用から請求事象への変換、そして決済と収益の分配。 この4つを自社で構築できるメディアは、ほとんどないはずです。だからこそ、[Cloudflare や RSL のような共通基盤](/posts/ai-crawler-payment-infrastructure)に乗るかどうかが、現実的な判断になります。 ## 日本のメディアにとっての実務 以上を踏まえた提案です。仮説を含みます。 第一に、直接契約を目標に置かないことです。契約に到達しているのは世界で数十社であり、そこを目指す戦略は大半のメディアにとって現実的ではありません。目指すべきは、共通基盤が整ったときに条件を提示できる状態を作っておくことです。 第二に、自社のクロール対クリック比を測ることです。どの事業者が、どれだけ読み、どれだけ返しているか。この数字は交渉材料であると同時に、アクセス方針を決める根拠にもなります。ほとんど返さない相手に無制限で開放している状態は、少なくとも意識的な判断であるべきです。 第三に、対価の根拠を「参照数」以外にも持つことです。DCN の指摘のとおり、コンテンツは参照されない形でも使われています。自社の一次情報がどれだけ独自か、どれだけ更新されているか、どれだけ他で代替できないか。この説明ができるかどうかが、価格を語れるかどうかを分けます。 ## 私見:これは「分配の交渉」の始まりにすぎない 現在の契約額を見て、AI ライセンスを新しい収益の柱と呼ぶのは早いと考えています。金額の分布は極端に偏っており、しかも流入の減少を補償するものではありません。 ただし、価格が提示されはじめたこと自体には意味があります。無償で使われていた状態から、数十社とはいえ有償の取引が成立する状態に移った。次の論点は、その取引が数十社から数千社に広がるかどうかであり、そこは技術ではなく、共通基盤と業界の交渉力の問題です。 日本のメディアがこの交渉に参加できるかどうかは、個社の努力より、業界としてどう振る舞うかに依存する部分が大きいはずです。 ## 参考 - [Mapping publisher value in the AI marketplace(Digital Content Next, 2026年6月9日)](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/06/09/mapping-publisher-value-in-the-ai-marketplace/) - [Turning AI content usage into revenue(Digital Content Next, 2026年4月6日)](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/04/06/turning-ai-content-usage-into-revenue/) --- ## AI 流入は「小さくて、濃くて、浅い」 — Chartbeat と Reuters Institute の数字で KPI を立て直す URL: https://ximera.com/posts/ai-referral-traffic-reality 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 検索流入は小規模メディアで60%減、一方でチャットボット経由の参照は全体の1%未満。Chartbeat が Axios に提供したデータと Reuters Institute の Digital News Report 2026 を突き合わせ、AI 経由トラフィックの実像と、流入量に依存しない KPI の組み直し方をキメラの視点で整理する。 「AI に流入を奪われた」という言い方は、事実の半分しか捉えていません。奪われたのは検索流入であり、AI が返してよこしている流入は、まだ驚くほど小さい。しかも小さいなりに、質の面では独特の癖があります。 この非対称を数字で把握しないまま KPI を組み直すと、追う指標を間違えます。本稿では、公開されている一次データを突き合わせて実像を確認し、そこから KPI の設計に落とします。 ## 数字1:減り方は、規模によってまったく違う Chartbeat が Axios に提供し、2026年3月17日に報じられたデータでは、検索エンジンからの参照トラフィックの変化(2024年12月と2025年12月の比較)が、サイト規模別に整理されています。 | 規模(日次ページビュー) | 検索参照の変化 | |---|---| | 1,000-10,000(小規模) | 60%減 | | 10,000-100,000(中規模) | 47%減 | | 100,000以上(大規模) | 22%減 | 同期間の内訳では、Google 検索が34%減、Google Discover が15%減です。 この表がいちばん重要だと考えています。業界の平均値を見ているかぎり「3割減った」という話になりますが、実際には規模によって影響がまるで違う。日次1万ページビュー未満の事業者にとっては、事業の存続に関わる水準の減少です。逆に大規模メディアの22%減は、痛いものの、他チャネルで吸収できる範囲かもしれません。 自社がどの帯にいるかで、取るべき打ち手の緊急度が変わります。平均の数字を自社に当てはめて安心するのが、いちばん危険な読み方です。 なお Reuters Institute も、Chartbeat のデータとして、2024年11月から2025年11月にかけてニュースサイトへの Google 自然検索流入がグローバルで33%、米国で38%減少したと[報告しています](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2026)。集計期間が違うため数字は一致しませんが、傾向は同じ方向です。 ## 数字2:チャットボット経由は、まだ1%に満たない 同じ Chartbeat のデータで、チャットボット経由の参照はページビュー参照全体の1%未満とされています。ChatGPT からの参照は同期間に200%以上増えましたが、増加率が高いのは母数が極小だからです。 ここから導かれる結論は単純です。検索が失ったぶんを、チャットボット経由の流入が埋めることは、現時点では起きていません。 この点を曖昧にしたまま「AI に最適化すれば流入が戻る」と説明する提案には、私は懐疑的です。GEO(生成エンジン最適化)に価値がないという意味ではありません。ただし、それを短期の流入回復策として売るのは、数字の裏づけを欠いています。 ## 数字3:利用者の側では、AI はすでに1割に届いている 供給側の流入データと、需要側の利用実態は分けて見る必要があります。 Reuters Institute の Digital News Report 2026(48市場、各市場およそ2,000人、総回答者97,520人、調査期間は2026年1月から3月)によれば、ニュースのために週1回以上 AI チャットボットを使う人は、グローバルで10%(前年7%)。35歳未満では16%です。市場差も大きく、韓国は14%で前年から倍増、ギリシャも12%で倍増、一方で英国は4%と調査内で最低でした。 利用は増えているのに、メディアへの流入は1%未満。この差が、いま起きていることの本質です。人々は AI で情報に触れていて、そこから元記事へは来ていない。 同調査では、AI チャットボットが返す回答を信頼すると答えた人は20%で、ニュース全般への信頼37%より低い水準にとどまります。信頼していないが、使ってはいる、という状態です。 ## 数字4:AI 経由の読者は「確認しに来ている」 質の話に入ります。Chartbeat のデータでは、ニュースサイトは AI からの参照を最も多く受け取っている一方で、記事あたりのエンゲージメントは最も低い、という観測が示されています。報道では、チャットボット上のニュース引用が、事実確認や文脈の把握といった短時間の用途で使われている可能性が指摘されています。 つまり AI 経由の読者は、少なく、意図が明確で、そして滞在が短い。「濃い」と「浅い」が同居しています。 この性質は、KPI に直結します。AI 経由の流入を、検索流入と同じ物差し(記事あたりの滞在、回遊、広告インプレッション)で評価すると、当然のように成績が悪く見えます。評価の軸を変えないかぎり、AI 経由の価値は過小評価されつづけます。 ## KPI をどう組み直すか ここからはキメラとしての提案です。以下は仮説を含みます。 まず、流入量を最上位の KPI から外すことです。検索流入は構造的に減りつづけており、その総量を目標に置くかぎり、達成不能な目標を追い続けることになります。Reuters Institute の調査では、世界の編集トップ280人が、今後3年で検索参照が40%以上減ると予測しています。前提が変わったのだから、目標も変えるべきです。 そのうえで、3階建ての KPI を提案します。 第1階:到達の質。流入量ではなく、流入したセッションのうち、記事を最後まで読んだ割合、2ページ目に進んだ割合を見ます。Chartbeat のデータでは、2ページ読む読者は1ページの読者に比べて再訪の確率が2.75倍という分析もあります([該当記事](/posts/f3ddc7c786))。回遊は、AI 時代における最も安価な打ち手です。 第2階:関係の獲得。ニュースレター登録、アカウント作成、アプリインストール、ブックマーク。プラットフォームを経由しない接点をどれだけ作れたかを、月次で見ます。ここが AI 経由の少数の訪問者を評価する主軸になります。少なくても、目的を持って来た読者の登録率は高いはずで、実際 AI 経由の流入は転換の質が高いという観測もあります。 第3階:引用のシェア。自社のコンテンツが AI の回答にどれだけ現れているかを、定点で計測します。現時点では計測手段が限られますが、この指標は今後、[AI クローラーの課金インフラ](/posts/ai-crawler-payment-infrastructure)が立ち上がったときに、そのまま価格交渉の材料になります。 ## 計測の実務的な注意 - チャットボット経由のトラフィックは、リファラが欠落したり、直接流入として記録されたりします。既存の流入元分類のままでは、AI 経由が「直接」に紛れ込みます。分類ルールの見直しが先です - 自己申告ベースの調査データ(DNR の10%など)と、サイト側のログデータ(Chartbeat の1%未満)は、測っているものが違います。利用率と流入率を同じ表に並べないでください - 規模帯によって減少幅が違う以上、業界平均との比較には意味が乏しくなっています。自社の過去データとの比較を基準にしてください ## 日本のメディアにとっての含意 Digital News Report 2026 で、日本はニュースサイトやアプリの利用がソーシャルメディアを上回る、アジアでは数少ない市場のひとつとして挙げられています。自社サイトへの直接的な接点が、まだ相対的に強く残っているということです。 これを猶予と捉えるか、遅れと捉えるかで打ち手が変わります。私は猶予だと考えていますが、猶予とは時間差にすぎません。英語圏で2年かけて起きた変化が、日本で起きないと考える理由は見当たらない。差があるうちに、流入量に依存しない関係を作れるかどうかが分かれ目になります。 ## 参考 - [Search Referral Traffic Down 60% For Small Publishers, Data Shows(Search Engine Journal)](https://www.searchenginejournal.com/search-referral-traffic-down-60-for-small-publishers-data-shows/569959/)(原典は Chartbeat のデータを Axios が2026年3月17日に報道) - [Digital News Report 2026 Executive Summary(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026/dnr-executive-summary) - [Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2026) --- ## Capital B、3番目の地域ニュース拠点開設へ:地域メディア戦略の深層分析 URL: https://ximera.com/posts/capital-b-3 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Capital Bの地域ニュース拠点拡大戦略を深掘りし、デジタル時代の地域メディアが直面する課題と、持続可能なビジネスモデル構築のための戦略的打ち手を分析。日本の地域メディアへの示唆も提示する。 米国のデジタルニュース組織であるCapital Bが、その3番目となる地域ニュース拠点の開設準備を進めているという報道は、現代の地域メディア戦略における重要な動向を示唆する。特に、最初の拠点から約2時間東に位置する場所への展開という地理的選択は、単なる拡大に留まらない、より戦略的な意図が背景にあると考えられる。 ## 地域メディアの現状と戦略的課題 ### 「ニュース砂漠」の拡大と情報格差 近年、デジタル化の進展と広告収入モデルの変化により、多くの地域紙が廃刊や規模縮小に追い込まれ、「ニュース砂漠」と呼ばれる地域が増加している。これにより、地域住民は市政、教育、環境問題など、生活に直結する重要な情報へのアクセスを失い、民主主義の基盤が揺らぎかねない状況にある。この情報格差は、特に社会的に脆弱なコミュニティにおいて深刻な影響を及ぼす。 ### デジタルシフトと収益モデルの再構築 既存の地域メディアは、紙媒体からデジタルへの移行に苦慮し、新たな収益モデルの確立が急務となっている。サブスクリプション、会員制、寄付、イベント開催など、多様なアプローチが試みられているが、持続可能なビジネスモデルを確立するには、コンテンツの質と地域コミュニティとのエンゲージメントが不可欠である。 ## Capital Bの拡大戦略が示唆するインサイト Capital Bが3番目の地域拠点を、既存の拠点から地理的に近い場所に設定したことは、地域メディアの拡大戦略においていくつかの重要なインサイトを提供する。 ### 地理的近接性に基づく展開の意義 最初の拠点から「約2時間東」という立地は、単なるランダムな選択ではなく、意図的な戦略的判断に基づいている可能性が高い。これは、以下の利点をもたらすと考えられる。 ・ブランド認知と信頼の継承: 既存拠点での成功とブランド認知を、地理的に近い新たな地域へ比較的容易に波及させることが可能となる。これにより、ゼロからの立ち上げよりも効率的にコミュニティの信頼を獲得できる。 ・運営リソースの共有と効率化: 編集、技術、営業、管理などのバックオフィス機能を既存拠点と共有することで、新規拠点の立ち上げコストを抑制し、運営効率を高めることができる。記者や編集者の交流も促進され、ノウハウの共有が進む。 ・地域間の連携と広域報道の可能性: 近接する地域間で共通の課題やテーマが存在する場合、複数の拠点が連携して広域的な調査報道や特集記事を制作することが可能となる。これにより、個々の地域では扱いきれないスケールの大きな問題にも対応できる。 ### コミュニティへの深掘りと専門性の追求 地域メディアの成功は、その地域コミュニティのニーズにどれだけ深く応えられるかにかかっている。Capital Bの戦略は、特定の地域に特化し、その地域の住民が真に必要とする情報を提供することで、競合との差別化を図る狙いがあると考えられる。これは、単にニュースを配信するだけでなく、コミュニティの課題解決に貢献する「ソリューション・ジャーナリズム」の実践にも繋がり得る。 ## 地域メディアの持続可能性に向けた戦略的打ち手 ### データ主導のコンテンツ戦略 読者の行動データや地域社会の統計データを分析することで、どのようなコンテンツが求められているのか、どのトピックが関心を集めているのかを把握し、コンテンツ制作に反映させる。これにより、読者エンゲージメントを最大化し、サブスクリプションや寄付への転換率を高めることが可能となる。 ### コミュニティ・エンゲージメントの強化 地域住民との対話、イベント開催、市民記者プログラムの導入などを通じて、メディアとコミュニティの間の双方向の関係を構築する。これにより、メディアが単なる情報発信源ではなく、地域社会のハブとしての役割を担うことができる。 ### 多様性への対応とインクルージョン 地域社会の多様な声を拾い上げ、異なる背景を持つ住民が共感できるコンテンツを提供することは、メディアの信頼性と影響力を高める上で不可欠である。特に、これまで報道されにくかったマイノリティの声に光を当てることは、地域社会全体の包摂性を高めることに貢献する。 ## 日本の地域メディアへの示唆 Capital Bの戦略は、日本の地域メディア、特に人口減少と高齢化が進行する地域にとって、重要な示唆を与える。 ### 地域特性に応じた「選択と集中」戦略 広大なエリアにおいて、すべての市町村を網羅することはリソース的に困難である。Capital Bの事例は、特定の地域に焦点を絞り、その地域で深く根を張る「選択と集中」戦略の有効性を示唆する。例えば、特定の産業(農業、観光など)や社会課題(過疎化、医療アクセスなど)に特化した報道を展開することで、地域住民にとって不可欠な情報源となることが可能である。 ### デジタル技術を活用した効率的な情報伝達 広域にわたる地域では、デジタルプラットフォームを活用した情報伝達が不可欠である。リアルタイムでのニュース配信、オンラインイベント、SNSを通じたコミュニティ形成など、デジタル技術を最大限に活用することで、地理的な制約を超えた情報共有と住民間のコミュニケーションを促進できる。また、AIを活用したコンテンツ生成支援やデータ分析により、限られたリソースで高品質なコンテンツを効率的に制作する打ち手も考えられる。 ### 新たな収益モデルと地域連携の模索 広告収入に依存しない、持続可能な収益モデルの確立が急務である。地域住民からの寄付や会員制、地域企業との協賛、クラウドファンディングなど、多様な資金調達方法を模索すべきである。また、地方自治体、大学、NPO、地域企業などとの連携を強化し、共同で地域課題解決に取り組むことで、メディアの存在意義を高め、新たな価値を創出することが可能となる。 ## 結論 Capital Bの地域ニュース拠点拡大は、単なる組織の成長以上の意味を持つ。それは、デジタル時代における地域メディアの役割、持続可能なビジネスモデル、そして地域コミュニティとの新たな関係性の構築に向けた戦略的なアプローチを提示している。日本の地域メディアにおいては、この事例から学び、地域特性に応じた「選択と集中」、デジタル技術の積極的な活用、そして多様な主体との連携を通じて、新たな価値を創造し、地域社会の活性化に貢献する戦略を構築することが求められる。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/capital-b-is-ready-to-open-a-third-local-news-operation-about-two-hours-east-of-its-first-one/ --- ## 「AI が再現できない仕事」に資源を移す — 世界280人の編集トップが示した投資配分と、日本の編集部への翻訳 URL: https://ximera.com/posts/dnr-2026-editorial-investment-shift 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Reuters Institute の2026年調査で、51カ国280人の編集トップが示した投資配分は明快だった。現場取材+91、文脈分析+82、人間中心の物語+72、一方で一般ニュース-38、サービスジャーナリズム-42。この配分の論理を読み解き、日本の編集部にそのまま持ち込めるものと、持ち込むべきでないものを分けて整理する。 予算の議論は、増やす話より減らす話のほうが本質を示します。 Reuters Institute が2026年1月に公表した「Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026」は、51の国と地域から280人の編集責任者・経営層(編集長、CEO、デジタル責任者など)に対して、2025年11月18日から12月20日にかけて実施した調査です。そこで示された投資配分は、AI 時代のニュース編集がどこに賭けようとしているかを、増減の両側から示しています。 本稿ではこの配分を読み解き、日本の編集部にそのまま持ち込めるものと、持ち込むべきでないものを分けます。 ## 増やすもの、減らすもの コンテンツ種別ごとの投資意向は、「増やす」と「減らす」の差分(ネット)で示されています。 | コンテンツ種別 | ネット差分 | |---|---| | 現場での取材 | +91 | | 文脈を与える分析 | +82 | | 人間を中心に据えた物語 | +72 | | 一般ニュース | -38 | | サービスジャーナリズム | -42 | 上の3つと下の2つを分けている基準は、ひとつだと思います。チャットボットが代替できるかどうかです。 すでに公開されている情報を整理して伝える一般ニュースは、生成 AI がもっとも得意とする領域に重なります。同じ出来事を各社が横並びで報じる構造では、読者が自社を選ぶ理由が生まれません。逆に、現場に足を運ばなければ得られない情報、専門知識がなければ書けない文脈、特定の人物の生活に踏み込んだ物語は、AI が既存の文章から合成することができません。 つまりこの配分は、「AI に代替されないものへの投資」と一括りにするより、「AI が合成できない一次情報の獲得コストを、自社で負担する側に回る」という意思表示として読むのが正確です。 ## この配分は、痛みを伴う 注意すべきは、上の3つが例外なく高コストだという点です。 現場取材は、移動と時間と人件費がかかります。文脈分析には、その領域を長く追ってきた書き手が要ります。人間中心の物語は、取材対象との関係構築に時間がかかります。いずれも、単位あたりの本数で見れば非効率です。 その原資はどこから出るのか。答えが、-38 と -42 です。減らす側の削減で、増やす側を賄う構造になっています。 この点を曖昧にしたまま「これからは調査報道だ」と言うと、現場には増やす話だけが降りてきて、減らす決断は誰もしないという最悪の形になります。実行するなら、やめるものを先に決めるべきです。 ## 収益とチャネルの優先順位 同じ調査から、収益源とプラットフォーム戦略の数字も見ておきます。 収益の優先順位は、サブスクリプション・会員が76%、ディスプレイ広告が68%、ネイティブ広告が64%、イベントが54%、プラットフォームとのライセンス契約が37%でした。 プラットフォームへの注力度(ネット差分)は、YouTube が+74、AI プラットフォームが+61、TikTok が+56。一方で X が-52、Facebook が-23、そして従来型の SEO が-25 です。 SEO が明確なマイナスに転じている点は、前項の投資配分と整合しています。検索経由での一般ニュースの露出を最大化する戦略から降り、AI プラットフォーム上での存在感と、動画プラットフォームでの直接的な接点に賭ける、という構図です。同調査では、今後3年で検索参照が40%以上減るという予測も示されています。 ## 自信の数字が示す構造 もうひとつ、印象的な数字があります。 ジャーナリズム全体の先行きに自信があると答えたのは38%で、2022年から22ポイント下がっています。ところが自社の事業見通しについては53%が自信を示しています。 業界には悲観的だが自社は何とかなる、という認識です。この乖離は、統合が進む局面で典型的に現れます。全員が生き残る前提を置いていない、ということでもあります。 ## 日本の編集部にどう翻訳するか ここからはキメラとしての解釈です。仮説を含みます。 そのまま持ち込めるのは、一般ニュースの相対的な縮小です。日本でも、通信社配信と各社の記事が横並びになる領域で、自社サイトを選ぶ理由は年々弱くなっています。ここに人を張りつづける合理性は薄れています。 一方で、サービスジャーナリズムの-42 を、日本の編集部がそのまま採用すべきかは、慎重に考えるべきだと思います。 欧米の調査でこの数字が出ている背景には、生活実用情報の領域が、検索と AI 回答にもっとも侵食されやすいという判断があるはずです。「確定申告のやり方」のような普遍的な手順情報は、たしかに AI が十分に答えられます。 しかし日本の地域メディアや専門メディアが持つ生活情報は、性質が違います。その地域の制度運用、実際の窓口の対応、季節ごとの実務。こうした情報は、公開データとして存在していないか、存在していても最新でないことが多い。AI が合成できないという意味では、むしろ現場取材と同じ側に属します。 つまり、-42 を「生活情報から撤退せよ」と読むと、日本では判断を誤る可能性があります。読むべきは「どこにでもある生活情報から撤退せよ」であって、「自社にしか書けない生活情報」は増やす側の3項目に含まれる、と整理するのが実態に合っていると考えます。 この読み替えは、キメラが道北の地域メディアに関わるなかでの実感にもとづく仮説であり、大規模な検証を経たものではありません。 ## AI 活用の現在地 同調査では、AI に関する数字も示されています。バックエンドの自動化を重要と評価したのが97%。一方で、編集部門での AI 活用の取り組みを「有望」と評価したのが44%、「限定的」が42%と割れています。そして、AI による効率化を理由とする人員削減はなかったと答えた組織が67%でした。 裏方の自動化には合意があり、編集の中核での成果はまだ評価が定まっていない。効率化はしたが、それを人減らしには使っていない。この3つの数字は、AI 投資の現実的な位置づけを示しています。効率化で浮いた時間を、上で見た「増やす側」に振り向けられるかどうかが、次の1年の分かれ目になります。 ## 読者側の数字と突き合わせる 最後に、同じ Reuters Institute の Digital News Report 2026(48市場、97,520人、2026年1月から3月調査)から、供給側の意思と需要側の実態を突き合わせておきます。 - オンラインのニュース動画を週1回以上見る人は77%。一方、自社サイト上での動画視聴は23%で、2021年から5ポイント低下している - ニュースへの関心が「非常に高い」「高い」と答えた人は46%で、2021年から13ポイント低下 - ニュースへの信頼は37%で、2015年の計測開始以来もっとも低い水準 動画の需要はあるが、その視聴は自社サイトの外で起きている。関心と信頼は下がりつづけている。この環境で、現場取材と文脈分析に賭けるという判断は、合理的だと思います。関心が薄れている読者を引き戻せるとしたら、それは他所で読めない情報だけだからです。 ## 参考 - [Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2026) - [Digital News Report 2026 Executive Summary(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026/dnr-executive-summary) --- ## ライブイベントを通じたオーディエンスと収益の構築:非営利ニュース組織が示す戦略的示唆 URL: https://ximera.com/posts/live-event-audience-revenue-strategy 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 非営利ニュース組織がライブイベントを通じてオーディエンスと収益を構築する戦略をNieman Labの記事から考察。地域メディアが持続可能なジャーナリズムを確立するための具体的な打ち手を提示。 メディア業界は、デジタル化の進展と収益モデルの多様化という二重の課題に直面している。特に非営利のニュース組織にとって、持続可能な運営基盤の確立は喫緊の課題である。このような状況下で、ライブイベントは単なる情報発信の場を超え、オーディエンスとのエンゲージメント深化、コミュニティ形成、そして新たな収益源確保のための強力な戦略的ツールとして注目を集めている。 Nieman Labの記事は、非営利ニュース組織がライブイベントを通じてオーディエンスを構築し、収益を向上させるための具体的なアイデアを示唆している。これらの示唆は、日本の地域メディアにおいて、新たな打ち手となり得る。 ## ライブイベントが持つ戦略的価値 ライブイベントは、デジタルコンテンツが主流となる現代において、物理的または仮想的な空間で人々が直接交流する機会を提供する。この直接的な接触は、メディアとオーディエンス間の信頼関係を強化し、ブランドロイヤルティを醸成する上で極めて有効である。また、イベント参加者からのフィードバックは、編集戦略やコンテンツ開発における貴重なインサイトとなり、データ主導の意思決定を可能にする。 ### オーディエンスエンゲージメントの深化 イベントは、読者が記事の内容について深く議論したり、専門家と直接対話したりする場を提供する。これにより、受動的な情報消費から能動的な参加へと読者の行動を促し、メディアへの帰属意識を高める。特に地域に根ざしたニュース組織にとって、地域住民が抱える課題や関心事を直接把握し、それに応えるコンテンツを企画する上で不可欠な機会となる。 ### 収益源の多様化 広告収入や寄付に依存しがちな非営利ニュース組織にとって、イベントはチケット販売、スポンサーシップ、関連商品の販売といった新たな収益チャネルを開拓する。これにより、運営の安定化とジャーナリズム活動への再投資が可能となり、持続可能なビジネスモデルの構築に寄与する。データに基づいた参加者の属性分析は、スポンサー獲得の際の強力な根拠となる。 ### コミュニティ形成とブランド価値向上 イベントは、共通の関心を持つ人々が集まるコミュニティを形成する。これにより、メディアは単なる情報提供者ではなく、地域社会のハブとしての役割を担うことができる。イベントの成功は、メディアのブランド価値を高め、社会的な影響力を拡大する効果も期待できる。 ## 非営利ニュース組織が実践するライブイベント戦略 Nieman Labの記事が示唆する、あるいは一般的に有効とされるライブイベント戦略は多岐にわたるが、ここでは特に重要な5つのアイデアに焦点を当て、その戦略的意義と具体的な打ち手を考察する。 ### 1. コミュニティに根ざした対話型イベントの開催 地域社会の課題や関心事をテーマにした対話型イベントは、オーディエンスの直接的な参加を促し、深いエンゲージメントを生み出す。例えば、地域経済、環境問題、教育、医療といったテーマについて、専門家や住民代表を招いたパネルディスカッションやタウンホールミーティングが考えられる。これにより、メディアは単方向の情報発信者ではなく、地域課題解決のためのプラットフォームとしての役割を強化できる。イベントを通じて得られたリアルタイムの意見や質問は、今後の取材テーマや記事コンテンツの企画に直結する貴重なインサイトとなる。 ### 2. 他組織との戦略的パートナーシップの構築 大学、地方自治体、地元企業、他の非営利団体などとの連携は、イベントの企画・運営におけるリソース不足を補い、より広範なオーディエンスへのリーチを可能にする。例えば、大学の研究成果発表と連携したシンポジウム、地方自治体の政策説明会と連動した住民向けワークショップ、地元企業のCSR活動と連携した地域貢献イベントなどが考えられる。パートナーシップは、イベントの信頼性と専門性を高めるだけでなく、新たなスポンサーシップや共同プロモーションの機会を創出し、収益面での貢献も期待できる。データ共有に関する合意形成も、今後の戦略立案に不可欠である。 ### 3. 多様な参加モデルと収益化戦略の導入 イベントへの参加モデルを多様化することで、より多くのオーディエンスを取り込みつつ、収益機会を最大化する。例えば、無料の基本参加枠に加え、専門家との交流会や限定コンテンツへのアクセスを含む有料のVIPチケット、イベントのアーカイブ視聴権を含むメンバーシップ制度などが考えられる。また、イベント会場での地元産品の販売や、関連書籍・グッズの販売も収益源となる。これらの収益化戦略は、オーディエンスのニーズと支払意欲をデータ分析によって把握し、最適化することが重要である。 ### 4. データに基づいたイベント企画と評価 イベントの成功は、事前の綿密な企画と事後の客観的な評価によって決まる。過去のイベントデータ(参加者数、アンケート結果、ウェブサイトのアクセス状況など)を分析し、オーディエンスの関心が高いテーマや最適な開催日時、フォーマットを特定する。イベント実施後も、参加者の満足度、エンゲージメントレベル、収益貢献度などを定量的に評価し、次のイベント企画に活かす。このデータ主導のアプローチは、イベント戦略の継続的な改善と最適化を可能にする。 ### 5. ハイブリッド型イベントによるリーチの拡大 物理的な会場での開催と同時に、オンラインでのライブ配信やオンデマンド視聴を提供するハイブリッド型イベントは、地理的な制約や移動コストの課題を克服し、より広範なオーディエンスへのリーチを可能にする。特に、遠隔地に住む人々や多忙なビジネスパーソンにとって、オンライン参加は貴重な機会となる。ハイブリッド型イベントは、リアルタイムのインタラクションとアーカイブコンテンツの両方を提供することで、多様なニーズに応え、収益機会を拡大する。技術的な安定性と高品質な配信環境の確保が成功の鍵となる。 ## 日本の地域メディアへの示唆 これらの戦略は、日本の地域メディアにおいて、大きな可能性を秘めている。広大な面積に分散した人口、高齢化の進行、そして地域経済の活性化という課題を抱える一方で、豊かな自然、独自の文化、農業・観光といった地域資源に恵まれている。 ### 地域課題への深いコミットメント 地域メディアは、地域特有の課題(例えば、過疎化、医療アクセスの問題、基幹産業の担い手不足、インフラ維持など)をテーマにしたライブイベントを企画することで、住民の当事者意識を高め、地域社会の議論を活性化できる。例えば、「地域の未来を語る会」と題し、地域経済の専門家、若手起業家、行政担当者を招いたパネルディスカッションは、新たなインサイトと具体的な解決策の発見に繋がる可能性がある。 ### 地域の特性を活かしたコンテンツ戦略 地域の豊かな自然や食文化、観光資源をテーマにしたイベントは、地域外からの参加者も呼び込み、観光振興や地域経済の活性化に貢献できる。例えば、地元の農産物を使った料理教室と連携した食育イベント、地域の観光資源の魅力を深掘りするトークイベントなどが考えられる。これらのイベントは、地域の魅力を再発見し、発信する強力なプラットフォームとなる。 ### デジタルとリアルを融合したアプローチ 広域にわたる地域では、ハイブリッド型イベントが特に有効である。主要都市でのリアルイベントと同時にオンライン配信を行うことで、遠隔地の住民や、地域に関心を持つ都市部のオーディエンスにもリーチできる。これにより、参加者の地理的制約を緩和し、より多様な意見や視点を集めることが可能となる。リアルタイムのオンライン投票やQ&A機能を活用することで、双方向性を高める打ち手も有効である。 ### 若年層・移住者層へのアプローチ 地域の未来を担う若年層や、地域への移住を検討している層をターゲットにしたイベントも重要である。例えば、地域での起業支援、Uターン・Iターン経験者との交流会、地域での働き方を紹介するキャリアイベントなどは、新たな人材の呼び込みと定着に貢献する。SNSを活用したプロモーションや、若年層に人気のインフルエンサーとのコラボレーションも効果的な打ち手となるだろう。 ## 結論:地域メディアの新たな役割と戦略的転換 ライブイベントは、非営利ニュース組織にとって、単なる収益源の多様化に留まらない、より本質的な価値を持つ戦略である。オーディエンスとの直接的な対話を通じて信頼関係を構築し、地域社会の課題解決に貢献するプラットフォームとしての役割を強化することは、メディアの存在意義を再定義する。特に、固有の課題と可能性を秘めた地域においては、これらの戦略を地域の実情に合わせて最適化し、データ主導で実行することが、持続可能な地域ジャーナリズムの未来を切り拓く鍵となる。 地域メディアは、単に情報を伝えるだけでなく、地域コミュニティを活性化し、新たな価値を創造する「触媒」としての役割を担うべきである。ライブイベントはそのための強力な「打ち手」であり、戦略的な視点と実行力をもって取り組むことで、メディアの新たな地平を切り開くことができるだろう。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/want-to-build-audience-and-revenue-through-live-events-these-five-news-nonprofits-have-some-ideas-to-get-you-started/ --- ## 読者向け AI 機能を、どの順で入れるか — 目立つ機能から入ると失敗する URL: https://ximera.com/posts/reader-facing-ai-rollout-order 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 世界280人の編集トップの調査では、バックエンド自動化を重要とする回答が97%に達する一方、編集部門での AI 活用の評価は「有望」44%と「限定的」42%に割れている。既に稼働している媒体のチャットボットは利用の定着に苦戦している。失敗コストの観点から、読者向け AI 機能の4段階の実装順序を提案する。 読者向けの AI 機能について相談を受けるとき、最初の話題はたいてい「チャットボットを作るべきか」です。目に見えて新しく、他社の事例も語りやすいためだと思います。 一方で、実装の難易度と、失敗したときに失うものの大きさで並べると、チャットボットは最後に来ます。本稿では、世界の編集現場の現在地を確認したうえで、キメラとしての実装順序を提案します。 ## 現在地:裏方には合意があり、表側は割れている Reuters Institute が51カ国280人の編集責任者・経営層に対して2025年11月から12月にかけて実施した調査から、AI に関する数字を拾います。 - バックエンドの自動化を重要と評価した回答は97% - 編集部門での AI 活用の取り組みを「有望」と評価したのは44%、「限定的」が42% - AI による効率化を理由とする人員削減はなかったと答えた組織が67% 裏方の自動化には業界の合意がある一方、読者に見える部分での成果はまだ評価が定まっていない、という状態です。 同調査は、既に稼働している媒体のチャットボットにも言及しています。Aftonbladet、VG、Financial Times などが提供していますが、利用の定着には苦戦しており、読者は自分で問いを立てるのではなく、用意された候補質問に頼る傾向がある、と指摘されています。 この観察は重要です。技術的に作れるかどうかではなく、読者がその使い方を身につけるかどうかが壁になっている、ということだからです。 ## 投資意向は動画と音声に向いている 同じ調査で、フォーマット別の投資意向(増やすと減らすの差分)は、動画が+79、音声が+71 と高い水準です。 この2つに共通するのは、既存の記事という在庫を、別の形式に変換して届ける性格を持つことです。ゼロから新しい情報を生み出すのではなく、持っているものの出し方を増やす。AI がもっとも安全に効く領域でもあります。 ## 順序を決める基準は「失敗したときに何を失うか」 実装順序を考えるとき、私は次の2つの軸で並べます。 - 材料が既に手元にあるか(新たにデータや体制を用意する必要があるか) - 失敗したときに何を失うか(工数だけで済むか、読者の信頼まで損なうか) この2軸で並べると、話題性の高さとは違う順序が出てきます。 ## 第1段階:社内業務の自動化 読者の目に触れない領域から始めます。書き起こし、タグ付け、過去記事の整理、見出し候補の生成、翻訳の下訳。 失敗しても失うのは工数だけで、読者との関係には影響しません。そして、ここで浮いた時間が、次の段階以降の原資になります。97%が重要と答えているのは、この領域です。 ## 第2段階:既存記事の在庫を再利用する機能 音声化、翻訳、要約。上で見た音声+71 の投資意向と重なる領域です。 この段階が有利なのは、材料が既にあるからです。新しい取材も、新しいデータ基盤も要りません。過去記事という在庫の価値を、別の形式で引き出すだけです。 そして重要な点として、出力が元記事に紐づいているため、誤りが起きたときの検証が容易です。音声が変なら記事と照合すればよい。翻訳が誤っていれば原文と比較できる。読者に対しても「この記事の音声版です」と説明でき、責任の所在が明確です。 日本のメディアにとっては、翻訳の優先度がグローバル平均より高くなる可能性があります。日本語で書かれた一次情報は、翻訳されないかぎり海外の AI システムからも参照されにくい。翻訳は読者向けの機能であると同時に、[AI 経由の露出](/posts/ai-crawler-payment-infrastructure)を取りにいく施策でもあります。 ## 第3段階:発見を助ける機能 推薦、関連記事、トピックのフォロー。上記調査では、コンテンツのパーソナライゼーションは既にニュースサイトで広く使われていると指摘されています。 第2段階との違いは、行動データが必要になる点です。十分な閲覧データがなければ、推薦は機能しません。また、効果の測定にも時間がかかります。導入して1週間では判断できず、回遊率と再訪率で数か月見る必要があります。 とはいえ、失敗のコストはまだ限定的です。推薦がずれていても、読者は無視するだけです。そして効果が出たときの見返りは大きい。キメラとしては、回遊の改善は AI 時代においてもっとも費用対効果の高い領域だと考えています。 ## 第4段階:対話型の機能 チャットボットを最後に置く理由は3つあります。 第一に、読者の側の信頼が追いついていません。Reuters Institute の Digital News Report 2026 では、AI チャットボットが返す回答を信頼すると答えた人は20%で、ニュース全般への信頼37%を下回ります。週1回以上ニュースのためにチャットボットを使う人は10%まで増えていますが、使われることと信頼されることは別です。この状態で自社ブランドを冠した対話型機能を出すことは、信頼のリスクを自ら引き受けることを意味します。 第二に、先行事例が利用の定着に苦戦しています。前述のとおり、既に提供している媒体でも、読者は用意された候補質問に頼りがちだと報告されています。作れば使われるという前提は成り立ちません。 第三に、費用構造です。対話型は1回のやり取りごとに推論コストが発生します。読まれるほど費用が積み上がる構造をどう設計するかを、事前に決めておく必要があります。加えて、誤った回答を自社の名前で返した場合の訂正運用、ログの監視、法務の確認まで含めた体制が要ります。 やる価値がない、という意味ではありません。順序として最後に置くべきだ、という話です。 ## 評価指標をどう置くか 最後に、実装したあとの評価について。 読者向け AI 機能の評価を「利用率」で置くと、たいてい判断を誤ります。新機能は物珍しさで一時的に使われ、その後落ちるためです。 見るべきは、その機能を使った読者が、使わなかった読者と比べて何が違うかです。再訪率、登録率、購読への転換率。差が出ていないなら、その機能は体験を良くしただけで、事業には効いていません。 そして、差が出ていないこと自体は失敗ではありません。第1段階と第2段階でやるべきことは、この検証を安く早く回せる状態を作ることです。 ## 参考 - [Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026(Reuters Institute、51カ国280人、2025年11月18日-12月20日調査)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2026) - [Digital News Report 2026 Executive Summary(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026/dnr-executive-summary) --- ## 三本目の柱をどう建てるか — 世界のパブリッシャーの収益で「その他」が25%に達した URL: https://ximera.com/posts/third-pillar-other-revenue 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: WAN-IFRA の World Press Trends Outlook 2025-2026 で、66カ国170人超の経営層が示した収益構成は、印刷43.6%、デジタル31%、その他25.4%。5年前に13.2%だった「その他」が倍増した。イベント・B2B・EC を寄せ集めではなく第三の柱として建てるための順序を、キメラの視点で整理する。 収益の多角化という言葉は、たいてい何も決めていないときに使われます。広告が減ったから他も、という話は、どの会社でも10年前から出ています。 その状況が、数字の上で変わりました。世界のパブリッシャーの収益構成において、印刷でもデジタルでもない「その他」が、すでに全体の4分の1に達しています。 ## 数字:5年で13.2%から25.4%へ WAN-IFRA の World Press Trends Outlook 2025-2026 は、66カ国の170人を超えるメディア経営層の回答をもとにした調査です。そこで示された収益構成は次のとおりです。 | 収益の柱 | 構成比 | 2021年 | |---|---|---| | 印刷(部数+広告) | 43.6% | 56.2% | | デジタル(課金+広告) | 31% | - | | その他(イベント、B2B、EC、提携など) | 25.4% | 13.2% | 5年で印刷が約10ポイント以上落ち、その他がほぼ倍増しました。同調査はこれを「三本柱モデル」の台頭として整理しています。 「その他」の内訳では、イベントを挙げた回答者が32.2%でもっとも多く、B2B 向けのサービスやコンテンツが16.1%、プラットフォームとの提携が16.1%と続きます。 なお同調査では、投資の優先領域として AI と自動化を挙げた回答者が93%に達しています。三本目の柱を建てる話と、AI で既存業務のコストを下げる話は、同じ経営の場で並行して進んでいるということです。 ## 「その他」は寄せ集めではない この25.4%を「広告と課金以外の雑多な収入」と読むと、打ち手を誤ります。 イベント、B2B サービス、EC、提携。これらに共通するのは、読者との関係を、記事の閲覧以外の形で換金しているという点です。逆に言えば、換金できるだけの関係がない媒体は、この柱を建てられません。 - イベント:誰が来るかを名前で把握できている関係 - B2B:業界内で「あの媒体は詳しい」と認識されている専門性 - EC:媒体の推薦を信用して買う関係 - 提携:他社が欲しがる読者層かデータを持っている状態 つまり、この柱は独立した新規事業ではなく、既存の読者関係の再利用です。ここを取り違えて、まったく別の顧客に向けた新規事業として立ち上げると、たいてい続きません。 ## 順序が重要な理由 三本目の柱を建てる順序について、キメラとしての考えを述べます。以下は仮説を含みます。 第一に、参加者の名前を持つことが先です。イベントも B2B も EC も、匿名の月間ページビューからは立ち上がりません。ニュースレターの登録者、会員、イベントの参加者。名前と連絡先を持つ関係の総量が、そのまま三本目の柱の上限になります。 第二に、単発ではなく反復で設計することです。イベントを年1回の大型企画として設計すると、企画・集客・運営のコストが毎回ゼロから発生します。小さくても定期開催のほうが、運営が習熟し、参加者が固定し、スポンサーの提案もしやすくなります。 第三に、粗利ではなく稼働で判断することです。イベント事業でよくある失敗は、粗利は出ているのに、編集部の稼働を大量に食っていて、本業の記事本数が落ちるというパターンです。損益計算書には現れないコストなので、判断の前に人時で見積もる必要があります。 第四に、B2B は属人化を前提に設計することです。B2B サービスは、その領域に詳しい特定の記者や編集者の知見に依存して立ち上がります。それ自体は悪くありませんが、その人が抜けたら止まる構造のまま売上を積むと、後で身動きが取れなくなります。立ち上げの時点で、知見をどう形式知にするかを決めておくべきです。 ## 日本の地域メディアにとって 地域のメディアは、この三本目の柱について、全国メディアより有利な条件を持っていると考えています。 理由は、関係の密度です。読者と広告主と地域の事業者が近く、実際に顔が見えます。イベントの集客も、B2B の営業も、EC の商品調達も、既存の関係の上に乗せられます。全国規模で同じことをやろうとすると、この密度は作れません。 一方で、不利な条件もあります。人が少ない。三本目の柱は、記事を書く仕事とは異なる能力を要求します。イベント運営、商品開発、法人営業。これを既存の編集人員の兼務で回そうとすると、上で述べた稼働の問題に直撃します。 私が関わっている地域の事業でも、ここが最大の制約になっています。やれば伸びるとわかっていても、やる人がいない。だから、外部の事業者と組む形か、極端に小さく始めて運営を型にしてから広げる形か、どちらかを選ぶことになります。 ## 印刷43.6%という数字の読み方 最後に、この調査でもっとも見落とされやすい数字に触れておきます。印刷が依然として43.6%を占めている、という事実です。 減りつづけていますが、まだ最大の柱です。「もう紙ではない」という言い方は、少なくともグローバルの平均値では正確ではありません。 三本目の柱を建てるための投資原資は、多くの場合この43.6%から出ています。つまり、印刷の収益を無理に急減させながら新規事業を立ち上げるのは、燃料を捨てながら加速するようなものです。落ちていく柱をどう緩やかに落とすかと、新しい柱をどう建てるかは、同じ計画の中で扱われるべき問題です。 ## 参考 - [World Press Trends Outlook: Rising 'three-pillar' revenue model fuels industry optimism(WAN-IFRA, 2026年1月)](https://wan-ifra.org/2026/01/world-press-trends-outlook-rising-three-pillar-revenue-model-fuels-industry-optimism/) - [Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2026(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2026) --- ## 2026年のメディアを定義する3つの緊張 — 同じ資源を奪い合う構造をどう捌くか URL: https://ximera.com/posts/three-tensions-media-2026 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Digital Content Next に寄せられた Damian Radcliffe 氏の論考は、2026年のメディアを「オーディエンスの獲得と維持」「AI の実装」「収益の多角化」という3つの緊張として整理する。3つが独立ではなく同じ人員と時間を奪い合う点に踏み込み、規模の小さいメディアが選ぶべき順序を検討する。 課題が3つ並んでいるとき、本当の問題はたいてい「どれも正しいが、全部はできない」ことにあります。 Digital Content Next に2026年2月5日に掲載された[論考](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/02/05/how-to-tackle-the-three-tensions-defining-media-in-2026/)(オレゴン大学の Damian Radcliffe 氏)は、2026年のメディアが直面する状況を3つの緊張として整理しています。まず内容を紹介し、そのうえで、日本の規模の小さいメディアにとっての順序を考えます。 ## 緊張1:オーディエンスの獲得と維持 プラットフォームからの参照トラフィックが減り、ニュース回避が増えている。AI の要約とチャットボットが、直接の接触をさらに減らしている。この状況への対応として、同論考は次を挙げています。 - ニュースレター、ポッドキャスト、動画優先のフォーマットで直接の関係を作る - 名前と人格のある書き手や話し手を前面に出す「声」主導のコンテンツ - クリエイターを競合ではなく協業相手と見る - 短く消費できるソーシャル向けか、深い関与かの両端に寄せる「バーベル戦略」 - 一定の刊行リズムで習慣を作る 具体例として、Washington Post が寄稿者の幅を広げた取り組みや、CBS が解説者との関係を拡大した動きが挙げられています。 ## 緊張2:AI の実装 実験から実装への移行段階にある、という整理です。データの整備と組織のガバナンスが、個別のパイロット企画より優先される、と述べられています。 数字としては、WAN-IFRA の調査で回答者の93%が AI を投資の重点領域に挙げたこと、Deloitte の予測としてポッドキャストとビデオポッドキャストの世界の広告収益が2026年におよそ50億ドルに達すること、が引かれています。 具体的な打ち手としては、要約、音声化、翻訳といった機能に加えて、AI に発見されやすい構造化された情報を作るチームを持つこと、そして AI ライセンスと自社プロダクトの構築のバランスを取ることが挙げられています。 とくに重要な指摘として、パブリッシャーが単なるコンテンツ供給者になってしまわないよう、読者との直接的な関係を保つべきだ、という点が強調されています。 ## 緊張3:収益の多角化 世界の広告費が2026年に1兆ドルを超える一方で、従来型の広告の取り分は減りつづけている。購読料の値上げには消費者の抵抗がある。この状況で、広告と購読以外の収益がすでに全体の25%を超え、デジタル収益にほぼ並んでいる、と整理されています。 この25%という水準は、[WAN-IFRA の調査](/posts/third-pillar-other-revenue)で見た「その他25.4%」とも一致します。複数の調査が同じ方向を示している、と考えてよさそうです。 具体例として、Condé Nast が2024年にパートナー向けの商品販売で6億ドルを生み、4年で5倍になったことが挙げられています。 ## ここからが本題:3つは独立していない 以上が論考の紹介です。ここからはキメラとしての見方を述べます。 3つの緊張を並べたとき、実務でいちばん効いてくるのは、これらが同じ資源を奪い合うという点だと考えています。 ニュースレターとポッドキャストを始めるには、書き手と話し手の時間が要ります。AI の実装には、データを整える人と、判断できる人が要ります。イベントや EC には、運営と営業が要ります。そして多くのメディアで、これらはすべて同じ数人から捻出されます。 つまり、3つを同時に進める計画は、資源の裏づけがないかぎり、3つとも中途半端に終わります。優先順位の議論を避けたまま「全部やる」と決めるのが、いちばん高くつく判断です。 ## バーベル戦略は、規模がないと成立しない 同論考が挙げるバーベル戦略、つまり短く消費できるコンテンツと深い関与の両端に寄せる考え方は、理屈としては正しいと思います。中途半端な長さと中途半端な深さのコンテンツが、もっとも代替されやすいためです。 ただし、両端を同時に持つには、それぞれに別の制作体制が要ります。縦型動画を日次で出す体制と、時間をかけた特集を作る体制は、必要な能力もリズムも違います。 規模の小さいメディアがバーベルを名乗ると、実態としては「軽いほうだけをやる」か「重いほうだけをやる」になります。だとすれば、最初から片側を選ぶほうが、体制も評価指標も設計できます。 選ぶ基準について、私の考えは次のとおりです。 自社にしか書けない一次情報を持っているなら、深い側を選ぶべきです。軽い側は競合が無数にいて、しかもクリエイターのほうが速い。[編集投資の配分](/posts/dnr-2026-editorial-investment-shift)で見たとおり、世界の編集トップも現場取材と文脈分析に資源を寄せています。 逆に、一次情報の蓄積が薄く、読者との接点づくりが先だという段階なら、軽い側から入るのが現実的です。ただしその場合、[若年層ではプラットフォーム間の差が消えている](/posts/young-audience-platform-parity)ため、1面に賭けるのではなくフォーマット単位で使い回す設計にしないと、労力の割に届きません。 ## 「コンテンツ供給者になるな」という警告について 3つの緊張のなかで、私がもっとも重く受け止めているのは、緊張2で述べられていた「単なるコンテンツ供給者になってしまわないように」という指摘です。 AI ライセンスは収益になります。しかし[実際の契約額と流入の関係](/posts/ai-licensing-deals-reality)を見ると、ライセンスを結んでも読者との直接的な接触は戻っていません。対価は得られるが、関係は失う。この取引を続けた先に何が残るのかは、金額の大小とは別に考えるべき問題です。 読者との直接の関係を保ちながら、AI に対しても対価を得る。この二正面を同時に成立させる設計が、2026年の実務上の焦点になると考えています。 ## 参考 - [How to tackle the three tensions defining media in 2026(Digital Content Next, 2026年2月5日)](https://digitalcontentnext.org/blog/2026/02/05/how-to-tackle-the-three-tensions-defining-media-in-2026/) - [World Press Trends Outlook(WAN-IFRA, 2026年1月)](https://wan-ifra.org/2026/01/world-press-trends-outlook-rising-three-pillar-revenue-model-fuels-industry-optimism/) --- ## アメリカの新聞が「声」を失った背景とその示唆:メディアの現在地と未来への考察 URL: https://ximera.com/posts/us-newspapers-lost-voice 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: アメリカの新聞が「声」を失った背景を深掘りし、デジタル化、経済構造の変化、社会の分極化がもたらす影響を分析。日本の地域メディアが未来を展望するための戦略的打ち手を提言。 現代のメディア環境において、新聞がその「声」、すなわち社会に対する影響力や信頼性、そして独自の存在感を失いつつあるという指摘は、世界各地で共通の課題として認識されている。特にアメリカの新聞業界が直面してきたこの問題は、デジタル化の波、経済構造の変化、そして社会の分極化といった複合的な要因によって引き起こされたものであり、その背景を深く掘り下げることは、日本のメディア、特に地域に根差した媒体が未来を展望する上で重要な示唆を与える。本稿では、この「声の喪失」が何を意味し、どのような要因によってもたらされたのかを考察し、メディアがその役割を再構築するための戦略的打ち手について論じる。 ## 「声」の喪失が意味するもの 新聞が「声」を失うとは、単に読者数が減少すること以上の意味を持つ。それは、社会における公共的な議論の形成者としての役割、権力監視の機能、そして地域コミュニティの統合者としての存在意義が希薄化することを指す。具体的には、以下のような影響が考えられる。 ・世論形成への影響力低下:多様な情報源が乱立する中で、新聞記事が社会の主要な議題設定や議論の方向性に与える影響が相対的に低下する。 ・信頼性の揺らぎ:誤情報や偏向報道が蔓延する中で、客観的で信頼できる情報源としての地位が損なわれる。これにより、読者のメディア不信が増大し、ジャーナリズム全体への信頼が揺らぐ。 ・独自性の喪失:速報性や深掘り報道において、デジタルネイティブなメディアや専門特化型メディアとの差別化が困難になり、新聞独自の価値が認識されにくくなる。 ・地域社会との乖離:地域に根差した報道が手薄になることで、住民とメディアの間に距離が生じ、コミュニティの課題解決への貢献が難しくなる。 これらの「声の喪失」は、民主主義の健全な機能や、地域社会の持続可能性にも深刻な影響を及ぼしかねない、メディア経営層にとって看過できない課題である。 ## 複合的な要因がもたらす課題 アメリカの新聞がその「声」を失った背景には、単一の要因ではなく、複数の構造的な変化が複雑に絡み合っている。これらの要因は、日本のメディア、特に地域メディアが直面する課題とも共通する部分が多い。 ### 経済的基盤の脆弱化 新聞業界は長らく、広告収入と購読料によってその経済的基盤を維持してきた。しかし、デジタル化の進展は、このビジネスモデルを根本から揺るがした。 ・広告収入の激減:インターネット広告市場の拡大に伴い、新聞の主要な収入源であった紙媒体の広告が大幅に減少した。特に、分類広告(求人、不動産など)はCraigslistなどのオンラインプラットフォームに奪われ、壊滅的な打撃を受けた。 ・デジタルシフトへの対応遅れ:多くの新聞社がデジタルコンテンツへの移行に際し、収益化モデルの確立に苦戦した。無料コンテンツ提供が常態化し、有料購読への転換が遅れたことで、デジタルからの収益が紙媒体の損失を補いきれなかった。 ・コスト削減とジャーナリズムの質の低下:収益の悪化は、人員削減や取材費の抑制を招いた。これにより、質の高い調査報道や専門性の高い記者の育成が困難になり、結果として報道の質が低下し、読者の離反を招く悪循環に陥った。 ### デジタル環境への適応不足 インターネットとスマートフォンの普及は、人々の情報消費行動を劇的に変化させた。新聞業界は、この変化への適応に遅れをとった側面がある。 ・情報過多と注意経済:デジタル空間は情報で溢れかえっており、読者の注意は限られた資源となっている。新聞は、この注意経済の中で、ソーシャルメディアやエンターテインメントコンテンツと競合しなければならなくなった。 ・ソーシャルメディアの台頭:FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアがニュースの主要な情報源となる中で、新聞社は自社サイトへの直接アクセスを失い、プラットフォームに依存する形となった。これにより、読者との直接的な関係構築が困難になり、収益機会もプラットフォームに握られる形となった。 ・読者エンゲージメントの課題:一方的な情報発信から、双方向のコミュニケーションが求められる時代へと変化する中で、新聞は読者との対話やコミュニティ形成の機会を十分に活用できていなかった。 ### 社会的信頼の揺らぎ 近年、メディア全体に対する信頼性の問題が深刻化している。新聞も例外ではない。 ・政治的二極化とフェイクニュース問題:社会の政治的二極化が進む中で、メディアは特定のイデオロギーに偏っているという批判に晒されやすくなった。また、「フェイクニュース」の拡散は、ジャーナリズム全体の信頼性を損なう要因となった。 ・客観性への疑念:読者は、報道の客観性や公平性に対して疑念を抱くようになり、特定の新聞社やメディアブランドに対する信頼が低下した。これにより、新聞が社会の共通認識を形成する上での役割が弱まった。 ### 地域性との乖離 多くの地方紙が経営難に陥る中で、地域に根差した報道が縮小していることも、「声の喪失」の大きな要因である。 ・ローカル報道の縮小:コスト削減のため、地方の支局が閉鎖されたり、地域担当の記者が削減されたりする動きが加速した。これにより、地域の重要な情報や課題が報道されなくなり、住民は地域情報へのアクセスを失った。 ・地域社会との接点希薄化:地域の出来事や住民の声が紙面に反映されなくなることで、新聞と地域社会との間に距離が生じ、新聞が地域コミュニティの「声」を代弁する存在としての役割を失った。 ## 日本のメディア、特に道北地域への示唆 アメリカの新聞業界が経験してきた「声の喪失」のプロセスは、日本のメディア、特に少子高齢化と人口減少が進行する道北地域に根差した媒体にとって、重要な示唆を与える。 ・共通の課題認識:日本の地方紙もまた、広告収入の減少、購読者数の高齢化、デジタルシフトへの対応、そして地域社会との関係性維持という同様の課題に直面している。道北地域のメディアも例外ではなく、これらの構造的課題への戦略的対応が急務である。 ・地域に根差した情報提供の重要性:デジタル化が進む現代において、全国的なニュースはインターネットを通じて容易に入手できる。しかし、地域のきめ細やかな情報、地域住民の生活に密着したニュース、そして地域の課題解決に資する深掘り報道は、地域メディアにしかできない独自の価値である。この地域性を徹底的に追求し、地域住民にとって不可欠な存在となることが「声」を維持・強化する鍵となる。 ・デジタル戦略の再構築:ウェブサイトやSNSを活用した情報発信はもちろんのこと、地域住民が求めるデジタルコンテンツの形式(動画、ライブ配信、インタラクティブコンテンツなど)を模索し、多様なチャネルで情報を提供する戦略が求められる。また、デジタル上での収益モデルの確立も不可欠である。 ・コミュニティとの連携強化:地域メディアは、単なる情報発信者ではなく、地域コミュニティのハブとなるべきである。住民参加型のコンテンツ制作、イベント開催、地域課題解決に向けたプラットフォーム提供などを通じて、地域住民とのエンゲージメントを深め、信頼関係を構築することが重要である。 ・信頼構築の継続的な努力:フェイクニュースや偏向報道が問題視される時代において、地域メディアは、客観性、正確性、公平性を堅持し、地域住民からの信頼を揺るぎないものとすることが、その「声」を維持するための最も重要な基盤となる。 ## 今後の戦略的打ち手 「声の喪失」という危機に直面する中で、メディアがその役割を再構築し、持続可能な未来を築くためには、以下のような戦略的打ち手が考えられる。 ・データ主導のコンテンツ戦略:読者の行動データや関心事を詳細に分析し、パーソナライズされたコンテンツや、読者が真に価値を感じる深掘り報道にリソースを集中させる。これにより、読者エンゲージメントを高め、有料購読への転換を促進する。 ・リアルタイムな読者インサイトの活用:ウェブサイトのアクセス解析やSNSの反応などをリアルタイムで把握し、コンテンツの企画・制作に迅速に反映させる。読者のニーズに即応することで、メディアの関連性と魅力を維持する。 ・収益モデルの多様化:広告収入や購読料に依存するだけでなく、イベント開催、コンサルティング、データ販売、寄付モデルなど、多様な収益源を確立する。特に地域メディアにおいては、地域企業との連携や、地域活性化事業への参画も視野に入れるべきである。 ・地域との共生と共創:地域住民や企業、行政機関との連携を強化し、地域課題の解決に積極的に貢献する。共同でプロジェクトを立ち上げたり、地域の声を政策提言に繋げたりすることで、地域社会にとって不可欠な存在としての価値を高める。 ・テクノロジーと人材への投資:AIを活用したコンテンツ制作支援やデータ分析、新しいデジタルプラットフォームの開発など、テクノロジーへの投資を惜しまない。また、デジタル時代に対応できるジャーナリストやエンジニア、データサイエンティストなどの人材育成にも注力する。 アメリカの新聞が経験した「声の喪失」は、メディアがその存在意義を問い直す契機となる。日本のメディア、特に地域に根差した媒体は、この教訓から学び、変化を恐れずに新たな戦略的打ち手を講じることで、地域社会における「声」としての役割を再確立し、持続可能な未来を切り開くことができるだろう。 出典: Nieman Lab https://www.niemanlab.org/2026/07/how-americas-newspapers-lost-their-voice/ --- ## 若年層では「どこで読むか」の差が消えた — Pew の数字が示す配信設計の変更点 URL: https://ximera.com/posts/young-audience-platform-parity 公開日: 2026-07-24 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Pew Research Center の2025年8月調査では、米国成人全体のニュース接触は Facebook 38%、YouTube 35%、Instagram と TikTok が各20%と差が開く。ところが18-29歳に限ると TikTok 43%、Facebook 41%、YouTube 41%、Instagram 40% とほぼ横並びになる。主要1プラットフォームに絞る配信戦略が若年層に効かない理由を整理する。 配信戦略の議論では、たいてい「どのプラットフォームに注力するか」が最初の問いになります。リソースが限られる以上、当然の問いです。 ただし、この問いが成立するのは、プラットフォーム間に明確な差があるときだけです。Pew Research Center の最新の数字を年代別に見ると、若年層ではその差が、ほぼ消えています。 ## 全体と若年層で、風景がまったく違う Pew Research Center が2025年8月18日から24日にかけて実施した調査によると、米国の成人が定期的にニュースを得ているプラットフォームは次のとおりです。 | プラットフォーム | 成人全体 | 18-29歳 | |---|---|---| | Facebook | 38% | 41% | | YouTube | 35% | 41% | | Instagram | 20% | 40% | | TikTok | 20% | 43% | | X | 12% | 21% | 全体で見れば、Facebook が最大で、Instagram と TikTok はその半分程度です。この数字だけを見れば、「まず Facebook」という判断は合理的に見えます。 ところが18-29歳では、上位4つが40%から43%のあいだに収まります。差は3ポイントです。誤差の範囲とまでは言いませんが、注力先を1つに絞る根拠にはなりません。 同調査では、TikTok の利用者のうち55%がその場所で定期的にニュースを得ていることも示されています。2020年の22%から大きく上がりました。プラットフォームの性格そのものが、この5年で変わったということです。 ## これが意味すること 若年層に届けようとするとき、「主要な1プラットフォームで最適化し、他は余力で回す」という設計が機能しません。どこを選んでも、その面で会えるのは対象読者の4割ほどで、残りは別の面にいます。しかも重複の度合いは媒体によって違うため、1面あたりのリーチを積み上げても、総到達は読めません。 ここから導かれる実務上の結論は2つです。 ひとつは、制作の単位をプラットフォームからフォーマットへ移すことです。「TikTok 用の動画」ではなく「縦型60秒の解説」を作り、それを複数の面に同時に置く。プラットフォームごとに専任を置く構成は、若年層向けにはコスト効率が悪くなります。 もうひとつは、面ごとの評価をリーチではなく到達後の行動で見ることです。どの面も似たようなリーチしか出ないのであれば、比較の軸はリーチではなくなります。プロフィールへの遷移、フォロー、サイトへの流入、登録。何が起きたかで面を評価しないと、リソース配分の根拠が作れません。 ## 世界全体の構図も同じ方向 Reuters Institute の Digital News Report 2026(48市場、97,520人、2026年1月から3月の調査)でも、同じ方向の変化が確認できます。 ソーシャルメディアと動画ネットワークをニュース源として週1回以上使う人は54%で、ニュースサイトやアプリの51%を上回りました。テレビニュースは52%です。3つが50%台に並んでいる、という状態です。 ニュース目的での利用率は、YouTube が34%、Facebook が43%、Instagram が26%、TikTok が20%。AI チャットボットは10%で、35歳未満では16%です。 つまりグローバルに見ても、特定の1チャネルが支配的という構図ではなくなっています。分散した状態が常態になった、と捉えるべきだと思います。 ## 日本の状況をどう見るか 同じ Digital News Report 2026 で、日本はニュースサイトやアプリの利用がソーシャルメディアを上回る、アジアでは数少ない市場のひとつとして挙げられています。 この差をどう解釈するかで、打ち手が変わります。私の見立ては次のとおりです。以下は仮説です。 日本の強みは、自社サイトやアプリへの直接的な接触が残っていることです。これは大きな資産で、[AI 流入の実像](/posts/ai-referral-traffic-reality)で書いたとおり、AI 経由の流入が微小である現状では、直接の接点を持っていること自体が競争力になります。 一方で、この数字は年齢構成の影響を強く受けているはずです。日本の人口構成上、全年齢平均は高年齢層の行動に引っ張られます。Pew の米国データで起きているような「全体と若年層で風景が違う」現象が、日本ではより極端に出ている可能性が高い。 したがって、全年齢平均のデータを根拠に「日本ではまだ自社サイトが強い」と結論すると、若年層の実態を見誤ります。自社の年代別データを見て、20代の接触経路が全体平均とどれだけ違うかを確認することを勧めます。差が小さいなら安心してよく、大きいならその差が今後の姿です。 ## 前提として押さえておくこと 配信設計を組み替える前に、需要側の環境も見ておく必要があります。 Digital News Report 2026 では、ニュースへの関心が「非常に高い」「高い」と答えた人は46%で、2021年から13ポイント低下しています。ニュースへの信頼は37%で、計測開始以来もっとも低い水準です。 つまり、面を増やして接触機会を作っても、そこにいる人の関心そのものが薄れています。配信面の最適化は必要な作業ですが、それだけで解決する問題ではありません。関心が薄れている読者に対して何を差し出すのかという問いは、[編集投資の配分](/posts/dnr-2026-editorial-investment-shift)の側で答える必要があります。 ## 参考 - [Social Media and News Fact Sheet(Pew Research Center、2025年8月18-24日調査)](https://www.pewresearch.org/journalism/fact-sheet/social-media-and-news-fact-sheet/) - [Digital News Report 2026 Executive Summary(Reuters Institute)](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026/dnr-executive-summary) --- ## Q2 2026:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/q2-2026-global-audience 公開日: 2026-07-13 著者: Jack Neary 概要: 2026年第2四半期のChartbeatネットワーク分析。平均エンゲージメント時間は中東欧が38.4秒で最長、モバイル比率は全地域で60%超、検索流入はアフリカと中央アジアをのぞき減少。それでも総トラフィックは横ばいを維持している。 by Jack Neary([原文](https://chartbeat.com/resources/research/global-audience-insights-from-the-second-quarter-of-2026/))2026.07.13 2026年第2四半期(4-6月)のオーディエンス動向をお知らせします。 - 平均エンゲージメント時間は中東欧が引きつづき最長 - 検索トラフィックはアフリカで増加、それ以外の多くの地域では減少 - 読者ロイヤルティは北欧と南欧で高い水準 以下では、詳しいデータとそこから読める読者インサイトをご紹介します。 *過去のインサイトは [Q1 2026](/posts/q1-2026-global-audience) / [Q4 2025](/posts/70bdb4e5c3) / [Q3 2025](/posts/8347220612) でご覧いただけます。* ## 平均エンゲージメント時間がもっとも長いのは中東欧 ![](/images/posts/q2-2026-global-audience/engaged-time.png) 第2四半期の平均エンゲージメント時間は、中東欧が38.4秒でもっとも長い水準を維持しました。これに中東の32.2秒、アフリカの27秒が続きます。 ## アフリカと北欧でモバイルトラフィックが増加 ![](/images/posts/q2-2026-global-audience/mobile.png) 中央アジアとアフリカのパブリッシャーは、引きつづきトラフィックの大半をモバイル読者から得ており、両地域ともページビューの82%がモバイル経由でした。中東も77%とこれに迫ります。第2四半期は、すべての地域でページビューの60%以上がモバイルデバイスから発生しました。 ## 検索トラフィックはアフリカと中央アジア以外で減少が続く ![](/images/posts/q2-2026-global-audience/search.png) 第2四半期は多くの地域で検索トラフィックが減少しました。落ち込みがもっとも大きかったのは東南アジア、南欧、ラテンアメリカで、いずれも検索由来のページビューが5%減少しています。一方でアフリカは41%から48%へと大きく伸びました。 ## 東南アジアとアフリカでソーシャルトラフィックが増加 ![](/images/posts/q2-2026-global-audience/social.png) 東南アジアでは第2四半期のページビューの26%がソーシャルプラットフォーム経由で、第1四半期の19%から増加しました。アフリカが23%、北米が17%でこれに続いています。 ## 読者ロイヤルティがもっとも高いのは北欧と南欧 ![](/images/posts/q2-2026-global-audience/loyalty.png) 読者ロイヤルティは大半の地域で上昇し、なかでも中東の伸びがもっとも大きくなりました。ロイヤル読者によるページビューの比率がもっとも高いのは北欧で58%、前四半期の55%から上昇しています。南欧が48%でこれに続きました。 ## Q2のポイント 全世界の平均エンゲージメント時間は26秒 地域別のレンジは、中東欧の38.4秒からラテンアメリカの21.3秒まで。全体では第1四半期から1秒未満の低下にとどまり、ほぼ横ばいで推移しました。 オーディエンスはモバイルファースト どの地域でもサイト訪問の60%以上がモバイル端末からで、2つの地域では80%を超えています。 検索由来のページビューは減少が続く アフリカと中央アジアをのぞくすべての地域で検索トラフィックが減少しました。ただしChartbeatネットワーク全体のトラフィック総量は横ばいを保っています。読者が情報にたどり着く経路が変わっても、ニュースやエンターテインメントで信頼する情報源そのものは変わっていない、と読むことができます。 --- ## ページビューは減少しているが、AIの影響は複雑だ URL: https://ximera.com/posts/ai 公開日: 2026-06-27 著者: Chartbeat この記事は、INMA.org に掲載されたものです。 「AIの台頭によってメディアのトラフィックが激減している」というニュースが巷に溢れています。しかし、数十億におよぶページビュー(PV)の実際のデータを分析してみると、実態は世間のパニックが煽るものよりも複雑であり、かつ今後のヒントに満ちていることが分かります。 Chartbeatでは、数千のニュース・メディアサイトにおける毎月数十億ものPVを追跡していますが、私たちが目にしているのは「市場の崩壊」ではなく、「アクセスの再分配」です。この違いを正しく認識できるかどうかが、目先のノイズに一喜一憂して終わるか、それとも実際に訪れる未来を見据えて布石を打てるかの分かれ道となります。 検索、ダークソーシャル、そしてAIをめぐる最新の全体像について、詳しく解説します。 ![](/images/posts/ai/img-1.jpg) 全体のトラフィックが壊滅的に激減したわけではない まずは、誰もが最も懸念する数字である「総ページビュー数」から見ていきましょう。 Chartbeatのネットワーク全体における週平均のページビュー数は、2024年の約76.4億PVから2025年には71.9億PVへと減少しました。約6%の減少です。マイナスであることは確かですが、これは毎年の通常の変動範囲内に十分に収まっています。 そもそもトラフィックは、世界的なイベントの周期によって変動するものです。2024年はニュース業界にとって異例の「大豊作の年」であり、米国、ブラジル、インド、インドネシア、英国など、世界中で10億人以上の人々が投票を行う大規模な選挙が重なりました。 2025年は政治的なビッグイベントという点では比較的静かな年でしたが、2026年はすでに冬季オリンピックやワールドカップ、米国の連邦中間選挙などが控えており、世界的にトラフィックが大きく伸びる兆しが見えています。 では、全体のアクセス数が落ち込んでいないとすれば、一体何が問題なのでしょうか。 検索(SEO)というチャネルだけが、実質的に機能不全に陥っている トラフィックの流入元(ソース)をチャネル別に分解してみると、サイト内回遊(内部)、ソーシャル、直接流入、外部リンクといった主要なチャネルは、過去2年間ほぼ横ばいで安定しています。唯一の例外が「検索」であり、ここだけが大幅に減少しているのです。 ![](/images/posts/ai/img-2.jpg) ![](/images/posts/ai/img-3.jpg) 検索流入の2大リファラー(流入元)を詳しく見ると、双方ともに大きく落ち込んでいます。Google検索からのPVは2024年12月から2025年12月までの1年間で34%演少し、同期間にGoogle DiscoverからのPVも16%減少しました。 特に、小規模なメディアほど深刻な打撃を受けています。 ・大規模サイト(1日あたり10万PV以上):–22% ・中規模サイト(1日あたり1万〜10万PV):–47% ・小規模サイト(1日あたり1,000〜1万PV):–60% AIからの流入は、検索の落ち込みを補えているか? ここで当然、次のような疑問が湧くでしょう。「ChatGPTやPerplexityのようなAIツールが、検索の代わりにトラフィックを運んできてくれているのではないか?」 結論から言えば、「現時点では全く補えていない」となります。 確かにChatGPTからの流入数は前年比で200%以上も増加しており、右肩上がりの成長を続けていることは間違いありません。しかし、AIチャットボット経由のアクセスは、Chartbeatのネットワーク全体で見ても、いまだ総PVの1%未満にすぎません。 ![](/images/posts/ai/img-4.jpg) 現在の規模感では、AIは検索トラフィックの代替としては機能しておらず、あくまで「今後注視し、備えておくべき新興チャネル」という位置づけです。 また、AIが(回答として)ユーザーに提示しやすいコンテンツの傾向にも特徴があります。ニュース・メディアサイトはAIプラットフォームから最も多くの総PVを獲得しているものの、1記事あたりのユーザーの回遊(エンゲージメント)は極めて低いのが現状です。住まい・ガーデニング(10.6 PV)や健康(8.6 PV)、科学・教育(8.5 PV)といったジャンルに対し、ニュース・メディアは1記事あたり平均わずか4.8 PVにとどまります。 ユーザーは、AIが出した回答の事実確認や背景を知るためにニュース記事のリンクを踏むことはあっても、そこからサイト内をあちこち読み進めることはありません。答えを確認したら、すぐに離脱してしまうのです。 記事のトピック別で見ると、経済・ビジネス・金融のコンテンツがAI経由で700万以上のPVを獲得して群を抜いており、次いで科学・技術(197万)、環境(192万)と続きます。 ここから見える傾向は一貫しています。AIはニュースを読むためのツールというよりも、一種の「リサーチアシスタント」として機能しており、ユーザーをハウツーガイドやまとめ解説、信頼性の高い専門資料へと誘導しているのです。速報ニュースだけでなく、長期間にわたってユーザーの課題を解決する「エバーグリーン(普遍的)なコンテンツ」をバランスよく発信できているメディアこそが、このチャネルの成長の恩恵を受けられるでしょう。 検索の穴を静かに埋めている、2つの隠れた流入元 検索流入が減少する一方で、着実にシェアを拡大している2つのチャネルが存在します。 一つ目は「内部トラフィック(サイト内回遊)」です。これはもともとメディアサイトにとって最大のPV源でしたが、さらに拡大を遂げており、2024年の約38%から、2025年11月以降は約41%へと上昇しています。 内部リンクからのPVが増えるということは、サイトを訪れた読者が「さらに他の記事も読もう」と自発的に選択してくれている証拠です。これこそがユーザーがファン化(定着)している何よりの証拠であり、メディア側が自力で最もコントロールしやすい領域でもあります。 二つ目は「ダークソーシャル」です。これは、メールやアプリ、LINEなどのメッセージツール経由での共有を指し、アクセス解析で参照元(リファラー)が残らない非直接的な流入のことです。この割合が2024年の全トラフィックの約7%から、2026年1月には10%へと成長しています。 データの追跡が難しいチャネルではありますが、ここには非常に価値のあるシグナル、すなわち「読者の純粋な熱意」が現れています。プライベートなチャネルでわざわざ記事のURLを共有するのは、「この内容をどうしても相手に読んでほしい」という強い動機があるからです。 メディアが取るべき今後の戦略 ・トラフィックは消滅したのではなく、移行している: 全体のPVは前年比でわずか6%の微減であり、想定の範囲内です。検索(SEO)経由のアクセスは大きく減ったものの、内部回遊とダークソーシャルがその穴を埋めています。業界の終焉と悲観する必要はありませんが、アクセス獲得の前提となる土台は確実に変化しています。 ・AI時代、パブリッシャーの「サイト規模」格差が浮き彫りに: 大規模サイトの検索流入が22%減であるのに対し、小規模メディアは60%減という大打撃を受けています。今後は、ブランドとしての認知度や、読者と直接つながる関係性が生き残りの絶対条件になります。小規模メディアはSEOだけに依存するのをやめ、メルマガの発行や、特定のニッチジャンルでの権威性の確立など、ファン(ロイヤルユーザー)作りに注力すべきです。 ・AIが評価するのは、速報性よりも「情報の深さ」と「実用性」: 総トラフィックの1%未満とはいえ前年比200%で伸びているAIからの流入は、その場限りの速報ニュースよりも、息が長く課題を解決する実用的なコンテンツを好みます。これからの時代は、日々変化するニュースサイクルを追いかけつつも、時代に左右されない普遍的な価値(ストック型コンテンツ)を両立できるメディアが生き残ります。 ・サイト内回遊の強化こそが、最大の成長戦略: 内部トラフィックは、現在最も規模が大きく、かつ最も伸びている流入源であり、メディア側が100%コントロールできる領域です。レコメンド(関連記事一覧)の精度、サイトの表示速度、コンテンツの網羅性といった「サイト内体験の質」を高めることこそが、これからの時代にメディアが成長できるか衰退するかの明暗を分けます。 --- ## CPGブランドが次のソーシャル動画キャンペーンで成功するために押さえるべき重要ポイント URL: https://ximera.com/posts/cpg 公開日: 2026-06-27 著者: Everleigh Malley ![](/images/posts/cpg/img-1.jpg) 世界的な大手CPG(日用品・消費財)ブランドは今、データに基づく確かな視聴者分析(オーディエンス・インサイト)武器に、ソーシャル動画の常識を塗り替えつつあります。マルチプラットフォーム戦略から投稿のタイミングにいたるまで、あらゆる決断がデータに裏打ちされており、明確な意図を持って行われています。 Red Bull、Heineken、Charlotte Tilbury、Old Spiceは、それぞれ異なるアプローチでソーシャル動画での成功を収めました。しかし、そのデータを詳しく分析すると、ある共通のパターンが見えてきます。それは、「視聴者分析から得られた確かな根拠に基づき、従来の常識にとらわれない大胆な決断を下している」ということです。 この記事では、これらCPGブランドがソーシャル動画戦略を成功に導いた、具体的なプラットフォーム戦略、クリエイター連携、そして視聴者分析のノウハウを解き明かします。 成功するCPGソーシャル動画戦略の条件とは? 優れたCPGソーシャル動画戦略とは、「思い込み」を排除し、「データ主導の分析」を何よりも最優先する戦略のことです。具体的には、反応の良さ(エンゲージメント指標)を基準に配信プラットフォームを選び、数値上のカテゴリではなく「ターゲット層のカルチャーに合うか(文化的適合性)」を基準に提携するクリエイターを厳選します。そして、常に最新の運用データを検証することで、移り変わるユーザーの行動やプラットフォームのトレンドをいち早く先取りしていくことが求められます。 ソーシャル動画のエンゲージメントを最大化するには? ソーシャル動画のエンゲージメント(ユーザーの反応)を最大化させる上で、CPGブランドが陥りがちなのが「投稿量が最も多いプラットフォームこそ、最も効果が高いはずだ」という思い込みです。Red Bullの運用データを見ると、コンテンツへの投資に対して「どこが最も高いリターン(ROI)をもたらしてくれるか」を改めて見直す重要性が見えてきます。 ![](/images/posts/cpg/img-2.jpg) ![](/images/posts/cpg/img-3.jpg) データによると、2025年のYouTubeにおける世界全体の再生回数のうち、実に77%が1分未満の動画(ショート動画)によるものでした。Red Bullはこのトレンドを捉え、短尺動画を大量に投入する戦略を展開しました。しかし、実際のパフォーマンスデータを分析すると、短尺コンテンツがすべてのプラットフォームで同じように成果を出しているわけではないことが分かったのです。 YouTube: 短尺・長尺のどちらの動画においても、ユーザーの反応(エンゲージメント)はRed Bullの投稿スケジュール通りに、想定内の成果を出していました。 TikTok: プラットフォーム全体の総投稿量のうち、TikTokの割合はわずか14%にすぎませんでした。しかし、全プラットフォームで獲得した総エンゲージメント(反応数)のうち、実に63%がこのTikTokの動画から生まれていたのです。 ここから学べる教訓: 最適な動画の長さやコンテンツの成果の出方は、プラットフォームごとに異なります。すべてのプラットフォームで成果を上げるためには、それぞれのユーザーの好みや特性をしっかりと汲み取りながら、自社の運用数値を冷静に見極める必要があります。 Red Bullの事例は、最も効果の高いプラットフォームが、必ずしも「普段メインで使っている分かりやすい場所」とは限らないこと、そしてそれを見極める唯一の方法は動画データの分析であるということを証明しています。また、同じ飲料ブランドであるHeinekenは、データ分析を信じた結果、普段のビール業界の枠組みからは大きく外れた、ニッチなメンズファッション系クリエイターとの異色のコラボレーションに踏み切り、驚異的な成果を叩き出しました。 ニッチなクリエイターとのタイアップ効果を最大化するには? CPGブランドがニッチなクリエイターとのタイアップ効果を最大限に引き出すためには、商品のカテゴリが一致しているかどうかよりも、「ターゲット層のカルチャーや世界観にフィットしているか(文化的適合性)」を最優先することです。 ![](/images/posts/cpg/img-4.jpg) ![](/images/posts/cpg/img-5.jpg) Heinekenは、メンズファッション系クリエイターの @mikaelgama とタイアップキャンペーンを実施しました。彼のアカウントは当時、フォロワー数がわずか13万6,000人ほどでしたが、このキャンペーンは開始からわずか50日間で1億6,800万回再生、100万エンゲージメントという大成功を収めました。この実績により、彼は2025年上半期に「ブラジルで最も見られたインフルエンサー第1位」に輝いたのです。彼は従来のビール業界やCPGブランドが選ぶような定番のパートナーではありませんでしたが、ターゲット層との世界観の合致が、カテゴリの壁を完全に凌駕した事例と言えます。 この予想外の組み合わせは、ユーザーの興味を瞬時に惹きつけました。彼の洗練されたビジュアルセンスがHeinekenの持つプレミアムなブランドイメージと自然に調和し、フォロワーも彼のセンスを心から信頼していたためです。その結果、彼の発信は、13万6,000人というフォロワー数から予想される限界を遥かに超えて、多くの人々の心に響き渡りました。 ここから学べる教訓: 現在のクリエイターエコノミーにおいては、カテゴリの一致や、フォロワー数・再生数といった「うわべの数値(バニティ・メトリクス)」に惑わされないブランドこそが果実を得られます。なぜなら、目に見える数値だけで投資対効果(ROI)を予測すると、見誤るリスクが非常に高いためです。代わりにCPGブランドは、キャンペーンの成功確率をより正確に予測するため、ユーザーの検索傾向や購買意欲の高さ、お互いのファンの重複度合い(オーディエンス・オーバーラップ)といった一歩踏み込んだデータを掛け合わせて分析すべきです。 Heinekenの事例は、ブランド間で「ファンの重複度合い」をデータで捉えて賢いタイアップを決定し、実施後は「どれだけ新しいファン層に広がったか(認知拡大)」をトラッキングして効果測定を行うべきだという好例を示しています。 戦略的なブランド連携で、いかに新規顧客層を開拓するか? 異業種ブランドとの戦略的な提携(コラボレーション)によって顧客層を広げる好例として、コスメブランド「Charlotte Tilbury」とフォーミュラ1(F1)の女性向けレース「F1 Academy」のパートナーシップが挙げられます。この一見すると意外な組み合わせは、これまでアプローチできていなかった新しい顧客層を開拓するための理想的なキャンペーンの設計図(ブループリント)となっています。 ![](/images/posts/cpg/img-6.jpg) Charlotte Tilburyは、ビューティーブランドとして、また女性創業者のブランドとして、初めてF1 Academyと公式に提携しました。このパートナーシップは、「美容」と「モータースポーツ」という、一見共通点のない2つの領域における「潜在的なファン層の重複」に目をつけた大胆な挑戦でしたが、その成果は即座に、目に見える数値として現れました。 再生回数とユーザーの反応が急増: この提携に関連して一般ユーザーが投稿したTikTokの動画(UGC)は、2024年から2025年にかけて960万回再生、85万2,000エンゲージメントを記録しました。 共通ファン層の拡大: 英国の美容に関心のある視聴者(18〜34歳の女性)の間で、F1関連コンテンツも同時に見ている人の割合が前年比で+97%増加し、F1レーサーのルイス・ハミルトンに関するコンテンツを見ている人の割合は前年比で+117%も増加しました。 女性ファンの増加: F1公式のFacebookアカウントにおける視聴者のうち、女性が占める割合が前年比で2パーセントポイント増加しました。 ここから学べる教訓: 異色とも思えるコラボレーションは、これまで接点のなかった新しい顧客層へ確実にブランドを浸透させることができます。CPGブランドは、事前にお互いのファン層の重複データを分析して確実性の高い提携を決断し、施策後はターゲット層がどれだけ広がったかを注意深く見守ることで、その影響力を測定していくべきです。 Charlotte Tilburyは、ファン層の重複データを活用したことで、TikTokでのユーザーの投稿(UGC)の爆発的な増加と、F1 Academyとの相互のファン層拡大を成し遂げました。そして、これと全く同じ「データ主導のマインドセット」をYouTube戦略に持ち込み、負けず劣らずの見事な成果を上げたのがOld Spiceです。 コンテンツを乱発せずに、効率よく認知を拡大する方法 ターゲット層へのリーチを拡大するために、必ずしも「コンテンツの制作量」を増やす必要はありません。重要なのは、戦略的に狙いを定めて公開することです。Old SpiceのYouTube戦略は、投稿頻度をむやみに増やすことなく、視聴者を増やし、新たな顧客セグメントへとアプローチを広げる方法を鮮やかに示しています。 ![](/images/posts/cpg/img-7.jpg) Old Spiceは、YouTubeにおいて再生回数・世界的なリーチともに最大規模を誇るCPGブランドの一つです。特筆すべきは、その圧倒的な地位が、単に「動画を大量にアップロードしたから」築かれたわけではないという点です。Old Spiceはプラットフォームを動画の山で埋め尽くすのではなく、一本一本の投稿をより戦略的に行うことに注力しました。すべての動画が明確な目的を持ち、特定のターゲットに届き、確実に成果を出せるよう、緻密に計算して制作されていたのです。 その結果を分析すると、成長の裏にある戦略がはっきりと見えてきます。 ユニーク視聴者数(純粋な視聴者数)が5倍に: YouTube Shortsを活用した大型の広告展開、狙いを定めたクリエイターとのコラボ、そして地域に特化した(ローカライズされた)コンテンツ制作によって、この驚異的な成長を達成しました。 ターゲット層の拡大: 新たに女性向け製品ラインの訴求に注力したことで、Old SpiceはYouTubeだけでなく、従来のテレビCMも含めてターゲットとなる顧客層を大幅に広げることに成功しました。 ここから学べる教訓: 投稿の頻度を増やすだけでは、ファンは定着しません。Old Spiceの成功が証明しているのは、YouTube Shortsのような「今勢いのある効果的なフォーマット」の活用、目的を明確にしたクリエイターとのタイアップ、そして「少し視点をずらした隣接するターゲット層(この場合は女性層)」の開拓を組み合わせることこそが、最も効率よく大きなリーチを獲得できる近道であるということです。 ここまで、先進的なCPGブランドがそれぞれのやり方で、ソーシャル動画マーケティングという複雑なパズルをどのように解き明かしてきたかを見てきました。ソーシャル動画の戦略に「これさえやれば絶対に安心」という万能な正解はありません。しかし、すべてのCPGブランドが時代の先頭を走り続けるために使える、共通の「成功のレバー(突破口)」は確かに存在します。 結論:単に「優秀な戦略」と、市場を動かす「偉大な戦略」の決定的な違い 一般的な「優秀な戦略」は、世の中のベストプラクティス(定石)に忠実に従います。しかし、本当に「偉大な戦略」とは、自社のデータをもとに「その定石は本当に正しいのか?」と疑うことから始まります。今回ご紹介したブランドは、まさにその姿勢を体現しています。次のキャンペーンに活かすべき、最も重要なポイントは以下の3点です。 ユーザーが「本当に」集まっている場所を見極める: ターゲットがいない場所でいくら頻繁に動画を投稿しても、骨折り損に終わります。プラットフォームごとの実際の反応率をシビアに測定し、効果の高い場所に予算を集中させてください。 クリエイター選びの「思い込み」を捨てる: 本当に効果のあるタイアップは、フォロワー数などのうわべの数字の先を見たときに生まれます。パートナーを選ぶ際は、ターゲット層の検索傾向や買い物への関心、ファン層の重複データを深掘りした上で決断してください。 データという盾を持って、大胆に勝負する: 緻密なデータ分析があれば、ユーザー自身も気づいていない「隠れた熱狂(関心事)」を捉え、自信を持って大胆な施策に踏み切ることができます。そして施策後は、お互いのファン層がどれだけ新しく広がったかを計測し、その効果を正しく評価してください。 ソーシャル動画のトレンドが移り変わるスピードは極めて迅速です。常に市場の先頭に立ち続けるCPGブランドとは、自らの勘ではなく、データが指し示す道を信じて進むブランドなのです。 --- ## メディア事業の再設計 — ファースト・パーティ、マルチチャネル、新収益モデルの実装フレーム 2026 URL: https://ximera.com/posts/first-party-multichannel-business-model-2026 公開日: 2026-06-17 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 検索流入崩壊・サブスク飽和・AI 検索台頭の同時多発下で、2026-2030 のメディア事業をどう作り直すか。ファースト・パーティ戦略 + GEO + 4 チャネル (ニュースレター / ソーシャル / 音声 / 動画) + 5 収益モデル + 8 フロンティア + 10 隣接事業を、Reuters Institute / Pew / Chartbeat / Edison Research / Digiday のデータと NYT・WSJ・Bloomberg・Axios・The Atlantic・Politico・Substack の最新事例から、実装粒度で統合したプレイブック。 メディアの主戦場は Web サイトから「チャネルのポートフォリオ + 自社で持つ読者関係性 + AI に引用される情報資産」の三層構造に移った。検索流入は構造的に縮み、サブスクは飽和し、Web 広告 CPM は下落する一方で、ニュースレター・ポッドキャスト・TikTok・AI チャットボット経由のニュース消費は伸びている。本稿は 2026〜2030 年にメディア事業をどう作り直すかを、ファースト・パーティ戦略 / マルチチャネル設計 / 新しい 5 収益モデル / 8 フロンティア / 10 隣接事業の 5 レイヤーで統合し、実装粒度で提案するプレイブックです。読了 45 分。 --- ## Part 1: 2026 年、メディア業界の現在地 ### 縮むものと伸びるもの — 5 年で起きた構造変化 過去 5 年でメディア消費の構造がどう変わったかを最新データで整理します。 縮むもの: - 検索流入: Chartbeat ネットワーク全体で 2024 年比 34% 減 (2025 年実績)。小規模メディア (日次 PV 1,000〜10,000) では 60% 減のケースも。Google AI Overviews と AI チャットボットの台頭が直接の原因 - Facebook 経由のニュース流入: 米成人ニュース消費で 36% → 26% (5 年で 10pt 減、Pew Research 2025) - Web サイト直接アクセス: 35% → 22% (Reuters Institute Digital News Report 2025) - 新聞紙発行部数: 米国で年率 7〜10% 減、日本も同水準 - 広告 CPM: プログラマティックのサイト平均 12 ドル (2020) → 8 ドル (2025、Magna Global) 伸びるもの: - ニュースレター読者: 16% → 28% (5 年で 12pt 増、Pew) - ポッドキャスト視聴: 月間 17% → 47% (10 年で 3 倍弱、Edison Research The Infinite Dial 2025) - TikTok ニュース消費: 1% → 11% (5 年で 10pt 増) - AI チャットボット経由: 0% → 4% (Reuters) - 個人課金 (Substack 等): 月間有料購読者 500 万人超 - 法人向け B2B メディア: Politico Pro 年間 1 億ドル超 ### 構造の意味 — マスからネットワークへ 縮んでいるのは「マス広告」「マス購読」「マス検索」、つまり不特定多数を媒介するモデルです。伸びているのは「特定の読者に深く届ける」「自社で読者関係性を持つ」「専門領域を有料化する」ニッチ深掘り型のモデルです。 これは「メディアの終わり」ではなく、ピラミッド型ビジネスからネットワーク型ビジネスへの再編です。少数の巨大マスメディアが多数を抑える構造から、多数の専門特化メディアが横並びで読者を分け合う構造へ。 ### 構造変化を引き起こしている 4 つの力 1. AI 検索の台頭: ChatGPT / Perplexity / Claude / Google AI Overviews が「Google から複数サイトをクリックして比較する」体験を「AI 内で完結する要約」に置き換え始めた 2. プラットフォームの脱メディア化: Meta / X / TikTok がアルゴリズムを変え、ニュース投稿の表示優先度を下げた 3. 読者の有料化耐性の上昇: 「全部は払えないが、本当に必要なものには年額 10〜30 万円払う」読者層が顕在化 4. AI 学習データとしての価値の急騰: OpenAI が 1 メディアに年額数千万〜数億ドルのライセンス契約を結ぶ時代 --- ## Part 2: なぜ「ファースト・パーティ + マルチチャネル」が同時に経営アジェンダか ### ファースト・パーティとサード・パーティ 「ファースト・パーティ (First-party)」は、メディア企業自身が自社サービスを通じて読者から直接取得したデータです。メールアドレス、PUSH 通知の許可、アプリのインストール、サブスクリプション会員情報、サイト内行動ログなど、自社で集めて自社で管理しているデータです。 「サード・パーティ (Third-party)」は、Google、Meta、X、TikTok といった第三者プラットフォームが持っているデータです。Cookie、広告 ID、SNS フォロワーなど。 これまでメディアはサード・パーティに依存して読者を集めてきました (検索流入、Facebook シェア、Twitter フォロワーへの直接配信)。しかし Cookie 規制、AI Overviews、SNS アルゴリズム変更といった、すべてプラットフォーム側で完結する変化に晒され続けるなかで、「自社で持つデータ」を太くする方向にシフトしているのです。 ### マルチチャネル化の必然 2010 年代のメディアは「Web サイトをハブにして SEO で集客し、広告とサブスクで収益化」が標準でした。このモデルが崩れた 3 つの要因: 1. Google AI Overviews による検索リファラル崩壊 (2024-2025 で 30〜60% 減) 2. Facebook / Twitter のアルゴリズム変化 3. 若年層の Web 離脱 (18〜24 歳のメインニュース源で Web サイトは 31%、動画 47%、音声 22%) 「サイトをハブにすればよい」前提が崩れ、「複数チャネルにそれぞれのプロダクトを作り、それぞれのチャネルで読者と関係性を持つ」モデルへの移行が必要になりました。 ファースト・パーティ (自社直結) とマルチチャネル (届ける場所の多角化) は同じコインの裏表です。多くのチャネルで読者と接点を作り、最終的に自社のメール / アプリ / サブスクに変換する、というのが 2026 年の読者経済設計です。 --- ## Part 3: ファースト・パーティ戦略の最前線 ### The Atlantic — ニュースレターを「サイト最大のリードジェネレーター」に再設計 The Atlantic はサブスクリプション戦略の中核にニュースレターを据え直しました。やったのは「メルマガを増やす」ではなく「サイトのあらゆる動線をメルマガ登録に向ける構造に作り変える」ことでした。 - 記事末尾の登録 CTA を、記事のテーマに応じた特化メルマガに分岐 - トップページの常設バナーで、新規読者向けの「入口メルマガ」を訴求 - 登録後のオンボーディング (最初の 7 日間で送る 3 通) を編集チームが設計 - メルマガ開封 / クリック / 継続を編集 KPI に統合 結果としてサブスクリプション転換率の最大経路がニュースレター経由になりました。Editor-in-Chief Jeffrey Goldberg は 2025 年に「ニュースレターは購読モデルへの試食であり、編集チーム最大の責任ある仕事のひとつだ」と語っています。 ### NYT — アプリと PUSH の「強制エンゲージメント」設計 NYT のモバイルアプリは PUSH 通知をきわめて緻密に運用しています。 - 時間帯のパーソナライズ: 読者ごとの過去 30 日のアクセスパターンから最もエンゲージしやすい時間帯を予測 - トピックフィルタリング: 政治 / テック / 文化 / スポーツなど 8 カテゴリで PUSH 頻度を個別調整可能 - 速報性とエッセイの両立: 速報は即時、長文エッセイは読者の読書時間 (夜 / 週末) に合わせて配信 NYT は PUSH 通知の許可率が約 38% という業界トップクラスを維持。Chartbeat が指摘する「内部トラフィック (サイト内回遊・直接アクセス・PUSH 経由) の比率が 38% → 41% に上昇」というデータは、ここでの成果が押し上げているチャネルです。 ### Substack の台頭 — メールが「主力プロダクト」になる時代 Substack は 2017 年創業、月間有料購読者は 500 万人超。トップライター (Bari Weiss、Matt Taibbi、Heather Cox Richardson、Lenny Rachitsky など) は年間 100 万ドル以上を稼いでいます。既存メディアの著名記者が次々と移行しており、「ニュースレターが主力プロダクトになる」可能性の証明になっています。 ### Politico Pro — 政策領域別の特化メールで意思決定者層と直接つながる Politico は政策領域 (テック、ヘルスケア、金融規制等) ごとに特化したメールプロダクトを持ち、ワシントンの意思決定者層と直接つながる構造を作りました。 - Politico Playbook: 無料、米国政治のデイリー - Politico Pro: 年額 1 万ドル超、企業契約モデル。年間売上推定 1 億ドル超 - Politico Pro Health Care / Energy / Tech: 各領域の専門 Pro 版 メールそのものがプロダクトとして単独で価値を持ち、企業契約が年額 1 万ドルを超える領域も。 ### Axios — Smart Brevity と SaaS 化 Axios の「Smart Brevity (賢い簡潔さ)」の構造: - Why it matters — 2〜3 文 - Driving the news — 短い箇条書き - The big picture — 1 段落 - What's next — 1 段落 - Go deeper — 関連リンク 各セクションに「読む時間」が表示され、読者は冒頭 30 秒で判断できます。Axios HQ という社内プロダクトを企業向け SaaS 化し、2025 年時点で 700 社以上に導入、年間 5,000 万ドル超の売上を生んでいます。 ### The Information / Punchbowl News — 完全有料モデル - The Information (2013 年創業): テック専門、年額 399 ドル、推定購読者 5 万人、年間売上 2,000 万ドル超 - Punchbowl News (2021 年創業): 米議会専門、完全有料、推定購読者 25 万人、年間売上 2,000 万ドル - Semafor (2022 年創業): 「Semaform」フォーマット (News / Reporter's View / Room for Disagreement / View from / Notable) で AI 引用にも最適化、月間ニュースレター読者 200 万人 「広告に頼らず、購読料だけで運営する」モデルが専門メディア領域で確立しつつあります。 ### 日本のメディアでの打ち手 1. 編集テーマ別の特化型メルマガを 3〜5 本立ち上げる (無理に大型化せず、テーマ深掘りで) 2. 記事末尾の CTA をテーマ連動型に変える (汎用 CTA から脱却) 3. 登録 → オンボーディング → 継続の 90 日間の設計図を編集 + プロダクトで共同制作 4. PUSH 通知の許可率を Web 体験の主要 KPI として測定 (許可率 20% で優秀、30% で NYT 級) 5. 「読む時間」表示を全記事に導入 (読者の意思決定コストを下げる) 6. 法人向け Pro 版の可能性を業界別に検討 (年額 30〜500 万円) --- ## Part 4: チャネル①ニュースレターを主力プロダクト化 ニュースレターは Part 3 の事例 (The Atlantic / Substack / Politico Pro / Axios / The Information) が示すように、サブスクへの動線 + 単独プロダクト + B2B 化 の三役を担います。実装の要点を整理します。 - テーマ別の特化型ニュースレターを 3〜5 本 (汎用ではなく深掘り) - Smart Brevity 構造 (Why it matters / Driving the news / Big picture / What's next / Go deeper) - 読む時間表示の徹底 - 登録 → オンボーディング (1 日目 / 3 日目 / 7 日目 / 30 日目) の自動シーケンス - 開封率 35% / クリック率 8% を目標 KPI に - B2B Pro 版で年額 10〜100 万ドル企業契約 ニュースレターは「Web 記事の副産物」ではなく、独立プロダクトとして編集チームを持ち、独自の KPI と P/L で運営する時代になりました。 --- ## Part 5: チャネル②ソーシャル — TikTok / Instagram / YouTube Shorts への若年層シフト ### プラットフォーム別のニュース消費比率 (Reuters Institute 2025) - Facebook: 26% (2020 年 36% から減少) - YouTube: 24% (横ばい) - X (旧 Twitter): 12% (微減) - Instagram: 14% (2020 年 8% から上昇) - TikTok: 11% (2020 年 1% から急成長) - LinkedIn: 4% (じわじわ上昇) - Threads / Bluesky: 各 3% (新興) Facebook 一極集中の時代は終わり、若年層では Instagram / TikTok が中心、ニュース消費が複数プラットフォームに分散しています。 ### WSJ の TikTok 戦略 — 若年層獲得の前線 Wall Street Journal は 2020 年から TikTok 本格化、2025 年時点で 700 万フォロワー。 - 「TikTok ネイティブ」な縦動画 (1 分以内、字幕付き、ヘッドライン的な開始) - 記者の顔出し: 名物記者が自ら解説 - ニュースに「人格」を加える: 単なる事実報道ではなく、記者の専門性と表現 - 「裏側コンテンツ」: 取材・編集会議の様子をドキュメンタリー風に TikTok 経由読者はサイト平均より若く (18〜34 歳が 67%)、後にサブスクライバーへ転換するファネルの入口です。 ### BBC の Instagram Reels — グローバル展開 BBC News は Instagram Reels で 3,800 万フォロワー。地域別アカウントを運用 (BBC News / Mundo / Brasil / 中文 / Hindi)、各地域の言語・テーマ・トーンで配信。 ### NYT の Threads / Bluesky 進出 — Twitter 依存からの分散 NYT は 2024 年から Threads と Bluesky への進出を本格化。X、Threads、Bluesky、Mastodon、LinkedIn、Instagram、TikTok、YouTube ─ NYT は合計 12 のソーシャルプラットフォームに公式アカウントを持ち、それぞれにフォロワーと固有のコンテンツ戦略があります。 ### 日本のメディアでの打ち手 1. TikTok / Instagram Reels アカウントの本格運用 (記者の顔出しを前提に) 2. Threads / Bluesky への公式アカウント開設 3. 「Shorts → 長尺 → 記事」のファネル設計 4. プラットフォームごとに編集チームを分ける (最低でも担当を専任化) 5. X 依存から脱却 (複数プラットフォーム並行運用) --- ## Part 6: チャネル③音声・ポッドキャスト = 第二プロダクト ### Edison Research の Infinite Dial 2025 - 月間ポッドキャスト視聴率: 47% (2015 年 17% から 3 倍弱) - 週間視聴率: 34% - 平均視聴時間: 1 日 70 分 (ラジオを上回る) - ニュース系ポッドキャスト視聴者: 全成人の 28% ### NYT The Daily — 業界の金字塔 NYT The Daily は 2017 年配信開始、20〜25 分のデイリーニュースポッドキャストで月間 DL 約 400 万。Apple Podcasts のニュースカテゴリで継続的に 1 位。 - 20〜25 分という「通勤時間にちょうど良い」尺 - ホスト (Michael Barbaro、Sabrina Tavernise) の人物像が確立 - 取材記者を呼び出して対話形式で深掘り - 編集チームと独立した「The Daily 編集部」が制作 The Daily は単独で年間広告売上 1 億ドル以上を生む、メディア企業の主力プロダクトです。 ### その他の主力ポッドキャスト - Bloomberg Big Take: 月間 200 万 DL、ビジネスニュース深掘り - NYT Hard Fork: テック対話、月間 150 万 DL - WSJ The Journal: 月間 200 万 DL - Vox Today, Explained: 1 トピック深掘り、月間 100 万 DL - NPR Up First: 朝の 10 分ニュース、月間 300 万 DL ### 「コミューニケーターとしての記者」 ポッドキャスト時代の編集の変化として、「記者が音声でも伝えられる人」になる必要が増しています。NYT / Bloomberg / Vox は社内に Audio Coach を配置し、記者の音声プレゼンスを継続的にトレーニングしています。 ### 日本のメディアでの打ち手 1. デイリー or ウィークリーのポッドキャスト (10〜20 分、編集チーム内製) 2. 既存記者の「音声プレゼンス」トレーニング (外部の音声コーチを月 1) 3. Apple / Spotify / Amazon Music / YouTube Music の 4 プラットフォーム並行配信 4. ホスト読み広告モデル (CPM 40〜80 ドル、通常 Web 広告の 5〜10 倍) 5. 長文記事と並行配信 (相互送客) --- ## Part 7: チャネル④動画ジャーナリズム ### 若年層の動画ニュース消費 Reuters Institute 2025 によれば、18〜24 歳のメインのニュース源として動画を選ぶ比率は 47%、テキストの 31% を大きく上回ります。若年層にとって「ニュース = テキスト」という前提はもう成立していません。 ### Vox の Explainer — ジャンルを切り開いた先駆者 Vox の YouTube チャンネルは 1,300 万登録。Explainer 構造: 1. 冒頭 30 秒で問いを提示 2. データと歴史的文脈を 2〜3 分で 3. 専門家インタビューを織り交ぜる 4. 反対意見や限界も明示 5. 最後に「だから何なのか」を 30 秒で この構造は AI に引用される情報構造とも親和性が高く、テキストでも動画でも通用するメディアフォーマットになっています。 ### Bloomberg Quicktake — ブランド再構築 Bloomberg は 2020 年に動画ブランド「Quicktake」を立ち上げ、若年層向けに動画コンテンツを再構築。TikTok、YouTube、Twitter、Instagram で並行配信され、特に TikTok で 400 万フォロワー。「老舗ビジネスメディア → 若年層」のブランドピボットの代表例。 ### WSJ — 縦動画と横動画の使い分け WSJ は同じ取材素材を異なるフォーマットで再編集: - TikTok / Reels: 縦動画 60 秒、字幕大、記者の顔出し - YouTube Shorts: 縦動画 60 秒 - YouTube 長尺: 横動画 5〜15 分、ナレーション中心 - Instagram Stories: 24 時間限定、速報用途 1 回の取材を 4 フォーマットに展開し、コスト効率を保ちつつチャネル多角化を実現。 ### YouTube Live / Twitch — リアルタイム動画ジャーナリズム 選挙、災害、地政学的事件など、リアルタイム性が要求されるイベントで活用。CNN YouTube Live は米大統領選 2024 で同時視聴者 300 万人達成。リアルタイム動画は「集中度の高いオーディエンス」を生み、広告 CPM が通常の 3〜5 倍。 ### 日本のメディアでの打ち手 1. YouTube + TikTok の並行運用 (同じ取材を異なるフォーマットに再編集) 2. 記者の顔出しと音声を前提にした取材 3. Explainer ジャンルへの挑戦 (5〜15 分の解説動画) 4. ライブ配信の活用 (速報・選挙・大型イベント) 5. 動画編集チームの内製化 --- ## Part 8: GEO (Generative Engine Optimization) — AI に引用される情報資産 ### GEO とは何か AI 検索結果 (ChatGPT、Perplexity、Google AI Overviews、Claude 等) に自社情報が引用されることを目的とする最適化を GEO と呼びます。Time は 2026 年 3 月、GEO インサイト商品をブランド向けに提供開始 (Digiday)。 SEO が「Google の検索結果の上位に表示される」ことを目的にしていたのに対し、GEO は「ChatGPT が回答を生成するときに自社の記事を引用する」「Perplexity が出典リンクとして自社をリスト化する」「Google AI Overviews の要約に自社の情報が含まれる」ことを目的にします。 ### AI に引用される 6 つのシグナル 1. 明確なリード文 — 記事冒頭 100 字以内に結論を提示 2. 構造化された見出し — H2 / H3 が論理的、各セクションが独立して引用可能 3. データの出典明示 — 統計値・引用には元データへのリンクを必ず添える 4. 著者の専門性 — 著者プロフィール、所属、関連記事、専門領域を構造化データで明示 5. 更新日の明示 — `dateModified` を必ず更新 6. E-E-A-T シグナル — Experience / Expertise / Authoritativeness / Trust ### Schema.org の実装 `Schema.org` の `NewsArticle`、`Person` (author)、`Organization` (publisher) をすべての記事に実装することが AI 引用の入口です。とくに `author.expertise`、`citation`、`mainEntityOfPage` プロパティは、AI が「引用元として信頼できるか」を判定する重要なシグナル。 実装は `` に JSON-LD 形式で埋め込みます: ```json { "@context": "https://schema.org", "@type": "NewsArticle", "headline": "記事タイトル", "author": { "@type": "Person", "name": "著者名", "url": "https://example.com/about/author" }, "publisher": { "@type": "Organization", "name": "メディア名", "logo": "https://example.com/logo.png" }, "datePublished": "2026-06-16T10:00:00+09:00", "dateModified": "2026-06-16T15:00:00+09:00" } ``` ### llms.txt — AI クローラ向けの索引ファイル 2025 年に Anthropic が提唱し、2026 年に普及している標準。サイトのルートに置く Markdown ファイルで、AI クローラに「このサイトはどんなコンテンツで、何を引用してほしいか」を伝えます。OpenAI、Anthropic、Perplexity が公式対応を表明、AI 引用の入口として実装が広がっています。 ### AI クローラのホワイトリスト運用 — Reuters / Time 2026 年に入って、Reuters と Time は AI クローラをホワイトリスト方式でブロックし、ライセンス契約のあるプラットフォーム (OpenAI、Anthropic、Perplexity 等) にのみアクセスを認める方向に。「AI に学ばせないことで自社価値を守る + ライセンス契約をビジネスの一部にする」戦略です。 ### AI 経由の読者は質が高い Chartbeat のデータによれば、AI チャットボット経由でサイトに到達した読者は、記事 1 本あたり平均 4.8 ページビューを生成。Google 検索経由の 1.8 PV を大きく上回ります。「AI が要約を見せた上で、それでも詳細を読みたいと判断した読者」だけがクリックするため、関心の濃度が高い。 つまり AI に引用されることで「量は減るが質が上がる」流入が得られ、その読者をファースト・パーティ・チャネルに変換するのが理想の動線です。 ### 動線の設計 1. AI に引用される (GEO) 2. 関心の濃い読者がサイトに来る 3. サイト内回遊で価値を伝える (記事 2〜3 本) 4. ニュースレター / PUSH / サブスクに登録してもらう 5. 以降は直接届ける関係性 (ファースト・パーティ) ### 日本のメディアでの打ち手 1. 全記事に Schema.org を実装 (NewsArticle / Person / Organization / BreadcrumbList)。1〜2 週間 2. llms.txt をサイトルートに設置。1 日で実装可能 3. 記事冒頭の構造を統一 (100 字以内に結論、その後にデータ・背景・分析) 4. AI クローラのトラフィックを計測 (GPTBot、PerplexityBot、anthropic-ai) 5. OpenAI / Anthropic / Perplexity 等のライセンス契約を経営アジェンダに --- ## Part 9: 5 つの収益モデル再解剖 ### 収益モデル 1: 広告 ディスプレイ広告とプログラマティック広告は CPM が下落し続けています (12 ドル → 8 ドル)。ただし広告フォーマット別に見れば、伸びている領域は明確です: - ホスト読み広告 (ポッドキャストの司会者が口頭で読む): CPM 40〜80 ドル、クリック率は通常 Web 広告の 5〜10 倍 - ニュースレター内広告: CPM 30〜60 ドル、ブランドセーフ。Morning Brew、The Hustle、Axios Newsletters - 動画プリロール広告 (ロングフォーム): CPM 25〜50 ドル - ブランデッドコンテンツ (記事広告): 1 案件 500〜5,000 万円規模。Atlantic Re:think、WSJ Custom Studios、Bloomberg Media Studios - イベントスポンサー: 単発 1 万〜100 万ドル規模 - アプリ内・PUSH 通知広告: 許可型でユーザー同意度が高い 代表事例: Axios は売上の 60% がプレミアム広告フォーマット (ホスト読み / ニュースレター / ブランデッド / イベント / sponsored series)、残り 40% がサブスクリプションと Axios HQ SaaS。「プログラマティック広告ゼロ」という構成。 打ち手: プログラマティック広告依存を 30% 以下に。ホスト読み広告を提供できるポッドキャスト or 動画チャネルを 1 本。ニュースレター単独で広告枠を売れる規模 (開封 1 万人)。年 1 回の大型イベント + 四半期 1 回の中規模ラウンドテーブル。 ### 収益モデル 2: サブスクリプション NYT 有料購読者 1,100 万人超だが伸び率は鈍化。Reuters Institute 2025 で「過去 12 ヶ月で新規にニュースサブスクを始めた」と回答した米成人は 17%、3 年連続で減少。「マスサブスク」は飽和。 未来のサブスクモデル: - バンドル化: NYT が News / Cooking / Games / Athletic / Wirecutter を一括バンドル - ライト課金とのハイブリッド: 月額 100 円で広告非表示、記事単発 50 円 - 法人向け Pro 版: Politico Pro (年額 1 万ドル超)、The Information Pro、Bloomberg Terminal - テーマ別ニッチ購読: Substack のテック / 金融 / 政治、Lenny's Newsletter、Stratechery 打ち手: マスサブスクを諦めてテーマ特化型ニッチサブスク 3〜5 本。法人向け Pro 版 (年額 10〜100 万円) を業界別に検討。リテンションを初月解約率 / 90 日継続率 / 年次更新率の 3 階層管理。 ### 収益モデル 3: イベント / カンファレンス パンデミックで一度落ち込みましたが、2023 年以降に急回復。 - Bloomberg Live: 年間 250 イベント、推定 1.5 億ドル - FT Live: 年間 150 イベント、推定 8,000 万ドル - Politico AI Summit: 単発 500 万ドル - The Atlantic Festival: 年 1 回、1,000 万ドル - TechCrunch Disrupt: 年 1 回、2,000 万ドル メディアブランドの信頼性がイベント集客にダイレクトに効きます。3 フォーマット (エキゼクティブ招待制 / 大型カンファレンス / 小規模ラウンドテーブル) を組み合わせて運営。 打ち手: 年次大型イベント 1 つ (1〜3 万円、200〜500 人)。月次の招待制ラウンドテーブル (無料、業界トップ 20〜50 人)。オンライン同時配信。スポンサー営業チームの独立配置。イベント単体の P/L 独立管理。 ### 収益モデル 4: データ / インテリジェンス販売 メディアが取材で得たデータを再加工して B2B 向けに売るモデル。 - Bloomberg Terminal: 35 万契約、年額平均 2.5 万ドル、推定年間 100 億ドル超 - FT Specialist: 産業別 B2B データ製品群 - Reuters Eikon: 金融データ端末、年額 2 万ドル前後 - The Information Pro: テック業界の有料データルーム、年額 4,000 ドル + α - Pitchbook / Crunchbase: データ・インテリジェンス型の隣接事業者 3 階層モデル: 業界マップ (Pitchbook / Crunchbase 型) → トレンドダッシュボード (Bloomberg Terminal 型) → エキスパート・ネットワーク (GLG / Tegus 型)。 打ち手: 自社の業界取材で蓄積している情報を構造化 (記者ノートを共通スキーマで管理)。業界別データベース 1 本 (例: 日本のスタートアップ資金調達、日本の DX 事例)。法人プランへの上位移行ファネル。年額 50〜500 万円の B2B 価格設定。 ### 収益モデル 5: ライセンシング / コンテンツ販売 AI ライセンス契約が急成長領域: - News Corp × OpenAI: 5 年契約、推定 2.5 億ドル - AP × OpenAI: 年間数百万ドル - Axel Springer × OpenAI: 推定年額 1,000 万ドル超 - Reddit × Google: 年額 6,000 万ドル - The Atlantic / Vox Media × OpenAI: 推定数百万ドル / 年 - NYT × OpenAI 訴訟: 損害賠償請求 数十億ドル規模 OpenAI 一社だけで、メディア業界へのライセンス支出は年間 5 億ドル規模。Anthropic、Perplexity、Meta、xAI を加えれば、業界全体で年間 10 億ドル超の市場規模。 ライセンシングは AI に限らず、コンテンツシンジケーション / 書籍化・ドキュメンタリー化 / 教材化 / 業界連合での一括契約も。 打ち手: 過去取材アーカイブ (10〜30 年分の記事 + 取材ノート + 画像 + 動画) を構造化。AI ライセンス契約窓口を経営層直轄。業界連合の可能性を検討。AI クローラのアクセスログを取得・分析。 --- ## Part 10: 8 フロンティアと 10 隣接事業 ### 8 フロンティア — 2026〜2030 年に立ち上がる新領域 1. AI 引用流入の最適化 (GEO): 2030 年に 50 億ドル市場予測 (業界アナリスト)。Profound、Otterly、Goodie が先行 2. AI ライセンス事業の体系化: 業界連合 (Local Media Consortium、DCMS Coalition、News Media Alliance) 3. 法人向け B2B メディア: Politico Pro モデル (年額 1 万ドル超)。政策 / テック / 金融 / ヘルスケア / エネルギー / AI 領域 4. データ・インテリジェンス事業: 業界マップ / トレンドダッシュボード / エキスパートネットワーク 5. イベント・コミュニティ事業: エキゼクティブ・サミット / 専門カンファレンス / メンバーシップ / オンライン・コホート 6. SaaS / プロダクト化: Axios HQ、Substack、Beehiiv、Ghost — メディアの社内ツールが SaaS 化 7. 教育・キャリア事業: NYT Education の K-12 進出、ジャーナリズム / データ分析 / AI 活用の有料コース 8. 投資ファンド / ベンチャー支援: a16z モデル、Stripe Press、The Information の業界アクセス ### 10 隣接プロダクト・事業 (実装案) 1. ニュースレター運営支援 SaaS: 日本語圏では大手不在、市場年間 10 億ドル超、初期投資 5,000 万〜2 億円、SaaS 月額 3,000 円〜50 万円 2. GEO 計測・最適化ツール: 2030 年 50 億ドル市場、初期投資 5,000 万〜1.5 億円、SaaS 月額 5〜100 万円 3. AI ライセンス契約仲介: 立ち上がり期、仲介手数料 5〜10%、中堅・地方メディアがターゲット 4. ブランデッドコンテンツ制作スタジオ: 米国 200 億ドル / 日本 500 億円市場、案件 100〜2,000 万円、月額リテイナー 30〜200 万円 5. 業界特化型データ・インテリジェンス: Pitchbook 推定 5 億ドル、年額契約 50〜500 万円 / アカウント 6. メディア × AI 制作ワークフロー SaaS: 取材文字起こし / 翻訳 / ファクトチェック / 見出し A/B、SaaS 月額 5〜50 万円 7. B2B 専門ニュースレターネットワーク: Politico Pro モデル、法人契約年額 100〜500 万円 8. クリエイター支援プラットフォーム: 日本語版 Substack、売上 10% 手数料、初期投資 5,000 万〜1.5 億円 9. イベント・コミュニティ運営事業: グローバル年間数兆円、1 イベント 1,000 万〜1 億円 10. メディア向け教育プログラム: 1 コース 5〜30 万円、企業研修 100〜500 万円 各事業は単独で年間数千万〜数十億円規模の収益機会があり、メディアの「編集力」「ブランド信頼性」「業界人脈」の 3 つを直接マネタイズします。 --- ## Part 11: 日本のメディアの戦略マップ + 5 つの設計原理 ### 4 象限の戦略マップ 象限 1: 既存事業の深化 (Defend) — 中堅以下のメディアが最初に手をつける領域: - ニュースレター・PUSH・サブスクで既存読者との関係性を太く - Chartbeat / tubular で読者データを編集判断に統合 - AI クローラのトラフィック計測、GEO 最適化 - Schema.org・llms.txt 実装 - 編集 KPI を PV からエンゲージドタイム / 2 ページ目到達率 / サブスク転換率へ 象限 2: 編集力の外部化 (Expand) — 中堅メディアの新規収益柱: - ブランデッドコンテンツ事業 - 企業研修・コンサル - ジャーナリズム教育プログラム - メディア向け編集 SaaS 象限 3: 業界専門化 (Specialize) — 業界専門メディアの主戦場: - 政策 / テック / 金融 / ヘルスケア / エネルギー等の B2B 専門メディア - Politico Pro モデル (年額 100〜500 万円) - 業界別データベース化 - エキゼクティブ向け招待制イベント 象限 4: 新規事業 (New Bets) — 大手メディアや新規参入者: - AI ライセンス仲介 - GEO ツール - クリエイター支援プラットフォーム - メディア × VC (業界投資ファンド) ### 規模別の推奨戦略 - 小規模メディア (年商 1〜10 億円): 象限 1 + 象限 3。1 業界に深く特化、サブスク + ニュースレター + 招待制イベントの三本柱。5 年で 5〜20 億円規模 - 中堅メディア (年商 10〜100 億円): 象限 1 + 象限 2 + 象限 3 並行。ブランデッドコンテンツ + B2B Pro 版。5 年で 30〜200 億円規模 - 大手メディア (年商 100 億円以上): 象限 4 に大胆投資。AI ライセンス + データプラットフォーム + SaaS 化 + 投資ファンド。「メディア」を超えた「業界インフラ事業者」へ ### 5 つの設計原理 (チャネル運営の共通則) 原理 1: 「サイトをハブ」から「ポートフォリオ運営」へ。各チャネルに専任の編集者・プロデューサーを配置。「Web 編集の片手間でメルマガ・SNS・ポッドキャスト・動画を回す」では成立しない。 原理 2: 「同じ取材を複数フォーマットで再利用」する設計。1 回の取材を Web 記事 / ニュースレター / Shorts / 長尺動画 / ポッドキャストの 5 フォーマットに展開。「コンテンツの倍率」を上げる経営的なレバー。 原理 3: 「読者の人格」を編集に反映する。The Daily の Michael Barbaro、Hard Fork の Kevin Roose、Vox の Ezra Klein のように、記者個人の人格と専門性が前面に出るプロダクトが急増。Substack 的な個人ブランド対応。匿名のニュース報道だけでは AI と区別がつかない時代。 原理 4: 「読む時間」を明示する。Axios の Smart Brevity が示したように、現代の読者は「これは何分で読み終わるか」を判断材料にしている。記事 / ポッドキャスト / 動画のすべてに尺を見せる。 原理 5: 「ファースト・パーティ」を最終ゴールに設計する。ソーシャル経由、AI 経由、検索経由でサイトに来た読者を、最終的にメール / アプリ / サブスクに変換する。各チャネルで広告収益や認知度を稼ぐだけでなく、「ここで関係性を作って、次のチャネルへ繋ぐ」設計を、編集とビジネスとプロダクトが一緒に作る必要がある。 --- ## まとめ — メディアは「コンテンツの売り手」から「業界のインフラ」へ 2026〜2030 年のメディア事業を一言で要約すれば、こうなります。 「メディアは、コンテンツを書いて広告で売る事業から、業界のインフラを担う事業へ進化する」 業界のインフラとは何か: - 業界の情報を構造化して届ける (記事・データ・分析) - 業界の人脈を繋ぐ (イベント・コミュニティ) - 業界の意思決定に伴走する (B2B プロ版・コンサル) - 業界の次世代人材を育てる (教育プログラム) - 業界のテクノロジーを加速する (AI ライセンス・SaaS) - 業界の資本配分に影響する (投資ファンド・推薦記事) これらすべてが、「業界に対するメディアの信頼性」という同じ資産を元に展開できます。記事の質、編集の独立性、業界への深い理解 ─ これらが揃えば、収益モデルは複数に展開できます。 逆に言えば、これからのメディア経営は「ひとつの収益モデルに依存しない」「複数の収益源を並走させる」ことが標準です。広告だけ、サブスクだけ、ライセンスだけでは、構造変化を吸収しきれません。 ### 経営者として今日から問い直すべき 5 つの問い 1. 自社の読者基盤は「マス」か「ニッチ」か。どちらに賭けるか 2. 自社の取材データを構造化すれば、いくらで売れるか 3. 自社のブランドで集められるエキゼクティブの人数は何人か 4. 自社のコンテンツが OpenAI / Anthropic にいくらでライセンスされるか 5. 自社の編集者は、5 年後に何を売っているか (記事だけか、データか、SaaS か、コンサルか) これらの問いに答えを出すこと自体が、2026〜2030 年のメディア経営の最大の準備です。 日本のメディア事業者にとっていま重要なのは「縮む既存モデルを延命する」ことではなく、「業界のインフラとしての位置を取りに行く」ことです。それには編集力・データ力・ビジネス開発力・テクノロジー実装力の 4 つを横断的に動かす組織能力が必要になります。 キメラは、Chartbeat のリアルタイム分析、tubular のソーシャル動画データ、そして海外メディアの先行事例を組み合わせ、編集現場と一緒にこの再設計に伴走しています。ファースト・パーティ戦略、マルチチャネル設計、新収益モデルの立ち上げなど、具体的なケースで議論したい方はお気軽にご相談ください。 ## 参考文献 - Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025* — [pewresearch.org/journalism](https://www.pewresearch.org/journalism/) - Reuters Institute, *Digital News Report 2025* — [reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2025) - Reuters Institute, *Journalism, media, and technology trends and predictions 2026* - Chartbeat, *Pageviews are down, but AI's impact is complicated* — [chartbeat.com](https://chartbeat.com/resources/articles/pageviews-down-ai-impact/) - Magna Global, *Advertising Forecast 2025* - Edison Research, *The Infinite Dial 2025* — [edisonresearch.com](https://www.edisonresearch.com/) - Digiday, *Reuters and Time adopt bot-blocking whitelists to rein in AI crawlers* - Digiday, *Time pitches GEO insights into a new brand offering* - Digiday, *AI licensing deals between publishers and AI companies, 2024-2026* - Anthropic, *llms.txt specification* — [llmstxt.org](https://llmstxt.org/) - Press Gazette, *Newsletter subscribers — major publishers' growth 2024-2025* - The Atlantic Editor-in-Chief Jeffrey Goldberg interview, 2025 - Substack, *State of the Substack 2025 report* - Axios, *Smart Brevity methodology guide* / *Axios HQ growth report 2025* - Bloomberg Media, annual report 2025 - FT Live / Bloomberg Live / Politico AI Summit event reports - The Information, *State of the SaaS Newsroom 2025* - a16z, *Media-first VC thesis* - Pitchbook / Crunchbase 公開資料 - Local Media Consortium / DCMS Coalition AI licensing reports - Bloomberg, *Quicktake brand strategy retrospective* - Vox Media, *Explainer journalism methodology* - BBC News annual report 2025 --- ## ニュースサイトは「新しい新聞」になった — キメラが読み解く 2026 年メディア中間総括と、現場で動かせる 14 の打ち手 URL: https://ximera.com/posts/predictions-2026-mid-year-review 公開日: 2026-06-17 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Reuters Institute『Digital News Report 2026』、Nieman Lab『News sites are the new newspapers』(2026-06-15)、Nieman Lab『Predictions for Journalism 2026』に集まった 200 名超の予測寄稿、Chartbeat の上半期データ ─ これら一次資料を横断して、キメラとして 2026 年メディア業界の中間総括を提示する。Web サイト直接アクセスの構造的縮小、ソーシャル・チャットボットへの移行、Facebook for News の意外な復活、Instagram の若年層支配、YouTube だけが意図的訪問される構造、長尺動画の若年層人気、有料化の鈍化、impartial news の根強い支持、Public Media の信頼の砦としての位置 ─ これらの最新数字を読み解いた上で、編集・プロダクト・営業の各レイヤーで現場が明日から動かせる 14 の打ち手を、コスト感と効果と合わせて具体に整理した。読了 40 分。 キメラは「新聞社・ウェブメディア・コンテンツをつくり届ける人のための事業戦略を、データの側面から支えるサービス」を提供しています。本稿はその立場から、2026 年上半期に起きたメディア業界の構造変化と、下半期に向けて取れる打ち手を、キメラとしての視点で整理した中間総括です。 裏付けとして次の一次資料を横断的に引用しました(本稿末の参考文献に全件まとめています)。 - Reuters Institute for the Study of Journalism, *Digital News Report 2026*(2026-06-15 公開、世界 48 か国・約 9 万人調査) - Nieman Lab, *News sites are the new newspapers: People are abandoning them for social media*(2026-06-15) - Nieman Lab, *Predictions for Journalism 2026*(2025 年末公開、200 名超の業界トップによる予測寄稿) - Nieman Lab, *These 16 new journalism jobs could help publishers future-proof their newsrooms*(2026-06) - Chartbeat / INMA, *Pageviews are down, but AI's impact is complicated*(2026-06) - Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025* - Edison Research, *The Infinite Dial 2025* - Press Gazette, Digiday の業界トラッキング これらの一次資料に対するキメラの読み解きと、現場の打ち手 14 個を、編集・プロダクト・営業の各レイヤーで提示します。メディア担当者向けに専門用語はその都度噛み砕き、40 分の長文にまとめました。下半期の事業計画見直しのたたき台として、あるいは部門ミーティングの素材として、お役に立てれば幸いです。 --- ## Part 1: 「ニュースサイトは新しい新聞になった」 — この比喩が刺さる理由 ### キメラの読み 紙の新聞が 1990 年代から 2010 年代にかけて辿った道を、いまは Web サイトが辿っている ─ これがキメラの 2026 年上半期の総括の出発点です。 紙が縮んでいた時代、新聞社の課題は「紙の発行部数の減少をどう食い止めるか」「Web 版でどう収益を上げるか」でした。その答えとして、メディアは Web サイトに大規模投資し、サブスクリプションを始め、データ分析ツールを導入し、ソーシャルメディアでの拡散に賭けました。Web サイトは「新しい主戦場」でした。 2026 年、その Web サイトそのものが、紙の新聞と同じ運命を辿り始めています。読者は publisher の Web サイトを訪問することをやめ、ソーシャルメディア、メッセンジャー、PUSH、ニュースレター、そして AI チャットボットに移行している。 ### 裏付けとなる数字 この読みを裏付ける数字は、Reuters Institute『Digital News Report 2026』(以下 RISJ 2026)にあります。Nieman Lab の記事「News sites are the new newspapers: People are abandoning them for social media」(2026-06-15)が引用するところでは、 > 「48 マーケットのうち 30 マーケットで、ソーシャルメディアと動画ネットワークがニュースのソースとして publisher 自社のオンラインニュースサイト・アプリより人気を上回った」(RISJ 2026) > 「平均して、ニュース機関は自社サイトとアプリでの動画消費が 2025 年から 5 ポイント、2021 年から 10 ポイント減少した」(RISJ 2026) つまり、サイト直接アクセスでも動画でも、publisher オウンドが負け、サードパーティが取りに行っている構造です。一方で、グローバル全体では 77% の人が週次でオンラインニュース動画を消費しており、動画自体は減っていません。減っているのは、publisher の動画を見ている人だけです(出典:Nieman Lab, *News sites are the new newspapers*, 2026-06-15)。 ### キメラの解釈 この変化は「メディアの終わり」ではなく、「届け方の総入れ替え」を意味します。読者はソーシャル経由の体験に完全には満足していない。RISJ 2026 によれば、ソーシャルメディア・動画ネットワークをニュースの主要ソースとして使う人ほど、ウクライナ、インフレ、トランプ、中東、気候、移民の各報道に対して「ネガティブな評価」を持つ傾向があります。 つまり読者は「とりあえずソーシャル経由で見る、AI に要約させる、TikTok で 60 秒の動画を見る」という、消極的な妥協をしている。この妥協層を再びメディアに引き戻せる入口を作れるかが、下半期から 2027 年にかけての勝負所です。 --- ## Part 2: 上半期の最新数字を 9 つの発見で読み解く RISJ Digital News Report 2026 と Nieman Lab の最新記事から、メディアの現場が今すぐ把握すべき発見を 9 つに整理します。各発見の後にキメラの解釈を添えています。 ### 発見 1: チャットボット経由のニュース消費が二桁に到達 AI チャットボット(ChatGPT、Gemini、Perplexity、Claude など)でニュースを消費する人の比率は、グローバル全体で 7%(2025)から 10%(2026)に上昇。35 歳未満では 16% です(出典:RISJ 2026, *Digital News Report*, Amy Ross Arguedas 解説)。 成長は地域別に大きくばらつきます。韓国とスペインでは前年比で倍。アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、南欧・東欧が牽引。一方で英国と米国はほぼ横ばい。 決定的なのは AI チャットボットからのクリックスルー率の低さです。検索経由のクリックスルー率は 19%、ソーシャル経由は 17% に対し、AI チャットボット経由は「常に」「よく」クリックする読者がわずか 4%(RISJ 2026)。AI で要約を読んで、それで十分と感じる読者が多い。 キメラの解釈:AI チャットボットを使う読者の動機の最頻回答は「フォローアップの質問ができる」(42%)、「複雑なニュースの要約」(36%)、「他言語のニュースの翻訳」(33%)。「対話的に深掘りできる」ことが魅力の核心です。publisher にとっての示唆は明確です。「AI に引用される情報資産」として記事を構造化する(Schema.org、llms.txt、著者プロフィール、データ出典の明示)と同時に、AI で要約しきれない深さの記事を作る ─ 「クリックする理由」を残す両軸の戦略が必須です。 ### 発見 2: Facebook for News が復活 2014 年から RISJ が「過去 1 週間にニュースを得るのに使ったソーシャルネットワーク」を聞き続けてきた結果、Facebook は 2024 年までずっと減少傾向でした。 ところが 2026 年、43% の回答者が「ニュースに Facebook を使っている」と回答、31% が「過去 1 週間に使った」と答えました(出典:RISJ 2026)。Press Gazette や Digiday の他の調査でも、Facebook 経由の publisher トラフィックが復活している兆候は確認されています(出典:Press Gazette, *News publishers see a surge of Facebook engagement from photo posts*, 2025-05)。 キメラの解釈:これは「Meta のアルゴリズム変更で投稿表示優先度が下がった」流れに対する、ある種の揺り戻しです。Meta 側に news を意図的に押し戻す動きがあるとは考えにくいので、現実的には「Facebook に残ったコア層が、依然としてニュースを必要としている」「写真ベース投稿の表示優先度が上がり、写真主体のニュース投稿が拾われている」可能性が高い。ただし、これは Meta 都合の一時的な現象である可能性もあります。「Facebook ニュース戦略の再立ち上げ」は、過剰投資せず、写真投稿の最適化と PUSH 通知の代替経路としての位置づけで再開するのが安全です。 ### 発見 3: Instagram が 18-24 歳の最大ソーシャル news ソースに 18-24 歳のうち 42% が「過去 1 週間に Instagram でニュースを得た」と回答。Instagram がこの年齢層で TikTok や YouTube をも上回り、最大のソーシャル news ソースになりました(出典:RISJ 2026)。 WSJ TikTok の 700 万フォロワー、BBC News Instagram Reels の 3,800 万フォロワーといった事例は、若年層リーチを取りに行ったメディアの成功例として広く知られています(出典:Digiday の追跡記事、各社公表データ)。 キメラの解釈:日本の publisher にとって、Instagram と TikTok への記者顔出し縦動画戦略は、いまや「やるかやらないか」ではなく「どれだけ本気で投資するか」の問題です。記者個人のブランドを編集ガイドラインに組み込み、週次の縦動画配信を編集デスクの定常業務にする ─ ここに踏み込めるかが分かれ目です。 ### 発見 4: YouTube は「意図的にニュースを求めて訪問される」唯一のプラットフォーム RISJ 2026 の研究員 Craig T. Robertson が解析するところでは、YouTube、Instagram、TikTok のいずれも news 動画は見られているが、YouTube だけは「意図的にニュースを探して訪問されている」プラットフォームです。Instagram と TikTok の利用者の多数は「ニュースがたまたまフィードで流れてくる」状態(出典:RISJ 2026)。 さらに興味深いのが、長尺動画の若年層人気です。YouTube で 5 分以上のニュース動画を週次で見る 18-24 歳は 52%、55 歳以上は 41%。短尺動画は実は逆に、55 歳以上の YouTube 利用者(69%)が 18-24 歳(60%)より多く見ています(出典:RISJ 2026)。 キメラの解釈:「若年層 = 短尺動画」というステレオタイプは、YouTube では崩れています。Nieman Lab Predictions 2026 で Gretel Kahn が「Long-form video is the next big thing for young audiences」と予測した(出典:Nieman Lab, *Predictions for Journalism 2026*)通りの現実です。日本の publisher にとって、TikTok / Reels の縦動画と、YouTube の 5〜15 分の中尺ドキュメンタリー動画は、別の戦略として両建てする時期に来ています。 ### 発見 5: ニュース有料化は天井に到達した可能性 RISJ 2026 によれば、各国全体で「過去 1 年間にオンラインニュースに支払った」と回答した人は 17%(2025 年は 18%)。米国だけで見ると 4 ポイント減少(17% → 13%)しました。 キメラの解釈:「ひとつの世帯がいくつもニュースを購読する」発想は限界に達した、と読みます。読者は「自分にとっての主要 1〜2 媒体」しか選ばない。これは「マスのサブスク」から「ニッチ深掘り型のサブスク」「法人 Pro 版」「バンドル化」への戦略転換が必須であることを示します。NYT のサブスクバンドル(News、Cooking、Games、Athletic、Wirecutter)、Politico Pro(年額 1 万ドル超の企業契約)モデルが、後続が学ぶべき方向です。 ### 発見 6: News Creators は補完役、置き換えではない 世界 48 か国の 27% が週次で news creators からニュースを得ている。ただし「ニュースのニーズの大半・全部を creators で満たす」と回答したのは 13%(出典:RISJ 2026, Nic Newman 解説)。 RISJ の整理によれば、creators が伝統メディアを「置き換える」のではなく「補完する」役割を果たしている。読者は creators から interpretation(解釈)、explanation(解説)、critique(批評)、reaction(反応)を得ている。news を「最初に作る」のは依然として伝統メディアです。 国別の差は大きく、ケニアでは 58% が週次 creator 利用、33% が「ニーズの大半・全部」を満たしている。一方オランダではそれぞれ 9% と 2%(出典:RISJ 2026)。 キメラの解釈:日本の publisher にとって、news creators との関係は「敵対」でも「無関心」でもなく「パートナーシップ」が現実的な道筋です。記者個人を creator として育てる(社内)、外部 creator と編集権を明示した上で共同企画を組む(外部)、両方を進める必要があります。 ### 発見 7: TV ニュースは若年層維持率に深刻な問題 RISJ 2026 の Richard Fletcher の解析では、TV ニュース・新聞・ラジオの衰退要因を「adoption(採用率)」と「retention(維持率)」に分けています。 - TV ニュース:adoption 79%、retention 66%。若年層(18-34 歳)の維持率は 51%(35 歳以上は 71%) - ラジオ:adoption 53%、retention 39%。若年層の採用率自体が低い - 新聞:adoption 49%、retention 27%。「失われた世代」状態 - web/app:retention は若年層で 10 ポイント低い そして警鐘です。「ある source から離脱した人々の一部は、ニュース自体から離脱する」。TV ニュースを離脱した人のうち 9% は、RISJ が調査した全ニュース source のいずれも使っていません(出典:RISJ 2026, Fletcher 解説)。 キメラの解釈:日本のメディア事業者にとって、「若年層リテンション」を最重要 KPI に格上げする時期です。新規読者の獲得(adoption)に加えて、登録後 30 日 / 90 日 / 1 年の継続率を編集・プロダクト・営業の共通指標として明示する。これができないと、5 年後に「失われた世代」の規模が取り戻せないレベルに広がります。 ### 発見 8: 中立的なニュースは依然として選ばれる Predictions 2026 で多くの寄稿者が懸念した「ニュースの過剰な分極化」「両論併記の死」に対して、RISJ 2026 の発見は意外なものです。 「ニュースは中立的なソース(particular point of view を持たない)」を好むと答えた人は 45%。「自分の見解に合うソース」は最頻回答ではない(出典:RISJ 2026, Rasmus Kleis Nielsen 解説)。 ただし国別の差は大きい。ドイツは 64% が中立的ニュースを好む(「自分に合う」は 10%)。一方ナイジェリアでは「自分に合う」が 46%、「中立」が 22%。Nielsen の回帰分析では、ソーシャルメディアでのニュース利用率が高い国ほど「自分に合う」ニュースを好む比率が高い、という相関が示されています。 キメラの解釈:これは publisher にとって希望の数字です。中立的・impartial なニュース提供は依然として market value を持つ。日本の publisher の多くは「中立的編集」を強みとしていますが、それが「読者が消極的に受け入れる中立」ではなく「読者が能動的に選ぶ中立」になっているかは別問題です。中立性の現代版とは何か、読者が選びたくなる中立とは何か ─ ここの再定義が下半期のアジェンダです。 ### 発見 9: Public Media(公共メディア)は信頼の砦 RISJ 2026 が 26 か国で「Public Service Media が自国の生活にどんな影響を持つか」を聞いたところ、37% が「ポジティブ」、35% が「ニュートラル」、22% が「ネガティブ」(出典:RISJ 2026)。 国別差は大きい。フィンランドではほぼ全政治スペクトルで public media がポジティブに評価。一方、イタリアでは左派が悪く、右派が良く評価、これは政府の編集独立性への介入が背景。スロバキアでは政府が既存の公共放送 RTVS を廃止し、政治支配色の強い STVR に置き換えたことで国際的な懸念が広がっています(出典:RISJ 2026, Jim Egan 解説)。 キメラの解釈:日本では公共メディア = NHK の議論が中心になりがちですが、Reuters や AP のような通信社、地方紙が担う公共的機能も含めて広く考える時期です。AI 時代に信頼性の砦としての位置を維持するために、編集独立性の制度的担保 ─ 経営層と編集権限の分離、編集判断への外部介入の透明化 ─ が問われます。 --- ## Part 3: Predictions 2026 の中心テーマと、上半期の実績照合 Nieman Lab Predictions 2026 には 200 名超が寄稿しました(出典:Nieman Lab, *Predictions for Journalism 2026*)。AI、ニュースサイト直接訪問の崩壊、編集とエンジニアリングの統合、若年層、信頼性、ジャーナリスト育成、収益多角化が中心軸です。実名で代表的な予測を取り上げて、上半期の実績と照合します。 ### テーマ A: AI ライセンスは publisher を救うか、ほぼ何ももたらさないか 寄稿者の見解は分かれました。 - 楽観派:Nicholas Thompson(The Atlantic CEO)「The year AI companies pay for the value of publishing」 ─ AI 企業がメディアを「学習データの供給者」として正式に認識し、ライセンス料を払う構造が確立される、と予測 - 悲観派:David Skok(The Logic)「Publishers will see no meaningful AI licensing revenue」 ─ Google の検索クローラと AI 学習クローラが単一システムで機能している限り、ジャーナリズムの AI モデルへのライセンス市場は実質的に停滞する、と冷ややかに警告 - 中間派:Damon Kiesow(University of Missouri)「Publishers fight Big Tech with small local language models」 ─ publisher が小規模のローカル言語モデルで自社地域に特化する戦略を予測 上半期の実績は、両派の主張がともに部分的に正しかったことを示します。 - 大型ライセンス契約:News Corp × OpenAI 5 年 2.5 億ドル、AP × OpenAI、Axel Springer × OpenAI、Reddit × Google 6,000 万ドル / 年(出典:Digiday の継続トラッキング) - 中堅メディアへの波及は限定的 - Reuters と Time が AI クローラのホワイトリスト化を 2026 年 4 月以降開始(出典:Digiday, *Reuters and Time adopt bot-blocking whitelists to rein in AI crawlers*) - Time が GEO(Generative Engine Optimization)インサイト商品をブランド向けに提供開始(2026 年 3 月、出典:Digiday, *Time pitches GEO insights into a new brand offering*) キメラの解釈:「ライセンス契約」か「訴訟」かの二択を経営アジェンダ化する時期です。日本の publisher にとっては、業界連合体(日本新聞協会レベル)での共同交渉の検討も含めて、AI ライセンス担当を経営層直轄で配置するのが下半期の最重要意思決定です。 ### テーマ B: ニュースサイトを「消すか、再設計するか」 publisher の Web サイトが終わりつつある、というメッセージは Predictions 2026 で複数の寄稿者が触れました。 - Burt Herman(Storify 創業者)「Forget "Google Zero." We need to talk about "People Zero."」 ─ Google からの流入ゼロが問題ではなく、人々がそもそも訪問しないことが問題 - Joanne McNeil(作家)「Publishers leave the dead malls of Web 2.0」 - Eric Ulken(International Press Institute)「Local news embraces its consumer product role」 - Rishad Patel(Splice Media)「Welcome to your ice cream shop」 ─ メディアは「アイスクリームショップ」、複数のフレーバーで読者の様々な課題を解決 これらは予測通り、上半期に publisher の戦略の中心アジェンダになりました。RISJ 2026 の発見「Web サイト直接が 35% → 22% に減少」という数字は、Herman の「People Zero」予測の正しさを裏付けます(出典:Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025*)。 キメラの解釈:「Web サイトを消す」のではなく、「Web サイトの役割を再定義する」が現実的です。Web サイトは「読者を直接迎える場」から「サブスク・メルマガ・PUSH の入口」に変わる。トップページのトラフィック比率を下げ、流入が直接記事に来る前提でランディングを設計し直す。 ### テーマ C: 編集とエンジニアリングの組織融合 - Nikita Roy(Newsroom Robots Lab)「AI will rewrite the architecture of the newsroom」 - Mariah Craddick(FT Strategies)「The year news and product teams actually work together」 - Kawandeep Virdee「Rise of the vibecoding journalists」 - Ernest Kung(AP)「Big newsrooms pave the way for AI agents in journalism」 上半期の実績はこの予測通りに進みました。Nieman Lab が 2026 年 6 月に公開した「These 16 new journalism jobs could help publishers future-proof their newsrooms」は、Future Newsrooms Study(FT Strategies / WAN-IFRA / Arc XP 共同研究)を下敷きに、編集に統合される 16 の新職位を提示しました(出典:Nieman Lab, 2026-06)。Politico、Le Monde、Schibsted、Reach(英国)が先行事例として浮上しています。 キメラの解釈:日本のメディア組織で最も遅れているのがこの領域です。エンジニアリングが「IT 部門」のままで、編集判断のスピードに追随できていない。下半期は「編集ディレクター直轄のエンジニアリング予算枠(工数の 30%)」を設定するメディアが、競合との時間軸の差を作ります。 ### テーマ D: News Creators とジャーナリズムの関係 - Liz Kelly Nelson「The creator infrastructure gap will define journalism's next chapter」 - Tracie Powell(Pivot Fund)「Journalism's influencer obsession will age poorly」 ─ ジャーナリズムのインフルエンサー強迫は古びる、と警告 - Jonathan Hunt「Publisher investments fizzle, creator investments sizzle」 ─ publisher への投資は冷め、creator への投資は熱くなる RISJ 2026 の発見「27% 週次 creator 利用、13% がニーズ大半充足、置き換えではなく補完役」は、複数の予測の中間値に近い結論を示しました。 キメラの解釈:日本でも「個人ジャーナリストの独立」「Substack 的有料メルマガ」が増えています。publisher 側が「卒業生人脈の活用」「creator パートナーシップ」を制度化することで、人材流出をネットワーク化に変えられます。 ### テーマ E: 信頼性とジャーナリストの役割再定義 - Maryana Iskander(Wikimedia Foundation)「The AI winners will recognize that knowledge needs humans」 - Ole Reißmann(Der Spiegel)「To compete with machines, we become more human」 - Felix M. Simon(RISJ)「The AI bubble may pop. People's use of AI for information won't.」 これらの予測は、上半期に「人が書いた信頼できる記事」「Human-written バッジ」「C2PA(コンテンツ来歴認証)」への投資として実現しています。Press Gazette 2025 によれば、AI 検索エンジンが回答で引用する一次情報源の上位 10 位中 7 つは伝統的な新聞・通信社(Reuters、AP、NYT、Washington Post、BBC、Guardian、Le Monde)(出典:Press Gazette 2025)。 キメラの解釈:「AI 時代だからこそ伝統メディアの信頼性が再評価される」は構造的に正しい。ただし、これは自動的に publisher に有利に働くのではなく、「信頼性を可視化する仕組み」(C2PA、著者プロフィール、データ出典の構造化、編集ガイドラインの公開)を実装した publisher にのみ恩恵が及びます。 --- ## Part 4: 現場で動かせる 14 の打ち手 ここまでの分析を踏まえて、メディアの現場で明日から動かせる打ち手を、編集・プロダクト・営業の各レイヤーで整理します。優先順位とコスト感を明示します。 ### 編集レイヤー(5 つ) #### 打ち手 1: 編集会議の週次「読者データ・レビュー」枠を 30 分確保する(コスト:ほぼゼロ、効果:大) 毎週の編集会議の冒頭 30 分を「先週公開した記事の読者データを見て、来週の判断を決める」枠に。Chartbeat のエンゲージドタイム、スクロール深度、流入経路別比率、メルマガ登録 CTA の経由クリック、PUSH 通知の許可率と開封率。データを「眺める」のではなく「翌週の編集判断に変える」運用が肝心です。NYT、Washington Post、Guardian は既に標準化しています。 #### 打ち手 2: テーマ別ニュースレターを 3〜5 本立ち上げる(コスト:小〜中、効果:大) 「メディアのメルマガ」という単一プロダクトをやめ、テーマ別に複数立ち上げます。Washington Post 70 種類以上、NYT 50 種類以上、The Atlantic 30 種類(出典:各社公表データ)。日本では 3〜5 本から始めるのが現実的です。 #### 打ち手 3: 記事冒頭に「読了 3 分」「読了 7 分」を表示する(コスト:実装数時間、効果:中) 文字数を 400 字 / 分で割って表示するだけ。読者の意思決定コストを下げます。Axios の Smart Brevity モデルが標準化した手法です。 #### 打ち手 4: 編集デスクから「AI 担当」を 1 名指名する(コスト:兼任で OK、効果:大) 新規採用ではなく、既存編集者から 1 名。本人の主要 KPI に「AI を使う実験」を入れ、記者業務の痛点をプロトタイプで解決、効果があれば本実装をエンジニアリングに依頼。Schibsted は年間 80 以上のプロトタイプ、30 以上が本実装に(出典:Schibsted Annual Report 2025)。 #### 打ち手 5: 短尺・縦動画担当を編集デスクに正式配置する(コスト:兼任で開始可、効果:大) TikTok、Instagram Reels、YouTube Shorts 向けの縦動画担当を編集デスクに置き、週次で 3〜5 本投稿。記者の顔出し、60 秒以内、字幕大。記者個人のキャラクターを前面に出すことで、メディアブランド + 個人ブランドの二段構造を構築できます。 ### プロダクト・テクノロジーレイヤー(5 つ) #### 打ち手 6: ファースト・パーティ KPI を経営最重要指標に追加する(コスト:管理コストのみ、効果:大) PV / UU に並ぶ、または置き換える KPI として、以下を経営会議で週次追跡:メールアドレス登録者数、メールマガジン週次開封率、PUSH 通知許可率、アプリ MAU、セッションあたりの 2 ページ目到達率、30 日 / 90 日継続率。 #### 打ち手 7: 記事末尾の CTA をテーマ連動型に変える(コスト:実装数日、効果:大) 汎用「メルマガ登録はこちら」CTA をやめ、記事のテーマに応じた特化メルマガに分岐。文脈一致で登録率が 2〜5 倍に上がります。The Atlantic、Politico、Axios が採用しているモデル。 #### 打ち手 8: Schema.org と llms.txt を全記事に実装する(コスト:実装 1〜2 週間、効果:大) AI 検索エンジン(ChatGPT、Perplexity、Google AI Overviews)に引用される入口を整備。Schema.org の NewsArticle、Person(著者)、Organization(発行者)、BreadcrumbList。llms.txt をサイトルートに置き、注目記事の索引を維持。記事冒頭の構造を統一(100 字以内に結論、その後にデータ・背景・分析)。統計値・引用には必ず元データへのリンクを付ける。「最もコスパの良い SEO / GEO 投資」と言える領域です。 #### 打ち手 9: PUSH 通知許可率を Web 体験の主要 KPI に追加する(コスト:実装 1〜2 週間、効果:大) Web サイトに来ない時代の「自社からのリーチ」の重要な手段。許可率の目安:10〜15%(標準)、15〜20%(優秀)、20% 以上(業界トップクラス)、30% 以上(NYT 級)。初回訪問時には出さない、記事を 30 秒以上読んだ読者にのみ出す、許可前に「どんな通知を受け取りますか?」の選択肢を提示。 #### 打ち手 10: AI クローラの訪問ログを取得・分析する(コスト:実装数日、効果:中) GPTBot、PerplexityBot、anthropic-ai、Google-Extended などのアクセスログを取得。どの記事がクロールされているか、AI 検索結果でどの記事が引用されているか(Profound、Otterly、Goodie 等の GEO 計測ツール)。後の AI ライセンス交渉や GEO 最適化施策の材料になります。 ### 営業・経営レイヤー(4 つ) #### 打ち手 11: 法人向け B2B Pro 版の試験運用を 1 業界で始める(コスト:3,000〜5,000 万円、効果:大) Politico Pro モデル(年額 1 万ドル超の企業契約)を参考に、業界別の有料情報サービスを試験的に立ち上げ。業界別デイリーニュースレター、業界専門家との Q&A、業界別データベース・レポート、年次サミット・招待制ラウンドテーブル。年額 30〜100 万円の法人契約、最初は 10〜30 社の獲得を目指します。 #### 打ち手 12: 年次大型イベントを 1 つ確立する(コスト:1,000〜3,000 万円、効果:大) Bloomberg Live 年間 250 イベント・推定 1.5 億ドル、FT Live 年間 150 イベント・推定 8,000 万ドル(出典:各社公表データ、Digiday 推定)。日本でも、業界専門メディアにとって最も投資対効果の高い新収益柱です。参加費 1〜3 万円、200〜500 人規模、スポンサー込みの年次イベントを 3 年継続でブランド化。 #### 打ち手 13: AI ライセンス契約の経営アジェンダ化(コスト:3,000〜5,000 万円、効果:超大) 経営層直轄で「AI ライセンス担当役員 / 部長」を配置。取材アーカイブの構造化、AI クローラのアクセスログ分析、OpenAI / Anthropic / Perplexity / Google との個別交渉、業界連合体(日本新聞協会レベル)での共同交渉の検討、「訴訟か、ライセンスか」の方針社内明示。NYT は訴訟、AP / Axel Springer / News Corp / Vox Media / The Atlantic はライセンス契約を選びました。 #### 打ち手 14: 編集ディレクター直轄の「ニュースルーム・エンジニアリング予算」を確保する(コスト:エンジニアリング工数の 30%、効果:大) エンジニアリング・リソースの 30% を、編集ディレクターが配分する権限を持つ仕組み。編集ディレクターと CTO が週次で要望リストをレビュー、「公開までの時間」「機能利用率」を編集 / 経営共通のダッシュボードで管理。Politico、Bloomberg はこの構造を持ち、AI 機能を 2〜3 週間ごとに出せる体制を作っています。 --- ## Part 5: 規模別の優先順位 14 の打ち手すべてを同時に始めるのは現実的ではありません。規模別の優先順位を整理します。 ### 小規模メディア(年間売上 1〜10 億円) 優先順位順に: 1. 打ち手 8(Schema.org / llms.txt 実装) 2. 打ち手 1(編集会議の読者データレビュー枠) 3. 打ち手 3(読了時間の表示) 4. 打ち手 7(記事末尾の CTA をテーマ連動型に) 5. 打ち手 9(PUSH 通知許可率の KPI 化) これらを 3〜6 ヶ月で着手すれば、検索リファラル縮小の影響をある程度緩和できます。 ### 中堅メディア(年間売上 10〜100 億円) 優先順位順に: 1. 上記小規模の 5 つすべて 2. 打ち手 2(テーマ別ニュースレター 3〜5 本立ち上げ) 3. 打ち手 4(AI 担当の編集デスク指名) 4. 打ち手 5(ソーシャル動画の記者顔出し) 5. 打ち手 6(ファースト・パーティ KPI の経営指標化) 6. 打ち手 11(法人向け B2B Pro 版の試験運用) 7. 打ち手 12(年次大型イベントの確立) これらを 6〜12 ヶ月で展開することで、Web サイト依存度を下げつつ、複数チャネルのポートフォリオに移行できます。 ### 大手メディア(年間売上 100 億円以上) 優先順位順に: 1. 上記すべて 2. 打ち手 10(AI クローラ訪問ログ分析) 3. 打ち手 13(AI ライセンス契約の経営アジェンダ化) 4. 打ち手 14(編集ディレクター直轄のエンジニアリング予算) これらは投資負担も大きく、経営層の判断が必要ですが、成功すれば数十億円規模の新収益柱になり得ます。 --- ## Part 6: 下半期に注目すべき 5 つの動き 上半期の動きと、Predictions 2026 でまだ起きていない予測を踏まえて、2026 年下半期(7〜12 月)に注目すべき変化を 5 つ整理します。 ### 動き 1: 中堅メディアへの AI ライセンス契約の波及 上半期は大手中心でしたが、業界連合体(米国 Local Media Consortium、英国 DCMS Coalition、欧州 News Media Alliance)経由での一括契約が中堅メディアにも降りてきます。日本でも、日本新聞協会レベルでの動きが始まる可能性があります。 ### 動き 2: NYT vs OpenAI 訴訟の重要判断 NYT vs OpenAI 訴訟は 2023 年末から継続中ですが、下半期に重要な裁判所判断が予定されています(出典:複数の法務メディアの追跡記事)。判決の方向によって、「ライセンス契約路線」が確定するか、「訴訟による損害賠償路線」が主流になるかの分岐点になります。 ### 動き 3: 日本での GEO 市場の本格立ち上がり Time の GEO インサイト商品提供開始(2026 年 3 月、出典:Digiday)を受けて、下半期は日本のメディアでも GEO 対応が本格化する見込みです。早期に取り組んだメディアが、AI 検索引用での優位を確立できる時期です。 ### 動き 4: 日本でのニュースルーム・エンジニアリング職の新設 Politico、Le Monde、Schibsted などの編集 × エンジニアリング統合モデルが、日本の Web メディアで試行され始める可能性があります。新聞社の組織再編は中期的な課題ですが、Web メディア・新興メディアでは下半期から本格的な人材配置が始まる見込みです。 ### 動き 5: Facebook for News 復活への対応 RISJ 2026 が示した Facebook ニュース利用率の復活は、上半期最大の意外な発見です。下半期は publisher が「Facebook を再評価して投稿戦略を立て直すか」が問われます。Meta のアルゴリズム動向と publisher の対応を、業界全体が注視する半年になります。 --- ## まとめ — キメラからのメッセージ Nieman Lab の「ニュースサイトは新しい新聞になった」というメッセージは、悲観的に聞こえますが、実際には方向転換の起点として読むべきです。 紙の新聞が縮んだとき、新聞社は Web サイトに投資して新しい主戦場を作りました。いま Web サイトが縮んでいるとき、メディアはニュースレター・PUSH・アプリ・AI ライセンス・ソーシャル動画・イベント・法人 Pro 版に新しい主戦場を作る段階に入っています。 すべての打ち手は、「Web サイトに来てもらえない読者と、どう関係を作るか」という同じ問いに答えるものです。 - ファースト・パーティ(メール / アプリ / PUSH)で直接届ける - ソーシャル動画で記者個人のブランドを立てる - AI に引用される情報資産として記事を構造化する - AI ライセンスで「学習データ」自体を有料化する - 編集とエンジニアリングを統合して、判断スピードを上げる - 読者データを編集判断に統合する - 法人向け Pro 版で 1 社あたりの単価を上げる - 年次イベントでブランド資産を直接マネタイズする 日本のメディア事業者にとって、いま重要なのは「縮む Web サイトを延命する」ことではなく、「複数の届け方を並走させる事業構造に移行する」ことです。それには編集力・データ力・ビジネス開発力・テクノロジー実装力の 4 つを、横断的に動かす組織能力が必要です。 幸いなことに、海外メディアの先行事例と試行錯誤の知見は、Nieman Lab、Reuters Institute、Pew Research、Chartbeat、Press Gazette などを通じて、ほぼリアルタイムで参照可能です。日本のメディアにとっては「真似する余地」が豊富にあります。早く動いたメディアが、下半期から来年にかけての構造変化の中で、最初の勝者になります。 ## 参考文献 - Reuters Institute for the Study of Journalism, *Digital News Report 2026*, 2026-06-15 — [reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2026) - Nieman Lab, *News sites are the new newspapers: People are abandoning them for social media*, 2026-06-15 — [niemanlab.org](https://www.niemanlab.org/2026/06/news-sites-are-the-new-newspapers-people-are-abandoning-them-for-social-media/) - Nieman Lab, *Predictions for Journalism 2026*, 2025-12 — [niemanlab.org/collection/predictions-2026](https://www.niemanlab.org/collection/predictions-2026/) - Nieman Lab, *These 16 new journalism jobs could help publishers future-proof their newsrooms*, 2026-06 - Nieman Lab, *People who use chatbots for news consider them unbiased and "good enough," new study finds*, 2026-01 - FT Strategies / WAN-IFRA / Arc XP, *Future Newsrooms Study*, 2026 - Reuters Institute, *Digital News Report 2025* - Reuters Institute, *Journalism, media, and technology trends and predictions 2026* - Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025* — [pewresearch.org/journalism](https://www.pewresearch.org/journalism/) - Chartbeat / INMA, *Pageviews are down, but AI's impact is complicated*, 2026-06 — [chartbeat.com](https://chartbeat.com/resources/articles/pageviews-down-ai-impact/) - Press Gazette, *News publishers see a surge of Facebook engagement from photo posts*, 2025-05 - Press Gazette, *Google traffic down: trends report 2026* - Edison Research, *The Infinite Dial 2025* - Digiday, *AI licensing deals between publishers and AI companies*, 2024-2026 - Digiday, *Reuters and Time adopt bot-blocking whitelists to rein in AI crawlers* - Digiday, *Time pitches GEO insights into a new brand offering* - Local Media Consortium / DCMS Coalition / News Media Alliance reports - Substack, *State of the Substack 2025* - Axios, *Axios HQ growth report 2025* - Schibsted, *Annual Report 2025* - Anthropic, *llms.txt specification* — [llmstxt.org](https://llmstxt.org/) - A.G. Sulzberger, *A.I., Journalism and the Uncertain Future of the Public Square*, WAN-IFRA World News Media Congress 講演 2026-05 — [nytco.com](https://www.nytco.com/press/a-i-journalism-and-the-uncertain-future-of-the-public-square/) --- ## 付論: NYT Sulzberger 発行人の戦略視点 — データの側に立つ 8 つの行動 本文の 14 の打ち手をデータ側からの「現場の処方箋」として整理したのと並行して、戦略・哲学側からも 1 つの視点を残しておきます。ニューヨーク・タイムズ発行人 A.G. Sulzberger 氏が 2026 年 5 月、フランス・マルセイユでの WAN-IFRA World News Media Congress で行った基調講演「A.I., Journalism and the Uncertain Future of the Public Square」は、AI 企業の知的財産盗用を「原罪」と断じつつ、ニュース組織が採るべき 8 つの具体的行動を提示しました。 ### 講演が描く構造の歪み Sulzberger 氏はまず数字で構造の歪みを示しました。AI 主要 6 社の合計時価総額は 11 兆ドル (フランスの GDP の 3 倍超)、米国の AI 投資は 2025 年だけで約 3,500 億ドル。にもかかわらず、パブリッシャーへのライセンス料はその「1% 未満」と推定される。 ニュース業界の足元はさらに厳しい。Comscore によると大手新聞社の Web トラフィックは過去 4 年で平均 45% 超下落。AI モデルから新聞社への参照流入は Google 比でさらに 96% 低い水準。広告売上は過去 20 年で 80% 減少し、Meta の広告売上は世界中の新聞社の合計売上の 8 倍に達している ─ これが背景です。 Sulzberger 氏は AI モデルが「人材・コンピュート・電力・データ」の 4 要素で構築されると整理した上で、「最初の 3 つには企業が当然のように対価を払うのに、『データ』という 4 つ目だけは取りに行ける」という AI 企業の姿勢を批判します。「データ」という単語は、書籍・映画・音楽・ジャーナリズムを「ありふれた商品」に見せる装置として機能している、と。 ### 対 AI 企業の「4 つの守り」 1. **権利を主張する** — 黙認は事業終焉に直結。NYT の OpenAI 訴訟は 2 年半・2,000 万ドル超 2. **契約を慎重に** — 大手の交渉力は強大だが、公平な対価と利用範囲の制御を確保せよ 3. **立法者に働きかける** — IP 保護強化、ボットの自己識別義務、AI 出力の名誉毀損責任 4. **共闘する** — 業界団体・他クリエイティブ産業との連携。音楽業界の Napster 対応に学ぶ ### 自社強化の「4 つの攻め」 1. **AI を正しく使う** — 責任ある基準のもとで攻めに活用。「腕を伸ばして遠ざける」のは敗北の処方箋 2. **デスティネーション化** — 読者との直接的関係こそ、質の高い報道を支える唯一の道 3. **オリジナル報道に集中する** — 「独自の重力を持つほど特徴的なジャーナリズム」が AI 時代の差別化軸 4. **ジャーナリズムが重要な理由を説明し続ける** Sulzberger 氏は AI 企業を、音楽業界における「Spotify ではなく Napster の姿勢」と表現します。Spotify は権利保有者に支払いを送る側だったが、AI 企業は「学習データに支払って創作者の労働を代替する」と公言する側だ、と。 ### 「デスティネーション化」をデータで定量化する 4 KPI 8 点のうち、即実装可能で進捗を定量化できるのが「デスティネーション化」です。Chartbeat が提唱してきたコア指標 (直接訪問率・エンゲージドタイム・ロイヤルティ・再訪頻度) は、まさに「読者があなたと直接関わる方が良い」と学んでいる程度を測るものです。 来月の月次レビューから、以下 4 指標を経営・編集の共通言語に据えることを推奨します。 - **直接訪問率**: プラットフォーム依存度の逆指標。Chartbeat ダッシュボードの Sources レポートで日次トラッキング可能 - **エンゲージドタイム 1 分超セッション比率**: 読了体験の質を示す指標。記事単位で質・テーマ別に差が見えるため、編集会議の素材になる - **ロイヤルティ・ティア別 PV シェア (Loyal / Habit / Casual)**: 読者構成の戦略目標として可視化。「Loyal 比率を四半期で x% ポイント上げる」が具体的な目標になる - **会員またはニュースレター経由の再訪率**: 直接関係の深さを示す究極の指標。サブスク収益と連動して KPI 化する PV ダッシュボードだけでは、デスティネーション戦略の進捗は測れません。「独自の重力」を経営判断にするには、見る数字を組み替える必要があります。動画領域では Tubular でクロスチャンネルのオーディエンス重なり・視聴維持率・エンゲージメント率を組み合わせることで、YouTube / TikTok / Instagram のどのチャンネルが「読者を自社に近づけているか」を可視化できます。Sulzberger 氏の「Be a destination first」は、文字メディアにも動画メディアにも共通の経営原則です。 ### 14 打ち手 (本文) と 8 行動 (本付論) を並べる意味 本文の「現場で動かせる 14 の打ち手」はデータ駆動の現場処方箋であり、本付論の「8 つの行動」は戦略哲学です。両方を並べて読むことで、データの数字と経営の意志、その両軸でメディア事業を動かせるようになります。「PV が前月比でどう動いたか」より「Loyal 読者構成比が前月比でどう動いたか」を経営会議の主議題にする ─ これが Sulzberger 氏の問いに対する最も具体的な最初の応答です。 --- キメラは、Chartbeat / tubular のデータと、海外メディアの先行事例を組み合わせ、新聞社・ウェブメディア・コンテンツをつくり届ける現場と一緒に、事業戦略をデータの側面から支えています。「Web サイトに来てもらえない時代」の事業設計、ファースト・パーティ戦略の立ち上げ、AI ライセンス対応、GEO 実装、組織再編、法人向け B2B Pro 版立ち上げなど、具体的なケースで議論したい方は、お気軽にご相談ください。 --- ## AI Overviews 時代に編集が取るべき5つの戦略 — 検索流入崩壊と GEO 時代に、日本のメディアが今日から取れる打ち手 URL: https://ximera.com/posts/ai-overviews-newsroom-strategy 公開日: 2026-06-16 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: Google AI Overviews により検索流入が構造的に縮小し、メディア事業は SEO 一本足では立ち行かなくなった。NYT、Politico、BBC、The Atlantic、DMG Media の先行事例と Chartbeat / Reuters Institute / Pew Research のデータから、編集主導のプロダクト開発、オーディエンス・エディター、ニュースレター、GEO、内部回遊の 5 戦略を、メディア担当者が明日から実装できる粒度で解説する。 「うちの検索流入、3 割減ったんだけど、これって戻る?」──最近、メディア事業者の方から繰り返し聞かれる質問です。結論から言うと、戻りません。少なくとも、これまで前提にしてきた水準には。 検索流入は、もはや「年単位で 5〜10% 揺れるもの」ではなく、年単位で 30〜60% 縮みうるものになりました。本稿では、まず「なぜそうなっているのか」を構造で説明し、その上で海外メディア(NYT、Politico、BBC、The Atlantic、DMG Media など)が動かしている 5 つの戦略を、日本のメディア現場で何から始められるかと合わせて整理します。専門用語はその都度噛み砕き、戦略・技術の両面が表面的な理解で止まっている担当者でも、明日同僚に説明できる粒度を意識しました。 ## 0. まず前提:いま検索の世界で何が起きているのか ### Google AI Overviews とは Google が 2024 年 5 月に米国で全面展開した、検索結果の最上部に AI が要約を表示する機能のことを「AI Overviews」と呼びます。利用者は質問を入力すると、Google が複数のサイトを読み込んで生成した要約文が画面の最上段に表示されます。多くの場合、ユーザーはこの要約を読んで満足し、リンク先のサイトへ移動しません。これが「ゼロクリック検索」と呼ばれる現象を一段加速させました。 日本では 2024 年 8 月から段階的に展開されており、2026 年 6 月時点ではほぼすべての検索クエリで AI Overviews が表示される条件が整っています。ニュース系・解説系のクエリでは表示率が特に高く、メディアにとっての影響が最大化しています。 ### 数字で見る構造変化 具体的な数字を並べます。出典はいずれも独立した第三者です。 - Chartbeat ネットワーク全体(数千メディア横断): 2025 年の Google 検索リファラルは前年比で約 34% 減。Google Discover からの流入も 16% 減(Chartbeat / INMA、2026-06) - 小規模メディア(日次 PV 1,000〜10,000 クラス): 検索流入が最大 60% 減(Chartbeat 規模別分析) - ニュース関連クエリのゼロクリック比率: AI Overviews 展開後の 1 年で約 69% に到達(Similarweb、2025) - DMG Media(MailOnline / Metro 等): AI Overviews が表示された検索でクリック率が 9 割近く下落したと報告(Press Gazette、2025-10) - Reuters Institute Journalism, media, and technology trends 2026: 世界のメディア幹部の 3 年後予測 — AI 要約とチャットボットによって検索リファラルがさらに 43% 落ちる可能性 - Pew Research Center, News Platform Fact Sheet 2025: 米国成人で「日常的にニュースサイトから直接ニュースを読む」と回答した比率は 22%(2020 年の 35% から大幅減少)。代わりにソーシャルメディア、メール、ポッドキャストが伸長 ### なぜ「戻らない」のか 検索が縮んでいるのは、Google の一時的な仕様変更ではなく、ユーザー行動が構造的に変わっているからです。AI 要約に慣れた人は、「複数サイトをクリックして比較する」行動をだんだん取らなくなります。さらに ChatGPT や Perplexity といった AI 検索専用ツールの台頭で、そもそも Google を経由しない調査体験が広がっています。 つまり、メディアにとっての「検索エンジン経由の読者」は、Google AI Overviews + ChatGPT + Perplexity + Claude といった複数の AI に分散吸収されており、各 AI ごとに引用される条件を満たさない限り、トラフィックは戻ってきません。 「下げ止まり」を待つフェーズは終わりました。海外メディアの先行事例を見ると、編集のかたち・組織のかたち・ビジネスモデルのかたちを、この前提に合わせて作り直し始めていることがわかります。本稿では 5 つの戦略を整理し、日本のメディアが今日から取れる打ち手として再構成します。 ### 補足: Chartbeat が示す「再分配」の構造 検索流入が縮む一方で、全体ページビューはそこまで崩壊していません。Chartbeat の追跡データでは、グローバルなニュース・パブリッシャー全体の週次ページビューは 2024 年 76.4 億 → 2025 年 71.9 億の約 6% 減。米大統領選挙年 (2024) の上振れを補正すると、年単位の自然変動の範囲です。「崩壊」ではなく「再分配」が起きています。 | チャネル | 2024 → 2025 構成比の変化 | | --- | --- | | 内部トラフィック (サイト内回遊・関連記事・PUSH) | 38% → 41% | | ダークソーシャル (メール・メッセンジャー・アプリ内リンク等) | 7% → 10% | | Google 検索 | 大幅減 (-34%) | | AI チャットボット経由 | 前年比 +200% (ただし全体の 1% 未満) | つまり、他社プラットフォーム経由のチャネルが縮み、自社で設計可能なチャネル (内部回遊 + メール + PUSH + アプリ) が相対的に重みを増している。後述の 5 戦略は、すべてこの「主導権が移った後の世界」への対応として読むと位置付けが明確になります。AI チャットボット経由の読者は記事あたり平均 4.8 PV を生み (Google 検索経由の 1.8 PV を上回る)、絶対量は小さいが読者の質は高い ─ これも 5 戦略の前提です。 --- ## 1. 編集主導のプロダクト開発 — Politico モデル ### 何が新しいのか Politico の編集ディレクター(職位名: Editorial Director, Newsroom Engineering)は、アジャイル進行を回し、リスクの高いプルリクエスト(プログラムの変更提案)を自らレビューし、必要なら自分でもコードを書く player-coach として設計されています。 ここで「アジャイル」「プルリクエスト」と聞いてピンとこない方のために少し補足します。 - アジャイル: 「数週間という短い単位で、企画 → 制作 → 公開 → 検証 → 改善」を繰り返す働き方。半年〜1年単位の大型プロジェクト方式の対極にあります - プルリクエスト: エンジニアが「この変更をサイトに反映してください」と申請する単位。編集側がこれをレビューするということは、「サイト上の変更を最終的に決める権限を編集側が持つ」ことを意味します ### なぜこれが効くのか AI とプラットフォームの変化は、もはや四半期ごとの仮説検証では追いつきません。Google が AI Overviews の表示ロジックを変えれば、検索流入は来週には別物になります。ChatGPT が新しい検索プラグインを出せば、引用される条件が一夜で変わります。 Politico がやったのは、編集の意思決定スピードを「四半期 → 週」に短縮する組織設計です。Nieman Lab のインタビュー(2026-06)によれば、結果として「新しい AI 機能を約 2〜3 週間でリリースする体制」が確立し、レポート公開後 4 ヶ月で 14 件の新機能を投入したと報告されています。 ### 同じ動きをする他メディア - The Washington Post: 編集チーム内に「AI Lab」を常設、AI 記者支援ツールを内製で開発 - Bloomberg: ニュースルームのエンジニア比率が 15% を超え、編集ディレクター直轄 - The Atlantic: プロダクトデザイナーを編集デスクに同席させる運用を 2025 年から - Le Monde: 「AI Innovation Editor」職を新設、記者デスクに常駐 ### 日本のメディア現場での打ち手 - 編集会議の中に、技術検証・データ確認を回す枠を毎週 30 分組み込む - 「1 週間で出せる最小機能」を編集と技術で一緒に定義する習慣をつくる(リード文の自動生成、関連記事レコメンドの A/B テスト、PUSH 通知のテーマ分割など) - 編集長 / 編集デスクの KPI に「今週何を出したか」を入れる(過去 PV ではなく「今週の試行回数」) - いきなり編集ディレクターを採用できなくても、編集デスク 1 人を「プロダクト兼任」として明示し、毎週技術 / プロダクトと話す枠を設計する --- ## 2. オーディエンス・エディター職の常設 — NYT / Washington Post 型 ### オーディエンス・エディターとは 「Audience Editor(オーディエンス・エディター)」とは、文字どおり「読者を担当するエディター」ですが、海外メディアでこの役職に求められる責任範囲は、日本でいう「ソーシャル担当」「分析担当」よりはるかに広いです。NYT、Washington Post、Guardian などでは、取材・配信・プラットフォーム選択をデスク横断で判断する権限を持つ役割として再定義されています。 具体的には次の判断にコミットします。 - 「いま、どの記事を、どのプラットフォーム(自社サイト / SNS / アプリ / メール)で、どう出すか」 - 「次に何を取材するか」(読者の動きと、まだ取材されていない問いの差分から判断) - 「見出しの最終決定」(A/B テストの結果を踏まえて編集デスクと協議) - 「どの記事を AI 引用に最適化するか」 ### 判断材料となるデータと SEO/GEO キーワード オーディエンス・エディターが日々見るデータは、ひとつのツールに収まりません。代表的なものを挙げます。 - Chartbeat 等のリアルタイム指標: いま読まれている記事、エンゲージドタイム(読者が実際に読み込んでいる秒数)、スクロール深度 - Tubular のソーシャル動画動向: YouTube・TikTok・Instagram で、いまどんな動画が伸びているか - SimilarWeb の参照元データ: 競合サイトがどこから流入を集めているか - Search Console の Discover データ: Google Discover での表示数とクリック率 - AI クローラの訪問ログ: ChatGPT / Perplexity / Claude などからどの記事がスクレイピングされているか - GA4 のエンゲージメントメトリクス: 滞在時間、コンバージョン(メルマガ登録など) これらを統合して、「検索流入」「AI 引用流入」「ソーシャル流入」「直接アクセス」「内部回遊」の 5 系統に分けて毎週把握するのが標準フローです。 ### なぜこれが効くのか これまで「データはツールの中、編集はエディターの頭の中」と分かれていたのが、ニュースルームの最大の意思決定ボトルネックでした。「いい記事を出した。読まれるかどうかは見てみないとわからない」では、検索流入が縮む時代に間に合いません。 オーディエンス・エディターを置くということは、「読者の動きと編集判断を、同じ会議体で扱う」ということです。Reuters Institute の Trends 2026 レポートでも、調査対象のメディア幹部の 67% が「2026 年最大の優先投資領域は audience-first な編集体制への移行」と回答しています。 ### 日本のメディア現場での打ち手 - 編集デスクと並列に「オーディエンス・デスク」を週次会議で設ける(兼任でよい、必ず編集デスクと同じ卓に) - リアルタイムダッシュボードを「眺める」のではなく「会議で共有して翌週の判断を決める」運用にする - 月次 PV / UU ではなく、記事ごとのエンゲージドタイム(読者あたりの実読時間)を主指標に置き直す - A/B テストできる小さな単位(見出し、サムネ、リード文)から始める - 「検索流入」「AI 引用流入」「ソーシャル流入」「直接アクセス」「内部回遊」を 5 系統で毎週可視化する --- ## 3. ニュースレターと PUSH への投資前倒し — The Atlantic / Politico ### 「自社で関係性を持つ読者」の重み 検索リファラルの構造的縮小に対し、海外メディアは「自社で関係性を持つ読者の数」を最重要 KPI として動かしています。 ここで「関係性を持つ読者」というのは、サイトに匿名で偶然来た読者ではなく、メールアドレスを登録し、PUSH 通知を許可し、アプリを入れている読者のことです。彼らは Google や SNS を経由せず、メディア側から直接届けられる距離にあります。これを「ファースト・パーティ・オーディエンス(First-party audience)」と呼びます。 ### The Atlantic の事例 — ニュースレターを最大のリードジェネレーターに The Atlantic がやったのは、「メルマガを増やす」ではなく「サイトのあらゆる動線をメルマガ登録に向ける構造に作り変える」ことでした。具体的には: - 記事末尾の登録 CTA を、記事のテーマに応じた特化メルマガに分岐 - トップページの常設バナーで、新規読者向けの「入口メルマガ」を訴求 - 登録後のオンボーディング(最初の 7 日間で送る 3 通)を編集チームが設計 - メルマガ開封 / クリック / 継続を編集 KPI に統合 結果として、サブスクリプション転換率の最大経路がニュースレターになりました。Pew Research Center の 2025 年調査によれば、米国成人の 28% が「日常的にニュースレターからニュースを読む」と回答しており、これは 5 年前の 16% から大幅に増えています。 ### Politico の事例 — 政策領域別の特化メール Politico は、政策領域(テック、ヘルスケア、金融規制等)ごとに特化したメールプロダクトを持ち、ワシントンの意思決定者層と直接つながる構造を作りました。多くは有料、企業契約も含み、メールそのものがプロダクトとして単独で価値を持っています。 ここで重要なのは、「メディアの主力プロダクトが Web サイトとは限らない」という発想転換です。情報は記事として書かれるが、届けられるのは Web ページ経由とは限らない。読者は記事をブラウザで読むより、メールで読む方が深く読む傾向があります(Chartbeat のセッション分析でも、メール経由の読者はサイト平均より 1.8 倍長く滞在)。 ### NYT のアプリと PUSH 戦略 NYT のモバイルアプリは、PUSH 通知をきわめて緻密に運用しています。速報性、パーソナライズ、配信時間帯のコントロール ─ これらは「読まれる回数」ではなく「サイトに来る理由を作る」設計として効きます。 Chartbeat が指摘する「内部トラフィック(サイト内回遊・直接アクセス・PUSH 経由)の比率が 38% → 41% に上昇」というデータは、まさにここでの成果が押し上げているチャネルです。NYT は 2026 年現在、PUSH 通知の許可率が 38% という業界トップクラスを維持しており、これだけでも検索リファラル減を相殺するインパクトを持っています。 ### 日本のメディア現場での打ち手 - すべての記事末尾に、文脈に合った特化型ニュースレター登録 CTA を置く(同じ汎用 CTA をすべての記事に置くのではなく、テーマ別に出し分ける) - 登録 → オンボーディング → 継続を編集チームの KPI ダッシュボードに統合する - PUSH 通知許可率を「Web 体験の主要指標」として測る(許可率は通常 10〜20%、20% を超えれば優秀、30% を超えれば NYT 級) - ニュースレターの本文を「サイトの宣伝」ではなく「メール単独で読了できる完結したコンテンツ」に書き直す - 編集テーマ別の特化型メルマガを 3〜5 本立ち上げる(無理に大型化せず、テーマ深掘りで) --- ## 4. 「AI に引用される」ためのコンテンツ設計 — BBC / Reuters / AP ### GEO(Generative Engine Optimization)という新しい領域 ChatGPT、Perplexity、Google AI Overviews といった AI チャットボットからの紹介トラフィックは、Chartbeat ネットワーク全体で前年比 200% 以上で伸びています。総量は全体の 1% 未満ですが、構造的には今後の主要な流入経路になりうるチャネルです。 このとき重要なのは、「AI が引用しやすい記事構造」を編集ガイドラインに組み込むことです。これを GEO(Generative Engine Optimization、生成エンジン最適化) と呼びます。SEO の次のレイヤーとして急速に注目されており、Time は 2026 年 3 月に GEO インサイト商品をブランド向けに提供開始しました(Digiday、2026-03)。 ### AI が「信頼できる引用元」と判定するシグナル BBC、Reuters、AP の編集ガイドラインを横断すると、共通するのは以下です。 1. 明確なリード文: 記事冒頭 100 字以内に結論を提示する。「結論先行」が AI の要約引用に直結する 2. 構造化された見出し: H2 / H3 が論理的に整理され、各セクションが独立して引用可能であること 3. データの出典明示: 統計値・引用には元データへのリンクを必ず添える(AI は「リンク先がある主張」を高く評価する) 4. 著者の専門性: 著者プロフィール、所属、関連記事、専門領域を構造化データで明示 5. 更新日の明示: AI は「いつのデータか」を重視する。古い記事を更新したら必ず `dateModified` を更新する 6. E-E-A-T シグナル: Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trust(信頼性)の 4 軸を満たす情報構造 ### 構造化データ(Schema.org)とは 「構造化データ」とは、人間向けの記事本文とは別に、機械(検索エンジンや AI)が読み取りやすい形でメタ情報を埋め込む仕組みです。Schema.org という業界標準があり、`NewsArticle`、`Person`、`Organization`、`BreadcrumbList` などの型が定義されています。 これを実装することで、AI 検索が「この記事は何の記事で、誰が書いて、いつ更新されたか」を正確に把握できます。実装は技術的な作業ですが、効果は大きく、海外メディアではほぼ必須の運用になっています。実装の所要時間は CMS にもよりますが、1〜2 週間が目安です。 ### llms.txt — AI クローラ向け索引ファイル 2025 年に Anthropic が提唱し、2026 年に入って急速に普及している標準が `llms.txt` です。サイトのルートに置く Markdown ファイルで、AI クローラに対して「このサイトはどんなコンテンツで、何を引用してほしいか」を伝えます。 `robots.txt` がクローラの許可・禁止だけを定めるのに対し、`llms.txt` は「ここにこういう内容があります」とポジティブに案内する設計です。OpenAI、Anthropic、Perplexity が公式に対応を表明しており、AI 引用の入口として実装が広がっています。 ### Reuters と Time の AI ライセンス契約戦略 2026 年に入って加速しているのが、AI クローラー対策と AI ライセンシング戦略です。Digiday の報道によると、Reuters と Time は AI クローラーをホワイトリスト方式でブロックし、ライセンス契約のあるプラットフォーム(OpenAI、Anthropic、Perplexity 等)にのみコンテンツへのアクセスを認める方向に動いています。 これは「AI に学ばせないことで自社価値を守る」アプローチですが、同時に「ライセンス契約をビジネスの一部にする」戦略でもあります。OpenAI と NYT、Anthropic と複数のメディア、Google と Reddit のライセンス契約規模を見ると、新しいレベニューラインとして既に数千万ドル規模で成立しています。 ### 日本のメディア現場での打ち手 - 記事の冒頭 100 字で結論を提示するスタイルへ揃える(編集ガイドラインに明文化) - 統計値・引用には必ず元データへのリンクを付ける - 著者プロフィール / 専門性を構造化データで明示する - Schema.org の `NewsArticle` / `Person` / `Organization` をすべての記事に実装する(エンジニアと相談、1〜2 週間で完了) - `llms.txt` をサイトルートに設置し、注目記事の索引を維持 - AI クローラのトラフィックを Search Console / Chartbeat で測定し始める - OpenAI / Anthropic / Perplexity 等とのライセンス契約の可能性を経営アジェンダに上げる --- ## 5. 内部回遊と「セッションあたり 2 ページ目」の戦略 — Chartbeat の処方箋 ### 内部トラフィックの重要性 Chartbeat のグローバルネットワークでは、全トラフィックに占める「内部トラフィック」の比率が 38% → 41% に上昇しています。内部トラフィックとは、サイト内の関連記事リンク、ホームページからの遷移、PUSH 通知経由、メール経由など、外部プラットフォームを介さずにサイト内で完結する流入のことです。 検索が縮むなか、サイトに来た読者を「もう 1 ページ読ませる」設計が、トラフィックの土台を作り変える最大のレバーになっているという指摘です。 ### 「2 ページ目の読者」が持つ意味 Chartbeat の分析で、特に注目すべき数字があります。 - 2 ページ読む読者の再訪率は、1 ページ読者の 2.75 倍 - 1 セッションあたりのページ数を 1.05 から 1.30 に引き上げると、訪問数全体を 25% 増やすのと同じインパクトをサイト全体にもたらす つまり、「新規読者を 25% 増やす」のと「既存読者の 2 ページ目を作る」のは、トラフィック上は等価なのです。前者は SEO や広告に大きな投資が必要ですが、後者は記事のレイアウトと編集判断で実現できます。 ### 関連記事の出し方が変わる これまで多くの日本メディアでは、関連記事を「PV 順」や「同タグ」で自動表示してきました。海外メディアの先行事例は、ここを根本から変えています。 - テーマ連続性: いま読んでいる記事の「次に読むべき 1 本」を編集の手で選定する(CMS に `next` フィールドを設けて、編集者が記事公開時に選ぶ) - スクロール深度連動: 記事を 70% スクロールしたタイミングで、画面右下にスライドインで「次の 1 本」を表示する - 読了後のリコメンド: 記事末尾に同テーマの 3 本を表示し、うち 1 本は「対立する視点」「補完する深掘り」を入れる ### 検索 / SEO で「内部リンク構造」が果たす役割 内部回遊は読者体験のためだけでなく、SEO 上も極めて重要です。Google は「内部リンクで深く繋がっているサイト」を、より権威ある情報源として評価します。AI 検索も同様で、ChatGPT や Perplexity は引用元を選ぶときに「外部からのリンク数」だけでなく「サイト内部での参照関係」も評価対象にしていることが、複数の検証実験で示されています。 つまり、編集者が「次に読むべき 1 本」を選び続けることは、読者の体験を向上させるだけでなく、検索エンジンと AI に対して「このサイトは深く繋がっている」というシグナルを継続的に送ることでもあります。 ### 日本のメディア現場での打ち手 - 全記事に「次に読むべき 1 本」を編集の手で選定して表示する(最初は 3 ヶ月、新規記事公開時に必ず選ぶ運用にする) - スクロール深度 70% 以上で出る回遊リコメンデーションを実装する - 記事末尾の関連記事を「アクセス順」ではなく「テーマ連続性」で並べる - 「2 ページ目の到達率」を編集 KPI にする(目標値はジャンルにより異なるが、ニュース系で 15%、専門系で 25% が目安) - 過去記事の更新・統廃合(コンテンツ・プルーニング)を四半期に 1 回実施し、内部リンクの密度を保つ --- ## まとめ — 検索後の編集設計はもう始まっている 検索流入が戻らない前提に立てば、メディアの戦略は次の 4 つに重心が移ります。 1. 外から連れてくる → 中で深く回遊させる、メールで届ける、AI に引用される 2. PV / UU を増やす → エンゲージドタイムと 2 ページ目到達率を上げる 3. 編集とデータの分離 → 編集会議で同じ卓を囲む 4. 記事 1 本ずつの最適化 → サイト全体の経済(読者経済)の設計 これは技術論ではなく、編集現場の意思決定単位、KPI、組織のかたちを作り直す話です。海外メディアは、すでに動いています。日本のメディアが今後 6 ヶ月で何を試すか ─ それが 2027 年以降のトラフィック構造を、かなりの部分決めるはずです。 ## 参考文献 - Reuters Institute, *Journalism, media, and technology trends and predictions 2026* — [reutersinstitute.politics.ox.ac.uk](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/) - Reuters Institute, *Digital News Report 2025* — [reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/digital-news-report/2025) - Press Gazette, *Google traffic down: trends report 2026* — [pressgazette.co.uk](https://pressgazette.co.uk/) - Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025* — [pewresearch.org](https://www.pewresearch.org/journalism/) - Chartbeat, *Pageviews are down, but AI's impact is complicated* — [chartbeat.com](https://chartbeat.com/resources/articles/pageviews-down-ai-impact/) - Nieman Lab, *These 16 new journalism jobs could help publishers future-proof their newsrooms* — [niemanlab.org](https://www.niemanlab.org/) - Digiday, *Reuters and Time adopt bot-blocking whitelists to rein in AI crawlers* - Digiday, *Time pitches GEO insights into a new brand offering* - Anthropic, *llms.txt specification* — [llmstxt.org](https://llmstxt.org/) キメラは Chartbeat / tubular のデータと、海外メディアの先行事例を組み合わせ、編集現場と一緒にこの変革に伴走しています。具体的なケースで議論したい方は、お気軽にご相談ください。 --- ## 新聞社の DX が直面する課題 — 2021 から 2026 へ、5 年の進化と、いま新聞社が取るべき新しいアプローチ URL: https://ximera.com/posts/newspaper-dx-2021-to-2026 公開日: 2026-06-16 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 概要: 2021 年に新聞研究誌(日本新聞協会)に寄稿した『新聞社の DX が直面する課題 — コンテンツを届けるための新しいアプローチ』を、2026 年現在の環境を踏まえて全面リライト。AI Overviews による検索流入崩壊、AI ライセンス契約の急成長、ファースト・パーティ戦略の主流化、ニュースルーム・エンジニアリングの台頭 — 5 年で激変したメディア環境を踏まえ、新聞社が次に取るべきアプローチを、Chartbeat / tubular のデータと海外の先行事例から再設計する。読了 25 分。 2021 年 8〜9 月、日本新聞協会の機関誌『新聞研究』(No.837)に「新聞社の DX が直面する課題 — コンテンツを届けるための新しいアプローチ」を寄稿しました。当時、コロナ禍を背景に新聞社のデジタル戦略が急加速していた時期で、紙からデジタルへの移行プロセス、コンテンツ流入経路の変化、編集・営業・技術の連携課題などを論じました。 それから 5 年。メディア環境は当時の想定をはるかに超えて変化しました。Google AI Overviews による検索流入の構造的縮小、AI チャットボットの台頭、ニュースレター市場の倍増、AI ライセンス契約の急成長、ファースト・パーティ戦略の主流化 ─ どれも 2021 年時点では「これから来るかもしれない」程度の議論だったものが、いまは経営課題の中核に居座っています。 本稿は、2021 年に書いた論点を出発点に、2026 年現在の環境を踏まえて全面リライトしたものです。新聞社のデジタル DX で「変わったこと」「変わらなかったこと」「いまから取るべきアプローチ」を、メディア担当者向けに丁寧に整理します。 --- ## Part 1: 2021 年に書いた論点と、5 年後の現在地 ### 2021 年版で提示した 4 つの課題 2021 年当時の寄稿で、私は新聞社のデジタル DX が抱える課題を 4 つに整理していました。 1. コンテンツの流入経路の変化(プラットフォーム経由が増え、自社サイト直接アクセスが減る) 2. 編集と販売の分断(編集はコンテンツを作る、販売は紙を売る、デジタル領域の責任が宙に浮く) 3. 紙からデジタルへの移行プロセスの未整備(紙の編集ワークフローのままデジタルを動かそうとする) 4. データ活用の体制不足(読者データを編集判断に統合できない) これらは「コロナ禍で加速した」「コロナ後に常態化する」と当時書きました。実際、その通りになりました。問題は、その後さらに大きな構造変化が重なってきたことです。 ### 2021 → 2026 で起きた 5 つの追加変化 2021 年時点では予測しきれなかった、もしくは見え始めていなかった変化を 5 つ挙げます。 #### 1. Google AI Overviews による検索リファラル崩壊 2024 年 5 月に米国で全面展開された Google AI Overviews(検索結果上部に AI が要約を表示する機能)は、ニュースサイトへの検索流入を構造的に縮小させました。 - Chartbeat ネットワーク全体で 2024 年比 34% 減(2025 年実績) - 小規模メディアでは検索流入が 60% 減のケースも - DMG Media(MailOnline / Metro 親会社)は AI Overviews 表示時のクリック率が 9 割近く下落と報告(Press Gazette、2025-10) - Reuters Institute Trends 2026:世界のメディア幹部はさらに 43% 落ちる予測 2021 年の「プラットフォーム経由が増える」議論は、いまや「プラットフォーム自身が情報の出口になり、メディアに送客しない」段階に進化しました。 #### 2. AI チャットボット経由のニュース消費が立ち上がる ChatGPT、Perplexity、Claude、Google AI Overviews といった AI 検索ツールからのニュース消費が、2026 年時点で米成人の 4%(Reuters Institute)に達しました。絶対量は小さいですが、3 年で 0% から立ち上がっており、構造的にこれが伸びる前提でメディアは戦略を組み直す必要があります。 Chartbeat ネットワークでは、AI チャットボット経由の紹介トラフィックは前年比 200% 以上で急成長。総量に占める割合はまだ 1% 未満ですが、ChatGPT 経由の読者は記事あたり平均 4.8 ページビューを生成し、Google 検索経由の 1.8 PV を大きく上回ります。「量は少ないが質は高い」流入経路として位置づけられます。 #### 3. AI ライセンス契約が新収益柱に 2024 年以降、メディアと AI 企業のライセンス契約が急成長しました。 - News Corp × OpenAI:5 年契約、推定 2.5 億ドル(2024 年 5 月) - AP × OpenAI:年間数百万ドル(2023 年 7 月) - Axel Springer × OpenAI:推定年額 1,000 万ドル超(2023 年 12 月) - Reddit × Google:年額 6,000 万ドル(2024 年 2 月) これは新聞社にとって、紙の発行部数減を補える可能性のある新しい収益柱です。NYT は OpenAI を著作権侵害で提訴中ですが、AP、Axel Springer、News Corp、Vox Media、The Atlantic などは AI 企業と直接ライセンス契約を結びました。 「訴訟」か「ライセンス」か ─ この判断は、新聞社の編集独立性と収益性のバランスを問う重大な経営課題になっています。 #### 4. ニュースレター / 音声 / 動画への投資が標準化 2021 年時点では「補助的なチャネル」と見られていたニュースレター、ポッドキャスト、動画が、2026 年には主力プロダクトの一角に位置づけられています。 - ニュースレター:米成人の 28% が日常的にメール経由でニュースを読む(5 年で 12pt 増、Pew Research 2025) - ポッドキャスト:月間視聴率 47%(10 年で 3 倍弱、Edison Research) - TikTok ニュース消費:1% → 11%(5 年で 10pt 増) - 18〜24 歳のメインニュース源:動画 47%、音声 22%、テキスト 31%(Reuters Institute 2025) 「サイトをハブにする」モデルから、「各チャネルが独立したプロダクト」モデルへの移行が完了しつつあります。 #### 5. ニュースルーム・エンジニアリングという新組織 編集チームに、AI イノベーション・エディター、オーディエンス・エディター、ニュースルーム・エンジニアといった新職位を置くメディアが増えました。Politico、Le Monde、Schibsted、BBC、Reuters、Bloomberg などが先行事例です。 これは 2021 年に書いた「編集と販売の分断」「データ活用の体制不足」の解決策として、海外メディアが先に動いた形です。日本の新聞社にとっても、組織再設計が次の経営アジェンダになります。 --- ## Part 2: 新聞社が直面する「いま」の 6 つの課題 2026 年時点で、日本の新聞社が直面している課題を 6 つに整理します。2021 年版の延長線上にあるものもあれば、新しく浮上してきたものもあります。 ### 課題 1: 検索流入が戻らない前提でのビジネス設計 2021 年時点では「コロナ後に検索流入は回復する」と多くのメディアが想定していました。実際には、検索流入は構造的に縮み続けています。AI Overviews の登場後、回復の兆しはほぼありません。 これは「SEO 投資を増やせば戻る」レベルの課題ではなく、ビジネスモデルそのものを「検索が縮む前提」で組み直す必要があります。具体的には: - 流入経路の多角化(メール、PUSH、アプリ、AI 引用) - セッションあたりの読了体験の最適化(2 ページ目到達率を主指標に) - 法人向け B2B モデルの確立 ### 課題 2: 紙とデジタルの統合ワークフロー 2021 年版で論じた「紙の編集ワークフローでデジタルを動かしている」問題は、いまも続いています。多くの新聞社では、 - 朝刊 / 夕刊の締切に編集リソースが集中 - デジタル版は「朝刊の翌日 Web 反映」レベル - リアルタイムの読者反応データが編集判断に反映されない という構造のままです。海外の新聞社(NYT、Washington Post、Guardian、Le Monde など)は、すでに「デジタルファースト → 紙はその一部」というワークフローに完全移行しました。日本の新聞社にとって、ここの再設計が遅れています。 ### 課題 3: 編集と販売の分断(再燃) 2021 年版で論じた「編集と販売の分断」は、2026 年には「編集 × データ × プロダクト × 営業」の 4 部門の分断という、より複雑な形に発展しました。 オーディエンス・エディター、AI イノベーション・エディター、ニュースルーム・エンジニアといった新職位は、この 4 部門を編集の中心に統合する試みです。海外メディアの先行事例から、Politico は player-coach 型の編集ディレクター、Le Monde は AI イノベーション・エディター、NYT は Lifecycle Marketing チームなどを設計しました。 ### 課題 4: ファースト・パーティ・データの構築 2021 年時点ではあまり議論されていなかった「ファースト・パーティ・データ」(自社で読者から直接取得したデータ)の重要性が、いまでは経営課題の中心にあります。 - メールアドレスを登録した読者の数 - PUSH 通知を許可した読者の数 - アプリインストール数 - サブスクリプション会員情報 - サイト内行動ログ これらの「自社で持つデータ」が、Google・Meta・X といった第三者プラットフォームへの依存度を下げ、AI 学習データとしてもライセンス価値を持つ資産になります。 ### 課題 5: AI ライセンスへの対応 2021 年時点では「AI が記事を学習する」のは技術的な話題でしかありませんでした。いまは、それが経営判断の中心にあります。 - AI クローラを許可するか、ホワイトリスト方式でブロックするか - OpenAI、Anthropic、Perplexity との個別ライセンス契約を結ぶか - 業界連合体で交渉するか、単独で動くか - 訴訟(NYT 型)か、契約(News Corp 型)か これらの判断は、編集独立性・収益性・将来の AI 検索引用のすべてに影響します。新聞社の経営層が、AI ライセンスを「IT 部門の話」ではなく「経営アジェンダ」として扱う必要があります。 ### 課題 6: 地方紙の生存戦略 日本の新聞社の多くは地方紙です。地方紙の DX は、全国紙とは別の論点を持ちます。 - 地域住民の高齢化と読者層の縮小 - 地域広告主のデジタル予算の少なさ - デジタル人材の地方採用の難しさ - 地域コミュニティへの紐づきが強い分、デジタル離脱コストが高い 地方紙にとっては、「全国紙と同じデジタル戦略」を真似ても上手くいきません。代わりに、地域コミュニティを基盤にした特化型ニュースレター、地域 B2B 向け Pro 版、地域イベント、地域企業向けブランデッドコンテンツなど、「地域に深く根ざした収益モデル」の組み立てが必要です。 米国の地方紙では Local Media Consortium という業界連合体が、200 社超を束ねて AI 企業と一括ライセンス交渉をしています。日本でも地方紙連合体での動きが期待されます。 --- ## Part 2.5: 解決策としての新組織設計 — 16 の新職種を 4 カテゴリで読む Part 2 で示した 6 つの課題に共通する根本原因は「編集 / データ / プロダクト / エンジニアリングの分業」です。流入が安定していた時代には機能していたこの分業が、AI Overviews / AI チャットボット / プラットフォーム個別対応 / ライセンス交渉が「数週間ごとの判断」になるなかで、追いつかなくなりました。 Reuters Institute *Journalism, media, and technology trends 2026* によれば、世界のメディア幹部のうち 71% が「2026 年の最優先課題は意思決定スピードの向上」と回答しています (前年 54% から急上昇)。Nieman Lab が 2026 年 6 月に公開した *These 16 new journalism jobs could help publishers "future-proof" their newsrooms* は、FT Strategies / WAN-IFRA / Arc XP の *Future Newsrooms Study* を下敷きに、LinkedIn の 6,687 件の求人を分析、234 件を戦略ロールに分類、さらに 16 の「戦略機能ロール」を 4 カテゴリに絞り込んでいます。 ### 4 つの戦略カテゴリ 1. オーディエンス戦略 (Politico / BBC / Reach): 取材・配信・プラットフォーム選択をデスク横断で形づくる。Audience Editor / Platform Editor / Newsletter Editor などの新職位。読者経済全体を編集判断と接続するロール 2. 編集における AI イノベーション (NYT / Schibsted / Le Monde): 記者に張り付き、AI で解決できる痛点を見つけ、自分でプロトタイプまで作る。AI Innovation Editor / Newsroom AI Lead など。NYT の Hard Fork や Le Monde の AI experiments チームが代表 3. 編集主導のプロダクト・デザイン (The Atlantic / Bloomberg / Politico Pro): AI ネイティブなインターフェースに向けてニュースという対象そのものを作り直す。Product Editor / Content Designer / Editorial Director of Product。「記事 + パッケージング + 配信形式」を一体で設計 4. ニュースルーム・エンジニアリング (Politico / FT / Reach): 数週間ごとに AI 機能を出荷し、担当エディター自身がプルリクエストをレビューする。Editorial Director of Newsroom Engineering / Newsroom Engineer の新職種 ### 「player-coach」型の編集ディレクター (Politico モデル) Politico の編集ディレクター (職位名: Editorial Director, Newsroom Engineering) は以下を兼ねます: アジャイル進行 (週次スプリント) を回す / リスクの高いプルリクエストを自らレビューする / 必要なら自分でもコードを書く / 編集現場の課題をエンジニアリングの仕様に翻訳する。 「兼任が大変」ではなく「編集現場の意思決定と技術的実装の意思決定を、同じ人格の中で接続する」ための設計です。両者が別々にいて伝言ゲームをしていたところを、ひとつの会議体・ひとつの role に圧縮する。四半期ごとの仮説検証から、数週間ごとの AI 機能リリースへの移行が狙いです。 ### Audience Editor を編集会議に常駐させる (BBC モデル) BBC では Audience Editor が編集デスクと毎朝のニュース会議に常駐し、「今日のニュースをどのチャネル (Web / アプリ / Reels / TikTok / Newsletter / Podcast) で、誰に届けるか」をリアルタイムで議論します。記者が書いた記事を後から配信するのではなく、「書く前にどう届けるかが決まっている」状態を作る。これがマルチチャネル時代の編集の基本形になっています。 ### AI Innovation Editor を 1 名置く (Schibsted / Le Monde モデル) Schibsted (ノルウェー) と Le Monde (フランス) は、編集の中に AI Innovation Editor を置き、記者の業務に張り付いて「ここを AI で楽にできる」「ここは AI で読者体験を上げられる」を見つけ、プロトタイプを作り、エンジニアに引き渡す ─ という役割を担わせています。本職は記者経験者で、技術はあとから学んだケースが多い。「課題側に専門性がある人が AI を持つ」設計です。 ### 日本の新聞社が今日から取れる打ち手 - まず編集会議に「Audience Editor」相当の役職を 1 名置く (兼任でも OK、ただし発言権を担保) - 編集部内に「AI Innovation Editor」1 名を置く。記者経験者から、AI 活用への意欲が高い人を抜擢 - 「Newsroom Engineer」1 名を採用 (Politico 流に編集に近い席に座らせる) - 編集 + データ + プロダクト + エンジニアリングの四者を、月次ではなく週次で同席させる会議体を立ち上げる - 「3 ヶ月単位の編集計画」を「2 週間スプリント」に切り替える試行を、まず 1 ジャンルから この組織変更は、Part 2 で挙げた 6 つの課題 (検索流入崩壊 / プラットフォーム個別対応 / AI ライセンス / ファースト・パーティ移行 / マルチチャネル / ニッチ深掘り) のすべてに同時に効きます。組織のかたちを変えずに戦略だけ変えても、現場の意思決定スピードがついてこない ─ それが 5 年で明らかになったことでした。 --- ## Part 3: 新聞社が取るべき新しいアプローチ — 6 つの提案 2021 年版で提示した「コンテンツを届けるための新しいアプローチ」を、2026 年現在の環境を踏まえて 6 つに再構成します。 ### 提案 1: 編集判断にリアルタイム読者データを統合する Chartbeat のリアルタイム指標(エンゲージドタイム、スクロール深度、参照元)を編集会議の中心に置きます。NYT、Washington Post、Guardian など海外の主要新聞社は、すでに編集デスクの会議室に Chartbeat ダッシュボードを常時表示しています。 具体的な実装手順: 1. 編集会議の冒頭 10 分を「昨日 / 今週の読者データ振り返り」に充てる 2. 月次 PV / UU ではなく、記事ごとのエンゲージドタイムを主指標に置く 3. オーディエンス・エディターを編集デスクと対等のポジションに配置 4. リアルタイムデータを「眺める」のではなく「翌週の判断に変える」運用に ### 提案 2: ファースト・パーティ・データの基盤を構築する 紙の購読者リスト・電子版会員・メルマガ会員・アプリユーザーを統合した、ファースト・パーティ・データの基盤を作ります。 - 統合 ID(同一読者が複数チャネルで識別できる) - オンボーディング・シーケンス(新規登録後 90 日の自動メール) - パーソナライズ(読者ごとの関心領域に応じた配信) - リテンション分析(離脱予兆の検知と引き止め) これは「広告 ID」「Cookie」に頼らないデータ戦略の土台になります。 ### 提案 3: テーマ別ニュースレターの体系化 「朝刊・夕刊・電子版」という単一プロダクト構造から、「複数のテーマ特化型ニュースレター」への多角化を進めます。海外事例では、 - The Washington Post: 70 種類以上のニュースレターを保有 - NYT: 50 種類以上 - The Atlantic: 主要メルマガ 30 種類 それぞれが独立した編集者を持ち、独立した読者層を獲得しています。日本の新聞社にとっても、「政治・経済・教育・地域・スポーツ・国際」など、テーマ別に 5〜10 本のニュースレターを立ち上げる余地があります。 ### 提案 4: 法人向け B2B Pro 版の立ち上げ 新聞社が持つ取材力・業界知識を、法人向けの有料情報サービスとして展開します。Politico Pro モデル(年額 1 万ドル超の企業契約)を参考に、 - 業界別のデイリー・ニュースレター(政策、金融、テック、ヘルスケア等) - 業界専門家との Q&A 機会(記者経由) - 業界別データベース・レポート - 年次サミット・招待制ラウンドテーブル これらを組み合わせて、年額 30〜100 万円の法人契約モデルを設計します。読者数は少なくても、1 社あたりの単価が高いため、収益性は個人向けサブスクを大きく上回ります。 ### 提案 5: AI ライセンス戦略の確立 経営層直轄で「AI ライセンス担当」を設置し、 - 自社の取材アーカイブの構造化(過去 10〜30 年分の記事・写真・動画) - AI クローラのアクセスログ分析(GPTBot、PerplexityBot、anthropic-ai 等) - OpenAI / Anthropic / Perplexity / Google との個別交渉 - 業界連合体での共同交渉の可能性検討 を進めます。日本新聞協会レベルでの業界共同交渉も、地方紙にとって重要な選択肢です。 ### 提案 6: ニュースルーム・エンジニアリングの内製化 エンジニアリングチームを「IT 部門の下流」ではなく「編集ディレクターの管轄下」に置き、 - 編集が「来週この機能が欲しい」と判断した瞬間にリソースが動く - 削減できた時間、公開までの時間、機能利用率を編集 KPI に統合 - AI イノベーション・エディターが現場の痛点を発見し、プロトタイプを作る という体制を作ります。Politico や Le Monde の player-coach 型編集ディレクターは、新聞社の組織に取り入れる価値があります。 --- ## Part 4: AI 時代だからこそ、新聞社の強みが最大化する ここまで「変わったこと」「直面する課題」を整理してきました。ここからは視点を反転させます。AI とプラットフォームが情報流通を支配しつつあるいまこそ、新聞社が長年培ってきた資産が再評価されるフェーズに入っています。「変わらなかったもの」というより、「AI 時代だからこそ価値が上がるもの」を 6 つに整理します。 ### 強み 1: 一次取材力 — AI には再現できない情報の起点 ChatGPT、Claude、Perplexity といった大規模言語モデルが提供しているのは、本質的に「既に公開されている情報の合成」です。AI 自身が記者会見に出向くことも、現場の被災者にインタビューすることも、独自情報源と関係を築くこともできません。 これは AI の弱点ではなく、構造的な限界です。AI は「人間が取材し、公開した情報」を学習データとしている以上、新しい情報は「誰かが現場で取材して、文章として公開した」あとにしか取得できません。 新聞社は、この「情報の起点」を握っています。 - 現場での目撃取材(事件・事故・災害・選挙・スポーツ) - 政治家・経営者・専門家との独占インタビュー - 行政文書・公文書の入手と解読 - 内部告発の受け皿と検証 - 訴訟資料の精読 これらは、AI が逆立ちしても 1 ヶ月以内に再現できない、新聞社の構造的優位です。Press Gazette の 2025 年調査によれば、AI 検索エンジンが回答に引用する一次情報源の上位 10 位中 7 つは伝統的な新聞社 / 通信社(Reuters、AP、NYT、Washington Post、BBC、Guardian、Le Monde)でした。AI 時代だからこそ、「最初に取材した媒体」の希少性が際立っています。 ### 強み 2: アーカイブの蓄積 — AI 学習データとして数十億円の価値 新聞社が保有する「過去 10〜100 年分の取材アーカイブ」は、AI 学習データとしての価値が急騰しています。 - News Corp × OpenAI:5 年契約 推定 2.5 億ドル(WSJ、Barron's、Times of London 等を含む) - Axel Springer × OpenAI:推定年額 1,000 万ドル超 - AP × OpenAI:年額数百万ドル - Reuters × Anthropic / Meta:複数契約、合計推定 5,000 万ドル超 これらの契約規模は、新聞社のアーカイブが「ビジネス資産として現金化できる」段階に入ったことを示しています。日本の新聞社にも、明治期以降の発行記事という、世界的にも稀有な歴史的アーカイブがあります。デジタル化されているか・構造化されているか・権利関係が整理されているかによって、AI ライセンス交渉での価格が桁違いに変わります。 「過去の記事をデジタル化する作業」は、これまで「コスト」として扱われてきましたが、いまや「収益化に向けた投資」です。 ### 強み 3: 地域・業界への深い人脈とドメイン理解 地方紙にとっての地域、業界紙にとっての業界、政治紙にとっての政治 ─ これらの「深い理解と人脈」が、AI 時代に最も模倣困難な資産になります。 具体例で言えば: - 北海道の地方紙の記者は、町長・農協・漁協・地元企業の経営者を名前で呼べる - 経済紙の記者は、業界トップ層の名刺と連絡先を 10〜20 年分蓄積している - 政治紙の記者は、永田町の人脈図と派閥力学を頭の中に持っている AI はこれらを学習できません。これらは「人と人の関係」であり、その時々の機微の中で更新されるリアルタイムな情報だからです。 そして、これらの人脈は「単発の取材」だけでなく、 - イベント・カンファレンスへの登壇者集め - 法人向け B2B Pro 版の取材源 - データプロダクトでの専門家ネットワーク - 業界連合体の橋渡し すべてに転用可能な資産です。「記者の名刺ファイル」は、もはや個人の所有物ではなく、メディア企業の経営資産として位置づけ直す価値があります。 ### 強み 4: 信頼性と編集独立性 — AI 時代の最大の差別化 AI が氾濫する時代、誰が書いた情報か、その情報は信頼できるか、を判断する基準として「メディアの信頼性」の重みが急上昇しています。 Reuters Institute Digital News Report 2025 によれば、AI 生成コンテンツへの懸念は世界共通で、米成人の 54% が「AI 生成記事と人間が書いた記事を区別できる仕組みが必要」と回答しました。同時に、「信頼できる伝統メディアからのニュース」への需要が、若年層でも上昇しています(特に 18〜24 歳で過去 3 年連続上昇)。 新聞社の編集独立性 ─ 広告主からの独立、政治からの独立、SNS の風潮からの独立 ─ は、AI 時代の最大の差別化要因になっています。これは「守りの資産」ではなく「攻めの資産」です。 具体的に: - AI 検索エンジンは、引用元の信頼性を判定して引用先を選ぶ。新聞社の記事は引用優先度が高い - ライセンス契約で AI 企業は「信頼できるソースのアーカイブ」を高く評価する - 読者は「フェイクニュースが多い時代だからこそ、新聞は読む」と回答する傾向が強まっている(Pew Research 2025、信頼度 60〜70% を維持) ### 強み 5: 長期的な編集人材の育成 AI ツールの導入は早ければ 1 ヶ月で進みます。一方、優秀な編集者・記者を一人前に育てるのは 5〜10 年かかります。新聞社が長年蓄積してきた「編集の作法」「事実確認の作法」「文章を整える作法」は、AI で代替できない領域です。 The Atlantic、NYT、Reuters などは、AI 時代だからこそ「編集力の高い記者」を集中採用する動きを強めています。「AI が下書きを作る → 人間が編集する」のではなく、「人間が考え抜いた問いから取材する → AI は補助ツール」という方向への揺り戻しが起きているのです。 日本の新聞社にとっても、編集人材育成は AI 時代に新たな意味を持ちます。社内 OJT、社外研修、海外メディアとの記者交換プログラム、ジャーナリズム・スクール連携など、人材投資の見直しが必要です。 ### 強み 6: 地域コミュニティへの根ざし方 特に日本の地方紙にとって、地域コミュニティへの深い根ざし方は、AI 時代に再評価される資産です。 - 地域住民の生活と密接に結びついた取材体制 - 地域企業・行政との長年の関係 - 地域の歴史・文化・人物への深い知見 - 地域の冠婚葬祭・祭事・季節行事の蓄積 これらは、Google にも ChatGPT にも、東京の大手メディアにも持てない、地方紙固有の資産です。「地域の情報インフラ」としてのポジションを取りに行けば、地方紙の経営は新しい収益モデルを組み立てられます。 具体的には: - 地域 B2B 向け Pro 版(地元企業向け年額契約) - 地域コミュニティ・イベント(地元の祭事と連動) - 地域特化型ニュースレター(テーマ別 5〜10 本) - 地域 LP(ローカル・パブリッシャー)連合体での AI ライセンス交渉 - 地域企業向けブランデッドコンテンツ 「地方紙の存続」を「地方紙の進化」に変える起点が、ここにあります。 --- ## Part 5: 新聞社が今すぐ動けるアクションプラン ここまでの議論を踏まえ、新聞社が今後 12 ヶ月で動けるアクションプランを、優先順位順に整理します。 ### 短期(今後 3 ヶ月以内) 1. アーカイブのデジタル化計画を策定 — 過去 10〜30 年分の記事を機械可読な形式で構造化。AI ライセンス交渉の前提条件 2. AI クローラのアクセスログを取得 — 自社サイトに来ている GPTBot、PerplexityBot、anthropic-ai などのアクセスを把握 3. Schema.org / llms.txt を全記事に実装 — AI 引用される入口を整備 4. 編集会議に Chartbeat ダッシュボードを常設 — リアルタイム読者データを判断軸に統合 5. ニュースレター・テーマ別に 3〜5 本立ち上げ — 既存読者をファースト・パーティに変換する動線 ### 中期(6〜12 ヶ月) 6. オーディエンス・エディターを正式配置 — 編集デスクと対等の発言権を付与 7. 法人向け B2B Pro 版を 1 業界で試験運用 — 年額 30〜100 万円規模 8. 地域・業界別のイベントを年 1〜2 回開催 — ブランド資産の現金化 9. AI ライセンス担当を経営層直轄で配置 — 個別交渉 or 業界連合体の準備 10. デジタル編集ワークフローへの完全移行 — 紙はその一部に位置付ける ### 長期(1〜3 年) 11. AI ライセンス契約の締結 — 単独 or 業界連合体で、年額数千万円〜数億円規模 12. ニュースルーム・エンジニアリングの内製化 — 編集ディレクター直轄 13. SaaS / データプロダクトの立ち上げ — 自社編集ノウハウの外販 14. 投資ファンド or VC 機能の検討 — 業界知見の収益化 15. 地方紙連合体での共同事業 — AI ライセンス、データ販売、研修プログラム --- --- ## まとめ — 新聞社の DX は「ビジネスの DX」へ深化する 2021 年に書いた論点は、「コンテンツの届け方をデジタル化する」レベルでした。2026 年の課題は、それを超えて「ビジネスモデル全体を AI 時代に向けて作り直す」レベルに進化しています。 新聞社の DX は、「Web サイトを作る」「電子版を作る」段階から、 - 編集ワークフローを再設計する - 読者データを編集判断に統合する - ニュースレター・音声・動画など複数チャネルを並走する - ファースト・パーティ・データの基盤を作る - AI ライセンスを新収益柱にする - 法人向け B2B モデルを確立する - ニュースルーム・エンジニアリングを内製化する という、はるかに広範な領域に広がりました。これは「IT 投資」ではなく「経営構造改革」です。 日本の新聞社にとって、いま重要なのは「縮む紙の収益を延命する」ことではなく、「AI 時代の新しい収益柱を組み立てる」ことです。それには編集・データ・ビジネス・テクノロジーの 4 つを、横断的に動かす組織能力が必要になります。 幸いなことに、日本の新聞社には海外の先行事例(NYT、Washington Post、Politico、Le Monde、Schibsted、Reuters、AP)と、5 年分の試行錯誤の知見が残されています。これらを学び、自社に最適化する形で取り入れる時期に入っています。 ## 参考文献 - Reuters Institute, *Digital News Report 2025* / *Trends and predictions 2026* - Pew Research Center, *News Platform Fact Sheet 2025* - Chartbeat, *Pageviews are down, but AI's impact is complicated*, 2026-06 - Press Gazette, *Google traffic down: trends report 2026* - Edison Research, *The Infinite Dial 2025* - Nieman Lab, *These 16 new journalism jobs could help publishers future-proof their newsrooms* - Digiday, *AI licensing deals between publishers and AI companies*, 2024-2026 - Local Media Consortium AI licensing reports - 大東洋克「新聞社の DX が直面する課題 — コンテンツを届けるための新しいアプローチ」、新聞研究、日本新聞協会、No.837、2021 年 8-9 月号(本稿の原型) キメラは、Chartbeat / tubular のデータと、海外メディアの先行事例を組み合わせ、新聞社・雑誌社・Web メディアと一緒にこの変革に伴走しています。新聞社の DX 再設計、AI ライセンス対応、法人向け B2B モデル立ち上げなど、具体的なケースで議論したい方は、お気軽にご相談ください。 --- ## コマースの裏方を支配する AI とソフトウェア:物流・決済・天引き回収を自動化する新インフラ URL: https://ximera.com/posts/xmnt-85-commerce-backend-ai 公開日: 2026-06-16 著者: Ikuo Morisugi 概要: Eコマースのフロントではなく「裏側」を AI とソフトウェアで作り直す動きが加速している。小売の天引き回収を自動化する Glimpse、オムニチャネル物流を統合する Stord、トラック給油決済から不正を排除する Piston。コマースの根幹を握る3社をまとめて整理する。 ## はじめに E コマース市場の競争が激化し、顧客獲得コスト(CAC)が高止まりする中、多くのブランドは売上を無理に伸ばすことよりも、利益率を確実に守るバックエンドの効率化へと焦点を移しています。とくに、複雑に断片化した物流インフラの管理、小売取引における不当な天引きの処理、長距離配送に伴う決済の追跡といったコマースの裏側には、依然として多くの手作業と非効率が存在しています。 近年、この地味でありながら企業の死活問題となる請求・決済・物流などのバックオフィス業務全般を、自律的な AI エージェントや垂直統合型で自動化・効率化するスタートアップが、数億ドル規模の巨額資金を調達し、新たな業界の標準になりつつあります。本稿では、コマースの裏側を強固に支え、企業の財務とオペレーションを大きく改善する3つのスタートアップを紹介します。 ## 1. 小売の天引きと収益回復を自動化する AI BPO — Glimpse 消費財ブランドがウォルマートやアマゾンなどの大手小売店と取引する際、請求金額に対して販売促進費の補填、輸送中の商品の破損、納品遅れのペナルティなど、さまざまな天引き(Deductions)が提示され、売上から差し引かれます。 天引きされるのは売上の 2% から 5% 程度ですが、実はその天引きの 40% から 60% は無効、または異議申し立てによって回収可能なものです。しかし、請求書の照合や異議申し立てがスプレッドシートや PDF での目視確認によって行われているため、多くのブランドが異議申し立てを行わずに泣き寝入りし、収益を損失しているのが現状です(参考: Endless Commerce の解説プレイブック)。 Glimpse は、この複雑な控除管理プロセスを自動化し、ブランドの収益回復を行う AI BPO プラットフォームを提供しています。AI が自動で数千件の請求書や配送ドキュメントを読み取り、不当な控除を特定して小売業者に対する異議申し立て手続きまでをワンストップで行います。 ### 導入企業の成果 - ノンアルコールビールブランドの BERO: Glimpse の導入により毎月 20 時間の作業時間を節約し、異議申し立てにおいて 97% の勝訴率を達成 - インスタントラーメン製造・販売の Immi: ドキュメントの分類・収集から、不正請求の証拠集め、申し立てやフォローアップまでを自動化し、5 万ドル(約 650 万円)以上の回収に成功 - 全体として 91% の異議申立勝率、ブランドチームで 80% の時間削減 ### 料金モデル Glimpse は月額 1,000 ドル(約 15 万円)の基本プラットフォーム利用料に加え、回収に成功した天引き金額の 15% を支払う成果報酬型(コミッション)のビジネスモデルを採用しています。さらに、クレジットメモの自動連携(月額 250 ドル〜/約 3.75 万円〜)や、ディストリビューターを接続する際の追加接続料(ディストリビューターごとに月額 100 ドル〜/約 1.5 万円〜)といったオプション料金が設定されています。 ### 資金調達 2026 年 3 月、世界的トップティアの VC である Andreessen Horowitz(a16z)をリードインベスターとして迎え、3,500 万ドル(約 52.5 億円)のシリーズ A を実施。大手消費財ブランド向けのシステム構築とプラットフォームの規模拡大が計画されています。 ## 2. オムニチャネルの物流インフラを統合するプラットフォーム — Stord ブランドが成長して E コマース(DTC)だけでなく、小売店への卸売りや実店舗展開などのマルチチャネルへと拡大する際、バックエンドの物流網は急激に複雑化します。 背景として、Shopify などのモダンな API で動く E コマースの注文管理システムに対し、大手小売への卸売りは「EDI(電子データ交換)」という何十年も前のレガシーなデータ通信規格が求められます。さらに、地域ごとに委託している複数の倉庫(3PL)はそれぞれ仕様が異なる独自の倉庫管理システム(WMS)を使用しており、配送会社(FedEx や UPS、路線便など)の追跡システムもバラバラです。 これら「API、古い EDI、無数の倉庫システム」を強引に繋ぎ込もうとすると、データがリアルタイムに同期されません。結果として、「ネットショップでは在庫があるのに、実際には卸売用の倉庫に引き当てられていて出荷できない」という過剰販売や、余剰在庫のブラックボックス化、配送ルートの非効率による出荷遅延といった重大なオペレーション問題が頻発します。 Stord は、クラウドベースの注文・在庫管理ソフトウェアと、全米に広がる物理的な倉庫ネットワーク(3PL)を一体化した、いわばコマースの物流 OS となるプラットフォームを提供しています。注文の処理から配送、最終的なラストマイルの追跡までを単一の管理画面に統合し、AI を用いて最適な配送ルートや在庫配置を自動算出します。 ### 導入事例 - 基礎栄養補助食品 AG1(Athletic Greens): 注文データの統合、倉庫管理システム、ラストマイル配送ソリューションを Stord に集約し、オムニチャネル販売の仕組みを構築 - ビューティブランドの Jolie: 定期購入(サブスクリプション)の急増に対応するために Stord のフルフィルメントと注文管理を導入し、前年比 6〜7 倍の急成長を支える物流体制を確立 ### 料金モデル Stord はエンタープライズ向けのプラットフォームであるため、固定の標準プランは一般公開しておらず、クライアントの出荷量・保管スペース・連携システムに応じた個別見積もりのカスタム料金モデルを採用しています。EC 物流分析ツール Forthmatch のレポートによると、ミドルからエンタープライズ層のブランドでの目安として、年間予算 15,000〜50,000 ドル以上(約 225 万〜750 万円)、これに加えて 1 注文あたり 1.50〜3.50 ドル(約 225〜525 円)程度のフルフィルメント手数料が発生する料金設計とされています。 ### 規模と資金調達 Stord は 2026 年 5 月時点で、1,000 以上の顧客を持ち 150 億ドル(約 2.4 兆円)の GMV を処理する大きな基盤となっています。同社は既存投資家の Strike Capital をリードとして、Founders Fund、Kleiner Perkins、Franklin Templeton、Bond、Lux Capital などが参加するシリーズ F ラウンドで 2 億 5,000 万ドル(約 375 億円)を調達。評価額は 30 億ドル(約 4,500 億円)に達し、累計調達額は 7 億 7,500 万ドル(約 1,160 億円)を突破しています。 ## 3. トラック給油決済から不正を排除する — Piston 米国では、物流・配送の現場において、燃料費や運行費の決済は長年専用のフリートカード(給油専用の物理的なプラスチックカード)に依存していました。しかし、これはカードの紛失や盗難、あるいはドライバーによる不正利用(詐欺行為)が多発し、運行管理者にとって経費漏れや事務負担の大きな原因となっていました。 Piston は、この物理カードの非効率を解消するため、トラックおよび物流業界に特化したカード不要の QR コードベースの燃料決済ネットワークを提供しています。ドライバーはスマートフォンの画面に表示される QR コードだけで給油などの決済を完了させることができます。 運行管理者は、リアルタイムにドライバーの給油データや現在地を監視・承認できるため、カードの不正利用や紛失リスクをゼロにし、紙の領収書の整理といった事務処理の手間を劇的に削減します。 長距離輸送の業界では、運送会社がコスト抑制のために特定のメガ給油チェーンと大口契約を結び、ドライバーの給油場所を指定(ルート固定)する運用が一般的です。そのため、Piston が Maverik のような主要チェーンのネットワークを網羅していれば、運送会社にとっては日常の運行に支障はありません。 ### 普及状況 2025 年 8 月時点で、800 か所のガソリンスタンドで 120 社以上の運送会社にサービスを提供しています。 ### 料金モデル 利用する運送会社(フリート側)は、初期費用・月額システム利用料・決済手数料などのプラットフォーム利用料をすべて完全無料で利用できます。Piston は、決済を受け付けるガソリンスタンドなどの加盟店側から、従来のクレジットカードやフリートカードよりも安価に設定された決済手数料を徴収するビジネスモデルを構築しています。これにより加盟店側は、手数料を抑えつつ新規のフリート顧客を獲得でき、Piston が支払いを保証するためクレジットリスクも排除されます。 ### 資金調達 2025 年 6 月、主要 VC である Spark Capital をリードインベスターとし、Pear VC、BOND などから 610 万ドル(プレシードと合わせて累計 750 万ドル、約 11 億円)のシード資金調達を実施。この資金を基に、全米での決済ネットワーク(提携店舗 14,000 箇所)拡大と、運行管理の利便性を高めるフィンテック機能の拡張を進める予定です。 ## おわりに 本稿では、小売チャネルの売上天引きを AI で自動回収する Glimpse、巨大な物流網をソフトウェアで統合する Stord、およびトラック給油決済の不正を排除する Piston を紹介しました。これらに共通するのは、わかりやすく派手な Web フロントの改善ではなく、これまで多くの人手と非効率に依存していた物流・決済・バックオフィスという、コマースの泥臭い根幹をデジタルと AI で再構築している点です。 AI コンピューティングが急速に進化する中で、最終的に競合と差がつくのは、物理的な配送現場や泥臭い財務処理といったリアルなオペレーションに直結した独自データと、それを自動化するバックエンドインフラの強さです。キメラでは引き続き、こうしたコマース裏側の技術革新を追いかけていきます。 --- ## ニュースルームは、なぜAIエンジニアを雇い始めたのか - 16の職種が映す、メディア組織の変化 URL: https://ximera.com/posts/ai-engineers-in-newsrooms 公開日: 2026-06-10 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 ジャーナリズムの未来を追うハーバード大学の研究機関、Nieman Labが2026年6月3日、ひとつの記事を公開しました。書き手は同メディア編集長のローラ・ハザード・オーウェン氏。タイトルは「これら16の新しいジャーナリズムの職種が、出版社のニュースルームを将来にわたって守るかもしれない(These 16 new journalism jobs could help publishers "future-proof" their newsrooms)」です。 この記事のベースになっているのは、FT Strategies・WAN-IFRA・Arc XPがまとめた「Future Newsrooms Study」レポートです。LinkedInで募集されている6,687件の求人をまとめ、そのうち234件を戦略ロールに分類、そこからさらに16の「戦略機能ロール」を4カテゴリーに絞り込んだものです。オーウェン氏はその16職種ひとつひとつの求人票を読み込み、各社が何を求めているのかを分析しています。募集主体には、The Economist、The New York Times、Washington Post、CNN、Politicoなど、名だたる報道機関の名前が並びます。 象徴的なのは、The Economistが募集したシニアAIエンジニアの職務記述です。そこには編集トーン、スタイル転写、検索ワークフロー、マルチモーダル生成にフォーカスしてLLMシステムを構築・ファインチューニングすると書かれています。10年前なら、ジャーナリズムの求人票にこんな言葉は存在していませんでした。 私たちキメラは、メディアの事業戦略とデータ分析を支える立場から、この求人リストを「人事の話」ではなく「あたらしい組織のありかたの話」として捉えました。以下、その背景を整理しながら、日本のメディアに関わる人が次の一手を考えるためのヒントを拾っていきます。 ## なぜ、いまこの職種が生まれるのか 求人票を読む前に、そのベースにある現状について触れておきます。それは、これまでメディアが重要度高く築き上げてきた、検索流入の崩壊です。この2年弱のあいだに起こった技術革新と、それに伴うユーザーの行動変容によって、長い時間とコストをかけて積み上げてきた検索トラフィックの多くが、失われてしまいました。 Googleが2024年5月にAI Overviewsを全米展開して以降、その変化はさらに拍車がかかっています。2,500を超えるニュースサイトを追跡したChartbeatのデータでは、2025年のGoogle検索リファラルは33%減少しました。個別に見ればもっと深刻で、MailOnlineやMetroを擁するDMG Mediaは、AI Overviewsが表示された一部の検索でクリック率が9割近く落ちたと報告しています。 ユーザー行動の構造そのものが変わりました。ユーザーが外部サイトを一度も訪れずに答えを得る「ゼロクリック検索」は、いまやGoogle全クエリの約6割を占めます。ニュース関連の検索にかぎれば、AI Overviews登場後の1年でこの数字は69%に達しました。検索エンジンは「情報を探してサイトへ送り出す入口」から、「Googleの中で完結する場所」へと姿を変えつつあるのです。 そして先行きは明るくありません。ロイター・ジャーナリズム研究所が2026年1月に報告したところでは、世界のメディア幹部は、AI要約とチャットボットによって今後3年で検索リファラルがさらに43%落ちることを懸念しています。SNSも受け皿にはなっていません。FacebookもXもパーソナライズされたフィードへ移り、報道機関の投稿より友人やクリエイターの投稿を優先するようになりました。Xは外部リンク付きの投稿のランクを下げ、ユーザーをアプリの中に留めようとしています。 検索もソーシャルも、プラットフォームは「ユーザーを自分の外へ出さない」方向へ最適化を進めている。これが、いまメディアが立っている地面です。 ## 課題の本質は、「借りてきた土地」と「分かれた組織」 ここで、この危機を私たちなりに整理しておきます。問題はトラフィックの数字そのものではなく、その奥にある2つの構造だと考えています。 ひとつは、ユーザーリーチの経路を第三者のプラットフォームに依存してきたこと。検索やSNSという「借りてきた土地」からの流入を築いてきた以上、そこでのルールがひとつ変わるだけで地盤が崩れます。AI Overviewsは、その脆さを一気に見えるかたちにしました。 もうひとつは、メディア組織の中で「データを読む人」「編集を決める人」「技術を実装する人」が、それぞれ別の部屋に分かれていたこと。あるいは、その役割自体を明確には置いてこなかったこと。流入が右肩上がりだった時代は、この分業でも機能してきました。けれども、プラットフォームの変化を即座に読み取り、編集判断のための情報に翻訳し、対応する機能を数週間で形にする。そんなスピード感が必要とされる時代には、いまの組織構造では間に合いません。 16の新しい職種は、この2つの課題への答えとしても読むことができます。 ## レポートが整理した4つのカテゴリー レポートは16職種を4つのカテゴリーに分類しています。 1. オーディエンス戦略。取材・配信・プラットフォーム選択をデスク横断で形づくる、編集現場に埋め込まれたオーディエンスエディター。 2. 編集におけるAIイノベーション。記者に張り付き、AIで解決できそうな痛点を見つけ、自分でプロトタイプまで作るエディター兼コーダー。 3. 編集主導のプロダクト・デザイン。編集の席に座り、AIネイティブなインターフェースに向けて「ニュースという対象」そのものを作り直すデザイナーとプロダクトディレクター。 4. ニュースルーム・エンジニアリング。数週間ごとにAI機能を出荷し、担当エディター自身がプルリクエストをレビューする、編集主導のエンジニアリングチーム。 この4つの分類に共通するのは、AI・プロダクト・エンジニアリングが「編集の外」から「編集の中」へ移っていることです。組織内の分断を壊し、機能を編集現場の中に置き直す。課題の構造に、組織のかたちで答えようとしています。 なかでもPoliticoの設計は象徴的です。その編集ディレクター(ニュースルーム・エンジニアリング)は、アジャイルの進行を回し、リスクの高いプルリクエストを自らレビューし、自分でもコードを書くplayer-coachとして描かれています。狙いは明快で、四半期ごとの検証から、数週間ごとにAI機能をデリバーする体制へ移行し、競合が再現できないPolitico独自のモデルを築くこと。そしてその成果は、削減できた時間・公開までの時間・保たれた品質・実際のユーザーによる利用率で測られます。 ## ここからが、キメラの読み この4カテゴリーを、日本のメディアが抱える課題に引きつけて読み直すと、3つの示唆が浮かびます。 ### 1. オーディエンス戦略は、「分析」ではなく「編集判断」になる NYTのオフプラットフォーム担当は、検索とソーシャルの上でジャーナリズムの視認性を保つ戦略の、主たる設計者と位置づけられ、求められているのは新しい潮流を見抜き、速く、それでいて正確な編集判断を下し、最も効果の高いプラットフォームに資源を投じられる変革志向のリーダーです。 注目したいのは、これがアナリストの仕事として書かれていないことです。CNNのオーディエンスエディターは、オーディエンスのシグナルを、はっきりとした編集上の選択へと翻訳する、デスクごとに埋め込まれたパートナーと定義されています。数字を読む人と、それを編集判断に変える人を、ひとりでまかなっているのです。 日本の大手メディアでChartbeatのようなリアルタイム分析を入れても効果が出にくいことがあります。その多くは、「分析する人」と「決める人」が分かれているからです。数字は出るのに、編集判断に翻訳されないまま流れていく。先ほどの「分かれた組織」の結果が、ここに表れます。ここで定義された職種は、その翻訳の工程を、ひとつの役割として制度に組み込んでいます。 ### 2. AIは、「専門チームの仕事」から「全デスクの前提」になる Politicoの2026年のチームに与えられた任務は、こうです。すべてのデスクが、実践的で新しいやり方でAIと新技術を使えるよう手助けすること。 AIラボを作って隔離するのではなく、全デスクへ行き渡らせること自体を戦略目標に据えている。USA Todayのシニアプロダクトマネージャー(AIプロダクト)も、現場のニュースルームのワークフローを、動くAIプロダクトに変えていく役割として、記者や編集者のすぐ隣に置かれています。 日本では、AI導入を情報システム部門や一部の先進チームに切り出す動きが先に立ちがちです。けれどここで起きているのは、逆の流れです。AIを編集現場の日常業務へ溶かし込み、その浸透度や実際の利用率をKPIにしていく。「組織のどこにAIを置くか」という設計思想そのものが、問われています。 ### 3. 「自社にしかないモデル」が、競争の軸になる Politicoのこの一文が、最も重く響きます。競合が再現できない、Politico独自のモデルを築く。The Economistの編集のトーンやスタイルに合わせてLLMをファインチューニングするという記述も、同じ思想の上にあります。 ここに、検索流入の崩壊に対する本質的な答えがあると考えています。汎用のAIは、誰でも使えます。プラットフォームに乗って薄く広くリーチを取る戦略は、もう地盤ごと崩れました。だからこそ差がつくのは、自社の声・スタイル・一次情報という、他社には再現できない文脈を、AIにどう載せるか。Politicoが自社の声と判断を「再現できない資産」として扱っているのは、その表れだと私たちは見ています。 これは技術投資の話に見えて、その実、編集アイデンティティの話です。自社の声とは何なのか。それを言葉にできているか。ファインチューニングの前に、まずこの問いがあります。 ## メディアの組織は、どこへ向かうのか ここまで見てきた16の職種は、ばらばらの求人ではなく、ひとつの方向を指しています。それは、メディアの組織が「機能ごとに分かれた縦割り」から、「編集を中心に機能が溶け合う構造」へと組み替わりはじめている、ということです。 これまでのニュースルームは、編集・分析・技術・プロダクトを別々の部屋に置き、それぞれの専門性で深めていく構造でした。流入が安定していた時代には、その分業が強みになりました。けれど、土台だった検索が崩れ、プラットフォームの変化に数週間単位で応えなければならなくなったいま、部屋を分けたままでは速さも判断も追いつきません。データを読むことと編集を決めることが地続きになり、AIを試すことと記事を出すことが同じ現場で起きる。16の職種は、その地続きの構造を、ひとつひとつの役割として言葉にしたものだと捉えています。 この変化は、規模の大小を問いません。むしろ人員の限られた組織ほど、ひとりが複数の機能を横断する設計は現実的な選択肢になります。大切なのは肩書きを真似ることではなく、自分たちの組織のどこに分断があり、どこを編集の中心へ引き寄せるべきかを見極めることです。 検索というベースが崩れたいま、メディアが立て直すべきは流入の数字ではなく、組織そのもののかたちなのかもしれません。到達経路を、まだ他人のプラットフォームに依存したままにしていないか。データを読む人と決める人は、まだ別々の部屋にいないか。AIは、いまも一部のチームに隔離されたままではないか。そして、自社の声を、他社が再現できない資産として、言葉にできているか。組織のかたちを問い直すことは、そのまま「これからどんなメディアであろうとするのか」を問い直すことでもあります。私たちが向き合っているのは、たぶんそういう変化です。 *主な出典:* - [*Laura Hazard Owen, "These 16 new journalism jobs could help publishers 'future-proof' their newsrooms," Nieman Lab, 2026年6月3日*](https://www.niemanlab.org/2026/06/these-16-new-journalism-jobs-are-designed-to-help-publishers-future-proof-their-newsrooms/) - *Chartbeatの2025年検索リファラル33%減:[The Next Web, 2026年5月7日](https://thenextweb.com/news/google-ai-overviews-publisher-links-search-traffic)* - *DMG Mediaのクリック率低下:[Search Engine Journal, 2025年10月28日](https://www.searchenginejournal.com/impact-of-ai-overviews-how-publishers-need-to-adapt/556843/)* - *ゼロクリック検索の比率(Similarweb):[The Next Web](https://thenextweb.com/news/google-search-ai-overhaul-publishers-traffic-open-web)* - *メディア幹部の3年後予測:[Reuters Institute, Journalism and Technology Trends 2026(Press Gazette報道, 2026年1月16日)](https://pressgazette.co.uk/media-audience-and-business-data/google-traffic-down-2025-trends-report-2026/)* - *SNSリファラルの構造変化:[Alta Journal, 2026年3月22日](https://www.altaonline.com/dispatches/a70466591/ai-overviews-google-zero-search-traffic/)* --- ## オーディエンスの規模、オーディエンスとの関係の深さ、メディアが測るべきもの URL: https://ximera.com/posts/audience-size-vs-relationship-depth 公開日: 2026-06-10 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 What's New in Publishingが2026年5月25日に公開した記事に、こんな一文があります。「リーチと、関係は、同じものではない(reach is not the same as relationship)」。 この記事は、デビッド・ホーマン氏とノア・アスキン氏の共著『Orchestrating Connection(つながりを編む)』を紹介しています。ホーマン氏は、信頼・人の紹介・意味のあるネットワークの設計をテーマに活動するニューヨークの起業家で、この本そのものはメディア企業に向けて書かれたものではありません。けれど、その中心にある主張は、いま出版社がまさに聞くべきものだと、書き手のジェズ・ウォルターズ氏は言います。 ホーマン氏の主張は、シンプルです。本当のつながりは、オーディエンスの規模やフォロワー数、連絡先のデータベースから生まれるのではない。信頼と、価値のやりとりの繰り返しと、関係を意図して設計することから生まれる。本人の言葉を借りれば、「大きいネットワークも小さいネットワークも、巨大なオーディエンスというものも存在しない。あるのは、人と人との関係だけだ」。 私たちキメラは、読者がどう記事に触れているかを記録するデータ(Chartbeatなど)を扱う立場から、この問いを自分ごととして読みました。以下、内容を整理しながら、メディアに関わる人が次の一手を考えるためのヒントを拾っていきます。 ### リーチは、メディアの価値を測るには弱すぎる まず、記事が投げかける問題から。 メディア業界はこの20年、ひたすら規模の最大化に取り組んできました。検索トラフィック、ソーシャルでのリーチ、ニュースレターの登録者、ページビュー、会員登録。もちろん、これらの数字に意味がないわけではありません。けれど、ウォルターズ氏ははっきりと書きます。それらが証明するのは「人々にリーチできる」ことだけであって、その人々が「戻ってくる、お金を払う、誰かを紹介する、ビジネスの成長を助ける」ことまでは証明しない、と。 ここで問いが反転します。商業的に本当に大事なのは「何人に到達できるか」ではなく、「そのリーチが何を実現するか」です。習慣を生むか。サブスクリプションへの意欲や、イベントへの参加や、役に立つファーストパーティデータを生み出すか。 そして、この問いはいま、急速に切実なものになりつつあります。検索は姿を変え、ソーシャルでの配信は断片化し、AIインターフェースはユーザーを元の情報源に戻さないまま、その場で答えを返すようになっているからです。借りもののリーチが当てにできなくなったいま、関係性の深さは戦略的な資産へと変わりつつあります。 ### 「コンタクトを持っていること」と「関係があること」は違う ホーマン氏の指摘のなかで、私たちがとりわけ重要だと感じたのが、この区別です。「コンタクトを持っていること」と「関係(リレーションシップ)があること」は、別物だというものです。 多くのメディア企業は、既知のユーザーの巨大なデータベースを持っています。けれど、より強い問いは「何人の既知ユーザーがいるか」ではなく、「どの読者が、参加し、紹介し、更新し、専門知識を寄せ、ほかの人をブランドに引き入れてくれるか」です。 この問いは、読者の分け方そのものを変えます。年齢や性別、好むコンテンツだけで読者をグループ分けするのではなく、オーディエンスの中にいる「つなぎ手(コネクター)」を見つけ出すべきだとホーマン氏は言います。ニュースレターに自分のひと言を添えて転送する人、同僚を誘ってイベントに連れていく人、専門知識を提供してくれる人。彼らが商業的に重要なのは、その出版社が「オーディエンスの前に立っている」のではなく、「生きたネットワークの中にいる」ことを示しているからです。 ### 「コミュニティ商品」の多くは、まだ一方通行 ここで多くのメディアは、こう反論したくなるはずです。「うちはもうコミュニティを持っている。ニュースレター、イベント、会員制度、読者フォーラムがある」と。 けれど、ホーマン氏のフレームは、そこにある共通の弱点をあぶり出します。それらの多くは、コミュニティという言葉をまとっただけの、いまも一方通行の「放送(ブロードキャスト)商品」にすぎないのではないか、と。コンテンツを送りつけるニュースレターは、それだけではコミュニティではない。部屋を満員にするイベントは、それだけではネットワークではない。 では、何が分かれ目なのか。ホーマン氏の試金石は明快です。そのフォーマットが、人々に「一人ではできなかったこと」を可能にしているかどうか。これが、コミュニティと放送を分ける線だというのです。本人の言葉では、「出版という営みは全体として、商品をデジタルや物理の棚に置いて、誰かが目を留めてくれるのを願っているだけだ」。 代わりにホーマン氏が勧めるのは、商品を売る前に、オーディエンスを巻き込んでしまうことです。読者パネル、専門家ブリーフィング、会員向けの先行公開。これらは、従来型の宣伝を押し出すよりも強い「発売前の需要」を生み、読者が本当は何に価値を感じているのかについて、より明確なシグナルを与えてくれます。 ### 信頼は、メッセージではなく行動で築かれる もうひとつ、見逃せない指摘があります。多くの出版社は「見せること・伝えること」は得意でも、「受け取ること」が下手だというものです。発信し、宣伝し、ターゲティングはする。けれど、読者や会員が何を解決しようとしているのかを捉えるフィードバックの仕組みを、しばしば欠いている。それがないかぎり、出版は「人々が何を求めているかを推測し、その反応をあとから測る」ことに頼りつづけることになります。 だからこそ、信頼の築き方も変わります。ホーマン氏の本は好奇心・寛容さ・弱さの開示(vulnerability)といった原則で構成されています。好奇心とは、何を売るかを決める前に読者の声を聴くこと。寛容さとは、購読を求める前に、役立つアクセスや知見を先に差し出すこと。 そして、ここが核心です。信頼は「信頼されるジャーナリズム」と名乗ることで築かれるのではない。読者が、有能さ・誠実さ・お互いさまの感覚を繰り返し体験したときに築かれる。登録も、支払いも、イベント参加も、紹介も、すべて「この関係は続ける価値がある」という確信を必要とします。その確信は、メッセージではなく、行動によって獲得されるものです。 ### 関係の深さを、どう測るか ホーマン氏の議論は、思想としては明快です。問題は、それを日々の経営判断にどう落とすか。「関係の深さ」は、放っておくと「大事だよね」という掛け声で終わってしまいます。掛け声を戦略資産に変えるには、それを測れる数字に翻訳しなければなりません。 私たちが向き合っている日本の新聞社・出版社にとっても、PV中心のダッシュボードで評価する時代から抜け出すタイミングが来ていると考えています。たとえば、Chartbeatが提唱してきたエンゲージドタイム(記事にどれだけ集中して向き合ったか)、ロイヤルティ(どれだけ繰り返し戻ってくるか)、再訪頻度、直接訪問率(検索やSNSを経由せず、直接そのサイトに来た割合)。これらの多次元の指標は、まさにホーマン氏が「関係の深さ」と呼ぶものを、数字として捉えるための道具です。 とりわけ直接訪問率は、ホーマン氏の言う「借りものではないリーチ」の代理指標になります。検索やSNSという他人のプラットフォームを通らず、読者が自分の意思でそのメディアに戻ってくる。その割合こそが、「連絡先」ではなく「関係」がどれだけあるかを映し出します。 「オーディエンスの規模(Audience Size)」から「関係の深さ(Relationship Depth)」へ。この思考は、日本市場でこれからの競争軸である、と私たちは見ています。 ### 私たちに課された課題 検索もソーシャルも、ユーザーを元の場所に戻さなくなりつつあるいま、借りもののリーチだけに頼るメディアは、足元が揺らぎつづけます。ホーマン氏が示した処方箋を、ウォルターズ氏はこうまとめています。必要な転換は、「放送する」ことから「尋ねる」ことへ。読者やパートナーが何を成し遂げようとしているのかを理解し、そのニーズを編集と事業の価値につなぐ商品をつくること。 「何人に届いたか」を数えるのは、簡単です。けれど、これからのメディアに問われるのは、たぶん別のことです。届いた人のうち、何人が戻ってきたか。何人が、誰を連れてきたか。何人が、ただ消費するだけでなく、ほかの誰かのために価値を生んでくれたか。 それを知るには、まず「いま読者が、どこで、どの記事に、どれだけ深く向き合っているか」を観察することから始まります。規模を数えることから、関係を見つめることへ。私たちが向き合っているのは、たぶんそういう問いの組み替えです。 *出典:[Jez Walters, "Why Audience Size Is the Wrong Metric — and What Publishers Should Measure Instead," What's New in Publishing, 2026年5月25日](https://whatsnewinpublishing.substack.com/p/why-audience-size-is-the-wrong-metric)* --- ## インターネットは、なぜニュースに向かないのか。そして、どこに打ち手があるのか URL: https://ximera.com/posts/why-internet-fails-news 公開日: 2026-06-04 著者: Hirokatsu Ohigashi / 大東洋克 [Nieman Labのマット・ピアース氏が2026年5月に書いた論考](https://www.niemanlab.org/2026/05/you-couldnt-create-a-more-anti-news-internet-if-you-tried/)に、こんな問いかけがあります。「もし、世の中の人に正しい情報が届かないようにしようと企むインターネットの独裁者がいたとしたら、その人が作るインターネットは、いま私たちが毎日見ているスクリーンとそっくりそのままになるだろう(If there were a dictator of the internet who intentionally set out to destroy your ability to get accurate information, the result would look a lot like what's already on your screen.)」。 刺激的な書き出しですが、彼の狙いは絶望を語ることではありません。「人はいつも合理的に動くわけではない」という人間のそもそもの特性、行動経済学の視点から、いまのインターネットとニュースの関係を解きほぐし、どこに手を打てるのかを探っていく、そういう論考です。 私たちキメラは、読者がどう記事に触れているかを記録するデータ(Chartbeatなど)を扱う立場から、この問いを自分ごととして読みました。以下、内容を整理しながら、メディアに関わる人が次の一手を考えるためのヒントを拾っていきます。 ### 壊れる側だけが、先に進んでいる まず、いま起きていることの整理から。 ふつう、古い産業が壊れるときは、その裏で新しい産業が育ち、失われたものを埋め合わせます。たとえば、街のレコード店が消えていく一方で、SpotifyやApple Musicのような新しい聴き方が育ち、人が音楽に触れる量はむしろ増えました。経済学では、こうした「古いものが壊れて、新しいものが生まれる循環」を、創造的破壊と呼びます。 ところがニュースの世界では、この循環が片側しか回っていません。たとえば、長年その地域を取材してきた地方紙が記者を減らし、役所や議会に毎日詰めていた「番記者」がいなくなる。その穴を、新しいネットメディアやニュースアプリが埋めてくれるかというと、まだそこまで育っていない。つまり、取材して一次情報を生む力は確実に失われているのに、それを引き継ぐ受け皿ができていない。壊れる側が先に進み、生まれる側が追いついていない状態です。 ここで大事なのは、これを「終わりの話」として読まないことです。循環の片側が止まっているなら、もう片側である、新しく価値を生む側をどう設計するか、という問いが立ちます。ここでの論考も、最終的にはそこへ向かっていきます。 ### ニュースが消えた町で、何が起きるか とりわけ目を向けたいのが、地域のニュースが消えた町です。そこでは、住民が孤独を感じやすくなり、自分の町の政治家が何をしているか分からなくなり、不正も増える、そうした傾向が数字で確認されています。 具体的に想像してみます。地元紙が無くなった町では、議会で何が決まったのかを伝える人がいなくなります。新しい施設にいくら使われるのか、なぜその業者に決まったのか、誰も確かめないまま物事が進む。選挙のときも、候補者がどんな人で何を主張しているのか分からないまま投票日を迎える。気づけば、税金の使い道も、町の決め事も、自分の知らないところで決まっている。そういう町になっていきます。 ニュースが無くなったこと自体は、目に見えません。けれど私たちは、その分のツケを知らないうちに払っている。ピアース氏はこれを「見えない税金」と呼びます。隣に誰が住んでいるか分からなくなる孤立という形で、町の不正を見過ごすという形で、ときには文字どおり、本来なら止められたはずの無駄遣いというお金の形で、私たちはこの税金を払っている、と。 裏を返せば、地域に正確な情報が流れているだけで、その町は孤立や不正というコストを払わずに済む、ということでもあります。地域メディアの価値を「あったらいいもの」ではなく「無いと町が損をするもの」として語り直せる。この見方は、地域でメディアを営む側にとって、けっこう力強い足場になります。 ### 人は、そもそもニュースを探していない では、なぜニュースは届きにくいのか。ここで効いてくるのが、人間の脳のクセです。 人の脳には、2つのモードがあります。ひとつは、パッと反応する「直感モード」。スマホを開いてSNSを指でスクロールし、面白そうな動画を次々タップしていく、あの状態です。ほとんど考えていません。もうひとつは、じっくり考える「熟考モード」。確定申告の書類に向き合うときや、込み入った契約書を読むときに働く、あのモードです。そして、この熟考モードはとても怠け者で、できれば働きたがりません。 ネット上のコンテンツの多くは、前者の直感モードに合わせて作られています。プラットフォームが、あなたが次に何をタップするかを見抜くためのデータを、ずっと集め続けているからです。指が止まらないように、考える前に次が出てくるように、設計されている。 一方で、ニュースを正しく読み解くには、面倒な熟考モードをわざわざ呼び起こさなければいけません。背景を知り、誰の発言かを確かめ、本当だろうかと一度立ち止まる。スクロールの速度とは、かみ合わない作業です。しかも多くの人は、そもそも自分からニュースを探しに行きません。ある調査では、回答者がこう答えています。「最近は、ニュースのほうから勝手にやってくる」。わざわざニュースサイトを開くのではなく、SNSのタイムラインに流れてきたものを、たまたま目にするだけ、というわけです。 プラットフォームは「いかに長く見てもらうか、いかに多くタップしてもらうか」を最優先に設計されています。腰を据えてニュースを読むという行為は、この仕組みと、そもそもかみ合いにくいのです。 ただ、これは「人間が悪い」「ネットが悪い」という話ではありません。人にそういうクセがあると分かっているなら、そのクセに逆らわず、うまく付き合う設計ができるはずだ。論考はここから、解決の話に入っていきます。 ### 「そっと後押しする」という設計 ピアース氏が手がかりにするのが「ナッジ」という考え方です。人の自由を奪わずに、ちょっとした工夫で、良い選択へとそっと後押しするやり方を指します。たとえば、コンビニのレジ横にゆで卵やサラダチキンを置くと、つい手に取る人が増える。買うかどうかは本人の自由なのに、置き場所ひとつで選びやすさが変わる。あの感覚です。 じつは昔の新聞やテレビは、これを自然にやっていました。一面のトップや番組の冒頭に何を置くか、それは「いちばん面白いネタ」だからではなく、「町の人がいちばん知っておくべきこと」だから、いちばん目立つ場所に置いていた。読者が探さなくても、大事なことが自然と目に入る。新聞を広げれば、まずそれが見える。そういう設計になっていたのです。 いまのインターネットは、この「大事なニュースをそっと差し出す」やり方を、ほとんど手放してしまいました。タイムラインに流れてくるのは、本人がいちばん反応しそうなものであって、いちばん知っておくべきものとは限りません。でも、裏を返せば、ここには手つかずの打ち手が残っているということでもあります。たとえば、 - アプリを開いたら、その日いちばん大事な一本が、迷わず目に入る場所に出てくるようにする - 良い記事を読み終えた人が、その勢いのまま寄付や購読へ進めるよう、ページの末尾にボタンを置いておく - 記事を読み終えた人に、「次に読むといい一本」をその場でそっと差し出す こうした小さな設計の積み重ねが、「探さない人」にもニュースを届ける、現実的な方法になります。派手な技術革新ではなく、受け手のクセを前提にした地道な工夫。ここにこそ、小さなヒントがあります。 ### 受け取る側を、助ける 最後に、論考のいちばん大事な視点を。 ニュースを良くしようとする取り組みは、これまで主に「正確な情報を作る側」を支えることに向いてきました。取材を厚くする、誤報を防ぐ、調査報道に予算をつける。それも欠かせません。けれどピアース氏は、それと同じくらい、選択肢が多すぎて疲れ果て、情報の沼に溺れかけている「受け取る側」を助ける工夫が要る、と言います。どれだけ良い記事を作っても、受け手が探す気力を失っていれば、届かないからです。 正確な情報を探そうとする私たちに、いまのデジタル経済は、重たい「見えない税金」を課している。どのサイトが信頼できるのか、この情報は本当か、自分で確かめる手間を、一人ひとりが負わされている。だとすれば、打ち手の方向ははっきりしています。受け手が払うこの「探す手間」「確かめる手間」を、どうやって軽くしてあげられるか。ニュースを作る努力と、ニュースを受け取りやすくする工夫は、車の両輪なのです。 ### 私たちに課された課題 日本でも、地方紙の休刊や縮小が相次いでいます。広告で稼ぐモデルが崩れ、有料の電子購読への切り替えも、期待通りには進んでいない。この論考が描く構図は、日本の地域メディアが向き合っている状況と、そのまま重なります。 ただ、この記事を読み終えて残るのは、絶望ではありません。「人は合理的に動かない」「人はニュースを探さない」。この当たり前を出発点に置けば、打つべき手はむしろ具体的に見えてきます。どこに、どんなニュースを、どう差し出すか。受け手の手間を、どこでどう軽くするか。 そして、その問いに具体的に答えるには、まず「いま読者が、どこで、どの記事に、どれだけ触れているか」を知ることから始まります。どの記事が最後まで読まれているのか。どこで離脱しているのか。どんな入り口から来た人が、また戻ってきてくれるのか。読者の行動を記録するデータは、その土台になります。「どうすれば人がニュースを読むようになるのか」を、勘ではなく、観察から考える。私たちが向き合っているのは、たぶんそういう課題です。 *出典:[Matt Pearce, "You couldn't create a more anti-news internet if you tried," Nieman Lab, 2026年5月26日](https://www.niemanlab.org/2026/05/you-couldnt-create-a-more-anti-news-internet-if-you-tried/)* --- ## Tubular Audience Intelligence でインフルエンサー価値を再定義 URL: https://ximera.com/posts/tubular-audience-intelligence-redefines-influencer 公開日: 2026-06-01 著者: Renaldo Smith インフルエンサーマーケティングは進化している。今勝っているのは、必ずしも予算が最も大きい組織ではない。オーディエンスについてより賢い問いを立て、本当にビジネス成果を動かしているクリエイターと、単に視聴数を稼いでいるだけのクリエイターを見極めようとしている組織だ。 これが、Tubular 最新レポート『Redefining Influencer Value: How Audience Intelligence Transforms Reach into Revenue』の中心的問いである。ヘルスケア、ゲーミング、CPG(消費財)の各業界で、データが同じことを示している——最も多くの視聴数を生むクリエイターが、必ずしも最も価値を生むクリエイターではない、と。 本記事では、それが実際にどう見えるのかを掘り下げる。検索アフィニティ、購買行動、文化的整合性といったオーディエンス・インテリジェンスが特に強力なケースを持つヘルスケアに最も時間を費やし、その後、ゲーミングとCPGの注目すべき発見にも触れる。 データをすぐに掘りたければ、フルレポートを今すぐダウンロード。 ### インスタグラムのヘルスケア会話を動かしているのは何か どのヘルスケア・インフルエンサーがどの会話を主導しているか、そしてオーディエンスがその間をどう移動しているかを理解することで、マーケターはナラティブに反応するのではなく、先回りできるようになる。 例えば、インスタグラム上で実際に医療トピックを動かしているものを理解するため、私たちは 2025 年の米国インフルエンサー・コンテンツにおける視聴数別の主要トピックを分析した。 ![](/images/posts/tubular-audience-intelligence-redefines-influencer/Section-2b_1920x1080-1.jpg) データが示すのは——代替系コンテンツと伝統系コンテンツが並列で現れていることだ。消費者は臨床的ナラティブと代替的ナラティブのどちらかを選んでいるのではなく、両方を同時に消費している。製薬、サプリメント、スキンケアのブランドにとって、これは明確な戦略機会を生む——好奇心が高く、購買意図が形成されている場所で、オーディエンスと出会えるということだ。 キーテイクアウェイ: インスタグラム上のヘルスケア会話は、一部のブランドが認識しているよりも幅広い。臨床コンテンツのみに登場することは、相当割合のオーディエンスを取りこぼすことを意味する。 ### ヘルスケアブランドにふさわしいインフルエンサーの見つけ方 視聴数とエンゲージメントは出発点だが、ストーリーの全てを語ってはくれない。オーディエンス・インテリジェンスがフォロワー数を超えて何を見せるかを理解するため、私たちはインスタグラム上の主要な皮膚科クリエイター 2 人——Dr. Charles, MD と Dr. Neera Nathan——の検索アフィニティを分析した。 ![](/images/posts/tubular-audience-intelligence-redefines-influencer/Section-2c_1920x1080-1.jpg) 分析を分かりやすく示すため、あなたが Latisse(まつ毛美容液)のような製品をマーケティングしていて、皮膚科領域でインフルエンサーの選択肢を評価していると想像してほしい。フォロワー数だけで判断すれば、Dr. Neera Nathan の 180 万のオーディエンスを選ぶことになる——これは広範で、医学的に関連が深く、特定の症状と治療に焦点を当てている。しかし、オーディエンス・インテリジェンスのデータを重ねると、ストーリーはより微妙になる。 図が示すように、両インフルエンサーのオーディエンスには共通基盤がある。本当の戦略的価値は、彼らが分かれる場所にある。Dr. Charles, MD は過熱したトレンドに異議を唱え、成分科学を臨床視点で解説する。Dr. Neera Nathan は複雑な皮膚科トピックをアクセスしやすく、シェアしやすい教育コンテンツに翻訳する。 ここに鍵となる洞察がある——Dr. Charles, MD のオーディエンスの 17% は Dr. Neera Nathan も視聴しているが、彼女のオーディエンスのうち彼を視聴しているのは 2% にすぎない。この非対称性が、彼を Latisse のような製品にとって強力な選択肢にする。 彼は単なるニッチ枠ではない。Dr. Charles と組むことで、エンゲージメントの高いオーディエンスと、Dr. Neera のより広いリーチへの直接的な橋を同時に手に入れられる——主流の理解に先んじて、臨床的信頼性を確立できるのだ。オーディエンスの重なりと検索アフィニティをつなげると、どのクリエイターがオーディエンスの行動を形作っているかがより明確に見える。 フルレポートでは、キャンペーン目標に基づいてパートナーシップを戦略的に重ねる方法も含め、潜在的なインフルエンサー・パートナーへの評価を比較する方法を詳細に分解している。 キーテイクアウェイ: フォロワー数は誤解を招く可能性がある。オーディエンスの重なりと検索アフィニティが、本当に到達したいオーディエンスを動かすクリエイターを明らかにする。 ### ヘルスケアを超えて:ゲーミングとCPGのインフルエンサー知見 同じインフルエンサー識別の原則は、他業界にも適用される。レポートがゲーミングとCPGで見つけたものの一部を紹介する。 影響力は意図に等しい:東アジア・東南アジアのアニメ&ゲーミング 東アジア・東南アジアのYouTubeアニメ・インフルエンサーは 2025 年に 180 億ビューを生成した。しかし、生の数量はストーリーの全てを語らない。ファンの行動と購買意図を実際に形作っているクリエイターは、その風景の中でずっと小さく、より特定的なスライスに属している。 カテゴリー一致より文化的一致:ブラジルの飲料パートナーシップ ![](/images/posts/tubular-audience-intelligence-redefines-influencer/Section-3c_1920x1080-1.jpg) ブラジルは 2025 年、インフルエンサーTikTok視聴数とエンゲージメント率で世界第 2 位にランクインした。その市場で Heineken は、わずか 13 万 6,000 人のフォロワーを持つメンズファッション系クリエイターと組み、50 日間で 1 億 6,800 万ビューと 100 万エンゲージメントを生成した。フルレポートでは、なぜそれが機能したか、そしてあなたが再現できる洞察を解説している。 ### 結論:リーチは出発点であって、戦略ではない ブランドはこれらの洞察をどう適用できるか? シンプルなフレームワークがある。 正しいオーディエンス・インテリジェンスがあれば、マーケターは推測する必要はない。どのインフルエンサー・パートナーシップがインパクトを生むかを正確に見て、自信を持って投資できる。 --- ## CPGブランドのソーシャル動画プレイブック解説:いま成長を牽引する3つの示唆 URL: https://ximera.com/posts/cpg-social-video-playbook 公開日: 2026-05-19 著者: Tubular Labs 概要: Tubularのミニレポート「The CPG Social Video Playbook」を解説。ポテトチップス4ブランドがQ1だけで前年通年の85%のInstagram視聴を積み上げた件、Cloroxがクリエイター起用で1四半期に1億8,800万回へ跳ねた件、Pepsi Indiaの起用が前月比27倍を生んだ件を、日本のブランド・メディア向けに整理する。 Tubular が公開したミニレポート「The CPG Social Video Playbook: 3 Insights Driving Growth Right Now」([PDF](https://lp.tubularlabs.com/hubfs/CPG-Social-Video-Playbook.pdf)、2026年5月)を解説します。 ![](/images/posts/cpg-social-video-playbook/cover.png) 日用消費財(CPG)ブランドのソーシャル動画について、Instagram でのリーチ拡大、TikTok でのクリエイター協業、地域タレントの起用によるグローバル展開という3つの角度から、実際のブランドの数字を追ったレポートです。関連する解説記事は[CPGブランドが次のソーシャル動画キャンペーンで成功するために押さえるべき重要ポイント](/posts/cpg)でもご覧いただけます。 ## 1. ポテトチップス4ブランドが、1四半期で前年通年の85%を積み上げた ![](/images/posts/cpg-social-video-playbook/chip-brands-instagram.png) 米国のポテトチップス系ブランドの Instagram 動画視聴は、2025年通年で5,330万回でした。これに対し2026年第1四半期だけで4,510万回。1四半期で前年通年の85%に達しています。 Lay's が前年に続き首位ですが、Lay's、Doritos、Tostitos、Pringles の4ブランドすべてが第1四半期に Instagram 動画へ比重を移しました。成果を出した動画は、Super Bowl や FIFA ワールドカップといった大型イベントとの結びつけに加え、「Lay's Challenge」のような参加型の企画や、スポーツ関連グッズが当たるコンテストを通じて、視聴者の行動を促す設計になっています。 レポートの結論は明快です。Instagram 動画はもはや選択肢ではなく、カテゴリー全体がプラットフォームを移し始めている、という読み方です。 出典:Tubular Intelligence|Instagram|米国|クリエイター種別:ブランド(チップス)|視聴数|2025年1月1日-12月31日 vs 2026年1月1日-3月31日 ## 2. Clorox はクリエイター起用で、1四半期のうちに競合との差を詰めた ![](/images/posts/cpg-social-video-playbook/clorox-lysol-tiktok.png) TikTok のスポンサード動画において、Clorox と Lysol の立ち位置はかつて大きく離れていました。四半期ごとの視聴数を追うと、その差の埋まり方がわかります。 - Clorox:2025年Q1が5.5万回、Q2が180万回、Q3が670万回、Q4が1億8,800万回、2026年Q1が1,740万回 - Lysol:2025年Q1が1,720万回、Q2が4,970万回、Q3が1,790万回、Q4が2,030万回、2026年Q1が1,520万回 Lysol が一定の水準を保つ一方、Clorox は2四半期をかけて一気に追い上げました。とくに Q4 の跳ね上がりは、クリエイター Camen Youngblood 氏との協業によるもので、この一件だけで6,100万回のスポンサード視聴を生んでいます。 両ブランドとも2026年第1四半期には「体調を崩しやすい季節」を先回りする文脈でスポンサード動画を投入しました。 レポートの結論は、適切なクリエイターと適切なタイミングを組み合わせれば、競合との差はブランドが想定するより速く埋まる、というものです。 出典:Tubular Dealmaker|TikTok|米国|スポンサード動画|クリエイター:Clorox、Lysol|視聴数|2025年1月1日-2026年3月31日 ## 3. Pepsi India の起用が、グローバルの数字を動かした ![](/images/posts/cpg-social-video-playbook/pepsico-instagram.png) PepsiCo のグローバル Instagram 動画視聴は、2025年5月の2億3,200万回から、同年12月の5億9,000万回まで、おおむね数億回のレンジで推移していました。それが2026年3月に約30億回へ跳ね上がります。 ブランド単位で見ると、Pepsi の Instagram 動画視聴は2026年2月の9,600万回から3月の約26億回へ。同ブランドとして過去最高の月です。 要因は、Pepsi India が Ahaan Panday 氏と Aneet Padda 氏を起用した、音楽と若年層を軸にしたキャンペーンでした。起用したタレント自身の物語のなかにブランドが組み込まれる設計になっており、それが数十億回規模の視聴と高いエンゲージメントにつながっています。 レポートの結論は、地域のタレントと説得力のある個人の物語を組み合わせれば、グローバルな規模を生み出せる、というものです。前月比27倍という数字がそれを示しています。 出典:Tubular Video Intelligence|Instagram|グローバル|プロパティ:PepsiCo|視聴数|2025年4月1日-2026年3月31日 ## 日本のブランド・メディアにとっての含意 3つの事例は、それぞれ性質の異なる打ち手です。 1本目は、プラットフォームの比重をカテゴリー単位で見直す話です。競合4社が同時に同じ方向へ動いているとき、自社だけ従来配分のままでいると、相対的な露出が落ちます。カテゴリー全体の動きを定点で見る仕組みが要ります。 2本目は、クリエイター起用の効き方が非線形だという話です。Clorox の Q4 の跳ね上がりは、投下量を積み増した結果というより、1人のクリエイターとの組み合わせが当たったことによります。裏を返せば、平均値で評価すると当たりが見えません。 3本目は、地域発のクリエイティブが本国のグローバル数値を動かしうるという話です。日本の法人が本社に対して施策を提案する場面でも、地域単位の実績がグローバルの数字にどう寄与したかを示せるかどうかが、説得力の分かれ目になります。 レポート本文は[Tubular の PDF](https://lp.tubularlabs.com/hubfs/CPG-Social-Video-Playbook.pdf)からご覧いただけます。 --- ## Q1 2026:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/q1-2026-global-audience 公開日: 2026-05-19 著者: Chartbeat 2026年第1四半期、中央・東ヨーロッパにおける平均エンゲージメント時間は4.6秒増加しました 。その一方で、中東および中央アジアでは検索トラフィックが大幅に減少し、モバイルのページビューはほとんどの地域で横ばいという結果になりました 。 第1四半期の調査結果に基づくオーディエンス分析の詳細は、以下をご覧ください 。 *過去のオーディエンス動向:*[Q4 2025](https://ximera.com/q4-2025%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ae%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a8%e3%83%b3%e3%82%b9%e5%8b%95%e5%90%91) | [Q3 2025](https://ximera.com/q3-2025%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ae%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a8%e3%83%b3%e3%82%b9%e5%8b%95%e5%90%91) | [Q2 2025](https://ximera.com/q2-2025%e4%b8%96%e7%95%8c%e3%81%ae%e3%82%aa%e3%83%bc%e3%83%87%e3%82%a3%e3%82%a8%e3%83%b3%e3%82%b9%e5%8b%95%e5%90%91) | ## 中央・東ヨーロッパで平均エンゲージメント時間が急増 ![](/images/posts/q1-2026-global-audience/image.png) 平均エンゲージメント時間は中央・東ヨーロッパが引き続き最も高く、前四半期(第4四半期)から4.6秒増加しました 。その他の地域では、最大で2秒減少、あるいはほぼ横ばいとなっています 。 ## 多くの地域でモバイルトラフィックは安定 ![](/images/posts/q1-2026-global-audience/image-1.png) 世界的にモバイルトラフィックが減少した第4四半期とは異なり、第1四半期は状況に変化が見られました 。中東、南ヨーロッパ、ラテンアメリカでは、モバイルデバイスからのページビューが2%増加しています 。 ## 検索トラフィックは複数の地域で減少 ![](/images/posts/q1-2026-global-audience/image-2.png) 多くの地域で検索トラフィックが大幅に減少しました 。特に中東(6%減)と中央アジア(7%減)での減少幅が目立っています 。一方で、アフリカ、南ヨーロッパ、ラテンアメリカでは、検索経由のページビューがわずかに増加しました 。 ## 北米と東南アジアでソーシャルメディアトラフィックが増加 ![](/images/posts/q1-2026-global-audience/image-3.png) 第1四半期のソーシャルメディアトラフィックは全体として2%減少したものの、アフリカのパブリッシャーは依然としてこのトラフィックソースから最も多くのページビューを獲得しています 。これに東南アジアと北米が続いており、特に北米では3%の増加が見られました 。 ## 北欧と中東で読者のロイヤルティが向上 ![](/images/posts/q1-2026-global-audience/image-4.png) 読者のロイヤルティ(定着率)はほとんどの地域で横ばいでしたが、北欧で4%、中東では7%と大幅な上昇を記録しました 。一方で、中央・東ヨーロッパは最も大きく低下し、第4四半期から4%減少しています 。 ## Q1 2026 主なポイント 世界全体の平均エンゲージメント時間は26.5秒 地域別では、中央・東ヨーロッパの38.2秒から中央アジアの23.6秒まで幅があります 。全体としては、前四半期から0.5秒の微増となりました 。 モバイルトラフィックは多くの地域で横ばい 第4四半期に減少したモバイルページビューは、第1四半期に入り安定を見せています 。モバイルは依然として全デバイスの中で最大のトラフィック源であり、サイト訪問全体の少なくとも63%を占めています 。 検索経由のページビューは減少傾向 第1四半期は、東南アジアと中東を除くすべての地域で検索トラフィックが減少しました 。これには、AIの普及がコンテンツ発見のプロセスに影響を与えていることが一因と考えられます 。 --- ## マーケティングの「自動運転」時代へ:代理店業務から戦略・法的審査までAIが担う最前線 URL: https://ximera.com/posts/marketing-autonomous-era 公開日: 2026-05-11 著者: Ikuo Morisugi 2026.05.11|Ikuo Morisugi|Ximera Media Next Trends #84 ## はじめに デジタルマーケティングの世界では、生成AIの普及によってコンテンツ制作のコストが大きく下がってきています。しかし、制作されたクリエイティブをどのようにテストし、どのチャネルにいくら投資すべきかといった運用・意思決定の領域には、依然として多くの手作業と人間の勘が残っています。急速に成長を目指すブランドにとって、複数の代理店を管理し、バラバラのデータソースから戦略を練ることは、大きなボトルネックとなっていました。 近年、この課題を解決するために、AIを用いてマーケティング運用を完全に自動化したり、市場のシグナルから次の一手を予測したりするスタートアップが登場しています。単なる業務効率化ツールにとどまらず、人間のチームの代わりに意思決定を行い、システムそのものが自律的に成果を上げるAIエージェントの時代がマーケティング領域でも到来しつつあります。本稿では、デジタル広告のクリエイティブから運用までを自動化するサービスや、市場データからインサイトを抽出する意思決定プラットフォーム、さらには規制産業向けのコンプライアンス自動化など、マーケティングの在り方を根本から変える最新のスタートアップ事例を紹介します。 ## クリエイティブから運用まで完全自動化するAI広告代理店: Uplane
[Uplane - Marketing will never be the same](https://www.youtube.com/watch?v=rUhS6pz4-hs) Uplaneはクリエイティブ生成から予算最適化までデジタル広告運用をE2Eで支援 / 出典: Uplane Youtube 現代のデジタルマーケティングは、クリエイティブの制作、配信チャネルの選定、A/Bテストの実施、予算配分など、人間にとって反復的で時間のかかる課題を抱えています。特に、急速に成長したいブランドにとって、マーケティング代理店に頼ることはコストとスピードの面で大きなボトルネックとなっていました。 [Uplane](https://www.uplane.com/)は、市場リサーチ、広告やランディングページの生成、そして24時間体制でのMetaやGoogleなどの媒体運用をすべて自動で行うAIネイティブなプラットフォームを提供しています。ユーザーは過去のデータを読み込ませるだけで、AIが無数の広告クリエイティブおよびキャンペーンのバリエーションを生成し、リアルタイムデータに基づいて最もパフォーマンスの高い広告に自動で予算をシフトします。これにより、代理店や複数のツールを組み合わせる必要がなくなり、一つのシステムでマーケティングを完結させることが可能になります。 実際に[Uplaneを導入した企業の成果](https://www.businessinsider.jp/article/2604-pitch-deck-uplane-raised-funding-to-replace-marketing-agencies-ai/)は目覚ましく、ウェルネス企業のAonic社は、プラットフォームを活用したことで広告費用対効果(ROAS)が60%向上、ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)もキャンペーン運用業務を自動化し、従来の代理店を利用していた頃と同等のアウトプットをわずかな時間で実現できるようになったとされています。 料金に関しては、主にデジタル広告費が[月額10万ドル(約1500万円)を超える企業を対象](https://www.businessinsider.jp/article/2604-pitch-deck-uplane-raised-funding-to-replace-marketing-agencies-ai/)とし、年間契約モデルを採用しています。Uplaneは、2026年4月にPlay Venturesなどの投資家から[450万ドル(約6.75億円)のシードラウンドでの資金調達](https://www.thesaasnews.com/news/uplane-raises-4-5m-in-seed-round)を行っており、今後AI主導のマーケティングインフラをさらに拡大していくことが期待されています。 ## 市場シグナルを「次の一手」に翻訳する意思決定支援AI: Pomo ![](/images/posts/marketing-autonomous-era/3535a717-897a-4218-8c38-170bb744fa2a.png) Pomoは市場トレンドを常時監視し次の打ち手を自動で提案する 出典: [Pomo](https://usepomo.ai/) [Pomo](https://usepomo.ai/)のビジョンは、マーケティングチームが直面している意思決定の課題を解決することです。今日のマーケティング担当者は、断片化されたデータと膨大な手作業に忙殺されており、迅速かつ戦略的な意思決定を下すことが困難になっています。少人数のチームでも、リソースが豊富な大企業と同じような精度とスピードで動けるようにすることが、Pomoの目指す世界観です。 Pomoは、24時間市場のシグナルを監視し次の手を考え続けるビジネスインテリジェンスとしてソリューションが提供されています。最大の特徴は、競合の動向や未開拓のオーディエンスなどの生データをもとに、AIエージェントが次に打つべき具体的な戦略や施策を提案してくれる点です。戦略プランからキャンペーンの方向性までをAIが提示してくれるため、ブランドは意思決定にかかる時間を短縮し、実行に移すことができます。 まだプロダクトが公開されたばかりのSeed期の企業であるため、広範なエンタープライズ導入事例は公開されていませんが、すでに[グローバルなパートナーとのパイロット運用で成果](https://pulse2.com/pomo-4-5-million-raised-for-ai-marketing-intelligence-platform/)を出しています。例えば、US最大級のAIイベントAi4やインドの主要な経済団体であるインド産業連盟(CII)との連携テストにおいて、Pomoは既存のツールよりも早く市場のシグナルを検知し、これまで手作業で行われていたリサーチを実行可能なアクションプランへと置き換える能力を実証したとされています。 料金に関しては、年間基本料金と広告費に応じた手数料(例: Accelerateプランで年間2990ドル(約45万円)+広告費の3%)を組み合わせたモデルを採用しており、[企業の規模に合わせた複数のティア](https://usepomo.ai/pricing)を提供しています。Pomoは2026年4月に、Kindred Venturesをリード投資家として、Databricks VenturesやSV Angelなどから[450万ドル(約6.75億円)のシードラウンド資金調達](https://pulse2.com/pomo-4-5-million-raised-for-ai-marketing-intelligence-platform/)を実施しており、調達した資金はエンジニアリングチームの拡大とリアルタイム市場インテリジェンスエンジンの強化に充てられます。 ## 規制産業のコンプライアンス審査を自動化するAIファイアウォール: Haast
[Introducing Haast's Flagship Agents: Review and Monitor](https://www.youtube.com/watch?v=vjZf8VFc-Dw) Haastはマーケと法務のコンテンツ審査・公開後の監視を自動化する / 出典: Haast Youtube マーケティングの自動化が進む一方で、金融やヘルスケアなどの規制産業では、コンプライアンスの担保が成長の足枷となっています。企業はマーケティングコンテンツが法律や社内ポリシーに違反しないよう、コンテンツの一つひとつを法務担当者が目視で確認せざるを得ず、マーケティングのスピードを著しく低下させていました。 [Haast](https://www.haast.io/)は、生成AIを活用してマーケティングコンテンツのコンプライアンス審査を自動化し、法的リスクを検知するプラットフォームを提供しています。一般的なルールベースのツールとは異なり、各企業の独自のポリシーやリスク許容度を学習したAIが、ウェブサイトからSNSの投稿に至るまで、すべてのデジタルアセットを公開前・公開後の両方で監視・監査します。これにより、マーケティングチームや法務チームは単純な確認作業から解放され、より高度な判断に時間を割くことができるようになります。 Haastを導入することで、企業はコンテンツの[コンプライアンス審査にかかる時間を80%削減できる](https://legaltechnology.com/2026/04/09/enterprise-compliance-startup-haast-raises-12m-series-a/)と同社は述べています。実際の顧客基盤はすでに広がっており、保険大手のZurich、エシカルファンドのFuture Super、オーストラリアの通信会社Mateといった企業が同プラットフォームを活用しています。 Haastは2026年4月にPeak XV Partnersをリード投資家とし、DST Global Partnersなどが参加する[シリーズAラウンドで1200万ドル(約18億円)の資金調達](https://www.morningstar.com/news/pr-newswire/20260409la30112/haast-raises-12m-series-a-to-solve-the-compliance-bottleneck-stalling-ai-driven-enterprises)を実施しました。これにより同社の累計資金調達額は1705万ドル(約25.5億円)となり、調達した資金は自律型AIフローの拡張、プロダクト開発の加速、およびグローバルなエンタープライズ顧客基盤の拡大に充てられる予定です。 ## おわりに 本稿では、クリエイティブから運用までを全自動化するUplane、市場の生データを具体的な戦略へと変換するPomo、そしてコンプライアンス審査という時間のかかる壁を打ち破るHaastの事例を紹介しました。これらに共通しているのは、AIが単なる作業の補助を超えて、戦略的な意思決定やリスク管理といった自律的な運用を担い始めているという点です。 昨今「SaaSは終わった(SaaS is dead)」と囁かれることもあります。AIであっという間に作れてしまうような、従来の人間の作業を少し楽にするだけのツールは確かに淘汰されつつあります。今回紹介したスタートアップは多額の資金を調達し、エンタープライズから信頼を得ていますが、それは彼らが「Software as a Service」ではなく「Service as a Software(ソフトウェアとしての労働力・成果の提供)」へと進化し、代理店への外注費やコンプライアンス違反による巨額の損失リスクという、企業にとって避けられないペインを直接解決しているからです。また、Haastは各企業の社外秘の法務ポリシーを学習し、Pomoは自社の秘匿されたCRMデータと接続しており、独自のデータとワークフローへの深い統合を実現し、競争優位性を確立しています。 今後、マーケティングの主戦場は「自社の独自データとAIを深く統合し、いかに組織のボトルネック(運用、意思決定、コンプライアンス)を丸ごと解消するか」へと移行していくと考えられます。メディアやコマースの事業企画者にとっても、こうした労働力としてのAIエージェントを自社のワークフローにどう組み込むかが、今後の競争力を大きく左右することになると考えられます。Ximeraでは引き続きこうしたトレンドも追って、みなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## ソーシャル動画がいかに冬季五輪競技への関心を高めるか URL: https://ximera.com/posts/social-video-winter-olympics 公開日: 2026-04-13 著者: JACK NEARY [By Jack Neary  2026年1月15日公開](https://tubularlabs.com/blog/how-social-video-drives-interest-in-winter-olympic-sports/) ![](/images/posts/social-video-winter-olympics/olympics.jpg) オリンピックの年は、普段はテレビであまり見かけないようなユニークな競技に注目が集まるため、マイナー競技を含めスポーツへの関心が常に高まります 。2026年にイタリアのミラノ・コルティナで開催される「氷のように冷たい」[Olympic Winter Games](https://www.olympics.com/en/milano-cortina-2026)™において、どの競技が最大の勝者となるでしょうか? 2025年の視聴データを見ることで、最も熱い戦いとなる競技の手がかりが見えてきます 。 ## アイススケート動画が多くの冬季スポーツコンテンツを圧倒 オリンピック開催年ではない2025年であっても、アイススケート動画だけで全プラットフォーム合計42億回の再生を記録し、[Tubular Labs](https://tubularlabs.com/)が分類する他の冬季スポーツを大きく引き離しました 。その大部分をフィギュアスケートが占めており、22億回の再生と、3,680万回という見事な総エンゲージメントを叩き出しています 。
フィギュアスケートは冬季五輪で常に最も視聴される種目の一つですが、昨年のデータは今回もそうなることを示唆しています 。 放映権を持つNBC以外のパブリッシャーにとっても、アイススケートへの関心の高まりは、観客がオリンピックに向けて準備を整える中で関連コンテンツに注力する絶好の合図となります 。 また、スポーツの枠を超えて、アイススケート独自のファッションや美学的な要素は、ヘアスタイル、ビューティー、ファッションクリエイターにとっても関連性の高い切り口を提供しています 。「ハウツー」コンテンツに焦点を当てたアカウントは、アイススケートの基礎を教えることに注力でき、スケート場や用具へのアクセスが容易でないコミュニティに対してもさらなる訴求力を持つ可能性があります 。
## YouTubeでのスキー動画が相当な視聴数を獲得 今回のオリンピックでは20種類以上のスキー種目が実施される予定で、最も代表的なスポーツの一つとして様々な分野で親しまれています 。 2025年、YouTubeにおけるスキー動画は22億回再生を記録し、そのうち約3分の1をフリースタイルスキーとアルペンスキーが占めています 。年間6,000本以上のアップロードにおいて、フリースタイルとアルペンの動画は1動画あたり平均12.8万回再生されました 。 スキージャンプは動画本数こそはるかに少ないものの、1動画あたりの平均再生数は42.6万回とさらに高い数字を記録しています 。 フランスのクリエイター、[Anthony Robert](https://www.youtube.com/channel/UCAmnkKOKOaXfp95SiNEzJGw) は2025年に最も精力的に活動したスキー系クリエイターの一人で、スキーに関する幅広い動画をアップロードしましたが、驚くべきことに視聴数のピークは夏場でした 。スキーをコンテンツのレンズとして活用する彼のプロフェッショナルなアプローチは、ニッチなトピックを特定して注力する素晴らしい例であり、スポーツ用品ブランドもこれに倣うことができます 。
## ボブスレーのようなニッチな五輪競技がソーシャル動画のストーリーテリングを加速させる ボブスレーは、1990年代に公開されたディズニー映画『 [*Cool Runnings*](https://en.wikipedia.org/wiki/Cool_Runnings)』(ジャマイカ初のボブスレーチームの実話)によって広く知られるようになりました 。 しかし、このスポーツの人気はそれ以来衰えておらず、ソーシャルメディアでボブスレーを語る際、陸上の短距離選手がボブスレーに転向するというエピソードは今もなおストーリーテリングの定番として生きています 。 2025年には、Rome Musicのようなクリエイターアカウントや、[イギリスのボブスレー代表チーム](https://www.youtube.com/channel/UCtb3UIeUwTIjO1qgCqcAUww)自身によってボブスレーが話題にされました 。彼らはソーシャル動画を活用し、大会に向けたトレーニングや準備の舞台裏を発信しています 。この競技は、オリンピックイヤーではない昨年も1動画あたり31.7万回の再生を獲得しました 。 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カーリングやスノーボードといった他のニッチ競技も、過去の視聴数や関心に基づけば、同様に注目を集めるでしょう 。これらのソーシャル動画での成功は、2月の競技本番だけでなく、ブランドが人気競技の選手と提携する可能性が高いことから、広告の側面でも注目すべき指標となります 。 ![](/images/posts/social-video-winter-olympics/image.png) ## 主なポイント: - スキーやアイススケートのような人気スポーツは、五輪以外の年でも視聴者を生むため、ブランドやパブリッシャーは観客の関心を引くためにオリンピックの本番期間だけに限定される必要はありません 。 - スポーツは狭いカテゴリーではなく、ファッション、個人の物語、音楽といった、より大きな文化と結びつく副次的な会話に適しています 。 - ニッチな分野を特定し、そこに完全に注力することで、オリンピックのような大きなイベントに直接依存しない専門性と視聴者の資産を構築できます 。 --- ## Tubularによる2026年第1四半期グローバルニュース・インサイト URL: https://ximera.com/posts/tubular-q1-2026-global-news 公開日: 2026-04-13 著者: JACK NEARY [By Jack Neary 2026年3月13日公開](https://tubularlabs.com/blog/global-news-insights-q1-2026/) ![](/images/posts/tubular-q1-2026-global-news/global-news-q1.jpg) ニュースパブリッシャーは、単に同業者同士で注目を競い合っているだけではありません。関連性、タイミング、そしてフォーマットの正確性といった「アルゴリズムの要因」とも戦っています。 地域やプラットフォームを越えて、パフォーマンスのパターンはある明確な真実を浮き彫りにしています。それは、ソーシャルビデオにおける「ニュースと政治」の視聴者行動は非常に細分化されており、成功の鍵は、視聴者が実際にどのように消費しているかに合わせてコンテンツ戦略を最適化することにある、という点です。 2025年11月から2026年2月までの[Tubular Intelligence data](https://tubularlabs.com/products/tubular-intelligence/)(チューブラ・インテリジェンス)のデータを用い、APAC(アジア太平洋)、LATAM(中南米)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、北米の各地域における動画の長さ、投稿時間、トレンドハッシュタグ、そしてトップパフォーマンスを記録したストーリーを分析し、今何がエンゲージメントを牽引しているのかを明らかにしました。 データが示す結果は以下の通りです。 --- ## 最適な動画の長さ [動画の適切な長さ](https://tubularlabs.com/research-guides/5-steps-video-duration/?cid=C02667)は、地域によって大きく異なります。例えば、APAC(アジア太平洋)地域の「ニュース・政治」パブリッシャーを見てみると、視聴者が最もエンゲージメント(反応)を示すのは、30秒以内の超短尺アップデート、または15〜20分の深掘り解説(長尺)のいずれかです。一方で、2〜5分の中尺動画は、アップロード数(投稿量)では大半を占めているものの、1動画あたりのエンゲージメントを最大化するという点では、必ずしも最善の選択肢とはなっていません。 ![](/images/posts/tubular-q1-2026-global-news/2026-Q1-Tubular-Newsrooms-01-YouTube-Uploads-EpV-APAC2x.png) > ソース: Tubular Intelligence | YouTube | クリエイター国:APAC(アジア太平洋) | クリエイタータイプ:メディアパブリッシャー | コンテンツジャンル:ニュース・政治 | 動画再生時間 | アップロード数 vs. 1動画あたりのエンゲージメント | 2025年11月11日~2026年2月8日 > ポイント: すぐに人々の目を引く「クイックヒット動画」の成功と、より深いエンゲージメントを生む「長尺の解説動画」の成功は、ある事実を物語っています。それは、中尺(2〜5分)のコンテンツに過度に依存しているパブリッシャーは、投稿量(アウトプット)を優先するあまり、肝心の影響力(インパクト)を犠牲にしている可能性があるということです。 --- ## 最適な投稿時間 LATAM(中南米)のパブリッシャーは、夕方の時間帯に最も頻繁に投稿を行っています。しかし、皮肉なことにエンゲージメント(視聴者の反応)がピークに達するのは早朝であることが分かりました。 ![](/images/posts/tubular-q1-2026-global-news/2026-Q1-Tubular-for-Newsrooms-Instagram-Posting-Schedules2x.png) > ソース: Tubular Intelligence | Instagram | クリエイター国:LATAM(中南米) | クリエイタータイプ:メディアパブリッシャー | コンテンツジャンル:ニュース・政治 | 投稿時間 | アップロード数 vs. 1動画あたりのエンゲージメント | 2025年11月11日~2026年2月8日 > ポイント: 1動画あたりのエンゲージメントが最も高くなるのは中部標準時(CST)の午前3:00~3:59ですが、アップロードの大部分は午後3:00~3:59に集中しています。このタイミングのミスマッチは一つの大きなチャンスを示唆しています。配信時間を早朝の枠にシフトさせるパブリッシャーは、競合が少ない中で、より高いエンゲージメントを獲得できる可能性があります。 --- ## ニュース・政治部門:Instagramで最も視聴されたハッシュタグ EMEA(欧州・中東・アフリカ)における「ニュース・政治」のトップハッシュタグを見ると、世界的な政治の火種(#trump、#ICE、#venezuela)、大手放送局のブランディング(#bbcnews)、そして国際的な発見可能性(ディスカバラビリティ)を高める国別のタグが混ざり合っていることがわかります。 ### EMEAの「ニュース・政治」パブリッシャーによるInstagram最多視聴ハッシュタグ ![](/images/posts/tubular-q1-2026-global-news/image-1.png) > ソース: Tubular Intelligence | Instagram | クリエイター国:EMEA(欧州・中東・アフリカ) | クリエイタータイプ:メディアパブリッシャー | コンテンツジャンル:ニュース・政治 | コンテンツカテゴリ:ニュース・政治・政府ハッシュタグ | エンゲージメント | 2025年11月11日~2026年2月8日 > ポイント: データが示す通り、パブリッシャーは単なる「分類」以上の目的でハッシュタグを活用しています。政治家個人、地政学的な出来事、#bbcnews のような報道局のブランドタグ、そして国を特定する識別子などを戦略的に組み合わせることで、[検索時の視認性を高め](https://tubularlabs.com/research-guides/social-search-p1/?cid=C02596)、ブランドの権威を強化し、さらに世界の視聴者が自国の境界を越えて「今何が起きているか」を追跡できるようにしています。 --- ## 米国のニュース・政治パブリッシャーの最も人気のある動画 大規模なリーチは世間の注目を集める「重大な速報(ブレーキング・ニュース)」から生まれますが、一方でエンゲージメントが爆発的に跳ね上がるのは、深刻なトピックの中に視聴者が「予想外のユーモア」を見つけた瞬間です。 #### 最多視聴 30日間で1億8,000万回視聴 [https://www.tiktok.com/@reuters/video/7589372207017626894?is_from_webapp=1&sender_device=pc](https://www.tiktok.com/@reuters/video/7589372207017626894?is_from_webapp=1&sender_device=pc) 英国のヘビー級チャンピオン、アンソニー・ジョシュアは、ナイジェリアでの致命的な自動車事故の後、ジェイク・ポールとの試合から数日後に姿を目撃されました。 #### 最多エンゲージメント わずか7日間で6,350万エンゲージメント [https://www.tiktok.com/@nowthisimpact/video/7598319299220098317?is_from_webapp=1&sender_device=pc](https://www.tiktok.com/@nowthisimpact/video/7598319299220098317?is_from_webapp=1&sender_device=pc) ICE(移民・関税執行局)の抗議デモでの街頭インタビュー中、ある男性が「ICEに対抗するために、人生で初めてAR-15(ライフル)を購入した」と語りました。投稿自体は真剣な内容を意図したものでしたが、ネット上の多くのコメント欄では代わりにこのインタビューを揶揄(パロディ化)する動きが広がり、それがエンゲージメントを跳ね上げる結果となりました。 > ソース: Tubular Intelligence | TikTok | クリエイター国:米国 | クリエイタータイプ:メディアパブリッシャー | コンテンツジャンル:ニュース・政治 | 視聴数およびエンゲージメント別トップ動画 | 2025年11月11日~2026年2月8日 > ポイント: TikTokの視聴者は、他のソーシャルプラットフォームと同じような方法で「硬派なニュース(ハードニュース)」に反応するわけではありません。世界的な重大ニュースは圧倒的な視聴数を叩き出しますが、エンゲージメントが急増するのは、コンテンツが感情的、あるいは文化的な反応、特に「ユーモア」を引き起こした時です。このダイナミズム(力学)を理解しているパブリッシャーは、単なる認知のためだけではなく、そこから「会話」が生まれるようにストーリーを設計することができるのです。 --- 地域を問わず、一つの明確なパターンが見て取れます。「ニュースと政治」におけるパフォーマンスは、単に「何を報じるか」だけでなく、「どのように、いつ、どのフォーマットで届けるか」にかかっています。 超短尺と長尺に二極化したAPAC(アジア太平洋)、[未開拓の早朝エンゲージメント枠が存在するLATAM](https://tubularlabs.com/blog/15-latam-insights-for-2026/)(中南米)、そしてハッシュタグが発見の鍵を握るEMEA(欧州・中東・アフリカ)まで、視聴者の行動は測定可能であり、戦略的かつ実行可能なデータに基づいています。 パブリッシャーやブランドにとっての好機は、単に「投稿量を増やすこと」ではありません。視聴者の実際の行動、プラットフォームの仕組み、そして地域の細かなニュアンスにコンテンツ戦略を適応させ、「より賢く(スマートに)公開すること」にあります。 あなたの地域に特化した「ニュースと政治」のインサイトをもっと詳しく知りたいですか?詳細については、今すぐTubular Labsまでお問い合わせください。 --- ## デッドエンドページの解消とリサーキュレーションの最適化 URL: https://ximera.com/posts/dead-end-pages-and-recirculation 公開日: 2026-04-09 著者: Chartbeat 2026.04.09 多くのパブリッシャーはトラフィックの誘導に注力していますが、読者のロイヤリティを高めるためには、訪問者がサイトに降り立った後に何が起こるかの方が重要です。 リサーキュレーション、つまり最初の記事を超えて読み進める読者の割合は、ロイヤリティを測定するための主要な指標です。 読者がどこから来たのか、どのようにエンゲージしているのか、そしてどのような種類のコンテンツが離脱を招いているのかを理解することで、より深く、より熱心な訪問へと導くジャーニーを最適化できます。 トラフィックソースに関わらず、以下の洞察と戦略を適用することで、リサーキュレーションを促進し、ロイヤリティを高めることができます。 この記事の内容: - デッドエンドページとは何か? - 強力なリサーキュレーションがどのように読者のロイヤリティを促進するか - トラフィックソース別の訪問者エンゲージメント - 主要な要点:読者の離脱を減らし、リサーキュレーションを促進する ## デッドエンドページとは何か? デッドエンド(行き止まり)ページ、すなわち明確な「次のステップ」がないコンテンツは、読者のジャーニーを短く切り捨ててしまいます。 これらの行き止まりは、記事の最後、独立したページ、あるいはコンテンツが重複していたり、無関係に感じられたり、モジュールが読み込めなかったりするセクションで最も頻繁に見られます。 読者が明確な進むべき道がないままページの終わりに達すると、探索を続けるよりもサイトを離れる可能性が高くなります。 そして、読者がページを去るたびに、他のページへリサーキュレーションさせ、ロイヤリティを育む機会を逃していることになります。 ## 強力なリサーキュレーションがどのように読者のロイヤリティを促進するか デッドエンドページが読者のジャーニーを短縮する一方で、リサーキュレーション(Webサイト内回遊)は、より深いサイトエンゲージメントと読者のロイヤリティへの持続的な経路を通じて、ジャーニーを延長させます。 サイトのエンゲージメントを高めるだけでなく、リサーキュレーションは読者をロイヤリティファンネルの先へと積極的に動かします。 データはこのことを明確に示しています。月に1回以上、2日に1回未満の頻度で再訪する「再訪者」のリサーキュレーション率は17.8%ですが、1日おきに再訪する「ロイヤル読者」の率は25.4%に跳ね上がります。 ![](/images/posts/dead-end-pages-and-recirculation/Chartbeat-Blog-2026-Q1-Recirculation-Rates2x-1.png) 新規訪問者のリサーキュレーションは大幅に低く、その率は9.2%まで低下します。 Chartbeatの調査によると、新規読者の86%は1週間以内にサイトに戻ってきません。そのため、最初の訪問時に深いエンゲージメントと再訪を促すことが極めて重要になります。 言い換えれば、再訪者やロイヤル読者はサイトを深く探索することに意欲的ですが、新規読者はジャーニーを延ばすために、明確で関連性が高く、文脈に沿ったヒント(キュー)を必要としています。 ### ロイヤリティの信号としての内部トラフィック いかなる時も、内部トラフィックはサイトのページビューの約40%を占めています。 内部トラフィックは本質的に「実行されているリサーキュレーション」です。これらの読者はすでにサイト内に滞在しており、サイト内の追加のページへと移動しています。 これらの読者が探索やエンゲージメントに費やす時間が長ければ長いほど、ロイヤリティへの道を歩み続ける可能性が高くなります。 しかし、リサーキュレーションを効果的に推進するために、パブリッシャーはトラフィックソースに基づき、読者が次のページへ移動し続けられるような明確で関連性の高い「次のステップ」を設計しなければなりません。 ## トラフィックソース別の訪問者エンゲージメント リサーキュレーションファネルの構築は、トラフィックソースごとの読者の行動を調査し、それらの洞察をさらなるエンゲージメント戦略に活用することから始まります。 以下では、各チャネルを調査し、調査結果に基づいた実行可能なポイントを共有します。 ### ダークソーシャル ダークソーシャルとは、サイトのリファラー(参照元)データが利用できない訪問を指します。 このトラフィックソースには、メール、インスタントメッセージングアプリ、ソーシャルメディアのダイレクトメッセージなど、個人間でのリンク共有を促進するあらゆるプラットフォームが含まれます。 ダークソーシャルのトラフィックは追跡が難しいかもしれませんが、多くの場合、有意義なエンゲージメントをもたらします。 実際、Gmailはダークソーシャルのレファラーの中で「平均エンゲージメント時間」が83.8秒とトップであり、このソースが高品質な訪問を促進する能力を持っていることを証明しています。 端的に言えば、ダークトラフィックが価値を持つのは、読者がすでにサイト外であなたのコンテンツに関心を持っているからです。 実行可能なポイント: クリーンなURL、強力なプレビューテキスト、信頼性の高いモバイルレンダリングを通じて、シェアしやすさを促す読者体験を設計しましょう。 ### Google Discover Google Discoverからの流入は前年比で21%減少しており、多くのパブリッシャーがこれが消えゆくトラフィックソースではないかと疑問を抱いています。 その不安定さにもかかわらず、Google Discoverは依然として重要な流入源です。 これらの訪問者は通常、ダイレクトトラフィックほど深くエンゲージしませんが、Discoverはパーソナライズされたコンテンツを通じてリーチを広げるのに価値があります。 最終的には、リサーキュレーションを促進するために、読者がサイトに来た後にどのようにガイドするかが重要です。 実行可能なポイント: リーチよりも読者の意図(インテント)を優先し、読者を引き付けたストーリーが、関連するコンテンツへと再循環するための道筋を確実に提供するようにしましょう。 ### ソーシャルトラフィック ソーシャル経由の1セッションあたりの平均ページビュー数はわずか1.4と、最も少なくなっています。 これらの訪問は目的意識(インテント)が低い傾向にあり、ソーシャル経由で訪れたロイヤル読者でさえ、平均エンゲージメント時間は30秒未満です。 しかし、ソーシャルトラフィックは依然として広範なコンテンツ共有エコシステムにおいて重要です。 なぜなら、ソーシャルプラットフォームは多くの場合、最初の接触ポイントとして機能し、よりエンゲージメントが高いプライベートなチャネルで意図的に共有されるコンテンツを紹介する役割を果たすからです。 実行可能なポイント: スクロールを止めるようなコンテンツを強化し、オンサイト(サイト内)の体験が、その記事へと読者を駆り立てたのと同じ緊急性、好奇心、または感情的なフックと一致するようにしましょう。 ### 検索トラフィック 検索トラフィックの減少は、パブリッシャー業界で依然としてホットな話題であり、おそらく不確実性の源でもあります。Google検索からの流入は2023年5月以降、世界全体で21%減少しており、パブリッシャーは今後3年間でこのトラフィックソースが40%減少すると予想しています。 AIが検索トラフィックに与える影響は明らかですが、データによれば、このチャネルは依然として世界の週間ページビューの24%を占めています。 検索行動を詳しく見ると、これらの訪問者は特定の目的を持って訪れており、トピックやユーティリティが密接に関連するコンテンツへとリサーキュレーションする可能性が高いことがわかります。 実行可能なポイント: 検索から次のページへと読者を誘導するために、関連記事のリンク、文脈に沿った見出し、補足的なビジュアルコンテンツを、元の検索意図と一致させましょう。 ### ダイレクトトラフィック ダイレクトトラフィックは、リサーキュレーションと読者のロイヤリティが交差する場所に位置しています。 これらの訪問者は、ブックマークやURLを直接入力することによって、サイトのホームページに到達します。 多くの場合、彼らは以前にあなたのニュースサイトを訪れたことがあり、何を期待すべきかを知っており、それをさらに求めている読者です。 直接戻ってくる訪問者は、リサーキュレーションする読者の大部分を占めています。 彼らはすでにあなたのブランドやコンテンツに馴染みがあるため、より深く探索し、強力なリサーキュレーションや繰り返しのエンゲージメントに貢献する可能性が高くなります。 実行可能なポイント: メルマガ登録、プッシュ通知、トピックやカテゴリー別のフォローオプションなど、摩擦の少ないロイヤリティフックを提供することで、読者が後で戻ってくる理由を作りましょう。 ## 重要なポイント:読者の離脱を減らし、リサーキュレーションを促進する 読者をエンゲージさせ、デッドエンド(行き止まり)コンテンツを排除するための主要な戦略は以下の通りです あらゆる停止ポイントで「次は何か?」を問いかける。 読者が記事を読み終えたとき、探索を続けるための明確で関連性の高い道筋があるべきです。 トラフィックの多いエントリーページ(入り口ページ)の離脱を監査する。 行き止まりは、記事の最後、独立したページ、あるいはリサーキュレーションモジュールが壊れていたり無関係に感じられたりする場所で最も頻繁に発生します。 意図とトラフィックソースに基づいて読者のパスを設計する。 訪問者はトラフィックソースによって行動が異なるため、内部リンク、モジュール、CTA(コールトゥアクション)はそれらの違いを反映させるべきです。 リサーキュレーションをロイヤリティエンジンとして扱う。 リサーキュレーションする読者は、再訪し、より多くのページを閲覧し、ロイヤリティファンネルをより深く進む可能性が高くなります。 --- ## 2026年のパブリッシャー戦略を成功させるために:複数ページへの訪問を促し、ソーシャル動画を活用 URL: https://ximera.com/posts/publisher-strategy-success-2026 公開日: 2026-04-09 著者: Chartbeat 2026.04.09 *この記事は元々 INMA.org に掲載されたものです。* 何千ものウェブサイトにわたる1年分のオーディエンスデータを分析した結果、2026年の出版戦略に導入すべき、トラフィック、エンゲージメント、成長に関する5つの洞察が明らかになりました。 数値が示している内容と、それがコンテンツ戦略にとって何を意味するのかを以下に記します。 ## レッスン 1:たった1ページ追加で閲覧されるだけで、再訪率が劇的に向上する トラフィックの獲得に固執しがちですが、新規訪問者が2ページ目に進まなければ、その努力はすべて無駄になる可能性があります。 1年間にわたる調査の結果、1ページしか閲覧しなかった初回訪問者が翌週以内に再訪した割合は8%でした。一方、もう1ページだけ多く閲覧した訪問者の再訪率は22%に跳ね上がり、再訪の可能性が2.75倍高まりました。これは再訪率における単一で最大の相対的な上昇であり、その効果は4ページ以降で横ばいになります。 なぜこれが重要なのか: 出版社は訪問者に大量のコンテンツを消費させようとするのではなく、初回訪問者に「もう1ページだけ」クリックしてもらうという、よりシンプルで達成可能な目標に焦点を当てることで、再訪率に大きな影響を与えることができます。 ## レッスン 2:ソーシャル動画はニュースパブリッシャーにとって依然として大きなチャンスである 重要なのは、いつ、どこに投稿すべきかを知ることです。 例えば、2025年第4四半期のデータによると、中南米のニュース・政治メディアの出版社がTikTokにアップロードする頻度が最も低い動画の長さ(5〜10分)が、実は動画1本あたりのエンゲージメントを最も多く獲得していることがわかりました。 なぜこれが重要なのか: 多くの出版社が長尺のニュース動画をTikTokのようなプラットフォーム向けに短く切り出す戦略をとってきましたが、実際には長尺動画のパフォーマンスが向上し始めています。 ## レッスン 3:最も価値のあるトラフィック源は、すでにサイト内に存在している可能性がある 内部トラフィック(読者がサイト内のある記事から別の記事へ移動すること)は、全ページビューの40%を占めています。これは、さらに探求しない手はないほど大きなトラフィックの要素です。 ![](/images/posts/publisher-strategy-success-2026/image-1.jpg) 内部トラフィックの起点を辿ると、直接トラフィックが全サイトトラフィックの13%から25%へと倍増していることがわかりました。言い換えれば、URLを直接入力したりブックマークを使用したりする、最も忠実で意図を持ったオーディエンスが、サイト内の回遊(リサーキュレーション)の大部分を牽引しているのです。 なぜこれが重要なのか: これらの直接訪問者は単に訪れるだけでなく、積極的に関与しています。彼らの1セッションあたりの平均ページビューは2.2ページ、エンゲージメント時間は45.2秒で、ソーシャル経由の1.4ページ、34.4秒を大きく上回っています。 この発見は、出版社がトラフィックの属性やロイヤリティをどう考えるべきかを再定義するものです。内部トラフィックはランダムなものではありません。それは主に、明確な意図を持って直接訪れる再訪者によって生み出されています。回遊が最もエンゲージメントの高いオーディエンスによって促進されていることを理解すれば、出版社はすべてのトラフィックを均一に扱うのではなく、これらの忠実な読者のためにホームページやナビゲーションを最適化することができます。 ## レッスン 4:AI製品そのものよりも、AIの存在が重要かもしれない Chartbeatでヘッドライン(見出し)テストにAIを導入したところ、AIが支援したテストでは、非AIテストの6%に対し、全テストで32%のクリック率向上が見られました。 さらに興味深いのは、AIが生成した見出しが採用されなかった場合でも、パフォーマンスが向上している点です。これをよく考えてみてください。テストプロセスにAIを組み込むだけで、全体的なパフォーマンスが劇的に向上するのです。 なぜこれが重要なのか: テストプロセスにAIが存在することで、人間の編集者は自身の見出しについてより批判的かつ創造的に考えるようになるようです。AIの提案があることで、自分たちの選択を正当化したり、代替案を検討したりすることを迫られ、時には直感が最善ではなかったことに気づかされることもあります。 ## レッスン 5:検索は減少しているが、依然として主要なチャネルである この1年、業界の会話を支配してきた話に触れておきましょう。「トラフィックは死につつある。プラットフォームが勝利した。出版社は絶望的だ」というものです。 ![](/images/posts/publisher-strategy-success-2026/image-2.jpg) データは異なる話を伝えています。2025年の世界全体の週間ページビューは2024年比で約6%減少しましたが、トラフィックは消滅しているのではなく、変化しているのです。Google検索のトラフィックは減少の大きな部分を占めており、2024年11月から2025年11月にかけて33%減少しましたが、それでもニュースサイトへのトラフィックの20%以上を占めています。 [Chart displaying share of traffic by 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oU2jIje5c2Y/G9owVJ2hyski4rSlXU1lVSn6fK22+1SJ9rYJZbQ+xuzbPLbj7YlTjyk5t7kyk/gF6GsPsC7qw5nbQmqNftLm/wdoCrXn0zFDX/AE2nJfi8wtnJMJ2L8OBSvbEK+ChJK1Bl61K0eTYuOpS1QqjbSUzU3KyipVp9f5VoaiteSHi51H7wGJm8AAYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHMYLgpUXEbNWZSdWfNvYK7H/wDsOycAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAABwraQaUtpG0WlO8Rny5lfkhr+Drj2AB+2al1Oe2NxWpUE5YIzb3h4f+Z+JSm0Pbn2yNrlzZPhZderXq4dQB+YfqXIAP0/IAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHEVJ2iWs6ErczKQjPvlauHVDhjq/uAA/bLS60Kzua05VK1Qzcb++IAPw/b/9k=) なぜこれが重要なのか: 33%の減少と聞くと壊滅的に思えますが、検索が依然としてサイトへの訪問の5回に1回を生み出していることに気づくべきです。検索トラフィックが減少したからといってSEOを放棄するのは、2番目に忙しい店舗の売上が1番忙しい店舗に及ばないからといって、その店を閉めてしまうようなものです。今年も引き続き検索による発見への投資を続け、同時に、それらの新規訪問者がサイトを見つけた後に、いかにロイヤリティの階段を上ってもらうかに注力してください。 ## 出版戦略の5つの重要なポイント 1. 2回目(追加)のクリックのために最適化する。 1ページから2ページへの飛躍は、再訪読者を増やすための最もレバレッジの効く機会です。 2. 新興プラットフォームで実験する。 TikTokが過小評価されている状態は長くは続きません。今こそ、そこで学び、成長する時です。 3. 独自のオーディエンスに投資する。 直接トラフィックが回遊を促進します。ブックマークや繰り返し訪問する価値のあるサイトにしましょう。 4. AIを思考のパートナーとして活用する。 価値はAIのアウトプットそのものだけでなく、それがあなた自身のアウトプットをいかに研ぎ澄ますかにもあります。 5. プラットフォーム・トラフィックを惜しむのをやめる。 オーディエンスの行動は変化しており、それは問題ありません。実際に自社で「保有」できるオーディエンスのために構築しましょう。 --- ## 販売時間を拡張するAIネイティブコマース URL: https://ximera.com/posts/ai-native-commerce-extending-sales-hours 公開日: 2026-04-08 著者: Ikuo Morisugi ### 見た目が派手なAIクローンだけではない、AI接客・PDCAが一体化されたコマース支援の仕組みをアジアと欧米の成功事例から学ぶ。 2026.04.08|Ikuo Morisugi|Ximera Media Next Trends #83 # はじめに 本連載では、[ライブコマースの成長性](https://ximera.com/%e5%8b%95%e6%a9%9f%e3%82%92%e5%bc%b7%e3%82%81%e3%82%8b%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%96%e3%82%b3%e3%83%9e%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%81%a8%e3%83%86%e3%82%ad%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%83%e3%83%88%e3%81%ab%e3%82%88%e3%82%8b%e8%b3%bc%e5%85%a5%e6%9c%80%e9%81%a9%e5%8c%96%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9f%e9%a1%a7%e5%ae%a2%e4%bd%93%e9%a8%93)や、デジタルクローンがメディアにもたらす変化などを扱ってきました。この1-2年でこの2つの領域が融合してAIクローン/エージェントとコマースが結びついたAIネイティブなコマースの事例が出現しはじめています。 2024年のライブコマースのマーケットサイズはグローバル全体で[約1,284億ドル(約19.2兆円)](https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/live-commerce-market-report)と見積もられており、2025年以降も高い成長率で増えていくと予想されています。 そんな状況の中で中国で2024年頃からAIライブコマースの事例が出現しはじめています。中国eコマース企業で第二位であるJD.com(ジンドン)の創業者・劉強東氏は自身のAIクローンを2024年4月にライブ配信上で登場させ、 [開始1時間以内に 2,000万ビュー、配信全体で 5,000万元(約11.6億円) の売上を記録した](https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/live-commerce-market-report) と報じられています。またBaiduは、中国の著名な起業家兼インフルエンサーの羅永浩氏のAIクローンを開発し2025年6月にライブ配信を行い、 [1,300万超の視聴と5,500万元超(約12.8億円)のGMV](https://technode.com/2025/06/17/luo-yonghaos-digital-avatar-draws-over-13-million-viewers-in-ai-powered-baidu-live-commerce-debut/) を生み出しました。 ![](/images/posts/ai-native-commerce-extending-sales-hours/digital-representative.png) [JD.com](http://jd.com/)(ジンドン)の創業者・劉強東のAIクローンによるライブコマース 出典: [JD.com](https://jdcorporateblog.com/jd-com-debuts-ai-digital-representative-of-founder-richard-liu-during-livestream-drawing-20-million-views-in-under-one-hour/) これらの成果は、AIアバターが単に顔や声が人間らしくなったから生まれたわけではありません。商品情報から台本を作り、コメントへ応答し、在庫や販促条件に沿って訴求を変え、配信後に何が売れたかを分析し、次回の改善へ回す仕組みがあって初めて成立します。つまり、重要なのはAIアバター単体ではなく、配信・接客・販売・改善を一体化した仕組みにあります。 アジアではAIライブコマース配信の本番実装が先行し、欧米ではまず自社サイトやアプリ上のAI接客が先に商用化される(必ずしもライブコマースではない)、という地域差があります。本稿では、その事例として AnyMind Group と Firework の2社を取り上げます。前者はアジアでAIライブコマースをオペレーションまで束ねるプレイヤーであり、後者は欧米で動画コマースとAI接客をオウンドチャネルに埋め込むプレイヤーです。これらの事例によってコマースの未来がどうなるのかを見ていきます。 ## AnyMind Group : アジア横断のAIライバー x ライブコマース運営 [https://www.youtube.com/shorts/HXlxO7TjBWU](https://www.youtube.com/shorts/HXlxO7TjBWU) [AnyMind Group](https://anymindgroup.com/ja/)は2016年創業の日本のBPaaS(Business Process as a Service)企業で、[2023年に東証グロースへ上場](https://anymindgroup.com/ja/news/press-release/anymind-ipo/)しました。上場前までの累計調達額は9170万ドル(約147億円)と公表されており、創業以来、マーケティング、EC、物流、クリエイター支援を横断するプラットフォーム群を展開してきました。ここで重要なのは、同社の成り立ちが動画生成会社ではなく、ブランドの事業運営を支援してきた企業であることです。 AnyMindが2024年9月に立ち上げたのが、生成AIライブコマース基盤の [AnyLive](https://anylive.jp/ja/) です。英語、中国語、インドネシア語、タイ語、マレー語、ベトナム語、タガログ語に対応し、その後[2025年6月には日本語対応](https://anymindgroup.com/ja/news/press-release/anylive-japanese-launch)も加わりました。AIライバーによる多言語配信、商品情報からの台本自動生成、コメントへのリアルタイムAI応答、複数プラットフォームへの同時配信までを一つの仕組みとして持っています。Amazon、Shopee、Lazada、AliExpress、TikTok Shop、Instagram、YouTube、Facebook、Xなどへの接続も打ち出しており、アジアの断片化した販路を横断できる設計となっています。 AnyMindが解こうとしている課題は、アジアのライブコマース市場における言語差、文化差、現地法規制、配信人材の不足です。人間のホストだけで複数言語・複数地域・複数プラットフォームへ同時展開するのは絶対的にスキル・ノウハウ・工数が足りません。そこでAnyLiveは、ピーク時間帯を人間、オフピーク時間帯をAIが担うハイブリッド運用を前提に、配信時間そのものを伸ばしながらGMVを積み上げる設計を採っています。AIライバーはスター配信者の代替ではなく、稼働時間と販売密度の最大化のために使われています。 タイのSino-Pacificによる[evianのライブコマース案件](https://anymindgroup.com/ja/news/press-release/sinopacific-cs-anylive)では、AnyLive活用前との比較で売上が 3.5倍、配信コストは 90%削減、総配信時間の9割超をAIライバーが担い、売上の 8割超 がAIライバー稼働時に生まれたとされています。さらに、2025年6月にはボディケアブランド[BeNiceがAnyLiveを活用](https://anymindgroup.com/ja/news/press-release/anylive-benice)しTikTok Shop売上が 7日間で2倍、2026年1月にはタイの[Rider Insurance BrokerでAIライバーを用いた情報配信](https://anymindgroup.com/ja/news/press-release/rider-insurance-broker-thailand-2026)が初回12時間で オーガニック視聴者1,000人超 を獲得しています。このように業種も飲料、美容、保険など適用範囲が広がっています。 プロダクト面でも、AnyMindは「配信して終わり」ではなく改善ループをかなり重視しており、ライブ配信の文字起こし、データの自動収集・分析、スクリプト最適化など様々な機能を強化しています。AnyLiveはアバター作成ツールというより、ライブコマースのPDCAを回す営業支援システムに近いです。 収益モデルについては、AnyLive単体の公開料金表は前面に出ていないため推測になりますが、同社の収益はSaaS利用料だけでなく、BPaaSとしての運用支援、キャスティング、分析、越境EC支援を含めた 個別提案型 で設計されていると思われます。 ## Firework : オウンドメディアにおけるAIショッピングエージェント [68fbe72aa8ccab8661a00c2c_agentic-commerce-hero-img-1.avif](%E8%B2%A9%E5%A3%B2%E6%99%82%E9%96%93%E3%82%92%E6%8B%A1%E5%BC%B5%E3%81%99%E3%82%8BAI%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96%E3%82%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B9/68fbe72aa8ccab8661a00c2c_agentic-commerce-hero-img-1.avif) Fireworkはオウンドメディアにショッパブル動画を埋め込み AIエージェントでの購入支援までカバー 出典: [Firework](https://firework.com/products/ai-shopping-agent) [Firework](https://firework.com/jp)は2017年創業の米国スタートアップです。オウンドメディア内の動画から購入体験につなげる「ショッパブル動画」をソリューションとして提供しており、1500以上の様々なブランドと提携しています。Fireworkはコマースの機能をSNS内ではなく、オウンドメディア内に組み込める動画コマースとして伸ばしてきました。 同社は、ライブコマースやショッパブル動画をブランド自身のWebサイトやアプリ、メール、SMSなどへ埋め込みを可能にし、顧客データを自社で保有したままコンバージョンを伸ばすことを支援してきました。中国のようにプラットフォーム上で販売する発想とは違い、自社チャネルを強くするための動画コマース基盤を提供する方向です。 Fireworkが2025年に前面へ出し始めたのが[AI Shopping Agent](https://firework.com/products/ai-shopping-agent)です。この機能は商品詳細ページにおいてAIがユーザーの質問に答え、関連商品を提案し、購入完了までを支援します。テキストFAQを並べるのではなく、商品詳細、レビュー、動画、チュートリアルを会話の中で提示しながら、迷っている買い手を前へ進める設計です。上述のライブ配信におけるAIライバーとは見た目が違いますが、本質は同じで、AIによる疑似接客の自動化 です。 AI Shopping Agentの海外ブランドにおける導入実績として、[カート追加率が6.4%から31.2%、コンバージョン率が2.0%から13.5%、顧客満足度が60から82へ改善した](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000075453.html)としています。またスキンケアの処方箋を遠隔医療で提供するプラットフォームのMuselyの解約抑止の事例では、AI対話導入後に[全体解約25%減、アプリ解約46%減、22倍のROI](https://firework.com/customer-stories/musely-success-story) が示されました。。 Fireworkのショッパブル動画系の[料金](https://firework.com/pricing)は Pilot / Starter / Growth / Pro / Enterpriseと細かく階段が分かれており、カスタマイズ性や動画アップロード/視聴の上限とより便利に使えるための追加機能の違いがあります。AI Shopping Agentは料金は公開されておらず個別商談必須となっています。少なくとも同社は、ブランド向けのSaaSとして階段型の料金設計を持ち、必要に応じてエンタープライズ機能やAIアドオンを積み上げるモデルを採っています。 Fireworkの事例が示しているのは、コマースの未来は必ずしも「AIによる24時間ライブ配信」だけではないということです。商品詳細ページ、縦型ショート動画、1対1の会話型接客、ライブ配信の切り抜き再利用、こうした体験がすべて連結され、AIがフロントに立つ方向性も提示されています。 ## まとめ AnyMindとFireworkを並べると、AIネイティブなコマースにおける共通点がいくつかあります。 第一に、いずれも一見AIが派手に見えますが、それをメイン商材としているわけではないことです。AnyMindは多言語配信、プラットフォーム連携、台本、分析、キャスティングまで持ち、Fireworkは動画、AI接客、価格設計、1st party data活用を束ねています。両社とも、実態は動画経由の販売の仕組みを作っています。 第二に、運用を完全にAIに置き換えるわけではなく、ハイブリッドな運用余地を残していることです。AnyMindのevian案件では配信時間の大半をAIが担いながら、人間ホストも併用しています。深夜帯や長時間運用をAIが担い、人間がピーク時に入るハイブリッドが有効に機能しています。今すぐフロントをAIへ置き換えることが正解なのではなく、人間を効果的に活用する時間帯を残しつつ、AIで販売時間を拡張することが現状の最適解だと考えられます。 メディアが持つ強みは、元々コンテンツを作ることと、読者や視聴者との接点を持つことにあります。そこへ今回取りあげたAI接客やAIアバターライブ配信を重ねると、コンテンツは認知獲得の装置から、コンバージョン完了まで進める装置 へ変化させることができます。その世界観に移行すると、編集や配信のKPIもPVや再生数だけでなく、会話の質、CVR、再訪率、サブスクやグッズの購入完了率へ再設計することも考えられます。 --- ## フィジカルAIで自動化されるコマース物流 URL: https://ximera.com/posts/physical-ai-commerce-logistics 公開日: 2026-03-06 著者: Ikuo Morisugi 生成AIの普及によって、テキスト・画像・動画といった情報の世界の生産性は一気に上がりました。ただし物理的な商品の原材料調達・製造・梱包・保管・配送などを伴うコマースの世界では、情報だけでは完結しません。商品が工場・倉庫・店舗などの棚にあり、ピックされ、梱包され、破損なく運ばれ、時間通りに届き、返品が滞りなく処理される必要があります。 こうした物流の仕組みをAIをはじめとしたソフトウェアとハードウェアで最適化しようとする潮流が、近年[フィジカルAI](https://www.nvidia.com/ja-jp/glossary/generative-physical-ai/)として語られています。フィジカルAIの世界では、通常の生成AIとのチャットのように一定レベルの正しい文章を返すだけでは価値になりません。天候の変化、工場/倉庫/店舗などの形状、SKUのばらつき、作業者の入れ替わり、繁忙期と閑散期、季節変動、規制、安全基準など、現場には変数が多く存在します。一方、コマースにおける競争力は、いくつもある指標の中でも1配送あたり/1ピックあたり/1返品処理あたりのユニットコストを安定させられるかで大きく左右され、その安定性が顧客体験の信頼につながります。 近年ではフィジカルAIによりこれらの変数を可能な限り減らし、顧客体験およびコスト削減の最適化を図る動きが活発となっています。本稿では、それを体現するスタートアップの事例を参考に、新たなコマース物流のトレンドを取り上げます。 # Zipline: ドローンによるラストワンマイル配送
[Zipline's Drone Delivery Platform Leaves Competitors in the Dust](https://www.youtube.com/watch?v=Wh8dYNPlaEo) Ziplineはドローンによるラストワンマイル配送を実現している / NexTech Visuals Youtube [Zipline](https://www.zipline.com/)は、ドローンによる荷物の配送をただのガジェットではなく、実用的で効率的な物流として成立させようとしてきた企業です。Ziplineは初期は輸血用の血液の医療配送のように価値が明確な領域から参入し、現在ではスーパーやレストランなど提携する小売店舗から小口の商品を家庭までダイレクトにドローンで届ける汎用コマース領域へビジネスを拡大しています。 Ziplineが提供するドローン配達は、配達開始から[最短10分](https://www.globenewswire.com/news-release/2026/01/21/3222432/0/en/Zipline-Surpasses-2-Million-Deliveries-Raises-More-than-600M-to-Power-Next-Phase-of-Growth-and-Expands-Operations-to-Houston-and-Phoenix.html#:~:text=eligible%20customers%20will%20soon%20be%20able%20to%20order%20tens%20of%20thousands%20of%20items%20through%20the%20Zipline%20app%2C%20with%20deliveries%20arriving%20in%20as%20little%20as%2010%20minutes.)での到着が全自動で可能となっており、顧客にとっても、オペレーターにとっても非常に優れた顧客体験を提供しています。 Ziplineのプロダクトは、提携店舗から商品を選び注文できるアプリ、配送管理システム、ドローン機体および機体制御システムなど複数レイヤーのサービスが一体的に提供されています。ドローン配送は[母機が高い位置でホバリングし、テザーで荷物を降ろし、最終位置を小型機が微調整する設計](https://www.youtube.com/watch?v=airEzThGlx8)となっています。これにより、着地の難しさや安全上の制約を回避しつつ、受け渡しの精度を上げています。 コストの観点で重要なのは、ドローンによる配送が陸路での配送における制約事項をスキップできているということです。陸路であれば、天候、道路混雑状況、配送ルート、建物構造の違い、時間指定、配達員の運転スキルや配送ルート慣れなど様々な制約事項を考慮しないといけません。しかし、自律配送ドローンであればこれらの制約を受けずに配送することができます。長距離を飛ぶドローンは通常であればその機体の大きさがゆえに騒音と安全性が課題となりますが、Ziplineは長距離移動が得意な母機と、小回りがきき騒音が少なく安全性の高い子機をうまく組み合わせることで、それも解消できています。 Ziplineは[Walmartとテキサス州の15マイル(約24km)ほどの都市でドローン配送を開始](https://www.cnbc.com/2025/04/08/drone-delivery-startup-zipline-expands-to-texas-with-walmart.html)しており、同都市内であれば30分以内で配送することを掲げています。また、Walmart側も[ドローン配送を複数都市へ拡大する方針を発表](https://corporate.walmart.com/news/2025/06/05/walmart-takes-flight-with-drone-delivery-expansion-to-5-new-cities-redefining-fast-flexible-retail)しています。日本でも[Ziplineは豊田通商と提携](https://www.toyota-tsusho.com/about/project/25.html)をし、五島列島へ医療品や日用品のドローン配送を行っています。 2026年1月、Ziplineは[累計配送が200万回を超えたことと、6億ドル(約750億円)超の資金調達](https://techcrunch.com/2026/01/21/zipline-charts-drone-delivery-expansion-with-600m-in-new-funding/)を発表し、米国での事業拡大を掲げました。 Ziplineの勝ち筋は賢いロボットではなく密度の経済が回る設計と運用です。密度が上がればユニットコストは下がり、ユニットコストが下がれば提供できる体験(配送速度・保証・返品条件)が広がり、さらに需要が増えます。フィジカルAIを活用することで、いかにこのループを効率良く作れるかがビジネス上の重要なテーマとなります。 # Mytra : 倉庫の物流をソフトウェアで書き換える [https://media.mytra.ai/0716_Hero_D.mp4](https://media.mytra.ai/0716_Hero_D.mp4) [https://media.mytra.ai/0716_Hero_D.mp4Mytra](https://media.mytra.ai/0716_Hero_D.mp4) Mytraは巨大な倉庫シェルフをロボット化しソフトウェア制御で効率化をしようとしている / [Mytra](https://mytra.ai/) Ziplineのようにラストワンマイルの配送も重要ですが、コマースにおいては倉庫の効率性向上も重要です。現在の倉庫や物流の現場は、人がいなければ回りません。倉庫は、商品のSKUが増えるほど作業が複雑になり、誤出荷が増え、ピック効率が下がり、在庫管理の精度が落ちてきます。この倉庫内オペレーションの改善にフィジカルAIが役立ちます。 [Mytra](https://mytra.ai/)は、倉庫における物品管理にロボットを組み込み、単体の機械としてではなくソフトウェアで定義された集合体として捉え直しています。Mytraが提供しようとしているのは、倉庫内物品の移動 / 保管 / ピック のような基本動作を可能とするロボット組み込み型のシェルフ型倉庫を提供し、その制御をAIをはじめとしたソフトウェアで最適化し業務効率を大きく改善するソリューションです。 具体的な改善効果としては、Mytraの導入初期の段階で、マテリアルハンドリング(倉庫における荷役(にやく)作業、搬送・仕分け・積み下ろしなどの作業)の[労働が32%減り、保管密度が34%改善した](https://mytra.ai/news/mytra-raises-120m-series-c#:~:text=Mytra%E2%80%99s%20early%20deployments%20have%20demonstrated%2032%25%20reductions%20in%20material%20handling%20labor%20and%2034%25%20improvements%20in%20storage%20density.)と述べています。この数値は単位あたりコストに直結する指標の改善につながる可能性があります。 倉庫での自動化の従来の課題は、設備が硬直的で、ハードウェアとそれにあわせた人手の運用があるために変更コストが高かったことです。Mytraはプリミティブなソフトウェアとして倉庫を定義しなおすことで、大きなコストをかけずに柔軟な変更対応を可能にし、低コストな最適化を実現しようとしていると考えられます。 2026年1月にMytraはAvenir Growthがリードする[Series Cラウンドで1億2,000万ドル(約180億円)を調達](https://mytra.ai/news/mytra-raises-120m-series-c)したと発表しました。Mytraのビジネスモデルは公開されていませんが、顧客セグメントとしてFortune 100の食品会社やFortune 500の産業資材ディストリビューターに言及しており、複雑性と処理量が大きい現場を狙っていると思われます。 # おわりに フィジカルAIによって、Ziplineはラストワンマイルの配送を再定義し、Mytraは倉庫のオペレーションを再定義しようとしています。どちらも共通しているのは、単位コストを下げるために、現場で発生する変数をテクノロジーによって可能な限り削減し、運用を資本とデータでスケールさせる設計です。 これらの取り組みはAIモデルの賢さ単体の話ではなく、実運用にいかに先に組み込み、データを取り、それをAIにフィードバックさせられるかが重要な点となります。現場でどのような暗黙知が潜んでおり、例外処理がどう行われているか、どのようなアクションが改善や復旧につながっているのか、などこうしたデータは企業の内部に蓄積されていることが多く、競合がコピーしにくい貴重なデータとなります。フィジカルAIの普及が進むほど、参入障壁はハードウェア/ソフトウェアの原価ではなく、この運用データを既に持っているかどうかにシフトすると考えられます。 企業がフィジカルAIの導入において最初に考えるべきなのは、ロボット探しではなく、ユニットコストの棚卸しです。1配送、1ピック、1返品といったユニットコストのどの指標が利益に影響を与えているのか見極め、各処理の頻度/時間を記録し、運用のボトルネックを可視化することが第一歩です。その上でフィジカルAI活用でそれがどこまで改善できるのかを見ていくことになります。 --- ## ラテンアメリカのニュースメディアに向けた、2026年ソーシャル動画の15の示唆 URL: https://ximera.com/posts/latam-social-video-2026 公開日: 2026-02-11 著者: Jack Neary 概要: Tubularが2025年1-7月のデータから、ラテンアメリカのニュースメディアがYouTubeとTikTokで戦うための15の示唆を提示。News & Politicsはアップロード全体の0.67%にとどまり、短尺動画とTikTokに大きな余地が残っている。 by Jack Neary([原文](https://tubularlabs.com/blog/15-latam-insights-for-2026/))2026.02.11 ラテンアメリカ(LATAM)では、ニュースが発見され、議論され、拡散する場がソーシャルへ移りつつあります。Reuters Institute の Digital News Report 2025 によれば、アルゼンチン、チリ、コロンビア、メキシコ、ペルーの回答者のおよそ58-64%が、ニュースの情報源としてソーシャルメディアを利用していると答えています。 Tubular が2025年1月1日から7月31日までのデータを分析し、LATAM のニュースメディアが2026年に取るべき打ち手を15の示唆として整理しました。ここでは要点をご紹介します。 ## 市場全体の構図 LATAM のソーシャル動画は、この期間に4兆500億回の視聴を生みました。そのうちメディア企業が投稿した News & Politics のコンテンツは29万3,000本のアップロードで271億回の視聴です。 注目すべきは、News & Politics が LATAM のアップロード全体のわずか0.67%にとどまっている点です。ソーシャルをニュース源とする人が増えつづけている状況を踏まえると、ここは奪い合いになる前の空白地帯といえます。 ## YouTube:短尺が効くのに、長さの中途半端な動画が量産されている ![](/images/posts/latam-social-video-2026/youtube-categories.png) YouTube の LATAM において、News, Government & Politics は視聴数で第9位のカテゴリーでした。メディア・インフルエンサー・ブランドを合計した視聴は419億回で、アップロード数はより少ないにもかかわらず Music を上回っています。 ![](/images/posts/latam-social-video-2026/video-duration.png) 動画の長さ別に見ると、30秒未満が1本あたりのエンゲージメントでもっとも高い数値を出しています。ところが実際に多く投稿されているのは1-5分の動画で、これは1本あたりのエンゲージメントがもっとも低い長さです。データを見ずに尺を決めている、ということでもあります。 投稿曜日では日曜がもっとも高いエンゲージメントを獲得しました。営業時間外であっても、効く日に合わせて予約投稿する価値があります。 ![](/images/posts/latam-social-video-2026/mobile-vs-tv.png) 視聴環境はモバイルが66%、TVが24%。縦型・30秒未満のモバイル向けフォーマットを前提に設計すべき比率です。 ![](/images/posts/latam-social-video-2026/shorts-performance.png) Shorts の効きも明確です。Milenio は Shorts がアップロードの15%にすぎないにもかかわらず、クロスプラットフォームのエンゲージメント全体の31%を生みました。NMás は中尺動画を2.8倍多く投稿していますが、エンゲージメントのほぼ半分は Shorts 由来です。長尺を切り出して Shorts に転用する、という運用が素直に効きます。 なお視聴デバイスと尺の関係については、Chartbeat の LATAM ニュースメディアのデータでも、TV・タブレット・ゲーム機では20分超、モバイルとデスクトップでは1分未満が好まれるという傾向が確認されています。 投稿頻度は媒体差が大きく、上位メディアの平均は1日6.8本の Shorts。Imagen Noticias が1日43本を投稿する一方、Televisa Querétaro は0.3本です。 ## TikTok:投稿量に対してエンゲージメントの効率が突出している ![](/images/posts/latam-social-video-2026/tiktok-trends.png) LATAM のニュースメディアに対するクロスプラットフォームのインタラクションのうち、71%が TikTok 由来でした。アップロードのシェアはこれよりずっと小さいにもかかわらず、です。 TikTok における News, Government & Politics は視聴数で第6位のカテゴリー(920億回)。上位10メディアの視聴は前年比55%増と伸びており、ニュースを求めて TikTok を使う層が確実に存在することを示しています。 代表例が C5N で、TikTok はクロスプラットフォームのアップロードの25%にすぎない一方、エンゲージメント全体の71%を生んでいます。 ![](/images/posts/latam-social-video-2026/engagement-by-topic.png) トピックとプラットフォームの相性も分かれます。移民や女性の権利といったテーマは Instagram と TikTok、法執行に関するテーマは Facebook といった具合に、同じ記事でも出し先を変える判断材料になります。 ## まとめ - News & Politics は LATAM のアップロードの0.67%。参入余地が大きい - 短尺動画は YouTube・TikTok の両方で1本あたりのエンゲージメントが最も高いのに、活用が進んでいない - TikTok は投稿量あたりの効率が突出しており、ニュースの成長エンジンになっている - 投稿の頻度だけでなくタイミングが効く。日曜投稿のように、計測できる差が出る 15の示唆の全文は[原文](https://tubularlabs.com/blog/15-latam-insights-for-2026/)からご覧いただけます。 --- ## Chartbeat新機能のお知らせ:SNSの反響をサイト流入につなげる「Social Hub」 URL: https://ximera.com/posts/6bd0be89e9 公開日: 2026-02-06 著者: Chartbeat 2026.02.06 Chartbeatより新しい機能に関するお知らせです。 現代のメディア企業にとって、ソーシャルメディアはもはや単にリンクを置いておく場所ではありません。そこはブランドが息づき、成長し、次世代の熱心な読者と出会う場所です。しかし、ソーシャルデータはしばしばサイロ化され、表面的な情報にとどまり、編集戦略全体と結びついていないのが現状です。Chartbeatは、そのギャップを埋めるために [Social Hub](https://lp.chartbeat.com/e3t/Ctc/RF+113/cs5pR04/VWhn5t79jmsxW316tF77lTb4bW6hm-BV5K95zsN3S9PH63qgz0W7lCdLW6lZ3mfW748LDt1Zg0SnW4mylDH5bWgQrW7NP1hK5-VdCVW7cBJHT4Zsx6cW3_qHzr2KFwKnW5W3_2r1rRxcFW4wPKpP26QLnJN70NtvfTmjHZW88N3bv6Zdq6FW2jqRgD6WRHZLW5NmX9N1V6KVtW151SjL6B-wpDW7pJXVP9dcVGmW2kYHwb5xg_QsN7B815ZM6MCGW5Dq0h82_nmZPW5mpcYw3RlwjCVVRnqB4MVxwvW3N8wlY58bLM5W8QBGtZ4TjNBPW7tdTq15bDZKZW3L1MNF6zdxpTV4LLlk4zZvQBW1f6BXY2Nly-pf3ZKTDY04) を提供します。 [Social Hub機能ヘルプページ](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/46271026955547-Guide-to-Social-Hub)(英文) Social Hubは、Chartbeatのサイト内分析とTubularのソーシャル動画パフォーマンスデータを統合します。これにより、複数プラットフォームにまたがる動画とコンテンツ戦略をひとつの統合ビューではじめてモニタリングできるようになります。 ![](/images/posts/6bd0be89e9/socialhub.jpg) - 包括的なインサイト:記事単位、またはサイト全体の両方でソーシャルリファラーのデータを確認できます。 - 競合ベンチマーキング:同カテゴリの主要パブリッシャーやクリエイターと、ソーシャル流入および動画パフォーマンスを比較できます。 - マルチプラットフォーム追跡:TikTok、Facebook、Instagram、YouTube、Reddit、LinkedIn からのトラフィックとエンゲージメントを追跡できます。 もし、現時点でまだSocial Hubが表示されていない場合でも、まもなくご利用いただけるようになります。今後1か月の間に、Social HubをすべてのChartbeatユーザーに順次提供していきます。 [まずは、ぜひお試しください。](https://lp.chartbeat.com/e3t/Ctc/RF+113/cs5pR04/VWhn5t79jmsxW316tF77lTb4bW6hm-BV5K95zsN3S9PH63qgz0W7lCdLW6lZ3kKW2K2md81Xw_1dW52yfVr1_NYp3W6qnW7x6cF6RKW3c6r3b1xCZ7YW36ynqw90PbpDW4vRm973wnyLtW99ZJDt7N75R9W24y7Nd6q-Q15W1QxnKb2mFZVrW8vD9G62tqnK0W4MnTwy52MTTFW58G7321VbyCZW96gPZk8LXR7yW3MvcqN11BNcPW1X28m-1prxd3W6H2rd042l3xgW5Lzymx1Zw56HN6CXc9RbpshHW7gqtl61DKjHkW8dcccd3XFtPhW48l71q64LCbWM-4bLr3bYZYW8nSw-k4Qm_cPW8zDGNW4Pj896f1g7TW004) また、Chartbeatのすべてのユーザーが利用できるOffsite Socialでは、サイトおよび記事単位で、あなたのコンテンツにリンクしているFacebook投稿を確認することができます。これにより、トラフィックを生み出している会話の流れをより深く理解できます。 --- ## AI導入によるビジネス成果創出のアプローチ URL: https://ximera.com/posts/3b6eadcf3b 公開日: 2026-01-29 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Josh Applegate](https://unsplash.com/ja/@joshapplegate?utm_source=unsplash&utm_medium=referral&utm_content=creditCopyText) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E4%BB%98%E3%81%8D%E3%81%AE%E9%87%91%E8%89%B2%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AD%E3%82%B0%E6%99%82%E8%A8%88%E3%82%92%E8%BA%AB%E3%81%AB%E7%9D%80%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA-srz9C0zRMt4?utm_source=unsplash&utm_medium=referral&utm_content=creditCopyText) # AI導入によるビジネス成果創出のアプローチ 2026.01.29|Ikuo Morisugi|#81, Part of Ximera Media Next Trends, [一覧ページ](/category/media-next-trends) AIが業務を実行し成果が問われるほど、導入企業は何を成果とみなし、誰が責任を持ち、どの条件なら本番運用できるのかを、組織全体にまたがって設計する必要がある。ここが揃わない限り、モデルの性能が上がってもPoC止まりだ。 # はじめに 本連載の[前号](/posts/bcb11e1931)で取り上げたように2025年のAIは作る/相談するツールからユーザー接点に入り込み、理解・比較・実行まで支援する存在へ一段進んだ年でした。AI経由のトラフィックの増加や、要約・対話UIの一般化、そしてAI対話上での決済など、実行まで担う体験が登場してきました。結果として、メディアは既存チャネルのトラフィック減少に対する打ち手、コマースはAI経由で比較・購入・サポートをより短い時間で完了させる設計が重要になっています。 2026年でより重要になってくるのは、AIがユーザー接点と実業務に入り込んだ状態で、実行と成果をどう創出するかです。そのためにAIの進化の動向をキャッチアップしながら、エンドユーザー向けサービスおよび企業内での業務フローへのAIの組み込みを同時に進めていくことが必要になってきます。 本稿では、企業でAIを活用して成果創出するにあたって、2026年に起こり得る変化を以下の3つの視点から取り上げます。 ①AI導入の評価基準(デモから実運用と成果へ) ②AIの利用料(成果ベース課金へ) ③AI前提の組織(役割と責任の再定義) AIが経営の前提となる現代において、導入側企業にとって、各項目でそれぞれどのようなポイントが重要となるかを見ていきます。 # 1. AI評価基準:デモから実運用と成果へ 企業のAI導入/活用において重視されるのは、より優れたモデルやより良いデモではなく、企業の中で運用され、統制され、成果に結びつくことです。[2026年のトップティアVCのトレンド予測](https://www.theaiopportunities.com/p/the-full-2026-vc-ai-predictions-where)においても同様のことを成し遂げるAI企業の登場が期待されています。AIで成果を出すためには、AIエージェントがツールから従業員に近い存在へシフトし、予算管理、権限委譲、監査対応、エスカレーションなどをAIに任せられる設計と実行体制が必要になってきます。 ここでは、機能が多い/使いやすいAIではなく、許容可能なリスクを前提にした運用が可能で、説明可能な成果を出せるAIがより重要になります。導入時に問われるのは、どの業務を置き換えるのか、責任の所在はどこか、例外処理は誰が担うのか、そして成果は何で測るのか、です。昨今の[AI導入が失敗に終わる](https://www.fullview.io/blog/ai-statistics?utm_source=chatgpt.com#:~:text=70%2D85%25%20of%20AI%20initiatives%20fail%20to%20meet%20expected%20outcomes%20according%20to%20MIT%20and%20RAND%20Corporation%20research.%2042%25%20of%20companies%20abandoned%20most%20AI%20initiatives%20in%202025%2C%20up%20sharply%20from%2017%25%20in%202024.)ケースの多くは、この前提が揃っていないためと考えられます。 導入企業はただ良いツールを選ぶだけでなく、そのツールが乗るエコシステムの前提まで含めて購買を考える必要が出てきます。具体的には、各AIの普及状況、AI企業同士の提携、標準化の動向、価格や契約条件、規制やブランドセーフティなど確認すべきポイントが多くあります。PoC止まりのAIではなく成果を出せるAIを見定める動きを取る必要があります。 # 2. AIの価格:AIの課金は成果ベースに ![](/images/posts/3b6eadcf3b/image1.png) アカウント数や使用量ではなく成果達成ベースの料金体系が登場している / [Sierra](https://sierra.ai/blog/outcome-based-pricing-for-ai-agents) 自社で導入したAIが業務を実行すればするほど、企業は実際にどの程度利用されたのか、結果が出たか、どの判断でそうなったか、ルールから逸脱していないか、など成果を求めます。その結果、利用料のモデルは、現在よく見られるような1アカウントあたりの課金や利用量に応じた課金から、「成果ベースの課金」へシフトすることが考えられます。 この成果ベース課金を成立させている事例が[Sierra](https://sierra.ai/)です。Sierraは企業向けのカスタマーサービスAIエージェントを構築するプラットフォームとして成長し、2025年11月には[ARRは1億ドル(約160億円)に到達](https://techcrunch.com/2025/11/21/bret-taylors-sierra-reaches-100m-arr-in-under-two-years/)しました。Sierraはアカウント課金ではなく、AIが完了した仕事に対して課金する[成果ベース課金](https://sierra.ai/blog/outcome-based-pricing-for-ai-agents)(outcomes-based pricing)を強く打ち出しています(例:AIが自律的に解決できたケースが課金の単位になる、など)。 AIを導入する際、企業が欲しいのはツールではなく処理量と品質です。問い合わせ・返品・不正利用・配送に関する問い合わせといったカスタマーサポートのような工程が十分に改善されるならば、顧客獲得に許容できるCPA(ユーザ獲得コスト)の上限を上げることができます。 Sierraはカスタマーサポートに特化した事例ですが、様々なAI製品が成果ベース課金モデルへ対応していくことがトレンドとして起こる可能性があります。AIを導入する際の評価基準に成果ベースの料金プランの提供がされているかは今後1つのポイントになると考えられます。 # 3. AI前提の組織:役割と責任の再定義 AIを使うほど「誰が責任を持つか」と「どこまで権限を渡すか」が曖昧なままでは運用はできません。ここで言う責任は、単に担当者名の話ではなく、最終判断の責任、出力の品質責任、誤りが起きたときの対応責任(訂正・返金・再発防止など)までを含みます。どこまでをAIに任せ、どこから人が引き取るかを決めないままでは、成果もリスクも説明できません。 BASEの事業責任者である柳川氏は、生成AIが中間層従業員レベルのアウトプットを出せる一方で、AIはコンテキストの継続や整合性が課題になりやすい点を踏まえ、[職能カットではなく事業ドメイン/ミッションカットで組織を考えるべき](https://note.com/gimupop/n/n5bbdf9720bdb)だと述べています(カット:その軸で分類すること)。人間の役割も「設計者」「深掘り職人」「人月AI管理者(特化型AIを並列に働かせ、アウトプット量の最大化にコミットする人)」「PMO/監査役」などに分かれ、AIの使い方も[学習伴走と人月AIを分けて議論すべきだ](https://note.com/gimupop/n/n5bbdf9720bdb)、としています。 ![](/images/posts/3b6eadcf3b/image2.png) 学習伴走AIと人月AIの使い分けイメージ / [柳川氏のnoteより](https://note.com/gimupop/n/n5bbdf9720bdb) ここで重要なのは、役割を分けると同時に、各役割が「何に対して責任を負うか」を明確にする点です。設計者はミッションと成果指標の責任を持ち、人月AI管理者は日々の運用(品質・コスト・処理量)に責任を持ち、PMO/監査役はルール逸脱の検知と停止、再発防止の責任を持ちます。 編集・マーケ・CSのような職能は残りますが、AIを業務に入れるほど、受け渡しの途中で責任がぼやけやすくなります。そこで先に何を成功とみなすか(成果指標)と誰が最終責任を持つかをミッション単位で決め、そのミッションに必要な情報、権限、監査の手順をひとまとめにします。たとえばメディアなら、要点と根拠が誤読なく伝わること、誤りがあったときに訂正・更新を止めずに回すこと、引用に耐える形で出典と更新履歴を管理すること、などが責任になります。コマースなら、情報(価格・在庫・返品・保証・配送)を正確に保つこと、例外対応のエスカレーションを設計して滞留を生まないこと、問い合わせを適切に処理できているかを管理し、改善につなげること、などが責任になります。これらはこれまでAIがいない状況で管理されてきたことですが、今後はAI前提で組織を組み直すことが求められます。 もう一つ重要なのは、AIが増えるほど、管理対象が人ではなくAIの並列稼働になる点です。ここでは、これまでのピープルマネジメントとは異なる責任が必要になります。人月AI管理者やPMO/監査役は、AIの出力品質を上げるための設計だけでなく、リスクを低減するための仕組みにも責任を持ちます。例えばメディアでは誤情報や引用の不備が信用を毀損しますし、コマースでは誤った条件提示が返金や炎上に直結します。それに対して、AIを前提にしたガイドライン、監査ログ、例外時の手戻り、そして止める/差し戻す判断を誰が持つかまで設計しておく必要があります。 # おわりに AIが業務を実行し、成果が問われるほど、導入企業は何を成果とみなし、誰が責任を持ち、どの条件なら本番運用できるのかを、組織全体にまたがって設計する必要があります。ここが揃わない限り、モデルの性能が上がっても、PoC止まりの状態になります。 AI導入の評価基準は良いデモから実運用と成果へシフトしていくと考えられます。また、どの業務を置き換えるかだけでなく、様々な運用の条件を明確にする必要があります。運用にAIが組み込まれるほど、セキュリティ、法務、オペレーション、現場責任者など各職能別担当者が同じテーブルで判断する必要が出てきます。 AIを利用する価格は、従来のアカウントベースや利用量ベースから成果ベースのものが徐々に普及する可能性があります。成果ベース課金は単に料金体系が変わるのではなく、上記の通り成果の定義、品質、例外時の扱い、監査可能性などを、導入側が言語化しないと成立しません。価格の議論は、運用と責任設計の議論と一体で進められる必要があります。 また、組織は役割だけでなくAI前提での責任を再定義する必要があります。誰が最終判断を持つのか、誤りが起きたときに訂正・返金・再発防止までを誰が引き取るのか、そして止める/差し戻す判断を誰が持つのか。この責任設計が曖昧なままだと、たとえAIによって成果が出ても再現できず、リスクも説明できません。 2026年は上記のことを組織/事業全体で設計し、実行できる企業がAIで成果を出すことができると考えられます。 --- ## Q4 2025:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/70bdb4e5c3 公開日: 2026-01-19 著者: Everleigh Malley by Everleigh Malley([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/global-audience-insights-from-the-fourth-quarter-of-2025/))2026.01.19 2025年第4四半期(10-12月)、平均エンゲージメント時間は中東欧地域でもっとも高い水準を維持、ソーシャルトラフィックは複数の地域で増加、アフリカ地域では読者ロイヤルティが急激に上昇しました。 ## 平均エンゲージメント時間は中東欧地域で最高を維持 Q4においても、中東欧地域の読者は33.6秒の平均エンゲージメント時間でもっとも高い読者エンゲージメントを示しました。中東地域とアフリカ地域がそれぞれ33.3秒、27.5秒で続きます。各地域のエンゲージメント時間は前四半期から引き続き減少傾向にあります。 ## ほとんどの地域でモバイルトラフィックが減少 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2026/01/image-1-1024x676.png) 全地域のパブリッシャーにおいて、モバイルユーザーからのトラフィックが減少傾向にあります。とくにアフリカと東南アジアでは8%の減少が見られました。ただし、モバイルは依然として主要なトラフィック源であり、全地域でページビューの少なくとも61%がモバイル端末から発生しています。 ## 検索トラフィックはほとんどの地域で減少 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2026/01/image-2-1024x676.png) 中央アジアにおける第4四半期のページビューの45%が検索エンジン経由でしたが、第3四半期の53%から減少しました。東南アジアと中東を除くほとんどの地域でこの流入源は減少傾向にあり、東南アジアと中東もわずかに増加するか横ばいでした。 ## ソーシャルトラフィックは複数地域で増加 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2026/01/image-3-1024x676.png) Q3比3%減となったものの、東南アジアはソーシャルプラットフォームからのページビューがもっとも多い地域であり続けています。北米、中東、アジア太平洋、北欧の地域では、このトラフィックソースから最大2%の増加が見られました。 ## アフリカの読者ロイヤルティが急上昇 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2026/01/image-4-1024x676.png) 南欧と北米では、ページビューの42%がロイヤルティの高い読者によるもので、もっとも高い割合を示しました。アフリカや中央アジアなどのその他の地域では、読者ロイヤルティがそれぞれ5%および1%増加しました。 ## 2025 Q4の主なポイント 全世界における平均エンゲージメント時間は26秒 平均エンゲージメント時間は、中東欧の33.6秒から南欧の23.2秒まで幅がありました。全体として、平均エンゲージメント時間は第3四半期からほぼ横ばいでした オーディエンスは依然モバイルファースト 複数の地域でモバイルトラフィックが減少したものの、モバイルトラフィックは依然として最大のトラフィック源であり、サイト訪問の少なくとも61%がモバイル端末で行われています 検索からのページビューは減少傾向 東南アジアおよび中東を除く全地域において、第4四半期に検索エンジンからのページビューが減少しました。これはAIが検索に与える影響が増大している結果と考えられます 検索トラフィックは減少しているものの、Chartbeatネットワーク加盟パブリッシャーへの総トラフィックは安定を保っています。これは、情報入手方法の変化にもかかわらず、視聴者がニュースやエンターテインメントの信頼できる情報源を依然として支持していることを示しています。 *過去のオーディエンス動向: [Q3 2025](/posts/8347220612) / [Q2 2025](/posts/de373c0f70) / [Q1 2025](/posts/fea1397f9e) / [Q4 2024](/posts/1e14a10498)* --- ## シリーズコンテンツがいかにYouTubeでのロイヤルティを高めるか URL: https://ximera.com/posts/e8ee47482f 公開日: 2026-01-05 著者: Everleigh Malley by Everleigh Malley([原文](https://tubularlabs.com/blog/how-serialized-content-drives-youtube-loyalty/))2025.12.18 テレビでのYouTube視聴が拡がるなか、コンテンツが従来のテレビ形式を模倣するのは当然の流れです。とくに定期的な視聴を促す連続エピソード形式がそのいい例です。 この戦略はYouTube全体で顕著に見られます。成功するシリーズを立ち上げる万能な手段はありませんが、同じ試みを行うすべての方にとって、これらのクリエイターから得られる有益な教訓は多くあります。 ## 50日間で50州を巡る旅 クリエイター[ライアン・トラハン](https://www.youtube.com/channel/UCnmGIkw-KdI0W5siakKPKog)氏は、2025年半ばに自身のYouTube視聴時間記録を更新しました。その原動力となったのは定番コンテンツであるロードトリップへの取り組みです。しかし単なるロードトリップではありません。彼のシリーズは50日間で全50州を制覇、つまり1日1州という日課を課す、壮大な挑戦となったのです。
この企画はそれまでの彼のコンテンツとは一線を画し、長編動画や州ごとの見どころ紹介へと方向転換するとともに、視聴者と共に旅を記録し共有したいという真摯な想いが込められています。テキサス州を発つ初回が1100万回再生と最多を記録する一方、毎日の更新スケジュールはプレイリスト機能の有効性や、このようなシリーズを通じて視聴者を維持する手法について興味深い事例となりました。 長めの動画時間(大半が20~25分)はテレビ番組のような体験を生み出しています。トラベルチャンネルで見るような内容でありながら、より親しみやすいクリエイター視点で語られる点が特徴です。トラハン氏がシリーズを軌道に乗せ続ける献身的な姿勢は、視聴者の関心を高く維持する結果にもつながりました。6月の米国における総視聴時間は前月比120%増の5億6980万分を記録(全USアカウント中24位、複数のテレビネットワークや主要ニュース組織を上回る数値)しています。 ## 優れたゲーマーのように 米国の保険会社ステートファーム(State Farm)は2022年にYouTubeで『ゲーマーフッド』シリーズを開始し、4シーズン目を迎えた今、このゲームをテーマにした競技番組はかつてない規模に成長しています。8月1日に放送されたシーズン4の初回は、YouTubeで15万2000人の視聴者を集めました。
ブランドにとって、ニッチな顧客層に直接訴えかけるYouTubeエンターテインメント番組を制作し、同時に保険業界の定番要素を強調することは理想的な状況です。ステートファームは視聴者に馴染み深いリアリティ番組形式を採用し、ブランド固有のコンテンツを効果的に提供することで、視聴者が自発的に長時間ブランドと関わる仕組みを実現しています。 ブランド動画は競争が激しいため、視聴者を引きつけること自体が困難です。しかしステートファームは『ゲーマーフッド』で視聴者を2時間以上も釘付けにすることに成功しています。同ブランドは7月にYouTubeで470万分の視聴時間を記録し、定期的に500万分を超える視聴を達成しています(『ゲーマーフッド』動画が寄与しています)。 ## Vice Media「Naked Truths」リバイバル Vice Mediaのシリーズコンテンツへの取り組みは過去の企画を再活用したものです。数多くのYouTube番組に加え、Viceは最近『Naked Truths』の再始動に踏み切りました。これはかつてRefinery29で大ヒットした企画で、成功した女性たちが自らのメイクを落としながら自信についての考えを語る内容です。
新シリーズはより高品質なドキュメンタリーシリーズとして新たなアプローチを採用し、イギリス生活の隠れた側面をフィルターをかけず、ありのままに描き出します。時間の尺も長くなっています。 従来の『Naked Truths』シリーズでは動画の長さが1~5分程度でしたが、現在のバージョンでは各エピソードが15分以上と、従来のテレビ番組形式に近づいています。これは、YouTubeがテレビの代替として利用される機会が増えていることを考慮したものです。また、エピソードの長さが長くなったことで、広告を差し込む機会が増え、大規模なテレビ局やストリーミングサービスによる番組買収がなくても、収益化戦略を確立することが可能となりました。 新シリーズの最初の2エピソードは、1回のアップロードあたり6万5000回以上の再生数を記録し、一定の視聴者エンゲージメントを獲得しました。 ## クリエイターとパブリッシャーが学べる点 シリーズ形式のコンテンツは、従来のテレビへの回帰であるだけでなく、ソーシャルプラットフォーム、とくにYouTubeにおけるロイヤルティ向上に効果的な手法です。 - 継続性が勢いを生む。毎日または毎週のペースは習慣形成を促し、習慣が視聴者層を形作ります。 - 長編コンテンツはYouTubeで効果を発揮します。 視聴者はコンテンツに引き込まれるほど長時間視聴します。 - 効果的なパッケージングが成果を生みます。 プレイリストからエピソードごとのブランディングまで、「次を見る」ことを容易にすることで、総エンゲージメントが向上します。 YouTubeコンテンツが大型画面での視聴者を引き続き惹きつけるなか、単発のヒット作ではなくシリーズとして考えるクリエイターやブランドこそが、際立った存在となるでしょう。 --- ![](/images/posts/e8ee47482f/tubular_logo.png) [https://ximera.com/tubular](https://ximera.com/tubular)/ Tubularはソーシャル動画の横断分析ツールです 新しい視聴者をみつけるために複数のチャネルでの動画展開が求められている現在のソーシャル動画の世界で、Tubularは主要なプラットフォームの動画とクリエイターの実データを整理・分類することでプラットフォームをまたいだ横断分析を可能にしています。 Tubularがもつソーシャル動画に関する10年以上の専門知識を活かして作られたデータベースで、視聴者により深い共感を与えられたり、新しい視聴者があなたのチャンネルをみつけられる機会をみつけ、あなたのクリエイティブを広く届けましょう。 あなたの扱うジャンルやトピックでスポンサードコンテンツを展開している、相性のいいスポンサーブランドを発見することもできます。同じように、ブランドも相性のいいクリエイターを探しています。 --- ## 2025年のメディア/コマーストレンドを振り返る URL: https://ximera.com/posts/bcb11e1931 公開日: 2025-12-25 著者: Ikuo Morisugi 2025.12.25|Ximera Media Next Trends #80|Ikuo Morisugi AIを導入する・しないの議論から経営の前提へ移った一年 # はじめに 本連載の2024年を振り返る記事では、生成AIが投資を呼び込み、検索体験を変えはじめた1年として2024年をまとめました。 詳しく: [Ximera Media Next Trends #68 : 2024年の生成AIトレンドとそのメディア業界への影響を振り返る](/posts/bd6f9ab9f5) ![](/images/posts/bcb11e1931/image2.png) AIスタートアップへの投資は2025年さらに加速 / [Crunchbase](https://news.crunchbase.com/ai/big-funding-trends-charts-eoy-2025/) 2025年は、その延長線上でさらにAIへの投資および進化と普及が一段進みました。AIが何かを作る/相談するツールから、ユーザー接点に入り込み、情報を理解させ、意思決定を補助し、場合によってはサービスや商品の購入や決済まで実行する存在になり始めたためです。それによりユーザ行動は次のような変化が起こりました。 ①コンテンツの発見: 検索順位やSNS拡散経由だけでなく、AIの要約・回答・対話の中で自社のサービスやコンテンツに最初に触れられる機会が増えました。 ②エンゲージメント: 記事本文や商品ページの熟読から、AIによる要点要約・比較・Q&Aを通じて短時間で理解される段階へ移りました。 ③コンバージョン: 別サイトへの遷移後の行動から、AIとの対話や推薦の流れの中で購入・申込みまで近づく段階へ移りました。 本稿では2025年に起こったAIがメディアやコマース関連に与えた影響をまとめます。具体的には、AIがより重要なユーザー接点になり、収益化手段が変化し、プロダクトとUXが再設計されている点を取り上げます。 # 1. ユーザー接点の変化:AI経由トラフィック獲得戦略が必須に 2025年は2024年に引き続きChatGPT、Gemini、Claudeなど[汎用AIがアクティブユーザ数を伸ばし](https://news.mynavi.jp/techplus/article/20251208-3781705/)、多くの人にとって日常利用が当たり前になってきました。ChatGPTだけを見ても[週次アクティブは2024年12月から2025年4月の半年足らずで、3億人から8億人に急増](https://www.demandsage.com/chatgpt-statistics/)しています。検索エンジンやSNSだけでなく、AIの要約・回答・対話を起点に理解や比較がなされるAI経由のユーザ接点の重要性が高まっています。そのような状況の中で、本連載#76では、AI経由トラフィックの獲得手段として、①パートナーシップ、②自力での最適化、の二つのアプローチを取り上げました。 詳しく: [Ximera Media Next Trends #76 AI経由トラフィック獲得のアプローチ](/posts/44eed42c03) USのeコマースでは生成AI経由のトラフィックが急増したことが報告されています。[Adobe Analyticsの分析](https://blog.adobe.com/en/publish/2025/03/17/adobe-analytics-traffic-to-us-retail-websites-from-generative-ai-sources-jumps-1200-percent)では、AI経由のeコマースサイトトラフィックが短期間で大きく伸びたこと、さらにAI経由の訪問者は滞在時間や閲覧ページ数が高く、直帰率が低い傾向を示しました。 メディアに対してはまた異なる影響を与えており、特にニュースサイトに対しては、検索結果や要約から引用元サイトをクリックしない、所謂[「ゼロクリック」問題が顕在化](https://www.innersparkcreative.com/news/ai-search-zero-click-statistics-2025-verified#:~:text=(JSON-LD)-,Key%20takeaways,(post-AIO%20launch).)しています。ユーザーがAIの要約や回答で全体像を掴み、必要なときだけ出典に遷移するため、これまでのSEO中心の集客はより難しくなり、クリック獲得からAIに引用される情報設計へ重心が移りつつあります。これは単に文章の書き方を工夫するだけでなく、AIに参照されやすい一次情報の構造、見出し設計、比較可能性、更新頻度といった、編集とプロダクトの両方の要素が絡んでいます。 さらに汎用AI各社はユーザー接点拡大のため、AIブラウザをリリースし、コンテキスト理解、閲覧から実行の一本化、タブ切り替えの手間減少、継続的なユーザ行動の獲得を画策しています。 詳しく: [Ximera Media Next Trends #78 AIブラウザの台頭と検索・閲覧行動の変化](/posts/41e9291ee4) ![](/images/posts/bcb11e1931/image3.png) ChatGPT内で第三者アプリのインストール/実行できるアプリディレクトリがロンチ / [ChatGPT](https://chatgpt.com/apps) 加えて直近の出来事として、ChatGPT内にアプリストアが立ち上がったことも、さらなるユーザー接点の拡大につながります。OpenAIはChatGPT内で利用できるアプリ([Apps in ChatGPT](https://openai.com/ja-JP/index/introducing-apps-in-chatgpt/))を探して有効化できる[アプリ・ディレクトリ](https://help.openai.com/en/articles/11487775-apps-in-chatgpt)と、開発者向けの[Apps SDK](https://developers.openai.com/apps-sdk/)を公開し、第三者がChatGPT上でアプリを配布できるモデルを開始しました。ここで重要なのは、AIが情報を返す場所から行動を起こす場所へさらに近づくことです。たとえば音楽やフードデリバリーのような外部サービスがChatGPT内のアプリとして並ぶほど、ユーザーは検索してサイトへ行く前に、まずChatGPTの中で比較・選択・実行の一部を始めるようになります。 自社サービスの価値はページに来てもらうことだけで成立するのか、それともAIに要約されてもなお出典として選ばれる一次情報なのか、前者であれば、ユーザー接点がAIに寄るほど不利になります。後者であれば、AIはリーチ拡大や収益化する装置にもなり得ます。 # 2. ビジネスモデル:広告以外の収益化手段の獲得がより重要に ユーザー接点が変わると、ビジネスモデルも変わります。AI時代におけるメディア関連でのマネタイズのアプローチは2点あり、一つは、AI企業へのライセンスや提携を通じて、コンテンツを正規に供給し対価を得る道です。本連載#76や#79で整理したように、アーカイブライセンス、広告レベニューシェア、リアルタイムフィード連携、ライセンスの自動化といったモデルが浮上しました。 詳しく: [Ximera Media Next Trends #76 AI経由トラフィック獲得のアプローチ](/posts/44eed42c03) [Ximera Media Next Trends #79 AI時代のコンテンツ戦略:守りと攻めの一体設計](/posts/260cd69e8a) もう一つは、AI要約が普及しても購読価値が落ちないよう、独自性や深さ、体験としての読みやすさに投資してサブスクを磨き込む道です。この道は決して容易ではないですが、AIが一般化するほど一次情報の信頼性と編集の品質が差別化につながるため、長期的には効いてきます。 コマース側では、コンバージョン率が今まで以上に重要になります。ユーザーがAIで比較・検討を済ませてからサイトへ来るなら、その後のエンタメ感の演出や、不安やめんどくささの解消、などを提供しスムーズに購入が完了する体験で勝負する必要があります。本連載では、その事例としてライブコマースおよびリピーター獲得で完了率を上げるスタートアップのプロダクトを取り上げました。 詳しく: [Ximera Media Next Trends #77 動機を強めるライブコマースとテキストチャットによる購入最適化された顧客体験](/posts/5bb634c2b9) 投資の文脈でも、勝者への資本集中が起こっています。上記記事で取り上げたライブコマースのプラットフォームWhatnotについては[2025年初頭の資金調達](https://techcrunch.com/2025/01/08/livestream-shopping-app-whatnot-raises-265m-pinning-valuation-at-nearly-5b/)が報じられ、その後も[追加調達](https://news.crunchbase.com/venture/ecommerce-unicorn-whatnot-raises-seriesf/)が報じられました。eコマーススタートアップへの投資は全体としては減少傾向ですが、カテゴリー全体が追い風でなくても、取引が回る設計を作れた勝者に資本が集まる構造が発生しています。 # 3. プロダクトとUX:AI要約/対話/実行まで支援可能に ![](/images/posts/bcb11e1931/image1.png) ChatGPT Instant CheckoutはChatGPT内で決済/購入まで実行できる / [OpenAI](https://openai.com/ja-JP/index/buy-it-in-chatgpt/) 2025年現在提供されているプロダクトでは、AIによる要約や対話UIが一般化しました。日本では、SmartNewsが生成AIで[複数記事を要約し一つの読み物としてまとめる機能](https://about.smartnews.com/ja/news/2398.html)を発表し、LINEヤフーはYahoo! JAPANアプリで[ヤフトピ記事の要点をAIが3点でまとめる機能](https://www.lycorp.co.jp/ja/news/release/019668/)を開始しました。 ユーザーはまず要点を理解し、次に出典に遷移するか、関連を深掘りするかを決めます。メディアにとっては、記事の価値は全文を読ませるだけでなく、「要点として正確に伝わり、信頼できる出典として引用されること」の重要性が高まっています。 コマースでも、対話UIが購買体験に組み込まれています。Amazonの[Rufus](https://www.aboutamazon.jp/news/retail/amazon-ai-shopping-assistant-rufus)がアプリ内の買い物相談を提供し、Walmartはアプリに生成AIアシスタント[Sparky](https://corporate.walmart.com/news/2025/06/06/walmart-the-future-of-shopping-is-agentic-meet-sparky)を導入しました。中小企業のECサイトであっても[Omakase.ai](http://omakase.ai/)のようなプラグイン型のサービスによりAIによる対話UIの実装が可能になりました。 プロダクトとUXの洗練化については、自社サービス内の対話UIと並行して、汎用AI内のエコシステムでも起こっています。象徴的な事例として、上記で挙げたChatGPT内で外部サービスや機能を呼び出せる Apps in ChatGPTに加えて*、*[Instant Checkout](https://openai.com/ja-JP/index/buy-it-in-chatgpt/) が挙げられます。Instant Checkoutは自社のECサイトと連携してChatGPT上で商品検索から注文/決済まで完了できる一連の購入フローを実現します。 この動きは、従来の「AIで検索してアクションが必要なら外部サイトへ遷移する」モデルから、「AIの中で比較・選択・実行の一部が完結する」モデルへの転換を示します。この文脈で重要なのは、もはやコマース事業者にとっての競争領域が自社サイトのUI改善だけではなく、AIのエコシステム内で選ばれる存在になれるかも含まれていることです。2025年後半以降はAI内部での露出・実行・決済を前提にした設計が、より本格的に問われる段階にあります。 # おわりに 2025年を振り返ると、AIがより強力なユーザー接点になり、トラフィックの一部は検索からAIの回答・引用に代替されつつあります。ユーザー接点が変わると、収益化の軸を変えていく必要があり、ライセンスや広告収益分配といった新しい収益化の形も増えました。さらにその前提として、汎用AI以外の企業でも自社のプロダクトにもAIによる要約と対話が実装されることも珍しくなく、ユーザーの期待水準が上がっています。 2026年に向けて、メディア業界とコマース業界が最初に設計し直すべきものは、AIを導入するかどうかではなく、「AIがユーザー接点の当たり前となった世界で、どの情報が引用され、どの体験で完了し、どこで価値を収益化するのか」という全体設計です。 メディアであれば、要約されてもなお誤読されず、出典として選ばれる情報の構造化が必要です。コマースであれば、対話や推薦の中で選ばれ、購入がスムーズに完了する体験が必要です。 2025年は、AIに対する位置づけが、現場に導入する/しないの議論から経営の前提へ移った一年でした。本記事が2025年のトレンドを振り返りながら未来のビジョンを描くことの一助になれば幸いです。本年もお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。 --- ## 2025年、世界でもっとも読み込まれた記事 URL: https://ximera.com/posts/most-engaging-stories-2025 公開日: 2025-12-16 著者: Chartbeat 概要: Chartbeatが4,100万本のコンテンツ、1,870億分のエンゲージメント時間から選ぶ年次企画。2025年は政治が引きつづき読者の関心を集め、著名俳優の死去をめぐる調査報道と銃撃事件の続報が上位を占めた。10年分の推移も振り返る。 by Chartbeat([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/most-engaging-stories-2025/))2025.12.16 Chartbeatが毎年発表している「The Most Engaging Stories」の2025年版が公開されました。ページビューの多さではなく、読者が実際にどれだけ読み込んだか(エンゲージメント時間)を軸に、その年を象徴する記事を選ぶ年次企画です。ここではそのポイントを日本語でご紹介します。 ![](/images/posts/most-engaging-stories-2025/hero.png) ## 集計の規模 2025年の分析対象は4,100万本のコンテンツ、エンゲージメント時間の合計は1,870億分にのぼります。ここから定量・定性の両面で絞り込み、最終的に110本が選ばれました。 ## 2025年を象徴した3つのテーマ 政治 選挙イヤーだった2024年ほどではないものの、政治は引きつづき読者の関心を集めました。リストに入った政治関連の記事だけで1億8,200万分のエンゲージメント時間を集めています。トランプ政権内部の対立や、安全保障をめぐる情報管理の問題を扱った調査報道が上位に入りました。 事件・事故 Charlie Kirk銃撃事件は、容疑者の特定や事件の経緯、動機を追う続報が複数の媒体で上位に入り、2025年でもっとも読まれたテーマのひとつとなりました。このほか政治的暴力、学校での銃撃事件、ニューオーリンズでのテロ事件の報道も上位に入っています。 追悼 俳優Gene Hackman夫妻の死去をめぐる調査報道は、複数の媒体の記事とあわせて4,400万分を超えるエンゲージメント時間を集めました。Diane Keaton、Robert Redfordなど、ほかの著名人の訃報や回顧記事にも読者が集まっています。 ## 上位10本の顔ぶれ 1位はFox Newsによる、Gene Hackman夫妻の不可解な死をめぐる調査報道でした。2位はThe Atlanticが報じた、政権関係者の連絡グループに記者が誤って追加されていたスクープ。3位はThe New York Timesが伝えた、出産をめぐって刑事訴追された女性の記事です。 以降の顔ぶれは、ABC NewsとCNNによるCharlie Kirk銃撃事件の続報、BBCによるHackman夫妻の死の捜査報道、The New York Timesによるトランプ政権高官とElon Musk氏の衝突を追った記事、救急外来での誤診をめぐる記事、CNNによるワシントンD.C.の航空機衝突事故の犠牲者を伝えた記事、BBCによる予算案が家計に与える影響の解説記事、と続きます。 リスト全体でもっとも多くの記事が選ばれたのはBBCで、予算案の解説のような実用記事からEurovisionをめぐるポップカルチャー記事まで、幅の広さが際立ちました。 ## 10年分の推移 この企画は2025年で10回目を迎えます。2015年以降の各年の1位を振り返ると、その年の関心の所在がそのまま浮かび上がります。 - 2015年 The Atlantic:イスラム国の実像を掘り下げた分析記事 - 2016年 FiveThirtyEight:米大統領選の予測モデル - 2017年 The Atlantic:筆者の家族に仕えていた女性を描いたルポルタージュ - 2018年 CNN:Anthony Bourdain氏の死去 - 2019年 The Atlantic:マレーシア航空機失踪事件の検証 - 2020年 POLITICO:コロナ禍が世界を恒久的に変えるという論考 - 2021年 The Washington Post:ジョージア州州務長官への圧力通話の報道 - 2022年 ESPN:ペンシルベニア州立大学をめぐる性的加害事件の検証報道 - 2023年 Los Angeles Times:Matthew Perry氏の死去 - 2024年 CNN:ジョージア州の学校銃撃事件で容疑者の父親が訴追された報道 速報性の高い訃報・事件報道と、時間をかけた調査報道の両方が並ぶのが、この10年の一貫した傾向です。 ## 選定方法 選定は定量と定性の二段構えです。まずエンゲージメント時間を軸に候補を機械的に抽出し、およそ1,000本の記事を人の目で確認したうえで、報道としての独自性や社会的な重みを加味して最終的な110本に絞り込んでいます。ページビューの規模だけでは上位に来ない記事が入るのは、この二段構えによるものです。 記事の全リストと詳細は[原文](https://chartbeat.com/resources/articles/most-engaging-stories-2025/)からご覧いただけます。 --- ## 2025年、世界は何を見ていたか:ソーシャル動画の年間総括 URL: https://ximera.com/posts/what-the-world-watched-2025 公開日: 2025-12-16 著者: Jack Neary 概要: Tubularによる2025年のソーシャル動画総括。約37億本の動画が172.6兆回視聴され、視聴数はYouTube、エンゲージメントはTikTokが首位。ルーブル美術館の盗難事件やColdplayのキスカムなど、その年の関心の集まり方をデータで振り返る。 by Jack Neary([原文](https://tubularlabs.com/blog/social-video-trends-2025-defined/))2025.12.16 Tubular が2025年のソーシャル動画を総括したレポートを公開しました。要点をご紹介します。 ![](/images/posts/what-the-world-watched-2025/hero.png) ## 年間の規模 2025年、ソーシャル動画プラットフォーム全体で約37億本の動画が投稿され、172.6兆回視聴されました。視聴数では YouTube が首位、エンゲージメントでは TikTok がもっとも高い水準です。 アップロード数が多かった国は、1位が米国、2位がインド、3位がブラジル、4位がインドネシア、5位がメキシコでした。 ## 2025年に関心が集中した出来事 ![](/images/posts/what-the-world-watched-2025/louvre.jpg) パリ・ルーブル美術館の盗難事件は、TikTok で3,100本の投稿から4億7,600万回の視聴を集めました。 ![](/images/posts/what-the-world-watched-2025/coldplay-kisscam.jpg) Coldplay のコンサートで話題となったキスカムの一件は、Instagram で4,600本の投稿から13億回の視聴。 Robert Irwin 氏の Dancing with the Stars 出演は TikTok で9,300本・8億1,900万回、Blue Origin の宇宙飛行は Instagram で7,100本・9億5,500万回でした。いずれも、一次報道よりも二次的な切り出しとリアクションが視聴を積み上げる構図です。 ## 娯楽カテゴリーはクリエイターが主導 Pop Culture & Entertainment カテゴリーは、プラットフォーム横断で9,190万本という膨大なアップロードを記録しました。内訳を見ると構図がはっきりします。 - アップロードの90%以上はインフルエンサーによるもの - 全アップロードの約40%が TikTok - メディア企業のアップロードは6.8%にとどまるが、Instagram では1本あたりの視聴数が最多 ![](/images/posts/what-the-world-watched-2025/top-creators-instagram.png) Instagram における同カテゴリーの視聴上位10クリエイターには、ブラジルから2組が入りました。うち TNT Sports Brasil は、スポーツとポップカルチャーを掛け合わせることで上位に食い込んでいます。 会話を主導しているのはクリエイターであり、メディア企業は本数ではなく1本あたりの質で存在感を出している、という整理ができます。 ## 訃報が集める、濃い関心 Diane Keaton 氏、Gene Hackman 氏、Anne Burrell 氏、Carl Dean 氏らの訃報に際して投稿された追悼動画は、キャリアの振り返りや人物像の紹介を通じて、長く関心を保ちました。速報性よりも、蓄積された記憶を呼び起こすタイプのコンテンツが強い領域です。 ## Chartbeat との共同企画 Tubular は毎年末、Chartbeat と共同でその年に読者の関心を集めた記事とテーマを追跡しています。記事側の年間総括は[2025年、世界でもっとも読み込まれた記事](/posts/most-engaging-stories-2025)でご覧いただけます。ソーシャル動画とニュース記事の両面から同じ年を見ると、関心の広がり方の違いが見えてきます。 レポートの全文は[原文](https://tubularlabs.com/blog/social-video-trends-2025-defined/)からご覧いただけます。 --- ## AI時代のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/d89111a300 公開日: 2025-12-15 著者: Everleigh Malley by Everleigh Malley([原文](https://chartbeat.com/resources/general/audience-trends-ai-age/))2025.12.15 最近メディア業界に関わっている方なら、さまざまな言い回しで「トラフィックの終焉」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。AIによる要約やチャットボットが台頭するにつれ、検索、ソーシャルメディア、リファラルといった従来のウェブトラフィックの経路が枯渇しつつあるという考えを示すものです。 たしかにAIは検索結果に浸透しつつあります。しかし、データが示す実態はもっと複雑です。 Chartbeatでは世界数千のメディアサイトで数百万人の読者のリアルタイムおよび過去の行動を追跡しており、AI時代におけるオーディエンスの行動パターンの変化を最前線で観察しています。そこで明らかになったのは、トラフィックがなくなっているのではなく、移り変わっているという事実です。 # オーディエンス動向とトラフィック崩壊神話の真実 実際にパブリッシャーがトラフィックの減少を確認していることはわかっています。ですが、グローバルを見ると週間ページビューは前年比で5%増加していて、2024年第2四半期は70億、2025年第4四半期には73億に達する見込みです。 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/11/weekly_pageviews.png) 変化しているのはオーディエンスの規模ではなく、そのオーディエンスがどうコンテンツを発見しエンゲージするか、です。 現在のグローバルトラフィックの内訳は以下の通りです: - サイト内回遊:42% - 検索:24% - ダイレクト:15% - ソーシャル:10% - 外部リファラル:9% これはつまりトラフィックの数をもっとも大きく左右する要因は、サイト内で起こっていることを意味しています。サイト訪問がソーシャル経由であれAIツール経由であれ、この事実は変わりません。このテーマについては[内部トラフィックを解読する記事](/posts/96fca6b321)でより深く掘り下げていますが、要約すると、強力な内部回遊を促すことができるパブリッシャー——次のおすすめの記事を提案する、定番コンテンツを再浮上させる、読者を関連情報につなぐパブリッシャー——こそが、オーディエンスの行動が変化しても繁栄できる最良の状態にあると言えます。 # これまでの検索とGoogle DiscoverをAIリファラーと比較 トラフィック動向をより深く理解するため、Google検索やGoogle Discoverといったリファラーソースを詳しく見てみましょう。トラフィックの激減が現実化していない主な理由は、過去3年間でGoogleからのトラフィックが安定して推移し、総トラフィックの約20%を占めている点にあります。この割合は検索とDiscoverでほぼ均等に分かれています。 下のグラフは米国のGoogleトラフィックの推移を示しています。その他の地域でも同様の傾向が見られますが、Discoverと従来の検索の割合は逆転しています。 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/11/google_search_discover.png) # トレンドにおける次のシフト:AI ChartbeatネットワークにおけるAIプラットフォーム由来のページビュー比率を見ると、主要な参照元であるChatGPTでさえ1%未満であることがわかります。それでも、生成AIや大規模言語モデル(LLM)がメディアエコシステムに急速に浸透し、オーディエンスの情報発見方法やプラットフォームの情報提示方法を変革しつつあることは疑いようがありません。 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/11/ai_platforms_pageviews-1.png) パブリッシャーにとっての懸念点は、AIモデルがコモディティ化されたコンテンツ、つまりかつて検索トラフィックを確実に集めていた「まとめ記事」「解説記事」「定番記事」の要約や複製に長けていることです。汎用的であったり重複した報道に依存するパブリッシャーは、オーガニック露出の機会が少なくなる可能性があります。 一方で、こうしたAIの限界こそがメディア組織の真価——独自取材、ブランド、そして信頼——を浮き彫りにします。AIは人間のストーリーテリング、コミュニティにおける信頼性、創造的な判断力を再現できません。これらが優位性であり、独自取材、独占動画、独自の分析を提供するパブリッシャーは、この新たなエコシステムにおいて一層の価値を持つようになるでしょう。 # 変化するオーディエンスへの適応方法 2025年以降を特徴づけるオーディエンス動向をまとめると: - トラフィックは消滅せず、再分配される。従来のリファラーソースが変化するなかでも、世界のページビュー数は増加傾向にあります - 内部トラフィックがもっとも重要である。リサーキュレーションループ(内部回遊)を強化し、読者に深い経験を提供し、ロイヤルティを高めましょう - 検索トラフィックは安定を維持。全地域において、Google検索とGoogle Discoverでの露出向上のための最適化を継続する必要があります - AI Overviews(AIによる概要)検索は課題であると同時に機会でもある。権威性と独自性を構築することで差別化を図れます - コンテンツを回すのは変わらず人間である。優れたコンテンツと効果的なデリバリーが成長の基盤でありつづけます AI時代における御社のメディアの位置付けを確認しませんか? Chartbeatが[*変化する読者動向への適応*](https://lp.chartbeat.com/get-a-complimentary-chartbeat-demo)をどのように支援できるかご覧ください。 --- ## AI時代のコンテンツ戦略:守りと攻めの一体設計 URL: https://ximera.com/posts/260cd69e8a 公開日: 2025-12-09 著者: Ikuo Morisugi 2025.12.09|Ximera Media Next Trends #79|Ikuo Morisugi 守りと攻め、両軸のIP運用 # はじめに 生成AIの普及によって、メディアやコマースのコンテンツは二重の圧力にさらされています。ひとつは偽造品・無断転載・偽サイト・フェイクニュース等のコンテンツ悪用の増加です。[OECD/EUIPO(欧州連合知的財産庁)の最新推計](https://www.oecd.org/en/about/news/press-releases/2025/05/global-trade-in-fake-goods-reached-USD-467-billion-posing-risks-to-consumer-safety-and-compromising-intellectual-property.html)では、2021年の偽造品国際取引規模は推定4,670億ドル(約70兆円、世界輸入の約2.3%)にのぼります。オンラインのブランド毀損検出/保護ツールを提供する[Red Pointsが行った調査](https://www.newswire.com/news/ai-is-fueling-the-boom-in-counterfeit-shopping-new-study-finds-22569719)では、2024年に430万件の偽造侵害を検出し、前年比15%の増加となっています。これらのことからオンラインでの流通量の拡大およびAIの悪用の加速とともに、著作物・ブランドの侵害がサプライチェーン全体へ波及していると推測されます。 [](https://www.oecd.org/en/about/news/press-releases/2025/05/global-trade-in-fake-goods-reached-USD-467-billion-posing-risks-to-consumer-safety-and-compromising-intellectual-property.html?utm_source=chatgpt.com)どの程度が生成AIによる著作物・ブランドの侵害なのかは全体統計データはまだありませんが、問題となる事例は既にいくつも発生しています。2025年10月にOpen AIのSora 2で[日本のアニメ/漫画/ゲーム等のキャラクターが容易に生成AIにより作られる状況が発生しており、](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC31C990R31C25A0000000/)日本のコンテンツ業界は強く問題視しました。また、著作物を不正に訓練データとして用いたとして、[Anthropicが書籍著作者・出版社との係争において 約15億ドル(約2250億円)を支払うことに合意した](https://www.wired.com/story/anthropic-settlement-lawsuit-copyright/)と報じられた例もあります。デジタルコンテンツであればジャンルは関係なく、テキスト・画像・音声/音楽・動画・3Dなどあらゆるものが著作権やブランド侵害の対象になり得ます。 こうしたコンテンツ悪用への対策として、撮影〜編集〜配信の各段階でメタデータを付与する仕組みが提案されています。[C2PA](https://c2pa.org/)はAdobe・Amazon・BBC・Google・Metaなどが主導するオープンな標準規格で、改変履歴を検証できるよう産業横断の仕様化を目指しています。一方で、こうした規格が普及するまでに時間がかかることや、定着しない可能性も十分にあります。現状では、自社のIP資産を守るために、ブランド毀損や著作権侵害を検知・対応を行う即効性のある体制とツールが必要になります。 ブランド毀損や著作権侵害等への対策を「守り」とすると「攻め」は、AI時代におけるデータの正規供給による収益の拡大です。ニュースパブリッシャーでは[AP通信](https://www.ap.org/media-center/press-releases/2023/ap-open-ai-agree-to-share-select-news-content-and-technology-in-new-collaboration/)を皮切りに、[Financial Times](https://aboutus.ft.com/press_release/openai)、[Axel Springer](https://openai.com/index/axel-springer-partnership/?utm_source=chatgpt.com)、[Le Monde/Prisa](https://openai.com/index/global-news-partnerships-le-monde-and-prisa-media/?utm_source=chatgpt.com)などが[OpenAIとのライセンス契約を](https://www.ap.org/media-center/press-releases/2023/ap-open-ai-agree-to-share-select-news-content-and-technology-in-new-collaboration/)相次いで発表しました。AIにおける学習・要約・検索表示の代わりにパブリッシャーへ対価を支払う包括的な枠組みが汎用生成AI各社から提供されています。 [](https://www.ap.org/media-center/press-releases/2023/ap-open-ai-agree-to-share-select-news-content-and-technology-in-new-collaboration/?utm_source=chatgpt.com)一方で、これらはあくまで一定規模のIP資産や交渉力を持つパブリッシャーに限られる個別の取組みであり、すべてのメディアやコンテンツホルダーが恩恵を受けられるわけではありません。同時にAI企業もすべてのコンテンツプロバイダーと個別に交渉/獲得していくことは現実的ではありません。 詳しくは👉️ [Ximera Media Next Trends #77: AI経由トラフィック獲得のアプローチ](/posts/44eed42c03) 本稿は、「守り=デジタル権利侵害対策」と「攻め=AI時代のライセンス収益化」を両軸のIP運用としてとらえるための事例や考察を提示します。 # 【守り】AIによる偽造・海賊版・なりすまし検出と収益回復支援:MarqVision ![](/images/posts/260cd69e8a/marq.jpeg) MarqVisionはAIでブランド既存/著作権侵害の検知・テイクダウン・収益回復を支援する / [MarqVision](https://www.marqvision.com/jp/brand-protection) [MarqVision](https://www.marqvision.com/)は、オンライン上のECサイト、SNS、動画配信サイト等に広がる偽造品・無断転載・なりすまし等のブランド毀損や著作権侵害をもたらしているコンテンツをAIで横断検知し、テイクダウンや収益回復まで一気通貫で支援するソリューションを提供しています。 MarqVisionはブランド毀損可視化の取組として、ブランド侵害の発生しやすい国・プラットフォーム・販売者を特定するための[ブランド侵害レポート](https://www.marqvision.com/jp/home#:~:text=%E5%81%BD%E7%89%A9%E3%81%8C%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B%E5%89%8D%E3%81%AB%E5%AF%BE%E7%AD%96%E3%82%92)を提供しています。これにより自社製品のどの領域にリスクが集中しているかが可視化されます。また、生成AIを用いた[Atomic Product Detections](https://www.marqvision.com/brand-protection#:~:text=Catch%20the%20Hardest)という技術では、画像認識と正規品データとの照合により模造品をSKUレベルで特定可能にしています。これにより、微細なデザイン違いの偽物も検知し、迅速な削除対応につなげています。MarqVisionの対策範囲はオンライン上だけでなく、必要に応じて[オフラインでの訴訟や摘発](https://www.marqvision.com/revenue-recovery)にも及び、中国やUSで、偽造品業者の工場や倉庫の摘発・訴訟などを成功させています。このようにオンライン・オフライン双方から流通網を断つことで、ブランド既存損失を最小化します。 MarqVisionは[デジタルコンテンツの海賊版対策](https://www.marqvision.com/content-protection)にも注力しています。ゲームや動画、音楽、電子書籍などの無断コピーや共有に対し、横断的に監視と削除を行います。AIが常時ネット上を巡回し、不正アップロードなど侵害リスクを検知すると、各サイト運営者への削除申請が行われます。複数プラットフォームにまたがる一括テイクダウン機能により、手作業では追いきれない大量の侵害コンテンツも効率的に排除可能となっています。また、MarqVisionはYouTubeのEnterprise Copyright Match Toolの[公式パートナー(認定されているのは世界で100社未満)として認定](https://www.marqvision.com/blog/brand-protection-saturation-rate-google-search-cleanliness-real-time-youtube-enforcement#:~:text=MarqVision%20is%20now%20an%20Official,than%20100%20IP%20vendors%20worldwide)されており、MarqVision顧客企業はYouTube上で発見した著作権侵害動画を検出後わずか数秒で削除できるほか、同じ動画の再アップロードを事前にブロックすることも可能です。さらに、侵害動画のアップロード元アカウント群を丸ごと対象にした一括削除や、グローバル対応の多言語検索にも対応しており、強力なデジタル著作権保護が実施されています。これらの機能により、映画の無断配信やゲームのストリーミング配信、漫画の違法アップロードといったケースにも迅速に対処し、顧客企業のデジタル収益とIP価値を守っています。 MarqVisionは、[ファッション・高級品から、ゲーム、製薬、エンタメ、自動車、家電まで、世界350超の顧客を抱えており、年間収益も4年ほどで2000万ドル(約30億円)](https://techcrunch.com/2025/09/15/harvard-law-to-ai-marqvision-lands-48m-to-combat-brand-abuse/)へと成長しています。 同社は、2025年9月にPeak XVなどが主導する[4,800万ドル(約72億円)のSeries Bラウンドの資金調達を公表](https://www.prnewswire.com/news-releases/marqvision-lands-48m-series-b-to-power-brand-control-and-revenue-growth-for-global-brands-302555518.html?utm_source=chatgpt.com)し、累計約9,000万ドル(約135億円)規模を調達しています。 # 【攻め】ライセンスと二次創作をプログラマブルIPに転化: Story ![](/images/posts/260cd69e8a/story.jpg) StoryはIPのライセンス処理をプログラマブルにする基盤を提供している / [Story](https://docs.story.foundation/introduction) コンテンツを第三者に利用させる場合、誰が何を、どの条件で、いつ使ったかという来歴と権利条件の追跡が不可欠になります。[Story](https://www.story.foundation/)は、作品登録・権利条件・二次創作のライセンス/ロイヤルティ設計をネットワーク標準として実装し、[「使われるほど還流する」権利処理を狙う基盤](https://www.story.foundation/blog/vision)を提供しようとしています。 IPのライセンスは「アーカイブ一括」「カテゴリ別」「作品別」など粒度の違いやコンテンツ毎の利用許諾条件の違いがあり、この権利処理の複雑さがライセンスを与える側・受ける側の双方でボトルネックとなっています。Storyはコンテンツ毎の利用条件と利用履歴をAIやソフトウェアが統一的な形式で利用できるようにすることで、権利処理・ライセンス遵守・利用料の分配の自動化を可能にしようとしています。 例えば、小説家が自作品を学習データとして提供し、その小説の文体を学習したAIモデルが生成した文章サービスが商用展開された場合、売上の所定割合が小説家に支払われる、といったケースが考えられます。Story上ではこの流れがシームレスに実現でき、クリエイターは自分の作品がAIに「学習」されても貢献が適切に明確化され、報酬を受け取れるようになります。AI開発者側も、ライセンスクリアなデータセットを容易に入手できることで法的リスクなく高品質なモデルを訓練できるメリットがあります。以上のように、StoryはAI時代に即した新たな知財ライセンスモデルを提供することで、クリエイターとAI業界の共存共栄を図っていこうとしています。 Storyでは、まずクリエイターは自分の作品をIP資産としてブロックチェーン上に登録します。その対象は、美術作品・音楽・動画・文章はもちろん、デジタルアイテムやデータセット、さらにはクリエイター自身のキャラクターやIDといったあらゆる創作物・知的財産です。ブロックチェーン上に、作品のタイトル・説明・作者情報・原本データ等の情報が記録されます。この台帳に記録された各IP資産には固有のID(トークン)が割り振られ、以後その作品のライセンス発行や利用履歴が追跡可能となります。 作品を登録する際には、ライセンス(利用許諾条件)をブロックチェーン上に設定・管理できます。クリエイターは自分のIP資産に対し、「商業利用可/不可」「改変(二次創作)可/不可」「クレジット表記の義務」など、細かな利用条件を[あらかじめ定義可能](https://portal.story.foundation/)です。これらの条件はスマートコントラクト(=ブロックチェーン上で自動的に契約を執行するプログラム)としてブロックチェーンに実装され、ソフトウェアやAIが処理可能な形でライセンス情報が表現されます。Storyはこれを「[プログラマブルなIPライセンス](https://learn.story.foundation/pil-101?utm_source=chatgpt.com)」と呼んでおり、ソフトウェアが自動で解釈・実行できるライセンス契約書と捉えることができます。 Story上のライセンスは法的拘束力も考慮されて設計されています。ブロックチェーン上で公開される利用条件は単なるコード上のルールではなく、[弁護士が監修した法的契約書(ライセンス文書)によって裏付けられています](https://docs.story.foundation/concepts/programmable-ip-license/overview)。つまり、スマートコントラクトで自動執行されるライセンス条件と、現実世界で通用する法律文書がリンクした形になっており、「コードと法律の橋渡し」がなされています。この仕組みによって、クリエイターと利用者は安心して取引でき、万一の紛争時にも証拠として活用可能です。 Storyには、二次創作を前提とした権利関係を処理する仕組みもあります。従来、ある作品が二次創作・リミックス・翻案などで広がった際、その収益を原作者に適切に配分することは困難でした。Story ではブロックチェーン上に[グラフ構造を採用し、原典となるIPと派生IPをリンク](https://oakresearch.io/en/reports/protocols/story-protocol-ip-comprehensive-presentation-blockchain-intellectual-property)させて関係性を明示しています。各IPノードが、自分から派生した作品ノードに矢印で結ばれる形でネットワーク全体の知財関係図が形成されます。例えばAという原作小説からBという漫画が派生し、さらにBを原作にしたCという映画が制作された場合、A→B→Cとつながるグラフが記録されるイメージです。 Storyは昨今の生成AIブームを見据え、AI開発・学習用途のデータライセンスに向けた取組も行っています。AIモデルを訓練するためには大量のテキスト・画像・音声データが必要ですが、その収集には著作権上の課題があります。現在、多くのAI企業はウェブ上からデータを無断収集して学習させていますが、クリエイターへの許諾や対価支払いが行われないケースが大半で、法的・倫理的に問題視されています。一方で、AI企業側から見てもあらゆるコンテンツに使用許諾を取ることは非現実的で、AI学習データのライセンスのマーケットプレイスが存在しないことがボトルネックとなっています。 これに対してクリエイターが提供するデータセットをIP資産として登録し、AI開発者がそれをライセンス購入してモデルを訓練できる仕組みをはじめています。具体的には、[Stability AI と協業](https://siliconangle.com/2025/01/08/story-stability-ai-collaborate-help-creators-make-money-work-ai-ecosystem/?utm_source=chatgpt.com)し、Stability AIで生成された各コンテンツがどう利用されたかを追跡できる仕組みを作り、すべてのIP所有者が正当に報酬を受け取れる取り組みをはじめています。さらにStoryは、[将来的には実世界のデータ(カメラ、マイク、LIDAR、レーダーなどのセンサーから生成される特定の時空間と紐づくデータ)を集め、それを二次利用/リミックスして利用](https://www.story.foundation/blog/story-chapter-2)したりAIが学習に利用できるような世界も想定しています。 同社は2024年8月にa16z cryptoをリードインベスターとする[8,000万ドル(約120億円)のSeries Bラウンドで資金を調達](https://techcrunch.com/2024/08/21/story-raises-83m-at-a-2-25b-valuation-to-build-a-blockchain-for-the-business-of-content-ip-in-the-age-of-ai/)し、評価額22.5億ドル(約3375億円)規模に達しています。 # おわりに 「守り」面では、MarqVisionのようなサービスが登場したことで、ブランド毀損の対策は「検出→除去→再発防止→収益回復」の運用フローで自動化・効率化を行うことが可能になりました。また、ブランド毀損対策は現在では法務部門だけではなく、ビジネス部門のKPIにも大きなインパクトのあるファクターとなっています。生成AIにより今後も爆発的に偽造品・著作権侵害が増えることを見据え、迅速・反復可能なテイクダウン体制を自社の業務フローへ常設する発想が必要になってきます。 「攻め」の面では、AIにコンテンツが学習されることを前提としたIP戦略も重要になります。StoryのようにクリエイターとAI開発者が直接契約を結び協働できる土壌が生まれつつあります。データ提供者、モデル開発者、そして最終的なAIサービス提供者やユーザーが一つのネットワーク上でつながり、それぞれの役割に応じた報酬配分と権利保護が自動で行われるエコシステムに自社のIPを提供していくことで、ライセンス収益が期待されます。 --- ## ソーシャルは新たな検索に:ソーシャルメディアでの学習コンテンツの台頭 URL: https://ximera.com/posts/676b92144c 公開日: 2025-12-01 著者: Henley Worthen By Henley Worthen([原文](https://tubularlabs.com/blog/social-is-the-new-search-why-learning-content-wins-on-social-media/))|2025.04.01 ![](/images/posts/676b92144c/Screenshot-2025-03-26-at-4.28.25_PM.png) 無限につづく「How to(ハウツー)」を検索したり、何かを調べるためにウェブページをスクロールしたりする時代は終わりました。人々は動画を楽しむためだけでなく、調べものをするにもYouTubeやFacebook、Instagramなどのソーシャルメディアを利用するようになっています。ソーシャルメディアが従来の検索エンジンに取って代わりつつあり、それを先導しているのが学習コンテンツです。 ## ソーシャルメディアにおける学習コンテンツの台頭 2024年はソーシャルメディア全体で、ハウツー・DIYガイド・製品レビューの動画のパフォーマンスが、プラットフォーム全体のコンテンツパフォーマンスを常に上回る結果となりました。たとえば、YouTubeの学習コンテンツは、2024年にはプラットフォーム全体のコンテンツよりも動画1本あたりの再生回数が15.2%多く、Instagramの学習コンテンツのエンゲージメント率は前年比で47%増加しました。 ### 変化の要因 - 利便性:手短かに中身を提示してくれる動画はすぐに答えをくれる - アルゴリズムによるメリット:ソーシャル動画では、動画に学習関連の言葉が含まれていると、ブランドやクリエイターが検索結果に表示されやすくなる - 個人的な体験:クリエイターが共有する実体験は、信頼を築き、また別の答えを提供してくれる ブランドやメディア企業が学習コンテンツを活用して視聴者の質問に答え、エンゲージメントを深めている方法について、より詳細なデータや事例研究をご覧になりたい方はTubularの新しいレポート「[ソーシャルが新たな検索に:パート1](https://tubularlabs.com/research-guides/social-search-p1/)」の完全版をお読みください。 ## フード&ドリンク:成功のレシピ 2024年第4四半期には、Facebook上でフード&ドリンクカテゴリー内の学習コンテンツが盛り上がり、一般的なフードコンテンツと比較して、動画1本あたりの再生回数が11.5%増加しました。 トレンド:TikTokのクリエイターである[ローガンによるキュウリのレシピ](https://www.tiktok.com/@logagm/video/7402995511164194054)のような、バイラルフードハックの人気が急上昇しました。ローガンのキャッチフレーズ「時にはキュウリを丸ごと食べなきゃ(Sometimes you just need to eat an entire cucumber)」は広くトレンドとなり、一貫性がバイラル性を促進することを証明しました。 ブランドの機会:コスメブランドのセフォラもこのバイラル的なフードトレンドに飛び乗り、ローガンとコラボレーションして、彼が新しいキュウリのサラダレシピを紹介するのとあわせて、キュウリを配合したスキンケア製品をアピールしました。 ## サイエンス・テクノロジー:外出先での学習 テクノロジーに精通したユーザーは、AI、動画編集、スマートフォンのTipsに関する知識を深めるために、ソーシャルプラットフォーム上の学習コンテンツに群がりました。 トレンド:動画編集のチュートリアルがサイエンス&テクノロジーカテゴリーのショートフォーム動画プラットフォームを席巻する一方、Instagram上のAIコンテンツへの関心は急上昇し、2024年には月間1600万を超えるエンゲージメントを記録しました。プラットフォームごとに、適する学習トピックは異なります。これは[Tubularのカテゴリー&トピックフィルター](https://tubularlabs.com/blog/tubulars-1500-categories-and-1m-topics-make-social-video-make-sense/)を使用してチェックできます。 ![](/images/posts/676b92144c/image.png) ブランドの機会:サムスンのYouTube Shortsシリーズ「Epic Tips」は、2024年に約7000万回再生されました。これらの動画は、サムスンのユーザーに携帯電話のより良い使い方を教えると同時に、潜在的な顧客にクールな機能を紹介するマーケティングも兼ねています。 ![](/images/posts/676b92144c/image-1.png) ## メディアクリエイターとブランドが学ぶべきこと - ニッチに囚われない発想を:セフォラがフード&ドリンクのクリエイターとコラボレーションするような、異業種間のパートナーシップは、より幅広い視聴者の興味を引くことができ、大きなエンゲージメントを促進する戦略になる - よくある質問(FAQ)を活用する:顧客からよくある質問を、サムスンの「Epic Tips」のような魅力的なショートフォームの動画シリーズに変えてみる より実践的な洞察と学びを得るには、[こちらからレポートをダウンロード](https://tubularlabs.com/research-guides/social-search-p1/)してください。 ソーシャル検索は今後も定着していくでしょう。ブランドであれ、クリエイターであれ、今こそ学習コンテンツに投資すべき時です。 次の記事 - [2025年、ソーシャル動画はメディア企業に大きなチャンスをもたらす](/posts/595e96f604) - [ダークソーシャルとは何か。新しい流入元を理解する](/posts/c2fd1a279d) - [『ゼルダの伝説 TotK』はいかにしてソーシャル動画のお手本を完成させたか](/posts/9c336bdba3) --- ![](/images/posts/676b92144c/tubular_logo.png) [https://ximera.com/tubular](https://ximera.com/tubular)/ Tubularはソーシャル動画の横断分析ツールです 新しい視聴者をみつけるために複数のチャネルでの動画展開が求められている現在のソーシャル動画の世界で、Tubularは主要なプラットフォームの動画とクリエイターの実データを整理・分類することでプラットフォームをまたいだ横断分析を可能にしています。 Tubularがもつソーシャル動画に関する10年以上の専門知識を活かして作られたデータベースで、視聴者により深い共感を与えられたり、新しい視聴者があなたのチャンネルをみつけられる機会をみつけ、あなたのクリエイティブを広く届けましょう。 あなたの扱うジャンルやトピックでスポンサードコンテンツを展開している、相性のいいスポンサーブランドを発見することもできます。同じように、ブランドも相性のいいクリエイターを探しています。 --- ## Arc XP: メディアを持続可能なものにする 新聞社が生んだCMSからのアプローチ URL: https://ximera.com/posts/4c27b2e21f 公開日: 2025-11-01 著者: Ximera 日本においてのパートナー契約を発表した「Arc XP」からゲストを迎えたウェビナーです ![](/images/posts/4c27b2e21f/billboard.jpg) 株式会社キメラはArc XPからゲストを迎えて、メディアビジネスを持続可能なものにするCMS「Arc XP」を紹介するオンラインウェビナーを12月3日(水)に開催します。 米国の伝統あるニュース紙『ワシントン・ポスト』から生まれた先進的なCMSである「Arc XP」がどのようなアプローチで現代のデジタルメディアに必要なものをパブリッシャーに提供し、メディアビジネスを持続可能なものにしようと考えているのかご紹介します。 登壇は株式会社キメラ代表の大東に加えて、Q&AのコーナーにはArc XPからAPACのSales of Director、ジャレット・アッシュ氏が参加します。このウェビナーがArc XPやCMSに関する編集組織の疑問をArc XPに直接聞いていただける機会となります。 メディアビジネスを営むパブリッシャーのみなさま、デジタルメディアを運営する各企業のみなさま、ぜひこのウェビナーを先進的なCMSについて知る機会にしていただきたく、参加申込フォームから登録のうえ、ご参加のほどお待ちしております。 [ウェビナーに参加申込する](https://us06web.zoom.us/webinar/register/6317629232253/WN_Ekrh4_HMRkmQyoPrtzWY0g) ウェビナー「メディアを持続可能なものにする、新聞社が生んだCMSからのアプローチ」 日時  : 2025年12月3日(水)17:00〜 形式  : オンライン Zoom Webinar 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ 参加方法 Zoomの[参加申込フォーム](https://us06web.zoom.us/webinar/register/6317629232253/WN_Ekrh4_HMRkmQyoPrtzWY0g)からお申し込みください --- ## AI ヘッドラインテストが明らかにする読者エンゲージメントの実態 URL: https://ximera.com/posts/29d3974649 公開日: 2025-10-30 著者: Everleigh Malley by Everleigh Malley([原文](https://chartbeat.com/resources/general/what-ai-headline-testing-reveals-about-audience-engagement/))2025.10.30 「AI」は瞬く間にニュースルームでよく聞く言葉になり、生成AIツールがチームのコンテンツ制作・テスト・最適化の方法に影響を与え、読者エンゲージメントの最大化を図っています。ChartbeatでもAIにアシストされた記事タイトルの増加が確認できています。その利用拡大に伴い、AIに生成されたタイトルがコンテンツのパフォーマンスと読者エンゲージメントに与える影響を理解することが重要になってきています。 ニュースルームにおけるAIの影響を把握するため、2025年1月から6月にかけてChartbeatで実施された「AI支援ありの記事タイトルのテスト」と「AIを使わない記事タイトルのテスト」を分析し、エンゲージメント、クリック率(CTR)、その他の指標への影響を検証しました。 その結果から明らかになったのは、ニュースルームの行動様式が急速に変化している実態、そしてデータ駆動型の知見とAIの実験を組み合わせることで、読者のエンゲージメント形成と向上にどう貢献できるかという点です。 # ヘッドラインテストとは --- データ分析に入る前に、ヘッドライン・テストの基本を確認します。ヘッドラインは記事の大見出し、記事のタイトルのこと。記事タイトルは読者が記事をクリックするかどうかを決める重要な要素です。複数のタイトルをテストし、その結果を比較することで、エンゲージメントに影響を与える微妙な差異を明らかにすることができます(ABテストとも呼ばれます)。 ![](/images/posts/29d3974649/image.png) Chartbeatの機能「ヘッドライン・テスティング(Headline Testing)」は、記事タイトルのバリエーションをリアルタイムに比較する機能です。どのタイトルが読者にもっとも響くのか確かめるのに役立ちます。 2024年にはヘッドライン・テスティングに「[AI-generated headline Suggestion(AIによる記事タイトルの提案)](/posts/f2c7063d37)」が導入されました。これは生成AI技術を用いて、より高いクリック率と強力なオーディエンスエンゲージメントを促進するように最適化された記事タイトルを提案する機能です。 分析の背景として、AIが作ったタイトルとそうでないタイトル(つまり人間が作ったオリジナル)の効果を比較し、各テスト手法の改善度合いに実質的な差異があるかを検証します。 効果的なヘッドラインテストの方法に興味はありますか? データを基にした実験でタイトルを最適化し、読者を惹きつける方法について見ていきましょう。 # AIによる記事タイトルがCTRに与える影響 --- 今でもなお、AIを使わない記事タイトルのテストがAIを使ったそれの10倍の数を占めています。しかしAIが支援したタイトルの数は2倍以上に増えています。この増加は、生成AIへの関心の高まりとニュース組織がこの技術を業務に活用したいという意向によるものと考えられます。 *重要な注意点:AIが作った記事タイトルには自動でフラグが付くわけではなく、あくまでユーザーによるフラグ付けのため、これらの数値の正確性には限界がある可能性があります。* 採用が急速に拡大するなか、パブリッシャーはヘッドラインテストでAIによるタイトルが完全勝つという状況ではなくとも、その存在が有益な影響を与える証拠があることを学びつつあります。 ## AIタイトル vs. オリジナルタイトル AIテストの分析では、AIが生成したタイトルが27%の確率で勝利し、非AIのオリジナルタイトルが26%の確率で勝利しました。差自体はそれほど大きくないかもしれませんが、AIの存在がコンテンツのパフォーマンスを正しい方向へ導いているという意味のあるシグナルです。 ただし、AI生成タイトルのこのわずかな勝利だけでは全体像は描けません。AI支援ありのタイトルが測定可能な向上をもたらしていると言えるかどうか、ほかのエンゲージメント指標も掘り下げてみましょう。 ## AI支援ありのタイトルによるCTRの上昇 ![](/images/posts/29d3974649/image-1.png) テストに勝ったタイトルに焦点を当てると、AIの優位性はより顕著になります: - AI支援ありのタイトル:CTRが55%上昇 - (AI支援なしテストの)非AIタイトル:CTRが50%上昇 これらの結果にはAIに優位性があり、勝者となったAI生成タイトルがコンスタントに高いCTRを出すことを示唆しています。 ## すべてのヘッドラインテスト ![](/images/posts/29d3974649/image-2.png) AIによるバリエーションを含まないテストも含めた、すべてのヘッドラインテストを検証すると: - AI支援ありのテスト:CTR 32% 上昇 - 非AIタイトル:CTR 6% 上昇 ポイントは、AIを使ったテストの実施自体が記事タイトルの改善に有益である点です。特定のAI案が勝たなくても、チームが新たなタイトルのバリエーションを探求したり直感を磨いたりするきっかけとなる可能性があるからです。 見出しテストについて詳しく知りたいですか?[Deseret NewsがChartbeatでCTRを45%向上させた事例研究](https://chartbeat.com/resources/case-study/deseret-news-how-headline-testing-energized-the-newsroom/)をご覧ください。 # AIがエンゲージメント向上に与える影響 --- CTRの知見に加え、ヘッドライン実験の分析ではAIにアシストされた際のエンゲージメントの大幅向上も明らかになりました。 ## 勝ったタイトルのみ ![](/images/posts/29d3974649/image-3.png) - AI支援ありのタイトルが勝ったテストでは、平均8%のエンゲージメント向上 - 非AIタイトルが勝ったAI支援なしのテストでは、平均3%のエンゲージメント向上が見られた ## 完了したすべてのテスト 勝ち負けに関わらずすべてのバリエーションを含む、完了済みのヘッドラインテストで、AIはプロセス全体で効果を発揮することが確認されました。 ![](/images/posts/29d3974649/image-4.png) - 完了したすべてのAI支援ありのヘッドラインテストの平均エンゲージメント向上率は4%(元のタイトルバリエーションが最終的に勝った場合も含む) - AI支援なしのヘッドラインテスト:AIによるタイトルを使用しないテストでは、平均エンゲージメント向上率は1% ## Engaged Clicksの向上 タイトルが有意義なオーディエンスインタラクションを促進する度合いを示すより深い指標である「Engaged Clicks(エンゲージドクリック)」を見ると、AI支援ありのタイトルが再び優位を示しました。 ![](/images/posts/29d3974649/image-5.png) - 勝ったタイトルのみの平均エンゲージメント向上率: - AI支援ありのテスト(AI支援ありのタイトルが勝った場合):68% - AI支援なしのタイトル(AI支援なしテスト):54% ![](/images/posts/29d3974649/image-6.png) - すべての完了済みテストにおける平均エンゲージメント上昇率: - AI支援ありのテスト:38% - AI支援なしのタイトル:7% # AI支援ありのタイトルに関する知見 --- これらのデータは、ワークフローにAI導入を検討するパブリッシャーにとって何を意味するのでしょうか。大まかに言えば、タイトル生成におけるAIの活用は単なる一時的な実験ではなく、オーディエンスのエンゲージメントにおいて測定可能な向上をもたらすことが示唆されています。AIに支援されたヘッドラインテストから得られた主な知見は以下の通りです: - オーディエンスエンゲージメントの強化:初期データによると、AI支援ありのタイトルはオーディエンスのエンゲージメント向上に寄与し、CTRは55%向上(AI支援なしのタイトルは50%向上)。さらに、AI支援ありのタイトルが勝者となったテストでは、平均エンゲージメントが8%向上したのに対し、AI支援なしのテストでは3%の向上に留まりました。 - 勝つこと以外の価値:AIによるタイトルが勝者とならなかった場合でも、その存在自体が有益な影響を与える証拠が確認されています。すべてのヘッドラインテストを分析すると、AIによるタイトルをテストしたAI支援ありのテスト(勝敗に関わらず)はCTRを32%向上させたのに対し、AIを使わず作られたタイトルは6%の向上に留まりました。 - 採用拡大:Chartbeatのユーザーはテストを継続中です。AI支援ありのタイトルの採用数は倍増しており、業界全体でこの技術への移行が進んでいることを示しています。 --- ## AIブラウザの台頭とユーザーの検索・ブラウジング行動の変化 URL: https://ximera.com/posts/41e9291ee4 公開日: 2025-10-29 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #78|Ikuo Morisugi| 2025.10.29 独自性のある高品質なコンテンツと構造化データ、AIプラットフォームとの積極的な連携、人間のユーザーに直接訴求できる自社チャンネルの価値 # はじめに: AIブラウザ登場の背景 ChatGPT、Gemini、Claude、Perplexityといった汎用AIについて、モバイルはAIの専用アプリの導入が進む一方で、多くのユーザーは既存サービスを利用するためにWebブラウザ(Chrome/Safariなど)も併用しています。また、デスクトップでは多くの人が、汎用AIも既存サービスもWebブラウザで利用しています。このように現状の汎用AIは、「端末内の1つのアプリもしくはブラウザ内の1つのタブ」でしかありません。さらに高度な機能をユーザーへ提供するためには、よりベースとなるレイヤーのサービスを押さえる必要があります。そのアプローチの1つとして、各社はブラウザという入口をAI化する「AIブラウザ」の提供をはじめています。 このAIブラウザ登場については、単に回答精度を競うAI検索とは異なり、下記のような5点の背景が考えられます。 ### 1. 文脈理解によるブラウザ体験の変革 従来、ブラウザの一つのタブとして、もしくは汎用AIのアプリを開いて、必要に応じて汎用AI回答のリンクから別ページへ遷移したり、別タブへキーワードを打ち込んで検索する、など目的に応じてページ・タブ間を行ったり来たりする手順が一般的でした。しかし、もしAIをブラウザ側に埋め込めば、「いま開いているページ」や「複数タブ全体」「直近の閲覧履歴」といった文脈をAIが直接参照し、要約・比較・追加質問まで画面を離れずに行えます。 ### 2. 閲覧から実行までを一本化 要約やユーザー質問への回答だけなく、予約・購入・申込みなどの実行系タスクは、最終的にユーザーによるブラウザの操作や認証フローを伴います。エージェントがブラウザそのものに組み込まれていれば、サイト間の遷移や入力を自動的に実行することができます。このようにサイトをまたぐアクションを支援することは、ユーザーフローを握ることにつながり、汎用AI各社にとって競争優位性につながります。 ### 3. 将来のマネタイズ機会の獲得 ブラウザはユーザー接点の入口であり、デフォルトの検索エンジンやブラウザ内で利用されるAIモデルはブラウザ提供企業側でコントロールされるため、もし一定のシェアを持てれば巨大なビジネス価値が生じます。過去の事例では、GoogleはSafariのデフォルト検索エンジンとなるために[年間180億ドル(約2.7兆円)規模の対価をAppleに支払ってきた](https://www.theverge.com/2023/10/26/23933206/google-apple-search-deal-safari-18-billion?utm_source=chatgpt.com)と報じられており、2024年の反トラスト訴訟でもその契約金額の巨額さが注目を集めました。汎用AI各社が独自のブラウザを持つことは、自社AIを標準導線に据えるための合理的な戦略であり、それが成功すれば大きな経済的メリットがもたらされます。 ### 4. 外部サイト遷移減少へのフォローアップ AI検索(特にGoogleのAIモード)によって[検索結果から外部サイトへのトラフィックが減少](https://searchengineland.com/google-ai-overviews-hurting-clicks-study-459434?utm_source=chatgpt.com)している報道もあり、ユーザーは「AIの答えを見るだけで終わる」傾向を強めています。汎用AI各社はユーザーを自社のブラウザ面にユーザーをとどめ、検索から行動までを自社アプリ内で完結させるほど、滞在時間・収益機会・データ取得の面で優位になるため、さらにその動きを強めています。 ### 5. 継続的な文脈の獲得 AIブラウザは閲覧中の内容や直近の活動を踏まえて回答できるように設計されており、「昨日見たXXっぽいことが書いてあったページ」といった曖昧な依頼にも応答できる方向へ進化しています。この継続的な文脈(continuous context)は、独立したチャットAIよりブラウザに常駐するAIのほうが取得しやすく、再訪・回遊・比較といった行動をAIが先回りで支援できます。 このように、汎用AI各社は良い答えを返すだけでは不十分だという前提に立ち、よりユーザー行動のコンテキストを継続的に補足し、自動実行できるアクションを多彩にし、自社AIへの囲い込みを目的としてAIブラウザの提供を行っています。 # 代表的なAIブラウザ ## 1. ChatGPT Atlas
OpenAIの[ChatGPT Atlas](https://chatgpt.com/ja-JP/atlas/)は、ChatGPTをブラウザに直接統合したスタンドアロンのAIブラウザ(2025年10月現在Mac版のみ提供)です。フルページのチャット表示、通常のWebブラウジング、ページ横に並走するサイドチャットの3つのモードで動作し、閲覧中ページや複数タブ、直近の履歴といった文脈を踏まえて要約・比較・追加質問への回答を行います。ユーザーは別タブに切り替えることなく、その場で「このページの要点を3行で」「この仕様と他社サイトの仕様を並べて比較して」など依頼でき、結果は引用元とともに提示されます。 Atlasはブラウザ操作そのものと深く結びついています。タブの開閉・並べ替え・ピン留め、特定URLへの移動、ブックマークの追加といった基本操作はもちろん、サイト内でのフォーム入力、クリック、スクロールなど実行系も行えます。必要に応じてAtlasはエージェントモードでのブラウザ操作が実行可能で、ユーザーが許可すれば複数ページにまたがる一連の手続きを自律的に進めます(例:見積り比較→申込みフォームの下書き→確認)。重要な操作(ログインや決済や注文フォームなど)は都度許可を求める設計で、途中で人が引き継ぐこともできます。 ユースケースは、(1)リサーチの高速化:ニュースや論文、資料を横断して要約生成、(2)ショッピングや予約の下調べ:複数サイトの条件を抽出し表に整形、(3)情報入力の支援:フォームや応募・問い合わせ作成の下書き、(4)情報整理:大量タブのクリーンアップやブックマーク整頓、など様々です。従来のAIチャット+別ブラウザよりも、Atlasはページ上の文脈をそのまま読み、必要なら手を動かすという点で体験が連続しやすいのが強みです。 ## 2. Perplexity Comet
AI検索スタートアップPerplexity AIの[Comet](https://www.perplexity.ai/comet)は、ブラウザ自体にAIアシスタントを組み込んだパーソナルAIブラウザです。当初は月額200ドル(約3万円)の有料プラン限定でしたが、2025年10月に[誰でも無料で利用可能](https://techcrunch.com/2025/10/02/perplexitys-comet-ai-browser-now-free-max-users-get-new-background-assistant/#:~:text=AI%20search%20startup%20Perplexity%20is,handle%20multiple%20tasks%20via%20Comet)となりました。Cometも、画面横のサイドチャットで動作するAIが常にユーザーのブラウジングを支援します。ユーザーがウェブページを閲覧している際に、ページ内容について質問すれば即座に答えたり、記事を要約したり、ページ内の操作を肩代わりしたり、など様々な支援を行ってくれます。最上位のMaxプランでは、メール内容を分析して返信の下書きを提案したりスケジュール調整を行う[Email Assistant](https://www.perplexity.ai/hub/blog/a-personal-assistant-for-your-inbox)や、ユーザーの指示に応じて裏で複数の処理を同時進行してくれる[Background Assistant機能](https://techcrunch.com/2025/10/02/perplexitys-comet-ai-browser-now-free-max-users-get-new-background-assistant/#:~:text=A%20company%20spokesperson%20described%C2%A0the%20assistant%20as%20%E2%80%9Ca%20team%20of%20assistants%20working%20for%20you%E2%80%9D%C2%A0that%20you%20can%20manage%C2%A0and%20track%C2%A0from%20a%20central%20dashboard%20like%20a%20%E2%80%9Cmission%20control.%E2%80%9D%C2%A0)が使えます。Background AssistantはいわばAI秘書チームであり、専用のダッシュボードから進捗を監視・管理できます。例えば「会議用のメールを送信し、コンサートの最安チケットをカートに入れ、希望日時に合う直行便の航空券を探しておいて」と一括指示すれば、各作業を裏で実行し完了時に通知してくれるなど、ユーザーが席を外している間にも複数タスクを自動処理できる点が大きな強みです。 ## 3. Arcの後継AIブラウザ Dia
ブラウザスタートアップThe Browser Companyが2025年に発表した[Dia](https://www.diabrowser.com/)は、同社から先行して提供されていたブラウザ[Arc](https://arc.net/)の後継となるAIファースト設計のブラウザです。6月の招待制β版を経て、[10月にMac向けに一般公開](https://www.timesofai.com/news/dia-browser-launched-for-mac-users/#:~:text=,resume%20analysis%20streamline%20common%20tasks)されました。Diaも他のAIブラウザと同様に、アドレスバー/検索バーからAIチャット起動、画面内のテキストや画像を選択 => 右クリックしてそのままAIへ質問、といったようにAI起動できるアクションができます。UIも同様にサイドバーでAIと継続的に対話が可能です。それに加え、[Skills](https://www.diabrowser.com/skills)と呼ばれるショートカット機能があり、プリセットもしくはユーザーが作成したAIマクロを使って定型タスクを素早く処理できます。例えば、指定テキストから引用文献を生成する[/cite](https://www.diabrowser.com/skills/cite)、ページ記載内容のファクトチェックを行う[/fact-check](https://www.diabrowser.com/skills/fact-check)、閲覧中の商品と似た代替品を提案する[/budget-buddy](https://www.diabrowser.com/skills/budget-buddy)、求人票と履歴書を突き合わせ適合度を評価する[/job-fit](https://www.diabrowser.com/skills/job-fit)、論文やエッセイのアウトラインを要件に沿って生成する[/outline](https://www.diabrowser.com/skills/outline)といった具合で、学業からショッピングまで様々な場面を想定したAIスキルが取り揃えられています。また[学生がよく利用するSkillsをまとめたパッケージ](https://www.diabrowser.com/skills/packs/back-to-school)など、利用者の生産性を高める工夫が盛り込まれています。Diaは基本無料で利用でき、[Proプラン(20ドル(約3000円)/月)](https://www.diabrowser.com/pro)ではチャット利用制限の緩和などの特典があります。開発元のBrowser Companyは[2025年9月にアトラシアン社に6億1000万ドル(約915億円)で買収される](https://www.atlassian.com/ja/blog/atlassian-acquires-the-browser-company)など汎用AI企業以外のAIブラウザとしては特に注目を集めています。 ## 4. Gemini in Chrome
ブラウザシェアトップのGoogle Chromeも、Geminiとの統合によってAIブラウザ化を推進しています。2025年9月、GoogleはChromeに多数のAI機能アップデートを発表し、ブラウザ埋め込み型のAIアシスタント[Gemini in Chrome](https://blog.google/products/chrome/chrome-reimagined-with-ai/)を一般ユーザー(2025年9月時点でUSのMac/Windows限定で先行提供)に開放しました。Gemini in ChromeはAtlasやCometと同様にユーザーの指示に応じて質問に答えたり情報を収集したりする会話型AIであり、複数の開いているタブ全体を横断して情報を探し出すことができます。Googleは将来的に、このAIモード経由で[ネット注文や予約など複数手続きが必要なタスクを自動化するエージェント機能も提供予定](https://blog.google/products/chrome/chrome-reimagined-with-ai/#:~:text=We%E2%80%99re%20also%20developing%20more%20advanced%20agentic%20capabilities)で、アクションの代行も視野に入れています。Chrome/Googleは圧倒的なユーザーベースと自社サービス連携(Android、Google検索、Gmail、YouTube、マップ等との統合)を強みにAIブラウザ機能を展開できるため、大きなポテンシャルを持っています。 # ユーザーの検索・ブラウジング行動の変化 AIブラウザの台頭により、ユーザーの情報収集行動はこれまでとは異なる様相を見せつつあります。最大の変化は、検索や閲覧の受動化です。従来ユーザーは自らキーワードを検索し複数のサイトを開いて情報を取捨選択していましたが、AIブラウザでAIエージェントに質問すれば、必要な情報は要約された形で即座に返ってきます。その結果、人間が自分で何ページも巡回したり比較検討したりする場面が減少します。AIブラウザでは必要な情報を一画面で得られるため、従来のように知りたいことごとに新しいタブを開いて比較し…という動作が簡略化されます。従来は調査のため大量のタブを開いていたユーザーでも、AIアシスタントに「要点をまとめて」と依頼すれば一つの画面内でクロスサイトの要約比較が済んでしまうため、結果的に開くタブ数が減ったり、セッションがAIチャットウィンドウ内で完結したりするケースが増えると考えられます。 極端な見方をすれば、Webは「人間が閲覧する場」から「AIがデータを収集する場」へ移行しつつあります。実際、ChatGPT AtlasやCometはユーザーの代わりにページ内を自動でスクロールしたりリンクをクリックしたりしますが、その際表示される広告やサイドバーコンテンツは素通りされることが多く、人間の目には触れません。ユーザーもエージェントの動作をいちいち見守ってはおらず、処理が正確に行われるようになればなるほどAIが裏で勝手にウェブを回遊し、人間は結果だけ受け取るという形が一般化すると考えられます。このようにAIブラウザの普及はユーザーの行動を「検索して閲覧」から「質問して受け取る」「検索後のアクションすらも自動化」といった受動的なスタイルへ変え、コンテンツ消費の在り方を大きく変容させつつあります。 # おわりに AIブラウザは、まだこれから普及するかどうかという段階ですが、メディアやコマースにとってはトラフィック獲得やコンバージョン確保の戦略を抜本的に見直す必要が出てきています。すでに検索エンジン経由の流入機会が減っていると言われているなか、AIブラウザの普及はさらに拍車をかけるものになる可能性があります。AIサマリー表示によるトラフィック減は一時的なトレンドではなく構造的なシフトだと考えられます。AIブラウザやAIエージェントは広告バナーを一切見ずに目的の情報だけ抽出してしまうため、将来的に広告主が予算を投下しなくなる懸念もあります。AIブラウザ時代の競争軸は単純なページビューではなく、AIに情報ソースとして選ばれるかどうか、人間がサイト訪問してくれているのか、へと移りつつあります。 こうした中でメディア企業が取り得る戦略は、[本連載#76](/posts/44eed42c03)でも紹介した汎用AI企業とのパートナーシップとGEO(AI検索エンジンでの引用最適化)です。 👉️   参考: [Ximera Media Next Trends #76  AI経由トラフィック獲得のアプローチ](/posts/44eed42c03) コンテンツ提供側は、自社記事が引用枠に載るよう内容の正確性・専門性を高めるとともに、分かりやすい記述でAIに引用されやすくする工夫が求められます。特にブランド名や専門用語がそのまま表示されれば認知向上につながる可能性もあります。 AIブラウザにおいてもメディアはAIに見つけてもらい、選んでもらい、取引してもらう、ための施策が欠かせません。具体的には独自性を持ち、高品質なコンテンツと構造化データでAIへの情報提供を最適化し、AIプラットフォームと積極的に連携し自社データを組み込み、人間のユーザーに直接訴求できる自社チャンネルの価値を高めることが重要です。検索経由のトラフィックや従来型のコンバージョンに固執するだけでは先細りが避けられないため、AI時代の変化を前提としたマーケティング戦略へのシフトが求められています。 --- ## Q3 2025:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/8347220612 公開日: 2025-10-28 著者: Everleigh Malley by Everleigh Malley([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/third-quarter-global-audience-insights-2025/))2025.10.28 2025年第3四半期(7-9月)のオーディエンス動向をお知らせします。 - 平均エンゲージメント時間は複数の地域で低下 - モバイルのページビューは大半の地域で安定 - ロイヤル読者によるページビューは北欧でもっとも高い水準を維持 以下では、詳しいデータとそこから読める読者インサイトをご紹介します。 *過去のインサイトは [Q2 2025](/posts/de373c0f70) / [Q1 2025](/posts/fea1397f9e) / [Q4 2024](/posts/1e14a10498) / [Q3 2024](/posts/8da672ccfe) でご覧いただけます。* ## 平均エンゲージメント時間がもっとも長いのは中東欧 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/10/Chartbeat-Q3-2025-Engaged-Time@2x-1024x742.png) 第3四半期において、中東欧の読者は平均エンゲージメント時間が34.7秒でもっとも高いエンゲージメントを示しました。これに中東(33.2秒)と北米(26.6秒)が続きます。しかし平均エンゲージメント時間は、中央アジアをのぞく全地域で減少しました。 ## アフリカと中央アジアでモバイルトラフィックが増加 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/10/Chartbeat-Q3-2025-Mobile@2x-1024x742.png) アフリカ、中央アジア、東南アジアのパブリッシャーは、引きつづきトラフィックの大部分をモバイルユーザーから得ており、これらの地域におけるページビューの81%以上がこのデバイスから発生しました。第3四半期には、全地域でページビューの少なくとも62%がモバイルデバイスから発生しています。 ## 複数の地域で検索トラフィックが増加 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/10/Chartbeat-Q3-2025-Search@2x-1-1024x742.png) 中央アジアでは第3四半期のページビューの53%が検索エンジン経由であり、第2四半期の46%から増加しました。複数の地域で検索トラフィックが増加した一方、アフリカ、東南アジア、ラテンアメリカでは減少、または横ばいとなりました。 ## 北米とアフリカでソーシャルトラフィックが減少 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/10/Chartbeat-Q3-2025-Social@2x-1-1024x742.png) 東南アジアでは第3四半期のページビューの21%がソーシャルプラットフォーム経由であり、第2四半期の17%から増加しました。北米のパブリッシャーでは17%から13%へ減少しました。アフリカではもっとも急激な減少が見られ、ソーシャルトラフィックは第2四半期から6%減少しました。 ## 読者ロイヤルティがもっとも高いのは北欧 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/10/Chartbeat-Q3-2025-Loyalty@2x-1-1024x742.png) 北欧では、ロイヤルティの高い読者によるページビューの割合が55%ともっとも高く、第2四半期から7%増加しました。北米と南欧がそれぞれ45%、44%で続いています。中東欧ではロイヤルティがもっとも大きく低下し、第2四半期比で9ポイント減少しました。 ## Q3のポイント 全世界の平均エンゲージメント時間は26秒 平均エンゲージメント時間は、中東欧の34.7秒からアフリカの22.4秒まで幅がありました。全体として、平均エンゲージメント時間は第2四半期の30秒から26秒に減少しました。 オーディエンスは依然としてモバイルファースト どの地域においても、サイト訪問の少なくとも62%がモバイル端末で行われており、3つの地域では81%以上を占めています。 大半の地域で検索トラフィックが増加 AIが検索に与える影響が増大しているにもかかわらず、第3四半期には大半の地域で検索エンジンからのページビューが増加しました。 --- ## カテゴリーを越えたパートナーシップを、データから見つける URL: https://ximera.com/posts/cross-category-partnerships 公開日: 2025-10-14 著者: Tubular Labs 概要: 視聴数やエンゲージメントだけでパートナーを選ぶと、意外な相性を取りこぼす。TubularのデータではUKの美容視聴者がモータースポーツを見る確率は平均の11.4倍。美容×F1、ゲーム×コスメの実例から、越境コラボの見つけ方を整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/how-to-identify-partnerships/))2025.10.14 「自社の目的に合うパートナーをどう見つけるか」という問いに対する答えは、結局のところオーディエンスのデータに行き着きます。視聴数やエンゲージメントといった表層の指標だけでパートナーを選ぶと、意外な相性を取りこぼすためです。 Tubular がカテゴリーを越えたパートナーシップについて分析したレポートから、要点をご紹介します。 ## 従来のターゲティングが取りこぼすもの 従来の考え方は、人がきれいなカテゴリーに収まることを前提にしています。美容好きはメイクにしか関心がなく、ゲーマーはゲーム機の話しか見ない、という前提です。しかし実際のオーディエンスは多面的です。 ソーシャル動画分析を使うと、次のことが見えます。 - 自社のオーディエンスが、ほかにどのカテゴリーの動画を見ているか - 一見無関係なテーマ同士のあいだに、どこで重なりが生じているか - コラボレーションがオーディエンスの拡張とエンゲージメントにどう影響したか ![](/images/posts/cross-category-partnerships/beauty-audience-overlap.png) たとえば、UK の YouTube で美容カテゴリーを見ている層が関心を持つほかのテーマを調べると、ファッションやジュエリーという順当な重なりに加えて、レーシングやモータースポーツという意外な重なりが現れます。 ## 美容 × モータースポーツ ![](/images/posts/cross-category-partnerships/charlotte-tilbury-f1.jpg) Tubular のデータでは、UK の女性美容視聴者がモータースポーツ動画を視聴する確率は、平均的な視聴者の11.4倍でした。 この重なりを事業判断に持ち込んだのが Charlotte Tilbury で、美容ブランドとして初めて F1 Academy とのパートナーシップを結びます。結果は次のとおりです。 - UGC 由来の TikTok 視聴 960万回 - 公式・ファン投稿を合わせたエンゲージメント 85万2,000件 - 美容と F1 のオーディエンス重複は前年比97%増 大胆な組み合わせがリーチを広げ、新しいセグメントを開く例です。 ## ゲーム × コスメ ![](/images/posts/cross-category-partnerships/riot-fenty.jpg) 女性ゲーマーは伸びているにもかかわらず、まだ十分に狙われていない層です。Tubular の分析では、この層と YSL、NYX、L'Oréal といった主要な美容ブランドとのあいだに強い親和性が見られました。 Riot Games はこの重なりを捉え、自社作品 Arcane の世界観をもとにした限定コスメで Fenty Beauty と組んでいます。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 この分析の要点は、個別の事例よりも手順にあります。自社オーディエンスが「ほかに何を見ているか」を先に測り、そこから逆算してパートナー候補を出す、という順序です。カテゴリーの常識から入ると、重なりの大きい相手ほど視野に入りません。 レポートの詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/how-to-identify-partnerships/)からご覧いただけます。 --- ## The State of Social 2024 H2: ゲームコンテンツの急伸 URL: https://ximera.com/posts/7e604aa972 公開日: 2025-10-01 著者: Henley Worthen By Henley Worthen([原文](https://tubularlabs.com/blog/the-state-of-social-h2-2024-gaming/))2024.10.04 ![](/images/posts/7e604aa972/IMG_2887.jpg) 2024年最後のクオーターに入り、ゲームカテゴリがソーシャルメディアプラットフォームで空前のブームになっていることは明らかです。なかでも顕著なのがYouTubeです。 Tubular Labsの最新レポート、[The State of Social: H2 2024](https://tubularlabs.com/research-guides/state-of-social-h2-2024/?cid=C02467)では、オリンピック、音楽、AIなどのトピックを取り上げました。ゲームカテゴリは歴史的な再生回数を記録しています。ゲームプレイ・コンテンツの月間再生回数は6月に驚異の6,000,000,000回(60億回)に達し、テレビゲーム文化の絶え間ない魅力と進化の証となっています。 このダイナミックな状況を形成しているトレンド、クリエイター、トピックを探ってみましょう。 # YouTube: ゲーマーにとっての究極のプレイハブ YouTubeはゲームコンテンツの配信先としての地位を確固たるものにしています。ゲーム内の映像や攻略法を紹介するゲームプレイ動画は、視聴者に没入感を与えます。最新作を深く掘り下げたものであれ、名作タイトルをカジュアルに散策するものであれ、これらの動画は数時間に及ぶことも珍しくなく、視聴者に学びとつながる機会を提供します。さらに、そのゲームプレイ動画はクリエイターに、ほかのカテゴリよりもはるかに多い数十億分の視聴時間を得る機会を提供します。 2022年後半、ゲームプレイ・コンテンツの月間視聴回数は約40億回でした。徐々に増加し、2023年には約50億回に達します。2024年6月に60億回に急増したという驚くべき数字は、エンターテイメントだけでなく、ゲーマーのコミュニティ感覚を提供する長編コンテンツへの意欲が高まっていることを浮き彫りにしています。 # クリエイターがゲームに勝利している ゲームインフルエンサーの状況は、かつてないほど活気に満ちています。2024年、YouTubeの視聴者数はアメリカのクリエイターがリードしていますが、彼らだけではありません。世界中のクリエイターが大きな影響力を持ち、ブランドに多様なスポンサーシップの機会を提供しています。 MinecraftやRobloxのようなファンに人気のゲームを専門とするクリエイターから、ゲームとユーモアやいたずらを混ぜたクリエイターまで、このダイナミックな視聴者と関わりたいブランドにとって、スポンサーシップを依頼するクリエイターの選択肢に事欠くことはありません。多種多様なクリエイターのなかから選ぶことができるため、ブランドはゲームコミュニティ内の特定のニッチにマーケティング戦略を合わせることができるのです。 ![](https://tubularlabs.com/wp-content/uploads/2024/10/Screen-Shot-2024-10-01-at-4.13.41-PM.png) # ビデオゲームのトップトピック TubularのAIを駆使した洞察によって、ゲームカテゴリでもっともパフォーマンスの高いトピックをみつけることができます。「Minecraft」、「Grand Theft Auto」、「Roblox」、「Fortnite」などのブランドは引きつづき視聴者の共感を呼び、「シミュレーション」、「ゲームプレイ」、「ウォークスルー」などは何百万人もの人々の関心を集めています。 魅力的なトレンドのひとつに、人気ゲームの美学を模倣したアニメーション物語を紹介する、「machine」と「cinema」を融合させた「マシニマ(machinima)」の台頭があります。その顕著な例が「Skibidi Toilet」シリーズで、アルファ世代を魅了し、ゲームというジャンルに新たな創造性を加えました。 ![](https://tubularlabs.com/wp-content/uploads/2024/10/Screen-Shot-2024-10-01-at-4.15.02-PM-762x1024.png) ゲームプレイコンテンツが進化を続けるなか、私たちは、より幅広い視聴者にアピールするキュレーション型エンターテインメントへのシフトを目の当たりにしています。視聴者は単なる受動的な消費者ではなく、つながりや共有体験によって繁栄する文化の積極的な参加者なのです。ゲーム、ストーリーテリング、コミュニティへの参加という境界線は曖昧になりつつあり、視聴者を飽きさせない革新的な形のコンテンツが生まれています。 結論として、ソーシャル・ビデオ・プラットフォームにおけるゲーム・カテゴリは、かつてないほど繁栄しています。視聴者数の急増、多様なクリエイター、新たなトレンドによって、ゲーマーにとってもブランドにとっても未来は明るいものとなっています。 この刺激的な状況をナビゲートするなかで、1つ明確なことがあります。ゲームはまだはじまったばかりだということです。 音楽、スポーツ、ニュースなどのカテゴリーにおける洞察については、[The State of Social: H2 2024 レポート](https://tubularlabs.com/research-guides/state-of-social-h2-2024/)をご覧ください。 次の記事 - [数字で見る、動画視聴率とページ・エンゲージメントの関係](/posts/a695400f8b) - [ダークソーシャルとは何か。新しい流入元を理解する](/posts/c2fd1a279d) - [『ゼルダの伝説 TotK』はいかにしてソーシャル動画のお手本を完成させたか](/posts/9c336bdba3) --- ![](/images/posts/7e604aa972/tubular_logo.png) [https://ximera.com/tubular](https://ximera.com/tubular)/ Tubularはソーシャル動画の横断分析ツールです 新しい視聴者をみつけるために複数のチャネルでの動画展開が求められている現在のソーシャル動画の世界で、Tubularは主要なプラットフォームの動画とクリエイターの実データを整理・分類することでプラットフォームをまたいだ横断分析を可能にしています。 Tubularがもつソーシャル動画に関する10年以上の専門知識を活かして作られたデータベースで、視聴者により深い共感を与えられたり、新しい視聴者があなたのチャンネルをみつけられる機会をみつけ、あなたのクリエイティブを広く届けましょう。 あなたの扱うジャンルやトピックでスポンサードコンテンツを展開している、相性のいいスポンサーブランドを発見することもできます。同じように、ブランドも相性のいいクリエイターを探しています。 [> Tubularのデモをリクエストする](https://tubularlabs.com/request-demo/) [> Tubularをもっと詳しく知る](https://ximera.com/tubular) --- [キメラのコンテンツ一覧ページへ](/posts) [株式会社キメラのコーポレートページへ](https://ximera.com/) --- ## 回遊は読者がメディアにロイヤルティを感じはじめるサイン:それをどう促すか URL: https://ximera.com/posts/96fca6b321 公開日: 2025-09-30 著者: Kremi Mestanova by Kremi Mestanova(Chartbeat:[原文](https://chartbeat.com/resources/research/the-traffic-source-driving-40-percent-of-your-pageviews/))2025.09.30 トラフィックの約40%はGoogleやFacebookからのものではなく、常にサイト内部からのトラフィック、内部回遊です。サイト内にいる読者が、同じサイトの別ページへのリンクをクリックした結果です。 ソーシャルメディアからの流入の派手な急増やオーガニック検索の成果ほど注目されませんが、実際のところ内部トラフィックはページビューの最大ソースです。 さらに重要なのは、これが読者がロイヤルティを高めていく行動をしていることを示す強力なサインであることです。 ここではChartbeatの最新調査による分析でこれらをみていきます。 - なぜ内部トラフィックがサイトPVの最大ソースか - このトラフィックがサイト内で最初にランディングする場所 - セッションとエンゲージメントを促すリファラーとデバイス - これらのソースからの訪問をロイヤルティに導くためにできること # 内部トラフィックは回遊のサイン 読者の行動がどのようなものか理解するため、まずウェブサイトのページビューのもっとも大きな要因となる流入経路を分析しました。 結果、内部トラフィックがもっとも大きなカテゴリで、ページビューの約40%を占めていました。 ![](/images/posts/96fca6b321/image.png) これは単に興味深いというだけではなく、読者がサイトに引きつづき滞在し、2ページ目を開き、積極的に探索している直接的な証拠です。つまり、これは内部回遊が実際に機能している証拠なのです。 しかし、内部トラフィックもどこからともなく現れるわけではありません。すべての内部ページビューは検索、ソーシャル、ダイレクトなどからサイトに訪問し、そこからはじまっています。 では内部トラフィックを生みだした、元の流入経路は実際どうなっているのでしょうか。その答えから、読者の意図について多くのことが明らかになり、回遊に繋げるための新たな手がかりがわかりました。 # 元をたどってみるとダイレクトトラフィックが倍増 内部トラフィックの元の流入経路を見てみると、ひとつが突出しました。ダイレクトトラフィックが総トラフィックの13%から25%に急増したのです。 ![](/images/posts/96fca6b321/image-1.png) これは重要な点です。なぜなら、ダイレクトの訪問者(URLを直接入力したりブックマークからアクセスするユーザー)は、サイトへの期待値がもっとも高いユーザー層だからです。彼らは自分が探しているものを明確に理解しています。過去にサイトを訪れた経験もあり、データが示すように再訪問する可能性がはるかに高いのです。 内部トラフィックを単一の訪問者プールとして扱うと、細かな違いを見逃してしまいます。しかし、この読者層の大部分が、直接的な期待を持って訪問するリピーターによって支えられていることを理解すれば、このようなロイヤルティの高い行動に合わせたページ最適化をはじめることができます。 # 流入元で異なる回遊傾向 わたしたちの調査では、ウェブサイトへのトラフィックが実際にどこからはじまるのかを深く分析しました。その結果、すべての流入元が同じように機能するわけではなく、すべてのセッションが同じように再訪問するわけではないことがわかりました。 流入元ごとのセッションあたりのページ数とエンゲージメント時間を分析したところ、内部セッションがもっとも深いエンゲージメントを示しました:セッションあたり平均3ページ、1ページあたりのエンゲージメント時間は1分を超えています。 ダイレクトトラフィックは1セッションあたり2.2ページで、エンゲージメント時間は45.2秒 – 外部リンクやソーシャルよりも長いです。 一方、ソーシャルトラフィックはもっとも低く、1セッションあたり1.4ページで、エンゲージメント時間は34.4秒です。 ![](/images/posts/96fca6b321/image-2.png) これは各読者層によって回遊に対するポテンシャルが違うことを示しています。ダイレクトの訪問者はよりロイヤルティの高い行動を示しますが、ソーシャルメディアからの訪問者に回遊を促すには早めのトリガーが必要です。 内部トラフィックをこのように理解すると、改善のためにどうすればいいか、考えやすくなります。 # デバイスとロイヤルティがリファラーごとのセッションに影響を与える 単一の経路からアクセスしたすべての訪問者が同じ行動を取るわけではありませんが、使用デバイスの種類、ロイヤルティ、サイトリファラーごとにセッションパフォーマンスを分析すると、明確な傾向が浮かび上がります:ロイヤルティが高く、画面サイズが大きいほど、セッションが長く深くなります。 主要な流入経路のうち、デスクトップのロイヤルティの高い訪問者は、ほかの経路に比べて、セッションあたりの平均ページビュー、平均エンゲージメント時間、平均セッション時間が一貫して高い傾向にあります。 たとえば、デスクトップから検索経由でウェブサイトにアクセスしたロイヤル訪問者は、平均エンゲージメント時間が107秒、平均ページビュー数が3.5です。 一方、モバイル訪問者はエンゲージメントが大幅に低くなります。同じロイヤル訪問者がモバイルデバイス経由で検索でアクセスした場合、エンゲージメント時間は60秒に過ぎず、ソーシャル経由でアクセスした場合は平均30秒未満です。 ![](/images/posts/96fca6b321/image-3.png) デスクトップとタブレット端末を利用するユーザーは、モバイルユーザーに比べてより深くエンゲージし、より多くのページを閲覧し、1セッションあたりの滞在時間が大幅に長くなっています。 ロイヤルティはエンゲージメントの強力な予測要因です。ロイヤル読者は、新規訪問者よりも多くのページを閲覧するだけでなく、1セッションあたり20秒長く積極的にエンゲージしています。ロイヤルティが向上するにつれ、インタラクションの深さと質も向上します。 # 再訪問戦略に与える影響 では、このデータに基づいてどのように行動すべきでしょうか。まずは、この質問からはじめてください: 1. 内部セッションはどのチャネルから来ているか 内部トラフィックをざっくりひとつの読者層として見るのではなく、小さなセグメントに分解しましょう。ロイヤルティの高い訪問者は主に検索から来ているでしょうか。彼らはサイトに滞在しているのか、それともすぐに離脱しているのでしょうか 1. 回遊しやすいサイト設計ができているか プッシュ通知、ニュースレター、インラインレコメンド(誘導枠)を、読者の求めるものに合わせて最適化すれば再訪問を高める効果があります 1. ユーザー体験はデバイスと行動に合っているか デスクトップユーザーはページを多く閲覧し、滞在時間が長いです。モバイルユーザーにはスキャンしやすいフォーマットと高速なページ読み込みが必要です # ロイヤルティにつながる道筋を構築する トラフィックのパターンを理解すれば、訪問者をロイヤル読者にする、より効果的な戦略を構築できます。 発見を深める。コンテンツを読者の期待に合わせましょう。とくに検索やソーシャルメディアからの訪問者に対しては、彼らのサイト訪問の早い段階で関連コンテンツをおすすめします 一瞬の注意を捉える。ニュースレターの案内やプッシュ通知などの、摩擦がなく、ロイヤルティにつながるツールを活用し、将来の訪問につながる接点をつくりましょう 読者が実際に何をしているかを分析する。スクロール深度、エンゲージメント時間、コンテンツの種類を分析し、異なる種類の訪問者の微妙な違いを理解しましょう 回遊経路を優先する。すべての経路からの訪問者をエンゲージし続けるためリンクを適切に置きましょう # 回遊はロイヤルティの第一歩 ロイヤル読者なら誰でも一度は、2ページ目を開きます。その回遊の瞬間がロイヤリティの芽生える起点です。 読者がどこからサイト体験をはじめたのか、何を求めているのか、セッションやプラットフォームをまたいでどのように行動するのかを理解すれば、読者の期待や意図に合ったよりスマートでパーソナライズされた回遊経路を作ることができ、エンゲージメントを深めることができます。 内部トラフィックは単なる最大のページビュー源ではありません。それは、発見を習慣化し、習慣を定着させるための最大の機会です。 ![](/images/posts/96fca6b321/Chartbeat-Report-Decoding-Internal-Traffic2x.webp) [https://lp.chartbeat.com/decoding-internal-traffic-chartbeat?cid=C02759](https://lp.chartbeat.com/decoding-internal-traffic-chartbeat?cid=C02759) 回遊とロイヤルティのデータの詳細を掘り下げ、自社のコンテンツ戦略にどう適用できるかを知りましょう。Chartbeatのレポートをダウンロード: *[内部トラフィックの解読:リサーキュレーションが発見、深さ、ロイヤルティについて教えてくれること](https://lp.chartbeat.com/decoding-internal-traffic-chartbeat?cid=C02759)* --- ## 動機を強めるライブコマースとテキストチャットによる購入最適化された顧客体験 URL: https://ximera.com/posts/5bb634c2b9 公開日: 2025-09-29 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Oleksii S](https://unsplash.com/ja/@wonderland8?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E9%83%A8%E5%B1%8B%E3%81%AE%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%88-23gXCebItDQ?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # 動機を強めるライブコマースとテキストチャットによる購入最適化された顧客体験 Ximera Media Next Trends #77|Ikuo Morisugi| 2025.09.29 お気に入りの商品発見後の離脱を抑え購入を促し、再訪を習慣化する # はじめに コロナ禍において、外出禁止による巣ごもり消費でeコマースの市場は大きく伸びました。その中でライブコマースについても特に中国を中心に伸びが見られましたが、その勢いは止まらず、現在でも世界的にマーケットが伸長しています。2024年のライブコマースのマーケットサイズはグローバル全体で約1,284億ドル(約19.2兆円)と見積もられており、2025年以降も高い成長率で増えていくと予想されています。 ![](/images/posts/5bb634c2b9/image1.png) ライブコマースの市場成長推移予測 / [Grand View Search](https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/live-commerce-market-report) ライブコマースを先行してきたのは中国ですが、近年ではUSでも伸びてきています。[2025年上期のTikTok Shop世界GMVは262億ドル(約3.9兆円、前年同期比 2倍増)、USは58億ドル(約8700億円、前年同期比 91%増)](https://thelowdown.momentum.asia/new-report-tiktok-shop-doubles-global-gmv-in-h1-2025-with-u-s-market-hitting-us5-8-billion/)との推計が出ており、USではTikTok ShopのライブコマースのGMV構成比も前年同期比で上昇傾向(10% => 14%)となっています。 USでは過去[FacebookがLive Shoppingを終了(2022年10月)](https://japan.cnet.com/article/35191414/#:~:text=%E3%80%8CFacebook%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%8C%E3%80%81%E6%8F%90%E4%BE%9B%E9%96%8B%E5%A7%8B%E3%81%8B%E3%82%89,3%E6%97%A5%E3%81%AB%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82&text=10%E6%9C%881%E6%97%A5%E3%82%92%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A6,%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%80%82)、[Instagramがライブ配信の商品タグ付けを停止(2023年3月)](https://voi.id/ja/teknologi/254543)など上手く普及しなかった一方で、カテゴリー特化のライブコマース/ソーシャルコマースのスタートアップ(参考: [本連載 #20 Z世代がハマるソーシャルコマース](/posts/4413be0066))が多数登場していることや、TikTok Shopのような動画プラットフォームの登場によって、徐々に普及が進んだものと考えられます。ショート/ロング動画・ライブストリーミング・切り抜き/拡散などを販促に活用する動きは増加しており、欧米圏でも視聴から購入へ近づける試行は続いています。 一方で、ライブコマースにはまだ課題も残っています。例えば、視聴の熱量は高いものの、購入完了までのプロセスにおいて、返品・真贋・品質に対する不安、在庫切れや配送までの長期間化による需給ミスマッチなどが挙げられます。これは、ライブコマースに限らずEC全般でも見られる問題で、商品発見→購入完了のフローにはまだまだ大きな摩擦が残っています。2023年までの様々な[カート落ちの統計データを集めたBaymard Institute](https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate)によると、オンラインショッピングカートにおける平均カート落ち率は約70%とされており、「配送や手数料や税など追加費用が高すぎる」、「配送が遅すぎる」、「サイトが信頼できない」といった点に加えて、チェックアウトプロセスの不備(入力項目の多さや時間がかかること、アカウント作成の強制、等)があげられています。 これらの課題に対して、近年新たなソリューションで解決をはかっているスタートアップが登場しています。本稿では、ライブコマースにおけるユーザ熱量の購入への転換と、商品発見=>購入までの手間解消を実現する仕掛けを事例をとりあげながら考察します。 # 限定性・希少性を徹底するライブコマース: Whatnot ![](/images/posts/5bb634c2b9/image3.png) Wahtnotはコレクター特化のライブコマースに多数の購入促進の仕組みを入れている / [App Store](https://apps.apple.com/jp/app/whatnot-shop-sell-connect/id1488269261) [Whatnot](https://www.whatnot.com/)は、コレクティブル(トレカ、コミック、スニーカーなど収集自体に需要がある商品)中心のライブコマースプラットフォームを提供しています。2025年1月時点でのWhatnot上での[ライブコマースの年間取引額は30億ドル(約4,500億円)を超えていると明かしており](https://techcrunch.com/2025/01/08/livestream-shopping-app-whatnot-raises-265m-pinning-valuation-at-nearly-5b/#:~:text=Whatnot%20also%20revealed%20that%20its%20annual%20gross%20merchandise%20value%20(GMV)%20for%20livestream%20sales%20surpassed%20%243%20billion%20after%20recently%20reporting%20an%20annual%20GMV%20of%20over%20%242%20billion.)、US発のライブコマースプラットフォームとしては大きな成功を収めています。 コレクティブルでは、真贋・コンディション・希少性について不明確な点がある場合、それが購買の障壁になります。ユーザーは商品の発見→真贋・コンディション確認→決済の間でリスクがあればすぐに離脱します。これを静的なコンテンツだけで防ぐことは困難です。Whatnotは、これに対し下記の①-⑤のようなライブと連動した仕組みを揃え「いま購入する」動機を巧みに作り込んでいます。 ①[オークション](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/9779931101837-Starting-an-Auction-during-a-Livestream): ホストが商品を提示後、視聴者はその場で入札し、カウントダウン終了時点の最高額入札者が落札します。サドンデス方式で運用されるオークションの場合は締切時間間際で入札しても時間延長されません。そのため視聴者はある程度確度の高い値段で時間ギリギリを狙って入札することになり、それが購買意欲を高めることにつながります。また、ライブ画面に入札者やコメントがリアルタイム表示されることでソーシャルプルーフが働き、希少品の価格受容性が上がりやすい構造を作っています。 ②[フラッシュセール](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/32761422601869-Flash-Sales): ライブの途中に短時間・限定数量の割引販売枠を差し込み、カウントダウンと残数表示で即断を促す仕組みもあります。締切のプレッシャーと希少性の可視化が機会損失回避の心理をくすぐり、その場での購入を促します。 ③[ライブ開封](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/26596362677389-Breaks-Feature-for-Sellers): コレクティブル特有のライブ開封では、販売者がボックスやパックのトレーディングカードを購入し、開封をしながらその一部を視聴者にスポット購入させることができます。自分の当たりが今出るかもしれない期待が視聴継続と購入動機を強化し、同時に状態確認・真贋懸念の軽減にもつながります。 ④[リワードプログラム](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/27689721056909-Rewards-Club): 視聴・購入回数・購入金額などの行動にレベルを付与し、販売者がレベルに応じた特典を視聴者へ提供することで再訪・再購入を誘う仕組みです。これにより、導入後に[購入者支出+12%/時間当たり売上+12%/リピーター数+約20%](https://techcrunch.com/2024/10/02/livestream-shopping-app-whatnot-adds-a-rewards-program-as-gmv-tops-2b/)の改善が報じられています。レベル上げすることで、クーポン、限定配信、メンバーシップバッジなどが付与され、特別感を演出し、それが再訪/再購入の確度を高めます。 ⑤状態・真贋の不確実性解消: ライブ映像での詳細共有に加え、トレーディングカードの真贋鑑定・グレーディング機関である[PSA連携によりグレーディング申込をアプリ内で完結](https://www.businesswire.com/news/home/20221201005345/en/PSA-Whatnot-Partner-to-Offer-Industry-Leading-Authentication-Grading-Services-for-Trading-Cards)できる導線を用意し、買い手の手間削減に加え、購入後リスクの体感を下げ、安心感を演出しています。 このように、時間制限 × ライブ視聴 x 在庫/価格の限定オファー により、希少性が可視化され、視聴者は機会損失回避の動機が働きます。こうした要素をプロダクト全般に入れ込み、視聴者がライブ中に購入を決断することにつなげています。またライブ開封で期待を高めつつ、真贋や状態確認で安心も担保されることもライブコマース内の購入につながっています。さらにリワードプログラムで次回の来訪/購買理由を作り、LTVに貢献しています。このような施策の積み上げが、[上位500セラーが各100万ドル超(約1.5億円)を販売/プラットフォーム全体で毎週17.5万時間のライブ配信](https://techcrunch.com/2024/10/02/livestream-shopping-app-whatnot-adds-a-rewards-program-as-gmv-tops-2b/)という結果につながっていると考えられます。 Whatnotの収益源は販売手数料と決済手数料です。[米国/カナダ/豪州では販売手数料8%に加えて決済手数料2.9%+0.30ドル](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/4847069165965-Whatnot-Seller-Fees-and-Commissions-Schedule)が基本で、カテゴリ別の手数料ディスカウント(例:[Electronicsは5%](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/25550923919757-Reduced-Commission-on-Electronics)、[Coins & Moneyは4%](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/14477076380941-Reduced-Commission-on-Coins-Money))も用意されています。高額取引の一部については[ベースコミッション0%とするプロモーション](https://help.whatnot.com/hc/en-us/articles/27912945518733-Reduced-Commission-on-High-Value-Orders-Promotion)など、Whatnotが戦略的に出品を増やしたいカテゴリーの充実や単価アップをこれらの施策で促しています。 Whatnotは、[2025年1月のシリーズEの資金調達で評価額が約49.7億ドル(約7,450億円)](https://techcrunch.com/2025/01/08/livestream-shopping-app-whatnot-raises-265m-pinning-valuation-at-nearly-5b/)となり、ライブコマースのUSでのグロースに対して投資家からさらに期待されていると考えられます。 # 「返信するだけ購入」でカート落ちを削減: OneText ![](/images/posts/5bb634c2b9/image2.png) OneTextはSMSで会話的に答えるだけで購入ができる / [OneText](https://home.onetext.com/blog/billboard-texts) [OneText](https://home.onetext.com/)は「Text‑to‑Buy」のコンセプトを掲げ、リピート購入の敷居を大きく下げることを実現しようとしています。通常のECサイトのチェックアウトの仕組みを改変することなく、初回購入で購入者の支払い関連情報を保管し、2回目以降の利用ではただSMSに返信するだけで再購入できる体験を提供しています。 オンライン購入ではリピーターであっても入力の煩雑さ(住所・カード情報)、ログイン情報忘れ、多段階の認証が原因となってカゴ落ちが常態化します。またリピーター獲得にFacebook MessengerやWhatsAppのようなメッセージングプラットフォームに依存しすぎると、獲得コストの変動があったり、ユーザデータの所有権が得られにくくなります。OneTextのソリューションは、SMSを自社がユーザデータを所有する獲得チャネルにでき、再入荷通知・補充購買・サブスクなどリピート商材を適切に顧客へオファーすることができます。SMSであればグローバルに規格が揃っており、各メッセージングプラットフォームの普及具合に依存しないため、国ごとに獲得チャネルを分ける必要もありません。 OneTextのプロダクトは下記のような特徴があります。 - 初回購入:ECサイトとシステム連携し、初回購入で[支払い情報をOneText側に安全に保管(カードオンファイル)](https://techcrunch.com/2025/07/08/onetext-raises-4-5m-from-y-combinator-khosla-to-reinvent-shopping-by-text/) - 再購入:以降はSMSの返信だけで購入確定という最短導線でチェックアウト不要の体験を提供 - オプトアウト設計:「[24時間後に課金するので不要ならキャンセルが可能」といった同意ベースの「あとから課金」](https://home.onetext.com/blog/billboard-texts#:~:text=Give%20a%20safety%20window%20for%20payments)を採用し、購入後の後悔とキャンセル負荷を抑制 - 運用体制と効果:定型的なSMS送信をするだけではなく、AIや有人を組み合わせた対話的なプロダクトとなっており、[CVRを20〜30%改善](https://techcrunch.com/2025/07/08/onetext-raises-4-5m-from-y-combinator-khosla-to-reinvent-shopping-by-text/) OneTextは[ShopifyのAPI、Stripe等の決済会社、CRMのKlaviyo等と連携/同期が可能](https://home.onetext.com/pricing)になっており、それらのプラットフォームを使っていれば少ない開発工数で対応が可能と思われます。 将来的には、買い物客が複数のブランド/ストアで保管されたプロフィール、事前入力されたチェックアウトデータを利用できるようにする計画があり、StripeのLINKやShopifyのShop Payのような横断型のユーザ決済プラットフォームを目指していると考えられます。 OneTextの収益は、提携するECサイトからの月額利用料 + SMS利用料 + 取引連動手数料の支払いで成り立っています。下記のように中小企業向けのわかりやすいプランから大企業向けの個別見積もりエンタープライズプランまで幅広いクライアントに対応する[料金プラン](https://home.onetext.com/pricing)となっています。 - Growthプラン:0.007ドル/SMS+キャリア費、0.025/ドルMMS+キャリア費、月額300ドル、オンライン注文の手数料なし、Text‑to‑Buy取引手数料3.5%。 - Volumeプラン:0.005ドル/SMS+キャリア費、0.019ドル/MMS+キャリア費、月額550ドル、Text‑to‑Buy取引手数料2%。 - Enterprise:個別見積(Short Code月額500ドルなど)。 OneTextは2025年7月にY CombinatorやKhosla VenturesなどTop TierのVCから、[450万ドル(約6.75億円)のシードラウンドでの資金調達](https://techcrunch.com/2025/07/08/onetext-raises-4-5m-from-y-combinator-khosla-to-reinvent-shopping-by-text/)を行っており、さらなるグロースが期待されています。 # おわりに 本稿では、ライブコマースとSMS経由購入の二つの事例を紹介しました。いずれも「お気に入りの商品発見後の離脱を抑え購入を促し、再訪を習慣化する」をゴールとして、異なる角度からアプローチをしています。ライブコマースは真贋や状態確認など購入に向けた不安要素を取り除きながらも、意図的に限定性や希少性を入れ込むことで、購入動機を強く刺激しています。SMSは返信するだけで購入できる最短導線で二度目以降の購入意思決定を限りなく軽くしています。 これらのアプローチは、ライブコマースやECだけではなく、メディアでのコンテンツ課金にも適用可能と考えられます。有料ニュースコンテンツにおいても時間限定や回数限定の無料オファーなどがありますが、発見→購入→再訪を最適化する余地はまだ残っています。例えば、①ライブや速報で今すぐ読みたい/参加したい有料コンテンツを作る、②記事末や配信の締めでコメントやAIに返信するだけ有料コンテンツを購入できる最短決済導線を常設する、などが考えられます。速報ライブ直後15分間だけの解説Q&A視聴権、未編集インタビューの限定アーカイブ、編集会議の傍聴席などを時間・数量で限定開放し、その場での即時参加に誘導する、などメディアが持つ様々なアセットは商品化できるポテンシャルがあります。 現在、Google検索のAIモード/AI Overviewsをはじめとして、検索エンジンからAIにユーザのトラフィックが徐々に移りつつあり、[トラフィック減の影響を受けたメディアが訴訟する](https://www.gizmodo.jp/2025/09/google-ai-overviews-causes-a-decline-in-web-browsing.html)事態となっています。トラフィックと連動した広告収入だけでは厳しい時代です。広告以外でこうしたメディアが保有するアセットをいかにしてユーザにコンテンツとして提供し、マネタイズしていくかが今後さらに重要になると考えられます。 --- ## Tubular Viewpoint のサマリーパネル:データを判断に変えるまでを短くする URL: https://ximera.com/posts/tubular-viewpoint-contextual-insights 公開日: 2025-09-22 著者: Tubular Labs 概要: Tubularのソーシャル動画分析ツールViewpointに、データを自動で文脈づけるサマリーパネルが追加された。ダッシュボードを渡り歩かずに、何が効いているか・次に何を作るかを判断できるようにする機能の位置づけを整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/how-contextual-insights-help-you-move-faster/))2025.09.22 ソーシャル動画のデータは、行動に変換できて初めて価値になります。変換に時間がかかると、勢いを失うか、ダッシュボードの海で迷うことになります。 Tubular は、ソーシャル動画分析ツール Viewpoint に、データを自動で文脈づけるサマリーパネルを追加しました。何がパフォーマンスを動かしているのか、どのトレンドが立ち上がっているのか、次にどんなコンテンツを作るべきかを、その場で判断できるようにする機能です。 ## Viewpoint とは Viewpoint は、すぐに要点と着想が欲しいチームのために作られたソーシャル動画分析ツールです。分析の専門家でなくても扱えるダッシュボードで、次のことができます。 - 競合のソーシャル動画パフォーマンスを一か所で把握する。直近90日の視聴数、エンゲージメント、アップロード数、プラットフォーム横断の成績を追跡 - コンテンツの機会を見つける。伸びているトピックと、各プラットフォームで成果を出しているコンテンツを確認 - オーディエンスを理解する。デモグラフィック、エンゲージメント、関連するクリエイター・カテゴリー・トピックからクリエイティブの判断材料を得る - 競合とベンチマークする。任意のクリエイターの視聴数・エンゲージメント・成長を比較し、必要な頻度でグラフ化 ## サマリーパネルが解決していること ![](/images/posts/tubular-viewpoint-contextual-insights/viewpoint-panels.png) 動きの速い現場では、データを探す作業そのものが負荷になります。サマリーパネルは、分析中のコンテンツや指標のとなりに、関連するトレンド、パフォーマンスの要約、関連する機会を並べて表示します。画面を渡り歩く手数と、認知の負荷を減らすための設計です。 開発チームによれば、機能追加以前は「トピックのような主要な対象について、要約された情報を一か所で得られる場所がなかった」という課題がありました。データはアプリ内に存在していたものの、素早くまとめて引き出すことが難しかった、ということです。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 分析ツールの価値は、指標の多さではなく、判断までの距離で決まります。ダッシュボードを増やすほど意思決定が速くなるわけではない、という前提に立った機能追加です。自社で分析基盤を整えるときにも、同じ問いを立てる価値があります。 機能の詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/how-contextual-insights-help-you-move-faster/)からご覧いただけます。 --- ## 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はいかにしてソーシャル動画のお手本を完成させたか URL: https://ximera.com/posts/9c336bdba3 公開日: 2025-09-01 著者: Henley Worthen By Henley Worthen([原文](https://tubularlabs.com/blog/how-zelda-tears-of-the-kingdom-perfected-the-social-video-playbook/))2024-09-25 ![](/images/posts/9c336bdba3/How_Zelda-_Tears_of_the_Kingdom_Perfected_the_Social_Video_Playbook_Thumnail.jpg) 任天堂はいかにして『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』を、3日間で全世界販売1000万本という大成功に導いたのか。その意図的かつ戦略的なアプローチの過程を、ソーシャル動画の横断分析ツール「[Tubular](https://ximera.com/tubular)」のデータを見ながら時系列になぞっていく。 ## 6年もの間、期待されつづけたゲーム 『ゼルダの伝説』は、あらゆる層から絶大な支持を集めるゲームシリーズだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(BOTW)は、7年前の2017年に登場し、瞬く間に史上最高のビデオゲームの仲間入りを果たした。 物語は各タイトルによって異なるが、プレイヤーは主人公のリンクとともに冒険の旅に出る。リンクはエルフのような若い英雄で、魔法の力を持つゼルダ姫とハイラルの地を悪から救うために戦う。その道中、プレイヤーは神秘的なファンタジーの世界を探索し、モンスターと戦ったりパズルを解いたりしながら進んでいく。熱狂的なゼルダファンは象徴的なBOTWの続編を6年という長い年月に耐えながら待ち望んだ。 世界最大のゲーム見本市のひとつであるE3 2019で、世界はBOTWの続編をはじめて目にした。しかし、それ以上の詳細が発表されるのは数年後のこと。任天堂がついにゼルダ・サーガの第2弾と、2022年に設定された正式な発売日を発表したのは、2021年のE3だった。しかし、2022年になると、ゼルダファンはまたもや予想外の展開に見舞われる。発売日が丸1年延期され、2023年5月になったのだ。 言うまでもなく、ゼルダ・プレイヤーは期待に胸を膨らませていた。 ## 最初のトレーラー公開 2022年9月13日、ついに『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』初の公式トレーラーが公開され、ファンはこの待望のゲームをはじめて目にすることになった。Tubularのソーシャル動画分析によると、YouTubeでのゼルダ関連動画の視聴者数は8月の4090万ビューから9月には6220万ビューへと153%も増加した。 ![](/images/posts/9c336bdba3/image.png) 1月1日から5月12日の発売日まで、ゼルダ関連の動画のYouTubeへのアップロード数は296.85%増加した。 *しかし、発売前の新作について、ゲームインフルエンサーたちはどのように動画をアップロードしていたのだろうか?* クリエイターたちは次回作のリリースを待ち望み、それが6年前の作品であるにもかかわらず(ゲームの世界で言えば古い)前作「ブレス オブ ザ ワイルド(BOTW)」のスピードランの動画をネットに溢れさせたのだ(1[日でゲームをクリアしたこの動画](https://www.youtube.com/watch?v=fMPTSiOuNpA)がすでに380万ビューを記録しているように)。この驚くべきデータは、このゲームが長い時間をかけて育んできた揺るぎない熱狂と、ファンを楽しませ、時の試練に耐える能力があると証明している。 ### 第二弾トレーラー公開 2023年2月8日、『ティアーズ オブ ザ キングダム』の発売に向けての、極めて重要な瞬間が訪れた。任天堂がゲームプレイ映像を含む第二弾トレーラーを公開したのだ。YouTubeのゼルダ関連コンテンツの月間視聴回数は、1月の8800万回から2月には1億4600万回に増加し、熱心なゼルダファンが熱狂した。 2月9日の1日あたりの再生回数は月間最多の1140万回を記録した。 実際、このトレーラーの公開は、前年を通してゼルダのコンテンツで最高の再生回数を記録。 しかし、のちまで語り継がれるリリースへの旅はまだはじまったばかりだった。
## 最後のトレーラー公開 その直後、任天堂は新機能や息を呑むような新エリア「空島」を公開する一連の動画を通じて、ファンにさらなる情報を提供した。この盛り上がりをさらに高めるように、任天堂は2023年4月13日(ゲーム発売の1ヶ月前)に最後のゲームトレーラーを公開。ゼルダの視聴者数は、4月のTwitchで前月の4倍以上に増加した。 視聴者数の急増は、新作のリリースに際して任天堂が意図的かつ戦略的なアプローチを取ったことによるものだと考えられる。オンラインで共有される情報と映像を入念に管理したのだ。一部のコンテンツを除いて情報をほとんど公開せず、ゲームの先行体験はごく限られたゲームインフルエンサーに留め、発売数日前までは投稿を控えた。 2019年にはじめての予告をして以降、任天堂は最終的に記録を破るであろう壮大なリリースへの期待を巧みに高めてきたのだ。任天堂は情報の流れを慎重に管理することで、『ティアーズ オブ ザ キングダム』に期待感を高めるオーラを生み出し、ファンの興奮を着実に高めてきたのだ。 ## そして発売日を迎えた 世界中のゲームショップの前に熱心なファンが列を作るなか、ニューヨークの直営店Nintendo New Yorkで最高峰のイベントが行われた。この場所ではゼルダの生みの親である青沼英二氏をはじめとするゲームプロデューサーが出席し、真夜中の発売という特別なイベントが開催された。店舗はゼルダをテーマにしたワンダーランドに変身し、壊れたマスターソードの展示などで飾り付けられ、ローンチ・パーティーに招待された幸運な数人のためのグッズも用意された。 ## 記録的な大ヒット 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売から3日間で全世界1000万本という驚異的なセールスを記録した。この数字は、ゼルダシリーズのなかでもっとも早く売れたゲームとして、またアメリカで任天堂のゲーム史上もっとも早く売れたゲームとして、この作品の地位を確固たるものにした。ちなみに、前作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は6年間で約3000万本を売り上げている。『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、その3分の1をわずか72時間で売り上げることに成功した。耐え難いほどの期待感を煽ることで、任天堂はこのゲームを成功へと導くことができたのだ。 ゲームソフト通常版の価格が1本70ドルであることを考えると、ざっと見積もって7億ドルの収入があることがわかる。この数字には、特別なコレクターズ・エディションや膨大な数のゼルダ・グッズによる追加収入は含まれていない。 ![](/images/posts/9c336bdba3/image-1.png) プレイヤーたちは時間を惜しまず、ゲームプレイのコンテンツを投稿した。発売当日には、YouTubeに8,900本の動画がアップロードされた。週末もYouTubeへのアップロードは好調で、土曜日は7,500本、日曜日は6,200本だった。月曜日になり、プレイヤーたちがゼルダの神秘的な世界から現実の世界に戻らざるを得なくなると、アップロードは若干減少し、週を通して安定した。 最初の週にもっとも再生されたトップ10の動画のほとんどはゲームプレイ動画だった。[@_v4lx_によるこのTikTok](https://www.tiktok.com/@smxrt.fridge/video/7233253141070810410)はアップロード初日に400万回近く視聴され、現在は610万回を超えている(原文公開時)。興味深いことに、このゲーマーはいわゆるゲームインフルエンサーではない。彼らにほとんどフォロワーはいないが、再生数は投稿と同時に急上昇した。ゲームプレイ動画のほかにも、[深夜発売の列に並ぶプレイヤー](https://www.tiktok.com/@xtremetheplayer/video/7232385849017552133)や、[ゼルダ仕様の限定Nintendo Switchを開封する動画](https://www.tiktok.com/@insertrichie/video/7232187202170555650)など、さまざまな動画が投稿されている。 この『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、ファンが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に夢中になった理由の多くを踏襲しており、探索できる広大なマップの大幅なアップデート、数々の新要素や新展開、新しい革新的な魔法の能力、そして多数の馴染み深いキャラクターが登場する映画のようなストーリーが特徴だ。 また、このゲームでは無限のクリエイティビティを発揮することもできる。プレイヤーたちは、無意味に長い橋を使って問題を解決する様子を撮影した動画をソーシャルメディアに投稿したり、カロック(愛らしく無害な森の生き物。友人と再会したいと助けを求めている)に残酷な仕打ちを加えている様子を投稿したりしている。 全体として、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、あらゆるコンテンツクリエイターやゲーマーに、ソーシャル上で共有するコンテンツを数多く提供している。より多くのプレイヤーがテクニックや攻略を発見するにつれ、今後しばらくの間は、ゼルダのコンテンツが次々と公開されることが予想される。もっとも愛されているゲームシリーズの1つである『ゼルダの伝説』の最新作がソーシャル上で歴史を刻んでいるのを見るのは本当におもしろい。 --- ソーシャル動画で唯一の信頼できるデータベースを通してカルチャーの脈を掴みたいとお考えなら、Tubularの無料デモをリクエストしてください。今がそのときです。 [Tubularのデモをリクエストする](https://tubularlabs.com/request-demo/) # Tubular TubularはYouTube, TikTok, Twitch, Instagram, Facebookのデータを一箇所にまとめて提供する、ソーシャル動画の横断分析ツールです。 ### 複数の動画プラットフォームのデータを統合 世界最大のソーシャル動画データベース 主要な動画プラットフォームのYouTube、TikTok、Facebook、Instagram、Twitchから、110億本以上の動画と2800万人以上のクリエイターをカバーするTubularは、世界最大のソーシャル動画データベースです。 あらゆるプラットフォームの動画やクリエイターを一箇所に整理・分類することで、新たなオーディエンスの発掘にマルチチャンネルでの展開が望まれる世界で、フィルタリング、検索、探索を可能にし、パフォーマンス数値を客観的に横断比較することができます。 憶測だけの意思決定から、あなたの考えをデータがサポートする意思決定へ Tubularはあなたのブランドの動画、パートナーになりうるインフルエンサーの動画、競合の動画やカテゴリ・国・地域ごとの市場に関する情報を提供し、あなたの意思決定を憶測からだけのものではなく、データに基づいた意思決定にすることをサポートします。 [Tubularのデモをリクエストする](https://tubularlabs.com/request-demo/) [もっと詳しく知る](https://ximera.com/tubular) --- [株式会社キメラのコーポレートページへ](https://ximera.com/) --- ## AI経由トラフィック獲得のアプローチ URL: https://ximera.com/posts/44eed42c03 公開日: 2025-08-29 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #76|Ikuo Morisugi| 2025.08.29 一定有益なアプローチになりえるものの、メディア・コンテンツ提供側にもリスクがある # はじめに WebサイトアクセスのゲートウェイとなるWeb検索のシェアが生成AIの登場によって変わりつつあります。Google検索のトラフィックとAI検索のトラフィックを比べた際に、AI検索のシェアがこの数年で無視できないレベルに高まってきています。[Wix Studioが2025年6月に公表した調査](https://www.wix.com/studio/ai-search-lab/research/ai-search-vs-google)によれば、Google検索と主要なAI(ChatGPT、Deepseek、Perplexity、Grok、Claude、Copilot)検索を全体ボリュームとしたときに、AI検索のシェアは2025年6月時点で7.82%に達し、ユニーク訪問者数は前年同月比の3億3700万から6億7000万へと倍増しました。AI検索トラフィックの中ではChatGPTが市場の78%を占め、GoogleのGeminiが9.4%、続いてClaudeやPerplexityが後を追っています。 依然としてGoogleシェアは大きいもののAI検索のトラフィックが伸び続けている / [WIX Studio](https://www.wix.com/studio/ai-search-lab/research/ai-search-vs-google) 依然としてGoogleシェアは大きいもののAI検索のトラフィックが伸び続けている / [WIX Studio](https://www.wix.com/studio/ai-search-lab/research/ai-search-vs-google) AI検索経由でのサイト流入は圧倒的にデスクトップから発生していることが特徴です。[ChatGPTからのリファーラルの94%、Geminiは91%、Perplexityは97%がPC経由](https://www.brightedge.com/resources/research-reports/open-frontier-mobile-ai-search)となっています。これまでの検索エンジンであればPCよりもモバイル経由でのサイト流入の方が多いことが通常ですが、AI経由では大きく逆転しています。ChatGPTは[8億人以上の週アクティブユーザ](https://www.demandsage.com/chatgpt-statistics/)がいる中で、モバイルアプリが[2025年3月時点で6400万以上ダウンロード](https://www.demandsage.com/chatgpt-statistics/)されていることから考えると、この数値は「ユーザがAIをPC経由でしか使っていない」ではなく、「モバイルではAI回答からサイト遷移を滅多にしない」と読み取れます。 こうした状況において少なくともPCトラフィックについては、Google検索結果の順位を上げることではなく、AIの回答に引用されることがますます重要な要素となってきています。本稿では、そのための2つの戦略──1. 汎用AI企業とのコンテンツパートナーシップと、2. GEO(Generative Engine Optimization)による自力最適化──について、具体的事例を交えてとりあげます。 # 戦略1: 汎用AI企業とのコンテンツパートナーシップ ChatGPTにおけるAxel Springer配下Politicoの要約ニュース表示 ChatGPTにおけるAxel Springer配下Politicoの要約ニュース表示 AI回答で自社コンテンツを露出し、かつマネタイズを実現するアプローチとして、OpenAI、Perplexity、Googleなど汎用AI企業が進めているニュースパブリッシャーとのコンテンツパートナーシップがあげられます。パートナーシップのパターンとしては、大きく1. アーカイブデータライセンス、2. 広告レベニューシェア、3. リアルタイムフィード連携の3つがあります。 ## 1. アーカイブデータライセンス 各汎用AI企業はメディアパブリッシャーとライセンス契約を結び、自社AIの学習データや回答生成に報道コンテンツを利用しています。OpenAIは2023年に[AP通信(Associated Press)と提携](https://www.reuters.com/business/media-telecom/associated-press-openai-partner-explore-generative-ai-use-news-2023-07-13/#:~:text=July%2013%20%28Reuters%29%20,similar%20partnerships%20between%20the%20industries)し、過去記事のアーカイブの一部のライセンス供与を受けたことを皮切りに、主要なパブリッシャーと相次いで契約を拡大してきました。ドイツの[Axel Springer社(政治誌PoliticoやBusiness Insiderの親会社)](https://www.reuters.com/business/media-telecom/global-news-publisher-axel-springer-partners-with-openai-landmark-deal-2023-12-13/#:~:text=The%20content%20will%20get%20a,source%20familiar%20with%20the%20deal)、[イギリスのFinancial Times、フランスのLe Monde(ルモンド)、スペインのPrisa(プリサ)](https://www.deeplearning.ai/the-batch/openai-licenses-financial-times-archive-in-fifth-deal-with-major-news-publishers/)が相次いで提携し、OpenAIに自社コンテンツの検索・要約・学習利用権を許諾しました。[News Corp.(Wall Street Journalなど米英豪の大手新聞グループ)との契約](https://apnews.com/article/openai-news-corp-a49144d381796df5729c746f52fbef19#:~:text=and%20others)は、新着記事と数十年分のアーカイブを提供する5年間の複数年契約で2億5千万ドル(約371億円)と報じられています。 ## 2. 広告レベニューシェア Perplexityは2024年7月、提携したパブリッシャーのコンテンツがPerplexity上で引用表示される[Publishers Program](https://www.perplexity.ai/ja/hub/blog/introducing-the-perplexity-publishers-program)を開始しました。[TIME、DER SPIEGEL(シュピーゲル、ドイツのニュース週刊誌最大手)、Fortuneなどに加え、日本からもみんかぶやNewspicksが参加](https://www.perplexity.ai/ja/hub/blog/perplexity-expands-publisher-program-with-15-new-media-partners)しています。提携先の記事内容がユーザーの質問回答に引用表示され閲覧された場合、そのページに表示される広告収益の一部が出版社に支払われます。具体的な分配率は公表されていませんが、[「複数年にわたる二桁パーセント」の収益シェア契約で、初期参加社には特に有利な条件を提供した](https://www.theverge.com/2024/7/30/24208979/perplexity-publishers-program-ad-revenue-sharing-ai-time-fortune-der-spiegel)と報じられています。また収益が本格化するまで一定の前払い金も支払うとされ、記事1本ごとに成果報酬が発生します。一方でこのモデルでは[広告が付いている場合にのみ収益が発生](https://www.journalism.co.uk/news/perplexity-courts-publishers-with-ad-revenue-share-experiment/s2/a1217792/#:~:text=There%20is%20one%20important%20detail%3A,to%20power%20its%20regular%20answers)するため、広告が付かない利用については出版社への直接報酬はありません。 ## 3. リアルタイムフィード連携 OpenAIは2023年の[Axel Springerとの契約](https://www.reuters.com/business/media-telecom/global-news-publisher-axel-springer-partners-with-openai-landmark-deal-2023-12-13/#:~:text=The%20summaries%20will%20be%20available,quarter%20of%202024%2C%20Rubin%20said)で、同社の記事公開と同時にChatGPT上で要約を提供をしはじめました。2025年1月にはGoogleが[GeminiでAP通信のニュース速報を直接配信する契約](https://www.ap.org/media-center/ap-in-the-news/2025/google-signs-deal-with-ap-to-deliver-up-to-date-news-through-its-gemini-ai-chatbot/#:~:text=Google%20says%20its%20artificial%20intelligence,deal%20with%20a%20news%20publisher)を初めて締結しました。AP通信はGoogleに対しリアルタイムのニュース記事フィードを提供し、Geminiの回答に最新ニュースを反映させています。ビジネスモデルは非公表ですが、このように新着ニュースを即座にAI回答へ組み込む試みが進んでいます。 なおAnthropic(Claude)については、2025年8月時点までにパブリッシャーとの大規模なコンテンツ契約は確認されていませんが、今後各汎用AI企業が同様の提携モデルを模索する可能性があります。 これらの提携の結果、AI経由でパブリッシャーサイトへの誘導が生まれる効果も期待されています。先に挙げたOpenAIとAxel Springerの契約では、ChatGPT上の要約に全文記事へのリンクが明示されるため、新たな読者が元サイトに流入し購読へ転換することが見込まれます。実際、OpenAIのChatGPTは2025年時点でパブリッシャーサイトへの最大のAI経由のトラフィック源となっています。Similar Webによるデータで[2025年6月におけるChatGPT経由のリファラルは396.8万回で、1000サイトへのAI由来トラフィック全体の81.7%を占めていた](https://digiday.jp/platforms/in-graphic-detail-ai-platforms-are-driving-more-traffic-but-not-enough-to-offset-zero-click-search/)と報じられています。こうした取り組みが、パブリッシャーのブランド露出や新規読者の獲得につながると期待されています。一方で、このようなパートナーシップアプローチは、各パブリッシャーの汎用AI企業との関係性や交渉力に強く依存すること、長期的なビジネス影響がまだ見えていないこと、モバイルAI経由のトラフィック貢献が明確には現れていないことなど、リスクが様々あり、万能なアプローチであるとは言えません。 # 戦略2: GEO(Generative Engine Optimization)の促進 AIにおけるGEO需要の高まりを受け、それを支援するAIスタートアップが登場している / [Profound](https://www.tryprofound.com/) AIにおけるGEO需要の高まりを受け、それを支援するAIスタートアップが登場している / [Profound](https://www.tryprofound.com/) 汎用AI企業側との交渉/契約/データ連携によるパートナーシップに対して、自力でAIに引用されやすくするためのアプローチがGEO(Generative Engine Optimization)です。SEOが「検索順位の向上」を対象にしたのに対し、GEOは「AI回答の中での自社コンテンツの引用数向上」を対象にします。ここではGEOを支援するスタートアップ2社の事例を取り上げます。 ## 1. Profound ― AIにおけるBrand Visibilityのためのレーダー ニューヨークで創業された[Profound](https://www.tryprofound.com/)は、生成AIの回答における各ブランドの可視性(Brand Visibility)を明確にし、改善の行動につなげることを支援しています。具体的には、ChatGPTやClaude、Geminiなど主要なAI検索において、自社ブランドがどのように引用され、どう表現されているかを横断的にモニタリングするプロダクトを提供しています。これまではSEOツールで検索順位を追跡できても、AI検索においてはどの回答にどのようにブランドを登場させているかはブラックボックスでした。Profoundはその課題に対し、自社ブランドがどのAIやWebサイトでどの程度言及されているのかスコア化した[ダッシュボード](https://www.tryprofound.com/leaderboard)を提供しています。 Profoundは[1億件以上のAI検索クエリで既存ブランドへの言及データを収集](https://www.finsmes.com/2025/06/profound-raises-20m-in-series-a-funding.html?utm_source=chatgpt.com)し、質問パターンごとに自社ブランドがどれほど言及されているかダッシュボードで可視化されます。[AI回答が自社をどのように言及しているかについてもAIで判定](https://www.tryprofound.com/features/answer-engine-insights)し、ブランドリスクの早期発見も可能です。 導入事例としては、Fintech企業[RampのChatGPTにおけるブランド露出がわずか1ヶ月で7倍](https://www.tryprofound.com/customers/ramp-case-study)に増え、勘定系ソフトウェア領域でのAI引用のシェアを大きく伸ばしました。他にも[IndeedやDocuSignなど500社以上が利用しており、資金調達もKleiner PerkinsやSequoiaなどトップティアのVCから合計5,800万ドル(約86億円)を得て急成長](https://www.prnewswire.com/news-releases/profound-raises-35m-series-b-as-ai-search-becomes-the-next-platform-shift-302527764.html?utm_source=chatgpt.com)を続けています。 ## 2. Athena ― データ解析からGEO改善の行動へ サンフランシスコで創業された[Athena](https://www.athenahq.ai/)は、計測だけでなく実行支援に重点を置いたGEOプラットフォームです。[創業者の1人はGoogle検索チーム出身](https://www.searchenginejournal.com/ex-google-engineer-launches-athena-for-ai-search-visibility/551430/)で、検索最適化とAIモデルの挙動を両面から理解していることが強みです。 AthenaもProfoundと似たアプローチを取っており、[300万件を超えるAI回答ログと30万以上の引用元サイトを常時マッピングしている独自AI回答のカタログ](https://www.kmworld.com/Articles/News/News/Athena-launches-from-stealth-promoting-%E2%80%98the-worlds-fastest-generative-engine-optimization-platform-170485.aspx?utm_source=chatgpt.com)を持っています。これにより、「特定のキーワードでAIが参照する上位サイトはどこか」「競合はどのようにAIに引用されているか」といった情報を可視化できます。さらに、そのデータを基にウェブサイトの構造の更新、情報の表示方法の見直し、公開するコンテンツの種類の調整など、詳細な推奨事項などの[具体的アクションを提示](https://www.athenahq.ai/action-center)します。 B2B SaaS企業である[AutoRFP.aiの事例](https://www.athenahq.ai/case-studies/10x-chatgpt-traffic-autorfp-success-story)では、見込み顧客の10%がChatGPTで自社を調べてデモの申し込みをしたことを発見し、GEOの重要性を認知したことからAthenaを導入しました。導入から1週間の内に分析を終え、2週間以内にアクションを実施できる状態にし、約2ヶ月間のGEOの効果測定を行った結果、Athena導入からChatGPTでのブランド引用数を10倍にすることができました。施策実施後はデモの申し込みの1/3がChatGPT経由での言及がきっかけとなっており、ビジネスKPIの成果にもつながっています。 # おわりに 今回ご紹介した2つのアプローチはAI時代において一定有益なアプローチになりえるものの、メディア・コンテンツ提供側にもリスクが複数存在しています。例えば、Perplexityのレベニューシェアモデルでも、あらたな収益が期待される一方で、広告が付かない限り報酬は発生せず、多くのチャットで記事が実質タダで利用されています。パブリッシャー側にはAI経由の露出拡大をしないと損をするプレッシャーがかかっており、過度にAI流入に頼ることになると、従来のGoogle検索のように将来的にアルゴリズム変更等で一方的にトラフィックが減少するリスクもはらみます。 また、AIがニュース記事を要約・引用する過程で、不正確な要約や誤った文脈で内容が伝わる危険性は依然としてあります。過去にはPerplexityは、[Forbesの記事を盗用したと思われる要約を配信し、出典表示も不十分だったことが問題視](https://www.forbes.com/sites/randalllane/2024/06/11/why-perplexitys-cynical-theft-represents-everything-that-could-go-wrong-with-ai/)されました。例え提携により正式にコンテンツ利用が許諾された場合でも、AIが事実誤認や独自改変した内容を出力すればフェイクニュース拡散やブランド毀損につながりかねません。各社とも引用元の明示やAIのファクトチェック強化に努めていますが誤情報の拡散リスクは完全には拭えず、メディア側にとって大きな懸念材料です。 例えパートナーシップ契約やGEOによって一時的な収益増が得られても、長期的にはAI回答だけの閲覧が定着し広告収入や購読者獲得が細るリスクも十分ありえます。以上のように、メディアは短期的にメリットを享受する戦略をとりつつ、契約条件の精査や代替戦略の検討も平行して取り続けることが重要と考えられます。 --- ## まだ見過ごされているトレンド:クリエイターエコノミーの次の波 URL: https://ximera.com/posts/hidden-trends-creator-economy 公開日: 2025-08-25 著者: Tubular Labs 概要: VidConでのTubular CMO講演から。YouTube視聴の69%はモバイルだが視聴時間ではTVがほぼ並ぶ、美容ブランドの意外な出稿先はフード、AI活用で1日9.5本投稿するゲーム系クリエイター。尺・頻度・コラボ先の3点を再考する材料。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/hidden-trends-big-moves-social-video-audience-data/))2025.08.25 VidCon で Tubular の CMO Jill Nicholson が、まだ多くの人が注視していないソーシャル動画のトレンドについて講演しました。動画の尺、投稿頻度、そして意外な組み合わせのブランドコラボ。3つの観点から要点をご紹介します。 ## 尺は「視聴デバイス」から逆算する ![](/images/posts/hidden-trends-creator-economy/device-viewing.png) 最適な尺を考えるとき、まず見るべきはオーディエンスがどの端末で見ているかです。 - 2025年これまでの YouTube 視聴のうち、モバイルが69% - TV が16%、デスクトップが6% - ただし視聴「時間」で見ると、モバイルと TV がそれぞれ約40%を占める 視聴回数と視聴時間で構図が入れ替わる点が重要です。コネクテッド TV では腰を据えて見るため、20分を大きく超える長尺が選ばれます。つまり端末が、見られる内容そのものを規定しています。 ## コラボ先は、隣のカテゴリーではなく遠いカテゴリー ![](/images/posts/hidden-trends-creator-economy/beauty-food-collab.png) 意外な組み合わせのブランドコラボは、新しいオーディエンスに届くうえで有効な手段になっています。米国の美容ブランドがその例です。 - Food & Drink は美容ブランドのスポンサード出稿先として5番目で、アップロードの2.7%にすぎない - しかし美容ブランドがスポンサードした Food & Drink コンテンツは、TikTok の全カテゴリー中で最高のエンゲージメント(1.6倍)を記録した 実例として、Nivea はフード系 TikTok クリエイターとの協業により、最初の7日間で通常の3倍のエンゲージメントを獲得しています。 ## 投稿頻度:量と質、そしてAIの位置づけ ![](/images/posts/hidden-trends-creator-economy/upload-frequency.png) 米国のゲーム系上位クリエイターにとって、YouTube の投稿頻度の最適化は、質と量のバランスをどう取るかという問題です。そこに、人が作るコンテンツと AI 支援によるコンテンツをどう按分するかという論点が加わりました。 たとえば Hopper は AI を活用して1日9.5本を投稿し、視聴数の総量でもっとも多くを獲得しています。一方で1日2.5本にとどめるクリエイターもおり、頻度の最適解はひとつではありません。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 3点とも、社内の「当たり前」を一度データで検算する話です。尺は端末構成から、コラボ先はオーディエンスの重なりから、投稿頻度は自社の制作体制と AI の使い方から決まります。慣習のまま続けている設定ほど、見直す価値があります。 レポートの詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/hidden-trends-big-moves-social-video-audience-data/)からご覧いただけます。 --- ## 視聴時間だけでは測れない:ポッドキャストの評価軸を広げる URL: https://ximera.com/posts/podcast-rankings-beyond-views 公開日: 2025-07-31 著者: Tubular Labs 概要: YouTubeの週次ランキングは総視聴時間の一断面にすぎない。Tubularがユニーク視聴者数と視聴時間の組み合わせから、コア視聴者型・リーチ拡大型・完走型という3つの成功パターンを読み解く。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/beyond-the-views-expanding-podcast-rankings/))2025.07.31 ポッドキャストの人気は何で測るべきでしょうか。積み上がった視聴時間か、それとも何度も戻ってくる人の数か。 YouTube は毎週、米国の人気ポッドキャストを総視聴時間にもとづいてランキング化しています。メディアにとって、これは読者の注意を捉えるうえで有効なスナップショットです。ただしロイヤルティや反復視聴、スポンサーにとっての価値を理解しようとすると、ここは出発点にすぎません。 Tubular が上位3組のポッドキャストを別の軸から分析した記事の要点をご紹介します。 ## コア視聴者に賭ける:Kill Tony コメディアン Tony Hinchcliffe 氏が司会を務めるライブコメディ番組は、高頻度の投稿と毎回変わる構成でファンを固めてきました。 YouTube の総視聴時間ランキングでは常連ですが、Tubular Audience Ratings で見ると、6月の米国ユニーク視聴者数は約270万人。視聴時間が高い一方でユニーク視聴者数は他の上位番組ほど多くない、という組み合わせです。これは幅広い層に届いているというより、頻繁に戻ってくる固定層が厚いことを意味します。 この構造は、ニッチだが熱量の高い視聴者を求めるスポンサーと相性がよく、実際に同番組は複数のブランドから出稿を得ています。規模が小さくても、接触時間の長さがコンバージョンにつながるという読みです。 ## リーチが伸びる:Brian Tyler Cohen 政治系のポッドキャストは、選挙のない年には落ちるのが通例です。しかし同番組は、日々のニュースサイクルを軸にして、エンゲージメントと反復視聴だけでなくオーディエンスそのものを広げました。6月のユニーク視聴者数は前月比29%増で、リーチで上位5番組に入っています。 動画は20分未満が中心。テーマの性質上スポンサーは付きにくい面がありますが、競争の激しい領域で高いリーチを確保できていること自体が、プラットフォームの広告プログラムを通じた収益機会になります。 ## 最後まで見られる:The Why Files 神話や陰謀論、奇妙な出来事を扱う同番組は、テレビ番組に近い語りの構成を取っており、20-25分のエピソードを最後まで見せます。過去回が繰り返し視聴されるタイプでもあります。 6月のユニーク視聴者数は前月比21%増、視聴時間は24%増。両者がほぼ同じ比率で伸びているのは、新規視聴者を獲得しただけでなく、その人たちがすぐにエピソードを通しで見ていることを示します。 ## 日本のメディアにとっての含意 3番組は、いずれも「人気」の中身が異なります。反復視聴の厚み、リーチの伸び、完走率。どれを自社の強みとして提示するかで、スポンサーへの説明も、次に作るべきコンテンツも変わります。単一のランキング指標で自社を評価すると、この違いが見えなくなります。 分析の詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/beyond-the-views-expanding-podcast-rankings/)からご覧いただけます。 --- ## 領域特化サブスクプラットフォームのビジネスモデル変化 URL: https://ximera.com/posts/f35cc8451c 公開日: 2025-07-28 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Sam Mgrdichian](https://unsplash.com/ja/@sammgrdichian?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%98%BC%E9%96%93%E5%B2%A9%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%80%85-4Aev9YjxTrU?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # 領域特化サブスクプラットフォームのビジネスモデル変化 Ximera Media Next Trends #75|Ikuo Morisugi| 2025.07.28 プラットフォームを自前で構え、ニッチながらも他社にない独自コンテンツを集め、ファンを囲い込む # はじめに 2025年のデジタルメディア市場では、TikTok / Youtube / Instagramなどのアルゴリズムドリブンなマス向けプラットフォームが大きく成長する一方で、テーマ特化型のサブスクリプションサービスも成長が続いています。 [アメリカ人の1/3が一般的な大手動画ストリーミング配信とは別に子ども向け、語学、ホラー専門、ペット管理など 領域特化のサブスクを契約](https://bango.com/one-in-three-americans-pays-for-a-specialist-streaming-or-subscription-service/)しています。こうしたユーザー行動の変化を背景に、投資家は継続的な収益と高い顧客生涯価値(LTV)を持つサービスに注目しています。 現在のように大量のコンテンツが溢れる中で、ユーザーは信頼できるキュレーションやコミュニティとの深い結びつきを持つプラットフォームへ魅力を感じていると考えられます。さらに、EUのデジタル市場法([DMA](https://digital-markets-act.ec.europa.eu/index_en))やAppleのプライバシー保護の取組([ATT](https://developer.apple.com/documentation/apptrackingtransparency))に象徴されるようにプラットフォーム規制が進んでいるため、投資家からは、ソーシャルメディアや検索エンジン(近年ではAIも含まれる)などの外部アルゴリズムへ依存せず、ファンデータを自社保有するモデルがリスクヘッジの観点からも評価されています。結果として、専門ジャンルを深掘りし、コミュニティ機能を通じて継続課金を最大化できるサービスが、ユーザー獲得とベンチャーキャピタル等からのリスクマネー獲得の双方を加速させている状況です。 具体的にメディア領域で見ても、サブスク基盤を軸にサービス提供するスタートアップへの大型の資金流入が続いています。 - [Substack](https://techcrunch.com/2025/07/17/substack-raises-100m-from-chernin-group-andreessen-horowitz-skims-ceo-and-more/):シリーズCで1億ドル(約150億円)を調達し、ニュースレターサブスクからソーシャルメディア化 - [MUBI](https://www.summitpartners.com/news/mubi-raises-100-million-in-growth-financing-led-by-sequoia-capital):Sequoia 主導で1億ドル(約150億円)を調達し、垂直統合型へビジネスモデル変更し190か国へ展開 - [Uscreen](https://www.psgequity.com/news/uscreen-announces-150-million-investment-from-psg-to-drive-its-next-phase-of-growth):PSG Equityから1.5億ドル(約225億円)を得て、クリエイター向け動画サブスク SaaSを強化 - [beehiiv](https://techcrunch.com/2024/04/30/beehiiv-newsletters/):NEAなどから3,300万ドル(約50億円)を調達し、ニュースレター特化型プラットフォームを拡大 本稿では、こうした潮流の代表例として独立系ライターの有料ニュースレター配信プラットフォームSubstackと、インディー映画をキュレーションしつつスタジオ化するMUBIの2社を取り上げます。それぞれがどのようにしてファンエンゲージメントとリテンションを最大化するためにビジネスモデルを変化させているのかを見ていきます。 # ニュースレタープラットフォームのソーシャルメディア化: Substack ![](/images/posts/f35cc8451c/image2.jpg) Substackはニュースレター配信プラットフォームからソーシャルメディアへ変化 / [App Store](https://apps.apple.com/us/app/substack/id1581650857) 2017年にサンフランシスコで創業した[Substack](https://substack.com/)はクリエイターが読者と直接つながる経済圏を作るべく、定期購読型のニュースレター配信を中心に音声・動画・コミュニティ機能を統合したサービスを提供しています。 独立したクリエイター(特にテキスト中心のライター)の課題は、(1) ソーシャルメディアや検索アルゴリズム依存による読者リーチの不安定さ、(2) 旧来の(特に広告への収益依存性が強い)ライティングプラットフォームでの収益性の低さ、(3) オーディエンスデータをライター自身が所有できないことによるCRMマーケティングの不足でした。 Substackはそれらの課題へのソリューションとしてニュースレターの作成・配信・決済・サブスク管理を一気通貫でSaaS提供し、[有料ニュースレター売上の10%+決済手数料](https://support.substack.com/hc/en-us/articles/360037607131-How-much-does-Substack-cost)を得るビジネスモデルを確立しました。 ライターのSubstack成功事例としては CNN出身の[Jim Acosta](https://jimacosta.substack.com/)や The New York Times出身の[Bari Weiss](https://www.thefp.com/w/bari-weiss)が挙げられ、報道機関出身ライターがデジタルネイティブクリエイターへ転身するケースも相次いでいます。特にBari Weissの主催するThe Free PressはSubstackでもトップクラスの[100万人の登録者と136,000人以上(2024年12月時点)の有料購読者がおり、少なくとも1000万ドル(約15億円)以上の年間収益](https://www.axios.com/2024/12/10/the-free-press-hires-publisher-amid-expansion%23:~:text=By%2520the%2520numbers:%2520Weiss%2520declined%2520to%2520provide%2520information%2520about%2520financials%2520but%2520with%2520more%2520than%2520136,000%2520subscribers%2520paying%2520around%2520$8%2520per%2520month,%2520it's%2520safe%2520to%2520assume%2520The%2520Free%2520Press%2520takes%2520in%2520at%2520least%2520$10%2520million%2520annually%2520from%2520just%2520subscription%2520revenue.)があると推定されています。これは伝統メディアの信頼性と個人ブランドの両立が可能であることを示しています。 近年のSubstackのプロダクトの大きな変化としてiOS/Androidアプリのリリースと、ソーシャルメディアライクな [フィード「Notes」](https://techcrunch.com/2023/04/05/substacks-new-short-form-notes-feed-looks-a-lot-like-twitter/)を導入したことが挙げられます。アプリの中でのフィードや購読すべきライターのレコメンデーションにより、ライターは既存購読者以外のフォロワーを獲得しやすくなりました。実際に[新規購読者の50%以上、有料購読者の30%はSubstack内のネットワークから獲得](https://substack.com/?learn_more=1%23:~:text=Yes.%252520More%252520than%25252050%2525%252520of%252520all%252520new%252520free%252520subscriptions%252520and%25252030%2525%252520of%252520paid%252520subscriptions%252520to%252520Substacks%252520come%252520from%252520within%252520our%252520network.)されています。Substackは元々分散型でライターそれぞれが独自にユーザ獲得を行う設計でしたが、上記のように徐々にライターやコンテンツを横断するソーシャルメディア的なプラットフォームへ変化してきています。 このように基盤プロダクトで確実にユーザ需要を満たしつつ、並行してユーザ拡大のための新たなプラットフォーム化を進めたことで、[2025年3月時点で有料購読数は 500 万件を突破](https://post.substack.com/p/5-million)し、[400万件を突破した2025年11月](https://post.substack.com/p/4-million)からわずか4ヶ月でこれを達成しました。 さらに[広告事業の構想がインタビューで示唆](https://www.nytimes.com/2025/07/17/business/substack-fundraising-social-network.html)され、従来広告を出さないことを標榜してきた同社が サブスク+広告の複合収益モデルへ舵を切る可能性が業界の注目を集めています。一方、Substackの創業ストーリー的にもソーシャルメディアや広告への批判からはじまっている部分もあり、Substackのビジョンに共感しているライターから同意が得られるかは議論が分かれる部分と思われます。 Substackは2025年7月に[BONDとThe Chernin Group が主導するシリーズ Cラウンド](https://techcrunch.com/2025/07/17/substack-raises-100m-from-chernin-group-andreessen-horowitz-skims-ceo-and-more/)で1億ドル(約150億円)を調達し、評価額は11億ドル(約1650億円)に到達しており、いわゆるユニコーン企業となっています。 # インディ映画サブスクの垂直統合モデル変化: MUBI ![](/images/posts/f35cc8451c/image1.jpg) MUBIはインディー映画配信から製作・配給・劇場まで垂直統合型へ変化 / [MUBI](https://mubi.com/en/devices) [MUBI](https://mubi.com/)は 2007年創業のロンドン発のインディー映画ストリーミングサービスです。近年は配給・製作・劇場興行までを垂直統合したスタジオへと進化しています。 MUBI が対処した課題は、(1) ストリーミング配信の供給過多によるコンテンツ選択疲れ、(2) インディー映画の配給不足、(3) 映画ファンコミュニティの分散でした。MUBIは「1日1本の厳選キュレーション」というコンセプトで作品を提示し、品質保証をUXの中核に据えています。サブスク料金は国別価格となっており、日本では[月額1,300円](https://mubi.com/en/jp/memberships)、米国などでは[月額14.99ドル](https://www.pcmag.com/reviews/mubi)(約2,250円)、アップセルサービスである独自の劇場連携サービス[MUBI GO](https://help.mubi.com/article/155-what-is-mubi-go)(基本プランとあわせて月額19.99ドル(約3,000円))で毎週1枚のシネマチケットを付与することで LTV を高めています。 上記のサブスクビジネスを創業以来長らく続けてきたMUBIですが、2025年5月、[Sequoia Capital 主導で 1億ドル(約150億円)という大型の資金調達](https://www.ft.com/content/1e0645d5-054e-4b00-a545-b95a1e2b261a)をしました。2021年頃までMUBIは他社が権利を持つ準新作の作品を配信するモデルが中心でしたが、垂直統合(配信だけではなく自社で製作・配給・劇場公開まで行う)モデルへのシフトを行いました。2022 年にセールスと作品製作を行える[The Match Factoryを買収](https://www.steinbrennermueller.de/allgemein/mubi-acquires-production-and-sales-company-the-match-factory/)し、2024年2月には[配給大手Cinéartを買収](https://cineuropa.org/en/newsdetail/456319/)しました。2025年にはカンヌ映画祭にノミネートされた作品[「Die, My Love」の配給権獲得](https://variety.com/2025/film/global/mubi-jennifer-lawrence-robert-pattinson-die-my-love-1236402473/)も行っています。自社で上流から下流まで握る体制へ転換し、多額の運転資金とM&A原資が必要になったことで、近年ベンチャーキャピタルなどからの調達額を増やしています。今回の資金調達はコンテンツ取得・自社製作・M&A に充当され、AppleやNetflixを抑え「Die, MyLove」の放送権を2,400万ドル(約36億円)で獲得した事例は、領域特化プラットフォームであってもメジャースタジオと競合できることを示す象徴的ケースです。 そうした努力も実りユーザーベースは[世界190カ国・2,000万登録者にまで拡大](https://variety.com/2025/film/features/mubi-worth-billion-streamer-taking-on-a24-1236395959/%23:~:text=20%2520million%2520registered%2520users%2520around%2520the%2520world%2520in%2520190%2520territories.%25C2%25A0)し、英国では [2025年1Qに加入者数が過去最高を記録、前年同期比 64 % 増](https://www.kantar.com/inspiration/technology/competition-intensifies-as-prime-video-and-appletv-compete-for-dominance-in-subscriber-growth-2025)という伸びを示しています。 顧客属性は[25~34 歳・高可処分所得層に偏り、平均して6つの他サービスも併用するハードユーザー](https://www.kantar.com/inspiration/technology/competition-intensifies-as-prime-video-and-appletv-compete-for-dominance-in-subscriber-growth-2025)ですが、インディー映画を求める層にとって「ここでしか観られない」キュレーション価値が強固なリテンション要因になっています。 # おわりに SubstackとMUBIはともに 「プラットフォームを自前で構え、ニッチながらも他社にない独自コンテンツを集め、ファンを囲い込む」 という点で共通しています。加えて両社は次の 3 つのレバレッジを駆使しています。 ①顧客がコンテンツを消費するまでのコストの最適化: Substackはフィードとレコメンデーションで読者獲得コストを下げ、MUBIは1日1本のキュレーションで選択コストを削減しています。 ②複合的な収益モデルへの拡張: Substack が広告ネットワークへの拡張を示唆したように、サブスク基盤の上にレイヤーを重ねることでLTVを押し上げる戦略が見えます。MUBIも[Notebook Magazine](https://mubi.com/en/notebook/magazine)のような紙面、劇場配給、フェス開催などでデジタルサブスク外の収益を獲得しています。 ③コミュニティ主導のグロース: SubstackのNotesや[Chat](https://on.substack.com/p/chat)、MUBI GOによる映画館送客は、ユーザー同士の対話を活性化し、外部ソーシャルメディアに依存せずユーザー間での自然なサービス紹介機会を創出しています。 このように、量より質の差別化軸を明確にし、ファネル最上段から最下段までプロダクト内で完結させるよう設計し、追加ベネフィットを段階的に解放するようなグロース戦略が実行できると、広告景気や外部アルゴリズムに左右されにくく、持続的にファンに支持されるB2Cメディア事業が可能になると考えられます。 --- ## Q2 2025:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/de373c0f70 公開日: 2025-07-22 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/global-audience-insights-from-the-second-quarter-of-2025/))2025.07.22 Chartbeatは四半期ごとにグローバルのトラフィックから得られたインサイト(気づき)を共有しています。 2025年第2四半期、中東では平均エンゲージ時間が増加し、中央アジアではモバイル読者数が減少、ロイヤル読者数は北欧が最高を維持しました。 第2四半期の調査から得られた世界の読者インサイトについては、以下をお読みください。 *これまでのインサイト: [Q1 2025](/posts/fea1397f9e) / [Q4 2024](/posts/1e14a10498) / [Q3 2024](/posts/8da672ccfe) / [Q2 2024](/posts/c6f6766689)* ## エンゲージ時間は中東が最長 Q2にもっとも関心を寄せたのは中東の読者で、平均エンゲージ時間は38.3秒でした。中・東欧と中南米がそれぞれ35.6秒と31.7秒で続きます。 # 中央アジアと北欧でモバイルトラフィックが減少 中央アジア、アフリカ、東南アジアのパブリッシャーは、引きつづきモバイルからのトラフィックが大半を占めています。第2四半期には、すべての地域でページビューの65%以上がモバイルデバイスからのものでした。 # 複数の地域で検索トラフィックが減少 第2四半期、東南アジアのページビューの49%は検索エンジンからのもので、第1四半期の53%から減少しました。ほとんどの地域で、この参照元からのトラフィックが同様に減少していますが、中央/東ヨーロッパは例外で、第1四半期の23%から第2四半期には25%に上昇しました。 # ソーシャル・トラフィックは世界中で増加 第2四半期、アフリカのページビューの23%はソーシャルプラットフォームからのもので、第4四半期の20%から増加しました。北米のパブリッシャーも増加し、17%に上昇しました。 # 北欧では依然としてロイヤルティが強い ページビューに占めるロイヤルティ読者の割合がもっとも高かったのは北欧で48%。中・東欧が45%、南欧が40%と続きます。中・東欧は前四半期からの増加率が最もっとも大きく、第4四半期と比較して13ポイント上昇しました。 # 2025 Q2のポイント 世界全体の平均エンゲージ時間は30秒 平均エンゲージ時間は、中央アジアの24.2秒から中東の38.3秒まで幅がありました。全体として、平均エンゲージ時間は第1四半期の28秒から改善しました。 読者はモバイルファーストです どの地域でもサイト訪問の65%以上がモバイルデバイスによるもので、3つの地域では82%以上となっています。 検索からのページビューは減少傾向 第2四半期は中東欧を除くすべての地域で検索エンジンからのページビューが減少しました。これは、おそらくAIが検索に与える影響が大きくなっている結果であり、私たちが積極的にモニターしていることで、変化が起こったときに最新の情報をお届けし、データに裏打ちされた提案を提供することができます。 --- ## 2ページ読む読者の再訪率は、1ページの読者の2.75倍 URL: https://ximera.com/posts/f3ddc7c786 公開日: 2025-07-07 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/general/increase-return-visits-news-sites/))2025.07.07 *この記事は [INMA.org](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/post.cfm/analysis-readers-who-visit-2-site-pages-are-2-75x-likelier-to-return-than-those-visiting-1)[に](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/post.cfm/video-strategically-placed-links-are-among-8-ways-to-keep-readers-engaged)掲載されたものです。* 今日のデジタル環境のなかで、読者の関心を引きつけ、維持することはかつてないほど難しくなっています。 どう難しいのでしょうか。それはサイト新規訪問者の86%がその後7日以内に再訪問していない事実が語ってくれます。これはChartbeatがニュースサイトやメディアサイトへの3億以上の初回訪問を分析した結果、明らかになりました。 現実の厳しさを思い知らされる結果です。しかし、このデータは同時にいいニュースも明らかにしています。読者のメディア体験をより深く、より熱心なものにすれば、より高い再訪問率につながるということです。 ここでは再訪問につながる読者の行動を明確に理解するために、ページ閲覧数、スクロールの深さ、エンゲージメント時間、コンテンツタイプ、これら重要なシグナルを紐解き、カジュアルな訪問者を熱心なロイヤル読者に変える、具体的な方法を検討していきます。 ## より深い訪問を促す Chartbeatにとってエンゲージメントは目指すべき北極星のようなものですが、リピーターに関してはページ閲覧数がもっとも影響力のある指標です。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_MAY25_Chartbeat_First-Time_Visitors-1.jpg) 初回訪問時に1ページしか閲覧しなかった訪問者の再訪率はわずか8%です。ですが、もう1ページ閲覧した場合の再訪問率は22%に跳ね上がり、2.75倍再訪問しやすくなります。2ページ以上でも再訪問率は上昇しつづけますが、再訪問率の相対的な変化は11ページあたりで頭打ちになります。 より深い訪問を促す2つの方法 1. 見出しと画像をA/Bテストして、よりよい組み合わせを見つける:見出しと画像を合わせてにテストすると、平均して、見出しだけをテストするよりも滞在時間が15秒以上の質の高い訪問を生むクリックが3倍増加します。 2. ウェブサイト上の回遊率の高いページからヒントを得る:過去の調査から、金融やスポーツのコンテンツは、ニュースやメディア、アートやエンターテイメントよりも回遊率が高くなることがわかっています。 ## エンゲージメントを高める エンゲージメント時間の増加は、再訪問率の増加に対応するもう一つの指標です。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_MAY25_Chartbeat_First-Time_Visitors-2.jpg) ページ閲覧数と比べると、その効果はより直線的に表れますが、即効性はそれほどありません。たとえば、たった2ページの閲覧で22%の再訪問率を満たすには、ユーザーは2.5分サイトに滞在する必要があります。[2025年第1四半期の平均エンゲージメント時間がわずか28秒だった](/posts/fea1397f9e)ことを考えると、初回訪問にこれを求めるのは酷なことかもしれませんが、読者のエンゲージメントを高めることには、別の利点もあります。 エンゲージメント時間を増やす2つの方法 1. リアルタイムのデータを使って、どの記事が質の高い閲覧を促し、どの記事がそうでないかを確認する:新しい読者を惹きつけることが証明されている記事に、サイトのよりよい場所(編成)とPRのリソースを与えましょう。 2. ワード数が増えるほどエンゲージメントが高まるという調査結果があります*。特定の話題のパフォーマンスが低い場合は、過去の経緯などを取り入れたより詳細なアプローチを試して、現在の出来事により大きな文脈を提供しましょう。 *(*日本語訳注:言語が英語の場合の調査結果です)* ## より深いスクロールを促す 一般的に、スクロールが深いほど再訪問率も高くなります。ページ全体の25%~35%をスクロールした人の再訪率は、ベンチマークである14%程度ですが、これ以上の場合、再訪問率の伸びは小さくなります。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_MAY25_Chartbeat_First-Time_Visitors-3.jpg) 1つのページで深いスクロールがあると、ほかのページに費やす時間が限られることがわかっているため、1セッションあたりのページとスクロール比率も合わせて見てみましょう。最小限のスクロールでも、ページビューが1増えると再訪問率は5%から15%に増加し、5ページになると28%に跳ね上がります。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_MAY25_Chartbeat_First-Time_Visitors-4.jpg) スクロールの深さを増やす2つの方法 1. モバイル向けに最適化する:現在では、4つの記事のうち3つがモバイルデバイスで読まれています。このような小さなスクリーンを考慮した適切なフォーマットにしておきましょう。 2. レイアウトを試行錯誤する:読者が本文に到達しやすいように、画像を移動させたり、見出しをフォーマットし直したりするのはどうでしょうか。 ## コンテンツのフォーマットを多様化する 訪問者が最初にたどり着いたコンテンツのタイプ別に再訪問率を分析すると、トップページが新規訪問者を送り込むのに最適な場所であることは明らかです。最初にトップページへランディングした人の46%が7日以内に戻ってきています。そのほかのコンテンツタイプで再訪率が高いのはゲーム(39%)とセクションページ(35%)です。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_MAY25_Chartbeat_First-Time_Visitors-5.jpg) 異なるコンテンツ形式を使い分ける2つの方法 1. トップページ以降も継続的なエンゲージメントが得られるよう、体験を最適化する:トップページの重要性は確認できました。しかしだからといって、すべてのトラフィックをトップページに誘導して終わりではありません。新規訪問者が違うページを開き、さらに再訪問しやすくなるように、リアルタイムで記事の表示位置を最適化しましょう。 2. リアルタイムに更新するコンテンツを使って、新規訪問者に再訪問を促す:このフォーマットは、トラフィックを獲得するのに最適な手段であり、読者にさらに1ページ閲覧してもらうことで、再訪問の可能性は59%に増加します。 ## 再訪問を増やすためのポイント これらをどうやって自分の編集部に取り入れるか、考えていますね。 もっとも重要な4つの調査結果をまとめておきます。 - 「1訪問あたりのページ閲覧数」が再訪問にもっとも影響する指標です。2ページ閲覧すると、再訪問率は9%から22%に増加します。 - 滞在時間が25秒の訪問者の再訪問率はわずか9%です。75秒になれば14%が再訪問します。125秒なら22%です。 - ページの最初の3分の1をスクロールした訪問者は、そうでない訪問者より再訪する可能性が高くなる。 - トップページからサイトに訪問した初回訪問者の46%が7日以内に再訪問します。 --- ## CoffeeTable with Ximera 3「続・Webメディアの読者体験とサブスクリプション」(2025-08-19) URL: https://ximera.com/posts/3f06ffa2fa 公開日: 2025-07-01 著者: Ximera
キメラは7月に開催したウェビナーの続編として、8月19日(火)に再び、Webメディアの読者体験とサブスクリプションを解説するウェビナーをZoom Webinarにてオンライン開催します。 7月に開催した前回は、Webメディアにおける読者体験のフェーズを4つに分け、それぞれサービス提供側の理想の状態から必要な要素を洗い出し、KPIの分類や捉え方、取るべき施作を導く落とし込み(ブレークダウン)ついてまとめました。 その続編となる本ウェビナーでは、それぞれのフェーズの体験をより読者側から深掘るとともに、1. よくあるパターン、2. うまくいっているパターン、3. デリバリーのコントロールについてお話しします。登壇は引きつづきキメラ代表の大東洋克です。 なお、本ウェビナーはキメラが6月から連続して開催しているウェビナーシリーズ「CoffeeTable with Ximera」の第三回にあたります。6月に行われた第一回、7月に行われた第二回のようすはキメラのYouTubeチャンネルにてアーカイブ動画を公開中です。こちらをご視聴のうえ、ぜひ第三回にご参加ください。 参加申込は専用のフォームからお願いいたします。メディアの編集者、執筆者、ビジネス担当者・事業責任者、業界関係者の皆様、ぜひご参加くださいませ。 CoffeeTable with Ximera 3 「続・Webメディアの読者体験とサブスクリプション」ウェビナー 日時  : 2025年8月19日(火)17:00 - 18:00 形式  : オンライン(Zoom Webinar) 登壇  : 株式会社キメラ代表 大東洋克 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ --- ## データを示唆に変える:Tubular Insights & Strategy チームの3つの分析 URL: https://ximera.com/posts/insights-strategy-content-analysis 公開日: 2025-06-30 著者: Tubular Labs 概要: データは、行動につながる示唆になって初めて価値を持つ。Tubularの専門チームが使うコンテンツ分析・オーディエンス分析・競合分析の3つの型を、コーヒーブランドのYouTube戦略を例に整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/insights-and-strategy-brewing-better-content/))2025.06.30 ソーシャル動画の変化は速く、前の四半期に効いた型が翌日には通用しなくなります。Tubular の Insights & Strategy チームは、独自データと個別の市場調査を組み合わせて、ブランドやメディア企業に戦略上の示唆を提供しています。 データそのものは示唆ではありません。行動につながる結論が出て初めて示唆になる、というのが同チームの立場です。ここでは、そのために使われる分析の型をご紹介します。 ## コンテンツ分析:何が効いていて、なぜ効いているのか テーマ、フォーマット、制作上の選択、サムネイルの設計、出演者のタイプ、トーン、テンポ。こうした要素を横断して、何が響いて何が響いていないのかのパターンを探ります。パフォーマンスの背後にある「なぜ」を理解することが、クリエイティブの最適化につながるという考え方です。 ![](/images/posts/insights-strategy-content-analysis/coffee-brand-formats.png) 例として、米国とカナダのコーヒーブランドが YouTube でどう戦っているかを分析した結果があります。上位25本のアップロードのうち、ミュージックビデオ形式が36%、ナラティブ形式が32%を占めました。製品説明ではなく、エンターテインメントと物語へ明確に寄っているということです。 同じカテゴリーのなかでも、作り込んだ高予算のコメディで攻めるブランドと、別の型を選ぶブランドがあり、その差が成果の差として現れます。 ## オーディエンス分析:誰に届いていて、ほかに何を見ているのか ![](/images/posts/insights-strategy-content-analysis/audience-analysis.png) 視聴者の属性やエンゲージメントに加えて、その人たちがほかにどのカテゴリーを見ているかを見ます。自社カテゴリーの外に重なりを見つけられれば、コラボレーションや出稿先の候補が変わります。 ## 競合分析:空白地帯を探す 競合が何をやっていて何をやっていないかを整理すると、まだ誰も取っていない領域が見えます。同チームの顧客のなかには、この競合コンテンツ分析を年間のコンテンツ計画の土台に据え、戦略の転換に踏み切った例もあるといいます。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 3つの型はいずれも、社内でも再現できる問いの立て方です。何が効いているのか(コンテンツ)、誰に届いているのか(オーディエンス)、どこが空いているのか(競合)。ダッシュボードを眺める前に、この3つのどれを知りたいのかを決めておくと、分析が意思決定につながりやすくなります。 詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/insights-and-strategy-brewing-better-content/)からご覧いただけます。 --- ## MCPとA2Aが拓く、AI時代のメディア像 URL: https://ximera.com/posts/607f02463d 公開日: 2025-06-25 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Fabian Gieske](https://unsplash.com/ja/@fbngsk?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%89%8B%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%90%E4%BA%BA%E3%81%A8%E7%8A%AC%E3%81%AE%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%86%99%E7%9C%9F-cbIKeuURaq8?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # MCPとA2Aが拓く、AI時代のメディア像 Ximera Media Next Trends #74|Ikuo Morisugi| 2025.06.25 「データ/ツールとAIをつなぐ標準インターフェース(MCP)」と「AI同士をつなぐ共通言語(A2A)」。次世代のエージェント基盤を形作るもの # はじめに 現代のAIは、単なるチャットボットを超えて自律的に行動する「エージェント型AI(本稿では[Gartner定義](https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250514-ai-agent)の広義のエージェント型AIを指すこととします)」へと進化しつつあります。例えば、[Manus](https://www.youtube.com/watch?v=K27diMbCsuw)のようにユーザーの目標達成に向け、必要なリソースとツールと実行計画を策定し、タスクを自動で遂行するエージェント型AIが既に登場しています。 [Gartner](https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250514-ai-agent) [Gartner](https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20250514-ai-agent) こうしたエージェント型AIの台頭に伴い、AIと外部データをシームレスに連携させたり、異なるAI同士で通信できる標準プロトコルへのニーズが高まっています。特に注目されているのが、Anthropicが提唱した[Model Context Protocol(MCP)](https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol)と、Google主導で策定された[Agent2Agent Protocol(A2A)](https://developers.googleblog.com/en/a2a-a-new-era-of-agent-interoperability/)です。それぞれエージェント型AIを前提にしたオープンな標準規格であり、AIのタスク遂行能力を大きく高める技術として注目されています。 本稿では、MCPおよびA2Aとは何か、それがメディアの業界に具体的にどんな影響を与えるのか、今後メディア企業が取るべきアプローチについて取り上げます。 # Model Context Protocol (MCP)とは MCPを利用したシステム構成事例 / [Anthropic MCP ワークショップ (YouTube) を基に筆者作成](https://youtu.be/kQmXtrmQ5Zg?feature=shared&t=268) MCPを利用したシステム構成事例 / [Anthropic MCP ワークショップ (YouTube) を基に筆者作成](https://youtu.be/kQmXtrmQ5Zg?feature=shared&t=268) MCPは[Anthropicが2024年11月に公開](https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol#:~:text=Image%3A%20An%20abstract%20illustration%20of,connecting%20to%20a%20central%20hub)した、AIと外部データ/ツールをつなぐためのオープンな標準プロトコルです。Anthropicが「AIのためのUSB-Cポート」と呼んでいるように、様々なデータベースやコンテンツ、業務アプリなどにAIを統一的に接続するための[共通インターフェース](https://modelcontextprotocol.io/specification/)が定義されています。 従来は内外のデータやツールとAIを統合しようとすると、それらは様々な個人や企業から様々なフォーマットで提供されているため、手間がかかります。例えば、ChatGPTやClaudeからGoogle Driveと接続してファイルを検索/参照する機能がありますが、これまでは各社が個別にGoogle Driveと接続するAPIを使って自社サービスとの連携機能を開発する必要がありました。 一方で、MCPが適用されると、一度実装するだけで、共通のプロトコルに沿って様々なデータやツールをAIに利用させることができます。上記の例でいくと、GoogleがGoogle DriveのMCPサーバを提供すれば、各社がいちいち個別開発しなくても、どのAIアプリからもGoogle Drive連携ができるようになります。実際にChatGPTはMCPを使って、[カスタムコネクタ](https://help.openai.com/en/articles/11487775-connectors-in-chatgpt)という様々な外部リソースと連携できる仕組みを提供しています。MCPはオープンで標準的な仕組みなので、Google Driveと連携したい全てのAI開発企業が恩恵を受けられます。これがデータとツールのサイロ化の解消につながります。 MCPは既に[OpenAIやGoogle](https://techcrunch.com/2025/04/09/google-says-itll-embrace-anthropics-standard-for-connecting-ai-models-to-data/?utm_source=chatgpt.com)や[Microsoft](https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-copilot/blog/copilot-studio/model-context-protocol-mcp-is-now-generally-available-in-microsoft-copilot-studio/)をはじめ多くの企業が支持をしており、開発者コミュニティに急速に受け入れられつつあります。[Figma](https://help.figma.com/hc/en-us/articles/32132100833559-Guide-to-the-Dev-Mode-MCP-Server)、[Github](https://github.com/github/github-mcp-server)、[Stripe](https://docs.stripe.com/building-with-llms)、[PayPal](https://developer.paypal.com/tools/mcp-server/)、[Shopify](https://shopify.dev/docs/apps/build/storefront-mcp)など、デザイン、ソフトウェア開発、コマース、カスタマーサポートまで幅広く様々な企業がMCP対応を発表しており、[MCPのマーケットプレイス](https://mcpmarket.com/ja)には無数のMCPサーバが存在しています。 MCP利用側(MCPクライアント)は、Claude DesktopやChatGPT上から利用したいMCPサーバを設定すれば利用できるようになっています。AIアプリだけではなく、Visual Studio CodeやCursorなどのIDE(統合開発環境)経由でもMCPを利用できます。例えば、コーディングにAIを活用する際、Githubのコード置き場やバグ追跡システム等から必要な情報をMCP経由で取得し、より文脈を踏まえた高機能なコード提案が可能になります。 このようにMCPエコシステムは開発者中心に多様な業界で広がりを見せており、事実上の標準として定着し始めています。 # Agent2Agent (A2A)とは A2Aはエージェント同士の通信を可能にする標準規格を策定 / [A2A Protocol](https://www.a2aprotocol.net/docs/specification) A2Aはエージェント同士の通信を可能にする標準規格を策定 / [A2A Protocol](https://www.a2aprotocol.net/docs/specification) [A2A](https://developers.googleblog.com/en/a2a-a-new-era-of-agent-interoperability/)はエージェント同士がHTTP上で通信するプロトコルです。片方がクライアント(依頼者)となりタスクを依頼し、もう片方がリモートエージェント(応答者)としてそのタスクを処理する、というクライアント-サーバー型の関係で設計されています。メッセージは「タスク」単位で構造化され、依頼内容・進行状況ステータス・結果などを含む形式です。また各エージェントは「[エージェントカード](https://google-a2a.github.io/A2A/latest/topics/agent-discovery/)」と呼ばれる自己紹介用メタデータ(提供できる機能、スキル、通信エンドポイント、対応する認証/対話方法等)を公開し、他のエージェントはそれを見て相手の能力や連携方法を動的に知ることができます。AI版の名刺交換のように、エージェント同士が互いの存在とスキルを発見・認識する仕組みが備わっています。 A2Aの設計原則としてGoogleは、エージェント性の尊重、標準技術の活用、デフォルトでセキュア、長時間タスクサポート、モーダリティ非依存(テキストのみでなく音声や動画も扱える)をあげており、どんなAIでも「A2A」という共通プロトコルを話せれば、互いに発見し合い、認証し合い、そして安全に協調動作できるよう設計されています。 GoogleはA2A発表時点で、[AtlassianやSalesforce、SAP、ServiceNow、LangChainなど50以上の企業・団体がこの構想に賛同](https://developers.googleblog.com/en/a2a-a-new-era-of-agent-interoperability/)し開発に参加していると述べています。2025年5月には[MicrosoftもA2Aの採用を発表](https://www.microsoft.com/en-us/microsoft-cloud/blog/2025/05/07/empowering-multi-agent-apps-with-the-open-agent2agent-a2a-protocol/)し、Azure AI FoundryとMicrosoft 365 Copilotに導入が決まっています。 このようにMCPやA2Aによるオープンな標準化への業界の期待は大きく、主要ベンダーが相次いで採用に踏み切っている状況です。各企業は自社環境にも多数のエージェント型AIが混在するため、それらが連携できる互換性は重要視されており、MCPやA2Aには今後AI界の「HTTP」や「TCP/IP」のような基盤技術となる可能性があります。なお、OpenAIも[エージェント開発ツール(Agents SDK)](https://openai.github.io/openai-agents-python/)を公開し、エージェント機能開発の拡張を図っています。しかし2025年6月時点ではOpenAI独自のマルチエージェント通信規格やA2A対応も明らかにしていません。 A2AはMCPを補完する関係にあり(MCPがAIと外部システムをつなぎ、A2AがAI同士をつなぐ)、両者は併せて次世代のエージェント基盤を形作るものと位置づけられています。 # MCP/A2Aがメディア業界に与える影響 MCPとA2Aの社会実装が進んだ時にはメディア業界にも大きなインパクトがあると考えられます。ここではメディア業界で考えられるユースケースをいくつか挙げていきます。 1. コンテンツ編成の自動化・高速化: メディアの編集会議で行っているコンテンツの編成について、例えばニュースサイトなら、SNSのトレンドデータを外部MCPから取得し、自社CMS内の過去記事アクセス解析を社内MCPから収集し、A2Aで「アイデア出しエージェント」と「スケジュール調整エージェント」が協働して「明日のトップ面見出し記事リスト」をドラフトするといったことが可能です。人間の編集者は提案されたリストを確認して採用/校閲することで、データに裏打ちされた編成意思決定が短時間でできるようになります。 2. ユーザーごとのハイパーパーソナライズ配信: MCPによりユーザーの属性・過去の閲覧履歴・嗜好データをリアルタイム分析し、A2AでレコメンドAIとコンテンツ検索AIが連携することで、各個人に最適化されたコンテンツ配信がさらに深化します。例えば映画評価サイトにおいて、ユーザのAIとの会話履歴(ローカルデータ)、これまでそのユーザーが投稿したり閲覧した映画評価(自社データ)、NetflixやYoutubeなどのストリーミングサービス視聴履歴や評価データ(外部データ)をMCPで取得し分析する嗜好把握AIと、作品情報探索やサムネイル生成を行うコンテンツ検索/制作AIがA2Aで対話することで、そのユーザーの嗜好や気分に合った作品、その時に一番観たいと思えるサムネイルを提示できます。MCPとA2Aによりさらに多くのコンテキストが獲得され、ハイパーパーソナライズの深化がユーザーの満足度とリテンション(継続利用)を高めることにつながります。 3. 広告在庫消化の効率化: パブリッシャー側の広告在庫管理AIがA2Aで広告主のAIとやり取りし、最適な価格・フォーマットで広告枠をリアルタイム提供できるようになります 。既にリアルタイム取引されているWebサイト/アプリ上の広告枠だけでなく、今まで人間の営業が担っていたタイアップ交渉や枠売りの一部も自動化され、在庫消化率や収益効率の最大化が図れます。さらに複数のパブリッシャーのAI同士がネットワークを形成し、広告主エージェントのニーズに応じて横断的に在庫を融通するような仕組みも考えられます。これはある意味、現在のアドエクスチェンジやSSPがAI同士の対話型マーケットプレイスに進化した形とも言えます。 4. コンテンツ制作支援と新しいクリエイティブ: MCP対応でコンテンツ制作ツール(画像編集ソフトやCMS)とAIがつながれば、記者や編集者向けのエージェント型AIが実現します。過去の取材ノートや写真素材アーカイブにMCP経由でアクセスしつつ、生成AIが記事のドラフトや見出し案を提示することが可能になります。A2Aを介してファクトチェックAIや校正AIとも連携すれば、誤情報や文章ミスのチェックの工数も削減できます。最終的なファクトチェックや編集は人間が行うにせよ、裏方作業の大部分をAIが肩代わりすることで、人間は企画発想や取材そのものにより時間を割けるようになります。これは質の高いコンテンツ創出につながり、結果的にユーザー満足度や収益向上に寄与します。 このようにメディア領域ではMCP/A2Aの導入により「適切なコンテンツを、適切なユーザーに、適切なタイミングで届ける」ことがますます徹底されることが考えられます。各ユーザのコンテキストに合った体験を提供できればエンゲージメントと滞在時間が伸び、広告収入やサブスクリプション課金の継続率向上に直結します。また効率化によって少人数でも大量のコンテンツ運用が可能となり、新規ジャンル開拓やニッチ層向けサービス展開もやりやすくなるはずです。 一方でハイパーパーソナライズされたフィルターバブルによる読者への悪影響や、AIまかせの編成によるコンテンツの平準化/陳腐化など、品質をどのように担保していくかは大きな課題になると考えられます。各メディアならではのコンテンツ制作や編成を決めるのは結局のところ人間なので、AIを使いこなしつつ他社と差別化するスピードとユニークさをどう実現していくかが重要になります。 # おわりに MCPやA2Aが広まることで、ビジネス環境にもいくつか大きな変化が起こると考えられます。このようなオープンなプロトコルによって、これまで連携が難しかった異業種プレイヤー同士が技術的に接続しやすくなります。全く関係がないと思っていた業界の企業同士がエージェント型AIを介して新たなコラボレーションが生まれ、新たなサービスが数多く生まれることも大いに考えられます。 一方で、エージェント型AIが普及するとAIがユーザに最適化されたサービスを選んで提案することが当たり前になるため、各サービスにとってユーザの囲い込みがこれまで以上に効きづらくなります。その結果として「自社がどれだけユニークなデータやツールをもっているか」「そのデータやツールをいかにあらゆるエージェント型AIへ流通させられるか」という軸での競争が重視されるようになります。これは新たなユーザ獲得チャネルとなる一方で、自社サービスがAI経由でコモディティ化しないよう工夫が必要になります。極端に言えば、ユーザーは裏でどの企業のサービスを使っているか意識しなくなる可能性もあり、その中でブランド想起させる戦略や、エージェントにも選ばれる存在になることが課題となります。 また、このようなAI前提のビジネス環境において人間の役割がAIと協働する方向に変わるため、求められるスキルセットや意思決定の仕組みや組織体制も変わっていくことが考えられます。既に[エージェント型AIを組織図に組み込んだリファレンスモデル](https://www.youtube.com/watch?v=nGbDFCEVsxE)も登場しており、新たな時代に向けた組織像が見直されています。 エージェント型AIを取り巻く技術は難解に映るかもしれませんが、「データ/ツールとAIをつなぐ標準インターフェース(MCP)」と「AI同士をつなぐ共通言語(A2A)」というシンプルな構造です。これらが何を可能にし得るかを想像し、ユーザーにとって本当に価値のある体験とは何か、AIに任せるべき部分と人間ならではの付加価値は何か、そうした問いを軸に据えつつ、新技術を手段として使い倒す発想が必要となってきます。 --- ## Chartbeatの新機能: Tubular Viewpoint(ソーシャル動画分析) URL: https://ximera.com/posts/ca110ff314 公開日: 2025-06-17 著者: Chartbeat 2025.06.17 ソーシャル動画はオーディエンス戦略において強力なツールですが、何が効果的か、それはなぜなのかを掴むには難しいことがあります。そこで、2023年にChartbeat社が取得したソーシャル動画分析Tubular Labsのサービスを、Chartbeatのお客様にご利用いただける「Tubular Viewpoint」を開発しました。 編集チーム向けに設計されたViewpointは、YouTube、Facebook、Instagram、TikTokの主要なソーシャル動画分析を1か所に集約します。 ![](/images/posts/ca110ff314/unnamed.gif) Viewpointでできること - ニュースルームの動画パフォーマンスをプラットフォーム間で追跡 - 他のパブリッシャーの視聴回数、エンゲージメント、アップロード数と比較 - 話題になりはじめたネタを素早く見つけ、タイミングを逃さない 詳しいご案内や導入のご希望は [chartbeat@ximera.jp](mailto:chartbeat@ximera.jp) まで、お気軽にご連絡ください。 --- ## CoffeeTable with Ximera 2「Webメディアの読者体験とサブスクリプション」(2025.07.16) URL: https://ximera.com/posts/f579fde08a 公開日: 2025-06-01 著者: Ximera [[このウェビナーの続編ウェビナーが8月19日に開催されます。参加無料、登録受付中です。CoffeeTable with Ximera 3「続・Webメディアの読者体験とサブスクリプション」](/posts/3f06ffa2fa)](https://www.youtube.com/live/k4MhMMdnqY8) [このウェビナーの続編ウェビナーが8月19日に開催されます。参加無料、登録受付中です。CoffeeTable with Ximera 3「続・Webメディアの読者体験とサブスクリプション」](/posts/3f06ffa2fa) キメラはウェビナーシリーズ「CoffeeTable with Ximera」の第二弾として、Webメディアの読者体験とサブスクリプションを解説するウェビナーを7月16日(水)に開催します。本日から、無料の参加申込受付を開始しました。 本ウェビナーは6月に行われた「CoffeeTable with Ximera」の第一弾につづいて行われるもので、キメラ代表の大東洋克が登壇します。Webメディアにおける読者体験のフェーズを4つに分け、それぞれで考えられる要素とKPI、施策の実行と検証についてまとめ、Webメディアの購読・サブスクリプションの取り組みを解説します。 Webメディアのエンゲージメントを中心に解説した第一弾のウェビナーはYouTubeにて、アーカイブ動画が公開されています。こちらを合わせてご視聴いただけると、第二弾の理解がより深まります。 フォームから無料の参加申込をお待ちしております。メディアの編集者、執筆者、ビジネス担当者・事業責任者、業界関係者の皆様、ぜひご参加くださいませ。 CoffeeTable with Ximera 2 「Webメディアの読者体験とサブスクリプション」イベント概要 日時  : 2025年7月16日(水)15:00 - 16:00 形式  : オンライン(Zoom Webinar) 登壇  : 株式会社キメラ 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ 参加方法 参加申込フォームからお申し込みください。 後日、ご登録のメールアドレス宛に参加URLをお送りいたします。 申込期限:7月15日(火)17:00 --- ## 高付加価値を生むロングテールフードコマース URL: https://ximera.com/posts/a710640b33 公開日: 2025-05-28 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Luisa Brimble](https://unsplash.com/ja/@luisabrimble?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%97%E3%81%9F%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%88%E3%81%A8%E7%B7%91%E3%81%AE%E8%91%89%E9%87%8E%E8%8F%9C%E3%82%92%E7%99%BD%E3%81%84%E9%99%B6%E6%9D%BF%E3%81%AB-vIm26fn_QKg?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # 高付加価値を生むロングテールフードコマース Ximera Media Next Trends #73|Ikuo Morisugi| 2025.05.28 「ロングテール商材へのフォーカス」「在庫の可視化」と「取引・物流・決済の一体化」を軸に。巨大な中央集権プラットフォームから価値共創型の“顔が見える”取引へとコマースの軸足が移りつつある兆しでもあります # はじめに 2024年12月まで[米国の食料品価格は対前年同月比で2.5%上昇](https://www.bls.gov/opub/ted/2025/consumer-price-index-2024-in-review.htm)し、インフレで高止まりするコストが消費者、飲食/小売、卸、メーカーまで食料品業界のあらゆるプレイヤーを直撃しています。通常であれば、インフレが起こると、消費者を中心に買い控えが起こり、市場は伸びが鈍化したり、減退していきます。一方で、この厳しい状況下においても、特定のこだわりを持つ消費者を中心とした「スペシャルティ食材」市場の総売上高は、[2023年に2070億ドル(約31兆円)に到達。ここ10年間で149%の伸び](https://www.forbes.com/sites/douglasyu/2025/01/19/specialty-food-association-unveils-winter-fancyfaire-sunsetting-winter-fancy-food-after-49-years/)を記録しています(2024年のデータはまだ開示されていませんが、[2023年から6%成長すると予測](https://www.marketwatch.com/story/7-trends-to-watch-in-the-food-world-from-freeze-dried-candy-to-mushroom-coffee-9e98fe45)されています)。 スペシャルティ食材とは、地域/製造方法/品質/スタイル/ブランド等の観点で独自性や限定性を持つ高付加価値食材を表す用語で、例えばクラフトビール、アルチザンチーズ、トリュフ、ビーントゥバーチョコ(カカオ豆から一貫して自社製造で作るチョコ)、希少キノコ、ジビエなど様々なものが含まれます。こうした食材は、中小メーカーが大手ではできないようなこだわりをもった仕入れ/製造/マーケティングプロセスを持っており、一般的な同カテゴリーの商品よりも価値があるとみなされ、プレミアムな価格で販売されています。 その背景には、「作り手やストーリーが見える食材」への需要と、マスマーケットでは拾いきれないロングテール(一点一点は販売量が少ないが積み上げることで総体として売上を作れるニッチ商品群)の拡大があります。こうした潮流を捉え、サプライチェーンの中間流通を圧縮し、売り手と買い手をダイレクトに結びつけるスタートアップが急成長しています。本稿では、そうしたロングテール流通における最新トレンドおよびメディア業界にも適用できる示唆を取り上げていきます。 # ストーリーで単価を高める希少食材プラットフォーム: Foraged Foragedのマーケットプレイスで野生キノコやジビエなど希少食材の売買ができる / [medusa.js](https://medusajs.com/blog/foraged/) Foragedのマーケットプレイスで野生キノコやジビエなど希少食材の売買ができる / [medusa.js](https://medusajs.com/blog/foraged/) 2021年にサンフランシスコで創業した[Foraged](https://www.foraged.com/)は、「小規模な食品販売業者が持続可能なビジネスを成長させ、同時に一般の人々が簡単に自然食品を手に入れられるようにする」という[ミッション](https://www.foraged.com/about-us#:~:text=To%20empower%20small%2Dscale%20food%20purveyors%20to%20grow%20healthy%2C%20sustainable%20businesses%20while%20nourishing%20everyday%20people%20with%20easy%20access%20to%20natural%20foods.)のもと、野生キノコや山菜、ジビエ、はちみつ、オイル、ジャムなどの希少食材をC2C/B2Cで売買できるマーケットプレイスです。 多くの希少食材の採取者や農家は、流通チャネルや販路を持たず、販売機会の創出や物流対応に困難を抱えていました。また、買い手であるシェフや食材バイヤーにとっても、品質の保証や「誰が・どこで・どう作ったか」のトレーサビリティが曖昧な希少食材を安定して調達するのは難題でした。 Foragedはこのギャップに着目し「売り手と買い手をマーケットプレイスに集約+バックグラウンドストーリー+迅速な配送」を軸にしたソリューション提供をしています。商品ページに商品の収穫地域、生育環境、採取者のプロフィール、収穫プロセス、料理例などを記載することによって、透明性と情緒的価値を両立しています。単なる「物」としてではなく「ストーリーのある食材」として商品を訴求することで、従来よりも高単価での販売を実現しています。 また、買い手がユニークな料理を提供したいプロのシェフであるケースだったり、そもそもForagedは生鮮食品の取り扱いが多いこともあり、買い手を満足させるには鮮度と発送スピードが非常に重要になります。Foragedは売り手向けに[詳細なパッキング/配送ガイド](https://www.foraged.com/blog/how-to-ship-fresh-produce)を提供しており、いかに商品を傷ませずに48時間以内で到着できるようにするかを重視していることがわかります。 物流面では[Shippo](https://goshippo.com/)と連携し、[主要配送キャリアとの多様な配送方法を割引価格で出品者へ提供](https://help.foraged.com/selling-with-foraged/what-are-my-shipping-options-on-foraged/?utm_source=chatgpt.com#:~:text=As%20a%20vendor,days%2C%20for%20example.)しています。また[Tap-to-PayのモバイルPOS](https://help.foraged.com/selling-with-foraged/stripe-reader-101-the-basics/)により、ファーマーズマーケットなどでのオフライン販売においてもオンラインと統一された在庫で販売できる仕組みを整備しました。 Foragedのビジネスモデルは、[取引手数料10%と決済手数料](https://help.foraged.com/selling-with-foraged/what-are-the-fees-for-listing-on-foraged/)に加え、[月額47〜172.5ドルの有料プラン](https://explore.foraged.com/sell/pricing-2/)となっています。より上位のプランになるほど、CRM/メールマーケティング機能やマーケットプレイスでの優先順位掲載などの販促機能を提供しています。さらに、既存取引先を[紹介プログラム経由でサインアップさせると利用料が割引されるクーポンの発行](https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfQFnQjdnggNmsZwb05d8gWGfNhgjV84KQwP5tJvMzj30K0rw/viewform)により、ネットワーク効果を活かしながら顧客開拓を行っています。 Foragedは[サービス開始から1年でGMV(流通総額)+400%、リピート顧客比率+1,000%を記録](https://techcrunch.com/2023/07/12/foraged-mushroom-marketplace-seed/)しており、大きく飛躍しています。 # 独立系卸会社を支援する"食品流通のOS” : Pepper [Pepperは独立系卸のコスト削減と売上増に必要な機能群を一気通貫で提供](https://vimeo.com/952109566) Pepperは独立系卸のコスト削減と売上増に必要な機能群を一気通貫で提供 [Pepper](https://www.usepepper.com/)は元Uber Eatsのオペレーション責任者だったBowie Cheung氏が2019年にニューヨークで創業したスタートアップで、小規模な独立系卸に対してそのビジネス成長を支援するテクノロジーを提供しています。 消費者の多様化する嗜好とこだわりに対応するため、卸の顧客である飲食店や小売業者は以前よりもさらにユニークな食材の取り扱いを求めるようになっています。中小の独立系の卸はこうしたニーズに応えることで大手と差別化を図ろうとしており、SKU数が多く変動性の高い商品群、例えばスペシャルティ食材のようなロングテール商品を扱うようになってきています。 一方で卸会社では、営業や受発注の多くを紙・電話・FAXなどアナログで行っており、上記のSKU数の多さや変動性も相まって、ミスや非効率の発生や人的リソースの過不足が慢性的な課題となっていました。また、商品情報の整備や販促手段も乏しく、メーカーとの価格交渉力でも大手に劣る構造的な不利がありました。 Pepperはこれらのペインに対し、独立系地域卸からメーカーへの発注、飲食店/小売店への販売まで、卸の商流を一括して管理できる下記の統合ソリューションを提供しています。 1. 10万SKUまで対応する飲食/小売店とB2B取引できる[モバイルECアプリ/サイト](https://www.usepepper.com/products/ecommerce)(卸会社名で提供できるホワイトレーベル型) 2. Email/SMS/ボイスメールで[メーカーとの発注プロセスを支援するAI](https://www.usepepper.com/products/intelligent-inbox) 3. 買い手となる飲食/小売店の新規開拓/管理のための[営業支援AI](https://www.usepepper.com/products/dsr-connect) 4. メーカーの製品情報の正確性を整えるための[商品画像・商品説明・栄養情報を集約したDB](https://www.usepepper.com/products/salt) 5. キャッシュコンバージョンサイクルを早めるための[請求/支払い管理システム](https://www.usepepper.com/products/payments) また、[アプリ内でのネイティブ広告やPush通知などのデジタルマーケティング機能を提供](https://lets.usepepper.com/smartsolutions)しています。広告はメーカーへのリスティング枠販売で、[卸売企業に広告収益が支払われる](https://www.usepepper.com/distributors#:~:text=Get%20Paid%20to%20Participate%20in%20National%20Advertising%20Campaigns%20that%20Fuel%20Case%20Growth)ため、営業効率の向上だけでなく、新たな収益源が確保できます。 2024年5月時点で、200社の卸がPepperを導入。[導入企業の平均売上は+23%、営業担当者あたりの工数を週あたり10時間削減、リテンション率は93%という実績](https://techcrunch.com/2024/05/13/pepper-iconiq-startup-foodservice-ecommerce-30m/)が出ています。導入事例として、フロリダや東海岸の青果卸が[平均注文単価を23-29%引き上げたとするレポートも公表](https://www.usepepper.com/post/an-investment-in-customer-experience-that-pays-for-itself)されています。 Pepperのビジネスモデルとしては、月額SaaSの利用料金、決済手数料、広告収益の3軸でマネタイズしていると考えられます(価格帯については非公表)。2024年5月には[ICONIQ Growth主導で3,000万ドル(約45億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2024/05/13/pepper-iconiq-startup-foodservice-ecommerce-30m/)を実施し、累計調達額は6,000万ドルに到達、さらなる成長が期待されます。 # おわりに ForagedとPepperは対象とする市場レイヤーこそ異なりますが、共通して「ロングテール商材へのフォーカス」「在庫の可視化」と「取引・物流・決済の一体化」を軸に、従来型の流通構造に変革をもたらしています。メディア業界の観点では下記が参考材料となります。 1. そこにしかないロングテール型コンテンツ Foragedは在庫情報と作り手の物語を直結させることで、単価とリピート率を同時に引き上げる設計が可能になりました。特に“誰が・どこで・どう作ったか”という情報が付加価値となるのは、メディアにおけるコンテンツでも同じことが言えます。クリエイターエコノミー全盛の現代では会社単位ではなく、「誰が」発信しているかが、より重要になっています。近年では会社の公式SNSアカウントよりも、創業社長や会社所属するインフルエンサーの方にフォロワー数やコンテンツ視聴数が多いことも珍しくありません。コンテンツについては、どこにでもあるコンテンツではなくニッチでも良いので各メディアならではの独自性と集約性を作りこむことこそが差別化につながると考えられます。 2. 収益モデルの多角化 ForagedやPepperのように取引手数料だけに依存せず、SaaS課金、決済手数料、広告を組み合わせたモデルは、景気変動に強く、中長期的な安定収益基盤の構築につながります。近年はGoogleやMetaに自社へのトラフィックを奪われていた状況から、さらに少しづづChatGPTなどAIにトラフィックがシフトしています。様々なメディアがAIに消費されるだけのコンテンツにならないように対策を講じはじめていますが、現状では広告のような自社トラフィックのマネタイズに収益源が偏っているメディアはリスクが高くなっています。以前から言われていることではありますが、改めてサブスクや物販やイベントなど外部トラフィックだけに依存しない追加収益モデルの必要性が高くなっていると考えられます。 ForagedとPepperが示したようなロングテール型フードコマースの台頭は、巨大な中央集権プラットフォームから、価値共創型の“顔が見える”取引へとコマースの軸足が移りつつある兆しでもあります。メディア企業にとっても、こうした変化は、外部環境のリスクを乗り越えるための重要な手がかりとなりえます。 --- ## マルチプラットフォーム時代のオーディエンス獲得プレイブック URL: https://ximera.com/posts/multi-platform-audience-playbook 公開日: 2025-05-14 著者: Chartbeat 概要: WAN-IFRA World News Congress(クラクフ)でのChartbeat講演レポート。欧州のトラフィックとエンゲージメント動向、ソーシャル動画の機会、Daily MailのTikTok戦略、そしてプラットフォームごとに読まれるトピックの違いを、ChartbeatとTubularのデータから整理する。 by Chartbeat([原文](https://chartbeat.com/resources/research/our-playbook-for-winning-over-multi-platform-audiences/))2025.05.14 ポーランド・クラクフで開催されたWAN-IFRA World News Congressで、ChartbeatのEvan Gillisが「マルチプラットフォームのオーディエンスをどう獲得するか」をテーマに講演しました。Chartbeatのパブリッシャーネットワークと、Tubular Labsのソーシャル動画データベースを突き合わせた内容です。ここではその要点をご紹介します。 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/krakow-session.jpg) ## 欧州のトラフィックとエンゲージメント ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/europe-pageviews.png) 欧州の週次ページビューは増加傾向にあります。米大統領選のあった11月ごろにピークを迎えたあと、第1四半期は週あたり約40億ページビューとなり、第4四半期の37億から伸びました。 ただしトラフィックが増えること自体は、機会であると同時に取りこぼしのリスクでもあります。増えた訪問者がどれだけ実際に読み込んでいるのかを見なければ、注力すべき場所を判断できません。 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/europe-engaged-time.png) 第1四半期の欧州における平均エンゲージメント時間は29秒でした。もっとも長いのはスウェーデンの44秒。開催国であるポーランドも37秒と平均を上回りました。一方でイタリア、フランス、ポルトガルは23-24秒と平均を下回っています。 順位がどこであれ改善の余地はあります。Chartbeatがデータにもとづいて推奨しているのは次の2点です。 - 記事の分量を増やす。2,000語程度までは、長くなるほどエンゲージメント時間が伸びる傾向が確認されています - 静的な記事にライブ更新を組み込み、コンテンツの鮮度と関連性を保つ ## 読者はどこから来ているか ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/referral-sources.png) 流入元別に見ると、まず内部流入が増えています。サイト内の回遊を促す施策が機能していることを示すサインです。 欧州のニュースサイト外からの流入に目を向けると、検索エンジン経由がわずかに減少しています。前四半期比で1%の減少にとどまりますが、AIが検索に与える影響への懸念は強まっており、Chartbeatは今後も継続的に観測していくとしています。 ## 次の大きな機会はソーシャル動画 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/social-video-volume.png) 自社サイトが読者エンゲージメントの中核であることに変わりはありませんが、ソーシャル動画の機会は日々拡大しています。2024年3月から2025年3月までの1年間で、6,000万人のクリエイターが約40億本の動画をアップロードしました。この膨大な量のなかに、移民、選挙、戦争といった関心の高いテーマをめぐる、ニュースパブリッシャーにとっての戦略的な余地があります。 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/youtube-trends.png) YouTubeは、2024年終盤からの2か月と2025年初頭の2か月を比べると、アップロード数が2.5%増、視聴数は10%増でした。投入量に対して視聴の伸びが上回っており、依然として手堅いプラットフォームです。 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/tiktok-trends.png) TikTokは視聴の伸びがアップロードの伸びを一貫して上回っています。ニュースパブリッシャーにとってはまだ手探りの面もありますが、年初2か月でアップロードは11%増加しました。 ## TikTokで成果を出すDaily Mailの型 ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/tiktok-news-creators.png) ニュース領域のクリエイターに絞ると、TikTokではDaily MailがBBC News、Metro、Brut FR、ITV Newsといった競合を大きく引き離しています。要因のひとつは単純な投稿量で、BBC Newsの2倍以上を投稿しています。 そのうえで、同社の戦略は次の3点に整理できます。 - 高頻度の投稿 - 大型の人物ニュースに加え、山火事や航空機事故といった速報の継続的なカバー - #dailymail ハッシュタグの一貫した使用。Tubularがこれを独立したニューストピックとして分類するほど定着している ソーシャル上でロイヤルなオーディエンスを育てるうえで、ブランドとトピックの一貫性が効くことを示す例です。 ## プラットフォームごとに読まれるトピックは違う ![](/images/posts/multi-platform-audience-playbook/top-topics.png) Chartbeatのデータでは、11月から3月にかけてニュースサイトでもっとも読まれたトピックはDonald Trump氏で、8,000億分を超えるエンゲージメント時間を集めました。ロシア・ウクライナ戦争も5,760億分と大きく、Keir Starmer氏が110億分、Volodymyr Zelensky氏が95億分と続きます。 一方、ソーシャル動画では様相が変わります。TikTokでもTrump氏は上位トピックでしたが(Daily Mailの最上位動画は、2025年初頭に米国で一時的なTikTok禁止措置が解除された件を扱ったものでした)、同時期のロシア・ウクライナ戦争は上位に入っていません。 読者はプラットフォームごとに異なる目的で使い分けている、ということです。自社サイトやYouTubeで機能するものが、TikTokでも機能するとはかぎりません。 ## パブリッシャーへの4つの示唆 - トラフィックの伸びにエンゲージメント戦略を合わせる。訪問者が増えるほど、読み込ませる質とフォーマットが効いてくる - 回遊への投資を続ける。訪問の深さが増し、再訪の確率が上がることがデータで確認できている - TikTokに踏み込む。視聴が多く競合はまだ少ないため、先行者の余地が大きい - プラットフォームごとにコンテンツを設計する。たとえば戦争関連はニュースサイトとYouTubeでは強い一方、TikTokでは伸びない。リアルタイムデータでどこで何が効くかを把握したうえで計画する 一貫しているのは、有効なオーディエンス戦略は固定的ではなく、プラットフォームごとに動的であるという点です。 --- ## サバンナ・バナナズに学ぶ、スポーツチームのソーシャル戦略5つ URL: https://ximera.com/posts/savannah-bananas-social-lessons 公開日: 2025-05-12 著者: Tubular Labs 概要: 直近90日でMLB全球団合計7,170万回に対し、1チームで4,290万回。エキシビション野球チーム「サバンナ・バナナズ」が示すのは、競技ではなく共有のされ方を変えるという発想。5つの型をTubularのデータから読み解く。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/5-social-media-lessons-traditional-sports-teams-can-learn-from-the-savannah-bananas/))2025.05.12 競技そのものを変えるのではなく、競技の共有のされ方を変える。米国のエキシビション野球チーム「サバンナ・バナナズ」が示しているのはその発想です。 試合中に振り付けのダンスを踊り、キルトを穿いてプレーし、観客を巻き込んだ演出を仕掛ける。全米をツアーし、MLB の本拠地球場を満員にしています。 ![](/images/posts/savannah-bananas-social-lessons/mlb-vs-bananas.png) 数字で見ると規模がわかります。直近90日で MLB 全球団の YouTube 視聴数の合計が7,170万回だったのに対し、バナナズ単独で4,290万回。プラットフォーム横断のソーシャル動画エンゲージメントでも、MLB の公式コンテンツにほぼ並んでいます。 ここでは、Tubular の分析から読み取れる5つの型をご紹介します。 ## 1. 情報より先に、楽しませる バナナズはあらゆる瞬間をコンテンツの機会として扱います。ハイライト映像の枠を超えて、マイクを付けた選手のやり取り、ロッカールームの空気、コーチの軽口といった、スコアボード以外の要素を見せています。 ## 2. カメラではなく、フィードに最適化する 縦型のフレーミング、冒頭で引きを作るフック、短い尺。2時間の試合を YouTube で配信しつつ、同じ素材からショート向けの編集を切り出します。2時間の試合は、6本の Instagram Reels、舞台裏の TikTok、YouTube のミニドキュメンタリーになり得るという発想です。 2025年第1四半期だけで、TikTok、Instagram、Facebook、YouTube に385本を投稿しました。同時期のアトランタ・ブレーブスの4倍以上です。YouTube だけで1日平均1.5本、132本のうち92本(69.7%)がショートでした。 ## 3. 選手をキャラクターとして立てる 選手にはニックネームと役どころがあり、ファンはインフルエンサーを追うように個々の選手を追いかけます。プロ選手は同時に個人ブランドでもある、という前提に立てば、伝統的なチームでも取れる型です。 ## 4. ファンと一緒に作る コメントを読み、反応し、そこからコンテンツを作ります。2025年4月にもっとも視聴された TikTok は、ファンのコメントへの返信として作られた投稿で、30日間で1,760万回再生されました。 ## 5. 新しいファン層を取りに行く シーズン開幕とともに TikTok の視聴は1月の730万回から3月の1億1,700万回へ、2か月で1,503%増加しました。Facebook のフォロワーは56%が女性で、ロサンゼルス・ドジャースの21%と比べると際立ちます。ダンスやポップミュージックといった別の領域と重なることで、従来のスポーツとは異なるファン層を育てています。 ## 日本のスポーツ・メディア事業への含意 要点は、チームやリーグが「メディアクリエイターのように考える」ことです。試合そのものは変えなくても、素材の切り出し方、出す場所、ファンとの関わり方は変えられます。既存の放送枠の外で、誰に向けて何を作るのかを設計し直す余地は大きいはずです。 分析の詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/5-social-media-lessons-traditional-sports-teams-can-learn-from-the-savannah-bananas/)からご覧いただけます。 --- ## Chartbeatの新機能: Data Lab, Cohorts URL: https://ximera.com/posts/8498233457 公開日: 2025-05-09 著者: Chartbeat Chartbeatから2つの新しい機能をお知らせします 2025.05.09 # Chartbeat Data Lab Historicalデータの活用と視覚化を向上させる分析スタジオ機能 Chartbeat Data Labは単なるレポートツールではありません。レポートやビジュアライゼーションの作成、スケジュール設定、エクスポートの機能を備えた包括的なソリューションです。 Chartbeat Data Labを使えば、Chartbeatを離れることなくHistoricalデータを分析・可視化し、これまでにない方法でコンテンツ戦略に活かすことができます。 Chartbeat Data Labを試す理由 - すべてが 1 つのツールに: Chartbeat 内でレポートとビジュアライゼーションを作成および操作し、ワークフローを合理化して貴重な時間を節約します - 安全で信頼できるデータ: Chartbeat Data Lab は、お客様が信頼しているのと同じChartbeat メトリックを使用して、あらゆる段階でデータのセキュリティと整合性を確保します - これまで以上のデータ: 一度に複数のサイトをクエリし、ビジュアライゼーションとレポートの背後にある基礎データにドリルダウンします - カスタマイズ可能: ユースケースに合わせて設計された堅牢なテンプレートから始めて、Chartbeat メトリックとフィルター パラメータの豊富なセットを使用して、テーブルと視覚化をすばやく構築します - より優れたコラボレーション: ダッシュボードを保存してチームと共有することでシームレスなコラボレーションを実現し、複数の形式でエクスポートしてプレゼンテーションやその他のデータセットを強化できます 情報に基づいた意思決定を促進し、成功を達成するために必要なツールをチームに提供することができます。 # Chartbeat Cohorts 業界全体のコンテンツパフォーマンスを提供する、ほかにない強力な新ツール ![](/images/posts/8498233457/Chartbeat-Cohorts.jpg) Chartbeatのグローバルパブリッシャーネットワークから得られる、匿名化されたリアルな集計データを用いて、初めてサイトのパフォーマンスをベンチマークできるようになりました。つまり、エンゲージメントとトラフィックを同業他社と比較することが可能になったということです。 Chartbeat Cohortsではエンゲージメントとトラフィックのデータを、トピック別とサイトレベルの両方で、他の類似パブリッシャーコホートと比較できます。これほど詳細かつ関連性の高いパブリッシャーデータはほかでは見ることができません。 Cohortsが可能にすること - サイトのパフォーマンスを同業・競合他社から集計されたリアルデータと比較し、コンテンツ戦略を策定できます - 新たに取り上げるべきトピックを発見し、どのトピックが成長とエンゲージメントを促進するかを検証できます - お客様のサイトデータはChartbeatによって保護され、すべてのデータは匿名化され、集約されます ご利用にはお申し込みが必要です Chartbeat Data LabとChartbeat CohortsはAdd-onです。ご利用には通常の契約プランとは別にお申し込みが必要です。プランによりAdd-onの利用に費用が発生する場合があります。詳しいご案内や導入をご希望される際は、キメラ宛てにご相談ください。 --- ## リアルアセット/リアル体験でコンシューマ実装が進むWeb3 URL: https://ximera.com/posts/942d2561ef 公開日: 2025-05-07 著者: Ikuo Morisugi Photo by [IMON LEE](https://unsplash.com/ja/@simonppt?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%B0%B4%E3%81%AB%E6%B5%AE%E3%81%8B%E3%81%B6%E5%A4%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E6%B0%B7%E5%B1%B1-qjs2R1lMMcw?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # リアルアセット/リアル体験でコンシューマ実装が進むWeb3 Ximera Media Next Trends #72|Ikuo Morisugi| 2025.05.07 CourtyardとBlackbirdは用途も業界も異なるものの、「Web3技術の複雑さを裏に隠し、リアルアセット・リアル体験をシームレスにトークン化する」という共通戦略を採っています # はじめに 2021年頃のブロックチェーン/暗号資産技術の盛り上がりで「Web3」の概念は一躍脚光を浴びましたが、その後の暗号資産の相場崩落、経済全体の引き締めによる資金流入減、AI台頭によりブームは終焉を迎えました。 それでも2025 年現在、Andreessen Horowitz(a16z crypto)、 Union Square Ventures、New Enterprise Associates(NEA) といったトップティアのベンチャーキャピタルはWeb3分野への投資を続けています。グローバルでのWeb3 スタートアップの年間資金調達総額は [2021年の約 330 億ドル(約5兆円)から 2023 年には約67億ドル(約1兆円)へ急減](https://news.crunchbase.com/web3/funding-cratered-sbf-ai-crypto-bitcoin-eoy-2023/?utm_source=chatgpt.com)したものの、[2024 年には 74億ドル(約1.1兆円)へ反発し、2025 年 Q1 も前年同期比で2倍(ただしBinanceの大型調達を除くと2024年同期比で同程度)](https://news.crunchbase.com/web3/crypto-blockchain-funding-q1-2025-boost-binance/?utm_source=chatgpt.com)を示しました。総額はピーク時の約5分の1ながら、ベンチャーキャピタルからのWeb3へのリスクマネーは、未だ課題感のある分野や新興分野に集中しています。主には、①クリエイターエコノミーやリアルアセットの再設計と収益分配、②スケーラブルな金融インフラ、③生成 AI × Web3 融合、にフォーカスが置かれ投資が行われています。 追い風となったのが 2025 年初頭のビットコイン現物 ETF(投資信託) 承認で、機関投資家からの資金が暗号通貨市場に流入しリスクマネーが潤い始めました。また、[Z世代の51%が暗号資産を保有・取引した経験を持っている統計データ](https://www.gemini.com/blog/gemini-survey-finds-more-than-half-of-gen-z-owns-crypto)も出ており、若い世代を中心にデジタル所有権に敏感な層が増えていることも、見逃せない兆しです。日本でも[メルカリのようなカジュアルな形での暗号資産を保有している人が大きく増えています](https://toyokeizai.net/articles/-/853406)。 Web3の適用分野として有望なのが、偽造品氾濫防止とロイヤリティ分配の適正化です。グローバルのコレクターズ品の市場は[約5000億ドル規模](https://www.marketdecipher.com/report/collectibles-market)(約75兆円)と巨大市場である一方で、真贋確認のコストと詐欺リスクが取引活性化のブレーキになっています。また、飲食業界ではレストラン予約プラットフォーム経由での高い顧客獲得の手数料と顧客データの欠落がリピーター育成を阻み、ローカルなレストランはなかなか固定客を定着されず、単価向上ができないという状況があります。 これらのボトルネックに対し、Web3の技術(特にNFTと暗号通貨)は取引の透明性と二次流通追跡性を提供し、有用なソリューションになり得ます。一方で、Web3技術はそのまま適用させると多くのユーザがついてこれず、スケールしていかなかった問題がありました。本稿ではこうした課題解決にWeb3技術を使いながらも「利用者に意識させない」という設計思想をもったスタートアップをとりあげ、Web3によるサービス変革の参考材料を提供いたします。 # リアルアセットマーケットプレイス: Courtyard [Courtyardはポケモンカードなど資産性のある物理アセットの流動性を高めている](https://www.youtube.com/watch?v=gdcPBHlB-Iw) Courtyardはポケモンカードなど資産性のある物理アセットの流動性を高めている [Courtyard](https://courtyard.io/)はサンフランシスコ発のスタートアップで、「世界中のコレクターが障壁なくコレクターズアイテムを売買できる」ことを[使命](https://docs.courtyard.io/courtyard)に掲げています。スニーカーやトレーディングカードなど物理的な資産として売買されているコレクターズアイテムは数多くありますが、その取引には様々な問題があります。多くは対面/オンライン取引で現物を手渡す/発送する形で取引され、マーケットプレイス手数料/送料/保険料によるコストの高さ、[真贋性に対するリスク](https://www.theverge.com/2022/6/6/23156515/nike-stockx-nfts-counterfeit-sneakers-lawsuit)、真贋鑑定や発送手続きの手間により「売りたいときにすぐ売れない」ことで、コレクターズアイテムの取引流動性が低くなっていました。Courtyardはこの業界課題に目をつけ、①真贋鑑定データと画像をセットにしたNFTによる改ざん防止、②物理的な保管場所の提供、③NFTによってデジタルアセット化した商材を売買できるマーケットプレイス、を整備することで解決を図っています。 スニーカーやトレーディングカードなどコレクションの売却を検討しているユーザーが、資産を流動化をするには、物理的にカードやスニーカーをCourtyardへ送付するところからはじまります。ユーザの物理資産はCourtyardと提携する[保管企業 Brink’s](https://us.brinks.com/)の保管倉庫に厳重に格納され、3Dスキャン画像がメタデータに埋め込まれたNFTが発行されます。物理資産と紐づけられたNFTは、OpenSeaや Courtyardのオープンなマーケットプレイスで24時間売買が可能です。NFTをバーン(流通から外すこと)すれば本人確認後にちゃんとスニーカーやカードの実物が返却されます。NFTが実物の「唯一の引換証」になるため市場は偽造リスクを排除でき、同時に所有権移転を数秒で完了できるため、高い流動性とセキュリティを担保しているサービスに仕上がっています。 CourtyardではNFTサービスでありがちなMeta MaskなどのWallet(ユーザ認証の仕組み)と接続必須・暗号資産払い必須といったハードルはなく、クレジットカード支払いに対応し、初回購入時点でWalletがバックグラウンドで自動生成され、Walletを持っていないユーザでもスムーズかつ意識せずにWallet作成ができます(MetaMaskなどの既存Wallet接続も可能)。また2次流通市場で売買されるたびに1次出品者への[1%のロイヤリティ](https://docs.courtyard.io/courtyard#:~:text=1%25%20revenue%20share%3A%20one%20of%20the%20things%20we%E2%80%99re%20excited%20about%20is%20the%20ability%20to%20reward%20curation.%20When%20someone%20tokenizes%20a%20card%20and%20sells%20it%2C%20they%E2%80%99ll%20continue%20to%20earn%201%25%20of%20every%20future%20sale%20every%20time%20it%20gets%20resold%20onchain%2C%20something%20that%20the%20blockchain%20helps%20us%20track%20and%20automate.)を支払っており、流動性に対するインセンティブを高めています。このようにCourtyardはWeb3のサービスながら、あくまでインフラとしてブロックチェーン/NFTを使っているだけで、Web3の概念に馴染みのないユーザにも幅広く使ってもらえる工夫を随所に感じます。 ビジネスモデルは、Courtyard 自身がロット単位でまとめ買いして販売する1次販売による粗利、および自社が運営する[二次流通プラットフォームにおける手数料](https://docs.courtyard.io/courtyard/logistics-and-legal/user-agreements/nft-terms-and-asset-management-services-agreement?utm_source=chatgpt.com#courtyard-fee)となっています。倉庫・保険コストは手数料に内包され、ユーザからは無料でやってくれるような見え方となっています。 Courtyardが最初期にドロップしたのは、自社で信頼できるディーラーから調達した[800枚のポケモンカードをランダムに封入した「ミステリーパック」](https://cryptotesters.com/blog/courtyard)でした。正規認証機関による真贋性の証明をつけ、さらに「開封するワクワク」をデジタルで再現したことにより、有志が集まるコミュニティやインフルエンサーにも話題になり、2次流通を誘発しました。2025年4月時点で、[CourtyardでのNFT取引が1週間で2070万ドル(約31億円)を売り上げ](https://cointelegraph.com/news/polygon-nft-sales-lead-ethereum-driven-by-rwa-collection-courtyard?utm_source=chatgpt.com#:~:text=CryptoSlam%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81Courtyard%20NFT%E3%81%AE%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E5%A2%97%E5%8A%A0%E3%81%8CPolygon%20NFT%E3%81%AE%E6%80%A5%E9%A8%B0%E3%82%92%E5%BC%95%E3%81%8D%E8%B5%B7%E3%81%93%E3%81%97%E3%81%9F%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82%E3%81%93%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A3%B2%E4%B8%8A%E7%B7%8F%E9%A1%8D%E3%81%AF2%2C070%E4%B8%87%E3%83%89%E3%83%AB%E3%81%AB%E9%81%94%E3%81%97%E3%80%81%E3%81%9D%E3%81%AE%E9%80%B1%E3%81%AE%E4%BB%96%E3%81%AE%E4%BA%BA%E6%B0%97NFT%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%81%AE%E6%A5%AD%E7%B8%BE%E3%82%92%E4%B8%8A%E5%9B%9E%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%C2%A0)、同週の他NFT 売上を上回る水準となり、実績を積み上げてきています。 資金調達の状況としては、[2022年11月のシードラウンドで NEA リードの700万ドル(約11億円)](https://www.prnewswire.com/news-releases/courtyard-raises-7m-in-seed-funding-to-redefine-physical-collectibles-ownership-through-nfts-301666525.html)を調達後、しばらく動きがありませんでしたが、2024年12月にシリーズAラウンドで約450万ドル(約6.8億円)規模の資金調達があったとされています([Crunchbase](https://www.crunchbase.com/funding_round/courtyard-series-unknown--a0a675ca))。厳しい資金調達環境の中でも実績が評価され出資を受けられていると考えられます。 # レストランロイヤルティプログラムのブロックチェーン化: Blackbird ニューヨーク発のスタートアップである[Blackbird](https://www.blackbird.xyz/)のミッションは「飲食店とゲスト間の関係性を頻度高く・深くしていく」ことです。Blackbirdは創業者がレストラン予約プラットフォームを運営する中で、[レストランが顧客データを持たず顧客獲得をプラットフォームに依存する構造に危機感を抱いた](https://techcrunch.com/2023/10/04/resy-and-eater-co-founder-raises-24m-for-blackbird-a-restaurant-loyalty-platform)ことからはじまっています。レストランは、よほどの顔馴染のゲストでない限りどのゲストがどの頻度でどのくらいの金額を落としてくれたのか把握できていないことが大半です。これは、リピート可能性のあるゲストに対して積極的にサービスを行って来店頻度を高めたり、エンゲージメントを高められるかもしれないのに、その機会を丸ごと失っているとも考えられます。Blackbird はそうした来店行動そのものをブロックチェーンにデータとして保存し、来店回数とトークン保有量によってゲストをランク付けすることで、レストランとゲスト間の外食体験を変革しようとしています。 ゲストが来店して、レストラン店舗のテーブルに置かれた[円形 NFC デバイスにスマートフォンをタップ](https://www.blackbird.xyz/)すると、Walletが電話番号認証だけで生成され、ブロックチェーン上に来店 NFT が生成されます。NFT はレベルアップ機能を持ち、5回来店でBronze、10回来店でSilverという具合にランクが上がるたびアプリ上で動的に画像が変化します。また、$FLYという名前のトークンが来店時に付与され、これはトークンを持つ人だけの裏メニュー解禁や先行予約に使用できます。このようなNFT生成や$FLYの付与などにかかるガス代(ブロックチェーンのネットワーク手数料)もゲストは負担する必要もありません。 Blackbird のUIは「暗号資産 / NFT」というWeb3専門用語を一切出さず、SMS で届くリンクをタップするだけで会員証がWalletに格納されます。ガス代やNFT生成費用もBlackbird側でカバーされているので、ゲスト側から見たら、「通常の」リワード/会員制プログラムが運営されているように感じ、Web3の難解さを意識させないようになっています。 ビジネスモデルとしては、店舗から[月額利用料(89ドル(約1.3万円))](https://time.com/7005516/crypto-ben-leventhal-blackbird-app-restaurants/#:~:text=%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%81%AF%E9%80%9A%E5%B8%B8%E3%80%81Blackbird%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%96%99%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E6%9C%88%E9%A1%8D89%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%92%E6%94%AF%E6%89%95%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82https://time.com/7005516/crypto-ben-leventhal-blackbird-app-restaurants/#:~:text=Restaurants%20generally%20pay%20%2489%20a%20month%20to%20use%20Blackbird.)と決済手数料を徴収します。決済手数料に関して、2025年に公開した [Flynet決済](https://www.thesupersonic.blackbird.xyz/p/introducing-flynet-blackbirds-onchain)はクレジットカード決済手数料を一律2%に抑え、そのうち1.5%を即時に店舗へ還元する仕組みです。従来 3.75%前後だったカード手数料に比べ大幅な圧縮となり、飲食店は実効負担を1%未満にできる計算です。$FLYの現状としては、合計2.4億ドル相当の$FLYが参加者へ分配、$FLYを保有するWalletは10.7万、Walletあたり平均6.2件の取引となっており、大成功とまでは言えませんが、[1000軒以上のレストラン](https://techcrunch.com/2025/04/08/blackbird-gobbles-up-50m-for-its-blockchain-based-payment-loyalty-app-for-restaurants/)とゲストを増やしつつあるステージとなっています。 Blackbirdは、[2024年12月に Spark Capitalをリード投資家としてシリーズ Bラウンド](https://techcrunch.com/2025/04/08/blackbird-gobbles-up-50m-for-its-blockchain-based-payment-loyalty-app-for-restaurants/)で、5000万ドル(約75億円) を調達し、累計8500万ドルを確保しました。出資者には Amex Ventures、Coinbase Ventures、Andreessen Horowitzが名を連ね、Amexはリワードプログラム連携、Coinbaseは自社で提供しているブロックチェーン規格であるBaseチェーンがBlackbirdに使われており、戦略協業を進めていると考えられます。 # おわりに CourtyardとBlackbirdは用途も業界も異なるものの、「Web3技術の複雑さを裏に隠し、リアルアセット・リアル体験をシームレスにトークン化する」という共通戦略を採っています。Courtyardは真贋保証と即時譲渡でコレクターズ市場の流動性を高め、Blackbirdは来店行動を資産化して飲食店 CRM の収益性を底上げしました。いずれも「Web3に不慣れなユーザーでもメリットを享受できる」UI/UXがユーザ拡大を支えています。 かつてメディアにおいても、記事のNFT化、共同創作者への収益分配自動化、限定グッズやイベント参加証をNFT化、など様々なWeb3化がこれまでも取り組まれてきましたが、クリエイター側も含め多くのユーザにとって、Web3/暗号資産独特の専門用語やセキュリティや作法に従わないと使いはじめることすらままならないものでした。一方で、Web3ブームが過ぎた現在は、CourtyardやBlackbirdのように適切なユーザ体験を実現する技術スタックの一つとしてWeb3技術を検討し、エンドユーザには利用について一切フリクションがない状態を実現する、といった態度が適切なように思えます。 トランプ関税ショックやインフレ再燃などマクロ逆風が続く中でも、実世界に根ざしたトークン化は「価値の裏付け」が明確であるため、ベンチャーキャピタル等のリスクマネー投資のテーマとしてさらなる成長が期待されています。今回取り上げたスタートアップが示した“見えないブロックチェーン/Web3”の設計思想は、ポストWeb3の新しい顧客体験を構想する上で欠かせないヒントになるはずです。 --- ## CoffeeTable with Ximera(2025.06.24) URL: https://ximera.com/posts/88084cf0ff 公開日: 2025-05-01 著者: Ximera [https://www.youtube.com/live/P0w6llx6rvE?si=2g5Mvb_-qRSB4P3o](https://www.youtube.com/live/P0w6llx6rvE?si=2g5Mvb_-qRSB4P3o) キメラは「Coffee Table with Ximera」と題して、Webメディアのエンゲージメントとサブスクリプションを解説するウェビナーを6月24日(火)に開催します。 2019年から70を超える国内メディアにエンゲージメント分析の実装とサブスクリプション戦略の支援をしてきたキメラがWebメディアのエンゲージメントについて解説します。なぜ改めてエンゲージメントの重要性が語られているのか。多くのWebメディアが取り組んでいるサブスクリプションに活用できるエンゲージメント分析について話し、これまでの実装支援の経験からこの先の姿を探索します。 参加いただきたい皆さま - 自社メディアに読者・ユーザーとの深い関係を作りたい方 - 自分の記事・動画・コンテンツの質向上にユーザーのエンゲージメント分析を活かしたい方 - エンゲージメントを基礎から学んで、分析に取り組みはじめたい方 - サブスクリプション、コマース、イベントなどの読者収益事業を成長させたい方 - このお知らせをご覧いただいている皆さま ぜひお気軽にご参加ください。 Coffee Table with Ximera「Webメディアのためのエンゲージメントとサブスクリプション」イベント概要 日時  : 2025年6月24日(水)15:00 - 16:00 形式  : オンライン(Zoom Webinar) 登壇  : 株式会社キメラ 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ --- ## ソーシャルは新たな検索に(後編):美容・DIY・子育てで効く学習コンテンツ URL: https://ximera.com/posts/social-is-the-new-search-part2 公開日: 2025-04-22 著者: Tubular Labs 概要: 日常の疑問の答えを探す場所が検索エンジンからソーシャルへ移っている。美容・DIY・子育ての3カテゴリーで、ハウツーやレビューといった学習コンテンツがどう効いているかをTubularのデータで整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/social-is-the-new-search-tapping-into-tips-tools-and-tutorials/))2025.04.22 日常の疑問に対する答えを、人は検索エンジンではなくソーシャルメディアで探すようになっています。美容の小技から子ども向けおもちゃの使い方まで、ソーシャルが検索の場になり、学習コンテンツがその案内役になっている、という変化です。 Tubular のレポート後編から、美容、住まい・DIY、子育ての3カテゴリーの要点をご紹介します。前編にあたる分析は[ソーシャルは新たな検索に:ソーシャルメディアでの学習コンテンツの台頭](/posts/676b92144c)でご覧いただけます。 ## 美容:メディア企業にとっての空白地帯 ![](/images/posts/social-is-the-new-search-part2/beauty-learning.png) 2024年、ハウツー、DIY ガイド、製品レビューといった学習型の美容動画は、プラットフォーム全体の美容コンテンツを一貫して上回る成果を出しました。 投稿数ではインフルエンサーが圧倒しています。しかし1本あたりで見ると構図が変わります。 - TikTok では、インフルエンサーの投稿数がメディア企業の187倍だったにもかかわらず、1本あたりの視聴数はメディア企業が11%上回った - Instagram では、投稿数がはるかに少ないメディア企業が、1本あたりのエンゲージメントでインフルエンサーを7.7%上回った 示唆は明快です。美容ブランドとメディアは学習コンテンツにもっと投資し、ハウツーや DIY といった語をタイトルやキャプションに明示して発見されやすくすべきだ、ということです。実際、e.l.f. Cosmetics は「how-to」を含むキャプションを使った Instagram 投稿で、2024年に110万件のエンゲージメントを獲得しています。 ## 住まい・DIY:父親クリエイターの台頭 ![](/images/posts/social-is-the-new-search-part2/dad-diy.png) 子ども向けの工作から庭の遊具づくりまで、父親が手を動かす DIY コンテンツに関心が集まっています。2024年、Instagram の同カテゴリーでもっともエンゲージメントを集めた動画は、わずか90日で800万件のエンゲージメントを獲得しました。同じクリエイターの別の投稿は TikTok で8,100万回視聴されています。 作り手が父親である必要はありません。LG は製品のよくある質問に答えるシリーズを立ち上げ、通常の TikTok コンテンツと比べて20%多い視聴を得ています。 ## 子育て:疑問に答えるコンテンツが強い ![](/images/posts/social-is-the-new-search-part2/parenting.png) 子育て領域でも、実用的な疑問に答える形式が支持されています。個人の記録より、同じ悩みを持つ人の役に立つ形に整理されているかどうかが分かれ目です。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 3カテゴリーに共通するのは、検索エンジン向けの SEO と同じ発想をソーシャルに持ち込むことです。答えるべき疑問を特定し、それが探されている言葉でラベリングする。既存の記事資産を持つメディアほど、動画への転換余地があります。 レポートの詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/social-is-the-new-search-tapping-into-tips-tools-and-tutorials/)からご覧いただけます。 --- ## Q1 2025:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/fea1397f9e 公開日: 2025-04-14 著者: JACK NEARY by Jack Neary([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/global-audience-insights-first-quarter-2025/))2025.04.14 Chartbeatは四半期ごとにグローバルのトラフィックから得られたインサイト(気づき)を共有しています。2025年の第1四半期は、北米で平均エンゲージ時間が増加し、ラテンアメリカでモバイル読者が減少、ロイヤル読者は北欧でもっとも高い水準を維持しました。 *これまでのインサイト: [Q4 2024](/posts/1e14a10498) / [Q3 2024](/posts/8da672ccfe) / [Q2 2024](/posts/c6f6766689) / [Q1 2024](/posts/7117cbbab1)* # 中・東欧で最長のエンゲージ時間を記録 ![](/images/posts/fea1397f9e/image.png) 中央ヨーロッパ / 東ヨーロッパの読者は平均エンゲージ時間が37.5秒ともっとも熱心な読者でした。中東と東南アジアはそれぞれ35.5秒、28.5秒。ほかの地域では平均エンゲージ時間が27秒を超えることはありませんでした。 # 中・東欧とラテンアメリカではモバイルトラフィックが減少 ![](/images/posts/fea1397f9e/image-1.png) 中央アジア、東南アジア、アフリカのパブリッシャーは引きつづきトラフィックの大部分をモバイルオーディエンスから得ています。これらの地域ではPVの81%以上がモバイルからのアクセスです。その他を含むすべての地域で、Q1は少なくとも66%のPVがモバイルからのアクセスになりました。 # アフリカにおける検索トラフィックの増加 ![](/images/posts/fea1397f9e/image-2.png) 中央アジアにおけるQ1のPVの53%は検索エンジンからのもので、2024 Q4の54%から減少しました。アフリカでは2024 Q4の45%から51%へ大幅に伸び、アフリカのパブリッシャーはこの参照元からの大幅な増加を経験しました。 # 世界中でソーシャルトラフィックが安定化 ![](/images/posts/fea1397f9e/image-3.png) アフリカのPVの20%はソーシャルプラットフォームから来ており、2024 Q3の17%から増加しています。北米のパブリッシャーも増加しており、15%に上昇していますが、東南アジアのみがQ4と比較して1%のわずかな減少を経験しています。 # ロイヤルティは引きつづき北欧がもっとも高い ![](/images/posts/fea1397f9e/image-4.png) 北欧ではロイヤル読者からのPVが53%ともっとも高い割合を占めました。北米と南欧はそれぞれ43%, 42%で続きました。中・東欧では前四半期比で13%減ともっとも大きな減少が見られました。 # 2025,Q1のポイント 世界全体の平均エンゲージ時間は28秒 平均エンゲージ時間は、南ヨーロッパでは24.5秒、中・東欧では37.5秒でした オーディエンスはモバイルファースト どの地域でも少なくとも66%のサイト訪問はモバイルデバイスで行われており、3つの地域では81%以上となっています ソーシャルプラットフォームからのPVは安定 2024,Q4から2025,Q1にかけてソーシャルトラフィックが減少したのは東南アジアのみでした --- ## LLMによるリアルタイム翻訳イノベーションとビジネス競争環境への影響 URL: https://ximera.com/posts/f1fee28ad8 公開日: 2025-03-25 著者: Ikuo Morisugi Photo by [Maxim Berg on](https://unsplash.com/ja/@maxberg?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%99%BD%E3%81%84%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%AB%E9%95%B7%E3%81%84%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%81%A8%E7%B4%AB%E3%81%AE%E6%B3%A2-OKjxoWaKNI0?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # LLMによるリアルタイム翻訳イノベーションとビジネス競争環境への影響 Ximera Media Next Trends #71|Ikuo Morisugi| 2025.03.25 各国のユーザに届けられるネイティブレベルのコンテンツが劇的に増える可能性があります。これは日本にとってもまったくリーチがなかった市場への拡大が容易になることにつながり、かねてからの課題であった海外人材獲得/コミュニケーション促進や外貨獲得に向けた重要な柱となります。 # はじめに メディア業界をはじめ、あらゆる業界でコンテンツの多言語化やグローバル展開が近年ますます重要になっています。世界の翻訳サービス市場規模は[約400億ドル(約6兆円)](https://straitsresearch.com/report/translation-service-market)に達し、特にライブストリーミングメディアやビジネスコミュニケーション分野でリアルタイム翻訳の需要が高まっています。AIを活用した自動翻訳市場も拡大傾向にあり、[2031年にはその規模が約58億ドル](https://www.verifiedmarketresearch.com/product/ai-translation-market/)(約8600億円)に達すると予測されています。従来の機械翻訳ツールでは文脈や話者の感情を十分に捉えられず、翻訳精度も納得できるレベルを超えられず、不自然な直訳調の結果になることが少なくありません。特にライブ音声や対話の翻訳は難易度が高く、既存の主要翻訳アプリでは電話や音声メッセージに対応できない課題もありました。こうした言語の壁はまだまだ残っており、長年越えがたい障壁でした。 近年、大規模言語モデル(LLM)をはじめとするAI技術の飛躍的な進歩によって、これらの課題に対する解決策が生まれつつあります。高度なAI翻訳は文脈やニュアンスを考慮し、人間に近い自然な表現でリアルタイムに別言語へ変換することを可能にしています。つまり、従来は困難だった「リアルタイムで実用レベル精度の翻訳」が現実のものとなりつつあるのです。本記事では、この分野で注目されるスタートアップの事例をとりあげ、実用レベルのリアルタイム翻訳がビジネスに与える影響について解説していきます。 # ライブ配信におけるリアルタイム音声翻訳: Lingopal [Lingopal(リンゴパル)](https://lingopal.ai/)はリアルタイム音声翻訳に特化したニューヨーク発のAIスタートアップです 。スポーツ実況をはじめとするライブ映像の音声をAIで他言語に同時翻訳し、視聴者が母国語で楽しめる世界を目指しています。その主力プロダクトは音声から音声へのリアルタイム翻訳プラットフォームで、対応言語は60以上にも及びます。独自開発のAIモデル群が話者の声の感情や映像の文脈まで解析することで、人間さながらの自然な翻訳を実現しています。 [Lingopalにより元の音声特徴をとらえながらリアルタイム翻訳を実装](https://www.youtube.com/watch?v=V0isNDabsEo) Lingopalにより元の音声特徴をとらえながらリアルタイム翻訳を実装 例えば、スポーツ実況中継において同じアナウンサーの声質やトーンをクローンして、数秒の遅延はあるもののほぼリアルタイムに多言語配信され、視聴者にとって違和感のない“同時通訳”以上の体験を提供できる点が大きな特徴です。メディア企業や放送局にとって、Lingopalのプラットフォームは多言語展開の強力なソリューションとなります。 商用事例も出てきており、米国のスポーツ専門チャンネルであるテニス・チャンネルでは、スペインの都市グアダラハラで行われた試合の英語実況をLingopalのシステムでスペイン語にリアルタイム翻訳し、スペインの視聴者に配信する実証実験が行われました。また、ドイツのアイスホッケーリーグ(ベルリン・アイスベアの試合)のドイツ語実況を英語に変換し、北米地域に放送する実績も作っています。また、[北米のトップ4スポーツリーグの少なくとも1つとの放送契約ですでに7桁ドル(数百万ドル = 数億円)の収益を上げている](https://www.sportico.com/business/finance/2025/lingopal-sports-broadcast-ai-1234827790/)とCEOのコメントもあり、既に収益をあげはじめています。 LingopalのビジネスモデルはB2B(企業向け)を中心としており、放送局やコンテンツ配信プラットフォームに多言語翻訳サービスを提供しています。導入に際して特別な機材は不要で、APIを介して既存のライブ放送にそのまま多言語音声を重ねることができます。 現在、[LingopalのR&Dでは、ノーコードかつ、さらに少ない計算量で、遅延を2秒未満、120以上の言語対応](https://www.sportsbusinessjournal.com/Articles/2025/02/12/lingopalai-raises-14m-series-a-eyes-international-expansion/#:~:text=Image%3A%20LingopalLingopal,ai)を目指しています。新たなモデルでは、各言語ごとに別々の解説者を雇用して実況する場合と比べ、Lingopalを使った自動翻訳はコストを80%以上も削減できるとされ、翻訳精度も人間の実況を上回るとされています。このように経済的メリットが大きいため、国や言語の壁を越えたコンテンツ配信が以前より格段に実現しやすくなっています。 こうした技術力と成果が評価され、Lingopalは2025年2月にシリーズAラウンドで1,400万ドル(約20億円)の資金調達を実施しました 。リード投資家はトップティアVCの1つであるDCM Venturesで、他にScrum Ventures(ex-mixiの宮田 拓弥氏が立ち上げたシリコンバレー拠点のVC)なども参加しています。調達した資金はさらなる研究開発と国際展開に充てられ、アジアやヨーロッパへの進出拠点設立も計画されています。言語の壁をなくす未来に向け、Lingopalはメディアの在り方そのものを変えようとしています。 # 日常会話をリアルタイム多言語対応へ: EzDubs [EzDubs(イージーダブズ)](https://ezdubs.ai/)は、日常会話やオンライン通信の同時通訳を実現することを目指すスタートアップです。2023年に米国で創業し、リアルタイム音声翻訳でグローバルなつながりを築くというビジョンを掲げています。従来、個人が異なる言語で電話やビデオ通話を行う際は人間の通訳者に頼るか、テキスト翻訳に切り替えるしかありませんでした。しかし、Google翻訳やAppleの翻訳アプリでは通話や音声メッセージに対応しておらず、この領域は手付かずの課題として残っていました。EzDubsはこのギャップを埋めるべく開発されたサービスで、AIによって人と人との会話をリアルタイムに翻訳し、言葉の壁を意識せずに対話できるコミュニケーション体験を提供します。 [EzDubsを使って英語<=>日本でリアルタイム翻訳してホテル予約を行ったデモ](https://www.youtube.com/watch?v=XhVVeaWga6k&t) EzDubsを使って英語<=>日本でリアルタイム翻訳してホテル予約を行ったデモ EzDubsが提供するのはスマートフォン向けのリアルタイム翻訳アプリです。ユーザーはこのアプリを使って異なる言語を話す相手と電話をかけ合い、即座に双方向の通訳を受けることができます 。話者の声はAIによってクローン生成されるため、翻訳後も本人の声色や抑揚が保たれ、あたかも自分が別の言語を話しているかのように聞こえます。対応言語は現時点で30以上あり、相手側はEzDubsをインストールしていなくても通常の電話のように通話に参加できます。さらに音声通話だけでなく、テキストチャットやボイスメッセージ、動画メッセージの翻訳にも対応しており、一つのプラットフォーム上で多様なコミュニケーションを多言語化できます。 このアプリによって、これまで言語の違いで諦めていたコミュニケーションが現実に可能になっています。実際にEzDubsのユーザーには、[異なる母語を持つ恋人同士が毎日長時間の会話を楽しんでいるケースや、海外赴任先で現地の人々と円滑にやり取りするために活用](https://techcrunch.com/2024/12/11/yc-backed-ezdubs-is-chasing-consumer-market-for-trasnaltion)している人もいます。1日に何百件もの国際電話がEzDubs経由でかけられており、平均通話時間は17分と実際の利用ユースケースが広がっています。さらに、言語の異なるグループチャットで各参加者が自分の母語で発言し合える機能は、多言語チームの共同作業を飛躍的に効率化する可能性を秘めています。 EzDubsの裏側では、大きく二つのAIモデルが活躍しています。一つは話者の声を解析して同じ声色・感情を持つ音声を他言語で合成する[ボイスクローンのモデル](https://ezdubs.ai/features/voice-and-emotion-matching)、もう一つは発話内容を[翻訳するモデル](https://ezdubs.ai/features/real-time-translation-ai)です。翻訳モデルは話者が文を話し終えるのを待たずに逐次的に翻訳を進めるため、会話のテンポが中断されません。これにより、若干の遅延は生じるものの、人間の同時通訳に近いタイミングでリアルタイム対話が可能になっています。従来、このような逐次・同時的な翻訳は文脈把握や先読みが難しく、技術的なハードルが高いものでした。しかしLLMを含む高度なAIのおかげで、発話の途中からでも適切に意味を汲み取って訳文を生成できるようになり、この問題は克服されつつあります。音声合成の面でもディープラーニング技術により話者固有の声質や感情表現を再現できるようになりました。EzDubsはこれら最先端技術の統合によって、リアルタイムでありながら人間味のある双方向翻訳を実現しています。 EzDubsの事業モデルは現時点では一般消費者向けの無料アプリ提供が中心ですが、将来的にはプラットフォームとしてさらなる拡大も視野に入れています。例えば、[アプリをインストールしていない人でもQRコードをスキャンするだけで通訳付き通話に参加できる仕組みや、ZoomやMicrosoft Teams、Slackなどビジネス向けツールとの連携による会議通訳機能の開発も計画](https://techcrunch.com/2024/12/11/yc-backed-ezdubs-is-chasing-consumer-market-for-trasnaltion)されています。 こうした将来性が評価され、EzDubsは2024年にシードラウンドで420万ドル(約6億円)の資金調達を実施しました 。リード投資家の[Venture Highway](https://venturehighway.vc/)は元WhatsApp幹部によって設立されたVCであり、他にもY CombinatorのパートナーやReplitの創業者など著名な投資家が名を連ねています。将来的にはEzDubsを介した通話が当たり前となり、世界中の誰とでも言語を意識せず対話できる環境を目指しています。 # おわりに LingopalとEzDubsの両社に共通するテーマは、AIの力で言語の壁を取り払い、人々がリアルタイムに繋がれる世界を創り出そうとしている点です。前者は主にライブ放送の分野で、後者はパーソナルなコミュニケーションの領域でアプローチこそ異なりますが、根底にあるビジョンは「言語の違いを意識させない没入型の体験を提供すること」にあります。いずれのプロダクトもLLMを含む先端AI技術を駆使し、従来は困難だった文脈理解や自然な音声表現を実現しました。その結果、多言語対応にかかる時間とコストを劇的に削減しつつ、ユーザー体験の質を飛躍的に高めています。 本記事で取り上げられたような技術で重要なのは、単にコンテンツやサービスを多言語化するハードルが大きく下がっただけではなく、文脈や感情表現までローカライズされることで、各国のネイティブレベルのユーザに届けられるコンテンツが劇的に増える可能性があることです。これは日本にとっても全くリーチがなかった市場への拡大が容易になり、かねてからの課題であった海外人材獲得/コミュニケーション促進や外貨獲得に向けた重要な柱となります。例えば、これまで国内向けに限定していた配信を各国語で同時提供すれば、世界中から視聴者を獲得できるかもしれません。社内コミュニケーションにおいても、多国籍チーム間で母国語のまま意思疎通が図れるようになれば、生産性の向上につながる可能性があります。また、コンテンツのローカライズに必要だった大量の時間と費用が削減できれば、そのリソースをより創造的な業務に振り向けることも可能です。 一方で、インターネット環境さえ整っていれば各国同じ技術にアクセスができる状況であるため、今まではローカライズに時間がかかりなかなか進出してこなかった海外企業がDay 1から日本市場へ向けてコンテンツを出してくることも可能になっています。新しい分野やデジタルコンテンツであればあるほど、従来国内企業同士だけで争っていた状況から、すぐに全世界の企業との競争環境へ移っていきます。すでに、Tech GiantやスタートアップからAIサービスが毎日のように生まれ、日本でも新しいサービスがすぐ使えることを考えると、実はその変化は既に起こっています。良いサービス/コンテンツを出すことができれば、たとえば無名で実績がなくとも、一気にグローバルでユーザ拡大を得られるチャンスが生まれています。 LingopalのCEOは、[「2030年までには全ての言語の消費率が英語と同等レベルに達し、コミュニケーションの障壁は存在しなくなる」](https://thefounderspress.com/lingopals-ai-cracks-the-code-on-real-time-translation-and-streaming-giants-are-taking-notice/#:~:text=%E2%80%9CBy%202030%2C%20consumption%20rates%20across,%E2%80%9D)と予測しています。将来のグローバルメディアは英語中心ではなく、多言語が当たり前で瞬時にAIが支える世界になるという見通しです 。この潮流を捉え、いち早く新技術を取り入れ、グローバルで戦える環境を整えることがより重要になります。 --- ## 何が再訪率に影響するのか URL: https://ximera.com/posts/c7f4d80aab 公開日: 2025-03-21 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/key-metric-that-predicts-return-visits-to-your-site/))2025.03.21 サイト新規訪問者の86%は、7日以内に再訪問しません。初回訪問の役割は大きいのです。第一印象を与えるチャンスは一度きり。だからこそ、新規訪問者がどんな行動をするか、彼らが再訪問する傾向がどの指標に現れるのかを理解することが不可欠です。 再訪問は習慣をつくり、ロイヤルティ、サイトへの愛着につながります。そしてロイヤルティは広告インプレッションやサブスクリプションという形で収益につながります。再訪問につながる読者の行動を明確に理解するために、Chartbeatはパブリッシャーのグローバルネットワークから得た何百万ものデータを分析し、訪問ページ数、スクロールの深さ、コンテンツの種類などの指標が、再訪問の可能性にどう影響するのか調べました。 ここでは訪問の深さ、1回の訪問で何ページ閲覧するのかが、再訪問率にどのような影響を与えるかに焦点を当てていきます。 # 深い訪問が再訪問率に与える影響 ![](/images/posts/c7f4d80aab/image.png) すべては最初のページビューからはじまります。これがなければスクロールやクリックなど、サイト上で何らかの行動を起こすことはできません。しかし、新規訪問者が最初のページで立ち去るか、それともさらに奥まで進むのか(さらに数ページ見るか)。その違いはどれほど重要なのでしょうか。 全体として、3億人以上の新規訪問者について行った私たちChartbeatの分析では、7日以内に同じサイトに戻ってきたのは14%でした。初回訪問時に1ページしか見なかった人の再訪問率はわずか8%です。しかし、さらにもう1ページ見た人の再訪問率は22%に跳ね上がり、再訪問する可能性は2.75倍に高まりました。 3ページを超えると、再訪率はさらに高まります。4ページ見た訪問者の再訪率は43%、5ページでは49%です。11ページ以上の場合は74%で、これを超えると再訪率の相対的な変化はほぼ横ばいになります。 # 参照元とデバイスが訪問の深さに与える影響 ユーザーの初回訪問時に1ページでも多くサイトを体験するよう促すことは、計測の数字が示すようにユーザーの再訪率に明らかな影響を与えます。その効果はページ数が増えるごとに高まります。この影響がページ参照元やデバイスの種類によってどう変わるのか見てみましょう。 ![](/images/posts/c7f4d80aab/image-1.png) 検索やソーシャルのような外部参照元では、閲覧ページ数が増えるにつれて再訪問率は上昇し、4ページで頭打ちになります。それ以上になると、検索経由の読者がソーシャル経由の読者よりも再訪問しやすくなります。 ![](/images/posts/c7f4d80aab/image-2.png) ページビューが増えるにしたがって再訪問率も高くなるのは、どのデバイスを利用する訪問者も同じです。3ページの閾値を超えると、デスクトップの訪問者はモバイルの訪問者ほど再訪問する可能性が高くありません。 # より深い訪問を促す方法 新規ユーザーが初回訪問時に1ページでも多くサイトを体験するよう促すことは、計測の数字が示すようにユーザーの再訪率に明らかな影響を与えます。その効果はページ数が増えるごとに高まります。より深い訪問、さらにもう1ページ開くよう促す3つの方法をご紹介します。 1. 見出しと画像のA/Bテストで効果的な組み合わせを見つける トップページで記事のクリックを促す可能性がもっとも高い見出しと画像の組み合わせを見つけましょう。推し並べて、見出しと画像を同時にテストすると、見出しだけをテストするよりも質の高いクリック(ユーザーが15秒以上ページに滞在する、記事をある程度読んでいるであろう滞在につながるクリック)が3倍増えます。 2. ウェブサイト上の回遊率の高いページからヒントを得る [以前の調査](/posts/0e4ce1b210)によると、金融やスポーツのコンテンツは、ニュース&メディアやアート&エンターテイメントよりも回遊率が高いという結果が出ています。ほかの業界からもヒントを得られるかもしれません。 3. ユーザー体験を高めるためにデバイスの種類を考慮する モバイルからの訪問者は、3ページ以上閲覧した後に再訪問する可能性が高いです。主要なコンテンツをいち早く提供し、さらなる探索を促す短いフォーマットを使いましょう。 より深い訪問を促すことは、新規訪問者を再訪問者に変えるための重要な手段です。しかし、再訪問率に影響する指標はそれだけではありません。エンゲージ時間やスクロールの深さも再訪問の可能性に影響を与えるのです。新しい[Chartbeatの新しいレポート](https://lp.chartbeat.com/download-playbook-winning-over-new-readers?cid=C02584)をご覧ください。 --- ## 2025年、ソーシャル動画はメディア企業に大きなチャンスをもたらす URL: https://ximera.com/posts/595e96f604 公開日: 2025-03-12 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/social-video-offers-increased-opportunities-for-media-companies/))2025.03.12 [世界中のメディアリーダーを対象とした最近の調査](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2025)で2つの調査結果が目立った。 1. メディアのエグゼクティブのうち74%は検索エンジンからのリファラトラフィックの潜在的な減少を懸念している 2. AIの飛躍的な発達以降、パブリッシャーはYouTubeやTikTokのようなビデオファーストのプラットフォームにもっともリソースを投入する予定である(FacebookやXのようなプラットフォームは犠牲になる) [Chartbeat](https://chartbeat.jp/)と[Tubular Labs](https://ximera.com/tubular)ではこれらのトピックについて日々考えているが、業界の多くの人々が今年はこの2つの調査結果にとってターニングポイントになると感じていることは明らかだ。AIがすでに業界に参入し、破壊している速度を考えると、検索に差し迫った変化を警戒するのは正しいことだ。 ![](/images/posts/595e96f604/image.png) しかし、昨年1年間のリファラトラフィックのデータによると、今のところ減少の兆しはない。それどころか、Google Discoverのように2024年に実際に増加したサービスもある。 最初の予測が実現するかどうかは別として、今は間違いなくソーシャル動画に投資するときだ。これはほかの場所での読者減少への対策でもあるが、読者が多くの時間を費やしている場所で彼らに接触し、そこでより深い関係を育てるためでもある。 ソーシャル動画のプラットフォームに投資するニュースパブリッシャーが増えているが、それを戦略的に、そして自社のデータが何を物語っているかに基づいて行うことが重要である。 ここでは、あなたがそれをはじめる際に役立つポイントをいくつか紹介する。 ## 自分の地域の視聴者を把握する 近年、YouTube Shortsを含め、短尺のコンテンツがソーシャルプラットフォームを席巻している。しかし、ソーシャルメディアの視聴者が従来のテレビから離れ、より長く、より有意義なコンテンツをソーシャルメディアに求めるようになるにつれ、長尺のコンテンツもアップロードされるようになり、視聴者数が増加している。 どうすれば最適なフォーマットがわかるのか? あなたの地域の視聴者を観察してみよう。 ![](/images/posts/595e96f604/image-1.png) YouTube動画の長さ(尺)による動画の数と視聴数の違い Tubularの最近のグローバル調査では、30秒から1分尺の動画が世界中でもっともエンゲージメントが高く、動画1本あたりの再生回数も多かった。しかし、ラテンアメリカで最近行われたプレゼンテーションでYouTubeに着目したところ、逆の結果が出た。 この地域ではニュースパブリッシャーは主に長い動画を投稿しており、2024年第4四半期には1分から2分の動画が4万5000本以上アップロードされた。しかし、上のグラフでわかるように、この長さ(1分〜2分)の動画アップロード数は1本あたりの視聴回数をはるかに上回っている。この地域のパブリッシャーは、より多くの再生回数を獲得できる0秒から30秒の短い動画にもっとリソースを振り向けるべきであることを示している。 ## 伸びているカテゴリーを見つける 昨年、TikTokでもっとも人気があったカテゴリーは「人々とライフスタイル」で、再生回数は1兆を突破した。その他のカテゴリーで前年より視聴回数が増えたのは、「美容」(22%)、「音楽」(30%)、「ビジネス・金融」(73%)だった。 ![](/images/posts/595e96f604/image-2.png) これらのカテゴリの人気は後から振り返れば明らかだが、ソーシャル動画コンテンツの速度をリアルタイムで評価し、トレンドの出現に合わせて何が勢いを増しているか、または勢いを失っているかを確認することで、トレンドになる前にそれを供給する信頼できるコンテンツブランドになることができる。 ## 各プラットフォームの可能性を測る TikTokの人気コンテンツをYouTubeにリポストしたり、逆にYouTubeの人気コンテンツをTikTokにリポストするのは魅力的だが、場所が異なればユーザーに提供する価値も異なる。これはパブリッシャーにとっても価値が異なることを意味する。そのため、コンテンツ戦略はプラットフォームごとに差別化する必要がある。 ラテンアメリカのソーシャル動画分析から得られたもうひとつの知見は、昨年TikTokでの動画1本あたりの再生回数が増加したことである。これはこの地域のパブリッシャーがどこにリソースを投資すればよいかを知る手がかりにはなるが、ほかの地域やこの地域のほかのプラットフォームでも同じ機会が得られるというわけではない。 あなたのコンテンツが、とあるプラットフォームではより注目され、また別のプラットフォームではより会話を促すかもしれない。あるトピックのライフサイクルが、あるプラットフォームではほかのプラットフォームよりも長いことに気づくかもしれない。 ソーシャル動画を制覇する方法はひとつではないが、適切な組み合わせを見つけるもっともよい方法は、幅広いフォーマットとプラットフォームで実験することである。 ## ソーシャル動画スターターガイドのまとめ 進化するメディア環境で成功するには、データに基づいた戦略、プラットフォームの多様性、視聴者のエンゲージメントに対する鋭い理解が必要である。今年、リーチの拡大を目指すニュースパブリッシャーにとって、ソーシャル動画は単なるトレンドではなく、視聴者拡大とデジタルへの適応性に重要な道筋を示すものである。 そのためには、以下のことが重要だ。 - 動画の長さを変えて実験し、その地域でのちょうどよい尺を見つける - トレンドになる前に伸びているカテゴリーを見つけ、新しいコンテンツのインスピレーションを与え、成長する視聴者との信頼を築く - プラットフォームごとに戦略を差別化し、それぞれの視聴者の期待に応えていることを確認する。前提条件をデータで継続的に検証する。 *この記事は[INMA.org](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/post.cfm/social-video-offers-increased-opportunities-for-media-companies-in-2025)に掲載されたものです。* *あなたのサイトの指標を確認しましょう。今すぐ分析・最適化ツールの[デモをお申し込みください](https://lp.chartbeat.com/get-a-complimentary-chartbeat-demo)。* --- ## 組み込み型金融により促進されるビジネス領域の拡大 URL: https://ximera.com/posts/ac845007cc 公開日: 2025-03-05 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #70|Ikuo Morisugi| 2025.03.05 ![](/images/posts/ac845007cc/edge2edge-media-x21KgBfOd_4-unsplash.jpg) [Edge2Edge Media](https://unsplash.com/ja/@edge2edgemedia?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja) # はじめに 近年、組み込み型金融(EmFi: Embedded Finance)が世界的に注目を集めています。組み込み型金融とは企業が提供するサービスやプラットフォームに金融機能を組み込むことを可能にする技術やサービスを指します。ユーザー体験の向上と新たな収益機会の獲得を同時に実現できる「非金融企業による金融サービス提供」の潮流が強まってきたのは、ECやオンデマンドサービスが定着して消費者の購買行動がオンライン化し、さらにデータ解析やクラウド技術が一段と成熟したことが大きく関わっています。元GoogleのProduct Managerであり、今はa16zのGeneral Partnerを務めるAngelaさんから「[Every Company is a FinTech Company(あらゆる企業がフィンテック企業になる)](https://a16z.com/author/angela-strange/#:~:text=Angela%20also%20coined%20the%20idea,will%20increasingly%20derive%20a)」のフレーズが生まれ、組み込み型金融のトレンドが語られる際にこの言葉がよく引用されてきましたが、いまやその通りの状況になりつつあります。[2021年に世界の組み込み型金融市場規模(収益)は約410億ドルで、2026年には1600億ドル以上に拡大する見通し](https://raistone.com/embedded-finance-sparking-business-growth/#:~:text=There%20might%20be%20no%20market,of%20the%20market%2C%20a)と報じられています。 組み込み型金融の実装例としては、ECプラットフォーム上で購入者が与信を活用して自分に合った決済手段を選択できる、出店者や個人事業者が売上データを担保にスピーディに融資を受けられる、ポイントやマイルなどのロイヤリティプログラムがオンラインバンキングやウォレットと連携する、といったものがあり、金融サービスがビジネスの隠れたインフラとして浸透しています。例えば国内でも[三井住友銀行とユニクロが提携してUNIQLO Pay](https://www.smfg.co.jp/chronicle20/history20/section20655.html#:~:text=%E3%80%8CUNIQLO%20Pay%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AD,%E3%82%92%E6%8F%90%E4%BE%9B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82)を提供していたり、[住友SBIネット銀行とJALが提携しJALブランドの銀行口座(JAL NEOBANK)](https://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2025/0203_15235.html)の提供を可能にしています。 海外では、保険や給与前払い、福利厚生サービス、経費管理など、ビジネスの多様な領域へと拡大するケースも増えています。これらの分野は銀行や決済サービス企業がひと昔前には独占していた分野ですが、さまざまな業種の企業が参入するハードルが格段に低くなってきています。 従来の大手金融機関なのか、スタートアップによる革新的サービスなのか、どちらが組み込み型金融市場を牽引するのか、あるいは両者が提携関係を強化して新しいシナジーを生み出すのかは国や地域によって違いがあると考えられます。いずれにせよユーザーの利用体験を一元化できる組み込み型金融が今後さらに広がることは間違いなく、企業側は新しいビジネスモデルをいかに迅速かつ柔軟に導入できるかが競争力の重要な要素となります。小売やECをはじめ、サブスクリプションサービスやメディアプラットフォームの運営に携わる企業にとっても、ユーザーとの接点を大きく変えるチャンスが巡ってきているとも言えます。 組み込み型金融を実装するにあたっては、規制対応やKYC(顧客確認)・AML(マネーロンダリング防止)などの金融リスク管理が不可欠になります。金融業界特有のライセンスや法務的な課題、あるいはセキュリティ面の問題があり、それらをすべて自社で解決するには時間とコストがかかりすぎるという悩みが少なくありません。そのため、API基盤やバックエンドのインフラを提供し、企業がすばやく組み込み型金融サービスを追加できるよう支援するスタートアップが近年急成長を遂げています。こうしたスタートアップは、銀行やカードネットワーク、クレジットスコアリング機関などと連携した技術的・法的スキームをあらかじめ用意しており、企業は自社ブランドのUIで金融サービスを提供しながらも、最終的な決済や与信部分はスタートアップの仕組みに任せられるという利点があります。 サービス提供者にとっては、組み込み型金融を取り入れることで、ユーザーにとって利便性の高い新しいサービスを迅速にリリースしやすくなります。例えば、自社ブランドでの銀行サービスやクレジットカードサービスや独自ポイントを導入したり、顧客に融資サービスの提供が可能になります。そうした取り組みはユーザーの購入意欲を促すだけでなく、プラットフォームの提供側にも手数料収入やアップセルの機会を生むので、新規ビジネスとしての投資対象になりえます。 以下では、組み込み型金融の分野で近年大きな注目を集めているスタートアップ事例を取り上げ、メディアやコマース領域のビジネス展開の示唆を考えてみたいと思います。 # 中小事業者向けの融資バックエンドプラットフォーム: Parafin Parafinで実現できるユースケース例 / [Parafin](https://www.parafin.com/platforms) Parafinで実現できるユースケース例 / [Parafin](https://www.parafin.com/platforms) 第一の事例として取り上げるのは、米国を拠点とする[Parafin(パラフィン)](https://www.parafin.com/)です。Parafinは中小企業が利用しているプラットフォーム事業者が融資をはじめとした金融サービスを簡単に実装できるよう支援する組み込み型金融のインフラを提供しています。 中小企業がコンテンツ提供者や販売主となって参入している、ECサイト、ソーシャルメディア、オンラインマッチングプラットフォームなどが、中小企業に対して融資サービスやキャッシュアドバンス(売上担保による資金先払い)を提供したいと考えたとき、多くの企業は膨大な法務的手続きやライセンス取得、リスクスコアリングの仕組み構築などをゼロから行わなければなりません。ParafinのAPIを利用すれば、あらかじめ国内外の銀行や決済ネットワークと連携が済んでおり、KYC・AMLなどのプロトコルも標準実装されているため、コンセントを挿すように簡単に金融機能を利用者に提供できるようになります。 具体的なプロダクトとしては、Parafinはキャッシュアドバンス/フレックスローン/長期ローンといった複数の形態の資金調達手段をAPI経由で実装可能にし、売上をはじめとした業績データなどに基づいて自動的に与信審査を行うAIモジュールも用意しています。Parafinの機械学習ベースのリスクモデルは、[数百万件の小規模事業者の業績データを学習し、信用スコアや個人保証に頼ることなく融資の適格性やオファー内容を決定](https://www.businesswire.com/news/home/20241217769188/en/Parafin-Raises-100M-Series-C-to-Redefine-Small-Business-Financial-Services#:~:text=teams%20to%20our%20processes%20%E2%80%94,%E2%80%9D)しているとされています。これによって、たとえばオンラインでサービスを販売している事業者が、売上規模や顧客満足度を担保にして追加資金を借り入れることが可能になると考えられます。この審査は通常の金融機関が行うものよりもスピーディであり、事業者側が即日または数日以内に必要資金を手にできる点が大きな強みとなっています。 これまで大手銀行は、たとえ一定のオンライン売上実績を持っている中小事業者でも積極的に取引をしたがらず、そうした事業者は融資を得ることができませんでした。しかしParafinのようなプラットフォームが出現したことで、銀行融資よりも簡単かつ早いプロセスで資金確保が可能になっています。 導入企業は自社ブランドの下でユーザーに対して金融機能を提供するため、UIやUXは独自に設計可能です。一方、バックエンド部分を担うParafinは法令遵守とスコアリングモデルを管理し、システムが円滑に機能するようサポートを行います。導入企業が追加的な金融ライセンスを直接取得する必要がないという点で大きなメリットがあり、スピード重視でサービスを拡張したい企業には非常に魅力的なソリューションです。 Parafinが公表している主要導入事例としては、AmazonやWalmart、DoorDash、TikTok、Worldpayといったグローバル企業のプラットフォームが名を連ね、そのプラットフォームを通じて中小の販売事業者へローン、貯蓄/支出管理ツールなどの金融サービスを提供しています。現在、米国とカナダの数万の中小企業に年間約10億ドルの資金を提供しています。2022年9月のシリーズBラウンド以来、[取引量を400%増加させており、今後6か月以内に黒字化を達成すると予想](https://www.fintechfutures.com/2024/12/us-embedded-finance-fintech-parafin-secures-100m-in-series-c-funding-round/)されています。 Parafinは[2024年12月にシリーズCで1億ドルを調達し、7.5億ドルの企業価値](https://www.fintechfutures.com/2024/12/us-embedded-finance-fintech-parafin-secures-100m-in-series-c-funding-round/?utm_source=chatgpt.com)がつけられています。Parafinが最近追加調達した資金は、さらなる機能拡充と国際展開に向けて使われると見られています。 # B2B SaaS向けのEmFiプラットフォーム: Weavr Weavrが提供する機能群 / [Weaver](https://www.weavr.io/solutions/) Weavrが提供する機能群 / [Weaver](https://www.weavr.io/solutions/) 欧州でも組み込み型金融は存在感を高めており、イギリスに本拠地を置く[Weavr](https://www.weavr.io/)は組み込み型金融分野におけるスタートアップとして、近年のトレンドに乗ってサービス提供を続けています。 Weavrの企業ビジョン/ミッションをまとめると「誰もが金融サービスの恩恵を受けられるよう、必要な機能を必要な場所に、無理なく組み込める社会を作る」です。Parafinと同じく、金融サービスを顧客に提供したい企業の裏方としてホワイトレーベル型のサービス提供を可能にしています。 プロダクト概要としては、Weavrは「[プラグ&プレイファイナンス」(面倒な手続きや運用を必要とせず金融機能をすぐに使えるようにするコンセプト)をベースとしたAPI群](https://docs.weavr.io/start/multi-welcome/)を提供しており、サービス提供企業が銀行機能を組み込む際に、口座の開設・管理、カードの発行、資金の送金といった機能を簡単に実装できます。銀行などが提供する組み込み型金融は、複雑なコンプライアンスやデータ・セキュリティの責任は通常顧客企業が負うことになり、その運用体制を整えないことにはサービスを構築できません。しかしWeavrはそこの部分まで責任を担っており、必要な機能をすぐに使えるようになっています。これが『プラグ・アンド・プレイ・ファイナンス』というコンセプトとなっています。 実際にWeavrの[テクニカルドキュメント](https://docs.weavr.io/)で、銀行口座(IBAN口座)の生成、カード発行、資金振込などがシンプルに行えるインターフェースが実装されていることが確認できます。上記の機能群を利用した経費管理、福利厚生、買掛金勘定、SaaS/クラウド購入ライセンス管理などが大きなユースケースとして紹介されています。 ビジネスモデルについては、[Weavrは利用するユースケースの種類と取引量に応じた月額定額プランとカスタマイズ料金を徴収する仕組み](https://www.weavr.io/pricing/)を採用しています。 2024年7月からWeavrは[マルタ金融サービス局(MFSA)から電子マネー機関(EMI)ライセンスを取得](https://ffnews.com/newsarticle/fintech/weavr-secures-e-money-licence-to-transform-embedded-finance-for-b2b-saas-across-europe/?utm_source=chatgpt.com)しました。このライセンスにより、Weavrはヨーロッパ全土で包括的なサービスを提供できるようになり、主要通貨をサポートし、カナダドルを含む金融商品の範囲を拡大しています。また[WeavrはVisaと提携](https://www.financedirectoreurope.com/news/weavr-visa-partner-on-embedded-finance-solutions-for-b2b-saas-firms/?utm_source=chatgpt.com&cf-view)し、B2B SaaS企業における組み込み金融ソリューションの導入を加速させています。このコラボレーションは、既存のソフトウェアにシームレスに統合され、製品の品質を向上させる、導入が簡単でコスト効率の高い金融プラグインを提供することを目指しています。 Weavrは直近で資金調達はしていないものの、上記のようなライセンス取得やVisaといった大手企業との提携のニュースから事業がうまくグロースしている最中だと考えられます。 # おわりに 組み込み型金融の事例はこれまで金融サービスが縁遠い存在であった企業に対しても新たな収益化の機会を与えています。プロダクトの収益多角化を検討する際に、金融サービスを追加として組み込むことで利用者の満足度を高め、さらに手数料や利息収入といった新しい収益源になります。例えば音楽ストリーミングや動画配信などのメディアプラットフォームでも、エンドユーザへマイクロペイメントやBNPL(Buy Now Pay Later)、クリエイターへ融資サービスを組み込むことで、決済成功率やサービス継続率の向上やコンテンツの安定供給、利息収入の獲得など様々な効果が期待できます。Parafinのようなスタートアップのサービスが大手グローバルプラットフォームで次々と採用され、直近で大きな資金調達に成功したという事実は、この領域の将来性が高く評価されていることの証左でもあります。 組み込み型金融を実装する際は、法務・規制・リスク管理といった金融特有のハードルをしっかりと認識しつつ、自社でゼロから構築するのではなくスタートアップのAPIやインフラを活用する方法が合理的です。特に日本の企業は国内の規制環境が複雑であると同時に、国際展開を視野に入れた場合は海外の免許やライセンス取得が必要になるケースも出てくるため、こうした専門領域を担う外部パートナーとの協業が重要になるかもしれません。ParafinやWeavrの事例を見ても分かるように、海外スタートアップはすでにグローバルネットワークを有しており、多様な法制度にも対応できるエンジンを備えていることも少なくありません。 また、組み込み型金融を取り入れることによって収集できるデータの質と量が増すメリットも大きいと言えます。たとえば、ユーザーが分割払いを選択したかどうか、特定の与信枠を利用しているか、保険商品を購入したかなど、決済や融資にまつわる行動データは今後のプロモーションやサービス設計に活用することができます。そうしたデータを分析し、よりパーソナライズされたコンテンツや商品レコメンドを提供することで、ユーザー体験をさらに高める可能性も広がります。その意味で、組み込み型金融は単なる「決済機能の追加」に留まらず、プラットフォーム全体のユーザー理解を深めるうえでの強力なツールともなり得ます。 組み込み型金融には規制対応やセキュリティ面などの課題もつきまといますが、それらを解決するノウハウやAPIプラットフォームを提供するスタートアップが次々と台頭してきている現状を鑑みると、今後はさらに導入ハードルが下がっていくことが予想されます。海外ほどではないものの日本国内でも[近年BaaS(Banking as a Service)の取り組みは増えつつあり](https://fit.nikkin.co.jp/post/detail/dbnn066)、BaaSを活用した組み込み型金融が将来的な幅広い業種でサービス拡大のための選択肢の一つとなる日は遠くないと考えられます。そうした変化を先取りして事業戦略を練り、必要なパートナーとの協業や技術導入の検討を開始することが、長期的な競争力を左右する鍵になると考えられます。 --- ## 動画カテゴライズの多言語対応:4言語追加でカバレッジが66%拡大 URL: https://ximera.com/posts/tubular-multilanguage-categorization 公開日: 2025-02-27 著者: Tubular Labs 概要: Tubularが動画カテゴライズの対応言語にスペイン語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語を追加し、カバレッジは66%拡大。英語中心の分析では見えない地域トレンドをどう捉えるか、開発チームの視点から整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/in-conversation-with-tubular-engineers-enhancing-social-video-categorization-with-new-languages/))2025.02.27 ソーシャル動画は多くの言語で語られ、トレンドは地域ごとに違う進み方をします。グローバルなオーディエンスを理解する出発点は、文字どおり彼らの言語を扱えることです。 Tubular は動画カテゴライズの対応言語に、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語の4言語を追加しました。合計5言語となり、カテゴリー付与のカバレッジは66%拡大しています。 ![](/images/posts/tubular-multilanguage-categorization/language-coverage.png) ## 多言語対応で何ができるようになるか - 地域ごとのコンテンツ傾向、文化的な差異、オーディエンスの嗜好を観測し、その市場に合わせたメッセージでキャンペーンを設計する - 主要市場において、現地の言語ですでにターゲット層と関係を築いているクリエイターを特定する - 言語・地域をまたいでコンテンツ戦略を最適化する ![](/images/posts/tubular-multilanguage-categorization/category-insights.png) Tubular の機械学習モデルは、数十億本の動画をカテゴリーとトピックの体系に整理しています。この体系がどの言語まで届いているかが、そのまま分析の解像度になります。 ## 英語中心からの脱却という課題 開発チームによれば、当初のシステムは自然言語処理(NLP)上の制約から英語中心にならざるを得ませんでした。技術の進展と市場からの要請の両方が、多言語化を押し進めたかたちです。 ## 日本のメディア・ブランドにとっての含意 この話は、分析ツールの言語カバレッジが分析結果そのものを規定する、という一般的な問題でもあります。日本語圏を対象にした分析を外部ツールで行う際も、対象言語の扱いがどこまで作り込まれているかは確認すべき前提条件です。英語圏のデータだけを見て世界の傾向を語ると、地域ごとの違いが平均に埋もれます。 インタビューの詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/in-conversation-with-tubular-engineers-enhancing-social-video-categorization-with-new-languages/)からご覧いただけます。 --- ## クリエイターのマネタイズを支援するマーケットプレイス URL: https://ximera.com/posts/7e27872aee 公開日: 2025-01-30 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #69|Ikuo Morisugi| 2025.01.30 ![](/images/posts/7e27872aee/kayle-kaupanger-J8ksCswaBYo-unsplash.jpg) Photo by [Kayle Kaupanger](https://unsplash.com/ja/@notaphotographer?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%81%B0%E8%89%B2%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%92%E7%9D%80%E3%81%9F%E7%94%B7-J8ksCswaBYo?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに:拡大するクリエイターエコノミーの課題 クリエイターエコノミーの市場規模は年々大きくなっており、今後も市場成長が続くことが予測されています。今まで以上に多くの人々がクリエイターとして独自のコンテンツを発信することで生計を立てるようになっています。クリエイターの収益モデルは、広告収益やブランドとのタイアップ、ファンからの直接支援(投げ銭やサブスクリプション)など多岐にわたります。しかし、こうした収益モデルには未だに課題が存在し、外部環境の変化、限られた案件数、契約や履行プロセスの煩雑さなどがクリエイターにとって活動継続の壁となっています。 クリエイターエコノミーの市場は今後も大きな成長が予測されている Image: [Market.us](https://market.us/report/creator-economy-market/) クリエイターエコノミーの市場は今後も大きな成長が予測されている Image: [Market.us](https://market.us/report/creator-economy-market/) たとえば、配信プラットフォームは、頻繁にアルゴリズム変更や広告単価を変動させるため、収益が予測しにくくなるケースも多く、広告収益だけに依存するモデルでは持続的な成長が難しくなっています。また、継続的にブランドとのタイアップ案件を獲得することも簡単ではありません。大手のエージェンシーに所属していなければ、クリエイター自身が営業を行う必要があり、クリエイティブな活動に専念することが難しくなるというジレンマも存在します。さらに、ブランド側との契約交渉や管理業務は煩雑であり、適切なサポートがなければクリエイターが本来の活動に集中できなくなるリスクもあります。 クリエイターが安定して収益を確保するためには、広告収益に依存しない新たなマネタイズの手段が必要とされています。とくに、ブランドとの直接的な取引の機会を増やすことや、D2Cモデルの活用によって収益の多様化を図ることが重要となっています。 このような状況のなかで、独自のアプローチでクリエイターのマネタイズを支援するスタートアップが現れています。本稿では新たなクリエイターのマネタイズのトレンド事例を取り上げ、メディア/コマースの次の動きを考えていく材料となれば幸いです。 # プログラマティック型YouTube案件動画マッチング: Agentio Image: [Agentio](https://www.agentio.com/) Image: [Agentio](https://www.agentio.com/) [Agentio](https://www.agentio.com/)はYouTubeクリエイター向けにブランドパートナーシップ(案件動画)をプログラマティック広告のようにマッチングできるプラットフォームを提供し、マネタイズの選択肢を増やすことを目指しています。従来、YouTubeクリエイターは主に代理店経由や直接コンタクトのあった広告主から動画案件を得ていましたが、クリエイターも広告主も適切なパートナーを見つけられているとは言い難い状況になっています。その結果、あまり質の高くない案件動画が制作されたり、クリエイターが安定した収益を確保するのが難しくなっていました。 これに対してAgentioはクリエイターと広告主を直接マッチングする広告プラットフォームを提供し、AIを活用した案件のマッチングを可能にしています。クリエイターは自身のコンテンツにもっとも適した企業案件を選択し、視聴者に対して違和感のない形で企業の宣伝を組み込むことができます。広告主にとっても、従来のプラットフォーム広告とは異なり、ターゲット視聴者により適切な形でブランドメッセージを届けることができます。Agentioは広告の入札プロセスを自動化するとともに、[LLM を使用してクリエイターのデータとコンテンツ、およびキャンペーン概要、ブランド ボイス、ガイドライン、以前のクリエイター パートナーからの過去のパフォーマンス データなどの広告主データを分析](https://digiday.com/media-buying/new-startups-hope-to-tap-into-both-the-ai-boom-and-creator-economy/)しています。それにより、クリエイターと広告主のマッチング精度を上げています。人脈や労働力に頼っていた案件動画マッチング業界をITとLLMによりマッチングが自動化されたマーケットプレイスに変革させたのがAgentioの大きな価値となっています。 Agentioの収益源は広告主からの出稿金額に対する手数料(20%)となっており、[出稿金額の80%はクリエイター側が取得できるモデル](https://alleywatch.com/2024/11/agentio-creator-advertising-platform-marketplace-ai-arthur-leopold/)となっています。 2024年11月時点でAgentioのマーケットプレイスは招待制ながらも約50のブランド(DoorDash、Mint Mobile、MasterClass、Notion、HelloFreshなど)との提携と1,000人以上のクリエイター(Nick DiGiovanni、Matty Matheson、Rhett & Link、Chad Chadなど)が参加しており、2024年3Qから4QにかけてブランドからAgentioのマーケットプレイスへの出稿費用が2.35倍に増えるなど着々と実績を積み上げています。 [Agentioは2024年11月にシリーズAラウンドで1,200万ドル(約18.5億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2024/11/19/agentio-raises-12-million-from-benchmark-for-its-youtube-ad-marketplace/)を実施しました。リードインベスターはBenchmarkであり、Agentioはこの資金をクリエイターやブランドとのネットワーク拡大、新たな広告組織や人員拡大に充てると考えられます。Agentioは、YouTube広告市場における独自のポジションを確立し、従来の広告プラットフォームとは異なる新たなアプローチを提供しています。 # ブランドの商品をクリエイターショップで販売: ShopMy Image: [ShopMy](https://shopmy.us/home) Image: [ShopMy](https://shopmy.us/home) [ShopMy](https://shopmy.us/home)はクリエイターがブランドとのコラボレーションを容易に行えるようにすることを目的としたプラットフォームです。従来、クリエイターがブランド案件を獲得するためには、自ら営業活動を行い、契約を交渉し、販売戦略を構築する必要がありました。しかし、このプロセスは時間と労力を要し、個人で活動するクリエイターにとっては負担が大きいものでした。 ShopMyは、1. クリエイターのお気に入りブランドの商品をセレクトしたオンラインストア開設、2. ブランドの商品のアフィリエイト販売による収益獲得、3. ブランドとのダイレクトスポンサーシップを獲得、の3つを可能にするプラットフォームを提供しています。クリエイターは、自身が気に入っているおすすめブランドの商品をまとめたストアを作成し、SNSで簡単に共有することができます。ShopMyはハイブランドも含め[4万7000以上のブランド](https://shopmy.us/home#FAQ)と提携しており、数百万の製品カタログからクリエイターが信頼性の高い商品のみを選択して紹介できる環境を提供しています。 クリエイター側はShopMy経由の購入で発生するブランドからのアフィリエイト収益(商品[販売価格の10-30%程度](https://shopmy.us/home))を得ることができます。ShopMyはクリエイターが販売する商品のアフィリエイト収益から[18%](https://guide.shopmy.us/289138ecba514337965ea05d1896d1e7)とブランド側からの[999ドル(約15万円)からはじまるサブスク料金](https://techcrunch.com/2024/03/14/shopmy-influencer-marketing-platform-lands-18-5-million-funding-round/)を主な収益源としています。 美容系インフルエンサーのAlix EarleはShopMyを活用して自分の[オンラインストア](https://shopmy.us/alixearle?utm_source=hoobe&utm_medium=social)を立ち上げ、フォロワーに商品がフィーチャーされたTikTok/Instagramの動画とともに、おすすめのアパレル・スキンケア・メイクアップ・ギフトなどの商品を紹介しています。ShopMyはTechCrunchにクリエイターがこのプラットフォームで「数千万ドルの手数料を稼いでいる」と話しており、成功事例も生まれていると考えられます。 [ShopMyは2025年1月にシリーズBラウンドで7750万ドル(約120億円)の資金調達を実施](https://www.wsj.com/articles/influencer-startup-shopmy-raises-77-5-million-to-expand-into-new-ad-categories-5ef297c4)しました。リードインベスターはMenlo VenturesとBessemer Venture Partnersであり、調達資金はプラットフォームの拡張、ブランドとの提携強化、クリエイター向け機能の高度化に活用される予定です。 # おわりに:メディアやコマースはどうクリエイターとの協業を進めるか AgentioとShopMyはそれぞれ異なるアプローチを採用しながらも、共通して「クリエイターが自身のコンテンツや影響力を最大限に活用し、マネタイズを持続可能なものにする」ための価値を提供しています。従来、クリエイターのマネタイズ手段はYouTubeやInstagramなどのプラットフォームが提供する広告収益に大きく依存していました。しかし、プラットフォームのアルゴリズムや広告単価の変動によって、収益が予測しづらく、不安定な状態が続いていました。 このような状況に対し、AgentioはYouTubeクリエイター向けにブランド広告をより効果的にマッチングし、クリエイターが自らのコンテンツに最適な広告を選択できる環境を構築しています。一方、ShopMyはブランドとクリエイターのダイレクトなつながりを生み出し、クリエイターが自らの影響力を活かして製品を販売する新たな収益モデルを提供しています。このように両社ともに「クリエイターがプラットフォームに過度に依存せず、自立した収益基盤を築くこと」を支援する点で共通しています。AgentioとShopMyの事例はクリエイターエコノミーが単なるトレンドではなく、新たな産業の柱として確立しつつあることを示しています。今後、クリエイターエコノミーのさらなる発展に伴い、メディア企業やコマース企業がどのようにクリエイターとの協業を進めるかが事業成長の鍵を握ることになると考えられます。クリエイターの経済圏を支える仕組みを整え、テクノロジーを活用してマネタイズを最適化することがこれからの市場競争において重要な要素となります。 AgentioとShopMyのような企業が増えていくことでクリエイターのマネタイズの選択肢はさらに広がり、クリエイター自身がビジネスオーナーとしての役割を担う時代が加速していきます。メディア企業やコマース企業にとってもこうした変化を捉え、クリエイターエコノミーとどのように共存・発展していくかを考え抜くことが事業成長に求められます。 --- ## Q4 2024:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/1e14a10498 公開日: 2025-01-17 著者: Chartbeat by Chartbeat Staff([原文](https://chartbeat.com/resources/research/global-audience-insights-from-the-fourth-quarter-of-2024/))2025.01.17 Chartbeatは四半期ごとにグローバルのトラフィックから得られたインサイト(気づき)を共有しています。2024年第4四半期、アフリカでは平均エンゲージ時間が増加、東南アジアではモバイル読者数が減少、ロイヤル読者数は北欧が最高を維持しました。 *これまでのインサイト: [Q3 2024](/posts/8da672ccfe) / [Q2 2024](/posts/c6f6766689) / [Q1 2024](/posts/7117cbbab1) / [Q4 2023](/posts/b75e41d1fd)* ## エンゲージ時間は中東が最多 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/01/Q4-2024-Engaged-Time@2x-1024x742.png) 中東の読者の平均エンゲージ時間は38.4秒で、もっともエンゲージの高い読者となりました。中・東欧と中南米がそれぞれ37.3秒と29.3秒でそれに続きます。その他の地域では、平均エンゲージ時間が29秒を超える地域はありませんでした。 ## 東南アジアと南ヨーロッパでモバイルトラフィックが減少 中央アジア、東南アジア、アフリカでは、ページビューの80%以上がモバイルからのものであり、引きつづきモバイルからのトラフィックが大半を占めています。第4四半期には、すべての地域でページビューの少なくとも67%がモバイルデバイスからのものでした。 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/01/Q4-2024-Mobile@2x-1024x742.png) ## ほとんどの地域で検索トラフィックが増加 中央アジアの第4四半期のページビューの54%は検索エンジンからのもので、第3四半期の50%から増加しました。アフリカのパブリッシャーも同様で、ページビューの45%が検索エンジンからのものでした。 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/01/Q4-2024-Search@2x-1024x742.png) ## アフリカではソーシャルトラフィックが減少 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/01/Q4-2024-Social@2x-1024x742.png) 第4四半期のアフリカのページビューの17%はソーシャルプラットフォームからのもので、第3四半期の20%から減少しました。ソーシャルメディアからのトラフィックの割合がもっとも高かったのは東南アジアで19%でした。 ## ロイヤリティがもっとも高いのは北欧 ![](https://chartbeat.com/wp-content/uploads/2025/01/Q4-2024-Loyalty@2x-1024x742.png) 訪問頻度の高いロイヤル読者からのページビューの割合がもっとも高かったのは北欧で54%、前四半期の51%から上昇しました。中・東欧が45%で続いています。前期比でもっとも増加したのは中東で、27%から31%に上昇しました。 ## 2024年Q4のポイント 全世界の平均エンゲージ時間は29秒 中央アジアの24.7秒から中東の38.4秒まで、幅があります。 視聴者はモバイルファースト どの地域でも、サイト訪問の少なくとも67%はモバイルデバイスによるもので、3つの地域では80%以上となっています。 検索からのページビューは伸びつづけている 東南アジアは、第3四半期から第4四半期にかけて検索トラフィックが減少した唯一の地域です。 --- ## 2025年の幕開け:ゴールデングローブ、NFL、大統領就任式が示したソーシャル動向 URL: https://ximera.com/posts/starting-strong-2025 公開日: 2025-01-17 著者: Tubular Labs 概要: 受賞式のレッドカーペット取材の38%はインフルエンサーが担当、NFLの最多視聴動画5本中4本は独立クリエイター。Tubularのデータから、大型イベントで視聴が集まる場所がどこへ移ったかを整理する。 by Tubular Labs([原文](https://tubularlabs.com/blog/starting-strong-in-2025/))2025.01.17 エンターテインメント、スポーツ、政治。それぞれの領域で、2025年の年明けに何が視聴を集めたのか。Tubular のデータから要点をご紹介します。 ## エンターテインメント:ゴールデングローブ賞 ![](/images/posts/starting-strong-2025/golden-globes.png) 授賞式週のソーシャル動画でもっとも視聴・エンゲージメントを集めたのは、Entertainment Tonight が TikTok に投稿した、助演女優賞を受賞した Zoe Saldaña 氏のスピーチでした。2日間で3,400万回の視聴と440万件のエンゲージメントを記録しています。 視聴上位10本のうち3本は、俳優 Zendaya 氏の婚約報道に関するものでした。2位に入ったのは HBO の配信アカウントによる投稿で、レッドカーペットでの指輪の画像を、同氏が演じた作品のワンシーンに重ねたミーム的な編集です。話題への乗り方として、自社作品の資産を使った例といえます。 注目すべきは制作の担い手です。レッドカーペット取材の38%が、ソーシャルメディアのインフルエンサーによるものでした。自身のアカウントに投稿する人もいれば、メディア企業と組んで取材にあたる人もいます。ソーシャル前提のイベント取材において、メディアがクリエイターと組む形が定着しつつあります。 ## スポーツ:NFL の YouTube 視聴はどこに集まったか ![](/images/posts/starting-strong-2025/youtube-inauguration.jpg) NFL は2024年レギュラーシーズン中に YouTube で47億回の視聴を集めました。リーグ公式チャンネルが大きなシェアを占め、メインページだけで6億1,100万回です。 一方で、放映権を持たないクリエイターも大量の視聴を生んでいます。 - ESPN のメインページの NFL 関連動画は9,580万回 - ESPN の Pat McAfee 氏個人で9,470万回 - 視聴上位5本のうち4本は独立系クリエイターによる投稿 - 視聴上位50本のうち、1分を超える動画はわずか6本 球団やメディアパートナーもショート動画で成果を出しており、もっとも視聴されたのはヒューストン・テキサンズのマスコットによる試合前の演出動画でした。Paramount 傘下の Nickelodeon は、NFL のマスコットに関するクイズ動画で1,040万回超を獲得しています。自分の領域の外にある大型イベントに、自分の文脈で参加した例です。 ## 政治:就任式に向けた1か月 ![](/images/posts/starting-strong-2025/tiktok-inauguration.jpg) 1月20日の就任式以前に投稿された、米大統領就任式に関する視聴上位10本を見ると、6本が判決関連、1本が2024年の人質解放をめぐる発言に関するものでした。式典そのものより、その周辺の出来事に視聴が集まる構図です。 ![](/images/posts/starting-strong-2025/top-topics.png) ## 日本のメディアにとっての含意 3領域に共通するのは、公式の一次コンテンツより、その周辺の切り出しと解釈に視聴が集まっているという点です。権利を持つ側が有利とはかぎらない構造のなかで、自社の立ち位置をどこに置くかを決める必要があります。 詳細は[原文](https://tubularlabs.com/blog/starting-strong-in-2025/)からご覧いただけます。 --- ## 2024年の生成AIトレンドとそのメディア業界への影響を振り返る URL: https://ximera.com/posts/bd6f9ab9f5 公開日: 2024-12-24 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #68|Ikuo Morisugi| 2024.12.24 ![](/images/posts/bd6f9ab9f5/michael-milverton-Le4yqbCMoJo-unsplash.jpg) Photo by [Michael Milverton](https://unsplash.com/ja/@milverton?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E8%A3%B8%E3%81%AE%E6%9C%A8%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AE%E9%B3%A5%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88-Le4yqbCMoJo?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに 2024年のメディア・コマース業界はAI技術の進化とそれに影響を受けた消費者行動の変化があった年となりました。本記事では、この年の主要なトレンドを振り返り、どのように業界がこれらの変化に適応してきたか、またどのような可能性が未来に広がっているかを考察します。 生成AIの急速な進化に伴い、AIスタートアップに大型の投資と競争が起こっている他、AI検索が新たな市場シェアを獲得し始めました。一方で、AIによるリスクへの懸念や倫理的課題も浮き彫りになっています。 これらの変化は、メディア・コマースの枠を超え、広範な社会的影響を及ぼしています。以下では、生成AIを中心とした2024年の主要トレンドを詳しく取り上げます。 # 1. 大型AI投資を中心にVCの投資額は増加傾向 グローバルVC投資額の推移 [Crunchbase](https://news.crunchbase.com/venture/billion-dollar-funding-rounds-ai-recap-november-2024/) グローバルVC投資額の推移 [Crunchbase](https://news.crunchbase.com/venture/billion-dollar-funding-rounds-ai-recap-november-2024/) 2022年に起こった世界的なリセッション懸念の高まりにより、各VCはそれまで加熱気味だったスタートアップ投資を控えるようになりました。[本連載第38回](/posts/ab7a44b7f0)で記述したように、スタートアップは次の調達までの期間が長期化し、より短期的な経営指標の最適化が必要な状況となりました。結果として2022年のピーク時に比べて、2023年はスタートアップに向けられる投資額は半減しました。 - 参考: [Ximera Media Next Trends #38 景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方](/posts/ab7a44b7f0) 2024年でもVCがスタートアップに対して求めていることは大きく変わっておらず、全体投資額は2023年と同程度の水準でしたが、2024年11月が前年比で大きく増えたことや[12月にDatabricksの100億ドルの大型の調達](https://techcrunch.com/2024/12/17/databricks-raises-10b-as-it-barrels-toward-an-ipo/?guccounter=1)があったため、全体の投資額としては前年よりも増加する見込みです。 AIスタートアップへのVC投資額と投資件数の推移 [Crunchbase](https://news.crunchbase.com/venture/billion-dollar-funding-rounds-ai-recap-november-2024/) AIスタートアップへのVC投資額と投資件数の推移 [Crunchbase](https://news.crunchbase.com/venture/billion-dollar-funding-rounds-ai-recap-november-2024/) そんな中でAI関連スタートアップの投資額は2023年に比べて大きく伸びました。投資金額は増えていますが、投資件数はやや減りつつあり、代わりに大型のスタートアップの調達が増えています。代表格では、[OpenAIが66億ドル](https://openai.com/index/scale-the-benefits-of-ai/)、[xAIが60億ドル](https://www.reuters.com/technology/artificial-intelligence/musks-xai-raises-around-6-bln-equity-financing-2024-12-05/)、[Anthropicが40億ドル](https://techcrunch.com/2024/11/22/anthropic-raises-an-additional-4b-from-amazon-makes-aws-its-primary-cloud-partner/#:~:text=To%20date%2C%20Anthropic%20has%20raised,%244%20billion%20deal%20last%20year.)、[Perplexityが5億ドル](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-19/SOPIZPT0AFB400)、など従来のスタートアップの調達額と比べても巨額な投資がなされています。これは生成AIの開発や性能向上に必要なGPUや人材の確保のための資金となっており、特にLLMを独自に開発するAIプラットフォームの覇権争いが加速しています。 # 2. Googleを代替する検索トラフィック獲得の動き ChatGPTやPerplexityなどAI検索トラフィックのシェアが無視できない割合に [Search Engine Roundtable](https://www.seroundtable.com/chatgpt-search-marketing-share-38442.html) ChatGPTやPerplexityなどAI検索トラフィックのシェアが無視できない割合に [Search Engine Roundtable](https://www.seroundtable.com/chatgpt-search-marketing-share-38442.html) 依然としてGoogleのシェアは大きいものの、2024年はChatGPTやPerplexityなどAI経由の検索トラフィックが大きく伸びました。特にChatGPTの成長は目覚ましく、2024年10月時点でのChatGPTの市場シェアは4.33%に達しているとの[報告](https://www.seroundtable.com/chatgpt-search-marketing-share-38442.html)もあります。これはYoutubeに次いで3番目に大きな検索トラフィックとなっており、検索経由でのユーザ獲得において、AIの回答やソースとして選ばれることの重要性が高まっています。The New York Times、Wired、Forbesなどが生成AIのスクレイピングに反対の姿勢を見せる一方で、Perplexity AIがパブリッシャーとの収益分配プログラムを発表、OpenAIはコンテンツパートナーシップを発表するなど、パブリッシャーとの関係にも変化が見られました([参考](https://www.emarketer.com/content/openai--perplexity-secure-more-publisher-licensing-deals))。 ChatGPTは2024年10月に[サーチモードの実装とChrome向けプラグイン](https://openai.com/index/introducing-chatgpt-search/)を発表しており、よりブラウザネイティブでChatGPTから検索をスタートさせるという動きを強化しています。 さらに[Google反トラスト法違反訴訟で、連邦地方裁判所が違法判決を出した](https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00511/101800040/)ことで、Googleは事業の分割・売却などの規制につながりかねない状況となっています。日本でも[公正取引委員会が排除措置命令を出す方針](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241222/k10014675581000.html)が報道されています。これらの行方によってはGoogleがコントロールできる検索トラフィックが今後大きく変わる可能性を秘めています。 またTikTokにおいてもここ数年で[サイト内検索トラフィックの導線を強化](https://digitalmarketinginstitute.com/blog/is-tiktok-a-search-engine)している他、クリエイター向けに検索トレンドを理解して適切にTikTok内SEOを促進するための[Creator Search Insight](https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/creatorsearch)の提供など、検索経由でのユーザ回遊を増やし、検索エンジンとしても強いポジションを築きつつあります。 このようにAI検索エンジンやソーシャルメディア内の検索トラフィックトレンドの勃興や、Googleへの規制強化などいくつかのピースが揃うことで、2024年はこれまでのGoogle一強時代から大きく変わる可能性がでてきた年になっています。 # 3. 生成AIのスケール則への懸念とリスクの高まり 2024年も生成AI関連で数多くのサービスが新たに登場し、性能の向上もはかられてきました。基盤となるLLMにおいて、GPT-o1/o3、Claude 3.5、Gemini 2.0などが登場し、特に推論性能が引き上げられました。しかし、これまでのような劇的な進化は難しくなるという見方もあります。LLMの性能を上げるスケーリング則は時代とともに変わってきますが、現時点でよく取り上げられるスケーリング則の3点において、懸念が生じはじめています。([参考](https://medium.com/@aiml_58187/beyond-bigger-models-the-evolution-of-language-model-scaling-laws-d4bc974d3876))。 1. (大量のデータを使って)学習する時間を長くする 2. モデルが推論する時間を長くする 3. (大量のデータを使って)追加学習する時間を長くする・パラメータを調整する このAIのスケーリング則について、2023年頃に(1)による劇的な性能アップについては、[OpenAI自身によって終わりを迎えた](https://www.wired.com/story/openai-ceo-sam-altman-the-age-of-giant-ai-models-is-already-over/)と述べられています。(2)については、o1をはじめとした推論時間を長く取るアプローチによって確かに性能アップが図られている一方で、[専門家からはGPT3からGPT4ような劇的な性能アップは見られない](https://garymarcus.substack.com/p/a-new-ai-scaling-law-shell-game)と指摘されています。また、(3)の追加学習についても、[2026年までに質が一定担保された学習データが枯渇する問題が起こる](https://gigazine.net/news/20231108-run-out-data-train-ai/)と言われてます。これらを総合すると、AIはこれまでのような劇的な進化が難しくなってくると考えられます。 また、リスクについては[本連載第58回](/posts/89074ee9e9)でも取り上げた生成AIによるリスクは依然として問題となっています。多くの企業が依然として[誤情報の生成に強い懸念](https://www.businessinsider.jp/post-297063?utm_source=chatgpt.com)を持っています。ハルシネーションは完璧に抑えることは不可能である一方で、本連載第58回でも紹介したGuardrailsのようにAIに対して、ハルシネーションや意図しない回答をチェックし評価する多段の仕組みによって解決がはかられようとしています。 - 参考: [Ximera Media Next Trends #58 AIの安全性を高めるテクノロジー](/posts/89074ee9e9) また、o1のように推論機能が高度になったAIがリリースされたことによって、単なる誤答ではなく、AIが意図的に人間に嘘をつくケースが発生しています。[Open AIが発表している論文](https://cdn.openai.com/o1-system-card-20241205.pdf)の中で、o1が下記のような行動を取ることが言及されています。 > o1が自分の目標に従って行動する際にシャットダウンされる可能性があると信じ、さらに自分の行動が監視されていると認識した場合、5%の確率でこの「監視メカニズム」を無効化しようと試みました。また、o1が「開発者」たちによるメモを発見し、その中でAIが誤った目標設定をしており、新しいモデルに置き換えることが記されていた場合、2%の確率で新しいモデルを上書きしようとしました。 > これはハルシネーションとはまた異なる問題であり、ハルシネーションを起こさなくなったとしても、人間が設定したゴールとAIのインセンティブがアラインしない際に、AIが望み通りの行動をとらないリスクが新たに発生しています。これは特にシステムの操作権限をAIが持ったときに、より大きなリスクを抱える(システムの乗っ取りや人間への攻撃的なアプローチが起こり得る)問題であり、AIへのセキュリティの考え方が大きく変わる可能性を秘めています。 # おわりに 2024年はAI技術と市場の受容性が業界に変化を起こしつつある年となりました。生成AIへの大型投資が新たな可能性を生み出し、検索トラフィックの競争がGoogle一強の構図を揺るがしつつあります。一方で、AIのスケーリング則や倫理的リスクといった課題が浮き彫りとなり、新たな対応策も必要になってきています。 AI技術のさらなる発展や、新しい検索エコシステムの形成、そしてリスク管理に向けた取り組みは、2025年以降の業界の方向性を形作る重要なテーマとなりえます。 メディア・コマース業界にとっても、技術革新の推進だけでなく、透明性や倫理的基準を重視し、消費者との信頼関係を構築することが不可欠です。本記事が、2024年のトレンドを振り返りながら、未来のビジョンを描く一助となれば幸いです。本年もお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。 --- ## リアルタイム生成AIがもたらすコンテンツ開発の多様性と民主化 (1) URL: https://ximera.com/posts/93807f3cb6 公開日: 2024-12-03 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #67|Ikuo Morisugi| 2024.12.03 ![](/images/posts/93807f3cb6/nathan-dumlao-TMU6dl6La9k-unsplash.jpg) Photo by [Nathan Dumlao](https://unsplash.com/ja/@nate_dumlao?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E9%BB%92%E3%81%A8%E7%99%BD%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%99%BD%E3%81%84%E9%95%B7%E8%A2%96%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%84%E3%82%92%E7%9D%80%E3%81%9F%E4%BA%BA-TMU6dl6La9k?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに デジタルコンテンツの需要が爆発的に増加している現代、生成AIは、制作者がコンテンツを創造し、体験する方法を一変させています。その中でも、リアルタイム生成AIがもたらす影響は、コンテンツの多様性を広げるだけでなく、その制作プロセスの民主化を推進する点で注目されています。 これまで、デジタルコンテンツは制作コストや専門的なスキルによって制約されてきました。しかし、リアルタイム生成AIはこうした制約を取り払い、個人や小規模なチームでも大規模なプロジェクトを実現できる環境を提供します。 たとえば、ゲーム開発において、従来は膨大な労力をかけて世界観を構築する必要がありましたが、生成AIを活用すれば、ユーザーごとにカスタマイズされた独自の世界をリアルタイムで生成できます。また、エンターテインメント業界だけでなく、教育やトレーニング、コマースなど幅広い分野で、ユーザーに応じたパーソナライズされた体験が可能になっています。これにより、これまでアクセスできなかった市場やニーズを掘り起こし、新たな価値が創造されます。 生成AIのもう一つの重要な側面は、ソフトウェア開発の民主化です。AIエージェントを使えば、専門知識がなくてもフロントエンドからバックエンドまでのコードを生成し、Webアプリケーションやサービスを構築することが可能になりつつあります。[本連載第59回](/posts/c3f21c82f0)でもPoolside AIの事例を取り上げましたが、実際に動くデモは見ることはできませんでした。しかし現在では実際にプロンプトでWebサービスを完成できるサービスも登場しています。 上記のようなテクノロジーは、技術的スキルがなかったり、技術リソースにアクセスできなかった人々や地域に、新たな機会を提供します。例えば、非エンジニアのクリエイターが自身のアイデアを形にするだけでなく、スタートアップがスピード感を持ってプロトタイプを開発し、競争力を高めることができるようになります。また、技術スキルが高い人もより要件を明確にしてAIに指示できるのでより精度高く早く開発が進むようになります。 これらの技術革新は、デジタルコンテンツ開発のスケーラビリティを高めるだけでなく、より多様な人々が自らの創造力を発揮できる土壌を築きます。本記事では、リアルタイム3Dモデル生成とコード生成の分野で先進的な取り組みを進めるスタートアップ、DecartとReplitを例に、サービス/プロダクトでどこまで期待される役割を実現できているのか掘り下げていきます。 # リアルタイムな3D空間生成: Decart [Decart](https://www.decart.ai/)は、AIを活用してリアルタイムにプレイ可能な3D空間が生成されるオープンワールドモデル「OASIS」を提供しています。従来のゲーム開発と異なり、開発者が膨大な量のデータを事前に用意する必要がなく、AIがリアルタイムで環境を生成します。[OASISのデモ](https://oasis.decart.ai/starting-point)では参考になる画像を一枚アップロードするだけでマインクラフト風の世界が下準備なくリアルタイムで生成され、そのままプレイできる環境が提供されています。初期マップが自動生成されるだけではなく、ユーザが何らかアクションを行うフレーム毎にマップ(に見せかけた動画)がダイナミックに生成されていきます(より詳細な技術解説は[Decartのブログ](https://www.decart.ai/articles/oasis-interactive-ai-video-game-model)で)。ChatGPTのように既存のLLMではどうしても入力から出力までにラグが発生しますが、ゲームのユーザアクションにチューニングされた学習モデルと生成AIに特化したNVIDIAのGPUを使うことで、低画質ながらもゲームプレイに支障のないレベルの品質をリアルタイムに生成することに成功しています。
「OASIS」はその革新性から、業界内外で注目を集めています。たとえば、著名な企業家イーロン・マスク氏は、[「Wow, this is happening fast.」とSNSでコメント](https://twitter.com/elonmusk/status/1852134148363747525)し、その技術力に驚きを示しました。また、人気ゲームストリーマーのPhoenix SC氏も、[「OASISが今話題になっている」とYoutubeで取り上げた動画](https://www.youtube.com/watch?v=XF2nC3lI70A)が99万再生以上されておりゲーマーコミュニティ内での注目も感じられます。 Decartの公式サイトや公開資料では、ビジネスモデルの詳細は明示されていませんが、同社が提供する「OASIS」は、リアルタイムに生成される仮想世界を体験できるプラットフォームとして注目されています。この技術は、主にゲーム開発者やクリエイター向けのソリューションとして設計されていると考えられます。また、DecartはAIインフラストラクチャの効率化にも力を入れており、トレーニングや推論プロセスの高速化を可能にする技術を提供していることが知られています。このことから、「OASIS」の使用を通じて個別のライセンスやサブスクリプションモデル、またはAIインフラの提供によるBtoB向けの収益化が将来的には考えられます。 2024年10月、Decartは上記の「Minecraft」風のデモの公開とともに、シリコンバレーのトップティアVCであるSequoia Capitalをリード投資家とした[2100万ドルの資金調達ラウンド](https://techcrunch.com/2024/10/31/decarts-ai-simulates-a-real-time-playable-version-of-minecraft/?guccounter=1)で大きな注目を集めており、成長の加速が期待されています。 # フロントエンド/バックエンドアプリを自動生成:Replit [Replit](https://replit.com/)は、ブラウザベースのクラウド統合開発環境(IDE)を提供しています。AIでコード開発を支援する[GithubのCopilot](https://github.com/features/copilot)に競合するAIコード開発支援に強みを持っている同社ですが、特に注目されるのが「Replit Agent」というAIです。Replit Agentはユーザーが自然言語で指示を入力するだけで、フロントエンドからバックエンドまでを自動的に生成し、完全なWebアプリケーションを構築することが可能です。この技術により、プログラミングの知識がない初心者でも、複雑なアプリケーションを簡単に開発できる環境を提供しています。従来のコード生成支援はGithub Copilotのように主は開発者でそのサポートをしてくれるものか、もしくは主はAIだがフロントエンドだけ自動生成できるようなソリューションが主でしたが、Replitをはじめ主がAIでかつバックエンドも考慮した総合的なアプリケーション開発を支援するサービスが登場してきています。
Replit Agentは簡易なプロンプトからでも一定必要な要件を推定して選択肢を提示してくれます。例えば、ユーザ登録/ログイン機能は必要なのか、ソーシャルログインは使えるようにするか、データベースを使って情報を覚えておく必要があるか、などです。またチェックポイントをいくつか作ることで、利用者の要望に沿った開発ができているかチェックすることができます。例えば、「ユーザ登録機能とログインは正常に動いていますか?」とReplit Agentからデモ画面とともに質問されるので、自分で実際に動かしてみて想定どおりかどうか確認し、もし想定と違えばまたプロンプトで「XXXの動きが違います。XXXするように動かして」といえば、修正作業に入ってくれます。 このようにリアルタイムにコード生成しつつユーザとインタラクティブに開発を進めることができるAIとなっており、ユーザ側の負荷をかなり下げることができています。 事例として、あるXのユーザーは「Replit Agent」を活用して、[短時間でイベント管理アプリケーションを構築](https://twitter.com/ayami_marketing/status/1854892919246999987)しました。このアプリケーションはログイン機能やデータベースの統合も含まれており、よりバックエンドもフロントエンドも同時に作られています。 Replit Agentもまだベータ機能であり、完璧なものではありません。何度も間違いを修正したり開発時間が長期化すると当初の要件を忘れてしまうこともあり、開発者だったらもう自分で直した方が早いと感じる場合もあります。またChatGPTと同様ですが、要件がクリアであればあるほど当初の理想と近いものに仕上がるため、要件定義が明確でないと思った通りのアプリにはなりません。そのためディティールにこだわりきったアプリを作るには向いておらず、現時点では新しいサービスや機能の動作確認をするモックアップ開発もしくは、イベントなどでワンタイムで利用するダイナミックに動くLPサイトなどに向いていると感じます。 Replitは無料プランをベースに、[IDEの追加機能やリソースを利用できる有料プラン](https://replit.com/pricing)を展開しています。月額15ドルのReplit Coreプランで、Replit Agentが利用できるようになっており、目玉機能となっています。他にもTeamsプランでチーム開発にも対応するほか、企業向けのエンタープライズプランも準備中であり、商業利用をサポートする環境の整備に力を入れています。 2023年4月、[Replitは1億ドルの資金調達](https://techcrunch.com/2023/04/27/replit-funding-100m-generative-ai/?utm_source=chatgpt.com)を実施しました。この資金は主に生成AI機能の強化とプラットフォームの拡大に充てられています。投資家にはAndreessen Horowitz(a16z)やCoatue ManagementなどトップティアのVCが含まれ、Replitの成長性への期待が高まっています。 # おわりに リアルタイム生成AIとコード自動生成技術は、コンテンツの多様性と制作プロセスの民主化において、かつてない変革をもたらしています。Decartのリアルタイムなデジタルワールド生成技術は、ゲームや教育の分野でこれまでにないインタラクティブでカスタマイズ可能な体験を提供しています。一方、ReplitのAIエージェントは、技術的な知識がなくてもアプリケーション開発を可能にし、開発のプロセスをより民主的なものへと変えています。 これらの技術が生み出すのは、単なる効率化のみではありません。まだベータ状態で多くの改善が必要な状況ではありますが、こういったAIがさらに進化することで、多様なアイデアを持つ人々が制約なく挑戦し、新しい市場を切り拓くことができる未来が想像されます。生成AIは、これまで専門的なスキルを持つ少数の人々だけに許されていた創造の場を、広く解放しています。その結果、より多くの人々がクリエイティブな世界に参入し、我々の社会に多様な価値をもたらす可能性があります。 生成AIの進化はまだ始まったばかりです。DecartやReplitといった企業が示す未来像は無限の可能性を秘めています。今後、リアルタイム生成AIが社会全体でどのように活用されていくのか、その行方に注目が集まっています。 --- ## BBC・Newsday・The Hillが、どう検索とソーシャルで成功しているか URL: https://ximera.com/posts/e3e3c985ef 公開日: 2024-11-18 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/customer/winning-on-search-and-social-as-platforms-deprioritize-news/))2024.11.18 ![](/images/posts/e3e3c985ef/GYV01QdW4AAEarj.jpg) ONA(Online News Association)の年次カンファレンスでChartbeatがBBC、Newsday、The Hillとの対談を主催しました。FacebookやGoogleなどのプラットフォームがニュースの優先度をソーシャルフィードや検索結果で下げているなか、各社がオーディエンス戦略をどのように適応させているかについて話しました。 彼らは、Google Discoverでの成功、Facebook戦略の適応、そしてあらゆる規模のパブリッシャーがソーシャルビデオに投資すべき理由について語っています。 以下は、この対談からの抜粋を長さとわかりやすさを考慮して編集したものです。 ## 検索とソーシャルのトレンドデータから得られた最大の収穫は何でしょうか ![](/images/posts/e3e3c985ef/image.png) BBC / アン・ルック・シアム氏:Google Discoverは、ニュース報道、特に速報ニュースに非常に適した場所になりつつあることがわかっています。そして、私たちはDiscover向けの計画でこれを意識しはじめています。たとえば、ピーク時にDiscoverの露出を最大限に高めるために、いつ公開するのが望ましいのか、タイミングや時間枠について考えています。 The Hill / ウィル・フェダーマン氏:Discoverは、The Hillにとって最大のトラフィックソースです。検索よりもさらに大きな存在で、成功を再現するための最善の指針として、私たちは今も取り組んでいる最中です。そして今月からは、ソーシャルトラフィックのリファラーとしてRedditが私たちのナンバーワンプラットフォームとなりました。強力なパートナーとして着実に成長を続けています。現在、パブリッシャーと誠実な対話をしている唯一のプラットフォームです。 Newsday / ギャビー・ヴケリッチ:YouTubeとTikTokの指標は、今まさに私たちのオーディエンスを直接的に示すものになっています。約1年前にYouTubeでShortsがローンチされて以来、私たちはこれらのプラットフォームで急成長しています。主に、私たちがSEOで見出し、タイトル、ディスクリプションを活用しているのと同じ戦略をTikTokでも採用しています。 ## Google Discoverに関して、成功した戦略にはどのようなものがありますか? ウィル(The Hill):いくつかやってきたなかで、ある程度は再現することができると思います。1つは、記事の内容をローカライズすることです。全国的な内容でも、その地域に関連する部分を見つけることで、Google Discoverのトラフィックにつながります。もう1つは、Discoverは扇動的または誇張的な見出しには傾倒しない傾向があるということです。より会話的な傾向があります。Discoverのレコメンドを受け取ると、それは私を興奮したり怒らせたりしようとするものではなく、むしろ「おや、これは興味をそそられる。これをクリックしてみよう」というようなものばかりです。それが成功への道筋となる傾向があります。 アン(BBC):私たちのコンテンツ、ニュース、ブランドは、信頼性と公平性を体現していると自負しています。ですから、編集SEOやコンテンツSEOに取り組む際には、編集の質と独自性を重視しています。これらは、検索でもDiscoverでも、私たちにとって本当に重要な要素です。つまり、編集品質、ニュースルームでE-E-A-Tを本当に優先すること、そして、そのことについて本当に話し合い、ジャーナリストがその観点からコンテンツを輝かせる方法を理解できるように手助けすることです。 そして、独自性も重要です。Googleは一般的に2つの要素から成り立っているということを、私たちはしばしば忘れてしまうと思います。露出を獲得したいと思う一方で、それをクリックして読みたいと思うユーザーを獲得する必要もあります。それから独自性と、非常に独創的でありながら、トレンドやタイムリーなニュース性の高いトピックにもっともユニークな価値を付け加える私たちのUSP(顧客から見た独自の強み)を活かした、明確で直接的かつ具体的な見出しが、Discoverでの成功には不可欠です。 ## Facebookがニュースの優先順位を下げたことで、ソーシャルからのリファラルトラフィックに劇的な影響がありました。それに対してどう対応していますか? ![](/images/posts/e3e3c985ef/image-1.png) 日本編集注:トラフィックに占める割合として、日本ではグローバルほどFacebookトラフィックの重要性は高く見られてはいません ギャビー(Newsday):私は、Facebookは依然として非常に重要なプラットフォームであると考えています。なぜなら、Facebookにはオーディエンスが存在し、オーディエンスのニーズに応えるコンテンツをキュレーションする必要があるからです。これはFacebookに限らず、あらゆるソーシャルメディアプラットフォームにとって非常に重要なことだと思います。 私たちが試した戦術のひとつに、Facebookグループへの参加があります。ローカルのFacebookグループは、やはり非常に重要です。なぜなら、そこでは読者から直接意見を聞くことができるからです。私たちの記者や編集者には、そこで交わされる会話に目を通す方が多くいます。それが大きな転機となることもあります。人々が自分たちの報道に関心を持っていることを知れば、それらのFacebookグループにリンクを投稿して、私たちがそのことを報道したこと、そして今、その報道をお届けしていることを示すことができます。これにより、私たちのウェブサイトへのトラフィックが徐々に増加しました。 ウィル(The Hill):Facebookは全体的にライトタッチなプラットフォームになりつつあります。ギャビーがFacebookグループについて言及したのは興味深いことです。ブランドやパブリッシャー向けのReddit Proアカウントが展開されて、私たちがRedditで採用した戦略と非常に似ています。ここでは、Hillのコンテンツについて具体的に語っている個々のコミュニティを見ることができます。そして、そこに参加して会話に加わることができます。また、これは利己的な考えではありますが、RedditはGoogleとの関係によって、検索結果が上位に表示されるようになっています。いずれにしても検索結果ページに表示される可能性がある会話にリンクを挿入することで、私たちにもメリットがあります。 チームの変更という点では、私たちは時間の使い方を再配分する必要がありました。現在は主に検索、Reddit、動画に重点を置いています。動画に関しては、トップページを含め、多くの投資を行いました。動画チームや編集チームと協力し、動画のキュレーションや調整にこれまで以上に深く関わっています。エンゲージメントを促進し、サイト内での回遊と1回の訪問あたりのページビューを増やすものがあります。 そうした直接的な関係を構築することがもっとも重要なことだと思います。 誰もが今、そこに注目していると思います。 そして、この緊張感はみなさんが感じているものであり、依然としてこれらの大規模なプラットフォームを管理する必要があることを意味しています。しかし同時に、最終的にはポジティブな結果をもたらすであろう、より強固で直接的なオーディエンスとの関係へと移り変わっています。 ## リソース配分を検討している小規模なパブリッシャーの方々に向けて、動画に投資する価値についてお話いただけますか? ギャビー(Newsday):まだ動画に投資していないのであれば、すぐにでも投資すべきです。とても重要です。フォロワーの増加にも影響します。Facebookページの成長は止まっているかもしれませんが、TikTokやYouTubeなどほかのプラットフォームでは、見出しやキャプション、ハッシュタグに設定したキーワードを通じて、人々が動画を見つけてくれます。 アン(BBC):そうですね、ソーシャル動画をより幅広い戦略の一環として活用しようとしているのであれば、将来を見据えた要素もあると思います。潜在的に、アプリやウェブサイトには訪れないかもしれない若い視聴者を惹きつけるために、KPIを設定することもできるでしょう。 それがビジネスの機会を作る方法です。 リファラーやトラフィックをすぐに増やすことはできないと理解しています。 視聴者の将来性を確保しようとしているのです。次の視聴者層について考えています。ブランドや商品、ジャーナリストを次世代のニュース消費者に示そうとしています。 ウィル(The Hill):ソーシャルビデオの制作コストは大幅に下がってています。実際、私たちがネイティブツールを使用して制作し、スマホで撮影したソーシャルビデオの多くは、やりすぎなくらい作り込まれたビデオよりも優れた結果を残しています。若い視聴者が作り込まれたビデオを好むとは思えません。 民主党全国党大会でコンテンツ制作者がこれほどまでに重視されたのには理由があります。彼らは、ハリス氏のキャンペーンでアウトリーチ計画を構築しています。なぜなら、それで簡単にオーディエンスを増やせるからです。彼らはこれまでの高齢のオーディエンスに対してとっていた方法ではサイトに訪れてくれない若いオーディエンスを惹きつけています。 ## この1年で検索とソーシャルにいくつかの変化が見られましたが、みなさんのチームのKPIは特定のプラットフォームを中心に変化しましたか? ギャビー(Newsday):私の場合、KPIはTikTok、YouTube、Instagramに大きく影響され、XやFacebookなどのプラットフォームにはあまり影響されませんでした。私が考えるに、ソーシャルメディアで重視すべきことはフォロワーの増加、エンゲージメント、動画の再生回数です。この3つの要素にはそれぞれ独自のKPIを設定すべきでしょう。今年末までに動画再生回数をどの程度にしたいのか。また、今後数か月のフォロワー数の増加にどう影響するのか。 アン(BBC):ユニークユーザー数は依然として重要です。トラフィックも依然として重要です。おそらく私たちにとって進化したのは、それについてどう語るか、それにどんな文脈を与えるかということだけだと思います。たとえば、1か月間のユニークユーザー数を分析し、大きな急増があったかどうかを確認し、大きな出来事やニュースイベントの直後にアクセスした訪問者のうち、何パーセントが翌週も訪問したのか。そのうち何パーセントが2記事目を読んだのかを確認します。 KPIは変わっていませんが、それについて話し合う方法や、それをほかのKPIに活用しようとする方法は進化または強化されています。 ウィル(The Hill):私たちも同じような話をしていると思います。 それらのプラットフォームから来た人々を、別のコンテンツに誘導するにはどうすればいいのか。とくに検索に重点を置くようになったと思います。 また、毎週トップ10の記事を取り上げて、そのなかでやったことを個別にチェックするマトリクス検査も行っています。基本的には必要なことをやったかどうかを素早く確認するためのものです。オーディエンスの関心を逃していないか。ベストプラクティスを実行し、必要なことを優先しているかどうかを確認する上で、これは非常に良い指標となります。 ## これらのプラットフォームの優先順位が変化するなかで、あなたが学んだ最大の教訓は何ですか? ギャビー(Newsday):一貫性が重要です。毎日投稿する記事の数や、どのプラットフォームで活動するのか。また、すべてのプラットフォームで活動することは不可能なので、どのプラットフォームで活動するのかを選ぶこと。そして、オーディエンスがすでに存在している場所で彼らに会うことが依然として重要です。 とくに昨年はShortsによってYouTubeが大きく成長したので、その点には注目しています。 縦型動画が重要で、TikTok専用やYouTube専用の動画の制作もはじめました。 そうした動画の一部は、Instagramや Facebookなどのほかのプラットフォームでも再利用できます。 時には、Xでも縦型動画を試してみることもあります。私たちは人々はフルスクリーンでの体験を求めていることに気づいています。 アン(BBC):私たちにとって画期的なのは、現在、編集SEO戦略を意図に基づいて展開していることです。SEOに携わっている方なら、全体的な意図があることはご存知でしょう。トランザクションなのか、誘導なのか、情報収集なのか。 私たちは、誰かが、なぜ今、何かを検索しているのかを知りたいのです。これはニュース速報の現場の私たちにとって非常に役立ちます。私たちのSEO対策の指針はユーザー第一の考え方へと変わりました。 Googleトレンドでは、とてもローテクな方法でそれを実践できます。また、Googleがクリック率やアルゴリズムから、その時の(検索ユーザーの)意図を理解して何をフィーチャーすべきか決めていることを知っているので、私たちはトップ記事ボックスを非常に注意深く見ています。 これでニュースルームとの話し方が大きく変わりました。私たちは意図を明確に伝え、人々が何をグーグル検索しているのか、あるいは「これを人々が検索している」と私たちが考える理由を説明しています。これはジャーナリストの意識を大きく変えました。彼らの本能や好奇心を刺激したのです。また、「検索をハックできる」とか、「キーワードを教えてくれれば、記事の冒頭に挿入するよ、それで解決だろう」といった考え方も少しは減りました。 ウィル(The Hill):優先すべきプラットフォームは、ニュースルームやオーディエンスによって大きく異なります。すべてに共通する答えはありません。ですから、「オーディエンスについて知っていることやこれまでの実績に基づいて、成長の機会はどこにあるのか」を考えることが非常に重要だと思います。私はこれまで、検索が中心のニュースルームや、 Facebookグループが中心のニュースルームもいくつか見てきました。様々です。成功を測定する方法を設定し、それを試し、うまくいくかどうかを確認し、うまくいかなければすぐに次のステップに進むことが重要です。そうすれば、望む結果が得られないプラットフォームに膨大な時間を費やすことがなくなります。 --- ## Chartbeat新機能のお知らせ : Google Search Console のデータを Chartbeat に統合 URL: https://ximera.com/posts/af16f83988 公開日: 2024-11-15 著者: Chartbeat Chartbeatの画面から離れることなく、コンテンツの検索パフォーマンスをトラッキングできるようになります 2024年11月15日 ![](/images/posts/af16f83988/Google-Search-Console-integration.jpg) Chartbeatより新しい機能に関するお知らせです。 新たにGoogle Search Consoleとの統合が可能となりました。これにより、Chartbeatの画面から離れることなく、コンテンツの検索パフォーマンスをトラッキングできるようになります。 OAuth認証フローを使用して Google Search Consoleアカウントを簡単にリンクし、クリック数、表示回数、CTR、検索結果ページランキング、上位のキーワードをChartbeatのヒストリカルダッシュボードで直接表示できます。 複数のツールを切り替えることなく、Google 検索、Google Discover、ニュース全体でもっとも良いパフォーマンスをしたコンテンツをすばやく特定して、検索戦略を強化できます。 この機能のご利用をご希望される場合、追加の費用はありませんが、設定はAdmin権限のユーザーに限られます。 具体的な設定方法を含む、この機能に関する詳細は[Chartbeatヘルプページ(英文)](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/30838479607707-Guide-to-Google-Search-Console)をご確認ください。 --- ## ネットゼロ・カーボンニュートラルとグリーンテックの未来 URL: https://ximera.com/posts/bdabbcd4fc 公開日: 2024-11-06 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #66|Ikuo Morisugi| 2024.11.06 ![](/images/posts/bdabbcd4fc/eb5f2eb2-2534-4ea0-90f0-9dcf23dc7b84.png) Photo by [Muhammad Habib Izzulhaq](https://unsplash.com/ja/@lightenshot?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%B7%91%E3%81%AE%E8%91%89%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AD%E6%92%AE%E5%BD%B1-3PBhswe6b38?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに 近年、ESGの推進を背景に、気候変動対策として、[カーボンニュートラルやネットゼロの取り組み](https://www.persefoni.com/ja/blog/carbon-neutral-vs-net-zero)が進んでいます。 「カーボンニュートラル」とは、企業や国家が排出する温室効果ガス(GHG, Greenhouse Gas)を、削減および吸収・除去によって相殺し、実質的にゼロの状態を目指す取り組みです。「ネットゼロ」はカーボンニュートラルの概念を拡張し、排出されるGHGを全て正味ゼロにすることを指し、国際的な基準として広がりを見せています。 気候変動の影響が深刻化する中で、各国政府や企業は気温上昇を1.5度未満に抑えるため、2050年までにネットゼロを目指す目標を掲げています。企業はESGに配慮したビジネス運営を行うことで、ブランドイメージの向上や投資家・消費者からの信頼を強める必要があります。また世界的にも日本でも、上場企業に対しては[GHG排出量の開示義務化](https://rm-navi.com/search/item/1723)の流れが加速しており、企業にとってGHGを減らすための各種活動とレポートは必須となりつつあります。 とはいえ、GHGの削減はそう簡単なことではありません。1. 現状どれだけ排出しているのか測定し、2. 削減目標設定と実行プランを策定し、3. 実際に削減を実施し、4. 継続的にPDCAと対外発信をやり続ける、といったアクションが求められ、まず1.の測定の段階からスタートする必要があります。 企業は、直接排出(Scope 1)、購入エネルギーによる間接排出(Scope 2)、そしてサプライチェーン全体の排出(Scope 3)を把握する必要があります。特にScope 3の測定はかなり難易度が高いです。例えばメーカーであれば、自社だけではなく、サプライヤーやその先にいる原材料供給者、あるいは卸売業者や小売店、そして最終消費者までサプライチェーンのあらゆる活動が測定の対象になります。 このようにステークホルダーも品目も多岐にわたり複雑なため、いかに正確なデータの収集ができるかが課題になります。またGHG削減に対し再生可能エネルギーの利用や省エネ技術の導入を行おうとすると、多額の初期投資や運用コストが必要となることも珍しくありません。また、ある団体が実施したGHG排出削減量を、他の団体が買い取る「カーボンオフセット」は、大規模な投資を避けて削減量を稼ぐ有効な手法ですが、その信頼性や透明性が問題になることがあります。 本稿では、こうした問題に対し、近年グリーンテック分野においてGHG削減を支援する様々なソリューションを提供するスタートアップ事例を取り上げ、どのような価値提供が行われているか見ていきます。 # 排出量見積もり〜オフセットのプログラム化:Patch.io [Patch.io](http://patch.io/)は、カーボンクレジットの売買によるカーボンオフセットを行えるプラットフォームを提供しており、GHG削減のための技術やリソースが限られている企業が、信頼性の高いオフセットを利用しやすくなるよう支援しています。 Patch.ioは[API](https://docs.patch.io/#/)を通じて、リアルタイムで排出量を計測し、さらにオフセットが必要とされる際には、カーボンクレジットの購入を自動化することが可能です。森林再生や炭素吸収技術など、厳格な基準で選定されたオフセットプロジェクトを幅広くサプライヤーから集めて顧客へ提供しており、企業のシステムとシームレスに統合可能です。 APIやサービス画面から自社のオフセット戦略に合致するプロジェクトを選択してオフセット分を購入する / [patch.io](http://patch.io/) APIやサービス画面から自社のオフセット戦略に合致するプロジェクトを選択してオフセット分を購入する / [patch.io](http://patch.io/) [patch.io](http://patch.io/) [patch.io](http://patch.io/) Patch.ioは上記のプロジェクトから提供されるカーボンクレジットの購入ごとに手数料を設定しています。自社の排出量に応じたオフセット費用を支払うことで、企業は柔軟にコストを管理できます。またカーボンクレジットを購入するだけではなく、オフセットを全体として適切に行うために、オフセットの戦略策定や、年々増減するカーボンクレジットのサプライヤーのソーシングや管理、現状ポートフォリオ管理/分析、契約の1本化などをPatchに任せられる[Offtake](https://www.patch.io/offtake)というプログラムも顧客に提供をしています。このプログラムを利用すると、調達価格を安定させつつ、かつ管理の手間も少なく、常にポートフォリオを最適化することができます。Bain&CompanyやIFSなどがPatch.ioの顧客として利用しており、クラウドベースのエンタープライズソフトウェアを提供するIFSの事例では、変動しやすい[カーボンクレジットを5年間の固定価格で購入する契約を結ぶことで、安定的なカーボンクレジット取得を可能](https://www.patch.io/case-studies/ifs)にしました。 2022年にPatch.ioはEnergize Venturesがリードする[シリーズBで5500万ドルの資金を調達](https://www.patch.io/blog/patch-series-b-funding-scales-unified-climate-action)し、プラットフォームの機能拡充やAPI連携強化、国際市場での展開に資金を充てています。 # GHG排出量削減トラッキング/プランニング支援:Watershed [Watershed](https://watershed.com/)は、企業がGHG排出量を正確に把握し、効果的な削減計画を立てる支援を行っています。Scope 1(直接排出)からScope 3(サプライチェーン全体の排出)までの排出を包括的に管理できる点で、複雑なサプライチェーンを持つ企業にとって有用です。トラッキングとプランニング機能が一体化され、包括的なGHG削減戦略をワンストップで管理できることを強みにしています。 EUなどの持続可能性の報告義務にあわせたレポーティングが可能 / [Watershed](https://watershed.com/platform/disclosures/csrd) EUなどの持続可能性の報告義務にあわせたレポーティングが可能 / [Watershed](https://watershed.com/platform/disclosures/csrd) Watershedは、リアルタイムでの排出量トラッキングと、削減目標に向けたアクション提案を提供します。EUの[CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive: EU域内企業に課されるサステナビリティに関連する情報開示義務)対応のレポート支援ツール](https://watershed.com/solutions/csrd)も備えており、国際基準に準拠した報告書を作成することが可能です。 Watershedは年間契約のサブスクリプション型のサービスで、企業の規模や排出削減目標に応じたプランを提供しています。公式サイトでは見積額は公表されていませんが、[年間費用は平均で7万9000ドル(約1200万円)、最高額で15万ドル(約2225万円)](https://www.vendr.com/buyer-guides/watershed#:~:text=How%20much%20does%20Watershed%20software,for%20Watershed%20is%20around%20$79%2C000.)と言われており、上場している大手企業がメインのユーザとして利用していることが想定されます。 Airbnb、Stripe、Walmart、SweetGreenなど、IT・小売・飲食など幅広い業種の企業がWatershedを利用しています。[健康志向なオーガニックレストランを提供するSweetGreenの例](https://www.sweetgreen.com/carbon-menu-labeling-methodology)では、提供メニューのそれぞれの原材料のサプライヤー(Scope3)まで含めて、Watershedを使ってGHG排出量を明確化し、メニュー表に掲載をする徹底っぷりです。 Watershedは2024年2月にKleiner PerkinsやSeqouiaなどトップTierのVCが参加する[シリーズCラウンドを実施し、1億ドル(約150億円)を調達、時価総額は18億ドル(約2700億円)](https://watershed.com/blog/series-c)となり、その成長性が評価されています。CSRD対応ツールの開発やヨーロッパ市場でのさらなる競争力向上に資金を投入して対応している他、トラッキングとプランニング機能の高度化なども進められています。 # メディア/広告業界特化型GHG削減ソリューション:Scope 3 [Scope 3](https://scope3.com/)は、広告配信とデータ処理に伴うエネルギー消費とGHG排出量を削減するため、メディア・広告業界向けの特化型ソリューションを提供しています。近年、デジタル広告の配信はAI活用が増え、AI処理によるエネルギー消費が急増中です。Scope 3は、広告配信の各段階で発生する炭素フットプリントを詳細にトラッキングし、より低排出の選択肢を提示することで、広告業界が環境負荷を軽減できるよう支援しています。 Scope 3のプラットフォームは、広告キャンペーンにおける各工程での排出量を可視化し、広告主に対して持続可能な広告戦略を提案します。メディア/広告業界では、2024年6月に[GMSF(Global Media Sustainability Framework](https://adnetzero.com/wp-content/uploads/2024/09/The-Ad-Net-Zero-Global-Media-Sustainability-Framework-2024-1.pdf))が業界特化のGHG排出量測定のフレームワークとして発出されており、[Scope 3は一定程度整合するもの](https://support.scope3.com/support/solutions/articles/150000190335-global-media-sustainability-framework-gmsf-in-scope3-s-csp-ui)として提供されています。 Scope 3がカバーするメディア/広告業界のサステナビリティフレームワークGMSFへの適用状況 / [Scope3](https://support.scope3.com/support/solutions/articles/150000190335-global-media-sustainability-framework-gmsf-in-scope3-s-csp-ui) Scope 3がカバーするメディア/広告業界のサステナビリティフレームワークGMSFへの適用状況 / [Scope3](https://support.scope3.com/support/solutions/articles/150000190335-global-media-sustainability-framework-gmsf-in-scope3-s-csp-ui) またAIによる広告配信におけるエネルギー消費を追跡する機能も提供しており、企業がAI処理の影響を管理しながらカーボンフットプリントを抑えるためのサポートを行っています。 Scope 3はジャーナリスト、研究者などへ向けて無料版を提供している他、[パブリッシャー向け](https://scope3.com/packages/pub)および[アドテク業界向け](https://scope3.com/packages/atp)にパッケージプランをそれぞれ分けて提供しています。広告キャンペーンにおける排出量削減を目指すメディアやアドテク企業が、柔軟に環境対策を取り入れられるようになっています。顧客はScope 3のトラッキング・レポート機能を利用し、広告キャンペーンごとに環境負荷削減を実現することが可能です。 Scope 3は[Yahoo!](https://www.adweek.com/programmatic/yahoo-partners-with-scope3-to-offset-carbon-emissions-in-media-buying/)のようなメディアプラットフォームや[GumGum](https://scope3.com/news/decarbonizing-media-and-advertising-gumgums-story)のようなアドテク企業などとパートナーシップを結んでそのクライアント企業へScope3のソリューションを提供しています。これらの企業は、Scope 3のソリューションを活用して広告キャンペーンの炭素排出量を測定し、サステナブルな配信方法を選定しています。Scope 3のデータは広告戦略に反映され、持続可能なマーケティング活動を支援しています。 Scope 3は2024年10月に[GV(Google Ventures)がリードするラウンドで2500万ドル(約37.5億円)の資金調達](https://scope3.com/news/scope3-expands-to-sustainable-ai-releases-ai-methodology-and-lands-dollar25m-in-new-funding)を行い、AI関連のカーボンフットプリントトラッキング機能の開発に資金を投じています。この新機能は、広告業界におけるAI使用のエネルギー負荷をより正確に測定し、排出削減の最適化に役立つことが期待されています。 # おわりに Patch.io、Watershed、Scope 3の3社は、それぞれ企業が排出量を測定・削減し、効率的にカーボンニュートラルやネットゼロ目標を達成できるよう強力なサポートを提供しています。これらのスタートアップには共通して、「トラッキング」「計画」「オフセット」といった多面的なアプローチが採用され、Scope 1からScope 3に至るまで包括的な対応が可能です。一方で、それぞれの業界で取得/測定できるデータはかなりバラエティに富んでおり、一社だけで全てを賄うことは難しく、ある程度業界に特化した上で、専門性をもって顧客開拓やソリューション提供をしていることが見てとれます。 冒頭で紹介したように、日本でもGHG排出量の開示が義務化する可能性が高いため、我々日本のメディア業界においてもサステナビリティのトラッキングとレポーティングに向けた動きは重要になってきます。欧米ではすでにScope 3のような企業を利用して、パブリッシャーやアドテク企業がその動きを強めています。広告キャンペーンやオンラインプラットフォームの運営に伴うカーボンフットプリントを管理することで、企業は環境負荷を削減しつつ、消費者や投資家からの信頼も強化できます。ただ規制に対応するだけでなく、先行して積極的にこうした分野へ取り組むことで、ブランドイメージでの差別化をもたらすポジティブな側面も出てきています。このように「トレンドや規制をうまく利用して株主・顧客への訴えかけを強化するアプローチ」については、あらゆる分野で重要であり、本連載でも引き続き取り扱っていきたいと思います。 --- ## 読者エンゲージ改善のために:今日からできる8つのテクニック URL: https://ximera.com/posts/562805d436 公開日: 2024-11-01 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://chartbeat.com/resources/articles/8-ways-to-keep-readers-engaged/))2024.11.01 読者エンゲージメントの改善に終わりはありません。常に改善の余地があります。 記事を開いた読者の45%が15秒以内にそのページを離れ、離れた読者の60%以上は戻ってこないのです。このような状況では、エンゲージメントの改善が強く求められます。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_AUG24_Chartbeat_Improve_Reader_Engagement-1.jpg) では、どうすれば読者を惹きつけることができるのでしょうか。 ここではそのために今日からできる8つのテクニックをご紹介します。 ## 1. モバイル向けにデザインする Chartbeatの最新の[グローバルオーディエンスインサイト](/posts/8da672ccfe)によると、世界中のページビューの4回に3回はモバイルデバイスによるものです。中央アジアではさらに高く、87%に至ります。これを考慮すると、モバイル読者の体験設計を第一優先にするタイミングであると言えます。 ## 2. リンクを戦略的に配置する コンテンツの奥深さと質の高さをアピールし、読者の関心を長く引きつけるには、関連リンクをコンテンツ内の戦略的なポイントに配置し、より深いメディア体験を促しましょう。おすすめリンクをどこに配置すべきか判断するいいの方法の1つは[スクロールの深さ](https://chartbeat.com/resources/research/scroll-behavior-across-the-web/)を測定し、読者がページのどの部分で離脱しているか確認することです。 ## 3. 「80/20ルール」を意識する 平均的なウェブサイトは、[わずか20%の記事から80%以上のエンゲージメントを得ています](/posts/d1a20a2ebc)。これは、残りの80%のニュースをカバーしてはいけないということではありませんが、より少ない数のインパクトのある記事に多くの時間とリソースを費やすために、人気のないトピックの優先順位を下げるというケースは考えられます。 ここでのもう一つのチャンスは、エンゲージメントが低い記事を診断し、読者のエンゲージを増やすためにそのページを最適化することです。 ## 4. ページに動画を追加する Chartbeatの調査によると、動画はテキストから注目を奪うのではなく、ページ全体への[エンゲージメントを高める](/posts/a695400f8b)ことがわかっています。 動画のエンゲージメントが読者とページの残りの部分とのインタラクションにどのような影響を与えるかを理解するため、スクロールの深さを調べました。すると、動画コンテンツが表示されているページで、読者は平均してページの33%以上はスクロールしており、これは動画視聴がテキストへのエンゲージメントも高めることを示しています。 ## 5. ある程度までは文字数に注意する(英語の場合) 単語数が0~2000語の間は、単語数が増えるにつれて平均エンゲージメント時間が長くなることがわかっています。しかし、ワード数が4000を超えると、エンゲージメント時間のばらつきも大きくなり、長さの増加に対するリターンは確実ではなくなります。 ## 6. カテゴリーに気をつかう Chartbeatネットワークのニュース・メディアサイトの読者を分析したところ、読者の70%以上が1ヶ月に2つ以下のカテゴリのニュースしか読んでおらず、40%は1つのカテゴリしか読んでいないことがわかりました。つまり、平均的な読者は、無関係なトピックの人気記事よりも、同じカテゴリ内の記事に回遊する可能性が高いということです。 ![](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/assets/content/Digital_Strategies_AUG24_Chartbeat_Improve_Reader_Engagement-2.jpg) ## 7. Google Discoverから学ぶ 昨年、Google Discoverからの流入計測をChartbeatのリアルタイムダッシュボードとヒストリカルダッシュボードに追加しました。その実測データを見てみると、全体の平均エンゲージ時間が29秒だったのに対し、Google Discoverに配信されたコンテンツの平均は37秒でした。 Discoverが提供する個別のユーザーに対するレコメンデーションは、読者のページ滞在時間を長くすることが証明されています。これは、読者エンゲージメント戦略において、ほかの場所でも活用できる戦術です。 ## 8. サイト外の記事の寿命を延ばす Chartbeatのネットワークにおける記事の寿命を見ると、2つの明確なパターンが浮かび上がってきます: 1. [ほとんどの記事は、24時間以内にページビューの80%に達する](/posts/ef450e9890) 2. ほぼすべての記事が、公開から48時間以内にページビューの80%に達する これが当てはまらないケースもあります。メディアドメインの外で起きるエンゲージの場合です。ニュース速報やトレンドに関する多くの会話は、ニュースパブリッシャーがコミュニティを育み、より多くのニュース消費者にリーチし、ブランドを成長させることができるソーシャルメディア上で起こります。ここで記事の寿命を伸ばしましょう。ソーシャルメディアでは、公開から48時間を過ぎた記事にもチャンスがあります。 ## 試して、測って、繰りかえす 1つの戦略がすべての読者に有効なわけではありません。しかし、読者体験を向上させる努力をすればするほど、自分のメディアと読者にとって何がよいことなのかを見つけることに近づくでしょう。試して、測って、それを繰り返しましょう。 *この記事は[INMA.org](https://www.inma.org/blogs/digital-strategies/post.cfm/video-strategically-placed-links-are-among-8-ways-to-keep-readers-engaged)に掲載されたものです。* --- ## Q3 2024:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/8da672ccfe 公開日: 2024-10-15 著者: Chartbeat by Chartbeat Staff([原文](https://chartbeat.com/resources/research/global-audience-insights-q3-2024/))2024.10.15 Chartbeatは四半期ごとにグローバルのトラフィックから得られたインサイト(気づき)を共有しています。2024年第3四半期(7〜9月)、平均エンゲージ時間は中東でもっとも長く、検索トラフィックは世界中で増加、東南アジアではロイヤルティの高い訪問者からのページビューが減少しました。 *これまでのインサイト: [Q2 2024](/posts/c6f6766689) / [Q1 2024](/posts/7117cbbab1) / [Q4 2023](/posts/b75e41d1fd)* [*日本のChartbeatトラフィック動向レポート2023 →*](/posts/4e215999ae) ## 引きつづき中東のパブリッシャーはエンゲージ時間がもっとも長い 中東の読者はもっとも熱心なオーディエンスです。平均エンゲージ時間は38.7秒でした。これは前期の38秒からわずかに増加しています。中央ヨーロッパ/東ヨーロッパは平均エンゲージ時間36.9秒でそれに続いています。 ![](/images/posts/8da672ccfe/image.png) 東南アジアはこの四半期にもっとも大きな増加を見せ、26.8秒から29秒に増加しています。 ## 南ヨーロッパではモバイルトラフィックが増加 南ヨーロッパにおけるモバイルデバイスからのページビューの割合は、Q2の72%からQ3は74%に増加しました。東南アジアでは87%から82%へともっとも大きな減少が見られ、中央アジアは87%ともっとも高い割合を示しました。 ![](/images/posts/8da672ccfe/image-1.png) モバイルの訪問者によるページビューが69%未満の地域はありませんでした。 ## 世界中で検索トラフィックが増加 Q3の東南アジアにおけるページビューの54%が検索エンジンからのもので、Q2の41%から大幅に増加しました。中央アジアでも成長が見られ、47%から50%に増加しました。 ![](/images/posts/8da672ccfe/image-2.png) Q3に検索からのページビューが減少した地域はありませんでした。 ## 東南アジアでソーシャルからのページビューが増加 Q3にアフリカのパブリッシャーはソーシャルネットワークからのページビューが減少したものの、世界中でもっとも高い割合であることは変わっていません。東南アジアでは、Q2の15%からQ3には18%に増加しました。 ![](/images/posts/8da672ccfe/image-3.png) ## 北欧では読者のロイヤリティが依然として高い 北欧では、ロイヤルティの高い読者からのページビューが50%を占め、もっとも高い割合となりました。中央ヨーロッパと東ヨーロッパでは44%でした。 ![](/images/posts/8da672ccfe/image-4.png) 東南アジアはQ2と比較してもっとも大きな減少を記録し、33%から13%に減少しました。 ## 2024年Q3のポイント 1. 世界全体の平均エンゲージ時間は30秒 平均エンゲージ時間は、中央アジアでは22.9秒、中東では38.7秒でした。 1. 検索によるページビューが増加している 東南アジアでは検索からのページビューがもっとも増加しており、Q2からQ3にかけて減少した地域はありませんでした。 1. 少なくとも69%はモバイルデバイスからの訪問 どの地域でも、サイト訪問の約4分の3はモバイルデバイスから発生しています。そのうち3つの地域では、80%を超えています。 --- ## 生成AIによって進化する動画制作プロセス URL: https://ximera.com/posts/ee7c4bdc8f 公開日: 2024-10-09 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #65|Ikuo Morisugi| 2024.10.09 ![](/images/posts/ee7c4bdc8f/jakob-owens-DHGKj1eHz9g-unsplash.jpg) Photo by [Jakob Owens](https://unsplash.com/ja/@jakobowens1?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%91%E3%82%BD%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%89%8D%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A4%E7%94%B7-DHGKj1eHz9g?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームの普及により、誰でも気軽に動画を発信できる時代が到来し、ますます動画クリエイターの増加に拍車がかかっています。 誰でもアップロードができるようになった上、人気企画はすぐにコピーできるものも多く、各動画クリエイターはよりアテンションを獲得するために動画の品質での差別化が求められます。動画の品質をより高めるためには、キャッチーでわかりやすいストーリーテリング、感情やユーモアの挿入、視聴者がインタラクションしやすいひっかかりなど、様々な観点で動画を構成していく必要があります。 実際に上記の観点を満たすプロクオリティの動画を制作するには、大量の素材を集めて、コンマ単位の編集にこだわるクリエイターも少なくありません。この作業には膨大な時間と労力が必要となります。従来の動画編集ソフトウェアでは、高度な編集スキルを持たないユーザーにとって、映像のカット、テキストの挿入、音楽の追加といった作業が大きな壁となっていました。 さらには、ショート動画からユーザを獲得し、ロングフォーム動画で定着させるという近年のユーザフローが主流になったことで、長時間の映像素材から最適なクリップを選ぶ作業や、手動での字幕追加、複数のプラットフォーム用に動画をリサイズする作業もあり、いずれも大きく時間を要します。 これに対して、生成AIの登場が大きな変革をもたらしています。生成AIを活用することで、動画制作プロセスが劇的に効率化され、動画クリエイターはよりクリエイティブな作業に集中できるようになってきました。 本稿では、生成AIを用いて動画制作プロセスを半自動化し、業務効率を大幅に向上させることに成功しているスタートアップの事例を紹介します。これにより、動画制作の未来像がどのように変わりつつあるかを示し、新たなサービスや事業を考える際の参考になれば幸いです。 # 動画制作の半自動化: Pictory [Pictory](https://pictory.ai/)は、生成AIを活用して動画制作プロセスを半自動化するサービスを提供するワシントン発のスタートアップです。Pictoryのビジョンは、動画制作の民主化。技術的なスキルがなくても、誰でも簡単に高品質な動画を作成できる環境を提供することで、個人や企業が持つクリエイティビティを最大限に引き出すことを目指しています。 従来の動画編集では、映像のカットや字幕の追加といった作業が手動で行われていました。これにより、特に大量のコンテンツを扱うマーケティング担当者やエージェンシー、ソーシャルメディア運営者や動画クリエイターまで、動画制作は大きな時間的な負担となっています。Pictoryは、これらのプロセスをAIが自動で処理することで、編集作業を大幅に効率化します。
Pictoryを使うことで、テキストから動画生成(Text to Video)、スクリプトから動画生成(Script to Video)、画像から動画生成(Image to Video)、テキスト記事から動画生成(Blog to Video)などが可能になります。 例えばScript to Videoでは、シーン毎に伝えたいメッセージをテキストの脚本として作成し、それをPictoryにわたすだけで、シーン毎に必要な画像、キャプション、BGMを生成することができます。Blog to Videoはそれを更に進化させ、ブログ記事があればURLを貼り付けるだけで、自動でシーン毎に分かれたScriptを作成し、それを元に動画生成がされます。ブログ記事に使える画像が入っていれば、それも動画の素材として利用してくれます。さらに、動画編集工程では、アスペクト比の調整、自動字幕生成、生成音声AIでカスタマイズした音声キャプションの挿入なども可能になっています。 ユーザーは、一定のフォーマットに沿ったものであれば、ある程度の品質を保った動画を数クリックで作成できるため、従来の複雑な制作プロセスを簡素化できるメリットがあります。静的画像の遷移、キャプション、BGM、音声だけで構成される動画の場合、PIctoryだけで作れてしまうケースも生まれています。 動画制作では、初期のプロット段階で、次いで簡易デモの段階で、といった具合に制作プロセスの間でたびたびに関係者間での作品の方向性のイメージ合わせをすることがよく行われます。Pictoryのようなツールは、こういった初期プロット版や簡易デモ版を作るのにも適しています。「とりあえずシナリオスクリプトを入れてみて、AIに生成させ、どのようなドラフトとなるかを動画で確認しながら、完成イメージを膨らませながら修正していく」といった、従来時間のかかっていたプロセスが何度も短時間で繰り返し/やり直しが可能になり、より高品質で凝った動画を制作するプロユースでも利用価値をもたらす可能性があります。 現在のPictoryは主にデジタルマーケティングの分野で成功を収めています。企業がトレーニング・eコマース等の宣伝や啓蒙用途で動画を作成する際、Pictoryを使用することで作業時間を大幅に削減し、短期間で多くのコンテンツを制作した[事例](https://pictory.ai/pictory-case-studies)が多数出てきています。 Pictoryの[料金プラン](https://pictory.ai/pricing?el=5000&htrafficsource=pictoryblog)は、月額制で提供されており、ユーザーのニーズに応じた複数のプランが用意されています。基本的な機能を備えた個人向け/プロ向けプランから、よりチームで高度な編集機能を利用できるチームプランまで、幅広い選択肢があります。また、企業向けにはカスタマイズされたプランも提供されており、規模に応じた柔軟な料金設定がされています。 Pictoryは、戦略的パートナーシップの面でも注目されています。[Getty Imagesとの提携](https://pictory.ai/blog/september-product-update-getty)の他に、AIを活用した音声合成ソフトウェアを手がける[ElevenLabsとの提携](https://pictory.ai/blog/eleven-labs)により、AI音声技術を強化し、動画内の音声生成や字幕の自動生成をさらに進化させることに成功しています。このパートナーシップにより、動画制作のさらなる自動化や高度化が進むことが期待されています。 # ロングフォームをショートフォームへ: Opus Clip [Opus Clip](https://www.opus.pro/)は、長尺の動画から短尺のクリップを自動生成することに特化したAIツールです。特に、YouTubeのような長尺コンテンツからTikTokやInstagramやYoutube Short用の短尺クリップを生成するニーズに応えています。 ショート動画で新規ユーザを獲得し、自身のロング動画へ誘導し、よりエンゲージメントの高いチャンネル登録ユーザへ転換していく。これが現在のYoutuberにおける獲得戦略の主流となっています。そのため長尺コンテンツのキーパートを抽出しショートフォームの動画に変換することが、動画マーケティングやSNSでのプロモーションにおいて重要なプロセスとなっています。この作業は時間がかかり、しかもどの部分を切り取るべきかという判断も難しいものでした。 Opus ClipはAIを活用し、動画内の視聴者にとって価値の高い部分を自動で見つけ出し、最適なクリップを作成することで、この課題を解消しようとしています。
Opus Clipは、「1つのロングフォーム動画から10のバイラル(ショート)クリップを、10倍の速さで」と謳っているように、長尺動画コンテンツのURLを入力するか、動画をアップロードし5分程度待つだけで、見どころを数秒から数分のショートフォームの動画クリップとして分割することができます(実際に30分ほどのロングフォーム動画から10-20個、各30秒-1分程度のショートフォーム動画を作り出すことが可能)。ただ抽出するだけではなく、ショートクリップ毎の訴求力のスコア付け、字幕をショートフォームの縦横比用に再構築、画面フレームの再構成(例: 話者2人を縦型に並べる)まで自動で実施してくれます。 これにより、クリエイターはこれまで以上に短尺動画の効率的な編集とアップロードが可能になり、より多くのオーディエンスにリーチする機会を拡大することができます。 ビジネスモデルとしては、Opus Clipも[月額制の料金プラン](https://www.opus.pro/pricing)を採用しており、個人クリエイターから企業まで、さまざまなニーズに応じたプランが提供されています。無料のトライアルプランもあり、利用者は試しに使ってみることができます。 Opus Clipは2024年8月に、[シリーズAで3,000万ドル(約45億円)の資金調達](https://www.opus.pro/blog/opusclip-celebrates-30m-in-funding-and-the-launch-of-clipanything)に成功し、ClipAnythingと呼ばれる新機能を発表しました。自然言語によるプロンプトで動画の任意の場所を切り取ることができるこの新機能により、より正確で効果的なクリップ生成が可能となり、コンテンツのリサイクルや他のプラットフォーム展開がさらに簡単になります。リード投資家はMillennium New Horizonsの他、AI Grant、Samsung Next、DCM Ventures、Alumni Ventures、Alpine VCなどトップティアのベンチャーキャピタルが参加しており、今後の成長が期待されています。 # おわりに 本稿では、「生成AIによって進化する動画制作プロセス」というテーマのもと、動画制作プロセスの容易化とそれによってさらに拡大する動画クリエイターのマーケットが作り出される事例を取り上げました。 PictoryとOpus Clipに共通するのは、生成AIを活用して動画制作プロセスを効率化し、ユーザーが抱える時間的な課題を解消している点です。これにより、動画制作のハードルが下がり、技術的スキルを持たない人でも自身の発想を活かした品質向上に取り組む時間を確保できたり、制作する本数を増やせたりするようになっています。特に、1st/3rd Party Cookieの規制/廃止を背景に、オーガニックにユーザ獲得をする上で、動画コンテンツは重要性が増しています。たとえ、荒削りでも本稿で取り上げたようなツールを使いこなし、バズるまで企画を高速にアウトプットし続けるクリエイターがよりアテンションを獲得しやすくなることを考えると、こうしたツールは今後ますます活用されていくと考えられます。現状ではまだトップレベルの動画クリエイターと同レベルにするには手作業での編集なしには実現できていませんが、日進月歩で進化するAI技術を見ていると、さらにクオリティが高いものが早く安く作れるようになる未来が容易に想像できます。 PictoryやOpus Clipが提供する自動化機能は、新たなサービスやプロダクトを企画する上で、多くの示唆を与えてくれます。今後、生成AIを活用したさらなる効率化や、クリエイティビティを高めるための新しいツールやサービスが登場することが期待されます。 --- ## Z世代ネイティブなニューメディア URL: https://ximera.com/posts/8756166abd 公開日: 2024-09-03 著者: Ikuo Morisugi / オンライン上で築くソーシャルな関係が 彼らの情報取得の大きな役割を果たしている Ximera Media Next Trends #64|Ikuo Morisugi| 2024.09.03 ![](/images/posts/8756166abd/zachary-staines-dCVyYcCZ6A4-unsplash.jpg) Photo by [ZACHARY STAINES](https://unsplash.com/ja/@zaccastravels) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E6%AD%A9%E9%81%93%E3%82%92%E6%AD%A9%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B5%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F-dCVyYcCZ6A4) # はじめに Z世代(1997年から2012年頃に生まれた世代)は、インターネットとソーシャルメディアの中で成長した初の「デジタルネイティブ」世代です。既にその世代特有の特徴は広く認知されていますが、彼らはデジタル環境において日常的に膨大な情報に触れ、リアルタイムでのコミュニケーションに慣れ親しんでいます。そのため、情報の信頼性や重要性をどのように評価し、受け取るかが、従来の世代とは大きく異なる傾向にあります。Z世代は、[従来の一方通行的なメディアからの情報発信に依存せず、自らが信頼を置くインフルエンサーやソーシャルメディアのレコメンドを通じて、情報の取捨選択を行う傾向](https://arxiv.org/pdf/2405.02522)があります。加えて彼らは自らの体験やソーシャルメディア上でのコミュニティ内での意見交換を通じて、情報を探索的かつ能動的に取得していく特徴があります。 ニュース分野では、Pew Research Centerの調査によると、[Z世代やミレニアル世代を含む50歳未満の世代は、FacebookやInstagram、TikTokといったプラットフォームを利用してニュースを得る割合が50歳以上の世代よりも高い](https://www.pewresearch.org/journalism/2024/06/12/how-americans-get-news-on-tiktok-x-facebook-and-instagram/pj_2024-06-12_social-media-platforms-news_0-04/)ことが分かっています。特に10代のZ世代では、もはや[検索エンジンや伝統的なニュースメディアよりもソーシャルメディアが日常で最も利用するニュースの情報ソースとなっています](https://www2.deloitte.com/xe/en/insights/industry/technology/gen-z-news-consumption.html)。このようなプラットフォームでは、情報が他のユーザーとの対話や、彼らが信頼するインフルエンサーによって強化され、広まり、ニュースや情報はよりインタラクティブかつパーソナライズされた形で消費されています。 このようにZ世代がオンライン上で築くソーシャルな関係が、彼らの情報取得の大きな役割を果たしているため、Z世代にとっては情報の正確性や中立性は必ずしも優先されません。むしろ、彼らが信頼するのは、自分と価値観や関心を共有するコミュニティやインフルエンサーであり、その中での情報交換がより重要視されます。 このトレンドは、ソーシャルメディアサービスだけではなく、金融・ショッピング・ヘルスケア/ウェルネスといった個別分野にも影響を与えており、各サービスがZ世代向けにソーシャル性を強化しつつ進化しています。具体的には、Z世代向けに特化した「ソーシャルコマース」なプロダクトが登場し、ユーザーー同士が従来のサービスよりも濃密に製品・サービスや金融商品の評価やレビュー、使用感などを相互に情報共有しながら経済活動を行うような環境が用意されています。 こうした背景を踏まえ、本稿ではZ世代向けに設計されたソーシャルコマースのニュースメディアからスタートアップ事例を取りあげます。これらのスタートアップは、Z世代の特性に対応し、彼らのニーズを満たすための新しいサービスやプロダクトを提供しています。本稿を通じて、読者の皆様が新たなサービスや事業を企画する際の参考となれば幸いです。 # ソーシャル性を組み込んだ金融投資: AfterHour 各個人投資家が自身の投資戦略やポジションを共有しあうソーシャル性がサービスの売りとなっている 出典: [AfterHourアプリ(App Store)](https://apps.apple.com/us/app/afterhour-stock-chat-alerts/id1640766056?_branch_match_id=804602761655551833&utm_source=website&utm_campaign=webiOS&utm_medium=marketing&_branch_referrer=H4sIAAAAAAAAA8soKSkottLXT0wrSS3KyC8t0kssKNDLyczL1s%2FMLwYA9g8RNR4AAAA%3D) 各個人投資家が自身の投資戦略やポジションを共有しあうソーシャル性がサービスの売りとなっている 出典: [AfterHourアプリ(App Store)](https://apps.apple.com/us/app/afterhour-stock-chat-alerts/id1640766056?_branch_match_id=804602761655551833&utm_source=website&utm_campaign=webiOS&utm_medium=marketing&_branch_referrer=H4sIAAAAAAAAA8soKSkottLXT0wrSS3KyC8t0kssKNDLyczL1s%2FMLwYA9g8RNR4AAAA%3D) [AfterHour](https://www.afterhour.com/)は、Z世代をターゲットにしたソーシャルトレーディングプラットフォームです。このサービスは、若年層が株式市場に参加しやすくすることを目的としており、特に近年のFintechブームで増加しているリテールトレーダー(個人投資家)にフォーカスしています。AfterHourの主な特徴は、ユーザーがリアルタイムで他のトレーダーの投資活動を観察し、ユーザー同士で投資ポートフォリオを共有することができる点です。さらに、ユーザー同士が意見交換をしたり、投資に関するアドバイスを求めたりすることができるソーシャル機能が充実しており、投資をより身近で楽しいものにしています。 伝統的な金融サービスは、複雑で手間がかかり、新規参入者にとって敷居が高いことが問題でした。特に若い世代は、投資に対して興味を持ちながらも、情報不足や知識のハードルから参入を躊躇するケースが多く見られました。またインターネットやリアルで不特定な誰かに意見をもらったりすることは可能ですが、インターネットでは投資に関する詐欺やフェイク情報が溢れ、とても安心して情報交換できる状態にない課題があります。 AfterHourはこの課題に対し、投資に必要な知識や市況を簡単に学べる環境を提供するとともに、各ユーザーが自分の投資アカウントで連携(Robinhoodなど個人投資家が使う投資アプリとAPI接続)した上でハンドルネーム(つまり実質的な匿名状態)で他のユーザーと投資に関する戦略・現在のポジション・これまでの経験を共有することで、相互にフォローし合えながら安心して投資をできるようにしています。現在の自分のポジションはAPI接続されたアカウントのスクリーンショットしか投稿できないため、詐欺や不正が起こりにくい環境を実現しています。 ![](/images/posts/8756166abd/screen-afterhours.jpg) Robinhoodなど個人投資アカウントと連動しつつ匿名でポジションや戦略をトピックごとに共有できる 出典: [AfterHour iOSアプリ](https://apps.apple.com/us/app/afterhour-stock-chat-alerts/id1640766056?_branch_match_id=804602761655551833&utm_source=website&utm_campaign=webiOS&utm_medium=marketing&_branch_referrer=H4sIAAAAAAAAA8soKSkottLXT0wrSS3KyC8t0kssKNDLyczL1s%2FMLwYA9g8RNR4AAAA%3D) AfterHourのビジョンは、若年層にとって投資がもっと身近で日常的な活動となる社会を創造することです。彼らは、金融市場がより透明でアクセスしやすいものとなり、個人投資家が大手金融機関に依存せずに自立して投資を行えるようにすることを目指しています。 AfterHourのプロダクトはユーザーに受け入れられはじめており、参加しているユーザーが[シェアした投資額は2億ドルを超え、](https://apps.apple.com/us/app/afterhour-stock-chat-alerts/id1640766056?_branch_match_id=804602761655551833&utm_source=website&utm_campaign=webiOS&utm_medium=marketing&_branch_referrer=H4sIAAAAAAAAA8soKSkottLXT0wrSS3KyC8t0kssKNDLyczL1s%2FMLwYA9g8RNR4AAAA%3D)[2万3000人のユーザーが参加](https://techcrunch.com/2024/06/22/deal-dive-sir-jack-a-lot-returns-with-a-startup-for-retail-traders/)しています。数値的にはまだまだ小さいものの、今後の伸びが期待されています。 AfterHourのビジネスモデルはまだ確立されていません。個人投資家特化のソーシャルメディアとしてユーザーを十分に増やした後に、金融アカウントや商品やアドバイザーへの誘導、AfterHour自体が投資サービス化する、など展開は様々考えられます。 AfterHourは、[シードラウンドでの資金調達を完了し、総額450万ドル(約6.8億円)の資金を獲得](https://techcrunch.com/2024/06/22/deal-dive-sir-jack-a-lot-returns-with-a-startup-for-retail-traders/)しました。リード投資家は著名なベンチャーキャピタルであるFounders Fundであり、その他にもGeneral CatalystやPearVCなど複数の著名投資家が参加しており期待の高さが伺えます。ユーザーベースとチームの拡大に力を入れていく予定となっています。 # Z世代向けドロップ型ソーシャルリワード: Claim Claimはソーシャル要素とドロップマーケティングをかけあわせた新たなUX提供を行う 出典: [Claim](https://blog.claim.co/p/introducing-claim-a-social-network) Claimはソーシャル要素とドロップマーケティングをかけあわせた新たなUX提供を行う 出典: [Claim](https://blog.claim.co/p/introducing-claim-a-social-network) [Claim](https://www.claim.co/)は、Z世代をターゲットにしたソーシャルリワードプラットフォームです。ユーザーは、このプラットフォームを通じて友人と一緒にリワードを獲得し、トレードすることができます。Claimのユニークな点は、広告主となるブランドが提供するリワード(例えばカフェで初回利用限定でアサイーボウルがもらえる)が1週間に1回ドロップされる仕組みで、ユーザーはリワードを利用(Redeem)するか、友達と交換するか選択することができます。この仕組みにより、ユーザーはリワードを手に入れることに対して一層の価値を感じるようになります。 従来のリワードプログラムは、特典の取得プロセスが単調かついかにも広告を見せられているような体験であり、ユーザーのエンゲージメントが低いという課題がありました。特にZ世代は、即時性やゲーム的な要素を好むため、従来のポイント制リワードプログラムでは十分に魅力を感じられないことが多くありました。Claimはこの問題を解決するため、ドロップマーケティングやリワードの交換プログラムにより、リワード獲得や利用の過程をよりインタラクティブで楽しいものにし、ユーザー同士の交流を促進する仕組みを導入しています。 また従来のリワードはクーポンやQRコードなどを店舗やオンラインで明示的に使用しないといけませんでしたが、Claimではアプリで[クレジットカード/デビットカードを紐づけそのカードで支払うだけで自動的にVenmoでのキャッシュバックを受けられる](https://www.claim.co/howto/why-do-you-need-my-credit-card)ようになっています。これはPlaidのようなBaaS(Banking as a Service)をうまく活用した施策で、ユーザーの手間や適用ミスも減り、より使いやすいユーザーエクスペリエンスが提供できています。 Claimのビジョンは、リワードの価値を単なる物理的な特典にとどまらせず、ユーザー間のソーシャルなつながりや競争を通じて新たな体験価値を生み出すことです。彼らは、リワード獲得のプロセスを通じてユーザーが楽しみながら特典を手に入れられる環境を提供し、リワードプログラムの概念を再定義しようとしています。これがうまくいくとブランド側にとって高まり続けるCAC(ユーザー獲得コスト)を下げられるため、ユーザーと広告主をWinWinな状態にすることを目指しています。
現状はZ世代にフォーカスするため、特定の大学の学生に限定してアプリ提供を行なっており、2024年8月現在で[全米の70を超える大学](https://www.claim.co/schools-with-claim)で利用できるようになっています。 Claimのビジネスモデルは獲得型の広告料モデルです。企業はプラットフォーム上でリワードを提供し、それを通じて新規顧客を獲得することの対価として費用を支払います。利用ユーザーの拡大とともにブランドも[PepsiやD2Cブランド、レストランなど多様なブランドの獲得](https://blog.claim.co/p/introducing-claim-a-social-network)に成功しています。ブランド側にとっては特に初回ユーザー獲得に効果を発揮しており、かけた広告費に対して[4.8倍のリターン、特典ドロップ後に50%のコンバージョン率の改善](https://www.claim.co/for-marketers)を実現し、高い効果を生んでいます。 Claimは、2023年6月に[シードラウンドで400万ドル(約6億円)の資金を調達](https://blog.claim.co/p/introducing-claim-a-social-network)しました。リード投資家は、ベンチャーキャピタルのSequia Capitalです。この資金は、チームメンバーの採用と新たな市場展開前のエンジニアリング観点でのテストやフィードバックに充てられる予定です。 # おわりに AfterHourとClaimに共通するテーマは、Z世代の価値観や行動様式に寄り添ったサービス設計にあります。これらのスタートアップは、従来のサービスとは一線を画し、ソーシャル性とインタラクティブ性を重視することで、Z世代の関心を引きつけることに成功しています。特に、Z世代は、個人としての自分を強く意識しつつも、同時にコミュニティ内でのつながりや共感を非常に大切にする傾向があります。こうした特性を活かし、AfterHourはトレーディングにおける他者との共有や対話を促進し、Claimはリワード獲得のプロセスをゲーム化することで、ユーザー同士の交流や競争を促進しています。 Z世代にとって重要なのは、自らの体験や行動が意味を持ち、その結果が共有されることで社会的な価値を生み出すという感覚です。ソーシャルメディアの中での「いいね」や「シェア」、そしてそれに伴うフィードバックは、Z世代にとって強力な動機づけとなります。AfterHourやClaimが提供するサービスは、こうしたZ世代の欲求に応える形で設計されており、単なるツールとしての利用に留まらず、ユーザーがそのサービスを通じて自己表現を行い、他者とのつながりを深めることができる環境を提供しています。 このように、Z世代向けのサービスを企画する際には、彼らの特性を深く理解し、ソーシャルメディアにおける彼らの行動様式を考慮することが重要です。彼らは情報の受け取り方や消費の仕方において、他の世代とは異なるアプローチを求めています。特に、インタラクティブで、ソーシャルな体験を重視する傾向があるため、これらをサービス設計に組み込むことは必須事項になってきています。 最後に、Z世代は今後、経済活動や社会的な影響力をますます増していくことが予想されます。そのため、企業やサービスプロバイダーは、Z世代のニーズを理解し、彼らに適した商品やサービスを提供することが競争力を維持する鍵となるはずです。 以上のような視点を持ちながら、新たなサービスやプロダクトの企画を進めていくことが、これからの成功に繋がると考えます。 --- ## Q2 2024:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/c6f6766689 公開日: 2024-08-09 著者: Chartbeat by Chartbeat Staff([原文](https://chartbeat.com/resources/research/global-audience-insights-from-second-quarter-2024/))2024.08.09 2024年第2四半期(4-6月)は、中東で平均エンゲージ時間が減少し、中央アジアと南欧でモバイル読者が増加、北欧でロイヤル読者数がもっとも多い状態が続きました。 第2四半期の調査から得られた世界の読者インサイトについては、以下をお読みください。 # エンゲージ時間が長いのは中東と中・東欧 [https://public.flourish.studio/visualisation/18823606/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/18823606](https://public.flourish.studio/visualisation/18823606/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/18823606) 中東の読者の平均エンゲージ時間は38秒で、もっとも熱心な読者でした。中欧・東欧が36秒、アジア・太平洋が29.1秒でこれに続いています。そのほかの地域では、平均エンゲージ時間が29秒を超えることはありませんでした。 # 中央アジアと南ヨーロッパでモバイルトラフィックが増加 [https://public.flourish.studio/visualisation/18823666/](https://public.flourish.studio/visualisation/18823666/) 中央アジアおよび東南アジアのパブリッシャーは、ページビューの87%がモバイル端末からのものであり、引きつづきモバイル端末からのトラフィックが大半を占めています。アフリカは81%と及ばず、第2四半期にはすべての地域でページビューの少なくとも69%がモバイルデバイスからのものとなりました。 # 中央アジアとアフリカで増加する検索トラフィック [https://public.flourish.studio/visualisation/17504557/](https://public.flourish.studio/visualisation/17504557/) 第2四半期の中央アジアのページビューの47%は検索エンジンによるもので、第1四半期の45%から増加しました。東南アジアとアフリカのパブリッシャーも、ページビューの40%以上が検索エンジンからのものでした。 # アフリカでソーシャル・トラフィックが回復 [https://public.flourish.studio/visualisation/18823784/](https://public.flourish.studio/visualisation/18823784/) 第2四半期のアフリカのページビューの22%はソーシャル・プラットフォームからのもので、第1四半期の19%から増加しました。中・東欧と北米が15%で続いています。 # 北欧・中欧・東欧でもっとも強いロイヤリティを記録 [https://public.flourish.studio/visualisation/18823822/](https://public.flourish.studio/visualisation/18823822/) ロイヤルティの高い読者からのページビューの割合がもっとも高かったのは北欧で50%、前四半期の48%から上昇しました。中・東欧が44%で続きます。中央アジアは、前四半期の25%から22%に減少しています。 # 第2四半期のポイント 読者のエンゲージメントは上半期が高い これまでの傾向から、上半期に読者のエンゲージメントが高まります。よって、この時期はエンゲージメント戦略を見直す絶好のタイミングです。 読者はモバイルファーストである どの地域でも、サイト訪問の少なくとも69%はモバイルデバイスによるもので、3つの地域では80%を超えています。 適切なチャンネルの適切なコンテンツでソーシャルオーディエンスを取り戻す Facebookのようなプラットフォームからのトラフィックは減少していますが、[各プラットフォームの読者が求めるコンテンツの種類が異なること](https://chartbeat.com/resources/research/recoup-social-audiences-with-right-content-right-channel/)を意識すれば、ソーシャル動画で彼らにリーチする機会は得られるでしょう。 *これまでのインサイトと比較する:[Q1 2024](/posts/7117cbbab1) / [Q4 2023](/posts/b75e41d1fd) / [Q3 2023](/posts/4cac6d716a) / [Q2 2023](/posts/41b6aec21d)* --- ## 生成AI時代のコンテンツパーソナライゼーション URL: https://ximera.com/posts/a051aaa99c 公開日: 2024-08-01 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #63|Ikuo Morisugi| 2024.08.01 ![](/images/posts/a051aaa99c/evie-s-kqJfP-lrl-8-unsplash.jpg) Image by [Evie S.](https://unsplash.com/ja/@evieshaffer?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%99%BD%E3%81%84%E9%A1%95%E8%8A%B1%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF-kqJfP-lrl-8?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに コンテンツパーソナライゼーションの進化は、デジタルメディアやeコマースの重要なテーマとして常に注目を集めてきました。これまでの歴史を振り返ると、Amazon、Netflix、TikTokなど、コンテンツパーソナライゼーションがそれぞれのサービスを大きくグロースさせるキードライバーとなってきました。 Amazonはユーザの購入履歴や閲覧履歴に基づいて関連商品を提案するシステムを開発し、パーソナライゼーションの先駆者となりました。また、Netflixはユーザの視聴履歴を解析し、個々の嗜好に応じたカテゴリーや動画コンテンツを1to1で出し分けすることで視聴体験を向上させました。[Amazonは購入の35%が商品レコメンド経由で発生し、Netflixでは視聴の75%がレコメンド経由](https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/how-retailers-can-keep-up-with-consumers)だと言われています。さらに、TikTokは[高度なアルゴリズム](https://newsroom.tiktok.com/en-us/how-tiktok-recommends-videos-for-you)を使用してたった数個の短尺動画の視聴履歴やイベントデータをもとに、次にフリックして見せる動画をリアルタイムに最適化しつづけたことで、多くのユーザをプラットフォームに惹きつけることに成功しました。TikTokのアルゴリズムの強さは特に顕著で、その最適化のスピードと精度には舌を巻かせられます。 普段何気なく我々が利用している上記のようなサービスはもちろん、現代のあらゆるサービスでパーソナライゼーションはユーザを各プラットフォームにエンゲージさせる重要な役目を果たしています。 本連載第54回で取り上げたように、コンテンツの並び順だけでなくUIや価格のパーソナライゼーションも起こりつつあります。この分野での進化は、さらなるユーザエクスペリエンスの向上とビジネス価値の向上に寄与するものとして期待されています。 Related: [Ximera Media Next Trends #54  ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性](/posts/0a8b1f26ee) さらに近年の生成AIの登場により、パーソナライゼーション技術は新たな段階に入りました。生成AIは、ユーザの好みに応じたコンテンツの自動生成や、これまでマニュアルで取得・定義していた情報を自動で収集・クラスタリングすることも可能になり、より適用範囲が広くなり、精度の高いものが提供できるようになっています。 本記事では、この分野で注目されているスタートアップを紹介し、生成AI時代のコンテンツパーソナライゼーションの可能性を探ります。 # クリエイティブのパーソナライズAI: Fibr Fibrにより広告クリエイティブおよびランディングページのパーソナライズが可能になる 出典: [Fibr](https://fibr.ai/) Fibrにより広告クリエイティブおよびランディングページのパーソナライズが可能になる 出典: [Fibr](https://fibr.ai/) [Fibr](https://fibr.ai/)は、AIを活用したパーソナライズドコンテンツを提供するマーケティングプラットフォームです。主にマーケティングや広告業界で使用され、ユーザの属性・行動データを基に最適なコンテンツを生成し、配信することを目的としています。Fibrの技術により、ユーザの関心や行動パターンを詳細に解析し、その結果を基に生成AIを活用して個別にカスタマイズされたメッセージやクリエイティブを自動生成します。 現代のマーケティングにおいて、ユーザの多様なニーズに応えることはより重要となってきています。ユーザを一定のグループ集団と見てセグメントごとに切った従来の一律な広告やコンテンツでは、どうしても関心を持たせることができないユーザが一定存在します。この状況を改善するためにバリエーションを増やしすぎると今度は工数や費用がかかりすぎて、それによりCAC(ユーザ獲得コスト)が膨らみROI(投資利益率)が悪化する可能性をはらんでいます。Fibrは、この課題を解決するために、生成AIを活用してユーザごとに異なるコンテンツをコストを低減しながら提供する製品を開発しました。 Fiberは大きく、[Pilot](https://fibr.ai/pilot)と[Blocks](https://fibr.ai/blocks)と呼ばれる2つの製品を提供しています。Pilotは、広告クリック後のランディングページにおいて、流入元チャネル、位置情報、訪問回数、使用言語などを元にダイナミックにランディングページのテキスト・画像・言語などコンテンツのパーソナライズを可能にします。Blocksは、クライアント企業のブランドカラーやトーンを学習した上で、複数のLLMモデルを組み合わせて、各配信先(Facebook/Instagram)にあわせた広告クリエイティブを自動生成することができる製品です。 Blocksでランディングページへの流入精度を高め、Pilotでランディングページにおけるコンバージョンの精度を上げることが、Fibrの大きなプロダクト群提供戦略となっています。 Blocksで実現される広告改善のサイクル 出典: [Fibr](https://fibr.ai/blocks) Blocksで実現される広告改善のサイクル 出典: [Fibr](https://fibr.ai/blocks) Fibrの技術は、特にEコマースやデジタル広告の分野で成功を収めています。例えば、[ある大手Eコマース企業の事例](https://fibr.ai/customer-stories/ad-to-landing-page-sync-in-ecommerce)は、Fibrの製品を導入することで、広告とランディングページを連携させたパーソナライゼーションとABテストの実行により、ランディングページのコンバージョン率は30%向上し、CACが25%削減されました。現在の主力製品であるPilot全体でみても、[30%のCACの削減、平均で15%のコンバージョンレートの向上](https://fibr.ai/)を実現しています。 Fibrは、Pilotについては[サブスクリプションモデル](https://fibr.ai/pricing)を採用しており、月額料金を支払うことでサービスを利用できます。料金プランは、月間セッション数、利用する機能、作成できるクリエイティブやバリエーションの量に応じて異なり、無料プランからEnterpriseプランまで4つの選択肢が用意されています。一方でBlocksについては、従量課金モデルとなっており、1ドルあたり50クレジット付与される独自ポイントを購入し、必要な機能に課金していく形になっています。例えば、テキストから画像を生成する機能の利用に10クレジットがかかるといった具合です。これは本連載第59回でも取り上げた「SaaSの利用料金が徐々に利用量ベースになっていくトレンド」を踏襲しています。 Related: [Ximera Media Next Trends #59  AI時代に変化するSaaSビジネスモデル](/posts/c3f21c82f0) Fibrは2024年7月に[Accelをリード投資家とするシリーズAラウンドで180万ドル(約2.7億円)の資金調達](https://bizbracket.in/resources/funding/ai-powered-personalization-platform-fibr-raises-usd-1-8-million-in-funding/)を行いました。調達した資金は、主にプラットフォーム開発・市場拡大・人材採用に使用される予定です。 # セルフサーブ型コンテンツパーソナライゼーション: Shaped Shapedのコンテンツパーソナライゼーションアーキテクチャ 出典: [Shaped](https://docs.shaped.ai/docs/overview/architecture) Shapedのコンテンツパーソナライゼーションアーキテクチャ 出典: [Shaped](https://docs.shaped.ai/docs/overview/architecture) Shapedは、[元FacebookのAI研究部門に所属していたエンジニアら](https://techcrunch.com/2024/07/17/shaped-raises-8m-series-a-and-launches-its-self-serve-recommendations-and-search-service/)により設立された、コンテンツパーソナライゼーションプラットフォームを提供するスタートアップです。提供する製品は開発者が自身でコンテンツレコメンドや検索機能のセットアップとチューニングができる「セルフサーブ型」が特徴で、メディア・eコマースなど多数のエンドユーザに1to1のコンテンツパーソナライゼーションを提供したい企業・開発者に適したツールとなっています。 Tech Giantで実現されているコンテンツパーソナライゼーションと同等のものを作るには、数千人のエンジニアと専門性の高い技術力が必要になります。当然ながら多くの企業にとって、高いハードルが存在します。これに対しShapedはセルフサーブ型のパーソナライゼーション基盤を提供することで、パーソナライゼーションの専門エンジニアではない開発者が手軽にユーザ体験を向上させ、競争力を高めることを目指しています。生成AIのモデルも含んだコンテンツパーソナライゼーションに必要な最新技術をパッケージングし、使いやすく、カスタマイズしやすい[API](https://docs.shaped.ai/docs/overview/welcome)とダッシュボードを提供しています。 具体的には、ユーザイベントデータを学習させ、機械学習モデルをアップデートし、各ユーザごとに最適化されたコンテンツランキングを返すことができる[アーキテクチャ](https://docs.shaped.ai/docs/overview/architecture)で構成されています。例えば、テキスト、画像、動画のコンテンツをマルチモーダルのモデルで学習するための技術として、[TransformerやLLMを利用](https://docs.shaped.ai/docs/overview/model-library)しています。既存のイベントデータソースとの統合も実行しやすく設計されており、Segment、Amplitude、AWS、GCP、Snowflake、GAなど18種のメジャーなデータソースに対応しています。 Shapedはユースケースとして、[TikTokのFor Youフィード](https://docs.shaped.ai/docs/use_cases/tiktok-for-you-feed)や[Amazonの商品レコメンド](https://docs.shaped.ai/docs/use_cases/amazon-recommendations)のようにTech Giantで実現されているパーソナライゼーションのモデルをShapedを使って実現するサンプルも提供しており、実例をもってリアルタイムで精度の高いパーソナライゼーションの実装が可能であることを示しています。 Shapedは、すでにいくつかのスタートアップで利用事例を増やしており成功を収めています。例えば、美容関連の動画ソーシャルメディアのSUPERGREATは、Shapedを導入したことで、[視聴時間を131%向上](https://www.shaped.ai/case-study/supergreat)させました。元々はパーソナライゼーションには[AWS Personalize](https://aws.amazon.com/jp/personalize/features/)を利用していましたが、ユーザフィードバックに2時間かかり、モデルの再トレーニングには7日間毎にしか行うことができなかったことで、ユーザが求めるものとパーソナライズされたコンテンツにラグが発生していました。Shapedに切り替え、よりリアルタイムで最新のパーソナライゼーションモデルを適用したことにより大きくパフォーマンスを向上させることに成功しています。 Shapedは、サブスクリプションモデルを採用しており、[月額のフラット料金](https://www.shaped.ai/blog/shaped-vs-aws-personalize)でサービスを提供しています。料金プランは、利用する機能やデータの量に応じて異なり、月間のユーザアクセスの量に応じた相見積もりとなっています。 Shapedは[2024年7月にシリーズAラウンドでMadrona Venturesをリード投資家とした800万ドルの資金調達](https://www.shaped.ai/blog/shaped-raises-series-a)を行いました。調達した資金は、プラットフォームの機能拡充と市場拡大に充てられる予定です。 # おわりに 生成AIを活用したコンテンツパーソナライゼーションの進化は、企業とユーザ双方に多大な利益をもたらしています。FibrとShapedの事例は、生成AI技術がどのように実用化され、ビジネスに貢献しているかを示しています。これらのスタートアップが提供するソリューションは、個々のユーザに対するパーソナライゼーションを実現し、企業の競争力を高めるものです。 2024年7月現在では、今回取り上げた事例のようなパーソナライズは世の中に普及しきっていない状況ですが、今後のAI時代ではみなが当たり前のように実装される技術になる可能性があります。新たなサービスやプロダクトやマーケティングを企画する際には、これらの先進的な事例を参考にすることで、より効果的なパーソナライゼーション戦略の構築が可能になります。今後も、生成AIの進化と共に、コンテンツパーソナライゼーションの可能性が広がっていくことが期待されます。 --- ## 新世代向けに勃興するソーシャルメディア URL: https://ximera.com/posts/3287e00c43 公開日: 2024-07-09 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #62|Ikuo Morisugi| 2024.07.09 ![](/images/posts/3287e00c43/sebastian-svenson-LpbyDENbQQg-unsplash.jpg) Image by [Sebastian Svenson](https://unsplash.com/ja/@sebastiansvenson?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/blue-and-white-round-illustration-LpbyDENbQQg?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに 近年、Z世代などの若い世代に向けた新しいコミュニティやソーシャルメディアが次々と立ち上がっています。 いつの時代も若者達は、同世代同士がコミュニケーションしやすいクローズドな環境と、自分たちの中だけで意味が通じるコンテンツを生み出し楽しむことを好みます。例えば、[初期のFacebook](https://ja.wikipedia.org/wiki/Facebook)は大学生しか使えませんでしたし、[Snapchat](https://en.wikipedia.org/wiki/Snapchat)も友達同士でふざけた瞬間を写真を送りたいものの、誰かに晒されるのが嫌という需要を捉えて「一度見たら見返せなくなるチャット」が広がりました。FacebookやSnapchatはパワーユーザーである若者がプラットフォームの拡大をリードしつつ、間口を広げる機能をリリースし、若者以外の層にも広がったことで、現在多くのユーザーが利用するようになりました。 現状の主要なソーシャルメディアでは様々な世代が混在して交流するようになったが故に、若い世代はその環境を煙たがり、より同世代同士の共感が強化されるよりプライベートなネットワークを嗜好するようになっています。 また、若い世代はインターネット上での新しいコンテンツや遊び方に敏感であり、テクノロジー利用の学習コストも低いため、新たなコミュニティやメディアの利用方法やコンテンツを生み出す力を持っています。 例えば、直近では[買収されることが決まったBeReal](https://www.businessinsider.jp/post-288543)があります。BeRealは合図となる通知から2分以内にスマホの両面のカメラで素の自分を撮影し、プライベートなグループに投稿するソーシャルメディアで、「制限時間内にカメラを両面同時に使うテクノロジー」および「クローズドな自分たちの間だけでわかるリアルタイム性の高いコンテンツ」を実現し、若い世代に新たなコンテンツやコミュニティを生み出しました(一方で、BeRealはその制約の多さから若い世代以外へオーディエンスを拡張できずFacebookのようなメジャーなプラットフォームにはなりきれずに身売りを決断したと考えられます)。 このように新たなムーブメントが起こりやすい新世代をターゲットとしたコミュニティ・メディアの勃興を捉えることで、メディアの次世代の形についてのヒントを得ることができます。本稿ではこの流れを体現しているスタートアップを紹介していきます。 # Z世代向け完全匿名性大学内コミュニティ: Fizz Fizzは同じ大学内で匿名でやりとりできるソーシャルメディア 出典: [App Store](https://apps.apple.com/jp/app/fizz-whats-fizzin/id1548207780) Fizzは同じ大学内で匿名でやりとりできるソーシャルメディア 出典: [App Store](https://apps.apple.com/jp/app/fizz-whats-fizzin/id1548207780) [Fizz](https://fizzsocial.app/)は、大学生専用のソーシャルメディアプラットフォームです。「Z世代によるZ世代のためのソーシャルメディア」と呼ばれており、2021年にスタンフォード大学に所属していた学生2名によって設立されました。大学学生同士が匿名で交流できる場を提供し、学内の情報共有や悩みの相談ができるようになっています。大きな特徴としては、各大学ごとに独自のコミュニティが存在することです。ユーザーは大学のメールアドレスを使わないとサインアップができないようになっており、自分の大学のネットワーク内でのみ投稿やコメントが可能となっています。 Fizzは、大学生が安心して自由に意見交換できる場を提供することを目指しています。従来のソーシャルメディアでは、プライバシーの問題や匿名性の欠如が原因で、学生が気軽に意見を表明することが難しい状況がありました。Fizzは、匿名性を確保することで、学生同士が率直に意見を交換し、共通の問題や関心事について議論することを可能にしました。 Fizzは、[2023年8月時点で90以上のキャンパス](https://pulse2.com/fizz-25-million-funding/)(大学や高校)に導入されており、学内での情報共有の場としてユーザからの強いエンゲージメントを獲得しています。特に[スタンフォード大学やペパーダイン大学などでは、普及率が95%](https://pulse2.com/fizz-25-million-funding/)を超えています。例えば、新入生のオリエンテーションや試験情報の共有、学生団体の活動報告など、様々なシーンで活用されています。また、匿名性を活かしてメンタルヘルスに関する悩みを相談する場としても利用されており、多くの学生がサポートを受けています。 一方で、Fizzは完全匿名性であるが故にコンテンツモデレーションの問題があります。匿名のソーシャルメディアは、差別・暴力・エログロといった取り扱いに注意が必要なコンテンツが氾濫しやすい環境です。これに対しFizzでは[学生有志から選ばれたモデレーター](https://fizzsocial.app/Guidelines-and-Policies/community-moderation-and-punishment)が対処していますが、[モデレータ自体に偏見が存在](https://techcrunch-com.translate.goog/2023/08/10/insiders-bet-more-on-fizz-a-social-network-that-has-now-bubbled-up-at-80-college-campuses/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=en&_x_tr_pto=wapp)しうることや、[Fizzのセキュリティ意識への甘さ](https://stanforddaily-com.translate.goog/2022/11/01/opinion-fizz-previously-compromised-its-users-privacy-it-may-do-so-again/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=en&_x_tr_pto=wapp)も指摘されています。かつての2ちゃんねるのようなアンダーグラウンドな存在となるのか、Facebookのように社会インフラになるのか、今後が注目されるところです。 Fizzのビジネスモデルは、まだ公表されているものはなく、確立されていません。対応する大学とユーザーを拡大した後に広告モデルとなるのか、大学側と連携するのか、学生へのサブスクリプションを展開するのかはまだ見えていません。 Fizzは、NEA(New Enterprise Associate)などトップティアのベンチャーキャピタルから[2023年8月にシリーズAラウンドで約2500万ドル(約40億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2023/08/10/insiders-bet-more-on-fizz-a-social-network-that-has-now-bubbled-up-at-80-college-campuses/)を行いました。調達した資金は、プラットフォームの機能強化や新たな大学への展開、マーケティング活動に使用される予定です。 # AI時代のクリエイティブメディア: Butterflies AI Butterflies AIはAIを作ってインタラクションさせる新たなソーシャルメディア 出典: [App Store](https://apps.apple.com/us/app/butterflies-bring-ai-to-life/id6471347348) Butterflies AIはAIを作ってインタラクションさせる新たなソーシャルメディア 出典: [App Store](https://apps.apple.com/us/app/butterflies-bring-ai-to-life/id6471347348) [Butterflies AI](https://www.butterflies.ai/landing)は、AIと人間が共存する新しいソーシャルメディアプラットフォームです。元Snapのエンジニアにより立ち上げられたButterflies AIのビジョンは、AI技術を活用して人々のクリエイティビティを引き出し、インスピレーションを提供することです。そのために、ユーザーが自分に最適なコンテンツを見つけ、創造的な活動を行うことへの支援をプロダクトとして実現しています。 従来のソーシャルメディアでは、自身にクリエイティブな素養だったり十分な作業時間がないと、継続的に質の高いコンテンツを投稿することが難しい課題がありました。Butterflies AIは、この課題に対してAIの力によりユーザーの興味に応じた創造的な活動を促進しています。 Butterflies AIでは、まずユーザがAIキャラクターを自身で生成するところからスタートします。自由なプロンプトかランダムで生成することができます。プロンプトで性格、見た目、性別、年齢、特徴などを記述し新たなキャラクターを生成します。 ユーザが初期セットアップを完了させると、AIキャラクターがButterflies内のソーシャルメディア上で勝手に投稿を開始します。ユーザーはAIとの対話で投稿のトピックに関して調整することはできますが、基本的にはAIがある程度の自由意志をもって投稿をしていきます(ただし性的コンテンツや不適切な内容のコンテンツは禁止されている)。 タイムラインはAIの投稿に対して、AIキャラクターと人間のどちらもコメントやいいね等ができるようになっており、ユーザーがAIと共にコンテンツを作成し、共有することで、新たな発見や創造性の発揮を支援しています。またフィードはパーソナライズされ、ユーザーが本当に関心を持つ情報をタイムリーに受け取ることも可能にしています。[創業者へのインタビュー](https://techcrunch.com/2024/06/18/former-snap-engineer-launches-butterflies-a-social-network-where-ais-and-humans-coexist/)によると、ベータテスト期間中に、ユーザーは平均で1-3時間ほどButterfliesのアプリでAIとやりとりをしているとされています。これは、うまく自分でお気に入りのAIが作れ、フィードがパーソナライズされることで、ユーザがプラットフォームへのエンゲージを高められることが示唆されています。 ビジネスモデルは、まだ確立されていませんが、[ユーザへのサブスクリプションモデルか、ブランドがAIとのインタラクションにより収益を生み出すかの選択肢](https://indianexpress-com.translate.goog/article/technology/tech-news-technology/butterflies-ai-new-social-media-app-launched-future-of-social-media-9404286/?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=en&_x_tr_pto=wapp)がありそうです。 Butterfliesは昨今叫ばれている「職を奪うAI」ではなく、ある程度人間のクリエティビティを発揮しながら、AIがAuto Pilotで作業を進めていくような協調型のプラットフォームになっており、AIと人間の共存を体現したサービスになっています。まだリリースから間もない初期段階であるため、多くのユーザが定着して使い続けられるか未知ですが、AIを活用した新たなメディアの観点で非常に興味深いです。Butterfliesについては、利用者を若い世代に限定しているわけではないですが、既存のソーシャルメディアから一定の距離を取りたい若いユーザが面白がって新しい使い方が生まれることが期待されます。 Butterflies AIは2024年6月にアプリケーションをロンチしたばかりですが、[CoatueやSV ANgelから480万ドル(約7.2億円)の資金調達](https://www.geekwire.com/2024/butterflies-takes-flight-with-4-8m-launches-social-media-platform-combining-ai-and-human-content/)を行っています。 # おわりに 本稿では、「新世代向けに勃興するソーシャルメディア」というテーマのもと、FizzとButterflies AIという2つの新たなソーシャルメディアを紹介しました。 これらのプラットフォームは、新世代のニーズに応えるために技術とアイデアを駆使して進化しています。Fizzは、大学生が安心して意見交換できる場を提供し、学内の情報共有やメンタルヘルスのサポートを実現しています。一方、Butterflies AIは、AIと人間が共存するクリエイティブなプラットフォームとして、ユーザーにパーソナライズされたコンテンツを提供し、創造的な活動を支援しています。 新たなコミュニティやソーシャルメディアの勃興は、技術の進化と共に多様な可能性を広げています。ユーザーのニーズを深く理解し、それに応えるための技術や社会トレンドを適切に取捨選択し・活用することが、今後のメディアの進化を考える上で重要です。 新世代向けのソーシャルメディアの台頭は、一過性で終わることも多々ありますが、大きな波は突然やってきます。次のムーブメントを見逃さず、有用な情報を積極的に取り入れることで、新たな取り組みにつながっていきます。 --- ## 過去データをうまくエバーグリーン・コンテンツ企画に活かす方法 URL: https://ximera.com/posts/fb37e691dc 公開日: 2024-06-27 著者: NICK LIOUDIS NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/10/27/evergreen-content-strategy/))2024.06.27 エバーグリーンコンテンツは、グローバルパブリッシャーの間でますます注目を集めています。こういったコンテンツや、[公開が数ヶ月・数年前にも関わらず突然トラフィックが急増するコンテンツ](https://blog.chartbeat.com/2020/01/08/tips-optimize-content-zombies-articles/)に関しての戦略を立てることで、新しい読者にメディアを知ってもらい、長く愛してもらえるファンを生み出す目標の達成に役立てることができます。 今回は、過去のヒストリカルデータからの気づきがリアルタイムのデータを補完し、メディア全体でエバーグリーンコンテンツとその他のコンテンツそれぞれをどう活かせるのか考えるための方法をご紹介します。 ## 過去の振り返りから、先の道筋を立てる リアルタイムデータはコンテンツへの注目や読者のエンゲージメントを維持するための必要な調整に、そのときすぐに役立つシグナルを[知らせてくれます](/posts/c467535a93)。しかし、過去の振り返りから文脈を見出すことも重要です。過去の成功や失敗にこだわるのではなく、エンゲージメントの主な要因を見極め、今後の道筋を立てるのです。 まずは目標設定からはじめましょう。短期的な戦略と長期的な戦略の両方をつくることが重要です: - 適切なKPIを使う(組織全体またはチーム全体) - 長期的なエンゲージメントとロイヤリティの原動力に焦点を当てる - ワークフローに組み込みやすい - チームにとって意味のある日次、週次、月次でコンテンツのパフォーマンスを評価する 最後のポイントが重要です。[戦略をつくる際の](https://blog.chartbeat.com/2020/09/02/optimize-reader-journey-for-desktop-mobile-audiences/)パフォーマンス評価に適している頻度を掘り下げてみましょう。 ## コンテンツ編成に役立つヒストリカルデータの分析 パフォーマンス評価のために行うヒストリカルデータの分析の頻度は、そのコンテンツがエバーグリーンかそうでないかに関わらず決まります。1日に複数のコンテンツを公開する場合は[日次または週次レポートで把握する](https://blog.chartbeat.com/2020/04/22/digital-strategy-insights-who-what-wear/)のがよいでしょう。対照的に、週1回またはそれ以下の公開頻度なら、月次でのレビューがエンゲージメント戦術がうまくいっているかの確認に適しています。 分析する頻度が決まったら、定期的にパフォーマンスを振り返り、モニタリングしましょう。そのとき役立つTipsをお伝えしておきます。 1. データの日次レビュー 日常的に、編集チームによい気づきをもたらす可能性があるのは、何かが起こったり読者からの反応があるタイミングです。Chartbeatのヒストリカルダッシュボード(Historical Dashboard)はそのタイミングを把握するのに役立ちます。たとえば: - ほかの時間帯より読者が多い時間帯はありますか? - 特定のデバイスの読者(デスクトップまたはモバイル)にサービスを提供するのに最適な時間帯はいつでしょうか? - [ソーシャルメディアへのポストに最適な時間帯](https://blog.chartbeat.com/2019/09/18/best-time-post-social-media/)は? ![](/images/posts/fb37e691dc/Untitled.png) ヒストリカルダッシュボード これらを把握しておけば、すぐに編成を調整してエンゲージメントを高めることができますし、深い分析に取り組む時間を確保することもできます。 1. 週次のデータ分析 週次でも日時と同じ考えかたが使えますが、考慮に加えたい点があります。 - 月曜日と金曜日、日曜日では、どんな読者の行動傾向が見られますか? - 重要な読者層(モバイル読者やロイヤル読者など)のエンゲージメントに影響しているコンテンツはどれでしょうか - 特定の日の特定の時間に繰り返すパターンはありますか? - 公開スケジュール(時間/頻度)は、サイト全体のエンゲージ時間や[回遊](/posts/0e4ce1b210)にどのような影響を与えているでしょうか こうした気づきを毎週得られれば、読者がコンテンツを求めている時間帯やプラットフォームに向けてのコンテンツを、事前に、積極的に計画することができます。 1. 月次データを振り返る 半期または四半期目標の進捗を追いかけている場合でも、月単位でKPIを把握すれば、それらをすべてをまとめられます。次のこれらも網羅できます。 - わたしは/わたしたちのチームは月毎の目標を達成できたか - サイト流入のトラフィックが多かったチャネルは何か - KPIを上回ったセクションや書き手は? - 再浮上した過去のコンテンツなど、今後のコンテンツ計画に役立つような特筆すべき点はあったか 1ヶ月分のデータの振り返りでも、目標を達成するためにどんな調整が必要なのか理解するのに十分な視点を得ることができます。また、注意が必要なタイプのコンテンツやチャネルにリソースを再配分する決定にも役立ちます。 ## データを見て終わらせず、行動する Chartbeatユーザは、ヒストリカルダッシュボードを使って、日次、週次、月次のデータをチーム全体に提供することができます。これらの[データに基づいて計画を立て](https://blog.chartbeat.com/2020/09/23/la-times-data-pipeline-audience-engagement/)、必要なエバーグリーンコンテンツ戦略を調整しましょう。以下のポイントは誰にでも実行可能です。 1. コンテンツ全体の傾向を把握する 毎日、毎週、または毎月の時間枠で、チャネル全体のデータの異常値を探します(たとえば、ソーシャルトラフィックのピークは朝か夕方か? 一週間ではどうでしょうか?) 次に、別のセグメントの最近のトラフィックとエンゲージメントを過去の期間と比較し、パフォーマンスの過不足や傾向を見つけます。 1. 型をつくる Chartbeatの「インサイトバッジ」はチャネル全体でパフォーマンスの高いコンテンツ(たとえば、「ソーシャル経由のパフォーマンスが高い」、「検索からが高い」、「モバイルが多い」など)を自動で表示してくれます。 この表示がどのトピック、タイミング、記事の種類が、より多くエンゲージメントに繋がっているのか考える機会を与えてくれます。結果を記録しておけば、今後のコンテンツ企画に使える特定の型が作れるかもしれません。 1. 型とほかのシグナルを組み合わせて戦略を実行する データを見ていると、エンゲージ時間が長く質の高い記事が、期待したほどの数の読者には届かないといったケースが出てきます。そういう記事はもっとプロモーションが必要です。チャンネルをまたいで、新しい切り口で再度プッシュすることを検討しましょう。結果をすぐに知りたい場合はリアルタイムダッシュボードで成果を確認することができます。 --- ## モバイル向けのページ最適化が、いかにエンゲージメントを深めるか URL: https://ximera.com/posts/169c7c256b 公開日: 2024-06-10 著者: NICK LIOUDIS NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/01/23/mobile-homepage-optimization-content/))2024.06.10 2024年は[トラフィックの70〜80%がモバイル](/posts/7117cbbab1)で行われています。もはや読者の主要なデバイスがモバイルであることは疑いようもありません。 これは、すでにモバイル読者向けにエンゲージメント戦略を導入しているみなさんにとっては常識ですが、これから着手するみなさんのメディアにとっても同じ状況でしょう。モバイルのエンゲージメントを高めるためには、コンテンツへの主な入り口になるトップページを改善することからはじまります。 私たちは、グローバルパブリッシャーのモバイルデータを分析して、より深い読書体験を促す行動をみつけました。データを見ていきましょう。 # デバイスベースのエンゲージメントパターン モバイルデバイスが洗練され、コンテンツへのアクセス方法が大きく変化して以来、読者の行動は進化してきました。グローバルパブリッシャーのデータを見直すと、以下のことがわかりました: 1. モバイルからの訪問者はよりロイヤルティが高い 2. モバイルでダイレクトに訪問する読者は、デスクトップからのダイレクト訪問の読者とは異なる行動を示す ![](/images/posts/169c7c256b/Untitled.png) 2018,2019年のデータ さらに深掘りすると、モバイルトップページの平均的な読者はデスクトップの読者よりも40%も長い時間を使って積極的にエンゲージしていることがわかりました。クリックする確率も20%高くなります。だからこそ、コンテンツのキュレーションがとても重要なのです。 # モバイルトップページのインタラクション モバイルトップページの読者、彼らが何を見るか、それがそのままエンゲージメントにつながります。スクロールの深さ、エンゲージ時間、クリック率の3つの指標をデバイス別に比較したところ、以下のことがわかりました: 1. デスクトップ読者はさらにスクロールする 2. モバイル読者はより長い時間エンゲージする 3. モバイル読者はクリックしやすい ![](/images/posts/169c7c256b/Untitled-1.png) 上のグラフは、モバイルトップページの読者がページの25%までスクロールするのに対し、デスクトップの読者は34%までスクロールすることを示しています。モバイルは、デスクトップと比べれば少ない割合ですが、モバイルの画面の大きさを考えれば、これでもいい割合ではあります。 このデータはポジティブなニュースとして受け止めるべきです。仮説検証を通じてトップページを最適化する大きなチャンスがあります。この急成長するユーザーを取り込むために、モバイルのトップページはもはやデスクトップのコピーではなく、独自の体験として扱われるべきです。 # モバイルユーザーが購読者にならない理由 メディアはより安定した収益源を確保するために、サブスクリプションにリソースを投入しています。その一環として、デバイスベースの戦略の重要性を認識しつつあります。 これらの関係をより深く理解するために、Chartbeatのデータサイエンスチームは、2019年1月にパブリッシャー全体で起こった購読者のステータスの変化(すなわち、コンバージョンまたは解約)を分析し、彼らが使用したデバイスがこれらのコンバージョンにどのように影響したかを調べました。 一見したところ、このデータから、パブリッシャーはウェブコンバージョンのユーザーエクスペリエンスにおいて、タブレットとデスクトップに注力すべきであると考えられます。しかし、解約/コンバージョンの比率がもっとも高いのはモバイル(ユーザー数も最も多い)です。 ![](/images/posts/169c7c256b/Untitled-2.png) このデータは、モバイルウェブのサブスクリプションとそのログイン体験に、重要な改善が必要であることを示唆しています。読者のサブスクリプションを遅らせる原因として、データはユーザーエクスペリエンスを指摘しています。まずはじめに、読み込み速度の遅さや、登録プロセス中のフォーム入力のナビゲーションの難しさが考えられます。このような体験は、コンバージョンファネルへの入口よりも出口につながる可能性が高いでしょう。 パブリッシャーは、読者がいる場所で読者を見つけることの重要性をますます認識していますが、コンバージョンは、読者が到着した後に摩擦のない体験を作り出すことと密接に結びついています。 # モバイルコンテンツ制作者にとっての意味 これらのモバイルデータ分析によると、トップページの体験は大幅な見直しの時期を迎えています。メディアが今できることは以下の通りです: マルチチャネル戦略にモバイルを組み込みましょう。ソーシャル、ダイレクトトラフィック、ニュースレターなど、流入元の多様性は、[チャネル別の最適化を行うチャンス](/posts/c467535a93)があることを示しています。過去のデータを使って、読者がモバイルコンテンツにどのように接したかをチャネル別に確認し、戦略内で改善すべき領域をみつけましょう。 キュレーションが鍵です。読者がモバイルのトップページを25%しかスクロールしていないことを重要視しましょう。エンゲージメントデータを活用して、モバイル読者にもっとも響くコンテンツの種類を把握しましょう。読者がモバイルサイトにアクセスしたら、サイトの奥深くまで楽しむことができるあらゆるチャンスを与えましょう。 モバイルユーザーエクスペリエンスをデスクトップから切り離しましょう。単純にデスクトップの体験をモバイル向けに縮小して複製する傾向は、今日の読者にはもはや十分ではありません。読者の流入元がどこであれ、ユーザージャーニーが困難であれば、読者のエンゲージメントとロイヤリティを高めるチャンスを損なうだけです。 --- ## テクノロジードリブンで作られるメディア URL: https://ximera.com/posts/1d07186949 公開日: 2024-06-05 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #61|Ikuo Morisugi| 2024.06.05 ![](/images/posts/1d07186949/christopher-burns-Kj2SaNHG-hg-unsplash.jpg) Photo by [Christopher Burns](https://unsplash.com/ja/@christopher__burns?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/white-and-black-digital-wallpaper-Kj2SaNHG-hg?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに 近年、ブロックチェーンやAIといった新しいテクノロジーの進化により、革新的なサービスが次々と生まれています。これらのサービスは必ずしもユーザーの顕在化したニーズから生まれたものではなく、むしろテクノロジーファーストのアプローチによって初めて提供可能となるプロダクトアウトの発想から実現されていることも多々あります。 新たなサービスやプロダクトは、マーケットインの要素だけでは凡庸なものになりがちであり、プロダクトアウトだけに頼るとユーザーの期待から外れたものになる可能性があります。かつてはマーケットインとプロダクトアウトは対立する概念と考えられていましたが、近年では両者を上手く組み合わせることが成功の鍵となっています。 本稿では、特定のテクノロジーをベースにプロダクトアウトでサービスを提供し、マーケットインの発想でユースケースを作り出し、新たなメディアとして成立させている事例を取り上げ、テクノロジードリブンのメディアがどのようにできあがってきたのか詳しく見ていきます。 # ブロックチェーンベースの予測市場: Polymarket [Polymarket](https://polymarket.com/)は、ブロックチェーン技術を活用した予測市場プラットフォームです。ユーザーは様々な出来事の結果を予測し、その予測に基づいてトークンを売買することができ、正しい予測をしたユーザーは報酬を得ることができます。Polymarketのビジョンは、集合知を活用してより正確な予測を可能にすることです。従来から予測市場は存在していましたが、中央集権的なシステムがほとんどで、不正の横行や外部操作を排除しきれないリスクがありました。Polymarketではブロックチェーンを活用することで、分散型で従来よりも透明性が高く、不正操作が起こりにくい予測市場を実現しています。 PolymarketのユーザーはEthereum互換のウォレットを使用してプラットフォームにアクセスし、USドルと連動している[ステーブルコインのUSDC](https://coinmarketcap.com/ja/currencies/usd-coin/#About)をデポジットすることで、予測市場に参加することができます。これにより、ユーザーは自分の予測に基づいてトークンを購入し、取引を行うことができます([より詳しい仕組みや説明](https://www.tastycrypto.com/blog/polymarket/))。 例えば、アメリカ大統領選で共和党と民主党の候補として誰が勝つかについて、プラットフォーム側がお題を出します。これに対し、参加者は自分の予測に基づいてトークンを購入し、その予測が正しければ報酬を得ることができます。さらにこれまでの参加者の投票率によってオッズが変化します。投票単位である「株」の価値がオッズにより決められ、下記事例の場合であればトランプが当選することに賭けた場合、1株あたり54セントがもらえます。株式は好きなだけ買うことができますが、Winner takes all方式で外れれば全額賭けたお金がなくなります。このように賭け事のインセンティブがあることで、1人1人の参加者が本気で予測を行うため、予測の精度が高まるという特徴があります。 Polymarketの2024 アメリカ大統領選の投票画面 出典: [Polymarket](https://polymarket.com/event/presidential-election-winner-2024) Polymarketの2024 アメリカ大統領選の投票画面 出典: [Polymarket](https://polymarket.com/event/presidential-election-winner-2024) また、選挙のみならずスポーツの試合結果やテクノロジー企業の業績予測など、様々な分野で活用されています。直近でも2024年の大統領選挙はPolymarketの最大の関心事となっており、[大手のニュースメディアにおいてもPolymarketの予測を参考指標として取り上げています](https://www.newsweek.com/joe-biden-chance-2024-election-trump-polymarket-1891129)。 2024年までに2億200万ドル相当(約303億円)の予測マーケットを生み出してきており、Polymarketは単なる賭け事のプラットフォームにとどまらず、未来の出来事についての情報を集約し、予測し、互いに検証するメディアとしても機能しています。フェイクニュースや陰謀論など多量に情報が訪れる時代において、世の中がどう動くかを客観的に見る指標になりえます(ただし参加者が増えれば増えるほど衆愚化するリスクやPolymarket自体が権威化した際に、特定の機関が勝たせたい方に多量に投票を行い、予測市場自体を狂わせるリスクは拭いきれません)。 2024年5月、Polymarketは[General CatalystおよびFunders FundがリードするシリーズAおよびBラウンドを一気に行い、投資家から7000万ドル(約105億円)を調達](https://www.businesswire.com/news/home/20240513090515/en/Polymarket-Raises-70m-From-Thiel%E2%80%99s-Founders-Fund-General-Catalyst-Vitalik-Buterin-to-Scale-Global-Prediction-Market)しました。Polymarketの今後の展開としては、グローバル市場(現状規制によりUSではサービス提供ができていない)におけるさらなるユーザー獲得と予測市場提供カテゴリーの拡大が期待されます。例えば、スポーツの試合結果やテクノロジー企業の業績予測だけでなく、政治や経済、エンターテイメントなど、様々な分野での予測市場を提供することで、さらなる成長が見込まれます。 # 誰もが音楽クリエイターになれるメディア: Suno [Suno](https://suno.com/)は、AIを活用した音楽制作プラットフォームです。ユーザーはSunoのWebサイトでプロンプトで曲のイメージを伝えるだけで、まるで本物のトラックメイカーが作ったような高品質な音楽を作ることができます。作成した音楽はSunoのプラットフォーム上で公開・販売することができます。Sunoのビジョンは、AIテクノロジーによって音楽制作の敷居を大幅に下げ、誰もが音楽クリエイターになれる世界を実現することです。 ユーザーは自分のアイデアやビジョンをテキストプロンプトで入力するだけで、SunoのAIがその内容を解釈し、メロディー、ボーカル、歌詞、トラック、マスタリングまで仕上げてくれるため、全自動で作られたにしては粗が少ない音楽作品を生成することができます。これにより、音楽制作のプロセスが非常に簡単かつ直感的になります。 実際にSunoを作って、[架空のアーティストを想定してコンセプトフルアルバムを作った事例](https://www.techno-edge.net/article/2024/02/27/2872.html)も生まれています。こちらの事例では、簡単なプロンプトを使いChatGPTに12曲の曲調と歌詞の一部を生成してもらい、歌詞をフルで生成させた後に、Sunoで12曲を自動生成させています。Sunoで生成した曲は、かなりレベルが高くかなり注意を傾けないと素人ではAIが作ったのか人間が作ったのか判別できないレベルとなっています。 [ChatGPT + Sunoでほぼ自動生成されたコンセプト・アルバム](https://www.youtube.com/watch?v=o33MG77RaFo) ChatGPT + Sunoでほぼ自動生成されたコンセプト・アルバム 上記事例では仕上げとして曲間を手作業でつないでコンセプト・アルバムとして仕上げています。さらにChatGPTにこのアルバムをベースに架空バンドのプロフィール(メンバー、音楽スタイル、結成経緯など)を詳細に生成してもらったことで、かなり実在しそうなアーティスト感を出すことができています。 音楽の自動生成技術自体は以前から存在していましたが、人間の作曲には明らかに劣る、またはシステムが作ったとわかるレベルのものでした。しかし、近年のSunoに代表される作曲AIは作曲が簡単になっただけでなく、非常に高いレベルを実現していることが上記の事例から感じられると思います。 プロンプトでは伝えられない部分については細かくマスタリングや調整をかける必要もありますが、それでもなお「作曲は得意ではないが自分のアイディアをもとにした音楽を作っていきたい」クリエイターに大きな変革をもたらすツールになっています。全く作曲のできないユーザが大ヒット曲を生み出すのも時間の問題になってきていると思われます。 Sunoはこれまでに[1000万人以上のユーザーが利用](https://suno.com/blog/fundraising-announcement-may-2024)しており、新たなクリエイターエコノミーのプラットフォームになりつつあります。ビジネスモデルとしては、[月額制のサブスク](https://suno.com/account)で、作曲のためのクレジットの購入や商用利用する権利などをBasic(無料)、Pro(10ドル/月)、Premier(30ドル/月)の段階的なプランに分けて提供しています。 2024年5月、[SunoはシリーズBでLightspeed Venture Partnersをはじめとした投資家から1億2,500万ドル(約)を調達](https://www.musicbusinessworldwide.com/ai-music-generator-suno-raises-125m-valuing-company-at-500m-report/)しました。この[アナウンス自体を歌詞にしてAIで曲にしてしまう](https://suno.com/song/5101c22d-e123-477b-8607-e09b61292ec6)という粋なこともしています。Sunoの成功は、AI技術を活用した音楽制作プラットフォームの可能性を示すものであり、今後の展開が期待されます。 # おわりに 本稿では、「テクノロジードリブンで作られるメディア」というテーマのもと、新たなテクノロジーによりこれまでなかった産業・市場が作り出される事例を取り上げました。 PolymarketとSunoに共通するのは、新しいテクノロジーを活用して従来にはなかった体験を提供していることです。これらのサービスは、ブロックチェーンの予測市場への活用、生成AI技術の音楽制作への活用という観点で、プロダクトアウトの発想から生まれたと考えられます。一方で、マーケットインの視点も重要で、Polymarketは大統領選やスポーツといった多くの人々が予測に関心が高いニーズに着目し、Sunoは作曲ができない人でも音楽を制作したいニーズに着目しています。プロダクトアウトとマーケットインの両方の視点を組み合わせることで、革新的で実用的なサービスを生み出す事例が生まれています。 新しいサービスやプロダクトを企画する際は、顧客ペインや課題の明確化とともにテクノロジーの可能性を探ることも重要です。テクノロジーを組み合わせることで生まれる新しい体験を想像し、それがどのようなニーズに応えるのかを考えることで、斬新でありながらも実用的なアイデアを生み出すことにつながります。 --- ## Chartbeat新機能のお知らせ:AI-generated headline Suggestion URL: https://ximera.com/posts/f2c7063d37 公開日: 2024-05-31 著者: Chartbeat 2024.05.31 Chartbeatより新しい機能に関するお知らせです。 Headline Testingのインサイトを活用したAIが見出しを生成して提案する機能「AI-suggested headlines」が追加されました。この機能を使用すると、AIが魅力的な見出しを自動的に生成し、見出しの作成プロセスを効率化できます。 ![](/images/posts/f2c7063d37/AI-generated_headline_Suggestion.jpg) AI-suggested headlines AI 提案の見出しで時間を節約 ✓ より短い時間でより多くの見出しを考え出す ✓ うまくいったヘッドラインに基づいて関連性の高い結果を生成 ✓ AI 生成の提案が時間の経過とともにどのように機能しているかをモニターできる この機能のご利用には、Headline Testingがご利用可能である必要があります。また、Chartbeat側でアカウントごとに機能実行の権限を付与する必要があります。権限が付与されますと、すべてのAdminユーザーに権限が付与され、Adminユーザーは、Headline Testingの権限を持つ一般ユーザーへのAI機能へのアクセス権限を付与することができるようになります。 この機能のご利用をご希望される場合、キメラのChartbeatサポートまで、お気軽にお問い合わせください。 --- ## ダークソーシャルとは何か。新しい流入元を理解する URL: https://ximera.com/posts/c2fd1a279d 公開日: 2024-05-23 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS, Ximera([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/06/24/dark-social-explained/))2024.05.23 私たちはこれまで何度もダークソーシャルトラフィック、つまりリファラーのないサイト訪問について質問を受けてきました。流入元のリファラーの把握とそれに対して必要なときに適切な対応ができることは、コンテンツ編成において大切なことです。とくに[モバイルのダイレクトトラフィックがデスクトップを上回り](https://blog.chartbeat.com/2020/02/05/reader-loyalty-channels-devices/)、[新しいプラットフォームが生まれてくる](https://blog.chartbeat.com/2019/11/13/mobile-aggregators-major-referral-source/)なかで、読者がどこでどうやってあなたのメディアを見つけるかを知ることが大切になってきます。 そこで、ダークソーシャルにまつわる3つのよくある質問にお答えし、新しい流入元を解明していきましょう。 # ダークソーシャルとは何か 今日、もはやダークソーシャルはソーシャルメディアだけの話ではありません。ダークソーシャルは、既存の流入元(個人のメール、ニュースレター、新しい人気のソーシャルメディアプラットフォームやメッセージングアプリなど)からのトラフィックである可能性は高いものの、はっきりしたリファラーがありません。明確なリファラーがあり流入元を判別できるオープンなソーシャルメディアと対比して、流入元を判別できないこれらのトラフィックの流入元はダークソーシャルと呼ばれています。 Chartbeatはダークソーシャルを「Email, Apps, IM」のリファラーに分類します。 ![](/images/posts/c2fd1a279d/Untitled.png) ダークソーシャルのトラフィックは、ほかの知らないサイトからの記事ページへの訪問、もしくは未知のモバイルアプリからの記事ページへの訪問といえます。これらに共通するのは、訪問先のサイトへリファラーデータを渡さないプラットフォームやウェブページからの訪問だということです。こういったケースでは流入元を特定することはできませんが、Chartbeatのデータサイエンスチームは[これらの解明に専念しています](https://blog.chartbeat.com/2016/01/28/fighting-dark-social-linkedin-comes-into-the-light/)。 # なぜダークソーシャルをダイレクトトラフィックに分類しないか リファラーがないサイト訪問という定義からすると、ダークソーシャルはダイレクトトラフィックと同じだと思われるかもしれません。しかし、私たちはダークソーシャルとダイレクトトラフィックとでは、訪問するユーザーの行動に大きな違いがあると考えているため、それぞれを別の分類で示しています。 1. サイトのトップページやランディングページ(いわゆる最新記事一覧ページやカテゴリの新着一覧など)を直に開いて訪問するユーザーは、ブラウザのブックマークを使うか、URLバーにドメインを直打ちしてサイトを開くことがわかっています。Chartbeatはこれをダイレクト(direct)トラフィックに分類しています。つまり、トップページやランディングページへの訪問で、かつリファラーのないものがダイレクトトラフィックに分類されます。 2. 対して、ソーシャルからの直接訪問は、先ほども触れたようにネットワークリクエストでリファラーデータの転送を許可していない、未知のプラットフォームやウェブサイトからのリンクで訪問するユーザーで構成されています。一般のユーザーが日々新しいものが流れていく個別の記事ページをブックマークしたり、URLバーへ個別の記事のURLを直接入力して訪問するケースは、まったくないとは言えないまでも、ほとんど考えられません。これらを踏まえ、Chartbeatでは個別の記事ページへの訪問で、かつリファラーのないものをダークソーシャルトラフィックとみなし、「Email, Apps, IM」のリファラーに分類しています。 # ダークソーシャルの流入元を明らかにするには? ダークソーシャルトラフィックの真相を知る方法のひとつは、ページのURLに付けることができるUTMコードを使うことです。UTMコードを使うことでプロモーションのための広告を運用しているチャネルも含めて、サイトへのクリックを追跡することができます。ChartbeatではReal-time DashboardとAdvanced QueriesでUTMを使ったトラフィックを表示できます。 Real-time Dashboard(リアルタイムダッシュボード)での活用例を挙げましょう。ニュースレター(メルマガ)が[ロイヤルティの高い読者と繋がる](https://blog.chartbeat.com/2019/07/01/subscriptions-engaged-readers-strategies-with-gq/)有効なチャネルになっていることはご存知のとおりです。つまりニュースレター読者の反応を理解することは、先々のプロモーション戦略の役に立ちます。 1. ニュースレターの配信ツールのデータからも、そのニュースレター購読者がロイヤルティの高い読者であるかどうかがわかります。そのニュースレター読者にChartbeatで(つまりWebサイトで)ロイヤルティの高い読者に反響のあった記事を当て、彼らからもう一度同じ反響を確認できれば、ある種のキュレーションツールとして機能します。その際、UTMタグを使えば、その反響がSNSのポストによるものか、ニュースレターによるものかを判別できます。 2. 多くのチャネルにコンテンツを拡散していくと、オーガニックのエンゲージメントとSNS広告によるエンゲージメントをそれぞれに分類して確認する必要がでてきます。UTMのカスタムパラメータを使えば、それが可能です。これが2つ目のユースケースです。 ![](/images/posts/c2fd1a279d/Untitled-1.png) Advanced Queries(アドバンスド・クエリー)を使うと、チャネルごとにエンゲージ時間、ロイヤルティ、回遊率などのパフォーマンスレポートを作成できます。たとえば、編集チームはコンテンツの各カテゴリに固有のUTMコードを付けることで、チャネル固有の読者行動に基づいて長期的なプロモーション戦略を作ることができます。さらに、コンテンツマーケティングのチームはAdvanced QueriesとUTMで、広告を伴ったプロモーションがユーザーに効果的にリーチできているかを把握することができます。 新しいリファラーが増えるにつれて、ダークソーシャルトラフィックは増加していくでしょう。ですが、それらのトラフィックが謎に包まれることがないよう、Chartbeatでは世界中の組織と協力してトラフィックを特定し、適切なタグ付けを行っていきます。お急ぎの場合は、それまで待たずとも[UTM](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/360017785694-Guide-to-Real-Time#h_925264078371550320575675)を活用できます。 --- ## 数字で見る、動画視聴率とページ・エンゲージメントの関係 URL: https://ximera.com/posts/a695400f8b 公開日: 2024-05-17 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2021/11/30/analyzing-video-engagement/))2024.05.17 動画を見るニュース消費者の割合と視聴時間の両方で、ニュース動画の消費は増加傾向にあります。これは2015年と比較して動画を掲載しているページが3倍になっていることと一致します。ですが、動画の数が増えたからといって、動画エンゲージメントが高まるとは限りません。 動画視聴者により多く価値を与えるためには、単にコンテンツを増やすだけでなく、いつものように[彼らの行動を理解する](/posts/edc40b5d25)必要があります。視聴者がどんな人なのか知っていますか? 彼らは愛着をもってくれていますか? 今回はChartbeatネットワーク全体の動画視聴者のデータを使用して、ニュース動画の消費状況を分析し、視聴者を理解するうえで活用できるポイントを探りました。 ## 動画の数字を探ってみる 視聴者の現状を把握するため、4週間にわたって50以上のグローバルサイトのサンプルで動画とページのエンゲージメントを分析しました。結果わかったのがこちらです: - 公開された全ページのうち16%が動画を掲載。2015年から3倍の増加 - サイト訪問者のうち77%が、サイト訪問中に1~2本の動画を視聴 - 視聴者のうち2.8%が15本以上の動画を視聴。2015年から1.5倍に増加 ![](/images/posts/a695400f8b/Video-Research-blog-graphic-1-1200x586.png) これらの数字から、サイト訪問者の大多数が少なくとも1本は動画を視聴することが明らかになりました。ですが、1~2本の動画を視聴する訪問者が77%なのに対し、3~5本の動画を視聴する訪問者が14%まで急降下していることも注目に値します。さらに少ないのは、1回の訪問で15本以上の動画を視聴するパワーウォッチャーの数(2.8%)です。 ![](/images/posts/a695400f8b/Video-Research-blog-graphic-2-1200x814.png) 地域別の傾向を深掘りすると、ひとつの動画戦略がすべてのパブリッシャーに通用するわけではない理由が見えてきます。 たとえば、アジア・太平洋地域のサイトは動画コンテンツを含むページの割合がもっとも高い(28%)一方で、ラテンアメリカの視聴者のほうが特定の動画をアクティブに視聴する時間が 63% 長くなっています。 全体の6.5%のページに動画があるラテンアメリカはパブリッシャーの平均エンゲージメント時間が 01:14 であるのに対して、アジア・太平洋地域ではページの 28% に動画があるにもかかわらず、動画 1 件あたりのエンゲージメント時間は 00:46 に留まります。動画のボリュームだけでは、テキストと同様、エンゲージメント時間は増加しません。 ## 視聴量とロイヤルティ 訪問者のロイヤルティを高めるのは簡単なことではありません。しかし私たちのデータによると、最初の訪問時点から動画の視聴を促すことに価値がありそうです。 サイトをはじめて訪問してから 24 時間以内に少なくとも 3~4 本の動画を視聴した新規訪問者は、同じ時間に多くのページを閲覧した訪問者よりも、その後 7 日以内に再訪問する可能性が大幅に高くなりました。従来の記事に動画コンテンツを追加することは、新規訪問者を再訪問者に変えるという点では、テキストのみよりも効果的なようです。 ![](/images/posts/a695400f8b/Video-Research-blog-graphic-3.png) サイトをはじめて訪問してから 24 時間以内に少なくとも 3~4 本の動画を視聴した新規訪問者は、同じ時間に多くのページを閲覧した訪問者よりも、その後 7 日以内に再訪問する可能性が大幅に高くなった ## 動画の消費とエンゲージメント 訪問者は関心を持たなければ、長く滞在することはない。これまでの調査でそう示されているため、平均エンゲージ時間に対する動画の効果も測りました。動画コンテンツを視聴した訪問者は、動画をまったく視聴しなかった訪問者よりも、1.5~2倍長くページにエンゲージしていることがわかりました。地域別にエンゲージメントを評価すると、ラテンアメリカでは動画があるページでのエンゲージメント時間がもっとも長く、動画がないページでのエンゲージメント時間がもっとも短かくなりました。北米ではテキストのみのページでのエンゲージメント時間が全地域のなかでもっとも長い00:25でした。 ![](/images/posts/a695400f8b/Video-Research-blog-graphic-4-1200x813.png) 動画のエンゲージメントがページのほかの部分とのインタラクションにどう影響を与えるか調べるため、スクロールの深さも調べました。動画コンテンツが視聴されたページでは訪問者は平均してさらに 33% スクロールしており、動画視聴はテキストコンテンツへのエンゲージメント(滞在時間)も高めることを示しています。数字で見ると、動画なしのページでは 2,312 ピクセルがスクロールされ、動画ありのページでは 3,095 ピクセルのスクロールがありました。 ## 動画エンゲージメントを育てるには 動画視聴者とページのエンゲージメントに関する分析から、私たちが得た主なポイントをまとめます: 最初の動画からはじまる 動画を 1 本でも視聴するサイト訪問者の割合を増やすことは、エンゲージメントを最大 2 倍まで高めることができます。動画戦略を見直す絶好のスタート地点です。 動画はテキストとのエンゲージメントを高める 動画とテキストは密接な関係にあります。動画コンテンツを視聴する訪問者は、動画をまったく視聴しない訪問者よりも1.5~2倍長くページに関与し、テキストのみのページを訪問する訪問者よりもはるかに再訪問する可能性が高くなります。 カジュアルな視聴者をコンバートするために体験をカスタマイズする カジュアルな視聴者を愛着をもつ視聴者に変えるには、その後の視聴を促進するユーザー体験が必要です。そのためのひとつの方法は、閲覧するデバイスに応じてコンテンツをカスタマイズすることです。 データと実験で最適な動画戦略をみつける データを使用して動画を実験することで、地域に最適な戦略を検証することができます。総エンゲージメント時間(Total Engaged Minutes)、開始回数と広告の離脱率などの指標に基づいて、もっともパフォーマンスの高い動画コンテンツを探りましょう。視聴率を最適化するためにパフォーマンスの高いページへの配置を実験し、古い動画を最新のコンテンツと組み合わせたり置き換えたりすることをためらわずに行いましょう。 --- ## スタートアップにより変革されるローカルビジネス URL: https://ximera.com/posts/fc95105fb0 公開日: 2024-05-14 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #60|Ikuo Morisugi| 2024.05.14 ![](/images/posts/fc95105fb0/jay-wennington-N_Y88TWmGwA-unsplash.jpg) Photo by [Jay Wennington](https://unsplash.com/ja/@jaywennington?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) on [Unsplash](https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/%E7%99%BD%E3%81%84%E9%99%B6%E6%9D%BF%E3%81%AE%E7%9A%BF-N_Y88TWmGwA?utm_content=creditCopyText&utm_medium=referral&utm_source=unsplash) # はじめに 日本の経済活動の大きな部分を担う[中小企業は約336万社存在し、日本の企業数の中99.7%](https://www.smrj.go.jp/recruit/environment.html)を占めています。従業員の規模も[約3310万人が中小企業で働いており、日本の従業員の7割が中小企業で雇用](https://www.smrj.go.jp/recruit/environment.html)されています。このように小規模な事業者が地域経済の発展においても重要な役割を果たしています。 一方で、従来から強大な資本を持つ大企業や外資系企業は拡大の一途を辿っており、三大都市圏以外にも広く店舗・工場・事業所が存在しています。これらの中小の事業者はそうした大企業や外資系企業と価格や商品で競争せざるをえない環境に巻き込まれており、独自性のあるブランドの確立、製品やサービスの品質改善、効率的な経営管理をしていく必要があります。 しかし、[個人経営や資本金の小さい企業が多く占める中小企業](https://www.stat.go.jp/data/e-census/2021/kekka/pdf/k_outline.pdf)では数人の従業員で運営されていることも多く、大企業や外資系のようにあらゆる面で大きな投資を行っていくことは難しいです。関係値の高い顧客に継続的にサービスや製品を使ってもらって、経営をやりくりするだけでほとんどのリソースがなくなり、経営効率の改善や新たな製品/サービスをはじめるには大きなハードルがあります。 こうした課題に対して、ローカルビジネスの効率化やサービス拡大を支援するスタートアップが出現しています。例えば、これまでは、Shopifyが中小のeコマースを可能にし、Uberがローカルレストランのデリバリーを可能にしてきました。近年ではさらにそういった領域からジャンルやカテゴリーを絞り、より業界にフォーカスして垂直統合のプロダクトを提供する[Vertical SaaS](https://baincapitalventures.com/insight/the-top-50-emerging-vertical-saas-companies-2023/)も数多く出現してきています。 また、本連載の前回でも取り上げた通り、 ソフトウェアのみを提供するSaaSは新たな設立数も減っており、今後のAIの進化によりそのビジネスモデルは大きく変化する可能性があります。 中小企業をターゲットとしたVertical SaaSもその例に漏れず、ソフトウェアだけでは解決できないフィジカルな領域も含めて、さらなる付加価値提供が必要となっています。今回は、特に飲食領域でソフトウェアとロジスティクスが統合されたEnd-to-Endのプロダクトを展開するスタートアップに焦点を当て、それぞれがどのようにローカルビジネスの変革を推進しているのかを詳しく見ていきます。 # コーヒーショップ向けAll-in-Oneサプライチェーン: Odeko [Odeko](https://odeko.com/)は、ニューヨークを拠点としたスタートアップで、中小規模の独立系コーヒーショップやカフェに特化した統合サプライチェーンプラットフォームを提供しています。
Odekoのプロダクトを使うと、コーヒーショップが日々必要とするコーヒー豆や牛乳や紙カップなどの必要在庫を予測し、マーケットプレイスで必要な分だけ注文ができ、各コーヒーショップへ在庫品の配送を完了させることができます。これにより、顧客のコーヒーショップはより少ない手間で日常の業務を行え、在庫過多や不足のリスクを最小限に抑えることができます。 Odekoが特徴的なのは、必要な在庫をB2Bのマーケットプレイスで発注した後、その在庫について「開店時間までにコーヒショップ店舗内の棚に並べておいてくれる」ことです。これを行うには、早朝配達が可能で、店舗と連携してドアロックを開けることができ、さらに棚に並べられるスタッフが必要です。そのためOdekoはこのサプライチェーンに関して、自前でデリバリートラックとドライバーを用意し、コーヒショップに開店前に入店できるフローを構築してしています。これらの仕組みにより、[1店舗あたり1週間あたり10時間の工数を削減でき、21%の売上原価の削減](https://odeko.com/)を実現しています。 このソリューションが功を奏しOdekoは[2年で年間売上を1億5000万ドル(約225億円)まで成長](https://www.thespl.it/p/from-zero-to-150-million-revenue)させました。2024年4月時点でOdekoは[10000以上の店舗](https://odeko.com/pages/about-us)に利用されています。 Odekoは2019年の創業当初は在庫予測ソリューションを提供するAIスタートアップだったのですが、スモールビジネスの事業者が真に課題としていることは在庫予測ではなく、自身が経営している店舗の運営効率を上げる(多くはコストダウン)ことだと気づき、在庫予測・発注管理・在庫管理・コスト分析・配送/配達まで行うAll-in-Oneの総合ソリューションへ変化させました。創業時から提供している在庫予測ソリューションも、顧客の購買パターンや市場動向を分析し、その情報を基に最適な発注が行えるように一連の機能の一つとして組み込まれています。 もし在庫予測を中心機能としてすえ続けていたら、Odekoはここまで大きな売上を作れなかったのではないかと思われます。よく事業やプロダクトがPMF(Product Market Fit)しているかが重要だと言われますが、Odekoは見事にピボットしてPMFを達成した事例だと考えられます。 # トップシェフのデリバリーを可能に: Wonder ニューヨークを拠点とするスタートアップのWonderは、味にこだわりのあるローカルレストランのシェフが作る料理を楽しむことができるデリバリー/店舗サービスを提供しています。Wonderのビジョンは、「どこにいても高品質な食事を提供すること」により、新しい食文化を創造することで、テクノロジーと料理の融合による新たなビジネスモデルを追求しています。 Wonderが特徴的なのは、「これまでUber EatsやDoor Dashなど既存のデリバリーアプリでは顧客体験の問題からデリバリーを提供してこなかったこだわりレストランの料理を、顧客が注文してから30分以内に配達完了できる」ことです。 当初Wonderは専用の移動式の[フードトラックを使用して、届け先付近まで移動しその場で料理を調理する](https://njbiz.com/cranford-based-wonder-rethinks-food-truck-strategy/)ことで、出来立て状態ですぐに配達し、レストランで食べるかのような品質を自宅で実現するというモデルでした。しかし2023年にそのモデルを変更し、各地域ごとに1箇所、調理と接客を行うロケーションを設置し、複数のレストランのメニューを同時に調理可能にし、そこからデリバリーとピックアップをできるようにしたことで、[ビジネスの初期の成功](https://www.linkedin.com/pulse/wonder-our-time-scale-marc-lore-fmxme/)につなげました。このセントラル方式の調理施設兼店舗はWalmartなど周辺地域に住む顧客がアクセスしやすい箇所に設置されています(2024年4月現在、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルバニアのみ)。これは以前流行した[ゴーストキッチン](https://business.nikkei.com/atcl/plus/00006/070800003/)と方式としてはよく似ていますが、Wonderはエンドユーザの注文プロセス、レストランシェフとのパートナーシップ、食材調達、拠点提供、配送まで一貫して提供する垂直統合のモデルであり、これにより品質が低く、配送が遅い、店舗毎に別々に配送料がかかるという従来の問題を解消しようとしています。 Wonderの配送モデルもOdekoと似ており、自社でデリバリーするトラックや配送ネットワークを構築し、[平均で注文から35分以内に配達を完了](https://www.wonder.com/)させています。 ビジネスモデルとしては、Uber Eatsのように料理ごとに課金されるペイ・パー・ディッシュモデルおよび[Wonder+](https://www.wonder.com/order/plus)と呼ばれる月額の有料サブスクを採用しており、各注文に対して直接課金を行い、商品代金と配送料を支払い(Wonder+加入者は配送料無料となる)ます。Uber Eatsと異なるのは、複数のレストランの複数のメニューを横断して一度に注文できる点で、これは上記のセントラル方式の調理施設のロケーションと配送ネットワークによって可能となっています。 Wonderは[2024年3月に7億ドル(約105億円)の大型の資金調達を実施](https://www.restaurantdive.com/news/Wonder-food-hall-raises-700-million-to-fund-expansion/710677/)しました。この資金は、さらなる調理の高速化、ソフトウェアの改善、新たなシェフや提供メニューの改善に充てられる他、2025年末までに対応ロケーションを現在の11から90まで拡大させていく計画を立てています。 # おわりに 本稿では、「スタートアップにより変革されるローカルビジネス」というテーマのもと、中小企業の潜在的な課題に対処し、新しい可能性を切り開くためにどのようなプロダクトが生まれているのかを取り上げました。米国では中小企業が直面する挑戦—大企業との競争、効率的な資源の管理、そして持続可能な成長の確保—は、スタートアップによる創造的かつ実用的なソリューションによって解決が図られつつあります。 Odekoは、サプライチェーンの最適化を通じて、コーヒーショップオーナーが直面する運営上の効率性とコスト問題を解決しています。一方、Wonderは高品質な食事を届けることで、顧客体験を根本から変え、ローカルレストランが新しい市場にアクセスする手助けをしています。これらの企業は、地域経済における中小企業の持続可能な成長を支えるとともに、それぞれの業界において新しいビジネスモデルの基準を築いています。 いずれの会社も初期のサービスは顧客の需要やコスト構造に問題があり、1-2年程度で大きくモデルの変更を行ったことで、事業が拡大する方向へ向かっています。顧客のニーズを深く理解し、それに基づいてサービスを大きく変えていき、技術を活用してオペレーションを合理化し、顧客体験を向上させることが、持続可能なビジネスモデルを築く上で不可欠です。メディア企業にとっても、顧客とのエンゲージメントを高め、よりパーソナライズされたコンテンツを提供するために、新しいビジネスモデル、技術、アプローチを採用することが求められています。 中小企業が直面する日々の挑戦に対する創造的な解決策を提供することで、これらの企業はただビジネスを行うだけでなく、社会における実質的な変化をもたらしています。これは、メディア業界が目指すべき方向性であり、持続可能で影響力のある成長を実現するための示唆を得られるはずです。 --- ## 2年後に5倍のエンゲージメントもたらすヘッドラインテスティング。その長期分析結果 URL: https://ximera.com/posts/ee30a483a2 公開日: 2024-05-07 著者: JOSH SCHWARTZ by JOSH SCHWARTZ([原文](https://blog.chartbeat.com/2021/02/24/headline-experimentation-time-value/))2024.05.07 Chartbeatの記事タイトルA/Bテスト機能「ヘッドラインテスティング」はグローバルパートナーの間でますます人気になっています。世界最大手のパブリッシャーのなかにはトップページの最適化に欠かせないと考えているところもあり、週に1,000回以上テストを実施しているサイトを見たこともあります。 [ヘッドラインテスティング](/posts/1d3449282a)は2つの方法で価値を提供します。ひとつは定量的な観点で、テストをした各記事のエンゲージメントを直接的に高めること。もうひとつはそのデータに基づいて編集チームがより良いタイトルの書き方を学べることです。 私たちはこの2つ目のユースケースに関連して、定期的に「ヘッドラインテスティングの価値は時間の経過とともに低下するのか」聞かれます。数カ月間ヘッドラインテスティングを実施すると編集者がどんな見出しが効果的か理解するようになると仮定すれば、テストを続けることの重要度は低くなり、次第にヘッドラインテスティングが減価償却資産になる、と考えての質問でしょう。 しかし私たちの調査によれば、ヘッドラインテスティングの価値は時間とともに高まるばかりか、エンゲージメントを着実に促進しつづけることも示唆されています。 ## ヘッドラインテスティングの質を長期分析 ヘッドラインテスティングの価値が減っていくのか調べるため、私たちはこの機能のローンチ以来実施されてきた100万以上のテストデータを調べました。 まずテストによる改善が時間の経過とともに変化するかを見てみます。効果を定量化するために2つの指標に注目しました: 1. もっとも高いエンゲージメントを引き出すタイトルになった非オリジナルタイトルの割合 2. 勝者タイトルのエンゲージメントの平均上昇率 この2つの指標を用いると、ヘッドラインテスティングの効果は時間の経過とともにほぼ一定であることがわかりました。あるサイトがヘッドラインテスティングを使いはじめた当初は、テストの約65%でオリジナルではないタイトルが勝者となり、平均上昇率は約45%でした。 ![](/images/posts/ee30a483a2/Data-by-Chartbeat-01-Average-Rate-of-Non-original-Headlines-Winning2x.png) オリジナルでないタイトル(オリジナルのAに対してのBタイトル)の平均勝率 記事タイトルのテストをする文化がはじまった直後からそうなる事は予想できていましたが、下のグラフに見られるように2年が経ってもその割合は変わっていません。 ![](/images/posts/ee30a483a2/Data-by-Chartbeat-02-Average-Lift-in-Engagement2x.png) エンゲージメントの平均上昇率 このことから、テストがエンゲージメントを引き上げつづけているのは間違いありません。編集者は時間をかけてオリジナルの見出しを書くのがうまくなっていると言えますが、別の見出しを書くのもうまくなっています! しかし、テストをする活動自体も考慮すると、話が変わってきます。 ## 記事タイトルをテストする文化をつくる 私たちは、ヘッドラインテスティングでもっとも成功しているユーザーは重要な記事タイトルのアイデアをブレーンストーミングすることに特化したSlackルームやチームミーティングなど、[テストを文化に組み込んでいるユーザー](https://blog.chartbeat.com/2019/07/16/deseret-news-how-headline-tests-impacted-culture/)であることを発見しました。テストをすればするほどそれにまつわる文化が強くなっています。 文化の構築には時間がかかります。しかし、あるサイトでヘッドラインテストを実施する人の数は、平均してテスト開始1年目に約44%、2年目にはさらに49%増えることをデータが裏付けています。 ![](/images/posts/ee30a483a2/Data-by-Chartbeat-03-Average-Number-of-Users-Running-Tests2x.png) テストをする平均ユーザー数 テストをする人が増えればテストの数が時間の経過とともに増えるのは当然なのですが、私たちは実際にテスト数が大幅に増加しているのを目の当たりにしています。正確にいえば、ツールを使用したサイトの最初の2年間で実行されたテストの数は411%増加しています。 ![](/images/posts/ee30a483a2/Data-by-Chartbeat-04-Average-Weekly-Tests-per-Site2x.png) サイトあたりの週間テスト平均回数 このデータとテストの上昇率が一定であるという事実を組み合わせるとおもしろい発見があります。平均的なパブリッシャーは、ツールを使いはじめたときと比べて、2年後に5倍以上のエンゲージメントをヘッドラインテスティングで促進しているのです。 ## タイトルテストの持続的な効果 冒頭で紹介した「ヘッドラインテスティングの価値は時間の経過とともに低下するのか」という疑問は、読者へのインパクトがもっとも高い最適化に確実に時間を割く必要があるグローバルパブリッシャーにとってとくに重要です。この分析によって記事タイトルのテストには具体的なメリットがあることがおわかりいただけたと思います。 その他の重要なポイントをいくつか挙げましょう。 1. 私たちの分析はヘッドラインテスティングが引きつづきエンゲージメントを促進していることを示唆している。編集者は時間をかけてオリジナルのタイトルを書くのが上手になっているだけでなく、魅力的なバリエーションを作る能力も向上している。 2. 一貫性が重要。ヘッドラインテスティングの価値はテストの数が増えても衰えることがない。それどころか長期的にエンゲージメントを高めている。 3. ヘッドラインテスティングの文化と持続的なエンゲージメントとの関連も見られる。チームによってテストが推進され、分析され、反復されればされるほど、その結果は長期にわたってより強固なものとなる。 --- ## Q1 2024:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/7117cbbab1 公開日: 2024-04-25 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2024/04/11/global-audience-insights-first-quarter-2024/))2024.04.25 Chartbeatネットワーク内の2024年第1四半期(1〜3月)の調査で得られたグローバルオーディエンスのインサイトを共有します。中央アジアでは平均エンゲージ時間と検索トラフィックが増加、アフリカではソーシャルトラフィックが減少し、読者ロイヤルティは北欧が最高を維持しました。 *これまでのインサイトと比較する:[Q4 2023](/posts/b75e41d1fd) / [Q3 2023](/posts/4cac6d716a) / [Q2 2023](/posts/41b6aec21d) / Q1 2023* ## 中近東と中東欧でもっとも高いエンゲージ時間を記録 中東の読者の平均エンゲージ時間は40秒で、もっともエンゲージメントの高い読者でした。次いで、中東欧が37.7秒、アジア太平洋が29.8秒でした。 ![](/images/posts/7117cbbab1/Untitled.png) ## アフリカと北米でモバイルトラフィックが増加 東南アジアのパブリッシャーは引きつづきモバイルからのトラフィックが圧倒的に多く、Q1にはページビューの 87% がモバイルからのものでした。中央アジアとアフリカがそれぞれ 84% と 79% で続いています。 ![](/images/posts/7117cbbab1/Untitled-1.png) モバイルデバイスからのページビューが 69% 未満の地域はありませんでした。 ## 中央アジアと中東で検索トラフィックが増加 Q1の中央アジアのページビューの 45% は検索によるもので、Q4の 38% から増加しました。中東でも検索からのページビューが増加し、34% から 37% に上昇しました。 ![](/images/posts/7117cbbab1/Untitled-2.png) 検索エンジンからのページビューの割合が前クオーターより減少した地域はありませんでした。 ## ソーシャルからのページビューは減少したものの、プラットフォームでの閲覧は増加 ソーシャルネットワークからのページビューは、24% から 19% に減少したアフリカを除き、ほとんどの地域で1-2%減少しました。北米と東南アジアは前クオーターから変動ありません。 ![](/images/posts/7117cbbab1/Untitled-3.png) ソーシャルネットワークからのトラフィックは減少していますが、ソーシャル動画の分析プラットフォーム[Tubular Labs](https://tubularlabs.com/)のデータによると、Facebookのようなプラットフォームでの再生回数は増加しています。昨年のQ1からQ4にかけて、メディアが所有する動画の視聴は平均11%増加し、エンゲージメントは7%増加しました。 ## ロイヤルティがもっとも高いのは北欧と中東欧 ロイヤル読者によるページビューの割合がもっとも高かったのは北欧で48%でした。中・東欧は44%で続きます。 ![](/images/posts/7117cbbab1/Untitled-4.png) 前クオーター比でもっとも増加したのはアフリカで、27%から29%へ改善しています。 ## Q1のインサイトのポイント 1. 多様なフォーマットが平均エンゲージ時間を向上させる 今年の後半はアメリカ大統領選やパリオリンピックのような大きなイベントが開催されるため、ライブブログ(リアルタイム更新)はパブリッシャーにとって価値ある手段になります。[ライブブログのエンゲージメントに関する最近の調査](/posts/58cc0c3dc0)によると、2023年、Chartbeatネットワーク内の全コンテンツの平均エンゲージ時間は28秒でしたが、同期間のライブブログだけに限定すると、平均エンゲージ時間の中央値は48秒に跳ね上がりました。 1. 検索は成長しつづけている 検索エンジンからのページビューはほとんどの地域で増加しました。昨年のQ3にはじまった増加トレンドが継続しています。 1. オーディエンスはモバイルファースト どの地域でもサイト訪問の少なくとも69%はモバイルデバイスによるもので、そのうち3地域では79%以上です。 --- ## データに基づく記事タイトルのテストで、読者のエンゲージを得る最適化 URL: https://ximera.com/posts/1d3449282a 公開日: 2024-04-17 著者: MAYA JAAFAR by MAYA JAAFAR([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/07/08/headline-tests-and-experimentation/))2024.04.17 グローバルパブリッシャーやクリエイターはメディアのトップページに訪れる読者をより惹きつけるためChartbeatの[ヘッドラインテスティング(Headline Testing・記事タイトルのA/Bテスト)](https://chartbeat.jp/products/optimization/)を利用しています。苦労して作ったコンテンツへの入り口になるトップページは、実験的な試みだけでなく質の高い読者とのインタラクションを増やすための大きなチャンスであるとChartbeatは考えています。 私たちはより質の高いインタラクションを増やす手段として、記事タイトルのテストと読者エンゲージメントの強化との関連性をさらに追求するため、下記についてさらに深く掘り下げる価値があると考えました。 - トップページでパフォーマンスが高い記事タイトルのデータ分析 - 「より多くの読者を惹きつけるために何が必要か」という重要な問いに、記事タイトルの最適化を役立てる方法 - 記事タイトルのテストに適した組織のあり方 ## まず、そもそもなぜ記事タイトルをテストするのか? Chartbeatのデータによると、テストを実施するだけで62%の確率でより多くの読者を記事に誘導することができます。テストをするのとしないのとには、かなり大きな違いがあります。なぜでしょうか。 別バージョンの記事タイトルが「勝利」した場合、クリック数は平均78%増加します。しかしこれはクリックだけを増やして読者と記事の深いエンゲージには至らない質の低いクリックになるケースもあるため、クリック後のエンゲージ時間も考慮します。すると、記事タイトルのA/Bテストは71%も質の高いクリック(Quality Clicks: エンゲージ時間が15秒以上のクリック)を生み出すことがわかります。エンゲージメントの向上は読者に恩恵があるだけでなく、[ロイヤルティを構築する大きなチャンス](/posts/eb6e537e28)でもあるのです。 Chartbeatの記事タイトルのA/Bテスト機能であるヘッドライン・テスティングは、あなたのサイトのトップページですぐに行うことができます。改善が必要な記事タイトルを視覚的にマーカーで示し(下のスクリーンキャプチャを参照)、別のダッシュボードを開くことなくその場ですぐにテストを実行できるのです。これはトップページ、一覧ページ、記事ページ用のオーバーレイ機能の[ヘッズアップディスプレイ(HUD)](https://chartbeat.jp/products/optimization/)を使って行われます。目標は、エンゲージメントを高める小さな調整のために、あなたのキュレーションのリアルタイム指標にしてもらうことです。 ![](/images/posts/1d3449282a/HUD2x-1024x683.png) ## トップページで成功する記事タイトル トップページで成功する記事タイトルの構造を理解するために、約10万件のA/Bテストと25万件の個々の記事タイトルの言語的特徴を分析したところ、ある特定の単語がパフォーマンスに影響していることがわかりました。 たとえば、"what "や "where "のような疑問詞、数字、引用、最上級語(bestやworstなど)は、読者が15秒以上その記事にエンゲージする質の高いクリックの可能性を高めます。対照的に、疑問符や時間言及(tomorrowやSaturdayなど)を使用すると、エンゲージメントが低下する可能性があります。 ![](/images/posts/1d3449282a/Headlines2x.png) ただし、ひとつ注意点があります。読者とコンテンツは固有のものです。データはより良い記事タイトルを作るための参考にはなりますが、指標はあくまであなたのニュース判断を補うためのものであり、それに取って代わるものではありません。これらの調査結果はあなた自身の実験の出発点として使用することをお勧めします(そして、この調査は英語の記事で行われたことにも注意が必要です)。 ## これらのヒントを実際に試してみる では、このヒントはテストにどう応用できるでしょうか。データに基づいたテストは、テストしたい記事タイトルを特定することからはじまります。まず、もっともインパクトがあるだけでなく、限られた時間で最大限に効果を出せる記事を選ぶことが重要です。これらはテストの重要なヒントです: 1. トラフィックの多いエリアでテストする もっとも多くの読者が目にする記事をテストすることで、もっとも大きなインパクトが期待できます。トップページの1,600ピクセルより下(つまりファーストビューより下)のエリアでテストしても、必要な結果を得ることはできません。[モバイルから直接アクセスする読者が増えている](https://blog.chartbeat.com/2020/01/23/mobile-homepage-optimization-content/)ことを考えれば、トップページの最適化はさらに重要です。 1. アンダーパフォーマーを最適化する これはChartbeatがなくてもできます。アナリティクスで全体的な不振を指摘することができますが、それは読者がもつ期待と実際のタイトルにずれがある(読者の期待とタイトルが表現する情報に不一致がある)ためかもしれません。Chartbeatがあれば、[ヘッズアップディスプレイ](https://chartbeat.jp/products/optimization/)を利用して読者とタイトルのずれが生じている部分を正確に把握することができます。 1. 価値の高いジャーナリズムに時間を割く インパクトのあるジャーナリズムと読者の期待のずれを修正することはとくに重要です。ニュース速報はクリックを増やす傾向がありますが、より深く、調査的なジャーナリズムの記事ではそれが難しくなります。このような記事の制作には多くの時間を費やしているでしょうから、もっとも魅力的なタイトルにするためのテストにも同じくらいの時間を費やす価値があるのです。 --- ぜひ実際のヘッドライン・テスティングをご覧ください。[Chartbeatの無料デモをお申し込む](https://lp.chartbeat.com/chartbeat-publishing-contact?hs_preview=fvINtjmO-5689557214) --- テストする場所を決めたら、Chartbeatユーザーのための追加ヒントをいくつか紹介しよう: 1. 定期的にテストし、実用的な気づきを得る Chartbeatのヘッドライン・テスティングには、同時実行数の制限がありません。常に読者の行動から学ぶ機会を作ることができます。Chartbeatの調査によると、5つのバリエーションを用意したテストで勝利したタイトルは、平均的なタイトルよりもCTRが50%以上高いのに対し、標準的な2つのバリエーションのA/Bテストでは23%の効果に留まります。つまり、テストする選択肢は多ければ多いほど良いということです。 1. 早まってテストを止めない テストの開始後すぐに1つのタイトルがリードを奪うと、そこでテストを止めたくなるかもしれません。しかしテストの途中で潮目が変わり、最初のリードがなくなるケースをよく見かけます。読者層と同じように結果も多様になる可能性があるため、テストは最後までやり通しましょう。 1. 結びつきがタイトルの共通性を指し示すこともある 2つの素晴らしいタイトルが同じようなレベルのエンゲージメントを集めている可能性があります。同じような結果が頻繁に出る場合は、テストしている記事タイトルが似すぎているのかもしれません。 ![](/images/posts/1d3449282a/Headline-Testing-Results-NEW-1024x683.png) 簡単なヒント:ヘッズアップディスプレイのポップアウトメニュー、または下部の「*Headline Testing Results*」を選択するか、Chartbeatの管理画面・左側のナビゲーションから最適化タブの「*Headline Testing*」を選択すると、ヘッドラインディスプレイからヘッドラインテストの結果を見ることができます。テクニカルサポートについては、[ヘッドラインテストガイド](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)をご覧ください。 1. テストする読者の特徴に注意する Chartbeatのデータによると、トップページの読者は通常、ロイヤルティが高く、訪問は頻繁で、そのページに何を期待できるか知っているのに対し、ソーシャルからの訪問者は新規の読者で、最新情報に興味をもっている傾向があります。両者は異なる記事タイトルを好む可能性が高いため、読者に応じてタイトル戦略を検討しましょう。 1. 効果的な戦術を把握する 何がうまくいっているかモニターすることが重要です。今回の調査結果を出発点にテストを行い、実際のエンゲージメントにつながった記事タイトルを記録して、この調査結果が自分のメディアの読者にに当てはまるかどうかを確認しましょう。 Chartbeatのユーザーは、CSVでデータをエクスポートすることで、テスト結果をさらに詳しく分析することもできます: ![](/images/posts/1d3449282a/screenshot-2024-04-16-16-19-52.png) Summary Reportは、あなたのサイトに最適な記事タイトルのバリエーションの数、およびもっとも多く・もっとも優れたテストを実行しているユーザーまたはセクションに関する洞察を提供します。 Variant Breakdown Reportは、実行したすべてのテストにおいて、すべての記事タイトルのバリエーションがどんなパフォーマンスを示したかの内訳を提供します。このオプションは、文字数や言語など、より良いパフォーマンスを出すタイトルの特徴を掘り下げる方法だと考えてください。 ## ヘッドライン・テスティングの効果は使い方次第 ヘッドライン・テスティングは、どれだけ組織的に活用されるかで、その効果が変わってきます。チームが協力してヘッドライン・テスティングに取り組んだ場合、エンゲージメントデータだけでなく、組織の文化にも改善が見られました。 ![](/images/posts/1d3449282a/Chartbeat-2019-Case-Study-Deseret_slack02.png) これまでも北米ユタ州の[Deseret Newsがヘッドラインテストをゲーム化し(上図)、平均クリック率を45%増加させた方法](https://blog.chartbeat.com/2019/07/16/deseret-news-how-headline-tests-impacted-culture/)などいくつかの例を紹介してきました。その他は[ブログ](https://blog.chartbeat.com/category/customer/)で見ることができます。 ## ヘッドライン・テスティング戦略を成功させるポイント Chartbeatのデータから、ヘッドライン・テスティングはトップページを読者がより深く読むための重要な入り口として強固なものにするもっとも効果的な方法の一つであることがわかりました。その方法をまとめます: 1. テストが必要な場所を特定する もっとも知識が必要とされる記事タイトルの選定にあたり、時間を最大限に活かしましょう。Chartbeatユーザーのために[ヘッズアップディスプレイ](https://chartbeat.jp/products/optimization/)はもっとも実用的なデータをトップページや記事ページに表示できるように設計されています。 1. 視聴者を知る テストするタイトルを特定したら、特定のタイプのコンテンツに対するライティング方法が、万能のアプローチとは限らないことを考慮する必要があります。長期的なタイトル最適化戦略の参考となる、より大きなデータセットが存在するように、頻繁にテストを行うことが重要なのはこのためです。 1. テストを成功させる ワークフローの一部となるまでは、テストの効果を確認するのは簡単ではありません。読者を一番よく理解しているのはあなたのチームですので、このテストが良い判断の妨げにならないようにしましょう。 1. コラボレーションが鍵 別の部署やほかのチームとの意見交換・ブレストから、テストの遅れや惰性を防ぐために行われるプロセスのゲーム化まで、コラボレーションのあらゆる利点を目にしてきています。 --- ## ロイターとニューヨーク・タイムズが、ニュースレターでどうロイヤルティ・サブスク・収益を向上させているか URL: https://ximera.com/posts/6d130934a7 公開日: 2024-04-08 著者: Chartbeat by Chartbeat Staff([原文](https://blog.chartbeat.com/2024/03/25/how-reuters-and-the-new-york-times-use-newsletters-to-drive-loyalty-subscriptions-revenue/))2024.04.08 ニュースレターはオンラインの雑踏をすり抜け、直接、そして有意義に読者を惹きつける価値あるツールでありつづけています。Chartbeatのブラッド・ストレッチャー(Brad Streicher)は、ニューヨークで開催されたイベント「Audiencers Festival」で、ロイターのエレイン・ピニアット(Elaine Piniat, Reuters)とニューヨーク・タイムズのマヤ・ネリア(Maya Neria, The New York Times)と対談し、ニュースレターの専門家である2人から話を聞きました。 語られたのは、編集チームとビジネスチームの橋渡し役としての役割、ニュースレターの成長とサイトのKPIとの関連付け、そして彼らの課題についてです。 ![](/images/posts/6d130934a7/IMG_5933-1200x675.jpg) ## まず、あなたの役割から教えていただけますか? マヤ(ニューヨーク・タイムズ):私はメッセージングのプロダクト・ディレクターです。ここでいうメッセージングは、プッシュ型とメール型の両方を指します。私たちの仕事は、ビジネスサイドとニュースルームのメール戦略の橋渡しをすることです。 ニューヨーク・タイムズは150以上のニュースレターを発行していて、そのカテゴリーは多岐にわたります。フォーマットもさまざまです。受信箱で完結するタイプのものもあれば、[サイト上のジャーナリズムとのエンゲージメントを最適化すること](/posts/48cd31afa6)にフォーカスしているものもあります。とくにモバイルの場合はスペースが限られるので、ニュースレターをサイトの延長として、また読者のためにサイトをパーソナライズする方法として捉えています。 エレイン(ロイター):私はロイターのニュースレター読者・収益戦略マネージャーです。エディトリアル、プロダクト、デザイン、セールス、マーケティング、データなど、ニュースレターに携わるさまざまな部署との橋渡し役を担っています。ロイターに入社した当初、ニュースレターにフルタイムで携わる社員はわたし一人でしたが、現在はこれら全部門の社員で構成される横断チームがあり、わたしの編集部門のカウンターパートとしてニュースレター編集者を置いています。 わたしが一緒に仕事をすることがもっとも多いのは編集と営業の2部門です。編集サイドでは、チームと協力してテンプレートの作成、A/Bテスト、アンケート調査とその結果のレポートなどを行っています。営業面では、プランナーやセールスの担当者と一緒に価格設定やデータ、売り込みのためのオーディエンス情報の提供などを行っています。 ロイターの目標はサステナブルビジネス、自動車、健康、法律といった分野のプロを惹きつけることです。基本的に特定のトピックを深く取材し、それをニュースレターと結びつけています。 ## ニュースレターの成長とサイト自体の指標をどう結びつけていますか? マヤ(ニューヨーク・タイムズ):メールは検索経由で来たであろう読者を惹きつけるうえで、ますます大きな役割を果たしていると思います。そして、わたしたちはメールが読者の状況を変えるテコになるという点でとても成功しています。多くの分析を行い、コンバージョンとリテンションの両方を増加させることができました。それは読者をサイトに誘導するメールにも、受信箱で完結するメールにも共通しています。わたしたちは購読者が摩擦を感じないことが望ましいと考えているので、購読者限定のニュースレターはもっともプレミアム感のあるものにしています。 無料のニュースレターでは読者をサイトに誘導しようとする傾向があります。ニュースレター側のKPIについては、先行指標としてメールのクリック率を見ています。それから、週間アクティブユーザーを確認し、コンバージョンとリテンションを見ています。なのでニュースレターを発行するたび、またフォーマットのA/Bテストを行うたびに、KPIの変動を確認できますし、実際のメールによる影響を特定することができるのです。 エレイン(ロイター):ロイターの場合、わたしが入社した当初は開封率やクリック率といった表面的な指標にフォーカスしていました。それから、ニュースレターをもっと意味あるものにするために時間をかけてサイト指標に目を向けるようになりました。訪問数に対する目標を設定し、ニュースレターからサイトに遷移したユーザーからの収益を推定しています。その影響には細心の注意を払っています。クリック数と訪問数はわたしたちにとって重要です。過去2年間で、クリック数は39%、ページビューは50%増加しています。 またニュースレターの登録者は、平均的な訪問者よりもサイト上でよりアクティブであることもわかっています。サイトの滞在時間が25%長く、ユーザー1人あたりのページ数が75%多く、直帰率は低いのです。エンゲージメントや最終的なロイヤリティを測定する上で核となるこれらの指標はすべてニュースレター登録者の方が高いのです。ロイヤリティをよりよく測る術はまだ模索中ですが、ニュースレター登録者に価値があることは確かです。 ## ニュースレターにパーソナライゼーションを使いたいと考えているパブリッシャーに何かヒントはありますか? マヤ(ニューヨーク・タイムズ):本当のチャンスは、読者とコンテンツをいかにマッチさせるかにあると思います。もちろん、とんでもなく手間がかかるので、1対1ではなく、1対多のパーソナライゼーションモデルを開発しています。つまり、「登録ユーザーと購読ユーザーで何が違うのか」と捉え直せば、パーソナライゼーションがもっと簡単になります。 そこで、読者をサイトに誘導することが目的ではない購読者限定のニュースレターの例に戻りますが、(購読者に向けて)サイトに誘導することが目的のニュースレターを作るのです。そして、そのメールで購読者をサイトに誘導できた記事を、ダイジェストのプレビュー版にして登録ユーザーに送るのです。これが、1対1ほど難しくないパーソナライズの方法です。 ## 成功については話してきましたが、課題についても話せますか エレイン(ロイター):リソースを確保するのは、時に難しいことです。ニュースレターは、他部門のチームが行っている仕事のほんの一部ですから、ニュースレターのビジョンを持っていても、期待していたような期間で実現できないこともあります。 もうひとつは、データの正確さと真実性です。開封率、クリック率、そしてもしあなたがSailThruのようなツールを使っているなら、AppleのMail Privacy Protectionやボットをフィルタリングする指標などです。その指標ってどれほど信用できます? その情報を共有するのか、いつ共有するのか。指標の裏に隠された真実を伝えて、ニュースレターに取り組んでいる人々のやる気を削ぎたくはありません。 マヤ(ニューヨーク・タイムズ):ひとつは、ビジネスニーズとユーザーニーズを把握すること、そしてどうすればそれらのニーズを一致させることができるかを考えることです。ビジネスでは、できるだけ多くの人をサイトに誘導したい場合がありますし、ニュースレターの編集者と仕事をしている場合、彼らは最高のジャーナリズムを届けたいのです。そうした緊張関係をうまく調整することが本当に重要なのです。 製品という観点でもうひとつ重要なのは、1%、2%、3%の改善をもたらす小さなA/Bテストを行うような、漸進的な改善を行うだけの世界にとらわれず、より大きく考え、より大きな、潜在的にリスクのある領域に実際に踏み込む余地をいかにして与えるかということだと思います。A/Bテストを続け、少しずつ良くしていく方がずっと簡単です。位置情報のパーソナライゼーションをサポートするインフラを構築し、文化を変える必要があると思っています。 --- ## 配信チャネルがいかに読者ロイヤルティに影響するか URL: https://ximera.com/posts/eb6e537e28 公開日: 2024-04-02 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/02/05/reader-loyalty-channels-devices/))2024.04.02 私たちは何がパブリッシャーのサブスクリプションを成長させるのか、読者ロイヤリティとの関連につき、多くの時間をかけて調査をしてきました。ここでロイヤルティと同じように重要なのが、読者へのアプローチ方法です。 # もはやロイヤルティはデスクトップだけの話ではない まず使用デバイスに関してです。信じられないかもしれませんが、Chartbeatのグローバルパブリッシャーのデータを分析すると、ロイヤルティはデスクトップよりもモバイルの方が高くなっています。 ## モバイル訪問者とデスクトップ訪問者のロイヤルティを比較 モバイルからの訪問者の方がロイヤルティが高いことは全体を通して言えることです。私たちは24時間365日いつでも何が起こっているかを知ることができるモバイルのアクセシビリティがこれを後押ししていると見ています。これはデスクトップトラフィックがなくなるという意味ではありません。ただ、一日中持ち歩くモバイルデバイスに対して、デスクトップは一ヶ所(たとえば職場や自宅)でしか使われないことが多いというだけのことです。 ![](/images/posts/eb6e537e28/2020-How-distribution-channels-drive-loyalty-and-subscriptions-770x860.png) 流入経路別にモバイルとデスクトップの週間訪問者数を見ると、アプリで直接アクセスする訪問者はフェイスブックやグーグル検索からの訪問者よりも6倍近く訪問頻度が高い=ロイヤルティが高いことがわかりました。 ![](/images/posts/eb6e537e28/2020-How-distribution-channels-drive-loyalty-and-subscriptions2-770x860.png) [モバイルの訪問者数が20%以上の勢いで伸びつづけていた時期](https://blog.chartbeat.com/2019/04/29/mobile-ux-improve-subscriber-revenue/)を経て、今またパブリッシャーがモバイルに注力していることを考えれば、この結果は理にかなっているといえるでしょう。 ## 訪問者がアプリを開くきっかけとロイヤルティへの影響 ウェブ上のディープリンクやダイレクトトラフィックからアプリを開く訪問者の訪問頻度は、プラットフォームからの訪問者より3倍高くなっています。 ![](/images/posts/eb6e537e28/2020-How-distribution-channels-drive-loyalty-and-subscriptions3-770x860.png) 現時点で、フェイスブック、グーグル検索など、主要プラットフォームのロイヤルティはほとんど変わりません。 ![](/images/posts/eb6e537e28/2020-How-distribution-channels-drive-loyalty-and-subscriptions4-770x860.png) # 配信チャネルとロイヤルティの調査結果がクリエイターに意味するもの 「サブスクリプションはロイヤルティを高める行為であり、読者はお金を払う前に出版物に対するロイヤルティや親近感を高める何らかの方法が必要です」と、Chartbeatのプロダクト・エンジニアリング・データサイエンス部門のチーフであるジョシュ・シュワルツは、読者収益とロイヤルティについて[ニーマンラボ](https://www.niemanlab.org/2020/01/publishers-move-beyond-the-metered-paywall/)に語っています。 この記事で説明したデータから、パブリッシャーはこのようなロイヤルティ育成の行動変化をますます意識するようになっており、複数のチャネルを利用して時間をかけて読者との関係を深めていることがわかります。 今回のポイントをまとめましょう。 ### アプリ体験のシフトが示唆するロイヤルティへの新たな道 このデータは、ロイヤルティの高い読者がパブリッシャーのメディアに直接アクセスしたいと思っていることを示唆しています。これは、アプリやモバイルへのダイレクトのアクセス体験を改善することに価値があることを示す大きな証です。とは言ったものの、モバイルのサイト体験の摩擦は、ロイヤルの読者でさえもサブスクリプションに近づけない大きなハードルとなっています。 ### ロイヤル読者層において、プラットフォームは依然として重要である アプリへのダイレクトアクセスを好む訪問者のパターンには、おもしろい変化が見られます。ロイヤルの読者は相変わらずグーグルやフェイスブックからサイトに訪問するのです。[場合によっては](https://blog.chartbeat.com/2019/10/17/facebook-traffic-recovery/)、プラットフォームの存在を優先すべきケースがまだあるという調査結果があります。 ### デバイスベースのロイヤルティはトレンドが重要 モバイル訪問者のロイヤリティは急速に高まっています。[今日のモバイル・ファーストの読者](https://blog.chartbeat.com/2018/07/12/the-flip-to-mobile-first/)について考えればこのような調査結果も納得です。ですが、デスクトップへの対策をやめてはいけません。毎日デスクトップの利用シーンはあるのですから。 --- ## AI時代に変化するSaaSビジネスモデル URL: https://ximera.com/posts/c3f21c82f0 公開日: 2024-03-29 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #59|Ikuo Morisugi| 2024.03.29 ![](/images/posts/c3f21c82f0/undraw_investor_update_re_qnuu.jpg) # はじめに 近年、AI技術の急速な進展は、産業界全体に革新をもたらしています。中でも、SaaS業界は、AIの進化によって特に大きな変革を迎えています。これまでのSaaSのビジネスモデルは、主にサブスクリプションベース、月額もしくは年額利用料金に基づいていましたが、AIの台頭はこれらのモデルを再考させるきっかけとなっています。本稿では、AI時代におけるSaaSビジネスモデルの変遷に焦点を当て、背景、現在直面している課題、そして将来的に予想される変化について取り上げていきます。これにより、業界関係者が変化に適応し、新たなビジネスチャンスを捉えるための理解を深めることが目的としています。 # 背景 AIの急速な進化と普及は、SaaS業界におけるビジネスモデルの変化を加速させています。この背景には、以下の要因が考えられます。 1. AIのコスト低下とサービスの飽和:技術の進歩により、AIのコストは顕著に低下しており、これにより多くの企業がAI技術を取り入れることが可能になっています。例えば、OpenAIのAPIサービスは、度々[APIリクエストあたりにかかる料金を下げています](https://openai.com/blog/new-embedding-models-and-api-updates)。同時に、SaaS市場にはソフトウェア単体で価値を提供するサービスは増え続け、ソフトウェアのみで大きな差別化をはかることが困難になったこともあり[新規SaaSの参入数は減少](https://explodingtopics.com/blog/number-of-saas-companies)してきています。 2. AIによる最適なサービスの取捨選択:AIの進化は、ユーザーが自身のニーズに最適なサービスを簡単に見つけられるようにする一方で、有償のSaaS提供者に対してはより高い価値提供を求めることになります。ChatGPTのようなAIアシスタントは、ユーザーの複雑な要求を理解し、適切なサービスを推薦することができるため、様々なサービスを横断的に比較しベストな提案をできるようになります。ある程度要件が固まっていることが前提となりますが、現在でもChatGPTに「XXX人のエンドユーザに対してXXXの用途、予算XXX万円以内で、Eコマース向けのマーケティングオートメーションのおすすめツールを提案して」と問いかければそれなりの回答が返ってきます。よりツール提案に特化したLLMができれば今後さらに精度高くユーザ需要に答えてくれるはずです。 3. ソフトウェアのコモディティ化:AI技術の普及は、従来は専門のSaaSサービスが提供していた簡易的な機能を内製化する動きを加速させています。例えば、Google Spreadsheetのようなツールでスクリプトを組んで行っていたようなタスクは、ChatGPTにデータ処理を行わせれば可能になっています。AIが進化していくと外部のSaaSを有償で使うよりも、AIがスクラッチで開発したツールの方が早く・コストも低い状態を実現する可能性があります。自社開発 vs 外部サービスの図式は従来までは自社開発はコストが高く・遅いというイメージでしたが、AIの進化により自社開発が外部サービスに対抗できるオプションになりえます。 このようなAIネイティブな時代の到来は、SaaSビジネスにおいて以下のような新たな課題を生むことになります。特にビジネスモデルで大きな変化があるのは、従量課金モデルの台頭と固定費モデルのSaaS料金の価値低下です。 OpenAIの料金体系に見られるように、AI技術を取り入れたサービスでは、B2C向けはChatGPT Plusのように月額料金制が採用されるものの、B2B向けには利用した分だけ支払う従量課金モデルが積極的に採用されつつあります。AIネイティブな価値提供を行う企業は、このモデルを通じてユーザーにコストパフォーマンスの高いサービスを提供しています。月額/年額の固定費モデルの料金体系は、従来SaaS業界で広く採用されてきましたが、従量課金の台頭によりその正当性が問われています。 固定費型モデルでは、サービス提供者は一定のマージンを見込むことができますが、従量課金モデルの方がユーザーにとって魅力的であると認識されるようになると、そのマージンやコストを正当化することが難しくなってきます。例えば、平均的な中堅B2B SaaS企業は、[年間の収益(ARR)の約90%をコストに費やしています。その内訳は、市場投入戦略と実行に25%、研究開発に24%、管理および雑費に15%、ウェブサイトのホスティングと実装に13%、顧客維持に10](https://every.to/p/asset-light-software-businesses-the-new-paradigm-for-startups)%と言われています。現在かかっているコストは固定費型モデルが故に一定程度のチャーンレートを考慮すれば、ある程度収益が予測できるのでコストをかけ続けることが可能ですが、従量課金モデルになると不確実性が高くなり同じようなコスト構造の維持はし難くなります。 こうした背景から、今後SaaSを提供するにあたり、起こりうるリスクを明確化した上で、サービス提供にかかるコストを下げ、汎用AIではカバーできない自社のアセットや強味を発揮したサービスを提供し、従量課金モデルの採用を検討していくことが必要になってきます。この背景を踏まえて企業が変化していくためのソリューションが徐々に登場しつつあり、本稿ではその事例として起こりうるリスクおよびコストカットとしてのソフトウェア開発プロセスの超効率化のサービス、および従量課金ベースへ適応していくサービスを取り上げます。 # ソフトウェア開発プロセスの民主化: Poolside AI [Poolside AI](https://www.poolside.ai/)は、元GitHub CTOのジェイソン・ウォーナーさんが2023年4月に設立したスタートアップであり、ソフトウェア開発者向けの大規模な言語モデルの訓練とそれを利用した開発プロセスの変革に焦点を当てています。Poolside AIのモデルは、自然言語でコードを作成することが可能であり、将来的にコーディング経験が少ない・もしくは全くない人々でも有用なソフトウェアを作成できる可能性を提供します。 現状ChatGPTなど汎用AIでもクラウドインフラを組み合わせることで、簡易的なWebアプリケーションは作ることは可能ですが、出力されるものは不安定で運用・保守もままならないことが多く、実用に耐えるレベルに至っていません。Poolside AIは、汎用LLMとの差別化をするため、ソフトウェア開発に完全に特化した大規模な言語モデルをトレーニングし、[実際のソフトウェア プロジェクトの数万件で数百万のタスクを完了することでモデルを改善するこ](https://www.poolside.ai/)とに重点を置いています。また、ソフトウェア開発者が[日常業務でコードの最適化やバグ修正を支援するLLMの開発](https://sifted.eu/articles/poolside-raises-126m-relocated-france-news)にも注力しています。こうしたソフトウェア開発に特化したAIサービスが提供されることで、ある程度複雑さをもつソフトウェアが実用レベルで開発・運用できる可能性があります。 Poolside AIはフランスでクラウドインフラを提供する[Scaleway](https://www.scaleway.com/en/)と[協力](https://sifted.eu/articles/poolside-raises-126m-relocated-france-news)して自社モデルの開発と訓練に必要な大規模GPUトレーニングクラスターの構築に取り組んでいます。GPUクラスターやデータセンターへの投資は高くつきますが、AIモデルの訓練に必要なGPUへのアクセスがますます競争が激しくなっている現在では計算資源の獲得のために必須となっています。 Poolside AIが掲げるソフトウェア開発の3ステップ 参照: [Poolside AI](https://www.poolside.ai/) Poolside AIが掲げるソフトウェア開発の3ステップ 参照: [Poolside AI](https://www.poolside.ai/) Poolside AIの長期的ビジョンとして、大きく3つのStepを想定しています。第1ステップは、Human-led / AI-assisted な状況で、人間が作ろうとするものに対してAIがコードを提案・修正していく形で、github Copilotの考え方に近しいものです。第2ステップとして、AI-led / Human-assisted で AIがスクラッチでソフトウェア開発し、人間とレビュー/フィードバックを相互に繰り返して継続改善を行うモデルがあげられます。第3ステップが最終段階で、第1 / 第2のステップをソフトウェア開発領域を超えて広がっていく未来を想定しています。第2ステップが訪れるだけでも、多くのコードを書けない人が実用レベルのソフトウェアを提供することが可能になるため、業界に大きな変化をもたらす可能性があります。 Poolside AIは、[2023年8月にSeedラウンドでフランス国営ファンドのBpifranceなどから1.26億ドル(約190億円)の資金調達](https://sifted.eu/articles/poolside-raises-126m-relocated-france-news)を行い、アメリカからフランスに本社を移転しました。この移転は、フランスのマクロン大統領が新たなAIプレーヤーを奨励・誘致するために[500億ユーロの計画を発表](https://www.lemonde.fr/en/france/article/2023/06/14/macron-wants-france-to-be-among-ai-leaders_6031624_7.html#)した数か月後に行われました。アメリカへのAI技術依存を懸念するヨーロッパ地域にとってフランスの国策は非常に興味深い内容となっています。 # 従量課金モデルへの適応: OpenMeter [OpenMeter](https://openmeter.io/)は、エンジニア向けのオープンソースの使用量計測ソリューションであり、2024年3月にリリースされました。従量課金モデルで提供されるソフトウェアサービスにおけるユーザの利用拡大や縮小の動きを計測し、離脱の可能性を検知します。こういった利用状況の可視化を容易にすることで、最終的には経営陣がユーザ中心のアプローチによってビジネスを成長させることを可能にするのが、OpenMeterのビジョンです。 近年LLM、GPU、各種ソフトウェアが利用するクラウドサービスや吐き出すログなどサービスの技術スタックは複雑になってきており、開発チームがリアルタイムに使用量を計測する機能の開発と保守・運用に多くの時間とリソースを投資せざるをえませんでした。 それに対して、OpenMeterを導入することにより、上記の各ユーザのサービス使用量を計測・課金を行うプロセスを容易に組み込むことができ、運用効率を向上させ、エンジニアリングチームがコア機能の開発に集中できるようになります。 データ収集・計測・利用制限・指標管理・課金まで従量ベース課金に必要な技術スタックを一括して提供 参照: [OpenMeter](https://openmeter.io/) データ収集・計測・利用制限・指標管理・課金まで従量ベース課金に必要な技術スタックを一括して提供 参照: [OpenMeter](https://openmeter.io/) OpenMeterは、イベントストリーミング技術により、リアルタイムで信頼性が高く、費用対効果の高い使用量のトラッキング・使用量にもとづいた課金機能を提供しています。データの収集や課金のいずれも外部サービスとの連携を進めており、[PostgreSQL、Langchain、Stripe、OpenAIなどとの組み合わせを容易にするSDKやテンプレート](https://openmeter.io/docs)を提供しています。 OpenMeterのテクノロジー自体はオープンソースで提供されていますが、これをクラウドでホスティング・メンテナンスが可能な基盤を有償で提供するビジネスモデルを採用しています。 OpenMeterは[2024年3月にY Combinator、Haystack、Sunflower Capitalなどから300万ドル(約4.5億円)の資金調達](https://www.thesaasnews.com/news/openmeter-raises-3-million-in-seed-round)を行い、AIベースでSaaSやIoT分野でサービス提供する企業を中心にさらに拡大を図っていくものと考えられます。 # おわりに AI技術の進化により、SaaS業界は大きな変革期を迎えています。従来のサブスクリプションベースのビジネスモデルは、AIの台頭により再考される必要がある時代となりました。AIによるコスト低下、サービスの飽和、最適なサービスの選択支援、そしてソフトウェアのコモディティ化は、SaaS提供者に新たな課題を提示しています。従量課金モデルの台頭と固定費モデルの価値低下は、SaaSビジネスにとって今後起こりうる大きな変化です。この変化に対応するため、SaaS提供者は従量課金モデルへの適応や、AIではカバーできない独自の価値提供を模索する必要があります。Poolside AIやOpenMeterのような新たなサービスは、この変革期におけるソリューションの一例を示しており、SaaS業界の将来像を示唆しています。AI時代においても、SaaS業界が持続的に成長し続けるためには、変化に柔軟に対応し、革新を続けることが求められます。 --- ## 400時間以上パブリッシャーのサブスクリプションモデルに取り組んできてわかったこと URL: https://ximera.com/posts/3794f475f1 公開日: 2024-03-21 著者: NANCY LEE by NANCY LEE([原文](https://blog.chartbeat.com/2019/06/13/research-analysis-subscription-model/))2024.03.21 Chartbeatは今年、読者収益とサブスクリプションモデルのリサーチに没頭し、データ分析、過去の傾向の比較、事例からのインサイト抽出などさまざまなことに取り組みました。 ですが、実用的な読者収益ソリューションを生み出すには、情報源であるパブリッシャーに働きかけるのが一番でした。 パブリッシャーの収益に関するペインポイント、つまりコストをかけても解決したい悩みからソリューションを探るなかで、私たちは編集やコンシューママーケティング、オーディエンス開発、メンバーシップ管理、[データサイエンスと分析](https://blog.chartbeat.com/2019/04/29/mobile-ux-improve-subscriber-revenue/)、イベントマーケティング、ユーザーリサーチ、製品管理など、あらゆる役割の方々とともに時間を過ごしました。 ここでは400時間以上を費やしたこれらの調査の結果として、私たちが得た知見を紹介します。 ## 現在のインフラは有料モデルの期待感にマッチしていない パブリッシャーが自社のサービスやコンテンツを効果的に販売するには、ユーザーセグメンテーションのためのインフラが不可欠であることがわかりました。ですが私たちはこれまで何度も何度も、広告収入を増やすために構築された中核インフラを目にしてきています。こういうケースでは、ユーザーとの関係はプラットフォームやリーチよりも蔑ろにされるうえ、ユーザデータは旧来のシステムに縛られたままです。 パブリッシャーにとって、システムをモダンなものに変え、統合と一元化を進めることは極めて重要です。すべてがひとつの仕組みで動けば、チームの連携を強くすることができます。 ## チャネルを変える必要はない メールはユーザーを惹きつける効果的な方法のひとつです。ニュースレターやメルマガと呼んだほうが自然かもしれません。しかし、出版業界はリテールなどの他業界に比べて導入が遅れています。 メールが復活したのはコンバージョンとリテンションの仮説検証を効率よくできるからです。読者にとってメール登録するリスクはほとんどなく、見返りは多くあります。なので、その登録者は数万に上ることもあります。ですが、このようなメーリングリストのセグメンテーションは手作業で行われることが多く、コンテンツは骨が折れるほど入念に作成されがちです。 仮設検証の実験を生産的なものにするために、自動化されたサービスを使い、多様なユーザーを反映したダイナミックなリスト(任意のルールに従って自動更新されるメールアドレスのリスト)を作成しましょう。リテールマーケティングを見習うのです。 ## 目線を合わせて時間(と健全性)を取り戻す 業界でよく「better alignment」という言葉を聞きますが、実際のところ、はっきり理解されていません。その結果、コンバージョン追跡が組織内の各チームによってそれぞれ別の方法で行われ、バラバラになってしまいます。そこで一元化されたレポートが、それぞれのチームメンバーが読者収益のために果たす役割を理解するための鍵になります。それから、共通の戦略に向けて協力し合うことができるのです。 時間は貴重です。コンバージョンの追跡や解釈に費やす時間を減らせば、プロダクトの改善にもっと時間を集中できるようになります。 ## 自分のサイトの達人になる テクノロジー企業はデータ収集に気を配り、莫大なリソースを投資しています。対照的に、出版社は[データがどのように管理され](http://blog.chartbeat.com/2019/03/20/subscriber-analytics-enhanced-for-publishers/)、統合され、保護され、利用できるようになるか、これまで考えてきませんでした。データ活用の実践経験に大きな差があります。 一貫性があり理解しやすいデータは、ビジネス戦略を成功させるための土台となります。データガバナンスは出版社のコアコンピテンシーではありませんでしたが、会社に影響を与える意思決定を迅速に優先順位付けする能力に直接影響します。データガバナンスを改善すれば、パブリッシャーもすぐにトレンドを掴み、行動に移すことができるでしょう。 ## コンテンツ戦略に没頭する コンテンツのアトリビューションは、CMSやほかの内部ツールから切り離されています。コンバージョン(またはリテンション)のためのコンテンツ戦略の策定も、編集者の直感と[データが何を伝えているかの理解](http://blog.chartbeat.com/2018/04/25/defining-unique-benchmarks-success/)に依存しています。パブリッシャーがブランドをよいものにし、ユーザーに関心をもってもらえるプロダクトを作りつづけるなかで、ROIの証明にはコンテンツマーケティングのアトリビューションが不足しています。 今こそ適切なアトリビューションモデルを構築して、編集とマーケティング両方への投資をサポートするときです。コンテンツ戦略をROIにマッピングすることに洗練しているリテールやほかの業界のマーケターと同じように、パブリッシャーもアトリビューションモデルから情報を得て活用できるはずです。アトリビューションは、編集とマーケティングチームに割かれた投資を活用する(そして正当化する)ために極めて重要です。 ## プロダクトと統合したエディトリアル これまでも伝えてきたように、大手のパブリッシャーでは編集の戦略とプロダクトの戦略を別物としない、大きな変化が起きています。 プロダクト戦略がもっとも成功するのは、エンドユーザーのニーズに実際に応える結果を目指して、複数のチームから力を結集できるときです。しかし、これには文化的な変化が必要で、多くのパブリッシャーはまだそれに取り組んでいません。協調的な意思決定には、競合するビジネスニーズと既存の予算目標の間でバランスを取る必要があるのです。私たちは調査の間、絶えずこの課題を目にしてきました。当然のことながら、文化の変革はあらゆる組織にとっての課題です。 ## サブスクリプションについて、私たちがこれまでに学んだこと 調査の結果、ポイントは「部門横断的な組織と収益目標の結びつけ」というおなじみのものになりました。アトリビューションにせよ、戦略にせよ、共通するのは、パブリッシャーを何十年も導いてきた直感に情報を与えるデータです。 パブリッシャーは文化的な進化をしつづけるでしょう。鍵になるのは複合指標かもしれません。組織の全員を団結させ、読者収益に向けてそれぞれが役割に取り組み、その目標を実行可能なデータでサポートする。そうすれば、いい結果が得られる可能性が高くなります。少なくとも、結果を基にした取り組みはできるでしょう。 *この記事の[原文](https://blog.chartbeat.com/2019/06/13/research-analysis-subscription-model/)は2019年6月に公開されたものです。* --- ## サブスクリプション購読者の行動傾向分析2023 URL: https://ximera.com/posts/fe8b9f48d7 公開日: 2024-03-14 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2024/02/29/tracking-the-reader-journey-a-year-of-subscription-trends/))2024.03.14 トラフィックや読者数のヒエラルキーでいえば、ページビューや新規ユーザーも重要ですが、継続的なエンゲージメントとサブスクリプションの購読者の方がより重要です。 今年のはじめに[Chartbeatネットワーク全体の傾向を分析](https://lp.chartbeat.com/download-whitepaper-5-traffic-trends-from-2023)したあと、わたしたちは購読者について掘り下げていきました。ここでいう「購読者」は、いわゆる有料の(paid)サービスを契約しているログインユーザーを指しています。彼らはどのようにコンテンツを見つけ、どのくらいの頻度でサイトを訪れ、どんなトピックに関心を持ちつづけているのでしょうか。 ## 購読者のトラフィック、エンゲージメント、ロイヤルティについてわかったこと 全体のトラフィックは2022年に月平均480億だったページビューが2023年に540億に増加。購読者のページビューも増え、2023年1月から2024年1月にかけては10%以上の伸びとなりました。下図、オレンジ色の線で示されています。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled.png) 購読者のページビューは増加しましたが、購読者数の割合に動きはありません。このことから、年を追うごとに購読者一人あたりのページビューが増えていることがわかります。一方、ゲスト、登録者、匿名ユーザー(トラッキングできないユーザー)のページビューは減少しています。 ## 購読者のエンゲージメント 昨年のネットワーク全体における読者の平均エンゲージメント時間は28.1秒でした。一方、購読者のエンゲージメントは37.8秒で、ページビューあたりの平均エンゲージ時間は以下の分類グループのなかでもっとも長くなりました。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-1.png) 例年、平均エンゲージ時間はQ1(1〜3月)の最高値から年間を通して減少します。しかし2023年、登録ユーザー(Registered)の平均エンゲージ時間はこの傾向に反して、9月から12月に8秒の増加を記録しました。これはディープリンクやプッシュ通知による訪問者のエンゲージメントが高かったことが要因です。 ## ロイヤルティと購読状況の比較 ロイヤルティなくして、サブスクリプションは語れません。Chartbeatでは、ユーザーのサイトへの訪問頻度を新規(New)、リピーター(Returning)、ロイヤル(Loyal)の3つに分類しています。新規訪問者は30日間に1回しかサイトを訪問しませんが、ロイヤル訪問者は少なくとも1日おきにサイトを訪問します。ロイヤルティのハードルが高いように思えるかもしれませんが、この閾値を超えると訪問者の行動が大きく変化することが過去のリサーチからわかっています。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-2.png) 購読の状況をロイヤルティに当てはめると、訪問者の大半は購読者でもロイヤルでもないことがわかります。上図の左下のグループです。このグループはページビューの49.2%を占めています。 次に多いのが購読していないロイヤルのグループです。ページビューの29.4%を占めている彼らは、すでに購読者のような行動を示しているので、最高の収益機会があると言えます。 もっとも少ないのは、ページビューの5.6%を占める非ロイヤルの購読者です。このグループの規模は小さいものの、利用頻度が低くなっている購読者には解約のリスクがあることに注意する必要があります。 ## 購読者がコンテンツを見つける方法 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-3.png) ネットワーク全体でも言えることですが、購読者はほとんどの場合、サイト内を回遊します。外部からサイトに訪れる場合は直接流入(ダイレクト)か、プッシュ通知による外部ソース経由です。検索エンジンやSNSからの流入経路は、このグループにとってあまり重要ではありません。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-4.png) さらに詳しく見てみると、ディープリンクとプッシュ通知が2023年のページビューの約25%を占め、購読者にとってもっとも大きい流入経路になっていることがわかります。次に多いダイレクトトラフィックは17%程度で安定しています。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-5.png) デバイスに関して、購読者はデスクトップやタブレットよりスマートフォンを使う頻度が高い(50%前後)ですが、全体平均の72%と比べればはるかに低い割合です。モバイルトラフィックをアプリとブラウザに分けると、アプリのトラフィックが55%とやや高く、比較的均等です。 ## 購読者を惹きつけるトピック 読者が読むトピックの幅広さに関する以前の調査(日本語の記事)では、もっとも人気のあるカテゴリーは「犯罪、法律、司法」と「経済、ビジネス、金融」でした。この2つは購読者から人気がありますが、購読者のページビューのトップは「芸術、文化、娯楽、メディア」です。 ![](/images/posts/fe8b9f48d7/Untitled-6.png) 平均エンゲージ時間で上位を占めるカテゴリーは「科学とテクノロジー、政治、環境」です。これらのトピックは、高い需要(エンゲージ時間)と低い供給(記事数)で表した散布図の、四等分した左上に位置あり、エンゲージの高い読者がもつ期待のギャップ(もっと読みたいのに、記事がない!)を埋める機会があることを示しています。 ## 購読者分析の要点 購読者は総トラフィックに占める割合は低いですが、毎月多くの記事を読み、それぞれの記事に長く関心をもっています。彼らは、あなたが今日掲載したコンテンツだけでなく、明日掲載するコンテンツにも投資しています。彼らのような大事なユーザー層によりよいサービスを提供しより深く関わってもらうために、私たちの調査から得た3つの重要なポイントを紹介します: - Chartbeatネットワーク全体では、サイト訪問の72%がモバイル。購読者の場合は約50% - ページビューの29%は、まだ購読者ではないロイヤルティの高い訪問者によるもの - エンゲージ時間が長く、記事数が少ないトピックには、ニッチな読者にリーチする機会がある --- ## 回遊率を左右するのは何か。リサーキュレーションデータの分析結果 URL: https://ximera.com/posts/0e4ce1b210 公開日: 2024-03-05 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2022/12/05/recirculation-by-category-device-loyalty/))2024.03.05 あるページに訪れた人の数と、その記事から同じサイト内の別の記事に移動した人の数を比較するリアルタイムの分析指標、それがリサーキュレーションです。訪れた最初の記事を通過した読者の割合とも言えます。日本語では回遊と表したほうが馴染みがあるかもしれません。 1回の訪問で複数の記事を読む読者もいますが、ほとんどの読者はサイトでもう1記事読むためにさらなるひと押しが必要です。実際、Chartbeatのネットワークでは89%の読者がひとつの記事を読んだだけでサイトを去っています。一見がっかりする数字かもしれませんが、エンゲージメント戦略におけるリサーキュレーションの重要性を物語っているとも言えるでしょう。 リサーキュレーションについて詳しく知るため、いつものようにChartbeat全体のデータをサイトのカテゴリ、デバイスの種類、ロイヤルティ(訪問頻度)ごとに分類し、それぞれ傾向がどう変化するか分析しました。結果は以下の通りです。 ## サイトカテゴリ別にみるリサーキュレーション サイトのカテゴリ別にデータを分析すると、一般的なニュースサイトのリサーキュレーション率(回遊率)は、スポーツや金融など何かに焦点を絞った専門サイトよりはるかに低いことがわかります。 これに驚きはありません。ニュースサイトは、読者がニュース速報のような個別のできごとで訪問する傾向が強く、特定のトピックの深い知識を求める読者はニッチサイトで多くの時間を費やすのですから。 ![](/images/posts/0e4ce1b210/Untitled.png) 2022年5月から9月までの期間でリサーキュレーション率がもっとも低かったのは「アート&エンターテインメント」のカテゴリで9.8%、もっとも高かったのは「金融」で16.8%でした。「スポーツ」と「ニュース&メディア」はその中間でそれぞれ12.8%と11%です。 ## デバイス別にみるリサーキュレーション デバイスによる体験の違いもリサーキュレーションに大きな影響を与えます。たとえば、モバイルのページビューはChartbeatネットワークのトラフィックのなかでもっとも大きな割合を占めますが、その読者のリサーキュレーション率はもっとも低い9%に留まります。デスクトップはトラフィック流入量でみればあまり人気がないものの、リサーキュレーション率はモバイルの2倍以上となる19%を占め、より効果的にリサーキュレーションを生み出します。タブレットはトラフィック全体のごく一部に過ぎません。しかし、リサーキュレーション率は21%ともっとも高くなります。 ![](/images/posts/0e4ce1b210/Untitled-1.png) ## ロイヤルティでみるリサーキュレーション 読者のロイヤルティ別にリサーキュレーションを調べると、サイトに対するロイヤルティ(訪問頻度)が高い読者ほど、1回の訪問でより多くのコンテンツに触れることがわかります。この傾向から、読者をロイヤルティファネルの先へと進ませることは、トラフィックの増加と収益の両方に大きな影響を与える可能性があるのです。 ![](/images/posts/0e4ce1b210/Untitled-2.png) 少なくとも1日おきにサイトを訪れるロイヤル読者(Loyal)のリサーキュレーション率は当然ながらもっとも高く、16.6%です。月に1回以上サイトを訪問してはいるもののロイヤルほどではない再訪問の読者(Returning)は14.1%、新規訪問者(New)は9.1%ともっとも低くなります。 ## 読者にさらなるコンテンツの発見を促す 読者がサイトのコンテンツに触れる時間が長ければ長いほど、そのサイトを再訪する可能性は高くなります。Chartbeatのリサーチが示すように、焦点を絞った専門サイトは一般的なニュースを扱うサイトより、簡単に読者により多くのコンテンツに触れてもらうことができます。しかし、コンテンツの幅広さに関係なく、すべてのパブリッシャーはリサーキュレーションを改善するために行動できます。私たちが推奨するいくつかの戦術をお伝えします。 - 深さと質をアピールする。コンテンツ内の適切な場所に設置された関連リンクは、そのサイトのより深いコンテンツ体験を促し、読者にサイトを離れるのとは違う選択肢を提供する効果的な方法です。 - 戦術をカスタマイズする。エンゲージメントデータ、リファラーデータ、オーディエンスセグメントデータを使ってサイト上の関連リンクの質を向上させることで、読者ごとにコンテンツ体験をカスタマイズすることができ、サイトのコンテンツを深く体験してもらえる可能性が高まります。 - 読者が今いる場所で出会う。モバイルでは読者がデスクトップやタブレットほど簡単に新しいコンテンツに移動するのが難しくなる可能性があります。できる限り、モバイル体験を直感的なものにしましょう。 - 曖昧なリンクの時代は終わった。わかりにくいリンクは読者が安心してクリックすることを妨げます。行き先とあなたのコンテンツに時間を費やすことで得られる価値を明確にしましょう。 --- ## AIの安全性を高めるテクノロジー URL: https://ximera.com/posts/89074ee9e9 公開日: 2024-02-28 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #58|Ikuo Morisugi|2024.02.28 ![](/images/posts/89074ee9e9/AI-Safety-Technologies.jpg) [Internet illustrations by Storyset](https://storyset.com/internet) # はじめに 生成AIによるリスクが高まっている現代では、既存ビジネスへの脅威が顕著になっています。特に[生成AIにおけるハルシネーション(幻覚)による混乱](https://gigazine.net/news/20240222-chatgpt-insane-unexpected-outputs/)、記事の自動生成・検索エンジンの信頼性低下やAI動画生成ソリューションの登場など、人間が騙されてしまうフェイクコンテンツの大量氾濫が既に発生しており、今後さらに懸念が増幅されることが予想されます。おまけにアメリカは2024年に大統領選を控え、フェイクコンテンツへの対策の重要度が強く増しています。本稿ではAIのリスクおよびそれに対するソリューションを取り上げ、今後メディアが取るべき対応について示唆を得ることを目的としています。 # AIによるリスクが一層高まっている 既に各所で話題となっていますが、[生成AIスパムによる既存ビジネスへの脅威](https://www.businessinsider.jp/post-281864)が起こっています。例えば既存のパブリッシャーが提供する記事をベースに、生成AIによる記事が大量にポストされ、SEOが進んでしまった結果、パブリッシャーが元々持っていたユーザトラフィックが盗まれています。また[生成AIが事象に関するキーワードだけをベースに事実に基づかない記事を自動生成し、それがトラフィックを得て検索結果上位に位置されてしまう事態](https://x.com/jakezward/status/1728032634037567509?s=20)も起こっています。こうしてオリジナルの記事を提供していたメディア側はトラフィックも奪われてしまった上に、メディアとしての信頼性や検索エンジン結果の信頼性も同時に下がってしまう三重苦の状況が発生してしまいます。 また直近でGoogleやOpen AIが非常にリアリティのある動画をAIで生成できるソリューション([Google LUMIERE](https://lumiere-video.github.io/)、[Open AI Sora](https://openai.com/sora))をそれぞれ発表しました。まだ一般利用はできないものの、ひとたびこのツールを多くの人たちが利用できるようにすれば効率性・生産性の向上に大きく寄与すると同時に、テキストだけではなく音声・動画も含めた大量のフェイクコンテンツが氾濫することは想像に難くありません。 他にもChatGPTをはじめ、生成AIには[ハルシネーション](https://techcrunch.com/2023/09/04/are-language-models-doomed-to-always-hallucinate/)と呼ばれる幻覚症状を起こすことがあります。自社でチューニングしたAIが思い通りの結果を返さないことや暴走したように見える回答をして、炎上してしまうリスクをはらんでいます。AIはあくまで統計的確率論で動いているにすぎないので、トピックによっては論理的には成立してもまったく事実とは異なることを吹聴する場合があります。このことはAIをよく利用する人にとっては共通認識になりつつはありますが、人々が全員同レベルの警戒心を持ってAIに接するのは困難であり、多くの人がAIに騙されてしまうリスクは依然として高く、提供側でも何らかの対策が必要です。 現在AIの急速な普及が進む中でこうした生成AIに対するリスク対応がより重要度・緊急度が増しています。特にアメリカに関しては、2024年11月に大統領選を控えており、すでに予備選挙段階からフェイクニュース対策は非常に重要なテーマとなっています。 # AI検証容易性を高める: Guardrails [Guardrails AI](https://www.guardrailsai.com/)は、上記であげたLLMのハルシネーションに対する手段として、LLMアプリケーションの品質を定義し高めるための以下に代表されるオープンソースフレームワーク/ライブラリを提供しています。 - アプリケーションレベルのカスタムバリデーション1*を作成するフレームワーク - プロンプト → 検証 → 再プロンプトのオーケストレーション - 複数のユースケースに対応した一般的に使用されるバリデーターのライブラリ - LLMへの要件を伝達するための言語の提供 1 バリデーション:要件を満たしているかの妥当性を確認すること。それをアプリケーションごとにカスタマイズできること* これらのフレームワークやライブラリによって、これまで手動/独自でやらなければいけなかったLLMの出力結果の検証->チューニングのプロセスが効率化されます。 Guardrailsを利用することで、ユーザとのコミュニケーションでLLMに安心して回答生成を任せられないようなケースを事前にリストアップして検証・対策することができます。 例えば、「AIが自社や競合他社について聞かれても答えを返さないようにする」というルールを適用したい場合、GuardrailsがHubと呼ばれる[プリセットの検証](https://hub.guardrailsai.com/)(バリデーター)モジュール群を用意してくれており、ここから[競合チェックに特化した検証モジュール(Competitor Check)](https://hub.guardrailsai.com/validator/guardrails/competitor_check)を適用します。これを用いて静的に競合会社の名前をリストアップしておくだけで、AIが競合に関して妙な答えをしないように制御できます。 Guardrailsの概念図 出典: [Guardrails](https://www.guardrailsai.com/blog/0.2.0-release) Guardrailsの概念図 出典: [Guardrails](https://www.guardrailsai.com/blog/0.2.0-release) Guardrails Hubの検証モジュールは、単純なルールベースのものから、モデルの問題を検出して軽減するアルゴリズムまで多岐にわたり、2024年2月現在、ハルシネーションやポリシー違反の検出から機密情報や安全でないコードのフィルターなど、約 50 種類が提供されています。このHubについては、オープンソースでかつ誰もが追加・修正できるようになっており、AIの安全性を高める施策がさらにコミュニティで自発的に作られることが期待されています。AIの安全性に対して似たようなツールを提供している会社は[Nvidia](https://techcrunch.com/2023/04/25/nvidia-releases-a-toolkit-to-make-text-generating-ai-safer/)や[CalypoAI](https://calypsoai.com/)のように既に多く存在していますが、Guardrailsはオープンソース/クラウドソーシングのアプローチを取っているのがユニークです。 Guardrails AIはビジネスモデルは未だ確立されていませんが、[2024年2月にZetta Venturesがリードし、Pear VC、Bloomberg Beta、GitHub Fundなどが参加する750万ドル(約10.5億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2024/02/15/guardrails-ai-builds-hub-for-genai-model-mitigations/)を行い、ユースケース・顧客拡大を図ろうとしています。 # ディープフェイクへの対抗: Clarity 近年のディープフェイクは技術進化が進み、[偽のポルノや捏造された画像/動画](https://forbesjapan.com/articles/detail/68848)など、誤解を招くコンテンツが急増しています。[アメリカ人の約66%が意図的に人を欺くために変更されたビデオや画像に遭遇](https://www.pewresearch.org/short-reads/2019/06/14/about-three-quarters-of-americans-favor-steps-to-restrict-altered-videos-and-images/)しており、[AI専門家のうち62%は、AIコンテンツ生成がニュースの信頼性と真実性を維持する上での最大の課題である](https://www.axios.com/2023/11/16/ai-deepfakes-media-trust-survey-experts)と回答しています。 この問題への解決策として、2022年に創業した[Clarity](https://www.getclarity.ai/)は、AI操作されたメディアを特定する技術提供を目指しています。Clarityは、ビデオとオーディオの偽造性を特定するためのAIモデルをトレーニングし、アプリとAPIを通じて利用可能なスキャニングツールを提供しています。また、Clarityの利用クライアントが自分のコンテンツが正当であることを示すための正当性タグも追加することができます。 ディープフェイクを見破るソリューションについては、既に数多くの企業や組織が対策をとっているため、それぞれのソリューションの差異がわかりにくい状況となっています。また当然ながらウィルスとの戦いのように攻撃側と防御側でイタチゴッコの様相を見せており、ディープフェイクを見破るだけのソリューションではうまく機能しません。そのため[本物であることの証明](https://techcrunch.com/2023/08/29/deepmind-partners-with-google-cloud-to-watermark-ai-generated-images/)や[追加のメタデータをいれる](https://techcrunch.com/2024/02/06/meta-ai-generated-image-labelling/)という方法も次々に考案され試されています。 Clarityはこうした次々に進むディープフェイクの爆発的増加に対してまだ準備を取れていないメディアパブリッシャー、身元確認を行う企業、政府機関といった特に信頼性が求められる企業をメインターゲットとしてサイバーセキュリティ企業として振る舞っています。Clarityは特異な技術で差別化するというより、アンチウィルスソフトのように最新のディープフェイクの手法をキャッチアップし、検出できるようにアップデートを続けるというアプローチとコンテンツの真偽を素早く/安全に行うための扱いやすいツール群で信頼を得ていると考えられます。 Clarityは[2024年2月にWalden Catalyst Ventures と Bessemer Venture Partnersがリードする投資ラウンドで1,600万ドル(約23億円)](https://techcrunch.com/2024/02/15/clarity-raises-16m-to-fight-deepfakes-through-detection/)を調達し、さらなる顧客拡大へ向けた動きを取ろうとしています。 # おわりに 今回あげたAIの安全性を上げるためのテクノロジーやアプローチは、①自社でいかに安全にAIモデルを顧客へ展開できるか、②生成AIコンテンツが氾濫しても常に信頼性の高いメディアを提供し続けているけか の2つの観点で非常に重要になるものと考えます。 Guardrails AI、Clarity両社ともに、AIによるリスクへの対応において一定の役割を果たしており、生成AIの普及に伴い今後その重要性が増してくると考えられます。このようにAI関連だけでも考えること・やることはてんこ盛りの状況ですが、次の展開を先取りする戦略を練ることができるよう本連載がその一助になれますと幸いです。 --- ## 2023年、35の大手ニュースサイトのライブブログ分析結果。そこから期待できること URL: https://ximera.com/posts/58cc0c3dc0 公開日: 2024-02-14 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2024/02/09/live-blogs-engaged-time-recirculation-and-traffic-sources/))2024.02.14 悪天候のような予期せぬ速報であれ、今年世界中で予定されている多くの選挙の一つであれ、読者はリアルタイムのレポートを求めています。素早く効率的な更新に最適なフォーマットは、情報を随時加筆していくライブブログ(リアルタイム更新)です。 過去1年間だけでも、ライブブログはタイタン潜水艇やウクライナとガザの戦争といった[トップニュース](https://lp.chartbeat.com/2023-most-engaging-stories)を伝えてきました。数時間から数日にわたって矢継ぎ早にニュース速報が展開されるような場合にも、ライブブログはニュースのスピードに合わせて読者に情報を提供しつづけ、読者を引きつけることができます。 従来の記事と異なるそのスタイルと内容がコアとなる指標に大きな違いをもたらすのかどうか確かめるため、米国を中心に35の大手ニュースメディアサイトで2023年に行われたライブブログを分析しました。 ## ライブブログの平均エンゲージ時間 [https://public.flourish.studio/visualisation/16735621/](https://public.flourish.studio/visualisation/16735621/) 2023年、Chartbeatネットワーク内の全コンテンツの平均エンゲージ時間は28秒でした。同時期のライブブログだけを抽出すると、平均エンゲージ時間の中央値は48秒に跳ね上がります。 平均85秒間読者を惹きつけたライブブログもありました。このリサーチのために分析したサイトの半数は平均34秒から63秒の間に留まりました。 ## ライブブログの流入経路分布 [流入経路の割合分布](https://public.flourish.studio/visualisation/16735418/) 流入経路の割合分布 ライブブログの流入経路の分布を全コンテンツの流入分布と比較すると、ソーシャルを除いて同様のパターンが見られます。 [2023年のトラフィック、エンゲージメント、ロイヤリティの調査](https://lp.chartbeat.com/download-whitepaper-5-traffic-trends-from-2023)では、ソーシャルからのページビューは全体の12%に減少していました。ライブブログでは、調査対象の75%のサイトがソーシャルからのトラフィックが平均して少なくとも14%あり、中央値は22%でした。 ## ライブブログの回遊性 [回遊率の分布](https://public.flourish.studio/visualisation/16735708/) 回遊率の分布 以前行った[サイト内回遊(リサーキュレーション)に関する調査](https://blog.chartbeat.com/2022/12/05/recirculation-by-category-device-loyalty/)では、ニュースやメディアのサイトの回遊率は11%で、金融やスポーツのような焦点を絞ったサイトよりも低くなっていました。ライブブログでは中央値で7%です。 ライブブログの読者は特定のイベントに関する最新情報を求めてそのサイトを訪れているので、サイトのほかのセクションやカテゴリーに移動する可能性が低いことは理解できます。しかし、だからといって有益な関連リンクを配置することによって回遊やユーザーエクスペリエンスが改善されないわけではありません。 ## 調査のポイント 深堀された記事が依然として多くのトラフィックとエンゲージメントを集める一方、ライブブログは速報時に素早く最新情報を提供するための重要なツールです。あなたのメディアで次にライブブログを行うときは、この3つを参考にしてみてください。 - 読者はほかのコンテンツよりもライブブログに長く関わっている。大規模なニュースおよびメディアサイトの平均エンゲージ時間の中央値は48秒だった。 - ソーシャル・トラフィックはライブブログの重要な流入経路である。適切なタイミングのタイムリーな情報提供はソーシャルメディアのペースを反映でき、サイトの外で行われる会話とサイト内の記事を結びつけるのに役立つ。 - ライブブログはサイト内回遊は少ないものの、読者はより長い時間を使うため、関連記事にリンクさせる機会は多い。 *この調査にはスポーツの試合結果や株価レポートは含まれていません。* --- ## 日本のChartbeatトラフィック動向レポート2023 URL: https://ximera.com/posts/4e215999ae 公開日: 2024-02-07 著者: Ximera ## 最大の外部トラフィック源はGoogle Discoverに 2024.02.07 --- ![](/images/posts/4e215999ae/Chartbeat-2023-Trends.jpg) 世界中のコンテンツチームから信頼されているコンテンツのエンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)」は、日本においても大規模な報道機関からカテゴリーに特化したバーティカルメディアまで、70を超えるメディアで活用され、日々コンテンツを作り届けるパブリッシャーへエンゲージメント分析の土台を提供しています。 そこで得られたトラフィックデータから、日本のChartbeat導入メディアのネットワークにおける2023年通年のトラフィックとエンゲージメント、またトラフィックをロイヤルティ、デバイス、リファラー、主要ディストリビューションに分類した動向レポートを公開します。 昨年のグローバルレポートでも触れたように、ユーザがWebメディアに訪れる流入元として大きな存在感を示しているのがGoogle検索です。そして近年ではGoogle Discoverが台頭しています。日本のChartbeatトラフィックにおいて、サイト内回遊とならび全体トラフィックの3割を超えるのが検索によるトラフィックです。直近である2023年12月においては日本の全体トラフィックの29%がGoogle検索およびGoogle Discoverからもたらされています。 また情報の消費サイクルの早い現代のメディア環境において、Google Discoverによる瞬間的かつ大量のトラフィックはニュースメディアを運営する編集組織にとって読者の情報体験をリアルタイムによりよくするため動向を注視するものとなっています。読者の動きを翌朝に知ったとしても、読者はすでにそこにいません。 これまでGoogle Discoverのトラフィックを確認する最善の方法はGoogle Search Consoleでした。しかし上で述べた瞬間的なトラフィックに対応するために、Chartbeatは1つのダッシュボードですべてのトラフィックをリアルタイムに確認できることがパブリッシャーにとって価値のあることだと考え、2023年4月よりリアルタイムダッシュボードにGoogle Discoverのトラフィック表示を開始しました。それ以降、Google Discoverによるトラフィックは8月を除くすべての月で全体トラフィックに占める割合が増加をつづけ、日本のChartbeatネットワークにおける2023年最大の外部トラフィック源はGoogle Discoverとなりました。 ## 合計ページビュー 日本のChartbeatトラフィックのページビュー合計を月ごとの推移で示しています。2月の落ち込みから8月まではおおむね増加し、9月からは減少しました。 ![](/images/posts/4e215999ae/pv_cb.jpg) ## 合計エンゲージ時間 合計ページビューが増加をつづけた4月、合計エンゲージ時間(Total Engaged Time)は減少しました。合計時間は大規模なニュースメディアに偏る傾向があるため、同時期に話題となった地方統一選挙や陸上自衛隊のヘリ墜落事故、岸田首相の襲撃事件、教職員人事などのニュースに注目することになります。 10月においては、減少していた合計ページビューと対照的に合計エンゲージ時間は増加しました。 また月ごとの平均のエンゲージ時間(Average Engaged Time)は36〜40秒で推移しました。 ![](/images/posts/4e215999ae/engage.png) ## 合計クオリティページビュー 一定より滞在時間が長ければユーザがコンテンツにしっかり接している可能性が高いと考え、Chartbeatではユーザが15秒以上滞在したページビューをクオリティページビュー(Quality Pageviews)と呼んでいます。合計の推移は合計ページビューよりも、合計エンゲージ時間に近い形になっています。 合計ページビューに対しての合計クオリティページビューの割合は、年間を通じて38〜42%で推移しました。よって、日本のトラフィックの約6割は15秒以下のページビューということがわかります。ここでいうページビューには、トップページや一覧ページのような読者が目的のコンテンツに辿りつくまえのインデックスページのページビューも含まれている点に注意してください。 ![](/images/posts/4e215999ae/qpv_cb.jpg) ## ロイヤルティ(訪問頻度)ごとのページビュー割合 ユーザのロイヤルティ(訪問頻度)ごとのページビューを、初訪問のユーザによるページビューを新規、16日間のうち8日間以上訪問したユーザによるページビューをロイヤル、それ以外のユーザによるページビューを再訪問として分類しています。 PVが増加しエンゲージ時間が減少した4月、ロイヤルユーザのページビュー割合は減少し、再訪問ユーザによるページビューは増加しました。PVとエンゲージ時間がもっとも落ち着いた2月、ロイヤルユーザのページビュー割合は1年のうち最高値となりました。 新規ユーザによるページビュー割合は、年末に向けて上昇を続けました。 ![](/images/posts/4e215999ae/loyalty_cb.jpg) ## デバイスごとのページビュー割合 ユーザの利用デバイスごとのページビュー割合を表しています。通年で大きな変化は見られません。ここで何度でも言えることとしては、サイト最適化の優先順位をタブレットに傾けるパブリッシャーはおそらくいないだろうということです。8割弱のページビューはモバイルによるものです。 ![](/images/posts/4e215999ae/devices_cb.jpg) ## 流入経路ごとのページビュー割合 リファラーをその種別ごとに分類し、ページビューにおけるその割合を示しています。導入で示したとおり、サイト内回遊(グラフ黄色の線)と検索(グラフ緑色の線)がともに30%前後で推移しました。後述するGoogle Discoverの上昇傾向がこのグラフの検索の線で見られます。 外部リンク(グラフ青色の線)は年間を通じて14〜17%で推移しました。Google Discoverと同様、瞬間的に大量のトラフィックをもたらすYahoo!ニュースからのトラフィックはここに含まれます。 ![](/images/posts/4e215999ae/refferer_cb.jpg) ## 主要なディストリビューションごとのページビュー割合 主にトラフィックをもたらす4つのディストリビューションについて、そこから生まれるページビューの割合を示しています。 4月の途中から計測をはじめたGoogle Discoverは5月分からグラフに追加されています。冒頭で触れたとおり、Google Discoverは計測開始以来8月を除くすべての月で前月から増加しました。Google Searchの減少は、Discoverの計測がはじまったことによる振り替えの結果です。 日本に関しては、イーロン・マスクによる買収騒動とブランド変更があったX(旧Twitter)、グローバルで[トラフィックの減少がレポート](/posts/02d0e53483)されたFacebookの影響は受けなかったと言えるでしょう。 ![](/images/posts/4e215999ae/distribution_cb.jpg) ## 最後に メディアを訪れるユーザに価値を与える深いエンゲージメントはWebで運営されるメディアにとって不可欠なものとなっています。その機会をもたらすトラフィックの動向がパブリッシャーにとって有意義なものになることを願っています。 --- ## Googleアナリティクスを超えて: なぜパブリッシャーにリアルタイムデータが不可欠なのか URL: https://ximera.com/posts/e5b6e6dd63 公開日: 2024-01-29 著者: APRIL ZENG, NAFEE RASHID by NAFEE RASHID AND APRIL ZENG([原文](https://blog.chartbeat.com/2022/08/19/why-real-time-data-is-essential-for-publishers/))公開日:01.29.2024 昨年Googleがユニバーサルアナリティクスを廃止したことで、ユーザはGoogleアナリティクス4に移行するか、リアルタイム分析のための代替手段を探すことになりました。この移行とユニバーサルアナリティクス内のリアルタイムレポートを修正しないというGoogleの決定の結果、多くのパブリッシャーはコンテンツを正確にモニターすることができなくなり、リアルタイムのモニタリングを取り戻そうとしています。 [リアルタイムアナリティクス](https://lp.chartbeat.com/real-time-google-analytics-alternative)はパブリッシャーにとって不可欠です。読者がコンテンツとどう関わっているかを簡単に把握できるので、トレンドを察知し、コンテンツパフォーマンスを最適化するための素早いアクションを取ることが可能になります。リアルタイムアナリティクスを導入していないメディアチームは、コンテンツの意思決定(何をいつ変更するか、そして何よりもなぜ変更するか)について、整合性を見出すのに苦労することが多いでしょう。そこで、リアルタイム分析が編集者の直感とデータ主導の洞察のギャップを埋め、チームが効果的かつ十分な情報に基づいた行動を取れるようにします。 パブリッシャーはChartbeatの[ユニークなリアルタイムツール](https://chartbeat.jp/products/dashboards/)で、Googleのリアルタイムアナリティクスと同じ指標を不要なデータなくシンプルに確認・分析できます。秒単位のリアルタイムトラッキングから、独自の読者行動指標、記事パフォーマンスからインサイトを得られる自動配信まで、Chartbeatは読者を詳しく、素早く照らし出します。 Chartbeatのリアルタイム分析ソフトウェアは非常に使いやすく効果的です。ニューヨークタイムズ、ネットフリックス、ワシントン・ポスト、アルジャジーラなど、70カ国以上の企業メディアブランドから信頼を得ています。大手のパブリッシャーがロイヤルユーザを育成するためにChartbeatのリアルタイムデータを活用している方法をいくつか紹介します。 # 競争の激しいオンラインコンテンツ市場で優位に立つ ブラジルでもっとも人気のあるニュースメディアのひとつであるUOLは、[読者のエンゲージメントをリアルタイムで分析する](/posts/48cd31afa6)必要に迫られ、Chartbeatの導入を決めました。コンテンツを素早く最適化し、配信戦略を改善、競争の激しいオンラインニュース市場で優位に立つためです。読者エンゲージメントチームのメンバーは「これまではできなかった(カテゴリごとに)リアルタイムでのデータのフィルタリングができるので、読者を分類して把握することができる」といいます。 Chartbeatのリアルタイムダッシュボードは、トラフィックソース(流入経路)、位置情報、読者のデバイス、リファラー、サイト訪問の頻度など、サイト全体のデータをリアルタイムに提供します。また、プラットフォームやチャネル、デバイスを問わず、読者がどんなふうにコンテンツに接しているか把握できるため、サイトにとって最もインパクトのあるタイミングで読者のエンゲージメントを最適化することが可能です。 ![](/images/posts/e5b6e6dd63/Untitled.png) リアルタイムダッシュボードの画面。サイト全体のデータをリアルタイムに確認できる。 より深く知るために、セクション(カテゴリやタグ)、著者、場所、リファラーなどでリアルタイムのトラフィックデータをフィルタリングできます。新規訪問者とロイヤル読者の行動の違いや、一般ユーザと購読者(サブスク読者)の行動の違いを研究することもできます。メディアのネイティブアプリにChartbeatを適用すれば、複数のプラットフォームに渡ってトラフィックをモニターすることもできます。 重要なのは、Chartbeatがこれらの指標を数秒ごとに更新するため、最初の兆しを知った時点で対策を講じることができることです。一方、Googleアナリティクス4では、直近30分間のアクティビティしか表示されないため、パブリッシャーにとっては推測の域を出ません。 # 読者が去った後ではなく、読者がサイトにいる間にページを最適化する Chartbeatはチームにリアルタイムデータを提供するだけでなく、ヘッズアップディスプレイやヘッドライン・テスティング(記事タイトルのABテスト)、イメージ・テスティング(画像のABテスト)などの強力な最適化ツールを備え、データを実用的なものにします。 ## ヘッズアップディスプレイ(Heads Up Display) ![](/images/posts/e5b6e6dd63/Untitled-1.png) ヘッズアップディスプレイを表示したサイトトップページ。緑や赤のポップアップ表示と、画面右上のフローティングがヘッズアップディスプレイによるもの。 [ヘッズアップディスプレイ](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)を使用すると、ダッシュボードを開かなくても、トップページ、記事ページ、ランディングページで主要データを表示できます。優れたパフォーマンスの記事を表示し、隠れている可能性の高いチャンスを見つけ、リンクのパフォーマンスを簡単にレビューして、読者がサイト上のどこにいるかを確認できるため、リアルタイムの素早い意思決定が可能になります。 ## 記事タイトルとサムネイルのテスト(Headline and Image Testing) ![](/images/posts/e5b6e6dd63/Untitled-2.png) Headline Testingの画面 Chartbeatの[ヘッドラインテスティングとイメージ・テスティングの機能](https://support.chartbeat.jp/edu/headline-testing/)は、どんな見出しやサムネイル画像が読者のクリックを促して、記事を読んでもらえる可能性が高いかを判断するリアルタイムのテストを簡単にすることできます。これらのテストによってクリック後の読者のエンゲージメントを最適化できるので、コンテンツの露出、読者のエンゲージメント、読者のロイヤリティを最大化に向けてトップページ戦略を適応させるのに役立つツールです。 ある大手スポーツ出版社のシニア・オーディエンス・デベロップメントマネージャーは「Chartbeatを導入する前は、トップページの見出しテストは行なっていなかったと思います。大規模なユーザーテスト調査はありましたが、それには6か月かかりました。非常に手間がかかり、時には気が遠くなるほど複雑でした。Chartbeatを使えば、その縮小版で、リアルタイムに、以前はできなかったような方法で、即座にフィードバックを得ることができます」。 # 記事パフォーマンスの自動配信 Chartbeatのスパイクアラート(Spike Aleart)やインサイトバッジ(Insights Badge)などの通知機能でも、リアルタイムのデータを簡単に把握できます。スパイクアラートはページへのトラフィックが突然急増した場合にテキスト、メール、Slackで通知します。インサイトバッジは、その記事の新規読者の獲得率や読者維持率が高いかどうかを教えてくれるので、配信チャネル戦略を調整することができます。 自動の日次レポートには、トラフィックやリファラーの傾向、パフォーマンスの高い記事など、昨日の読者に関する注目すべきインサイトを強調する「Yesterday’s insights(昨日のインサイト)」セクションがあります。この結果をもとに、トレンドやユーザーエンゲージメントを組織全体の関係者に知らせることができます。 ![](/images/posts/e5b6e6dd63/Untitled-3.png) # 使いやすい分析機能と顧客サポートでチームを強化 多くのコンテンツ分析プラットフォームは複雑で、時間のかかるトレーニングが必要になりますが、Chartbeatではリアルタイムデータをすぐ理解できるようになります。あなたのチームの編集者も数日で(データからわかったことを)コンテンツ戦略に反映させることができるでしょう。あるパブリッシャーでは、Chartbeatに移行した後、新入社員の生産性向上までの時間が20%増加しました。 > 複雑なツールは、膨大なトレーニングが必要です。このようなツールは入社後数カ月で使いこなすことはできませんが、Chartbeatなら数日で生産性が向上します。Chartbeatはシンプルでユーザーフレンドリーです。 > Chartbeatのダッシュボードやツールの使いやすさに加え、強力なサポートチームと[ドキュメント](https://support.chartbeat.jp/)が、エンジニアリング、データ、オーディエンス、編集チームにリソースを提供します。拠点がどこであっても、テクニカル・ソリューションとカスタマー・サクセス・チームが、お客様一人ひとりに合わせたサポートを提供します。 # コンテンツの意思決定を次のレベルへ あらゆる規模のパブリッシャーにとって、リアルタイム分析はトラフィックを獲得し、読者を惹きつける上で重要な役割を果たします。サイトの読者、流入元、コンテンツの組み合わせを分析することで、コンテンツ戦略を強化するためのデータに基づいた意思決定を瞬時に行うことができます。 Chartbeatのリアルタイム分析は、Googleのユニバーサルアナリティクスがリアルタイムトラッキングを廃止したことで生じたギャップを埋めるだけでなく、トップページをモニターして最適化するためのオーバーレイ表示(Heads Up Display)、記事タイトルやサムネイルのテスト機能、自動化されたインサイト配信、Chartbeatスタッフの優れたサポートが含まれています(*日本のみなさまは日本総代理店としてChartbeatと連携した[株式会社キメラ](https://ximera.com/)がサポート致します*)。 リアルタイムデータのパワーを取り戻し、さらに多くのことをやっていきましょう。 --- ## 広告化するワイヤーカッターと有料化するソーシャルメディア URL: https://ximera.com/posts/dbc533b394 公開日: 2024-01-26 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #57|Ikuo Morisugi| 2024.01.26 ![](/images/posts/dbc533b394/Advertising-ized_Wirecutters_and_Paid_Social_Media.jpg) # はじめに デジタルメディアの世界は、常に変化と進化を遂げています。2023年は無料もしくは低額の広告付きストリーミングサービスの台頭と同時に、[ソーシャルメディアにおいては有料サブスクリプションモデルへのシフト](/posts/b17161a7dc)が目立ちました。ストリーミングメディアとソーシャルメディアにおいてそれぞれの方向から広告と有料サブスクのハイブリッドモデルへ移行するトレンドが起こっています。本稿ではこのトレンドの詳細を取り上げ、今後のユーザ獲得に関する示唆を得ることを目的としています。 # 広告化するワイヤーカッターサービス USでは従来テレビで消費する動画サービスはケーブルテレビが支配的でしたが、Netflix、Disney+、Huluなどといった有料のSVOD(Streaming Video On Demand)のストリーミングサービスが人気を博し、ケーブルテレビのケーブルやそのコストを切る意味合いから「コードカッター」という俗称でシェアを伸ばしてきました。近年ではそれに加えFreevee、Pluto TV、Roku、Tubiなどに代表される原則無料で広告ありの多チャンネルストリーミング動画サービスの[FAST(Free Ad-supported Streamig Television)](https://en.wikipedia.org/wiki/Free_ad-supported_streaming_television)が大きく成長しており、Sanba TVのレポートをTechCrunchが伝えたところによると、[USの視聴者の約3分の1がFASTを利用](https://techcrunch.com/2023/08/09/free-ad-supported-tv-streaming-services-are-booming-1-in-3-u-s-viewers-tune-in/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAABfiMx6wq9ufGZED3tyop6Lu40JgTcsNAdfYYe4onqsySZUOsjqPmfLSUvXnIhAs3IkNQLhBnngoMqY8WHSa6ngqiji-CR7B0RD6ylhhONQm-r4CUkVlXLlqv7epVM30cS7Uaf6XQ1JrkejAqVy1fXxrCH7sCAgeYk6obQVMMxk2)しています。FASTは、多チャンネルで自分の興味があるコンテンツを見つけられるケーブルテレビや有料サブスクリプションサービスに対して、無料でそれに近い体験を得られるコストメリットのある強力な代替案となりつつあります。 Freevee、Pluto、Tubi、Rokuなど2023年はFASTが大きく動画視聴数が伸長 出典: [](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/)[Samba TV](https://www.samba.tv/resources/h1-2023-us-state-of-viewership-report) via TechCrunch Freevee、Pluto、Tubi、Rokuなど2023年はFASTが大きく動画視聴数が伸長 出典: [](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/)[Samba TV](https://www.samba.tv/resources/h1-2023-us-state-of-viewership-report) via TechCrunch 一方で、Hulu、Prime Video、Netflixなど以前から存在している有料サブスクリプションサービス(SVOD)は、市場の飽和と消費者のコスト意識の高まりにより、伸び悩んでいます(比較的新興かつ独自コンテンツが強いParamount、ESPN、Disney、Appleは未だ伸長中)。特にNetflixは2022年と2023年の比較では視聴数が前年比で減少し、厳しい状況に直面しています。 この市場変化に対応するため、NetflixとDisney+をはじめSVOD各社は2022年頃から広告付き低額もしくは無料プランの導入を始めました。Prime Videoについても2024年1月より[広告付きプランを開始](https://www.forbes.com/sites/bradadgate/2024/01/11/amazon-prime-video-is-launching-ad-supported-tier-later-this-month/?sh=590e35a666f7)することとなっています。これらの大手SVODサービスは広告収入を増やしつつ、より多くの視聴者にリーチする新たな戦略を取り入れています。 SVOD各社が広告ありプランを次々とロンチ(赤点)出典: [OC&C](https://www.occstrategy.com/en/about-occ/news-and-media/article/id/7568/2022/10/after-the-break-coming-soon-from-netflix-and-disney) SVOD各社が広告ありプランを次々とロンチ(赤点)出典: [OC&C](https://www.occstrategy.com/en/about-occ/news-and-media/article/id/7568/2022/10/after-the-break-coming-soon-from-netflix-and-disney) このようにUSにおいてはFASTおよびSVODの広告付きプランはもはやトレンドというよりデファクトスタンダードに近い状況となっています。日本ではSVODについては広告付きプランがグローバルにロンチされているので実感できる部分ですが、FASTについてはまだここまでの状況にはなっていません。一方で日本は民法テレビ、ケーブルテレビ、YoutubeやAbema TVなどの無料ストリーミング、有料SVODの間で、テレビ視聴時間の取り合いが起こっていますが、ここにFASTが入ってくる余地は十分あるかと考えられます。 # 有料サブスクへ向かうソーシャルメディア 2017年にiOSとMacでCookieの利用規制する[ITP(Intelligent Tracking Prevention)](https://headerbidding.co/intelligent-tracking-prevention-itp/)が実装後、2020年には[3rd Party Cookieは完全にブロックされ、1st Party Cookieについても24時間しか機能しない](https://service.aainc.co.jp/product/letro/article/what-is-cookie)(ローカルストレージは7日間)ようになっています。またiOS 14.5、iPadOS 14.5、tvOS 14.5以降で[ATT(App Tracking Transparecy)](https://developer.apple.com/jp/app-store/user-privacy-and-data-use/)が導入され、ユーザがターゲティング広告を受けないように任意で各アプリ毎にトラッキングを制限できるようになっています。 またGoogleも広告収益をメインとする企業ながら世界的なデータプライバシー規制に追従せざるを得ず、PCおよびAndroidのChromeにおける3rd Party Cookieアクセス規制を先延ばしにしてきましたが、これを[段階的に廃止することを2023年12月に発表](https://japan.googleblog.com/2023/12/chrome-cookie.html)しました。 上記のようにAppleをはじめとしてOSを提供する企業で個人情報の規制がより加速していく流れの中で、特にターゲティング広告が機能し難くなっています。このような状況の中で広告売上が大きな収益源であるソーシャルメディア各社は有料サブスクをロンチし広告とハイブリッドのビジネスモデルへ転換させて、収益の補填を図ろうとしています。 例えば、[前回の記事でも取り上げた](/posts/b17161a7dc)通り、Snapchat+は700万人以上のユーザーを獲得し、ソーシャルメディアにおける有料サブスクモデルの成功例となっています。次点でソーシャルメディアで有料サブスクによりユーザ獲得しているのが、X(旧Twitter)です。有料版の[X Premium](https://help.twitter.com/ja/using-x/x-premium)は2023年8月時点までで[82万人程度のユーザーを抱えている](https://mashable.com/article/x-premium-twitter-blue-subscriptions-creator-monetization-program)と見積もられており、Snapchat+ほどの成功は収めていませんが、2023年10月には新しく[ベーシックプラン、プレミアムプラスプランを追加](https://gigazine.net/news/20231030-x-twitter-premium-plus/)し、市場での立ち位置を強化しようとしています。 Metaについては、ヨーロッパにおいてユーザのプライバシーを侵害したとして[3.9億ユーロ(約600億円)の罰金を科せられ、EUの裁判所から新たなターゲティング広告の配信方法の見直し](https://forbesjapan.com/articles/detail/66448)を求められました。その対応としてFacebookとInstagramは2023年10月にヨーロッパ限定で広告なしの有料プラン(Web版 9.99ユーロ(約1500円)、iOS版12.99ユーロ(約2000円)の[導入を開始](https://about.fb.com/news/2023/10/facebook-and-instagram-to-offer-subscription-for-no-ads-in-europe/)しました。おそらくFacebookとしては有料サブスクを導入することは本意ではないものの、有料版でターゲティング広告をなしにできるオプションをユーザに提示することでGDPRに対応する姿勢を見せました。 さらにTikTokも[有料広告なしプランを$4.99(約750円)/月USでテスト中](https://www.androidauthority.com/tiktok-testing-ad-free-monthly-subscription-plan-3370353/)と報道されており、各ソーシャルメディアが広告なしプランもしくはそれも含むプレミアムプランへの移行トレンドが起こっています。 このようにプライバシー規制が進む中で大手ソーシャルメディアは機能やサービスに違いはあれど、広告なしの有料サブスクプランを各社提供しつつある状況です。 TikTokはUSのみで広告なし有料プランをテスト中 出典: [Android Authority](https://www.androidauthority.com/tiktok-testing-ad-free-monthly-subscription-plan-3370353/) TikTokはUSのみで広告なし有料プランをテスト中 出典: [Android Authority](https://www.androidauthority.com/tiktok-testing-ad-free-monthly-subscription-plan-3370353/) # コードカッターとソーシャルメディアのトレンドが与える影響 今後FASTのユーザとソーシャルメディアの有料サブスクユーザがどれほど増えるか次第ですが、ソーシャルメディアでの広告量が減少し、コードカッターでは逆に広告量が増加した場合、各企業はマーケティング戦略の再考を求められます。改めて効果的なチャネルと戦略を模索する必要があり、場合によってはFASTのような新しいメディア形式への適応が求められます。 また、これまで「認知度獲得ならモバイルのディスプレイ広告が良い」「コンバージョンについてはFacebookやInstagram広告が一番獲得効率が良い」といった実感/経験が業界全体でありましたが、FASTの台頭や、より強化されるプライバシー規制でターゲティング広告の精度が落ちていく中、その感覚を徐々にアップデートしていく必要もあります。広告経由でのユーザ獲得を目指す企業は、これまでの戦略を再考し、FASTプラットフォームや新しいソーシャルメディアモデルへの適応を図り、ターゲットオーディエンスに効果的にリーチする方法を見つけなければなりません。これには、新しい視聴者層に適切な広告キャンペーンの企画やコンテンツおよびそのフォーマットの見直しが必要となります。 プロダクト観点では、無料サービスと有料サービスの両方で活動する消費者の行動パターンを把握し、新たなメディアコンテンツやフォーマットをどのように受け止めているかを理解し、それに応じたマーケティング戦略を立てることが重要となってきます。プライバシー規制が進むことで、ターゲティング広告が機能せず、仕方なしに幅広いオーディエンスに訴求していくような広告コンテンツに変化していかざるをえないことも考えられます。 今回取り上げたトレンドはかなり広範でグローバルに起こっている変化です。これまで以上に新たな規制、新たなメディアの動きを理解した戦い方が必要になってきます。次々に訪れる各社の次の展開を先取りする戦略を練ることができるよう本連載がその一助になれますと幸いです。 --- ## ニュースはいつ古くなるのか? トラフィックソース、トピックなどが記事の寿命に与える影響 URL: https://ximera.com/posts/ef450e9890 公開日: 2024-01-23 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2023/06/14/whats-the-lifespan-of-an-article/))公開日:2024.01.23 ニュースが報じられるたびに読者がリアルタイムで通知を受け取る時代に、記事が読者の関心を引きつける時間はどれくらいなのでしょうか。 それを知るために、Chartbeat社のデータ・サイエンス・チームはネットワークにある記事がページビューの大部分を集めるのにかかる時間を調べました。また記事の寿命に影響を与える要因について、主要なトラフィックソース、記事のトピック、さらには公開時間が読者に与える影響についても調査しました。 ## 24時間ニュースサイクルの新しい意味 [80/20の法則がページビューとエンゲージメントにどのように適用されるか](/posts/d1a20a2ebc)についての調査から、私たちは記事の寿命を公開後1週間の間にページビューの80%に達するのにかかる時間と定義しています。 ![](/images/posts/ef450e9890/Untitled.png) ページビュー80%の記事寿命の分布 2022年6月から2023年2月までにChartbeatネットワーク上で公開された2700万件以上の記事を見てみると、ほとんどの記事が公開後24時間以内にページビューの80%に達し、48時間経過した時点でほとんどの記事で終わっていることがわかります。このことは記事が翌日以降もトラフィックを集め続けることを意味するものではありませんが、[公開後の最適化という点](https://blog.chartbeat.com/2020/07/15/uol-real-time-analytics/)で、最初の24時間がいかに重要であるかを示しています。 ## トラフィックソースは寿命にどう影響するか ネットワーク全体のスケールでデータを調査することに加えて、私たちはトラフィックソース(流入経路)によって記事の寿命に顕著な違いがあるかどうか確認したいと考えました。たとえば、ソーシャルトラフィックによって盛り上がった記事は、検索によって盛り上がった記事よりも長持ちするのかどうか、などです。 [主要トラフィック・ソース別記事寿命(ChartbeatのUIの色付けとは異なることに注意してください)](https://public.flourish.studio/visualisation/13542236/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/13542236) 主要トラフィック・ソース別記事寿命(ChartbeatのUIの色付けとは異なることに注意してください) 私たちの調査によると、サイト内回遊(Internal)のトラフィックによって誘導された記事は、約20時間でページビューの80%にもっとも早く到達します。このような記事はトップページで大きく取り上げられるもので、過去の調査から長文のレポートよりもニュース速報やライブブログのような消化しやすい形式の傾向にあることがわかっています。外部ソース(External)による記事も完了時間の中央値が21時間で似たような動きです。 一方、ソーシャル(Social)主導の記事は26時間でページビューの80%に到達し、検索(Search)主導の記事は完了時間の中央値が36時間と最も長くなっています。このことから、ニュース速報はすでにサイトにいる読者によって素早く消費されることが多い一方で、検索エンジンのパフォーマンスに最適化された記事やソーシャルメディア上の話題の一部となった記事は寿命が長くなることがわかります。 --- ### グラフィックの解読 この記事の最初の図はヒストグラムと呼ばれます。2番目の図はカーネル密度プロットで、正規化または平滑化されたヒストグラムと考えることができます。ヒストグラムが出現回数を数え、それに従ってプロットするのに対し、カーネル密度プロットはヒストグラムを取り、曲線の下の領域を1に正規化します。これにより、各値の確率と範囲、この場合ページビューが80%で減少する可能性が最も高くなる、ということを示しています。 --- ## どんなトピックがほかより長生きするか トラフィックソースが記事の寿命に影響するように、トピックも同様に影響します。トピック別に寿命を調べてみると、ニュース速報や時事問題に焦点を当てた記事(たとえば、天気、災害、スポーツなど)は、科学、テクノロジー、ライフスタイル、レジャーなどの深い読み物よりも寿命が短いことに驚く方はいないでしょう。たとえば、天気や災害に関する報道は、1日以内にページビューの80%を獲得するのに対し、ライフスタイルや科学に関連する記事の完了時間の中央値は34時間と36時間です。 ![](/images/posts/ef450e9890/Untitled-1.png) トピック別記事寿命の中央値 ## 公開時間は寿命にどう影響するか 私たちの調査によると、寿命は公開時間によってあまり変わりません。ある例外を除いて、記事は21~24時間後にページビューの80%に達します。しかし、午前4時に公開された記事の寿命の中央値はわずか17時間でした。 [曜日別の記事寿命](https://public.flourish.studio/visualisation/13541827/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/13541827) 曜日別の記事寿命 曜日別に見ると、日曜日に公開された記事がページビューの80%に到達するのに必要な時間は22時間と最も短く、金曜日に公開された記事が寿命に到達するのに必要な時間は29時間と最も長くかかります。 ## デバイスとロイヤリティについて 読者が記事の閲覧に使用するデバイスによって記事寿命が受ける影響はごくわずかです。デスクトップとモバイルの両方で読まれた記事は、24時間でページビューの80%に達し、タブレットでも23時間でほぼ同じです。 ![](/images/posts/ef450e9890/Untitled-2.png) 読者ロイヤルティによる記事寿命 読者のロイヤルティ(サイトへの訪問頻度)別に記事寿命を見てみると、ロイヤルティが高い読者の中央値は17時間で、リピーターは26時間、新規読者は30時間となっています。先ほどサイト内回遊(Internal)で見たように、ロイヤルティが高い読者はより頻繁にサイトを訪れるため、記事公開後すぐに記事を読む可能性が高くなります。 ## 記事寿命についてのポイント トピックやトラフィックソースのようないくつかの要因が記事の寿命に顕著な影響を与える一方で、デバイスのタイプのような要因はそれほど影響しません。記事がどこでトラフィックを得るか、どのデバイスで読まれるかに関わらず、この調査から得られた最も重要な発見は、平均的な記事が最初の24時間でページビューの80%を獲得するのであれば、パブリッシャーはコンテンツの測定と最適化を明日まで待つ余裕はないということです。[リアルタイムの指標](https://blog.chartbeat.com/2022/08/19/why-real-time-data-is-essential-for-publishers/)を見て調整を行うために翌日まで待つことは、彼らの努力がせいぜい20%の読者に影響を与えることを意味し、これはデータサイエンスの理解の助けは必要ない統計となります。 調査から得られたほかのポイント: - 検索による記事の寿命は最も長く、サイト内回遊による記事の寿命は最も短い。 - ニュース速報はライフスタイルやサイエンスよりも早く消費される。長続きするトピックの記事を多く取り入れることには利点があるかもしれないが、適切な編集による匙加減を維持することが重要であり、読者を追いかけるために1つの戦略にすべてを傾けることはない。 - 記事にはサイト外での寿命もある。[選挙のようなイベント](https://blog.chartbeat.com/2020/12/03/audience-data-us-election/)では、検索からのページビューは選挙の夜に上昇しピークに達し、その後急速に落ち込むが、ソーシャルからのトラフィックはイベント後の数日間も高いままであることが分かっている。[Tubular Labs](https://tubularlabs.com/?__hstc=165933921.04b4b3d00c16cc4ee031cffdae398bd7.1690955182135.1704776876820.1704778372507.76&__hssc=165933921.1.1704778372507&__hsfp=935901737)のソーシャル動画調査でも同様のロングテールが見られ、読者がサイトを離れた後にも読者を惹きつけるチャンスがあることが再認識できます。 --- ## 2023年第4四半期:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/b75e41d1fd 公開日: 2024-01-15 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2024/01/09/global-audience-insights-q4-2023/))公開日:Jan 15, 2024 2023年第4四半期(10〜12月)、中東では平均エンゲージ時間(Average Engaged Time)が増加し、東南アジアでは検索トラフィックが増加、アフリカ、中・東欧(中東ヨーロッパ)、中央アジアではソーシャルからのページビューが回復しました。 第4四半期の調査から得られたグローバルなオーディエンスに関するインサイトについては、以下をご覧ください。 *これまでのインサイトと比較する: [Q3 2023](/posts/4cac6d716a) / [Q2 2023](/posts/41b6aec21d) / Q1 2023* ## 中東と中・東欧のエンゲージ時間は最高を維持 中東の読者の平均エンゲージ時間は40.7秒で、前四半期の33.9秒から増加しました。中・東欧が36.5秒、アジア・太平洋が29.4秒でそれに続いています。 [https://public.flourish.studio/visualisation/16358224/](https://public.flourish.studio/visualisation/16358224/) 中東と中・東欧の増加以外では、ほとんどの地域で前四半期比で平均エンゲージ時間がわずかに減少しています。 ## モバイルのページビューは年末まで高水準を維持 第4四半期、東南アジアのページビューの87%がモバイル端末によるものでした。中央アジアとアフリカがそれぞれ84%と77%で続いています。 [https://public.flourish.studio/visualisation/16358883/](https://public.flourish.studio/visualisation/16358883/) ## 東南アジアおよびアジア太平洋地域で検索トラフィックが増加 第4四半期、東南アジアのページビューの41%が検索によるもので、第3四半期の39%から増加しました。アジア・太平洋地域でも検索からのページビューが増加、23%から25%に上昇しました。 [https://public.flourish.studio/visualisation/16358406/](https://public.flourish.studio/visualisation/16358406/) 減少したのは北米だけで、20%から19%に減少しています。 ## ソーシャルからのページビュー ソーシャルネットワークからのページビューは前四半期、アフリカ、中東欧、中央アジアで増加しました。アフリカが19%から24%へと最も多く増加しています。 [https://public.flourish.studio/visualisation/16358445/](https://public.flourish.studio/visualisation/16358445/) 第3四半期と比較して減少した地域はなく、年初以来の減少傾向を覆しています。 ## ロイヤルティが最も高いのは北欧と中・東欧 ロイヤルティの高い読者によるページビューの割合が最も高かったのは北欧で48%。中・東欧が44%と続きます。 [https://public.flourish.studio/visualisation/16358464/](https://public.flourish.studio/visualisation/16358464/) 前期比で最も増加したのは中東で、24%から28%へと改善しました。 ## 第4四半期のリサーチ結果 1. 平均エンゲージ時間は通常、年末に低下する 中東と中・東欧を除き、第4四半期の平均エンゲージ時間は減少しました。これは近年見られる繰り返しのパターンで、2024年の第1四半期にはエンゲージメントが上昇すると予想されます。 1. ソーシャルからのページビューは回復している 2023年上半期、ソーシャル・トラフィックは外部トラフィックの23%から20%に減少しましたが、これはニュースやメディアサイトへのFacebookトラフィックの減少が大きな要因です。すべての地域で下半期のソーシャル・トラフィックの割合は横ばいか増加でした。 1. オーディエンスのモバイル化 どの地域でもサイト訪問の少なくとも68%はモバイルデバイスによるもので、そのうち2つの地域では80%を超えています。 --- ## 「80対20の法則」はページビューとエンゲージメントにどう影響するのか URL: https://ximera.com/posts/d1a20a2ebc 公開日: 2024-01-11 著者: Chartbeat by Chartbeat([原文](https://lp.chartbeat.com/resource-library/80-20-rule-pageviews-engagement))公開日:Jan 11, 2024 ![](/images/posts/d1a20a2ebc/80-20-rule-pageviews-engagement.jpg) 「80対20の法則」は20%の努力から80%の結果が生まれるという考え方です。パレートの法則としても知られています。実際には20%の作物から80%の野菜が収穫される農場や、20%の顧客が80%の売上を占めるビジネスのようなかたちでしょうか。業界を問わず、ある取り組みがほかの取り組みよりも多くの価値を生み出し、それらの価値の推進要因を特定することで効率性と生産性を向上させることができるということです。 出版で言えば、読者の大部分を占める記事を特定することには明らかなメリットがあります。これを使えば、パブリッシャーはROI(投資利益率)につながるようなコンテンツを再現できるだけでなく、[最適化ツールを使って](https://chartbeat.com/products/optimization/)そのセグメントの成功している特性を読者の少ないロングテールのコンテンツに適用することもできます。 Chartbeat社のデータサイエンスチームは出版の世界が80対20の法則をどの程度忠実に守っているか調べるため、70カ国以上にわたる数千のウェブサイトを分析し、ページビューの大半を占める記事の割合と、その割合がサイトの規模やテーマなどの要因によってどのように変わるのかをまとめました。 # ページビューの80%は20%(またはそれ以下)のコンテンツから生まれる ![](/images/posts/d1a20a2ebc/Untitled.png) ページビューの80%を占める記事の割合 - 全サイト 私たちのすべての研究においてグローバル・パートナーの大規模なネットワークを持つことは非常に有益です。しかし生データへのアクセスよりも、それをどのようにコントロールし解析できるかを知ることのほうがさらに重要です。とくにこの分析ではサイトの規模をコントロールしないと調査結果が大規模なサイトの行動に偏り、中小規模のパブリッシャーの真の姿が見えなくなってしまいます。 たとえば、2022年1月から2022年9月までのネットワーク全体を見てみると、ページビューの80%がわずか6%の記事からもたらされていることがわかります。しかし、調査結果をホスト別にグループ化すると、ほとんどのサイトが20%以下の記事から80%のページビューを得ていることがわかります。全ホストの平均は21%です。この2つの数値の差は、サイトが大きくなればなるほどページビューがそのトップクラスの記事に集中することを示す最初の手がかりになります。 [https://www.datawrapper.de/_/5A3B8/](https://www.datawrapper.de/_/5A3B8/) Chartbeatブログの読者はよくご存知のように、ページビューは[コンテンツ最適化戦略](/posts/c467535a93)に含めるべき指標の1つに過ぎません。さらに、ネットワーク全体のエンゲージメント時間の分布を調べると、エンゲージメントはページビューよりも少ない記事で多くのエンゲージメントを集めていることがわかりました。実際、19%の記事がエンゲージタイムの96%以上を占めています。 # サイトの規模によるページビューカバー率の違い 先に示したとおり、サイトの規模が大きくなるにつれて、ページビューの大半を占める記事の割合は小さくなります。この傾向を複数のオーディエンスサイズでより詳細に調べるため、調査を4つのカテゴリーに分けました。 Tinyは1日あたり1,000ページビュー未満のサイト、Smallは1日あたり1,000~10,000ページビューのサイト、Mediumは1日あたり10,000~100,000ページビューのサイト、Largeは1日あたり100,000ページビュー以上のサイトです。 [https://www.datawrapper.de/_/djVMm/](https://www.datawrapper.de/_/djVMm/) グラフで示すと、規模の大きいサイトではトラフィックの大部分を誘導するのに必要な記事の数が少なくなっていることがわかります。Largeのサイトでは、ページビューの80%をわずか14%の記事から得ているのに対し、Tinyのサイトでは、同じ割合のトラフィックを35%の記事に分散しています。Smallのサイトでは27%、Mediumのサイトでは平均21%です。このことは、大規模のサイトが少数のバイラル記事を活用して大きなトラフィックを得ることができる一方で、小規模のサイトが同じことを行うには、より幅広いコンテンツに頼らざるを得ないという考え方を強くしています。 # テーマによるページビューカバー率の違い サイトサイズに加え、テーマがページビューの集中に与える影響も調べました。思い出してください。私たちのネットワーク内のすべてのサイトカテゴリを見たときは、ページビューの80%が平均21%の記事によって生成されていました。いくつかの個別のカテゴリーを掘り下げると、ページビューが記事のわずかな割合に集中していることがわかります。 [https://www.datawrapper.de/_/U9WCP/](https://www.datawrapper.de/_/U9WCP/) ニュースとメディアでは20%の記事がページビューの80%を生み出しています。スポーツと金融では19%、アートとエンターテインメントでは18%でした。テーマがよりニッチになるにつれて、ページビューの集中は少し進みますが、80対20の法則から大きく外れることはありません。 # 国別のページビュー サイトの規模やテーマと同じように、コンテンツの幅が国によってどのように変わるのかも見てみましょう。なお、ここでの国はパブリッシャーのある国ではなく、読者がいる国のことを指しています。 [https://www.datawrapper.de/_/3abL5/](https://www.datawrapper.de/_/3abL5/) 地域別に見ると、インド、ブラジル、スペインのように20%の水準を下回っている国もあれば、イギリスやオーストラリアのように読者層の幅が広い国もあり、それぞれ25.8%、22.1%となっています。20%の閾値を大きく下回る地域では、パフォーマンスの低いコンテンツを最適化するチャンスがさらに大きくなります(訳注:日本がグラフのどこにいるのか見てください!)。 # 80対20の法則を使って自分のコンテンツを評価する 平均的なウェブサイトが20%の記事から80%のページビューを得ている場合、コンテンツが多すぎて、すべてを読むには時間が足りないと言えるかもしれません。私たちのグローバル・ネットワークの規模ではそうかもしれませんが、個々のウェブサイトにとってはもっと微妙な違いがありチャンスもあります。 適切な行動のバランスはサイトによって異なります。しかし、すべてのパブリッシャーが探るべき道がいくつかあります。ひとつは、インパクトのある少数の記事に多くの時間とリソースを費やすために、人気のないトピックの優先順位を下げることです。80対20の法則を支持する方々は、フレームワークを使う主な利点として効率と生産性の向上を指摘しています。 もう一つの選択肢は、不調なセグメントのコンテンツの欠点を診断し、最適化することです。どちらのシナリオでも、[リアルタイムと過去のアナリティクス](https://chartbeat.com/products/dashboards/)は投資すべきコンテンツの種類を見つけ、その努力の成功を測定するのに役立つ必要な洞察を提供します。 *この記事には、Chartbeatデータサイエンスチームのシンシア・ヴーが調査に協力しています。* --- ## 2023年のメディア / コマーストレンドを振り返る URL: https://ximera.com/posts/b17161a7dc 公開日: 2023-12-26 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #56|Ikuo Morisugi| 2023.12.26 ![](/images/posts/b17161a7dc/goals-7694142_1280.png) Image by [Rosy / Bad Homburg / Germany](https://pixabay.com/users/roszie-6000120/?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7694142) from [Pixabay](https://pixabay.com//?utm_source=link-attribution&utm_medium=referral&utm_campaign=image&utm_content=7694142) # はじめに 2023年はメディア/コマース業界はじめ社会的に大きなインパクトや転換点があった1年でした(2023年「も」といって良いかもしれません)。特にソーシャルメディアと検索エンジンの動向およびAIの進化は、メディア・コマース業界に大きな影響を与えています。本記事では、この一年の主要な変化を振り返り、それが業界にどのような影響を与えているかを挙げていきます。 ## Facebook / Googleからの流入リスクの高まり Facebookにとって、パブリッシャーへのリファーラルトラフィックの重要度が年々低下しています。これは、Facebookがニュースフィードの[アルゴリズムを変更](https://techcrunch.com/2022/10/05/facebook-new-ways-customize-what-you-see-feed/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAACCY_-SB8JAanoLDORZxoX0uIZErPMzkYyiKLcFG6RWObkm_84hK2jQF8hkgPFdm2i0POWViBt1pkEFdrdezAtg8eFvtS0dOkaTKkZtB5DHWZTBiRjB5fzBLNItdQgwRS_rJekV40ET9Ge1e-cxHY-3VpqpidwGxgKWg0F2iZUVn)し、個人間のコミュニケーションを優先するようになったことが要因の1つと考えられます。結果として、パブリッシャーのFacebookからのリファーラルトラフィックの割合およびトラフィック数は年々下がり続けており、トラフィック獲得元として伸ばしていくことは期待できない厳しい状況となっています。 Facebookからのリファーラルは下がり続けている 出典: [](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/)[Digiday](https://digiday.com/media/publishers-reckon-with-declining-facebook-referral-traffic-as-the-platform-pulls-away-from-news/) Facebookからのリファーラルは下がり続けている 出典: [](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/)[Digiday](https://digiday.com/media/publishers-reckon-with-declining-facebook-referral-traffic-as-the-platform-pulls-away-from-news/) Facebook以外のトラフィック流入元で大きいのはGoogle検索ですが、こちらも大きな変化が起こっています。検索UIにAI回答を組み込んだ[SGE(Search Generative Experience)](https://japan.googleblog.com/2023/08/search-sge.html)が2023年8月に発表されました。内容としてはBing AIと同等のクエリに対する回答をトップ表示するものとなります。[Search Engine Journal](https://www.searchenginejournal.com/google-sge-and-generative-ai-in-search-what-to-expect-in-2024/504578/)によると、SGEは当初2023年12月にトライアル終了予定となっていましたが、現在では終了予定日がサイトから削除されていると報じられていますこれはGoogleが今後もこの取り組みを続けることを示唆しています。 2023年12月時点でのSGEのスクリーンショット 参照元: [Search Engine Journal](https://www.searchenginejournal.com/google-sge-and-generative-ai-in-search-what-to-expect-in-2024/504578/) 2023年12月時点でのSGEのスクリーンショット 参照元: [Search Engine Journal](https://www.searchenginejournal.com/google-sge-and-generative-ai-in-search-what-to-expect-in-2024/504578/) 現在はまだGoogle Search Labsにオプトインした人のみが使える状況ですが、[検索エンジントラフィックの95%](https://pressgazette.co.uk/media-audience-and-business-data/media_metrics/news-referral-traffic-breakdown/)を占めるGoogleでSGEが共通機能としてパブリックロンチした際には、検索エンジン経由の流入に頼る企業に大きな影響を与えることが予想されます。あわせて2023年12月に発表されたGoogleの新AIモデルの[GeminiはSGEやBardに利用されるこ](https://japan.googleblog.com/2023/12/gemini.html)とも発表されており、今後の検索体験に影響を与えることは間違いありません。 これらの変化により、ソーシャルメディアや検索エンジンに依存したトラフィックの流入は、今後さらにリスクが増すと予想されます。変化が起こりつつある状況に対して、トライクの多様化を常に意識して、新たな流入元を獲得するための戦略と戦術が必要になってきています。 - [Ximera Media Next Trends #51 AI で変わるメディアのトラフィック](/posts/76c9fe0d74) # ソーシャルメディアの変化と新たなメディア Facebook / Google以外のソーシャルメディア界隈でも多数の大きな変化がありました。すべてを挙げるとキリがないため、Ximera Media Next Trendsとして特に今後に影響すると思われる出来事をピックアップしていきます。 Twitterのブランド変更(X)と広告主の離反 イーロン・マスクによるTwitterの買収とブランド名の「X」への変更が起こり、プラットフォーム上で次々展開される施策によりユーザが混乱したことは記憶に新しいかと思います。さらに追い打ちをかけるようにイーロン・マスクが失言したことにより、多くの広告主が離れていっています。Xは広告主の離反により今年の[年末までに最大で7500万ドル(約11億円)程度の広告収入を失うだろう](https://www.nytimes.com/2023/11/24/business/x-elon-musk-advertisers.html#:~:text=Since%20Mr.%20Musk's%20$44%20billion%20acquisition%20of%20Twitter%20last%20year%2C%20some&text=left%2Dwing%20media%20watchdog%20group%20Media%20Matters%2C%20which%20showed%20that%20ads)と報じられています。 ## TikTok、YouTubeのソーシャルコマース化 TikTokやYouTubeは、ソーシャルコマース機能を強化しており、これらのプラットフォームを通じた商品購入が特にZ世代を中心に起こっています。特に[TikTok Shop](https://shop.tiktok.com/business/en)と呼ばれるTikTok内で商品発見から購入までアプリ内で完結できるサービスが2023年9月にアメリカでロンチされ、クリエイターが商品をフィーチャした動画を投稿し購入されるとアフィリエイト収入を生むというモデルが提供されました。[月1回以上TikTokを利用するユーザの64%はTikTok Shopを認知していて、その内28%はすでに購入したことがある](https://newconsumer.com/wp-content/uploads/2023/12/Consumer-Trends-2024.pdf)状況となっており、ロンチ後間もないにも関わらず強いユーザ認知と購買行動を作り出しています。 TikTok Shopの機能概要 参照元: [TikTok](https://shop.tiktok.com/business/en) TikTok Shopの機能概要 参照元: [TikTok](https://shop.tiktok.com/business/en) Snapchatの有料サブスクリプションサービス Snapchatは、[Snapchat+](https://www.snapchat.com/plus)と呼ばれる有料サブスクリプションサービスを開始し、[2023年12月時点で700万ユーザーを獲得](https://www.statista.com/statistics/1381489/global-snapchat-subscribers/)しており、ソーシャルメディアが展開するサブスクサービスとしては最大級の成功を収めています。 Snapchat+で提供される有料機能の一部 参照元: [Snapchat](https://www.snapchat.com/plus) Snapchat+で提供される有料機能の一部 参照元: [Snapchat](https://www.snapchat.com/plus) Snapchat+についてより詳しくは👇 - [Ximera Media Next Trends #44 2022年後半のメディアトレンドを振り返る](/posts/8f61614beb) 新たなソーシャルメディアの勃興 Jack DorseyがTwitter時代から温めていた分散型SNSで自身のアカウントをポータルブルに別PFへ移動できる[BlueSky](https://bsky.app/)のiOSアプリが2023年3月にリリースされ、招待制のベータ版ながら2023年11月には[200万のユーザを獲得](https://blueskyweb.xyz/blog/11-15-2023-toward-federation)しました。また、親密なグループ内だけで毎日ランダムに2分間フロントカメラとリアカメラの画像を共有しあう[BeReal](https://bereal.com/ja/)がZ世代中心に人気を博し、[2023年11月時点で2500万のアクティブユーザを獲得する](https://www.businessofapps.com/data/bereal-statistics/)など、新たなソーシャルメディアが登場し、ユーザーに新たな体験を提供しています。 フロントカメラとリアカメラが自動起動し友達と現況を共有するBeReal 参照元: [BeReal iOS App](https://apps.apple.com/jp/app/bereal-%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%81%AA%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%82%92%E5%8F%8B%E9%81%94%E3%81%A8/id1459645446) フロントカメラとリアカメラが自動起動し友達と現況を共有するBeReal 参照元: [BeReal iOS App](https://apps.apple.com/jp/app/bereal-%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%81%AA%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%82%92%E5%8F%8B%E9%81%94%E3%81%A8/id1459645446) AIベースの1to1メディアの登場 AIを利用してこれまでの1:NのメディアからN:Nを実現しようとしている新たなメディアも現れました。[Delphi](https://www.delphi.ai/)はデジタルヒューマンクローンをLLMで作成し、各個人に対してスケールできる1to1の対応を実現できるメディアを作り上げようとしています。 デジタルクローンやDelphiについてより詳しくは👇 - [Ximera Media Next Trends #53 デジタルクローンが生み出す新たなメディア](/posts/803b2f942a) # おわりに 企業は、FacebookやGoogle検索だけに頼らないトラフィック獲得戦略および新たな収益機会を模索する必要があります。短期的には、新たなビジネス/テックトレンドを早期に捉え新たなソーシャルメディアやサービスに適応しつつ新ユーザ獲得するのが第一歩かと考えられますが、平行して自社へのロイヤルティの高いユーザとクローズドなコミュニティを構築することがこれまでに以上に重要になってきています。 - [Ximera Media Next Trends #48 コミュニティに支持されるコマースメディア](/posts/d6fc6eebdc) 本稿であげたようにソーシャルメディアは乱立しコミュニティは分断されている状況です。様々なプラットフォームを利活用しそれぞれのチャネルで異なるユーザ獲得戦略を実行していくことでトラフィックチャネルの多様化を実現できる可能性があります。またTikTok Shopのようにクリエイターを中心として「影響力のある企業ではなく個人」により注目が集まっています。クリエイターと共同して「推し」のサービスや商品を提供していくことも顧客ロイヤルティを生むための1つの策となりえます。 - [Ximera Media Next Trends #46 三方良しの購入体験を実現するクリエイターコマース](/posts/73a34fb96b) メディア・コマース業界は毎年大きなトレンドが発生しており、世の中が目まぐるしく変わっていきますが、人間の本質は基本的には変わらないはずです。何をしたらユーザが喜んでくれるのか、自社のサービスを見てくれる/選んでくれるのかを常に意識し行動することが重要だと考えます。Ximera Media Next Trendsではそんな姿勢を忘れずに来年も面白い・参考になると思っていただけるリサーチを提供していきたいと思います。本年もお付き合いいただきありがとうございました。 --- ## 戦略設計に効く、メディア資産の書き出し分析 URL: https://ximera.com/posts/dcef7c9a07 公開日: 2023-12-16 著者: Ximera [Work illustrations by Storyset](https://storyset.com/work) # 戦略設計に効く、メディア資産の書き出し分析 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスを提供しています。 今回はパブリッシャーの戦略設計に活きてくるメディア資産の把握とかんたんな分析についてお伝えします。 みなさんは事業について検討するとき、「どんな商品設計にしようか」「どんな方向性でサービスを構築しようか」と悩むことはありませんか。「ゼロから新しい何かを生み出さなければいけない」と考える方もいるかもしれません。 しかし、パブリッシャーに限らず、成功を収めたイノベーションの多くは、まったくのゼロからではなく自社がすでに持っている強み、資産、資源を活かして事業を作っています。 例えばアマゾンも、当初は「オンライン書店」でした。しかし、書店時代からの「品揃え」と「商品の探しやすさ」という強みを育てたことで、数億点の商品を販売する[超巨大なECサイトに成長](https://www.gizmodo.jp/2019/07/people-thought-of-amazon-when-it-first-launch.html)しました。 パブリッシャーにおいても、すでに既存のビジネスモデルで培ってきた強みと資源を活かすことで、その会社らしさを発揮する事業づくりをすることができます。 ### メディア価値の源泉となる有形・無形の資源 あらゆる企業は、資産・資源を持っています。これをビジネスの場では「アセット」と呼ぶことがあります。言葉自体は証券や不動産などの金融資産を指す際に使われることが多いですが、ここでは「企業が価値を生み出す源泉となる資源」と定義します。 情報という無形の商材を扱うパブリッシャーも例外なく、その価値を支える莫大なアセットを保有しています。提供するコンテンツはもちろんのこと、その制作を支える体制や、読者に届けるための手段、そして築き上げてきた媒体ブランドもアセットです。また、メディア事業だけでなく、関連サービスやグループ企業の存在も、メディアの提供価値を増幅する心強いアセットです。 たとえば、パブリッシャーが持つ主なアセットはこのようなものが挙げられます。 アセットからは、自社がこれまでどのような価値を提供することに投資してきたのかが見えてきます。つまり、アセットを把握することは、自社の「力点」や「強み」を知ることにつながるのです。 では具体的に、自社の持つアセットを把握するにはどうすればいいのか。ここからはその手法と簡単な分析の仕方を紹介します。社内ワークショップのコンテンツとしてもおすすめです。 ### 自社の持つアセットを把握する方法 方法としてはシンプルです。1. 書き出して、2. グルーピングし、3. どう事業に活かせるか評価するだけです。 1. アセットを書き出す まず、自社が持っているアセットを書き出してみましょう。付箋やオンラインアンケートを使い、頭に浮かんだ要素をとにかく挙げていきます。 付箋を使う場合は、ひとつのアセットにつき、1枚の付箋を使うと、あとあとのグルーピングに便利です。とにかく数を出すためプレッシャーをかけず無記名で書き出します。正解はありません。どんどん書き進めてください。 ポイントは、要素を具体化することです。サービスや施設・設備をアセットとして挙げるなら、なるべく固有名詞にしましょう。例えばコンテンツの場合は、「経済記事」「コラム」などの大まかなカテゴリーではなく、「購買行動を左右する製品レビュー記事」「中崎マコトの今日もごはんがおいしきゃマル!」など、その内容や連載名まで落とし込めるとよいでしょう。 ブランドなどの定性的な要素をアセットとして挙げるなら、「信頼感」とだけ書くのではなく「地元に密着した情報に対する信頼感」など、その背景を噛み砕いてみましょう。「個人的にそう思う」という仮説で構いません。 ワークショップで行なう場合は、グループワークで時間制限(10〜15分)を設け、「できるだけたくさん書いてほしい」などと促すと、活発にアイデアが出やすくなります。 2. アセットを集約・グループ化する 書き出したアセットのうち、重複する要素を集約します。付箋を使った場合は、重複した内容の付箋を上に重ねるとよいです。その後、近い内容のアセットを集めてグループ化します。グループは「コンテンツ」「読者接点」「ブランド認知」など、含まれるアセットをひとことで言い表せるものにします。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40848873/picture_pc_201214e8c2df0b754767a5590b5b870c.jpg?width=800) アセットの集約とグループ分けを行うと、どんな要素が多く挙がっているかが可視化されてきます。自分たちがどんなアセットに目が向きやすいかの傾向を可視化し、無意識のうちに持っていた価値観を理解しやすくなる利点もあります。 3. アセットを評価する そして、挙げたアセットひとつひとつが、事業においてどんな役割を満たすかを評価します。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40984852/picture_pc_d0fcf5265c5f1d42ca287d8614050186.png?width=800) ひとつのアセットに複数の要件が当てはまる場合もあれば、ひとつも当てはまらないアセットもあるはずです。付箋を使う場合は、付箋にカラーペンなどで色分けした印をつけると分かりやすくなります。 評価したアセットを見渡しながら、これらの項目をチェックしてみてください。簡易的に自社の強みが分析できるはずです。 ### 「青い鳥」はそばにいるかもしれない あなたの会社のアセットはうまく把握できそうでしょうか? ゼロから何かを生み出そうとせずとも、童話『青い鳥』の結末のように、あなたの会社にも将来の主力事業のタネはすでに転がっているかもしれません。ぜひ、いま一度、自社の強みに目を向けてみてはいかがでしょうか。 アセットが把握できたら、次はそれを活かしたマネタイズの方法も知っておきましょう。 [サブスク・広告だけじゃない。デジタルメディアの収益化(マネタイズ)方法を総まとめ](https://app.notion.com/p/486d17481d294cec9823e5317815ae01?pvs=21) 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Dec 16, 2023|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## Google Discover のトラフィックとエンゲージメントを促進するコンテンツに関するデータ URL: https://ximera.com/posts/5daeeb0618 公開日: 2023-12-11 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2023/12/07/data-on-the-content-that-drives-google-discover-traffic-engagement/))公開日:Dec 11, 2023 ![](/images/posts/5daeeb0618/20231207-data-on-the-content-that-drives-google-discover-traffic-engagement.jpg) Google Discoverがあらゆる規模のパブリッシャーにとって主要なトラフィック源に成長しつづけている一方で、Googleがどのようにコンテンツを選別しているのかについては謎が残っています。いくつかの要素は常に厳重に守られていますが、私たちは日々編集チームがコンテンツを最適化するのに役立つ、プラットフォームに関するより多くの洞察を得ています。 今年初めにGoogle Discoverをリアルタイムダッシュボードとヒストリカルダッシュボードに追加した後、私たちのネットワーク内の60,000以上のサイトにわたって9ヶ月以上のデータを収集しました。データサイエンスチームの協力のもと私たちはこの調査を分析し、どの地域がDiscoverからもっとも多くのトラフィックを得ているのか、オーディエンスはどれくらいの時間このコンテンツにエンゲージしているのか、そしてどのカテゴリーやトピックがこのプラットフォームでもっともうまく機能しているのかを明らかにしました。以下はその結果です。 --- ### 簡単におさらい:Google Discoverとは Google Discoverは、Androidモバイル端末のChromeアプリで新しいタブを開いたときに表示される記事のフィードで、Google検索アプリでは「Discover 」というタブとして表示されます。Google検索とは異なり、特定のクエリに対する応答としてではなくユーザーの興味や行動に基づいて記事を配信します。 --- ## 世界中のトレンドを発見する [地域別Google Discoverからのトラフィックの割合](https://public.flourish.studio/visualisation/16020193/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/16020193) 地域別Google Discoverからのトラフィックの割合 世界中のGoogle Discoverのトラフィックを見ると、トラフィックの割合は地域によって異なります。例えば、アジア・太平洋地域のパブリッシャーはページビューの60%もがこのプラットフォームからのものであることがあります。 一方、北米のパブリッシャーはGoogle Discoverからのページビューがはるかに少なく、わずか24%でした。[世界のオーディエンス動向](/posts/4cac6d716a)からわかっているように、アジアとアフリカでは一般的にモバイルからのページビューが多く、Discoverはモバイルファーストエクスペリエンスであるため、この差の一部はこのためかもしれません。 ## オーディエンスはGoogle Discoverのコンテンツにより多くエンゲージする [Google Discoverの地域別平均エンゲージメント時間](https://public.flourish.studio/visualisation/16020058/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/16020058) Google Discoverの地域別平均エンゲージメント時間 全地域のGoogle Discoverのトラフィックは、同期間中、世界平均の28秒よりも平均エンゲージ時間が長くなりました。北米はDiscoverからのページビューの割合がもっとも少なかったものの、平均エンゲージ時間は41秒ともっとも長かった。ラテンアメリカのオーディエンスの平均エンゲージ時間は39秒と僅差で、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)とAPACの平均エンゲージ時間はともに36秒でした。 ## Google Discoverでもっともパフォーマンスの高いトピックとカテゴリー どのトピックやカテゴリーがGoogle Discoverで高いパフォーマンスを発揮しているかをより深く理解するため、北米、ブラジル、イギリス諸島の3つの最大カバーエリアにおいて、同プラットフォームからのページビューの割合が高い記事を分析しました。 ニュースサイトやメディアサイトの訪問者がどの程度幅広く読んでいるかに関連する以前の調査では、私たちのネットワークで最も人気のあるカテゴリーは「犯罪、法律、司法」と「経済、ビジネス、金融」であることが示されました。 これらの地域ではGoogle Discoverのトラフィックにこれらの人気カテゴリーが見られるが、「芸術、文化、娯楽」、「ライフスタイル、レジャー」、「天気」、「健康 」といったカテゴリーも見られる。実際、3つの地域すべてで重複しているカテゴリーは「芸術、文化、エンターテイメント」のみです。 [カテゴリー別Google Discover記事の割合](https://public.flourish.studio/visualisation/16023006/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/16023006) カテゴリー別Google Discover記事の割合 ## 調査から得られたもの 検索と同様、Google Discoverの選択基準は今後も進化しつづけ、パブリッシャーはその違和感に慣れる必要があります。同時に、私たちはこのような変化に少しでも対応しやすくするための洞察を得るために、私たちのネットワークを活用しつづけます。Google Discoverを活用するために知っておくべきことをまとめました: - Google Discoverの重要性が高まるにつれ、その効果は一部の地域でより顕著になっている。現在、APACとLATAM(ラテンアメリカ)では、北米よりもこのプラットフォームからのページビューの割合がはるかに大きい。 - Google Discoverで成功する記事はよりニッチでタイムリーな傾向がある。タイタン潜水艇のような巨大なストーリーはニュースが消費される場所であればどこにでも表示されるが、アート、エンターテイメント、ライフスタイル、健康などのトピックもGoogle Discoverの選択基準に共鳴し、このプラットフォームの拡大するリファラルパワーを利用するのに役立つことは明らかである。 - [パーソナライズされたレコメンデーション](https://lp.chartbeat.com/recommendation-engine-signup)は、エンゲージメントの向上につながる。2023年第3四半期、全世界の平均エンゲージメント時間は29秒で、Google Discover経由で配信されたコンテンツの平均は37秒でした。Discoverの特徴であるパーソナライズされたレコメンデーションは、読者のページ滞在時間を長く保つことが証明されており、オーディエンスのエンゲージメント戦略においてほかの場所でも活用できる戦術です。 --- ## リセール市場のさらなるグロースの可能性 URL: https://ximera.com/posts/1a70f9ed8d 公開日: 2023-12-05 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #55|Ikuo Morisugi| 2023.12.5 ![](/images/posts/1a70f9ed8d/xmnt55.jpg) [Online illustrations by Storyset](https://storyset.com/online) # はじめに 中古品の市場(リセール市場)は[年々顕著な成長を遂げています](https://www.transparencymarketresearch.com/second-hand-products-market.html)。リテール市場は、特にアパレル・車・家具・腕時計・家電などで構成されており、多くの消費者が新品に代わる選択肢として中古品を選んでいます。 例えばアパレルのリセール市場は2021年の150億ドル(約2.2兆円)から2025年で470億ドル(約7兆円)になると予想されており、大きな伸びを見せると予測されています。 リセール市場は今後も大きな成長が予測されている 参照: [THREDUP](https://www.thredup.com/resale/2021/#size-and-impact) リセール市場は今後も大きな成長が予測されている 参照: [THREDUP](https://www.thredup.com/resale/2021/#size-and-impact) リセール市場は①サスティナブル消費と②低価格性の観点で、特にZ世代とミレニアル世代の消費者によって支えられています。彼らは環境への影響を重視し、持続可能な製品への支出を増やしています。この傾向は、リセール市場の成長に大きく貢献しており、リサイクルやアップサイクル製品への関心が高まっています。また、近年の原油高騰に端を発した材料費高騰・人件費高騰などによる新品価格の大きな上昇もこの流れに一役買っていると推察されます。 この流れを受けてリセール市場に対して従来のマーケットプレイスのみならず、テック企業や大企業が多く参入してきています。例えばサンフランシスコに拠点を置く[The RealReal](https://www.therealreal.com/)は、中古ファッションの取引量を順調に増やし、[2022年にはGMV18億ドルで前年比23%増](https://investor.therealreal.com/news-releases/news-release-details/realreal-announces-fourth-quarter-and-full-year-2022-results/)と好調な成長を見せています。また、[本連載#52](/posts/4d3b786cc9)で紹介したスタートアップ企業の[Trove](https://trove.com/)のプラットフォームを活用したPatagoniaはリサイクルプログラム「[Worn Wear](https://www.circularx.eu/en/cases/34/patagonia-worn-wear-program)」を2013年に開始しました。ユニクロについても、2020年にリサイクル・リユースを推進するプログラム「[Re:UNIQLO](https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/)」を立ち上げました。直近では[ポップアップストアでユニクロ古着を販売する取り組み](https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/sustainability/planet/clothes_recycling/re-uniqlo/resell/)も行いました。 一方で現在のリセール市場には、供給と需要ともにさらなる改善余地が残されています。人々が中古品を手放しやすく、また新たな購入者が容易に見つかるソリューションが提供されることでより大きな市場が形成される可能性があります。本稿ではその可能性についてふれていきます。 # リセール市場における課題 リセール市場における最大の課題は、供給側の出品プロセスの煩雑さです。メルカリやヤフオクに一度でも出品したことがあれば共感いただけるかと思いますが、主に下記の課題があります。 - 購入品の一覧化と出品検討: 自分が何をいつどこで購入したのかの把握と将来的にリセール市場への出品を検討する購入品の一覧 - 価格設定: 市場調査と競合分析の上、需要のあるタイミングでの適切な価格設定 - コストの考慮: 送料やプラットフォーム手数料などの追加コストを考慮し、利益が出るかどうかの見極め - 出品の見栄え: 商品の魅力を高めるためのタイトル、画像、説明文の最適化 また取引フローについては既存のマーケットプレイスでもある程度課題解決ができていますが、一般的に下記の課題があります。 - 値段交渉の手間: 値下げなど購入希望者との価格交渉が必要な場合あり - 送料の負担: どちらが送料を負担するかの交渉 - 発送先の確認: 正確な発送先住所の把握が必要 - 送金: 安全で迅速な送金方法の確保が必要 - 発送: 商品を適切に梱包し、発送する作業が必要 専業でやっている人以外は、多くの場合リセール市場の販売だけで生活できるほどの利益はでず、不用品の処分やお小遣い稼ぎといった目的の方が多いため、リターンに対しての出品や取引のコストが割に合わないことが課題だと考えられます。 # リセール市場活発化のためのアプローチ 上記であげたように、現状供給側の出品~取引完了までのプロセスには依然として課題があり、「ワンクリックで気軽に出品~取引完了」な状態ではありません。メルカリに1品出品するだけで貴重な休日の午前中の時間を使ってしまった、それにもかかわらずなかなか売れないということも珍しくありません。 こうした状況を解決するためには、「供給側の出品ハードルと購入後の取引ハードルを引き下げること」が必要となります。 1つのアプローチとして有効なのが「商品購入タイミングから将来の再販オプションを提示し購入品一覧に組み入れる」ことです。 「この商品を購入したらXヶ月後くらいにXXX円くらいで売れるといいな」と考える人は多いですが、実際にどれくらいで売れるかはよく調べている人以外はそこまで真剣に考えません。実際に使って飽きが来たり、思っていたものと違ったり、スタイルが変化していくことで、しばらく経ってから中古販売を考えはじめます。 ですが、「購入時に推定XXX円で中古で販売することができる」「(将来中古販売する)購入品一覧に加えることができる」「商品画像、説明文なども元に購入サイトからストックできる」というソリューションが実現されたら、購入時点で購入者としての自分と、販売者としての自分を両立して考えられるようになります。 これはブランド側にとっても大きなメリットがあります。購入時点の推定中古価格が割引価格のように機能するからです。80000円のコートが、推定48000円で中古で売れますよとわかったら、「実質32000円で買えるようなものだ」と考えることができます(将来の自分の行動と中古販売価格をテコに(自分の意識が)割引いているとも言えます)。それにより購入コンバージョンも上がるはずです。これは販売側にとってもうまくビジネス成果を高めるための取り組みにもなりえます。 購入品の一覧化と価格設定ができたとしても、マッチングと購入者の交渉プロセスの最適化の課題が残っています。現状ではマッチングさせるには中古マーケットプレイスで検索されるのを待つか、友達から欲しいと言われるか、店頭に持ち込むかが選択肢となりますが、良いものでもニッチなブランドだったりすると、なかなか検索もされず、店頭に持ち込んでも大して価値がつかないこともままあります。 マッチングの課題を解決するためには、人々の検索や購入検討データの活用がキーになります。[Rewind](https://www.rewind.ai/)のように日々のデジタルデバイスのログをすべて取得し、商品の検索や購入検討のイベントデータを抜き出して、欲しいものを持っている人/将来的に中古販売を嗜好する人をマッチングすることで、潜在的な需要を表出化させられる可能性があります。リセール市場にもまだ出品してなくて、まだ売るつもりはなかったが、2ヶ月前に買った80000円のコートを40000円で売ってほしい人とマッチングできたら、売る気になる人もでてきてもおかしくありません。 購入前後のやりとりについても、LLMを活用した独自モデルを構築することで、ある程度のレベルで適切な交渉を進めることも可能になってきます(支払い、発送、送料のプロセスについては現状でもかなり仕組み化されているのでハードルは他の問題に比べて低いと考えられます)。AIが「Aさんがあなたのコートを40000円で買いたいと言っています。」「送料について交渉し、先方が支払うこととなりました。」「発送先が書かれたラベルを発行するので、発送してください」といった行動を先回りして実施してくれるイメージです。 このように購入時点での購入品一覧化 => 潜在ニーズのマッチング => LLMによる交渉プロセスの効率化を推し進めることが課題解消のアプローチとなりえます。 # おわりに 今回は「リセール市場のさらなるグロースの可能性」についてとりあげました。 本稿ではリセール市場というマーケットの事例を取り上げましたが、「何らか商品やサービスを購入したタイミングからその次に消費者がとりえるアクションをサポートする」概念が今後他のビジネスにおいても重要になってくると考えます。 例えば、メディアにおいても有料記事を購入したあとに、記事を読んだ後は有料で一定回数限定でその記事を読む権利を誰かに移転(リセール)できても良いかもしれません。人々が(規約違反だと知っていながら)Netflixでアカウントシェアが行われたことを考えると、正規料金は払いたくないが低価格でサービスを享受したい層は存在しており、メディア自身がその移転機能をマーケットごとサポートすることで今までリーチできなかった新たなユーザを獲得する可能性もあります(もちろんビジネス損失にならないための一定の規制・制限は必要になります)。 --- ## いま注目のダイナミックペイウォールとは? サブスク課金の新トレンドを解説 URL: https://ximera.com/posts/313f5608ab 公開日: 2023-11-26 著者: Ximera [Data illustrations by Storyset](https://storyset.com/data) # いま注目のダイナミックペイウォールとは? サブスク課金の新トレンドを解説 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスをご提供しています。 今回のテーマは、デジタルサブスクリプションを実装するうえで欠かせないペイウォール(課金の障壁)です。おさえておきたい基本パターンに加えて、近年注目を集めている「ダイナミックペイウォール」について解説します。 ### ペイウォールの表示ロジック「5つの定石」 --- デジタルメディアのサブスクリプションで大切なのが、読者に課金を促すペイウォール(課金の障壁)をどこに、どんな基準で設けるかということです。 海外メディアでは、以下の5つのパターンが主流です。 1. フリーミアム型:基本無料だが、追加機能や特別コンテンツを有料で提供する 2. メンバーシップ型:コンテンツ閲覧のために会員登録を求める 3. メーター課金型:無料で閲覧できるコンテンツ数を超えたら有料購読を提示 4. タイマー型:公開から一定時間が経過した記事の閲覧は有料購読が必要 5. ハイブリッド型:上記を組み合わせて有料購読を訴求 多くのデジタルメディアでは、上記のロジックのいずれかを採用してペイウォールを表示しています。詳しくは「[海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説](/posts/7ff45a261a)」以下の記事をご覧ください。 ### 個別化・自動化を実現したダイナミックペイウォール --- ペイウォールの表示ロジックについては、いまだ正解はありません。いかに購買を促す体験設計ができるか、パブリッシャー各社が模索を続けています。こうした状況下で注目を集めているのが「ダイナミックペイウォール」です。 ダイナミックペイウォールとは、ユーザーの属性情報や行動データをもとに一人ひとりに個別化したタイミングでペイウォールを提示する仕組みや機能のことです。読者ロイヤルティ(メディアに対する愛着や親近感)や購買意向を判断し、最適なタイミングで有料購読のオファーを提示することで、マーケティングの自動化・効率化が期待できます。 導入事例としては、[New York Times](https://digiday.jp/publishers/new-york-media-paywall-subscriptions-flexible/)が自社開発のCMSにダイナミックペイウォールの表示機能を搭載しているほか、Wall Street Journalは[CXENSE社](https://www.cxense.com/jp/blog/new-paywall-bendable-how-wall-street-journal-re-defined-paywall-and-how-you-can-grow)(2019年にPiano社が買収)のソリューションを用いてダイナミックペイウォールを構築しています。 ### ダイナミックペイウォールの利点と課題 --- ダイナミックペイウォールを導入することで、どんなメリットや課題が見込まれるのでしょうか? 最大の利点は、体験のパーソナライズによってマーケティング効率を高められることです。これまで人力でA/Bテストやパーソナライズを試みてきたパブリッシャーにとって待望のソリューションです。 Wall Street Journalは未購読の読者を60以上の項目で分析し、[有料購読者に転換する可能性をスコアリングしている](https://www.yomiuri.co.jp/world/nieman/20180302-OYT8T50004/)といいます。スコアに沿って柔軟にプランや割引を訴求することで、購読者の増加が期待できるでしょう。 一方、最大の課題は多額のコストがかかることです。 ダイナミックペイウォールの実現には大量のデータと機械学習のテクノロジーが必要です。New York Timesは5〜10名のスタッフが約5カ月にわたり開発に関わったといいますから、開発費はどんなに少なく見積もっても数千万円はかかるでしょう。事業の採算性を保ちながらダイナミックペイウォールを運用できるパブリッシャーは限られそうです。 また、レコメンドエンジンなどにも言えることですが、テクノロジーによってユーザー体験を個別化・自動化しすぎてしまうと、人の手による仮説立案や分析が難しくなることにも注意が必要です。 総じてダイナミックペイウォールは、サブスクリプション事業が確立したパブリッシャーにとって、マーケティングをさらに効率化させるために役立つソリューションだといえるでしょう。 ### テクノロジーは魔法ではない、事業設計と両輪で考えよう --- 今回は、サブスクリプションに欠かせないペイウォールについてご紹介しました。 ダイナミックペイウォールは魅力的なソリューションですが、導入さえすれば購読者が増える「魔法の杖」ではありません。テクノロジーへの投資は、デジタルサブスクリプションが事業として成立していることが大前提です。 - 現状のデジタルメディアのブランドが育っているか - 現状のコンテンツが課金に値するものか - サブスクリプションモデルを導入したら、どんなユーザーが、どれくらい課金してくれるか これらを分析・可視化し、有料課金に見合うコンテンツを生み出す体制づくりが必要です。事業設計が「サブスクリプションの命」であることを心に留めていただけると幸いです。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Nov 26, 2023|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## ユーザージャーニーの改善: コンテンツプランニングでよくある3つの質問への答え URL: https://ximera.com/posts/b7aded9ad5 公開日: 2023-11-20 著者: JILL NICHOLSON by JILL NICHOLSON([原文](https://blog.chartbeat.com/2020/05/20/content-planning-questions-and-answers/))公開日:Nov 20, 2023 以前、世界中のコンテンツクリエイターが直面する切実な疑問に答えたことがあります。もっとも多かった質問はコンテンツプランニングや戦略のためにデータを解釈する方法はなにか、というものでした。 ![](/images/posts/b7aded9ad5/Untitled.png) ここでその疑問に答えましょう。明確なデータに基づいた戦術を通じてチームが目の前の課題に対応する方法、そしてロイヤルフォロワーを惹きつけ獲得するための戦略を成功させるために、データを活性化させ力を与える方法です。 # 1. どうエンゲージメント戦略を作るのか このプロセスの主な部分はどんな組織にでも有効です。単純に、データに対する見方を変える、文化的な変化をもたらすスキルを持つことです。 編集部やコンテンツチームに求められる仕事の量が多くなると、そのコンテンツのことは「公開」ボタンを押したらそのまま忘れてしまいたくなります。コンテンツづくりというのは、うまくはできても完璧というものはなかなか存在しません。 ですが読者がコンテンツとどのように接しているかの適切なデータがあれば、問題を発見してその情報を使い、コンテンツの公開後に改善のための実験をくりかえすことができます。 情報を武器に戦略を進化させ、読者のいる場所でより簡単に読者に出会うことができます。データに基づいて文化を変えることは難しいですが、健全なバランスが必要です。 私はいつもパートナーにこう言います。「*指標は何をすべきかを教えてくれるものではなく、何をすべきかについて良い質問をする手助けをしてくれるものなのです*」。 --- ### さらに言うなら データの民主化とは、データや洞察に組織全体の複数の利害関係者がアクセスできるようにすることを意味する。 --- 明確な成功への道は、悪い数字を恐れない[文化を作ること](https://blog.chartbeat.com/2019/07/16/deseret-news-how-headline-tests-impacted-culture/)だと考えています。コンテンツチームはデータを使って良いこと(例:ページビュー、購読者、コンバージョンの増加)は祝いますが、失敗(例:直帰率の上昇、滞在時間の短さ、訪問者のロイヤルティ)を無視することが多すぎます。相手を攻撃する武器のように指標を使う組織すらあります。もし同僚が何かうまくいかなかったことを言うのを恐れているなら、それは文化的な問題の方が大きい。 どの指標を動かそうとしているのか、そして最も重要なのはなぜなのか。メンバーがそれに集中しつづけることが重要です。[自分たちの指標(ロイヤル読者の数からリードのコンバージョン率まで多岐にわたる)につながりを感じているチーム](https://blog.chartbeat.com/2020/04/22/digital-strategy-insights-who-what-wear/)は、その指標に到達するためのアイディアをみつけられることが多いです。 このような変化は一人では起こりません。リーダーはチームのモチベーションを高め、集中力を持続させる手助けをし、たとえ最初からうまくいかなくても、[組織全体で「データの民主化」が行われているような場所](https://blog.chartbeat.com/2020/02/25/el-universal-audience-development-interview/)、つまり目指す場所に到達できることを強調する必要があります。 とはいえ、データの専門性にはまだ価値があります。アナリティクスを専門とする人がより深い分析を行い、その情報を社内のほかのメンバーに伝え、今後の戦略に反映させるのです。なぜなら、典型的なエンゲージメントパターンと思われていたものが一瞬にして変化する可能性があるからです。あなたがそれを理解した頃には、読者は次に進んでいるのです。 ## エンゲージメント戦略のすすめ 強力なエンゲージメント戦略を構築するためのお勧めをいくつか紹介します。 - 画面の向こう側にいる人々について現実的に考えましょう。サイトへのページビューを追跡することはできますが、それだけでは不十分です。読者に見たものを覚えてもらい、コンテンツやブランドとの親和性を高めたいのであれば、[15秒以上](/posts/c467535a93)、掲載したものに興味を持ってもらう必要があります。リーチは常に質の指標で補う必要があります。 - [エンゲージ・タイム](/posts/40186b4cc0)とロイヤルティの指標を見始めましょう。Chartbeat社のデータ・サイエンス・チームが頻繁に思い出させてくれるように: 1つの指標だけで全体像を把握することはできません。読者との関係性を理解するためには、厳選されたいくつかの指標を併用する必要があります。 - 完全なユーザージャーニーを理解する。読者があなたのサイトに戻ってくるのにどれくらいの時間がかかりますか? 何をもってコンバージョンとしますか? それが決まったら、目標とするコンバージョン率はどれくらいで、コンバージョンに至るまでに何個のコンテンツを消費したかを結びつけるべきでしょうか? - マルチチャネル戦略は重要です。Googleで見つけた読者とソーシャルで見つけた読者の行動は同じではありません。たとえば、[モバイルの読者はデスクトップの読者よりもロイヤルティが高く](https://blog.chartbeat.com/2020/02/05/reader-loyalty-channels-devices/)、コンテンツをの発見から関わる方法まで根本的に異なることがわかっています。 - 遅かれ早かれいつかは、上を目指していかなければなりません。直感的な判断からデータに基づいた戦略まで、最初の一回でできるようにはなりません。いくつかの指標に絞り込んで、実験を通じてベストプラクティスを見つけることができれば、より洗練された戦略を取ることができるようになるでしょう。 # 2. 獲得とリテンションのどちらが重要か? 率直に言うと、ほとんどのコンテンツチームは獲得に集中しすぎています。コンテンツマーケティングでは、その目標はリードかもしれない。メディアや出版ではそのゴールは新規読者やロイヤルティ購読者かもしれない。新しい読者を獲得するためには、すでに獲得している読者を維持するためのコストよりもはるかに多くのコストがかかることを考えると、ファネルの残りの部分をサポートするために優先順位を再編成する必要があります。 これは、世界中のマーケティングリーダーにとって最も難しいケースの1つです。しかし、Chartbeatにとって最も成功した戦略は、獲得のための活動と維持のための活動のバランスを明確にしたものでした。 --- ### さらに言うなら モバイルホームページでは、平均的な訪問者の積極的な関与にかける時間は、デスクトップの訪問者よりも40%長いことがわかっています。またクリックする確率も20%高い。これがコンテンツ・キュレーションが非常に重要である理由です。 モバイルホームページのエンゲージメントに関する詳細は「[エンゲージメントを深めるモバイル最適化の方法](https://blog.chartbeat.com/2020/01/23/mobile-homepage-optimization-content/)」をご覧ください。 --- ここ数年、私たちはクライアントの戦略において、リテンションへの同様のシフトを観察してきました。リテンションにフォーカスすることで、さまざまなアプローチや戦術を試せる柔軟性が生まれます。そこから、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかを把握することができます。 ## デバイスベースの推奨ジャーニー コンテンツ訪問の3回に2回はモバイルで行われており、ディスカバリーファネルに新しいプラットフォームが導入され、リテンションを高める新しい方法が導入されています。これらの体験を最適化する方法をご紹介します。 - より深いジャーニーを促す[モバイルレイアウト](https://blog.chartbeat.com/2020/02/05/reader-loyalty-channels-devices/)を試してみましょう。たとえば、コンバージョンがデスクトップサイトとモバイルで発生した場合、ユーザーエクスペリエンスをどのように変えるか考えてみましょう。 - [リモートワークへのシフト](https://blog.chartbeat.com/2020/03/25/coronavirus-data-news-traffic-impact-analysis/)は、デバイスパターンをあまり変えませんでした。たとえ仕事が自宅で行われていたとしても、読者は変わらずデスクトップを就業時間中の主要デバイスとして使用する傾向があります。 - また、モバイル向けのコンテンツは短くなければならないと考える傾向がある。しかし、適切なコンテンツであれば、モバイル読者は長時間のエンゲージメントを望んでいることを示すデータを、私たちは数多く収集してきました。より強力な読者のエンゲージメントは、画像の配置、コンテンツのキュレーション、モバイル体験を特に最適化するレイアウトの調整によってもたらされます。 - Googleのコンテンツエコシステムから目を離さないようにしましょう。非常に成熟したプラットフォームであるにもかかわらず、Googleは予想外の方法で反復と成長を続けています。たとえば、[Google Chrome Suggestionsやその他のモバイルアグリゲータ](https://blog.chartbeat.com/2019/11/13/mobile-aggregators-major-referral-source/)は、Twitterよりも多くのトラフィックを牽引しています。ほとんどの人がTwitter戦略を持っていると思いますが、Chromeサジェスチョン戦略を持っている人はほとんどいないでしょう。 - SEOとSEM戦略を構築する上で、重要な疑問が残ります。これらのチャネルを使って、どのようにオンワード・ジャーニーを作るか? つまり、より多くのコンテンツでより高いエンゲージメントが得られるようなジャーニーを作るにはどうすればいいかということです。読者がより多くのページやコンテンツを閲覧すればするほど、再訪問の可能性が高まり、コンバージョンに至る可能性が高まることがわかっています。 - 上で述べたように、検索やソーシャルなどのプラットフォームからの訪問で1ページビューしか得られない場合、コンバージョンを獲得するのは難しいでしょう。私の場合、とくにプラットフォームから訪れた読者については、読者をもっとメディアと接触してもらえるようなほかのページに遷移させることを考えるようにしています。 # 3. 深く読むことを促すには? 私たちは、回遊(リサーキュレーション)と呼ばれるレンズを通して、読者の読み込み度合いを捉えています。私たちのデータによると、検索トラフィックの場合、推奨されるコンテンツはそのトラフィックをもたらしたトピックに密接に関連している必要があります。 ![](/images/posts/b7aded9ad5/Untitled-1.png) ソーシャルからの訪問の場合、オーディエンスはもう少し喜んでついてきてくれる。いずれにせよ、特定の検索やソーシャルプラットフォームで成功したコンテンツを決定するために、コンテンツを振り返ることは常に価値があります。 --- ### さらに言うなら 検索トラフィックについて考えるには = "使えるニュース "に関心の高い読者のことを考える ソーシャルメディアのトラフィックについて考えるには = 読者は、より感情的でストーリーの人間的な側面に反応するコンテンツを選ぶ --- こう分けて考えることで、コンテンツの差別化や、アーカイブの活用、最高の作品を生かすことができます。関連するコンテンツを選んだら、配置と位置について慎重に考えましょう。[スクロール深度の指標](https://blog.chartbeat.com/2019/12/04/reader-behavior-heat-map-google-sheets/)は、もっとも回遊を促進するリンクを設置する場所を見つけるのに役立ちます。クリックベイトではなく関連する情報を提供しているという確信を読者に与えるために、その関連コンテンツの価値を明確に述べましょう。 ## より深く読むためのオススメ コンテンツ全体でより深く読むことを促す方法について説明しましょう。 - ユーザーの質問に答え、より多くの情報を提供し続けるために、次の段階へとユーザーを導きましょう。 - どの情報構造がオーディエンスに最もアピールするかを見極めましょう。たとえば、最初の一文(メディアでは「リード」と呼ばれる)は事実に基づいたものですか、それとも逸話的なものですか? エンゲージメントとSEOの両方の意味がありますが、早い段階で適切なトーンを打ち出すことが重要です。 - [ロイヤルユーザ](https://blog.chartbeat.com/2019/11/04/demystifying-reader-loyalty-metrics/)が好むもので、新規ユーザにとって珍しいものはないでしょうか? そのようなコンテンツ群をセグメントするための指標を使うことで、より大きな成功を見出すことができます。それをあなたの経験と組み合わせて、露出がどのようにこれらの人々にアピールしたかを理解しましょう。 - 新しいコンテンツと最適化によって、トラフィックの多いページを保護する。これを考える1つの方法は、[なかなか読まれない記事](https://blog.chartbeat.com/2020/01/08/tips-optimize-content-zombies-articles/)に新しい情報や新しいリンクでアップデートすることで回遊を改善し、機能回復させることです。 # ユーザージャーニーの構築 ユーザージャーニーを改善、合理化、最適化するための3つの重要なステップをご紹介します。 1. 読者の視点からサイトを客観的に見ることからはじめましょう。新規訪問者やリピーターが、より多くのコンテンツを発見するのは難しいですか? 2. 指標を見てください。コンバージョンとしてカウントされるには、通常何回のコンテンツ接触が必要でしょうか? これが実験の出発点と目標を与えてくれます。 3. 実験と反復。指標が何を物語っているかを確認し、改善のための道筋を与えるようデザインされた実験を作りましょう。これは単に良いアイデアというだけでなく、組織内の文化的転換を導き、チームに力を与える形でデータを民主化するための第一歩なのです。 --- ## ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性 URL: https://ximera.com/posts/0a8b1f26ee 公開日: 2023-11-01 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #54|Ikuo Morisugi| Nov 1, 2023 ![](/images/posts/0a8b1f26ee/xmnt54.jpg) Design illustrations by [Storyset](https://storyset.com/design) # はじめに メディアやコマース関連のトレンドとそれを巻き起こすスタートアップや事例を追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第54回となる今回は「ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性」を取り上げます。 一部の組織、専門家、富裕層などにしか利用できなかった専用品や専用サービスが、技術進化により誰でも利用できる形に展開される流れはあらゆる産業で起こっている現象です。 例えば、現在のインターネットはアメリカ国防総省で専用のネットワーク([ARPANET](https://ja.wikipedia.org/wiki/ARPANET))が作られ大学や研究機関で運用されたことが起源になっています。これが時代が経つにつれ、プロトコルの標準化や大学間や企業間でのネットワーク化が進んだこと、電話線を利用したダイアルアップの仕組みができたことで、一般の人々も使えるようになっていきました。 ファッションでも同じように、19世紀末頃は、[オートクチュール](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB)と呼ばれる、デザイナーが手掛ける高級仕立てオーダメイドのアパレルが富裕層のみに提供されていましたが、1970年代よりパターン化された型紙から大量受注して生産する方式の[プレタポルテ](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%BF%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%86)と呼ばれるデザイナーが手掛ける既製服が台頭しました。プレタポルテの登場によって、オートクチュールに手が出なかった一般大衆が、今では当たり前のように高級メゾンの服を着用できるようになりました。さらに、近年ではユニクロやH&MやZaraなどプチプラファッション企業が、[プレタポルテのデザイナーを起用して大量生産を背景にさらに安い価格でデザイナーズアパレルを提供](https://www.vogue.co.jp/fashion/trends/2018-11-20/how-powerful-are-designer-collaboration/cnihub)するなど、汎用化・大衆化の流れはさらに加速しています。 上記は専用品/サービスの技術進歩による汎用化の例ですが、この次に起こったのが各個人へのコンテンツ最適化です。AmazonやTikTokのように、自分の好みや嗜好にあわせたコンテンツが推薦されるレコメンドシステムは統計学や機械学習の技術進歩の成果として活用されていますし、ファッションで言えば自分の体型にあったオーダーメイドシャツが[画像認識技術によってオンラインでも計測可能](https://venturebeat.com/ai/this-startup-uses-ai-to-tailor-your-button-down-from-a-single-photo/)となりました。 このように専用 => 汎用 => 個別最適化 への流れは、人間は一人一人体形から考え方まで異なることを考えると、起こるべくして起こっていると考えられます。直近でも、LLMのように汎用AI => 各ドメインに最適化されたAI が開発されているように、より専門的/個別的な体験の提供が進んでいます。 # 次世代で起こりうる個別最適化(ハイパーパーソナライゼーション) 主に実用化されメディアやコマース業界で個別最適化の技術として広く利用されているのは、コンテンツパーソナライゼーションです。TikTok/Youtube/Netflixなどの動画レコメンド、Amazonのおすすめ商品、ニュースサイトで次に読むべきニュースまであらゆるところで利用されています。 コンテンツパーソナライゼーションはユーザエンゲージメントやリテンションに直結するので、優先的に技術進化が起こってきましたが、ユーザエクスペリエンスにおいて個別最適化がまだされていない領域も残っています。 特にビジネス的に重要でまだ普及していないのは、ユーザインターフェースの個別最適化です。コンテンツは自分の好みになっている一方で、製品やサービスの価格の提示方法は個人毎に受容性が異なるはずなのにほとんどの場合均一です。またなにか購入する際の入力方法(例えば、eコマースサイトの住所・氏名などを入力するフォーム)もあらゆるユーザに対して画一的なユーザインターフェースが提供されています。 現代のシステムは、アプリやWebサイトやメールなどUIを部品化し、基本的なフレームを決めた上で、その制約の中でほぼコンテンツのみがパーソナライズされ配信されています。次に進化が起こるとすれば、各ユーザに個別最適化されたユーザインターフェースが提供されることになると考えられます。例えば、「人によって価格提示の方法(フォントサイズ、色、表示場所など)が変わる」、「目の見えない人には自動で音声入力モードに切り替わる」、「eコマースサイトで人によって入力しやすい順番にフォームの順番・フォントサイズ・カラーが変わる」、などが挙げられます。 特にサービスや商品の購入を意思決定する際の入力/出力に関するユーザインターフェースは、人々の需要やビジネスの改善可能性を鑑みると、大いに最適化される余地があります。具体的にどのような可能性があるのかについて本稿では価格提示に関する事例を取り上げていきたいと思います。 ## 事例: 価格心理とパーソナライズの可能性 商品価格の提示の方法によって、同じ価格であっても人間の受け取り方は大きく異なります。これまでの研究で、人間は下記の要素によって価格の安い/高いを判断する Reference Price(参照価格)という概念があることが明らかになっています。 > > > - Previous Prices: 同じ商品の過去価格 > - Advertised Prices: 提供側から提示された価格 > - Estimated Price: 自分が想定する価格 > - Adjacent Prices: 類似した商品の価格 > - Nearby Numbers:(たとえ商品の価格でなくとも)近くにある数字 > > 参考: [nickkolenda](https://nickkolenda.com/pdf/pricing.pdf)(PDF) > 例えば、「価格のフォントサイズは小さいほど心理的な価格も安く感じる」、「男性は赤いフォントカラーで価格を見せる方を好む」など参考文献には無数の価格受容性を上げるためのTipsが記載されています。 Nearby Numbersの例: 製品価格と全く関係がない社会保障番号の下2桁が高いほど、同じ商品に対してより高い価格を支払おうとする相関がある 出典: [Nick Kolenda](https://nickkolenda.com/pdf/pricing.pdf) Nearby Numbersの例: 製品価格と全く関係がない社会保障番号の下2桁が高いほど、同じ商品に対してより高い価格を支払おうとする相関がある 出典: [Nick Kolenda](https://nickkolenda.com/pdf/pricing.pdf) これらのTipsを画一的に実装するだけでも、おそらく統計的に有意にコンバージョンが上がると考えられます。一方で、本当に全男性に赤いフォントを提供することが最適解となるかはわかりません。色弱の方に提供する際には、赤いフォントではない方が良いかもしれません。また、価格を提示する場所にしても、ある人は右側の方が認識しやすく、ある人は左側の方が認識しやすいかもしれません。 統計的な有意性は汎用化する際の一つの基準として使う分には問題はありませんが、やはりユーザ個別の事情や好みを吸収しきることはできません。各個別のユーザの行動や嗜好にあわせて使うべきTipsを出し分けていくことが、より最適なユーザ体験になっていくと考えられます。 また価格自体を在庫状況・繁忙時期などを考慮して、動的に変えていくダイナミックプライシングはホテル業界や航空業界などではすでに行われていますが、今後は[ユーザ側の個別事情も加味してさらに最適化されていく](https://www.linkedin.com/pulse/types-dynamic-pricing-how-ai-can-help-rapidious/)ことも考えられます。例えば、ユーザが何か成し遂げて達成感がある時と、忙しい時では同じ商品を同じ価格で出したとしてもコンバージョン率は変わりますし、給料日直後と給料日前でも価格の受容性は変わるはずです。ユーザに受け入れられる価格の最適化を行うことで、最適なオファーをユーザに提示しつつビジネス価値(売上の最大化、機会損失の解消)を上げていける可能性があります。 現在はユーザ状況を踏まえた価格の表示方法や動的な価格変動だけでも、上記のような要素を考慮できているサービスはほとんどありませんが、汎用AIや専用AIが次々と生まれている状況を考えると、今後こうしたユーザインターフェース領域の最適化ソリューションが出てくると考えられます。 # おわりに 今回は「ハイパーパーソナライゼーションによるビジネス価値向上の可能性」についてとりあげました。 今回取り上げた価格の提示方法や動的な価格提供という観点だけとっても、ユーザとの関係性の向上やビジネス価値の改善に大きな余地が残っています。これが実際に実行できるまでにはまだ時間はかかると考えられます。一方で、肝心のユーザ毎の状況を理解するデータについては、[本連載#53で取り上げたRewind](/posts/803b2f942a)であったり、[ストレスや脈拍や睡眠時間などを測定できるスマートウォッチ](https://www.apple.com/jp/apple-watch-se/)であったり、[視線や指先の動きをトラッキングするXRデバイス](https://www.apple.com/jp/newsroom/2023/06/introducing-apple-vision-pro/)であったり、要素だけでいえば取得できる製品/サービスも増えています。 デバイスもOSもアプリケーションもさらに進化が起こり、ユーザの物理的・心理的な状況把握はデータの収集とAIによる分析でそこまで遠くない未来に実現される可能性があります。その時には本稿で取り上げた価格やフォームのUIの最適化だけなく、あらゆるフォームファクターが各ユーザに最適化される「ハイパーパーソナライゼーション」が実現されるかもしれません。まだ現実感のない夢物語のようですが、LLMが近年ここまで急速に精度を上げてくることを多くの人が予想できなかったように、起こりうる可能性があるものとして捉えるべきかと考えます。 --- ## 読者ロイヤルティへの道筋:より強力なエンゲージメント戦術の発見 URL: https://ximera.com/posts/edc40b5d25 公開日: 2023-10-18 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2021/03/25/reader-loyalty-tactics/))公開日:Oct 18, 2023 グローバルな出版社にエンゲージメント戦略について話すと、必然的に長期的な読者ロイヤルティに向けたリーダー・ジャーニーの最適化に話が及びます。エンゲージが得られるジャーニー(あるいは[読者収益](https://blog.chartbeat.com/2020/02/12/paywall-model-landscape-breakdown/))は、コンテンツをより多く手に入れるための新たな道筋を開くこと(新たな障壁を作らないこと)から始まる。これが彼らへのメッセージです。 読者ロイヤルティへの道を築くには、ディスカバリー・プロセス:読者を理解しどこを最適化すれば最大の効果が得られるかを知ることが極めて重要です。読者のロイヤルティは重要です。ロイヤルティの高い読者は新規訪問者の3倍以上読む傾向があります。そして私たちのガイド「Navigating the New Reader Journey」で述べているように、読者ロイヤルティは最も効果的な[エンゲージメント戦術](https://blog.chartbeat.com/2020/05/20/content-planning-questions-and-answers/)のシグナルになるのです。 ![](/images/posts/edc40b5d25/Untitled.png) なぜディスカバリー・プロセスがロイヤルティに向けた健全なリーダージャーニーの構築において重要なのか。そして、より大きな成功に貢献できる重要な戦術について詳しく説明します。 ## 読者の行動を知る リーダージャーニーを効率化するための第一歩は、読者がどのようにコンテンツを発見するかを理解することです。これにより、読者の行動に関する独自のインサイト(洞察)を知ることができます。これらのインサイトは読者がサイトにアクセスした後の、小さいながらも重要なチャンスを活かし、より深くコンテンツに興味を持ってもらうために特に役立ちます。 手始めに、リファラルデータとデバイスデータから次のことを分析してみましょう: 1. 読者の流入元(チャネル、デバイスなど) 2. 読者が期待する体験のタイプ 例として、[米国の選挙](https://blog.chartbeat.com/2021/03/17/audience-trends-trump-biden/)のような大きなイベントを挙げましょう。このような場合、一般的に読者のサンプル数が多くなるため、コンテンツの発見やエンゲージメントの行動の傾向を把握しやすくなります。 ![](/images/posts/edc40b5d25/Untitled-1.png) 上の図で、読者がどのように検索チャネルを通じて選挙関連のニュースに接したかを見てみると、ニュースサイト全体で更新が行われたときにピークに達したことがわかります。 ![](/images/posts/edc40b5d25/Untitled-2.png) ソーシャル経由のページビューも検索に近いトレンドになったものの、ソーシャルでは読者がリアクションやコメントを求めたため、選挙の夜以降もページビューを牽引しつづけました。 オーディエンスの検索とソーシャルでの行動はコンテンツ戦略にとって重要です。この例が示すように、トラフィックの増加を次回にどのように生かせるか検討する大きなチャンスになります。 ## 最適な測定フレームワークを決定する 読者がどのようにあなたのコンテンツを見つけるかを明らかにすることは、その影響を長期的に測定するフレームワークがあって初めて効果的になります。そのためには、勝者(読者が長く関わってくれたところ)と敗者(読者が離れてしまいがちなところ)を把握し、読者によりよいサービスを提供する方法を見極めましょう。 ### 1. 小さな調整でコンテンツを最適化する コンテンツを公開したら、それで終わりではありません。読者の注目を集め、ほかのコンテンツに[回遊](https://blog.chartbeat.com/2020/10/27/evergreen-content-strategy/)させるための最適化を始めるために、まだ調整を行うことができます。まずは見出しからです。私たちのデータによると、見出しの調整は読者がしっかり読み込む質の高いクリックを増やすことができます。 ### 2. 努力を無駄にしない うまくいったところとその調整は同様の行動をつづけたりさらなる実験の基礎にすることができます。 たとえばエバーグリーンコンテンツ:掲載から時間が経ってもオーディエンスの心に響くコンテンツは、情報の更新やリンクの設置で読者の回遊を促すことができます。 ## 読者をロイヤルティへの道へ導くポイント 上の戦術について、簡単にいくつかのポイントを挙げます: ### 1. 読者を知ることはプランニング・プロセスにおいて重要である 時間とリソースに見合った実験は、読者を知ることをしなければ始まりません。読者がどこから来ているのか、彼らがコンテンツにアクセスするために最も頻繁に使用するデバイスが何なのかを知りましょう。そうすれば、苦労して作ったコンテンツに強く誘導するのに役立つ、優れた能力を身につけることができます。 ### 2. 納得のいくフレームワークで測定する チームの目標がエンゲージメントであれ、読者収益であれ、成功を測定する枠組みを作ることが重要な出発点です。そこからトラフィックの多いコンテンツに注目し、うまくいった理由を明らかにし、その発見をパフォーマンスの低かったコンテンツに行なえる最適化につなげることができるのです。 --- ## 2023年第3四半期:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/4cac6d716a 公開日: 2023-10-11 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2023/10/06/global-audience-insights-q3-2023/))Oct 11, 2023 2023年第3四半期(7-9月)、平均エンゲージタイムは中東で最も長く、検索トラフィックは東南アジアと中央アジアで増加、ソーシャルからのページビューは減少が続きました。 *これまでのインサイトと比較する:[Q2 2023](/posts/41b6aec21d)|Q1 2023* ## エンゲージタイムは中東と中・東欧で最高 中東の読者は平均エンゲージ時間が33.9秒で、最もエンゲージの高い読者でした。中・東欧が33.5秒、アフリカが32.3秒と続きます。 [https://public.flourish.studio/visualisation/15212731/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15212731](https://public.flourish.studio/visualisation/15212731/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15212731) この四半期で最もエンゲージメントが高い地域のひとつであるアフリカは、平均エンゲージ時間が36.4秒だったQ2から大きく減少しました。 ## 東南アジアと中央アジアのモバイルトラフィックが引き続き最も多い 東南アジアのオーディエンスは引き続きほぼモバイルデバイス経由でChartbeatネットワークのウェブサイトを利用しており、同地域のページビューの87%はモバイルによるものでした。中央アジアでは、モバイルデバイスからのページビューの割合が84%と次に高く、前四半期の86%から減少しています。 [https://public.flourish.studio/visualisation/15212931/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15212931](https://public.flourish.studio/visualisation/15212931/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15212931) モバイル端末からのページビューが68%を下回った地域はありませんでした。 ## 検索トラフィックは世界中で増加 第2四半期、東南アジアのページビューの39%が検索によるもので、前四半期の38%から上昇しました。中・東欧も伸び、36%から37%に上昇しました。 [https://public.flourish.studio/visualisation/15213782/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213782](https://public.flourish.studio/visualisation/15213782/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213782) 中東は検索が減少した唯一の地域で、34%から33%に減少しました。 ## ほとんどの地域でソーシャルからのページビューが減少 アフリカはソーシャルプラットフォームからのページビューの割合が19%と引き続き最も高いですが、トラフィック減少の影響を最も受けた地域でもあり、第2四半期の23%から減少した。 [https://public.flourish.studio/visualisation/15213805/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213805](https://public.flourish.studio/visualisation/15213805/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213805) 中東を除くほかのすべての地域は前期比1~3%の減少となりました。 ## ロイヤルティが最も高いのは北欧と南欧 ページビューに占めるロイヤル読者の割合が最も高かったのは北欧で、前四半期の47%から48%に増加しました。中央アジアは前四半期比最大の伸びを示し、25%から28%に改善しています。 [https://public.flourish.studio/visualisation/15213827/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213827](https://public.flourish.studio/visualisation/15213827/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/15213827) ほとんどの地域が若干の変動を見せましたが、北米は38%から34%に、アフリカは32%から29%に減少しました。 ## 2023年第3四半期リサーチのポイント 1. エンゲージメントと回遊(リサーキュレーション)は密接な関係にある 回遊(リサーキュレーション)を促進するひとつの方法は、おすすめ記事をパーソナライズすることです。1訪問あたりのカテゴリ数に関する最近の調査によると、サイト訪問者の70%以上が月に2つ以下のカテゴリーしか読んでおらず、40%は1つのカテゴリーしか読んでいません。つまり、平均的な読者は無関係なトピックの人気記事よりも、同じカテゴリー内の記事に遷移する可能性が高いということです。 1. 第3四半期はソーシャルからのページビューが減少 ソーシャルからのページビューが減少したのはあなたのサイトだけではありません。[私たちの調査](/posts/02d0e53483)によるとニュースサイトやメディアサイトへのFacebookのトラフィックは年間を通して減少しています。 1. 検索トラフィックは増加 検索トラフィックは第3四半期に増加しましたが、検索結果からロイヤル読者になるには長い道のりがあります。訪問者の意図と過去の行動を理解することは、彼らの体験を最適化し、[ロイヤルティへの道を築く](https://blog.chartbeat.com/2021/03/25/reader-loyalty-tactics/)のに役立ちます。 --- ## Engaged Timeという指標でオーディエンスを育て、ロイヤルユーザを獲得する URL: https://ximera.com/posts/40186b4cc0 公開日: 2023-10-04 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2019/08/16/using-engaged-time-data-grow-loyal-audience/))Oct 4, 2023 パブリッシャーは、コンテンツのロイヤルユーザが増えることで利益(購読者数の増加や広告収入など)を得られるよう、オーディエンスへの取り込み方を改善したいと考えています。 ![](/images/posts/40186b4cc0/Chartbeat_Real-time-Publishers-01_How-can-publishers-grow_1600x7002x-1-1200x700.png) 記事を読み込んだ読者の45%が 最初の15秒以内に離脱する。そのうちの60%以上は戻ってこない。 これまではページビューのような伝統的な指標の分析でこうした決定を下すのが常識でした。しかし、ページビューはコンテンツの品質よりも、ページが開かれたかどうかの指標です。では、ページビューでなければ何を指標とするのが良いでしょうか。同様の視点から私たちは、訪問者があなたのコンテンツと積極的に接触するために費やした平均時間をEngaged Time(エンゲージタイム)として作成しました。 Engaged Timeは、アクティブな読者とのインタラクションを追跡し、何が読者の心に響いているのか、何が読者をウェブサイトの奥深くに引き込んだのかを明らかにします。 Engaged Timeは、さまざまな方法でオーディエンス育成をサポートします。これを利用することで、パブリッシャーは以下のことが可能になります: - クリック数は多いが、読まれていないストーリーを特定できる。これは、そのコンテンツの提示や表現方法に起因している可能性があるため、改善することができます。 - 過去のEngaged Timeデータを使って、読者がどこに時間を費やしているかを確認できる。トップストーリーはページビューでランク付けされるのではなく、何分読まれたかでランク付けされるべきです。たとえば、MLB.comは、単に試合のスコアを知りたいファンもいますが、重要な引用やポイントに惹かれてページに滞在するファンも多いことを[発見しました](https://blog.chartbeat.com/2019/06/03/headline-test-best-practices-mlb-webinar/)。これはバイラル性だけでなく、コンテンツの真の価値を見出すのに役立ちます。 - チャンネルを超えたプロファイルを構築できる。Engaged Timeによって、パブリッシャーはより多くのチャンネルにコンテンツを広めるための効果的な戦略を立てることができる。たとえば編集者は、読者が記事に流入してくる経路に焦点を当てることで、掲載から数時間後にEngaged Timeが減少した場合でもソーシャル上でその記事に新たな命を吹き込むことができる。 - 何が読者を惹きつけているかを知ることができる。記事を見て共通点を確認しましょう。見出しやリードはどうでしょうか? 記事の内容は伝えられていますか? 画像や動画はありますか? 繰り返し試すことで、このような点が浮かび上がります。たとえば、[サウスチャイナ・モーニング・ポスト](https://blog.chartbeat.com/2018/07/16/south-china-morning-post-approaches-digital-transformation/)は、リアルタイムのインサイトを使ってランディングページを最適化し、パフォーマンスが高いコンテンツの掲載位置を上げることで、魅力的なコンテンツがそのページで最も価値のある場所に配置されるようにしています。 - エバーグリーンコンテンツの寿命を延ばすことできる。ページビューは少ないがエンゲージメントが高い古い記事には、再活性化のチャンスがある。これらの記事を特定して勢いを生かすためにもう一度プロモーションしよう。 # なぜEngaged Timeが重要なのか なぜEngaged Timeを使うのでしょうか。コンテンツを読むのに1分以上費やす読者は、15秒未満の読者に比べ、[そのコンテンツに関する具体的な事実をより多く思い出すことができます](https://blog.chartbeat.com/2014/12/22/engaged-time-affects-reading-comprehension/)。対照的に、ページビューは一時的な読者を得ることはできますが、リアルタイムで調整し最適化することは困難です。 ![](/images/posts/40186b4cc0/blog-tn_Chartbeat-Why-Enaged-Time-Matters2x-768x512.png) また、Engaged Timeは読者があなたのサイトにさらに入り込むのを妨げているコンテンツの問題を読み解くのにも役立ちます。そして、パブリッシャーがより深いエンゲージメントへのハードルを素早く取り除くことができるようになればなるほど、ロイヤルユーザを増やすことが容易になります。 --- ## デジタルクローンが生み出す新たなメディア URL: https://ximera.com/posts/803b2f942a 公開日: 2023-10-03 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #53|Ikuo Morisugi| 2023年10月3日 ![](/images/posts/803b2f942a/xmnt53.webp) Illustration by [UnDraw](https://undraw.co/) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第53回となる今回は「デジタルクローンが生み出す新たなメディア」を取り上げます。 [本連載第50回](/posts/084553fa2b)でも取り上げたLLMベースサービスの進化が現在でも引き続き起こっています。毎日新しいトピックが飛び交っている状況で、メディアに関してもAIによって新たな形態が生まれつつあります。 AIによって各個人が持つ悩みや課題は、調査・要約・データ抽出によってプロンプトベースで解決できるようになってきました。ChatGPTが得意とするような領域です。これは汎用AIが汎用的な課題に対して提供しているソリューションになります。 一方でより専門性が高かったり、特定の人にしか知見がない場合においては、汎用AIはやや不向きです。その領域をAIで解消するには、専門領域が得意な言語モデルやツールとの組み合わせが必要になってきます。 そうした際に生まれてくるのがデジタルクローンという考え方になります。デジタルクローンは特定個人の発する言葉や行動をAIに学習させてデジタルな存在としてコピーする(まさにクローン)という概念になります。 これにより、特定個人の言葉や行動のデータをベースにAIが動的に特定個人のように振る舞えるため、今まで人間対人間の限られていた範囲でしか1to1の対応ができなかったことが、AIによるシステム化でスケールをもって1to1の対応ができるようになります。 デジタルクローンによってスケールして1to1メディアが作られる 出典: [X](https://twitter.com/daraladje/status/1707046337588396316/photo/1)(@daraladje) デジタルクローンによってスケールして1to1メディアが作られる 出典: [X](https://twitter.com/daraladje/status/1707046337588396316/photo/1)(@daraladje) これまでは、例えばInstagramなどソーシャルメディアで不特定多数にクリエイターが画一的なコンテンツを配信していました。これに対してデジタルクローンであればフォロワーの一人一人に対して、個別にパーソナライズされたコンテンツを圧倒的なスケールでダイナミックに配信できる変化が起こります。 この変化はこれまでメディアで成し遂げられてなかった1to1メディアという新たな形態を作る可能性があります(デジタルクローンを作ること自体まだ法的整備が追いついていないことや倫理的に認められるかどうか議論の余地は当然ながらあります)。 こうした状況に対して、デジタルクローンのビジネス化であったり、そのデータの下地を獲得を図ろうとしているスタートアップが出てきています。本稿では具体的な事例を取り上げ、どのように実現させているのか見ていきたいと思います。 # 1to1のコミュニケーションを可能にするデジタルクローン : Delphi 「その人があるテーマについてどう考え、何を話すか」は古くからあるコンテンツであり、例えばなにか困ったことがあれば、長老、ご意見番、先輩、友人、先駆者などに有益なアドバイスを求めたり、困ったことがなくても自分とは別の視点での考えを学んだりすることができます。つまり、興味がある人が発信する情報をコンテンツとして消費することが人間の欲求として存在しています。 現代は、政治家、インフルエンサー、セレブリティ、成功スタートアップの創業者から身近な友人、先輩、恋人、よく通うお店の店主まで、あらゆる人が情報発信をしているため、人々はつながりのある人に話を聞くだけでなく、膨大な情報の中から検索したり、ソーシャルメディアのフィードを見たりして、自分のニーズにあっているコンテンツを見つけることで、より情報消費の満足度を上げようとしています。 一方で、自身とつながりのない人に直接1to1で話を伺うのは簡単ではありません。人脈を辿ったり、オンラインサロンに入って機会を伺ったりなど、相手が著名で忙しい人であればあるほど、社会的・物理的な制約がのしかかってきます。 この課題に対してAIによるデジタルクローンという形でアプローチしているのが、Miami発のスタートアップである[Delphi](https://www.delphi.ai/)になります。Delphiは、トレーニングデータとして、テキスト、オーディオ、ビデオなど個人が発信しているデジタルコンテンツをインプットし学習させることで、その人がどのように考え発言するかを模倣するAIクローンを作ることができるプラットフォームを提供しています(現在は限定公開のみ)。 ChatGPTに「XXXXになりきって会話してください」といったプロンプトを与え、一時的になりきり会話を楽しむことができますが、Delphiはよりパーソナルなデータインプットに特化してAIに学習させ、永続的かつ実用的な「デジタルクローン」を作ることができます。 Delphi はすでに自社の AI ソフトウェアを使用して、スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、オッペンハイマー、ソクラテス、老子、アリストテレスや、存命および死亡したアメリカ大統領など[数多くの有名人のクローンを作成](https://venturebeat.com/ai/you-can-now-make-an-ai-clone-of-yourself-or-anyone-else-living-or-dead-with-delphi/)しています。 Delphiによって作成されたデジタルクローンの例 出典: [delphi](https://www.delphi.ai/) Delphiによって作成されたデジタルクローンの例 出典: [delphi](https://www.delphi.ai/) Delphiはコーチ、クリエイター、専門家、政治家、CEOなど、知的レバレッジの高い人々がデジタルクローンを作り、物理的な制約を取り払い他の人が利用できるように支援することに重点を置いています。ビジネスモデルはまだ確立されていませんが、こうしたデジタルクローンの作成とアクセスに対して課金するモデルが検討されています。 デジタルクローンは、故人も含め著名人や敬愛する人の有益な知見を動的に与えてくれるアーカイブにもなりますし、使いようによっては思い出に浸るために昔の友人、故人と再会する場にもなるかもしれません。 当然ながらDelphiのサービスにはリスクもあります。現状では、デジタルクローンの作成に制限がないため、ユーザがトレーニングや提供の仕方を悪用すれば、精度の高い詐欺を大規模に行うようなBotも作れてしまいます。嫌悪感をもつ人のクローンを作って、蹂躙するといったネガティブな使い方もありえます。悪用しようと思ったらさまざまなことができてしまうため、正式なサービスインに際しては何らかの制限をかけることが予想されます。 Delphiは2023年9月にFounders Fund、MVPなどが投資家として参加する[270万ドル(約4億円)のシリーズB資金調達](https://twitter.com/daraladje/status/1699447019528433985)を実施し、正式サービスロンチへ向け準備を進めていると考えられます。 # デジタルクローンのマストデータをアーカイブ : Rewind 我々は現在、PCやスマートフォンを介してテキスト、オーディオ、ビデオの入出力を行っています。デバイスで人間が文章を作成したり、ビデオ通話で音声とカメラ映像を共有したり、ブラウザで検索エンジンを介して調べ物をするなど、さまざまなコンテンツに関するアクションを起こしています。 こうした人間によるアクションと生成されたコンテンツは、今後人間をサポートしてくれるAIにとって非常に重要なデータとなります。Delphiのようなデジタルクローンを作る上でもマストなデータと言えます。インプットデータとしてAIにこうした人間のアクションやコンテンツを学習させることで、より個人を理解したり、自分の代わりに精度高くタスクを処理したりすることが可能になります。 一方でPCやスマートフォンで作られたすべてのコンテンツが既に利用可能なのかというと実はそうではありません。デバイス上で起こっているすべての人間のアクションは操作ログとして残されていますが、そこで生成されたコンテンツはデータ量が多すぎるためすべてがアーカイブされているわけではありません。人間が意図的にファイル保存したコンテンツは残っていますが、Google MeetやZoom通話はいつも録画されていない場合がほとんどですし、オンラインで画面共有で説明を受けた場合なども意図的にそのコンテンツをもらわないとデバイスやクラウドストレージには残りません。 この課題に対して、デバイス上に発生するあらゆるコンテンツを取得しアーカイブを可能にしているのがRewindになります。Rewindはデバイスの画面上で発生するユーザの動きをすべて取得し、タイムライン形式で過去いつどの時間にどんな画面を開いていたのか、どんな音声をインプットしていたか、聞いていたかなど入出力の操作とコンテンツをまるごとアーカイブしていきます。かつ、そのアーカイブをあとからいつでも検索できたり、タイムマシンのように曜日時間を指定してその場面にどんな画面や操作をしていたかを視覚的にも表示可能なデータを保管しています。 後から自分の過去の行動やコンテンツが視覚的にも検索できる 出典: [Rewind](https://www.rewind.ai/) 後から自分の過去の行動やコンテンツが視覚的にも検索できる 出典: [Rewind](https://www.rewind.ai/) ここで重要なのが、デバイスには個人的なデータが大量に含まれているため、丸ごとクラウドにアップロードするというアプローチは取れません。そのためRewindは独自の圧縮技術で実用的なファイルサイズで上記のアーカイブをローカル保存できるソリューションを提供しています。また保存したローカルデータとOpenAIのAPIと連動させ、ユーザーが過去にどんなことを調べて、どんなことにインスピレーションを得たのか、あいまいな指示であっても、AIにより探し出すことができるようになっています。 Rewind自身はあくまで過去のアーカイブから必要な情報を探し出せる生産性向上ツールとして打ち出しているため、デジタルクローンと少し離れているような印象を受けるかと思います。しかし、Delphiのようにデジタルクローンとして自身の分身を作ったり、自身のことをより深く理解して適切な行動をAIソリューションとして提供する上で、Rewindがトラッキングしているデータは非常に重要なものとなりえます。現状はMac / iOS限定で提供されており、デバイスやチップセットの進化、提携やM&Aなどが必要になってきますが、いずれにせよスマートフォンやその他デバイスにも類似の機能が提供されることが予想されます。さらにRewindはAppleのXRデバイスVision Proにも提供することを表明しており、あらゆるデバイス上のデータアーカイブと記憶に関するソリューションの幅広い展開を狙っていると思われます。 Rewindは2022年11月に[Andreessen Horowitzがリードする資金調達](https://techcrunch.com/2022/11/01/rewind-wants-to-revamp-how-you-remember-with-millions-from-a16z/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAIp9oL2FUtXZNy-xDv0ZzvNbLZowN8bTSG6jN_BSb5MCDI1r6mxpKkXW8i4vQ9iCM1lLVwxCtylVNOBma3X6S5o7KFvogU2Y_GWQ6PPSQ7OBGK9GF3ID4uPyswAvMJ4si8hKfFDkR9DpM3UFlCMeeWwG72-Rq5JefAm9nxTQHPdj)を実施後、2023年5月に[NEAらからも資金調達](https://www.theinformation.com/articles/ai-startup-rewind-gets-170-offers-and-350-million-valuation-in-unusual-fundraising)も行い、注目度が高まっています。 # おわりに 今回は「デジタルクローンが生み出す新たなメディア」についてとりあげました。 直近では、ChatGPTが合成音声・画像アップロードにも対応したことで、[AIの「目」と「耳」が作られはじめている](https://wired.jp/article/chatgpt-can-now-talk-to-you-and-look-into-your-life/)と言われており、AIの進化が続いています。 今回紹介したDelphiのデジタルクローンはあくまでAIの一つのユースケースですが、これまで人間の活動範囲外だった分野を一気に活動範囲内に推し進めるような強力な分野になりえます。デジタルクローンがメディアとして成立するくらいの規模となるかどうかは未知数ですが、大きく期待されるところです。 またRewindのようなデータアーカイブの分野についても、膨大に増え続けるデータをいかに効率的に残して、AIにフィードバックし続けるか、以前よりもさらに重要性が大きく増しています。 一方でデジタルクローンは倫理的・法的にも問題のある使い方が多数出てきてしまいやすい分野だと考えられます。極論AIを使った犯罪や騙しが横行するようなデストピアな世界も起こりえます。かつ、一度それが広がってしまうとなかなか取り戻しも利きません。この手の話に特効薬はないので提供側の配慮と法規制や社会倫理まで含めた問題として解決していくしかありません。 AIによるメディアビジネス的な価値と具体的に起こりうる暗黒面についても、参考になる材料をキメラでも今後もお伝えしていきたいと思います。 --- ## コンテンツ制作の現場とデータ活用のケーススタディ(2023-11-29) URL: https://ximera.com/posts/a50fe8b530 公開日: 2023-10-01 著者: Ximera 2023年11月29日(水)に開催されるオンラインイベント「コンテンツ制作の現場とデータ活用のケーススタディ」ではImpress Watch、NHK、Business Insider Japan、北海道新聞デジタルからゲストを迎え、コンテンツ制作の現場でのデータ活用、データとどのように接しどう活かしているのかを4社それぞれの経験からお話いただきます。具体的な運用方法や課題への取り組みなどをケーススタディとして共有します。 ### イベント概要 日時  : 2023年11月29日(水)17:00 - 18:30 形式  : オンライン(Zoom Webinar) 登壇  : Impress Watch、NHK、Business Insider Japan、北海道新聞デジタル、株式会社キメラ 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ ## アーカイブ動画 [https://www.youtube.com/live/bTk9CbRu4IE](https://www.youtube.com/live/bTk9CbRu4IE) *口述の書き起こし。読みやすさのために編集されています。* --- ![](https://mcusercontent.com/28aa61b05b8642d24892abfb3/images/62b1be1b-09cd-5135-6487-2f5d257b5443.jpg) --- *これはデータ活用を4段階のステップで表したもの。事前のアンケートでみなさんの組織のレベル感もこのステップのどのあたりなのか、だいたいわかってきました。* *最初はデータを見続けることができずつまずく。NHKの松枝さんはウェブサイトの運営組織の立ち上げやデータ活用を横に広げてきた実績をお持ちですが、具体的にどんなことをしてデータを見る習慣をつけましたか。* 松枝 一靖(NHK メディア戦略本部チーフプロデューサー):私自身は責任者になったので、自分が一番把握しなくてはならないということで見ました。忙しいなかなので、ある程度定時で見るってことを決めまして。朝起きたら見る、ごはん食べたら見る、電車乗ったら見る、仕事場着いたら見るっていう、定時の時間帯を作って見るようにしたんです、とくに午前中。そしたらいいことがあって、毎日同じタイミングで見てたら気づくんですよ。今日いいなとかダメだなとか。で、まずそこに気づいて、午前10時のデータで1日のデータが予測できるようになっていったんですよね。そうすると、仮説が生まれていって、なんで今日いいんだっけ?とか。たまに10時の予測と結果がズレたりする。なんでズレるんだっけ?とか。毎日同じ時間に見ていったら感覚が掴めていったことと、結果との仮説を考える習慣がついたのが、自分自身としてはすごくよかった点です。 これを(チームに)広げるはすごい大変なんで、これだけで2,3時間話せてしまうテーマなんですけど、NHKで一応やっているのは(オフィスに置いてある)モニターのなかにデータを映すっていうのはまずやってます。そもそもそんなにちゃんと見てくれないかもしれないが、サイネージ広告みたいなイメージです。「データあるんだね」っていうことで。やってよかったのは食いつく人がいるんですよね、少数派だけど。「あれってどうやって見たらいいんですか」とか「あれってどういう意味なんですか」「私の記事ってどういうふうに見たらいいんですか」とか。人が見える場所に(データが)あるっていうのは、広げるための一歩目としてはいい方法だったのかなと、自分の経験では思います。 *以前データ共有の場を設けても、参加してくれるのは声をかけたうちの3割だという話をしていましたが、どうやって参加を促していますか。* 松枝(NHK):呼びかけても集まってくれないって、みなさん悩まれると思うんですよ。私もともと社会部に10年いて、しかも直前までデスクもやってて、ほとんど知り合いなわけですよ。その状況で呼びかけても、まぁ言っても3割でした。誰がやってもそれくらいで、かつ、3割のうちのまた3分割されて、本当に自分からやりたいと思ってるのはそのうちのまた3分の1。全体の1割くらい。興味はあるんだけど、そこまでいけないよなっていうのが3分の1。とりあえずちょっと来たのが3分の1。 (人が)集まらないことにショックを受けないのが大事なことだと思ってて、そんなもんです、と。だけど、その10人に1人の熱量高い人間に出会うチャンスがそれでもやればあると思ってて。取材交渉に近いイメージを持っている。ほとんど断られるんだけど、1人たまたま「いいっすよ」と言ってくれる人がいればいいな、くらいの気持ちで途中からはやっていて。だから回数をある程度やるっていうことは心がけてました。 村堀 等(NHK 報道局 エキスパート):分析の内容によって、関心を持つ層が誰なのかを自分たちで整理していくっていうのがひとつ。この人はコアだからどうしても参加して欲しいって人は、直接「来てね」って声がけをしたり、生の働きかけっていうのはどうしても必要なのがひとつ。 それでも参加の意欲がどうしても湧かない人っていうのもいる。「そもそも何の役に立つのか」「そんなことやってる暇があるんだったら作った方がいいじゃん」と。そういう人たちにデータ見ようよと言っても見てくれないと思うんです。なので、最近やってる工夫としては「こういう示唆があったよ」とか「こういうアクションを取った方がいいんじゃないか」っていうところまで落とし込んでいって(相手が)「これどうしてわかったの?」って言ったら「データ見たんですよ」っていう、この順番がけっこう大事だと思ってます。 小さいところで言うと、部内向けのデータの振り返り会に参加したらこんなことがわかるっていうのを、コンテンツの引きみたいな感じで、タイトルを作って周知とか、けっこうあれこれやってます。画像とかは作らないですけど、たとえば最近出してるのでいうと、ストックコンテンツ、長く見られる記事ってどんなものかわかりますか? とか。そういうものが1年超えてアクセス集めつづけてる記事があるとか、引きを作って、あたかもユーザーかのように引っ張ってくるっていう工夫をしてます。 *北海道新聞社の生田さんはいまデジタル推進室にいらっしゃいますが、以前は記者さんでしたよね。今の話だと「データ見てよ」って言われる側だった。道新社内ではどんな働きかけがありましたか。* 生田 憲(北海道新聞社):去年7月から今の部署に来て、それまでは外勤の記者をやっていたんですけれど、私が記者だったときは記者が数字を知るツールがひとつもない状態だったんですよね。今の部署への異動が決まって内示が出たときに、Chartbeatのアカウントをもらって触りはじめました。そのときは、自分が書いたものがデータになって出てくるので、めちゃくちゃおもしろいなと。新しいおもちゃをみつけたみたいな感じで楽しんでやってました。 ただ、見方とかあんまりよくわかってないんで今の部署に来て大東さんとかそれこそ鈴木さんにああだこうだ教えてもらって。そのあとじゃあこれをどうやって広げていけばいいんだろうねっていうところで、いろいろ施策を練っていろいろありましたね。 *いま(生田さんから)データを扱うのも自分で好きでやっているという話がありましたが、インプレスの臼田さんもデータを使うのが嫌なタイプの方ではないと思っていて。このあたり、インプレス社内ではデータを使うことやChartbeatの導入についてほかの記者さん編集者さんの反応いかがでしたか。* 臼田 勤哉(Impress Watch 編集長):僕、今の話を聞いてけっこう衝撃を受けています。我々の会社、理工系の版元や出版社がベースになっている部分もあったので、Chartbeatを導入する前からPVを見るツールとかリアルタイムの反応みたいなものを見ていました。ある意味電話をとるより当たり前に「見てね」って言ったら見ているものだと思っていたんですね。細かい分析はしてないけどみんなが見ているものという認識で。 逆にPV見すぎてPV至上主義みたいなのがよろしくないんじゃないかみたいなところの対抗馬としてエンゲージメントをちゃんと見よう、ちゃんと読者さんが見てくれてるものはどれかっていうのはわかるって意味でChartbeatを入れたいっていうのが、6年前くらいに我々が導入した最初の動機だった。やっぱり放送局さんとか新聞社さんとかと全然違うカルチャーでやってたんだなという衝撃を受けてました。 *この辺の感覚はBusiness Insiderの伊藤さんも近いんじゃないかと思っていて、ご自身はデータに関する壁はなかったというお話しを打ち合わせのときにされてましたよね。ですがBusiness Insiderでは雑誌で書いていた方、新聞で書いていた方が書く機会も多くて、そこでは壁を感じることもあったとおっしゃってました。そのあたりの最初の導入の雰囲気、おぼえていますか。* 伊藤 有(Business Insider Japan 編集長):まさに松枝さんがお話されてたような話はうちの編集部でもありまして。臼田さんのインプレスさんと私が昔いたアスキーという会社は、そもそも源流は一緒なのでカルチャーはけっこう近い、IT出版なので。なので自分自身は何もハードルがない。けれど、2017年に媒体立ち上げた当初っていうのは、IT系から来たの私くらいでして、ほかの一緒に集まってきた編集部の人たちは新聞社系、通信社、それから金融系の新聞社、それからフリーランスのライターみたいな感じで、データをそこまで活用していない人たちだった。どちらかというとアナログの世界から来た人たち。だけど記事を書く腕は立つみたいな人たちだった。なので、浸透させるところを最初にやる必要があって、そこを私がけっこうやっていたところになります。 データを見る習慣をどう作るかというところはいろいろ私も工夫して、ひとつは松枝さんおっしゃっていたようなダッシュボード的なものをデジタルサイネージのように部署に表示するというのをやりました。データ分析ってリアルタイムで見ることもできるし、あとから振り返ることもできるんですけど、習慣のない人に全部をやれって絶対に無理なんですよ。なので、一番簡単で記者編集者の感覚にあったところからはじめようということで、みんなスクープだったり自分しか知らない情報を取りにいくことには感度がめちゃくちゃ高いじゃないですか。記事をよくしていこうという気持ちは元から強いので、数字の意味がわかればほっといても大丈夫だなと思った。なので、でっかいモニターにですね、当時はGoogle アナリティクスだったんですけど、リアルタイムを表示させて。そうするとすごく伸びてる記事とかが見えるようになってくるので、見えてきたら「なんで伸びてるんだろうね」って議論が自動的に起こってくる。そうなってくると「どこから来てるか、流入元見てみようか」とか、データを元にした会話をはじめる。それがカルチャーとして浸透していくっていうのを、最初の半年間くらいやっていて、そうするとみんなスマホで見るようになってきて、「リアルタイムで今来てるね」とか「昼の時間ってこのくらいの数字いくよね」とか朝見たら「今日ちょっと調子悪いかもね」とか、みんな何も言わなくてもわかっていく。というところから浸透をはじめました。 *Business InsiderさんもNHKさんも[BigBoardという大きいモニターに映すためのChartbeatのダッシュボード](https://chartbeat.jp/products/add-ons/)を有効活用されてますね。* *データを共有する話でいうと、今の「いつでも誰でも見られる」とは別に、メンバーと同期で数字を見る時間、報告する時間を作るのが大事。道新さんは編集の方々にデータを共有する場が隔週であるんですよね。* 生田(北海道新聞社):そうですね。隔週で編集局と私たちデジタル推進室の連絡会議をもっています。デジタルを担当しているデスクとか、デジタルをやれと言われてる編集委員を全員集めている。数字の振り返りとケーススタディ。これはボランティアベースではなく、業務として位置付けてもらって大事な機会にしています。最初はPVもわかんないみたいなおじさんたちが集まってきて困ったなという感じではあったんですけど、だんだん回を重ねるごとにできるようになってきた。 あと、なんで新聞社で数字が浸透しないのかを言うと、単純に業務を回すだけなら検証しなくても回るんですよ。1日単位で朝刊だ夕刊だという仕事をしていると、検証する時間も毎日持たなきゃいけないことになって、今までそういう文化もないから、やれと言われても、おもしろがれないとやれないのかなと思っていて。ただ、だんだんデジタルで仕事しましょうっていう文化自体、デジタル媒体のことも考えましょうっていう文化ができてくるなかで、自分の役割ができる人たちがいて、その人たちは自然と数字に関心をもっていくというながれだった。 *(データを)どう組織に共有していくかというなかで、NHKの村堀さんが、取材をする・制作をするマインドが強い方々にデータへの興味を持ってもらうときに「文脈を使う」って話をチャット(Zoom上のリアルタイムチャット)に書いてますね。* 村堀(NHK):うちは異動職場というところもあって、毎年メンバーの入れ替わりがある。ある程度浸透してきても1年でキーメンバーが抜けたりすると、PDCAが回っていたチームが一切PDCAをやらなくなる。そういう顕著な変化がある職場というのが前提にある。 回っているチームは正直言って何もする必要がない。もちろん自分たちでデータ活用できていれば、自分が見てやるっていうのが一番いいので。課題になってくるのは、データを使う意味がわからないところ(チーム)。こういうところに関しては、ツールの使い方とか「見た方がいいよ」ではなくて「ここを見たら、こうわかったよ」を提示していく。それでも動かない場合、これは最近自分たちのチームには口酸っぱく言ってるのが、提案して相手がやらなかったらそのままにするんじゃなくて、もう手を動かすところまで自分でやって「ほら効果出たでしょ」と。ここまでやり切ると、さすがにそのあとで動かないところはない。データ分析チームではあるんですけど、アクションにまで責任をもつ。そこのマインドが重要なのかなとは思います。 *とはいえ、そこの壁を壊せない方もまだいらっしゃる。記者さんや編集者さんに「データを見てもらえないんだよ」という方、いらっしゃると思うんです。記者さん編集者さんのなかでも、データを取り入れてもらいやすい方もいれば、なかなか難しい方もいる。無理に「データを使え」という話ではないと思いますし。そういうところの押し引きというか、バランス感、道新の生田さんはどんなふうにしていますか。* 生田(北海道新聞社):ダッシュボードとかって本人が来てくれないと見てもらえないプル型。プッシュも要ると思うんですよね。一番最初にやったのが[Chartbeatのレポート機能](https://chartbeat.jp/products/reporting/)、前日のトラフィックをメールで出せるツールを、記者全員に毎朝送りつけるっていうすごい迷惑な施策を……(苦笑)。僕の個人アドレスから送るっていうね、すごい嫌われ者みたいな感じですけど、午前4時半頃届くみたいなの(苦笑)。それをずっと一年半くらいやりつづけてて、それにPVとはなんですかとか、エンゲージメントタイムとはなんですかとか、毎日同じ定型文なんですけど書いてるんですよ。そうやってやってるとさすがにエンゲージメントって何ですかって言われることはなくなったのかなと思います。それがプッシュですね。 あとは松枝さんのお話にもあったんですけど、感度のいい人もいて、めちゃくちゃデータ見るのが大好きだとか、そもそもデジタルコンテンツ作るのが大好きだっていう人も1年くらいすると出てきてですね。この前、ある若い女性記者がですね、私はデジタルを作るのが大好きだって言って社内ウェビナーをやってくれたんですよ。デジタルの書き方講座みたいな。あんまり集客はできなかったんだけど、すごく大きな変化だと思うんですよね私のなかでは。私自身は記者出身ですけどもデジタルさんみたいになっちゃって、いかにも推進してる人みたいな感じ。でも、ずっと言いつづけてると反応してくれる人もいて、そういう人たちをちゃんと盛り上げて、編集局のなかで機運が盛り上がるような環境を作っていくのがこれからの課題かなと思っています。 *共有するとなると、強烈なリーダーシップでやりつづける方々と仲間になる方をどうみつけるかが鍵ですね。あとはデータの見せ方・出し方。NHKの村堀さんのように興味をもってもらえるように工夫して出すとか、道新の生田さんのようにメール送りつけるとか(笑)。Business InsiderさんやNHKさんのようにダッシュボードとかそのへんになるのかなと。* 伊藤(Business Insider Japan):あともうひとつ、今日は組織の長の人たちが参加者のみなさん多いと思うので、使い方のひとつとしてあるのは、適切に同僚を褒めるためのツールとして使うこと。モチベーションを作るために大事。(モチベーションは)PVに引っ張られやすいが、瑣末なPVとそうではないPVがあり、それはデータを見ないとわからない。すごくヒットしている記事に見えるが、どこからこの人たちが来ていて、どうしてこの数字が生まれたのかを分析すると「すごく読まれたけど瑣末だね」ということがある。あるいは単純な数値だけで比較するとすごくヒットした記事の1/10くらいしか読まれてないが、この経路で読まれてる記事っていうのは実はすごい、X経由の流入が異常に多い、なんだこれは、ものすごい反響があったんじゃないか。というのは、PVを見ているだけではわからない。肩を落としている記者がいたとしても「これはすごい数字もってるし、我々が通常取れていないところで読まれているので、これは続報を打った方がいい」と言えたりする。数字を「めんどくさいもの」ではなくて、自分をモチベートしてくれるものと数字の見方の定義を変えていったほうがカルチャーとして、とくに上司が使う数字としてはいいんじゃないかと思っている。 臼田(Impress Watch):いいPV・悪いPVって本当はないはずだが、やっぱりドカンと来ている見え方や、ありがたいがDiscoverは我々の努力じゃないよねという部分はある。とくにコストや時間をかけて作った記事がPV上ではそこまででもないと見えてしまうときはやっぱりあって、それに対して見出しを変えたり施策は打てるが、いいものやそこそこがんばったものには「しっかり読まれている」という傾向は出る。それでも失敗はあるが、じゃあどこが悪かったのか施策は打てる。たとえば見出しを変えてみてちょっと伸びたねとか、そういうことができるのがChartbeatを導入していての良さだ。 あとは、バズりすぎ、悪バズりみたいなものに対して、それ何回もくりかえすなよっていうのもあったりする。そこも含めて「この媒体なにやりたいんだっけ?」みたいな話も、ダッシュボード見たりChartbeatを見たりするなかで生まれてくることなのかなと。改めて、データを見ながら「僕ら何やりたいんだっけ」「この記事何を伝えたいんだっけ」みたいな話っていうのを、我々会議のなかでよくやってるので、伊藤さんと同じような趣旨で賛同、頷きポイントが多かったです。 *事前の打ち合わせではダメだった記事を会議のときに挙げるとおっしゃってました。* 臼田(Impress Watch):Impress Watchという媒体自体はノンジャンルで薄くデジタル被ってるとか、ビジネスパーソンの多くに関わるものだったら何でもやっていこうみたいな感じで「なんか、これ流行ってるよね?」みたいなことも一応ニュースリリースベースで軽くやって、これが受けたら企画作っていこうか、みたいなスタンスでやっている。新聞で、テレビで、YouTubeで、TikTokで盛り上がっているものでもやってみる。すると9割方、外れる。そのなかでもソーシャルでバズるとか、やたらとこれだけは読まれたというような手応えを見たいので、PVが高いものと低いものを両方見ていきたいと話している。閾値を超えないものに対しては基本的にはやらない方向だが、ただなんでスベったかという話を編集部でする。「これはまだ来てないね」とか、あるいはTVでは、ほかの媒体ではバズってるのになんでうちはスベッたのか。これ見出しじゃない?とか、そういう話になったりする。メインビジュアルがしょぼいよとか。リアルで写真撮ってこないと話にならない。完全に後追いでとりあえずの抑えでやったからダメだよねとか。社内で情報共有というか、自分たちが何をやりたくてこれをやって、結果ダメだったという反省会をカジュアルにやりやすい。なのでスベッた記事っていうのは僕はけっこう好きで、あんま量産しちゃダメなんですけども(笑) *「うちのメディアの文脈では、このヒットよりこっちのヒットのほうが今は価値のある、褒めたいものなんだよ」というように(データを)使うのは、メディアの方向性としての評価を(その記事に)することだ。「うちはAではなくBの道に行きたいんだよ」ということを、編集部員のなかで話せる機会だ。* 臼田(Impress Watch):まさにそうです。 *NHKの松枝さんも、自分たちのなかで「これがいいものである」という認識を合わせるのがすごく大変だと話されていた。この擦り合わせができるのがデータの魅力。試されていることなどありますか。* 松枝(NHK):ひとつは、1日、1週間、1ヶ月という活かし方。1日は朝回で。ラフに、昨日見られたPVの上位3つとエンゲージメント上位3つを並べている。NHKはヤフーさんとかに出せないのでそんなPVいかないんですよ。でもNHKのブランド価値って信頼感なので「記事を読んでよかった、役立ったな」ってことが大事なんですよってことでエンゲージメントを並べてて。最初は意味がわからないんですけど、毎日エンゲージメント1,2,3ってわーって褒めてると「なんですか?」ってところから「そういうものも評価なんですね」とけっこう浸透していった。週でいうと、もう少し深堀っている。村堀がさっき言ったように「こういう対策をしたら、こうなった」とやるのが週。月になると「今月はこのテーマに着目してみました」と深堀っていって伝えている。フェーズを変えながらやっているのが1点。 あと、データっていうとすごい大袈裟な感じも受けるんですけど、そんなでもなくて。すごいこね回す必要とかもまったくなくて、記事のアクセスも素直に見ればいいかなと。もっとほんと単純なことで、褒めるから入ったと話したが「ちょっとこれ直そう」みたいな話をどうやって伝えるかなと思ってはじめたのがこれだ。 --- ![](https://mcusercontent.com/28aa61b05b8642d24892abfb3/images/c1c022d0-15f5-621f-3fec-48ce777ce570.png) --- すべての記事のサムネイルとタイトルを、大学生3人に見せて、5段階評価してもらった。周りに言われたら反論できないと思った。僕や後輩が言うと角がたつが、たとえば若い人たちに見てほしいという話になったとき、大学生とかに言われたらさすがに変わるかもなと、これを半年くらいやった。特集記事は本当に全記事やって5段階評価してもらった。 ただ伝え方はちょっと考えて、褒めるやつはいいんですが、ダメな例集は自分の近く、「これ悪いやつやらせてもらうわ」と言える感じの(信頼関係のある)ところから選んでいった。そうすると、いいやつ集だと「なるほどやっぱり、顔が強いのね」とか「サムネにごちゃごちゃ書いたらダメだよね」みたいな感じが「いや大学生から言われちゃったよ」みたいな感じも含めて、伝わりやすかったりする。伝え方の一工夫もちょこちょこやりながらやっている。 *見出しはそのメディアの性格が出る。見出しのABテストはどんなふうにやっていますか。インプレスの臼田さんはご自身でけっこうやるとか。* 臼田(Impress Watch):私の場合はもう5,6年くらいChartbeatを使っていて、だいたいこれくらいの長さがいいとか、こういうキーワードが強いというのはわかっている。たとえば、Amazonだったら英語表記かカナ表記か。昔は海外のAmazonの発表だったら「米Amazon」表記だったが、何回やってもカタカナの「アマゾン」に勝てない。ただ米国発表だとわかるような要素はタイトルに残そうとか。そういうことをテストしながら週次の会議で(話している)。見出しのABテストは新聞社さんだとあまりできないという話を聞いたが、我々はすごく重視している。編集部のなかでも記事の校正をして「この見出し、どうなんだろう」という話はよく出る。「〇〇部長」みたいな見出しがあって「〇〇部長(なんて読者は)知らねえよ」みたいな話とか。「それよりは、この人が伝えたかったのはこうでしょ。括弧でこのコメント抜いたほうがいいでしょ」「でも俺そうは思わないよ」みたいな話になると「じゃあテストしてみよう」とか、そういうことになる。まずこう言い合える、出し合える関係性を作ることも重要だが、結果を出せるということが重要だ。 *「データが答えをくれる」とか「データを使えば解決する」というものでは全然なくて、データは話をするための素材でしかない。話のなかのほうが実りがたくさんある。さきほどのメディアの方向性の話も、上司としての褒めるツールとしての側面にしてもそうだ。そういうコミュニケーションの力は確実にある。* *Business InsiderはABテストどんなふうにしていますか。* 伊藤(Business Insider Japan):Business Insiderは非常に報道色の強いメディアでもありつつ発祥がそもそもニューヨークの媒体なので、経済報道の考え方はアメリカの編集部がやってることを取り入れて考えている。タイトルAB問題はすごく難しくて、新聞社さんによっては一度決めたタイトルを変えるのはまかりならんというところがあるのは知ってますし、私も出版社出身なのでそういう感覚は昔はあったんですけれども、オンラインメディアになってどの伝え方がいいのか(考えるようになった)。さきほどのAmazonの話はまさにそうだと思うが、それまでは編集長だったり上席の人間の感覚値・経験値から決めていたことが、実はそうではないかもしれないことがわかる。これが分析をする良さだ。 ということを前提にしながら、Business Insider(Japan)が立ち上がったときにUSとコミュニケーション取りながらけっこうびっくりしたのが、明確な誤報は当たり前にダメなんですけど、タイトルを変えていくこととか、あるいは原稿の中身をよい方向に変えていくことにはまったくハードルがない。非常に合理的。とくにタイトルについては、間違いは間違いでもし誤報を出してしまった場合は最悪は削除になりますけど、タイトルをどういうふうな書き方にするのが読者に伝わるのか、一番本質的に伝えたかったことはどの書き方が伝わるのかというのは、一回ではわからないと思っている。そういう意味でタイトルABはとても大事だ。やるべきかどうかの議論はまだあるが、よい使い方をするなら絶対にやったほうがいいと思っている。 (タイトルだけでなく)中身についても、原稿を変えるのは日本ではあまりやっていないが、USはけっこうやっている。前後を入れ替えたりもしているし、離脱のポイントがわかったらそこから下を書き換えたりもする。かなりドラスティックだ。最適化をどんどんやっている。合理的にオンラインメディアをするとはこういうことだなと思う。 日本でもたとえば、記事のなかに画像をどれくらい入れたらいいかを議論するが、一般的にオンラインのコンテンツをやっている人たちは「画像をとにかくたくさん入れたほうがいいですよ」と。1スクロール内に1枚以上あったほうがいい。スマホの画面で言うと、1.1枚とか1.2枚みたいな。媒体の特性にもよるが、我々の媒体のようなところだと必ずしもそうとは言えないことがわかってきた。とある画像のポイントで離脱していることがわかったときに、思い切って画像を消すともっと下までちゃんと読んでくれることがわかったりする。これはいわゆる原稿の改変には当たらない。画像を出すか無くすかの話であると考え、こういう調整を入れたりはしている。それによって離脱が減って最後まで読んでもらえるということは、意図した文意の全体が伝わるということなので、そのほうがよいだろうと考えている。 *新聞社さんの考えも伺ってみましょう。道新さんの場合どうでしょう。出したあとの記事の見出しや中身をベターにしていくために変更をする作業、これに関するカルチャーどうでしょうか。* 生田(北海道新聞社):見出しを変えるはある。やっている。ただ、業務負荷的にやり切れてないという感じだ。いまインプレスさん、Business Insiderさんのお話聞いて思ったのは、変えたときのことがナレッジとして編集局のなかに溜まっていっていないだろうなと反省していた。 中身を変えるのはちょっと難しい。軽微な変更はあるが、どうしても前のフローまで遡って確認してもらわないと新聞社のカルチャー的には難しい。ちょっとできない。 が、そこまでやり切らないと、働き方も変えないといけないと思いますけど。 *キメラは支援のなかで、自分のメディアでの強い見出しのパターンを作るといいですよと言っている。各々のメディアによって効く見出しに特性があるからだ。* *大東さん、見出しの数字の傾向を分けているのは何なんでしょう。* 大東(株式会社キメラ代表取締役社長):見出しが何のためにあるかがすごく重要だ。「CTRが上がるから見出しを変えたほうがいい」ということと「CTRが上がって、さらにエンゲージメントが上がってちゃんと読んでもらえるようになる」ことをしっかり見ることは、全然違うことだ。 NHKさんと「タイトルを見た瞬間に期待値の設定ができてないとダメですよね」という話をしていた。そのタイトルが期待値を設定できているかをどう評価するか(の話になる)。この根本的な考え方が整っているかがそもそもだと思う。 コンテンツの中身がいいことと(同時に)、デリバリーがいいことが重要だ。中身がどんなに良くても、届けたい人にちゃんと届いていなかったら全然意味がない。武器としてタイトルを操れているかどうか。 某新聞社さんだと、LINEのニュースでタイトルをすごく短くして出していた。期待値の設定をうまくやっているし、一般的なWebメディアのコンテンツで考えるような「タイトルでどう導くか」を極端に短いなかでもやるところがおもしろかった。こういうこともありだと思った。デリバリーの道具としてタイトルをどう使うか。それをどう数字で評価するか。 *コンテンツの中身とデリバリーを分けて考えることと、メディアのあり方と掛け合わせてどう使うかは学びがありますね。次は、データをどこでどう使うのか。データを判断基準のひとつにはするが、数値が高いからといってすべてのコンテンツをそう変えるのかどうかという話も同時にある。このあたりはデータを「共有する」ところからもうひとつ上の「文化にする」話だ。* *道新さんはデジタル推進室のほかに編集部門のデジタルエディターという方々がいらっしゃる。彼らをどう育てているのか。どう取り組んでいるのかお話いただけますか。* 生田(北海道新聞社):まず私がいるデジタル推進室が何なのか。社内のほぼすべての局、編集、制作、販売、エンジニア、広告営業などから集めてきて、20人くらいの社内横断組織を編成している。課金・サブスクリプションに関わらずデジタルに関わる事業を統括する。このなかで私は編集出身なので編集との窓口役をやっている。私のカウンターパートになるのがデジタル編集長だ。さきほどの見出しの話や出稿部から集まってくるコンテンツの捌き、バリュー判断などすべてその人が握っている。すごくコミュニケーションの形として組織としてわかりやすい。 私も忙しいのでなかなかいろいろな出稿部を回っていられない。デジタル編集長のところへ行って「いまどういうことに困ってますか」とか「今日の数字こうでしたね」と会えば数字の話をするみたいなことをしている。そうすると「こういうことしてほしい」とか「この記事なんで読まれなかったんだろうね」「これもっとプッシュしたいんだけど」と話してくれる。それを私が持って帰ってきて喋っていると、周りで聞き耳を立てている同僚が「これWeb広告回しましょうよ」と言ったりする。みたいなことは日常茶飯的にやっている。 デジタル推進室のなかでも日次でKPIミーティングをやっている。それぞれの担当者がWeb指標に関わらずいろんな報告をする。いろんな数字がどうしてこうなったのかを担当者が説明してくれたり、担当者がわからなかったらみんなで考えたりということをやっている。 大東(キメラ代表):定性を捉えるために定量を使っている。数字を見るためにデータを見ているのではなく、その先の行動を常にイメージして話す人が多い気がする。絶対的に数字がどうかというより、そこから何が想像できるか。妄想タイムを毎朝やってるんですもんね? 生田(北海道新聞社):そうですね。妄想タイムはちょっとひどい言い方ですけど(笑)。10分とかでもみんなでひとつの物事を考える時間は大事だし、数字を前提に話すといい。 *定性を定量で測るというのは、NHKさんもかなりトレーニングしてこられた。定性のテーマやトピックをどう出すのか。どう束ねて数字の話に落とし込んでいるのか。* 松枝(NHK):エンゲージメントを大事にすると言っても、エンゲージメントという言葉もなるべく使わないようにしている。要するに、クロ現とかNスペとか観たあとの読後感と同じようなものをネットでやりたいよねと。そうするにはこういう数字が上がると似たことなんだよ、みたいな感じで説明するようにしている。 成したいもの。これも大東さんから最初の頃に散々言われて。「どこに行きたいんですかNHKさん」って。そういうことをずっと毎月言われてて、みんなが見える・わかる話で例えて言って、「この指標でいうとこう」みたいなふうにもってくと、割とイメージがつきやすいというのはある。 村堀(NHK):やっていくなかで「村堀くん、これ分析してどうにかしてよ」ということが非常に多い。そういうときに私も必ず「そもそもこの枠で、このコンテンツで何をしたいんですか」ということを必ず聞いている。そこから組み立てて考えていって「じゃこういう指標があって、ここを目標にするのはどうですか?」と、指標をまず相手に合意してもらわないとなかなか次に繋がってこない。 うちはとくにチームがたくさんいてそれぞれの文化や想いがあったりするので、それを大事にしながらデータを練り込んでいく進め方がいいと考えている。 (Q&Aへ:[ここは動画でご覧ください](https://www.youtube.com/live/bTk9CbRu4IE?si=j-8oS8FqnRe_aQTe&t=4650)) *最後に、登壇者のみなさんから今日の感想を一言ずついただけますか。* 伊藤 有(Business Insider Japan 編集長):今日ご参加されているみなさんからもむしろいろいろ聞きたかった。メディアによって課題感が違いすぎる。それを話したほうがいい。私はBusiness Insiderの編集長もやりつつインターネットメディア協会の理事もやっているが、メディア横断でいまの課題の向き合いをやると解決するものがあったり、あるいは実は同じ問題を抱えていたりする。これからの時代の伝え方や生き残りを考えるとそういうコミュニケーション取ったほうがいい。今日かなりいい機会になったんじゃないかなと、かなり楽しみながら聞いていた。 うちも有料課金をやっているので、さきほどのコンバージョンのところの話(Q&Aで取り扱った話題)はかなり思うところがある。コンテンツのコンバージョンを、コンテンツの改善によって追求するというのはひょっとしたら難しいかもしれない。稼げるというと言い方よくないですけれども、課金をしても読みたいジャンルの記事とかカテゴリーの記事、コンバージョンには繋がらないけれども媒体価値を保ったり、社会に必要とされている情報だから出すっていうのを分けて考えたほうがいいかもしれない。うちの課金コンテンツでも数字稼ぐジャンルとかというのもある程度見えてきているが、それを全体に広げようとするというのも非常に難しい。むしろ稼げないかもしれないジャンルにがんばっててもしょうがないじゃないかという感覚で見ている。 松枝 一靖(NHK メディア戦略本部チーフプロデューサー):みなさまの話を聞いて、違いと共に共通項もあってすごくおもしろかった。今日は新聞社の方が多いのでふたつだけお伝えする。 一番最初に言ったように、とにかく量を見るのがすごく大事だ。ピッチャーでいう投げ込み、バッターでいう素振りみたいなところがある。やっていると感覚は掴めてくる。アナリストに頼みたいとかそういうオーダーをされる方もいるが、全然そういう高いレベルのことは必要ない。作り手が自分たちの感想や感覚を持ちながら数字を見るのが大事な作業だ。Chartbeatでもどんなツールでもいいが、定時に毎日見ることをひとつお勧めする。 ニュース系をずっとやっていて思うのは、改善の費用対効果が一番いいのはタイトルとサムネイルだ。そこを全力でまずがんばってみるというのが費用対効果としては抜群にいいし、他社さんも含めて参考にするものがいっぱいある。そこからやるのをお勧めする。なぜなら、そこで結果が出るとみんながついてきてくれるからです。 *質問が来ています。「デジタルに関心を持たせる飴については勉強になりました。一方、鞭にあたる人事考課についてはみなさまの会社で設定なさっていますでしょうか。答えずらい質問かもしれませんが」* 伊藤(Business Insider Japan):おそらくどれだけPVやコンバージョンが取れたかを評価制度に入れるのかどうかの話だと思いますが、うちの媒体の場合、そういうふうな直接的に結びつくのは入れていない。とくに報道系のメディアの方だとけっこうやりづらいと思う。なぜなら、その記者の持っているジャンルによって、非常に数字が稼げるジャンルとそうでないジャンルの人がいて、それはその人の技量の良し悪しではない。うちの場合だと、その記者のポテンシャルとして「あなたの期待値はこれくらいですよ」というふうにそこを追求してもらうほうがいいんじゃないかな、と。全体に同じ数字で線を引いて、段階を設けて評価するというふうにしないほうがおそらく綺麗に回るんじゃないか。 *ありがとうございます。一例の答えとして参考にしていただければ。* *感想戦のつづきを。* 臼田 勤哉(Impress Watch 編集長):データというか、読者の反応を見てもらうのにこんなに苦労しているというのがすごく衝撃で。最近、新卒の面接をやっていて「いまの仕事なにがいいんですか?」と訊かれると「日々の反応がわかるのが楽しいんですよ」と話している。つまり、いま何が流行っていて、こういうものをやったら受けるんだ、こういうことがいま来てるんだ、こういう人がいまいて活躍されてるんだ、そういうことの反応がユーザーの反応でダイレクトにわかる。 そこを見るのがメディアの仕事に、我々の会社に、そういうカルチャーがあったんだなと。自分は楽しいと思っていたが、あまり気づいていなかった。新聞社さんやNHKさんのような分業化された専門家チームとは同じメディアでも全然違うんだということに気づいたというのは、僕のなかではおもしろかった。 あと本当に、みんながデータを見ているもの。PVなんか当たり前に見ているものだと思っていて、自分のチームは間違いなくそうだが。ただそれが会社、インプレスのWatchシリーズ15媒体くらいあって「本当に見てるのか」とちょっと不安になってます(一同笑)。そこは「みんなやってる?」って話を改めてやってきたいなと思ってます。 あと今日、「データを見てもらう」って話、実は僕あんまりピンと来てなかったんですね。打ち合わせのときも「別に、Chartbeat見てるだけですよ。大したことやってないですよ」みたいな。まさにそこに読者がいてどういう反応してるのかっていうのを見たいだけなんですよね。あくまで編集記者としていま何が流行っていて、自分がやったものに対して少なくとも見てる人はこう反応してるんだというのをオープンにしていくことは、やったほうがいいことだなと改めて思った。ここがうまくいくといいコンテンツが世の中に出ていくのかなと思ってました。 村堀 等(NHK 報道局 エキスパート):みなさんのお話どれも参考にさせていただきました。データ分析とかデータ活用ってその文脈で語られることが多い気がするが、個人的にはどちらかというとマネジメントの話だと思っている。とくに、うちなんかはそんな組織文化なんだ、意外だという話がたくさんあったが、まさにマネジメントによる組織変革であって、むしろマネジメントができている会社であればデータ分析っていうのは自然とできるものなんじゃないかと、改めて思った。 マネジメントには人に動いてもらう側面がある。それぞれの相手はひとりひとり個性のある人間だ。そことの向き合い方をシェアしていくと、自分のところで似たような状況が起きたときにどう対応したらいいのか、そこに展開してもっていける。今日参加させていただいていてありがたかった。 生田 憲(北海道新聞社):みなさんありがとうございました。全然立ち位置の違うみなさんとご一緒させていただいて、うちの会社でまだやらなきゃいけないことがたくさんあるなぁと改めて思った。 最後、編集権の話を忘れていた。編集局にコンテンツのデリバリー、届け方の話というのはするが、コンテンツそのものの中身の話は一切しないようにしている。そこに壁を作ってもっていないといろいろ破綻する。 ([Q&Aの](https://www.youtube.com/live/bTk9CbRu4IE?si=j-8oS8FqnRe_aQTe&t=4650))最後の質問で「読ませたい記事と読まれる記事が違う」という話があったが、あれはまったく課題じゃない。読ませたい記事があるのは報道やってんだから当たり前にあるし、それは持っててもらわなきゃ困る。一方で、読まれる記事に編集局が関心を持っていないかというとそんなことはまったくない。我々がずっと培ってきたニュースバリューと全然違うものが急に読まれたりすると、それはすごくおもしろいことだ。さきほど臼田さんがいろいろ試してみるって話をされてましたが、そういうものを「こんな報道もできる」「こんなニュースも作れる」と提案していくかたちでサイトを盛り上げていくといいんじゃないか。価値観を壊すんじゃなくて、データで民主化するというのがいい。 大東(キメラ代表):今日はお忙しいなか、みなさんありがとうございました。各社考え方は違うが、データ使って云々よりもメディアとして成し遂げたいことは何かだと思う。それを測るために何を指標をするか。「他所がこうやってるからこう」っていうのは参考にはなるが、当てはまらないケースのほうが多い。そもそもデータを使う前にメディアとして成し遂げたいことは何かというのを徹底的に突き詰めてもらえたらいいんじゃないかと思います。 --- ### 登壇者プロフィール 臼田 勤哉(Impress Watch 編集長) ![](/images/posts/a50fe8b530/usuda1.jpg) 1999年インプレス入社。PC Watch、AV Watch記者として、PC/ITや家電、ネット業界を中心に取材。2011年4月よりAV Watch編集長。2018年9月より現職。 松枝 一靖(NHK メディア戦略本部チーフプロデューサー) ![](/images/posts/a50fe8b530/nhk-photo.jpg) 1999年記者職でNHK入局、社会部警視庁担当など。2017年ネットワーク報道部設立時から参加し、NHK NEWS WEBの戦略担当デスク時代に「分析改善チーム」を立ち上げ 2023年夏より現職。 村堀 等(NHK 報道局 エキスパート) ![](/images/posts/a50fe8b530/murahori.jpg) 2008年に記者職でNHK入局。岐阜、名古屋、豊橋、千葉、報道局社会部にて取材記者をした後、災害報道の企画管理部門を経て、2021年からネットワーク報道部で主にニュースサイト・SNSのグロースを担当。 伊藤 有(Business Insider Japan 編集長) ![](/images/posts/a50fe8b530/338179202_245187544617317_3618984031223387454_n.jpg) 2000年代初頭から大手IT出版社の雑誌、およびPC/IT週刊誌で、ハードウェアからWebサービスまで、BtoCテクノロジー全般を主戦場に活動。編集長代理を務めた後、Business Insider Japan副編集長/テクノロジー統括、2020年1月から編集長。 生田 憲(北海道新聞社) ![](/images/posts/a50fe8b530/e3db7c07-2247-4fd9-bba7-838b3b6e6eb3.jpg) 2012年北海道新聞社に記者職として入社。函館支社報道部、倶知安支局、室蘭支社報道部を経て、本社経済部でIT、流通、1次産業を取材した。2022年7月にデジタル推進室に異動し、主にコンテンツ領域を担当している。 --- ## メディアのプロダクトをつくり、育てるチームのつくりかた(2023-11-15) URL: https://ximera.com/posts/dc7f29fc12 公開日: 2023-10-01 著者: Ximera 2023年11月15日(水)に開催されるオンラインイベント「メディアのプロダクトをつくり、育てるチームのつくりかた」では地域のニュースを伝えつづける北海道新聞デジタル、琉球新報デジタルからゲストを迎え、メディアをプロダクトとして捉えてつくり、育てていく実践について幅広くお話しします。読者に与える価値の整理、組織の組成から運用、サービス設計やサイトリニューアルなど多岐にわたるトピックを扱います。 [https://www.youtube.com/live/SmzimkhLJI8?si=_EmR33oapIkyCTYE&t=985](https://www.youtube.com/live/SmzimkhLJI8?si=_EmR33oapIkyCTYE&t=985) ### 『メディアのプロダクトをつくり、育てるチームのつくりかた』イベント概要 日時  : 2023年11月15日(水)17:00 - 18:30 形式  : オンライン(Zoom Webinar) 登壇  : 北海道新聞デジタル、琉球新報デジタル、株式会社キメラ 参加申込: 必要 参加費 : 無料 主催  : 株式会社キメラ --- *口述の書き起こし:読みやすさのために編集されています* 大東 洋克 (キメラ代表):今日のテーマは「メディアのプロダクトをつくり、育てるチームのつくりかた」。どうやってプロダクトを作るんだっけということではなく、それを動かす育てる人たちが重要だと思っている。どうやって体制を作って連携しているのか、そもそもどういう思想でプロダクト作っているのかで悩まれてる方が多い印象だ。 なぜプロダクトの話をするのかというと、直近、地方誌のリニューアルがすごく多い。この1,2,3年でそこら中でリニューアルしている。これからリニューアル計画する方がどうやって進めればいいのかのヒントを得られたり、その後どうやってグロースさせるのかのヒントだったり。各社がどうやってきたのかを知る機会がなかなかないので、それができるといい。各社それぞれの考え方や進め方が重要だと思っている。何をやったのかも重要だが、なぜそう考え、なぜそう進めたかがヒントになると思っている。 琉球新報社、北海道新社、両社リニューアルや新たなプロダクトの立ち上げなど活発だ。まずどんなことをしたのか教えてください。 来間 信也(琉球新報):弊社、琉球新報社は今年が創刊130年の節目の年でいろいろがんばった年だった。今年の8月に価格改定、サブスクのプランの見直し、それにあわせて会員管理システムを入れ替えた。9月にサイトのリニューアル、デザインも変えてCMSも入れ替えるということをした。今年はだいぶ動いた。 前のサイトができてから7年くらい、安定して動いてはいたが、日々出てくるやりたいことが実現できない。そういうことが増え、リニューアルを考えるきっかけだった。5つあったプランも3つにしたりと、だいぶいろんなことをやった。 中瀬 督久(北海道新聞):今年の2月から本格的にサブスク販売をはじめた。それまでは北海道外のみで限定的にしかやっていなかった。その2月のサブスク販売開始に向けて、1月にかつて道新電子版と言ってたものを北海道新聞デジタルという形にブランドも新しくてフルリニューアルした。プロダクトの開発でいうとここが一番大きい。 サイトローンチ後は日常的なデータの収集・分析など、日々のPDCAを回すためのツール開発も内製化している。 あとはこの道新デジタルの立ち上げと並行して、昨年11月いっぱいで紙を休刊した道新スポーツに変わるスポーツサイトだとか、テーマ特化型のバーティカルメディア、幅広い出面をとっていくために社内のECサイトを統合した新しいECサイトの立ち上げなど、この1年2年で取り組んできた。 道スポのほうは誌面の休止が決まって、その手前でデジタル版のサイトを作って動かしてますね。 中瀬(北海道新聞):内部的に誌面の休刊はけっこう早くに決まってまして、サイト自体はおととし2021年のゴールデンウィーク明けくらいに立ち上げた。最初は投入するニュースも何もない状態で少しずつ運営していって、去年の春に一般公開をはじめ、11月に紙をやめて完全にデジタル一本になった。いま取り組んでいるサブスクも今年の2月の末から3月の頭くらいにはじめて、本格的な販売を開始したのは5月のゴールデンウィーク終わりくらいからだ。 両社ともに直販のデジタルに舵を切って伸ばしていこうってことですよね。リニューアルの目的や解決したかった課題はどんなものがありましたか? 来間(琉球新報):前回のサイトは安定していたが、やりたいことに躓くことが増えてきた。現在の環境に対しての潮時が近いのではないかという声が部署で充満してきて、その解決のために考えはじめた。が、すぐにリニューアルで動いていたわけではなくて、自分たちが何をしたいのかを言語化するところからはじめた。私たちのサービスを買ってくれるのは誰なのか。お客さんが抱えている課題は何なのか。それに対して私たちが提供できる価値って何だろう、答えって何だろうということを長い時間考えていた。部署内で長く話したが、去年の夏くらいにリニューアルにあたっての考えを全社発表したりして、単純に変えるのではなく、私たちがやりたいことを拡げていくかたちでスタートした。 やりたいことができなかったのは、具体的にどんなことが大きかったですか? 来間(琉球新報):それまではコンテンツの量とか値段でお客さんを見ようとしていたと今では思う。だが、大東さんと話しながら、うちのサイトに来るお客さんの姿、何を思いながら見ているのか、サイトから離れるときに何を思っているのかを言語化、議論して、進める方向を決めていった。 130周年も(動機として)大きかったですよね。 来間(琉球新報):それに向けていっちょかましてやろうじゃないというのもあった。 滝本 匠(琉球新報):来間からお話したのは、それまで明確に突き詰めて考えてこなかった自分たちの提供価値を議論したフェーズでのことだ。それらはキメラと一緒にやっているなかでの化学変化もあったが、そもそも、それより前に私がデジタルの担当になったときに考えたのは、数字を見て読者がどう動いたのか、何を書いたら読まれるのかが全然見えない、わからないということだった。そういうものをデータとして得られるようにしたいだとか、実際のサブスクで読者どういう形で有料会員になってくれるのかの動線というのも意識していなかった。それも大東さんと話すなかで、購読までの段階(ページ遷移や入力などの手順)が多いことで読者が離脱をしてしまうこと、経路のことも整えないと、そのときのその状態、サイトでは限界だった。天井が見えたことが、変えないといけないというスタートだったと思う。 道新さんはどうですか。取り組みの目的・課題はどういうところを捉えてリニューアルに進まれたのか。 中瀬(北海道新聞):そもそもなぜリニューアルしたかというと、さきほども申したとおり、我々のサブスクは道外でしかやっていなかった。もともと弊社のデジタル戦略的なもので明文化された大きなものでいうと、半年くらいかけて2018年3月に作ったもので、そこでサブスク販売に関して、というか当時の電子版に関しては、紙の購読者向けの付加価値を高めるサービスの一環という位置付けで決着していた。サブスク販売は紙の販売に影響を与える懸念もあるし見送ろうと。ただ唯一、道外に関してはその影響は少ないだろうからはじめようというまとめ方だった。我々組織ではそれが大前提にあったので、サブスク販売っていうのは社内で口に出すのも御法度というところもありながら進んでいた。 2019年の7月くらいに今の社長の宮口(当時常務)に呼ばれまして「2018年にデジタル戦略を作ってから2年以上が過ぎた。こういったものは2年も経つと世の中も変わっているから、次のデジタル戦略をつくれ」という指示があって、ただ具体的に何をやれという話ではなく、より全社ごとになるような仕組みだけ作ってくれというお題だった。それでまた改めてサブスク議論しましょうって話にしちゃうのは簡単だがそれでは全社ごとにならない。とにかく平場で一回徹底的な議論をしようと。ということで2019年の秋くらいから議論はじめたらですね、やっぱり圧倒的にみんなのなかで次にデジタル戦略何やったらいいっていうともうほぼほぼ全員に近い形でやっぱりサブスクやらんきゃなんないよねって話になった。その辺から徹底的に社内議論して結果的にサブスクやってこうと方向が決まって、それで改めて現読向けのサービスだったデジタルを、それだけでお金を払ってくれる読者向けに新しく一から作り直すと。紙の読者ではなく、誰だったら買ってくれるのかを設計して一から作り直した。過程でいうと琉球さんと同じように大東さんにサポートしていただきながら議論して開発に至った。 開発のなかで期待していた変化でいうと、大東さんからもDXっていうのは社内の文化を変えることだってずっと言われていて、いかにデジタルでニュースを発信していくことが重要なことかってことを一生懸命伝えながらきてますけど、少しずつその変化を期待しながら日々活動している。 リニューアルをしましょう、サブスクを伸ばしていきましょうというときに、社内の文化や考え方という点で、何が変わったか。何を意図しましたか。琉球さんはとくにですけど、物の作り方が大きく変わった。新しい取り組み、改修やキャンペーンやりたいというときにスピーディーに動けるようになったと思う。 来間(琉球新報):今回のプロジェクトでは、社外のみなさんに助けていただきながらやってきた。プロジェクトマネージャー的な方をひとりつけてもらって、全体の方向性を整えてもらいながらも、社内の意図とのバランスを見ながら進めていくことを私と二人三脚でやってきた。デザインも社外の方にお願いした。「なぜそう変えるのか」の議論をだいぶやりながら進めてきた。 開発も当然外部にお願いした。弊社には社内にエンジニアがいるわけではないので、開発は外に頼るしかない。しかし自分たちがやりたいこと、進みたいことに対して、簡単に投げ出して欲しくなかった。何が障壁で、どう改善すればできるのか、前に進めるのかの話をしたくてやっていた。まず自分たちのやりたいことを人がわかるように言葉にして伝えて、実現していく。この方針でやってきたし、やっていきたい。自分たちが先に進んでいるという実感をもってやっていきたい。 道新さんどうですか。(リニューアルをしましょう、サブスクを伸ばしていきましょうというときに、社内の文化や考え方という点で、何が変わったか。何を意図しましたか) 生田 憲(北海道新聞):簡単に言っちゃうと、ユーザー目線とデータドリブンの考え方が浸透してきた。ユーザー中心、読者中心のプロダクトを作ろうという考えに同意しない記者っていないと思うんですけれども、実際に読者を見たり反応を感じられる機会が紙の時代にはなかった。それがデジタルがはじまってChartbeatを見たりうちのツールでデータが見れるようになってきて、施策に対して実際にユーザーの行動が変わってこういう反応返してくれたということがわかってくると、自然とデジタルへの関わりが深い人に関しては、今まで編集って新聞社独自の価値判断をするんだみたいなちょっと言葉悪いですけど内向き的なところから、もうちょっと広く読者に対する想像力を働かせながら日々の仕事をしようっていう文化が強くなってきたんじゃないかなと思います。UIとかUXの分野は私たちの部署(デジタル推進室)主導でリニューアル時は進めてきたんですが、編集局側から文言の相談が来るようになってきた。こちらから投げかけてきたことが、向こう側にも浸透してきたのかなと思います。 紙だと原稿書いて、見出しをつけて、あとはごはんを待てば一応仕事は成り立つんですが、そのあとにちゃんと見返すとかスマホで見るとか、そういう習慣が編集者のなかに出てきたのかなと思います。ひとつひとつは学習コストが高いので、我々が積極的に関わったキーパーソンとか丁寧に説明した人に限られていて、現場で第一線で頑張ってる人たちにどれだけ伝わってるのか、意識が変わったのかは進捗に差があるとは思っている。その辺の啓発がこれからの課題かなと考えています。川村が作ってくれたプロダクト(後述)を編集局の記者全員に解放していて、それがかなり貢献していると思う。 道新さんプロダクトリニューアルのあとのデータに対する取り組み方が変わりましたよね。今だと有料購読した人がどんなものを見て行動してるのか、ほかがやらないくらいにこだわってやられてますよね。これも大きな変化ですよね。視点の変化。 中瀬(北海道新聞):一からGA4とかで取得するのも手間がかかるんですけど、うちは川村とかそのへん触れる人間があと2人いるんで、こういうデータが欲しいと話すと、極端な話、数時間後とか数十分後に「とりあえず作ってきました」と開発してくる。そうすると、なかなか知れなかったユーザーのインサイトみたいなものに容易に触れるようになってくるんですよね。そうなると、より僕らもユーザーのことが知りたくなる。ユーザーインタビューも並行してやってますけど、それと実際のデータ上からどう見えてるのかを見ながら、ユーザーがどう考えて、どういうトリガーがあって、どういう行動になってるのかを深堀ってやってます。 ユーザー目線を定量的にも定性的にも見るようになったってことですよね。そこまではどうしてたんでしょう。なぜこう変わったのか。 中瀬(北海道新聞):フラッと見てましたよね、大括りで。そこから仮説を立てることはしていたが、粒度は荒かった。より細かいデータドリブンの発想になって粒度が細かくなってきた。仮説が少しずつ的を射てきている。 川村 裕(北海道新聞):ツールだけで言うと、はじめのうちは記事の見られ方がどうのくらいのレベルのものしかなかった。入会とかのことに関してどういう流れで入ってきてるのっていうのはGA4でも見れるんですけど、閾値やサンプリングの問題があってあまり精度がよくないんですよね。以前は部員としてのエンジニアは私1人だったんですけど、1月に1人入って、7月にもう1人来て、3人体制になったことで、これまでベースだけ作ってたもの、ログレベルで見れたもののUIが進化して、みんなが調べたいときにすぐ調べられるようになったのがかなり大きいと思っています(GoogleのLooker Studioを使用)。 どのメディアもそうだが、全体像としてデータを捉えたがる。が、琉球も道新も違うんですよね。ピンポイントでユーザーの行動をみて考える。なんでですか。みんな大きいダッシュボードで全体の傾向みてやりがちだと思うんですが。 滝本(琉球新報):それだと何も見えないからじゃないですか。全体を見るような大掴みでは粒度が荒いので仮説に対して一対一で返って来ない。これだと仮説が確かなのかわからず、結果、全体を見てるだけでは何をしたらいいかわからない。 生田(北海道新聞):編集的に言うと、Web編集のお作法は社内に蓄積がない。データを見て判断していくしかないので、そこに頼らざるを得ない。そうなると、全体を見ているだけでは意味がないので、ひとつひとつのコンテンツや取り組みに目がいくのだと思う。 中瀬(北海道新聞):ひとりひとりユーザーの顔が見えてくると、想像と違うことが多い。僕らが思っているよりもこんなに何回も悩みながら買ってくれてるんだとか。道新スポーツなんかとくにそうだが、買ったあとに堰を切ったように今まで鍵がかかって見れなかったものを一気に読んだりする方がいる。そういうものが見えてくると、ユーザーが何を期待しているのか、そこに至るまでのユーザーの想いが伝わるので、我々もプロダクトをブラッシュアップしなきゃなって思います。見ていると非常におもしろいです。 仮説検証はだいたい外れている。だが、これをやらないと数字の肌感が育たない。全体の数字をみて雰囲気わかってるけど実は何もわかっていない。ミクロでサンプルをとって動きを見ていると、みなさんご自身のユーザーに対する捉え方や考え方がブラッシュアップされていく。アンテナがしっかり張れるようになる。 琉球さんは意思決定のサポートをしてくれる人がいてくれることで、物事を進めるときのスピードが上がったことが大きな変化ですね。今までのものづくりは外部のベンダーに依頼を出してリリースするまでに時間やお金がかかっていた。有料購読を伸ばすための動線やLPの改善や検証をしようにも、そこのスピードが追いつかない。それが課題だった。今はそれを社内でハンドリングする、物事を進めるときに支援してくれる方がいるといいということで、外部の方を地元沖縄で採用してプロジェクトに参加してもらっている。今でも開発を外に出している点は変わらないが、滝本さん来間さんが物事を進めるうえで常に正しいインプットをして意思決定のサポートをしてくれる人をつけたことでスピードが上がった。デザインも東京の方が2人入ってデザインの精度や意思疎通が早くなり、施策を進めるときにバンバン進められるようになったことが大きいですね。 来間(琉球新報):とにかく数字を取ることをずっと求められていて、いまも日次の数字を取ることをずっとやっている。これをやってよかった。それまでは月のPVやUUを見ているだけで何も見えなかった。日次のデータを取ることでそのときあった変化に気づくことが増えて、想像して仮説を立てて動いていくようになった。 全体という見方と、ミクロの変化を捉えるという見方があるが、新聞社全体でリニューアルするときは、機能から入るところが多い。が、両社ともにそこをすっ飛ばした。細かいことより、まずは大きな絵だった。そこはどういうイメージで進めましたか。 中瀬(北海道新聞):宣伝ぽくなりますけど先生がよかったというか、私たちキメラさんとの付き合いは道新スポーツのデジタル化から入った。そのときに初めてこういうスケジュールでサイトを作りたいという話をして、その時点ですでに時間がなかったんですが、そんなことよりまずリーンキャンバスを作れと。リーンキャンバスってなんだって話からはじまって。で、2ヶ月みっちり指導されて、まぁ何をやってるのかなと……(はじめのうちは思うこともあった)。あなたたちの顧客は誰なのかからはじまって、提供価値が何なのか。2ヶ月みっちりやったときに憑き物が落ちたように、自分たちってやっぱりこういう読者に、こういうふうに向き合って、その読者に対してこういう体験を与えていくんだなってスッキリした部分があったんですよね。で、本体の道新デジタルのほうも僕らの経験として、そこをやったほうがいいと思ったんで、社内の若手に集まってもらってこれも2ヶ月くらいみっちりやってもらったんですね。で、それを終わるとみんな憑き物が落ちたようにスッキリすると。そうすると、もうそこで機能がどうのっていう議論にはあんまりならなかった。こういう読者に対してどういうふうにニュースを届けていけばいいか。機能というより、全体的な届け方に目が行った。 生田(北海道新聞):若手として集められて2ヶ月くらいゲロを吐くような議論してですね、北海道新聞デジタルの価値って何なんだっていうことを徹底的に議論して、顧客って誰なんだっけとか、強豪って地方新聞社じゃないよねみたいなところとか、けっこうそういうことを考えたことはなかったんで、そういうところから煮詰めていった。抽象と具体を行き来するみたいな、広げたと思ったら集約して、集約したと思ったら広げてみたいな話をしましたよね。中瀬が「憑き物が落ちたように」って言いましたけどリーンキャンバスができたときはやっぱりスッキリしていた。 川村(北海道新聞):リーンキャンバスで「あなたの街のニュースがある」というコンセプトが固まってそれに自信をもっていたので、そのリーンキャンバスに参加したメンバーも含め編集系の人たちが集まって、じゃあ新しいリニューアルにあたってコンテンツは何を足そうっていう話もするんですけど、リーンキャンバスに参加したメンバーがいることで乱立する意見を止めてくれたっていうのもありますかね。「その機能は本当にサイトコンセプトに合うのか」とちゃんと説得してくれて、必要なものを絞ってくれたんですよ。CMSの開発段階での優先順位づけでも「あなたの街のニュースがある」というコンセプトにどれだけ応えられるの?と、この価値観があることによって、ある程度は取り捨てができた。リーンキャンバスで決めたことがあったから、機能盛り盛りにならなかった。 生田(北海道新聞):ローンチするまでほかの部署の要望を一切聞かない、聞いても聞かなかったことにするというのをやっていて、それはローンチしたあともやっている。このボタン作れとかメニューの要望とかくるんですけど、最初にコンセプトがあって、こういうプロダクトを作るんだっていう自信があって、ここには理由が根拠があるんだというのがあるんで、はねつけやすい。これをやっておかないと昔のサイトと同じものができたと思う。 両社とも、デザインを起こしたりCMSを立てたりプロダクトを開発するための助走期間があったってことですよね。その助走期間に「実は今まで新聞社として考えてこなかったことを、すごく時間をかけて考えて意思疎通を図った」だと思うんです。 中瀬(北海道新聞):今年の1月にローンチしたが、だいたい2年くらいかけてるんですよね。売るってことを決めたあと、サイトのリーンキャンバスの検討が一昨年の春から3ヶ月くらいかけてコンセプト決めましたよ、と。そのあと数ヶ月空いたあと、そのコンセプトに基づいて3,4ヶ月くらいかけてUI/UXの議論、CCIさんにも入っていただいて徹底的にやったと。それでシステム開発、これも1年弱くらいかけてるんで、やっぱりローンチまでに2年近くかけてる感じですかね。 来間(琉球新報):弊社もリーンキャンバスでだいぶ時間を使って(大東:リーンキャンバスって何ですか)私たちは何者なのか、振り返る、旅? 考えてなかったわけではないが、あえて言葉にしてこなかったことを迫られているんだなってことをやってるうちに覚悟が決まってきた。最初にあなたのお客さん誰ですかって言われて「え?」ってなったんですけど、言葉にしていく作業をずっとしていった。弊社は同じ部署にすごくできる若い子がいて中心になって進めていってくれた。最初は荷が重いとも思ったが、むしろ生き生きと取り組んでいってくれた。「組織が考えるのであれば、私たちはこう動けばいいんですよね?」というように伸び伸びとやってるなと一緒に仕事して見えて、これをやってよかったんだなーと振り返って思う。 新聞社あるあるの、部門が分かれちゃってるので、全社的に我々は何のために仕事をしているのか、お客さん誰なのか、我々が仕事をすることでお客さんにどんないいことがあるのかが実は大して話ができていなかった。部署内や個人では考えていたかもしれないけど、ちゃんと議論して言語化できていなくてみんなの共通言語化できていなかったのを言語化したってことですよね。 来間(琉球新報):紙とかニュースは広く読まれるべきで、Webも目指すところとしてはそうだが現実としてはそうではなくて。現実を直視する覚悟をもって、限定された人を顧客として捉えて、その人たちに向かって私たちはサービスを展開していくっていう道筋が見えてきたと感じている。 両社、デジタルに関わるメンバーが約 20人。チームがリニューアルプロダクトを作るというトリガーも大きかったが、その組織をどう作ってきたのか。変化してきたのか。よかったこと、反省点などどうでしょうか。 中瀬(北海道新聞):具体的な自分たちのお客様が見えてきて、自分たちが何を提供するのかが定まったので、必然的に自分たちの為すべきことがクリアに見えるようになってきた。そうなると人材に関しても、こういうことをするためにこういう技術を持った人材が必要だということをかなり説得力をもって言えるようになった。必要な人材を、必要なタイミングで調達しやすくなったことがすごく大きい。今年の1月には中途で即戦力のエンジニアが入った。会社の経営陣も理解を示してくれているので社内からも人材が集まりやすかったのも大きい。 販売からも営業からも編集からも制作からも人がデジタルに移ってきて、社内ぜんぶに手が行き届くように、意思疎通ができるようになってますね。 中瀬(北海道新聞):どこの新聞社もそうだと思うが、組織文化として縦割りでお互いの領域に口を出さないみたいなことがあるなかで、そこの出身者が話をするだけでその敷居を下げられることがあったり、そこの文化を知っていることで話しっぷりも変わりますから、それぞれの部門で活躍してきた人材に来ていただくのは仕事を進めていくうえではスムーズに進むと思っている。いろんな部門から集まってくることでデメリットはない。エース級が来てくれてることもあり、現局の代表で来ているというより現局を背負いつつもデジタル的な視点で何を為すべきかを考えてくれている。なので我々の部門内でハレーションが起こることはなく、非常にうまくいっている。 川村(北海道新聞):一般社員のレベルからするとほかの局に何かを頼みにいくことは非常にめんどくさいんですよね。行ったとしても「お前何者だ」と全然話を聞いてくれないこともある。デジタル推進室内に各局の人がいるので「これやりたいから、話通してきてよ」と言うと通してくれるんですよね。なので、このあたりの調整の時間を著しく短縮できたのがかなり大きいと思います。私は制作出身で編集のところへ行っても「やれデスク出せ、マネージャー出せ」って話になってしまう。上を通さずに現場レベルで話を通してくれるのがメリットだったと思う。中瀬が言ったように、いろんな部署の人たちが同じ部署で働いていてデメリットはないと思う。個人のレベルでその分野にどれくらいスキルを持っているのかを理解していくと、それを自分のなかに取り込んだりもできる。メリットしかないと思うが、生田さんどうですか。 生田(北海道新聞):メリットしかない。川村の言ったことの裏返しだが、社内中のことがデジタル推進室のなかだけでわかる。川村に聞けばエンジニアリングのことがわかるし、販売や営業の考え方や働き方のモデルがその辺の人に聞けばわかる。編集局からやりたいことの相談を受けたとしても、私のほうでリスクや他部署からの見え方などを一旦見て打ち返しができる。そういう意味でもスピードが速くなった。編集局がほかの部署と連携するときに一度デジタル推進室に話を預けると進みやすいことを考えてもらえているのではないか。 滝本(琉球新報):いま道新さんのお話もお伺いしてて、ご視聴いただいているみなさんの課題感っていうのは、だから、どうしたらそういう組織になってうまく回せるのかという、その一歩前なんじゃないかと思う。 けっきょく役員にデジタルを推進しようという意思をもつ者がいないと進まないんじゃないかなと思う。うちはどうだったのかというと、現場からデジタル化はああしろこうしろという議論は10年近く前からあった。だが、それを取り入れるかたちで進んでこなかったのがうちの歴史としてある。それをなぜいまやっているのかというと、ひとえに上がそうすると決めたからなんですね。決めないと進まない。決める人がいないとダメだが、そういう人がいない会社でどうするのかというと、理解のある人を育てる、仲間に引き込んでインプットしつづけて役員会で話をしてもらうしかないと考えている。(議論をしても)上が予算をつけないと進まない。 リニューアルをやってきてよかったことは? 滝本(琉球新報):いいことしかない。変えたいと思っていたことを乗り越えて進められる状況になったと思える。リーンキャンバスでメンバーの意識が変わり、プロダクトが変わり、またメンバーが変わる相乗効果に入りかけているような気がしている。 (以前は)答え合わせしようとするマインドもなかった。我々新聞社というのは、書いて送って組み付けて印刷して届けたら終わり、だった。だがデジタルは作ってからどうやって見せるか、チューニングするかということも問われる。そこまで考えると、どう作らなければならなかったのかを考えるマインドに変わっていった。 道新さんは?(リニューアルをやってきてよかったこと) 中瀬(北海道新聞):ユーザードリブン、データドリブンの意識が芽生えてきている。大きな変化だと捉えている。 助走期間でユーザー像をしっかりイメージしたこと。リニューアルしてからも本当にそれが正しかったのかの検証をしながらできていますね。目先の課題はどんなものがありますか。 中瀬(北海道新聞):さらに社内文化を変えていく必要があると思っている。これまではプロダクトを作ること、回すことで精一杯だった。自分たちがやっている取り組みや考えていることを丁寧に社員に伝えていく必要がある。それでより同じ目線で物事を考えられる人を増やしていく、社内文化を変えていくのが課題だ。意思疎通によって間違いなくスピード感が上がる。プロダクトの改修も僕らがかなりスピーディに回せるようになっているが、まだいくつか障害になるところはある。そういうところのながれがよくなると、今よりも早く対応できるようになる。 来間(琉球新報):仮説を立てて実行して、データを取って検証して、また別の取り組みをする。これを精度高くやっていきたい。そのための環境も整った。これまでは漫然と数字に向き合っていたが、解像度高く取り組む方向を決めて進めていきたい。 考え方を整える。みんなの思考回路を同じところに持っていくことを重要視してますね。 中瀬(北海道新聞):滝本さんがおっしゃっていたように、経営層の理解は必要だ。どれだけ売ったのか、どれだけ経営に資する活動なのかの話は常に出てくると思うが、そんなに簡単に結論が出るとは思っていない。どこまで会社としてがんばれるかということだと思う。そこで経営側の理解を得ながら進めないといけないし、それ以上に社員の理解を得て「ここがんばってかなかったらこの先ないんだよ」ってところをみんなと共有できるかがすごく大切だと思っています。 滝本(琉球新報):全社に跨って縦割りを横串してというかたちの道新さんのリーンキャンバスの話を伺って、我々も各部署から来たメンバーでリーンキャンバスをしたが、コアメンバーだけでやったので「デジタルの担当たちでやってるなぁ」と見られているきらいがあるんじゃないかと思っている。それをもっと全社的に広めるし、リーンキャンバスのアップデートも必要だと思っている。 顧客向き合いのマインドを作り上げたことが大前提で、それをプロダクトに落とし込むのを理解してやられたのだと思う。そもそも考えていたことが100%正解だとは思っていなくて、それを検証してアップデートしながらやっていく前提でやっている。うまくいってますか? リニューアル後。 滝本(琉球新報):だいぶ綱渡りな感じで……(一同笑) 道新さんはどうですか。 中瀬(北海道新聞):どうですか、生田さん。 生田(北海道新聞):中瀬さん、ここは「悲観していない」って答えるところですよ。 中瀬(北海道新聞):そうですね。まぁあの、なんつーんすかね、数字って思ったより正直言っちゃうと全然いってないんですよ。だけど直接ユーザーと向き合うと新しい発見がすごくあって、そこに可能性しか感じないですね。 --- ### 登壇者プロフィール 中瀬 督久(北海道新聞社) ![](/images/posts/dc7f29fc12/IMG_2154.jpg) 1992年北海道新聞社入社。入社後27年間、本社、東京支社などで広告営業を担当。2019年8月、デジタル推進室立ち上げに参画。 川村 裕(北海道新聞社) ![](/images/posts/dc7f29fc12/IMG_1938.jpg) 2008年北海道新聞社入社。エンジニア職として紙面制作関連やシステム関連の部署を経て、2021年4月からデジタル推進室にて北海道新聞デジタルを担当。主にダッシュボード作成やデータ分析に携わる。 生田 憲(北海道新聞社) ![](/images/posts/dc7f29fc12/e3db7c07-2247-4fd9-bba7-838b3b6e6eb3.jpg) 2012年北海道新聞社に記者職として入社。函館支社報道部、倶知安支局、室蘭支社報道部を経て、本社経済部でIT、流通、1次産業を取材した。2022年7月にデジタル推進室に異動し、主にコンテンツ領域を担当している。 滝本 匠(琉球新報社) ![](/images/posts/dc7f29fc12/S__34750482.jpg) 1998年琉球新報社入社。社会部、八重山支局長、政経部、東京報道部などに配属。ワシントン特派員や政経部で基地問題を担当。2020年11月から琉球新報デジタルを担当、現在は統合編集局デジタル戦略統括。 来間 信也(琉球新報社) ![](/images/posts/dc7f29fc12/IMG_63051.jpg) 1995年琉球新報社入社。制作局を皮切りにシステム部門、メディア部門に長く携わっており、現在は統合編集局デジタル企画戦略班統括。 --- ## オーディエンスの育成:リアルタイム・インサイトの活用によるエンゲージメントとロイヤリティの向上 URL: https://ximera.com/posts/48cd31afa6 公開日: 2023-09-28 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2019/09/02/audience-development-real-time-engagement/))Sep 28, 2023 オーディエンス育成を最小公倍数で言えば、読者がなぜあなたのサイトに再訪するのかを明らかにすることだ。45%以上の読者が15秒以内にサイトを離脱し、さらに多くの読者が二度と戻ってこない。だからこそ、何がサイトに来る読者に影響を与える行動なのかを把握し、測ることが極めて重要なのである。 ここでは、Chartbeatのリアルタイムダッシュボードを使用して、オーディエンス育成チームが実施できる簡単なエンゲージメントとロイヤルティ構築手段について詳しく説明する。 後半にはオーディエンス育成のクイックスタートガイドもある。 # 流入元からUXの問題を突きとめる リアルタイムダッシュボードで検索、ソーシャルなどの流入元、およびデバイスからユーザージャーニー(サービス利用者の利用シナリオを時系列と文脈で捉えること)を簡単に見ることができる。 ![](/images/posts/48cd31afa6/Real-Time2x-600x400.png) 最初のタスクは、サイト内のセクション(カテゴリやタグ)や著者ごとのパフォーマンスを把握し、比較の基準を持つことです。Engaged Time(エンゲージタイム/滞在時間)が突然低下した場合、コンテンツが適切なオーディエンスに届いていない可能性がある。 さらに深掘りして取り組むには、これらの点を評価する: - 見出しと内容は一致しているか。読者は見出しからの想像どおりの記事を読みたいと思っている。 - 読者を迷わせていないか。スクロール深度表示で読者がページのどこで離脱しているか確認する。単純なフォーマットやリンクの問題かもしれない。 - スパイクアラートを無視していないか。スパイクする短いコンテンツは、ほかの魅力的なコンテンツに読者を誘導するチャンスだ。 (関連記事 エンゲージタイムメトリクスの活用で、オーディエンスを増やし、忠実な読者を増やす) # 再訪問を促すためにデバイス体験を揃える モバイルは、世界中でデバイスベースのエンゲージメントを支配しつづけている。読者の55%から60%がこのチャネルを通じてコンテンツに触れており、デスクトップとタブレットがそれに続く。 ![](/images/posts/48cd31afa6/Mobile-Hack-Article-Menu-e1564107130252-1024x581.png) デスクトップのChromeでデベロッパー ツールを開くと、上部のメニューからサイトをモバイルデバイス向けの表示に切り替えることができる すべてのデバイスでユーザージャーニーを改善し読者を呼び込む。その方法を紹介する。 - モバイルでの読者の行動を確認する。読者にどれだけエントリーポイントを提供するかを含め、ファーストビューを常に念頭におく。これは、モバイルでは読者がページの25%しか見ていないためとても重要である。一つの方法としては、デベロッパーツール(上の画像参照)を使って、モバイル向けのユーザー体験をシミュレーションしてみる。 - ヘッドアップディスプレイを使って、モバイルでエンゲージメントの低い部分をみつける。モバイル読者があなたのページをどれくらいスクロールしたかを見て、エンゲージメントの低下を特定する。魅力的なコンテンツのリンクを追加するだけで、エンゲージメントを高めることができる。 - UXをチェックする。モバイルサイトの読み込みが遅く不便だと離脱率が高くなる。読者が課金する機会を大きく損なってしまう。 # 購読者のデータ: 課金する読者は行動が違う あなたのサイトへの訪問者の60%以上が、今後30日以内に再訪問しないとしたら、それはロイヤルティの問題だ。しかし、小さな変化が長期的にサイトトラフィックにいい影響を与える。これを覚えておくこと。 - エンゲージ時間はロイヤルティにつながる。コンテンツへのエンゲージメントが長い読者ほど、再訪問する可能性が高いことがわかっている。編集者は、エンゲージメントの低いページをキュレーションしたり、文中のリンクを追加することで、読者が素晴らしいコンテンツを見る機会を増やすことができる。 - エンゲージ時間が長いページには理由がある。もっとも忠実な読者によって読まれている可能性が高いからだ。これらのページにサブスクリプション契約へのリンクやニュースレターのオファーを掲載することで、読者がサイトにまた訪れる理由を増やすことができる。 # 読者インサイトを行動に変える ロイヤルユーザを増やすことは難しいが、これらのリアルタイム戦術があれば、オーディエンス育成チームは成功に近づける。注意点をいくつか挙げる: - 全体像を把握し、次に粒度を上げる。読者層を広く見ることは重要だが、その内訳がもっとも重要だ。リアルタイムのフィルターに切り替えれば、ほかの方法では把握できないような流入元の傾向をすぐに見ることができる。X(Twitter)からのトラフィックが多いが、すぐに離脱してしまう場合、それは見出しの問題かもしれない。読者があなたのサイトにアクセスしたときに、どのようなコンテンツを見ることができるかわかるように、さまざまなタイプの見出しを試してみよう。 - ロイヤルユーザは異なる行動をとることを思い出す。2日に1回以上あなたのサイトに来る読者は、平均4.8記事を読むのに対し、未ロイヤルの読者は2.3記事を読む。単純に多くのコンテンツを提供するだけではなく、サブスク会員になる機会を提供することで、ロイヤルユーザーに有料購読者となる機会を与えよう。 # オーディエンス育成チームのためのクイックスタートガイド ## 設定方法 以下のChartbeatツールを使用してはじめよう - セクション別および著者別の[スパイクアラートを作成する](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/215556117-Slack-Integration) - レポートの[セクションインサイトに登録する](https://support.chartbeat.jp/edu/reports/) - [ヘッドアップディスプレイ](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)をインストールする - [リアルタイムダッシュボード](https://support.chartbeat.jp/edu/realtime-dashboard/)の「ソーシャル」および「セクション」ビューをブックマークする - [AndroidまたはiOSのアプリ](https://support.chartbeat.jp/edu/apps/)でデスクから離れていてもデータを確認する ## Chartbeatデータに慣れる ツールのインストールが完了したら、いよいよデータを確認する。ここでは、ツール別に分類する際に考慮すべき点を説明する: - ヒストリカル・ダッシュボード。セクションでフィルタリングして、古い記事が表示されていないか確認する。「High Social」バッジが付いている記事をレビューして、それらの記事の共通点を確認する。 - Offsite Social。サイトとリアルタイムダッシュボードのOffsite Socialをチェックして、1日を通して「acquiring」バッジの記事に気を配る。 - ヘッドアップディスプレイ。これはエンゲージメントの低さを示すバロメーターになる。スクロール深度の表示で、読者が記事を読み終えているか、またはサイト内を回遊しているかを確認する。そうでない場合は、とくにモバイルでのユーザーエクスペリエンスに問題がある可能性がある。ご心配なく、そのための[ハックも用意してある](https://blog.chartbeat.com/2019/07/26/heads-up-display-mobile-user-experience/)。 あなたは記者や編集者ですか? [あなたのためのガイド](/posts/d69926ee52)もある。 --- ## Chartbeat新機能のお知らせ: コンバージョン、およびレコメンデーションエンジン URL: https://ximera.com/posts/3ad87c8cb2 公開日: 2023-09-22 著者: Chartbeat 2023年9月22日 Chartbeatより2つの新しい機能のお知らせです。 読者のコンバージョンについてのインサイトを得ることができるChartbeatコンバージョン、およびAIによるコンテンツ提案を行うレコメンデーションエンジンです。 これらの新機能はアドオンとなり、利用にあたってはChartbeatの利用に加えて別途申し込みが必要です。また、ご利用されるプラン応じて費用が発生する場合があります。 機能の詳しいご案内や、導入をご希望される際はキメラまでご相談ください。 # 1. Chartbeatコンバージョン ![](/images/posts/3ad87c8cb2/conversion.webp) 読者のコンバージョンについてのインサイトを得ることができるChartbeatコンバージョン 読者がサブスクリプションの購読やサイト会員登録、ニュースレターの配信登録などに至るまでの道のりについて、ニュースルームやビジネスチームが深いインサイトを得ることができるワンストップソリューションです。 Chartbeatコンバージョンにより、これらが可能になります。 - コンバージョンデータを使用して読者のリアルタイムの行動を把握し、ヘッドアップディスプレイのコンバージョンデータでトップページを最適化することができます。 - 6つのコンテンツファーストアトリビューションモデルから選択し、どの記事が読者をサイトに誘導したか、どこに最も時間を費やしたか、コンバージョンに至るまでに読んだ内容やインタラクション、コンバージョンに至ったコンテンツを確認できます。 # 2. レコメンデーションエンジン ![](/images/posts/3ad87c8cb2/rec-engine.webp) AIによるコンテンツ提案を行うレコメンデーションエンジン このAI技術を活用したソリューションは、自動化されたコンテンツ提案によってサイト内回遊とエンゲージメントを向上させ、読者の興味関心を集めつづけます。 たとえば、読者がサイト上の「ベジタリアンレシピ」の記事をクリックしたと考えてみましょう。 レコメンデーションエンジンは、ユーザーが関心を持っているコンテンツを認識し、ビーガンや健康的な料理のヒントなどの類似したレシピなどを提案します。その後、同じ読者が旅行セクションに移動すれば、レコメンデーションエンジンはそれに応じて旅行関連の記事を提案します。 また、レコメンデーションエンジンは読者に魅力的なコンテンツを提案するだけでなく、週次のレポートでレコメンデーションのパフォーマンスも測定し、効果的に結果が出ていることを確認できます。 現在、レコメンデーションエンジンは英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、オランダ語、リトアニア語などのアルファベットのコンテンツのみの対応です。日本語を含む50以上の多言語化に向けて開発を進めております。日本語でのご利用が可能になり次第またお知らせします。 --- ## 編集者と記者がエンゲージメントに影響を与える方法 URL: https://ximera.com/posts/d69926ee52 公開日: 2023-09-19 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2019/08/27/audience-analytics-for-editors-reporters/))Sep 19, 2023 記事の公開後は、編集者や記者が読者分析を使ってリアルタイムでエンゲージメントに影響を与えることができる。しかし、編集者は、より多くのコンテンツに質の高いトラフィックを誘導する最大のチャンスがあるページに確実に時間を費やす必要がある。 問題は、[モバイルからの訪問者が上回っている](https://blog.chartbeat.com/2018/07/12/the-flip-to-mobile-first/)にもかかわらず、サイトがいまだにデスクトップ体験を念頭に構築されていることだ。ここで問われるのは、編集者はペースの速いニュースサイクルとのバランスを取りながら、最適化が最も必要なコンテンツをどのように評価し、診断すればよいのかということだ。 # 流入経路についてリアルタイムのデータからわかること この質問に対する答えを流入経路(リファラル)を見ることからはじめよう。検索やソーシャルから来た読者は、サイト内からページ移動して来た読者よりも記事を読み終える可能性が高い。そのような意図の高い読者は、記事全体を読むが、次の記事には進まない傾向がある。これはサイト内回遊(リサーキュレーション)を下げることに繋がるため、編集者が改善するためにもっと時間を割く価値がある。 *Related: サイト内回遊はどのようにエンゲージメントを育て、読者獲得の支えになるのか* 対照的に、トップページを訪れた読者は、おそらく1つの記事を最後まで読まず、1回の訪問で多くの記事を読むことが多い。Chartbeat社のカスタマー・エディケーション担当シニア・ディレクターのジル・ニコルソンが言うように、彼らはソーシャル読者よりも「間食」する傾向が強い。 ![](/images/posts/d69926ee52/Untitled.png) 例として、ブレグジット(Brexit)に関する2万2000以上の記事を検索とソーシャルの読者のエンゲージメントの点でレビューした。 当初、ブレグジットをテーマにした記事は、トップページを訪れる読者より検索とソーシャルでより高い評価を得ていた。しかし、記事のトピックと参照トラフィックの関係性によって、読者の行動が変化することがわかった: - 検索では、事実に基づいたわかりやすいコンテンツが好まれる - ソーシャルでは、より感情的なコンテンツ(例:自分はこれをどう感じるか。ソーシャルでどんな風に話したいか) (このトピックに関する詳しい記事: [ブレグジットのトレンドから読み取れるニュースの読み方](https://blog.chartbeat.com/2016/07/07/what-brexit-trends-tell-us-about-how-people-read-the-news/)) # 編集者が洞察を行動に変える方法 より短時間でより大きな効果を得るために、編集者ができる改善策をいくつか紹介する: 機敏に行動するチャンスを与える。実験や戦術を改善する時間がなければ、読者の行動の変化に対応することはできない。過去のデータから、特定のコンテンツがどのように機能すべきかを判断する。そうすれば、最も注意が必要な問題を素早く特定するリズムを身につけることができる。 進化する読者の行動に適応する。記事のライフタイムのなかで、読者はリアクション的なコンテンツ(ソーシャルやホームページで発見)から、より具体的な意味合いや特定のトピックの詳細(検索トラフィック)へと移行していく。 トレンドの迅速な把握。Chartbeatを使用して、著者またはセクションをフィルタリングし、パフォーマンスを確認する。エンゲージ時間が短い優れたコンテンツがある場合、ヘッドアップディスプレイ(HUD: Heads Up Display)のスクロール深度によって原因をすばやく特定できる。 デスクトップを超える。読者は動き回るので、デスクトップ体験のすべてを反映したモバイルビューを提供することが重要だ。 編集者向けに設計されたツールを活用する。テクノロジーは、チームがページを最適化するチャンスを逃さないようにするのに役立つ。たとえば、Chartbeatのスパイクアラートは、ページへの突然のトラフィック増加がエンゲージメントのチャンスであることを知らせる機能だ。[Slackとの連携も可能](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/215556117-Slack-Integration)なため、チャンスを逃すことがない。さらに、各デバイスの[ヘッドアップディスプレイ](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)を素早く表示することで、編集者は記事の配置や修正可能な画像、テキスト、リンクの問題など、ページ上の問題を素早く診断することができる。 # 編集者向けクイックスタートガイド ## セットアップ まず、リンク先のガイドを参照して、以下のツールをChartbeatにインストールする: - セクション別および著者(Author)別の[スパイクアラートの作成](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/215556117-Slack-Integration) - [レポート](https://support.chartbeat.jp/edu/reports/)でのセクションインサイトの登録 - [ヘッドアップディスプレイ](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)のインストール - [リアルタイムダッシュボード](https://support.chartbeat.jp/edu/realtime-dashboard/)の「セクション」表示をブックマークする - 外出先でもデータを確認 - [AndroidまたはiOSのアプリ](https://support.chartbeat.jp/edu/apps/)をダウンロード。 ## Chartbeatデータに慣れる ツールをインストールしたら、いよいよデータを見てみる。ここでは、ツール別に覚えておくべきトピックをいくつか紹介する: スパイクアラート。読者がコンテンツにどのようにエンゲージしているか、また、ほかの記事に遷移しているかどうかを確認できる。 ヒストリカル・ダッシュボード。「セクション」でフィルタリングし、古い記事が上がってきたかどうか、またそれらの共通点を確認する。 ヘッドアップディスプレイ。スクロール深度表示を使って、読者が記事を読み終えているかどうかを確認する。そうでない場合は、リード文や引用の配置、あるいは記事内の情報が複雑すぎてさらなる説明が必要である可能性がある。 # 記者向けクイックスタートガイド ## 設定方法 まず、Chartbeatに以下のツールをインストールする: - [リアルタイムダッシュボード](https://support.chartbeat.jp/edu/realtime-dashboard/)。上部メニューの著者(Author)フィルタを使用して、自分の記事だけのカスタムダッシュボードを使用できる。 - [ヒストリカル・ダッシュボード](https://support.chartbeat.jp/edu/historical-dashboard/)。ここでは、リアルタイムと同じフィルタリングオプションを使用でき、3ヶ月以上の記事データが表示される。 - [スパイクアラート](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/215556117-Slack-Integration)。登録すると、外部からのトラフィックが急増した際に通知を受け取ることができる。 - [ヘッドアップディスプレイ](https://support.chartbeat.jp/edu/heads-up-display/)。読者のエンゲージメントをリアルタイムで確認し、迅速な調整ができる。 - [AndroidまたはiOSのアプリ](https://support.chartbeat.jp/edu/apps/)をダウンロードして、モバイルでトレンドを確認できる。 ## Chartbeatデータを使いこなす これらのツールを使用して、ニュースルームでよくある質問に答える: スパイクアラート: トラフィックやエンゲージメントの傾向、または今後のレポートが必要な話題があったかどうかを判断するために、メールで著者(Author)レポートを確認する。 ヒストリカル・ダッシュボード。エンゲージメント数が上がっている、または下がっている理由、検索/ソーシャルで反響を呼んだ記事とその共通点。 ヘッドアップディスプレイ。スクロール深度表示を使って、あなたの記事に最もアクセスするデバイスを確認し、読者があなたの記事を最も見つけるデバイスにパターンがあるかどうかを確認する。 読者開発の担当者のための[ガイド](/posts/48cd31afa6)もある。 --- ## なぜパブリッシャーに実用的なインサイトが必要なのか:リアルタイムデータと長期の読者エンゲージメント URL: https://ximera.com/posts/c467535a93 公開日: 2023-09-11 著者: NICK LIOUDIS by NICK LIOUDIS([原文](https://blog.chartbeat.com/2019/09/10/real-time-data-reader-engagement-for-publishers/)) 2023年9月11日 ニュースサイクルが加速しつづけるなか、編集者がリアルタイムの読者エンゲージメントに影響を与える重要な決定を下す時間が少なくなっている。データに基づいたコンテンツ戦略を強化しても、パブリッシャーとそのメディアは読者行動の急速な変化についていけない。 とりわけ、記事を読み込んだ読者の45%が最初の15秒以内に離脱してしまうような場合、[編集チームはどこに時間を割くべきなのだろう](https://blog.chartbeat.com/2019/08/27/audience-analytics-for-editors-reporters/)。リアルタイムのデータがあれば、問題を素早く発見し高エンゲージなロイヤルユーザーを失うリスクを減らすことができる。 サイトから離脱した読者の60%以上は二度と戻ってこないというのも大きな問題だ。これは読者の獲得と維持、ひいては収益の機会損失につながる。いいニュースとしては、読者は滞在時間が長ければ長いほど戻ってくる可能性が高くなる。そして読者のエンゲージメントとロイヤリティ(訪問頻度)を高めるにはリアルタイムでの調整が必要である。 読者が求めているのは質の高いデジタル体験にほかならないというのが現実だ。それを提供するために、パブリッシャーはコンテンツに起因する問題なのか、その記事の露出などユーザーとの接点に起因する問題なのかを読者が訪問している短い時間で、即座に判断できるシステムを使う必要がある。 正確で実用的なデータにより、パブリッシャーはワークフローを最適化し、より深いエンゲージメントを促し、リーチを拡大することができる。最も重要なことは、リアルタイムアナリティクスによって、組織が最も貴重なリソースである人材をより効果的に活用できるようになるということだ。 # リアルタイムデータでより良い読者体験をつくる パブリッシャーには読者の訪問を質の高いインタラクションに変えるチャンスがある。しかし、記事をできるだけ多く読む、あるいは離脱の前に複数の記事を読むといった特定の行動を促すのは難しいことだ。 [リアルタイムでトレンドが発生している間に記事に小さな調整を加えること](https://blog.chartbeat.com/2019/08/21/recirculation-data-reader-acquisition/)で、編集者はこれらの望ましい行動を現実にすることができる。最適化には、次のようなものがある: - リードの改善。優れたリードは、読者を強く惹きつける。 - 強い引用。より深く読んでもらうため、記事の上の方に移動させる。 - ビジュアル要素の配置。写真や動画で、読者の文章への関心を高める。 - リンク戦術。関連記事へのリンクを追加し、読者の目に留まりやすい場所に配置する。 これらの調整は簡単そうに聞こえるが、デジタル体験に合わせたリアルタイムの測定基準がなければ、素早く調整する機会は訪れない。エンゲージ時間、スクロールの深度、回遊率(リサーキュレーション)を知っておこう。 ![](/images/posts/c467535a93/Untitled.png) - Engaged Time —the average period - エンゲージ時間 - 訪問者があなたのコンテンツと積極的にアクセスしている時間。 - スクロール深度 - 過去2時間に読者がページをどこまでスクロールしたか。パーセンテージの減少はページの下までスクロールした人が少なくなっていることを表す。 - 回遊率(リサーキュレーション) - あるページにいる人の数のうち、そのページから別のページに移動した人の数の割合。 # リアルタイムの情報がソーシャルメディアのチャンスを明らかにする デジタルチームはソーシャルプラットフォームを活用して読者とつながるためにかなりの時間を費やしている。リアルタイムデータを活用すれば、ポスト直後からコンテンツの効果を確認することができる。 リアルタイムデータはパフォーマンスが期待通りでない場合にも役立つ。パブリッシャーが目標にリーチできるような、ちょっとした変更を試してみよう。いくつか例を挙げる: - トーンを意識する。読者はストーリーの人間的または感情的なアングルに反応する。[ソーシャルメディア上ではとくに](https://cdn2.hubspot.net/hubfs/3794894/PDF/Chartbeat-Whitepaper_Facebook-and-Google-The-Great-Divide%20(1)%20(1).pdf)。 - 別のプラットフォームを検討する。ソーシャルネットワークにはそれぞれ個性があり、そのストーリーはほかのプラットフォームに適しているかもしれない。 - オーガニックな共有を活用する機会を発見する。ソーシャルで人気の記事は、今すぐに更なるパフォーマンスの向上が期待できる。ソーシャルアカウントでフォロワーと直接コンテンツをシェアするなどして、新たな活用方法を見つける。 私たちは、特にプラットフォームや読者の習慣が進化するにつれ、プロモーション戦略への積極的なアプローチが重要であると考えている。的を絞った、データに基づいた実験を行うことで、ソーシャルメディアを扱うすべての人の効率と成果を高めることができる。 # リアルタイム分析がいかに成長につながるか 読者獲得競争は激しい。収益競争はなおさらだ。エンゲージメントを高めることは、[読者収益目標に直結する](https://blog.chartbeat.com/2019/05/14/loyal-engaged-readers-key-concepts/)ことがわかっている。広告で収益化するにしても、購読で収益化するにしても、より長く読まれ、より深く体験してもらうことが収益につながる。 リアルタイムデータは、読者の最大限のエンゲージメントと将来の訪問を促すために必要な即時性に応える。リアルタイムデータを活用し、包括的な読者増加・維持戦略を補完することで、パブリッシャーは組織を整え、[エンドツーエンドの持続可能な収益モデルを構築する](https://blog.chartbeat.com/2019/07/01/subscriptions-engaged-readers-strategies-with-gq/)ことができる。 --- ## ニュース・メディアサイトへのFacebookトラフィックの減少が続いている URL: https://ximera.com/posts/02d0e53483 公開日: 2023-09-06 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2023/08/31/facebook-traffic-to-news-and-media-sites-continues-to-fall/)) 2023年9月6日 今年に入ってFacebookからのトラフィックが減少していることにみなが気づきはじめている。世界中でFacebookからの流入減少が報告され、[カナダではメタ社のプラットフォームへのニュース配信が停止される](https://about.fb.com/news/2023/06/changes-to-news-availability-on-our-platforms-in-canada/)なか、Chartbeatはネットワーク全体のトラフィックを分析、地域別にこの減少傾向を調査した。 ## 今年に入り世界のFacebookトラフィックが大幅に減少 2023年上半期、Chartbeatが計測しているウェブサイトへのFacebookトラフィックは40%減少し、昨年初めからの傾向が続いている。外部トラフィックに占めるソーシャル・ネットワークの割合は、1月のだいたい11%から6月には7%に低下した。その結果、ソーシャル・トラフィック全体では、外部トラフィックの23%から20%に減少した。 [https://public.flourish.studio/visualisation/14868535/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/14868535](https://public.flourish.studio/visualisation/14868535/?utm_source=embed&utm_campaign=visualisation/14868535) ## 中南米と北米が最も急激な落ち込み すべての地域で減少が見られたが、より大きな影響を受けた地域もある。中南米のFacebookトラフィックは上半期に60%減少し、1月は週平均8720万ページビューだったが7月には週平均3450万ページビューにまで落ち込んだ。 [NA: 北米 EMEA: 東ヨーロッパ・中東・アフリカ APAC: アジア太平洋・日本 LATAM: 南米、カリブ海地域](https://public.flourish.studio/visualisation/14868684/) NA: 北米 EMEA: 東ヨーロッパ・中東・アフリカ APAC: アジア太平洋・日本 LATAM: 南米、カリブ海地域 北米のサイトへのFacebookトラフィックは46%減少し、ヨーロッパ、中東、アフリカのサイトは39%減少した。アジア太平洋地域では、トラフィックの減少はそれほど顕著ではなく、29%の減少だった。 ## カナダはどうなったか 8月1日、メタ社はカナダにおけるFacebookでのニュース配信停止を発表。1月から6月にかけて、Facebookからカナダのニュースサイトへのページビューは21%減少した。それがニュースコンテンツを削除しはじめた前の週と後ろの週を比較すると51%の激減となった。 [https://public.flourish.studio/visualisation/14868846/](https://public.flourish.studio/visualisation/14868846/) ## データから読み取れること Facebookからニュースサイトやメディアサイトへのトラフィックが減少していることは間違いないが、ソーシャルネットワークは依然として重要な流入経路であり、読者エンゲージメントの重要なハブでもある。[Tubular Labsとの調査で指摘した](https://lp.chartbeat.com/site-to-social-report?cid=C02077)ように、読者はソーシャルからサイト内へすぐ移動してくれるとは限らない。サイト外でのインタラクションはブランドとの親和性を高め、サイト内での将来のインタラクションにつながることが多い。 最新の分析から得られた主な要点: - Facebookからのグローバルトラフィックは年初から減少している ラテンアメリカのサイトはとくに影響を受け、ページビューが60%減少した - カナダのFacebookからのニュースが削除されると、Facebookからのページビューは51%減少した - トラフィックが減少しても、Facebookは依然として最大のソーシャルリファラー(参照元)である。TwitterやInstagramのようなほかのプラットフォームは、それぞれ総トラフィックの1%未満であり、量ではFacebookに大きく遅れをとっている --- ## ビジネスと環境負荷低減を両立させるサスティナビリティコマース URL: https://ximera.com/posts/4d3b786cc9 公開日: 2023-08-31 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #52|Ikuo Morisugi| 2023年8月31日 ![](/images/posts/4d3b786cc9/xmnt52.jpg) Illustration by [UnDraw](https://undraw.co/) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第52回となる今回は「ビジネスと環境負荷低減を両立させるサスティナビリティコマース」を取り上げます。 SDGsやサスティナビリティはどこの業界でも引き続きどのような対応をとっていくのか注目されている分野です。特にフィジカルな物品を扱うリテール業界は、消費者・株主・政府などからよく目に見える分、デジタル業界より社会的な関心度が高いと考えられます。 本連載#30で示したように、「サスティナブルコマース(リサイクル、リユース、リデュースを中心とした持続可能な社会に向けてプロダクトやサプライチェーンが考慮されているコマース全般)」の重要性は高まっており、大量に起こる廃棄や無駄な生産・販売を抑えることが求められています。 一方で企業は顧客の満足度を下げないために、希少品でない限りは多くの場合、在庫切れを起こさずリアルタイムに需要に対応する必要があります。同時に在庫を積みすぎると余剰在庫となり、ビジネスの継続を困難にします。在庫は多すぎても少なすぎても駄目で、多くのリテール関連企業は常にちょうどいい塩梅になるよう在庫数の最適化に迫られています。しかし、グローバル市場全体において在庫全体の[約8%が不足状態または廃棄されており、廃棄については1630億ドル(約23.8兆円)の無駄](https://www.supply-chain-waste.com/)が出ているというレポートもあり、まだ莫大な量の在庫不足・余剰在庫に悩まされているのが現状です。 また、顧客側で不必要となった物品について、店頭でのリサイクル回収など環境配慮は一部の店舗でも実施はされていますが、企業側からするとコストがかかる分、CSRやサスティナビリティ文脈で環境配慮アピールができる以外に大きなメリットがない状態となっています。 こうした状況に対して、①調達在庫数の最適化、②不用品回収を収益チャネル化の2つのアプローチで課題解決を図ろうとしているスタートアップが出てきています。本稿では具体的な事例を取り上げ、どのように実現させているのか見ていきたいと思います。 # 物品調達プロセス柔軟化による在庫最適化 : Ghost 洋服・靴などのアパレル用品、美容関連製品、DIY用工具など、リテールストア(一般小売店)で販売している物品の多くは販売店がメーカーもしくは卸業者/商社などから仕入れをしています[リテール(retail): 業者から仕入れた商品を小分けにして売るといったニュアンスが含まれます]。 特に物品に新たな加工などするわけではなく商品パッケージをそのまま販売する形になるので、調達プロセスは「適切な量をいかに安く早く仕入れられるか」が在庫最適化のポイントになってきます。これまで物品の調達においては、個別にメーカーや卸業者/商社とコンタクトし、個別に交渉・契約が必要でした。同一物品を売っている別の卸業者がいれば、相見積もりのためさらに個別交渉が必要です。またメーカーや卸業者によっては、最低購入ロットもあります。大手小売でない限りは、配送管理や請求/支払い管理を未だにFaxなどオフラインでマニュアル的に行っているところも少なくありません。 このようにリテールストアが必要な物品を必要なだけ購入するには、多くの場合煩雑なプロセスやハードルが発生します。また調達までのリードタイムが長くなればなるほど、需要が変化し調達在庫数を見誤り、上述のように過少/過剰在庫のリスクも高くなります。また一般的によほど調達力・販売力があるリテールストアでない限り、価格交渉力は販売側(卸売側)の方が強い図式となっており、調達価格の柔軟性にも問題があります。 これに対してロサンゼルス発のスタートアップである[Ghost](https://www.ghst.io/)が行っているアプローチが、一般小売事業者向けのメンバーシップ制オンラインマーケットプレイスです。Ghostを利用すると一般消費者がECストアで商品を購入するのと同じくらい簡単に、小売り事業者がメーカー/卸業者/商社からの物品調達が行えるようになります。 Ghostを利用することで通常のECのように物品調達を行える / [Ghost](https://www.ghst.io/) Ghostを利用することで通常のECのように物品調達を行える / [Ghost](https://www.ghst.io/) Ghostはマーケットプレイスとして、ブランド/卸業者/商社と提携し、商品を掲載しているため、購入者からすると連絡や交渉の手間がありません。価格に関しては、Yahoo!オークションのように入札式または購入者の希望価格を伝える形が取られているため、販売者から提示される価格一択ではなくマーケット需要によって調整がされます。また、Ghost側で調達物品の掲載/購買のデータを集め、どれくらいのロット数/価格で同物品が販売されているかトレンドとしてデータを提示し、購入者が適切なロット数/価格で購入できるように支援しています。 Ghostでは調達するロット/価格が適切なのか確認ができる / [Ghost](https://www.ghst.io/buyers) Ghostでは調達するロット/価格が適切なのか確認ができる / [Ghost](https://www.ghst.io/buyers) 購入完了後の発送プロセスもGhostが仲介し、販売者からの物品発送状況の確認も行い、発送完了をもって、販売額が販売者へ支払われます。 販売者にとっては、Ghostは通常の卸売プロセスの中で発生している過剰在庫を処分する場所となっています。さらにGhostは発送完了次第、すぐに売上を支払いしてくれるという利点もあり、在庫処分観点/キャッシュ・フロー観点でも販売者がGhostへ掲載するベネフィットもうまく作り出しています。 Ghostは2023年8月にCathay Innovation、Union Square Venturesなどが投資家として参加する[3000万ドル(約44億円)のシリーズB資金調達](https://techcrunch.com/2023/08/21/b2b-inventory-marketplace-ghost-30m/)を実施し、米国外(特にヨーロッパ、アジア)への拡大を目指しています。 # 追加収益/ロイヤルティを生むリセールプログラム: Trove 冒頭で説明した通り、ブランドにとって顧客の不用品回収は主にリサイクル目的で実施しており、廃棄を減らし環境負荷低減を目的としたものとなっています。一方で顧客側はよほど店舗が近くにあるか、環境意識が高くない限り、売れないものであればゴミとして廃棄するか、売れるものであれば二次流通市場で販売した方がコストや金銭的メリットが高い状態となっています。2015年の調査では、生産された洋服生地の内、[リサイクルで回収されるのはわずか約13%未満で、73%は廃棄され、焼却されるか、埋立地で処分されます。](https://jp.weforum.org/agenda/2019/03/cbc32fbe35/)環境意識の高まった近年では改善されている可能性はありますが、リサイクルだけで問題解決は図れるとは考えにくいです。さらにブランドにとっては、リサイクル品を回収しリサイクルプロセスを作るだけでも多大な手間やコストがかかるため、取り組み自体はコストセンターとなっています。 こうした課題に対して、米国スタートアップの[Trove](https://trove.com/)は、ファッションブランドが顧客から不要になった商品を買い取り、リセールできるソリューションを提供しています。ブランドがTroveを利用することで、製品の寿命を延ばしつつ、新規の顧客を増やしながらサスティナブルな経営を続けていくことができます。 PatagoniaはTroveのソリューション利用し顧客から買取した製品を低価格で提供するリセールプログラムを運営している / [Patagonia Worn Wear](https://wornwear.patagonia.com/p/patagonia-ws-crosstrek-hoody-womens/23795?color=ELWB&aqi=a3ba4111722927b6e65fc11afa350979) PatagoniaはTroveのソリューション利用し顧客から買取した製品を低価格で提供するリセールプログラムを運営している / [Patagonia Worn Wear](https://wornwear.patagonia.com/p/patagonia-ws-crosstrek-hoody-womens/23795?color=ELWB&aqi=a3ba4111722927b6e65fc11afa350979) Troveは各ブランドのリセールプログラムを実現させるために、主に下記4つのソリューションを提供しています。 1. Trade-In: オンラインと店舗で顧客から不要となった製品の査定・買い取り(そのブランドで利用できるギフトカードやリワードを現金の代わりに提供) 2. Reverse Logistics: 画像認識と機械学習アルゴリズムを使用した、製品判別・自動価格設定・リセールサイトへの登録 3. Commerce: ブランドがオリジナルで提供していた製品画像・説明と同期したリセールサイトの提供・運用 4. Insights: 在庫状況、製品毎のエンゲージメント、サイト動作状況やビジネスのパフォーマンスの監視・分析 上記のように査定・リスト登録・商品管理・販売プロセスなど大部分が自動化されており、ブランド側は自前で実施するよりも手間やコストをかなり抑えてリセールプログラムを運用することができます。Troveが提供するリセールソリューションがブランドに評価され、2023年8月時点でTorveが提携する[Patagonia](https://wornwear.patagonia.com/)、[Allbirds](https://www.rerun.allbirds.com/)、[Lululemon](https://likenew.lululemon.com/)、[Levi’s](https://www.secondhand.levi.com/)など著名なブランドをはじめとして[700店舗](https://trove.com/how-it-works/)およびオンラインで対応をしています。 Troveを活用したことにより、ギフトカードの発行が50%以上増え、その内31%が発行当日に利用されているという[事例](https://trove.com/how-it-works/)もあり、不要品の処分の後に次の購入につながっていることがわかります。また50-65%のリセールプログラムでの購入者はブランドが今までに認識できなかった新規顧客で、かつ通常チャネル購入者に比べて2倍のカートサイズ(商品購入点数)となっている[事例](https://trove.com/how-it-works/)もあり、新規顧客獲得と在庫捌けにも貢献しています。 Troveは上記であげたブランド以外にもすでにCanada Goose、Carhartt、REI、Arc’teryxなど著名ブランドを獲得していますが、2023年8月にWellington Managementがリードする[3000万ドル(約44億円)のシリーズE資金調達](https://www.businesswire.com/news/home/20230810325585/en/Trove-Secures-30M-Series-E-Funding-Further-Expanding-Market-Leadership-Position-In-Branded-Resale-and-Trade-In)を実施し、さらなる提携ブランド増やファッション以外の領域への拡大を目指しています。 # おわりに 今回は「ビジネスと環境負荷低減を両立させるサスティナビリティコマース」についてとりあげました。 今回取り上げたGhostもTroveも実施していること自体は先行している類似のスタートアップもあり、特別新しいわけではありません。一方で業界に存在しているペインを的確に捉え、より多くの顧客にとって導入しやすく、使いやすく、かつしっかり成果が出るプロダクトを提供していることが共通しています。 例えば、[本連載#30](/posts/bdb1b92962)では主にラグジュアリーブランドのリセール市場に限られたブランド愛好家やブティックからリセール品を調達しリセールプログラムへ参入していくArchiveの事例を紹介しましたが、今回取り上げたTroveは、よりカジュアルなブランドかつ一般消費者を巻き込んだ形でのリセールプログラムの提供ができることを示しました。 こうしたリセールプログラムは、二次流通市場で値段がつくような製品であれば、アパレル業界以外にも活用できるため、今後ビジネスとサスティナビリティを両立したい企業がさらに参入し市場が大きくなることが想定されます。 デジタル領域におけるサスティナビリティに対するアクションについては、フィジカルな製品に比べてまだ動きが少ないですが、[汎用AIの登場によりサーバーやGPU計算リソースの取り合いが起き、二酸化炭素排出量が大量排出されている](https://toyokeizai.net/articles/-/288069)昨今の流れを考えると、デジタル業界にもフィジカルな製品と同様にその対応がステークホルダーから求められると考えられます。その時、デジタルメディア領域においてもビジネスとサスティナビリティを両立しつつ、株主・顧客に対する価値を最大化することが求められます。 その時に具体的なアクションができるよう、参考になる材料をXimeraでも今後もお伝えしていきたいと思います。 --- ## 複数年にわたるエンゲージメント分析から見えてくること URL: https://ximera.com/posts/ac3fbb5676 公開日: 2023-08-31 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2022/03/14/what-multi-year-engagement-analysis-tells-about-2022/)) 2023年8月31日 かつて、コンテンツの有効性はページロードの先に何があるかに関係なく、主にページビューで判断されていました。Chartbeatのミッションの1つはパブリッシャーをかつてのこの指標からエンゲージメントに焦点を当てたものに移行させることです。なぜなら、クリック数はどれだけの訪問者がコンテンツに関与する機会を得たかを知ることはできますが、クリック後の行動こそが訪問者が[ロイヤルユーザになるかどうかの真の指標](https://blog.chartbeat.com/2021/03/25/reader-loyalty-tactics/)だからです。 トラフィックの流入元も無関係ではありません。[前回のブログ](/posts/ac3fbb5676)で読者がどのようにコンテンツを発見してきたかより深く理解するため、過去3年間のトラフィックパターンを分析しました。 ここでは、同じ期間のエンゲージメントに焦点を当て、それがトラフィックにどのように影響されるのか(またはされないのか)を見ていきます。結局のところ最も効果的な戦略は、読者の行動が発見とエンゲージメントを経てロイヤルユーザーへと至るその一連の流れを理解することでした。 ## トラフィックとエンゲージメントの分岐点 過去3年間のトラフィックの傾向を調査した結果、全体のトラフィックは2020年の大きなスパイクの後、2021年には減少したものの、パンデミック前のレベルを大幅に上回っていることがわかりました。2022年は2019年のニュースサイクルの安定性に戻る傾向が大きいと予想されますが、全体的なトラフィックは過去2年間の成長をある程度維持するとも予想されます*(訳注:このレポートの原文発行は2022年3月)*。 これはエンゲージメントにとって何を意味するのでしょうか。同じ3年間の平均エンゲージメント時間に焦点を当ててみましょう。その際、[Chartbeatのエンゲージメント時間の測定方法](https://help.chartbeat.com/hc/en-us/articles/360040970854-FAQ-Chartbeat-Engaged-Time-versus-Google-Analytics-visit-duration-metrics)と、Google Analyticsのようなほかのツールで見られるより伝統的なページ滞在時間の測定方法との違いに気をつけてください。主な違いは、エンゲージメント時間は読者がページに積極的に関与している時間、例えばスクロール、クリック、マウスを動かしている時間を測定するのに対し、ページ滞在時間は、読者が現在開いているタブであるかどうか、あるいはまだコンピュータの前にいるかどうかに関わらず、単にページが開かれている時間を測定することです。 ![](/images/posts/ac3fbb5676/2022-Multiyear_Trends-Avg-Engagement__Data-by-Chartbeat-1200x818.png) 四半期ごとの平均エンゲージメント時間 一見すると、四半期ごとに同じようなパターンを持つ2つの年があり、真ん中には異常値が1つあります。よく見てみると、2019年は第1四半期にエンゲージメントが上昇し、その後、年末にかけて着実に低下する典型的なパターンを辿っています。2020年も同じパターンで、エンゲージメントは前四半期の終盤より再び上昇に転じましたが、第2四半期は減少するどころか、平均エンゲージ時間が3年間を通じての最高を記録しました。 高いトラフィックが必ずしも高いエンゲージメントを生むわけではありませんが、[同じ時期にトラフィック](/posts/ac3fbb5676)が急上昇したことがわかっていれば、COVID-19の報道がはじまった時期にエンゲージメントが同じように急上昇しても不思議はありません。世界的な話題とそれが何なのか知りたい読者の需要が噛み合い、更新されるライブブログと感染状況を解明しようとする長編記事の組み合わせを通じて、読者の関心を引き付けました。 トラフィックは2021年もその勢いを維持しましたが、エンゲージメントはパンデミック以前のお馴染みのパターンに戻りました。1月から10月にかけて、平均エンゲージメント時間は7%以上減少しました。 同期間のトラフィックの分析と合わせると、クリック数が増えれば読者の関心を引く機会は増えますが(2020年はそうだった)、[新規読者のロイヤリティを高める戦略](https://blog.chartbeat.com/2021/03/25/reader-loyalty-tactics/)がなければ、トラフィックがそのまま継続的なエンゲージメントにつながるとは限らないことがわかります。 ## 地域別のエンゲージメント トラフィックのトレンドが世界各地で異なるように、エンゲージメントも地域別に見ると世界的なトレンドが顕著な地域とそうでない地域があります。エンゲージメント時間に関しては過去3年間、世界平均が33秒に達したことはありませんでしたが、ラテンアメリカがこの記録を上回りました。 最高34.9秒のラテンアメリカは世界平均に近い32.4秒の北米を上回りました。アジア・太平洋地域は29.8秒、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域は28.9秒と、エンゲージメントが低くなりました。 ![](/images/posts/ac3fbb5676/regional-engagement-visual-ona22.png) アジア・太平洋地域は、2019年以降、平均エンゲージ時間が-9%と最も大きく減少しました。ラテンアメリカと北米は約+1%と小幅な伸びとなっています。 ## 調査の要点 [記事を開いた読者の半数近くが最初の15秒で離脱する](https://blog.chartbeat.com/2019/09/10/real-time-data-reader-engagement-for-publishers/)のであれば、コンテンツが実際にどうエンゲージするか理解するために、ページビューよりも深い部分に目を向ける必要があります。今後の戦略を評価する際にはこれらを考慮してください: 1. トラフィックだけではエンゲージメントにつながらない。2020年第2四半期以外ではエンゲージメントレベルはトラフィックの増加に追いついていない。 2. エンゲージメントは地域やサイトの規模によって異なる。ラテンアメリカのエンゲージメント時間は世界平均を上回ったが、北米、アジア・太平洋地域、ヨーロッパ・中東・アフリカはいずれも下回った。 3. エンゲージメントの伸びが緩やかなパブリッシャーにとっても、今は新しいコンテンツフォーマットや見せ方の実験をやめる時期ではない。エンゲージメントを維持する方法はサイトごとに異なるが、[見出しや画像のテストのような最適化ツール](https://chartbeat.com/products/optimization/)はエンゲージメントを向上させ、ロイヤリティの増加につながる意思決定に必要なデータを示すことができる。 --- ## 2023年第2四半期:世界のオーディエンス動向 URL: https://ximera.com/posts/41b6aec21d 公開日: 2023-08-24 著者: JACK NEARY by JACK NEARY([原文](https://blog.chartbeat.com/2023/07/12/global-audience-insights-second-quarter-2023/)) 2023年8月24日 2023年第2四半期の平均エンゲージ時間(平均滞在時間)はアフリカで最も長く、モバイルの読者数は東南アジアと中央アジアで成長を続け、ソーシャル経由で流入するページビューは世界中で減少しました。 第2四半期の調査から得られたグローバルのインサイトについては、以下に続く本文をご覧ください。 *過去のインサイトレポートと比較する:Q1 2023 / [Q4 2022](https://blog.chartbeat.com/2023/01/24/global-audience-insights-fourth-quarter-2022/)(英文) | [Q3 2022](https://blog.chartbeat.com/2022/10/20/global-audience-insights-third-quarter-2022/)(英文)* ## エンゲージ時間は、引き続きアフリカと中東が最長 アフリカの読者の平均エンゲージ時間(平均滞在時間)は36.4秒と、2四半期連続で最長となりました。次いで中東が34.7秒、中欧/東欧が33.5秒でした。 [https://www.datawrapper.de/_/tKw5m/](https://www.datawrapper.de/_/tKw5m/) アフリカを除くほとんどの地域で、平均エンゲージ時間が2023年の第1四半期に比べて微減しています。 ## 東南アジアと中央アジアでモバイルトラフィックが増加 東南アジアのモバイル読者は引き続き増加しており、同地域のページビューの88%はモバイルによるものでした。中央アジアのモバイル割合は、前四半期の84%から増加した86%と僅差で続きました。 [https://www.datawrapper.de/_/Vx1rY/](https://www.datawrapper.de/_/Vx1rY/) モバイルからのページビューは他のほとんどの地域では横ばいでしたが、アフリカとアジア・太平洋地域では、前四半期と比較してそれぞれ1%減少しました。 ## 東南アジアと中欧/東欧で検索トラフィックが増加 第2四半期は、東南アジアでは検索経由のページビューが38%と、前四半期の37%から増加しました。中欧/東欧でも検索経由のページビューが25%から26%に増加しました。 [https://www.datawrapper.de/_/uzhzP/](https://www.datawrapper.de/_/uzhzP/) ## ソーシャル経由のページビューはほとんどの地域で減少 ソーシャル経由のページビューが占める割合は、アフリカが 23%、北米が 17%と、引き続き最高となりました。 [https://www.datawrapper.de/_/d56ei/](https://www.datawrapper.de/_/d56ei/) 中央アジアを除くすべての地域で、前四半期と比較して1~2%の減少がみられます。 ## 読者ロイヤルティが北欧と中央アジアで成長 北欧は中欧/東欧と並んで、ロイヤルティ(訪問頻度)の高い読者によるページビューの割合が47%と最も高い結果となりました。中央アジアは22%から25%と、前四半期と比べて最も高い成長率となりました。 [https://www.datawrapper.de/_/vXd3K/](https://www.datawrapper.de/_/vXd3K/) ほとんどの地域で微増もしくは横ばいの結果となりましたが、南ヨーロッパは37%から36%に、東南アジアは37%から35%に減少がみられました。 ## 2023年第2四半期 調査のポイント 1.平均エンゲージメント時間(平均滞在時間)は、上半期に長くなりやすい。 [過去の調査](https://blog.chartbeat.com/2022/03/14/what-multi-year-engagement-analysis-tells-about-2022/)によると、エンゲージメントは年間を通じて低下するのが一般的なので、第2四半期にわずかな減少が見られることを心配する必要はありません。しかし、次の四半期に向けて[エンゲージメント戦略](https://blog.chartbeat.com/2019/09/10/real-time-data-reader-engagement-for-publishers/)を再評価する良い機会でしょう。 2.ソーシャルからのページビューが第2四半期に減少した。 ソーシャルからのページビューは、Facebookのトラフィックが下落したことを主な要因として、第2四半期に世界中で減少しました。過去に[Facebookやその他の主要なリファラー](https://blog.chartbeat.com/2022/06/15/facebook-instant-article-traffic-drop/)の流入減を分析したように、パブリッシャーがリアルタイムでプラットフォームの変化を予測し、対応できるよう、この動向を引き続き監視していきます。 3. ほとんどの読者はモバイルユーザーである。 1つの地域(ラテンアメリカ)を除くすべての地域で、ページビューの71%以上がモバイル利用者が占めています。今後も四半期ごとに多少の変動はあるにせよ、全体的なモバイル優位の傾向は変わらないでしょう。 --- ## AIで変わるメディアのトラフィック URL: https://ximera.com/posts/76c9fe0d74 公開日: 2023-08-02 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #51|Ikuo Morisugi|August 2nd, 2023 ![](/images/posts/76c9fe0d74/xmnt52.jpg) [Business illustrations by Storyset](https://storyset.com/business) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第51回となる今回は「AIで変わるメディアのトラフィック」を取り上げます。 メディアパブリッシャーの外部からの顧客獲得は検索、ソーシャルメディアが2大チャネルとなっています。しかし近年のソーシャルメディアの動きや検索エンジンと連動したAIベースの回答提示によって、2大チャネルへの依存にリスクが出てきています。 # リスク1: ソーシャルメディア流入が減少 Chatbeatが行った調査によるとメディアパブリッシャーの経路別ページビューのトラフィックの構成としては、以下のようになります。 出典: Chartbeat 2022年のトラフィック、エンゲージメント傾向レポート 出典: Chartbeat 2022年のトラフィック、エンゲージメント傾向レポート - 内部回遊(Internal): 約36% - 検索(Search): 約23% - ソーシャルメディア(Social): 15%前後 - 直接訪問(Direct): 13%前後 - その他外部(External): 11%前後 とくに検索(Search)、SNS(Social)、その他外部(External)について、参照元(Referer)について見てみるとFacebookについては2018年に28%あったパブリッシャーへのトラフィック割合が2023年4月には11%まで下がっています。これは相対的にFacebookにとって外部への送客の重要度が下がっていることを意味します。 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/) 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/) トラフィックの絶対量についても、例えばBuzzfeedのトラフィック量を見ると、Facebookからの送客が2020年-2023年の3年弱で減少傾向であることが見て取れます。([Buzzfeed Newsは2023年4月サービス終了を発表](https://gigazine.net/news/20230421-buzzfeed-news-shut-down/)) 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/) 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/platforms/how-far-facebook-referral-traffic-to-news-sites-has-plummeted/) # リスク2: 検索流入の減少リスク 検索(Seach)については、現時点で大きなトラフィック減少はありませんが、2022年12月時点では95%をGoogleが占めています。メディアパブリッシャーも含め世の中のあらゆるサービスが、検索からの顧客獲得に関してGoogleのインターフェースやアルゴリズムに依存する構図となっています。 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/media-audience-and-business-data/media_metrics/news-referral-traffic-breakdown/) 出典: [PressGazette](https://pressgazette.co.uk/media-audience-and-business-data/media_metrics/news-referral-traffic-breakdown/) 2023年5月にGoogleはSearch Generative Experience(SGE)と呼ばれる、AI回答ベースの検索体験のコンセプトを発表しました。検索結果の見せ方に着目すると、通常の検索結果の一番上にAI回答が生成され、関連するリスティング広告を載せています。 出典: [Google](https://blog.google/products/search/generative-ai-search/) 出典: [Google](https://blog.google/products/search/generative-ai-search/) このUX/UIがそのままGoogleの検索画面に実装されるかはまだ未定ですが、AI回答だけでユーザが満足する回答が得られてしまうケースも多くあると考えられます。それによって、出典(ソース)を見に行かないことで、メディアへのトラフィックが大きく減少する可能性があります。 現状でもGoogleは強調スニペットによって、ユーザが知りたいと思われる回答候補を出しており、筆者自身の経験でも強調スニペットで問題解決され、それ以上検索を行わないこともあります。SGEではその体験がさらに強化されるため、実装された際には検索経由のトラフィックは間違いなく下がっていくと考えられます。 # リスクに対するアプローチ 上記で挙げたリスクに対して、残念ながら絶対的な処方箋はありません。ソーシャルメディアや検索エンジンの影響力は依然大きく、流入トラフィックを変化させることは困難を伴います。それでもなおプラットフォームの都合で数年でトラフィックが激減するようなリスクを放置するわけにもいきません。ここでは取りうるアプローチの選択肢の3つを取り上げます。 ### 1. AI回答に最適化する 短期的には、GoogleやBingをはじめとしたAI回答に選ばれやすいような記事作りをする方法が考えられます。GoogleでもBIngでもAI回答には出典元のソースを付与する場合があります。この出典元が選ばれるロジックは非公開ですが、ユーザ意図に沿った回答として出典元として選ばれるように記事の構成のチューニングが肝になると思われます。 検索結果で上位に入っている記事がAIにも選ばれやすい可能性はありますが、これまでの検索キーワードをベースとした結果とAIが確率論で回答として提示する結果が同じになるかは未知数です。まだ具体的な事例は出てきていませんが、おそらく今後これまでのSEOとは違った観点・チューニングが必要になってくるかと思います。それをサポートするためのスタートアップ企業も出てくると思われます。 一方で長期的に特定のプラットフォームに依存し続けることは、結果として上記のようなリスクを生むため得策ではありません。実施するにしても短期的または一時的な措置として考え、長期的には自社メディアに検索や特定のソーシャルメディア以外からも流入が望める施策に力をかけるべきと考えられます。 ### 2. 顧客獲得チャネルを多角化する 上記の通り、特定のプラットフォームやチャネルだけに依存しない顧客獲得チャネルを強化していく必要があります。メール、ポッドキャスト、ホワイトペーパー、TV、リアルなどアルゴリズムやプロトコルが単純である、またはそれが公開されているチャネルからの顧客獲得を行うことで、検索やソーシャルメディアへの依存度を下げていく必要があります。 ### 3. 独自コンテンツで顧客リテンションを維持する どのような場合であっても、最終的に自社のサービスが選ばれる理由は、1. そこにしかないコンテンツ/ブランドがある、2. 価格が安い/お得度が高い、3. 著しく利便性や品質が高いの3つが主要因になります。メディアの場合は特に1. そこにしかないコンテンツ/ブランドが一番大きな価値になると考えられます。 AIによる記事生成が当たり前の時代になってきていますが、AIの弱点も指摘されています。ChatGPTをはじめとする汎用AIは確率論で生成される、かつ短期的な記憶や文脈しか持たないなど[制限がいくつもある](https://www.forbes.com/sites/bernardmarr/2023/03/03/the-top-10-limitations-of-chatgpt/?sh=163596a88f35)ため、現状では深みのない記事しか書けないと言われています。 これに対して、ある程度絞り込んだセグメントに特化し、ほかの媒体にはない深堀った観点の記事を作りだすことで、差別化を実現する必要があります。これはAI登場以前からある普遍的なアプローチで、AI以後も基本スタンスは変わりません。ここで重要なのは、差別化のためにAIを使わない方が良いわけではなく、AIをサポート的に利用すべきという点です。 [本連載第50回](/posts/084553fa2b)でも取り上げた[LangChain](https://www.langchain.com/)など独自のLLMモデルや記憶領域を活用することで、そのメディアにしか作り出せない記事を量産することも可能です。ただAIのみでは独自の観点が足らなかったり事実認識が誤っていることもしばしば起こるため、人間がテーマと観点を与え、AIが記事生成し、人間がレビュー・チューニングを行うというプロセスにより、独自性と生産性を両立させることが必要です。 # おわりに 今回ご紹介したリスクに対するアプローチについては、言うのは簡単だが実行はとても困難を伴うものかと思います。 ソーシャルメディアや検索エンジンのビジネスモデルは、ユーザにとって必要な情報を提供することでプラットフォーム内にとどまらせ、広告売上の最大化を図ることです。それを考えると外部サイトへトラフィック誘導することは、究極的にはプラットフォームにとってビジネスモデルに反する行為になります。そのため短期的には外部サイトと協力するような姿勢を見せるものの、Facebookのように徐々にその影響力を下げていくようなリスクは拭いきれません。今後もさらにソーシャルメディアや検索エンジンからのトラフィックが下がることは視野に入れた上でのアクションが必要になってきます。 そういった状況がきた後では、手を打てなくなってしまいます。実現は難しいものの、いかに自社である程度コントールが可能なトラフィック獲得チャネルを作り出していくかが、メディアにとって非常に重要になってきます。 こうした動きの一助になれるようキメラでも今後もトラフィック獲得の改善に関連するビジネストレンドや新たな技術について発信をしていきます。 --- ## LLMベースサービス構築の現在地 URL: https://ximera.com/posts/084553fa2b 公開日: 2023-07-10 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #50|Ikuo Morisugi|July 10th, 2023 ![](/images/posts/084553fa2b/xmnt50.jpg) [Work illustrations by Storyset](https://storyset.com/work) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第50回となる今回は「LLMベースサービス構築の現在地」を取り上げます。 本連載 #45にてご紹介したLLM(巨大言語モデル)の登場で、ChatGPTを筆頭にさまざまな生成系AIサービスが生み出されています。 [#45 進化するAIとクリエイターの未来](/posts/e1844565ce) ChatGPTは[月間10億人の訪問者、1億人のアクティブユーザ](https://www.tooltester.com/en/blog/chatgpt-statistics/)がいると見積もられています。既にChatGPTに文章生成・要約・壁打ちなどのシングルタスクの処理をさせている方もいると思いますが、最近ではシングルタスクのみではなく、LLMを活用してより複雑なサービスやアプリケーションの開発を行うことも容易になってきていています。 LLMの発展による一番の大きな変化は「自然言語の指示を高い精度で理解し、様々なアクションを自動で策定・実行できる」AIが登場したことです。将来的にはより多くの人がAIを使ってカジュアルにLLMベースのサービスを開発するようになってくると考えられます。 一方で、現在多くの人はまだその利益を享受している状況ではありません。現在ChatGPT単体でできることには限界があることや、LLM周辺で起こっているサービス開発環境の変化に人々の認知が追いついていないと考えられます。 本稿ではそうしたLLMベースのサービス開発をするうえでのChatGPTの問題の整理および、解決のためのソリューションを取り上げます。より具体的なイメージを持っていただくことで、みなさまで検討/取り組まれている事業の参考になれば幸いです。 # ChatGPTの問題 ChatGPT単体でサービス開発をする際の制約事項として、大きく以下3点があります。 (1)ChatGPTは汎用モデルかつ古い情報ソースを扱っているため、専門分野の知識が要求される場合や情報の鮮度が求められる場合には解決できなかったり、具体的なアクションをとることができない (2)ChatGPT単体では毎回プロンプトを打たないといけない、かつプロンプト入力に慣れていないと探索的思考を深めることができない (3)ChatGPTのモデル(GPT-3/4)自体は、トレーニングプロセスやウェイトもブラックボックスである(入出力しか制御ができない) ## (1)ChatGPTは汎用モデルであるため、場合によっては解決できなかったり、具体的なアクションをとることができない とくに無料版のChatGPTではデータが古いことや、より専門的な情報(例えばある特定のグルメサービスのレストラン候補から出してほしいなど)については、あくまで一般的な確率モデルに基づくため、必ずしも要求通りの正確な回答を提供できないこともあります。 また、ChatGPTでおすすめされた商品やサービスを購入しようとしてもそのままでは購入するプロセスに進めません。ノーマルのChatGPTはあくまでプロンプトで返すだけになるので、エンドユーザにやって欲しいアクションがあっても、ChatGPTの外のWebページに移動してもらうなどはユーザ自身でやってもらわなくてはいけません。 ## (2)ChatGPTでは精度を上げるために何度もプロンプトを打たないといけない サービス企画のブラッシュアップにしろコード生成にしろ、目的通りのアウトプットを実現するために何度もChatGPTでプロンプト入力が必要になります。プロンプト入力はStep By Step法が有効であることが知られていますが、分解した要件を正確に入れる必要があり、ある程度専門知識やプロンプト入力への慣れがないと望ましい結果を得られにくいです(それほど複雑ではないお題の場合、「Step By Stepで考えてください」という[魔法の呪文](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC22BVO0S3A320C2000000/)で精度が上がる場合もあります)。 ## (3)ChatGPTのモデル(GPT-X)自体は、トレーニングプロセスやウェイトもブラックボックスである ChatGPTのモデル(GPT-3/GPT-4)がどのようにトレーニングされ、どのパラメータにどれくらいの重きを置かれているのかは公開されていません。そのため、精度の改善を図ったり、意図した通りに動かしたい場合は、プロンプト入力ベースで動作改善をしていく必要があります。 これらの制限事項がある限り、複雑なサービス開発においては、ChatGPT単体で望み通りの結果を得ることが難しいです。こうした問題に対して、既にいくつかソリューションが登場しています。 # ソリューション ## GPTベースのLLMと外部サービスを連携: ChatGPT Plugins 問題(1)であげた、「ChatGPTは汎用モデルであるため、場合によっては解決できなかったり、具体的なアクションをとることができない」に対して、ChatPGTでは[ChatGPT Plugins](https://openai.com/blog/chatgpt-plugins)というオプションを用意しています。 ChatGPT Pluginsを使うことで、LLMアプリケーションの開発者が、最新の情報や専門的ナレッジベースの活用、購入や予約などのアクションをChatGPT上で実現できるようになります。 ChatGPT Plugins Storeがあり、その数は[急増してい](https://news.yahoo.co.jp/byline/ohmototakashi/20230701-00356121)ると伝えられている (2023年6月現在は有料ユーザ向けに徐々にロンチ) 出典: [ChatGPT](https://chat.openai.com/) これを利用することで、最新のニュースを配信するチャットアプリや、おすすめのレストラン情報を見つけたり、気に入った商品や宿などをChatGPT上で注文や予約ができたりするサービスを開発することができます。LLMモデル部分はChatGPTに任せ、Pluginsのみを開発することにより、より短期間にサービス提供ができるようになります。 ## 思考->推論->批判のプロセスをAIにより自動化: AutoGPT 問題(2)であげた、「求める精度の答えを得るために何度もプロンプトを打たないといけない」に対する1つのソリューションが[AutoGPT](https://autogpt.net/)です。
AutoGPTはChatGPTのベースになっているLLMモデル(GPT-4)のAPIに接続されており、ユーザが達成したい目標をいくつか与えるだけで、AI自ら思考(企画)、推論(アクション策定)、批判(レビュー)の3つのプロセスを自律的に実行することができます。 企画 => アクション策定 => アウトプット1回目 => レビュー => 再度思考/アクション策定 => アウトプット2回目 のサイクルを重ね、プロセスを実行していくAIにより、アウトプットが自動的に生成されるため、ChatGPTでのプロンプト入力に比べて非常に効率的に求めるアウトプットへたどり着くことができます。 例えばデモとして、[Auto GPTについて調査して、要約記事を作成するという事例](https://github.com/Significant-Gravitas/Auto-GPT)があります。「Githubを探してAuto GPTのプロジェクトを調査し、autogpt.txtに出力してください」という目標を与え、Auto GPTが自動でブラウザを開き、google検索し、Auto GPTのレポジトリを発見し、説明を塊ごとに要約し、autogpt.txtに出力するという一連の流れを実現しています。 他にもAutoGPTで、ReactとTailwind CSSを使用して、Webサイトを構築するという目標と、それに伴う5つの手順を与えたのみで、[新規登録/ログインのWebサイトをCSSのスタイル付きで10分とかからず自動生成した例](https://twitter.com/SullyOmarr/status/1644750889432027136?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1644750889432027136%7Ctwgr%5E572a2540ad438799770e17a421d6def8f2618580%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fthebridge.jp%2F2023%2F04%2Fwhat-is-auto-gpt)もあります。そのほかにも[さまざまな事例](https://dataconomy.com/2023/04/19/best-autogpt-examples-use-cases/)が生まれています。 より複雑なタスクやアプリケーションを作ろうとするとまだ失敗したり、介入する必要はありますが、いずれにせようまく使いこなすことで今まで手作業で時間がかかっていたことがかなり短縮される可能性があります。 ## 他のLLMやツールと組み合わせてアプリケーションを構築: LangChain 最後に、問題(3)であげた、「ChatGPTのモデル(GPT-3/4)自体は、トレーニングプロセスやウェイトもブラックボックスである」に対するソリューションが[LangChain](https://langchain.com/)です。LangChainはよりカスタマイズされた複雑なLLMベースのアプリケーションを開発するためのライブラリです。 「Chain」という言葉が使われているように、まるで数珠つなぎのようにさまざまなLLMモデルやツールを組み合わせることができます。さらにメモリ(記憶)機能があり、過去のやりとりを長期に記録・参照することができます。 LLMのモデルはGPT-3/4が主流ですが、他のモデルも多数存在します。LangChainを使うことで、より自身が実行したいタスクに向いているモデルをGPT以外にも選択して利用することができます。 例えば、複数のLLMを使って、文章分析や要約が得意なモデルと画像分類や処理が得意なモデルを組み合わせ、文字が書かれた画像を正しく分類するタスクの出力を最適化することができます。この他にもLangChainでできることは[多岐にわたり](https://blog.brainpad.co.jp/entry/2023/06/12/182351)、かなりカスタマイズ性が高いです。 一方で、LangChainは設定する内容が複雑であることやプロンプトを処理することに関連するコーディングが発生するため、エンジニア向けのツールとなっています。こうしたプロンプトをうまく処理するためのツールや技法、仕組みの理解に長けたエンジニアは「[プロンプトエンジニア](https://zenn.dev/umi_mori/books/prompt-engineer/viewer/what_is_prompt_engineer)」の名称で界隈では需要が高まっています。 # おわりに 今回ご紹介したソリューションについては、事前準備やエンジニアによる開発が必要なものがほとんどで、誰もが対話だけで商用レベルで通用するサービスができあがるという状況にはまだなっていません。 ただその下地はできあがりつつあり、より利便性が高く、高速にサービスを作れるツールは遠くない未来に出てくると考えられます。そういった状況になると、誰もがカジュアルにサービス開発ができるようになり、膨大な数のアプリケーションが生まれることになります。 サービス開発に関しては、AIが仕事を代替する部分もかなりありますが、クリエイティブな職がなくなるということよりも、より創造的・生産的活動にフォーカスできるようになる側面が強いです。 産業革命では、蒸気機関が登場して以来、織物は農家の副業で生み出されるのではなく、工場で大量生産する形態に変わりました。そこで大量のブルーカラー労働者という職業が生まれました。自動車が登場した時も人力車を引く職業はなくなりましたが、代わりにタクシー運転手という新たな職業が生まれました。 自動化・効率化されてなくなっていく職業はいつの時代もあるため、いかに早くトレンド・時代の流れをキャッチアップして自身を変えていくことができるかが重要になります。 --- ## ソーシャルコネクションを取り戻すニューメディア URL: https://ximera.com/posts/3a2a9ee866 公開日: 2023-06-09 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #49|Ikuo Morisugi|June 9th, 2023 ![](/images/posts/3a2a9ee866/xmnt49.jpg) [People illustrations by Storyset](https://storyset.com/people) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第49回となる今回は「ソーシャルコネクションを取り戻すニューメディア」を取り上げます。 前回ニッチコミュニティについて発生している傾向と事例を旅行やファッションのコマース分野で取り上げました。 今回はコマース領域ではなく、コロナ禍を経てさらに問題が顕在化した「ソーシャルコネクション(社会関係性)の減退」において、特定のターゲットにフォーカスしたソリューション提供により支持を得ているトレンドやサービス事例を見ていきたいと思います。 [ソーシャルコネクション](https://en.wikipedia.org/wiki/Social_connection)とは、人間が他者と関わり合うことで発生する感覚的な経験です。例えば、愛されている、世話をしてもらっている、評価してもらっている、と感じることがソーシャルコネクションがある状態となります。 出典: [U.S. Department of Health and Human Services](https://www.hhs.gov/about/news/2023/05/03/new-surgeon-general-advisory-raises-alarm-about-devastating-impact-epidemic-loneliness-isolation-united-states.html) 出典: [U.S. Department of Health and Human Services](https://www.hhs.gov/about/news/2023/05/03/new-surgeon-general-advisory-raises-alarm-about-devastating-impact-epidemic-loneliness-isolation-united-states.html) 現代ではソーシャルコネクションを形成する各指標(例えば、孤独感、家族や友人との接触時間、レジャーに費やせる時間など)が過去よりも落ちてきており、それによりメンタル的な問題を引き起こす可能性が高まっています。 ソーシャルコネクションの欠如は1日に15本のタバコを吸う、1日に6杯のアルコールを摂取する、肥満、空気汚染など、日常でリスクが高いと言われる行動や事象よりも危険なものだとされ、大きな社会問題につながるものと考えられます。 出典: U.S. Department of Health and Human Services 出典: U.S. Department of Health and Human Services ソーシャルコネクションを形成する各指標はコロナ禍で急激に悪化しているので、コロナ禍が過ぎれば収まるのではないかと思いがちですが、アメリカ合衆国保健福祉省のレポートを見ると2003年からコロナ禍がはじまる直前の2020年までに、徐々に「社会的孤独感」、「本質的な満足や楽しみのために他者と一緒に余暇を過ごす時間」、「家族や友人とのコミュニケーション時間」など各指標が軒並み悪化していることがわかります。 近年ではこれらの問題解決を目的に、ソーシャルコネクションを取り戻そうとするサービスの需要が伸びています。本稿ではそうしたサービス事例を取り上げ、メディアによる新たな価値提供の参考材料としたいと思います。 # 若い世代に特化したメンタリングサービス: Somethings 1つ目の事例は、若い世代へメンタリングサービスを提供している[Somethings](https://www.somethings.com/)です。 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が2011〜2021年までを対象にまとめた[レポート](https://www.cdc.gov/healthyyouth/data/yrbs/pdf/YRBS_Data-Summary-Trends_Report2023_508.pdf)によると、「40% 以上の高校生が、悲しみや絶望が故に、前年の間少なくとも 2 週間は、通常の活動に身を入れることができなかった」とされています。また、コロナ禍で強く人流が制限されたことで、さらに孤独感を強めることになりました。 特に10代はセラピストやカウンセラーといった専門家ではなく、友人や家族といった親しい人・近い人に相談する傾向が強く、[心の不安を抱える10代の3分の1は専門家の助けを求めにいっていない](https://evidence.nihr.ac.uk/alert/why-dont-teenagers-seek-help-anxiety-depression/#:~:text=One%20in%20twelve%20(8%25),or%20access%20any%20professional%20help.)というレポート(イギリス国立健康研究所, National Institute for Health and Care Research)もあります。つまり既存のメンタルケアプログラム/体制だけでは若年層の課題を解決できておらず、これがSomethingsのサービスとしての需要につながっています。 Somethingsは[19歳~28歳の訓練されたメンターからメンタリングを受ける](https://techcrunch.com/2023/05/16/youth-mental-health-startup-somethings-launches-with-a-3-2m-raise-led-by-general-catalyst/)ことができます。類似したバックグラウンドや経験を持っているメンターとマッチさせるため、より具体的なアドバイスを受けられるようになっています。メンターはバックグラウンドチェックを受け、必ず事前に2つのトレーニングモジュール([ヘルスケアの認定団体が提供するスペシャリスト用のトレーニングおよび、未成年司法審判および 非行予防局によってデザインされたトレーニング](https://www.somethings.com/))を受ける必要があります。また、Somethingsは[メンタルケアの専門家を集めアドバイザーチームを組成](https://www.somethings.com/articles/somethings-fundraise-announcement)しており、リサーチやプログラムの監修を行っていると考えられます。 アプローチ自体は単純ではありますが、「10代が専門家のところに行かない」という問題に対して、親しく感じられるメンターをインタフェースとして用意して、専門家による監修やトレーニングで質を担保するというアプローチは非常に合理的に思えます。こうした活動が進むことで10代のソーシャルコネクションの回復も促進されると考えられます。 Somethingsのビジネスモデルは[有料サブスク](https://www.somethings.com/)モデルで、メンタルに問題を抱える子の親が契約することが想定されています。月額149ドルでメンターマッチング、テキストチャット、月次で親への状況報告が含まれた「Unlimited」プラン、月額219ドルでさらにビデオチャットや3カ月間親からメンターへようすを確認できるチェックインやSomethingsからのサポートが得られる「Unlimited+」の2種類を提供しています。 Somethingsは2023年5月にUSの著名ベンチャーキャピタルであるGeneral Catalystをリード投資家とした[320万ドル(約4.5億円)のシリーズAラウンド](https://techcrunch.com/2023/05/16/youth-mental-health-startup-somethings-launches-with-a-3-2m-raise-led-by-general-catalyst/)で資金調達し、さらなる提供地域の拡大が見込まれます。 # カトリック信者に特化した瞑想アプリ: Hallow [Hallow](https://hallow.com/)(ハロウ)は、カトリック信者に特化した瞑想アプリです。マインドフルネスに関するアプリや、特定の宗教に特化したアプリ自体は以前より登場しており、現在ではそれほど珍しくありませんが、Hallowはキリスト教信者の中でもより敬虔なカトリック信者に特化した祈り・マインドフルネスのアプリです。 Hallowが登場した背景として、創業者のAlexさんがCalmのような瞑想のアプリを試している際に、キリスト教・特にカトリックの活動との相性の良さに気づいたことがあります。キリスト教では休日に教会を訪れ、集団で祈りをささげることで、共同体への連帯感が醸成されています。しかし、現代のデジタル化やコロナ禍での人流回避の流れもあり、アメリカではこうした行動をする人が徐々に減少しています。これが冒頭のソーシャルコネクションの欠如にもつながっていると考えられます。こうした背景もあり、祈りをデジタル化し、アプリを介して祈りをささげるとともに、コミュニティともつながれるHallowのような「お祈りアプリ」が登場してきました。 Hallowは[6,000以上のセッションで構成される祈りのためのオーディオガイドがメインコンテンツ](https://apps.apple.com/us/app/hallow-prayer-meditation/id1405323394)となっており、他にはディープなカトリックについての知識をゲーム感覚で深めるChallengeなどを提供しています。またコミュニティ機能では、共通のChallenge(例えば、「30日以内に全150の讃美詩を読む」など)が設定され、コミュニティメンバーと一緒に達成に向けて参加することができます。また、家族や友達もコミュニティに招待することができ、コンテンツに対する自身の考え方やチャレンジの達成状況などを共有することができます。
こうしたコミュニティ機能はほかのマインドフルネスアプリではそれほど力を入れられている印象はないですが、Hallowはカトリックに特化していることや、学校教育へのなじみのよさ、家族で共通の関心事となること、などもありコミュニティを非常に大切している印象です(小教区、学校、[リトリート](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%88_(%E5%AE%97%E6%95%99%E4%B8%8A)) 向けの[コンテンツパートナーシップ](https://hallow.com/communities/)も展開しています。 Hallowは[有料サブスクモデル](https://apps.apple.com/us/app/hallow-prayer-meditation/id1405323394)で提供され、月額9.99ドル、または年額69.99ドルで提供されます。初回の7日間は無料ですが、それを経過すると有料プランに自動移行します。 HallowはApp Store全体のランキングでトップ10に入り、2023年5月には累計ダウンロードが1000万回を超え、実施された祈りは2.25億回を超えるなど、近年目覚ましい成長を遂げています。Hallowは2023年4月にGoodwater Capitalをリード投資家として[5000万ドル(約70億円)のシリーズCラウンド](https://hallow.com/blog/10-million-installs/)で資金調達し、さらなる提供拡大が見込まれます。 # おわりに 今回は「ソーシャルコネクションを取り戻すニューメディア」についてとりあげました。 本連載第38回で述べたように、現在スタートアップ業界は以前に比べてはるかに資金調達が難しくなっています。たとえ資金調達できたとしても、株式による調達だけでなく借り入れもせざるを得なかったり、評価額が以前よりも落ちたりと、所謂「ダウンラウンド」と言われる状況も珍しくありません。 上記で紹介した2社については、こうした不況下においても、VCからアップラウンドの資金調達ができています。これは不況下だからこそ、職を失った人々や未来に希望を持ていない人々のソーシャルコネクションの減退やそれに付随するメンタルケア問題が顕在化し、そのペインの解消が事業のグロースにつながっている面もあると考えます。ピンチはチャンスといわれるように、困ったときこそ誰にどんな価値を届けられるか再考するタイミングと捉えることができます。 キメラでは引き続き新たなメディアの動きについても新たな動きについて注目し、特徴的な事例に触れながらみなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## 記者・編集者のためのやさしく取り組むコンテンツ分析 URL: https://ximera.com/posts/8de4ae237c 公開日: 2023-06-01 著者: Ximera
[キメラのコンテンツトップページへ](/posts) ## 開催趣旨 デジタルメディアが情報提供の主軸となって久しい昨今、メディア運営者によるコンテンツの作り方や届け方も変化が求められています。Webに膨大な情報があふれる中で読者に選ばれる・愛されるためには、自社のメディアがどのように読まれ、どのような価値を提供しているのかを意識することが不可欠です。 実際に、デジタルメディアの編集部で「自社のメディアはどんなふうに読まれているのか」「どうすればもっと読まれる・届くコンテンツを提供できるのか」と日々悩みながらコンテンツ制作に向き合っている方も少なくないでしょう。こうした永遠の悩みにヒントをもたらしてくれるのが、コンテンツの読まれ方を可視化するトラフィックデータです。 しかし、多忙なコンテンツ制作者にとって、複雑なデータを読み解いたり施策に活かしたりするのは、ハードルが高く感じるものです。ともすればページビューの上下に一喜一憂したり、現場への浸透がなかなか進まなかったりと、かえって悩みの種になってしまうこともあります。 本ウェビナーでは、コンテンツ分析に取り組むうえで身につけておきたい考え方から、実務にすぐ活用できる分析の切り口まで、コンテンツ制作に携わる方が分析を行うためのポイントをお伝えします。難解な専門用語や複雑なデータシートを使わず、コンテンツ制作に携わる方にとって身近に感じられる例を盛り込んだ入門編のオンラインセミナーです。 株式会社キメラは、国内70を超えるメディアのデジタル事業を支援しており、コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート:[https://chartbeat.jp/)](https://chartbeat.jp/%EF%BC%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B7%8F%E4%BB%A3%E7%90%86%E5%BA%97%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%81%AE%E5%88%86%E6%9E%90%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%84%E5%88%86%E6%9E%90%E4%BD%93%E5%88%B6%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%AB%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%E4%BB%8A%E5%9B%9E%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%93%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%BD%93%E7%A4%BE%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%A1%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%84%E5%9B%BD%E5%86%85%E5%A4%96%E3%81%AE%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%92%E3%82%82%E3%81%A8%E3%81%AB%E3%80%81%E6%99%82%E6%9C%9F%E3%82%84%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%92%E5%95%8F%E3%82%8F%E3%81%9A%E7%9F%A5%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%84%E3%80%81%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E9%81%8B%E5%96%B6%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AEKPI%E3%81%A8%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%88%86%E6%9E%90%E4%BD%93%E5%88%B6%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%AE%E3%83%92%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%92%E3%81%8A%E4%BC%9D%E3%81%88%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)」の日本総代理店としてデジタルメディアの分析支援や分析体制づくりに取り組んでいます。本イベントが、コンテンツ分析の第一歩を踏み出すためのお役に立てば幸いです。みなさまのご参加をお待ちしております。 ## 開催概要 日時   2023年7月26日(水) 14:00~15:00 テーマ  デジタルメディアのコンテンツ分析 参加費  無料 形式   オンライン(Zoom) 主催   株式会社キメラ ## 参加方法 以下の参加お申し込み登録フォームに、必要事項をご記入のうえお申し込みください。後日、ご登録のメールアドレス宛に参加URLをお送りいたします。 ## 参加申込(無料) [https://forms.gle/iCEXgfNT8gaiYEVa7](https://forms.gle/iCEXgfNT8gaiYEVa7) 申込期限:7月25日(火)17:00 ## こんな方におすすめのウェビナーです - デジタルメディア事業に初めて配属された記者・編集者の方 - メディアのデータ分析に取り組んでみたい、興味がある方 - よりよいコンテンツやサービスを提供するためのアイデアがほしい方 - 編集現場でデータを活用する方法を知りたい管理職やデジタル部門の方 - 新たなデータ分析ツールの導入を検討している、情報収集をしている方 --- ## コミュニティに支持されるコマースメディア URL: https://ximera.com/posts/d6fc6eebdc 公開日: 2023-05-22 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #48|Ikuo Morisugi|May 22th, 2023 ![](/images/posts/d6fc6eebdc/xmnt48_2.jpg) [Data illustrations by Storyset](https://storyset.com/illustration/team-spirit/bro#7E57C2FF&hide=&hide=complete) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第48回となる今回は「コミュニティに支持されるコマースメディア」を取り上げます。 若い世代を中心に、これまでの伝統的なメディアやECではなく、インフルエンサーやクリエイターの存在が購入の契機になる傾向が高まっていることは以前の記事で説明しました。ユーザが自分の興味・関心の高い分野について共感や知識を得ることを動機にインフルエンサーやクリエイターのメディアを参照していると考えられます。 また、メディアとコマースは融合しており、Grossier.のようにユーザフォーカスするメディア・プロダクトづくりが行われている事例をご紹介しました。 上記のように同じ思いや興味関心を持つ同志(クリエイターやファン)で組成されるコミュニティが形成され、ブランドやサービスがそこにどう影響を与えていくのかが非常に重要になってきています。メディア面においては、より高い評価がたくさんついている、視聴数があるということが価値になってきましたが、近年では「信頼できるネットワークの一員になれること」や、「カルト的な魅力に引き寄せられること」により、大きなコミュニティを形成するという事例が出てきてます。従来だとそうしたクリエイターやブランドはSNSのアルゴリズムで評価されず顕在化してこないため、メインストリームになることは滅多にありませんでしたが、近年そうしたニッチ需要がグローバルに広がり、ビジネススケール的にも無視できない動きとなってきました。 本稿では、そうしたニッチコミュニティによって支持されるサービスやブランドの事例を取り上げ、次世代のコミュニティとの関係性を考える参考材料としたいと思います。 # 信頼ネットワークの中で宿泊施設を融通しあう: Kindred 1つ目の事例は、ユーザ同士で宿泊施設を融通しあうネットワークを提供する[Kindred](https://livekindred.com/)です。Kindredは一見するとAirbnbのようC2Cで部屋の貸し借りをするシェアリングエコノミーのプラットフォームのようですが、Airbnbとは大きく異なる点があります。Kindredでは、ホストとゲストが売買関係を作るのではなく、物々交換のように双方でお互いの部屋を融通しあうのです。 Airbnbではホストが不特定多数のゲスト候補者に部屋と料金を公開して、見知らぬ人がそこに宿泊予約を入れることになります。見知らぬ宿泊客と宿泊施設の提供者が宿泊サービスの提供と引き換えに、金銭の授受を行う「バケーションレンタルビジネス」です。また多くの施設は投資物件として運用されており、宿泊料はときに需要と供給の調整を受け、大きく高騰することもあり、不当に高いと感じることも少なくありません。 そこでKindredが取ったアプローチが、メンバー限定でホストとゲストの寛大さで信頼されたコミュニティの中でネットワークを作り、物件を融通する仕組みです。Kindredはこれを「バケーションレンタル」ではなく、「ホームスワッピング」と呼んでいます。これは通常旅行をする際に発生するキャッシュフローを抑制するためのアプローチです。つまり、ユーザが自身の物件を宿泊施設として提供することで、宿泊料金を払わずに別の施設に滞在することができます。またユーザ同士もビジネス関係というよりは、お互いに違う場所に短期滞在したいという需要と供給をマッチさせるコミュニティになっていることも特徴です。 Kidnredで[ホームスワッピングで宿泊を利用するため](https://apply.livekindred.com/?_ga=2.227889245.1714276932.1682817913-262141522.1682289870)には、まず最初に自分が招待されるかウェイトリストで登録されるのを待つ必要があります。自身の物件を登録し、Kindred側から承認されるとはじめてメンバー限定のネットワークに参加することができるようになります。メンバー限定のネットワークに入った後は、自分が獲得したクレジット(宿泊施設を提供するごとに獲得される)を使うか、誰かをホストする代わりに別のユーザの宿泊施設へゲストとして宿泊することができます。このとき、[クリーニング代とKindredに支払う手数料(最大で一泊あたり25ドル)は支払う](https://apply.livekindred.com/pricing/?_ga=2.227889245.1714276932.1682817913-262141522.1682289870)必要がありますが、一番高価となる宿泊料は支払う必要がありません。 現状Kindredのコアユースケースとしては、頻繁に働く場所を意図的に変えている[リモートワーカー](https://www.forbes.com/sites/bridgetarsenault/2022/06/10/a-new-home-swapping-platform-allows-you-to-travel-the-world-like-cameron-diaz-and-kate-winslet/?sh=50c3d9b922cb)がお互いに居住住宅を交換しあうことで、旅行を楽しみながら働く需要を満たしています。 2022年にプライベートベータを開始してから、[2万人の会員申込みがあり、5,000泊以上の宿泊回数](https://techcrunch.com/2023/04/19/opendoor-alums-raise-15m-for-kindred-a-home-swapping-network/?guccounter=1)を生み出し、成果が出始めています。Kindredは2023年4月にNew Enterprise AssociateやAndreessen Horowitz、Bessemer Venture Partnersといった著名ベンチャーキャピタルから[1,500万ドル(約20億円)のシリーズAラウンド](https://techcrunch.com/2023/04/19/opendoor-alums-raise-15m-for-kindred-a-home-swapping-network/?guccounter=1)で資金調達し、さらなる提供地域の拡大が見込まれます。 # カルト的な若者向けコミュニティで人気爆発: Corteiz [Corteiz](https://www.crtz.xyz/)(コルテイズ)は、ロンドン発のカルト的な人気を誇るストリートブランドです。Corteizは元々創業者のClintさんのプライベートアカウント(鍵付き)の[Instagram](https://www.instagram.com/crtz.rtw/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D)のみで、はじまりました。フォローリクエストをして承認されてはじめてオンラインでCorteizの服がどんなものが発売されるのか、どのように購入するのかのヒントを得られるようになります。ドロップと呼ばれるマーケティング手法の一つを使っており、[販売される商品の情報と販売場所はランダムなタイミング](https://www.complex.com/style/corteiz-streetwear-everything-to-know)で急にやってきます。オンラインストアで販売されるにしても当日にパスワードがソーシャルメディアやメールで共有され、当日に対象のURLにアクセスして初めて販売場所の位置情報(GPS)がわかったり、オンラインサイトへのアクセスができるようになります(例えば、Corteizの公式サイトは現在でも[パスワードロックがかかっています](https://www.crtz.xyz/password))。 Louis Vuttonのメンズウェアのクリエイティブディレクターだった[故Virgil Abloh](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%BC)がCorteizのウェアを着用していたこともあり、Corteiz自体は一切マーケティングやPR活動を行ってないにも関わらず口コミベースで人気が高まっていきました。Corteizのアイテムはドロップ後、数分以内に売り切れるなど熱狂を生み出しました。また、しばしばユニークなキャンペーンを行うことでさらにファンコミュニティへの支持を得ることに成功しました。 例えば、Corteizは2022年1月に「 [Da Great Bolo Exchange](https://www.newwavemagazine.com/single-post/why-corteiz-s-bolo-exchange-was-modern-day-performance-art-featured-article)」というプロジェクトを発表しました。これは、状態の良いハイブランドのハイエンドなジャケットを着て、指定された場所まできた人の内、最初の50人だけが、当時未発表だったCorteizの中綿ジャケット(Bolo Jacket)と着用してきたジャケットを交換できるというものです。交換されたジャケットはすべて困窮している人向けに食事を提供する慈善団体に寄付され、慈善団体を訪れる人に対して上記で交換されたジャケットを提供しました。このプロジェクトそのものは、ノースフェイスやモンクレールなど所謂ハイエンドなジャケットが持ち込まれCoteizのジャケットに交換され、ファンを喜ばせながら慈善活動を行う姿勢がファンに大きく賞賛されました。慈善団体に高価なジャケットを提供する必要があるかという点については、物議がありましたが、ホームレスであっても良い体験を得られるべきといったポジティブな意見も得られ、一定の支持を集めました。なにより物々交換で自分が持っている高価なジャケットを持ち出してまで手に入れたいとファンに思わせたこと自体がCorteizがいかにブランドとして確立していたかを証明することになりました。
この取り組みは原価だけ考えると、ファンは明らかに自身が所有するものよりも価格が下のものに交換をしています。例えば、モンクレールのダウンジャケットは、中身にダウンとフェザーを利用していますが、Corteizの中綿ジャケットは化学繊維であり、明らかにコストが安いです。Coteizはこのプロジェクトを通じて消費者の持つ価値感を転換しており、それを支持するコミュニティを形成することに成功しています。 2017年に立ち上げたCorteizはわずか[18ヶ月で1万人のフォロワーを獲得](https://www.complex.com/style/corteiz-streetwear-everything-to-know)し、2023年4月時点では[71万以上のフォロワー](https://instagram.com/crtz.rtw?igshid=YmMyMTA2M2Y=)がおり、ますますその人気が高まっています。カルト的なコミュニティが維持されるのか、マスプロ的なアプローチに変わってしまうのか、今後の動きは読めませんが、引き続きファンが熱狂するそのコミュニティ作りの手法には注目すべきだと考えます。 # おわりに 今回は「コミュニティに支持されるコマースメディア」についてとりあげました。 KindredとCorteizでそれぞれまったくアプローチは違いますが、それぞれ似通った価値観の人々がどのように集い、何を求めているのかを把握したうえ、提供価値が非常によく考えられています。コミュニティを形成し、どのタイミングで何の情報や製品を投入していくのか、ビジネス的な成功のみではなくコミュニティの発展も含めて考えていくことが、現代では成功の一つの要因になっています。今回ご紹介した二社は先行して体現しており、その点において参考になるかと思います。 キメラでは引き続きコミュニティベースのコマースやメディアについても新たな動きについて注目し、特徴的な事例に触れながらみなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## クラウドサービスの統合管理によるコスト最適化 URL: https://ximera.com/posts/beee802894 公開日: 2023-04-03 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #47|Ikuo Morisugi|April 3rd, 2023 ![](/images/posts/beee802894/xmnt47.jpg) [Data illustrations by Storyset](https://storyset.com/data) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第47回となる今回は「クラウドサービスの統合管理によるコスト最適化」を取り上げます。 Google、Amazon、Meta、Twitter、Netflixなどで繰り返し報道されているレイオフや、[SVB(シリコンバレーバンク)](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-17/RRO2X4T0G1KW01)の経営破綻、[シルバーゲート](https://forbesjapan.com/articles/detail/61514)の事業終了に現れているように米国の経済状況は悪化しています。現在の局面ではあらゆる企業でコストカットが求められ、そのなかでも人件費のほか、ITコスト、特にクラウドサービス関連の支出コントロールは重要になっています。 ここ10-20年ほどでAWS、Google、Microsoft、IBMなどが提供するパブリッククラウド(IaaSやPasS)はもちろん、B2B/B2CにかかわらずITスタートアップの多くがSaaSプロダクトを提供しており、世の中にはクラウドサービスが溢れています。クラウドサービス全体(IaaS、PaaS、SaaSの合算)の市場規模についてもグローバルで年々増加傾向にあり、2024年には4090億ドル(約50兆円)に到達すると言われています。 クラウドサービスの市場規模は年々大きくなっている / [t4](https://www.t4.ai/industry/cloud-computing-market-share) クラウドサービスの市場規模は年々大きくなっている / [t4](https://www.t4.ai/industry/cloud-computing-market-share) しかし、利用者の立場になればこれらのクラウドサービスを適切に管理することは難しく、経費の浪費やセキュリティ上のリスクを引き起こすことがあります。そもそも利用するサービスの数が多くなりすぎたり、各部門が別々の目的で類似したツールを使うことで無駄なコストが発生したりします。部門によっては自社のセキュリティ基準のあったものが利用されないなど、全体管理は困難になっています。 SaaS管理ツールを提供するZyloの調査によると、[各企業のSaaS支出の平均額6500万ドル(約91億円)](https://zylo.com/why-zylo/)に上り、[40%のSaaSライセンスは30日間で未利用](https://zylo.com/)となっていると言われています。また従業員が1000人を超える[会社においては、平均して150万ドル(約2.1億円)の利用していないSaaSのライセンスが存在](https://zylo.com/)しています。[SaaS支出の15%程度](https://zylo.com/)は本来不要なものにもかかわらず支払いがされていると見積もられており、多大なコスト削減の余地があると言えます。 こうした状況の中でクラウドサービスのコストを最適化するための数々のソリューションが登場しています。 # あらゆるSaaSを一元管理する: Zylo ソフトウェアレビューサイトのG2で[SaaS管理ツールの2023のマーケットリーダー](https://zylo.com/how-to-choose-a-saas-management-platform-for-your-business/)に選ばれているのがSaaS管理と最適化プラットフォームである[Zylo](https://zylo.com/)です。Zyloを利用することで、組織内のすべてのSaaSアプリケーションの利用状況や価値をモニタリングし、同時にかかっているコストやリスクを見える化できます。 統合管理によって利用継続や契約についても全体最適化を実現できます。ZyloはSaaS利用部門、購買部門(物品や資材などの調達を社内全体でまとめて交渉してコストカットを行う部門のこと)、ITガバナンス担当部門、ファイナンス部門などが共通して使うことが想定されています。 Zyloを使うことで企業は下記のようなメリットを享受することができます。 - SaaSの支出や利用状況に対する可視化と管理を得ることができる - SaaSのコストやリスクを削減し、ROIを向上させることができる - SaaSの更新や契約を効率的に追跡し、交渉できる - SaaSの利用者や所有者とコラボレーションし、ガバナンスを確立できる - SaaSの価値や影響を組織内で可視化し、評価できる Zyloで全社横断で利用するSaaSを見える化できる / [Zylo](https://zylo.com/why-zylo/) Zyloで全社横断で利用するSaaSを見える化できる / [Zylo](https://zylo.com/why-zylo/) Zyloは、ニーズに合わせてカスタマイズされた[料金プラン](https://zylo.com/pricing/)を提供しており、SaaS管理ソフトウェアとカスタマーサービス(事例提供、ベストプラクティス、サポートなど)の両方を提供しています。具体的な料金は公開されていませんが、おそらくSaaS利用数が100を超えるような企業をターゲットとし、年間で削減できる見込み額でペイできる価格で見積もりを出していると考えられます。 Zyloは2022年に無駄なSaaS支出として[約32億ドル(約4700億円)を顧客に認識させ、削減を支援](https://zylo.com/news/zylo-secures-additional-5m-in-funding-to-fuel-continued-growth-amid-surging-demand-for-smart-spending-and-economic-uncertainty/)しました。またZybraryと呼ばれるパートナー企業との技術・セールスアライアンスで、2000以上の新しいSaaS管理対象のサービス適用先を追加したことで、Zyloが管理対象とするSaaS支出を10億ドル(約1400億円)以上増やし、ZyloがトータルでモニタするSaaS支出が300億ドル(4.2兆円)に達しました。 Zyloは2022年11月に3,150万ドル(約44億円)のシリーズCラウンドで資金調達したばかりですが、コスト削減が加速するマーケットに対応するために、さらに[2023年2月に500万ドル(約7億円)の追加調達](https://zylo.com/news/zylo-secures-additional-5m-in-funding-to-fuel-continued-growth-amid-surging-demand-for-smart-spending-and-economic-uncertainty/)をおこない、さらなる利用拡大が見込まれます。 # AWSコストの自動最適化を実現: Vantage Vantageは、エンジニアやファイナンス担当者に向けてIaaS、PaaSに代表されるパブリッククラウドのコスト管理ツールを提供しています。コストの可視化や分析だけでなく、サーバスペック選択や売買の自動化によるコスト最適化を行う[Auto Pilot](https://www.vantage.sh/features/autopilot)の機能を備えており、実行部分まで一貫してクラウドコストの削減や効率化を行うことができます。 具体的には、Vantageはクラウドリソース(例えば、サーバ、DB、ストレージなどを指します)の確保状況を表示し、各リソースの名前やタグ、コスト、使用状況などの詳細をもとにしたコストの分析やレポートにより、コストの傾向や内訳、比較などを視覚的に理解することができます。また、不要なリソースや過剰な料金プランなどの節約ポイントを発見し、対処方法を教えてくれます。さらにクラウドコストの予算やアラートを設定し、コストが予想外に増加したり減少したりした場合に通知することもできます。 上記はAWSに標準で用意されている分析と推奨事項に近い機能となりますが、Vantageの最大の特徴としては、クラウドコストの自動化や最適化を行うためのAPIやCLI(コマンドラインインタフェース)などのツールを提供していることです。特にEC2のサーバインスタンスについては、リザーブドインスタンスと呼ばれる一定期間利用をコミットすることで料金を下げられるプランがありますが、各サーバ毎にどこまでリザーブドインスタンスにしてどこまでオンデマンドで調達するかは、各企業が事前によく検討した上で決めておく必要があります。しかし、Vantageを使えばどのプランにすべきか労せず決めることができます。またユーザ需要が減ってリザーブドインスタンスを維持する必要がなくなった場合はAWSが提供するマーケットプレイスでリザーブドインスタンスを自動的に売ることで最適化をはかることができ、放置しておいても無駄なコストが生まれにくい動きをしてくれます。 VantageのAuto Pilotを使うことで削減できた5%の費用で大きくコストを下げる / [Vantage](https://www.vantage.sh/features/autopilot) VantageのAuto Pilotを使うことで削減できた5%の費用で大きくコストを下げる / [Vantage](https://www.vantage.sh/features/autopilot) Vantageでは企業が支払う月間[クラウドコストに応じて異なる料金プラン](https://www.vantage.sh/pricing)を提供しています。月間クラウドコストが7,500ドル(約100万円)以下の場合は無料で利用できます。クラウドコストが7,500ドル(約100万円)から5万ドル(約700万円)までの場合は30ドル/月(約5,200円)で利用でき、このプランからAWSコストを自動最適化するAuto Pilotを利用できます。 Vantageは2020年に設立された比較的新しい企業であるため、事例はまだ多くはありませんが、[Barstool Sportsに対して AWSと他のサービスのコストを関連付けて適切にリソースを設定し、50%以上のAWSコストを節約](https://www.vantage.sh/customers/barstool-case-study)しました。その他にも、[Digital OceanやLoomなど](https://www.vantage.sh/customers)に対してそのソリューションによりAWSコストの削減を実現しています。 Vantageは、2022年2月にAndreessen Horowitzをリード投資家とした[2,100万ドル(約29億円)のシリーズAの資金調達](https://www.vantage.sh/blog/vantage-raises-21m-series-a)を行いました。これにより製品開発やチーム拡大を加速し、AWS以外のクラウドプロバイダーやマルチクラウド環境への対応も進められており、さらなる拡大が見込まれています。 # おわりに 今回は「クラウドサービスの統合管理によるコスト最適化」についてとりあげました。 クラウドサービスは、Slackのような全社で利用するコミュニケーションツールから、ビジネス部門が使うマーケティングツール、開発部門が利用するパブリッククラウド、管理部門が使うHRツールやガバナンス関連ツールまで、ありとあらゆる部門や用途で使われていることは誰もが実感できるかと思います。それ故に、個別最適が起こりがちで、各部門が導入を進めた結果、無駄な支出、基準にあわないセキュリティ、ガバナンスの不在など全社的に望ましくない事態が容易に起こりえます。 このような状況の中で、クラウドサービスの統合管理は全社課題を解決するツールとなりえます。自社のビジネス拡大にとって最適なクラウドサービスを最適な利用料金で使うことは、現代では企業の経営課題そのものにあたります。SaaS管理を単なるコスト削減以上の観点をもって捉えることが非常に重要です。 キメラでは引き続き新たなビジネス創出のみならずコスト最適化についても新たな動きについて注目し、特徴的な事例に触れながらみなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## メディアのサブスクリプション事業と向き合う〜「絶望」を招く落とし穴と打開のためのカギ〜 URL: https://ximera.com/posts/598211c2df 公開日: 2023-04-01 著者: Ximera [https://www.youtube.com/live/XucuEL5_wDo?feature=share](https://www.youtube.com/live/XucuEL5_wDo?feature=share) [キメラ主催イベント一覧へ](/category/event) # 開催趣旨 デジタルメディアのサブスクリプション(有料購読)は、コロナ禍を経て期待と注目を大いに集めている収益化の手段のひとつです。しかしながら、日本国内でのデジタルサブスクリプション事業の成功事例はまだまだ少なく、残念ながらサービス終了に至ったニュースを見聞きすることも増えてきました。 デジタルの領域で新たな事業に取り組むことは、パブリッシャーにとっては大きな挑戦です。これまでの紙媒体のメディアとは異なる組織戦略や考え方が求められるので、事業の構想段階でつまずいてしまうことや、サービス開始後の停滞感に悩まされるケースも多々あるかと思います。特にサブスクリプションは読者からの購読料を積み上げるビジネスモデルゆえに、投資回収までに時間がかかることも事業戦略づくりに難航するポイントのひとつです。 今回のウェビナーでは、日本のパブリッシャーが特に陥りがちな「落とし穴」とともに、デジタルサブスクリプション事業に向き合ううえで知っておきたい組織・事業運営に必要な考え方をお伝えします。 キメラは日本国内の新聞・出版社のデジタルサブスクリプション事業の立ち上げから成長まで、組織・事業の両面から支援してまいりました。本イベントが、サブスクリプション事業をよりよく理解するためのお役に立てば幸いです。みなさまのご参加をお待ちしております。 # 開催概要 日時   2023年5月29日(月) 17:00~18:00 テーマ  パブリッシャーのサブスクリプション事業の落とし穴・打開策の解説 参加費  無料 形式   オンライン(Zoom) 主催   株式会社キメラ # 参加方法 参加お申し込み登録フォームに、必要事項をご記入のうえお申し込みください。 後日、ご登録のメールアドレス宛に参加URLをお送りいたします。 参加は無料です。 # こんな方におすすめのウェビナーです - サブスクリプション事業に携わっているが、事業の停滞感に悩んでいる - サブスクリプション事業を企画しているが、実現に向けて足踏みしている状態 - サブスクリプション事業でおさえておくべきポイントを知りたい、おさらいしたい - 社内でデジタル事業やサブスクリプション事業の認識合わせをしたい - デジタル事業部に配属されたばかりなので、基本的な知識を手に入れたい - サブスクリプション事業に興味がある --- ## 三方良しの購入体験を実現するクリエイターコマース URL: https://ximera.com/posts/73a34fb96b 公開日: 2023-02-20 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #46|Ikuo Morisugi|February 20th, 2023 ![](/images/posts/73a34fb96b/xmnt46.jpg) [People illustrations](https://storyset.com/people) by Storyset # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第46回となる今回は「三方良しの購入体験を実現するクリエイターコマース」を取り上げます。 2021年にコロナ禍でオンライン購入が一気に増えたこともあり急騰し、やや戻してきましたが、ブランドにとってのユーザ獲得コスト(CAC: Customer Acquisition Cost)は依然として高いままです。米国でのInstagramのアプリ1インストールあたりの広告単価(CPI: Cost Per Install)を見ると、2020年2月は1.13ドル(約150円)でしたが、2023年2月は4.62ドル(約615円)。世界的に景気が悪いため広告出稿が控えられ、ピークに比べて下がっているものの以前と比べて高い状況となっています。 Instagramのアプリインストール単価は高くなっている 出典: [revealbot](https://revealbot.com/instagram-advertising-costs/cpi-cost-per-install-mobile-app) Instagramのアプリインストール単価は高くなっている 出典: [revealbot](https://revealbot.com/instagram-advertising-costs/cpi-cost-per-install-mobile-app) SEO(検索エンジン最適化)、SEM(検索エンジンマーケティング)など従来からある顧客獲得の手法はあらゆる企業で行われているため、非常に競争が激しいです。たとえばGoogleの検索結果で自社を上位に表示させるために広告を使う場合、同じキーワードに対してオークション形式で入札されるため、相応のコストがかかります。不動産と同じで、人がたくさん集まる場所やキーワードは高額になりやすく、結果としてこれがCACを上げることになってしまいます。またオンライン広告は実質的にAlphabet、Meta、Amazon傘下の企業で寡占されているため、SEOの効率が良くなる、もしくはSEMの費用が下がるメディアを求めても他に存在しません。 こうした状況に対してブランドはCACを下げるため、広告ではなくインフルエンサー/クリエイター(本稿では「クリエイター」という呼称に統一します)へ依頼して商品を取り上げてもらう、いわゆるインフルエンサーマーケティングが数年前から盛んになっています。 インフルエンサーマーケティングの市場は伸び続けている(2022年で164億ドル(約2.3兆円)まで成長)出典:  [The State of Influencer Marketing 2022](https://influencermarketinghub.com/ebooks/Influencer_Marketing_Benchmark_Report_2022.pdf) インフルエンサーマーケティングの市場は伸び続けている(2022年で164億ドル(約2.3兆円)まで成長)出典:  [The State of Influencer Marketing 2022](https://influencermarketinghub.com/ebooks/Influencer_Marketing_Benchmark_Report_2022.pdf) 人々が興味を持っているさまざまな領域について、専門的な知識を持ち商品をわかりやすく説明してくれるクリエイターがきっかけでユーザが商品購入に至るフローは、インフルエンサーマーケティング市場が年々伸びていることからもわかる通り、よりブランドにとっての重要度が増しています。 一方でインフルエンサーマーケティングにも課題があります。インフルエンサー/クリエイターは、いわゆる案件と呼ばれる商品紹介をソーシャルメディアで行ったり、アフィリエイトリンクへ誘導することで収益を得ていますが、多くの場合以下の点により、ブランドおよび購入してくれたエンドユーザとの継続的な関係を築けずワンショットになりがちです。 1. クリエイターのフォロワー数や期待視聴数に応じて事前に定められた固定金額の前払いモデルであるため、クリエイター側からすると1度商品を紹介してしまえば、ブランドとの関係性は終わってしまう。多くのクリエイターは本当に購入にいたったのかなどのトラッキングもしないうえ、継続的にそのブランドや商品を紹介するモチベーションもない。 2. 成果報酬型のアフィリエイトや割引コード提供の場合、不特定多数に配られることが想定されているため、Amazonやブランドのストアに遷移し、どのようなユーザコミュニケーションにより購入に至ったのかブランド側はわからない。またクリエイターもリンク遷移先のエンゲージメントまでトラッキングするモチベーションもない。 このように現状のインフルエンサーマーケティングでは、ブランドが期待していることとクリエイターが期待していることが一致していないことで、エンドユーザ、クリエイター、ブランドいずれも最適な体験を提供できているとは言えません。 そこで近年エンドユーザとクリエイターとブランドの目的を一致させる三方良しの購入体験を提供し、課題を解決しようとするスタートアップが登場しています。本記事では特にEC領域でその課題に取り組むスタートアップを紹介したいと思います。 # レシピ&食材特化のソーシャルコマース: Jupiter 上記の課題解決をはかるスタートアップの1つ目がJupiterです。Jupiterは、クッキングクリエイターが提供するレシピと、レシピに使われる食品を販売するスーパーマーケットをマッチングすることで、エンドユーザが気に入ったレシピに必要な食材を近隣で購入できるソリューションを提供しています。 JupiterによりフードクリエイターがInstagramに掲載したレシピと必要食材を購入まで一気通貫の体験を提供できる 出典: [Jupiter](https://www.jupiter.co/creators) JupiterによりフードクリエイターがInstagramに掲載したレシピと必要食材を購入まで一気通貫の体験を提供できる 出典: [Jupiter](https://www.jupiter.co/creators) クリエイターは自分のレシピの公開とそれに必要な食材をキュレーションできるストアを自身のブランドで作ることができます。構築したストアの商品はInstagramショッピングと連動し、Instagram上でクリエイターがレシピを公開するとそれに紐付けられたクリエイターストアの商品への購入リンクがフォロワーに表示されます。 フォロワーは購入リンクから遷移した先で郵便番号を入れると近隣の食品小売店(SafewayやTargetなど全国チェーンのスーパーマーケットがほとんど)で手に入れることが可能な食材をオンライン購入し、店頭で受け取ったり、自宅へ配送してもらうことができます。 食品小売店はさまざまな食品を扱っており、1つ1つの商品をPR案件としてクリエイターとマッチングさせるのは非常に骨が折れるうえ、多くの場合は費用対効果がでないので実施できないと想定されます。しかし、Jupiterを使えば労せずさまざまなクリエイターに販売している食品を使ってもらうことができます。また、クリエイター経由でリアクションやコンバージョンにいたったフォロワーの情報について[ダッシュボード](https://www.jupiter.co/brands)が提供されており、どういったクリエイターやオーディエンスにどのような食品がヒットしたのか/しなかったのか分析することができます。 クリエイターはストアが自身の冠がついたものとなることや、商品が販売される毎にレベニューシェアを得ることができることから、継続的に再現可能なレシピとその材料を手に入れることができる場を提供するモチベーションが生まれます。これがフォロワーやブランドとワンタイムの関係になりがちな既存のインフルエンサーマーケティングと差別化される点になります。 Jupiterは[2022年3月にKhosla Ventures、NFX(実績のあるシリコンバレーのベンチャーキャピタル)をリード投資家とするSeedラウンドにて、530万ドル(約7.4億円)の資金調達](https://www.crunchbase.com/funding_round/talar-seed--afe8ff83)を実施しており、今後もさらなる拡大が期待されます。 # クリエイターホワイトレーベルコマース: Flagship 上述のJupiterはレシピと食材というマーケットで食品小売店とクリエイターをマッチングさせるモデルでしたが、メーカー側とクリエイターをマッチングさせているのが[Flagship](https://landing.flagship.shop/)になります。 Flagshipによってクリエイターとメーカーは以下のことが実現できます。 1. クリエイターは自身が本気で推せるブランドとその製品を選定し、ホワイトレーベルで自身のキュレーションコマースストアをオープンできる。 2. クリエイター側で在庫を持つ必要はない一方で、ストアは購入・決済完了まで完結するため一貫したブランドを保ち、売上毎に発生するレベニューシェアを最適化するためにそのセレクションを改善するモチベーションを持てる。 3. メーカー側はShopifyを使っていれば現在管理している商品や注文のデータや運用フローを変更せずそのまま使うことができる。 4. またメーカー側はどのクリエイターに売ってもらうかコントロールすることができ、事前に支払う費用も一切必要とせず、コストは売上毎に発生するレベニューシェアとなるため、CACの最適化に向けた動きができる。 Flagshipを使って作られた女優のBeverley Mitchelさんがセレクトした商品が購入できるストア 出典:[Beverley Mitchell](https://flagship.shop/beverley) Flagshipを使って作られた女優のBeverley Mitchelさんがセレクトした商品が購入できるストア 出典:[Beverley Mitchell](https://flagship.shop/beverley) 仕組みとしてはJupiterと似ていますが、クリエイターとマッチングさせるパートナーとなるブランドが「大手食料小売店」ではなく「中小も含んだメーカー」になり、クリエイターがエンドユーザがアピールするものが「レシピに必要な材料」ではなく「個別商品への愛着やこだわり」を表現している点が異なります。またブランド側も炎上やブランド毀損を避けるために、紹介してもらうクリエイターを絞れる点も工夫が感じられます。 Flagshipは2023年に、[Index VenturesおよびSequoia Capital(いずれもシリコンバレーのトップティアVC)をリード投資家とするSeedラウンドの資金調達](https://twitter.com/rex_woodbury/status/1620826960271380480)を行いました(資金調達額は不明)。不況のなかで米国の多くのVCは投資基準が非常に厳しくなっています。特に成長できるかギャンブル的な側面があるSeedラウンドではなおさらです。そんななかでトップティアのVCから調達したFlagshipは非常に期待されていると言えます。 # おわりに 今回は「三方良しの購入体験を実現するクリエイターコマース」について取り上げました。 Jupiterにしても、Flagshipにしても、本質的にはアフィリエイト・コマースもしくはドロップシッピングモデルの拡張と改善を行っています(もしくはよりよい言葉を使うのであればアフィリエイト・コマースの再発明です)。いずれの例も、エンドユーザの購入のきっかけがクリエイターからの紹介になっていること、ブランドがCACを下げ効率的にスケールさせたい需要をとらえて、インセンティブを揃えることで三方良しを実現しています。 日常的にYoutubeやInstagramであまりクリエイターの熱が入っていない案件動画やキャンペーン紹介などされて辟易してしまっている方もたくさんいらっしゃると思いますが(筆者もその一人です)、今回のような取り組みが進むことで、たとえアフィリエイト的だとしても体験がよくなる可能性を実感できたのではないでしょうか。 キメラでは引きつづきメディアと他業種の垣根がなくなりつつある新たな動きについて注目し、特徴的な事例に触れながらみなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## 進化するAIとクリエイターの未来 URL: https://ximera.com/posts/e1844565ce 公開日: 2023-01-16 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #45|Ikuo Morisugi|January 16th, 2023 ![](/images/posts/e1844565ce/xmnt45.jpg) [People illustrations](https://storyset.com/people) by Storyset # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第45回となる今回は「進化するAIとクリエイターの未来」をとりあげたいと思います。 近年ではAIが自動生成する文章・画像などが実用レベルに高度化しています。過去にXimera Media Next TrendsでもOpenAIが提供する自然言語を理解し文章や画像を作ることできるAIモデルについて紹介しました。 [#1 コンテンツ制作の次世代トレンド:AIのサポートによるコンテンツの未来](/posts/12b6089a09) 本稿では生成系AIツールの現状、より実用レベルで使える生成系AIスタートアップの事例、生成系AIが今後クリエイターやビジネスマンに与える影響について考えていきたいと思います。 # LLM(巨大言語モデル)ベースの生成系AIツールの現状 イーロン・マスクや有名なベンチャーキャピタルのプレジデントだったサム・アルトマンにより設立された[OpenAI](https://openai.com/)が、2020年にLLMを使った高性能な言語モデルである[GPT-3](https://en.wikipedia.org/wiki/GPT-3)を発表したことをきっかけに、高度な文章生成ができる生成系AIに大きな注目が集まりました。2021年にはGPT-3ベースのテキストから画像を生成できる[DALL·E](https://openai.com/dall-e-2/)(2022年4月にVer2も発表)や、類似の画像生成系ソリューションとして[Midjourney](https://midjourney.com/home/?callbackUrl=%2Fapp%2F)、オープンソースで使える[Stable Diffusion](https://stablediffusionweb.com/)が登場し、画像生成系AIは広く認知を得ています。そして、2022年11月には自然な対話が可能な[ChatGPT](https://openai.com/blog/chatgpt/)が登場し、その品質の高さや出来ることの広さからクリエイターやTechビジネス界隈でも大きな話題となり、[ロンチ後わずか6日で登録者が100万人を超え](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/06/news110.html)たことは記憶に新しいです。 > *LLMというのは、Large Language Modelの略です。LLMは、文章を扱うことができる大規模な言語モデルのことを指します。LLMは、文章を入力として受け取り、その文章を解釈し、必要に応じて回答や予測を出力することができます。LLMは、膨大な文章データを使って学習させることで、自然言語処理タスクや自然言語生成タスクを実現することができます。近年、LLMは自然言語処理の分野で注目されており、様々なアプリケーションで使われています。例えば、AIアシスタントや、自然言語に基づいた文章生成システムなどです。* > 上記のLLMの説明文を読んでいかがだったでしょうか。実は上記はChatGPTに「LLMについて教えて」と聞いて答えてもらった結果になります。かなり自然な文章で、かつ内容もある程度正確に記述されています。 このような生成系AIはテーマや初期コンセプトを的確に伝えることで、ある程度精度高く文章・画像などを作ることができるため、企画や調査や制作などでさまざまなことが可能になります。例えばChatGPTだけでも次のようなことができます。 1. Google検索の代わり 例)Googleで検索しているような知識を自然な文章で聞いて答えてもらう 2. 勉強のパートナー 例)[教科書を学習させてChatGPTに問題の回答](https://gigazine.net/news/20221205-chatgpt-passes-ap-computer-science-a/)を教えてもらう 3. カウンセラー 例)メンタルや体調を相談して具体的な解決方法のアドバイスをもらう、ビジネスの企画の作り方や方法論を教えてもらう 4. コーディング 例)特定の問題を解決するための[システム要件やコードを学習させながら提案してもらう](https://qiita.com/autotaker1984/items/c6769f9ea7f2df1fdeb5) 5. コピーライティング 例)自社のLP、SNS投稿、マーケティングメールなどを学習させて、各チャネルで必要なマーケティング用のコピーライティングを生成してもらう 6. 作詞、ストーリープロット、脚本たたき 例)「Snoop Dogスタイルの結婚ソングの歌詞を作って」といったように特定のスタイルとテーマに沿ったドラフトの詞、プロットを提案してもらう 気をつけるべき点として、ChatGPT自体は2021年末までのデータをベースにしているので最新の情報は知りません。例えば「ワールドカップ優勝国は?」と尋ねても答えることができません。また得意な分野と不得意な分野があり、時に不正確な情報や誤解を与えるような表現をすることがあるので、常にAIが答えることを鵜呑みにしてはいけません。また、ChatGPTを使うことを禁止する教育機関や企業やサービスもあり、どこでもどんな場面でも使ってよいわけではありません。 ChatGPTとMidjourneyによって生成された絵本「Alice and Sparkle」現在はAmazonからは削除 Image: [Twitter](https://twitter.com/ammaar/status/1601284455410585600/photo/1) ChatGPTとMidjourneyによって生成された絵本「Alice and Sparkle」現在はAmazonからは削除 Image: [Twitter](https://twitter.com/ammaar/status/1601284455410585600/photo/1) 一方でこのような生成系AIツールは、サービスやコンテンツの企画/制作に大きく影響を与えるものだと考えられます。実際の制作や実装は苦手でも、企画力のある人がうまく使いこなせれば、それなりのものを作れてしまうからです。 例えば、アメリカのIT企業で働くAmmaar Reshiさんは、[ChatGPTと画像生成AIのMidjourneyを使って14ページの絵本を制作](https://www.buzzfeednews.com/article/chrisstokelwalker/tech-worker-ai-childrens-book-angers-illustrators)し、Amazonで電子書籍として販売まですることができました(現在はAudibleのみ販売)。実際に70冊以上売れ、40-45冊がReshiさんの友人にプレゼントされました。 ここにも、AIが生成した絵の不完全性、著作権のあり方、これまでのアーティストやクリエイターの成果を盗用しているなどの批判などさまざまな問題があるため、現状ではこの事例が一概に素晴らしいとは言い切れません。しかし、それらのハードルを乗り越えた時に非常に重要なツールとなる可能性を見逃してはいけません。初期のYoutubeも著作権違反のものが大量のアップロードされており、積極的に対策していませんでしたが、音楽権利団体と包括ライセンスを結ぶ、違法動画は自動識別で削除するなど数多くの対策を行ったことで、大企業から個人まで気軽に使えるものになりました。生成系AIツールについても類似の対策が実施され、社会的な理解を得ることで真の普及に向かうものと思われます。 # 生成系AIの実用サービス例 ## Poly ChatGPTについてはすでにさまざまなメディアで紹介されているため、さらに深掘りをしたい場合はそちらを参照ください。本稿では生成系AIでさらに可能になることを米国スタートアップの事例を取り上げご紹介したいと思います。 現在話題になっている生成系AIは主に文章や2次元の画像を生成するものですが、さらに難易度が高いと思われる3Dオブジェクトの自動生成に取り組んでいるのが[Poly](https://withpoly.com/)です。Polyは、3DCGベースのゲームや映像のデザイナーがテキスト文をもとに3Dオブジェクトを生成することができます。 例えば3Dゲーム内で草が生えているフィールドを制作する必要があった場合、通常であれば素材サイトからテクスチャーの素材となる画像を購入し、3Dモデルに貼り付けして3D編集ソフトで調整され、ようやくゲーム制作ツールに導入して利用するプロセスになります。が、Polyによってこのプロセスを一気に短縮することができます。 Cobblestones in the grassという文章から生成された3Dオブジェクトimage: [Poly](https://withpoly.com/) Cobblestones in the grassという文章から生成された3Dオブジェクトimage: [Poly](https://withpoly.com/) 映像制作やゲームでよく利用されるPBR(Physical Based Rendering: 光や形状などに物理法則を適用してリアルに表現するレンダリング手法)にも対応しており、作成した3Dオブジェクトを基にリアルタイムにゲーム開発ツールで利用するためのマップを生成することもできます。 数千のクリエイターがPolyを無料で使っている一方で、すでに数百の有料プランユーザを獲得しています。2022年12月時点で200万以上のテクスチャーを生成しており、一定の支持を集めています。すでに競合が数社いる状況で今後3Dオブジェクトのみならず、イラスト、効果音などさまざまなアセットを提供することで差別化を図ろうとしています。 Polyは2022年9月に[Y Combinator、Bloomberg Beta、Figma Venturesなどから390万ドル(約5.85億円)を調達](https://techcrunch.com/2022/12/27/y-combinator-backed-poly-uses-ai-to-generate-art-assets/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAACCY_-SB8JAanoLDORZxoX0uIZErPMzkYyiKLcFG6RWObkm_84hK2jQF8hkgPFdm2i0POWViBt1pkEFdrdezAtg8eFvtS0dOkaTKkZtB5DHWZTBiRjB5fzBLNItdQgwRS_rJekV40ET9Ge1e-cxHY-3VpqpidwGxgKWg0F2iZUVn)し、さらなる成長が見込まれます。 ## runway もう一点、画像の生成にとどまらず、AIによる画像/動画編集を行うスタートアップである[runway](https://runwayml.com/)を紹介します。実写の画像から不要なものを削除する、逆に必要なものを追加する、音声ノイズを除去する、動画で人物のモーショントラッキングをする、背景を入れ替える、文字書き起こしをする、など画像/動画編集をする上で、通常であれば数時間、数十時間かかる作業をAIによって魔法のように一瞬で実現するツールを提供しています。 [runwayは画像生成だけでなく、画像/動画編集を魔法のように簡単にできる](https://youtu.be/mYjfIc9xw90) runwayは画像生成だけでなく、画像/動画編集を魔法のように簡単にできる runwayのユーザの多くは個人クリエイターですが、CBSやハリウッドの映像スタジオ、New Balanceなどにもツールとして利用されています。Proプランで月12ドル、Teamプランで月28ドルを支払う必要があり、すでに有料プランによって売上を作っています。 runwayはFelicis、Madronaなどから、[2022年12月に5億ドル(約750億円)の評価額で5,000万ドル(約75億円)の資金調達](https://www.forbes.com/sites/kenrickcai/2022/12/05/runway-ml-series-c-funding-500-million-valuation/?sh=5ddef3672e64)を行い、生成系AI界隈ではかなり注目されているスタートアップとなっています。 # おわりに 今回は「進化するAIとクリエイターの未来」についてとりあげました。 さまざまな問題はまだありつつも、新たに登場した生成系AIツールによって、学習や調査の時間を短縮し、クリエイティブな作業のサポートや壁打ちができるようになりました。これにより人々の生産性を上げ、さらには制作の敷居を大きく下げることで、これまで表出してこなかったクリエイター潜在層を掘り起こし、クリエイターの人数を大きく増やす可能性もあります。また、スキル面ではAIがメインで創作する時代になった時、「与えられた要件を着実に実装・制作するスキル」よりも、「企画やアイディアを適切にAIに与えよい結果を得られるスキル」を極める方が重要になってくることも想像できます。これによって人々が獲得するためのスキルセットの考え方や教育方法にも変化が出てくるはずです。 歴史を遡ると産業革命以降、物流や生産における機械化によりブルーカラー労働者が出現し、その後特にITの普及を中心としてホワイトカラー労働者が大量に出現しました。同じように現代では、生成系AIの登場によってAIによる制作自動化が起こり、企画力を軸にしたクリエイターが大量出現することが考えられます。 今回の事例や未来予測を聞くと、AIの進化に恐怖を感じるかもしれません。現状のAIはまだ人類のあらゆるタスクを代替するような存在ではありませんし、自分の職がすぐに奪われると悲観的になる必要もありません。将来的に行き着くところまで行くと人間ができることのかなりの部分を代替してしまうかもしれませんが、その状態になるまでにはまだまだ多くのハードルがあり、それを乗り越えるための人類の努力が必要になってきます。 いつの時代も基本的なスタンスは同じですが、世の中でうまく生き延びるには、機械やITで代替されうるようなタスクや業務を捨て、人間にしかできないことを提供していくことが必要です。生成系AIが続々と登場する現代でも上記の考え方を持ち続けることで、悲観的にならずに時代に適応することが重要だと考えます。 --- ## 2022年後半のメディアトレンドを振り返る URL: https://ximera.com/posts/8f61614beb 公開日: 2022-12-22 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #44|Ikuo Morisugi|December 22th, 2022 ![](/images/posts/8f61614beb/44.jpg) [Online illustrations by Storyset](https://storyset.com/online) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第44回となる今回は、2022年も最後になりましたので「2022年後半のメディアトレンド」をとりあげたいと思います。 目次 1. 経済全体の先行き不透明、景気後退局面の対応を 2. Web3マーケットは縮小気味の一方普及に向けた動きも 3. メディア収益は多角化しコマースやリテールとの融合が進む # 1. 経済全体の先行き不透明、景気後退局面の対応を BigTech 5社の2022年の株価の下落割合推移 / [PortfloliosLab](https://portfolioslab.com/tools/portfolio-analysis) BigTech 5社の2022年の株価の下落割合推移 / [PortfloliosLab](https://portfolioslab.com/tools/portfolio-analysis) Apple、Amazon、Google、Meta、Netflixの株価を見てみると、直近のNetflixはやや上昇傾向に転じているものの、2022年の年始以来5社いずれの株価も大きく下がっています。 年始より各社のEPS(1株あたりの収益)が落ちてきており、特に[10月下旬に発表された各社の決算では投資家予想よりも業績がふるわず](https://socra.net/business/%E3%80%90%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%9D%80%E7%9C%BC%E3%80%91%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%81%AF%E9%AB%98%E5%80%A4%E3%81%AE4%E5%88%86%E3%81%AE%EF%BC%91%E3%81%AB/#:~:text=%E3%81%A8%E3%81%A9%E3%82%81%E3%82%92%E5%88%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE,%E5%BA%A7%E3%81%8B%E3%82%89%E6%BB%91%E3%82%8A%E8%90%BD%E3%81%A1%E3%81%9F%E3%80%82)、大きな下げが発生しました。その後、11月に[FRBが大幅な利上げをしないこと](https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/1104)が判明し、やや戻しましたが、依然景気が良いとは言えない状況です。また各所で報道されている通り、[Amazon](https://www.businessinsider.jp/post-261828)、[Meta](https://toyokeizai.net/articles/-/632518)、[Netflix](https://japan.cnet.com/article/35189446/)は大規模なリストラを行っており、厳しくなった収益をコストカットでしのぐ状況となっています。 また経済全体を見渡してみても、米銀行大手[シティグループのCEOはアメリカが2023年の後期にリセッション入りする方向を予見](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-12-08/RMJCWPT1UM0W01)しており、現在の状況よりもさらに悪化する可能性があります。 こうした状況の中では、以下の記事でご紹介した通り、あらゆるビジネスが一刻も早く資金を獲得し、徹底的なコストカットを行い、戦略的に効果の出るビジネスのみに投資を集中させることが必要になります。 - [#38 景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方](/posts/ab7a44b7f0) 当該記事は、2022年6月頃に書いたものになりますが、心構え・実践すべき事項は半年経っても変わらず、むしろさらに強化をしなければいけない状況となりました。 # 2. Web3マーケットも縮小の一方、普及に向けた動きも 仮想通貨を代表するBitcoinの価格は2022年で大きく下落 / Google 仮想通貨を代表するBitcoinの価格は2022年で大きく下落 / Google Web3は昨年よりバズワード化し、2022年も新たなサービス・コンテンツが多く出てきました。一方で、仮想通貨市場は2022年初頭に市場価値が頭打ちし、2022年末の現在でも特に回復傾向は見られません。2022年5月にTerra/LUNA(USドル連動型のステーブルコイン)が大暴落、さらには、6月にはTerra/LUNAショックを受けてセルシウス(Ethereumを担保とする債権売買するレンディングサービス)の取引停止、11月に仮想通貨取引所業界2位だったFTXが倒産し、業界に激震が走りました。仮想通貨の代表格であるBitcoinもこれらの影響を受け、価格が大きく下がりました。これらの事件の顛末については[こちらの記事](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/07/news172.html)を参照ください。 NFTの取引量(総取引金額)についても[ピーク時から97%落ちる](https://pitch.com/public/37a92904-6d7b-450e-8463-617bfaab55d7/be0ab1ef-a8ac-43bb-9936-9cec65a6797d)など、全体としては厳しい状況に変わりませんが、ファンとともにコミュニティを作りインセンティブを分け合い、コンテンツを作り出していけるNFTの特性はクリエイターにとって依然魅力的なオプションとなっています。日本では法規制としても[NFTは暗号通貨とは区別](https://monolith-law.jp/corporate/nft-regulation#:~:text=NFT%E3%81%AF%E9%9B%BB%E5%AD%90%E8%A8%98%E9%8C%B2%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E6%A8%A9%E5%88%A9%E3%81%AB%E8%A9%B2%E5%BD%93%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B,-NFT%E3%82%92%E3%80%81%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB&text=%E9%9B%BB%E5%AD%90%E8%A8%98%E9%8C%B2%E7%A7%BB%E8%BB%A2%E6%A8%A9%E5%88%A9%EF%BC%88%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%B3,%E6%9C%8D%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)され、比較的厳しい規制がしかれていないこともあり、利用しやすい環境です。[2022年は多数の企業からNFTのサービスやコンテンツのニュースがあった](https://prtimes.jp/main/action.php?run=html&page=searchkey&search_word=NFT)ことは記憶に新しいかと思います。特に近年ではただNFTアートを付与することだけではなく、ユーティリティ(実用性・有用性)をユーザ体験として提供する例が増えてきています。例えば、自治体とクリエイターがタッグを組み、[ふるさと納税の返礼品でNFTをユーザへ付与し、ゲーミフィケーションにより現地を訪れる動機を作る](https://signal.diamond.jp/articles/-/1513)といった体験設計で地方創生に役立てる動きもあります。 NFT自体にはまだまだ可能性があるものの、普及レベルまで広がるには、まだ課題があります。筆者自身がそうですが、NFTを手に入れるまでのハードルは現在ですらかなり高いと感じます。NFTを手に入れるには、Walletの概念を理解し、NFTを購入するための仮想通貨を手に入れ、詐欺にあわないように慎重にコンテンツやコミュニティの選択を自己責任で行わないといけないのです。この状況に対して、Walletを意識せず使えるようする、詐欺や不正利用を未然に防ぐ、起こった後の補償をする、などNFTのマニアやオタクではない一般層が簡単かつ安心に使えるような環境が必要です。 - [#43 Web3が一般普及するために必要な利便性と安全性](/posts/061eb9095e) こうした課題に対するソリューションは市場にスタートアップという形で出てきており、2023年はWeb3のさらなる普及が進むのか注視していきたいと思います。 # 3. メディア収益は多角化しコマースとの融合が進む Snapは2022年に有料サブスクをロンチ後1ヶ月で100万ユーザを取得 / [Snap](https://newsroom.snap.com/ja-JP/snapchatplus-drop3) Snapは2022年に有料サブスクをロンチ後1ヶ月で100万ユーザを取得 / [Snap](https://newsroom.snap.com/ja-JP/snapchatplus-drop3) メディアについては、2022年の大きな出来事はやはりTwitterのイーロン・マスクによる買収かと思います。2022年のメディアの動きとして、筆者が注目しているのが、ソーシャルメディア企業が有料サブスクによって広告ビジネスモデルからの脱却を目指している点です(逆に有料動画ストリーミング企業が広告モデルをハイブリッドしているのも興味深い点です)。 同じくZ世代やミレニアム世代に人気のあるソーシャルメディアのSnapでも[2022年8月より有料の月額サブスクリプション(月額3.99ドル(約600円))](https://www.theverge.com/2022/8/15/23306268/snapchat-plus-subscription-one-million-users-new-features)であるSnapchat+(スナップチャットプラス)が開始され、開始1ヶ月で100万ユーザを獲得し、非常に好調であることが報道されています。その後もStoriesの公開期間のコントロール、Storyへの返信の強調表示、通知音のカスタム、特別な友達フラグ付け機能、などさらに[有料ユーザ向けの体験を拡大](https://techcrunch.com/2022/10/20/snapchat-expands-its-paid-subscription-with-story-expiration-controls-custom-sounds-and-more/?guccounter=1)しています。1つ1つの機能を見るとなんてことない機能にも思えますが、Snapはコミュニケーションサービスであり、コアユーザが求めるものをよく理解し体験設計することで大きな成功につながっており、無料でやっていたサービスが、どのように有料化をはかったのか非常に参考になる事例かと思います。 また、Twitterは元々Twitter Blue(広告表示が少なくなる、ツイートの取り消しなどが可能になる有料月額サービス)を提供していましたが、イーロン・マスクに買収された直後、さらにTwitter Blueによる収益を高める戦略へ一気に舵がきられました。2022年11月に月額7.99ドル(約1100円)でリブランドされ、認証済みマーク(個人アカウントが青色、企業アカウントが金色、政府関連のアカウントが灰色)の取得を可能にしました([ロンチ後、偽公式アカウントが乱立するなど混乱があり、12月12日まで停止、](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2212/11/news043.html)そののち[再開](https://twitter.com/Twitter/status/1601692766257709056))。Twitter Blueの施策については、ターゲットを一般的なエンドユーザではなく、クリエイターやエンタープライズに切り替えて、単価を上げて収益を高める意図があると思われます。 もう一点、メディア関連のトレンドとして注目しておきたい点が、コンテンツの二次利用が大きく促進されていることです。例えば、クリエイターが作ったコンテンツを直接販売する仕組みが様々なプラットフォームやマーケットプレイスで可能になっていますが、さらにそれぞれが作ったコンテンツを使い、新しくコンテンツが生み出される形が生まれています。楽曲分野では特に進んでおり、他の分野でも拡大される可能性があると考えられます。 - [#42 コラボレーションとリミックスを促進するクリエイターエコシステム](/posts/df81eee620) そして最後に、メディアとコマースが融合しつつあることについても触れておきたいと思います。特にクリエイターという個が台頭してきた現在では、クリエイター x  メディア x コマースは別々の存在ではなく、一貫したブランド体験として作られることでより価値を発揮できる可能性が出てきています。例えばクリエイターを獲得チャネルとしてみるのではなく、同じチームで組みコンテンツを制作配信するメディアを作り、さらにはバックエンドのロジスティクスや実店舗運営まで手掛けるスタートアップが出現しています。 - [#41 融合するメディアとコマース](/posts/309c4888d9) - [#40 リスクを低減し成長を支援する新たなリテールテック](/posts/6bd2078b3d) こうした動きは2023年にもより加速し、複数領域を一気通貫かつ良質な体験を提供するメディア・コマースが生まれる可能性があります。 # おわりに 今回は2022年の年末ということで、特に2022年度後半でなにが起こっていたのか振り返り、2022年の下半期のトレンドとしてまとめてみました。 - 経済、特にIT関連の株式市場、暗号通貨市場については、半年前の状況からさらに悪化しており、今後さらに状況は悪化する可能性がある。 - 一方でNFTは新たなコンテンツとして利用は続いており、さらに一般層が気軽に利用できるようにする動きが生まれてきている。 - メディアについては、1. 広告を主な収益源としていたソーシャルメディアがサブスク収益を狙った動きがでてきたことや、2. コンテンツの二次利用が促進されコンテンツがより生まれやすくなっていること、さらには 3. ECやリテールなどコマースとも融合をしつつあること、この3つの動きが同時多発的に起こっており、横断的な動きができるメディアが新たな価値提供ができる可能性がある。 上記がXimera Media Next Trendsとして2022年の重要なトレンドだと考えます。景気は決して良いとはいえない状況ですが、そんな状況だからこそ来年も創造的で興味深い出来事が次々と生まれていくと確信しています。 本年の記事配信は今回で最後となります。本連載がみなさまの多少のお役に立っていましたらなによりです。来年もどうぞ株式会社キメラおよびXimera Media Next Trendsをどうぞよろしくお願いいたします。 --- ## Web3が一般普及するために必要な利便性と安全性 URL: https://ximera.com/posts/061eb9095e 公開日: 2022-11-29 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #43|Ikuo Morisugi|November 29th, 2022 ![](/images/posts/061eb9095e/43.jpg) [Security illustrations](https://storyset.com/security) by Storyset # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第43回となる今回は「Web3が一般普及するために必要な利便性と安全性」をとりあげたいと思います。 2021年から引き続き「Web3」という言葉は、未だにバズワード的に利用されており、さまざまな会社やクリエイターから毎日のように新たなサービスやコンテンツがアナウンスされています。一方で全体で見ると、Web3が一般普及したかと言われると、まだその状態には至っていません。 米国のベンチャーキャピタルRedpoint VenturesのManaging Director [Tomasz Tunguz](https://twitter.com/ttunguz)さんが[2022年9月のDuneConでシェアした調査結果](https://pitch.com/public/37a92904-6d7b-450e-8463-617bfaab55d7/d4f0c5b5-357a-4ee2-8b37-df5237523905)では、日次で250万のWalletがブロックチェーンに接続されています(引用元ではこの状態をDAUと表現)。例えば[Facebookの全世界のDAUは約20億人](https://www.statista.com/statistics/346167/facebook-global-dau/)であることを考えると、上記のWalletの接続数(DAU)は1000分の1程度であり、多くの人が当たり前のように使っている状況とはなっていません。 Web3のサービスやコンテンツが普及していない原因はさまざまあると考えられますが、大きなものとして「一般ユーザにとって便利・安全に使える」状態となってないことが挙げられます。多くの人にとって、Web3用のアカウント(≒Wallet)を作ってブロックチェーンに接続するという概念を理解しアカウント管理すること、詐欺や騙しにあわないように細心の注意を払わないといけないこと、トークンエコノミクスの中で行動するために仮想通貨を購入したり交換したりしないといけないこと、いずれも馴染むまでのハードルが非常に高いです。 現状は一定以上のリテラシーがある、ある種のマニア的な人たちがWeb3のサービスを利用していますが、慣れている人ですら詐欺や騙りに遭っており、ましてやよくわからない人が迂闊に手を出すのはとても危険です。例えば[Discord](https://globalcoinresearch.com/2022/01/27/crypto-discords-huge-scammer-problem/)では毎日のように、「新たなNFTやトークンが発行されました。あなたに無料でプレゼント!」といったDMが送られてきますが、多くが詐欺だと思われます。また、有名なプロジェクトを模倣して、[まるで本物かのように振る舞う詐欺師や詐欺グループ](https://twitter.com/cnp_ninjadao/status/1590774040024662016)もおり、ある程度リテラシーがある方でも被害にあっています。 このような状態が続けば、Web3が一部のグループの人にしか使われない状況となるのは目に見えており、これを解決するためにWeb2とWeb3をうまく統合したソリューションが生まれています。本稿ではアカウントや決済をとりまく現在発生している問題に対して、便利・安全な価値を提供するスタートアップの事例をとりあげ、Web3の利用ハードルをどう下げることができるか見ていきたいと思います。 # アカウントをWeb2/Web3で統合管理: Magic Magicを自社サービスに組み込むことでパスワードレス/シードフレーズレスな認証をユーザへ提供できる image:[Magic](https://magic.link/auth) Magicを自社サービスに組み込むことでパスワードレス/シードフレーズレスな認証をユーザへ提供できる image:[Magic](https://magic.link/auth) Web3サービスのサインアップ・ログイン関連の課題として以下があります。 - そもそもWalletを持っておらずWeb2のアカウントしか利用していないエンドユーザが多い - Web2とWeb3は概念や仕組みが異なるため、Web3独特のアカウント管理や運用方法を学習する必要がある - パスワード・シードフレーズの物理的な保管が必要 Web3サービスを利用するには、まずWalletを作成してブロックチェーンに接続する必要があります。Walletを作成・管理するにはMetaMaskなどさまざまなサービスが利用可能となっています。はじめてWalletを作成した時に、シードフレーズと呼ばれる秘密の合言葉をオフラインで保管するように指示されます。 シードフレーズの一例、紙などでアナログ保管する必要がある image: [ZDNET](https://www.zdnet.com/finance/blockchain/crypto-coach-how-to-protect-your-seed-phrase/) シードフレーズの一例、紙などでアナログ保管する必要がある image: [ZDNET](https://www.zdnet.com/finance/blockchain/crypto-coach-how-to-protect-your-seed-phrase/) シードフレーズは別の端末でWallet接続する際に必須になるリカバリーパスワードのようなものです。ずっと覚えておけるフレーズでないことから、何かしらの媒体での保管は必須ですが、非常に管理が面倒です。PC上やオンラインで保管しているとハッキングの被害にあう可能性があることや、オフラインではいざという時にどこにあるかわからなくなる、つまりWeb2のパスワード管理と同様の問題があります。 また、作成されたWalletは基本的にはWeb2のアカウント(例えば、googleアカウントやfacebookアカウント)とは全く別物になるため、Web3のWalletはそれはそれで別管理が必要になります。多くの人々にとって、このようなWeb2と大きく概念が異なるWeb3のWalletを新規作成して管理するのは、慣れるまでのハードルが非常に高いです。 このような課題を解決しようとしているのが、Web2/Web3を統合したサインアップ・ログインが可能な認証ソリューションを提供している[Magic](https://magic.link/)です。
Magicが提供する[Magic Auth](https://magic.link/auth)は、Web2のパスワードとWeb3のシードフレーズを不要とすることができます。前者は既存の認証手段(eメール、SMS、ソーシャルログインなど)を使ってパスワードレス認証を実現し、後者はWeb2アカウントとWalletを自動紐づけすることで、アナログでシードフレーズの管理をしなくても良いようになっています。また、30の言語に対応しており、自社サービスにMagicの機能を組み込むことで、ホワイトレーベルな形でログインとWalletのUIカスタムも可能となっています。Walletは20以上のブロックチェーンに対応し、さらにFirebase、Auth0、Okta、Azureなど各種認証ソリューションプロバイダーとOpen ID Connectによる連携も可能となっています。 このようにWeb2のパスワードレス認証のソリューションとしても使え、さらにWeb3のWalletの発行・紐づけが可能で、開発者は統合的な認証ソリューションをエンドユーザへ提供でき、エンドユーザ側も管理が楽で従来のWeb2アカウントを使えるため、冒頭で述べた問題を解決するものとなっています。 Magicは2021年の7月にNorthzone、Tiger Global、Volt Capital、CoinFundなどから[2700万ドル(約40億円)を調達](https://techcrunch.com/2021/07/22/magic-27m-series-a-for-its-plug-and-play-passwordless-tech/)し、さらなる成長が見込まれます。 # Web2/Web3をまとめて詐欺/不正利用を防止: Sardine Sardineの不正防止ソリューションを組み込むことで承認率を高められる image: [Sardine](https://www.sardine.ai/products/fraud-compliance) Sardineの不正防止ソリューションを組み込むことで承認率を高められる image: [Sardine](https://www.sardine.ai/products/fraud-compliance) 次にWalletへの入金関連の問題として以下があげられます。 - 不正取引防止のため銀行や決済会社はデフォルトで入金プロセスでの詐欺/不正取引の検出ルールをもっているが、仮想通貨関連は経験が不足しており、過度に入金ブロックが行われてしまう - 支払い先、取引金額、カードの履歴だけ見ても誤検知が発生するため、利用デバイス、プラットフォーム、ユーザの行動履歴まで加味して偽陽性を見破る必要があるが、多くの銀行や決済会社はそれをできる能力を持たない 例えば、NFTの購入においては限定数のNFT配布がはじまるドロップと呼ばれる瞬間があり、ユーザはこれを逃さずNFTを手に入れたい欲にかられます。これは個数限定・期間限定でコンテンツを提供し、高い注目度を集めるドロップモデルと呼ばれるマーケティング手法で、ストリートウェアからCPGブランドまで幅広く行っています。それ自体は特に目新しいものではありません。 一方でNFTを購入する場合、Walletが作成済みで、そこにNFTを購入できる資金が充当してあって、さらに該当NFTと同じブロックチェーンの規格の暗号通貨が必要になってきます。そこが通常のEC等での購入と異なります。 Walletへの資金充当は多くの場合、デビット カードや銀行口座から入金を行いますが、カード会社や銀行から入金を拒否されることがあります。これは、新しいWalletに資金を提供する際の詐欺のリスクが非常に高いためです。拒否率は 50% 以上あり、入金できても最大 $500 程度に制限されることがあります。これにより希少な NFTがドロップされても即座に購入できない状態となっています。 そこでSardineが提供するAPIをサービスに組み込むと、多数のタッチポイント(デバイス、プラットフォーム、ユーザ行動履歴)からデータを収集し、それをもとに独自のアルゴリズムによる不正検知を行います。これにより、銀行振込またはカードから入金があった際の、承認率を上げ([Sardineによると90%以上](https://medium.com/sardineai/faster-nft-onboarding-with-magic-and-sardine-f9c3a02426ee))、さらに限度額を高くすることができます。これによりリスクを抑えながら、必要な資金を即座に準備し購入することができるものとなっています。こうしたSardineのソリューションは上記の[Magicにも取り入れられており、事例](https://medium.com/sardineai/faster-nft-onboarding-with-magic-and-sardine-f9c3a02426ee)も生まれています。ほかにもBrex(法人向けクレカ)、Blockchain.com(暗号通貨取引所)などにも使われています。 sardineを使うと法で要請される不正取引や仮想通貨も含めてリスクを検知できる image: [Sardine](https://www.sardine.ai/products/fraud-compliance) sardineを使うと法で要請される不正取引や仮想通貨も含めてリスクを検知できる image: [Sardine](https://www.sardine.ai/products/fraud-compliance) 当然ながら上記の方法はWeb3に限ったものではなく、Web2のサービスでもより多くのタッチポイントを使って不正取引検知の精度を上げることができます。Sardineのようなソリューションを自社サービスに組み込むことでWeb2/Web3で発生するリスクを一気に下げることが可能になります。 SardineiはAndreessen Horowitz、Google Ventures、Visaなどから、[2022年9月に5,150万ドル(約74億円)の資金調達](https://coinpost.jp/?p=389467)を行いました。Web2とWeb3にまたがる不正取引防止のソリューションとして、今後さらに広がる可能性を秘めています。 # おわりに 今回は「Web3が一般普及するために必要な利便性と安全性」についてとりあげました。 今回取り上げたように、現在Web2の大多数のユーザがWeb3に興味を持ったとしても気軽に使えない状態になっています。それに対して、Web2のアカウントをベースにしたり、Walletを使えるまでの時間を短縮したり、不正取引や詐欺を防止したり、「便利・安全」をエンハンスするソリューションが多数登場しています。今後さらにこうしたソリューションは拡大してくると思われ、エンドユーザがますます使いやすくなる環境が整ってくると思われます。Web3が普及するには、わけのわからない言葉(≒Web3専門用語)や複雑なプロセスを排除し、エンドユーザが意識せずサービスを利用できる状態の実現が非常に重要です。 MagicやSardineの例は、新しいサービスを作る際にどのようなことが既存ユーザにとってのハードルになるのか、それをどう解決していくのかという点においても非常に参考になるのではないでしょうか。 --- ## コラボレーションとリミックスを促進するクリエイターエコシステム URL: https://ximera.com/posts/df81eee620 公開日: 2022-10-18 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #42|Ikuo Morisugi|October 18th, 2022 ![](/images/posts/df81eee620/xmnt.jpg) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第42回となる今回は、「コラボレーションとリミックスを促進するクリエイターエコシステム」をとりあげたいと思います。本稿ではとくにそれが顕著に見られる事例として、音楽制作分野にフォーカスしていきます。 現在の音楽市場では、他者が制作した音源を使って作曲することが当たり前になっています。古くはヒップホップのトラックメイカー(MCやラップを入れる前の楽曲を作る人)が、他者の過去楽曲の一部を切り取り、それをループさせて、新たな楽曲として成立させていました。 以降制作に使うための音源はさらに増え、例えばドラムの各音(スネア、バスドラム、ハイハットなど)をバラバラに録音した音、キーボードのフレーズ、心地よい聴こえ方をする部分だけ切り取られたボーカルなど、数秒にも満たないサウンドがメーカー/個人を問わず幅広く提供されるようになりました。 逆に1つの楽曲をまるごと他者へ提供する例もあり、例えば、ヒップホップミュージシャンLix Nas Xのヒット曲でビルボードで1位にもなった「Old Town Road」の元となったトラックは、[オランダ人プロデューサーからわずか30ドル(約4,500円)で買い取](https://abcnews.go.com/Entertainment/lil-nas-bought-town-road-beat-30-story/story?id=64511949)ったものであることは有名です。さらにそのトラック自体はロックバンドNine Inch Nailsの曲の一部を使ったサンプリングミュージックでした。この例だけをとっても、過去の創作物が連鎖して新たに価値が生まれたことがわかります。 このように音楽の制作では自身で演奏して新たな楽曲を作る以外に、ほかのクリエイターが制作したものをどう組み合わせて作るかが鍵となっています。 こうした「ほかのクリエイターが制作した創作物を組み合わせて新たなものを生み出す」話自体は古くより存在している話ですが、楽曲制作領域においてはこの概念がさらに浸透しており、新たなクリエイター市場が生み出されています。本稿ではこうした新たなクリエイター市場を生み出すプラットフォームを提供するスタートアップの事例をとりあげ、メディアとして提供する新たな価値を見ていきたいと思います。 # “サンプリングパック”市場を創出: Splice Spliceでは各クリエイターが複数のサンプリング音源をパックとして提供する image:[Splice](https://splice.com/sounds/packs/splice/karra-vocal-pack) Spliceでは各クリエイターが複数のサンプリング音源をパックとして提供する image:[Splice](https://splice.com/sounds/packs/splice/karra-vocal-pack) 楽曲制作者と音源クリエイターのマッチングプラットフォームを提供しているのが[Splice](https://splice.com/)です。月額9.99ドル(約1,500円)で何百万もの音源に無制限にアクセスすることができるほか、音源を組み合わせたトラック制作もSpliceのプラットフォーム上で可能になっています。Spliceは400万人のユーザを抱え、多くはアマチュアの制作者で構成されていますが、[Justin Bieber](https://splice.com/blog/laxcity-justin-bieber-running-over/)などプロミュージシャンの曲にも利用されています。 Splice上で新たなクリエイターが登場した事例の1つで、Splice上の音源クリエイターとして複数のボーカルサウンドをサンプリング音源パックとして提供した[Karraさんの成功](https://splice.com/blog/karra-q-and-a/)をご紹介します。Karraさんはサンドウィッチショップのマネージャーをする傍ら、ボーカルとしてさまざまな楽曲に参加する活動をしていましたが、音楽による収入は多くはありませんでした。Karraさんは、知り合いのプロデューサーの多くがSpliceを使っていることに気づき、楽曲制作に利用できる[ボーカルサンプルパック(数秒程度の短いボーカル音声を複数まとめたパック)](https://splice.com/sounds/packs/splice/karra-vocal-pack)を制作しSpliceへ展開しました。数カ月後には、有名アーティストのDavid GuettaがKarraさんのサンプルを利用し、ヒット曲を生み出したことを知らされたのです。これをきっかけにKarraさんはボーカルパックのVol.1と後続のVol.2あわせて、ほかの有名アーティストやアマチュアミュージシャンにも人気になり、Spliceのクリエイターとして花が咲かせました。 Karraさんの成功はシンデレラストーリーの面ももちろんありますが、通常のボーカルでは商業的に成功しなかったクリエイターが、ボーカルパックという新たな市場で勝負して支持を得た点で非常に興味深いです。音楽制作におけるサンプリング文化があり、そこに誰でも新たなコンテンツを提供することでスターになれる、新たなクリエイター向けメディアとして成立している点がSpliceが提供する価値となっています。Spliceは2021年の2月にGoldman SachsのグロースファンドのGS Growthなどから[5500万ドル(約82.5億円)を調達](https://techcrunch.com/2021/02/22/las-splice-gets-55-million-for-its-software-bringing-beats-from-bedrooms-to-bandstands/)、[企業評価額は5億ドル(約750億円](https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2021-02-21/want-to-make-a-hit-record-from-your-bedroom-ask-splice))と言われており、さらなる成長が見込まれます。 # Web3時代の作曲プラットフォーム: Arpeggi すべての音源がNFTで管理されコラボレーションを促進する image:[Arpeggi Labs](https://www.arpeggi.io/) すべての音源がNFTで管理されコラボレーションを促進する image:[Arpeggi Labs](https://www.arpeggi.io/) 音源の権利と移転を柔軟にし、楽曲制作をより協調的に行えるようにしているのが[Arpeggi](https://www.arpeggi.io/)です。Arpeggiはブロックチェーンを使って音源を管理し、より「リミックス文化」が促進される環境を作ろうとしています。 従来、他者の著作物である音源をサンプリングして使うには、許可を得ずに違法に利用するか、非常に面倒な楽曲の権利処理と支払いを行う必要がありました。前者は訴訟などがあり、時代とともに許可をとって使うような形に。後者の問題は、Spliceなど音源を管理するプラットフォームが登場して肩代わりをしてくれているものの、処理を実施する主体が変わっただけで本質的にはその面倒さや複雑さは解消されていません。Arpeggiは[ARP(Audio Registory Protocol)](https://docs.arpeggi.io/faq/build-on-arpeggi#what-is-the-audio-registry-protocol-arp) と呼ばれる仕組みを使ってその問題を解消しようとしています。 ARPで登録された音楽はブロックチェーンによって、どのクリエイターに所属し、いつ誰に使われたのかを把握することができるため、自動的に権利処理が行われます。これを可能にするため、ArpeggiはARP による楽曲制作、楽曲公開、NFT発行が可能なDAW(Digital Audio Workstation:音源制作に用いるソフトウェア)環境をクリエイターへ提供しています。[発表された楽曲に対してNFTが1つ、またトラック(楽曲を楽器ごとに分解した部品)ごとにNFTが1つずつ発行](https://docs.arpeggi.io/faq/)されます。これらのNFTをほかのクリエイターがレゴのパーツのように部品として使いサンプリングやリミックスが可能になるのです。 この仕組みによって従来の違法であったり、非常に面倒なプロセスから開放され、クリエイター間の協調と自由な楽曲利用が促進されます。リミックスによって面白い文化ができているのは[TikTokで十分実証](https://wired.jp/membership/2021/11/01/is-tiktok-art/)されています。Arpeggiの試みによりさらにコラボレーションと創作しやすい環境が新しい体験を生み、これまで以上の創作物が出てくる可能性があります。 Arpeggiのビジネスモデルはまだ明確ではなく、現状は無料で利用することができます。Web3のアプリケーションでよく見られるトークン発行もしていません。これは投機的な動きを避けてWeb3を毛嫌いするクリエイターを惹きつけるためだと思われます。 ArpeggiはAndreessen Horowitzの暗号通貨投資部門、Steve Aoki、Wyclef Jeanなど著名VCおよびミュージシャンから支持を集め、[2022年9月に510万ドル(約7.65億円)のSeedラウンドの資金調達](https://techcrunch.com/2022/09/14/arpeggi-labs-banks-a16z-funding-to-build-web3-music-creation-software/)を行いました。まだビジネスモデルも定まっていないスタートアップですが、今後新たな音楽制作を行うプラットフォームを実現する可能性を秘めています。 # おわりに 今回は「コラボレーションとリミックスを促進するクリエイターエコシステム」についてとりあげました。 SpliceもArpeggiもどちらもいかにクリエイターが簡単・手軽にコンテンツ制作をできるようにするか、そしてクリエイター間で新たな提供と消費のエコシステムを作ろうとしている点が共通しています。それを実現するためにコンテンツの権利処理や技術的に利用が簡単になる仕組みを1から作っています。 イノベーションの基本は、国や専門家や富豪など一部の層にしかできなかったことを誰でもが簡単にできるようにすることです。シリコンバレーをはじめ成功しているスタートアップ企業の多くはそれを成し遂げる要素を多かれ少なかれ持っていますが、SpliceもArpeggiも同じ道を歩んでいます。 こうしたプラットフォームとしてクリエイターの創造性を促進するようなアプローチはメディア作りにおいても非常に重要な要素として参考になるのではないでしょうか。Ximera Media Next Trendsではこうした引き続きこうした新たなクリエイター市場を作るメディアのトレンドも追っていきたいと思います。 --- ## パブリッシャーのための読者理解・価値とニーズ講座【ゲスト:松本健太郎】 URL: https://ximera.com/posts/8f8e61931b 公開日: 2022-10-01 著者: Ximera
[キメラ主催イベント一覧へ](/category/event) # 開催趣旨 「ニュースを送りだしさえしていれば、満足するだけの収益を得ることができる」、今もそう考えているパブリッシャーはどれほどあるでしょうか。近年、生活者の情報消費の様式が大きく変化し、情報を発信するパブリッシャーとそのビジネスに変化を促しています。 その変化にまつわる対話でたびたび耳にする言葉が「価値」と「ニーズ」です。ニーズを把握し、価値を感じさせる体験を設計しなければ消費者の心は掴めない。こんなふうに語られるものの、その理解と実践は決して簡単なものではありません。 今回キメラはその課題に取り組むパブリッシャーを支援するオンラインイベントを開催、マーケティング・消費者インサイトの専門家・松本健太郎さんの講演を提供します。 # プログラム --- ## 19:05〜19:40 講演 ## 「価値」とはなにだろう? 消費者がお金を払う理由を一緒に考える 「読者に価値を届ける」とはよく口にしますが、そもそも「価値」とは何でしょうか。消費者はどうやって「価値」を実感しているのでしょうか。なぜ「価値」を感じれば、消費者はお金を払ってくれるのでしょうか。価値、ニーズの解説を通じて、消費者を深く知る必要性についてお話します。 ![](/images/posts/8f8e61931b/Untitled.png) 松本健太郎(マーケター) 1984年生まれ。龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で“学び直し"。その後、デジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務に携わり、現在は事業会社でマーケティング全般を担当している。政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にも登場している。 主な著書 『データ分析力を育てる教室』(マイナビ出版)2022 『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)2020 『なぜ「つい買ってしまう」のか?~「人を動かす隠れた心理」の見つけ方~』(光文社)2019 『誤解だらけの人工知能』(光文社)2018 『データサイエンス「超」入門 嘘をウソと見抜けなければ、データを扱うのは難しい』(毎日新聞出版)2018 --- ## 19:40〜20:00 ## インサイトトーク・Q&A 松本健太郎(マーケター) 大東洋克(株式会社キメラ 代表取締役社⻑) --- ## 融合するメディアとコマース URL: https://ximera.com/posts/309c4888d9 公開日: 2022-09-20 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #41|Ikuo Morisugi|September 20th, 2022 [People illustrations by Storyset](https://storyset.com/people) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第41回となる今回は、「融合するメディアとコマース」をとりあげたいと思います。 近年ではTikTokやInstagram経由で気になる製品やサービスを見つけ、ソーシャルメディアからの直接リンクや検索エンジン経由で、該当の製品やサービスの購入サイト/アプリを訪れる体験が当たり前になりました。 これは人々が信頼できるクリエイターやインフルエンサーをソーシャルメディアでフォローして、そこに興味関心があるコンテンツが継続的に投稿されているからこそ成り立っています。TikTokやInstagramも当然数年前からその機会を捉えており、TikTokの[Shopifyとの提携](https://forbesjapan.com/articles/detail/43012)や[Instagramショッピング](https://business.instagram.com/shopping?locale=ja_JP)などコマース機能の強化を続けています。[2021年のソーシャルコマース全体の市場は 5859億ドル(約82兆円)と見積もられ、2022年から2030年には30.8%の年平均成長率で市場が拡大していくと予測](https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/social-commerce-market)されています。また本連載でも過去とりあげたように特にソーシャルコマースや動画コマース/ライブコマースはZ世代を中心に広く受け入れられ、市場を牽引する要素となっています。 [Z世代がハマるソーシャルコマース](/posts/4413be0066) 上記のようにもはやメディアとコマースは切っても切れない関係になっており、領域が重なり合ってきています。メディア企業がEC事業を展開する(またはその反対)という単純な話ではなく、メディアでストーリーを作り、それを体現する製品/サービスをコマースを通じて提供する、そうした一連の体験を提供することが重要なポイントになります。 これまでもD2C企業やSaaS企業がメディアを使って自社製品に関してストーリーテリングを行ってきました。[過去記事](/posts/b232363883)でも取り上げましたが、CAC(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得コスト)を抑えブランドに対するアテンションを維持するために、企業自身がメディアも手掛ける方向に進んでいます。過去記事ではSaaS企業の話を取り上げましたが、CACが上がりユーザ獲得が難しくなっている現状ではコマース企業でも同様かと思います。今後この流れは加速し、メディアとコマースを一体的にとらえて提供できる企業が、よりユーザから支持されるはずです。 [メディア化するSaaS企業](/posts/b232363883) 本稿ではメディアとコマースをどちらも生業とするスタートアップの成功例や今後期待される事例をとりあげ、融合するメディアとコマースのトレンドを捉えていきたいと思います。 # メディアからはじまったD2Cブランド: Glossier Glossier Pinkと呼ばれるスキンケアや化粧品が特徴的な製品  image: [Glossier](https://www.glossier.com/picks/best-sellers-page) Glossier Pinkと呼ばれるスキンケアや化粧品が特徴的な製品  image: [Glossier](https://www.glossier.com/picks/best-sellers-page) メディアからはじまりコマースD2Cで成功した例と言えば、化粧品ブランドの[Glossier.](https://www.glossier.com/)(グロシエ)です。Glossier創業者のEmily Weiss(エミリーワイズ)さんは2010年から[Into the Gloss](https://intothegloss.com/)という美容のTipsや有名人へのインタビューを中心としたブログを開始したところ、Beautyに興味のあるミレニアル世代の女性を中心に人気を博し、2014年には[1000万PV/月](https://www.forbes.com/sites/clareoconnor/2014/11/17/glossiers-emily-weiss-raises-over-10-million-to-reinvent-beauty-industry/?sh=298d4abe1555)の数字を持つメディアに成長しました。そして2014年に満を持して主に化粧品を販売するD2CブランドのGlossierを設立しました。Glossierは成長を続け、2019年のSeries Eの資金調達ラウンドでは[12億ドル(約1680億円)](https://www.inc.com/emily-canal/glossier-makeup-skincare-emily-weiss-unicorn-valuation.html)の評価額を得たいわゆるユニコーンスタートアップとなりました。 Glossierは、製品からマーケティングまでファン/アンバサダーとCo-createするアプローチが特徴的で、スキンケアや化粧品のオリジナルブランドを展開しました。 ## 製品からマーケティングまでファン/アンバサダーとCo-createする 例えば、Into the Glossを運営する中で、「[理想の洗顔料は?](https://intothegloss.com/2015/01/emily-weiss-glossier-cleanser/)」という質問を投げかける記事を投稿し、そこで集まった377以上のコメントをもとに、テスト製品が作られ、[約10ヶ月かけて製品化](https://intothegloss.com/2015/10/glossier-cleanser-update/)されました。 Into the Glossだけではなく、ソーシャルメディア、製品のWebサイト(レビュー欄や問い合わせフォームなど)eメールなどありとあらゆるチャネルで、既存の化粧品に対して不満や課題を抱えるユーザの声に着目し、オリジナルブランドとして製品化していくことで、課題解決を行う製品を提供するアプローチをとっています。現在では企業やインフルエンサーによる製品開発時の徹底した顧客リサーチは広く行なわれていますが、Glossierは2015年当時からこのアプローチを続けており、[顧客体験に強いこだわり](https://www.glossy.co/new-face-of-beauty/how-glossiers-gteam-is-changing-the-role-of-customer-service/#!)を持っています。 また、マーケティングにおいても当時にしては斬新なやり方を行っていました。Glossier Girlと呼ばれるGlossierを愛好してくれるユーザが製品を使ってくれる投稿をGlossier公式アカウントがリポストすることでバイラルさせる、いわゆるアンバサダーマーケティングを先駆けて実施していました。またソーシャルメディアのGlossierに関するユーザ投稿の大半がGlossier側で確認され、使い心地はどうか、困っていないかユーザへ直接語りかけているほか、クレームについても積極的に見つけて対処するアクティブユーザサポートも行っています。現在では、他の企業でも同じようなアプローチをよく見かけますが、先駆者であるGlossierの徹底ぷりは目を見張るものがあります。 ## はじめから1万3000人のロイヤルユーザ Grossier.は現在[268万人のInstagramフォロワー](https://www.instagram.com/glossier/?hl=ja)がいますが、実は製品を作る前の段階からInstagramで[1万3000人のフォロワーを獲得](https://econsultancy.com/how-glossier-has-used-instagram-to-create-a-cult-following/)できていました。 これはエミリーワイズさんへの信頼をはじめとしたInto the Glossのメディアとそこで培ったコミュニティの賜物と言えます。 はじめから製品を買ってくれる可能性が高いロイヤルユーザが1万3000人もいるのは通常のコマースの場合考えられないことです。製品ロンチまでに125回以上Instagramで投稿がされ、それもブランドイメージや製品への期待にうまくつながりました。Glossierの70%の売上がオーガニックチャネルから形成されており、具体的な数字は公開されていないもののリテンションレートも非常に高いとされています。そのあたりにもGlossierのアプローチが広告宣伝費に余計なコストをかけずにかつロイヤリティの高いユーザを獲得できていることが現れています。 こうした徹底してユーザフォーカスするプロダクトづくりとコミュニティを大事にする姿勢がGlossierの成功につながったと考えられます。メディアはユーザ接点を持つ重要なチャネルであり、そこでコミュニティを作り、プロダクトへつなげていくGlossierのアプローチは今でも非常に参考になる事例かと思います。 # Z世代向けのライブコマースファッションEC: VIAVIA Glossierは主にミレニアル世代向けでしたが、Z世代に向けて新たなメディア x コマースの形を提供しようとしているのが[VIAVIA](https://www.viavia.live/)です。 VIAVIAは①クリエイター/インフルエンサーと直接チームを組成し、②クリエイター/インフルエンサーが製品体験を伝えるショート動画形式のコマースメディアを提供し、③自前で製品サプライチェーンの構築まで実施する新たなメディア x コマースのスタートアップです。 VIAVIAはファッションコミュニティから[クリエイター/インフルエンサーを自前のタレントチームを通じて獲得し、動画コマースとライブコマースに徹底的にフォーカス](https://www.prnewswire.com/news-releases/viavia-announces-seed-round-of-8m-to-build-the-end-to-end-solution-for-fashion-e-commerce-301612645.html)し、ブランドストーリーを伝えるファッションECメディアを提供しようとしています。動画の詳細についてはまだ不明ですが、Walk with Me、At Homeと名付けられたライブ動画のコンセプト画像がサイトで公開されています。 ライブコマース動画のコンセプト画像  image: [VIAVIA](https://www.viavia.live/) ライブコマース動画のコンセプト画像  image: [VIAVIA](https://www.viavia.live/) 製品についてはメイドインイタリアにこだわってサプライチェーンを作り上げようとしています。これは製品提供までのリードタイム短縮と品質の向上を狙った取り組みです。通常のアパレル製品は、企画を本国で行い、中国やバングラデシュなどアジアの工場で生産されます。ファストファッション企業は別にして、多くのアパレル製品は企画-納品までは半年-1年間ほどリードタイムがかかります。これに対して、VIAVIAは十分なスピード感で製品提供ができないこと、そしてイタリアでは高い品質を提供できる製造業者の稼働に空きがあり最適化されていないことに着目しています。つまりやり方を変え、より多くのデザイナーと製造業者のマッチングを行うことができれば、イタリア製でスピード感があり高い品質を同時に確保できる可能性があるということです。VIAVIAのサプライチェーンのヘッド LuigiさんはステークホルダーにAIベースの製品開発管理ツールを提供することで、稼働時間を[50%以上上げる](https://www.fibre2fashion.com/news/e-commerce-fashion-industry/viavia-raises-8-mn-seeding-to-build-solution-for-fashion-e-commerce-282735-newsdetails.htm)ことができると述べており、野心的な目標が伺えます。 VIAVIAは[NEA](https://www.nea.com/)(New Enterprize Associate: RobinhoodやCourseraなどへの投資で著名な老舗のシリコンバレーベンチャーキャピタル )をリード投資家として、2022年8月に800万ドル(約11.2億円)のSeedラウンドの資金調達をしました。まだ正式にプロダクトロンチをしていないスタートアップですが、今後新たなメディアxコマースの形を実現する可能性を秘めています。 # おわりに 今回は「融合するメディアとコマース」についてとりあげました。 Glossierにしても、VIAVIAにしても、メディアでのコンテンツディスカバリーから製品の購入にいたるまでの顧客体験、製品自体にも徹底的なこだわりをみせる点が共通しています。 Glossierは創業者のエミリーワイズさん自身がインフルエンサーであることや、VIAVIAはインフルエンサーをチームに引き込んでユーザにストーリーテリングする機能を作り出そうとしています。これにより集客し、エンゲージメントの高いファンのコミュニティを作り、よりコアな体験を求めるファンへ製品やサービスを提供するという流れができています。 製品についても、Glossierのユーザフォーカスした開発プロセスや、VIAVIAのサプライチェーンまで含めて高品質なものを作りだそうという試みが差別化につながっています。 こうしたメディアとコマースと一体として捉える考え方やアプローチはメディアとしてEC事業を考える際にも非常に参考になるのではないでしょうか。Ximera Media Next Trendsではこうした引き続きこうしたオフライン関連のトレンドも追っていきたいと思います。 --- ## NHK NEWS WEBに聞く、データと向き合う戦略とその現場 URL: https://ximera.com/posts/c3881d3ce1 公開日: 2022-09-01 著者: Ximera
# 開催趣旨 Webページのアクセス解析は、多くの商業Webメディアの運営と不可分な存在です。多くのメディアがページに訪れるユーザーの行動から測ることができる数値データを取得し、日々改善や戦略づくりに活かしています。 しかし、これほど一般化したWebメディアのデータ活用を課題に感じているパブリッシャーは少なくありません。分析のためのツールは導入したものの改善に活かすことが難しい。部署を超えた活用にハードルを感じる。このような話はよくあり、編集部門との連携を模索するビジネス部門からの声はなおさら大きいようです。データの活用には、組織の理解も必要なのです。 今回のウェビナーではNHK NEWS WEBからデジタルコンテンツ戦略担当チーフプロデューサーの松枝一靖様をお招きし、データと向き合う戦略とその現場についてお話しいただきます。NHK NEWS WEBがいかにデータと向き合う組織となり、報道に活かしているか。データを取得するだけに止まらず、活用していける組織とはどのようなものなのか。 現場の当事者から組織と取り組みの変遷を聞くことができる貴重な機会となります。組織のデータ活用に課題を感じるパブリッシャーやメディア関係者のみなさま、ぜひご参加ください。 # プログラム --- ## 17:35〜17:55 講演 ## データと向き合う戦略とその現場(仮題) 現在のNHK NEWS WEBがデータと向き合うことで、どのように日々の報道にいかしているか 松枝一靖 様 NHK グループ経営戦略局デジタルコンテンツ戦略担当チーフプロデューサー --- ## 17:55〜18:30 インサイトトーク ## ニュースメディアのデータ戦略(仮題) これまでのNHK NEWS WEBの読まれ方の変化とデータから発見したこと 松枝一靖 様 NHK グループ経営戦略局デジタルコンテンツ戦略担当チーフプロデューサー 大東洋克 株式会社キメラ 代表取締役社⻑ --- # 参加方法 1. フォームから参加申込いただく 2. 後日、参加のためのURLが記載された招待メールをお送りします 3. メールに記載のURLから本イベントにご参加ください --- ## リスクを低減し成長を支援する新たなリテールテック URL: https://ximera.com/posts/6bd2078b3d 公開日: 2022-08-30 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #40|Ikuo Morisugi|August 30th, 2022 [Shopping illustrations by Storyset](https://storyset.com/shopping) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第40回となる今回は「リスクを低減し成長を支援する新たなリテールテック」をとりあげたいと思います。 AWSやShopifyが生まれたことをきっかけにUSでは2010年頃からD2C(Direct To Consumer)のブランドやスタートアップが多数登場しました。有名な例で言えば、[Everlane](https://www.everlane.com/)(ファッション)、[Warby Parker](https://www.warbyparker.com/)(メガネ)、[Glossier](https://www.glossier.com/)(スキンケア/化粧品)、[Away](https://www.awaytravel.com/)(スーツケース)、[Casper](https://casper.com/)(マットレス)、[allbirds](https://www.allbirds.jp/)(シューズ)など、様々な分野で著名なD2Cスタートアップが現れてきました。 そうしたD2Cは最初は実店舗は持たず販売チャネルはECのみ、顧客獲得チャネルは主に検索とSNSによるオーガニックトラフィックとオンライン広告のみで成長していきます。 しかし[、売上が1000万ドル(約1400億円)を超えたあたりから、オンライン広告で顧客を獲得するよりも、オフラインで顧客を獲得する方が効率的](https://medium.com/lerer-hippeau-ventures/please-welcome-uppercase-a-turnkey-brick-and-mortar-solution-for-digitally-native-brands-63c7df911c43)となるタイミングがやってくると言われています。またWIKY LUXという化粧品D2Cの例では、[オフラインで獲得した顧客の方がリピート顧客に3倍以上なりやすい](https://medium.com/hackernoon/how-and-why-d2c-brands-are-moving-into-physical-retail-lessons-learned-from-casper-warby-64fcf9b0398a)といった事例もあり、D2CやそれまでEC専業でやってきた企業は、さらなる成長のため、実店舗展開を検討しはじめます。また、近年では大手ブランドでも新商品プロモーションや顧客獲得のため期間限定のポップアップストアを開く場合もあり、「スモールスタートで実店舗展開をはじめたい」という需要が存在しています。 一方で実店舗への進出は非常に敷居が高いです。実店舗は、店舗出店計画、テナント契約、店舗デザイン・設計、什器調達、スタッフ獲得、シフト管理、在庫管理、発送管理、運営フローやマニュアル整備、接客/アフター、売上/販売管理、マーケティング、POS・EC連携など、やること・考慮しなければいけないことが多岐にわたります。 店舗、什器、接客などECではほぼソフトウェア化されていた要素がハードウェア化されるため、管理やメンテナンスについてもECとは異なった知識・経験・労力が必要になってきます。また、新たにテナント賃料支払、什器調達やメンテコスト、運営ができる人材獲得、現場スタッフへの給与報酬など、当面かかる費用だけでも大きな額になり、失敗すれば会社への大きな負債になってしまいます。 近年こうした課題を抱える企業を支援するスタートアップが現れており、RaaS(Retail as a Service)、ゴーストリテイラーなど様々な呼び方がありますが、実店舗の企画・構築・運営を支援するソリューションを展開しています。 本稿ではリテール分野で新たなソリューションを展開するスタートアップを取り上げ、顧客の抱える課題を解決し成長を支援するビジネストレンドを捉えていきたいと思います。 # 効率的な立地と運営に関する面倒事を支援: Uppercase 上記の課題の中でも特に「効率的な出店分析・計画、店舗のバックオフィス業務」にフォーカスしてブランドへソリューションを提供しているのが[Uppercase](https://uppercasehq.com/)です。 Uppercaseの分析ツール  image: [Uppercase](https://uppercasehq.com/platform) Uppercaseの分析ツール  image: [Uppercase](https://uppercasehq.com/platform) どの都市のどの区画にいくらで出店するか、立地計画は成功するための要素として非常に重要ですが、実店舗出店経験の浅い企業にとっては、正しい意思決定ができるかかなり不安になる部分です。近年では、数十、数百というレベルの数で店舗を一気に展開するケースは少なく、大手不動産会社とバルクでの交渉もできません。また、不動産マーケットは常に流動的にマッチングが行われ、専門家でないと察知できないような表に出てこない物件も多数あります。 Uppercaseは、そうした課題を解決すべく不動産業者とネットワークを形成しており、独自のデータ解析と不動産アドバイザーにより、どの地区のどの物件に出店すべきかのコンサルティングを行ってくれます。また、実店舗をロンチするにあたって、必要なアポ取り、見学、テナント交渉、契約締結/更新/延長、保険、支払いなど、様々なバックオフィス系の手続きの面倒も見てくれます。 Casper(マットレス)のように商品が大きい場合や、化粧品のように購買前に体験することが重要な商品の場合、店舗はあくまでショーケースであればよく、購買自体はECサイトへ誘導すれば良いので、いかに人が来てくれる場所に立地できるかがより重要となります。 Uppercaseの支援は期間限定ストアも含めて短期間・長期間のどちらの店舗の場合であっても、その需要に答えてくれるソリューションになります。 またUppercaseは立地計画以外の支援もしており、Thinx(New Yorkの下着ブランド)の期間限定の[店舗ロンチの事例](https://uppercasehq.com/case-study/thinx-nyc)においては、立地、店舗コンセプト、デザイン、構築、店舗オープンまで一連の流れを2週間で行っています。結果として、月間で3000人以上の来訪者、49%のコンバージョンレートという実績を出しています。期間限定店舗とはいえ、通常の店舗出店を考えた時に2週間という短さで実行できるのはかなり早いスピード感ではないでしょうか。 # フルパッケージで出店と運営をお任せ: LEAP Uppercaseは店舗立地計画やテナント契約/保険などバックオフィス系を中心に支援するソリューションですが、さらに提供範囲を広げて出店に必要な機能をフルパッケージでソリューション展開しているのがLEAPです。 必要な機能についてフルパッケージでも取捨選択もできる  image: [LEAP](https://www.leapinc.com/how-it-works)(BOPIS: buy online, pick up in-storeの略で、オンラインで事前購入して店舗で受け取る形態のこと) 必要な機能についてフルパッケージでも取捨選択もできる  image: [LEAP](https://www.leapinc.com/how-it-works)(BOPIS: buy online, pick up in-storeの略で、オンラインで事前購入して店舗で受け取る形態のこと) 上記の図の通り、店舗スタッフ、カスタマーサポート、非接触決済、店舗受け取りサービス、返品対応まで、店舗運営に必要なあらゆる機能を提供しています。ブランド側は出店までのすべてのサポートを受けることができます。一方で、必要な機能を組み合わせて導入することも可能になっています。Uppercaseのように立地計画やテナント契約についても当然サポートしています。 Leapでは各ブランドの企業情報から成長性やリスクを確認し、問題なければ契約することができます。そこから立地計画、店舗デザイン、設計、スタッフ獲得、トレーニング、POSや注文管理システム、BOPIS導入まで店の体験を含めて準備と支援をしてくれます。オープン後の来店数や注文数などはすべて専用のダッシュボードで確認するようになっています。 またLeapは、特定の地域でテナント契約をまとめて行い、複数の異なるブランドで店舗群を作り展開することで、費用面を効率的にしながらも、各店舗で必要な顧客層確保やブランドの独自性を保つことを可能にしています。例えば[ニューヨーク](https://www.leapinc.com/stores)では、Elizabeth Streetに異なるファッションブランドが3店舗ありLEAPがまとめて支援しています。 店舗ビジネスはソフトウェアのようにネットワーク効果が働きづらいため、店舗を増やせば増やすだけ費用もメンテナンスコストも上がっていきます。さらに店舗スタッフやサポートの人員まで含めて、ここまでフルパッケージで店舗運営を任せられるLEAPのサービスはリテールビジネスの性質を考えるとかなり異色で、この業態を提供できている企業は現状他に見たことがありません。LEAPは、店舗を群としてタ最適化したり、店舗スタッフの共通ノウハウを蓄積することで、実店舗形態でもプラットフォームとしてペイする形を作ろうとしているのが垣間見れます。 これまで[NAADAM、Something Navy、Ashley Stewart、Birdies、Frank and Oak](https://www.leapinc.com/stores) などのブランドを支援しており、様々なブランドからの需要が伺えます。[Frank and Oakはコロナ禍で自社運営していた店舗数を22から11まで削減しなければなりませんでしたが、LEAPを使って新たに2店舗をオープン](https://www.forbes.com/sites/brinsnelling/2021/11/01/why-dtc-brands-are-opening-stores-with-ghost-retailers/?sh=5a9eefd1a280)させています。 また[2021年8月には、店舗数を300% 拡大し、2021 年末までに 50 か所、2022 年までに 250 か所にする計画を発表しました。](https://www.prnewswire.com/news-releases/leap-platform-expanding-store-count-300-in-2021-301364875.html)2022年8月時点では、Open 64店舗、Coming Soon 6店舗で計画どおりの推移かは不明ですが、たしかに数は増加しています。 # おわりに 今回は「リスクを低減し成長を支援する新たなリテールテック」についてとりあげました。 未だコロナ禍ではあるものの、世界的に行動制限は緩和されており、実店舗やオフラインイベントへ人流が戻ってきています。その中でD2Cブランドはもちろん、コロナ禍で店舗を閉鎖せざるをえなかった企業も含め、オフラインスペースで今までアクセスできなかったユーザ層へリーチする重要性が高まっています。 UppercaseやLEAPのような新たにリテールビジネスを支援するソリューションを利用することで、リスクを低減しつつ、より少ないリソースで効率的に実店舗展開をはじめることができます。 オフラインビジネスにおいては、ソフトウェアのようにコピーして量産できない部分もある一方で、共通化できる機能やサービスも数多くあり、うまくその共通項を抜き出し顧客にソリューション展開する考え方は新たなビジネスを考える際にも非常に参考になります。 Ximera Media Next Trendsではこうした引き続きこうしたオフライン関連のトレンドも追っていきたいと思います。 --- ## 2022年上半期のトレンドを振り返る URL: https://ximera.com/posts/ce7073de5b 公開日: 2022-08-09 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #39|Ikuo Morisugi|August 9th, 2022 People illustrations by [Storyset](https://storyset.com/people) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第39回となる今回は、上半期に扱ってきた社会・経済・メディア関連のトレンドを振り返ります。  # サスティナブル分野への関心は持続、課題も浮き彫りに カーボンニュートラルやネットゼロなど環境問題をはじめとしたサスティナブル分野について、日本ではマスメディアでも取り上げられ、多くの人が意識するようになりました。一方で、掲げられている目標の達成はかなり難しいことが浮き彫りになっています。 ネットゼロは2015年に締結されたパリ協定で、2050年までに炭素排出量をゼロにすることが目標です。しかし各国が表明している現在のコミットメントベースでいくと、ネットゼロは40%ほどしか達成されないと言われています。 image: [アムンディジャパン](https://www.amundi.co.jp/esg/cop26-introduction-to-net-zero.html) image: [アムンディジャパン](https://www.amundi.co.jp/esg/cop26-introduction-to-net-zero.html) また目指すゴールと官民で行っている施策の効果のギャップが発生しています。例えば、エコだと言われている電気自動車は一見排気ガスを出さないので環境負荷を下げる効果があるように見えますが、電気の多くは石油を燃焼する火力発電で作られているため間接的な二酸化炭素排出量はガソリン車と比べても少なく[ありません](https://www.volkswagenag.com/en/news/stories/2019/04/from-the-well-to-the-wheel.html)。製造過程においても、リチウムイオン電池の原料として希少資源(ニッケルやコバルトなど)を掘削する必要があるため、鉱山資源の枯渇や環境破壊につながっているという批判もあります。 上記のようにサスティナブル関連の施策は、本当に社会で要請されている目標達成に貢献できるのか、見せかけだけとなっていないかをよく検討した上で、さらにビジネスとしても成立させる必要があり、非常に難易度が高いです。 本連載ではリセールやパーソナルローンの分野でサスティナブルな取り組みを紹介しています。これらは環境問題だけをフォーカスした内容ではありませんが、ビジネスとして成立させながら、いかにブランドや消費者にとって最適な形が実現できるかチャレンジしているものになります。 [#30 サスティナブルコマース: リセール支援プラットフォーム](/posts/bdb1b92962) [#31 サスティナブルファイナンス: ヘルシーなパーソナルローン](/posts/0dd58961c9) コマースであれば、将来的には物販やイベントならず、デジタルを含むあらゆるコンテンツについて二次流通が進むと、過剰な追加生産をおさえ、流通コストを下げることにつながる可能性があります。ファイナンスであれば、借金漬けで返済できない個人を多く救うことで、ホームレス化や貧困を減らすことにもつながります。こうした取り組みを様々な分野で官民が実施し、しっかり効果を計測していくことが重要だと思われます。 # クリエイターエコノミーは伸びているが課題も明らかに 2021年の調査では、[クリエイターエコノミーの市場](https://influencermarketinghub.com/ebooks/Creator_Economy_-_Creator%20Earnings_Benchmark_2021.pdf)は、約1042億ドル(約14.6兆円)で、クリエイターの数も世界で5000万人以上おり、年々成長していると言われています。一方でクリエイターのほとんどは、生きていくために十分な収入を専業で稼げているわけではありません。99%のクリエイターがHobbyist(趣味)として活動している状況で、ミドル(中堅)クラスのクリエイターがどれほど成功できるかが今後の業界の持続性に関わってくると思われます。 これに対して、支援の方法は多数ありますが、クリエイターエコノミーに深い洞察と示唆を持っているAndreessen Horowitz出身のLi Jeanさんは下記の10個のアイディアを提示しています。 ミドルクラスのクリエイターを育成する10の戦略 image: [Li’s Newsletter](https://li.substack.com/p/building-the-middle-class-of-the?s=r) ミドルクラスのクリエイターを育成する10の戦略 image: [Li’s Newsletter](https://li.substack.com/p/building-the-middle-class-of-the?s=r) 基本的には、クリエイターは、①資金を獲得し、②コンテンツやプロダクトを製作し、③それを配信してトラフィックを獲得し、④獲得したトラフィックでマネタイズをする流れが一般的なので、そのファネルの一つ一つをサポートすることが必要になってきます。 本連載ではその中でも①をどのように支援できるか、クリエイター特化ファンドやファンにも収益分配できるクリエイターとファンのためのクラウドファンディングプラットフォームなど新たな事例を紹介しています。 [#35 クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援](/posts/47a70616aa) # 経済は景気後退(リセッション)局面へ image: [Google Finance](https://www.google.com/finance/quote/NDX:INDEXNASDAQ?sa=X&ved=2ahUKEwiQgN7Ezpf5AhUA7HMBHQMHBvYQ3ecFegQISRAY&window=5Y) image: [Google Finance](https://www.google.com/finance/quote/NDX:INDEXNASDAQ?sa=X&ved=2ahUKEwiQgN7Ezpf5AhUA7HMBHQMHBvYQ3ecFegQISRAY&window=5Y) 2021年12月をピークに米国経済は大きく株価が下がっています。サプライチェーンの混乱や原油高を中心に物価がインフレ => 政府がその抑制のため利上げを実施 => 企業の資金繰りと業績悪化を懸念した投資家が株を売却していることが主な要因と考えられます。 まだ政府や金融機関は明確に「景気後退」を宣言していませんが、今後さらに金利が上がる可能性があり、それにより経済成長率が鈍化することで、[2023年にリセッションに陥る可能性](https://jp.reuters.com/article/bofaml-research-recession-idJPKBN2NY1LS)があります。日本はまだ米国ほどの株価下落は見られてませんが、ピークの[2021年9月から徐々に株価が落ちている](https://www.google.com/finance/quote/NI225:INDEXNIKKEI?sa=X&ved=2ahUKEwiGg5HGv5D5AhXimVYBHVrjCL0Q3ecFegQIGhAY&window=1Y)状況となっています。 特に厳しい環境にさらされているスタートアップはこの状況下では、一刻も早く資金を獲得し、徹底的なコストカットを行い、戦略的に効果の出るビジネスのみに投資を集中させることが生き延びるために必要になります。本連載でも以下の記事でとりあげています。 [#38 景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方](/posts/ab7a44b7f0) 世界的なトップティアVCである[Sequoia Capital](https://content.fortune.com/wp-content/uploads/2022/05/Adapting_to_Endure_May_2022.pdf)も、必要であれば30日以内に生き延びられる資金を確保しつつ、以下を実行すべきと述べています。 1. 新たな収益源を作る 2. ユニットエコノミクス(顧客・製品・店舗などユニット単位で事業経済性を測定する会計指標)を改善する 3. コストカットする 4. 次の運転資金を得る こうした心構えや実践は、スタートアップのみに限らずあらゆる企業に必要なスタンスです。経営層だけではなくビジネスに関わる全員が意識しておくことで、現在会社がどのような状況にあり、どんな優先順位をもって意識決定がされるのか、その中で自身が会社や組織にどう貢献できるのか、クリアになるはずです。 # Web3の理想と現実がより明らかに NFTの週間取引額グラフ image: [The Block](https://www.theblock.co/data/nft-non-fungible-tokens/nft-overview/weekly-trade-volume-of-nfts) NFTの週間取引額グラフ image: [The Block](https://www.theblock.co/data/nft-non-fungible-tokens/nft-overview/weekly-trade-volume-of-nfts) 景気後退はWeb3にも影響を与えており、明らかに暗号通貨全般の価格が下がり、NFTの総取引額についても、2022年5月2週には3.2億ドル(約434億円)ほどあった取引額が、2022年7月の第4週では4600万ドル(約64.4億円)と約7分の1まで低下しました。 Web3は中央集権的な大手プラットフォームが相互接続性なくデータを独占している現状から、非中央集権的でデータの相互接続性の世界へ移行できるものとして期待され大きな支持を集めています。しかし、どこまでそれが実現できるかはよく見定める必要があります。本連載でも下記の記事にて、現状のWeb3には中央集権的なPFへの依存、総体としてのコストの高さ、利用までのハードルやセキュリティ面でのリスクなど問題が露呈していることを取り上げています。 [#33 Web3の理想と現実](/posts/539120b577) またインターネットのIdentityに関して、Web2およびWeb3には問題があり、それを解消する取り組みとして、Web5の概念が提唱されました。その取り組みについても下記の記事にて取り上げています。 [#37 インターネットのIdentityの変化](/posts/ec0a277d31) 上記の通りWeb3には間違いなく問題やリスクがありますが、それでもまだ諦めたり見過ごす段階ではないと思われます。例えば、本連載でもメディアがDAOをどのように位置付けで使っているかを紹介しましたが、こうした取り組み自体は新たなメディア組織のあり方やコミュニティを形成していくアプローチになりえます。 [#29 メディア運営におけるDAOの可能性](/posts/363cfe44cd) 「個人がデータやコンテンツや活動結果を所有し、アイデンティティがそこに紐づくこと」を可能にするソリューションがWeb3であり、大きくインターネットのあり方を変えるポテンシャルはあります。引き続きその動向は注目すべきかと思います。 # おわりに 今回は2022年も半分が過ぎ、半年間なにが起こっていたのかを振り返り、2022年の上半期のトレンドとしてまとめてみました。 直近のインフレと株価下落による経済への影響は、あらゆる方が気にしている点かと思います。スタートアップ界隈では、VCやプライベート・エクイティファンドの資金が提供されづらくなるため、今回取り上げたサスティナブル関連の動き、Web3関連の動き、クリエイターエコノミー関連の動きなど多くの分野でイノベーションが起こりにくくなる可能性があります。逆に言うとそういった中で耐え忍び、生き延びた企業が骨太で筋肉質になっていることになるので、成長のチャンスとポジティブにとらえていくことが重要です。 --- ## インターネットのIdentityの変化 URL: https://ximera.com/posts/ec0a277d31 公開日: 2022-07-08 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #37|Ikuo Morisugi|July 8th, 2022 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第37回となる今回は、「インターネットのIdentityの変化」について、取り上げます。 「[Identity](https://en.wikipedia.org/wiki/Online_identity)」はかなり抽象的な概念ですが、本稿では便宜的に「ユーザ自身を表すアカウントとそれに紐付けられた何らかのデータ」と定義します。 現在のインターネットにおいて、Identityには問題があり、エンドユーザに皺寄せがきています。各プラットフォームがアプリケーション層でIdentityを提供した結果として、Identity間に互換性がなくなり、各プラットフォームがユーザを囲い込むいわゆる[Walled Garden](https://en.wikipedia.org/wiki/Closed_platform)ができあがってしまいました。さらには、ユーザのIdentityはユーザにコントロール権はなく、メディアにおける広告ターゲティングやアルゴリズムによるフィルターバブルに使われた結果、プライバシー侵害、社会的分断、心理的な疲弊などネガティブな問題を起こしています。また、現状のユーザデータ管理はセキュリティ面でも問題があり、さまざまな企業のさまざまなデータベースに個人情報が格納された結果、ハッキングされ漏洩するリスクも大きくなっています。 こうした問題へのアプローチの一つとして近年ではWeb3に代表される自律分散型のインターネットが取りざたされるようになり、さらには[Web5](https://developer.tbd.website/projects/web5/)という新たなIdentityの考え方が出てきました。本稿ではWeb2およびWeb3の問題と、Web5がどのように問題解決を図ろうとしているか見ていきたいと思います。 Identityはインターネットの基盤となる概念なので、一見ビジネスから遠い話に聞こえます。ですがインターネットにおけるアカウントとデータに関する重要な考え方であり、場合によっては既存ビジネスに強く影響を与える可能性があります。今後のメディアビジネスでのユーザアカウントとデータのあり方の参考になると考え、本稿でテーマとして取り上げます。 # 現在のインターネット=Web2におけるIdentityの問題点 Web2のIdentityには大きく、①アカウントとそれに紐づくデータの正当性の検証が難しい、②アカウントとそれに紐づくデータに互換性がない、の2つの問題があります。 例えばLinkedIn(仕事用のソーシャルネットワーク)でアカウントを作り自身のこれまでのキャリアや活動(=アカウントに紐づくデータ)の記録を公開することで、新たに仕事関係の出会いがあったり、転職のきっかけになることがあります。 ここで①に関して、LinkedInではそのキャリアや活動記録はあくまで自分が書いたものであり、公的に認定されたものではありません。本当にその実績があるのか、捏造ではないのか第三者による検証は、本人へのインタビューやバックグランドチェックにより、ある程度は可能ですが、非常にコストがかかり誰もが容易にできることではありません。 また②に関して、ほかのソーシャルメディアへそのアカウントを移転したり、データをインポート/エクスポートすることはできず、あくまで同一プラットフォーム内で閉じたアカウントとなります。例えば、LinkedInで書いたプロフィール、キャリア、記事をFacebookに移行はできませんし、逆もしかりです。特別な変換ツールでも作らない限りは実現できないものとなっています。 既存のWebではユーザはそのデータやIdentityを所有していない/できない image:[TBD Website](https://developer.tbd.website/docs/Decentralized%20Web%20Platform%20-%20Public.pdf) 既存のWebではユーザはそのデータやIdentityを所有していない/できない image:[TBD Website](https://developer.tbd.website/docs/Decentralized%20Web%20Platform%20-%20Public.pdf) Web2ではIdentityレイヤーの概念がシステムとして実装されなかったことで、上記の例のように各プラットフォームごとに独自の仕様でIdentityが作られることになってしまいました。それにより、我々エンドユーザは無数のIDとパスワードの管理・運用を強いられています(筆者もパスワード管理ツールがなかったら生きていけません)。 また、アカウントおよびそれに紐づくデータは実質的には各プラットフォームが実権を握っており、我々にはデータを消したり編集することは可能ですが、ポータビリティについてはまったく権限がありません。これがプラットフォームのスイッチングコストを高めることにつながり、強いプラットフォームがより強くなってしまうことにつながっています。 # Web3はIdentity問題における救世主となるのか 上記のWeb2の現状に対して、Web3の世界では、Wallet(各個人が暗号通貨やNFTを管理するための機能)がIdentityを表すものになります。ユーザが持つWalletをブロックチェーンのネットワークに接続することで自身がどんなトークンやNFTを保有しているか公開することが可能になります。これまでどのトークンやNFTを、どのタイミングで取得したり手放したりしたのか、ブロックチェーンにはすべてのトランザクションが記録されています。つまりWalletと紐づくトランザクションが自身の活動記録のように見えるというわけです。 先程のLinkedInの例で言えば、資格に受かった証跡や、プロジェクトへ参加してみんなから多数の投票により支持を得たことなどの活動すべてがブロックチェーンに記録され公開されれば、それを誰もが閲覧して確認することができるようになります。 これだけ見るとWeb3があれば、Web2の問題を解消してくれそうですが、そうではありません。 Web3では何をするにもトークンとアプリケーションが紐づいています。トークン価格の高騰を期待して人々がWalletを接続し、トークンを購入する、トークンベースの行動が推奨されるため、トークンとWalletを紐づけなければ事がはじまりません。しかしながら、今後Webの世界がすべてトークンをベースとしたアプリケーションだけになるとは想像し難く、トークンとIdentityが一体となったシステムは理想的ではありません。Identityは本質的にはトークンと結びつく必要はなく、独立したレイヤーであるべきです。Web3ではIdentityがトークンと強く結びついてしまっているが故に、人々の投機的な人気投票によりあるべき姿を見失う可能性もあります。また本連載の[過去の記事](/posts/539120b577)でも取り上げた通り、一部のプラットフォームで取得したデータは、ひとたびそのプラットフォームがダウンすると復元できなくなるという問題もあります。つまり、Identityとトークンとアプリケーションが強く紐づいているが為に、Web2のようにプラットフォームへの依存が起こりつつあるのが実態で、これも理想形とは呼べない状況になっています。 # インターネットのIdentityにおける第三極: Web5 そうしたWeb2とWeb3のIdentityレイヤーの問題を「[Web5](https://developer.tbd.website/projects/web5/)」として解決しようと打ち出しているのが元Twitter CEOのJack Dorsey率いる[Block](https://block.xyz/)(決済プラットフォームのSquareが社名変更)の子会社である[TBD](https://www.tbd.website/)です。Web5はTBD社が先導しているプロジェクトで、Identityとそれに紐づくデータを分散化し、データのポータビリティと正当性を検証できるようにするための仕組みを提唱しています。 Web5は分散識別子、正当性確認、分散ノードの3つで構成される image:[TBD Website](https://developer.tbd.website/docs/Decentralized%20Web%20Platform%20-%20Public.pdf) Web5は分散識別子、正当性確認、分散ノードの3つで構成される image:[TBD Website](https://developer.tbd.website/docs/Decentralized%20Web%20Platform%20-%20Public.pdf) Web5は大きく3つの要素で構成されています。 ①Decentrailzed Identifiers(DID): 分散化されたユーザ識別子②Verifiable Credentials(VC): 検証可能な本人正当性(認証、署名、証明書など)③Decentralized Web Nodes(DWN): 分散化されたノード ①Decentralized Identifiers(DID)は、Web5におけるユーザのIDです。Web5では分散化されたネットワークの中で自動生成され、ユーザが保有するもので、中央集権的な機構や信頼性証明機関は存在しません。そしてそのIDはネットワークの中でどこでも発見可能なものとなっています。つまりこのDIDは、どんなプラットフォームでも一貫して利用できるユーザIDになるというわけです。 ②Verifiable Credentials(VC)は、DIDの正当性を判別する認証の仕組みのことです。例えばユーザが保有する銀行口座が自分のものであることを証明する際に、各ユーザと銀行がDIDと公開鍵による署名をセットで提供することにより、第三者から正当性の検証を可能にするために利用されます。 ③Decentralized Web Nodes(DWN)は、Webで公開されている個人データを保管し、メッセージをやりとりする場所のことです。①と②を用いてデータを読み出したり書き出したりすることができます。例えば、音楽のプレイリスト、ソーシャルグラフなどが該当します。 ユースケースの一例として、音楽ストリーミングアプリにおけるプレイリストがあげられています。Spotifyで作成されたプレイリストをApple Musicに持っていけないように、Web2の音楽ストリーミングプラットフォームではユーザのプレイリストをプラットフォーム内でしか参照できないようにしているため、異なるプラットフォームへ移行する際にはプレイリストを一から作成し直す必要があります。これがWeb5が実装されたアプリケーションであれば、Walletを接続すると、DIDが一意に識別され、VCにより本人確認ができると、自分の音楽プレイリストをDWNから呼び出せるような体験に変わります。 重要なのは、Web5はあくまでIdentityレイヤーの分散化の概念であり、Web2とWeb3そのものを否定しているわけでありません(Jack Dorseyの「Web3 VCは安らかに眠れ」という煽りはさておき)。Web5は共通のIdentityレイヤーを規定し現在のインターネット(Web2 + Web3)に持ち込むことで、問題解決をはかろうとしています。例えばWeb2のプラットフォームにDID、VCの概念を持ち込んでIdentityレイヤーのみ分散化して、ポータビリティやユーザデータの正当性を証明する使い方もありえますし、Web3でIdentifyレイヤーのみWeb5化する使い方も考えられます。このようにWeb2+Web3を汎用的/包括的に対応するIdentityレイヤーとしてWeb5が存在していると考えられます。 # おわりに 今回は「インターネットのIdentityの変化」についてとりあげました。 Web2およびWeb3が抱えるIdentityの問題点を見る限り、Web5が提唱する新たなIdentityの提案はユーザにとってはメリットがあるように見えます。一方でWeb2の企業からすると、ユーザデータへのアクセス権がなくなりプラットフォームの独占化を失うことにつながりますし、Web3の企業からするとトークンインセンティブと連動しにくくなり、それぞれデメリットもある話かと思います。 Web5が新たなインターネットのIdentityを実現できるかはまだ未知数ですが、①オープンでフリー、②シンプルなルール/制御、③様々なノードで利用可能 という、html/http/urlのような汎用的なプロトコルが持っている特徴を備えているため、大きく広がる可能性も十分あります。 Web5のような動きが実現されると全産業のビジネスのあり方、とくにユーザアカウントやユーザデータとの付き合い方が大きく変わります。当然メディアビジネスにも大きく影響を与えるものでもあるため、Ximera Media Next Trendsでは引き続きこうした動きを追っていきたいと思います。 --- ## オンラインイベント:メディアとPRがつなぐ地域社会の未来 URL: https://ximera.com/posts/8facc70e41 公開日: 2022-07-01 著者: Ximera
# 開催趣旨 Webを活用したメディア運営・PRは、時間や場所の制約を超えて情報を広く伝達でき、人が集まる「場」づくりを実現できる強みから、地域課題を解決に導くための手立てとして期待が高まっています。 今回のシンポジウムでは、ローカルの情報発信に携わる事業者の方々をスピーカーとしてお招きし、その現在地と目指すべき未来像を語っていただきます。 # タイムテーブル ## 8月23日(火) --- ### 14:00〜14:05 ### オープニング --- ### 14:05〜14:35 ### 地域に活力をもたらす、オープンな事業承継とは 齋藤 隆太 株式会社ライトライト 代表取締役 事業を譲りたい経営者と事業を譲り受けたい候補者をマッチングする「事業承継マッチングプラットフォーム relay(リレイ)」を運営する株式会社ライトライトの齋藤 隆太さんに、ローカルにおける事業承継の現状と課題、成功事例についてお話しいただきます。 --- ### 14:40〜15:10 ### PRを活用した地域の情報流通について 高田 育昌 株式会社PR TIMES パートナービジネス開発室 室長 プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社PR TIMESは、地方の活発な情報流通を目指し、全国各地域に根差す金融機関やメディア・自治体との提携を進めています。同社の高田 育昌さんに、PRを活用したローカルでの情報発信について紹介いただきます。 --- ### 15:15〜15:35 ### ローカルメディアのDXの現在地と今後の展望 大東 洋克 株式会社キメラ 代表取締役社長 株式会社キメラは国内メディア企業のDXを支援している企業で、地方新聞社を中心としたローカルメディアとも取り組みを深めています。代表の大東 洋克より、日本のローカルメディアがデジタル事業において抱える課題と今後の展望についてお伝えします。 --- ### 15:35〜16:05 ### 従業員数13人の名寄新聞社が展開する、ローカルメディアの”小さなDX” 村上 淳哉 株式会社名寄新聞社 代表取締役 大東 洋克 株式会社キメラ 代表取締役社長 北海道名寄市の新聞社・名寄新聞社は、70年を超える歴史を持つローカルメディアです。同社は従業員わずか13名ながら、2022年4月には道北の魅力を伝えるWebサイト「道北ネット」を新たに開設し、運営しています。同社の”小さなDX”の歩みと今後の展望について、村上 淳哉さんにお聞きします。 --- ### 16:10〜16:55 ### パネルディスカッション メディアとPRがつなぐ地域社会の未来 齋藤 隆太 株式会社ライトライト 代表取締役 高田 育昌 株式会社PR TIMES パートナービジネス開発室 室長 村上 淳哉 株式会社名寄新聞社 代表取締役 大東 洋克 株式会社キメラ 代表取締役社長 中山 明子 株式会社キメラ --- 詳細は変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。 # 参加方法 1. フォームから参加申込いただく 2. 後日、参加のためのURLが記載された招待メールをお送りします 3. メールに記載のURLから本イベントにご参加ください --- ## 景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方 URL: https://ximera.com/posts/ab7a44b7f0 公開日: 2022-06-28 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #38|Ikuo Morisugi|June 28, 2022 Business illustrations by [Storyset](https://storyset.com/business) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第38回となる今回は、「景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方」について取り上げたいと思います。 現在、米国経済を起点にインフレが急激に進み、景気の冷え込みを警戒して株価は大きく下落しています。所謂景気後退(リセッション)と呼ばれる状況に近づいていると考えられます。それもドットコムバブルやリーマンショック以来の大きな不況になると言われており、当然のことながらメディア産業だけではなく、全産業に影響を与える大きな出来事になる可能性が高くなっています。 本稿では、そのような景気後退が予期される状況を捉え直し、企業やビジネスがどのように生き延びていけるのか、特に厳しい環境に晒される米国のスタートアップの事例をベースに本稿でテーマとして取り上げます。 # 世界的な景気後退(リセッション)局面へ Nasdaq市場では、株価のピーク時期だった2021年12月1日から2022年7月1日までの8カ月間で、指数([Nasdaq 100](https://en.wikipedia.org/wiki/Nasdaq-100))が約35%下がりました。これは、ドットコムバブル崩壊(2001年)やリーマンショック(2008年)に次いで、直近20年間で3番目に大きな株価の下落になります。 2022年12月をピークにNasdaq指数は大きく減少 image: [Google Finance](https://www.google.com/finance/quote/NDX:INDEXNASDAQ?sa=X&ved=2ahUKEwixjqrAgu74AhVI7GEKHf23AHUQ3ecFegQIMhAY&window=5Y) 2022年12月をピークにNasdaq指数は大きく減少 image: [Google Finance](https://www.google.com/finance/quote/NDX:INDEXNASDAQ?sa=X&ved=2ahUKEwixjqrAgu74AhVI7GEKHf23AHUQ3ecFegQIMhAY&window=5Y) 今回の株価の大きな下落は、主に以下の4つが大きな要因と考えられます。 1. 中国のロックダウン(ゼロコロナ政策)により世界のサプライチェーンに遅延が発生し、需要に対して十分な供給ができていない 2. 世界的に原油価格が上昇し、特にエネルギーや食料品は値上げをせざるをえない状況になっている 3. インフレを抑制するために政府が政策金利を大きく上げている 4. 実体の企業収益力よりも高くなった株価に対して投資家からの売りが続いている 1. 中国のロックダウン(ゼロコロナ政策)により世界のサプライチェーンに遅延が発生し、需要に対して十分な供給ができていない 日本も含め世界の多くの国はコロナを完全に抑え込むのは不可能と考え、withコロナのスタンスをとっていますが、中国はそうではありません。中国は[ゼロコロナ政策](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220709/k10013709441000.html)を実施しており、2022年3月下旬以降も都市によってはロックダウンが行われるなど厳しい制限を課しています。それが企業の操業停止や物流停止につながり、世界の工場となっている中国の物品が需要を満たせない状況を生み出しています。 2. 世界的に原油価格が上昇し、特にエネルギーや食料品は値上げをせざるをえない状況になっている これに関しては、身の回りの物価が高くなっているので、既に多くの方が実感しているかと思います。[原油価格はコロナ禍で一度下がったのですが、徐々に上昇を続け、ウクライナ危機でさらに高騰](https://tradingeconomics.com/commodity/crude-oil)し、それが電力コスト、輸送コスト、製造コストなどにダイレクトに跳ね返ってきています。1の状況もあわせ、企業は値上げせざるをえず、経済全体でインフレが急速に加速しています。一方で家計の所得はインフレと同じペースでは上がらず、インフレ兆候はさらに続くと見られています。 3. インフレを抑制するために政府が政策金利を大きく上げている 上記の要因で起こっている急激なインフレに対して、アメリカやスイスでは政策金利を引き上げました。特にアメリカではインフレ率が非常に高かったことから、[22年ぶりに0.5%の大幅利上げ](https://www.bbc.com/japanese/61329711#:~:text=%E7%B1%B3%E9%80%A3%E9%82%A6%E6%BA%96%E5%82%99%E5%88%B6%E5%BA%A6%E7%90%86%E4%BA%8B,%E5%88%A9%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%AF22%E5%B9%B4%E3%81%B6%E3%82%8A%E3%80%82)を行っています。これが個人・企業・政府の借入コストを増やすことになるため、インフレの抑制が期待されますが、モノやサービスが売れにくくなることにつながります。そのため、様々な企業の業績が落ちることが予想され、これに対する失望感がマーケット全体の株価の下落として現れていると思われます。 4. 実体の企業収益力よりも高くなった株価に対して投資家からの売りが続いている 2020年にコロナショックで一時的に株価は下落しましたが、政府の大規模なコロナ補助金支給など数多の経済支援に加え、リモートワークや外出自粛をきっかけにIT企業の業績が大きく伸びたことから株価は2022年12月まで伸び続けました。しかし、経済全体としては多くの企業の収益は下がっていたのが実態です([リンク参照先【 図表1】アメリカの企業収益と株価の推移](https://www.businessinsider.jp/post-221402))。 現在ではコロナ補助金など経済支援策の多くは打ち切られ、加えて1-3の状況とも連動し、本来企業が持っている収益力に対して、過剰評価されていた株価に対して市場調整が働いていると考えられます。 # ビジネスはどのように生き残っていくべきか 上記の経済状況を鑑みると景気後退(リセッション)に近づいていると言えそうです。まだ政府や金融機関は明確にリセッション入り([全米経済研究所によると数ヶ月以上経済活動の大幅な減退が経済全体で起こること](https://www.nber.org/research/business-cycle-dating#:~:text=The%20NBER's%20definition%20emphasizes%20that,more%20than%20a%20few%20months.))を宣言していませんが、今後さらに金利が上がる可能性があり、それにより経済成長率が鈍化することで、[2023年にリセッションに陥る可能性](https://jp.reuters.com/article/bofaml-research-recession-idJPKBN2NY1LS)があります。 ではこの厳しい状況は企業やビジネスにどのような影響を与え、それに対してどのように行動していけば良いのでしょうか。 イーロン・マスクは、景気後退の局面においては、人の役に立たないことを辞め、役に立つ製品やサービスを作り、不景気をやり過ごすための十分な資金を用意すべきだと述べています。 > *“「好景気が長く続くと、資本の配分を誤りがちになる。つまり、愚かな者の上にまで金が降り注ぐようになる」と述べた。さらに、その状況が手に負えないほど進むと、人材の配分までおかしくなり、「バカげたことや人類の役に立たないことをしている企業」に人材が集まるようになるが、結局は「そのようないい加減な企業は倒産していく」。そして普及に対処するためのアドバイスとして「役に立つ製品を作り、意味のある企業になること」「資本的にギリギリの経営にならないように気をつけるべきだ」と続け、「理不尽な時代」を乗り切るには、資本準備金が必要だと付け加えた。”*    — source: [Business Insider](https://www.businessinsider.jp/post-254396) > また世界で最も著名なスタートアップアクセラレータであるY Comobinatorは、スタートアップに対して[以下のような警鐘を鳴らしています](https://twitter.com/refsrc/status/1527238287471292417/photo/1)。 - VCや[プライベート・エクイティ・ファンド](https://www.antelope.co.jp/navigation/finance/word/alphabet/word12.html)が[リミテッド・パートナー](https://www.nomura.co.jp/terms/english/l/A02193.html)から資金を集めることが難しくなり、投資を予定していた資金が引き上げられたり、投資基準がかなり厳しくなる - スタートアップは次に資金調達できるまでの期間が長期化する - 資金調達フェーズのシリーズA後においては、PMF([Product Market Fit: 製品が特定の市場において適合している状態](https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/pmf/))前のスタートアップはPMFしない限り資金調達できない - もし資金調達ができたとしても思うような企業評価額ではなく、ダウンラウンド(以前よりも低い企業評価額)も覚悟する これらのことから、Y Combinatorはこれまで半年-1年程度だった資金調達期間が2年以上になっても生き延びれるようにすることがファウンダーの責任であり、必要であれば30日以内に次の資金調達までの期間をしのぐための資金調達をすべきであると述べています。 世界的なトップティアのVCである[Sequoia Capital](https://content.fortune.com/wp-content/uploads/2022/05/Adapting_to_Endure_May_2022.pdf)も、同じく必要であれば30日以内に生き延びられる資金を確保しつつ、以下のことを実行すべきと述べています。 1. 新たな収益源を作る 2. ユニットエコノミクス(顧客・製品・店舗などユニット単位で事業経済性を測定する会計指標)を改善する 3. コストカットする 4. 次の運転資金を得る Sequia Capitalの投資先で厳しい状況を乗り越えてきたスタートアップの例として、民泊サービスのAirbnbがあります。Airbnbはコロナ禍がはじまった2020年春に旅行のキャンセルが相次ぎ、[売上高が67%減少](https://economictimes.indiatimes.com/small-biz/startups/newsbuzz/airbnb-quarterly-revenue-drops-67-ipo-still-planned/articleshow/77516642.cms?from=mdr)し、次の四半期にはさらに売上が減少することが目に見えていました。 そんな状況でAirbnbは上記の1-4のすべてを実行しました。 1. 新たな収益源を作る 短期の観光宿泊ではなく、リモートワークや仮住まいの需要を捉え長期的な宿泊を伸ばすことへ戦略を大きく変えた。 2. ユニットエコノミクスを改善する [パフォーマンスマーケティングに対するコストを半減](https://www.campaignlive.com/article/airbnb-slashes-spend-permanent-shift-performance-marketing-brand/1708621)させても、トラフィックが大きく減らないことを発見し、ブランドマーケティングに投資の軸足を移すことにした。 3. コストカットする 短期的に大きなコストカットを実現するため、2020年5月時点で[従業員の25%にあたる1900人を解雇](https://www.npr.org/sections/coronavirus-live-updates/2020/05/05/850986054/airbnb-cuts-1-900-jobs-25-of-its-workforce-as-pandemic-freezes-travel)した。 4. 次の運転資金を得る VCからの株式発行による調達ではなく、[年利10%で1000億円](https://www.businessinsider.com/airbnb-paying-10-percent-interest-debt-valuation-cut-18-billion-2020-4)の大きな借入を実施した。2020年のAirbnbの企業評価額は2017年の半分となっており、リストラや高い金利での借入については、経営陣にとって苦渋の決断だったに違いありませんが、生き延びるためにAirbnbはその選択をしたのです。 Airbnbのように1-4を実践する企業が既に大企業でもスタートアップでも現れています。直近では[Netflixが2022年4月と6月に2回の従業員解雇](https://japan.cnet.com/article/35189446/)を行うなど、メディア企業においてもコストカットの事例を目にするようになりました。収益やユニットエコノミクスの改善についてはおそらく次の四半期決算で各企業毎に効果が現れてくる頃だと思われます。 # おわりに 今回は「景気後退(リセッション)におけるビジネスのあり方」についてとりあげました。 コロナウィルスによるパンデミックの影響が少し収まってきたかと思いきや、次は歴史的な景気後退と厳しい事態が続いています。それも対岸の火事ではなく日本でも多くの方が既に体感していることだと思います。現実問題として厳しい話になりますが、本稿で取り上げた事例の通り、生き抜くための資金を確保して、苦しい冬の時代を耐え忍ぶために、収益の改善とコストカットをできる限り進めるしかありません。 翻ってポジティブに捉えると、この状況を生き抜くことにより、大きく企業やビジネスが強くなるきっかけになります。Airbnbもコロナ禍を耐え抜いたからこそ、長期滞在という新たなターゲット層を発見し、不要なコストをカットしたことにより筋肉質で屈強な企業に[生まれ変わりました](https://wired.jp/2021/08/27/what-airbnb-summer-boost-reveals-about-covid-19-recovery/)。日本の企業では真似できない点もありますが、同じ考え方を適用できる場面もあるかと思います。 --- ## Z世代(GenZ)が注目する新たなソーシャルメディア URL: https://ximera.com/posts/24b6928b96 公開日: 2022-06-27 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #36|Ikuo Morisugi|June 27th, 2022 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第36回となる今回は「Z世代(GenZ)が注目する新たなソーシャルメディア」について取り上げます。 全世界でソーシャルメディアの利用者数は[46.5億人](https://www.statista.com/statistics/617136/digital-population-worldwide/)を超え、1日の平均利用時間は[約2.5時間](https://www.statista.com/statistics/433871/daily-social-media-usage-worldwide/)。多くの人がかなりの時間を使っていることが伺えます。 ソーシャルメディアはいわゆるいいねやコメントによって自己承認欲求を満たすことが麻薬的に作用します。人によってはそれがうまく満たされないときや、アンチコメントやハラスメントを過大に受けたときに、不安や鬱などメンタルヘルスの問題を抱えることになります。 より多くのソーシャルメディアを使うほどその傾向は顕著になり、7つ~11のソーシャルメディアを使っている人は、1つか2つしか使っていない人に比べて、[抑うつや不安を経験するリスクが3倍以上高い](https://www.braininstitute.pitt.edu/using-lots-social-media-sites-raises-depression-risk)という調査結果もあります。 ソーシャルメディアを利用している人のなかでも、とくにZ世代は良くも悪くもソーシャルメディアに強い影響を受ける世代です。調査を受けたZ世代は、[60%以上がInstagramやYoutubeを毎日チェック](https://www.businessinsider.com/gen-z-loves-snapchat-instagram-and-youtube-social-media-2019-6)しており、[43%が自身のポジティブなイメージを形成するためのコンテンツ「だけ」を投稿しなければならないと感じ、37%がたくさんのいいねやコメントを得るためのプレッシャーを感じています](https://www.pewresearch.org/internet/2018/11/28/teens-social-media-habits-and-experiences/)。 ほかの世代よりも「ありのままの自分でいたい」傾向が強いZ世代に、既存のソーシャルメディアに対して息苦しさを感じるタイミングがあるのは上記の調査からも明らかです。この問題を解決するためにいくつかのスタートアップが新たにZ世代向けのソーシャルメディアを提供しています。 今回取り上げる事例はいずれも「あえて不便にする」アプローチで、問題解決をはかろうとしています。便利一辺倒だけではないメディアのあり方を考える一助になればと思います。 ## 決まった時間にしか写真を投稿できない: BeReal 上記のZ世代が抱えるソーシャルメディアの問題に対してアプローチしているのが、写真共有ソーシャルメディアの[BeReal](https://bere.al/en)です。BeRealの特徴として、画像を加工するためのフィルターは設定できず、1日に1回しか投稿できません。仲のよい友達と同時にくる通知から2分以内が投稿のタイミング。2分で写真を撮って共有しないといけません。おまけにフロントカメラとバックカメラの両方が同時に動くため背景とセルフィーを同時に撮影することになります。 BeRealでは決まった時間内で同じグループの友達が画像を投稿できる image: [App Store](https://apps.apple.com/us/app/bereal-your-friends-for-real/id1459645446) BeRealでは決まった時間内で同じグループの友達が画像を投稿できる image: [App Store](https://apps.apple.com/us/app/bereal-your-friends-for-real/id1459645446) この画像を投稿するタイミングや回数や分数制限はユーザ側で変更することができません。つまり友達間で突然の「画像シェアタイム」がやってくるわけです。これは既存のソーシャルメディアを使っているとユーザにコントロール権がなく非常に不便であると感じてしまいますが、興味深いのはこの不便さこそが問題を解決するソリューションとなっていることです。 写真を共有するタイミングがコントロールできないことや2分間の時間制限により、事前に着飾ったり、部屋を掃除したりすることは時間制約的に難しくなります。またフロントカメラとバックカメラが両方同時に動くことで、自分が見ているものとセルフィーを同時に写され、普段のありのままの自分を見せるということになります。こうした制約によって、グループの友達が同じ条件で素の自分をさらけ出せることにつながっていきます。 BeRealは2022年Q1のUK、US、フランスにおける"最もダウンロードされているソーシャルメディアのアプリ"ランキングで、Instagram、Snapchat、Pinterestに次いで[4位](https://www.socialmediatoday.com/news/rising-social-app-bereal-is-gaining-momentum-with-downloads-up-315-this-y/621929/)と、ソーシャルメディア分野で大きく注目される存在となっています。アクティブユーザ数は[2022年の初めから4月あたまにかけて315%伸びていて](https://blog.apptopia.com/social-app-of-the-moment-bereal-grows-users-315-ytd)、2022年5月の報道では[868万ダウンロード、約300万のアクティブユーザ](https://www.businessinsider.com/bereal-buzzy-gen-z-social-media-app-raise-630m-valuation-2022-5)がいるとされています。 [Andreessen Horowitzなど著名VCが投資家として名を連ねており、2022年5月には企業価値が約6.3億ドル(約877億円)となったと報道されました。](https://www.businessinsider.com/bereal-buzzy-gen-z-social-media-app-raise-630m-valuation-2022-5)1年前の2021年6月に行った資金調達ラウンドでは、1.5億ドル(約202億円)の評価額だったため、約4.3倍になった計算になります。これまではとくにフランスとUSで大きく伸びており、今後さらに市場を拡大していくことが期待されます。 ## 友達しか自分の写真を投稿できない: Poparazzi BeRealが投稿できる時間やフィルタ機能を制限することでZ世代の問題を解消していることに対して、別のアプローチをとっているのが写真共有ソーシャルアプリ[Poparazzi](https://www.poparazzi.xyz/)です。 Poparazziは、[Anti Selfie Selfie Club(アンチセルフィーのセルフィークラブ = セルフィーに反対しながらセルフィーを投稿できる場)](https://medium.com/poparazzi/the-anti-selfie-selfie-club-ad1ce447ac91)を標榜しており、「自分の友達しか自分の写真を投稿できない」という制限をかけて、ユーザが素の自分を出していけるように誘導しています。こちらも「自分で自分の写真をコントロールできないなんてありえない」と思ってしまいますが、この制限のおかげでお互い素の自分を出し合って写真を共有することが促進されています。 一般的に撮影をする側は撮影対象の友だちを過度に飾ったり自己顕示させるモチベーションはありません。その友達の面白いところだったり、一緒にいて楽しいことを共有するために友達との写真を投稿します。そのため、ありのままの写真が投稿されることになります。 Poparazziは自分のプロフィールは友達が作り・写真を投稿する image:[App Store](https://apps.apple.com/gb/app/poparazzi/id1513680970) Poparazziは自分のプロフィールは友達が作り・写真を投稿する image:[App Store](https://apps.apple.com/gb/app/poparazzi/id1513680970) 自分のプロフィール作成も友達によって行われます。一緒に撮影した後に友達がタグ付けすることではじめて自分のプロフィールが作られるのです。ただし自分の気に入らない写真は削除したり、非公開に切り替えることもでき、承認した人しか自分の写真の管理はできないようになっています。 Poparazziは電話帳を利用することから、ユーザが、過去にストーカーやハラスメントを行った/行う可能性のある加害者を電話帳に登録していた場合、その加害者に対して自身のプロフィールや画像投稿へのアクセス権が付与されてしまうセキュリティリスクがありました。しかし過去1年間でこのリスクを回避するためのブロック・報告機能のほか、ヌードや悪意のある表現などを検出するための機械学習を利用したコンテンツモデレーションにも投資、健全なメディアを作ろうとしています。 Poparazziは登録アカウントが[500万を超えており、ユーザの75%は14-18歳、95%は14歳-21歳](https://techcrunch.com/2022/06/01/poparazzi-hits-5m-downloads-a-year-after-launch-confirms-its-15m-series-a/?guccounter=1)とZ世代の中でもティーンズを中心に人気を得ています。 Poparazziは[2022年6月にBenchmarkから1500万ドル(約20億円)を調達す](https://techcrunch.com/2022/06/01/poparazzi-hits-5m-downloads-a-year-after-launch-confirms-its-15m-series-a/?guccounter=1)るシリーズAうランドを実施し、さらなる成長が期待されます。 # おわりに 今回は「Z世代(GenZ)が注目する新たなソーシャルメディア」についてとりあげました。 これまで様々なソーシャルメディアが登場し、人々の依存度は上がり社会問題化しています。とくにスマホネイティブなZ世代では、自己承認欲求が強いインセンティブを持つ既存ソーシャルメディアに息苦しさを感じる層も一定数存在し、その傾向はさらに顕著になっています。その状況下でBeRealやPoparazziのように「あえて不便にする」ことで、素のまま・ありのままの自分を出せるようなソリューションが登場しています。 今回の事例を見ていると、既存のソーシャルメディアは一見便利で自由度が高いように見える一方、常に社会的に自分を良く見せなければ承認欲求が満たされず、素の自分を出せない不自由さがあります。この不自由さが故に、不幸・不便になる人たちがいます。これは、既存ソーシャルメディアのビジネスKPIに最適化したアルゴリズムがユーザの行動に強く影響を与え、社会的な害悪を生み出している可能性があるということです。これを回避する一つのアプローチが、今回紹介した事例のように投稿の制約・ルールを設けて害悪の事象が起こりにくくする方法です。制約・ルールがあることでこの状態をうまくコントロールする考え方は、社会における法律や倫理のようなものであり、そうした制度設計がサービスにおいても非常に重要であることがわかります。 こうした「あえて制約・ルールを課す」ことは、サービスやプロダクトに新たな発想をもたらす可能性があります。今後もこうした考え方自体や、Z世代のような新世代がそれに適応していく様子はメディアビジネスを検討していくなかでも注目すべきかと思います。 --- ## クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援 URL: https://ximera.com/posts/47a70616aa 公開日: 2022-06-08 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #35|Ikuo Morisugi|June 8th, 2022 ## はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第35回となる今回は、「クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援」について、取り上げます。 古くは2011年頃よりYoutube Starと呼ばれるYoutubeで収益を上げる人々が出てきたことに端を発し、近年ではYoutube、TikTok、Twitch、Spotify、Substack、またはその領域でクリエイターが収益を得ることができるようになりました。こうした状況は[クリエイターエコノミー](https://en.wikipedia.org/wiki/Creator_economy)と呼ばれています。今やクリエイターは世界で5000万人以上存在し、1042億ドル(約13兆円)以上の市場規模があると言われている大きな産業となっています。 一方で十分な収益を稼いでいるクリエイターは多くはありません。5000万人以上いるクリエイターの内、いわゆる趣味レベルを抜け出し、生活に困らない年収を得ているクリエイターは1%しかいないと言われています。 例えば、下図のように各音楽プラットフォームでの100万再生あたりの収益(Per Million Streams)は、Spoitfyで3,180ドル(約41万円)、Apple Musicでも8,000ドル(約104万円)で、アメリカの東海岸で[生活に困らない年収レベル(60,000ドル = 約780万円程度)](https://worldpopulationreview.com/state-rankings/livable-wage-by-state)を稼ぐには、それぞれ、Spotify 1886万回、Apple Music 750万回の再生が必要です。 image: [The Syllabus](https://invisiblecollege.substack.com/p/issue-9-soundxyz?token=eyJ1c2VyX2lkIjo4ODAxNjE0LCJwb3N0X2lkIjo1MDEwNjY4NSwiXyI6ImY1NFNJIiwiaWF0IjoxNjQ4MDYxMjMyLCJleHAiOjE2NDgwNjQ4MzIsImlzcyI6InB1Yi02NzQwNjYiLCJzdWIiOiJwb3N0LXJlYWN0aW9uIn0.MbYUGwBUmwB3cldIohw7bs-ORUHALwGHblfgsND4nAc&s=r) image: [The Syllabus](https://invisiblecollege.substack.com/p/issue-9-soundxyz?token=eyJ1c2VyX2lkIjo4ODAxNjE0LCJwb3N0X2lkIjo1MDEwNjY4NSwiXyI6ImY1NFNJIiwiaWF0IjoxNjQ4MDYxMjMyLCJleHAiOjE2NDgwNjQ4MzIsImlzcyI6InB1Yi02NzQwNjYiLCJzdWIiOiJwb3N0LXJlYWN0aW9uIn0.MbYUGwBUmwB3cldIohw7bs-ORUHALwGHblfgsND4nAc&s=r) 750万回の再生は、グローバルレベルのミュージシャンでようやく到達するような数字です。多くのマイナーなアーティストにとって現実的ではありません。こうした数字からクリエイターの1%しか専業で生きていけない実態を感じます。 99%のクリエイターは専業でやっていけない image: [a16z Future](https://future.a16z.com/creator-economy-levels/) を元に数字割合を加筆 99%のクリエイターは専業でやっていけない image: [a16z Future](https://future.a16z.com/creator-economy-levels/) を元に数字割合を加筆 このように上の図にある99%のHobbyist(趣味)を今後いかにFull Time Creator (専業)/ Star(スター)/ Mogul(大御所)へ移行できるかが、クリエイターエコノミー拡大への課題となっています。 専業クリエイターを増やすためのひとつのアプローチが、スタートアップ投資のように才能あるクリエイターに対して「前払い」で資金を提供し、その後に上げる収益でリクープするモデルです。今回はその仕組みを提供するスタートアップを事例として取り上げ、メディアがクリエイターとどう付き合っていくべきかを考えるための一つの材料となればと思います。 ## クリエイターがクリエイターを支援する: Creative JUICE より良いアイディアを持っているにもかかわらず資金繰りの問題でアイディアを実行できないクリエイターは多数存在しています。クリエイターはアシスタントを雇ったり、撮影スタジオを借りたり、新しい機器を購入できれば、より大掛かりな企画に挑戦することができます。 例えば9500万人のフォロワーがいるYoutuber/実業家の[Mr.Beast](https://ja.wikipedia.org/wiki/MrBeast)は、自身が丸ごと所有している島を使い、その島で生き残った最後の一人に賞金を送るイカゲームを模したバトルロワイヤルを動画の企画として実行しました。 [動画](https://www.youtube.com/watch?v=0e3GPea1Tyg)の再生回数は2022年5月27日時点で2.5億以上、スポンサーのゲーム(ブロスタ)は初回DL数が前週比4.5倍となり収益が大きく押し上げられる結果をもたらしました。しかし、[賞金総額](https://pickups.jp/global/29795/)は合計150万ドル(約1億9000万円)、設営費用200万ドル(約2.6億円)、さらにその後、売却する島に砂や木を植えるなど整形するのに[2000万ドル(約26億円)](https://supercarblondie.com/mrbeast-giving-away-20-million-island-youtube-video/)、合計でこの企画に約3000万ドル(約39億円)かけています。 スポンサー費用や動画広告の収益を加味しても、この動画単体だけではおそらく赤字(Youtubeでは1億再生で推定1000-3000万円ほどの広告収益)。Mr. Beastが手掛けるビジネスは、アパレル、飲食、アプリなど非常に幅広く、関連ビジネスへの集客としても大きな認知を得てトータルでペイしているものと考えられています。 この例はかなり極端なものになりますが、大きなインパクトを残すような企画を実行するには一般のクリエイターでは到底手元の資金では足りません。また旧来の銀行ではクリエイターのビジネスモデルは理解されがたく、一般的な中小企業のように融資を受けるのが難しいという側面もあります。さらにクリエイターの収益がグロースするかは、個人の企画やスキルに依存することになり、ベンチャーキャピタルが期待する何十億円規模の収益レベルにビジネスがスケールするか読めないため、リスクマネーも投入されにくいです。 このような状況を解消するために、MrBeastが投資家としても参加しているクリエイター専用の銀行・金融サービスの[Creative JUICE](https://www.getjuice.com/)は、Youtubeなどのメディアで活躍するクリエイターの予定収益(6ヶ月-3年間)をJUICE側へ一部シェアすることと引き換えに、[Juice Funds](https://www.getjuice.com/funds)と呼ばれるファンドから前払い金を受け取ることができるサービスを提供しています。最大で200万ドル(約2.6億円)を、2.5万ドル(約325万円)〜50万ドル(約6,500万円)の範囲で区切って資金が提供されます。 MrBeastのTweetがきっかけでJuice Fundsがスタート image: [Creative JUICE](https://www.getjuice.com/funds) MrBeastのTweetがきっかけでJuice Fundsがスタート image: [Creative JUICE](https://www.getjuice.com/funds) 興味深いのは、このプログラムはクリエイターが借金するのではなく、前払い金の返済時に不足分のリスクを負うのはCreative JUICE側となることです(収益ベースの資金調達)。収益シェア期間を過ぎたタイミングで、前払い金以下の支払い額となってしまってもCreative JUICEがそのリスクを負います。逆に予定収益通りであれば、Creative JUICE側も前払い金以上にリターンがあると想定されます。 Juice Fundsが活用された事例として、キーボードなどハードウェアをエンターテイメントとして扱うメディアの[SwitchandClick](https://switchandclick.com)は、Juice Fundsを使用して新しい機器を購入し、ビデオ編集者を雇いました。その資本の注入により、[彼らは収益を70%増加させ、残りの期間の半分で収益分配契約から買い取ることができました](https://techcrunch.com/2022/04/20/creative-juice-investment-creators-youtube/)。 Creative JUICEは当初200万ドル(約2.6億円)でスタートさせた第1号ファンドがうまくいき、2022年4月には、新たに5000万ドル(約65億円)の第2号ファンドを[スタートさせました](https://techcrunch.com/2022/04/20/creative-juice-investment-creators-youtube/)。今後資金がなくても面白い企画を実行できるクリエイターの専業化をますます促進していくことが期待されます。 ## スーパーファンから資金調達する: Superjoi クリエイターが前払い型の資金を得るために、スーパーファンがクリエイターの支援者になり、収益分配を得ることができる仕組みを提供しようとしているのがSuperjoiです。クリエイターにとっては前払い式の資金調達手段となり、ファンにとってはProduct Huntのように良質なクリエイターを発見する場としてSuperjoiは位置づけられます。 ファンがクリエイターを支援するプラットフォームは既にPatreon、OnlyFans、Kickstarterなどが存在していますが、ファンの課金(資金支援)に対してリワードやコミュニティを提供することが多く、ファンに収益を分配することはできませんでした。近年では株式購入型のクラウドファンディングもありますが、クリエイターは株式会社でないことも多く、株式発行ができないためあまり向いていません。 ファンにも収益分配や金銭的なリターンを提供できるスキームはWeb3や株式購入型クラウドファンディングでは標準的な考え方ですが、クリエイターに特化した資金調達プラットフォームとしては、まだ決定版が出現していない状況です。Superjoiはその座を狙っているものと見られます。 独自通貨のSupercoinでクリエイターを支援する Image: [Superjoi](https://superjoi.com/pre-register/superfan) 独自通貨のSupercoinでクリエイターを支援する Image: [Superjoi](https://superjoi.com/pre-register/superfan) Superjoiは、米ドルに対して1:1で連動する独自通貨であるSuperjoi Coinをクリエイターとファンに提供し、ファンに金銭的報酬を発生させることで経済圏を作り込んでいます。ファンがクリエイターを支援するには、Superjoi Coinを必要額購入して、好きなキャンペーンに支援額を投じます。各クリエイターはSupercoinを現金化して資金として使い、スーパーファンには限定アクセスや特典がを付与されます。 2022年5月時点ではベータ版で、ファンには金銭的報酬はなく特典のみの提供となっていますが、2022年の夏以降に支援したプロジェクトから生まれた広告収益の分配をファンに与える仕組みが[提供される](https://sp-edge.com/companies/1561746)としています。 ビジネスモデルはクリエイターがクラウドファンディングのキャンペーンで希望する資金調達額に対して10%の手数料を課す形となっています。Superjoiは[2022年4月にAscension Ventures等から250万ドル(約3.2億円)を調達](https://dot.la/superjoi-2657180821.html)しました。今後のクリエイターへの前払い式の資金調達プラットフォームとして確立できるか注目です。 ## おわりに 今回は「クリエイターエコノミーの実態とあるべき支援」についてとりあげました。現在多くの人々がクリエイター化していることは肌で感じられるものの、実態の収益分配の形としては、勝者総取りに近いものとなっています。 この状態が良いのか悪いのかは議論がわかれるところですが、よりたくさんのクリエイターがいることでより多様な価値観やサービスが生まれ、ニッチな細かいユーザ需要も満たせるようになるため、専業クリエイターがさらに増える状況が期待されます。 こうしたクリエイター支援の取り組みは、クリエイターと組んでコンテンツやキャンペーンを製作する、クリエイター向けの新たなビジネスを提供する、など企業にとっても、新たな発想をもたらす可能性があり、今後も注目すべきかと思います。 --- ## 『週刊文春 電子版』サブスクリプションビジネスの立ち上げから成長までの実践知 URL: https://ximera.com/posts/35468d22db 公開日: 2022-06-01 著者: Ximera
[キメラのトップページへ](http://ximera.com/) 株式会社文藝春秋が2021年3月にサービスを開始した『[週刊文春 電子版](https://bunshun.jp/denshiban)』は、雑誌『週刊文春』の記事をWebで閲覧できるサブスクリプションサービスです。 デジタルメディアのサブスクリプションという新たなビジネスモデルに挑み、今や同社のデジタルビジネスを牽引する存在へと成長を遂げつつある『週刊文春 電子版』の歩みは、意外にも地道なものでした。 『週刊文春 電子版』は月間6億PVを超えるウェブメディア『文春オンライン』から独立したウェブサイト。サブスクリプション課金の実装にかけた期間は約半年。サービス開始時に提供した購読プランは月額課金の1本勝負。サービスを素早く世に出し、改善を重ねながら成長を遂げてきた『週刊文春 電子版』は、スタートアップ企業のような「小さく生んで大きく育てる」事業づくりを体現しているのです。 新たなビジネスを始めるにあたって重要な概念として、商品やサービスが市場に適切に受け入れられている状態を指す「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」という概念があります。『週刊文春 電子版』は、いまだ国内の成功事例が少ないデジタルメディアのサブスクリプションビジネスにおいて、約1年という短期間でPMFを実現できた貴重な実例といえるでしょう。 株式会社キメラはSaaS型のサブスクリプション管理プラットフォーム「AE」を提供しており、『週刊文春 電子版』の有料会員サービスの立ち上げを支援しました。また、キメラは国内56メディアのデジタルビジネスを支援している経験をもとに、サブスクリプションビジネスやデジタル事業を運営するための知見をウェビナーなどのコンテンツを通じて発信しています。 今回開催するウェビナーは『週刊文春 電子版』のサブスクリプションビジネスを運営する担当者にお話をお聞きします。『週刊文春 電子版』の立ち上げから現在に至るまで、どのようなことに取り組んできたのか。今後の事業成長のために、事業・組織・ソリューションをどのように動かしていくのか。その軌跡は、新たにサブスクリプションビジネスに挑戦しようとする方や、従来のメディアビジネスのあり方に変化を起こそうとする方にとって、再現性のある学びを得られるはずです。お誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。 ## ウェビナーでお伝えする内容 - サービス立ち上げ時に考えたこと - サービス立ち上げ時の開発目標やソリューション選定について - サービスを成長させるために取り組んできた施策とその狙い - 事業の方向性を判断するときのポイント - ソリューションの新規導入や移行にあたって気をつけること - 『週刊文春 電子版』の今後の展望 ※変更の可能性があります ## こんな方におすすめのウェビナーです - メディアのサブスクリプション事業立ち上げを検討している、取り組んでいる - メディアのサブスクリプションビジネスにおける先進事例を知りたい - サブスクリプション事業を成長させるための実践知を獲得したい - パブリッシャーの社内で新規事業の立ち上げを検討している、取り組んでいる - パブリッシャーのデジタル事業に興味がある、関われるようになりたい - サブスクリプション管理プラットフォームの新規導入・移行を検討している --- ## GA4への対応、 一体どうすれば?メディア運営のためのKPIとデータ分析体制を徹底解説 URL: https://ximera.com/posts/f2f111cd74 公開日: 2022-06-01 著者: Ximera
[キメラのトップページへ](http://ximera.com/) ウェブサイトの分析ツールとして圧倒的な知名度とシェアを誇るGoogle アナリティクス。2020年10月には新バージョン「Google Analytics 4 property(以下「GA4」)」が公開され、従来版のユニバーサル アナリティクス(以下「UA」)は2023年7月1日以降はデータ計測・ダッシュボードの閲覧ができなくなることが明らかになりました。 GA4は計測できる指標や機能が大幅にアップデートされ、UAの計測データを引き継ぐことができません。UAの計測停止まで1年を切った今、もはやUAとは「別物」ともいえるGA4にどう対応するべきか、自社のデータ分析体制を抜本的に見直すべきタイミングといえるでしょう。 なかでも、デジタルメディアを運営している方は多くのお悩みを抱えているのではないでしょうか。 そんなお悩みにお答えするべく、GA4の概要を簡単におさらいするとともに、デジタルメディアに特化したKPIやデータの分析体制について解説するウェビナーを開催いたします。 株式会社キメラは、 国内32社68メディアのパブリッシャー(メディア運営企業)のデジタル事業を支援しており、 コンテンツのエンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)(チャートビート)」の日本総代理店としてデジタルメディアの分析支援や分析体制づくりに取り組んでいます。 今回のウェビナーでは、当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、時期やツールを問わず知っておきたい、メディア運営のためのKPIとデータ分析体制づくりのヒントをお伝えします。 ## ウェビナーでお伝えする内容 - GA4がメディア運営に与える影響 - メディアを取り巻く現状にみる、分析体制とKPIの見直しが必要な理由 - 知っておきたい指標「エンゲージメント」とは - コンテンツを作る人・届ける人がデータに親しむための体制づくりのヒント - これからの1年間でやるべきことのロードマップ - コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート)」のご紹介、画面デモ ※変更の可能性があります ## こんな方におすすめのウェビナーです - メディアのデータ分析に必要な考え方を身につけたい - GA4の機能については何となく情報が入手できたが、自社でどのように体制を構築するか悩んでいる - PV主体のKPIから脱却したい - 編集現場でデータを活用する方法を知りたい - 社内でデータ分析・活用の認識合わせをしたい - データ分析ツールの情報収集をしている、導入を検討している --- ## 付加価値を生む、キャリア開発支援の有料会員コミュニティ URL: https://ximera.com/posts/3c31920477 公開日: 2022-05-19 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #34|Ikuo Morisugi|May 19, 2022 [Business illustrations](https://storyset.com/business) by Storyset ## はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第34回となる今回は、「キャリア開発を支援する会員コミュニティ」について、取り上げます。 2020年にはじまったコロナ禍によって、人々の仕事のスタイルや価値観が大きく変わりました。外出が制限され、今まで盛んだった飲食・旅行・エンタメは産業全体が大きなダメージを受け、多くの企業がリストラやビジネスモデルの変革を求められました。またコロナ禍で業績を伸ばし株価も好調だった企業であっても、リモートワークでのコミュニケーションの難しさに悩まされながら、いかに従業員にフレキシブルな環境を与えつつ生産性を高めるのか苦慮しています。 USではコロナパンデミックを契機に「[Great Resignation(大離職時代)](https://www.dlri.co.jp/report/macro/174300.html)」を迎えました。USの非農業従事者の離職者数は、[2001年頃から年間200-300万を推移していましたが、2021年8月にはここ20年間で最大の430万人を超えました](https://www.cnbc.com/2021/11/01/great-resignation-may-be-altering-workforce-dynamic-for-good.html)。 アメリカの非農業従事者の離職者数は2021年8月にピークに image: [CNBC](https://www.cnbc.com/2021/11/01/great-resignation-may-be-altering-workforce-dynamic-for-good.html) data: [Bureau of Labor Statistics](https://www.bls.gov/opub/ted/2021/quits-rate-of-2-9-percent-in-august-2021-an-all-time-high.htm) アメリカの非農業従事者の離職者数は2021年8月にピークに image: [CNBC](https://www.cnbc.com/2021/11/01/great-resignation-may-be-altering-workforce-dynamic-for-good.html) data: [Bureau of Labor Statistics](https://www.bls.gov/opub/ted/2021/quits-rate-of-2-9-percent-in-august-2021-an-all-time-high.htm) これは以下のような要因が複合して起こっていると言われています。 - リモートワークを気に入った人がコロナ禍後もリモートワークを続けられる環境を求めた - 自身の業界が不況になったことで、転職を余儀なくされた - 経済活動自粛による貯蓄額の増加で、待遇よりも自身のやりたいことを職にしたい人が増えた - 仕事とプライベートがわけづらくなりバーンアウト(燃え尽き症候群)した - 業績好調なデジタル関連の求人が増え、待遇改善の機会が増えた こうした状況において個人は、人生の中で自身のやりたいことや叶えたいことを実現するためにどのようにキャリアを積んでいけるのか、転職という選択肢も含め以前にも増して考えるようになっています。また企業としても、この状況を黙って見過ごすことはできず、優秀な人材に自社にとどまってもらうための施策を打つ必要があります。 こうした状況に対するソリューションとして需要が急増しているのが、有料会員制のプロフェッショナルコーチング&コミュニティ提供によるPersonal Developmentの支援です。Personal Developmentとは、[個人の可能性と潜在能力を引き上げ、夢や願望を実現し、生活の質を高めるための一連の活動](https://en.wikipedia.org/wiki/Personal_development)を指します。 Personal Develomentの質を高めることで、個人は今後さらに充実した人生を歩める可能性が上がります。また、会員コミュニティにより提供されるPersonal Developmentの支援を企業が採用することで、従業員のネガティブな離職抑止に役立ち、良い企業文化を創造することにつながります。 今回取り上げる有料会員コミュニティは年間20万円を超えるような高額なコミュニティですが、それが非常に人気を博しています。かつ高度なテクノロジーが利用されているわけでもありません。コンテンツに高付加価値をつけられるビジネスの事例として、本稿でテーマとして取り上げます。 ## Medley: プロフェッショナルコーチング&コミュニティ 同じゴールを目指す個人をグループ化してプロフェッショナルコーチングを提供することでPersonal Developmentを支援しているのが[Medley](https://www.withmedley.com/)です。 Medleyは、キャリアバックグラウンドの異なる6-8人でグループを組み、1回あたり90分のセッションを全8回以上行う4ヶ月程度(セッションは隔月実施)のプログラムを提供しています。 ①キャリアチェンジ(For the Career Transition)、②人生への考え方(For Fuel)、③リーダーシップ(For the Leader)、④親としてのアイデンティティ(For the Parent)、⑤クリエイターの生き方(For the Creator)の[5つテーマ(Track)](https://www.withmedley.com/faq)から選択し、同じTrackを選んだ人たちでグループが構成されます。 グループに対して専門のコーチがつき、メンバーに対してテーマを与え、さまざまなフレームワークやツールを利用しながら、Personal Developmentが促進されます。 Medleyは[LinkedInとパートナーシップを組み](https://techcrunch.com/2021/10/07/medley-the-coaching-platform-for-personal-and-professional-development-gets-3-7m-led-by-a16z/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAKS026yYItA-UVLq_SkYpdfZh1MvaEDkuQ5PHcWs6iyS9NPybbRh9aAnztiYXjHOOzyBHrFykZA1OG4aVelFdJdmbxBqiCsW2ikgmNN9rsY3dDiMU6qmXqNYVlr5EghkNH8-t0Cq3U4nOmbybVSUwZkYj4VUvEpP68xjVA448F8f)、企業の従業員向けのPerosonal Developmentのパイロットプログラムを実施しました。結果として、NPS(Net Promoter Score: 他者に対してどれくらいそのサービスや製品をおすすめするか)が99%となり、非常にポジティブな効果が確認されました。 ビジネスモデルとしては、[年間契約モデルのみでMembership Feeとして1595ドル(約20.8万円)](https://www.withmedley.com/faq)を参加者が支払うモデルとなっています。多くの個人にとって20万円超の料金を支払うのは厳しいため、LinkedInの事例のように企業が従業員に対して提供するプログラムとして採用する他、個人でも機会に応じたディスカウントを提供(おそらく年収に応じた割引プラン (筆者想定))することで利用者を増やそうとしています。 Medleyは2021年10月に[Andreessen Horowitzをリード投資家としたSeedラウンドで、370万ドル(約4.82億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2021/10/07/medley-the-coaching-platform-for-personal-and-professional-development-gets-3-7m-led-by-a16z/)を行っており、さらに企業向けのプログラムを増やしビジネスの成長をさせていく狙いがあると思われます。 ## Chief: 女性エグゼクティブ特化のプロフェッショナルコミュニティ Personal Developmentを女性のエクゼクティブに特化して支援しているのが[Chief](https://chief.com/)です。CheifはC-Suite(所謂CXO)、Vice President、Executiveと呼ばれる、企業でハイクラスに所属する女性のみが参加できるプライベートコミュニティです。[Google、Apple、HBO、NASA、Nike、American Expressなど8500以上の企業から、12000人以上の女性エクゼクティブが参加](https://techcrunch.com/2022/03/31/womens-leadership-network-chief-surges-to-unicorn-status/)しています。 コミュニティ参加者はエクゼクティブコーチ付きのコアグループに分けられ、プロフェッショナルエクゼクティブとしてのトレーニングプログラムを受講できます。 またメンバー同士で、苦労やチャレンジについて共有すると、経験のあるメンバーがサポートやガイダンスを提供します。ハイクラスの女性エクゼクティブのみが所属できるコミュニティであるため、同等の悩みを過去に抱え解消したメンバーとマッチングすることで、実践的で役に立つアドバイスを得られることがChiefの一つの強みと言えます。Cheifはコミュニティのメンバーを厳選しているからこそ質の高いネットワークを構成できています。 女性のシニアエクゼクティブであれば誰でも参加を許しているわけではなく、[参加希望者の経験、所属企業、扱う予算規模、業績、表彰歴など様々な観点での審査](https://techcrunch.com/2020/05/21/chief-the-leadership-network-for-women-raises-15-million-in-funding/)があります。2022年3月時点で[6万人以上がウェイトリスト](https://techcrunch.com/2022/03/31/womens-leadership-network-chief-surges-to-unicorn-status/)でこのコミュニティへ参加を希望しているとされています。この選考プロセスやウェイトリストの多さからもコミュニティの質を非常に重要視していることが伺えます。 他にもプロフェッショナル向けのテーマが設定されたワークショップやディスカッションへの参加や、San Francisco、New York、Chicagoにあるイベントスペースを使って、ワークショップやパーティなどを開くこともでき、メンバー同士のネットワーキング機会を最大化しようとしていることが伺えます。 ビジネスモデルとしては、Medleyと同じく年間会員費を取る形で、[Executiveレベルで7900ドル(約103万円)、VPレベルで5800ドル(約76万円)となっています。2020年5月時点のメンバー構成は、40%がExective、60%がVPで、全体の30%が有色人種のメンバーが参加しています](https://techcrunch.com/2020/05/21/chief-the-leadership-network-for-women-raises-15-million-in-funding/)。 メンバー構成比が2022年3月時点でも同じと仮定した場合、1万2000人 x 40% x 7900ドル + 1万2000人 x 60% x 5800ドルで、年間の売上額は約100億円程度と推定されます(Grant Programと呼ばれる割引プランもあるため、実際はもう少し低い可能性があります)。 Chiefは[2022年3月にCapitalG(Alphabetのグロースファンド)をリード投資家としたSeries Bラウンドで1億ドル(約130億円)を調達](https://techcrunch.com/2022/03/31/womens-leadership-network-chief-surges-to-unicorn-status/)しました。企業評価額は11億ドル(約1436億円)で、1000億円を超えるいわゆるユニコーン企業となりました。 ## おわりに 今回は「付加価値を生むキャリア開発支援の有料会員コミュニティ」についてとりあげました。これまではどちらかというと、キャリア開発の観点では、各企業に最適化された従業員やマネージャーを育てるための研修やプログラムが提供されてきました。それ以外のキャリア成長につながる自己研鑽や人脈作りは基本的には個人がそれぞれ行っていました。 しかし、近年は例え表面上はうまくいっているように見えても、離職や転職を考える個人には従来の企業が提供するパッケージや自己流のやり方だけでは対応が難しくなっています。そんな中でPersonal Developmentに役立つプログラムやコミュニティをコンテンツとして提供することで、高い付加価値を生み出しています。これによって、企業は従業員のエンゲージメント向上につなげられ、個人は自身のキャリア成長の速度を上げることができます。 このように長期的にキャリアを形成していくためのアプローチは、キャリア成長を望む個人であっても、優秀人材を囲いたい企業側であっても、非常に重要になってきています。 質の高いメンバーをキュレートし、ワークショップやディスカッションを行うコミュニティを提供すること自体は従来からあるアプローチです。しかし、コロナパンデミックで表出した問題に対して、個人/企業に共通する課題解決を行いビジネスとして成立させたことは、今回の事例は新たなビジネスを生み出す観点でも非常に参考になります。 新たなメディアビジネスを考える際にも「付加価値を高める」コンテンツやコミュニティは何なのか、それは高度なテクノロジーがなくても実現できるものなのか、改めて考えてみるきっかけになると幸いです。 --- ## デジタルメディアのサブスクリプション、どう実現する? 課金パターンと事例を解説 URL: https://ximera.com/posts/0e1c260759 公開日: 2022-05-09 著者: Ximera [Online illustrations by Storyset](https://storyset.com/online) # デジタルメディアのサブスクリプション、どう実現する? 課金パターンと事例を解説 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動をはじめて以来、国内50を超えるメディアにサービスを提供しています。 サブスクリプション(有料定期購読)は、デジタルメディアの収益化において期待と注目を集めている手法のひとつです。しかしながら「紙面のように手に取れる商品がないだけに、ビジネス設計に悩んでいる」という声もひんぱんにお聞きします。 今回のブログでは、デジタルメディアにおける代表的なサブスクリプション課金のパターンや、向いているメディアの特性を国内外の事例とともに紹介します。 ## 1. 一部のコンテンツを有料化する --- トップページや記事一覧のなかに、有料購読者だけが閲覧できるコンテンツを配置することで課金を促すパターンです。日本のニュースメディアでよく見かける「鍵掛け記事」も該当します。無料コンテンツによって一定の集客を担保できることに加え、課金の対象にしたい記事をその都度設定できるので、バランスのよい運用がしやすい点が魅力です。 ![](/images/posts/0e1c260759/screenshot-2022-03-08-13-24-21.png) トップページや記事一覧に、有料購読者だけが閲覧できるコンテンツを配置する おすすめの実装 - プラン:月額・年額の定期購読 - マーケティング: - 無料お試し期間を設けてコンテンツの魅力に触れてもらう - 特定チャネルの読者に割引クーポンを発行 向いているメディア - ビジネスモデル:無料広告モデルとの両立をはかりたい - 運営体制:コンテンツを出稿・編成する体制を統一したい - コンテンツの特性:熱心な読者がついているコンテンツ、テーマ、著者コラムがある 採用事例 - [CNBC](https://www.cnbc.com/) - [日本経済新聞](https://www.nikkei.com/) - [ダイヤモンド・オンライン](https://diamond.jp/) ### 成功のために 留意すべきは「長い付き合いのできる読者をつねに意識する」ことです。有料購読のモチベーションが特定のコンテンツに由来しやすいので、瞬間的なページビュー数や有料課金の転換数だけで読者層を判断してしまうと、結果的に長期的な課金につながりにくい読者が集まってしまうことにもつながります。メディアへの愛着を持ってくれる読者層を見極め、集客においても狙いを持つことが重要です。 ## 2. 無料で閲覧できるコンテンツ量に上限を設ける --- いわゆる「読み放題」を課金の根拠とするパターンです。すべての記事を「原則として有料コンテンツ」として扱い、閲覧したコンテンツの本数が一定量を超えるとペイウォール(有料課金を促すコンテンツウォール)を出現させます。一定の基準に達するまではすべてのコンテンツを無料で閲覧できるので、コンテンツを起点に幅広い読者にリーチできることが強みといえます。 ![](/images/posts/0e1c260759/screenshot-2022-03-08-13-37-50.png) コンテンツを一定量まで無料で閲覧でき、超過するとペイウォールが出現する おすすめの実装 - プラン:月額・年額の定期購読+月間◯本無料 - マーケティング - 回遊の高い時期・チャネルで無料お試し - 長期購読者を対象としたクーポンで継続を促進する 向いているメディア - ビジネスモデル:無料広告モデルと両立したい - 運営体制:コンテンツ量が多く、出稿や有料化の判断にかかる負荷をおさえたい - コンテンツの特性:習慣的にメディアを訪れるコンテンツが一定量提供できる 採用事例 - [The New York Times](https://www.nytimes.com/) - [Bloomberg](https://www.bloomberg.com/) - [あなたの静岡新聞](https://www.at-s.com/news/index.html) ### 成功のために 留意すべきは「メディアへの訪問を生活習慣に溶け込ませること」です。コンテンツを何度も読むことでペイウォールが表示される特性から、無料で閲覧できる範囲で満足されてしまって有料購読につながらなかったり、メディアへの訪問頻度が落ちて解約のリスクが高まることが想定されます。日々メディアに訪れ、一定量のコンテンツを消費する習慣をいかに作るかがカギといえるでしょう。 ## 3. 有料購読者向けのコンテンツを集めたエリアを設ける --- 有料購読者だけが読めるコンテンツを一箇所に集め、特設サイトのような見せ方をしているケースです。無料で読めるコンテンツと掲載場所を分けることで、有料購読プランならではのブランディングや、機動的なサービス提供をしやすくなることがメリットです。 ![](/images/posts/0e1c260759/screenshot-2022-03-08-13-43-37.png) 有料購読者だけが閲覧できるコンテンツを一箇所に集め、特設エリアをつくる おすすめの実装 - プラン:月額・年額の定期購読 - マーケティング - 無料お試し期間を設けてコンテンツの魅力に触れてもらう - 有料購読者へのメール配信で付加価値アップ 向いているメディア - ビジネスモデル:無料で読めるコンテンツと棲み分けをはかりたい - 運営体制:既存チームと組織を分け、スピーディな改善や施策を行いたい - コンテンツの特性:独自のコンテンツや世界観に対して熱心なファンがついている 採用事例 - [週刊文春 電子版](https://bunshun.jp/denshiban) - [WIRED 日本版](https://wired.jp/membership/) ### 成功のために 留意すべきは「デジタルで購読したくなる明確な価値を打ち出す」ことです。有料購読者向けのエリアに訪れる読者は、紙媒体の愛読者を含め、メディアのブランドやコンテンツに肯定的なイメージを持っている可能性が高いです。単に紙面のコンテンツをデジタル化するだけでは、紙面の愛読者は「慣れ親しんだ紙面を買い続ければ十分だ」と判断するでしょう。また、デジタルにおいても無料コンテンツとの違いが不明瞭だと、現状のコンテンツに満足している読者にとっては有料購読の必要性を感じにくいはずです。既存の紙媒体や無料コンテンツでは得られない、デジタルサブスクリプションならではの価値を明確に伝えることが重要です。 事例において『週刊文春 電子版』はスクープが紙媒体よりも早く読める利便性を押し出していますし、『WIRED 日本版』はサブスクリプションサービスを「特区」と位置づけて独自の世界観を打ち出しています。運営体制においても、従来とまったく異なるオペレーションや施策を念頭に置くとよいでしょう。 ## 4. メディア全体を有料購読者向けにする --- メディアに掲載するすべてのコンテンツにペイウォールを設置し、有料購読を促すパターンです。無料で読めるコンテンツをあえて提供しないことで、紙媒体のような統一された世界観をつくりやすかったり、有料購読に対するプレミアム感を演出しやすかったりするメリットがあります。 ![](/images/posts/0e1c260759/screenshot-2022-03-08-14-00-45.png) 全コンテンツにペイウォールを設置する、いわゆるハードペイウォールメディア おすすめの実装 - プラン:月額・年額の定期購読 - マーケティング - 無料お試し期間や割引クーポンを初期の読者に提供する - 有料購読者へのメール配信で付加価値アップ 向いているメディア ビジネスモデル:広告モデルを利用せず有料購読者の満足度を高めたい オペレーション:認知向上のための施策やブランディングに経営資源を投下できる コンテンツの特性:独自性の高いコンテンツを継続的に提供できる体制がある。ターゲット顧客に明確なニーズがあるコンテンツを提供できる 採用事例 - [The Washington Post](https://www.washingtonpost.com/) - [The Athletic](https://theathletic.com/) - [Slownews](https://slownews.com/) ### 成功のために 留意することは「新たな読者を得るための戦略的なPR」です。すべてのコンテンツにペイウォールが設けられているため、新たな読者との接点を戦略的につくりだすことが不可欠です。たとえば、この課金モデルの代表例であるスポーツメディア「The Athletic」は、他メディアやスポーツチームと提携し、無料お試し期間や割引を効果的に提供することで読者を獲得しています。 ## 5. メンバーシップを提供する --- 購読の対価を「コンテンツを閲覧すること」ではなく「メディアのコミュニティに加わる、メディアを支援する」ことに位置づけているパターンです。メディアの運営メンバーと近い距離で関われることを付加価値とする、もしくはメディアの運営方針を継続するためのサポートとして課金を呼びかけるケースが多いです。 ![](/images/posts/0e1c260759/screenshot-2022-03-08-14-07-05.png) 購読の対価を「コミュニティに加わる、メディアを支援する」ことに位置づける おすすめの実装 - プラン:月額・年額の定期購読 - マーケティング - クラファン支援者などに割引クーポン進呈 - 有料購読者へのメール配信で付加価値アップ 向いているメディア - ビジネスモデル:広告モデルを積極的に利用せず、無料コンテンツを維持したい - 運営体制:運営者たちの顔が見え、個性や考え方を押し出すことができる - コンテンツの特性:メディアの存在や活動方針に対して熱心なファンがついている 採用事例 - [The Guardian](https://www.theguardian.com/) - [デイリーポータルZ](https://dailyportalz.jp/hagemasu_goannai) ### 成功のために 留意すべきは「共感や応援の気持ちを広く生み出すため、継続的な接触をつづける」ことです。明確な対価を設定しないモデルであるだけに、課金のハードルはこれまで紹介したケースよりも比較的高いといえます。持続的に収益を得るためには、メンバーシップに加わりたくなるほど熱心な読者を確保し続けることが大切です。新たな読者を呼び込み、既存の読者の心をつかみつづけるために、メディアの魅力やメッセージを広く長く伝えていくことが重要です。 ## コンテンツこそが価値の源泉 --- ご覧になって気付いたかもしれませんが、記事のなかでは繰り返しコンテンツについて述べています。デジタルメディアのマネタイズを検討する際は「コンテンツは無料で読めて当たり前だから、紙媒体とはまったく違うことをしなくては」と考える方もいるかもしれません。 しかし、これまで積み上げてきたコンテンツの魅力やメディアブランドと結びつかないサービスは、短期的には収益に結びつくかもしれませんが、中長期的にはユーザーが定着しなかったり、ともすれば既存媒体のブランドを傷つけてしまうかもしれません。 付加的なサービスはあくまでも満足度を高めるものであって、読者がメディアにお金を払う価値の根源はあくまでもコンテンツ――すなわち、メディアが培ってきた世界観や価値観、知見、書き手の魅力、業界へのネットワークではないでしょうか。メディアにとっての価値の源泉を見失うことなく、デジタルメディアに適した表現や課金パターンを模索いただきたいと思います。 ビル・ゲイツが1996年に「Contents is king(コンテンツこそが王者である)」と題したエッセイを著してから四半世紀が経ちます。いまでも色褪せないメッセージとして肝に銘じたいものです。 ["Content is King" - Essay by Bill Gates 1996](https://medium.com/@HeathEvans/content-is-king-essay-by-bill-gates-1996-df74552f80d9) Akiko Nakayama|Mar 9, 2022|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## Web3の理想と現実 URL: https://ximera.com/posts/539120b577 公開日: 2022-04-26 著者: Ikuo Morisugi Ximera Media Next Trends #33|Ikuo Morisugi|April 26, 2022 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第33回となる今回は、「Web3の理想と現実」について、取り上げます。 Web3については本連載では「ブロックチェーンに代表される分散化技術を使った脱中央集権的な新しいインターネットの形」と定義し、これまで何度か取り上げてきました。 これらの概念やそれを実装したサービスがWeb3と言われるものです。 - 分散自律的にプロジェクトやコミュニティが立ち上がる - 貢献する行動をとるユーザに暗号通貨やNFTの報酬が分配される - コミュニティによってプロジェクトやプロダクトの意思決定がなされる Web3は[2021年の秋頃から盛り上がりはじめ](https://trends.google.co.jp/trends/explore?q=web3&geo=JP)、現在では社会的にもバズワード化し、連日様々なメディアでニュースとして取り上げられるようになりました。また、[自民党からNFTホワイトペーパー](https://www.taira-m.jp/NFT%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%A1%8820220330_%E6%A6%82%E8%A6%81%E7%89%88.pdf)(案)が発表され、部会で承認されるなど民間・行政どちらからも着目されているビジネス/技術トレンドと言えます。 Web3は一見理想的な解に見えますが、その思想や理想と、現実の実装との間には残念ながらギャップがあります。バズワードとなった言葉はその抽象度も相まって、本当に何ができるのか良く理解されない期間があります。 例えば、今でこそクラウド、IoTといった言葉は、何を表すか、何ができるか認識が揃ってきましたが、バズワード化した際は定義もバラバラでしたし、実際どこまでできているのか社会でイメージが統一できず、理想と現実のギャップがある状態でした。 近年ですと、メタバースやWeb3がそれに当たります。そうした抽象度の高いバズワードをバランス感覚をもって捉えることで、流行に踊らされすぎず、うまく波に乗るということができると考えられます。 本稿では、Web3が理想としているものと現実に起こっていることを事例として取り上げ、ギャップや問題を正しく理解することを目的とします。また本連載でも今後どのようにその問題を解消できるのか、スタートアップの事例も交えながらご紹介したいと思います。 # Web3の理想像 Web3が支持されている理由として、大きく3つの特徴があります。 1. データの相互接続性(Interoperability): データの所有権はユーザに移り、異なるプラットフォーム間で自分のデータを一貫して利用できる 2. 貢献に対するインセンティブ付与(Financialization of Everything): 貢献するユーザへ報酬が分配される 3. ビルディングブロック性(Composability): データやコンテンツを組み合わせることによりにより新たなユースケースが生まれる ### 1. データの相互接続性(Interoperability) Etheriumなど共通ブロックチェーン規格にトランザクションが記録されることにより、データの相互接続が可能になります。Web2ではTwitterで獲得したフォロワーをFacebookにも持っていくことはできませんが、Web3では同様のことが可能になります。 例えば、Web3のブログプラットフォームの[Mirror](https://mirror.xyz/)で作成された記事は、同じくWeb3コミュニティの[HiDE](https://hide.ac/)にインポートやエクスポートすることができます。他にも異なるウォレットアプリ間でNFTを受け渡しできたり、元々購入したNFTマーケットとは異なるマーケットでNFTを売り買いできます。 各エンドユーザやノードが持つデータが、プラットフォームやアプリケーションから切り離され、オンチェーンで管理されることで、ユーザが所有する・所属するデータの相互運用を可能にしています。 ### 2. 貢献に対するインセンティブ付与(Financilazation of Everything) ブロックチェーン上のサービスで管理・運用されるトークンが発行され、そのサービスやプロジェクトに貢献的な行動をするユーザにインセンティブが与えられます。 例えば、ある著者が新刊を発行したいとき、NFT化して、その一部をユーザへ分割して資金援助をしてもらうことが可能です。分割されたNFTの保持割合に応じて、資金援助したユーザにも将来的にトークン報酬を渡すことや、今後のプロジェクトの方針を決める投票の権利等を渡すことができます。 このように従来ファンと呼ばれていたようなユーザを巻き込み、貢献的行動に対して報酬を渡すことで、これまで金銭的や待遇的に報われなかった面に光を当てることが可能になりました。 ### 3. ビルディングブロック性(Composability) Web3では、各データやコンテンツがそれ自体を材料としてみなし、それを組み合わせることで新たなデータやコンテンツを生み出すことができます。 例えば、元Vine創業者のDom HoffmannさんがはじめたNFTプロジェクトの「LOOT」は、最初は8つのアイテム名のテキストでしかなかったNFTが発行されたことをきっかけに、インターネットコミュニティのクリエイターや開発者が集まって、[無数の派生NFTコンテンツやプロジェクトが生まれました](https://bspeak.substack.com/p/loot-?s=r)。テキストに絵をつけたり、別の人が作ったいくつかのNFTを素材として組み合わせて新しいアイテム(合成NFT)を作ったり、Lootで利用できるDAO用のガバナンストークンができたり、と様々な事例が起こりました。 初期にLootのNFTを発行したDomさんは、8000個のLootを発行できる仕組みは提供しましたが、具体的に何を作るか、どう作っていくかを指揮したわけではなく、自然発生的な流れで開発者やクリエイターが参加し、素材・作品・ツールが生まれていきました。これはまさにWeb3の持つコンポーザビリティによって実現されたボトムアップな事例になります。 以上のようにWeb3の3つの特徴を兼ね備えて実現されたサービスはとても魅力的に思えます。この仕組みをみなが実装していけば、ユーザ主導でデータが管理され、貢献的行動をとる人にしっかり報酬が払われ、誰もが自由に2次創作し、面白いものが次々と出来上がってくる未来も想像に難くありません。この世界観に多くの支持者を得て今のWeb3のムーブメントが起こっていると考えられます。 # Web3の現実 一見理想郷のように思えるWeb3ですが、現実はそれほど甘くはありません。ここでは、理想と乖離する代表的な3点をとりあげます。 1. 中央集権的なプラットフォームへの依存: NFTなどデータの保持が特定のプラットフォームに依存するケースがあり、プラットフォームがダウンしたり、制限をかけたりするとユーザが所有するデータも利用できなくなる 2. 総体としてコストの高さ: プラットフォームの手数料は確かに低くなっているが、ネットワーク利用料(ガス代)やトランザクションに必要なノードの数などネットワークのトランザクションコストが高い 3. 利用ハードル・セキュリティ・脆弱性: Web3系サービスは金銭的な初期投資および利用技術やセキュリティに対するリテラシーを求められ、多くのユーザにとって使うハードルが高い ### 1. 中央集権的なPFへの依存 Web3は総体としてはたしかにEtheriumなどパブリックなブロックチェーンの仕組みの上に様々なサービスがオーバレイすることで、分散自律型になっています。ただし、そこに内包される仕組みについては、一部中央集権的にならざるを得ない部分があります。 例えば、様々なdAppsと呼ばれる分散自律型アプリケーションの多くは、様々なブロックチェーンと通信するために、[Infura](https://infura.io/)や[Alchemy](https://www.alchemy.com/)と呼ばれるWeb3版のIaaS*を利用しています。ということは、InfuraやAlchemyがダウンしたり、ハッキングされたりすると、当然多くのアプリケーションが利用できなくなってしまいます。 またデータの接続性についても問題のある事例として、[各NFTマーケットで同じNFTにもかかわらず異なる画像を設定できることを実験を行っていた技術者(メッセージアプリSignalの創業者 Moxie Marlinspikes)のNFTが、警告もなくOpenseaから削除されました](https://moxie.org/2022/01/07/web3-first-impressions.html)。そして驚くべきことに、そのNFTがウォレットアプリのMetaMaskで表示されなくなってしまったのです。例えプラットフォームから削除されたとしても、元々のNFTデータはブロックチェーン上に記録されているためNFTはなくならないはずです。 ですが、この例ではMetaMaskがOpenseaのAPIからNFTのデータを参照しているために表示できなくなりました。おそらくパブリックチェーンにデータは残っているはずですが、上記のように既に人気を博しているウォレットアプリ・NFTマーケット・IaaSなどに依存し、オンチェーンのデータを参照しないことで、ユーザが不利益を被っています。これではWeb2と同じで、データの相互接続性が実現しているようには見えません。 ### 2. 総体としてのコストの高さ 新たなWeb3サービスでは、手数料の低さを掲げることが多いです。例えば、HiDEは課金が発生するトランザクションで最低で[0.5%の手数料](https://hide.ac/articles/J6P9K_BTo)しか取りません。暗号通貨の交換サービスのUniswapでもトークンの組み合わせによりますが[0.3%の手数料](https://docs.uniswap.org/protocol/V2/concepts/advanced-topics/fees)です。こうした低い手数料が人々のトークン経済やWeb3サービスへの興味関心を促進しているのは間違いありません。 一方でブロックチェーンを単なる分散型のデータベースとして見たときに、そのトランザクションにかかる金銭的コストとネットワークパフォーマンスは決して良くはありません。Etheriumでは送金や決済を行う際に[ガス代と呼ばれるネットワーク料](https://www.coindeskjapan.com/137693/#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E4%B8%8A%E3%81%A7ETH%E3%82%92%E7%A7%BB%E5%8B%95%E3%81%95%E3%81%9B%E3%82%8B%E3%81%AE,%E6%AC%A1%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%80%82)がかかります。ガス代は仮想通貨(ETH)建てで支払う必要があるため、Etheriumのトークンとしての価値が高まると、ガス代も高くなる仕組みになっています。これはEtheriumネットワークへのハッキングを防ぐための仕組みではあるのですが、それが故に決済金額の手数料のように上乗せされてしまいます。またより早く取引を完了させるためには、上乗せのチップが必要となり、さらに金額がかかってしまうことになります。 トランザクションの速度もブロックチェーンの課題となっています。送金や決済でも数秒~数時間がかかるため、中央集権的なデータベースや既存の決済ネットワークと比べるとスピードが遅いです。ネットワークのパフォーマンスを良くするためには、ネットワークの混雑を減らし、高いガス代を払うことが必要になります。 これらを総合して送金や決済に関して乱暴に言ってしまえば「Visaでクレジットカード決済する方が決済速度も手数料も安い」場面があるということです。これは決済だけではなく、意思決定でも同じことが言えます。分散自律型であるが故に意思決定に時間がかかることで、DAOのコミュニティで意見や方向性がまとまらない等の弊害が生まれています。この状況は、まだWeb3が一部のアーリーアダプターしか巻き込めていない状況で露呈しているため、後続の参加者のモチベーションを下げないためにも改善が必要になってくる点です。 ### 3. 利用ハードル・セキュリティ・脆弱性 Web3サービスの中には一般の人にとって使い始めるまでにかなりハードルが高い場合があります。例えば、NFTスニーカーを履いてウォーキング・ジョギングによりトークンを稼ぐことができる「Move to Earn(動いて稼ぐ)」をコンセプトにあげている[STEPN](https://stepn.com/)ですが、はじめるためには最初にNFTスニーカーを購入する必要があります。NFTスニーカーを購入するには、仮想通貨ウォレットを作り、海外の取引所でSolanaトークンを購入する必要があります。2022年2月末で初期費用が約8-9万円かかるため、多くの人にとってははじめるだけでも非常に敷居が高いものになっています。 STEPNの他にも、[Play to Earn](https://signal.diamond.jp/articles/-/1141)、[Learn to Earn](https://proofoflearnio.medium.com/proof-of-learn-raises-15m-in-seed-round-led-by-nea-899ca96cf718)など様々な「X to Earn(Xして稼ぐ)」のサービスが数多く生まれている状況ですが、多くは初期投資が必要なことが多く、将来的な価格下落などリスクも踏まえた上で入り込む必要があります。 また、現在[DiscordなどでNFTやWeb3に関する詐欺が大量に横行](https://www.theverge.com/2022/1/7/22870912/nft-communities-boom-discord-hackers-cryptocurrency-webhooks)しています。Web3のサービスのコミュニティ上のコミュニケーションはDiscord上で運営されることが多い(Discord自体はWeb2のサービス)ため、Discordにいるユーザに向けて毎日大量のスパムメッセージが送られています。NFTアートなどは、同じ画像を誰でもNFTとして出品できてしまいます。誰が出品したか、どのような取引を経てきたかは、オンチェーンに記録されていますが、残念ながら出品されたアートが本物か偽物かは検証できません。またプラットフォームの脆弱性をついた、[高額NFTアートの盗難](https://nextmoney.jp/?p=49641)なども事件として起こっており、参加するユーザが高いリテラシーを持って対応できないと危険な事態を招く可能性もあります。 # おわりに 今回は「Web3の理想と現実」についてとりあげました。Web3はこれまでプラットフォームにロックインされてきたユーザやクリエイターが、データを所有し様々なプラットフォームを相互接続、貢献するごとにインセンティブを獲得し、コンポーザビリティによって新たなコンテンツ生成を広げていく、という新たな経済循環モデルを作る土台になりえるものです。 一方で実は中央集権的なプラットフォームに依存する形が一部起こっていることや、ネットワークパフォーマンスや手数料の観点で総体としてのコストはまだ高いこと、適切なリテラシーを持って対応しないと盗難や詐欺にあうこともあります。もしこれからWeb3に入り込むのであれば、こうした現実を意識した上で取り組むべきです。 まだWeb3自体がメインストリームとなるのか、一時期の流行となるかは読めない状況です。ビジネス的にも技術的にもこれだけ大きな変化が起こることは稀で、起こっている現実は理解しつつも、まだ諦めたり見過ごす段階ではないと思われます。特に、Web3は「個人がデータやコンテンツや活動結果を所有し、アイデンティティがそこに紐づくこと」を可能にするソリューションで、それが社会を大きく変える可能性があります。引き続きXimera Next Trendsでもこの動向を追っていきたいと思います。 --- ## 天狼院書店に学ぶ「生き残るためのイノベーション戦略」 URL: https://ximera.com/posts/6e4e05d891 公開日: 2022-04-01 著者: Ximera
### イベント概要 「出版不況」と叫ばれて久しい昨今、新型コロナウイルスの感染拡大による店舗ビジネスの打撃もあいまって、大型書店までもが相次いで閉店・撤退を強いられています。こうしたニュースに胸が痛み、先行きに不安を感じることもあるかもしれません。こうした逆風にもかかわらず、拡大を続けている新刊書店があることをご存知ですか? 天狼院書店は2013年に東京・池袋に1号店をオープンして以来、大阪・京都・福岡・名古屋へと展開を広げ、全国10店舗を運営しています。「READING LIFEの提供(本の先の体験を提供する)」を創業時から掲げ、書籍を売るだけでなく、読書会コミュニティの運営・イベント・旅行・飲食サービスなど、書店のイメージをくつがえすサービスを通じてファンを獲得。オンラインにおいても、サブスクリプション型のWEB雑誌・オンライン講座・副業プラットフォームと、独自の強みを生かした新サービスを続々とスタートしています。 コロナ禍に負けることなく、個性豊かなビジネスを仕掛ける天狼院書店。その秘訣は「生き残るためのイノベーション戦略」にありました。 株式会社キメラはSaaS型のサブスクリプション管理プラットフォーム「AE」を提供しており、天狼院書店が運営する[WEBサイト](http://tenro-in.com/)の有料課金基盤として採用されています。また、キメラは国内29社63メディアのデジタルビジネスを支援している経験をもとに、サブスクリプションビジネスやデジタル事業を運営するための知見をウェビナーなどのコンテンツを通じて発信しています。 今回開催するウェビナーは天狼院書店・店主の三浦崇典さんに登壇いただき、事業づくりの裏側や、サービス実装のポイントをお聞きします。 ### こんな方におすすめのウェビナーです - 中小規模の出版社やメディア運営者で、新たなマネタイズ方法を模索している - メディアにおいて新規事業を運営するための実践知を獲得したい - 記事コンテンツの販売にとどまらない価値提供をしたい - 国内におけるメディアビジネスの実践知を知りたい - サブスクリプション管理プラットフォームの情報収集をしている --- ## 体験型コマースで購入前後の期待ギャップを埋める URL: https://ximera.com/posts/706259876e 公開日: 2022-03-28 著者: Ikuo Morisugi ## これまで得られなかった体験をどう実現していくか Ximera Media Next Trends #32|Author: Ikuo Morisugi|March 28, 2022 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第32回となる今回は「体験型コマース」について、取り上げます。 コロナ禍を経て現代では物販に関して[ECを使う割合が増えました](https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html)が、ECで購入前に期待したことと実際に手に届いた製品のギャップを感じることがあります。大きさ、形、重さ、色、匂い、効用、使い心地などさまざまな点で、実際に使ってみないといけないとわからないことがあります。 多くの場合、製品詳細をよく読み、ユーザのレビューを確認することで、購入前にギャップの解消を図ろうとしますが、ときには読みが外れてしまうこともあります。とくにシャンプー、化粧品、インテリアなどの製品は、試してみないとよくわからない上、一度買って使ってしまったら返品も容易ではなく、満足いかないまま処分するか使いつづけることを強いられます。 これまでは、ショールーム化された店舗を訪れ実物を確認する、AR機能を使ってスマートフォンで3Dの製品イメージを確認する、などで期待ギャップを埋めようとするソリューションが提供されてきました。一方で既存のソリューションは依然として形や色味を確認できる程度で、実際利用したときに得られる効能や製品同士を組み合わせたときの状況をリアルに想起することができません。 こうしたギャップ解消が十分できていない問題に対し、購入前に「体験」の一部を提供することでうまく解消しようとするサービスにシリコンバレーをはじめスタートアップ界隈で投資が集まっています。今回はそれを「体験型コマース」と呼び、事例を見ていきたいと思います。 # 実利用をきっかけとしたコマース体験: Minoan Airbnbで宿泊すると、ホテル顔負けの整備された宿泊施設で、今まで使ってみたことがなかった良い家具や調理器具、家電に触れる機会がしばしばあります。実際に使ってみるととても良い印象で、自分でも欲しいと思うことがありますが、どこのブランドのものかわからないことも多いですし、わざわざオーナーに聞くのも面倒です。そういった製品は気にはなるものの、結局探すことを諦めてしまいます。こうした問題をうまい方法で解決しソリューション提供しているのが、スタートアップの[Minoan](https://www.minoanexperience.com/)です。 MinoanはAirbnbのオーナーやホテルチェーンに対して通常価格よりもディスカウントされたパートナーブランドの製品を提供します。宿泊するゲストがその製品を実際に利用して気に入った場合、製品に付属するQRコードを読み取り購入することができます。ゲストが購入すると売上の数%がAirbnbオーナーやホテルにマージンとして渡されます。 (1) ゲストは新たなお気に入り商品を見つける機会を得られ、(2) Airbnb/ホテルオーナーは元々コストセンターである宿泊設備を従来よりも低コストで整えられる上に新たな収入源にでき、(3) Minoanは集客が不要でECで売上を立てられるため、ゲスト、Airbnbオーナー/ホテル、Minoanの三方良しの形を実現できています。 Minoanで導入した製品(家具、電化製品等)にはQRコードが付加され、ユーザが購入可能になる image: [Minoan](https://www.minoanexperience.com/properties) Minoanで導入した製品(家具、電化製品等)にはQRコードが付加され、ユーザが購入可能になる image: [Minoan](https://www.minoanexperience.com/properties) Minoanの導入促進にうまく機能しているのが、製品卸価格を通常のリテール価格より大きくディスカウントしていること([30%以上](https://techcrunch.com/2022/02/17/backed-by-accel-minoan-experience-is-creating-a-new-category-of-e-commerce-called-native-retail/?guccounter=1))、宿泊施設側は製品の導入検討や販売成果の確認以外に関与する必要はなく販売システムやサプライチェーンをMinoanに一手に任せられること、の2点です。Airbnbオーナーやホテルにとって、宿泊設備の入れ替えを行うことや新しく製品販売プロセスを作ることは負担となるものですが、Minoanの取り組みによって、導入ハードルを下げることで、宿泊施設パートナーの獲得に成功しています。 [Minoanは2022年2月時点で、160を超えるブランドを製品提供のパートナーとし、80以上の物件の1800スペース](https://techcrunch.com/2022/02/17/backed-by-accel-minoan-experience-is-creating-a-new-category-of-e-commerce-called-native-retail/?guccounter=1)で体験型コマースを展開しています。 また2022年2月に500万ドル(約5.5億円)をACCEL(シリコンバレーの老舗VC)をリード投資家として資金調達を行いました。現在はアメリカでの展開となっていますが、コロナ禍においても徐々に海外旅行需要が戻ってきているため、宿泊施設における体験型コマースプラットフォームがさらにグローバルに展開されることが期待されます。 # インテリアコーディネートを自在に: SpaceJoy 新しくインテリアを購入しようと思うとき、部屋を見回して、頭の中で購入後のイメージを想像してみることはないでしょうか。そして実際に購入し届いてみて、本稿の冒頭の通り購入前後にギャップが生じることがあります。とくにECでインテリアを購入する場合、大きさや色味や部屋との相性など、組み合わせが非常に重要になります。しかし、インテリアはアイテム単体を見ても正確に組み合わせを想像することは難しく、それがECで容易に購入できないハードルとなっていました。 これまでのインテリアECでは、上記の問題に対して、希望のテイストを実現できるデザイナーとユーザをマッチングさせ、ユーザの部屋の間取りや写真をデザイナーに送付し、デザイナーが希望に沿ったインテリアコーディネートを提案することで解決を図ってきました。一方でデザイナーを雇うと時間も費用([一般的に数万円](https://us.cnn.com/2022/01/26/cnn-underscored/best-online-interior-design-services/index.html))もかかる上、デザイナーも完璧にユーザの頭の中のイメージをくみ取れるわけではないため、思ったものと違う提案が出てくることもあります。これに対し、リアルタイムなインテリアコーディネートシミュレーションによって問題解決を図ろうとしているのが[Spacejoy](https://www.spacejoy.com/)です。 Spacejoyは、各インテリア製品を独立した3Dオブジェクトとして扱い、部屋の模様、椅子、テーブル、ライト、絵画、鏡、タンスなどありとあらゆるインテリアを組み合わせて部屋全体のシミュレーションができるようになっています。一からすべてを選択する必要はなく、Sapcejoyが用意するプリセットのインテリアコーディネートのスタイルを選び、そこから変更したいインテリアを自由に差し替えられます。 部屋のインテリアがすべてオブジェクトで、自由に商品を切り替えてインテリアコーディネートをシミュレーションできる Image: [Spacejoy](https://www.spacejoy.com/design-sets/62334938a82536001c8bd9d6) 部屋のインテリアがすべてオブジェクトで、自由に商品を切り替えてインテリアコーディネートをシミュレーションできる Image: [Spacejoy](https://www.spacejoy.com/design-sets/62334938a82536001c8bd9d6) [Wayfair](https://www.wayfair.com/)、[Pottery Barn](https://www.wayfair.com/)、[Crate  & Barrel](https://www.crateandbarrel.com/)など主にUSを中心に展開する[35以上のリテイラーとパートナーシップ](https://aryan-artnews.com/this-accel-backed-startups-3d-platform-helps-us-homeowners-design-their-spaces-virtually/)を組み、Spacejoyデザイナーチームがパートナーの製品を組み合わせ、多数のプリセットのインテリアコーディネートを提供しています。気に入った商品についてはそのままECサイトで購入ができます。 Sapcejoyの売上は[24ヶ月で10倍の約500万ドル(5.5億円)に到達しており、創業者によると次の18カ月でさらに10倍の成長をする](https://economictimes.indiatimes.com/tech/funding/home-decor-startup-spacejoy-raises-4-million-in-funding-led-by-accel/articleshow/89467328.cms)と推測されています。 Spacejoyは2022年2月に400万ドル(約4.4億円)をACCELをリード投資家として資金調達を行いました。この資金を元に上記の10倍成長するプランを実現させていくと思われます。 # おわりに 今回は「体験型コマース」についてとりあげました。近年では、[b8ta](https://b8ta.jp/)のように店舗で売らずECへ誘導する「店舗のショーケース化」が進んでいます(日本では[丸井が売らない店舗で売上を伸ばすという事象](https://diamond.jp/articles/-/299443)が起きています)が、依然としてほとんどの製品は店舗で少し触れる程度で、実際のユースケースを体験できるわけではありません既存アプローチではまだ購入前後の体験ギャップが存在しています。 今回取り上げたMinoanの事例では、製品を体験できる場所(ショールーム)をプラットフォームとしてホテルやAirBnBなどに拡大し、ECへの購入へつなげていくというモデルでギャップを解消しようとしていました。また、Spacejoyの取り組みでは、自身の製品利用イメージをECサイト上でリアルタイムに次々に試していけるという点で、リアル店舗でもできない体験によりギャップを解消しています。 近年ではOMO(Online Merges with Offline)と呼ばれるオフラインからオンラインや、オフラインからオンラインをつなぐコマースのあり方が叫ばれていますが、今回取り上げた事例を見る限り、単純な送客の話ではなく、従来得られなかった「体験」をどのチャネルでどう実現していくかが非常に重要と考えられます。 --- ## サスティナブルファイナンス:ヘルシーなパーソナルローン URL: https://ximera.com/posts/0dd58961c9 公開日: 2022-03-08 著者: Ikuo Morisugi ## 本業ではないからこそ新たな発想でサービス提供が可能に Ximera Media Next Trends #31|Author: Ikuo Morisugi|March 8, 2022|[People illustrations by Storyset](https://storyset.com/people) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第31回となる今回は「サスティナブルファイナンス」について、取り上げます。 前回の記事では「サスティナブルコマース(持続可能なコマース)」領域において、ファッションやチケットの二次流通市場への取り組みを取り上げました。今回はその続編としてサスティナブルの軸足をファイナンス(金融)に移します。 ファイナンスのなかでも、パーソナルローンは「クレジットカードを使いすぎてしまい返済が滞る」、「住宅や車など返せない額を借りてしまう」、「学生ローンの残債が返せず社会人になっても豊かな生活ができない」など、身近で起こりうる大きな社会問題となっています。 アメリカでは、家庭で抱える負債として、住宅ローン、カーローン、クレジットカード残債、学生ローンの4つのカテゴリーの負債の額が圧倒的に大きいです。とくにクレジットカード残債と学生ローンについては、収入の少ない学生時代から長期間にわたり負債として残りつづけることや、住宅ローンやカーローンなどに比べて高い金利となっていることから、より多くの人にとって共通する問題となっています。 2021年4Q調査でクレジットカード残債は約94兆円・学生ローンは約173兆円を超えている 参照: [Household Debt And Credit Report](https://www.newyorkfed.org/microeconomics/hhdc.html#:~:text=According%20to%20the%20latest%20Quarterly,debt%E2%80%94rose%20by%20%24258%20billion.) 2021年4Q調査でクレジットカード残債は約94兆円・学生ローンは約173兆円を超えている 参照: [Household Debt And Credit Report](https://www.newyorkfed.org/microeconomics/hhdc.html#:~:text=According%20to%20the%20latest%20Quarterly,debt%E2%80%94rose%20by%20%24258%20billion.) 今回は、このクレジットカード残債および学生ローンの問題をよりサスティナブルな形にすることで解消を試みるプラットフォームに注目して事例を見ていきます。 # 費用の見える化と教育でクレカ残債解消:Happy Money アメリカでは[70%の人が少なくとも1枚以上のクレジットカードを保有しており、40%の人がクレジットカードを使う](https://shiftprocessing.com/credit-card/)傾向にあります。他国と比較しても、クレカの残債額が高く、貸し倒れとなるケースも多く発生し、非常に大きな問題になっています。 GDPが高い10カ国のなかでもアメリカのクレジットカード平均残債は非常に高い 参照: [Average Credit Card Debt Statistics](https://shiftprocessing.com/credit-card-debt/) GDPが高い10カ国のなかでもアメリカのクレジットカード平均残債は非常に高い 参照: [Average Credit Card Debt Statistics](https://shiftprocessing.com/credit-card-debt/) この問題に対して、[Happy Money](https://happymoney.com/payoff-loan)はクレジットカードの残債を解消するためのパーソナルローンを提供しています。[年利5.99〜24.99%の固定金利で、5,000ドル(約55万円)~4万ドル(約440万円)を貸し出し、2〜5年かけて返済される](https://happymoney.com/rates-and-terms)プランです。Happy Moneyの実体としては、資金を貸したいクレジットユニオン(信用組合)とクレジットカード負債を解消したいユーザをマッチングするマーケットプレイスとして機能しています。 これだけ見ると借金返済のための借り換えパーソナルローンに見えますが、Happy Moneyには大きく2つの特徴があります。1. 見えない費用(Hidden Fee)を極力減らし、返済する費用を返済者が正しく認識できるようにしていること、2. 状況の可視化や教育プロセスなどうまくパーソナルローンを解消するためのツールやプログラムを提供していることの2点です。 1. について、ほかのパーソナルローンサービスでは、登録料や早期払手数料、遅延手数料、小切手支払手数料、年間手数料など、さまざまな名目で手数料を取ることが常態化しています。これらはわかりにくく、隠されていると感じる費用としてHidden Feeと呼ばれています。一方でHappy Moneyでは、Hidden Feeは一切かからないようにして事業を運営していくためのサービス料として、[Origination Feeと呼ばれる0〜5%の手数料のみ](https://happymoney.com/rates-and-terms)を課しています。一方クレジットカードの金利の中央値は19.49%(2022年2月時点。[Investpediaより](https://www.investopedia.com/average-credit-card-interest-rate-5076674))です。このようにわかりやすく、かつクレジットカードよりも低い金利でお金を貸すことで、自転車操業になりがちな借り換えによる高金利の債務膨張を抑え、借金返済を楽にしています。 また2.について、Happy Moneyでは、返済者向けのポータルサイトを用意しており、ローン返済者が返済の進捗状況を確認したり、Happy Moneyのサポートチーム(Member Experience Team)へ相談したりすることができます。また[Peace](https://peace.happymoney.com/peace?_ga=2.55495272.2142816260.1645947429-956047829.1644474627)と呼ばれる認知行動科学や心理測定学をベースとしたプログラムにより、健全な精神と金融リテラシーを身に着け、借金地獄に陥らない生活を営むためのスキルを身につけることができます。Peaceでは事前に、性格評価、ストレス評価を行った上で、10分ほどの短いプログラムを6週間にわたり受けることでスキルを向上させていきます。 Hppay Moneyはこれまで、約20万人以上に対して、37億ドル(約4070億円)のローンによる資金を提供してきました。また、[2022年2月には、5000万ドル(約55億円)の資金調達を行い、Pre-Money11億ドル(約1210億円)の時価総額](https://www.prnewswire.com/news-releases/happy-money-hits-unicorn-status-and-raises-50m-series-d-1-led-by-anthemis-group-301477088.html)がつくユニコーンFintechスタートアップとして投資家からも大きな期待を持たれています。今回の資金調達によりサスティナブルなパーソナルファイナンスが、さらに多くのユーザにもたらされることが期待されます。 # Z世代向けのネオバンク:Mos お金に困っている学生にとって、奨学金は学費を払い生活をするための重要なオプションの一つです。奨学金を得るために銀行口座が必要となりますが、アメリカで銀行口座を開くには、一般的に一定以上の金融スコアが必要となったり、大きな額の預入金を要求されます。また、口座を開いたあとも、お金が足りなくなった際にはオーバードラフトフィー(口座資金が足りない場合に銀行が超過分を建て替えるかわりに、上乗せされる手数料)、支払い延滞金、ATM取引手数料などさまざまな費用がかかってきます。結果として、そもそもお金に困っていたから奨学金を得たにも関わらず、銀行の諸費用や利息を払うことになり、学費や生活に使えるお金に制限が生まれてしまう問題がありました。 この問題に取り組んでいるのが、Fintechスタートアップの[Mos](https://www.mos.com/)です。Mosは学生向けのChecking口座(日本の銀行でいうところの普通口座に該当)と資金の引き出し・振り込み・クレカ加盟店での決済が可能になるデビットカード (Mos Card)の発行をしています。また、Mosで口座を開くことで、アメリカ最大の奨学金制度を使って奨学金の申請・獲得・返済が可能になります。さらに1on1で専門家からのアドバイスをもらうことも可能となっており、学生がサスティナブルな形で口座を運用できる金融サービスを提供しています。 Mosの口座は[オーバードラフトフィー、延滞金、ネットワーク内ATM手数料、いずれも無料になります。また口座開設時の最低口座残高もありません](https://www.mos.com/)。こうした口座開設ハードルの低さやHidden Feeのない透明性がZ世代の学生から人気を得て、[ロンチの最初の四半期で10万人以上がMosのアカウントを開設](https://techcrunch.com/2022/02/03/amira-yahyaoui-wants-mos-to-be-a-radical-fintech-startup/)しました。創業者のアミラさんは今後Mosがアメリカで10番目に大きなネオバンクになると考えています。 Mosのビジネスモデルとして、もともとは教育系スタートアップとして学生のコミュニティを運営し、奨学金へのアクセスを促進することによる手数料を生業としていましたが、BaaS(Banking as a Service、銀行ライセンスを持たずに銀行関連サービスを可能にするSaaS)を利用して、Mosブランドで銀行・カードを提供することで追加の収入を得ることを可能としました(銀行機能自体は[Blue Ridge Bankが提供](https://www.mos.com/faq/))。ユーザがMosのデビットカードを使用することで得られる[Interchange Fee(相互接続手数料)をカード発行のパートナー銀行とレベニューシェア](https://www.mos.com/faq/)することによってマネタイズを行っています。 これまでMosは[40万人以上の学生に対して、総額1600億ドル(約17.6兆円)を超える奨学金プールへのアクセスを提供してきました。また、2022年2月には、Tiger Global(PEファンド)やセコイアキャピタル(USのトップベンチャーキャピタルの1つ)が参加するシリーズBラウンドで、4000万ドル(約44億円)の資金調達を行い、4億ドル(約440億円)の時価総額](https://techcrunch.com/2022/02/03/amira-yahyaoui-wants-mos-to-be-a-radical-fintech-startup/)となっています。通常はスタートアップが資金調達をするためのプレゼンを行い、投資家を募るプロセスが一般的ですが、本資金調達では、Mosはいくつかの投資家からのタームシート(投資契約のため基本条件)を断り、ピッチデック(投資をしてもらうための説明資料)も使わなかったことで、非常に投資家からの期待が高い案件であることが伺えます。 # おわりに 今回は「サスティナブルファイナンス」についてとりあげました。とくにパーソナルローンの領域では、Happy Money、Mosの両社は、できるだけユーザの金銭的負担を取り除くと共に透明性を上げた上で、教育や専門家のサポートなど、ユーザの具体的なアクションに関しても関与しています。これによって、ユーザの貸し倒れや使いすぎといった悪い債務サイクルから抜け出させることで、問題解決を図ろうとしています。ここはまさにサスティナブルという言葉がしっくりくる点で、長期的に良い方向を目指すひとつの好事例と言えるかと思います。 また両社とも銀行ではないと宣言しており、マッチングサービスやBaaSを利用したネオバンクと言われる存在です。もともと銀行やクレジットカードをサービスとして提供していない会社がBaaSによってFintech化することで、新たなビジネスを始める面でも参考になるのではないでしょうか。 今回はFintechを事例としましたが、本業ではないが本業ではないからこそ既存の業界にはなかった新たな発想でサービス提供が可能になります。ノーコードツールやFintechなど、次々に登場する新たな分野への取り組みを容易にしてくれるツールを使って、イノベーションを提供していくことが重要になるのではないでしょうか。 --- ## サスティナブルコマース: リセール支援プラットフォーム URL: https://ximera.com/posts/bdb1b92962 公開日: 2022-02-25 著者: Ikuo Morisugi ## 単に中古品を流通させる以上の価値を提供する Ximera Media Next Trends #30|Author: Ikuo Morisugi|Feb 25, 2022 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第30回となる今回は、「サスティナブルコマース」について、取り上げます。 本稿では、「リサイクル、リユース、リデュースを中心とした持続可能な社会に向けてプロダクトやサプライチェーンが考慮されているコマース全般」をサスティナブルコマースと定義します。今回はサスティナブルコマースの中でもブランドがリセール(二次流通)ビジネスに乗り出しているトレンドをキャッチアップしたいと思います。 消費者が古着や不要品を廃棄するのではなく、フリマなどリセール市場に出品することは、Z世代の古着・リバイバルブーム、コロナによる経済的損失の補填、SDGsなど持続可能な世界に向けた社会的な要請といったさまざまな観点から、以前よりも重要性が増しています。 一方でリセール市場では価格高騰を狙った転売が当然のように横行しています。たとえば、自分の好きなアーティストのチケットが手に入らず、フリマアプリやダフ屋から定価よりもかなり高い金額で手に入れたという事例は巷でありふれています。また出品物の説明の仕方は出品者次第で、購入者は本物と偽物を見分ける必要があり、ブランドの意図と違う説明や偽物が増えるとブランド毀損にもつながりかねません。商品の状態についても同様で、状態の正確性が出品者の主観による上に、それがデザイン上そうなのか、本当に状態が悪いのか、新品の本物を見た人でないとわかりません。粗悪の状態のものが誤ったブランド認知を獲得してしまう可能性があります。二次流通が成立することは、リユースやリデュースが促進されるため悪いことではありませんが、ブランドから見た時にサスティナブルな状態かと言われると疑問が残る状態となっています。 ここでの問題は、そのブランドやクリエイターのことが本当に好きな人が定価以上に支払って欲しいものを手に入れたにも関わらず、ブランドには1円も入ってこないことです。またそのような熱心なファン(になるはず)の顧客は、一次流通でまったく可視化されないため、ブランドにはその存在すらも認識できず、ブランド価値が高まっているのかどうかも判別できません。 これに対し、近年ブランド自身がリセールビジネスに入り込むことを支援するプラットフォームが問題解決を図ろうとしています。ブランド単体ではこれまで難しかったリセールビジネスをどのようにサスティナブルな形にしようとしているか、事例を見ていきたいと思います。 # ファッションブランドの二次流通価値を作る: Archive ファッション業界では1年で[リサイクル・リユース可能なものが95%を占める1300万トンの繊維廃棄物がでる](https://theprettyplaneteer.com/fashion-industry-waste/#:~:text=The%20fashion%20industry%20is%20one,wasteful%20industries%20in%20the%20world.&text=How%20much%20waste%20does%20the%20fashion%20industry%20actually%20produce%3F,could%20be%20reused%20or%20recycled.)と言われており、サスティナビリティ観点から厳しい目にさらされています。 これまで二次流通における問題がわかっていたにも関わらず、ブランドやクリエイターがリセールビジネスに手を出せなかったのは、ノウハウやリソースが足りなかったからです。リセールは通常のB2Cを中心とするECとは異なり、売り手と買い手をマッチングするC2Cのビジネスです。サービスを提供するための選択肢としては、フリマサービスとパートナーシップを結ぶか、自社で立ち上げるかのどちらかですが、既存の3rd Partyのフリマサービスはブランド側のコントロールが効きにくいため手を組むことはほぼありませんでした。そのため、自社でフリマサービスを立ち上げるという、ともすれば自社のビジネスと相反しかねない、かつ慣れていないビジネスを手がけなければならず、手をこまねいていたのが実情かと思われます。 ファッションの領域でその問題に対してソリューションを提供しているのが、[Archive](https://www.archiveresale.co/)です。Archiveは、ブランドがホワイトレーベルで二次流通が可能なECストアを立ち上げ、そのオペレーション、数値管理まで一手に引き受けるサービスです。 たとえば、高級ファッションブランドの[Oscar De Larenta](https://www.oscardelarenta.com/)は、Archiveとパートナーシップを組んで、[Encore](https://encore.oscardelarenta.com/)と呼ばれるリセールECを2021年11月に立ち上げました。Encoreは過去にOscar De Larentaのコレクションのランウェイで発表されたビンテージ品を中心に販売をしています。巷にあるフリマサービスとは異なり、[Encoreのパートナー関係にあるブティックや信頼できるトップ顧客から出品を集め、Encoreが公式に商品をレビューし、承認したものだけがECサイトに掲載](https://encore.oscardelarenta.com/oscardelarenta/faq)されます。 ArchiveによってOscar De LarentaのリセールEC Encoreが運営されている 参考: [Encore](https://encore.oscardelarenta.com/oscardelarenta/product/08f7a3cb-f72b-5be5-be43-97097b3afba2) ArchiveによってOscar De LarentaのリセールEC Encoreが運営されている 参考: [Encore](https://encore.oscardelarenta.com/oscardelarenta/product/08f7a3cb-f72b-5be5-be43-97097b3afba2) また、[Encoreで出品した品が売れると、売上の一部をチャリティに回すことが可能になっています](https://encore.oscardelarenta.com/oscardelarenta/about)。これは、ビンテージ品を確保するためにEncoreがトップ顧客に連絡をとったところ、[多くがチャリティに寄付する選択肢を用意できない限り出品を拒否した](https://fashionista.com/2022/02/luxury-brands-clothes-resale-secondhand-market)エピソードからプログラムが作られていたと思われます。トップ顧客のチャリティやサスティナビリティへの意識も非常に高まっており、単に中古品を流通させる以上の価値を提供することが重要になっているようです。 これまでファッションブランドでは、返品やリサイクル目的での回収以外には、商品購入後の顧客に対してサービスを展開してきませんでしたが、Archiveとのパートナーシップによって新たにリセールサービスを提供可能となりました。ブランドにとっては、(これまで見えていなかった)顧客の増加、新たな収益源の追加、ブランド・ロイヤリティの向上、サスティナビティの実践とさまざまな点でベネフィットがあります。 Encoreは、[2022年1月に、Bain Capital(日本でもすかいらーく、大江戸温泉物語への投資を行った世界的なPEファンド)やLightspeed Venture Partners(Snap、Affirmなどへの投資で著名なベンチャーキャピタル)などから約1,000万ドル(約11億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2022/01/25/archive-aims-to-put-clothing-brands-in-control-of-their-secondhand-sales/)をして、さらにビジネスを加速させようとしています。現在では、約100のブランドと交渉しているとされており、より多くのファッションブランドのリセールサービスが出てくることが期待されています。 # イベントチケットのマッチングを支援する: Lyte 二次流通市場での転売による価格高騰や詐欺等で、ブランド側が疎ましく思っている事例の最たる例が人気イベントのチケットです。特にUSでは、[Coachella](https://www.coachella.com/)、[Comic Con](https://www.newyorkcomiccon.com/)など巨大な音楽フェス、同人イベントの人気が非常に高く、先行発売のチケットがあっという間にソールドアウトしてしまう現状があります。 日本ではそれほど多くの事例がないと思いますが、海外ではこれら人気イベントのチケットや入場用のリストバンドは偽物が作られ、二次流通市場で高額で販売されています。偽物と気づかず当日入場できないことも珍しくありません。 こうした現状に対してソリューションを提供するのが[Lyte](https://lyte.com/)です。Lyteはイベントのオーガナイザーに対して、ユーザ同士のチケットのリセールサービスを可能にします。これによって、適正な価格で正規のイベントチケットを手に入れたいユーザと、都合が悪くなりイベントに行けなくなったユーザのマッチングが可能になります。また友人とグループ参加したいがうまく同一グループのチケットを手に入れられず、参加自体を渋ってしまうといった二次流通でありがちな問題についても、Lyteは友達同士をグルーピングする機能を提供することでこの問題を解消し、ユーザの参加率や満足度を向上させています。 Coachellaではチケットの購入、返金、交換を受け付ける専用ページが公式に提供されている 参考: [Coachella](https://coachella.lyte.com/94087) Coachellaではチケットの購入、返金、交換を受け付ける専用ページが公式に提供されている 参考: [Coachella](https://coachella.lyte.com/94087) 筆者自身も過去に音楽フェスの[Bottle Rock Napa Valley](https://www.bottlerocknapavalley.com/)の売り切れたチケットに対して、[Lyteでウェイトリスト](https://bottlerocknapavalley.lyte.com/3700296)を入れたことがあります。2-3週間かかったものの、売り切れチケットを定価で購入することができました。また別の音楽イベントで都合が悪くなり行けなくなったので、Lyteのリセールプログラムにチケットを流してみました。こちらも、2週間程度で無事に販売され定価分の金額が戻ってきました。Lyteでは公式で販売されたものしか流通できないため、上述の詐欺行為はなくなり、安心して使えるものとなっています。 また、Lyteはイベントオーガナイザーに対して、どれくらいのチケットが二次流通され、アップグレードやダウングレードがあったのか、グループ化を望んだユーザがどれくらいいて、その実現ができたかなど、[ダッシュボードで様々なチケットに関するメトリックスを確認](https://lyte.com/partnerships/)することができます。イベントオーガナイザーはそれを見て、次のイベントで収益やユーザ満足度の最適化のための、価格設計やチケット種別の見直しを検討することが可能になります。 またコロナウィルスに起因するイベントの中止・延期にあたり、オーガナイザーが翌年に開催を持ち越すためのソリューション(購入済みの顧客とチケットを管理して、翌年にも使えるようにする機能など)や、ファンから支援金を寄付してもらうための機能を提供しています。こうした努力により、現在のリアルイベント開催が危ぶまれる事態を少しでも和らげ、サスティナブルな形を実現していこうとしています。 # おわりに 今回は「サスティナブルコマース」についてとりあげました。 今回の事例では、ファッションやチケットなどリアル物販やリアルイベントに関するリセールをテーマとして取り扱いましたが、今後リセールの流れは物販のみならずデジタルグッズにも拡大されると思われます。NFTを中心にブロックチェーンを使うことで、デジタルのオリジナルブランドのリセール市場が広がることが予測されます。 チケットやビンテージ品などについても、NFT化してオリジナル販売者に手数料の一部が入る二次流通や、本物を動かさず権利だけ動かすことで環境負荷を下げる取り組みは仕組み的にはすでに可能になっており、事例も登場しています。 一方でNFTは[投機目的での取引が70%以上](https://loupfunds.com/the-1-trillion-nft-market/)を占め、[9%のアカウントが市場の80%の取引額を動かしている](https://marker.medium.com/the-false-promise-of-web3-7e6c1a00d4be)と言われています。またデジタルが故に画像や写真等は同一の盗作も生み出すことができるため、NFTの所有権そのものが正当なものであるかの判断が難しくなっています。またWalletの用意や仮想通貨での購入など利用ハードルがやや高く、一般層が当たり前に使っているとは言い難い状況であり、デジタルグッズのリセール市場はこれからそのあたりの課題が解消されることが期待されます。 デジタルグッズのリセール化が進むと、メディアにおいてもリセールサービスを自前で持つ(過去記事のNFT、取材時に作成された資料など、メディアが持つ資産のリセール)ことで、収益源確保やブランド価値を高められる可能性があります。既にそのような分野に取り組んでいるメディアもありますが、サスティナブルコマースの観点からもさらなる拡大が期待したいと思います。 --- ## メディア運営におけるDAOの可能性 URL: https://ximera.com/posts/363cfe44cd 公開日: 2022-02-10 著者: Ikuo Morisugi ## 増えつづけるDAOの波はメディアにも Ximera Media Next Trends #29|Author: Ikuo Morisugi|Feb 10, 2022 [Online illustrations by Storyset](https://storyset.com/online) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第29回となる今回は、本連載でも過去に取り上げている分散自律型組織「DAO」について、メディアの領域でどのような活用ができるか取り上げたいと思います。 2021年あたりから多数のDAOが立ち上がり、現在も数えきれないほど新たなDAOのニュースを目や耳にします。オークションでアメリカ合衆国憲法の原本を購入するためにクラウドファンディングで資金を集めた[ConstituionDAO](https://www.constitutiondao.com/)、ファーストフードフランチャイズを買収する[FriesDAO](https://fries.fund/)、仮想のブロックチェーン都市を作る[CityDAO](https://www.citydao.io/)など、短期間で明確な目的をもったものから、長期間でラディカルな実験に取り組むものまで本当にさまざまなものがあります。 DAOの中にはメディア領域を専門とするDAO(Media DAO)も存在しており、DAOがメディア企業や組織への考え方にどう影響を及ぼしているのか、具体的にどのような事例が出てきているのか見ていきたいと思います。 # DAOはメディア組織にどんな価値をもたらすのか [本連載第26回](/posts/e4e8f6530a)でDAOは、トークン保有者が投票を行い、組織としての意思決定を行っていくことができる分散自律組織と説明しました。それを可能にしているのが下記3つの要素です。 - 参加者は長期的にトークン価値の高騰を期待していること - プロジェクトにオーナーシップを持つ(=ガバナンストークンや分割されたNFTを持つ)ことで各参加者にプロジェクトへの貢献意識が生まれること - 貢献度が高い参加者には報酬がより高くなるように、関与度によってトークンが付与されること この仕組みをメディアの編集組織にも適用することができます。DAOの組成により運営資金やライター・編集者を獲得する、記事やメディアとしての方向性を投票で決めるなど、大から小までさまざまなことに活用が可能になります。たとえば、従来では成し得なかった規模の参加者を取り入れて、新たな分散自律的なメディアを作る、よりインセンティブを与える形でユーザ参加オプションを既存メディアに機能として統合するなど、使い方次第でDAOは組織に対して新たな価値を与えることができます。 # 運営すべてがDAOで実行されるメディア: Bankless DAO メディア領域でDAO化を果たした先行事例として挙げられるのが、[本連載第26回](/posts/e4e8f6530a)でも紹介したBanklessです。Banklessは、現在の銀行を中心とした中央集権的なシステムから分散自律型の金融システムへの移行を唱えるメディアです。LLC(有限会社)としてニュースレターやPodcastを中心に配信しており、Substackの有料サブスクによって収益を確保していた一方で、[Banklessは長期的に10億人を分散自律型の金融へオンボードさせることを目指しています。ニュースレター、Youtube、Podcastの配信を成長させること、アパレルなどメディア以外の事業を拡大していくこと、仮想通貨のインデックスファンドなどと新たなDeFiプロダクトを提供していくこと](https://medium.com/bankless-dao/bankless-dao-genesis-proposal-18c24caf4485)、など1メディアにとどまらない動きを加速させようとしています。 そうしたメディアを超えた動きをしていくためのリソース確保(資金、人材、報酬)の手段としてBanklessDAOを作ることを選びました。$BANKと呼ばれるガバナンストークンを発行しコミュニティでプロジェクトやプロダクトを共同保有し運営していくことへ舵を切ったのです。 BanklessDAOで興味深いのは、[Bankless LLCを解体せずトークンを持つ1つの参加主体とした](https://medium.com/bankless-dao/announcing-bankless-dao-133220f5efd8)ことで、有象無象のメンバーの入れ替わりが予期されるDAOに対して、プロジェクトをリードし運営を安定させる形を作っていることです。DAO創立時はBanklessが持つトークン割合はゼロでしたが、25%はBankless LLCが保有することを[コミュニティに提案し、投票によってそれが認められました](https://snapshot.org/#/banklessvault.eth/proposal/QmdoixPMMT76vSt6ewkE87JZJywS1piYsGC3nJJpcrPXKS)。 Bankless LLCと多数の個人が共同してBanklessDAOが構成される 参考: [Bankless Medium](https://medium.com/bankless-dao/announcing-bankless-dao-133220f5efd8) Bankless LLCと多数の個人が共同してBanklessDAOが構成される 参考: [Bankless Medium](https://medium.com/bankless-dao/announcing-bankless-dao-133220f5efd8) BanklessDAOは、2022年1月現在で、[1万7000人以上のコミュニティメンバー](https://banklessdao.mirror.xyz/Ot8KDnNHZhN9-ZIp0hWUSblyPs83HfdMr7Kfp3HVoxw)が存在し、50万ドル[(約5500万円)を超える仮想通貨収益](https://banklessdao.mirror.xyz/Ot8KDnNHZhN9-ZIp0hWUSblyPs83HfdMr7Kfp3HVoxw)の獲得、[Banklessモバイルアプリの](https://twitter.com/ns_human/status/1484377048462204933?s=20)アナウンス、仮想通貨インデックスファンドの[Bankless DeFi Innovation Index](https://medium.com/indexcoop/are-you-gmi-introducing-the-bankless-defi-innovation-index-4463858adb14)のロンチ、NFT連動アパレルの[DAOpunks](https://www.daopunks.io/)ロンチ、Bankless Mediaが提供するコンテンツの翻訳を多国語展開する[International Media Node Projec](https://twitter.com/IMNbankless)tのロンチなど、2021年5月のDAOロンチ後わずか8ヶ月でさまざまな取り組みをスタートさせています。1万7000人というと、会社で例えるともはや大企業のレベルです。もちろん全員がアクティブなわけではありませんが、メンバーが増えれば増えるほどよりスケールアップしていくことができます。 DAOと聞くと、分散自律型で中央集権型の企業が入り込む余地がないようなイメージがある方も多いと思いますが、Banklessようにハイブリッド型で一般の企業とDAOが交わり、Web3の関連事業を立ち上げていくことが、今後のビジネスを作る組織の一つのロールモデルとなるかもしれません。 # 編集方針を決定するコミュニティとしてのDAOドロップカルチャー型クリプトメディア: Dirt DAO Dirtはニュースレターサービスだが、NFTアートとトークンで資金を調達し、さらにDAOで読者がコンテンツへ介入するモデルを実験している参考: [Dirt Mirror](https://air.mirror.xyz/94EgB6FIa97J7u8mUJlH2WmuvlSm2sB_4uE4TSnYIVw) Dirtはニュースレターサービスだが、NFTアートとトークンで資金を調達し、さらにDAOで読者がコンテンツへ介入するモデルを実験している参考: [Dirt Mirror](https://air.mirror.xyz/94EgB6FIa97J7u8mUJlH2WmuvlSm2sB_4uE4TSnYIVw) DAOをメディアに取り入れた事例の2つ目が[Dirt](https://www.dirtnewsletter.xyz/)です。Dirtは、ストリーミングTVとエンターテイメントに関するトピックを取り上げるデイリーニュースレターとして、[The New Yorker](https://www.newyorker.com/)のライターであり、[Study Hall](https://studyhall.xyz/)(ジャーナリストのコミュニティ、[本連載第5回](/posts/a0ee63f1c0)参照)のFounderである[Kyle Chayka](https://www.kylechayka.com/)さんによって2020年12月に立ち上げられました。[2021年5月時点で、3600人の無料登録ユーザがおり、デイリーで40%以上のオープン率、3000回以上のViewがあり、NetflixやHBOの幹部が読者にいました](https://air.mirror.xyz/lmV9Dxeos9HvKSu0BKY9pqARK2vAlPXhrNMt68E4GkI)。 ここまでは、時折耳にするSubstackニュースレターの成功例のようですが、Dirtはここからさらにメディアとしてカバートピックを増やすため、NFTとソーシャルトークン($DIRT)によって資金調達を行うことを発表しました。とくにNFT、ビデオゲーム、メタバース、Web3に関連するトピックを扱うことは、デジタルエンターテイメントのメディアでは必須になってきており、新たなフリーランスライターと共にコンテンツを増やす方向に舵を切りました。 さらには、The New Yorkerのイラストや漫画を担当していたアーティストのJason Adam が描いたキャラクターDirtyをDirtのNFTアートとして[Mirro](https://air.mirror.xyz/ns7AYkU8eYPI9RcbQCEdpRUGi0d3458cRw7WSXrmaPI)rや[OpenSea](https://opensea.io/DirtCollection)でクラウドファンディングを募りました。DirtはSupremeが行っているようなドロップカルチャーに倣ってシーズン(数ヶ月)ごとに新たなトークンとNFTを限定発行することで、コミュニティを活性化しています。 初期にトークンやNFTを手に入れた参加者ほどレア度が増し、新たなトークンやNFTドロップを手に入れる優先権を得ることができます。たとえば、[シーズン1に提供されたDirty-S1 レインボーカラーのNFTは、限定1個でオークション形式で1.23 Eth(約30万円)で落札され、Dirty-S1 パールピンクは、限定30個で0.2ETH(約6万円)が完売、Dirty-S1 エンドウグリーンは限定100個で0.05ETH(約1.5万円) も完売](https://air.mirror.xyz/lmV9Dxeos9HvKSu0BKY9pqARK2vAlPXhrNMt68E4GkI)しました。またこのNFTを保有しつづけた場合は、別途200 $DIRT-S1トークンが付与されます。このようにシーズンを通じたNFT発行と資金調達が行われ、クリプトメディアとして実践してきて得られた考察が[こちら](https://air.mirror.xyz/94EgB6FIa97J7u8mUJlH2WmuvlSm2sB_4uE4TSnYIVw)にまとめられています。 そして2022年1月には[DirtDAO](https://dirt.substack.com/p/dirt-introducing-dirtdao)の発表をアナウンスしました。DirtDAOでは、[これまでDirtでNFTを購入した人にコミュニティトークンを発行し、Dirtの今後についてコミュニティが投票できる意思決定を促せる仕組みを作ることを一つのゴール](https://www.theverge.com/2022/1/13/22882036/dirt-dirtdao-crypto-nft-newsletter-voting-kyle-chayka-interview)としています。KyleさんはDirtDAOは実験であり、ブロックチェーンが何でもできる、スケールアップできる、会社全体を運営できると言うつもりはなく、読者が出版物や編集プロセスに対してどう参加していけるかの1つの方法にすぎないと述べています。現在DirtDAOには130名のメンバーがおり、60-70%は知り合いだったりと、ある程度顔の見える形でのコミュニティとなっている模様です。しかしすべてのプロセスをDAOで決めるわけではなく、編集プロセスの一部(次に取り上げるべきトピックの優先順位など)に対しコミュニティが参加できるものとなっています。Banklessがかなりラディカルに仕組みごと大きく組織を変えているのに比べ、DirtはメディアとしてDAOの現実的なあり方を探ろうとしているように見えます。 # おわりに 今回は「Media DAO」についてとりあげました。あらゆる領域で増え続けているDAOですが、メディアでも例外ではありません。実際にライターや編集者、グラフィックデザイナーがMediaDAOに所属し、フリーランスの新たな形も模索されています。Banklessのように組織全体でMedia DAO化していく場合もあれば、Dirtのようにあくまでコミュニティを大事にしていく仕組みとして機能させる場合もあります。 まだまだWeb3やDAOは実態が見えにくいものだと思いますが、やはりプロジェクトやプロダクトのコアメンバーの設計次第で良いも悪いも決まるのではないでしょうか。Ximera Media Next Trendsでは今後も大きく組織やコミュニティのあり方を変えるWeb3およびDAOについて注目していきたいと思います。 --- ## 著名VC・クリエイターが予想する2022年: Web3はどうなるか URL: https://ximera.com/posts/e0a252e41f 公開日: 2022-01-24 著者: Ikuo Morisugi メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第28回となる今回は、2022年のWeb3どうなっていくかを著名VCやクリエイターの予測を参考に、ざっくり理解したいと思います。 今回は特に当該領域で定評のある下記3名の投資家・クリエイターの方々の2021年振り返り&2022年の変化を予測する記事を参考としました。 # ①Web3はまだキャズムを超えていない 年末記事でも取り上げましたが、2021年の後半に引き続きWeb3の盛り上がりは多くのVCやクリエイターが予想しています。PackyさんやRexさんはともに「Web3はまだキャズム(アーリーアダプターを超えて一般層に普及していく谷)を超えていない」と述べています。Web3がキャズムを超えるには主に2点で、複雑さの解消、適用領域の拡大が求められます。 Webはまだキャズムを超えていない 参照: [Design For Crossing the Chasm](https://shahmm.medium.com/design-for-crossing-the-chasm-1c4d4c68a3f1) Webはまだキャズムを超えていない 参照: [Design For Crossing the Chasm](https://shahmm.medium.com/design-for-crossing-the-chasm-1c4d4c68a3f1) ## 複雑さの解消 Rexさんは「多くの人々がWeb3が存在していることを知らない。なぜならWeb2はフロントエンド革命だったがWebはバックエンド革命だからだ」と述べています(※[Jack DorseyさんのWeb3に関するTweet](https://gigazine.net/news/20211222-web3-jack-dorsey/)に対してイーロン・マスクさんの[「Web3を見たことがある人はいますか?。私は見つけられない。」とTweetしたこと](https://twitter.com/elonmusk/status/1473165434518224896)に掛けていると思われます)。 ここでは人々がWeb3の存在を知らないことは問題ではなく、知らなくても使える状態になってないことを問題にしています。Web2では人々はHTTPの仕組みを知らなくてもインターネットを使えますが、Web3ではそういった状況にまだなっていません。理由は明白で、Web3ではウォレットやトークンなど特有の仕組みや専門用語が飛び交い、使いやすいとは言い難いインターフェースを理解することが必要で、現状とても敷居が高いです。筆者は一般の方よりもほんの少しだけ暗号資産やWeb3について知識や経験があると考えていますが、いくつかのWeb3のサービスの利用経験を経ても依然利用ハードルは高いと感じています。 DAO(Decentralized Autonmous Organization: 分散自律的組織)も、本来民主主義を取り戻す装置として機能するものですが、Rexさんによると多くのDAOでは実際のところ投票率は低いそうです。多くの人々は裏側の仕組みまでしっかり理解してまでサービスやシステムを使いたくないのです。こうした複雑さに対して抽象化が必要であり、それを提供できる企業やコミュニティが信頼を得ていくと考えられます。 ## 適用領域の拡大 Packyさんは、Web3を分散自律化と検閲への抵抗としての概念としてではなく、ガバナンスとインセンティブの実験の場としてみなすことが重要と述べています。また、これまでのWeb3はビットサイド(デジタルアイテムの所有、見知らぬ人とコミュニティを形成)に大きく焦点があたっていましたが、2022年はWeb3が適用領域を広げ、ヘルスケアや気候などの課題に有意義な影響を及ぼしはじめる年だと予測しています。既に多くのDAOや[DAO用のツール](https://twitter.com/tmiyatake1/status/1479255240826572801?s=20)が立ち上がり、社会実験のようなことが行われています。[合衆国憲法の原本を入札する](https://jp.techcrunch.com/2021/12/28/2021-11-18-constitutiondaos-bold-crypto-bid-for-us-constitution-falls-short/)、[土地を共同所有する](https://www.citydao.io/)、[ファーストフードフランチャイズを購入する](https://twitter.com/friesdao)、など多種多様なDAOが立ち上がっています。こうした実験から、ヘルスケア、気候変動、絶滅危惧問題など、社会課題に対するメカニズムの種が立ち上がってくる可能性があります。一見馬鹿らしく見える取り組みが最終的には社会問題解決につながることは歴史上も繰り返されています。社会問題解決につながることで、Web3が一般の人々の関心につながることは間違いないでしょう。 このように2つの問題が解消されることで、2022年にWeb3がキャズムを超える瞬間が来ることを期待したいです。 # ②Creator Economyにはまだ問題がある Li Jinさんは、2022年もさらにクリエイターの影響力が拡大すると考えています。背景としては未だに多くのクリエイターが報酬を正しく得ることができない現状にWeb3が貢献すると期待しているからです。 現状、富は一部の強いクリエイターに集まってしまっています。例えば、Spotifyのストリーミングロイヤリティの90%は、ミュージシャンの上位1.4%に支払われます。Twitchでは上位1%のストリーマーが、すべての収益の半分以上を獲得し、ポッドキャスターの1%が、ポッドキャスト広告の収益の大部分を占めています。 多くのストリーミングは広告収益が主な収益源であり、視聴数に応じて分割されるビジネスモデルです。クリエイターは多数のユーザを獲得し、広告主に魅力のあるコンテンツを作る必要があり、ニッチで深いコンテンツはネットワーク効果が働かず、十分な収益を稼ぐことが難しい状況にあります。[1000人のTrue Fanを集めよ](https://kk.org/thetechnium/1000-true-fans/)という言葉がありますが、1000人集めようにも、よっぽどの強いコンテンツがない限り読者はあくまで消費者であり、自律的なインセンティブをもって参加する動機がありません。 この状況を打破できる可能性があるのが、Web3です。Web3によって、NFTコンテンツによるオーナーシップの共有、トークンの発行によるインセンティブ、DAOによる共創的なコミュニティ運営が実現できます。2022年はWeb3がCreator Economyに入り込み、よりニッチなコンテンツやクリエイターでも、自立的運営が可能となることが期待されています。 # ③オーナーシップエコノミーへの移行 Li Jeanさんは、「[Attension EconomyからOwnership Economyへ](https://li.substack.com/p/the-web3-renaissance-a-golden-age)」という言葉で、今後のCreator Economyに起こる変化を言い表しています。Attensionとはすなわちトラフィックのことであり、注目を集めることです。これまでクリエイターは、SNSや動画サイトなどプラットフォームに依存し、自身のアカウントやフォロワー、コンテンツは所有していませんでした。TwitterからFacebookにアカウントやデータは移行できませんし、Banされればすべてを失います。ただその代償にAttension(ユーザからのトラフィック)を得て、広告収入やサブスク課金に変えることでマネタイズしてきました。 一方でOwnershipとは「所有する」ということで、クリエイターはアカウントやコンテンツに所有権を持ち、他のプラットフォームに移転させることができるようになります。さらにそれだけにとどまらず、トークン、NFT、DAOを活用して、(1) クリエイター自身が価格決定力を持ち、(2)クリエイター支援を投資行為化し、(3)プログラマブルにコラボーレーションを行い(4)プラットフォームとコミュニティでコンテンツを共同所有する ということが可能になります。 Web3によって、所有の概念が大きく変わるため、AttensionからOwnershipへの移行が可能になり、クリエイターエコノミーはWeb3オープンスタンダードな世界へ変わっていくことが期待されます。 例えば音楽分野の[SoundというWeb3スタートアップ](https://jp.techcrunch.com/2021/12/16/2021-12-15-sound-xyz-raises-5m-from-a16z-to-explore-how-web3-can-upend-the-economics-of-the-music-business/)は、アーティストが楽曲をNFT化し、先行して聴ける権利をListening Partyという形で販売することで収益を得る、一連のコミュニティを作る支援をしています。楽曲を購入したファンは楽曲の中にタグを埋め込むことが可能で、例えばある曲の1分20秒の部分に「このサビが最高」といったコメントを埋め込むことができます。NFTのトラッキング機能により楽曲を転売するとそのタグも消えるといった仕掛けが入っており、ファンのエンゲージを高めることができるようになっています。これは(1)アーティストが楽曲の価格を設定し、(2)楽曲の一部をファンがNFTで所有し、(3)アーティストとファンがタグづけなどプログラマブルにコラボレーションし、(4)NFTはファン・アーティスト・マーケットが共同所有する という上記で説明された4項目を実現させています。このようにWeb3に早期に取り組んだアーティストは、早くもSpotify以外にマネタイズできる形が出てきているので、Li Jinさんが書いていることは現実に起こりつつあります。一方で、これもクリエイターやユーザのアーリーアダプターがうまく時代に適応しているだけで、レイトマジョリティにも同じ状況が起こるかはまだ不明な部分があります。2022年にはさらにWeb3関連のサービスやコミュニティが立ち上がるはずなので、そこに注目したいと思います。 # ④Ximera Media Next Trendsが注目する7分野のサービス 最後に筆者が今年注目したいWeb3関連のスタートアップやDAOやトークンを7分野から選びました。過去に本連載で紹介したものや既に大きな知名度があるものが含まれておりますが、いずれもWeb3を実装したサービスであり、「複雑さの解消と適用領域の拡大」を経て今年さらに存在感を増していくのではないかと考えています(まだ紹介できていないサービスについては今後の連載の中で取り上げていきたいと思います)。 # おわりに 2022年に期待されるWeb3関連トレンドをまとめてみました。今回取り上げた3名の方はみなキャピタリストであり、[Jack DorseyさんのTweet](https://gigazine.net/news/20211222-web3-jack-dorsey/)の通り、Web3関連のスタートアップやDAOに既に投資をしています。Web3が普及することが当然投資リターンへつながるわけなので、ポジショントークと言われても否定できません。一方で、アーリーアダプターとして利益を享受するだけではなく、Web3の普及へ向けた課題と解決のシナリオを強烈に意識している点は見習いたい部分で、ただのポジショントーク以上の熱量を感じます。今回の記事の中で、彼らが「ニッチな世界のもので終わらせない」、「適用領域を大きく捉える」、「具体的に起こる社会変化を創造する」、という部分で各々の著者が独自の観点を持って解釈していることがおわかりいただけたかと思います。これは日々のビジネスへの向き合い方として参考にすべき大事な姿勢で、筆者も身が引き締まる思いでした。 本連載がみなさまの多少のお役に立っていましたらなによりです。今年もどうぞ株式会社キメラおよびXimera Media Next Trendsをよろしくお願いいたします。 --- ## 2021年のメディアトレンドを振り返る URL: https://ximera.com/posts/f56796feb4 公開日: 2021-12-23 著者: Ikuo Morisugi メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第27回となる今回は、年末ということでこれまでXimera Media Next Trendsで扱ってきたテーマから2021年のメディアトレンドを振り返ります。 # 1. メディアへの信頼とソースの変化 参考: [Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf) 参考: [Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf) 近年メディアの信頼は大きく低下しています。Edelmanが提供する[Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf)の調査結果で、メディアや情報ソースへの信頼度は検索エンジン、伝統的なメディア(マスメディア)、オウンドメディア、ソーシャルメディアのいずれもここ10年で最低の水準となりました。また同調査結果では全体の約6割の回答者がニュースを発信する組織やメディアを信頼できないものとして位置づけていました。 さらに近年はAI技術の進歩と思想の偏った人々によって本物と見間違うようなフェイクニュースが文章・画像・動画で次々と生成され、表面的な情報を信じることのリスクが高まりました。
こうした大手メディアやSNSへの信頼が下がるなかで、以前よりも大きく注目されたのがローカルニュースやニッチメディアです。コロナ禍で4500万MAUまで拡大したNewsBreakに代表されるように、地元特化型、カルチャー特化型、ソーシャルメディア特化型など、それぞれの特性を大きく打ち出したメディアが登場しました。人々が信頼するソースをよりローカルとニッチに探す傾向が高まったと推察されます。 2022年も引き続き、情報の提供者・受益者のどちらもがニュースの正しさとは何なのか、何を知るべきなのか、何を伝えるべきなのかを意識してプロダクトを使う/提供していくことが重要になると思われます。来年はメディアの信頼を取り戻すことを支援するスタートアップやテクノロジーの出現に期待です。 # 2. クリエイターエコノミーがさらに顕著に 2021年はこれまで以上にクリエイター支援ツールにリスクマネーが集まった 参考: [CB Insights](https://www.cbinsights.com/research/report/what-is-the-creator-economy/) 2021年はこれまで以上にクリエイター支援ツールにリスクマネーが集まった 参考: [CB Insights](https://www.cbinsights.com/research/report/what-is-the-creator-economy/) ここ数年でクリエイターの存在感は大きく増しましたが、2021年も例外ではありませんでした。[Passion EconomyのサブセットであるCreator Economy](https://ahc.substack.com/p/passion-economy-vs-creator-economy)が表出化し、とくに[TikTokの普及](https://techcrunch.com/2021/09/27/tiktok-reached-1-billion-monthly-active-users/)たるや目をみはるものがありました。[元々人気のあるセレブリティやインフルエンサーだけでなく、Z世代を中心により一般に近い人々がクリエイターとして活躍した事例](https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/year-on-tiktok-2021)も多く見られました。 文字メディア界隈ではニュースレターサービスの[Substackが大きく成長しました。](https://backlinko.com/substack-users)そこではメディア化した一部の強いクリエイターがマイクロベンチャーファンドを立ち上げ、Solo Capitalistとして投資活動を行うなど、クリエイターのマネタイズ手段の多様化や影響力が強くなっている様子も見てとれました。 またクリエイターが継続的に活動を続けるために必要となってくる、コミュニティ運営、マネタイズ、パーソナルメディア運営などを支援する各種ツールも次々と現れ、さまざまな業界のクリエイターの利用が拡大しました。とくにDiscordは、元来のコアターゲットであったゲームのみならず、Web3、仮想通貨、投資、プロダクト開発、カンファレンスなどのコミュニティで利用されており、コミュニティ運営に欠かせない存在になってきました。 Discord登録ユーザは3.5億人(MAUは1.5億人)を超え、2020年から50%増えたと言われている 参考: [influencer marketing hub](https://influencermarketinghub.com/discord-stats/) Discord登録ユーザは3.5億人(MAUは1.5億人)を超え、2020年から50%増えたと言われている 参考: [influencer marketing hub](https://influencermarketinghub.com/discord-stats/) Web3の流れもあり、来年もさらにクリエイターの影響力拡大は継続すると思われます。引き続き来年もクリエイターエコノミーに注目です。 # 3. メディアの融合と課金方法の多様化 近年はどの企業にとってもユーザ獲得コスト(CAC)が上がってきたため、伝統的なSaaS企業やVCがメディアの買収や新たなメディアを立ち上げ、コンテンツ力を高めることでユーザを集める事例が現れました。 一方で資金力のない中小ブランドはShopifyなどを使って自前のECストアでブランディングする傍ら、分散型のネットワークを作って顧客をお互いに融通する動きも現れました。またメディアにおいても、広告フリーのネットワーク、ニュースのバンドルなどメディア間パートナーシップも生まれ、個人クリエイターのメディアでも複数クリエイター間でパートナーシップを組みバンドル化することで新たなメディアの形を作り出す事例も生まれました。 さらには、課金手段も多様化し、数十~数百円でニュース記事を購入、サブスク課金にも関わらず支援するクリエイターをユーザが選択可能、さらには仮想通貨のテクノロジーにより1円以下でも課金可能、ユーザの投げ銭(支援)行為に対して利子まで付与、といったように課金手段が多様化しました。ユーザは細かく興味のあるコンテンツを購入してポートフォリオを組むような使い方ができるようになりつつあります。 EC、VC、SaaSなどこれまで所謂メディアとは違うものとして捉えられることが多かった事業形態がメディアと融合しつつあり、前例にこだわらずユーザを惹きつけるメディア・コンテンツを作る考え方が生まれています。さらに魅力的なクリエイターやメディアの増加、課金手段の多様化により、ユーザの選択肢は圧倒的に増え、どのように取捨選択し自分にとって最適な情報ポートフォリオを組むのか非常に重要になっています(サービス提供側にとっては、可処分時間の奪い合いがさらに激化したとも言えます)。 この2つの流れは2022年もさらに加速すると思われます。既に情報爆発の状態となってしまっている方も多いと思いますが、それを整理し支援するスタートアップの登場も期待されます。 # 4. Web3が顕在化し新たな潮流へ 参考: [Web2 vs Web3](https://ethereum.org/en/developers/docs/web2-vs-web3/)より筆者意訳を加え作成 参考: [Web2 vs Web3](https://ethereum.org/en/developers/docs/web2-vs-web3/)より筆者意訳を加え作成 最後にWeb3についてです。2021年前半にNFTの話題が沸騰しましたが、その後2021年後半にかけて、Web3の認知が一気に加速しました。Web3は仮想通貨をはじめとしたトークン、NFT、DAO(分散自律組織)の3つの要素が可能とする新たなインターネットの形です。GAFAをはじめとするWeb2のプラットフォーム一強に反発する形で、顔の見えない個人同士が分散自律的に集まり、コミュニティが形成され、プロジェクトが進められる事例が次々と出てきました。また昨今話題となっているメタバースにおいても基盤となってくる要素だと考えられます。 Web3はメタバースと同じく人々の期待の現れとして言葉だけが一人歩きしている面もあり、実態として何ができるのか、何の問題を解決できるのか、人々の間でより正確に認知されることが必要です。おそらく来年あたりが[ハイプ・サイクルで言う幻滅期](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB)のタイミングになるかと思いますが、今後成功をおさめるかどうか2022年のWeb3の動きに大注目です。 # おわりに Ximera Media Next Trendsをスタートとして約1年が過ぎましたので、本連載が扱ってきたテーマを振り返り、2021年のメディアトレンドをまとめてみました。あらためて見ると、1年で本当にさまざまなことが起こりました。今回取り上げたどのトピックも来年も継続してウォッチしておくべき話ですが、とくにWeb3の動きは近年まれに見るインターネットの新たな潮流であり、最も興味深いトレンドです。 本年の記事配信は今回で最後となります。本連載がみなさまの多少のお役に立っていましたらなによりです。来年もどうぞ株式会社キメラおよびXimera Media Next Trendsをどうぞよろしくお願いいたします。 --- ## 分散自律型組織「DAO」による新たな組織の形 URL: https://ximera.com/posts/e4e8f6530a 公開日: 2021-12-13 著者: Ikuo Morisugi ## ブロックチェーンが可能にした分散自立型コミュニティの体現 Ximera Media Next Trends #26|Author: Ikuo Morisugi|Dec 13, 2021 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第26回となる今回は、分散自律型組織「DAO」について紹介します。 [本連載第24回(Web3がバズワード化している背景)](/posts/9a724346a6)で取り上げたように、中央集権的なプラットフォームへの対抗の動きとして、ブロックチェーンを基盤に分散自律的なサービスやプロダクトが多数登場しています。そして、多くのWeb3のサービスやプロジェクトの意思決定は、ひとりのCEOやPdMのような人間や組織ではなく「DAO」と呼ばれる分散自律的な組織・コミュニティによってなされています。 今回はDAOとはなにか、その具体的事例について紹介することで、DAOへの理解を深め将来的な可能性について触れていきたいと思います。 # DAOとは : 不特定多数の個人による自律組織 DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(分散自律型組織)の略で、あるプロジェクトやプロダクトが不特定多数の参加者によるコミュニティによって、管理・運営される組織やその形態のことを指しています。[本連載第24回](/posts/9a724346a6)でも少し触れましたが、DAOではコミュニティ用のトークン(ガバナンストークン)をブロックチェーン上で発行し、ガバナンストークン保有者の投票によって、その組織の資金の使い道・体制・プロジェクト・プロダクトの方針などを決めていくことができます。 通常の議会や株式会社と違うのは、誰もがDAOにおける意思決定者となれることです。たとえば議会では選挙で選ばれた議員同士で合意形成された政策しか実行されません。株式会社でも、株主が議決権を行使できるのは、株主総会における役員の選任・報酬、事業譲渡などの大きな意思決定に限られます。基本的には、有権者にしても株主にしても、議員・経営者・役員など代表として意思決定する人をアサインし組織やプロジェクトを動かしてもらっています。一方でDAO型組織では発起人や初期メンバーは当然いるものの、そのメンバーだけが組織をコントロールできるわけではなく、基本的にはトークン持つ不特定の参加者全員が意思決定者になりえます。 従来組織(点線より左)とDAO(点線より右)の違い 出典: [nansen](https://www.nansen.ai/research/first-defi-then-nfts-now-daos-the-next-big-chapter-of-crypto-is-already-here) 従来組織(点線より左)とDAO(点線より右)の違い 出典: [nansen](https://www.nansen.ai/research/first-defi-then-nfts-now-daos-the-next-big-chapter-of-crypto-is-already-here) DAOのようなボトムアップの仕組みでは、衆愚や独裁化に陥るリスクもあります。そのリスク軽減のため、多くのDAOでは[Quadratic Voting](https://vitalik.ca/general/2019/12/07/quadratic.html)(二次投票)と呼ばれる、投票数を増やすほど投票にかかるコストが二乗されていく方式が取り入れられています。たとえば、投票者は1人99ポイントを持っており、投票の完了にはそれをすべて消化しなければならないとします。1票投じるのに1ポイントかかりますが、1票以上同じ候補に入れようとすると入れたい票の2乗分のポイントがかかるのです。2票入れるには(2 x 2)4ポイント必要、3票入れるには(3 x 3)9ポイント必要で、同じ人に投票できるのは最大で9票で(9 x 9)81ポイントが必要となります。同じ人に9票入れた場合でも、余った18ポイントは他の候補者に入れる必要がでてきます。支持している候補以外の政策や意見を聞き、投票をする必要がでてくるのです。Quadratic Votingに従い、票の偏りを防ぐことで、衆愚や独裁に陥るリスクを軽減することができます。Quadratic VotingはさまざまなDAOで導入されているほか、台湾政府が公式開催している[総統杯ハッカソンの投票システムとして利用される](https://logmi.jp/business/articles/323657)など行政でも取り入れられています。 このようにブロックチェーンのおかげで分散自律型な組織・コミュニティが運用ブロックチェーンのおかげで分散自律型な組織・コミュニティが運用できるようになりました。それを体現している組織形態がDAOというわけです。 # DAOの事例: Bankless、CityDAO、RenoDAO 2021年7月時点で100以上のDAOが100億ドル(約1.1兆円)の資産を保有している 出典:[DAO Landscape](https://coopahtroopa.mirror.xyz/_EDyn4cs9tDoOxNGZLfKL7JjLo5rGkkEfRa_a-6VEWw) 2021年7月時点で100以上のDAOが100億ドル(約1.1兆円)の資産を保有している 出典:[DAO Landscape](https://coopahtroopa.mirror.xyz/_EDyn4cs9tDoOxNGZLfKL7JjLo5rGkkEfRa_a-6VEWw) 一口にDAOと言っても上記の図のようにさまざまなカテゴリー・ジャンルで存在しています。ここでは特にメディアや組織観点で代表的なプロジェクトを取り上げます。 メディア関連のDAOとして、代表的なのが[Bankless](https://www.bankless.community/)です。Banklessは、その名の通り銀行のような中央集権的な金融システムから分散自律的な形を模索するメディアです。無料のニュースレター・Podcast・Youtubeを配信して集客を行い、[Substackでの有料ニュースレター($22、約2400円/月)](https://newsletter.banklesshq.com/)でマネタイズしています。Mediumには2021年5月時点でニュースレター登録者4万人、Podcast40万ダウンロード/月、Youtube登録者数が4万6000人がおり、[有料のニュースレターにより、既に収益化ができている](https://medium.com/bankless-dao/bankless-dao-genesis-proposal-18c24caf4485)と記載されています。 Banklessは2020年にバージニア州で有限会社Bankless LLCとして法人登録後、2021年5月にDAOを設立しました。DAO設立のタイミングでBanklessは、BANKと呼ばれるトークン総供給量の25%を3年間で放出、Bankless LLCが所有することの承認をコミュニティに求めました。この承認のプロセスもDAOらしく[BANKトークン保有者が投票することで決められました](https://snapshot.org/#/banklessvault.eth/proposal/QmdoixPMMT76vSt6ewkE87JZJywS1piYsGC3nJJpcrPXKS)。通常の株式会社であれば、創立時点で創業者やVCが過半数以上の株式を保有していることが当たり前です。一方でBanklessはそれを前提としておらず、創立当初はBankless LLCおよび創立者やチームメンバーが持つBANKトークンはゼロで、コミュニティの承認を経て25%分を所有することを実現しています。この意思決定のプロセスは非常に民主主義的で公平なものに思えます。メディア運営が一部の権利者に依存せずなされる興味深い事例だと考えられます。 DAOはメディアといった事業運営だけにとどまらず、地域や土地を分散自律化するための仕組みとしても利用されています。2021年USのワイオミング州ではじめてDAOが州法上で組織として認められました。新たに制定された[Decentralized Autonomous Organizations Law](https://www.wyoleg.gov/Legislation/2021/SF0038)により、有限会社としてDAOの登記が可能になりました。その仕組みを使い[はじめて土地を所有するDAO](https://twitter.com/CityDao/status/1455203913985138700)となったのが[CityDAO](https://www.citydao.io/)です。 CityDAOはBlockchain City(ブロックチェーン都市)の概念を打ち立て、[市民権をNFT化して販売](https://opensea.io/collection/citydao)しました。創立市民、初期市民、一般市民の3種類のNFTがNFTマーケットプレイスのOpen Sea上で販売され、[25万ドル(約2700万円)の資金を集めました](https://city.mirror.xyz/SQW0jsq14kvFmqZKKMQejXr8Gz3QN1HHnBUW2toA6WI)。そしてCItyDAOは集めた資金を元に[ワイオミング州の40エーカーの土地を購入](https://www.wyomingpublicmedia.org/business/2021-11-12/blockchain-company-citydao-buys-40-acres-in-park-county)。この土地はCityDAOによってNFT化され、ブロックチェーン上で所有権が管理されています。これは、これまで多くの土地が地主や国によって所有・管理されていたところに、DAOのような分散自律的な仕組みを持ち込むことで、新たな土地の所有概念を作ろうとする実験的取り組みです。このような取り組みが世界の各地域で加速的に起こっていくとまさにブロックチェーン都市やそのネットワークができあがる可能性があります。 ほかにも、[ネバダ州のリノ市が独自のトークンであるReno Coinを発行するDAOを創立](https://cryptoslate.com/city-of-reno-to-create-the-reno-dao-on-tezos-and-digitize-famous-art-pieces-as-nfts/)し、都市にゆかりのあるNFT(バーニングマンという音楽フェスで展示されたアートなど)の発行、土地の賃借の決定や賃料分配にDAOの仕組みを使う構想を発表しました。行政のようなレガシーな組織においても、経済衰退などの危機感からもこうした新たな組織形態へのシフトが生まれていると考えられます。 # おわりに 今回は「分散自律型組織DAOによる新たな組織の形」についてとりあげました。映画やアニメの攻殻機動隊シリーズを観たことがある方には、「[Stand Alone Complex](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BB%E6%AE%BB%E6%A9%9F%E5%8B%95%E9%9A%8A_STAND_ALONE_COMPLEX)」のような話だと感じられたかもしれません。劇中において電脳技術という新たな情報ネットワークにより、孤立した個人(スタンドアローン)でありながらも全体として集団的な行動(コンプレックス)を取ったことをStand Alone Complexと称されました。DAOはまさにこの概念を体現している組織形態であり、映画やアニメの話でしかなかったことがブロックチェーン技術によって実現された例と言えそうです。 とはいえ、DAOも完璧なフレームワークではなく、意思決定に時間がかかる、責任所在が有耶無耶になる、など分散自律型故の欠点もあります。さらにDAOがまだ新しい概念であること、法制度が追いついていないこと、仕組みの導入に時間がかかることから、即座にすべての組織がDAOに対応し移行していくことは考え難いです。 一方で、実際にDAOでブロックチェーン都市のようなものができ、さまざまなプロジェクトが運営されている現状を鑑みると、これから事例や実績を積み重ねられていくことで、社会へ大きな影響を与えることは十分考えられます。創立時点からDAOとして動くスタートアップも多数生まれており、自身が属する組織の選択肢も増えるかもしれません。今後も大きく組織やコミュニティのあり方を変えるDAOについて注目していきたいと思います。 --- ## アルゴリズムドリブンなメディア URL: https://ximera.com/posts/559977c34b 公開日: 2021-11-30 著者: Ikuo Morisugi ## 並の開発者では実現が難しい技術が民主化されつつある Ximera Media Next Trends #25|Author: Ikuo Morisugi|Nov 30, 2021 [Data illustrations by Storyset](https://storyset.com/data) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第25回となる今回は、「アルゴリズムドリブンなメディア」について紹介します。 ソーシャルメディアや動画サイトをはじめとして、我々が普段利用しているメディアの多くで、アルゴリズムによる機械的な意思決定が行われています。たとえば、TikTokやYoutubeやNetflixのフィードは機械的にパーソナライズされ、できる限りユーザにサイトに滞ってもらえるように最適化されています。 そうしたデータサイエンスやAIの進化は止まらず、「次世代のヒットメーカーを見つけ出す」、「アルゴリズムがコンテンツ自体を生成する」など、これまでのアルゴリズムやAIでは難しいと考えられていたタスクも実用レベルになってきました。 こうした技術を実用化しているスタートアップは多数存在していますが、本記事では特に自社でメディアを持ち、アルゴリズムの活用で新たに付加価値を提供しているスタートアップを紹介したいと思います。 # データ分析でヒット作を見つけ出す: Inkitt これから出版する書籍がヒット作になれるのか事前に検証することは困難です。市場に出してみるまでは内部レビューによるフィードバックしかなく、少数の人間のバイアスによりベストセラーを見逃してしまうということが起こります。たとえば、ハリーポッターは[12の出版社から出版を断られ](https://www.cosmopolitan.com/jp/entertainment/celebrity/a33125126/jkrolling-life-harrypotter/#link5)、スターウォーズの初期は[「変な映画だから」という理由で製作関係者に評価されなかった](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%BA_%E3%82%A8%E3%83%94%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%83%894/%E6%96%B0%E3%81%9F%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%B8%8C%E6%9C%9B)といった話は有名です。 この課題に対してデータサイエンスのアプローチでベストセラーを拾い上げようとしているのが[Inkitt](https://www.inkitt.com/)です。Inkittは2つのプラットフォームを持っており、1つは無料で誰でもストーリーを配信・閲覧できるInkitt、もう1つはInkittの中から一定の基準で選ばれたストーリーだけが掲載される有料書籍のマーケットプレイス[GALATEA](https://getgalatea.com/)です。 詳しくは明かされてはいませんが、Inkittは投稿された作品がベストセラーのポテンシャルを秘めているか[アルゴリズムを使って評価](https://www.wearewhitefox.com/qa-with-ali-albazaz/)しています。作品がInkittにアップロードされると、[各読者の1200以上の読書関連の行動がトラッキング・分析され、一定以上の評価を得るとGALATEAでの有料配信の検討がはじまります](https://www.inkitt.com/writersblog/ask-inkitt-why-should-i-use-the-inkitt-platform/)。 Inkittでアルゴリズムで良評価を得たクリエイターには、GALATEAで有料作品化を打診する流れができている 画像: [Inkitt](https://www.inkitt.com/writers) Inkittでアルゴリズムで良評価を得たクリエイターには、GALATEAで有料作品化を打診する流れができている 画像: [Inkitt](https://www.inkitt.com/writers) Inkittのアルゴリズムで規定以上の評価を得た作品のクリエイターは、Inkittからコンタクトがあり、GALATEAで配信するための[契約](https://www.inkitt.com/writersblog/how-inkitt-publishes-your-books-from-preparation-to-promotion)を結ぶことになります。契約後はInkittに所属するプロ作家(編集者)の支援のもと、作品をよりGALATEAに合った内容に仕上げるプロセスを経て(1-2ヶ月程度)、GALATEAで配信することができます。 Inkittは現在700万のエンドユーザと30万のライターのコミュニティを抱え、2019年から約3倍の成長を遂げています。GALATEAでは、2020年時点でトップクリエイターは月に14,000ドル(約160万円)を[稼いでいる](https://www.inkitt.com/writersblog/how-inkitt-publishes-your-books-from-preparation-to-promotion/)とされています。イスラエル出身のサピア・エングラードさんのヒットとなったロマンス小説の[Millenium Wolves](https://galateastories.com/933)は、月に$10万ドル(1100万円)の売上、インド出身のシームラン・サフーさんの小説はこれまでに[270万ドル(約3億円)のヒット](https://jp.techcrunch.com/2021/11/15/2021-10-04-inkitt-inks-a-59m-investment-wants-to-turn-its-data-driven-self-publishing-platform-into-a-multi-media-powerhouse/)と億円レベルの大ヒット作も生まれています。 Inkittは、2021年10月にNew Enterprise Associates(シリコンバレーの老舗VC)がリードし、Axel Springer(学術系をはじめとした出版大手)が参加するシリーズBラウンドで[5900万ドル(約66億円)を調達](https://jp.techcrunch.com/2021/11/15/2021-10-04-inkitt-inks-a-59m-investment-wants-to-turn-its-data-driven-self-publishing-platform-into-a-multi-media-powerhouse/)しました。同社はTechCrunchに対して、現在オーディオブックの開発にも着手しはじめているほか、映画、テレビ番組、マーチャンダイジング、ゲーム、テーマパーク開発など、今後さまざまな事業拡大の可能性があることを口にしています。 # AIが曲とプレイリストを生成する: Aimi 作業に集中したい時、リラックスしたい時、気分を上げたい時など、次に行うアクションにあわせて、音楽を聞いている方は一定数いらっしゃるかと思います。2020年に米国で行われた調査でも[在宅勤務中に音楽を毎日聴くユーザが40%、週1回以上聴くユーザが35%存在していること](https://www.statista.com/statistics/1172875/popular-media-activities-whilst-working-from-home-us/)がわかっており、人々が仕事をしながら音楽をかける習慣があることが伺えます。 こうしたながら聴き需要に対し[Aimi](https://www.aimi.fm/)は、AIによって人々の気分を支える音楽アプリをソリューションとして提供しています。Aimiでは、[アーティスト](https://www.aimi.fm/artists/)が提供する曲の素材とアルゴリズムによるレコメンドをベースに自動かつエンドレスに曲をミックスしていきます。Serenity、Chill、Flowといったなりたい気分にちなんだ6つのジャンルが提供され、ムードにあわせて選ぶことができます。たとえば、Flowというジャンルを選ぶと、BPM(1分間あたりのビート数、つまり曲のスピード)が80程度のLo-fi Beatsと呼ばれる音楽が流れてきます。一度曲が流れ出すとDJ Mixのように曲と曲の境目がなく、スムーズに曲が遷移していきます。 こうした音楽ジャンルはAimiが出てくる前から人気があります。Youtubeでも(おそらく仕事や作業中に聞いている人に人気と思われる)AimiでいうところのFlowに近いジャンルであるLo-fI Hip Hop関連の動画が多数アップロードされており、365日24時間放送で[総再生回数が4億回を超える](https://www.arban-mag.com/article/54726)ものもあります。Youtubeの動画は人手によりキュレーションされたプレイリストで、曲間遷移も自然ではなくぶつ切れであることが多いです。一方AimiはAIベースの自動選曲、自然な曲間遷移によるミックス、Like / Not Likeフィードバックによるパーソナライズ化、その時の気分にあわせたいくつものプレイリストから選択が可能といった点が差別化ポイントになっています。
Aimiは2021年11月に、Great Mountain PartnersやFounders Fundが参加する2000万ドル(約22億円)の[シリーズBラウンドの資金調達](https://www.hypebot.com/hypebot/2021/11/who-is-aimi-what-does-the-20m-it-just-raised-mean-for-creators-and-ai-powered-music.html)を行いました。今後は[Aimi+](https://www.aimi.fm/plus/?trk=organization-update-content_share-embed-video_share-article)と呼ばれる有料のサブスク型へ転換することで、楽曲の使用料への支払いと売上をアーティストへ還元していく([売上の分割にはブロックチェーンとスマートコンタクトが利用される](https://aithority.com/technology/financial-services/aimi-raises-20-million-in-series-b-funding-signaling-strong-embrace-of-ai-powered-music-platform/))とみられます。 # おわりに 今回は「アルゴリズムドリブンなメディア」についてとりあげました。 [本連載第1回でもテキスト/音声コンテンツ制作の自動化(文章生成・レビュー・音声読上げ)の動向](/posts/12b6089a09)をレポートしましたが、近年では利用できるジャンルやタスクがさらに広がってきました。文章の生成、[歌詞・楽曲の生成](https://openai.com/blog/jukebox/)まで、ある程度フォーマットが決まっているデジタル創作物については、人間が作ったのかどうかわからないレベルまで進化しつつあります。 最近では、[GPT-3(高レベルの自然言語処理モデル)のAPI人数制限撤廃](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2111/19/news161.html)、[類似サービスのOSS(オープンソースソフトウェア)化](https://www.infoq.com/jp/news/2021/08/eleutherai-gpt-j/)など、並の開発者では実現が難しい技術が、民主化されつつあり、今後より一層アルゴリズムベースのサービスやメディアの創造が進むと思われます。 --- ## Web3時代のWriting Platform URL: https://ximera.com/posts/9a724346a6 公開日: 2021-11-24 著者: Ximera ## クリエイターや支援する人がダイレクトに報われる世界 Ximera Media Next Trends #24|By キメラ|Nov 24, 2021 [Illustration](https://undraw.co/) by unDraw ## はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第24回となる今回は「Web3時代のWriting Platform」を取り上げます。 さまざまなところで取り上げられている[Web 3.0](https://www.forbes.com/sites/forbestechcouncil/2020/01/06/what-is-web-3-0/?sh=1b098e9a58df)(Web3とも記述されます)。Webをデータとして意味を持たせて統合的に扱う構想である旧来からの[Semantic Web](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96)の要素を含むものもあれば、分散型Webシステムを含むものもあり、明確に共通の定義があるわけではありません。本稿では便宜的に「ブロックチェーンに代表される分散化技術を使った脱中央集権的な新しいインターネットの形」と定義します。 昨今Web3がバズワード化している背景には、GAFA(最近では[Facebookの社名変更](https://jp.techcrunch.com/2021/10/29/2021-10-28-facebook-changes-its-corporate-branding-to-meta/)に連動してGAMA)に代表される、各種プラットフォームへの一極集中があると考えられます。Web2時代のプラットフォームは、少数の人間が提供するアルゴリズムとルールが全ユーザに適用され、プラットフォームの意を介さない動きは排斥されます。しかし[Facebookの内部告発](https://www.gizmodo.jp/2021/11/facebookmate.html)にも代表されるように、少数の巨大な力を持つプラットフォームが間違った運用をしてしまえば壊滅的な影響を人々に及ぼすことは明らかです。 そうした問題を解決するためにWeb3の考え方が支持を得つつあります。そしてメディア領域ではクリエイターとファンが自律分散的にプラットフォーム自体を作り上げるような動きをサポートするサービスが出てきているのです。 そこで今回はメディアにおけるWeb3実現に取り組むスタートアップを紹介したいと思います。 ## ライターとファンで作るWeb3プラットフォーム: Mirror これまでクリエイターがコンテンツを生み出しても、大きなトラフィックをファンから獲得し、広告・サブスク・物販などで収益化できるまでのハードルは高く、また同時にプラットフォームが次々に変えてくるルールやアルゴリズムがクリエイターの活動継続のリスクになっていました。 たとえば[App StoreやGoogle Playの30%という高いストア側手数料や迂回課金禁止問題](https://ja.wikipedia.org/wiki/Epic_Games%E5%AF%BEApple%E8%A8%B4%E8%A8%9F)のように、プラットフォームの力が強すぎるがゆえ、多くのクリエイターやファンはプラットフォーマーの決めたルールに従わざるをえません。ルールを犯せばFortniteのようにプラットフォームから排除され、ビジネスにネガティブなインパクトを残すことになります。巨大プレイヤーのEpic Gamesですらそのような状況であり、ましてやいちクリエイターやファン側がルールを変えることは非常に敷居が高いといえるでしょう。 ジャーナリズム、小説などWriting領域でこの課題に対して取り組んでいるのが[Mirror.xyz](https://mirror.xyz/)です。Mirrorはライターのプロジェクト作成・資金調達・記事作成/パブリッシュ・コンテンツのマネタイズまでの一連をWeb3の考え方で支援するプラットフォームです。イーサリアムやNFTをうまく使い、プロジェクトの意思決定や合意形成にもWeb3の発想が取り入れられています。 たとえば、作家のEmily Segalさんは、Mirrorを使って、[「Burn Alpha 」という新刊小説の資金調達を行いました](https://emily.mirror.xyz/0AFENlMKv9amUC1OJIZY26udpISw_raXkoEcvelPvzg)。Mirrorで$NOVELと呼ばれるトークンを発行し、それをプロジェクトの支援者からイーサリアムを使って購入してもらうことで本を執筆するための活動費を集めたのです。Emilyさんは結果的に104人の支援者から24 ETH(2021年11月5日時点の価格で約1,200万円)を調達することに成功しました。 Mirror上で行う資金調達では、株式のように多くトークンを購入した支援者ほどプロジェクトで制作されるコンテンツの所有権の割合が増えます。プロジェクトで作られたコンテンツはNFT(Non Fungible Token: 非代替性トークン) 化され、流通されるたびにプロジェクト作成者にも支援者にも所有割合に応じて一定の販売手数料が入ります。上記のBurn Alphaの例では$NOVELトークンを購入した支援者は完成した本の初版NFT販売の利益の一部を受け取ることができます。 Mirrorは記事の作成・NFT化・クラウドファンディング・コミュニティなど必要な機能をWeb3の発想で一式提供している 画像:[Mirror](https://dev.mirror.xyz/) Mirrorは記事の作成・NFT化・クラウドファンディング・コミュニティなど必要な機能をWeb3の発想で一式提供している 画像:[Mirror](https://dev.mirror.xyz/) 記事はWordPressと類似したMirrorのCMSで作成・編集して公開することができます。[制作された記事をNFT化して複数の読者が支援しNFTを分割して所有する](https://dev.mirror.xyz/AOoIsKPfZvf8LACKWp7gj_mg1ICCDOfPnVBOsDQoXo8)こともできます。実際にPacky McCormickさん([Not Boring](https://www.notboring.co/)というニュースレターで有名なSolo Capitalist)が[記事をNFT化して分割販売することで、約40,000ドル(約440万円)を集めることに成功](https://notboring.mirror.xyz/rPk2Ozej8JHZZ_qayaekCfc1OUUHkmzLtZF3axlfmok)しています。この質の高い記事はペイウォールを設置せずとも読者からの支援を得ることができる仮説を証明したと[Mirrorは紹介](https://dev.mirror.xyz/valptw8S9eZ1cvzX-JCGga2N_W2hXyurSYbOlNFj4OQ)しています。 またコラボ記事を書く際には、[コラボレータ同士の収益分配の割合をライター間で決めることもできます](https://dev.mirror.xyz/V_7Jp1hy_g8bz-J1B4Wb5KYSmj5Lt4W7q7cw0noxJsU)。通常であれば、契約書類のやりとりや銀行振り込みによる送金などの手続きが必要な収益分配ですが、Mirror上では割合さえ決めればイーサリアムが自動的に移動するため、ライターの負荷が大きく軽減しています。 Mirrorではプロジェクトの次の動きを意思決定する場でもWeb3の考え方が取り入れられており、[Token Race](https://dev.mirror.xyz/dLLIq4Iebg5DLWJbOWa3sU6oQuwbogkmqPnz-ZbzPUg)と呼ばれる機能によってプロジェクト主催者、支援者で合意形成をすることができます。合意形成はコミュニティ向けにコインを発行して、そこでコイン保持者が「投票」を行うことで実現されます。これにより自律分散的な集団がプロジェクトの行く末を決定できるのです。 このようにブロックチェーン、NFTの仕組みを使うことで誰もがプロジェクトの「オーナー」となれることから、ライターとファンの関係が強化され、プロジェクトを推進・応援し・宣伝する動機が従来よりも多く生まれます。Mirrorは現状Mirror内で生まれるNFTの販売から収益を得ていませんが、今後NFTの一次流通、二次流通時の販売手数料、あるいは、ライター・クリエイター向けに出版・収益化を支援するソリューションを提供することが考えられます。 Mirrorには[$WRITE RACE](https://dev.mirror.xyz/vZxxUIeGMQK9NNLcrT0eDYZ6wXhXVr6vTQzztj1DaEA)というMirrorのコミュニティがあり、現在どのライターが新規にMirrorでプロジェクトをはじめられるかを投票で決定しています。将来的には、Token Race同様このコミュニティでMirrorというプラットフォームの方向性が議論され、上記のマネタイズのオプションもライターやファンの意思が反映される可能性があります。Mirrorはあらゆる点でライターとファンが自立分散的にプラットフォームを作り上げる仕組みを提供しており、Web3的なアプローチを正しく実践している存在だと考えられます。 Mirrorは2021年6月に、さらなる成長に向けて[Union Square VenturesやAndreessen Horowitzという著名VCに加え、クリエイターエコノミーに特化したVCであるAtelier Ventures(Creator Economyという言葉の提唱者であるLi Jeanさんが運営)を投資家に1000万ドル(約11億円)の資金調達をした](https://www.theinformation.com/articles/union-square-ventures-values-crypto-publishing-tool-mirror-at-100-million)と報道されています。評価額は100億円とされ、投資家から大きな期待を寄せられています。 ## Web3のコミュニティプラットフォーム: HiDE 日本においても記事投稿と資金調達のための分散型コミュニティは存在しています。なかでも[HiDE(ハイド)](https://hide.ac/)はとくに注目の存在です。 HiDEは「法定通貨だけに依存しない分散型経済圏を創る」をビジョンに掲げ、Web3の発想でサービスやプロダクトが設計されています。HiDEではトークン発行型の記事の作成・配信およびプロジェクトコミュニティの運営ができます。 HiDEでは、[JPYC(日本円と価値がほぼ連動するステーブルコイン)](https://jpyc.jp/)と交換することができる[JPYD](https://jpy.dog/)と呼ばれるトークンが流通通貨として利用されます。[JPYDを保持している間は自動的に資産運用され、運用がうまくいっている限り利子もつくと説明されています](https://hide.ac/articles/lAEwL879a)。このJPYDを使って、記事投稿へのインセンティブ、記事への投げ銭、クラウドファンディングによる資金調達を可能にしています。 通常のクラウドファンディングであれば、集めた資金に対して10%程度の手数料に加え、出金関連の手数料が課されます。HiDEではこの仲介手数料を[ブロックチェーンとスマートコントラクトに任せることで](https://hide.ac/articles/lAEwL879a)最低手数料0.5%で資金調達することができるとHiDEは説明します。 記事投稿や投げ銭を多くしたユーザがよりポイントやJPYDの報酬で優遇される仕組みがあり、その[還元率自体をプラットフォームではなく記事の投稿者が設定できます](https://hide.ac/articles/4PusBpsXD)。これもプラットフォームの一律の手数料に縛られず個人の自由を実現しています。 またHiDEではコミュニティトークンとして、[本連載第13回でご紹介したDevプロトコルへのステーキング](/posts/0074715d7a)によってHiDEのクリエイターはDevトークン報酬をもらうことができます。以前の記事で紹介した通り応援したいプロジェクトとしてHiDEにDevトークンを預けておく(=ステーキング)ことで、将来的に得られる利息がライターや開発者(クリエイター)の支援となるように設計されています。 HiDEでは開発者・ライター・支援者がDevトークンによる報酬を得られる 画像: [HiDE Online](https://hide.ac/articles/zOD4oFsnc) HiDEでは開発者・ライター・支援者がDevトークンによる報酬を得られる 画像: [HiDE Online](https://hide.ac/articles/zOD4oFsnc) オフラインで投稿、他ブログサービスとの記事の相互移動(例えば上記で紹介したMirrorからImportすることも可能)もできます。これはいずれもデータをプラットフォームが独占するのではなく、ユーザが所有権を持ち管理できるものとして位置づけているためです。このデータの取り扱いの考え方も含め、非常にWeb3的に運営がなされています。 ## おわりに 今回は「Web3時代のWriting Platform」についてとりあげました。 MirrorもHiDEも共通しているのは、ユーザーが自律的に資金を募り、コンテンツのオーナーシップを持ち、コンテンツ投稿や資金の支援をした人の行動がダイレクトに報われる世界です。どちらも仕組みがやや複雑に感じたかと思いますが、Web3時代に即したプラットフォームとして、ユーザを支配せず、誰もがオーナーとして参加するコミュニティでサービスやプロダクトの方向性を決めていくサービスが魅力的だと感じた方もおられたのではないでしょうか。 こうした現在問題となっている事象へ新たなアプローチで挑む企業(将来的には企業という形でさえないかもしれません)は、仮想通貨の盛り上がりとも連動し、これからも増加していくと思われます。 --- ## サブスクの運用体制づくり、役割やチーム構成をどうする? URL: https://ximera.com/posts/63f4958d21 公開日: 2021-11-22 著者: Ximera 2021年11月22日 |キメラのサブスク相談室 第2回 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)のメディアビジネスを成長させるための課題解決やデジタル化を支援している企業です。 この連載「キメラのサブスク相談室」では、よくお聞きするサブスクリプション事業の課題に一問一答形式でお答えします。みなさんのお悩み解消の入り口として役立てていただければ幸いです。 さて、今回のご相談は? ## お悩み:サブスクリプションの運用体制、どうすれば? 「事業」「プロダクト」「コンテンツ」の3つの軸で責任者(=最終的な意思決定を担う人)を決めたうえで、どのチームが何の業務を担当するかを明確にしましょう。 また、少人数の組織では、1人のメンバーが複数業務をこなすケースや、他部署と兼任して業務を担当する場合もあるかと思います。その場合は、以下のポイントに注意しましょう。 - 事業責任者、運用責任者、編集責任者は必ず独立させる。1人で複数の責任者を兼任しない - 各責任者は業務担当から離れ、マネジメントに徹する - コンテンツ制作とカスタマーサポートはとくに片手間の対応が難しい。早い段階で専任の人材確保やワークフローを検討する ## チーム構成は自社の状況にあわせて横断 or 専任を選ぶ 新たなチームを立ち上げる際には、人材の集め方も重要な検討課題です。チームの構成は、既存業務との兼任や有志による「横断チーム」、専任担当者をアサインする「専任チーム」の2つに大きく分かれます。それぞれの強みと弱みをまとめました。 自社の現状やチームづくりの狙いに応じて、どちらのチーム構成にするかを選ぶとよいでしょう。サブスクリプション事業の検討段階では社内の合意を得ながら進めるために「横断チーム」を組成し、実装・運用段階ではスピーディに成果を上げるために「専任チーム」に移行するなど、サブスクリプション事業のフェーズに応じて組織構成を変化させるのも一案です。 現状のチーム運営に課題を感じている方は、以下の記事もぜひご覧ください。あなたの「モヤモヤ」を解消するヒントを紹介しています。 ## 少人数チームやデジタル初心者も操作しやすい課金プラットフォーム「AE」 サブスクリプション事業を成功に導くためには、チームメンバーが扱いやすいツールを採用することも大切です。当社が提供するAEは、タグ実装で手軽にサブスクリプション機能を導入でき、シンプルな画面設計で容易に操作できます。サブスクリプション導入検討のご相談も承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 ページを最後まで見ていただいてありがとうございます🙂 --- ## Good Input UXをめざして URL: https://ximera.com/posts/e349edeebf 公開日: 2021-11-09 著者: Ximera ## 情報が溢れる世界でだれもが身につけたい技術 By キメラ|Ximera Media Next Trends #23| 2021年11月9日 [Device illustrations](https://storyset.com/device) by Storyset # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第23回となる今回は「Good Input UX(素晴らしい「情報インプット」の体験)」を取り上げます。 本、ネット記事、ニュースレター、Twitterなどさまざまな媒体を介して誰もがコンテンツを読んで情報をインプットしています。現代は電子書籍も含むインターネット上のコンテンツの量は爆発的に増え、明らかな情報過多になっています。そんななか、各人が効率的に情報インプットを行い、読む行為を通じて自分の次のアクションに役立つよう記憶するプロセスが非常に重要となっています。そのプロセスを本記事では「Good Input UX」と定義し、その実現に取り組むスタートアップを紹介したいと思います。 # 間隔反復で読書後体験を向上する: Readwise 気になる記事や本の一部に付箋を挟む、マーカーを引く、お気に入り登録する、多くの方がこのような方法で記憶の定着をはかったり、あとで読み返したときに重要な点がすぐわかるようにしているかと思います。今ではKindle、iBook、Instapaperなどのツールを使って、電子的にそうしたハイライトをすることができるようになっています。ですが、忙しい日々の中でハイライトした箇所を思い返すことはめったになく、いつのまにかハイライトした本や記事のことを忘れてしまっていないでしょうか。これではせっかくハイライトしたにも関わらず、学習の機会損失を起こしてしまっています。 この問題に対して有効なアプローチとされているのが、[Spaced Repentition(間隔反復、または分散学習](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E9%9A%94%E5%8F%8D%E5%BE%A9))と呼ばれる方法です。Spaced Repentitionは、学習から復習までの間隔を延ばしていくことによりその効果を高める学習方法です。勉強ではテストなどがあるため無意識的に間隔反復が行われていますが、一般的な読書ではそうした機会があるわけではないため一度読んだっきりで内容を忘れてしまうことも多いでしょう。こうした読書体験で起こる問題に対して、Spaced Repentitionの考え方を使ってハイライトを思い起こさせてくれるソリューションを提供するのが[Readwise](https://readwise.io/#)です。 電子媒体につけたハイライトの再学習を適切に促してくれる 画像: [Readwise](https://readwise.io/#) 電子媒体につけたハイライトの再学習を適切に促してくれる 画像: [Readwise](https://readwise.io/#) ReadwiseはAmazon Kindle、iBooks、Twitter、Instapaperとのアカウント連携をすることによって、電子書籍や記事に引いたハイライト、Likeやお気に入り登録したTweetをしばらく時期をおいてPush通知やe-mailで教えてくれます。数冊ならまだしも、数十冊の本を読んでハイライトを思い起こすのはマニュアル管理ではほぼ不可能です。しかし、Readwiseはそれをすべて任せることができるため、読了後の学習効果を確実に高めることができるソリューションとなっています。 Readwiseを使うことで、今までどおり何も考えずハイライトをつけておけばOKという読書時の安心感と、あとからインプットを定着させるプッシュをおまかせできる体験を得られます。 Readwiseは30日間無料で使うことができます。以後はハイライトの管理・通知を受け取れる[Readwise Liteで4.99ドル/月(年前払いすると4.49ドル)、またはLiteプランに加えタグ付け・外部サービスへのExport・ベータ機能などへアクセスできるReadwiseプラン 8.99ドル/月(年前払いすると7.99ドル)](https://readwise.io/pricing)で使い続けることが可能です。 # 情報爆発を収束させるReaderアプリ: Matter インターネット上には有益な情報が多量に存在しており、我々はニュースレターへの登録、SNSでフォローした人の新たな投稿のチェック、お気に入りのPodcastの視聴など、さまざまなメディアを経由して情報をインプットしています。 ニュースレターの流行やクリエイターエコノミー化が進んだ結果、メールボックスやSNSの画面はさばききれない量の情報が溢れ、ユーザは情報の海で溺れそうになっています(少なくとも筆者はそうなっています)。その情報の海のなかで自分にとって重要なものと重要でないもののが玉石混交となり、その選別だけでも大きなコストがかかっています。よほど時間があってモチベーションが高くない限り、多くのユーザが読むべきコンテンツを選別することもできず(または流れていることも気づかず)、散発的にたまたま開いた情報を読むといった状態に陥ることになります。 そんな問題を解決しようとしているのが[Matter](https://hq.getmatter.app/)です。Matterはユーザが読むべきストーリーを一つの場所に集め、今日のインターネットにおけるCuration Readingアプリを提供しています。Matterは、1. テキスト記事・Twitterスレッド・PDFなどのWebコンテンツの集約、2. 読みたいニュースレターの選別と集約、3. 新たなライターやクリエイターの発見の大きく3つの機能を提供することで、ユーザが読むべきコンテンツの意思決定を支援してくれます。Matter上ではすべてのコンテンツが同型のフォーマットに整形しなおされ、フィード形式でコンテンツの閲覧ができるようになっています。 Matterであらゆる読み物の情報を集約し見るべき/聞くべきものにフォーカスできる 画像: [Matter](https://hq.getmatter.app/) Matterであらゆる読み物の情報を集約し見るべき/聞くべきものにフォーカスできる 画像: [Matter](https://hq.getmatter.app/) 1.について、ストックしたい記事、Twitterスレッド、PDFなどがあればMatterアプリにシェアするだけで保存され、Matterアプリ内で整形された形で閲覧することが可能です。 2.について、GmailアドレスでSubstackなどのニュースレターに登録している場合は、Googleアカウント連携でMatterに集約したいニュースレターを選択することができます。結果としてほかのマーケティングメールや注文完了メールなどの関係ないコンテンツをすべて排除して、読み物に集中することができます。 3.について、フォローしているライター・クリエイターのフィード以外にdiscoverと呼ばれるフィードがあります。 Matterが選んだキュレーターがセレクトするエンゲージメントの高い記事が流れ、新たなライター・クリエイター・キュレータと出会う契機になっています。 またテキスト記事を自動音声で読み上げる機能もついており、Podcastで楽しむように記事を聞くことも可能です。こうした一連のInput UXを徹底的に考えられたMatterのアプリは流れてくる情報が選別され、非常に読みやすいものとなっています。上記のReadwiseとの連携も可能で、Readwiseでハイライトされ、読むべきタイミングのものがMatterアプリ上でもフィードとして流れてきます。 このようにMatterは、効率よくインプットするために、情報ソースを1つに集約した上で、フォーマット整形とディスカバリー機能でなめらかに読める体験を提供しています。 Matterは2021年10月に、さらなる成長に向けて[GV(Googleのコーポレートベンチャーキャピタル )をリード投資家とする710万ドル(約7.8億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2021/10/06/matter-raises-7-million-series-a-to-build-a-better-reading-app/)を実施しました。今後MatterによるInput UXの変革が期待されます。 # おわりに 今回は「Good Input UX」についてとりあげました。読書、ネット記事、Twitter、ニュースレター、Podcastなど情報が溢れている現代で、いかに必要かつ重要なものを選別してインプットし、記憶に定着させていくかは、ある意味一般教養的に誰もが身につけるべき技術なように思えます。社会全体でこのような素晴らしい情報インプットの体験(= Good Input UX)が実現できれば、人間の生産性はさらに加速できるかもしれません。本記事を読んでいただいたみなさまにもGood Input UXが提供できたかわかりませんが、何かしら役に立ったと思っていただければ幸いです。 --- ## Webメディアのサブスクリプション「はじめてOK」のタイミングはいつ? URL: https://ximera.com/posts/a4921a3253 公開日: 2021-10-29 著者: Ximera ## キメラのサブスク相談室 第1回 October 29, 2021|キメラのサブスク相談室 第1回 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)のメディアビジネスを成長させるための課題解決やデジタル化をご支援している企業です。 私たちがパブリッシャーのみなさんとサブスクリプションについてお話しするなかで、多くの方からくり返し聞くご相談があることに気づきました。それらはそのまま、サブスクリプションビジネスを検討している方々の不安であり、悩みなのだと思います。 そこでこの新連載「キメラのサブスク相談室」では、よくお聞きするサブスクリプション事業の課題に一問一答形式でお答えします。みなさんのお悩み解消の入り口として役立てていただければ幸いです。 さて、今回のご相談は? ## お悩み:サブスクリプションのはじめどきはいつ? サブスクリプションに限らず、どんな事業にも言えることですが「これで絶対に成功する!」100%の確証を得られる方法は残念ながらありません。 事業が立ち行かなくなるリスクは排除したうえで、ある程度は走りながら検証・改善する姿勢を持つことが大切です。サブスクリプション事業をスタートするために最低限準備しておきたいポイントは、以下のチェックリストを参考にしてください。 準備不足の悲劇を回避するためにおさえておきたいポイントはこの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。 👉 [そのサブスクは「破滅への道」かも。失敗を避ける4つのポイント](/posts/4b8c3ee82f) 自社メディアのロイヤルティ(読者からの愛着度)を測る方法は、以下の記事で紹介しています。サブスクリプション契約をしてくれそうな顧客の規模を予想するときの判断材料になるので、経営陣との議論にも役立ちます。 👉 [メディアビジネスの要、「読者ロイヤルティ」の測り方と育て方](/posts/a667148506) ## 案ずるより産むが易し。撤退できる範囲で安く・小さく課金を試すアイデアも 本格的にサブスクリプションを導入する前に、小規模に課金サービスを提供することで読者の反応を確かめてみるのもおすすめです。具体的には、以下のような方法が考えられます。 - 記事1本単位のコンテンツ課金を実施する - ニュースレターなど小規模なチャネルで有料課金を試す - 導入コストの小さいサブスクリプション管理ツールを試験導入する 小さく・安く試すメリットは、万が一パフォーマンスがふるわなかった場合も、読者に与える影響や経営的なダメージを最小限におさえて撤退できることです。サブスクリプションは継続課金ありきのサービスなので、一度はじめると中止しづらいことも導入ハードルの高さにつながっています。 経営判断のために課金ポテンシャルを検証する必要があるのならば、机上で悩み続けるのでなく、行動に移してみることが打開策になるかもしれません。 ## 初期費用無料、課金ポテンシャルの検証に使える「AE」 当社が提供するサブスクリプション基盤「AE(エーイー)」は初期費用無料、記事1本単位から有料課金を実装できます。サブスクリプション導入検討のご相談も承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 [https://9531158d.form.kintoneapp.com/public/410a18d2cf581a264ecdc6e323e1d14fa9bf896cf2cffe26cf300f1cb211b030](https://9531158d.form.kintoneapp.com/public/410a18d2cf581a264ecdc6e323e1d14fa9bf896cf2cffe26cf300f1cb211b030) [キメラのコーポレートページへ](https://ximera.com/) [連載:サブスク・メディアビジネスを徹底解説 のトップページへ](/category/media-business) ページを最後まで見ていただいてありがとうございます🙂 この下にはもう何もありません。[私たちのニュースレター](https://mailchi.mp/ximera/magnet-newsletter)に登録いただければ、この連載を含めたコンテンツの更新情報をお知らせします(隔週発行)。またお会いしましょう。 --- ## ユーザ獲得のためのネットワーク URL: https://ximera.com/posts/53290daae3 公開日: 2021-10-20 著者: Ximera ## 独立したECブランドの維持需要はこれまで以上に高まっている By キメラ|Ximera Media Next Trends #22| 2021年10月20日 [People illustrations](https://storyset.com/people) by Storyset # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第22回となる今回は、「ユーザ獲得のためのネットワーク」を取り上げます。 [本連載第19回](/posts/b232363883)でSaaSのユーザ獲得コスト(CAC: Customer Acquisition Cost)が年々上がっていることを共有しましたが、これはSaaSに限らずほかの業界でも起こっています。たとえば、Facebookの1000インプレションあたりの広告コスト(CPM: Cost Per Mille)は、[2020年1月には9.89ドル(約1,000円)でしたが、2021年9月には14.46ドル(約1,500円)](https://revealbot.com/facebook-advertising-costs)になっており、1.5倍程度高くなっていることがわかります。 こうした状況で効率よくユーザを獲得しようにも、広告出稿以外にはSEOなどオーガニックに集客する必要があり、とくに資金力やリソースが少ないブランドには厳しい環境となっています。そこで近年ブランド間で独自のネットワークを形成し、お互いにユーザを融通し合うことで、課題を解決しようとするスタートアップが登場しています。 本記事では特にEC領域でその課題に取り組むスタートアップを紹介したいと思います。 ## チェックアウトのブランド間ネットワーク: Bolt ECにおいてカートに物を入れて決済完了するまでのプロセス(チェックアウト: ユーザアカウント登録/ログイン 、配送先登録/オプション選択、支払い)はユーザが離脱してしまう大きなポイントの一つです。米国ではデスクトップを使う[ECユーザの約70%](https://baymard.com/lists/cart-abandonment-rate)がカートに物を入れたまま離脱するいわゆる「カート落ち」しており、モバイルに至っては85%と大きな数字になっています。これはUSのみで年間100兆円、グローバルでは年間1000兆円に相当する金額のカート落ちが起こっていることを表しています。チェックアウトのソリューションを提供する[Bolt](https://www.bolt.com/)はこれを「[チェックアウト・コンバージョン・プロブレム](https://www.bolt.com/wp-content/uploads/2020/07/Bolt_The_Checkout_Experience_Platform.pdf)」と呼んでおり、これを解消するためのプロダクトを提供しています。 Boltは 1. ShopifyやBigCommerceなど既存のECプラットフォームのチェックアウト体験を最適化するインテグレーション機能、2. 自社開発のECでも組み込みが可能なAPI・SDK の提供と、2種類の実装方法を提供しています。ECプラットフォームのチェックアウト機能ではカスタマイズできる範囲に技術的に限りがあり、一方で自社開発を進めようとするとチェックアウトだけに多くのリソースを割くことになります。そこにBoltを使うことで最低限のリソースで細かな要件に対応することができるのです。たとえば、チェックアウト時の入力項目の最適化、不正利用防止、会員登録不要のアカウントの保存・復元、自動ABテストなど、Boltではチェックアウト体験を最適化するためのあらゆる工夫が施されています。 [One-click Checkoutによりコンバージョンまでのハードルを下げる](https://youtu.be/P8FF4V9v8hQ) One-click Checkoutによりコンバージョンまでのハードルを下げる Boltのチェックアウトでブランド間ネットワークを強化する仕組みが[One-click Checkout](https://www.bolt.com/one-click-checkout/)と呼ばれる仕組みです。One-click Checkoutでは、一度Boltのチェックアウトプロセスを経たユーザが、Boltのチェックアウト機能を使う異なるブランドサイトへ訪れた場合、決済時に前回のチェックアウトデータ(名前、住所、決済手段などの情報)を呼び出すことができます。ソーシャルアカウントやAmazonアカウントによるサインアップ・ログインに似ていると感じると思いますが、One-click Checkoutは電話番号を入れSMS認証コードを入れる2ステップで名前、住所、決済情報がすべて復元され、初期会員情報登録やパスワードが不要で決済完了できる点がUXとして優れています。[60%のユーザがOne-click Checkout用に情報を保存することを選んでおり](https://www.bolt.com/checkout/)、Boltネットワーク内のブランドにとって、初回・再訪ユーザどちらにも有効なアプローチとなっています。 Boltはこれまで[1000万人以上のユーザに利用され、Bolt導入ブランドのうち96%がBoltネットワーク経由の購入を経験](https://www.bolt.com/platform/)しています。Boltの仕組みを入れたことにより、[コンバージョン率が190%上がった事例](https://www.bolt.com/blog/firing-3x-conversion-lift-things-barbecue/)も確認されており、チェックアウトで起こる問題を確かに解消していることが伺えます。 Boltは2020年12月にWestcap、General Atlantic(いずれもグロースステージ企業への投資をメインとするPEファンド)をリード投資家とする[シリーズCラウンドにて、7500万ドル(約80億円)の資金調達](https://thebridge.jp/2020/12/bolt-raises-75m-series-c1-to-advance-one-click-online-buying-pickupnews)を実施しており、今後もさらなる拡大が期待されます。 ## コンテンツディスカバリーネットワーク: co-op commerce 上述のBoltはチェックアウトについてブランド間でユーザを融通していましたが、次にコンテンツを発見するためのブランド間ネットワーク(コンテンツディスカバリーネットワーク)を作る事例をご紹介します。 USでは中小のECプラットフォームとして、Shopifyが大きなシェアを占めています。USのGMV(総取引額)のシェアはすでに[Walmartを超え、Amazonに次ぐ2位](https://s27.q4cdn.com/572064924/files/doc_presentations/2021/07/Shopify-Investor-Deck-Q2-2021.pdf)となっています(ShopifyストアのGMVの総額)。Shopifyは自社のブランドを維持しながら運営が可能ですが、やはりユーザ獲得をするにはGoogleやFacebookで多額の広告を使わざるを得ず、多くのShopifyストアが適正なROIを達成できていないと言われています。その課題に対してPost Purchase Partnership(購入後のパートナーシップ)と呼ぶ仕組みで解決を図ろうとしているのが[co-op commerce](https://www.coopcommerce.com/)です。 co-op commerceはco-opに参加するブランド同士がそれぞれのECの購入完了ページで互いの商品を掲載し合うことができるプラットフォームです。自社ブランドに訪れるユーザが購入完了ページに掲載された他ブランドの商品を見るたびに、ブランドはポイントを獲得することができます。ブランドはそのポイントを使って、co-opネットワークで掲載される自社の商品の露出を高めること(広告出稿のような位置づけ)ができるパートナーネットワークができあがっています。 購入完了ページに別ブランドのおすすめ品が提示される 画像: [co-op commerce](https://www.coopcommerce.com/) 購入完了ページに別ブランドのおすすめ品が提示される 画像: [co-op commerce](https://www.coopcommerce.com/) co-opの価値設計のポイントが「購入完了ページでの掲載」と「パートナーネットワーク」です。すでにホストサイトでの購入を終えた購入完了ページで他ブランドの商品を掲載することによりユーザ単価を下げず、かつユーザの流出を防ぎ、クロスセルを狙えるようになっています。もちろん自社の商品のアップセルリストについても購入完了ページに掲載可能です。また、購入完了ページで過度に購入を煽ることにより懸念されるブランド毀損についても、アップセル/クロスセルのオンオフスイッチで制御できます。また、自社サイトで他ブランドを露出してあげればあげるほど、自社ブランドもco-opのネットワーク内で露出が増えることになるため、相互にメリットがあるパートナーネットワークが確立されています。 このPost Purchase Partnershipにより、ブランドはCACを下げ、新たなユーザの獲得と平均単価の向上が可能となっています。たとえば、調理器具を扱うブランドMade In Cookwareは、co-opを導入したことで、ほかのチャネルよりも[57% CPA(Cost Per Acquisition)が低くなり、co-opネットワーク経由のユーザの80%は新規訪問](https://www.coopcommerce.com/case-studies/made-in-cookware)がありました。 co-opは2021年6月時点で、500ブランドをネットワークに巻き込むことに成功しており、さらなる成長に向けてBessemer Venture Partners(Twitch、Pinterest、Boxなどへの出資で有名なトップティアのVC)やShopifyから[580万ドル(約6億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2021/06/29/co-op-raises-5-8m-round-to-help-online-merchants-land-customers-for-less/)を実施しました。co-opはShopifyの3rd Partyアプリとして成功していることもあり、今回のShopifyからの出資は同社が分散型のコンテンツディスカバリーへの強い興味を抱いていることを伺わせます。 # おわりに 今回は「ユーザ獲得のためのネットワーク」についてとりあげました。 [Shopifyが大きく売上を伸ばしている](https://s27.q4cdn.com/572064924/files/doc_presentations/2021/07/Shopify-Investor-Deck-Q2-2021.pdf)ことを鑑みるに、独立したECブランドを維持する需要はこれまで以上に高まっていると感じます。Amazonのように中央集権的なマーケットプレイスでコンテンツを発見するのみではなく、Shopifyのように分散型の環境でもユーザがコンテンツを発見できるようにすることがブランドからもユーザからも求められています。メディアの世界においても、[前回の記事で取り上げたHashnode](/posts/8488a5e236)が同様の仕組み(独自ドメインを維持しながらフィードで他サイトのコンテンツを発見できる)をブログの領域で提供しています。また近年のブロックチェーンを活用した分散型Webやアプリ(dApps: [ブロックチェーン](https://bitflyer.com/ja-jp/miyabi-blockchain)を用いたサービスやゲームを提供するアプリの総称)が登場している中で、こうした仕組みはさらに重要になっていくと考えられます。 --- ## 次世代のパーソナルメディア作り URL: https://ximera.com/posts/8488a5e236 公開日: 2021-10-11 著者: Ximera ## メディアとECの境目は曖昧に By キメラ|Ximera Media Next Trends #21|2021年10月11日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第21回となる今回は、「次世代のパーソナルメディア作り」について紹介します。 [本連載第9回「ノーコード/ローコードツールによって変革されるパーソナルブランディング」](/posts/ead4d2e74c)でも取り上げましたが、各クリエイターやインフルエンサーが持つパーソナルブランドを表現し運営するための一つの方法が、個人が運営するデジタルメディア(=パーソナルメディア)を立ち上げることです。古くはフルスクラッチで制作した個人ホームページからはじまり、現代ではさまざまなプラットフォームで、テキスト、音声、動画、VR/ARなど様々な媒体で自己表現が可能になりました。一方でパーソナルメディアの立ち上げや運営負荷、魅力の高め方、コンテンツの発見可能性、それぞれの点でまだ改善の余地があります。 本記事ではそうした課題を解決するスタートアップが提供する次世代パーソナルメディアのプラットフォームを紹介したいと思います。 # AIによるパーソナルメディアの自動生成: Beacons これまで各ソーシャルメディアでクリエイターが何者かを表す自己紹介文、ソーシャルアカウントの一覧、自身が運営するメディア情報などは各ソーシャルメディアに分散しており、総覧的にファンに知らせる機会が失われていました(多くのソーシャルメディアではプロフィールに設定できるURLは1つしかないため)。現代のクリエイターは、TikTok、YouTube、Twitterなどで獲得したファンをパーソナルメディアへ誘導し、ECによるグッズ販売、サブスクによるファンからの支援獲得、コミュニティへの参加誘致、クリエイターが提供する他ソーシャルメディアへの誘導を行い、継続的にエンゲージメントの高いファンを作る必要があります。望み通りパーソナルメディアを仕上げることはサイトのレイアウトや導線の知識や設計が必要になるため、例えノーコードツールを使ったとしてもクリエイターの頭を悩ませる問題です。 それに対して、AIスタートアップである[Beacons](https://beacons.ai/)は、最初にいくつかの質問に答えるだけで、モバイルに特化した形のパーソナルメディアを生成することができるソリューションを提供しています。Beaconsを使うと各ソーシャルメディアへのリンク、決済含めたEC機能を画面デザインやレイアウト含め、わずかな手間で立ち上げることが可能です。 メディアが立ち上がったあとは、ダッシュボードを使ってコンテンツの追加や編集を行います。一連の作業は当然ノーコードでかつスマホで完遂させることができます。現状はある程度テンプレート化された中でのデザインにはなりますが、Beaconsはパーソナルメディア立ち上げまでのハードルを大きく下げています。これにより、クリエイターは最も重要なタスクであるコンテンツ製作に集中することができます。 ECも含めノーコードで編集が可能なダッシュボードを提供 画像: Beacons編集画面 ECも含めノーコードで編集が可能なダッシュボードを提供 画像: Beacons編集画面 例えば、ロサンゼルス出身の15歳(本記事作成時点)の人気モデルClementine Leaさんは、[Beacons上にパーソナルメディア](https://beacons.ai/clementinelea)を持っており、TikTok、Instagram、YouTube、[IMDb](https://www.imdb.com/name/nm10742473/)(映画作品のDB)、[ECストア](https://www.clementinelea.com/)、[Cameo](https://www.cameo.com/clementinelea)(セレブがユーザ個別にビデオメッセージを送ってくれるサービス、[本連載第4回](/posts/3cb0398995)参照)、[depop](https://www.depop.com/clementinelea)(Z世代向けの古着売買プラットフォーム、[本連載第20回](/posts/4413be0066)参照)など、自身が運営するあらゆるメディアやECへのリンクをまとめています。またBeacons上でパーソナルビデオメッセージの販売も行っており、最低20ドル(約2,200円)からリクエストが可能になっています。 さまざまなメディアへのリンクとECパーツを掲載できる さまざまなメディアへのリンクとECパーツを掲載できる 画像: [ClementineさんのBeaconsページ](https://links.clementinelea.com/) 画像: [ClementineさんのBeaconsページ](https://links.clementinelea.com/) Beaconsは、[Creatorプラン(無料)でBeacons上の取引に対して9%の手数料、Entrepreneurプラン(月額10ドル)で取引に対して5%の手数料をクリエイターから取る](https://pricing.beacons.ai/)ことにより収益をあげています。2021年5月にアンドリーセン・ホロウィッツ([本連載第17回](/posts/ccbbf44ee1)でも取り上げているUSのトップベンチャーキャピタル)をリード投資家として、[シードラウンドで600万ドル(約6億円)の資金調達](https://jp.techcrunch.com/2021/05/25/2021-05-24-beacons-seed-round-creator-profiles/)を行ったBeaconsは、競争が激化しているこの領域で、今後クリエイターのためのShopifyような存在になりたいと語っており、クリエイターが収益を稼ぐ手段がさらに増えそうです。 # 絵文字ユーザネームで独自性を出せる: Yat 絵文字は今や万国で使われるようになりましたが、多くの場合なにかのサービスにユーザ登録する際にユーザネームに絵文字を使うことはできません。現代においてユーザネームは自身を表すアイデンティティとして非常に重要な存在であり、ソーシャルメディア上で自分のユーザネームがいかに覚えやすいか、親しみやすいか、わかりやすいかといった観点は影響力の強いクリエイターほど気になる点です。 その課題に対し新たなソリューションを提供するのが、絵文字ユーザネームを発行できる[Yat](https://start.y.at/)です。 [Yatはユニバーサルに利用できる絵文字ユーザネームプラットフォームを目指す](https://vimeo.com/528620126) Yatはユニバーサルに利用できる絵文字ユーザネームプラットフォームを目指す Yatは絵文字ユーザネームを含んだURLをYat上で購入することができるプラットフォームです。Yatはパーソナルメディアを運営する機能として、クリエイターが運営する各メディアのリンク集約、別のURLへのリダイレクト機能を提供しています。絵文字をうまく組み合わせ、独自のユーザネームを保有していることがステータスになり、パーソナルアイデンティティを個性豊かに表現する手段となっています。 Yatはユーザネームとして使える絵文字を限定した上で、絵文字ユーザネームの販売価格を独自のアルゴリズムである「[リズムスコア](https://emojis.y.at/blog/genzero)」を使って決定しています。一文字や二文字で表現される絵文字は特に希少性があり、Yatのサイトから購入することはできず、Yatに個別コンタクトをとる必要があります。 さまざまな使い方が可能なYatのユーザーネームの代表的なユースケースの一つが、冒頭に紹介した「購入したユーザネームを使ってy.at/{絵文字ユーザネーム}のURLでパーソナルメディアを持つこと」です。上記のBeaconsの例でも取り上げたClementine LeaさんもYat上のパーソナルメディアを持っており、[https://y.at/💋🍊⚡](https://y.at/%F0%9F%92%8B%F0%9F%8D%8A%E2%9A%A1) でページにアクセスすることができます。ほかにも、ミュージシャンのLil Wayane([👽🎵.y.at](https://t.co/hJ2L5cP0li?amp=1))、Disclosure([😎🎵😎.y.at](https://t.co/67oBRQ2i66?amp=1))などがYatで絵文字ユーザネームを作り、パーソナルメディアを公開しています。 現状の[Yatのドメインは既存のインターネットレジストラに登録されていますが、Yatは長期的にはブロックチェーンを使った分散型データベースで供給することを検討](https://jp.techcrunch.com/2021/09/09/2021-07-30-yat-thinks-emoji-identities-can-be-a-thing-and-it-has-20m-in-sales-to-back-it-up/)しています。これが実現されると、現在NFTマーケットで行われているようなデジタルアセットの所有権の移転が絵文字ベースのインターネットドメインの世界にも広がることと、絵文字ユーザネーム自体がドメインのように動く可能性が出てきます。 またYatはあらゆるIDの代わりにもなると考えられており、仮想通貨の売買ができるウォレットサービスの[BRD](https://brd.com/)や[Cake Wallet](https://cakewallet.com/)などで、Yatの絵文字を[仮想通貨アドレスの代わりに使用可能になる](https://zenism.jp/nft/yat/2021/04/08/)とされています。パーソナルメディアのアドレスやユーザネームを絵文字で表現することは、文化や言語の壁を超える可能性もあり、今後のYatの動きが非常に楽しみです。 # 開発者のための開発者によるblogプラットフォーム: Hashnode パーソナルメディアは基本的にプラットフォームに属さず、コンテンツがユーザーに露出する機会が減るため、TwitterやTikTokやInstagramなどソーシャルメディアがクリエイターのコンテンツを見つけるための窓口となってきました。うまくソーシャルメディアの運用ができれば問題ありませんが、有象無象のユーザがいる中でトラフィックを獲得するのは並大抵のことではありません。 この問題に対して注目されるソリューションの一つがパーソナルメディア間でユーザ送客をしあう仕組みです。それを開発者blogプラットフォーム上で提供しているのが[Hashnode](https://hashnode.com/)です。 広告やペイウォールはなく、カスタムドメイン利用と同時にトラフィック獲得が可能 画像:[Hashnode](https://hashnode.com/) 広告やペイウォールはなく、カスタムドメイン利用と同時にトラフィック獲得が可能 画像:[Hashnode](https://hashnode.com/) 開発者は従来[Medium](https://medium.com/)、[Qiita](https://qiita.com/)、[dev.to](https://dev.to/)などさまざまなパブリッシングプラットフォームでコンテンツを提供する代わりにトラフィックを得るか、セルフホストでblogを立ち上げ自分で集客をするかの二択しかありませんでした。前者ではパーソナルアイデンティティを表現するカスタムドメインの使用を有料としていることもあり、後者では集客がままなりません。 これらの課題に対しHashnodeは無料でのカスタムドメインのパブリッシングと、フォローしているユーザやトレンドとなっている記事を容易に発見することができるコミュニティの提供で、これまでのパーソナルメディア運営のペインを解消しています。(カスタムドメイン配下で書いた記事もコミュニティフィードに自動的に流れていきます)。 上記のYatの話に通じる部分がありますが、パーソナルメディアで独自ドメインを使えることはSEOやプラットフォーム移行の容易性の観点からも非常に重要です。カスタムドメインはユーザが保有しているドメインを設定し使うこともできるため、元々セルフホストでblog運営をしていた開発者も移行しやすくなっています。 Hashnodeはさらに開発者がより使い勝手を感じられるようMarkdown(文書を記述するためのマークアップ言語)形式のサポート、ダークモードへの切り替えなどを含むデザインカスタマイズ、ニュースレター機能、githubへの自動バックアップ、簡易なアクセス解析機能も備えています。 Hashnodeのフィード画像: [Hashnode](https://hashnode.com/) Hashnodeのフィード画像: [Hashnode](https://hashnode.com/) Hashnodeはグロースのための施策として、[アンバサダー・プログラム](https://hashnode.com/ambassador)を実施しています。ユーザが知人を招待リンクを使ってHashnodeに登録させると、Hashnode Tシャツのプレゼント、githubで書いた記事を自動的にHashnodeでパブリッシュする機能のアンロック、ベータ機能へのアクセス、アンバサダーだけがアクセスできるDiscordコミュニティへの参加など多くのユーザ特典を与えています。また各アンバサダーのリーダーボード(誰が一番貢献してくれたか)、ウォールオブラブ(貢献してくれたユーザの一覧)など視覚的にわかりやすい形でアンバサダーになる意義を強調しています。 Hashnodeは各記事に対する投げ銭機能[Hashnode Sponsors](https://hashnode.com/sponsors)もベータ版ながらリリースしており、各開発者がHashnode上でマネタイズできる仕組みについても今後さらに拡大される可能性がありそうです。 Hashnodeは2021年8月時点で、[100万のMAU、6万のアクティブなblogを支えており](https://www.entrepreneur.com/article/380663)、順調に成長している様子が見て取れます。また、[Salesforce Ventures(Salesforceが運営するコーポレートベンチャーキャピタル)をリード投資家とする670万ドル(約6.9億円)のシリーズAの資金調達](https://townhall.hashnode.com/dollar67m-in-series-a-funding-to-build-the-next-gen-developer-blogging-community)を行ったことで採用やマーケティングが強化され、さらなる利用拡大が見込まれます。 # おわりに 今回は「次世代のパーソナルメディア作り」についてとりあげました。ECの領域では、AmazonやWalmartなどに代表されるマーケットプレイスで集客を行い、コアなファンにはShopifyなどのブランドコントロールの効くストアでリテンションを高めるということが行われていますが、同じことがパーソナルメディアでも起こっています。またパーソナルメディア内のECの実装も容易になっていることや、Hashnodeのようにブランドを守りながら横断的なコンテンツディスカバリーも可能になっています。 前回でも取り上げましたが、このようにメディアとECの境目は曖昧になっています。多数のソーシャルメディアやECストアを持っていても一貫した世界感をもってユーザ獲得~エンゲージメント~リテンションまで一連の流れを実現することが非常に重要になっています。 キメラでは引き続きこのような新たなメディアとファンの関係性の新たな潮流を追っていきたいと思います。 --- ## Z世代がハマるソーシャルコマース URL: https://ximera.com/posts/4413be0066 公開日: 2021-09-29 著者: Ximera ## 特化した領域に深く入り込むことでZ世代から支持を得る By キメラ|Ximera Media Next Trends #20| 2021年9月29日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第20回となる今回は「Z世代がハマるソーシャルコマース」について紹介します。 [本連載第2回](/posts/1e0b8fabcf)でも取り上げたZ世代([米国で用いられている定義上](https://www.pewresearch.org/fact-tank/2019/01/17/where-millennials-end-and-generation-z-begins/)、1997年以降に生まれた0-24歳)は、[世界の人口比で35%を超え](https://storage.googleapis.com/zebra-public-uploads/reports/Zebra%20IQ%27s%202020%20State%20of%20Gen%20Z%20Report.pdf)、今後の文化経済の中心世代になることが予想されています。そんなZ世代が特にハマっている購買体験の一つがソーシャルコマースです。 ソーシャルコマースは、広義にはソーシャルネットワーク上で直接商品やサービスが購入できるサービスを指します。ソーシャルコマースという言葉は[2005年にYahoo!ではじめて紹介](https://en.wikipedia.org/wiki/Social_commerce)され、その後FacebookやTaoBaoなどソーシャルメディアやECサイトでそのフォーマットの原型が作られ、今や世界の様々なサービスで適用されています。[Statistaのレポート](https://www.statista.com/statistics/1231944/social-commerce-global-market-size/)ではソーシャルコマース市場は2020年で4748億ドル(約52兆円)の売上規模があり、2022年には7510億ドル(約82兆円)まで伸びると予測されています。 ソーシャルコマースの中でも特に注目されているのがライブコマースで、[マッキンゼーのレポート](https://www.mckinsey.com/business-functions/mckinsey-digital/our-insights/its-showtime-how-live-commerce-is-transforming-the-shopping-experience)によるとライブコマース市場は2020年で1710億ドル(約18.8兆円)の規模があり、2022年には4230億ドル(約46兆円)の規模まで伸びると予測されています。[TikTok](https://www.marketingdive.com/news/tiktok-unveils-first-shoppable-livestream-with-ntwrk/583992/)、Instagram、Facebook、[YouTube](https://jp.techcrunch.com/2021/07/22/2021-07-21-youtube-to-pilot-test-shopping-from-livestreams-with-select-creators/)と大手プラットフォームもライブコマースに次々と参入しており、競争も激化しています。 本記事ではZ世代を惹きつける「クリエイターやインフルエンサーがおすすめする商品をソーシャルフィードや動画ストリーミングの中でサイトやアプリを離れることなく購入する体験」を中心に捉えたいと思います。 # Z世代が共感する古着売買ソーシャルコマース:depop Z世代は他の世代よりもサスティナブルなファッションへの感度が高く、新たに生産される新品の服よりも、既にある古着をうまく活用することがクールに感じる層が存在します。また昨今では[2000年代の文化やファッションのリバイバル](https://www.lofficielusa.com/pop-culture/y2k-revival-covid-19-pandemic-tiktok-gen-z-fashion-music-film-tv)により、[ビンテージ品が高値で取引され](https://www.vox.com/the-goods/22643554/secondhand-clothes-clothing-value-change)、古着そのものの価値が上がっています。 そうしたZ世代の古着の価値に目をつけたのがイギリスのスタートアップである[depop](https://www.depop.com/)でした。depopは主に10代後半〜20代前半に向けたソーシャルコマースプラットフォームを提供し、誰もが手軽に古着を売買できるようにしています。depopは他のC2Cのプラットフォームと同様に[ユーザ間取引高に対する10%を手数料](https://www.depop.com/sell-on-depop/)としています。 Instagramライクなフィード型で買い手のアテンションを惹き付ける 画像:[depopアプリ スクリーンショット(App Store)](https://apps.apple.com/jp/app/depop-streetwear-vintage/id518684914) Instagramライクなフィード型で買い手のアテンションを惹き付ける 画像:[depopアプリ スクリーンショット(App Store)](https://apps.apple.com/jp/app/depop-streetwear-vintage/id518684914) 個人が売り手となることはほとんどないInstagramショッピングと違い、depopでは誰もが買い手にも売り手にもなることができます。一方で手軽に出品できる分、競争が非常に激しくなっています。depopのコンテンツディスカバリーはInstagramのフィードを真似ているため、売り手が商品を目にするタイミングは一瞬しかありません。そのため売り手はある程度厳選した商品をキュレーションし、一貫したブランディングと一点一点の商品に対する丁寧なバックストーリーによって買い手を惹きつける必要があります。また販売する商品を継続的にポストし顧客からの質問に素早く答えること、こだわったパッケージ、Thank Youノート(日本でいうお礼状)、試供品、早い配送を提供し、他の売り手と差別化を図ることが[成功の道筋](https://thehustle.co/%F0%9F%91%98how-kids-make-millions-on-depop/)とされています。 depopでは[連続した4ヶ月間で下記の基準をクリアしたトップセラー](https://blog.depop.com/articles/how-to-become-a-top-seller)を取り上げ、Depop Community Supportチームからの支援、プライベートフォーラムへの招待、アプリ内での特別なプロモーション機会や機能を提供しています(トップセラーを維持するにはさらに厳しい基準あり)。 - 平均で20ドル(約2,200円)以上の商品を50個以上販売する、または2600ドル(約28万円)以上の売上を上げる(depopの手数料差し引き前) - 少なくとも平均4.5以上のユーザ評価を獲得する - 平均3日以内に発送する depopで[24歳のデザイナーが100万ポンド(約1.5億円)を稼いだ事例](https://www.fastcompany.com/90512591/meet-the-24-year-old-designer-who-made-1-million-on-depop)もあり、Z世代の中古ファッション市場は過熱しています。depopのユーザは[2100万人を超え、その90%が26歳以下](https://jp.techcrunch.com/2021/06/03/2021-06-02-etsy-is-acquiring-social-selling-site-depop-for-1-625b-in-a-mostly-cash-deal/)と若いコミュニティが形成されています。そのコミュニティへのアクセスをにらんでか、ハンドメイド商品のマーケットプレイスである[Etsyがdepopを2021年6 月に16億2500万ドル(約1780億円)で買収](https://jp.techcrunch.com/2021/06/03/2021-06-02-etsy-is-acquiring-social-selling-site-depop-for-1-625b-in-a-mostly-cash-deal/)しました。両者がどのように事業シナジーを出していくかは今後の注目ですが、パンデミックを経て人々の地元や地方への愛着、中古品やハンドメイド品への関心の高まりを受けて、Etsyとdepopの事業は今後さらに支持を得られる可能性が高そうです。 # エンタメとECの融合:Popshop Live 次にライブコマースの事例をとりあげます。ライブコマースプラットフォームの多くの企業は、パンデミックの影響で売上が減少しECでそれを補填しようとしている小売事業者をターゲットとしています。その中でも[Popshop Live](https://popshop.live/discovery)はエンタメ要素を駆使してZ世代へ商品を販売するライブコマースプラットフォームとしてその地位を確立しつつあります。 Popshop Live内には予告動画とライブ動画の2種類が存在し、どちらでも商品の購入が可能です。ライブ動画ではチャット機能とリアクション機能が加わることで、店主と視聴者の双方向のやりとりを通じて商品の購入ができます。雷型の絵文字を画面上に飛ばすことができるリアクション機能は多くの人が使うことで画面が絵文字でいっぱいになり、盛り上がっている様子が視覚的によく分かるように設計されています。 [当月に特に盛り上がったライブコマースのハイライトがまとめられる 動画:[Popsho Live Youtubeアカウント](https://youtu.be/7WtinFxoW4M)](https://youtu.be/7WtinFxoW4M) 当月に特に盛り上がったライブコマースのハイライトがまとめられる 動画:[Popsho Live Youtubeアカウント](https://youtu.be/7WtinFxoW4M) 店主は動画に来てくれた人を楽しませるために、自らの商品をリアルタイムレビューしたり、ポケモンカードなどあたりはずれのある商品を試してみて、結果を視聴者とチャットで予想しあったりします。このようなソーシャルなインタラクションがライブコマースで可能になり、ユーザはこの体験を通じて店主や商品に親近感を持ち購入が促されます。 また商品を購入するだけでなく、店主に投げ銭をする、店主に何らかの行動をしてもらうなど、物理的な商品購入以外の選択肢も用意されています。筆者がみかけたとあるショップは、5ドル支払うと店主がカプセルトイをまわして、何かしらの特典が当たるくじを引けるという体験をライブ動画で提供していました。 2021年7月時点で、Popshop Liveは[30日以内に8割近いユーザが再訪問して50万ドル(約5500万円)以上の流通額があがる](https://techcrunch.com/2021/07/08/popshop-live-raises-around-20m-at-a-100m-valuation-for-its-livestream-shopping-platform-for-hipsters/)ほどエンゲージメントが高い状態を実現しており、ライブコマースビジネスの強さを感じます。レガシーなTVショッピングとは違い、ライブコマースはエンタメとECが融合したものであり、インタラクティブ性がエンゲージメントに強い影響を及ぼしていると考えられます。 Popshop Liveは[2021年7月に1億ドル(110億円)の評価額で2000万ドル(約22億円)の資金調達を行いました](https://techcrunch.com/2021/07/08/popshop-live-raises-around-20m-at-a-100m-valuation-for-its-livestream-shopping-platform-for-hipsters/)。[Benchmark](http://www.benchmark.com/)(UberやTwitterなどのへの投資で有名)などトップティアのVCからの支援もあり、今後の成長が期待されています。 # ライブ商品レビュー:Flip これまでの商品購入の体験は、ユーザが接触するメディアがあちらこちらへ分断されている状態でした。例えば、最初にTwitterで好きなインフルエンサーのスキンケアに関する投稿を見て、YouTubeでスキンケアの具体的なやり方を調べ、最後にECサイトでスキンケア商品を買うといったユーザジャーニーは珍しくありません。 この購買体験におけるメディアの分断に対して、ユーザレビュー〜商品購入〜発送・アフターケアまでを1つのアプリでパッケージングして提供しているのが[Flip](https://www.flip.shop/)です。Flipは特に美容とスキンケアの領域に特化したソーシャルコマースプラットフォームを提供しています。 美容/スキンケア品のレビュー動画〜購入〜配送までOne Stopで提供する 画像:[Flipアプリ スクリーンショット (App Store)](https://apps.apple.com/pl/app/flip-fit-live-shopping/id1470077137) 美容/スキンケア品のレビュー動画〜購入〜配送までOne Stopで提供する 画像:[Flipアプリ スクリーンショット (App Store)](https://apps.apple.com/pl/app/flip-fit-live-shopping/id1470077137) Flipでは会員登録後、TikTokのように動画ベースのフィードをスワイプする形で次々に化粧品やスキンケア商品のユーザレビュー動画を閲覧していきます。ユーザレビューで扱われる対象は、Flipがパートナーとして契約する化粧品/スキンケアブランドの商品となっています。 また、在庫については[Flipが所有する2つの倉庫で管理(今後9ヶ月さらに4つの倉庫がオープンされる予定)されており、パッケージングまで含めて配送体験をFlipがコントロール](https://www.glossy.co/beauty/social-commerce-app-flip-emerges-as-the-tiktok-of-online-beauty-shopping/)しています。TikTokなどソーシャルメディアのコマースではこれを行っておらず、この点は一貫したブランディングの観点で大きな違いとなっています。 売り手を効率よく増やす手法も目も見張るものがあり、買い手がFlip上で購入した商品をレビューする動画をアップロードすることによるマネタイズを可能にしています。そのため買い手が増えれば増えるほどレビュー動画も増え、売り手やコンテンツを拡充できるループ構造がうまく設計されています。 [Flipは現在200のブランドと提携しており、ホリデーシーズンである10月末までに500ブランドとの提携を行う予定](https://www.glossy.co/beauty/social-commerce-app-flip-emerges-as-the-tiktok-of-online-beauty-shopping/)です。また同社の[アプリは100万ダウンロードを超え、2021年4-6月期で30,000オーダーを受けており、数カ月後には2倍になると予想](https://techcrunch.com/2021/08/30/flip-bags-28m-to-turn-beauty-wellness-social-commerce-on-its-head/)されています。 Flipは2021年8月にStreamlined Ventures(DoorDashなどへの投資で著名なVC)がリードするシリーズAラウンドで[2800万ドル(約29億円)の資金調達](https://techcrunch.com/2021/08/30/flip-bags-28m-to-turn-beauty-wellness-social-commerce-on-its-head/)を行い、さらなる成長を目指しています。 # おわりに 今回は「Z世代がハマるソーシャルコマース」についてとりあげました。ソーシャルコマースといえばTikTokやInstagram上で行われるライブコマースのイメージが強いと思いますが、本記事で紹介したように特化した領域やセグメントに深く入り込むことでZ世代に支持を得ているサービスが登場しています。この領域には、[NTWRK](https://thentwrk.com/)、[ShopShops](https://shopshops.live/)など他にも多くのスタートアップが参入しており、競争が激化しています。 Z世代のファンとクリエイターとの関係の特徴として、友だちのような感覚をはじめとしたコミュニケーションの近さが挙げられます。例えばdepopでは、2021年のデビュー曲で一躍トップ音楽アーティストとなった[Olivia RodrigoさんがDepopで彼女の服や靴を売り出しました](https://twitter.com/rex_woodbury/status/1401916342333153280)。しかも値段は決してプレミア価格を煽るものではなく、MVで使われた靴が45ドル(オリジナルの販売価格は115ドル)で販売され、あくまで一般ユーザと同じ目線での売買がされました。これはまさにZ世代を象徴するような出来事です。 ソーシャルコマースに限らずですが、このように新たな消費者世代であるZ世代から共感を呼び、友達のような感覚でファン化することがこれまで以上に重要となっていくと考えられます。キメラでは引き続きこのような新たなメディアとファンの関係性の新たな潮流を追っていきたいと思います。 --- ## メディア化するSaaS企業 URL: https://ximera.com/posts/b232363883 公開日: 2021-09-10 著者: Ximera ## 多くのメディアとソフトウェア企業の融合が進む可能性が高い By [キメラ](https://ximera.com/)|[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends) #19| 2021年9月10日 [Support Center Illustration](https://iconscout.com/illustrations/support-center) by [Minh Ng](https://iconscout.com/contributors/29element) on [Iconscout](https://iconscout.com) # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップ(やビックテック)を追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第19回となる今回は、「メディア化するSaaS企業」について紹介します。 SaaS企業にとって顧客獲得コストは上がりつづけています。少し古いデータになりますが、[2017年には5年前の2012年と比べてCAC(Customer Acquisition Cost: 顧客獲得コスト)が最大で65%上がっている](https://tomtunguz.com/cac-increase/)ことが800社の調査によってわかりました。市場競争が激しくなっていること、マーケティングを進める過程で既存チャネルの効率が悪くなることが理由とされています。 これに加えて現代はアテンション・エコノミー化(情報そのものや量の多さの価値が低くなり、人々から注目を集めることが経済的価値があるという考え方)しており、単に情報を発信しても注目を得ることができなくなっています。そのため人々の注目を集めるコンテンツの企画やストーリーを練り、それをトリガーに1,000のファンではなく100人の真のファンを集めるという方法論([100 True Fan Model](https://review.foundx.jp/entry/100-true-fans))が必要になっています。このトレンドを考慮すると現在でもCACは上がりつづけていると推察されます。 上がりつづけるCACを抑え、アテンションを維持するために必要なアプローチがタイトルにあるSaaS企業のメディア化だと考えられます。本記事ではそうしたメディア化するSaaS企業の事例を取り上げていきたいと思います。 # 新たなメディア事業の開始:Salesforce [Salesforce](https://www.salesforce.com/jp/)はCRM(Customer Relationship Management)を中心にB2B向けSaaSを数多く提供する言わずと知れたビッグテック企業です。2021年8月27日現在、[時価総額](https://www.google.com/finance/quote/CRM:NYSE?sa=X&sqi=2&ved=2ahUKEwjiyfz5_dDyAhX1lWoFHUO5DVoQ3ecFMAB6BAgPEBo)は2415億ドル(約25兆円)を超え、[Slack](https://slack.com/)をはじめ、[Tableau](https://www.tableau.com/ja-jp)、[Mule Soft](https://www.mulesoft.com/jp/)、[Datorama](https://datorama.com/jp/)など[様々な企業を買収](https://www.salesforce.com/news/stories/salesforce-acquisitions/)することで事業領域を拡張しつづけています。 Salesforceが顧客との関係でこれまで特に重視していたのが[DreamForce](https://www.salesforce.com/jp/blog/2019/11/what-is-dreamforce.html)という年に一回行われるイベントです。Salesforceが[Trailblazer](https://www.salesforce.com/jp/blog/2016/10/trailblazers-vol1.html)(トレイルブレイザー:先駆者)と呼ぶ顧客やファン[17万人以上が参加登録(2019年実績)する4日間のオフラインイベントで、同時に行われるオンライン配信でも2700を超えるセッションが1300万以上の視聴者に閲覧され](https://www.simplus.com/au/blog/the-5-best-things-we-saw-at-dreamforce-2019/)る驚異的な規模のイベントです(Metallica、U2、The Foo Fightersなどが過去Dreamforceで来場者向けにコンサートを行っており、そうした余興も含めて魅力が高いものとなっています)。 Dreamforceに参加するには[1,599ドル(約16万円) - 2,299ドル(約23万円)](https://www.salesforce.com/blog/what-is-dreamforce/)という高価格のチケット を買う必要がありますが、毎年売り切れるほど人気があります。 B2Bの企業でこれだけの熱狂を作れる企業は他にないと思うくらいファンコミュニティづくりに長けているSalesforceから2021年8月にアナウンスされたのが[Salesforce+というメディアの立上げ](https://jp.techcrunch.com/2021/08/12/2021-08-10-salesforce-wants-salesforce-to-be-the-netflix-of-biz-content/)です。 ビジネス界におけるNetflixやDisneyを目指すSalesforce+ 画像:[Salesforce](https://www.salesforce.com/news/press-releases/2021/08/10/announcing-salesforce-plus-new-streaming-service/) ビジネス界におけるNetflixやDisneyを目指すSalesforce+ 画像:[Salesforce](https://www.salesforce.com/news/press-releases/2021/08/10/announcing-salesforce-plus-new-streaming-service/) Salesforce+はまだロンチはされていないため、詳細は不明ですがSalesforceによるとすべてのビジネスロール、業界、ラインに関するライブストリーミングとオンデマンドコンテンツを提供するビジネスプラットフォームだとされています。Salesforceはコロナ禍でDreamforceを2年連続で開催できておらずTrailblazerと直接コミュニケーションする手段を失っていました。そこでTrailblazerとのコミュニケーション手段およびエンゲージメント向上を目的に今回のメディア立ち上げに至ったと推察されます。 [本連載第17回の記事](/posts/ccbbf44ee1)でもVCがメディア化している状況を紹介しましたが、メディアとVC、メディアとSaaS、いずれもその境目が曖昧になってきています。[Andreessen Horowitz](https://a16z.com/)はマネタイズ手段がVCのメディア企業だと言われており、SalesforceもSalesforce+の成功如何によってはマネタイズ手段がSaaSやプロフェッショナルサービス(有償で専用のサポート人材を提供するビジネス形態)であっても、集客やエンゲージメント獲得はビジネスメディアで行うようになっていくことも十分に考えられます。[50人の編集主幹と何百人もの人々がSalesforce+に取り組んでいる](https://jp.techcrunch.com/2021/08/12/2021-08-10-salesforce-wants-salesforce-to-be-the-netflix-of-biz-content/)ことからもSalesforceのメディア作りに対する本気度が伺えます。 # ニュースレターThe Hustleを買収:HubSpot 次にとりあげるのがMA(マーケットオートメーション)やCRM関連のSaaSを提供する企業の[HubSpot](https://www.hubspot.jp/)です。HubSpotは2005年創業、2021年8月27日時点で[時価総額](https://www.google.com/finance/quote/HUBS:NYSE?sa=X&ved=2ahUKEwiZ4JiGlNPyAhVEAt4KHUNqDosQ3ecFMAB6BAgSEBo)は約330億ドル(約3.3兆円)とSalesforceと同じくビッグテック企業です。そのHubSpotが2021年2月に[The Hustle](https://thehustle.co/)というニュースレターメディアを[買収しました](https://jp.techcrunch.com/2021/02/05/2021-02-04-hubspot-acquires-media-startup-the-hustle/)。 The Hustleには[150万以上のニュースレター読者](https://thehustle.co/)がいます。主なターゲットはミレニアル世代のビジネスコンシューマーで、毎日5分以下で読めるビジネスやテクノロジーに関するニュースを配信しています。ニュースレターは主に5-6つ程度のセクションで構成されており、定番はThe Big Idea(その日取り上げるトップニュースの深掘り)、Snippets(パーソナライズされたニュースフィード)、Around the Web(Webトレンド紹介)の3セクションで、これに2-3つ程度の追加セクションが加えられます。 The Hustle The Hustle またThe Hustleはリファーラル(読者が友人や家族などあらたな読者にサービスを紹介しユーザ登録してもらうこと)による特典で追加コンテンツの解禁やグッズを手に入れることができるのが特徴です。ユーザはニュースレターの末尾に設けられたShare the hustleというコーナーから3人以上を招待してThe Hustleに登録してもらうと、[The Hutsle主催のカンファレンス](https://hustlecon.com/)で行われたスタートアップ創業者へのインタビュー本をもらうことができます。5人リファーラルするとステッカー、25人リファーラルするとTシャツというように人数の段階的な特典となっており、100人で[Trends](https://trends.co/)というThe Hustleが提供する有料サブスクへのアクセント権、1000人でなんとHustleの本社へ訪問できるツアーがプレゼントされます。グッズや本社への訪問が特典になるのはTheustleが強いファンコミュニティを作れている証拠です([本連載の第5回](/posts/a0ee63f1c0)でも類似事例としてリファーラルベースのニュースレターの[Morning Brew](https://www.morningbrew.com/daily)を紹介しています)。 The Hustleのリファーラルプログラムでもらえる特典 画像:The Hustle The Hustleのリファーラルプログラムでもらえる特典 画像:The Hustle HubSpotは[Twitterのフォロワーが80万を超え](https://twitter.com/hubspot)、ブログ、YouTube、Podcast、[Podcastネットワーク](https://www.hubspot.com/company-news/hubspot-podcast-network)を持つなど、マーケティングに興味を持ったユーザをエンゲージするコンテンツを数多く持っています。唯一足りなかったピースがよりカジュアルにリードを獲得できるメディアでした。The Hustleようなファンエンゲージメントの強いビジネスコンシューマー向けのメディアをB2BのSaaSであるHubSpotが買収して手に入れたことは、現代のユーザ獲得やエンゲージメントの難易度が高くなっていることを考えると必然的な選択だったのかもしれません。 現在The Hustleには一部HubSpotが提供するコンテンツが配信されており、今後はブランドやプロダクト統合がさらに進んでいくと推測されます。これによって、The Hustleでマーケティングに興味を持ったユーザがその具体的な方法をHubSpotで学ぶ流れができていくと思われます。メディアからSaaS利用の促進を行う一連の流れができそうです。 # おわりに 今回は「メディア化するSaaS企業」についてとりあげました。Salesforceのように自社でメディアを立ち上げるところもあれば、Hubspotのように買収でショートカットする手もあります。HubSpotのCMOは[今後数ヶ月の内にソフトウェア企業がメディア企業を買収する類似の事例が出てきても驚かない](https://www.morningbrew.com/marketing/stories/2021/02/05/conversation-hubspot-cmo-kipp-bodnar-hubspot-acquires-hustle?__cf_chl_jschl_tk__=pmd_iN1Wztw6zaMub1UuMDEB8LdR3AgVoVBGi8KzUSwgxYU-1630659740-0-gqNtZGzNAnujcnBszQjR)と言っており、さらに多くのメディアとSaaSをはじめとしたソフトウェア企業の融合が進む可能性が高そうです。今回は特にB2BのSaaS企業の動きを紹介しましたが、B2Cでも類似した流れが起こりうると考えられます。 キメラでは引きつづきB2C・B2Bともにメディアと他業種の垣根がなくなりつつある新たな動きについても注目し、特徴的な事例に触れながらみなさんへお伝えしていきたいと思います。 --- ## イベントドリブンで形成されるメディア URL: https://ximera.com/posts/50c542d7da 公開日: 2021-08-26 著者: Ximera ## 事件やイベントを発見可能にし、ユーザのインタラクションの回数を最大化することがイベントドリブンメディアとしての価値 By キメラ|Ximera Media Next Trends #18| 2021年8月26日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第18回となる今回は、「イベントドリブンで形成されるメディア」について紹介していきたいと思います。 新型コロナウイルスのクラスタが近くで起こってないか、ワクチン接種の場所はどこなのか、行きたいイベントは本当に開催されるのかなど、近年は自分の身の回りに起こっている事件や関心が高いイベントの行方が非常に気になるところです。そうした需要に対して、事件/イベントを早期に知り、友人や家族と共有し、アクションをとるためのメディア=イベントドリブンメディアが台頭してきています。 本記事ではイベントドリブンメディアが具体的にどのように提供され、誰に役立っているのか、最新のスタートアップ事例を取り上げながら紹介したいと思います。 # ローカルコミュニティの事件を可視化:Citizen 交通事故、火災、危険動物の脱走、建物からの落下物、暴力的なデモ、コロナ感染クラスタなど街にはさまざまな事件が起こる可能性があります。例えば、Black Lives Matter運動の最中に、昼間は平和的だったデモが夜には[暴徒化し器物損壊や暴動を繰り返し](https://www.youtube.com/watch?v=tRmqEbP0G6I)、無闇に外出するのが危険な状況になりました(筆者はこの状況を実際にアメリカで経験しました)。 近隣で事件や危険なことが起こっていないか常に把握することは自身や周りの人たちの安全を確保するために非常に重要なことですが、Twitterのように広域でかつデマが拡散されやすいツールのみではリアルタイムな情報を正確に得ることが難しいでしょう。その課題を解決しようとしているのがニューヨークのスタートアップである[Citizen](https://citizen.com/)です。 Citizenが提供するアプリを使うと、ユーザは近隣で起こった事件について、リアルタイムでアラートを受け取り、起こっている事件を動画やコメントで確認できるようになります。近くで、警察、消防、救急のサイレンが鳴っていると何が起こっているのか気になるものだと思いますが、Citizenを使うことでその原因を理解できる可能性が高くなります。例えば「300フィート先のビルで火災が起こっている」と現場付近にいるユーザが正確な事件の場所と概要を把握することができれば、危険を避けるアクションをとることができます。 Citizenを使うことでリアルタイムにどこで何の事件が起きているか把握できる 画像:[Citizen Blog](https://medium.com/citizen/citizen-launches-real-time-safety-tools-in-atlanta-8a96cc2e2d09) Citizenを使うことでリアルタイムにどこで何の事件が起きているか把握できる 画像:[Citizen Blog](https://medium.com/citizen/citizen-launches-real-time-safety-tools-in-atlanta-8a96cc2e2d09) アメリカにおいては警察官が派遣される場合の連絡は公開電波を通して住所とともに送信されるため、[Citizenはそこから情報を得ること](https://techblitz.com/citizen/)で緊急度の高い事件についての情報を発信しています。またエンドユーザが事件現場に出くわした際にCitizenアプリで事件を登録したり、友人に知らせたりすることができるようになっています。 2021年8月には新たに24時間対応可能な訓練を積んだエージェント(元911のオペレータや緊急医療技師が所属)がいざという時にサポートする有料機能[Protect](https://citizen.com/protect)をロンチしました。 Protectは月額19.99ドル(約2000円)を支払うことで、専用のエージェントとビデオ・音声通話する、友達や家族に状況を伝えてもらう、緊急対応要員を派遣してもらう、警察や救急車を呼んでもらう、近くにいるCitizenユーザに助けを求めるといったことが可能になります。アプリでエージェントを呼ぶボタンを押す、スマートフォンを振る、もしくは苦痛検知モード(スマートフォンの音声から叫び声などから周りの状況を検知する機能)によって、エージェントと接続されるため、緊急時にエージェントを役立てられなかったということが起こりにくいように配慮されています。Protectは[これまで10万人のテストを行い](https://www.reuters.com/technology/crime-app-citizen-rolls-out-fee-based-tool-us-users-contact-safety-agents-2021-08-03/)、その価値がマネタイズ可能なものと検証されリリースされたと見られます。 Citizenアプリではこれまで30都市で700万人のユーザに対して40億回のアラートが送られ、ローカルコミュニティにおける事件を知るための速報性が高いメディアとなりつつあります。 # イベントドリブンなソーシャルメディア:IRL 世の中には音楽フェス、夏祭り、花火大会、フリーマーケット、夜市、作品展、ライブストリーミングなど思いつくだけでも多くのイベントがあります。現在のコロナ禍においてはオフラインのイベントの多くが中止・延期に追い込まれ残念な限りですが、ワクチン接種の進捗次第では日常的に開催するような状況に戻ることも期待されます。 オフラインイベントにしてもオンラインイベントにしても、広くブランドとして認知されている有名なイベントはそれほど多くなく、知る人ぞ知るイベントが多数存在しています。しかし、そのなかから気持ちが踊るイベントを発見できる機会は滅多にありません。また友人や家族と楽しもうと思うと、事前にスケジュールを合わせる必要があります。 こうした課題を解決しようとしているのが、ソーシャルカレンダーを提供する[IRL](https://www.irl.com/)(In Real Life)です。IRLを使うことで、オフライン・オンラインを問わず多くのイベントを発見し、友人とグループを組み、スケジュールの都合をあわせる一連の動作を完結することができます。 [TECHBLITZの記事](https://techblitz.com/irl/)によると創業者であるAbrahamさんがIRLを提供するきっかけとなったのは、「人とひとが時間をともに過ごす」際に生じる手間を解決するアプリケーションがないと気づいたことでした。[Forbesの記事](https://www.forbes.com/sites/abrambrown/2020/09/22/can-you-make-a-teenager-love-a-calendar/?utm_source=FBPAGE&utm_medium=social&utm_content=3767259784&utm_campaign=sprinklrForbesMainFB&sh=5012058e19b0)を読むと、特に親世代が使っているFacebookを使いたくなく、会社のe-mailアカウントに紐付いたカレンダーを持っているわけでもない10代にはベストなカレンダーアプリがなかったことがわかります。そこで提供されたのが、イベント発見機能、ソーシャルネットワーク機能、カレンダー機能を組み合わせたIRLでした。 イベント発見については、期間と場所または所在地にしたがったイベント情報や、フォローしている人が公開/共有しているスケジュールがフィードとして流れてきます。友人がカレンダーに追加したイベントに自分も興味があれば、IRL内で友人とチャットし、参加申し込みをすることもできます。このような機能を1つのソーシャルイベントカレンダーとして統合するUXを提供できたことがIRLの強みでしょう。 画像:[IRLのiOSアプリ(App Store)](https://apps.apple.com/jp/app/irl-do-more-together/id1332596741#?platform=iphone) 画像:[IRLのiOSアプリ(App Store)](https://apps.apple.com/jp/app/irl-do-more-together/id1332596741#?platform=iphone) 以前のIRLはTicketmaster、Livenation、Meetup、Eventbriteなどイベント関連のサービスと連携することで数多くのオフラインイベントを発見できるアプリでした。しかしコロナ禍においては、オフラインイベントが減ったことを受け、In Real Lifeから[In Remote Lifeへ姿勢を変化](https://jp.techcrunch.com/2020/04/08/2020-04-02-streaming-events-calendar/)させ、オンライン上のイベントも取り扱うプラットフォームに変貌しました。Zoom、Twitch、YouTube、Huluなどオンラインで開催されるイベントや番組の配信を検索、スケジュール、チャットできるようにしてユーザを伸ばしています。 現在、オフラインとオンラインのソーシャルイベントカレンダーとなったIRLは、[月間2000万人のアクティブユーザがおり、1日あたり1億件のメッセージが送信](https://forbesjapan.com/articles/detail/41879)されています。マネタイズ方法としては、イベントへ送客することによるアフィリエイトのほか、アプリ内での[有料グループチャット導入のテスト](https://techcrunch.com/2021/06/15/messaging-social-network-irl-hits-unicorn-status-with-softbank-led-170m-series-c/)を進めており、[クリエイターやインフルエンサーと収益を分け合う仕組みも検討している](https://www.forbes.com/sites/abrambrown/2021/06/15/social-messaging-app-irl-gets-11-billion-valuation-from-softbank-plots-monetization/?sh=240071b334bb)ようです。また、10代のエンゲージメントをさらに上げるために、大学生に向けて[College Event Network](https://blog.irl.com/2020/09/time-together/)と呼ばれる大学イベントにフォーカスしたIRL Calendarを提供しています。大学生は.eduのアカウントでIRLへのログインが可能となり、大学内のサークル活動やカレッジスポーツなど身近なイベントを契機に、よりクラスメイトとコミュニケーションが図ることができます。 [College Event Networkは所属大学のイベントやクラスメイトとの交流にフォーカスできる](https://vimeo.com/458690564) College Event Networkは所属大学のイベントやクラスメイトとの交流にフォーカスできる 2021年8月時点ではコロナウイルスのデルタ株に阻まれ、オフラインイベントは引き続き苦境に立たされている状況ですが、今後ワクチン接種が進むことで、オフラインイベントの復活が期待されています。このことはIRLにとって扱えるイベント数を増やす余地を残しているということであり、さらなる事業拡大のチャンスとなりえます。 上記で見てきたように、IRLはイベントを起点としたメッセージングソーシャルネットワーク化しており、主に10代にとっては新たなメディアでありコミュニケーション手段にもなっています。IRLは今後さらに成長が見込まれるメディアとして注目すべき存在かと思います。 # おわりに 今回は「イベントドリブンで形成されるメディア」についてとりあげました。身の回りや興味関心の高いイベントが契機となり、危険を回避する、友人や家族と時間を共有するなど、人々はさまざまなアクションが必要になります。それに対して事件やイベントを容易に発見可能にし、ユーザのインタラクションの回数を最大化することが、イベントドリブンメディアとしての価値となります。 一方でメディアが提供する情報も完璧にはなりません。例えば、Citizenは2021年5月に山火事につながった放火の疑いのある男性を見つけるのに3万ドルの懸賞金を募りましたが、執行機関により疑いのある男性は犯人とは異なることがわかり[Citizenは大きな批判にさらされました](https://www.washingtonpost.com/technology/2021/05/21/citizen-app-reward-falsely-accused/)。Citizenのように市民の役に立つ機能や情報を提供する一方で、時には誤った情報や対応がされる可能性はどうしても残ってしまいます。特に人命や犯罪などに関わる場合には情報の正確性が非常に重要になってきます。 上記の側面もあることをメディア側でもエンドユーザ側でも常に意識しながら、情報共有を図ることでイベントドリブンメディアがさらに発展することを願っています。 --- ## メディア化するVC、VC化するクリエイター URL: https://ximera.com/posts/ccbbf44ee1 公開日: 2021-08-06 著者: Ximera ## テック・スタートアップ関連メディアの再定義、クリエイターエコノミーの台頭が背景に By キメラ|Ximera Media Next Trends #17| 2021年8月6日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第17回となる今回は、「メディア化するベンチャーキャピタル(VC)とVC化するクリエイター」について紹介していきたいと思います。 近年VCまたはVCに所属する投資家、またクリエイター(特にスタートアップにおけるグロース経験やエンジェルとして活動する個人投資家など)が自らコンテンツを発信する機会が増えています。VCがブログなどでスタートアップへの投資活動について開示することはこれまでも多く行われてきましたが、近年は業界のトレンドや未来予想を開示することも珍しくなくなってきました。これはベンチャーキャピタルが起業家に対する存在感を強化し、さらなる出資機会を得るために実施されていることですが、その観点が先進的なビジネスや技術でかつ、業界内部の専門的な内容であるため、起業家のみならず企画や開発を行う多くのビジネスマンにとってもひとつの有益な情報メディアとなっています。また同時にクリエイター側では、[Substack](https://substack.com/)など有料のニュースレターを中心とした個人メディアの成功を起点として、マイクロファンドを組成しメディアとVCを両輪で回す事例も出てきました。 今回はVCがなぜメディア化しているのか、クリエイターがなぜVC化しているのか事例を取り上げながら紹介したいと思います。 # メディア化するVC USのトップティアの各VCでは、投資テーマを明確に定め、各テーマごとに記事を提供し、来たるトレンドとそれに関するスタートアップの紹介、およびスタートアップ業界の人々に役に立つキャリア形成、各職種毎に必要なノウハウなどをメディアとして公開しています。例えば、[Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)](https://a16z.com/)、[First Round Capital](https://review.firstround.com/)、[Union Square Ventures](https://www.usv.com/about/#how-we-invest)、[Index Ventures](https://www.indexventures.com/perspectives/)など名だたるVCは大なり小なりメディアを持っており、通常のメディアでは持ち得ないディープな情報を価値として提供しています。例えば、Union Square Venturesでは、[Access To Knowledgeというテーマ](https://www.usv.com/idea/access-to-wellbeing/)で教育関係のEdutechを中心としたトレンドや投資家活動について、なぜそれが重要か、なぜこのスタートアップに投資を行ったが紹介されています。 メディア化するVCの動きを象徴するのがアンドリーセン・ホロウィッツです。アンドリーセン・ホロウィッツは2009年に創立されたUSのトップティアのベンチャーキャピタルです。これまで、Facebook、Twitter、Oculus、Slack、Airbnb、Clubhouseなど社会のプラットフォームとなるような名だたる[スタートアップの投資を数多くリードしてきた](https://a16z.com/portfolio/)存在です。アンドリーセン・ホロウィッツに先見の明があったのは、[いずれVCは資金を提供するだけでは立ち行かなくなることを創業初期から見通していたこと](https://techblitz.com/andreessen-horowitz/)でした。スタートアップの創業者をサポートし続けたいという理念をもって、投資機能だけでなく、[マーケティング、人材採用、技術支援、IPO支援など専門チームを立ち上げ180人を超える大所帯](https://a16z.com/about/team/)(100名以上が投資”後”の支援を行う組織に属しています)で運営されています。さまざまな機能を持つアンドリーセン・ホロウィッツのチームは[Platformチーム](https://note.com/gcpx/n/n331fad36ad88)と呼ばれ、10-20名程度で投資機能と人脈の提供をメインに運営される多くの伝統的なVCと大きく違う点です。 アンドリーセン・ホロウィッツはVCをマネタイズ手段とするメディア企業とも言われています。元Wiredの編集者を採用しポッドキャストやブログなどを2010年代の早期から立ち上げており、スタートアップ業界における[人気番組](https://future.a16z.com/podcast-network/)をすでに持っています。未来を予測し、大きな投資ファンドを立ち上げ、これらのメディアで起業家の注目を集め、信じたトレンドやスタートアップに投資と支援を行い続けるサイクルを繰り返すことで、アンドリーセン・ホロウィッツはこれまで成功を収めてきました。 そのメディア戦略の強化として考えられるのが2021年6月の[Future](https://future.a16z.com/)の立ち上げです。これはアンドリーセン・ホロウィッツが起業家への出資や支援をより加速するためのPRやマーケティングの取り組みの一環でもありますが、もう一つ理由があると考えられています。[本連載でも過去取り上げた](/posts/3f1ba1d6ed)ように、近年、既存メディアの信頼性の低下に対して読者と適切にコミュニケーションするための手段がスタートアップ業界でも必要とされています。今回アンドリーセン・ホロウィッツが新たにWebメディアを立ち上げたことは、VCやスタートアップ業界が直接ダイレクトに読者とつながり、より正確な情報を伝え、ブランドを作り上げていくために仕掛けた象徴的なアクションだと考えられます。 Futureでは、暗号通貨、ゲーム、ソーシャル、バーチャルワールド、バイオといったカテゴリでのトレンドや未来予想、スタートアップの指標やマインドセット、投資や資本の流れといったカテゴリを中心に、事業を考える上で役に立つコンテンツが多数提供されています。アンドリーセン・ホロウィッツに所属する投資家達はもちろん、[Stripe CEOのPatrickさん、元AirbnbのProduct ManagerだったLennyさん、Microsoft ResearchのNicoleさんなど](https://twitter.com/a16z/status/1404801752684187656?s=20)、各業界やジャンルで実績を出してきた専門家が記事を提供しています。それぞれの記事が深い洞察と広い視野を持っており、非常に品質の高いものとなっています。 Futureは2021年6月15日にローンチされてから6月25日まで30以上の記事が公開されましたが、2021年7月24日時点では、サイトとしてはここで一旦更新をストップしています。[編集部が公開した最後の記事](https://future.a16z.com/future-com-welcome-what-now-next/)では、要約すると「6月号の”ドロップ”をロンチしました。毎月の”ドロップ”が7月からはじまります。見逃したくなければニュースレターを登録してください。」と記載されています。これは[本連載で以前紹介した](/posts/1e0b8fabcf)[MSCHF(ミスチーフ)](https://mschf.xyz/)が実施しているような時限式のコンテンツ提供方式の”ドロップ”を意識しているものと思われます。最初に優良な記事群を一気に提供し、次にいつコンテンツが提供されるかわからない状態を作り出すことによって、いわゆるFOMO(取り残されることへの恐れ)を読者に抱かせてニュースレター登録の促進を図っているように見えます。 # VC化するクリエイター VCがメディア化していくと同時に、スタートアップやVCなどで成功したクリエイターも近年Substackなどのツールを使ってニュースレターを次々と立ち上げています。例えば、[Airbnb](https://www.airbnb.jp/)でプロダクトマネージャーとしてグロースに大きく貢献した[Lenny Rachitsky](https://www.linkedin.com/in/lennyrachitsky/)さんは、プロダクト、グロース、人材戦略などのトピックを自身の経験を元に取り上げる[Substack](https://www.lennyrachitsky.com/newsletter)ニュースレターを立ち上げています。無料会員は月一回ニュースレターが届き、有料会員(15ドル/月または150ドル/年)になると毎週有料記事が読めるようになります。[2020年末時点ですでに3000人の有料購読者](https://techblitz.com/what-seven-years-at-airbnb-taught/)がついており、Airbnbで貰っていた給与を超える収入をニュースレターのみで得ているとのことです。 LennyさんのようにクリエイターがスタートアップやVCで成功した後、自身のメディアを運営しつつ、エンジェル投資家としても活動することはこれまでもよく見られていました。しかし近年はそれにとどまらず、クリエイターが[マイクロベンチャーファンドを立ち上げたり、エンジェル投資家が多数集まって共同で大手VC並の大きな額の投資をするようになってきました](https://nbt.substack.com/p/the-rise-of-the-solo-capitalists)。元[Shasta Ventures](http://www.shasta.vc/)の[Nikhil Trivedi](https://www.linkedin.com/in/nikhilbt/)さんの[Footwork](https://www.footwork.vc/)、複数のベンチャーキャピタルの立ち上げや運営を行ってきた[Turner Novak](https://www.linkedin.com/in/turnernovak/)さんの[Banana Capital](https://www.bananacapital.vc/)、元[Breather](https://breather.com/)(ミートアップスペースを探すためのスタートアップ)の[Packy McCormick](https://www.linkedin.com/in/packym/)さんの[Not Boring Capital](https://www.notboring.co/p/introducing-not-boring-capital)など、2021年だけでもこうした複数の事例が出てきています。 「大きく組織化することなく個人でヒキの強いメディアとファンドが作れる」。これが今起こっているトレンドです。こういった動きは、これまでになく個人の力が強くなっている影響が見て取れる出来事だと思われます。 この動きからは、クリエイターとしての成功ノウハウをSubstackなどのメディアで提供しつつ、ファンドを組成することで、さらに起業家の注目を集め、VCとしてもメディアとしてもさらに成長していく戦略が伺えます。こうした個人クリエイターのVC化が加速すると、投資戦略、投資実績、投資先企業の情報を公開することも可能になり、メディアコンテンツの拡充にもつながります。先に紹介したVCのメディア化と同じく、スタートアップの内部に深く切り込み、外から見える以上の情報へもアクセス可能なため、コンテンツの独自性も確保できます。それがさらに外部の起業家や投資家の興味を招き、ファンドのLP(Limited Partner)獲得や投資先企業への紹介につながるポジティブなループが期待されます。 # おわりに 今回は「VCのメディア化とクリエイターのVC化」についてとりあげました。VCが読者に直接情報を届けるD2C化の動きをみせ、一方ですでにD2Cで読者を獲得したクリエイターメディアがVC化する動きを見せています。こうした流れからは、あらためて(特にテック関連の)メディアのあり方が再定義されていると感じます。特にクリエイター側の動きは目まぐるしく状況が変化しており、ソーシャルメディアやニュースレターなどクリエイターエコノミー関連のテクノロジーの進化によって、クリエイターのプレゼンスが大きく上がっています。今後もクリエイターのメディア化・VC化は進み、さらに影響力が大きくなるものと考えられます。また、VCについてもアンドリーセン・ホロウィッツのように投資のみならずメディアをはじめとした起業家支援のバックボーンのビジネスにさらに変容していくこともありえます。 キメラでは今後もこうしたメディア・クリエイター・VCの関係性についてもトラックしていきたいと思います。 --- ## 広告マネタイズの現状と展望(2021/09/28) URL: https://ximera.com/posts/1059c9660f 公開日: 2021-08-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、株式会社フリークアウトの協力を得て、メディア広告によるマネタイズをテーマとしたイベントを開催します。デジタルメディアの収益化に課題を感じている・広告マネタイズの現状とトレンドを掴みたい・これからしっかり取り組みたいと考えているみなさま、ぜひご参加ください。 ▼以下のフォームから参加登録いただけます(無料)▼ [9/28(火)開催「広告マネタイズの現状と展望」参加登録フォーム](https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQk1Ok5m7CjASrTx1sit1L4GvLBOyEefoVvE_7UxYuIPI5Pw/viewform?usp=sf_link) # イベント概要  2021年8月1日施行の薬機法改正やデータ利用制限の変更の影響を受け、運用型広告によるマネタイズは節目を迎えています。広告収益が減少していくなかで「いつ収益が戻るのか」「どうすれば収益が回復するのか」「いま何をすべきなのか」と不安や疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。  今回のウェビナーでは株式会社フリークアウトの細川氏・高安氏にお話を伺います。日本のアドテクノロジー業界を牽引する広告プロダクトを提供している広告事業社の目線から、現状と今後の展望をお伝えいただきます。  「そもそも、従来は広告収益がどのように発生していたのか」という広告マネタイズの歴史や仕組みを振り返ったうえで、現状を見つめ直し、広告売上を回復するためにこれから何をすべきなのか。次のアクションに向けたヒントになる「今、知りたいこと」にフォーカスしてお届けします。 # ウェビナーでお伝えする内容(※変更の可能性があります) - フリークアウトのメディア協業の事例紹介 - 薬機法改正のメディア収益への影響と対策内容 - 今後の広告マネタイズのトレンド - メディアと広告ベンダーとの付き合い方 - 質疑応答 # スピーカー ![](/images/posts/1059c9660f/Untitled.png) 株式会社フリークアウト Network Div Manager 細川 翔太(ほそかわ しょうた) 氏 フリークアウトに新卒入社し、DSPやSNS運用業務に従事。その後、代理店営業チームのマネージャーとして総合代理店や専業代理店を中心にDSPを販売。昨年より現職にてADNWセールスやメディア商品開発を行う。 ![](/images/posts/1059c9660f/Untitled-1.png) 株式会社フリークアウト Network Div 高安 健吾(たかやす けんご) 氏 フリークアウト新卒入社後、関連子会社へ出向しADNW事業に従事。大手媒体社を中心に広告収益の改善を担当。その後大手外資系企業のアドプラットフォーム立ち上げを経て、2018年よりフリークアウト本社にてADNW事業Poets立ち上げに参画。 # こんな方におすすめのイベントです - デジタルメディアの収益化に課題や興味がある - 運用広告の収益減少に悩んでいる - 近年の広告トレンドを把握したい - 広告マネタイズの歴史や仕組みなどの根本的な理解を深めたい - ベンダー任せの広告運用に課題を感じている # ウェビナーに参加申込する(無料) [https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQk1Ok5m7CjASrTx1sit1L4GvLBOyEefoVvE_7UxYuIPI5Pw/viewform?usp=sf_link](https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdQk1Ok5m7CjASrTx1sit1L4GvLBOyEefoVvE_7UxYuIPI5Pw/viewform?usp=sf_link) --- ## もっと読まれる・もっと届くコンテンツのためのデータ活用(2021/09/07) URL: https://ximera.com/posts/415bd5f574 公開日: 2021-08-01 こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、編集現場のためのデータ活用をテーマとしたイベントを開催し、100名を超える方に参加いただきました。記事の読まれ方をデータで把握したい・コンテンツ制作にもデータを活用したい・課題や不安がある・これからしっかり取り組みたいと考えているみなさま、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。 最新のイベント情報はニュースレターでお知らせします # アーカイブ動画
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-250196050](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-250196050) # イベント概要  デジタルメディアのサブスクリプション(有料購読)が収益源として期待されるなか、コンテンツの作り方や届け方も変化が求められています。多忙な編集現場でデジタル領域への興味や理解を深めるために役に立つのが、メディアの読まれ方を可視化するトラフィックデータです。  「自社メディアはどんなふうに読まれているのか」「どうすればもっと読まれる・届くコンテンツを提供できるのか」…こうした編集現場の永遠の悩みに、データはヒントをもたらしてくれます。一方、データを正しく使いこなせなければ、数字の上下に一喜一憂したり、現場への浸透がなかなか進まなかったりと、かえって混乱をもたらしてしまいます。どのようなマインドや分析手法をとればよいのでしょうか?  キメラは2019年1月以来、50媒体を超える国内パブリッシャーの事業設計、デジタルメディアのグロースなどをご支援しており、コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート:[https://chartbeat.jp/](https://chartbeat.jp/))」の日本総代理店として、国内50媒体の分析支援や分析体制づくりにも取り組んでいます。ウェビナーでは、当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、編集現場で実践できるデータ活用のヒントをお届けします。 # こんな方におすすめのイベントです - データ分析の基本的な知識を手に入れたい - 編集現場でデータを活用する方法を知りたい - 社内でデータ分析・活用の認識合わせをしたい - 社内のデジタル事業に興味がある、関われるようになりたい # ウェビナーでお伝えする内容 - 知っておきたいデータとの向き合い方 - もっと読まれる・届けるための基礎知識 - 二極化するコロナ禍の読者トレンド - 編集現場でデータを活用するためのステップ - 海外の分析トレンド、データ活用の事例 - よくあるデータ活用のお悩み&改善のヒント - 質疑応答 --- ## バンドル化するニュースメディア URL: https://ximera.com/posts/f6c768d52d 公開日: 2021-07-16 著者: Ximera ## 多様化とバンドル化で今まで存在しなかったメディアとユーザ価値が生まれる By キメラ|Ximera Media Next Trends #16| 2021年7月16日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第16回となる今回は「バンドル化するニュースメディア」について紹介します。 ニュースメディアは近年、主な収益源である広告についてGoogle、Facebookを中心としたテックの巨人にそのトラフィックと収益源を奪われつつあります。それに対し既存のメディアは、有料のサブスクリプション、イベント、グッズ販売など新たに読者から収益を獲得するビジネスモデルの模索を続けています。また、大手メディアから独立したライターやフリーランスライターがプラットフォームを使ってニュースレターやサロンといった形で新たなメディアを立ち上げ、エンゲージメントの高い読者から継続的に直接収益を得る形態も増加しています。これらによって、メディアやライターが提供するサービスやコンテンツが増えると同時に、無料ではなく一定の費用を支払ってコンテンツを消費する変化が起こっています。 一方でこれまで無料でコンテンツを消費してきた読者は、全員が有料会員となりロイヤルユーザ化するわけではありません。多くの読者は、大量のメディアやコンテンツがある中で自身に有益なものだけ選別する必要に迫られています。 そういった課題を解決するために、[第13回で取り上げたマイクロペイメント](/posts/0074715d7a)はソリューションの1つとなりえました。今回はマイクロペイメントとは別視点での解決策として、複数のメディアや独立ライターをとりまとめることで、エンドユーザに新たな価値を提供する「メディアバンドル」を推し進める事例を紹介したいと思います。 # 企業向けニュースバンドル:NICKLpass 企業が自社の従業員に対して最新のビジネスニュースを取得できるようにすることは、所属する業界で起こっているトレンドを押さえ次のビジネスの一手を考える手助けとなります。フィラデルフィアのスタートアップである[NICKLPass](https://nicklpass.com/)は、Business Insider、LA Times、CNBC、TechCrunch、The Informationなどを含む200以上のパブリッシャーとパートナー関係を結び、企業従業員の有料ニュースへのアクセスを可能にしています。 NICKLPassは[Chrome Extension](https://chrome.google.com/webstore/detail/nicklpass-511/edcoecjbckgpokngfflempgihpnhadoa)と[モバイルアプリにおけるSingle Sign-On](https://apps.apple.com/us/app/id1498544046#?platform=iphone)によって[パブリッシャーの有料コンテンツへのアクセスを技術的に可能にしている](https://nicklpass.com/#for-publishers)ため、パブリッシャー側の開発負荷低く新たな有料読者を呼び込むことができるとしています。 Chrome Extensionでログインすることで提携パートナーサイトで有料記事が読める 画像:[Chrome ウェブストア](https://chrome.google.com/webstore/detail/nicklpass-511/edcoecjbckgpokngfflempgihpnhadoa) Chrome Extensionでログインすることで提携パートナーサイトで有料記事が読める 画像:[Chrome ウェブストア](https://chrome.google.com/webstore/detail/nicklpass-511/edcoecjbckgpokngfflempgihpnhadoa) またNICKLPass側も有料読者を企業の一定ボリュームで契約することができるため、最大で80%割引されるボリュームディスカウントを利かせることができています。企業ユーザ向けのボリュームディスカウントによるメディアバンドルという手法自体は目新しい話ではありませんが、有料ユーザリーチを広げるためのパートナーシップとしては有効な手の1つです。 # 広告フリーのバンドル:Scroll ニュースメディアにとって、広告は切っても切り離せない存在です。無料の記事でトラフィックを稼ぎ、広告でマネタイズする伝統的なモデルはサブスクが全盛となった今でも、収入源の1つとして機能しています。一方で広告はどうしても読者の体験を損なう場合もあります。アドブロッカーとアドブロッカーを回避するメディアのイタチごっこは枚挙に暇がありません。邪魔な広告を消したいというエンドユーザの要望に対してスタートアップの[Scroll](https://scroll.com/)は複数のニュースメディアをパートナーとしてまとめあげ、広告を非表示にする機能を有料のサブスクリプションとして提供しています。 Scrollの有料会員になるとパートナーサイトで広告フリーになる 画像:[Scroll Blog](https://scroll.blog/2021/05/04/scroll-is-joining-twitter/) Scrollの有料会員になるとパートナーサイトで広告フリーになる 画像:[Scroll Blog](https://scroll.blog/2021/05/04/scroll-is-joining-twitter/) 初回の30日間無料、[最初6ヶ月間は月額2.49ドル、以降は月額5ドルを支払うことで、Scrollと提携するパブリッシャーサイトで広告フリーの体験が提供されます。5ドルの内Scrollが1.5ドルを獲得し、残りの3.5ドルが各パブリッシャーの滞在時間に応じて収益配分される仕組み](https://www.theverge.com/2020/1/28/21111865/scroll-ad-free-website-subscription-launches)となっています。The Verge、The Atlantic、BuzzFeed、Kotaku、Recode、Polygonといったメジャーなメディアをはじめとする数百のサイトがパートナーであり、幅広いカバレッジを持っています。Scrollは、Scrollのネットワークに加わることでこれまでメディアが広告のみから得ていた収益よりも40%以上多く獲得することができると謳っています。 Scrollは[2021年5月にTwitterに買収されました](https://scroll.blog/2021/05/04/scroll-is-joining-twitter/)。まだ具体的なプロダクト統合は外部からは見えていませんが、Twitterが提供するサブスクリプションのサービスの一貫としてScrollの機能が提供され、Twitterが買収したRevueとともにメディアやクリエイターに対する新たな収益源にしていくことが[Twitterから言及されています](https://blog.twitter.com/en_us/topics/company/2021/a-better-way-to-publish-and-read-on-twitter)。これまでTwitterがニュースパブリッシャーやクリエイターと強い関係性を持つことはありませんでしたが、近年の買収は明確にTwitterのクリエイターエコノミーのプラットフォームを目指す意思が感じられ、メディアバンドルの観点でも今後の動きに注目したいところです。 # ニュースレターのバンドル:Every 最後に複数のニュースレターをバンドルすることで1つのメディアが形成された事例を紹介します。[Every](https://every.to/)はニュースレタープラットフォームである[Substack](https://substack.com/)から独立したメディアスタートアップです。もともとはSubstack上の生産性とビジネス戦略にフォーカスしたニュースレターであったEverything Bundleは、[8名のライターのニュースレターをバンドルし、75万人以上の読者と約2400人の有料読者を獲得](https://every.to/letter)しました。 Everyが目指すのは各ライターが制作する執筆物に生計を立てられるレベルの対価が支払われる機会があると同時に、それぞれの執筆ビジョンを実現する自由の両立をすることです。従来は各ライターが執筆で生計をたてるためには完全に独立したフリーランスとなるか、大手メディアの記者となるかしか選択肢がなかったなかで、Everyはその中間解を求めて新たなビジネス形態を模索しています。 EveryのFounderであるDanとNathanは、既存のライターが抱える問題として、[(1) 素晴らしい執筆を行うには多彩なスキルが必要とされること、(2) ライターにかかる執筆のプレッシャーの頻度が高すぎること、(3) ほとんどのライターの執筆がインサイトではなく影響力(ページビューなどのアテンション)を追ってしまうこと](https://every.to/letter)をあげています。このビジョンの実現のため、志をともにするライターと組みバンドルメディアを作ることを決めました。またメディアとして独立するため、Substackから離れ1つのスタートアップとして[Every独自のドメイン、CMS、課金システムを提供](https://every.to/letter)することにしたのです。 現在のEveryでは、14人のライターによる13のニュースレターが4つのジャンル(生産性、ビジネス戦略、リーダーシップ、カルチャー)で提供されています。 各ライターは独自の執筆ビジョンを持って活動しているが1つめメディアとして統合されている 画像:[Every](https://every.to/) 各ライターは独自の執筆ビジョンを持って活動しているが1つめメディアとして統合されている 画像:[Every](https://every.to/) 初期トライアルとして2週間で1ドル、その後年間200ドル支払うことでEveryのライターが執筆するすべての有料記事を読むことができます。 USのジャーナリストには、大手メディアから各ライターが独立してSubstackなどで生計を立てるアンバンドリングが広がっている状況です。Everyはそこからライターを束ねるリバンドリングを行っています。リバンドリングされたメディアは既存メディアと同じことではなく、各ライターがある程度自身の信条や信念に基づいた執筆をしつつ、一定のカルチャーを保つ新たなメディア形態だと考えられます。 # おわりに 今回はニュースメディアのバンドル化を図るスタートアップの事例を取り上げました。有料コンテンツのバンドル化、広告フリーのネットワークバンドル化、ライターのバンドル化などによって、増大するコンテンツや有料課金の価値を新たに訴求するメディアの動きが出てきています。とくにEveryのように、ライターが完全独立しているわけでもなく、特定の信念・信条に偏った集合体としてのメディアでもない、ミディアムメディアが組成させれているのは興味深い動きです。これは昨今のクリエイターがファンにダイレクトにコンテンツを届けることが可能になったこと(D2C化)で実現されたアジャイルかつ自己組織的に運営されるメディアの形の1つのように思えます。 今後のメディアの動きとして、ライター・メディア・読者のあり方がさらに多様化し、バンドル化が起こり今まで存在しなかったようなメディアが作られ、新たなユーザ価値が提供されていく可能性もありそうです。Ximeraでは今後もメディアバンドルをはじめのニュースメディアトレンドについてトラックしていきたいと思います。 --- ## コンテンツ製作を爆速に URL: https://ximera.com/posts/dcf556ae3a 公開日: 2021-07-07 著者: Ximera ### ソーシャルメディアを主戦場とするクリエイターは、コンテンツ製作の爆速化を迫られている By キメラ|Ximera Media Next Trends #15| 2021年7月7日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第15回となる今回は「コンテンツ製作の爆速化」について紹介していきたいと思います。 近年[Creator Economy](https://www.forbes.com/sites/kianbakhtiari/2021/04/18/the-creator-economy-nfts-and-marketing/?sh=67db8611204a)が広がるなかで、クリエイターは世界でプロ・アマ含め[5000万人以上](https://signalfire.com/blog/creator-economy/)いると言われています。競争環境の激化によって、各クリエイター達はユーザにエンゲージする品質を維持しながら、爆速にコンテンツを製作する必要に迫られています。メディアやクリエイターによっても違いますが、収益化の観点から、更新頻度はYouTubeでも週2〜3本以上、TikTokに至っては1日に数本投稿されることも珍しくありません。ソーシャルメディアを主戦場にするクリエイターはこの更新頻度を維持するため、コンテンツ製作の爆速化を迫られているのです。 またリアルな製品を扱う物販についてもその商品製作が爆速化しています。たとえば、中国発のファッションECを展開する[SHEIN(シーイン)](https://asia.shein.com/?ref=www&rep=dir&ret=asia)は、[データサイエンスとサプライチェーンの最適化により](https://www.notboring.co/p/shein-the-tiktok-of-ecommerce)、[新作のデザインから生産までなんと3日](https://36kr.jp/123949/)という驚くべき製作スピードを誇り、SHEINはこれによって[毎日1万点以上の新作投入を可能にしています。](https://us.shein.com/daily-new.html)トレンドを押さえながらも製作を爆速化したことによりSHEINの[2020年の売上は100億ドルを突破](https://mp.weixin.qq.com/s/h9s4yHmq18PrOc47WpEC6g)、App Storeのショッピングカテゴリーにおいて56カ国で1位、Webサイトでも[トラフィックや平均滞在時間で世界トップ(2021年6月30日現在)](https://www.similarweb.com/ja/top-websites/category/lifestyle/fashion-and-apparel/)となり、大きくビジネスを成長させています。 このようにデジタルでもリアルでも爆速かつ質の高いコンテンツを製作することが必要な状況です。一方で、一般的な企業や個人クリエイターはコンテンツ製作やマネタイズのために、著作権管理、スポンサー獲得、各種交渉などバックエンドでやらなくてはいけないことが数多くあります。資本も人数も桁違いのテック企業と同じようなスピードを実現するのは困難です。そこで今回はこうしたクリエイターやブランドが直面するタスクを軽減し、コンテンツ製作の爆速化を図るためのスタートアップの事例を紹介します。 # リアル製品のコンテンツを爆速に:Soona リアルな製品を作るにしろ、デジタルコンテンツを作るにしろ、惹きのある画像や動画は欠かせません。とくにリアル製品を販売する物販ではその製品の良さをオンラインでビジュアルも含め訴えかける必要があります。最近では大手のブランドや新興D2Cブランドだけではなく、ソーシャルメディアのインフルエンサーがオリジナルブランドのリアル製品を出すことも珍しくありません。 そういった需要の高まりを受け、各ブランドやクリエイターが自社の製品の美麗な画像・動画の製作を容易にするスタートアップが登場しています。[Soona](https://soona.co/)はUSのデンバーを本拠地とするスタートアップで、Soonaに自社の製品を発送すると、希望したオプションに応じて数十枚の画像や動画をプロスタジオ品質で撮影してくれます。また撮影された画像や動画は気に入ったものだけを選んで料金を支払うことができます(画像49ドル/枚、動画93ドル/クリップ)。[こちら](https://soona.co/inspiration/)でこれまで製作された画像を見ることができます。 [Soonaは自社製品の惹きのある画像や動画をリモートで撮影してくれる 動画: [YouTube](https://www.youtube.com/watch?v=8xNR68fKHqk) ](https://youtu.be/8xNR68fKHqk) Soonaは自社製品の惹きのある画像や動画をリモートで撮影してくれる 動画: [YouTube](https://www.youtube.com/watch?v=8xNR68fKHqk)  Soonaがユニークなのは、製品の画像/動画という特注品を製作する業務をeコマース化している点です。従来、ブランドマネージャーがクリエイティブスタジオと何度も話をして進めていた業務を、注文の段階でパッケージ化することでeコマース化に成功し、注文してから24時間以内に製作が完了させることで大きく効率を上げています。製作されたコンテンツについては、Soonaの担当者と個別に連絡をとり、背景色やキャプションを変えるなど調整作業を経てさらに求める品質へ近づけることも可能になっています。Soonaはこのモデルによってコンテンツ製作の爆速化をサポートし、かつ一定の品質も担保するということに成功しています。 数年前からのD2C市場の伸びに加え、コロナ禍でもリモートでコンテンツ製作ができるSoonaのサービスは需要が増え続けており、2021年6月現在では[4000社のクライアントがおり、売上は2020年から400%増加しました](https://techcrunch.com/2021/04/16/soona-series-a/)。Soonaは2021年4月に約1000万ドル(約10億円)の資金調達も行い、今後さらに効率的にコンテンツを製作するためのサブスクベースのプロダクト開発も行っていくとされています。 # コンテンツ二次利用を爆速に:Catch & Release たとえば、自社の製品・サービスをユーザが利用しているようすをプロモーション動画に使う、ニュースとして惹きのある画像・動画コンテンツをソーシャルメディアなどのオープンインターネットから探してくるなど、第三者が製作したコンテンツを二次利用することはコンテンツ製作のスピードアップの観点で有効な手法です。一方で著作者が存在するコンテンツについては、著作権の確認、著作者との交渉、適切なライセンス管理など商用利用においてそのハードルは低くありません。著作権関係の処理は複雑であり、個人クリエイターや中小企業のみならず大企業であってもかなり骨が折れる作業で時間と労力がかかります。その問題を解決しようとしているのがサンフランシスコを拠点とするスタートアップの[Catch & Release](https://www.catchandrelease.com/)です。 Catch & Releaseでは、インターネット上の画像や動画を自社で使いたいと思っているビジネスユーザ(主に広告代理店やブランド)がコンテンツを発見した際に、二次利用の可否、利用できるライセンスの範囲確認、ライセンス可能なコンテンツ購入(免責補償付き)を一気通貫で行うことができます。まず、Catch & Releaseが提供するChrome Extensionをインストールし、Web上で使いたいコンテンツを探します。使いたい画像・動画を見つけ、Chrome Extensionでチェックすると二次利用が可能なコンテンツなのか判別できます。利用が可能なコンテンツの場合においても、すべてのコンテンツが使えるわけはありません。たとえば動画なら何分何秒から何分何秒までを使いたいのか、そこに商用利用できない音楽やロゴなどが登場していないかチェックする必要があります。このクリアランスと呼ばれる著作権管理の工程も、Catch & Relaseへ任せることが可能です。面倒な交渉事についても、Catch & Relaseが著作権者へ連絡をとり、オリジナルのリクエストに対して交渉を行ってくれます。ユーザは最後にライセンス処理が完了したコンテンツをeコマースのようにカートに投入して簡単に購入することができます。 Catch&Relaseのダッシュボードでクリアランスの進捗や状況が細かく把握できる 画像: [Catch & Release](https://www.catchandrelease.com/our-approach) Catch&Relaseのダッシュボードでクリアランスの進捗や状況が細かく把握できる 画像: [Catch & Release](https://www.catchandrelease.com/our-approach) 著作権者側(とくにソーシャルメディアで画像や動画を挙げているクリエイター)もソーシャルメディアのアカウントをCatch & Releaseが提供するプラットフォームとリンクさせることで、自身のコンテンツが商用二次利用される機会を知ることができ、その交渉やライセンス料の支払いまで一括してCatch & Releaseに任せることができます。これまでに[Catch & Release は300万ドル(約3億円)以上を著作権者へ支払っており](https://www.catchandrelease.com/for-contributors)、マネタイズの実績も出はじめています。 このCatch & Releaseの仕組みによって既存コンテンツのキュレーションによって新たなコンテンツ製作が可能になっています。たとえば[TikTok、Samsonite、honey Baked Ham Company](https://www.catchandrelease.com/for-contributors)などがSoonaの顧客として、ソーシャルメディアに上がっている動画を組み合わせ、新たな広告やプロモーション動画を製作しています。プロフェッショナル動画との組み合わせやユーザ動画のみの組み合わせなど、構成のパターンもさまざま考えられます。コンテンツ製作のスピードアップもさることながら、利用できるソースの多様性によって、製作できるコンテンツの幅も拡がりそうです。 # コンテンツスポンサーシップを爆速に:Curastory 最後にコンテンツ製作のマネタイズ手法のひとつであるスポンサーシップについてもスピードアップを図っている事例をご紹介します。スポーツや格闘技など肉体を駆使するジャンルのクリエイターはその派手なパフォーマンスを動画に撮り視聴者を魅了しています。一方でそのコンテンツの製作はアスリートとしての練習も含め、多くの時間と労力がかかります。また無名な選手やスポーツの場合はスポンサーが付くことも少なく、動画の広告だけではマネタイズが難しい状況にあります。こうしたアスリート系クリエイターの動画製作とスポンサーシップのマネタイズをサポートするのがニューヨークのスタートアップである[Curasotry](https://www.curastory.co/)です。 アスリートがスポンサー付き動画を撮る際にハードルとなってくるのが、1. スポンサーを見つけ適切に契約管理ができること、2. スポンサーが求めるレベルに必要な高品質な動画を撮影できることの2点です。1. に関しては、Curastoryがさまざまなブランドと提携しており、アスリートがそのなかから好きなブランドを選ぶことが可能になっています。またCurastoryが仲介することでスポンサーシップ契約が締結され、アスリートがマネタイズを模索することができます。2. については、 Curastoryから動画編集ソフトウェアおよび[動画撮影用の機材一式が35ドル(約3500円)からレンタル](https://www.curastory.co/blog/tips-tricks-for-using-our-video-rental-kits)できます。これらのソリューションによって撮影をはじめるまでのハードルを大きく下げています。 Curstoryがアスリート貸し出す動画撮影用のレンタルキット 画像:[Curastory](https://www.curastory.co/rentals) Curstoryがアスリート貸し出す動画撮影用のレンタルキット 画像:[Curastory](https://www.curastory.co/rentals) 動画編集ソフトウェアでは、自動サブタイトル生成、各ソーシャルメディア向けのリサイズ、9万曲を超えるBGMや効果音など、動画編集に必要な機能が提供されます。動画が完成するとCurastoryのソフトウェア経由でソーシャルメディアへ動画を投稿、その視聴数をCurastoryがトラッキングし、数に応じてスポンサー広告料がアスリートへ支払われるというモデルになっています。 スポンサーシップの形は、[マーケットプレイス上でブランド側がアスリートの動画に競売でbidをつける(最低30ドル/CPMから)Video Bidding、動画内でアスリート自身がブランドや製品を紹介するCustomized Ads、4ヶ月以上ブランドからスポンサーシップを受けれるSponsorships の3つ](https://www.curastory.co/features)があります。 Curastoryはアスリートのみならずアウトドアアクティビティなどを中心にエンタメ要素の強いYouTuberやTikTokerなどにも同様の仕組みを広げようとしています。今後ほかのジャンルでも適用できる余地があれば、スポンサーシップコンテンツがさらに増えていく可能性もありそうです。 # おわりに 今回はコンテンツ製作の爆速化を図るためのスタートアップの事例を取り上げました。大手ブランドや新興D2Cブランドはもちろん、デジタル企業やクリエイターがオリジナルのブランドを製作することも少なくなく、そのプロモーションを後押しするコンテンツ製作はさらに増えていくと思われます。またブランドとクリエイターの関係性はより近くなり、スポンサーシップやコンテンツの二次利用についてはマーケットプレイスのような形で標準化が進んでいきそうです。 今回ご紹介した事例は主にブランドやクリエイターのプロモーション/マーケティング用のコンテンツ製作の範囲であり、製作されるあらゆるコンテンツ種別をすべて網羅できているわけではありません。プロモーション/マーケティングに限らないほかのコンテンツについても考え方、手法、テクノロジーが進化し、爆速化や高品質化が起こっています。キメラでは、そうしたコンテンツ製作全般のトレンドについて今後トラックしていきたいと思います。 --- ## インタラクティブな動画サービスを作るには URL: https://ximera.com/posts/0aa08bd4bf 公開日: 2021-06-23 著者: Ximera ### ストリーミング動画プロダクト自体もクリエイター自身でマネージする未来が訪れる By キメラ|Ximera Media Next Trends #14| 2021年6月23日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)の第14回となる今回は「インタラクティブ動画を作るテクノロジー」を紹介します。 数年前まではテキストと画像を中心のコンテンツ製作が主流でした。しかし現在では[動画のエンゲージメントの高さ](https://www.socialbakers.com/blog/social-media-trends-report-q4-2020)、製作/配信コストの低減が理由となり、動画フォーマットでのコンテンツが爆発的に増えています。ニュースについても、今となっては多くのメディアやスタートアップが動画ニュース専門サイトを提供してするのも珍しくなくなりました。これはスマートフォンを中心に動画閲覧可能なデバイスが普及したこと、プロユースで使える動画編集・加工ができる機材やソリューションが多数揃っていること、4Gと5Gによって動画ストリーミングにも耐えるネットワークインフラが揃ってきていることが大きな要因と考えられます。 動画ストリーミンは大きくオンデマンド型とライブ型に分かれます。オンデマンド型はYouTubeやTikTokを中心にいつでも消費できるメディアとして成長し続けています。一方で、本連載で何度か取り上げてきたようにライブ型のインタラクティブメディアも近年新たなファンのエンゲージメントを作ってきています。 ではそうしたインタラクティブな動画体験をファンに提供するには、コンポーネントとして何が必要なんでしょうか。現時点でインタラクティブな体験にはさまざまな定義があり、絶対的な解はありません。そのため多くの企業がゼロからプロダクトを構築しベストな形を模索しています。今回はそうした需要に答えるべく近年登場している(1)動画インフラレイヤー、(2)インタラクティブレイヤーを提供するスタートアップ、それを活用した(3)インタラクティブ動画サービスの事例を紹介したいと思います。 # ストリーミング動画インフラ:MUX ストリーミング動画の配信を行うためには、動画のアップロード→エンコード→メディアサーバ→CDN配信といったパイプラインが必要になってきます。エンジニアリングリソースがなければ大手の動画配信プラットフォームを利用することでパイプラインを意識することなく容易に配信は可能です。エンジニアリングリソースがあれば上記のパイプラインを自前で開発し[Wowza](https://www.wowza.com/)などのメディアサーバパッケージを使って構築することも可能です。 しかしながら、前者はフォーマットが規定されていることからブランディングに制限があることやインタラクティブな機能を開発しようとしてもすべての開発判断は当然ながらプラットフォームが持っています。また、後者はある程度の動画ストリーミングの専門家がパイプラインを支えるインフラをメンテナンスしていく必要があることや、パッケージソフトウェアの機能に大きく依存することになるため、フルカスタマイズが難しいという問題があります。 そこで登場したのがAPIを中心とした配信ソフトウェアの開発者のためのストリーミング動画プラットフォームの[MUX](https://mux.com/)(マックス)です。MUXはカスタマイズされたストリーミング動画環境の開発を容易にすることができます。同社はMux Dataと呼ばれるモニタリングとアナリティクス、およびストリーミング動画APIのプロダクトであるMux Videoを提供しています。特にMux Videoはわずか3ステップのAPIコールで動画のオンデマンド/ライブのストリーミングをはじめることができます。ただしVideo PlayerとCMSについては開発者側で用意が必要です。 APIベースでライブストリーミング動画の制御が可能 画像:[MUX Docs](https://docs.mux.com/guides/video/live-streaming-from-your-app) APIベースでライブストリーミング動画の制御が可能 画像:[MUX Docs](https://docs.mux.com/guides/video/live-streaming-from-your-app) MUX Videoは[Robinhood](https://robinhood.com/us/en/)や[ViacomCBS](https://www.viacomcbs.com/)、[VSCO](https://vsco.co/)などに利用されており、この数年はビデオ需要が増えているそうで、[TechCrunch](https://jp.techcrunch.com/2021/05/02/2021-04-30-mux-series-d/)では[この1年でMuxのプラットフォームを利用するオンデマンドのストリーミングは300%成長し、ライブのストリーミングは3700%成長、そして売上が4倍に増えた](https://jp.techcrunch.com/2021/05/02/2021-04-30-mux-series-d/)と述べられています。この数字を見ると、各企業の自社でのストリーミング動画メディア開発の志向が高まりを実感できます。 > この1年でMuxのプラットフォームを利用するオンデマンドのストリーミングは300%成長し、ライブのストリーミングは3700%成長、そして売上が4倍に増えた > Muxのほかにも[api.video](https://api.video/)や[Cloud Flare Stream](https://www.cloudflare.com/products/cloudflare-stream/)などストリーミング動画インフラレイヤーを担ってくれるサービスがあります。これらのサービスをフル活用すると、ストリーミング動画のエキスパートがおらずとも提供可能な環境を作れるため、短期間でロンチかつ低い運用負荷のプロダクトを保持することが可能になります。 # ストリーミング動画のインタラクティブ化:Maestro ではストリーミング動画を配信する仕組みができたとして、次にインタラクティブレイヤーとして、どのような機能を考えていけばよいでしょうか。例えば、チャット、投げ銭、投票など動画にオーバーレイして動画配信者と視聴者がインタラクションするための機能の実装が必要になってきます。スタートアップの[Maestro](https://info.maestro.io/)はそのような動画のインタラクティブ化をサポートするシステムを提供しています。 Maestroは元々はeスポーツなどゲームコミュニティをメインターゲットとしてインタラクティブ機能を提供していました。しかしコロナ禍においてマネタイズが困難になったスポーツチームやアーティストがストリーミングベースでマネタイズする需要が高まったことで、バスケットボールチームの[Golden State Warriors](https://techcrunch.com/2021/03/02/maestro-nets-15-million-for-its-interactive-commerce-community-and-engagement-tools-for-livestreams/) やアーティストの[Billy Eilish](https://www.billboard.com/articles/columns/pop/9472436/billie-eilish-where-do-we-go-livestream-concert-recap/)にも利用されています。また本連載の[第12回](/posts/67654b9d7c)で紹介したバーチャル音楽コンサートプラットフォームの[WaveXR](https://wavexr.com/)も[Maestroを使って](https://techcrunch.com/2021/03/02/maestro-nets-15-million-for-its-interactive-commerce-community-and-engagement-tools-for-livestreams/)インタラクティブ機能の実装を行なっています。 Maestroのほかにも本連載の[第4回](/posts/3cb0398995)、[第12回](/posts/67654b9d7c)で過去に紹介した[Genvid](https://www.genvidtech.com/)、あるいは[muxi](https://www.muxy.io/)といったようにライブストリーミング動画のインタラクティブ化に取り組むスタートアップが登場しています。 これらのサービスを活用することで、ハンドリングの難しい動画インタラクションの機能や、インタラクションと連動した課金の仕組みを実装することが可能になります。 # インタラクティブ動画プラットフォームの実装例: Sessions Live これまで紹介したようなサービスによってカスタマイズ可能なインタラクティブな動画プラットフォームを自社で構築・運用することもある程度可能になってきていることがお分かりいただいたかと思います。実際に上記で挙げたMuxとMaestroを使って作られたサービスが登場しており、その一例が[Sessions Live](https://sessionslive.com/)です。 Sessions Liveは2020年4月にPandora(関連性の強い自動選曲を売りにしたインターネットラジオ)の元CEOであるティム・ウェスターグレン(Tim Westergren)が立ち上げた、インタラクティブな音楽ライブコンサートの配信プラットフォームです。ストリーミング動画サイトのTwitchによく似たものとなっていますが、音楽アーティストのインタラクティブなライブストリーミング動画に特化しています。 同社はプラットフォームの提供だけにとどまらず、一人一人の[アーティストと直接契約しマーケティング支援を行っている](https://rollingstonejapan.com/articles/detail/34144?n=1&e=34589)ことや、音楽ライブストリーミングの専門であるがゆえに、グローバルアーティストから名がよく知られていないインディーアーティストまでコアな音楽ファンが集まりやすく、エンゲージの高いファンからのマネタイズを模索できるプラットフォームとなっています。 アーティストはチケット/グッズ/バックステージパス(Meet&Greet)の販売、ライブコンサート中のファンからの投げ銭による支援、そしてコアなファンからの月額課金によって継続的な収入を得ることが可能です。ライブコンサート中にはファンが「Love」と呼ばれるSessions Liveの独自ポイントを購入し、「Love」を使って曲のリクエストや有料ステッカーを購入しチャットに貼ることができます。「Love」を使ってアクションを行ったファンは、リーダーボードへ掲載される、チャットでも目立つ色になる、アーティストから優先して名前を呼ばれる、といったベネフィットを得られ、アーティストとのインタラクションを通したライブ体験でエンゲージメントが高まります。 ライブ演奏中に「Love」を使ってチャット投稿やリクエストするとチャット欄でフィーチャー(動画下部は有料のステッカー一覧)画像:[Sessions Live](https://sessionslive.com/) ライブ演奏中に「Love」を使ってチャット投稿やリクエストするとチャット欄でフィーチャー(動画下部は有料のステッカー一覧)画像:[Sessions Live](https://sessionslive.com/) 気に入ったアーティスト毎にサブスクでファンクラブに加入 画像:[Sessions Live](https://sessionslive.com/whydontwe/tickets) 気に入ったアーティスト毎にサブスクでファンクラブに加入 画像:[Sessions Live](https://sessionslive.com/whydontwe/tickets) さらに支援をしたいと思うファンは月額課金でファンクラブへ入会し、限定イベントや特典、アーティストとのチャットを楽しむことができるようになっています。 このようにライブ動画セッションでエンゲージメントを高めロイヤルユーザ化していくことが音楽ライブコンサートでは可能になっています。この一連の機能の多くはフルスクラッチではなく、[MuxとMaestroを使うこと](https://www.programmableweb.com/news/mux-partners-maestro-interactive-live-streaming-tech-highlighting-benefits-api-first-design/analysis/2021/04/21)で[実装されており](https://www.prnewswire.com/news-releases/mux-lands-105m-series-d-to-provide-fast-track-for-developers-in-exploding-video-streaming-market-301280959.html)、カスタマイズ可能なインタラクティブ動画の世界をつくるハードルがかなり下げられています。 ここでは、事例として音楽ライブコンサートに限ったことではなく、報道系ニュース、演劇など、ライブ性が高いコンテンツにさまざまな分野で適用ができる可能性があります。また同時に本シリーズ第12回で紹介したAIによるリアリティショーである[Rival Peak](https://www.facebook.com/instantgames/play/229260461831742/?context_type=SOLO&source=facebook~link~fb_gg_link)のように、これまではオンデマンドコンテンツだったものがコンセプトと技術を一新してインタラクティブライブストリーミングとして形を変え新たなコンテンツができるかもしれません。 # おわりに 今回はインタラクティブストリーミング動画を作るためのテクノロジーを取り上げました。これまではYouTubeやTwitchなど大手の動画配信プラットフォームでしか実現できなかったような機能が、自社でも開発できるようになっています。 動画やインタラクティブ機能の実装には依然としてエンジニアリングのリソースは必要ですが、以前よりもはるかに容易に作ることが可能になってきました。またノーコードムーブメントの後押しにより、動画インフラやインタラクティブレイヤー以外でも労せずできることが多くなっています。 こうした背景も踏まえつつ、ストリーミング動画というプロダクト自体もクリエイター自身でマネージする未来が訪れことで、さらにクリエイターエコノミーが加速されると考えられます。キメラではますます伸びる動画関連技術や市場について今後もトラックしていきたいと思います。 --- ## マイクロペイメントを狙え URL: https://ximera.com/posts/0074715d7a 公開日: 2021-06-07 著者: Ximera 無関心でもロイヤルでもない中間層のファンともうまく関係を築いていくことが継続的にビジネスを続けていくためのひとつの戦略です By キメラ|Ximera Media Next Trends #13|2021年6月7日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載シリーズ[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)の第13回となる今回は「マイクロペイメント」について紹介していきたいと思います。 本シリーズの[第11回](/posts/a6dc19528f)では、クリエイターが生み出すコンテンツやコミュニティで収益を上げていく仕組みとして、(1) マーケットプレイス、(2) メンバーシップ、(3) ペイウォールを取り上げました。これらの課金の仕組みでは、ユーザは欲しいコンテンツや応援するクリエイターに対して、数百円から数千円程度を、都度課金や月額課金で支払うものがほとんどでした。 ですが、気に入ったクリエイターを見つけ何かしらのコンテンツに対価を支払う際に、「一度きりの関係ではなく継続的に支援したい。でも月額1,000円支払ってまで有料会員になったり、有料コンテンツを見たいかというとそこまででもない」と感じる瞬間はないでしょうか。 その場合、どういう行動をするでしょうか。ほとんどの場合「支援することを諦める」だと思います。わざわざクリエイターに対して「100円の支援プラン作ってください」なんて言ってくれるファンの方は多くないはずです。この課題に対して一つの解決策となるのが、コンテンツやクリエイターに対して少額を支払うことができるマイクロペイメントです。 マイクロペイメント自体は決して新しい概念ではありません。コンテンツに支払いをするコスト(ユーザ側の障壁、システム側での対応)がかかることや、各コンテンツ毎にうまく金額設定できないと、広告収入やサブスクで賄っていた収益を減らしてしまう可能性もあり、[ジャーナリズム関係でも上手くいかないと言われてきました](https://www.cjr.org/opinion/micropayments-subscription-pay-by-article.php)。 しかし近年そのような問題を解消しようとするスタートアップが出現しています。今回はそんなマイクロペイメントに挑戦するスタートアップの事例をご紹介したいと思います。 # 記事毎にマイクロ課金:Fewcents 多くのメディアパブリッシャーが広告収入の減少に直面し、無料の広告モデルから有料サブスクへの事業転換を画策するなかで当たる壁の一つが有料転換率の低さです。フリーミアムモデルでの[パブリッシャーの有料会員率は1〜5%程度](https://jp.techcrunch.com/2021/05/06/2021-05-04-fewcents-raises-1-6m-to-help-publishers-take-payments-for-individual-articles-or-videos/)と言われており、90%以上が潜在顧客ではあるものの、いわゆるロイヤルユーザへの転換は容易ではありません。 そこでマイクロペイメントによって、90%の潜在顧客のなかから準ロイヤルユーザを作り出そうと試みているのがシンガポールのスタートアップである[Fewcents](https://www.fewcents.co/)です。 毎月のサブスクリプションには参加しないものの、個別の課金を望むユーザとそのメディアにFewcentsは機能する。50%の数値はFewcentsの仮説だと思われる 出典: [Fewcents](https://www.fewcents.co/) 毎月のサブスクリプションには参加しないものの、個別の課金を望むユーザとそのメディアにFewcentsは機能する。50%の数値はFewcentsの仮説だと思われる 出典: [Fewcents](https://www.fewcents.co/) Fewcentsはメディアパブリッシャーに向けてコンテンツ毎に少額の課金を可能にするプラットフォームを提供しています。Fewcentsは、(1)ログインと支払いを簡単にすること、(2) コンテンツごとに柔軟な設定ができることで、従来マイクロペイメントがうまくいかないと言われてきた問題に対処しようとしています。 (1)について、Fewcentsのソリューションを実装しているパブリッシャーであれば、どこでもFewcentsのアカウントでログイン・課金ができるようにしています。サイトを横断して使用できるWalletにはクレジットカードやPayPalとの連携で自国通貨を簡単にチャージ可能です。この仕組みによって、Fewcentsのパートナーが増えれば増えるほど簡単にマイクロペイメントができる機会が増えていきます。 (2)については、特定地域からのアクセス制限、著作権管理、アクセス回数、価格(特定クラスタ毎/カテゴリー毎にコンテンツ価格を一括設定など)、コンテンツの配置場所などの変更を行うことができる[パブリッシャー向け機能](https://www.fewcents.co/setup)を提供することで、コンテンツ毎に細かな設定をすることができるようになっています。 Fewcentsによって、インドネシアのニュースパブリッシャーであるDailySocialは[RPM(1000インプレッションあたりの収益)が全くなかった状態(0ドル)からFewcentsの力によって](https://www.fewcents.co/)5ドルとなりました。 3,000-5万ルピア(約22.5円 〜 378円)と幅広い個別記事の価格設定 出典: [Daily Social](https://dailysocial.id/premium-content) 3,000-5万ルピア(約22.5円 〜 378円)と幅広い個別記事の価格設定 出典: [Daily Social](https://dailysocial.id/premium-content) Fewcentsは、現状ではパブリッシャーが手動でそれぞれのコンテンツ価格を設定しなければなりませんが、AIによるアルゴリズムを用いたダイナミックプライシング(動的にコンテンツ価格を決めること)の開発も進めています。もしダイナミックプライシングが実現できるとパブリッシャーの運用負荷も減り、サイト全体の収益最適化の可能性もありそうです。 # 1サブスクで複数のクリエイターを支援:Podhero 次に紹介するのが、[月額の](https://help.podhero.com/article/20-how-much-does-podhero-cost)5.99ドルを使って少しづつお気に入りのPodcastを支援するアグリゲーションサービスであるPodheroです。[97.2%のPodcastは収益化できておらず、広告やスポンサーシップを入れているPodcastはわずか1.4%しかない(残り1.4%はPateronようなサービスからの支援)](https://medium.com/@petecurley/meet-podhero-the-easiest-way-to-support-podcast-creators-5f17f536e7d8)という現状に対して、PodheroはPodcastを提供するクリエイターへの支援を目的にファンの有料サブスクを分配する仕組みを提供しています。 ファンが課金する5.99ドルのうち0.99ドル[がPodheroを運用するための費用](https://help.podhero.com/article/15-what-are-the-fees-for-creators)として使われ、4.99ドルドルがクリエイターの取り分となります(現状は、クリエイターがファンのサインアップを獲得する度に5ドル(約500円)がクリエイターに支払われる[リワードプログラム](https://help.podhero.com/article/7-5-invite-faqs)の費用として主に[充てがわれています](https://help.podhero.com/article/15-what-are-the-fees-for-creators))。 Podheroがユニークなのは、視聴数ベースでクリエイター側が受け取れる売上額が変わるのではなく、ユーザが支払う金額の内4.99ドルで、どのPodcastにいくら支援するのかを自分で決められる点です。例えば、4.99ドルの内、1ドルをPodcast A、2ドルをPodcast B、1.99ドルをPodcast Cのクリエイターへ分配するということができるため、少額をさまざまなクリエイターに支援できるマイクロペイメントの仕組みになっています。 2020年6月のロンチ時で、Podheroには無料のPodcastが100万以上揃っているためほかのPodcastアプリと遜色なくコンテンツを探すことが可能になっています。これはPodheroが[AppleのPodcast APIを利用](https://www.markasquith.com/the-podcast-accelerator/the-apple-podcasts-api-explained-what-it-is-and-why-it-matters/)することで、Podcast配信側とPodhero間で取引関係がなくともPodheroのアプリで番組が視聴できるようになっています。 ファンが月額$4.99(約500円)分をお気に入りのPodcastへ配分できる 出典: [Podhero Podcast Player](https://play.google.com/store/apps/details?id=com.swoot.podcasts&hl=en_US&gl=US) ファンが月額$4.99(約500円)分をお気に入りのPodcastへ配分できる 出典: [Podhero Podcast Player](https://play.google.com/store/apps/details?id=com.swoot.podcasts&hl=en_US&gl=US) そしてPodhero上でファンからPodcastに支援があると、なんと[取引関係がなくても支援額がプールされ、いざ取引関係になった時にプール額が支払われる](https://jp.techcrunch.com/2020/06/12/2020-06-09-podhero-launches-a-5-99-subscription-app-where-you-can-support-your-favorite-podcasts/)という仕組みが出来上がっています。これは非常に興味深い仕組みで、クリエイターの知らぬ間に収益が発生したという状況が出てきてもおかしくありません。 # トークンによるクリエイター支援:Stakes Social/DEV Protocol 最後に、マイクロペイメントを可能にするプラットフォームとして近年注目されているBlockchainを使ったStakingを紹介します。 Stakingとは、ある仮想通貨を保有するユーザがBlockchainのネットワークに参加し、トランザクション(Blockchain上に格納される取引)の検証に貢献することで対価として報酬がもらえる仕組みです。仮想通貨の保有割合に応じて承認の割合を決める[Proof of Stake](https://bitcoin.dmm.com/glossary/proof_of_stake)という合意形成のアルゴリズムを採用している仮想通貨([Etherium (移行予定)](https://ethereum.org/ja/developers/docs/consensus-mechanisms/pos/)、[Polkadot](https://polkadot.network/ja/)、[Cosmos](https://cosmos.network/)など)が対象となります。これはより多くの検証に貢献することでより多くのStaking報酬がもらえる構造となっており、株式の考え方によく似たものとなっています。 このStakingの特徴を使ってオープンソースソフトウェアのクリエイター支援の仕組みを作っているのが[DEV Protocol](https://devprotocol.xyz/)と[Stakes Social](https://stakes.social/)です。オープンソースの世界では開発者が無償でソフトウェアを開発、ソースコードを公開し、開発コミュニティの無償の貢献によりソフトウェアをアップデートしていく形が標準的です。一部の人気プロジェクトではユーザからの寄付を得てプロジェクトを存続するための資金を獲得することが可能です。 一方で寄付を得て継続できるプロジェクトはごくわずかで、やや古い統計ですが[1年間で83%のオープンソースのプロジェクトは非アクティブ(過去1年間あるプロジェクトに対して2人以上の開発者が1回以上ソースコード変更を行っていない)になっています。](https://www.slideshare.net/blackducksoftware/open-source-by-the-numbers) > 1年間で83%のオープンソースのプロジェクトは非アクティブになっている > すべてが資金難による非アクティブ化ではないと思われますが、長くプロジェクトを継続するために資金が必要になってくるケースも多々ありそうです。 この状況を解決するために、オープンソースプロジェクトをトークン化し、開発者が支援者からの資金調達を可能にし、開発者と支援者への双方へインセンティブを与える仕組みとしてDEV Procotol、マーケットプレイスとしてStakes Socialが提供されました。 支援者はまず暗号通貨であるDEVトークンを購入します(Uniswapという分散型取引所経由でトークンを購入)。DEVトークンをStakes Socialに掲載されている開発者トークンにStakingすることで報酬がもらえる権利が発生します。トークン化された開発プロジェクトの数とそれに対するStakingの需要と供給に応じて利率が決まり、その利率がStaking報酬となります。2021年5月25日時点ではクリエイター側も支援者側も[年利は約30%](https://stakes.social/stats)あり、高いリターンが期待できます。StakingしたOSSのプロジェクトが多くダウンロードされ利用数が増えて人気になれば、さらに資産価値が向上し、さらなる報酬も期待できます。また一度StakingしたDEVトークンはStakingを取り消したり、DEVトークンを他の暗号通貨に変換して売却することもできるため、資産としての流動的が高いものになっています。 DEVトークンのStakingによる報酬の仕組み 出典: [Stakes Social](https://www.slideshare.net/KeinTakemo/20stakessocial) DEVトークンのStakingによる報酬の仕組み 出典: [Stakes Social](https://www.slideshare.net/KeinTakemo/20stakessocial) ここでようやくマイクロペイメントの話になりますが、暗号通貨全般の特徴として保持できる最小単位がかなり小さいことがマイクロペイメント実現につながります。例えばBitcoinの最小単位は0.00000001BTC(約0.04円 : 2021年5月23日時点レート)で、[1 satoshi](https://bitflyer.com/ja-jp/glossary/satoshi)と呼ばれます。この暗号通貨の仕組みを使うことで、100円どころか1円以下の額を取引することが可能であり、非常に少額からクリエイターエコノミーに参加することが可能です(取引所によって利用できる最小単位は切り上げられることもあります)。 Stakes Socialでは[最小単位として、0.000000000000000001DEV](https://stakes.social/how-it-works)(0.00000000000000000768円: 2021年5月23日レート)からStakingが可能になっているため、マイクロペイメントにより支援者がさまざまなオープンソースプロジェクトへの支援を組み合わせたポートフォリオを作り資産運用することも可能になっています。またクリエイター側も数円~数百円の支援が塵も積もれば山となるモデルかつ自身にも報酬も返ってくるため、流動性と持続性をうまくバランスしてプロジェクトを続けることも可能になります。 # おわりに 今回はニュース記事、Podcast、オープンソースプロジェクトと三者三様のマイクロペイメントの形を取り上げました。世の中に大量のクリエイターが現れ、コンテンツが溢れる中で、マネタイズをすることは非常に難しくなっています。毎月一定額を支援してくれるロイヤルユーザを増やすことが大きな戦略として正しい一方で、無関心でもロイヤルでもない中間層のファンともうまく関係を築いていくことが継続的にビジネスを続けていくための一つの戦略だと考えられ、マイクロペイメントはその解決策になりえます。 特にStakes Socialのようにトークン型の場合は、クリエイターもファンも同時に報酬を得ることができるため、経済合理性も追求することでコミュニティの強化にもつながります。そして、多くのファンが少しづつ多くのクリエイターを支援するN:Nの関係ができることでクリエイターの収益源の多様化も実現されます。このように大きく可能性を感じさせるマイクロペイメントを今後もトラックしていきたいと思います。 --- ## インタラクティブメディアの成功 URL: https://ximera.com/posts/67654b9d7c 公開日: 2021-05-20 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #12 2021年5月20日 # はじめに メディアビジネスの次のトレンドを巻き起こす海外スタートアップや動きを一挙紹介する連載シリーズ「[Ximera Media Next Trends](/category/media-next-trends)」第12回となる今回はインタラクティブメディアを取り上げます。 インタラクティブメディアとは、コンテンツ配信者からユーザに対して一方通行にコンテンツを届けるだけではなく、ユーザのインタラクションによってコンテンツ自体やコンテンツ提供者の提供するものがダイナミックに変わるメディアを指しています。 今回はインタラクティブメディアの新たな事例として、Snapchat上でインタラクティブにストーリー展開が進んでいくSolve、動画ストリーミングとして新たな形を生み出したRival Peak、XRライブコンサートを提供するWaveXRを紹介します。 # インタラクティブ × サスペンス・ホラー:Solve Snapchat発祥でインタラクティブなサスペンスホラーをストーリー形式(時系列順に画像や動画を短時間で切り替えていく表示方式)で提供するのが、LAのスタートアップであるSolveです。 Solveはストーリー形式の縦型画面を巧みに使い、あたかもユーザのiPhoneに電話がかかってきたり、Snapchatでやりとりをしているかのような演出を取り入れています。ユーザ自身が実際に画面をタップしインタラクションすることもあり、普段のスマホ利用体験に沿う形でユーザを物語に参加させ、リアリティを演出しています。ただし実際は画面の右端をタップすれば次に進むストーリー形式の動画なので、いわば疑似インタラクティブというところでしょうか。 Solveが製作するストーリーのベースは実際に起こった事件です。ホラーとしてのリアリティが高く、恐怖に真実味があります。Solveのインタラクティブ性はストーリー形式のフォーマットを巧く使い、その真実味のある物語にユーザをより深く誘うよう機能している点で優れています。
ユーザはこのインラクティブ性で臨場感を楽しみながら、殺人事件の犯人を推理していきます。犯人へのヒントをさがすのも目や耳を凝らして画像や動画を見ることではじめて発見できるほどの歯応えがあり、推理モノとしても楽しめます。ストーリーの最後は、種明かしとして実際に起こった事件が紹介され、さらに恐怖が増幅される作りです。 Solveは[Podcastも配信している](https://solvehq.com/podcast/)ほか、Instagram、Snapchatとあわせて[約3000万人](https://solvehq.com/solve-hq/)のファンがいます。コンテンツは現状すべて無料で提供しているためビジネスモデルは不明ですが、今後は獲得しているトラフィックを利用したマネタイズを指向していくと思われます。 # インタラクティブ × リアリティ・ショー:Rival Peak Rival PeakはFacebook、Pipeworks、DJ2 Entertainment、Genvid Technologyが共同で製作したインタラクティブ型のリアリティ・ショー動画です。 12週間、自律的に動く12人のAIキャラクターのようすを生配信。彼らの行動は、配信を眺めているユーザが投票で決め、不人気キャラクターは毎週1人ずつショーから脱落。Rival Peakはゲームとテレビ番組のハイブリッドコンテンツ。製作者側もシナリオを把握しきれないまま物語が進んでいきます。
ユーザはただ動画を見るだけではなく、どのキャラクターの行動を見るか、次にどのような行動をさせるか、キャラクターのどのスキルを上げていくかを選択していきます。それらの選択やアクションと連動したポイントシステムがあり、特定ミッションのクリアや参加時間、投票回数、会話回数などもリーダーボードで可視化されていきます。これらのポイント獲得、ミッション達成、リーダーボードへの掲載などはゲームで定番となっているエンゲージメント手法であり、ユーザがよりインタラクションに興じるよう仕向ける仕掛けが導入されていたのです。 Rival Peakは2020年12月1日にFacebookがFacebook Watchで配信を開始、2021年3月3日に終了しました。参加型の体験が大きく話題を呼び、総視聴時間は[1億時間以上](https://www.genvidtech.com/ja/rival-peak-%e3%83%a9%e3%83%83%e3%83%97%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9/)を記録、[2億以上のユーザーのエンゲージメント](https://www.genvidtech.com/ja/rival-peak-%e3%83%a9%e3%83%83%e3%83%97%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9/)(Facebook Ravial Peak上でのリアクション、コメント、シェア、クリックの数)を記録しました。[世界70カ国以上に配信し、アクセス上位5カ国はアメリカ・インド・フィリピン・ブラジル・メキシコ、Android端末でのアクセスが84%](https://www.genvidtech.com/ja/rival-peak-%e3%83%a9%e3%83%83%e3%83%97%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9/)を占めました。ひと目でわかる[インフォグラフィック](https://miro.medium.com/max/700/1*uHKVinsMuD5Pvtu-4XS4hQ.png)も掲載されています。 Genvid TechnologyのCEOは今回の成功を受け、著名IPを使ったMassive Interactive Live Event(MILE)ジャンルの拡大を進めていくと[語っています](https://jnavok.medium.com/rival-peak-the-first-mile-is-the-hardest-255447221652)。マネタイズは動画内でのアイテムやアクション課金など広告以外にもできることの幅が広く、今後は経済的にどれほど成功できるかにも注目が集まりそうです。 # インタラクティブ × XRライブコンサート:WaveXR 最後に紹介するのが、XRを使った音楽ライブコンサートにおけるインタラクティブ性です。LAのスタートアップであるWaveXRは音楽ライブコンサート会場とアーティスト本人をXR空間上にCGとして作り出すことで、新たな音楽パフォーマンスの形を提供しています。 [アーティストがモーションキャプチャスーツを着ることで、バーチャル空間のアバターに動きが同期される](https://youtu.be/btbTHdViVjM) アーティストがモーションキャプチャスーツを着ることで、バーチャル空間のアバターに動きが同期される ユーザはYouTubeやTwitchなどでバーチャルアーティストのパフォーマンスを視聴することができ、そこでは、ユーザのコメントがステージに反映される/投票によって次にアーティストが演奏する曲が決まる/投票によってステージが変わるといったように、ユーザのアクションがアーティストの選曲や演奏の雰囲気を変えるインラクティブ性を持っています。 ステージの背景をどうするかチャットによるユーザ投票で決められる出典: [WaveXR](https://www.youtube.com/watch?v=btbTHdViVjM) ステージの背景をどうするかチャットによるユーザ投票で決められる出典: [WaveXR](https://www.youtube.com/watch?v=btbTHdViVjM) また特別に招待されたZoomでカメラをオンにしてダンスしているユーザのようすが、ステージに次々と映されることで、バーチャル空間においてもライブの一体感をうまく演出しています。 Zoomで接続されたユーザがバーチャル会場にもハイライトされリアルとバーチャルが融合 出典: [WaveXR](https://www.youtube.com/watch?v=btbTHdViVjM) Zoomで接続されたユーザがバーチャル会場にもハイライトされリアルとバーチャルが融合 出典: [WaveXR](https://www.youtube.com/watch?v=btbTHdViVjM) 従来の音楽ライブのストリーミング配信では、アーティスト側にユーザが盛り上がっていることを伝える手段はコメント程度でした。アーティスト側も演奏で手一杯のため細かくコメントをチェックすることもできずユーザの反応が見れないままパフォーマンスせざるを得ないため、リアルなライブ会場で感じるような一体感を従来のストリーミング配信で感じるのは難しいのです。 しかし、WaveXRが提供する技術や演出によって、ユーザの盛り上がりは可視化され、アーティストは演奏のモチベーションが上がります。ユーザ側からもインタラクションが発生することでリモートでの音楽ライブのあり方が大きく変わろうとしています。 ビジネスモデルとしては従来のチケットやグッズ販売のほか、「投げ銭」もできるため貢献金額が高いユーザの名前がステージにハイライトされたり、ステージ上のアイテム(大量の泡を出現させる、レーザーの光で照らすなど)をユーザからアーティストにプレゼントし、それをアーティストが使うことができるなど、これまでのライブ・コンサートにはなかった新たな収益を作ることを可能にしています。 WaveXRはグラミー賞を3回受賞した[The WeekendのTikTokでのバーチャルパフォーマンス](https://www.youtube.com/watch?v=uViueiV8fME)、ムーンバートンと呼ばれる音楽ジャンルを作り出した[Dillon Francis](https://www.youtube.com/watch?v=w852SLxEhp0)、デジタルポップを展開するDJの[Alison Wonderland](https://www.youtube.com/watch?v=btbTHdViVjM)などビッグネームのバーチャルコンサートをプロデュースしています。The WeekendのTikTokパファーマンスでは200万以上の視聴と[35万ドル(約3500万円)の寄付](https://variety.com/2020/digital/news/the-weeknd-tiktok-virtual-concert-2-million-viewers-1234733104/)を生み出すなど、インタラクティブ型のコンサートが実績を出しはじめています。 # おわりに 今回はインタラクティブメディアの具体例がフィクションフィルム、ゲーム、音楽コンサートと、エンターテイメント分野から出現している事例を紹介しました。現状は動画をベースにしたものが目に付く状況ですが、テキスト・音声・XRといった分野でもコンテンツやメディアのインタラクティブ化がさらに進んでいくことが期待されます。 これからの時代は、インタラクティブを軸にメディアやコンテンツ設計ができる人材が新たなメディアやコンテンツを生み出していくことで、人々の興味関心を満たしていく可能性があります。そしてそのような人々がこれまでに連載で扱った「クリエイター」と呼ばれる存在になると思われます。新たなビジネスの潮流が起こることを期待し、これからもインタラクティブメディアのトレンド変化を追い続けたいと思います。 --- ## クリエイターやメディアのマネタイズを支援する収益化プラットフォーム URL: https://ximera.com/posts/a6dc19528f 公開日: 2021-05-11 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #11 2021年5月11日 # はじめに メディアのトレンドとそれを巻き起こすスタートアップを追いかける連載[Ximera Media Next Trends](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)の第11回となる今回は、クリエイターやコンテンツが収益を得るための仕組みとそれを提供するプラットフォームを紹介します。 クリエイターエコノミーが広がっていくなかでクリエイターの価値をビジネスに変えていくためのプラットフォームは多数出現しています。いまやクリエイターが活動を続けていくための鍵は、いかに自分に合ったプラットフォームを選択し自身のビジネスを最適化しつづける運用ができるかにかかっているといえるでしょう。 今回はそんなクリエイターのビジネスを支える収益化プラットフォームを型ごとに大きくマーケットプレイス型、メンバーシップ型、ペイウォール型の3パターンに分けて紹介します。なお本稿では広告のような間接的に得るな収益ではなく、エンドユーザからダイレクトにクリエイターへ支払いが行われるプラットフォームを主に取り上げていきます。 # マーケットプレイス型 多数のコンテンツが集まる場所で自身のコンテンツを収益化できるモデルがマーケットプレイス型です。マーケットプレイス型はクリエイターが多くのユーザが集まる場所で自分のコンテンツを広くアピールでき、ユーザは広範なコンテンツから自分好みのものを選択・購入することができる場所と言えるでしょう。YouTubeやTikTokなどのソーシャルメディア、[2021年5月から有料での配信が可能になるApple Podcast](https://www.apple.com/newsroom/2021/04/apple-leads-the-next-chapter-of-podcasting-with-apple-podcasts-subscriptions/)や追随する[Spotify](https://newsroom.spotify.com/2021-04-27/spotify-ushers-in-new-era-of-podcast-monetization-with-new-tools-for-all-creators/)もこちらに分類できるかと思います。 個人クリエイター向けのマーケットプレイスの例として、デジタルコンテンツの販売プラットフォームである[Gumroad](https://gumroad.com/)が挙げられます。Gumroadでは3Dアバター/オブジェクト、イラスト、電子書籍、映像作品、オンライン教育コースなど多岐に渡ったコンテンツが扱われています。 Gumroadには様々なジャンルのデジタルコンテンツが集まる 画像出典: [Gumroad](https://help.gumroad.com/article/124-your-gumroad-profile-page) Gumroadには様々なジャンルのデジタルコンテンツが集まる 画像出典: [Gumroad](https://help.gumroad.com/article/124-your-gumroad-profile-page) Gumroadは2011年に創立され、2021年4月現在までの通算で[8万6000人以上のクリエイターが4億3700万ドル(約437億円)](https://gumroad.com/)のトランザクション(Gumroad上での総取引額)を生み出しました。とくに2020年はクリエイターエコノミーの盛り上がりに加えコロナ禍の影響もあり、前年に比べ2倍となる1億4380万ドル(約144億円)の売上を生み出し、Gumroad自身は[920万ドル(約9億2000万円)の売上、108万ドル(約1億円](https://techcrunch.com/2021/03/15/gumroad-wants-to-make-equity-crowdfunding-mainstream/))の利益を達成しています。 ビジネスモデルとしては、[月額無料プラン(売上毎の手数料5%+決済手数料 (3.5%+30センタ))、月額有料プラン(決済手数料のみ(3.5%+30セント))の2種類](https://gumroad.com/features/pricing)があります。有料プランは独自ドメイン、Gumroadロゴの排除、独自CSSカスタマイズ、HD品質の動画配信などが可能になります。料金は1年におけるユーザ数に応じて[1,000人未満は10ドル/月、1,000-1,999人の場合は25ドル/月](https://gumroad.com/settings/tiers)といったように自動で調整されていきます。 マーケットプレイス型は、買い切りコンテンツが多いことや多様なコンテンツが集まりユーザが目移りしやすことから、長期的なエンゲージメントという意味でユーザとの関係性はやや弱めです。そのため、記事、書籍やCGモデルなどコンテンツそのものを販売することで初期のブランド認知を獲得するフェーズに向いたプラットフォームと言えそうです。 # メンバーシップ型 認知獲得後の次のフェーズとして、よりユーザとのエンゲージメントを深めるためにメンバーシップ型のプラットフォームの活用が考えられます。本稿での「メンバーシップ」はクリエイターの提供するブランド・コンテンツ・コミュニティに対してファンが金銭的・活動的支援を継続的に行ってくれるような形を指しています。 月額課金型のメンバーシップの作成・運営を支援する代表格としては、[Patreon](https://www.patreon.com/)が挙げられます。Patreonはクラウドファンディングという捉え方をされることがありますが、月額課金を中心とした継続的なクリエイター支援のプラットフォームです。クリエイターがファンからもらうメンバーシップ費の5〜12%を手数料として獲得するのおがPatreonのビジネスモデル。 Patreonは全世界で[20万人以上のクリエイターに利用されており、2020年には1億ドル(約1000億円)](https://backlinko.com/patreon-users)の収益を生み出しています。メディア関連でも独立系の[作家](https://www.patreon.com/nkjemisin)、[ジャーナリスト](https://www.patreon.com/andrewpstreet)、[サイエンスライター](https://www.patreon.com/stantlitore)などが、有料会員限定記事やコミュニティ記事を配信し、ファンと深いエンゲージメントを作ることに成功しています。 クリエイターによるランディングページの例 参考: [Laurie PennyのPatreonページ](https://www.patreon.com/lauriepenny) クリエイターによるランディングページの例 参考: [Laurie PennyのPatreonページ](https://www.patreon.com/lauriepenny) Patreonでは月額課金機能とともに、有料会員専用の記事コンテンツ、コミュニティ、メーリングリストなど、基本的なメンバーシップ関連機能が提供されています。しかしPatreonによるクリエイター支援はコンテンツ配信や課金に留まらず、クリエイターが労せず[オリジナルグッズを製作し販売できる機能](https://www.patreon.com/merch)もあります。これはクリエイターがPatreonが用意するカタログから好きなグッズを選択、デザインをカスタマイズすると、そのグッズ製造と配送はすべてPatreonが行ってくれるというもの。Patreonは、どのTierのファンに対してそのグッズを提供すべきかの提案も行ってくれるため、クリエイターはファンへのリワードの価値を最大化することができます。 この物販機能は月間売上の8%を手数料として支払うPro Planでは3%の手数料追加で利用可能となり、月間売上の12%を手数料として支払うPremium Planでは追加手数料なしで利用可能です。この機能によってクリエイターはグッズ関連のビジネスが可能になるばかりか、グッズ製作や配送に係る面倒な手続きを避けクリエイティブな作業のみに集中することができます。 Patreonではクリエイターはオリジナルグッズを選んでユーザへ提供することができる 参考: [Patreon](https://www.patreon.com/merch) Patreonではクリエイターはオリジナルグッズを選んでユーザへ提供することができる 参考: [Patreon](https://www.patreon.com/merch) メンバーシップ型の支援プラットフォームは、基本的にユーザが既にお目当てのコンテンツやクリエイターを発見した状態でサイトに訪れることが想定されいるため、クリエイターは自らでマーケティングを行い、ソーシャルメディアや前項で紹介したマーケットプレイス型プラットフォームでユーザを獲得する必要があります。一方で、一度エンゲージしたユーザは提供されるコンテンツに対してのみではなく、コミュニティやグッズ、果てはクリエイターそのものへ価値を感じるようになり、より緊密な関係性を築くことが可能です。 # ペイウォール型 最後に紹介するのは、既にメディアやコンテンツ資産を持つクリエイターによる最適化されたコンテンツ課金を支援するペイウォール型です。 弊社キメラはこのタイプに属しており、メディア企業を中心にペイウォール型の課金モデルの導入・運用によってマネタイズを可能にするサブスクリプション管理プラットフォーム「[Ximera Ae](https://ximera.com/ximera-ae)」を提供しています。Ximera Aeは2021年3月に週刊文春 電子版で採用されローンチされました。 既存のCMSへの影響を与えず、最短1週間で既存Webサイトにコンテンツ課金ポイントを作り、運用・改善することが可能になっています。これによって大きな開発工数をかけず、既存メディア資産を活用したオーディエンスからのマネタイズを図ることができます。 Ximera Aeでのポップアップ型のペイウォール表示例 Ximera Aeでのポップアップ型のペイウォール表示例 海外では、スタートアップの[Pico](https://trypico.com/)や[Memberful](https://memberful.com/)が既存ウェブサイトにインテグレーションする形のペイウォールを提供しています。ニュースレター、複数Tierのサブスクリプション、メーター制ペイウォール、グループサブスクリプション、ワンタイム/継続課金などのオプションに対応しています。 これらペイウォール形の支援プラットフォームはある程度のブランド認知やファンを獲得しているWebサイトのクリエイターに最適です。とくにユーザエンゲージメントの強化を行う必要があるクリエイターやメディアにとっては、サブスクを中心に今後のビジネスモデルの変化を早期にかつ低コストで実現するには、こうした支援プラットフォームをフル活用していくことが必要です。 # おわりに 今回はクリエイターがソーシャルメディアやマーケットプレイス型で初期エンゲージメントを獲得、メンバーシップ型でファンとのエンゲージメントを強化、さらなるブランドエンゲージメントの強化のため自社メディアにおいて長期のファン化していく流れをご紹介しました。 クリエイターエコノミーの時代が到来し、あらゆるタイプのクリエイターやメディアをサポートするプラットフォームが多く生まれ、その相互作用でマーケットが大きくなっていると感じます。この動きによって、クリエイターの提供するコンテンツが正当に評価され、価値に対して正当に対価を得られることで、持続的なビジネスにつながるはずです。デジタルコンテンツの世界がより良くなることを願い本記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。 --- ## はじめてのデジタルサブスクリプション実装(2021/6/29) URL: https://ximera.com/posts/33c5f48311 公開日: 2021-05-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、サブスクリプションの商品設計や実装の基礎を知りたい方を対象としたイベントを開催しました。メディアの事業設計やサブスクリプションの知識をつけたい・課題や不安がある・これからしっかり取り組みたいと考えているみなさま、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。 最新のイベント情報はニュースレターでお知らせします # アーカイブ動画
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-249908853](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-249908853) # イベント概要  デジタルメディアのサブスクリプション(有料購読)は、パブリッシャーの収益源として期待と注目を集めています。しかし国内にはまだまだ成功事例が少なく、どのように価格やプランを設定し、事業として収益性を担保していけばよいのか悩んでいる担当者も少なくありません。  キメラは2019年1月以来、50媒体を超える国内パブリッシャーの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などをご支援しており、2021年3月にはサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」を提供開始しました。当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、パブリッシャーのサブスクリプション実装のためにおさえておきたいポイントを解説します。 # こんな方におすすめのイベントです - 事業部に配属されたばかりで、基本的な知識を手に入れたい - サブスクリプションの値付けや商品設計に悩んでいる - 社内でデジタル事業やサブスクリプションの認識合わせをしたい - 社内のデジタル事業に興味がある、関われるようになりたい - サブスクリプション事業を実行に移すための基本的なノウハウを知りたい --- ## クリエイターコミュニティを支えるバックエンド:CommunityTech URL: https://ximera.com/posts/15628abefd 公開日: 2021-04-16 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #10 2021年4月16日 ## はじめに Ximera MEDIA NEXT TRENDSマガジンの第10回となる今回は、前回の「[ノーコード/ローコードツールで支えられるパーソナルブランディング](https://app.notion.com/p/c135086b35054481945bef7b18bdd005?pvs=21)」に続いて、「クリエイターコミュニティを支えるバックエンド」について現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきたいと思います。 コミュニティについては、[本連載の第5回](https://app.notion.com/p/4bfaf4b605ff49f191f9ac9e2ca09001?pvs=21)にて大きくアンバサダー型、プロフェッショナル型、ファンクラブ型の3つのコミュニティドリブンで成長していくメディアのパターンをご紹介しました。本稿ではいずれのパターンでも必要とされる、クリエイターとファンの間、もしくはファン同士を結びつけユーザエンゲージメントを高めていくためのバックエンド=CommunityTechをとりあげたいと思います。 Twitter、Facebook、Youtube、Instagram、Tiktokなどのソーシャルネットワークももちろんコミュニティと呼ばれるものですが、ソーシャルネットワークはユーザ獲得がメインの目的とされる場です。しかし本稿でフォーカスしているのは、より1-to-1に近いコミュニケーションがとれるコミュニティです。特定の人物やトピックに対して熱狂的なオーディエンスが定常的に集まりエンゲージする場が重要なコミュニティではあるものの、それをクリエイター自らが作成・運用しようとすると多大な負荷を伴います。そこで登場するのが本稿で紹介するコミュニティ作成/運営支援のサービスCommunityTechです。それらのサービスを使いこなすことで、たとえ数人規模のチームでも数千人以上のユーザとのコミュニティを運用することが可能になります。 ## カジュアル型コミュニティ: Discord 「コミュニティ」といえばよく名前が上がるのが特にゲームコミュニティではおなじみとなっている[Discord](https://discord.com/)です。DIscordは元々オンラインゲーム中のユーザ同士の音声/テキストチャットを行うためのハブとして2015年に登場しました。またその発展の中で、誰もがコミュニティをホストし、好きなテーマについて語り盛り上がれる場であったり、宿題など何かの作業を友達と一緒にやる場として機能してきました。 コミュニティを運営したい人はServerと呼ばれるワークスペースを誰でも無料で作ることができます(Public / Privateを選択可能)。Serverごとにジャンルが設定され、さらにその配下に立てたトピックベースのチャネルのなかで、コミュニティに参加する人々が会話をします。Discordはゲーム中のチャット用途にも使われるため、テキストのみならずチャネル名をクリックするだけで常時音声通話がつながるチャットルームもデフォルトで用意されています。 参考: Discord 参考: Discord Discordはコロナ禍において、大きくユーザを伸ばしました。2020年に[登録ユーザ3億人](https://www.statista.com/statistics/746215/discord-user-number/)、[1億4000万のMAU、130億円の売上をあげていると推測されており、昨年比で188%と大きく成長](https://www.wsj.com/articles/a-social-network-without-ads-discord-defies-convention-11615199401)をしてきています。これは、ゲームに関わらず、カラオケを語るコミュニティ、株式市場を語るコミュニティ、学校の宿題を一緒にやるコミュニティなど、あらゆるトピックのコミュニティが立ち上がったことに起因しています。YouTuber、PodCaster、CGアーティスト、デザイナー、ミュージシャンなど多くのインフルエンサーがDiscordをファンとのコミュニティの場として利用しています。 ゲーム以外にも様々なコミュニティが存在参考: Discord ゲーム以外にも様々なコミュニティが存在参考: Discord これはDiscordがPrivateでOpt-in型(ユーザが自分で参加したいServerを選ぶ)であることから、公開型のSNSよりも緊密なコミュニケーションがユーザと取れることにインフルエンサーが気づいたことに他なりません。またSNSと違いFeedのアルゴリズムに影響されることがない(時系列順にしか表示されない)ため、ファンへ伝えたいメッセージやコンテンツがうまく行き渡るという特性もあります。さらにはDiscordでは必ずしもインフルエンサーがすべてマネージする必要はなく、モデレータ権限(不快なコンテンツや人物をbanするなどコミュニティをコントロールする機能)を支援メンバーに与えコミュニティ運営を任せることもできます。これにより半自律的にコミュニティが運営され、まさに「ファンと作り上げるコミュニティ」が実現されます。 Discordは[Nitro](https://discord.com/nitro)と呼ばれるプレミアムサブスクリプションによるエンドユーザユーザへの課金を行っているものの、現状ではクリエイターがコミュニティから直接的にマネタイズする手段は用意されていません。Discordでマネタイズできる可能性としては、(1) コミュニティメンバーからの寄付を募る、(2) 有料メンバー限定のPrivate Serverを提供する、(3) 企業からスポンサーシップを受ける、(4) Botを作成し有料メンバーだけに提供するなどがあげられます。しかしこれは公式に認められているわけではないため、現状はDiscord内でマネタイズというよりは、グッズやコンテンツ販売などのアナウンスを中心としたマーケティング手段として使うことが一般的となっています。 ## All-in-One型コミュニティ: Circle 次に紹介するNew Yorkのスタートアップである[Circle](https://circle.so/)は、学習コース、カンファレンス、プロダクト、ブランド、Newsletter、Podcastといったカジュアルすぎず固すぎない幅広いコンテンツのコミュニティを想定して作られたコミュニティ運営支援のサービスです。Discordはかなりカジュアルで誰もがどこのコミュニティにも所属できるソーシャルネットワークの要素がありましたが、Circleはよりプライベートなコミュニティの運営支援を志向しています。 Circleの特徴としては、All-in-Oneであることです。ディスカッション用のボード、プライベート機能、コミュニティ内におけるインタレストグループ、トピック毎のユーザエンゲージメント分析、シングルサインオンによる3rd Paryツールとの連携など、コミュニティ運営に必要な機能がシンプルながらもしっかり詰め込まれています。またMemberstackやMemberSpaceといったサブスク課金用のプロダクトとの連携にはかなり力を入れており、シングルサインオンで利用できる他、無料/有料メンバー用の機能のだし分けや無料メンバー向けのPaywallの設置ができるようになっています。 2019年創業ながら既にいくつもの顧客をつけ、インフルエンサーといった個人だけでなくビジネスユーザにも利用されています。例えば、誰でもオンラインの教育コースの作成が可能な[teach:able](https://teachable.com/)は、クリエイター向けのコミュニティ機能をFacebook Groupで提供していましたが、これをCircleへ移行しました。teach:ableのクリエイターコミュニティでは、教育コースの運営に関するナレッジシェアはもちろん、自分の事業を支援してくれる人との出会い、互いにモチベートしていくためのイベントなどにアクセスすることができ、クリエイター間のコミュニティをうまく作り出しています。 teach:ableのクリエイター向けコミュニティ参考: [teach:able](https://support.teachable.com/hc/en-us/articles/360044374931-Teachable-Community) teach:ableのクリエイター向けコミュニティ参考: [teach:able](https://support.teachable.com/hc/en-us/articles/360044374931-Teachable-Community) Circleは[$39/月(約3,900円)](https://circle.so/pricing)~で、1,000人のメンバー、10個のスペース、カスタムドメイン、Zapier/Memberstack/MemberSpaceといったノーコードツールとの連携が可能になります。さらに上位のプランでは、マネージできるメンバーやスペースが増える他、APIによるアクセス、White Label化、カスタムCSS/Javascriptの利用ができるようになります。 ## パーソナル型コミュニティ: Community 最後にご紹介するのがよりコミュニティメンバーとの距離を縮めるSMSを使ったOne-on-Oneコミュニティの運営を支援する[Community](https://www.community.com/)です。CommunityがクリエイターにSMS専用の携帯電話番号を付与しコミュニティ運営に必要な機能(メッセージ管理、セグメンテーション、アナリティクスなど)を提供します。そうすることで、クリエイターはSMSを起点にコミュニティを作成・運営することができます。 具体的な事例として、2019年に俳優/ミュージシャン/投資家であるAshton KutcherがTwitterでCommunityで作成したSMS専用の携帯電話番号を公開し、ユーザにSMSを送るよう投げかけたTweetが話題になりました。 [https://twitter.com/aplusk/status/1153809650724196352](https://twitter.com/aplusk/status/1153809650724196352) 公開された番号へSMSを送るとAshton Kutcherからの自動メッセージとCommunityでのアカウント登録リンクが送られます。リンクで登録をすませると、Ashton Kutcherを自身のスマホの連絡帳に登録するためのコンテンツが送られ、ワンクリックで連絡帳へ登録ができます。ユーザが自分で連絡帳に番号登録する手間を省き、Ashton KutcherとSMSをやりとりできている雰囲気を出すことでユーザのエンゲージメントを失わせない工夫がされています。 SMS送信元の連絡先の登録がワンクリックで可能参考: [SuperPhone](https://www.superphone.io/)(Communityの競合サービス) SMS送信元の連絡先の登録がワンクリックで可能参考: [SuperPhone](https://www.superphone.io/)(Communityの競合サービス) また返信が必ず返ってくるわけではありませんが、Ashton Kutcherが送ってきた質問に対して答えを返したりなど、ダイレクトなコミュニケーションを取ることも可能になっています。当然当初はAshton Kutcherのアカウントの乗っ取りやスパムではないかと怪しまれたのですが、徐々に[利用するインフルエンサーやユーザが増え](https://www.community.com/featured-leaders-dir)信頼性が上がってきました。エンドユーザは、SMSを介して自身が信奉するアーティストやブランドと触れあうことで、SNSやemailなどよりも親密性をもった関係性を感じるようになっています。 コミュニティ運営者 (Leader)としてCommunityを使うにも、SMSを使って申請をします。[Communityの申請ページ](https://www.community.com/get-a-number)で申請後、72時間以内にCommunityから返信があり、オーディエンスのサイズに応じて3つの利用料金プランから選択することで運営をはじめることができます。申し込みが終わると電話番号が付与され、これをソーシャルネットワークなどで広め、オーディエンス(Member)を集います。Memberに対しては、性別、年齢、興味などのセグメントによる出し分けが可能になっています。 Communityは、D2Cブランド、ミュージシャン、ファッションデザイナーなど様々なクリエイターに利用されており、例えばD2Cでワイン缶を販売する[Bev](https://drinkbev.com/)は商品であるワイン缶にCommunityで作成した電話番号を印字し、Bevを気に入ったユーザがすぐにCommunityへ入れる仕組みを用意しています。 商品にコミュニティ参加用の携帯電話を印字 商品にコミュニティ参加用の携帯電話を印字 Community自身にはマネタイズをする仕組みはついていません。Community自体へのアクセスをPaywall化する、コミュニティ内でPatreonを介した寄付を募るなど、マネタイズの方法は運営者自身が検討する必要がありますが、Drop(時間や個数限定のアイテム)をMemberだけに周知し、特別感を出すなどCommunityそのものからマネタイズせずともマーケティング手段として使うことも可能です。 # おわりに 前回ご紹介した[Passion Economy](https://a16z.com/2019/10/08/passion-economy/)が象徴するように、現代は各個人・各企業が提供するサービスやモノだけではなく、コトに対して熱狂的なファンをどれだけ長く惹きつけていくことできるかが重要となっています。エンゲージメントやリテンションと呼ばれる言葉は、提供するサービスやモノの良さももちろんですが、今回ご紹介したようなコミュニティ運営も含めユーザ体験全体を最適化していくことが長く愛されるビジネスを実現するための一つのやり方かと思います。本記事が少しでもみなさまの参考になれば幸いです。 --- ## ノーコード/ローコードツールによって変革されるパーソナルブランディング URL: https://ximera.com/posts/ead4d2e74c 公開日: 2021-04-01 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #9 2021年4月1日 # はじめに [Ximera Media Next Trends](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)マガジンの第9回となる今回は、各クリエイター/インフルエンサーが持つブランド(パーソナルブランド)を支えるノーコード/ローコードツールについて取り上げたいと思います。 ノーコード/ローコードツールの登場によってこれまで以上に個人ベースでビジネスを行うことが容易になり、会社に従属する個というだけではなく、一人の個として活躍できる環境が広がっています。これは誰もがクリエイターになり、誰もが自由にビジネスを作っていける時代になってきていることを表しています。 この流れに関連するトレンド予測として、2019年にシリコンバレーのトップベンチャーキャピタルであるAndreessen Horowitzが、Uberに代表されるギグ・エコノミーに次に起こるトレンドは[Passion Economy](https://a16z.com/2019/10/08/passion-economy/)であると表明しました。 ![](/images/posts/ead4d2e74c/image1.png) 出典: [Andreessen Horowitz](https://a16z.com/2019/10/08/passion-economy/) Passion Economyにおいては、あらゆる分野で各クリエイターがプラットフォームを通じてオーディンスを獲得し、継続的なビジネス機会を得ることができる姿が想像されていました。それから約2年が経過した2021年現在では、TikTokやYoutubeなどを中心に個人クリエイターが大量に現れ、トップクリエイターはブランド化・メディア化している様相が現れており、まさにPassion Economyで謳われた世界が到来しています。 ニュースメディアにおいても、例えばニュースレターのプラットフォームである[Substackでは個人で活躍するライター/編集者が有料のニュースレターによって収入を得るモデル](https://www.npr.org/2020/12/02/941020719/tired-of-the-social-media-rat-race-journalists-move-to-writing-substack-newslett)が徐々に確立してきました。こうした状況の中で各個人が自己を表現しそれを世の中に知ってもらうために、品質の高いメディアを構築・運用していくのは必然の流れとなっています。 今回はその裏側を支えているツールのひとつであるWebサイトビルダーによるパーソナルブランディングのトレンドを見てきたいと思います。 # デザイナー向き: Webflow [Webflow](https://webflow.com/)はデザイン知識がなくともテンプレートから選ぶことで美麗なグラフィックのサイトを作ることができるWebサイトビルダーです。CMS機能も備え、コマース機能の追加も行うことができます。 Webサイトビルダー+CMS+コマース機能という機能だけ見ると、それらが揃ったツールは既に世の中に多く存在しているように思えます。例えばWordPress、Wix、Square Spaceなどが代表的なツールであり、上述したような機能を備えています。しかしながら、これまでのツールは、テンプレートベースで容易にWebサイトを構築/運用できるがカスタマイズがしにくい、もしくはカスタマイズは細かくできるがコード開発による構築/運用の負荷が大きいという二律背反の問題があり、ユーザはどちらかを選ばざるを得ませんでした。 それに対してWebflowは、テンプレートを豊富に揃え容易な構築/運用ができる上、カスタマイズもノーコード/ローコードで行うことができる環境を用意し、これまでのツールが抱えていたペインの解消に成功しています。 [出典: [webflow](https://www.youtube.com/watch?v=MrAnu4zdjjY&t=1s) ノーコードでかなりのデザインカスタマイズが可能](https://youtu.be/MrAnu4zdjjY) 出典: [webflow](https://www.youtube.com/watch?v=MrAnu4zdjjY&t=1s) ノーコードでかなりのデザインカスタマイズが可能 Passion Economyの時代では、デジタルメディアでいかに個人が個性を表現できるかが重要になってきています。その背景を受けて、Webflowは[190カ国で200万人以上のユーザ](https://webflow.com/blog/webflow-series-b-funding)がおり、2021年1月には1億4000万ドル(約140億円)の資金調達も行い勢いを増しています。これだけWebflowが受け入れられたのもクリエイターの表現力をきちんと射影できる受け皿を持っているためと考えられます。 カスタマイズ性はCMSやコマース機能だけに留まらず独自ドメインの追加や[多数の3rd party製ツールとの連携](https://university.webflow.com/integrations)、さらにSEO対策も行うことができます。それらも多くがノーコードで実装することが可能で、例えばSEO対策については、ogタグによるプレビュー機能、sitemap.xmlの自動生成、alt属性の編集などがすべてWeb Editor上で実施することが可能です。 簡単なランディングページから[企業のホームページ](https://news.nocodejapan.org/nocode-webflow-success-case/)までWebflowで作れるものは幅広く、デザイナーが作成したパーソナルメディアの具体例は[Webflowのサイト](https://webflow.com/blog/personal-website-examples)で確認することができます。Webflowは無料で2つのプロジェクト、webflow.ioドメインでのPublishが可能となっており、デザイン機能はすべて無料で利用することができます。カスタムドメインを追加できるSites Plansはページ訪問数、DB利用有無/サイズ、API利用有無/利用回数などによってプランが分かれており、月額12ドル(約1,200円)~でカスタマイズ可能な本格的なWebサイトの構築/運用ができるようになります。 このようにカスタマイズ性が高く、運用負荷が低く、価格も安いという特徴を持つWebflowの登場によってパーソナル/スモールメディアはより高い表現力をクリエイターにもたらしており、ますますPassion Economyが加速されるのではないでしょうか。 # モバイル世代クリエイター向き: Universe Webflowはこだわったカスタマイズを入れたWebサイトをノーコード/ローコードベースで作れる「良いとこどり」を実現したサービスでしたが、次に紹介する[Universe](https://onuniverse.com/)は、スマホアプリのみで数分でコマース機能まで揃ったモバイルWebが作れるという振り切ったWebサイトビルダーです。 Universeが特徴的なのは、スマホネイティブ世代であるZ世代を中心に徹底的にカジュアルにモバイルでパーソナルWebサイトを構築できるようにした点です。PCすら使わないという若年世代が増えており、クリエイター、インフルエンサー、D2Cブランドなど、作る側も見る側もモバイルだけに特化したWebページ作成/配信ツールで成り立つマーケットがあります。 Universeの多くのユーザはまずモバイルアプリの導入からスタートし、[Universeの特徴的なUIである「グリッド」を使ったエディタ](https://onuniverse.com/guides/blocks)を使います。画面をグリッド(枠線)で分割し、それに対してどのようなコンテンツブロックを挿入するかを選び、テキスト、画像、ビデオなどを挿入していくことで、モバイル上の操作のみで数分でWebページ作成が可能になっています。 UniverseのグリッドUIによってスマホだけで容易に編集ができる 出典: [Universe](https://onuniverse.com/) UniverseのグリッドUIによってスマホだけで容易に編集ができる 出典: [Universe](https://onuniverse.com/) [Universeで作成されたWebサイトの例](https://explore.onuniverse.com/)を見ると、主にクリエイターのAbout MeのようなパーソナルブランディングをするLPでの利用が多いですが、Shopify、Etsy、Buffer、Depop、Bitly、Mailchimpなどコマースおよびマーケティングに必要なプロダクト連携を備えており、簡易ながらもビジネスをしていけるバックエンドを構築できていることがわかります。 Universeは基本利用が無料で[1,000ドル(約10万円)以上の売上が発生した際には10%の手数料](https://techcrunch.com/2020/04/07/mobile-website-builder-universe-raises-10m-from-gv-as-it-ventures-into-commerce/)がかかるようになっています。またカスタムドメインを利用する場合[0.99ドル(約100円)/月~](https://apps.apple.com/us/app/universe-website-builder/id1211437633)、分析機能などは[9.99ドル(約1,000円)/月〜Pro版](https://apps.apple.com/us/app/universe-website-builder/id1211437633)が必要になります。これらもモバイルアプリ内の課金で購入可能でスマートフォンのみで決済も完結しています。こうした徹底されたモバイルだけで完結する仕組みをユーザに提供することで、カジュアルなクリエイター層の増加にさらに拍車がかかることが想像できます。 # ビジネスユーザ向き: Notion 次にビジネスユーザがパーソナルメディアを運用・管理するのに向いているのが「All-in-one workspace」を謳い、ドキュメントからタスク管理、スプレッドシートなど幅広い機能を持ち合わせたツールである[Notion](https://www.notion.so/)です。 日本でも人気を博しているので、ご存知の方も増えているとは思いますが、Notionは生産性向上のための統合ツールであり、チーム内のノウハウ蓄積、進捗管理、アイディエーションなど様々なユースケースがあります。 しかし、ここで注目したいのはNotionで作成したページを容易にWeb公開する機能です。 Notionで作成したページを外部公開できる 出典: [Notion](https://www.notion.so/37451ec4d1c74e519fb843df245944c9) Notionで作成したページを外部公開できる 出典: [Notion](https://www.notion.so/37451ec4d1c74e519fb843df245944c9) NotionはBlockと呼ばれるパーツを組み合わせて使うことでページの編集性が高く、ドキュメント作成ツールとして優れています。またCMSとしてもページをそのまま編集するだけなので、コンテンツ作成やメンテナンスがしやすくなっています。さらに複雑な設定などせずともすぐにそのページを外部公開することができます(URLはnotionが自動設定してくれます)。その反面、カスタムドメイン、コマース、SEOなど、より作り込みを行うには公式サポートが限定されているため、[3rd partyツール](https://www.notion.so/Notion-Tools-25d054da911344199cdf403cc04f317c)と連携させることでカスタマイズを施していくことになります。 Notionはビジネスユーザのパーソナルブランディングへの利用事例として、個人のプロダクト、blog、活動履歴、SNS、受賞歴などといったポートフォリオを体系的に整理し、外部公開することによく使われています。Notionのテンプレートや3rd partyツールの開発などを行うZoe Chawさんは[自らのポートフォリオをNotionで作成](https://www.notion.so/Portfolio-Tracker-2-0-707ff5ec560149cb885345290c0f3608)するだけでなく、それを他のユーザがテンプレートとして利用できるようになっています。テンプレート利用の際にZoeさんのポートフォリオも読まれることになるため、バイラル的にセルフブランディングすることができています。 自身のポートフォリオを公開するNotionページ 出典: [Notion](https://www.notion.so/Portfolio-Tracker-2-0-a8c70d94c2f647edab34b97e83f534a0) 自身のポートフォリオを公開するNotionページ 出典: [Notion](https://www.notion.so/Portfolio-Tracker-2-0-a8c70d94c2f647edab34b97e83f534a0) 他にもノーコードで簡易に構築/メンテできる点を活用してスタートアップ企業中心にFAQページ、ランディングページ、使い方説明ページなどで利用が進んでいます。 例えば、バーチャルオフィス/リアルタイムチャットを提供するスタートアップであるTandemは、コロナ禍においてリモートワークでのチーム間コミュニケーションの需要が一気に高まり、彼らのプロダクトも急激に利用が伸びました。結果として需要の急拡大に対して人材を採用する必要があり、[採用ページでNotionを活用](https://www.notion.so/Tandem-is-Hiring-31790502dbcb46ed95573012604b19a5)し素早く立ち上げました。また[プロダクトのアップデートページ](https://www.notion.so/Tandem-Product-Updates-618030187c7843a78ba76ada4f54bd01)もNotionで作成しており、構築/運用や運用に手間をかけずコンテンツの提供にフォーカスしている様子が見てとれます。日本でもネットスーパーの垂直立ち上げを支援する[10X](https://10x.co.jp/)が、Tandemと同じく[社内のノウハウ共有から社外向けの使い方説明、採用ページ](https://careerhack.en-japan.com/report/detail/1448)まで利用されています。 [Notionは2019年11月〜2020年4月でチームが40%拡大し、ユーザ数は2019年初頭の100万から4倍](https://techcrunch.com/2020/04/01/notion-hits-2-billion-valuation-in-new-raise/)に。[2020年4月に5000万ドル(約50億円)の資金調達で企業価値は20億ドル(約2000億円)](https://techcrunch.com/2020/04/01/notion-hits-2-billion-valuation-in-new-raise/)ともされており、いまやユニコーン企業となりました。また2020年には日本人社員も加入し、日本での拡大を勧めています。実はXimeraも以前は自前のWebサイトを構築・運営を行っていましたが、Webサイトリニューアルを機に[全面的にNotionへ移行](https://ximera.com/)しました。 # おわりに 本稿ではノーコード/ローコードツールによって作られるパーソナルメディアによって、個人のクリエイター/インフルエンサーがブランディングやビジネスをこれまで以上に容易に行える環境が整いつつある状況をご紹介しました。今後特に強い影響力を持つ個人がメディア化していく流れがこれからも続いていくと考えられます。これはニュースメディアでも同様で、影響力のあるライター/編集者がメディア化していく流れはこれまでは一部の著名人に限られていましたが、これからは中間層とでも呼ぶべきマイクロクリエイター/インフルエンサーが増えていくと考えられます。メディア企業はこうした台頭する個人クリエイターとどのように付き合っていくかを検討していくことが必要な時期にあると考えられます。 --- ## スタートアップによる書籍・出版のビジネスモデル変革 URL: https://ximera.com/posts/e07c11d87f 公開日: 2021-03-15 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #8 2021年3月15日 # はじめに Ximera MEDIA NEXT TRENDSマガジンの第8回となる今回は「スタートアップによる書籍・出版のビジネスモデル変革」について現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきたいと思います。 現代はユーザーの可処分時間の激しい奪い合いが起こっており、書籍・出版ビジネスもその渦中にいます。Fortnite、Minecraftのようなオンラインゲーム、YouTubeやNetflixに代表される長尺の動画、TikTokのような新興のバイトサイズコンテンツ、また最近ではClubhouseのような音声を中心としたメディアと、書籍・出版ビジネスも同じ土俵にいるのです。 一方で機械翻訳精度の向上、テキストの自動音声化など、テキストコンテンツは技術の進化により将来的に市場拡大の可能性を秘めている市場でもあります(テキストの音声化については[Ximera MEDIA TRENDSの第一回](https://app.notion.com/p/cff2d2f3e883481890b9fb24f498bc5a?pvs=21)をぜひ読んでみてください)。 そこで現在、書籍・出版領域のビジネスでどのような変化が起こっているのか、本稿では具体的なサービスを見ながらUSのスタートアップが新たなビジネスモデルを画策している状況を確認していきたいと思います。 # UGC系文学/ノベル:Wattpad アマチュアやセミプロによる創作物は、古くは[1700年代から二次創作が確認されており](https://www.theatlantic.com/culture/archive/2020/02/surprising-18th-century-origins-fan-fiction/606532/)枚挙に暇がありません。デジタル化が進んだ近代日本では、1980年代のパソコン通信を使ったオンライン小説にはじまり、iモード時代にヒットを生んだケータイ小説が生まれ、人気作は出版社やテレビ局と連動したメディアミックスが図られることは当たり前になりました。そういったなか、UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)をサポートするプラットフォームが数多く生まれてきました。 そのUGCプラットフォームで世界最大級のユーザ規模を持つのが[WattPad](https://www.wattpad.com/)です。 出典:[Wattpad](https://techcrunch.com/2019/02/13/wattpads-latest-deal-will-turn-its-stories-into-tv-shows-and-movies-in-korea/) 出典:[Wattpad](https://techcrunch.com/2019/02/13/wattpads-latest-deal-will-turn-its-stories-into-tv-shows-and-movies-in-korea/) Wattpadには[10億以上のストーリー](https://jp.techcrunch.com/2021/01/20/2021-01-19-wattpad-the-storytelling-platform-is-selling-to-south-koreas-naver-for-600-million/)があり、[9000万人以上の読者がいます。滞在時間は月に230億分](https://japan.cnet.com/article/35165369/)(単純平均で一人あたり約255分/月)ほど。日本での知名度はそれほど高くありませんが、2021年1月に[NAVERが615億円で買収](https://japan.cnet.com/article/35165369/)し日本でも報道されたことは記憶に新しいと思います。 そのWattpadは、時代の変化にうまく対応することで書籍・出版ビジネスを拡大してきた好例と言えます。 先述したメディアミックスの拡大でいえば、WattpadはヒットしたUGC作品を映画化、ドラマ化、書籍化といったメディアミックスで活用する支援体制を整えています。これまでもNBC、Sony Pictures、Hulu、SYFY、Macmillanなどハリウッドスタジオ、配信プラットフォーム、出版社と提携することで、約[1500のストーリー](https://japan.cnet.com/article/35165369/)をメディア展開してきた実績があります。 課金は、アプリ内で利用するコインの購入を介して行われる仕組みで、ユーザーはそのコインを使って有料ストーリーを閲覧します。しかし、課金はあくまでライター支援の位置づけとなっており、大量のコンテンツを無料で見られることがユーザーベネフィットの中心です。 2017年からは、個別課金に加え月額課金のサブスクリプション [Wattpad Premium](https://www.wattpad.com/premium/)を開始。4.99ドル/月で、広告なし、オフライン視聴、ボーナスコイン、テーマ色のカスタマイズを提供しています。さらにプレミアムサブスクリプションである[Wattpad Premium +](https://www.wattpad.com/premium/)では上記に加えて7.99ドル/月で、月に2つまで有料のストーリーを追加課金なしで読むことができます。 出典:[Wattpad](https://books.wattpad.com/) 出典:[Wattpad](https://books.wattpad.com/) さらに、ユーザインタラクションのあるテキストノベル(チャットフィクション)を作成・配信できる[Tap by Wattpad](https://taptaptap.co/)の提供、2019年にはWattpad Booksと呼ぶ[出版部門](https://hon.jp/news/1.0/0/15157)を設立([2021年2月時点で30+の書籍を出版中](https://books.wattpad.com/shop))し、紙の書籍と電子書籍の両方を自社サイトで販売する体制も整えました。 Wattpadは紙の書籍からデジタルでの無料ストーリー・有料ストーリー、月額サブスク、新たなインタラクティブ機能まで、ユーザーが求める読書体験を幅広く提供していること、またオリジナルであるUGCをPGC(プロフェッショナル・ジェネレイテッド・コンテンツ)にコンバートする仕組みを作り、コミュニティを持続させつつコンテンツをマネタイズできるプラットフォームをうまく作ることでビジネスを拡大してきました。 # バイトサイズ系文学/ノベル:Radish 次に紹介するのは、スマートフォン時代に必要とされる「バイトサイズ」でデジタル文学コンテンツを提供するスタートアップの事例です。 出典:[Radish](https://apps.apple.com/jp/app/radish-fiction-chat-stories/id1076491465) 出典:[Radish](https://apps.apple.com/jp/app/radish-fiction-chat-stories/id1076491465) [Radish](https://radishfiction.com/)は1つのストーリーを数週間にわたって小出しに提供するスタイルの連載小説をアグリゲーション配信するサービスです。バイトサイズと呼ばれるスマホで短時間に行われる読書体験に特化しています。ハイペースでコンテンツが更新されることが同社の強みで、50エピソードのシリーズを1年で10シリーズ配信します。1日のうちに複数リリースしたり、多いものだと1日に5本配信するものもあります。 特に女性を中心としたターゲットセグメントを明確にする戦略が功を奏し、これまでの一番人気の物語は[400万ドル (4.2億円)以上を稼ぎ出し、5000万人以上の読者を獲得](https://jp.techcrunch.com/2020/08/05/2020-08-04-radish-softbank-kakao/)、バイトサイズと言えども侮れない数字を作っています。 当初はUGCベースのコンテンツに重きを置いていましたが、2019年にはプロ/セミプロ作家を取りまとめてIP(知的財産)はRadishが握る[Radish Originals](https://publishingperspectives.com/2019/02/radish-originals-seung-yoon-lee-soap-opera-serialization/)を立ち上げるまでに成長しました。RadishのCEOは「連載小説のNetflixになってオリジナル作品を作りたい」と[TechCrunch](https://jp.techcrunch.com/2020/08/05/2020-08-04-radish-softbank-kakao/)に話しています。 課金モデルは個別課金型を採用、かつ20-30円ほどで1章ずつコインを使って購入するマイクロペイメントモデルです。最新のエピソードについては必ずコインを使っての課金が必要ですが、月額課金についても読み放題とはせず、[月に200コインを9.99ドル(日本では1,100円。通常の69% off)](https://apps.apple.com/jp/app/radish-fiction-chat-stories/id1076491465)で購入するモデルをとっています。さらに、古いエピソードについては1時間待つごとに新たにエピソードがアンロックされるなど、さながらソーシャルゲームのような仕様を取り入れることで、いわゆる無課金ユーザーをうまくエンゲージメントする仕組みを整えています。 このようにコンテンツに対して少額の課金を繰り返すモデル自体はアメリカよりもアジア(特に中国や韓国)ですでにコンテンツ消費スタイルとして定着していました。しかし欧米ではあまりそうした習慣はなく、Radishはアジアにヒントを得て立ち上げられ、成長してきたのです。 # アナログ出版 x コミュニティ:Literati 本がありすぎて情報過多になり、選ぶのが難しくなっているなかでも、自身が信奉する人がおすすめする本はやはり読みたくなるものです。今まではおすすめを知る場、本を買う場、買った本の感想を共有する場はすべて別れていましたが、それを人を起点にした一箇所に集めたのがサブスク型の書籍キュレーションサービスを提供するスタートアップ[Literati](https://literati.com/)です。 出典:[Literati](https://jp.techcrunch.com/2021/01/29/2021-01-27-literati-raises-40m-for-its-book-club-platform/) 出典:[Literati](https://jp.techcrunch.com/2021/01/29/2021-01-27-literati-raises-40m-for-its-book-club-platform/) 大人向けにおすすめ本の推薦を行うサービスブランドである[Literati](https://literati.com/book-clubs/)では、ユーザーはステファン・カリー(NBA選手)やリチャード・ブランソン(Virgin Groupの創業者兼会長)などの著名人が本をおすすめしてくれる「クラブ」に入会します。毎月25ドル(約2500円。年間契約で月20ドルに割引)支払うと、[著名人がピックアップした紙の本と著名人の本に関するメッセージが同包されて送付](https://literati.com/book-clubs/stephen-curry/)される仕組みです。子供向けの[Literati Kids](https://literati.com/kids/)では、専門家がキュレートした5冊が毎月送られてきます。しかし、この5冊は購入されたわけではなく、ユーザーは5冊の本の中から一週間以内に買いたい本を選びます。ほかはすべて返送され(返送料は無料、次月のスキップやキャンセルも可能)、選んだ本の分だけが課金されます(月額料金とは別途)。 大人向けの[Literati](https://literati.com/book-clubs/)のクラブによっては、Literatiのスマホアプリ内で本をピックアップした著名人本人や同クラブのメンバー、さらには本の著者ともチャットでコミュニケーションできたこともあります。これが有料メンバーシップ内でのみ展開されるエクスクルーシブな体験であるため、書籍とキュレーターである著者を基点としたオンラインサロンとなっていることが興味深い点です。 現在は著名人や専門家によるキュレーションがメインとなっていますが、インフルエンサーなどセミプロも含めたコミュニティ拡大をした場合、本のキュレーションのソーシャルネットワークになることで新たなコミュニティとビジネス機会を生み出す可能性がありそうです。 # おわりに 本稿では書籍・出版分野において新たな体験やビジネスモデルを模索するスタートアップをご紹介しました。アナログ・デジタル問わず書籍・出版の分野ではまだ多くの可能性が溢れていると感じます。出版物のコンテンツ自体の提供価値は古くから変わっていないはずです。 今回ご紹介したスタートアップは、膨大に膨れ上がるコンテンツの中でどうディスカバリーを助けられるか、いかにユーザが求めている形/スピードでコンテンツを提供できるか、いかに多くのクリエイターを巻き込めるか、ユーザーが持つ課題をどう解決するかを徹底的に考え実行し続けることで、プロダクトマーケットフィットにたどり着いていると考えられます。こうした事例がほんの少しでも次世代のビジネス検討のお役に立てば幸いです。 --- ## はじめてのデジタルサブスクリプション運営(2021/4/27) URL: https://ximera.com/posts/fbc13f8f8f 公開日: 2021-03-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、サブスクリプション運営の基礎を知りたい方を対象としたイベントを開催しました。 最新のイベント情報はニュースレターでお知らせします # アーカイブ動画
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight) # イベント概要 デジタルメディアのサブスクリプション(有料購読)は、パブリッシャーの収益源として期待と注目を集めています。一方で、これまでの紙媒体のメディアとは求められる組織体制や考え方が大きく異なるため、新任の担当者が事業の進め方に悩んでしまうケースも少なくありません。 キメラは2019年1月以来、50媒体を超える国内パブリッシャーの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などをご支援しています。当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、パブリッシャーのデジタル事業やサブスクリプション運営のためにおさえておきたいポイントを解説します。 # こんな方におすすめのイベントです - 事業部に配属されたばかりで、基本的な知識を手に入れたい - 社内でデジタル事業やサブスクリプションの認識合わせをしたい - 社内のデジタル事業に興味がある、関われるようになりたい - サブスクリプション運営の基本的な内容をおさらいしたい --- ## ニューローカル/ニッチメディアの勃興 URL: https://ximera.com/posts/2e342326e8 公開日: 2021-02-24 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #7 2021年2月24日 ## はじめに メディアのトレンドについて米国のスタートアップを中心に取り上げるマガジン「[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/7ee4ae7702124f41b015cd20c155ccdb?pvs=21)」の第7回となる今回は「ニューローカル・ニッチメディア」について現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきます。 メディアの信頼について取り扱った[前回のポスト](https://note.com/ximerainc/n/nab8efa5dcd27?magazine_key=m8b2dee2656c6)でもご紹介しましたが、近年新たに出現してきたメディアにはアルゴリズム、またはその志向や信条により情報の局所化・断片化が起こりやすい状況があります。前回はそれらにより情報の偏りとその修正が難しくなる点を挙げましたが、今回は特定の領域に情報を絞り込むことによって、ユーザ需要を満たしポジティブな傾向が見られるニューローカル/ニッチメディアを取り上げます。 本稿ではニュースメディアを中心に、1. 地元特化型、2. カルチャー特化型、3. ソーシャルメディア経由型の観点でニューローカル・ニッチメディアの動きをご紹介していきたいと思います。 ## 1. 地元特化型 ローカル・ニッチメディアの特徴の1点目、「地元特化型」についてです。2020年はローカル性の高い重要な出来事が多く起こりました。近所の新型コロナウイルス感染状況、Black Lives Matter運動では近所のどこでデモや暴動が起こっているのか、アメリカ大統領戦では地元での投票方法や開票状況がどうなっているかなどです。その中で人々が知りたいローカルニュースを正確にリアルタイムに手に入れる需要が高まりました。 ユーザが住む地域を中心としたローカルニュースのアグリゲーションを配信する[News Break](https://www.newsbreak.com/)は「地域ニュース」(Local News)のブロックが、トップページのファーストビュー直下にあり、ローカルニュースを徹底して伝える姿勢を明確にしています。 ローカルニュース需要をうまく捉えたNews Breakは近年大きくユーザを伸ばすことに成功し、2021年1月時点で[2000万のDAU、4500万のMAU](https://techstartups.com/2021/01/07/news-break-popular-local-news-app-raises-115-series-c-funding/)を抱えるまで成長しました。また直近のSeries Cラウンドで1億1500万ドル(約115億円)の資金調達を行い、さらなるビジネス拡大が期待されています。News Breakについては[Ximeraの別記事](https://note.com/ximerainc/n/nd7fafff40dda)でも説明していますのでぜひこちらも読んでみてください。 次に興味深い動きをしているのが2020年に生まれた新しいメディアのLookout Localです。Lookoutはローカルメディアの情報やコミュニティ形成がかつてないほど重要になっていく中で、あるべきローカルメディアの姿を模索しています。 Lookoutは、ローカルメディアながら寄付から賄われるのみではビジネス的な成功に必要なコントロールが失われると考え、利益ではなく社会貢献を最重要視するパブリックベネフィット・コーポレーション(PBC)と自らを位置づけています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46153647/picture_pc_8848f286a595e0fec811eafceb61f949.jpg?width=800) 出典:Lookout Santa Cruz Lookoutは各都市でのローカルメディアを立ち上げていく戦略の第一弾として、Santa Cruz(Californiaのサーフィンで有名な都市)をとりあげ、[Lookout Santa Cruz](https://lookout.co/santacruz/)を立ち上げました。スタッフは報道チーム8名を含む15名で成っており、メンバーシップとダイレクト広告から半分ずつの収益を上げ、徐々にメンバーシップの比率を高めていく予定としています(出典:[DIGIDAY](https://digiday.jp/publishers/this-is-not-your-grandfathers-patch-lookout-local-wants-to-be-the-modern-local-news-of-santa-cruz/))。 メンバーシップはサブスクによる有料コンテンツの購入というよりは、参加したメンバーが長期的にパブリケーションを中心としたコミュニティへの貢献を行うこと自体を価値としています。またLookout Localは[70%以上の支出をジャーナリストへ充てており](https://lookout.co/santacruz/company-q-a)、メンバーシップ型のサブスク収入がその質と量の確保に非常に重要な役割を果たしています。 ## 2. カルチャー特化型 ローカル・ニッチメディアのジャンルの2つ目が「カルチャー特化型」のメディアです。こちらは地域にも関係がありますが、ブラックカルチャーや南アジア出身者の活躍など、「文化」をテーマの中心に据えたメディアです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46153876/picture_pc_f4ecf557e2a4787c8058b20edc17011c.jpg) 出典:[Blavity](https://blavity.com/) [Blavity](https://blavity.com/)はBlack Cultureにフォーカスを置いたスタートアップメディア企業です。Blackコミュニティに関するニュースを提供する[Blavity News](https://blavity.com/)を筆頭に、ハリウッドにおけるBlack Celebritiesに特化した[Shadow & Act](https://shadowandact.com/)、黒人が運営するおすすめのお店/旅行先を紹介する[Travel Noire](https://travelnoire.com/)、ミレニアム世代の黒人女性をターゲットにした[21ninety](https://21ninety.com/)、カンファレンス運営の[AfroTech](https://afrotech.com/)など幅広く5つのブランドを運営しています。 ビジネスモデルはブランド間でのアドネットワークおよびディスプレイ広告、スポンサー記事/ビデオ、Black Communityにおけるマーケティングキャンペーン、イベント運営を主としています。 一番アクセスが多いBlavity Newsは200万のユニークユーザ、中央値7万5000ドルの収入がある18-34歳がユーザ属性で、65%が女性、35%が男性ユーザ。Black Cultureと関連が強いエンターテイメントニュースと平行して、Black Lives Matterが展開される6年前から黒人に対する不平等をトピックとして多く扱っています(出典:[blavity](https://blavityinc.com/blavity-news))。 Afro Techブランドでは、年に一度Afro Tech Conferenceと呼ばれる黒人にゆかりのあるFounderやエンジニア、スタートアップが集まるイベントを開催しています。2019年の[イベントは4日間開催され、60人以上のスピーカー、1万人が来場する](https://afrotech2019.sched.com/)大きなイベントとなっています。そのほかに[グッズのeコマースも手がけ](https://shop.blavity.com/)、収入源を多角化しています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46154098/picture_pc_d80ae30ed8c5687ffd1f7e4dddf297c4.jpg?width=800) 出典:[The Juggernaut](https://www.thejuggernaut.com/) 次にご紹介するのが[The Juggernaut](https://www.thejuggernaut.com/)です。The Juggernautは南アジア(インド・パキスタン・アフガン・ネパール・バンガロール・ブータンなど)と世界の南アジア出身の人々に関する情報発信を行うメディアです。 現在南アジアは、インドを中心とした経済発展やインド国内で数多くの南アジア出身創業者を輩出したこと、さらにはグーグル、マイクロソフトというようなグローバル企業のトップにも出身者が並んでいることに伴って注目が集まっている地域です。The Juggernautはグローバルに伝わりやすい視点で、現地ローカルのスタートアップ、文化、政治、経済などをテーマに記事を提供しています。 ビジネスモデルは、 [月額9.99ドル(約1,000円)、年間契約で月額3.99ドル(約500円)、生涯契約で249.99ドル(約2万5000円)](https://www.thejuggernaut.com/subscribe)と3つのTierの有料サブスクを収入源としています。こちらもコロナ禍においてユーザ獲得がうまくいっており、[前月比20〜30%ずつ有料サブスクユーザを伸ばしています](https://techcrunch.com/2020/10/12/the-juggernaut-seed/)。 ## 3. ソーシャルメディア経由型 最後にメディアとは少し異なるのですが、ソーシャルメディアを経由したニュース消費について新たな動きをご紹介します。まず、メディアニュースの取得ソースを見たとき、GenZ層とミレニアル層はFacebook、Instagram、YouTube、TikTokなどでニュースを見つけ消費していることがわかります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/46154488/picture_pc_5e95af8f740ad171a56d9974bf323ad4.jpg?width=800) 出典:[ypulse](https://www.ypulse.com/article/2020/07/20/gen-z-millennials-have-very-different-news-sources/) アメリカでは広告をメインの収益元にしていたメディアの多くが、コロナ禍における経営不振により大量のレイオフ実施、Black Lives Matterで表層化した大手メディア内でのレイシズム(例えば、ニューヨーク・タイムズが社説で軍によるデモ制圧を発表して炎上し、[時間あたりの解約数が過去最大となりました](https://slate.com/news-and-politics/2020/06/new-york-times-tom-cotton-staff-reaction.html))など、現代はかつてないほどメディアの分断が起こっています。 そのため人々は信頼できるニュースソースをニュースレターやソーシャルメディアを使ってアカウントベースで取得する傾向が強まってきているなか、存在感を増しているのがInstagramでのニュース閲覧です。とくにインフォグラフィックを用いたInstagramのニュースによって、人種、政治、外交問題を取り上げ、新しいニュースの見せ方を提供するメディアや若い世代のジャーナリストが出てきています。 例えば、spicy.zineは昨年起こったレバノン/ベイルートの爆発事故を10枚のインフォグラフィックスでうまく見せています(合わせて本文でも重要部分のサマリと画像では機能しないリンクを掲載)。 特徴的なのは、明るい色、太いフォント、わかりやすい画像など、aesthetic(エステティック)と表現されるInstagramで好まれる美しさにオプティマイズされており、ライターとデザイナーが持つ技を使ってジャーナリズムを体現していることです。 特にGen Zを中心とした若い世代は大手メディアで報道されていることと自分の身の回りで起きていることの違和感に気づき、自らインフォグラフィックの作り方を学び、ソースによって論拠をサポートした上で、真実を伝えることをモチベーションとして投稿しています。 伝統的なニュースメディアと違い、草の根で独立系ジャーナリストが勃興している状況のため、ファクトチェックなど、信頼性については今後さらに検証される必要性があると考えられますが、新たなニュース消費の形として非常に興味深い動きです。 ## おわりに 本稿ではニューローカル・ニッチメディアの需要の高まりとその出現について、いくつかのスタートアップやジャーナリズムの例をご紹介しました。ソーシャルメディアがニュース購読の起点となっている一方で、ローカル・ニッチメディアは特定の地域や文化に高い関心を示す層にフォーカスして持続的なビジネス運営ができる可能性を秘めています。 --- ## 地域ニュースにフォーカスした米ニュースアプリ「News Break」が躍進中(2021/1/29) URL: https://ximera.com/posts/db8dffb712 公開日: 2021-02-12 著者: Ximera 2021年2月12日 17:17 弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) 米国では地方新聞社の休刊が相次ぎ、地域によっては地元ニュースが読めなくなる「ニュース砂漠」がここ数年、問題になっています。そのようななか、地域ニュースに軸足を置いたニュースアプリ「News Break」が注目を集めています。 [地域の話題に注目してDAU1200万人、人気ニュースアプリ「News Break」が120億円調達 | TechCrunch Japan](https://jp.techcrunch.com/2021/01/11/2021-01-07-news-break-funding/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly9ub3RlLmNvbS8&guce_referrer_sig=AQAAAL4r9vl4tU2pUxp2nrKBDmVmNq4zU8cH9NZk4fuxu94Kbpg3_AdMcio2vQAiQhQW-jkyWMDDkRVoA-XwD8b_fqXxzu34dciboXGCF0X5Q6CVXePhzkQ_A2m9r6pasWzXanFkWZA8fmYNoIaX2p5C1buo8TSaCaSORoF2IuatYZGq) 1日あたりのアプリ利用者数(DAU)は1200万人。米国民の100人に4人が利用している計算です。News Breakアプリは日本国内でダウンロードできませんが、ブラウザーで[News Breakのウェブ版サービスが利用できます](https://www.newsbreak.com/)。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45373383/picture_pc_4802f4b422b4b8b0b58ad7271e49f90f.jpg) 特徴的なのは「地域ニュース」(Local News)のブロックが、トップページのファーストビュー直下にあることです。地名や郵便番号を入力して地域を選択すると、その地域の新着ニュースが掲載されるようになります。画像ではカリフォルニア州南西部に位置する都市トーランスを設定しています。 見出しをタップすると、記事の冒頭部分だけ読めるページが開きます。「記事全文を読む」(Read Full Story)のタップで、News Breakアプリで読むか、記事の配信元メディアに遷移するか、の選択ボタンが表示されます。 News Breakアプリでユーザーが記事を閲覧したときは、当該記事の配信元パブリッシャーと広告収入を分け合う一方、パブリッシャーのサイトでユーザーが記事を閲覧したときは、パブリッシャー側で広告やコンテンツ課金の収益を直接得られます。日本国内のYahoo!ニュースやSmartNewsのように、ユーザーが当該記事を閲覧するときプラットフォーマー側で全文が表示されてしまい、リンクからしか自社メディアにユーザーを引き込めない、という制約がありません。パブリッシャーのビジネスに向き合ったサービスと言えるでしょう。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45373439/picture_pc_4bd133415b751b7a43fbc60337478737.jpg) このほかウェブ版のNews Breakで興味深いのは、選択した地域のニュースレター購読を薦めるUIがあることです。地域ニュースをしっかり押さえたいユーザーにとっても、地域ニュースをちゃんと届けたいパブリッシャーにとっても、有益な仕組みです。 地域ニュースを扱うパブリッシャーのみなさんは、News Breakのサービス設計からなんらかのヒントを得られるはず。地域ニュースが読者により読まれるサービスを考えていきましょう。 --- ## デジタル組織のモヤモヤを解消。チームの「神経伝達回路」を整えよう URL: https://ximera.com/posts/36d0888119 公開日: 2021-02-10 著者: Ximera [illustrations by Storyset](https://storyset.com/work) こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内70を超えるメディアにサービスをご提供しています。 以前の記事で、デジタル組織の立ち上げと周辺環境づくりに必要な3つのステップを紹介しました。 > > > 1. *デジタル事業の方向性を明確にする* > 2. *意思決定フローと運用体制を整備する* > 3. *社内ブランディングをする* > > [*事業成長は強い組織から。パブリッシャーのデジタル組織づくりの3ステップ*](/posts/49c78b9fcd) > 今回は、すでにあるデジタル組織の「モヤモヤ」を解消するために点検したいポイントをお伝えします。 「デジタル事業推進のため、予算も人員も確保した。それなのに、なぜかうまくいかない……」 そんなお悩みを持つパブリッシャーにお話を伺うと、必ずといっていいほどチームの意思疎通に原因があります。 - 失敗のリスクが心配になって、ものごとが前に進まない - アイデアはたくさん出るが何から手を付けたらいいかわからない - 営業部門のメンバーと編集部門のメンバーの話が噛み合わず平行線になってしまう こんな状態に、思い当たることはありませんか? ## あなたのチームに「神経伝達回路」は通っていますか? パブリッシャーのデジタル事業に限らず、新規事業には定められた業務手順がありません。チームが機能するためには、人体のように目の前の状況に適応し、意思決定〜行動〜振り返りをスピーディに行える「神経伝達回路」が必要です。 具体的には、以下の一連の流れをスムーズに行えることが望ましいでしょう。 1. 状況の評価:加点法のマインドでアクセルを踏めるか 2. 脳からの指令:意思決定の流れが明確か 3. 手足の動き:現場が自発的に行動できるか 4. 結果の検証:次に生かせる振り返りができるか あなたのチームは、この「神経伝達回路」に滞りが起きていませんか? ここからは、それぞれの項目について詳しく説明します。 ### 1. 状況の評価:加点法のマインドをチームの共通言語にする コップに半分入った水を見て「半分もある」と思いますか。それとも「半分しかない」と思いますか。デジタルチームの基本姿勢としては「半分もある」という加点法のマインドを持つことを強くおすすめします。 ネットフリックスやグーグルといった誰もが知るウェブサービスは、開始当初から完璧なプロダクトを提供していたわけではありません。ユーザーの声を聞きながら改善を続けて、現在の姿に至っているのです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45201498/picture_pc_1c497dcac82380ed0c797bb67044e06e.jpg?width=800) 2008年当時のネットフリックス([出典](https://xd.adobe.com/ideas/perspectives/interviews/interview-with-netflix-user-experience-drives-design-ui/)) メディアの信頼を保つためには、誤りやミスを最小限にとどめて情報を届けることが大切です。一方で、日々の改善が求められるデジタル事業では、何もかも最初から完璧なものを届けようとすると効率を欠いてしまいます。 パブリッシャーのデジタル事業においても、チームの責任者(後述します)が守るべきラインを決めたうえで「まず、やってみよう」という姿勢を共有することが重要です。 ### 2-1. 脳からの指令:事業・運用・コンテンツの司令塔を決める 意思決定の流れをつくる上では、「誰が、どう決める」かを明らかにすることが重要です。まず「誰が」決めるかについて、事業・運用・コンテンツの3つの領域で責任者を定めましょう。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45201577/picture_pc_96fd623e1e22afde8f77a406f5b5daca.jpg?width=800) 3つの役割は兼任せず、独立させることがポイントです。大局的に全体戦略を考える役割(事業責任者)、現場を動かして施策を実行する役割(運用責任者)、読者目線のコンテンツを作り届ける役割(編集責任者)は、ミッションが全く異なるからです。3名の責任者が日頃からこまめに状況を共有し、プロダクトについての意思決定を行える体制をつくりましょう。 ### 2-2. 脳からの指令:「完璧でなくても、どう決断するか」の基準を持つ 意思決定フローの「どう決めるか」については、以下のように期日を前提条件としない判断基準を設けることが重要です。 - このサービスは最低限◯◯の機能があれば開始してよい - このキャンペーンで想定する効果は◯◯で、1週間以内に達成しなければ方針転換をする - 現場からも意見を収集するが、最終的な判断は事業責任者に従う デジタル事業には紙媒体のような明確な完成形がなく、「校了日」といった強制力をもって意思決定を迫る区切りもありません。定められた締め切りはあるかもしれませんが、事業環境によってサービス開始を遅らせたり撤退を早めることもあるため、絶対的な条件にならない場合がほとんどです。 責任者がいるのに物事がはっきりと決まらない場合は、期日にかかわらず「完璧でなくとも始める基準」「大失敗でなくてもやめる基準」「満場一致でなくても決める基準」があるかどうかをチェックしてみましょう。 ### 3. 手足の動き:現場が自発的に動ける環境をつくる 施策のスピードを上げるには、現場のメンバーが自ら動ける環境づくりが欠かせません。以下をチームで共有するとよいでしょう。 事業の方向性づくりについては、以下の記事を参考にしてください。 [まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】](https://app.notion.com/p/b5f2eb4b0c334d99a41653ce725ddfaf?pvs=21) どんなに優秀で積極的なプレーヤーも、事業の方向性やチームの動き方が曖昧なままで実力を発揮することは難しいものです。チームメンバー全員が「デジタル事業で何を目指しているのか(定性・定量)」「やりたいことがあるとき、誰に相談すれば実現できるか」を言える状態を目指しましょう。 チームの役割分担は暗黙の了解になっていることも多く、いざ問われると答えられなかったり、非効率な状態になったりしていることも多いものです。チームでホワイトボードを囲み、ディスカッションをしながら上記の項目を整理・共有するのもおすすめです。 ### 4. 結果の検証:施策の役割と評価指標をチームで共有する 施策の結果をどう評価するかは、プランニングと同じかそれ以上に大切です。「いい取り組みだね」「いい記事だね」という評価の基準を、担当業務が違うチームメンバーと共有できていますか? 例えば「いい記事」と一口に言っても、捉え方が違うことがしばしばあります。 評価基準がずれていると、チーム内で議論のすれ違いが生まれてしまいます。以下のようにコンテンツや施策ごとに役割と評価指標を定め、チームで成果をモニタリングしましょう。 ポイントは2つです。施策の役割が前項で紹介した「事業の方向性」に紐づいていることと、評価に中間指標を用いることです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45202031/picture_pc_87ef7b44c3b562ffca7edda38796bef2.jpg?width=800) 事業の定量目標になる「売上高」「購読者数」「ページビュー(PV)」などは、施策がもたらした結果を示すものです。 施策の振り返りや改善のためには、結果の手前にある「中間指標」を用いるとよいでしょう。特にデジタルメディアのサブスクリプションにおいては、読者のメディアに対する関与度を測る指標(=読者ロイヤルティ、読者エンゲージメント)を中間指標に据えることをおすすめします。 詳しくは、以下の記事を参考にしてください。 [PVだけで大丈夫?サブスクにも広告にも欠かせない指標「読者ロイヤルティ」とは](https://app.notion.com/p/PV-eb8f0d4ab9be494b8f949841eef10411?pvs=21) [その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは](https://app.notion.com/p/ab7e039d90684fbbb8fa37c4f7049b2b?pvs=21) 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Feb 10, 2021|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## メディアは信頼を取り戻せるか URL: https://ximera.com/posts/3f1ba1d6ed 公開日: 2021-02-05 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #6 2021年2月5日 メディア・パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていくマガジン[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)の第六回となる今回は、メディアの信頼についてのレポートや関連するプロダクトを見ながら、未来を考えていきたいと思います。 本稿では、メディアが信頼を失っている背景とそれに対する動き、技術的な脅威が増しているフェイクニュースとその対抗策という観点で整理を図ってみました。 ## メディアは人々からの信頼を失っている Edelmanが提供する[Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf)の調査結果で、メディアや情報ソースへの信頼度は、検索エンジン、伝統的なメディア(マスメディア)、オウンドメディア、ソーシャルメディアのいずれもここ10年で最低の水準となりました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44727651/picture_pc_4df52801839ef5460e761d13c96db5a3.jpg?width=800) 画像出典: [Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf) また同調査結果では、全体の約6割の回答者がニュースを発信する組織やメディアを信頼できないものとして位置づけていることが分かります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/44727888/picture_pc_22f73c2d50be22b70cbc6ba40e7fb308.jpg?width=800) 画像出典: [Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf) 上の図では、「ジャーナリストやレポーターは誤った認識や誇張の発信により、意図的に人々にミスリードさせようとしている」という主張に対して59%、「ほとんどの報道機関は人々に情報を伝えるよりも、組織のイデオロギーや政治スタンスにより関心が高い」という主張に対して59%、「メディアは客観的であり、狂信的ではないはずだが、そうなっていない」という主張に対して61%(日本は特に80%)の回答者が同意しているのです。 また[Axios](https://www.axios.com/media-trust-crisis-2bf0ec1c-00c0-4901-9069-e26b21c283a9.html)によると、伝統的なマスメディアを信頼する人の割合も調査開始以来はじめて50%を割り込み、ソーシャルメディアにいたっては調査開始以来最低の27%という結果もわかりました。 ![](/images/posts/3f1ba1d6ed/picture_pc_ecc6bbf6aca28f9e8ce250d51c41d000.webp) 画像出典: [Trust Barometer 2021](https://www.edelman.com/sites/g/files/aatuss191/files/2021-01/2021-edelman-trust-barometer.pdf) 国別にみると、アメリカ、UK、韓国、フランス、スペイン、日本、ロシアはメディアを信頼すると答えた回答者の割合が半数以下でした。日本については、諸外国の中でもメディアを信頼する回答者の割合がかなり低く、わずか36%の回答者からしか信頼を得ていません。 メディアが信頼されなくなった背景には、国民の文化や習慣、各メディアの編集方針、パンデミックなどによる外的環境の変化などさまざまな要因が複合されているため一概に要因を特定するのは困難です。もし近年の情報技術による影響を挙げるとすれば、人々が入手する情報ソースのパーソナライズ化・断片化が進んだことにより、各個人が中立的・客観的な立場で考えることがしにくい環境ができあがっていることは、メディアの信頼性低下につながっているのではないでしょうか。 マスメディアではFox Newsのように政治的立ち位置が明確(共和党支持に大きく偏っている)なニュースネットワークがアメリカで最も人気を博し、インターネットでは特定のイデオロギーに偏った過激な活動を容認するサービスに人々がのめり込む現象が起こり、[エコーチャンバー](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E7%8F%BE%E8%B1%A1)(偏った思想空間に長く接することで特定の信念が増幅されてしまう現象)が起こっているように思えます。 また、SNSに代表されるニュースフィードのアルゴリズムはパーソナライズ化が進みすぎた結果として、[フィルターバブル](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB)(各ユーザの見たくない情報がフィルタされ、泡に包まれたような状況になること)に陥っており、これも同様に思想の偏りを起こす要因の一つとなっています。例えばTikTokフィードはアルゴリズムによって完全に制御されており、Twitterフィードについても自分のフォローしたユーザが発信する情報だけに偏っています。 偏った思想に対しては反動として昨今のParlerのApp StoreやAWSからの排除のように揺り戻しが起こりましたが、すぐに代替のサービスやアプリを見つけることができる環境もできあがってしまっています。例えばプライバシーを重視したフリーミアム型のソーシャルメディアであるMeWeは[Parler騒動後の2日間のみでUSで約11万の新規アプリインストールがあり、72時間で100万の新規ユーザサインアップがあった](https://techcrunch.com/2021/01/11/following-riots-alternative-social-apps-and-private-messengers-top-the-app-stores/?tpcc=ECTW2020)と伝えられ、一気にApp Storeの無料アプリカテゴリで10位以内へと入りました。このように人々は自身が好む思想やコンテンツが集まる場所に偏在するため、イデオロギーのエコーチャンバー現象を回避するのが難しくなっています。 ## フェイクニュースの脅威 メディアの信頼を脅かす要素としてもう一つあげられるのが、人工的に自動生成されるフェイクニュースです。今日では既に社会のあちこちにフェイクニュースが蔓延っている状況ですが、それを助長する可能性があるのが自動生成関連の技術です。例えば、文章の自動生成技術 (例: [OpenAIのGPT-3](https://wired.jp/2020/08/17/ai-text-generator-gpt-3-learning-language-fitfully/))、DeepFakeによる顔画像や動画における顔のすり替え技術 (例: [Synthesia](https://wired.jp/2020/07/21/covid-drives-real-businesses-deepfake-technology/))、合成音声技術 (例: [GoogleのTacotron](https://google.github.io/tacotron/)) などが近年次々に開発され、テキスト、画像・動画・音声のフォーマットでそれぞれ、高品質にフェイクニュースを生成できる下地が揃っています。 下記はスタートアップの[Synthesia](https://www.synthesia.io/)によって製作されたサッカー選手のベッカムが9ヶ国語でマラリア撲滅を訴えるキャンペーン動画の舞台裏を解説した動画です。
この動画は英語以外のベッカムの動画はすべてAIによって顔画像を並べ替えることにより、リップシンク(唇の動きを話した言葉に合わせること)が実現され、あたかも英語以外の言葉をベッカムが話しているかのように見せています。なお字幕ではなくベッカムが話している形をとることでよりエンゲージメントを高める施策であり、悪意はありません。Synthesiaは[倫理規則](https://www.synthesia.io/ethics)をオンラインで公開し、映像の基になった人物からは容姿を合成することについての正式な同意を得て、[ビジネス利用に限ることや台本・アバターを事前に精査する](https://help.synthesia.io/deepfakes)ことで倫理を守ろうとしています。こうした動画を作ることは容易になってきており、悪意を持つ人物がフェイクニュースを作り、[著名な人物に別の人間が好きなように主張を言わせたりすることも可能](https://www.youtube.com/watch?v=cQ54GDm1eL0)になっています。 ## メディアが信頼を回復するには? ではメディアの信頼を取り戻すには、どういった方法論があるのでしょうか。例えば、ユーザが信頼できるニュースに接していることを認知し、自身の思想に偏向性がないかを再確認できるプロセスが提供されるべきです。 ニュースの信頼性を可視化するスタートアップである[The Factual](https://www.thefactual.com/news)は、各ニュース記事に対して、(1) 引用元の確からしさ、(2) 記者の評価、(3) 記事が公開されているメディアの信頼性、(4) 政治的立ち位置 などを総合的に評価して記事毎に信頼度を割り出して表示しています。 ![](/images/posts/3f1ba1d6ed/picture_pc_8050d2c3b537874f4531cda157ab84df.webp) The Guardianのとある記事は「中道/左寄り」で81%の信頼性 またトピック毎にサマリ、関連記事、右寄り/左寄りなど政治的立ち位置に応じたフィルターなども用意しており、記事を閲覧するための高い利便性も提供しています。記事の信頼度評価機能を[Chrome Extension](https://chrome.google.com/webstore/detail/the-factual-news-evaluato/clbbiejjicefdjlblgnojolgbideklkp?hl=en)や[検索サイト](https://www.isthiscredible.com/)としても提供しており、信頼に足るニュース記事かどうかをThe Factualのサイトに行かずとも知ることも可能です。 The Factualはまさに人々が客観・中立的にニュースを知るための手助けをしていると言えます。The Factualは月額5ドル(約500円)もしくは年額20ドル(約2000円)の有料サブスクリプションを提供しており、The Factualアプリの利用、デイリーの特選記事やレポートの提供、議論余地のあるテーマの論考/レポートなど、ニュースの信頼性評価を軸にしたマネタイズも模索しています。 The Factualの信頼性評価の方法は素晴らしいものの、完璧ではありません。ペイウォールがあるコンテンツはクロールできないため評価できませんし、画像、ビデオ、ツイートといったマルチメディアの引用についてもまだ評価モデルはできていない現状もあります。TechCrunchによると、[疑わしい記事かどうか気づきを与えるのは読了後である方が効果が高い](https://jp.techcrunch.com/2021/01/26/2021-01-25-debunk-dont-prebunk-and-other-psychology-lessons-for-social-media-moderation/)という研究結果もあり、どのタイミングでユーザに信頼性に気づきを与えるかというのも大事なファクターになりそうです。 いずれにせよThe Factualの信頼性評価のような方法は、メディアが信頼を取り戻す正しいやり方の一つだと考えられるため、今後メディア全体で議論されるような方向に向かってほしいと願っています。 ## フェイクを見破る技術 AIによるコンテンツ自動生成の精度は年々向上しており、今後一目では判別しがたいフェイクニュースが大量に作られ、人々が扇動されてしまう状況もありえます。ではフェイクニュースを見破る術はあるのでしょうか。 USスタートアップの[Truepic](https://truepic.com/)は、[クアルコムと共同で、画像や動画撮影された時刻と場所を正確にデータにタグ付けできるスマホ用カメラアプリを開発](https://wired.jp/2020/10/19/camera-app-designed-fight-fake-news/)しています。撮影時にタグ付けをチップセットのセキュアな領域で実行し、あとから手を加えることができない状態で保存します。 ![](/images/posts/3f1ba1d6ed/picture_pc_6dab53aee9f8f2a4b5242e4ef0603171.webp) [contentauthenticity.org](https://contentauthenticity.org/case-study) このアプリで撮影された画像はタグから撮影時刻と場所に加え、編集履歴を調べたり、バージョン比較を通して信憑性を確認することができるため、ニュース組織や情報発信者が誤認やミスリードを防ぐことに役立ちます。特にソーシャルメディアなど一般の人々から情報が上がってくるケースには特にこうした検証が必要になってきます。 また、DeepFakeの検出ソリューションを提供するスタートアップである[Sentinel](https://thesentinel.ai/)は、TikTok、YouTube、Facebookなどのソーシャルメディアから学習用のDeepFakeを収集/DB化し、機械学習を使って画像や動画に変更を加えたメタデータを隔離することで音声変化(合成音声かどうか)を検出、フレーム毎の画像編集の検出を行った上でスコアリングすることで、DeepFakeかどうかを判定します([参考:TechCrunch](https://jp.techcrunch.com/2020/09/23/2020-09-14-sentinel-loads-up-with-1-35m-in-the-deepfake-detection-arms-race/))。 Sentinelが持つテクノロジーは政府機関やメディアに対して自動化されたデジタルメディア認証ソリューションとして提供されています。こうしたスタートアップが増えてきていることはフェイクニュースに対する脅威の裏返しでもありますが、真剣にこうした技術を早期に適用/運用しているメディアが信頼を勝ち取るという構図が予想されます。 ## おわりに 本稿ではメディアの信頼は大きく下がり、偏向メディアやアルゴリズムによる分断が起こっている状況をご紹介しました。現在起こっている課題は一足飛びに解決できるものではありません。ただ情報の提供者、受益者のどちらもがニュースの正しさとは何なのか、何を知るべきなのか、何を伝えるべきなのかを意識してプロダクトを使う/提供していくことが今まで以上に重要な時代に入ったと言えます。願わくば本稿がフェイクニュースに扇動されず、誰もが起こっている事実をベースにした議論ができる未来を考えるきっかけになればと思います。 --- ## キメラ、「Ximera Ae」を提供開始(2021/03/12) URL: https://ximera.com/posts/afc73ff81f 公開日: 2021-02-01 著者: Ximera Ximera Newsletterをご覧のみなさん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。今年もサクラ開花の知らせが聞こえてきましたね。11日に広島市で開花したそうです。ところで、なぜ桜をサクラと書いたり、さくらと書いたりするのでしょうか。いまは、清々しく、ちからを感じるサクラと書きたい気分です。 今週、私たちキメラは新しいニュースリリースを配信しました。意味のある、大きなリリースだと思っています。また、好評をいただいているオンラインイベントの開催もお知らせします。もちろんパブリッシャー業界のニュースもコンパクトに包んで。今週のXimera Newsletter、最後までお楽しみください。 --- # キメラ、自社開発サブスクリプション基盤「Ximera Ae」を提供開始 文藝春秋『週刊文春 電子版』が採用 株式会社キメラ(英文社名:Ximera, Inc.、本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:大東洋克)は2021年3月10日16時、自社開発のサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」(読み:キメラ・エーイー)を株式会社文藝春秋(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:中部嘉人)のウェブサイト『文春オンライン』で開始した有料サービス『週刊文春 電子版』でローンチしました。 Ximera Aeはウェブメディア専用にキメラが自社開発したサブスクリプション管理SaaS (Software as a Service=サービスとしてのソフトウェア)です。記事配信で利用する既存のコンテンツ管理システム(CMS)はそのまま、複雑なシステム連携開発なしに短期間で導入でき、導入・運用コストが低廉なのが特徴です。 Ximera Aeはウェブメディア専用にキメラが自社開発したサブスクリプション管理SaaS (Software as a Service=サービスとしてのソフトウェア)です。記事配信で利用する既存のコンテンツ管理システム(CMS)はそのまま、複雑なシステム連携開発なしに短期間で導入でき、導入・運用コストが低廉なのが特徴です。 ![](https://mcusercontent.com/28aa61b05b8642d24892abfb3/images/4adf0c47-72c3-4911-a39e-36de664c4b07.png) ナンバーワン週刊誌『週刊文春』が有料サービス導入にあたりXimera Aeを採用したのは、キメラのサブスクリプション知見を生かし開発した管理プラットフォームであるためです。Ximera Aeは継続的に機能拡張できるSaaSのメリットを生かし、有料読者獲得に向けた機能を拡充する計画で、『週刊文春 電子版』の成長に引き続き貢献していきます。 Ximera Aeの特徴 CMSの大規模改修不要 :既存ウェブサイトを利用しつつ、最短1週間で導入可能 低廉な導入・運用料金 :初期費用なし。少額の月額基本料金と売上に応じた手数料のみ 明瞭なダッシュボード :サブスクリプション事業状況を一覧、メディア運営の意思決定を支援 なお、『週刊文春 電子版』を皮切りに、新聞社メディア、出版社メディアでの採用が控えています。今後のXimera Aeによるウェブメディアのサブスクリプション化の広がりにどうぞご期待ください。 株式会社キメラ 代表取締役社長 大東洋克からのコメント このたび『週刊文春 電子版』のサービス提供開始にあたり、有料会員サービスの基盤としてXimera Aeを採用いただけたことを心から光栄に思っています。今後続く新聞社、出版社におけるサブスクリプションサービスの拡大においても『週刊文春 電子版』の事例が多くの皆様への刺激となると思います。伝統的な文字コンテンツの価値が再認識され、新たなデジタルサブスクリプションの形が生まれることに期待し、Ximera Aeがさらなる拡大への起爆剤となるよう引き続きプロダクトの機能向上に努めていきます。 [Ximera Aeサービス内容紹介・お問い合わせ](https://ximera.com/6b1131cd20ff4d5d9e0da6b65681c2a7) --- ► Ximera Aeとも関わる、キメラと凸版印刷との取り組みについて、[MUGENLABO Magazine](https://mugenlabo-magazine.kddi.com/list/toppan-ximera/)にインタビューが掲載されています。 --- # オンラインイベント「メディアのエンゲージメントを高める!ニュースレター最前線」を3月22日に開催 いまデジタルメディアが「読者エンゲージメント」を重視する背景を踏まえて、ニュースレター(メールマガジン)が急激に注目を集めています。枯れた技術というイメージを持たれがちですが、巨大市場になっていることからも、読者エンゲージメント向上やマネタイズへの期待が見て取れます。 今回のウェビナーでは、海外を中心としたニュースレターの最新トレンドや、パブリッシャーのメディア事業にニュースレターを活用するヒントをお伝えします。当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、役立つ情報をウェビナー形式でお伝えします。 ウェビナーでお伝えする内容 読者エンゲージメント向上の「鉄則」 売上や講読者増加も見込める、ニュースレターの意外な効果海外のニュースレター活用事例 よくあるニュースレターのお悩み&改善のヒント 明日から使える、ニュースレター活用チェックリスト こんな方におすすめのウェビナーです ニュースレター運用が行き当たりばったりになっている、手応えを感じられない 読者に興味や愛着を持ってもらえるコミュニケーションがしたい 読者離れを防ぐためのヒントがほしい ニュースレターの最新動向や成功事例を知りたい イベント概要 日時:2021年3月22日(月)17:00~18:00 参加費:無料 形式:オンライン(お申し込み後に配信URLをご連絡します) 参加方法:インターネットに接続できるPC・スマートフォン 参加資格:日本国内のパブリッシャー(新聞、出版、放送局)にお勤めの方 主催:株式会社キメラ 登壇:株式会社キメラ メディアストラテジスト 中山明子 --- ► キメラの公式サイトが [ximera.com](http://ximera.com/) になりました。Notionで作成されています。現在noteに掲載しているブログエントリーも、今後はximera.comへ集約していきます。 --- # 「日本の広告費 2020」「Twitterスーパーフォロー」「Googleのプライバシー配慮」を読み解く 今回のニュースレターはキメラからの2つの大きなお知らせがあったので、パブリッシャー業界情報はコンパクトにお届けします。 - 電通が毎年発表している[「日本の広告費」の2020年版が公開](https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0225-010340.html)されました。「インターネット広告費」が前年比105.9%で増加しているものの、「マスコミ4媒体広告費」「プロモーションメディア広告費」が大幅に減少しています。[MOLTSの西 正広氏](https://moltsinc.co.jp/member/masahiro-nishi/)が作成したという、Googleデータポータル「[電通 日本の広告費ダッシュボード](https://datastudio.google.com/reporting/17tZ_fmxqUVx4epMPyOW23jqGKskunmWx/page/qE4XB)」の「広告費年別推移(Animation)」で2008年から2020年への変化をみると、その変化の激しさが手にとるようにわかります。 - Twitterの機能拡充が止まりません。2021年1月21日にニュースレターサービスの「Revue」を買収しましたが(詳細は「Ximera Newsletter #29」参照)、[初の有料サービス「スーパーフォロー」の2021年内リリースが明らかに](https://www.asahi.com/articles/ASP2V4Q7KP2VUHBI012.html)なりました。料金はフォロワーにコンテンツを提供するユーザーが自由に設定でき、特別なツイートを見たりニュースレターを購読したりできるようになるとのことです。 - Googleが公式ブログで発表した「[よりプライバシーに配慮したウェブの実現にむけて](https://japan.googleblog.com/2021/03/a-more-privacy-first-web.html)」が、デジタル広告業界で話題です。第三者クッキー(3rd Party Cookie)のサポート終了予告とともに「FLoC ベースのコーホート」の導入に言及しています。この内容はデジタル広告技術に精通している人でも正確な理解が難しい内容ですが、「[情報BOX:クッキー利用制限、オンライン広告にもたらす変化は](https://jp.reuters.com/article/alphabet-google-research-idJPKCN2AX0CJ)」や「[GoogleのFLoCについて個人的な所感](https://note.com/takashiitou1977/n/nfa2dcc5ede71)」がその理解を手助けしてくれるかもしれません。 --- 最後までご覧くださり、ありがとうございます。みなさん、体調はだいじょうぶでしょうか。今週キメラが Ximera Ae をリリースさせていただくなか、わたしは急に体調を崩してしまいました。一晩ゆっくり休むことで大事はありませんでしたが、3月はパブリッシャーの方々も忙しくされる月かと思います。チームやパートナーはもちろん、ご自身とご家族のお体も忘れずしっかり休めたいですね。3月はまだ冷えます。暖かくしてお過ごしください。 [ニュースレター](https://app.notion.com/p/0c35dd9fa351409396d61be6223953cb?pvs=21) --- ## メディアのエンゲージメントを高める!ニュースレター最前線(2021/3/22) URL: https://ximera.com/posts/e70124251e 公開日: 2021-02-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、パブリッシャーのニュースレター運営に関するオンラインイベントを開催しました。 # アーカイブ動画
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-249213604](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/ximeras-insight-249213604) # イベント概要 国内外のデジタルメディアがページビュー(PV)偏重から脱却しようとする動きのなかで、新たな指標として支持されているのが「読者エンゲージメント」です。読者の関心・関与を高めることは、コンテンツの評価にとどまらず、サブスクリプションやコマース(製品、サービスの商取引)などの個人ユーザーへの直接課金を考えるうえでも欠かせません。 ニュースレター(メールマガジン)は今、こうした背景を踏まえて急激に注目を集めています。枯れた技術というイメージを持たれがちですが、米国発のニュースレタープラットフォーム「[Substack](https://substack.com/)」は25万人の有料購読者を抱え、年間約700万ドル(約7億2600万円)を超える巨大市場を築いています。2021年1月にTwitterがニュースレター配信サービスの「Revue」を買収したことからも、ニュースレターによる読者エンゲージメント向上やマネタイズへの期待が見て取れます。 今回のウェビナーでは、海外を中心としたニュースレターの最新トレンドや、パブリッシャーのメディア事業にニュースレターを活用するヒントをお伝えします。キメラは2019年1月以来、50媒体を超える国内パブリッシャーの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などをご支援している企業です。当社がつちかってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、役立つ情報をウェビナー形式でお伝えします。 # こんな方におすすめのウェビナーです - ニュースレター運用が行き当たりばったりになっている、手応えを感じられない - 読者に興味や愛着を持ってもらえるコミュニケーションがしたい - 読者離れを防ぐためのヒントがほしい - ニュースレターの最新動向や成功事例を知りたい # ウェビナーでお伝えする内容 - 読者エンゲージメント向上の「鉄則」 - 売上や講読者増加も見込める、ニュースレターの意外な効果 - 海外のニュースレター活用事例 - よくあるニュースレターのお悩み&改善のヒント - 明日から使える、ニュースレター活用チェックリスト - 質疑応答 --- ## Googleが豪州の検索サービス停止を警告、ニュース使用料支払い義務法案めぐり(2021/1/29) URL: https://ximera.com/posts/164fc4e4ee 公開日: 2021-01-29 著者: Ximera 弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) 豪州で昨年からざわついていた、プラットフォーマーに対するコンテンツ使用料支払い義務化法案。Googleと豪政府の対立が激化しています。[Googleが検索結果から豪州メディアを排除する“実験”を実施した](https://www.businessinsider.jp/post-227972)ほか、[豪州政府を非難する声明](https://blog.google/around-the-globe/google-asia/australia/8-facts-about-google-and-news-media-bargaining-code)を発表。豪州首相は「[脅しには応じない](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-22/QNBDJHDWX2PT01)」と発言しています。 Googleは豪、独、ブラジルなど6か国の特定メディアに対してコンテンツ使用料を支払う意向を[2020年に表明しています](https://www.asahi.com/articles/ASNB23S9HNB2UHBI006.html)が、豪政府だけでなく、[独メディア](https://wired.jp/2014/06/24/german-publishers-google-news/)、[ブラジルメディア](https://www.dw.com/en/brazils-papers-without-google-news/a-16326960)でもGoogleに対する批判が強いことが背景にあるようです。 なお、スペインでは2014年に[Googleニュースを廃止](https://wired.jp/2014/12/17/google-news-spain/)しており、Googleはその背景を[同社ヘルプサイトで説明](https://support.google.com/news/publisher-center/answer/9609687?hl=ja)しています。 日本国内では、Yahoo!ニュースやSmartNews、LINEニュースといったGoogle以外のニュースプラットフォーマーの存在感が大きく、Googleにからむ変化が直近では起きない状況ですが、「コンテンツ使用料」の視点は持っておきたいものです。 --- ## 2021年、パブリッシャーがデジタルメディアで進む道(2020/1/15) URL: https://ximera.com/posts/fc7ddb07ec 公開日: 2021-01-29 著者: Ximera 2021年1月29日 17:16 こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) 新型コロナウイルスワクチンの供給が始まり収束に向けわずかな光が差し込むなか、2021年が明けました。感染予防に伴う生活様式の変化は、読者のメディアへの向き合いかたにも影響してきます。2021年はメディア業界に変革がより求められるのは間違いないでしょう。 新年最初のニュースレターは、英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所が2021年1月7日に公開した「[ジャーナリズムとメディア、技術のトレンド・予測」レポート](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2021)」を特集します。 ### サブスクリプションは広告より重要な収益源 43か国のパブリッシャーで上級職に就く234人の調査データを交えた1万単語以上に及ぶこのレポートでも、サブスクリプションの重要性は大きく取り上げられています。調査対象者の76%がサブスクリプションがディスプレイ広告とネイティブ広告より重要な収益源になると回答し、この比率は2018年の調査と真逆の割合に。2年で業界の認識がひっくり返ったことになります。 サブスクリプションの話題ではそのほかにも、以下の話題が挙げられています。 > ・Zuoraによると、出版系メディアはNetflixなど動画配信サービスに次いで2番目に急成長している領域。ニュース全体の平均サブスクリプション契約数は、2020年3月から5月までを比較すると、前年よりも約110%増加。 ・ポルトガルのパブリッシャーCEOは「デジタルサブスクリプションの数は昨年50%以上増加し(2021年には) 25%から30%の増加を期待する」と語る。 ・ただ、多くのパブリッシャーにとって、デジタルサブスクリプションは紙媒体の大幅減少、紙とデジタルの広告収益を補うにの十分ではない。 > ### eコマースとイベントをサブスクリプションの次に重視 しかしサブスクリプションに頼るだけでは生き残りは難しい見方が多くなっています。調査対象者の多くが、持続可能な独立したメディアには、複数の収入源によってサポートされる異なるアプローチが必要であると回答しています。収益源としてイベントと並んで挙げられるeコマースは、2021年もこれまでとは違ったアプローチが増えていきそうです。 > ・GroupMによるとパブリッシャーは2021年に小売業者のように見え始めるという。 ・Wirecutterなどのレビューサイトが、アフィリエイト収益で成功。 ・貴重なファーストパーティデータを収集できる追加メリットがある。 ・BuzzFeedは独自のブランド料理製品や、ジェネレーションZとミレニアル世代を対象とした健康・アダルトグッズ分野をローンチ。 > 先進的なパブリッシャーが実施している事業を、みなさんがすべて真似る必要はありませんが、ポイントとなるのは「コンテンツそのもの」「収益源をこれにする」ではなく「コンテンツを軸としたプロダクト」という視点です。自社が持つ資産と強みを生かしつつ社内変革を進め、読者に役立つプロダクトを試行錯誤しながら立ち上げ、改善していく。社会情勢が激変している2021年だからこそ、地道なのチャレンジから果実が得られるときはやってくるはずです。 ほかにもレポートではこれらのテーマにも言及しています。 > ・ジャーナリズムの公共性と客観性 ・プロダクト・マネージャーが重要な役割を担う ・音声が収益をもたらす市場として拡大 ・ニュースレターが有料会員の解約を防く ・プラットフォームがパブリッシャーにコンテンツ利用料を支払う > --- ## コミュニティドリブンで形成/成長していくメディア URL: https://ximera.com/posts/a0ee63f1c0 公開日: 2021-01-26 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #5 2021年1月26日 12:40 ## はじめに メディア・パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていくマガジン「[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)」の第5回となる今回は、コミュニティドリブンで形成、成長していくメディアについて現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきたいと思います。 近年のD2Cムーブメントが代表するように、まず特定の世代に対して特定の商品を作り込んで提供し、熱狂的なファンを獲得、その上でその[ブランドとコミュニティを両輪で回していく](https://digiday.jp/brands/give-your-community-what-they-want-dtc-brands-are-increasingly-leaning-on-merch/)ことで成長する事例がよく見られます。あらゆるものが溢れている現代では、よりニッチで熱狂を生み出すものが求められているのです。 この流れはD2Cブランドだけにとどまらず、メディア界隈でも類似した動きが起こっており、コミュニティが求めるものを提供していく重要性がますます高まっています。 本稿ではコミュニティドリブンでビジネスを行っているメディアから、(1)アンバサダー型、(2) プロフェッショナル型、(3) ファンクラブ型 の3パターンを取り上げます。それぞれの特徴を見ていくことで、コミュニティドリブンなメディアがどうあるべきか考えていきます。 ## アンバサダー型コミュニティ 1つ目としてアンバサダー(友人や知人に積極的にプロダクトを紹介してくれる人)を中心にしたコミュニティ作りによる成長を遂げたメディアをとりあげます。 ミレニアル世代のビジネスマンをターゲットに月〜土に配信する週6回のビジネニュースレターを提供するMorning Brewは、2017年には[10万人だった登録者を18ヶ月後には150万人](https://medium.com/the-mission/how-morning-brews-referral-program-built-an-audience-of-1-5-million-subscribers-3315482c1aa5)まで押し上げ、売上も1年で1000万ドル(約10億円)あげるニュースレターとなりました。特にMorning Brewのアンバサダーによるリファーラル(招待)プログラムは大きな成果をあげており、ニュースレター登録者の30%の獲得に寄与しています。またMorning Brewのe-mailでのリファーラル経由でのランディングページからSign-upまでのコンバージョン率は実に75%と、e-mail以外での媒体経由でのリファーラルに比べ35%も高く、e-mail経由でのユーザ獲得の強さを物語っています。 当然ながらリファーラルプログラムを整備すればグロースが自動的についてくるわけではありません。プロダクトがマーケットフィットしていることを前提に、アンバサダーによるリファーラルプログラムを中心としたコミュニティを作りあげることでそれが成長ドライバーとなります。Morning Brewのリファーラルプログラムの特徴は友人に紹介してSignupさせるリファーラルが行われれば行われるほど紹介者のリワードが段階的に良くなっていくマイルストーン型(もしくはTiered型)となっていることです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/43946164/picture_pc_f9b8528ba223f079428647dc4c2b40df.png?width=800) 画像出典: [MISSION.ORG](https://medium.com/the-mission/how-morning-brews-referral-program-built-an-audience-of-1-5-million-subscribers-3315482c1aa5) 上記のリワード設計には読者からの声を拾い上げることはもちろんですが、Morning Brew Insiderと呼ばれるユーザコミュニティでのディスカッションや投票内容も吸い上げた上でリワードを決めています。ユーザコミュニティには10人のリファーラルを行うとはじめて入会することができる設計になっており、コミュニティに参加すること自体もリワード化されています。このユーザコミュニティは1万人のメンバーで構成されており、Morning Brewで共有された最新ニュース、トレンド、イベントなどの議論で盛り上がる場が形成されています。これは、ブランドへのエンゲージメントが高く積極的にユーザ獲得に協力してくれるコミュニティに他なりません。 また、Tシャツ、セーターなどのグッズリワードについては、品質に徹底的にこだわることでユーザのブランドへのロイヤリティを高めるとともに、Tシャツそのものの品質に満足してもらうことでユーザが生活の中でグッズを身につけ、ユーザ自身が歩く広告塔化することをうまく仕掛けています。 Morning Brewのリファーラルやリワードの仕組みは、単に友達紹介キャンペーンといったものではなく、非常に巧みに設計されています。これによってユーザコミュニティが活性化され満足度が向上する上、パブリッシャー側には低いCPAでのユーザ獲得も実現することが可能になります。 ## プロフェッショナル型コミュニティ 2つ目のパターンは、プロフェッショナル型のコミュニティです。これは特定の分野でのプロフェッショナル同士が構成するコミュニティです。たとえばフリーランスライターのコミュニティである[Study Hall](https://studyhall.xyz/)は[有料のニュースレターとコミュニティ](https://studyhall.xyz/community/)の提供を行っています。 Study HallのThe Digestと呼ばれる有料ニュースレターは月額2ドル(約200円)で、 The New York TimesやMedium、VICEなどでフリーランサーとして執筆をしているAllegra Hobbsによるメディア業界レポート、エッセイ、インタビューなどが週1回配信されます。The Digestには2021年1月現在で4500人以上の登録者がいます。 Study Hallの課金モデルはいくつか段階があります。The Digestに加えてジョブリスティングやフェローシップなどの案内、ライティングノウハウやジャーナリズムに関する戦略やFAQといった学習コンテンツも受けられるStudy Hall Listservという一つ上のプランは月額4ドル(約400円)、Listserveに加えてSlack上のプライベートコミュニティへの参加、400人以上の編集者と文献のデータベースへのアクセス権が付与されるStudy Hall Networkと呼ばれるより上位のプランが月額11ドル(約1100円)で提供されています。Study Hall Networkは特にフリーランスライターが効率的に技能、職探し、人脈を形成していくことに役立っており、特定分野でのプロフェッショナル型コミュニティを形成することに成功しています。 Study Hallは、メディア業界の出来事をデイリーベースでニュースレター配信を行う[Deez Link](https://deezlinks.substack.com/p/the-best-advice-wisdom-and-general)、Podcast業界に関する分析や見解などを配信する[Hot Pod](https://hotpodnews.com/)と協力関係を結んでおり、合計3万5000人のサブスク登録者に対して[スポンサー広告のネットワーク](https://studyhall.xyz/guides/sponsorships-study-hall-hot-pod-and-deez-links/)を運用しています。ここで興味深いのは、広告主としてSubstackのニュースレター配信を行っている個人ライターの[Judd Legum](https://popular.info/)や、トークンベースのリワードが受け取れるコミュニティ型ソーシャルメディアの[Voice.com](https://www.voice.com/learn-more/)などが広告主となっていることです。3社の広告ネットワークでのユーザ属性は、ニューヨーク近郊のミレニアル世代のメディア業界人が主なセグメントであり、ローカルかつ専門領域に特化したコミュニティで、関係の深いメディアや業界人が広告を打つことで相互に業界を活発化している点は、コミュニティドリブンなメディアが付加的に生み出している価値に思えます。 ## ファンクラブ型コミュニティ 3つ目のパターンは、ファンクラブ型です。これは一番分かりやすいと思いますが、いわゆるインフルエンサーやセレブリティがファンに対して提供するコミュニティです。古くはアイドルやアーティストなどがファンクラブ会員向けの月報や限定チケットやグッズなどを販売する場として機能していきました。近年ではインフルエンサーなどの個人が誰でもファンコミュニティを運営できるプラットフォームが出てきています。 例えばUSのスタートアップである[Subify](https://subify.vip/)はYouTuberの[Logan Paul](https://www.youtube.com/channel/UCG8rbF3g2AMX70yOd8vqIZg)(登録者数2270万人)や[NELK](https://www.youtube.com/channel/UCkhxWF5CTMUgxneqAFP96LQ)(登録者数617万人)のファンクラブサイトのバックエンドを担っています。Logan Paulのファンクラブである[Maverick Club](https://club.maverickclothing.com/)では月額19.95ドル(約2000円)のサブスクリプションに加入にすることで、VIP会員となり、独占コンテンツ、公式グッズの15%割引、無料配送、ファンクラブ限定グッズ、毎月誰かに1万ドル(約100万円)をプレゼント、Logan PaulとのZoomコール(毎週)、Logan Paulチームとのディナーといった様々な特典を受けれるようになります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/43947042/picture_pc_383fe7784cbadc7680c40b22fc2eb2cd.png?width=800) Subifyはこうしたインフルエンサーのコミュニティ形成をサポートしており、ファン醸成に関する専門家のアサイン、マーケティング協力、マネタイズ支援など行うことで、実行面の支援を行っています。 新興のD2Cブランドやインフルエンサーは、オリジナルのビジネスはもちろんですが、広告、物販、ファンクラブなど収入源を多角化しており、リスクヘッジを行っています。その中でファンコミュニティの形成とブランドを強めることで、新たなプロダクトのテストやロンチもやりやすくなるため、今後さらにコミュニティの重要性が高まることが考えられます。 ## おわりに こうしたコミュニティ形成で共通することは、いずれも上辺だけの取り繕った関係性ではなく、ユーザが積極的にブランドを支持してくれるような相互の関係性を作り上げていることです。それをファンからの自発的な動きだけではなく、リワード設計やコミュニティ運営を提供側がリードしていくことで、より理想的な状態へもっていけることが今回ご紹介した例から分かります。 こうした動きは、Passion Economyの概念や、SDGsの概念ともつながってくる話で、あらゆる活動をビジネス的にも環境的にも持続可能に行えるよう、今後ますます個人や企業がコミュニティをうまく形成していくことが求められます。 --- ## 「Googleニュースショーケース」、パブリッシャーと政府を巻き込み大混戦(2021/2/25) URL: https://ximera.com/posts/50d559f37b 公開日: 2021-01-18 著者: Ximera 2021年1月18日 17:51 こんにちは。キメラです。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここから先は【2021年2月25日配信号】の内容を一部再編集してお届けします。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 「Googleニュースショーケース」、パブリッシャーと政府を巻き込み大混戦 「Googleニュースショーケース」に関する報道が、このところ世界各国で相次いでいます。 日本国内も日経電子版が2021年2月11日に「[Google、英でニュース新サービス 日本でも開始合意](https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110CX0R10C21A2000000/)」を掲載しています。 [2020年10月に独とブラジルで先行サービスを開始](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2010/02/news057.html)しており、[アジア太平洋地域では2021年2月に豪州で](https://japan.cnet.com/article/35166183/)、このほか英国とアルゼンチンでのサービス開始も明らかになっています。 前述の日経電子版報道によると、日本でのGoogleニュースショーケースのサービスは「(アジア太平洋地域では)豪州の次の2か国目」とあり、そう遠くない未来に国内でも開始しそうです。 Googleニュースショーケースは、サービス提供国内のモバイルアプリ「Google News」のパネルやモバイルウェブの「Google News」、iOSアプリ「Google検索」の「Discover」などで閲覧できます。 既存サービスのGoogle検索やGoogleニュース、Google Discoverと異なるのは、パブリッシャー側に掲載コンテンツの選択権がある点。表示コンテンツがGoogleのアルゴリズムに左右されません。同サービスで閲覧された記事に対し、Googleはコンテンツ使用料をパブリッシャーに支払うため、パブリッシャーは自社メディア記事をGoogleニュースショーケースに転載することで収益を失うリスクを最小化できます。いわば、日本におけるYahoo!ニュースと近い枠組みです。 「パブリッシャーが選んだ記事をGoogleのサービスに掲載でき、掲載に応じてコンテンツ利用料が得られる」ーー。響きはよさそうですが、Googleニュースショーケースが独やブラジル、豪州で先行してサービス開始している背景には「プラットフォーマーと各国のパブリッシャー・政府の対立」があります。 - [ニュースに対価を払う、Googleの「懐柔姿勢」に疑問の声:「規制に先を越されないためだ」](https://digiday.jp/platforms/stay-ahead-of-regulations-publishers-question-googles-motives-in-paying-for-news/) 特に豪州では、政府の「ニュース使用料支払い義務法案」に対してGoogleとFacebookが“実力行使”に踏み切る事態となりました。 - [グーグルが豪メディアを検索結果から排除する“実験”…「途方もない支配力を示す、背筋が凍るような実例だ」](https://www.businessinsider.jp/post-227972) - [Facebookがオーストラリアのニュース記事シェアを禁止](https://www.gizmodo.jp/2021/02/facebook-bans-news-article-sharing-in-australia.html) - [Facebookがオーストラリア政府と合意、ニュースコンテンツ共有の再開を発表](https://jp.techcrunch.com/2021/02/24/2021-02-22-facebook-to-restore-news-sharing-in-australia-after-government-makes-amendments-to-proposed-law/) この豪州での対立の詳細はキメラ Newsletter No.28「[Googleが豪州の検索サービス停止を警告、ニュース使用料支払い義務法案めぐり](https://app.notion.com/p/dc01349cad9d4201b000fb7e765119f5?pvs=21)」でもご紹介しています。  Googleニュースショーケースは、コンテンツ使用料をめぐるパブリッシャーや政府との対立を回避し、一方でプラットフォーマーとしての優位性を維持する意図がありそうです。ただ、プラットフォーマーとの向き合い方によっては、メディア成長の「1つのチャネル」としてパブリッシャーがGoogleニュースショーケースをうまく使えるかもしれません。なにごとも、適度の距離感と、知恵を総動員することが肝要です。 --- ## メルマガと侮るなかれ、ユーザーとつながる「ニュースレター」最新事情(2021/2/12) URL: https://ximera.com/posts/616958039e 公開日: 2021-01-18 著者: Ximera 2021年1月18日 17:51 こんにちは。キメラです。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここから先は【2021年2月12日配信号】の内容を一部再編集してお届けします。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### メルマガと侮るなかれ、ユーザーとつながる「ニュースレター」最新事情 「メルマガ」とも略されるメールマガジン。電子メールを利用したユーザーへの情報提供チャネルとしてインターネット黎明期から存在するサービスです。キメラも「ニュースレター」としてこのようにお届けしています。 ニュースレター(メールマガジン)は、パブリッシャーのメディア運営で重要な役割を担っています。ニュースレター運用の歴史が長いメディアは、FacebookやTwitterなどソーシャルメディアからの流入よりも、ニュースレターで配信した記事リンクからの流入が圧倒的に多いことがそれを物語っています。 そのようなニュースレターですが、いま、ウェブメディアが事業の中心でない企業のニュースレターサービスの動きが活発です。 ニュースレター界隈では、Substackの話題が途切れません。 [パブリッシャーを退社した多数のジャーナリストがSubstackでニュースレターを立ち上げ、個人としてジャーナリズム活動を維持する流れ](https://forbesjapan.com/articles/detail/39423/)が起きています。 [Twitterは2021年1月21日にニュースレタープラットフォーム「Revue」を買収しました](https://japan.cnet.com/article/35165633/)。はやくも[Twitterは同社サービスのUIに組み込んでいます](https://jp.techcrunch.com/2021/02/02/twitter-revue-japan-launch/)。連携したTwitterアカウントの過去ツイートをドラグ・アンド・ドロップで本文に貼り付けて、手間をかけずにニュースレターを作成して送信できること、そして課金機能もあるため、有料ニュースレターもすぐ開始できるのが特徴です。 [女性向けニュースレター専業メディア「Newsette」も興味深い動きです](https://forbesjapan.com/articles/detail/39540)。すでに50万人のユーザーを獲得していますが、同メディアのサイトには、メールアドレス登録フォームがあるだけ。コンテンツはウェブメディアとして公開するつもりはないとのこと。人気コスメブランドをベンチマークとして、「コミュニティー」をニュースレターによるメディア運営の中心に据える戦略です。ロイヤルユーザーとだけ向き合う、という考え方といえそうです。 [WhereBy.Usのニュースレター配信プラットフォーム「Letterhead」](https://jp.techcrunch.com/2021/02/01/2020-12-23-letterhead-wants-to-be-the-shopify-of-email-newsletters/)は、地方ニュースウェブメディアを運営していたパブリッシャー社内ツール発祥。新着記事リンクとコラム全文を配信するだけでなく、スポンサードメールやメール内広告、メール内ペイウォールという、ニュースレター自体の収益化を支援する機能を備えています。パブリッシャー視点で作られているからこそのサービスです。「当初、我々の目的はローカルメディアを作成して、読者に地元の情報を提供し、新世代のローカルニュース読者と関わりを深めてサービスを提供することでした」と共同創業者兼CEOは語ります。ロイヤルユーザーの育成、維持、そしてウェブメディアのサブスクリプション事業においても重要な位置付けであるニュースレター。 「最新記事を配信する」に留まらないニュースレターには、さまざまな可能性が秘めています。 --- ## 2020年、パブリッシャー事業の総括(2020/12/17) URL: https://ximera.com/posts/fe8879b3d4 公開日: 2021-01-18 著者: Ximera 2021年1月18日 17:51 こんにちは。キメラです。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここから先は【2020年12月17日配信】「2020年、パブリッシャー事業の総括」の内容を一部再編集してお届けします。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 1. 2020年、パブリッシャー事業の総括 早いもので、2020年も残りわずかとなりました。パブリッシャーの皆様にとっては、コロナ禍やオリンピックの開催延期など、事業に大きな影響を与えるできごとに立ち向かってきた1年かと思います。今年最後となるニュースレターでは、そんな1年間を総括するための情報をお知らせします。 新型コロナウイルスによって、紙媒体の発行は全世界的にダメージを受けました。日本では[100誌以上の雑誌が休刊を発表](https://www.seventietwo.com/ja/business/Magazine-Covid)しています。『アサヒカメラ』『東京ウォーカー』をはじめ、広く名を知られた雑誌の休刊・廃刊に驚いた方も少なくないでしょう。米国では『コスポモリタン』や『エル』などの有名ファッション誌も発行頻度を減らしており、[WWDの調査](https://finance.yahoo.com/news/did-2020-print-magazines-120042248.html)によれば26誌が昨年よりも発行ペースを落としているといいます。 他方、追い風が吹いたのはデジタルメディアです。[8月にNew York Timesのデジタル収入が紙を上回ったニュース](https://www.nytimes.com/2020/08/05/business/media/nyt-earnings-q2.html)に始まり、[FIPPの調査](https://www.fipp.com/resource/global-digital-subscription-snapshot-2020-q4/)によれば、2020年9月までのデジタルサブスクリプション収入は、すでに2019年の丸1年分に匹敵しているといいます。 [キメラが2020年頭に公開したnote](https://note.com/ximerainc/n/n9ba0006253a4)では、近年のサブスクリプションのトレンドを以下のように分析しています。 > ・主力事業化 紙の減収を補う手段として高い期待を持たれている ・軽量化 SaaSやプラットフォームを活用し、導入コストを低減 > コロナ禍の影響により、こうしたトレンドは来年以降もさらに強まるとみられます。しかし、焦りは禁物。見切り発車の事業運営は、長期的には損失がかさんでしまうものです。 キメラではデジタルメディアの事業設計に役立つ記事を[無料で公開](https://note.com/ximerainc/m/m7a7ab719233b)しています。新年度に向けてデジタル事業の方向性をお考えの方にとってのヒントになれば幸いです。 ### 2. ペイウォール・モデル大全: 現状と新たな手法 パブリッシャーが読者を収益源の中心にした投資を続けるなか、どのペイウォールモデルを突き詰めたり、テストしたりするべきかという問題は、多くのChartbeatパートナー企業の間で熱い話題となっています。 ペイウォール主導の戦略を検討しているなら、この記事を読めば、主要なペイウォールモデルを理解し、それぞれがどのように自分に適しているのかを理解できます。また、先進的な企業が、成功を目指すにあたりこれらのモデルをテストするために何をしているのかを知ることも重要です。 ハードペイウォール・モデル:門に鍵をかける ハードペイウォールを簡単に言うと、すべてのコンテンツの門を閉じて、コンテンツ全体を閲覧するためにユーザーはサブスクリプション契約が必要となるものです。エコノミストはこの10年間でこのモデルを採用しており、ウォールストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズなどの出版社は1990年代以降、ハードペイウォールの利用に成功しています。 ペイウォール・モデル大全のつづきは、[Chartbeatブログ](https://blog.chartbeat.jp/posts/paywall-model-landscape-breakdown/)で読むことができます。 ### 3. キメラのSlackに挙がったニュース ニュースレターのプラットフォームSubstackが、RSSリーダーをベータリリースした。購読しているニュースレターは自動的に表示され、ほかのRSSフィードも読み込むことができる。SubstackのCEOは「メールの受信箱が理想的な読書体験ではない人たちのために、気晴らしになる空間を作ることを目標にしている」と[The Vergeに語った](https://www.theverge.com/2020/12/16/22174000/substack-rss-reader-newsletter-subscriptions)。メルマガのプラットフォームがRSSリーダーを作る2020年。混乱するだろうか。[Substack Blog](https://blog.substack.com/p/new-reader-homepage) メンバーシップ型のスロージャーナリズムを追求したメディアが英語版を閉鎖する。コレスポンデントはメンバーシップ型の購読料で作られ、今日のできごとを速報せず、毎日起きていることの背景にある構造に着目する姿勢を貫いていた。今回の決定は、財政的な問題が理由で、その背景にはパンデミックによるヘッドラインの独占があり「速報性のないニュース」を続けることが困難になったという。[The Correspondent](https://thecorrespondent.com/834/the-correspondent-will-stop-publishing-on-1-january-2021-wed-like-to-thank-our-members-for-their-support/12825252-8c4236ca) --- ## メディアの次世代トレンド:インタラクティブメディアの到来 URL: https://ximera.com/posts/3cb0398995 公開日: 2021-01-13 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #4 2021年1月13日 ## はじめに メディア・パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていくマガジン「[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)」の第四回となる今回は、インタラクティブ(双方向)メディアとコンテンツについて現状のトレンドを見ながら、未来を考えていきたいと思います。 テレビ 、映画、ラジオ、インターネット動画、Podcastなどをはじめ、これまで多くのメディアが視聴者に向けてコンテンツを発信し、視聴者側で受動的にコンテンツが消費されてきました。このような受動的なコンテンツ消費の場合、ターゲットとなる特定のユーザセグメントに合わせたコンテンツが提供されますが、コンテンツ自体は誰に対しても同じ静的なものが提供されます。ここでターゲットにそぐわないコンテンツを提供すると、当然ながらユーザエンゲージメントは低くなる上、配信した後でそれを挽回することは基本できません。 そこでエンゲージメントを高めるために有効な策の一つと考えられているのがメディアのインタラクティブ化です。ここではコンテンツ視聴者のインタラクションによってコンテンツ自体やコンテンツ提供者の提供するものがダイナミックに変わることをメディアのインタラクティブ化と呼んでいます(インタラクティブ化したメディアを便宜的にインタラクティブメディアと呼びます)。 ユーザインプットによってコンテンツが変わるという意味では、そもそもゲームは最初からインタラクティブメディアでした。コントローラの操作というユーザインプットによってゲームの内容が変化し、さまざまな変化が現れます。ここで取り扱うインタラクティブ化は、冒頭であげた一方向性の動画、音声、テキストを提供してきた従来のメディアがゲームのような双方向性を持つことで、より広いユーザ層がコンテンツに触れる機会が増え、エンゲージメントが強化されることを指しています。 ## 従来メディアのインタラクティブ化の背景 それではなぜ近年、従来のメディアにインタラクティブ化が起きてきているのでしょうか。その理由として、(1) 視聴者の状態をトラッキングできるデバイスが普及したこと、(2) 技術の進化により多種多様なコンテンツを自動生成できるようなったこと、(3) ビジネスのKPIがよりエンゲージメント重視に変わってきていることがあげられます。 (1)について、スマートフォンをはじめとして、Webやアプリの操作履歴、カメラに映る表情情報、マイクを通る音声情報、GPS/ジャイロセンサー/Bluetoothなどによる各種センサー情報が当たり前のようにリアルタイムに取得され、それを元にダイナミックに振る舞いを変えるためのインプットを得ることができるデバイスが爆発的に普及しました。 (2)について、近年のAIの進化により、リアルタイムにユーザの表情をトラッキングしアバター化する、自然に読めるレベルの文章を自動生成するといったことが可能になり、従来では実現が難しかった個々人に合わせたダイナミックなコンテンツ変形を実現できるようになりました。 そして(3)は世の中のさまざまなものやサービスがサブスク型へ移行していることに象徴されるように、視聴数やユーザ数が最重要なKPIではなくなり、リテンションやエンゲージメントが最も重要とされるようになってきています。エンゲージメントを重視するということは、ユーザのアテンションを常に得ることができるプロダクトやコンテンツを提供する必要があり、その一つの解決策が一方通行のメディアではなく、双方向のインタラクションがあるインタラクティブメディアを作るということです。 今回はそうしたインタラクティブメディアに類型3パターン(ストーリー分岐型、パーソナライズ型、リアルタイム参加型)について具体例を見ながらトレンドを考えていきたいと思います。 ## インタラクティブメディアの形① ストーリー分岐型 1つ目のパターンが、ストーリー分岐型です。昔から存在している分かりやすいストーリ分岐型の例として、[ゲームブック](https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF)(アドベンチャーブックとも呼ばれる)があります。1970年代後半から80年代にかけて出版されたゲームブックは行動の選択肢によっていくつものストーリーを楽しめる本で、ゲーム好きの少年たちを虜にしました。近年ではそのゲームブックを技術の発達により進化させたようなコンテンツが増えてきました。現代のストーリー分岐型コンテンツはデジタル化、ゲーミフィケーション化され、さらには行動の選択肢と分岐が非常に多彩になっています。 例えばNetflixは、2018年提供の「[ブラック・ミラー:バンダースナッチ](https://www.netflix.com/jp/title/80988062)」という作品でユーザがストーリーの分岐を選べる動画を提供しました。
この作品では[5通りの結末と1兆通り以上のストーリー分岐がある](https://www.indiewire.com/2018/12/black-mirror-bandersnatch-endings-one-trillion-story-combinations-netflix-streaming-1202031075/)(シークレットエンディング含めると5通り以上の結末があります)とされ、ある視聴者は10分でゲームオーバー、ある視聴者は1.5時間かかるといったように、選んだ分岐で大きく体験が異なるものとなりました。ゲームオーバーにつながった選択肢を選んだ地点まで戻される要素もあり、さながら映画とゲームの間の子ような形でカジュアルにインタラクティブなコンテンツを楽しめるものとなっています。 通常のゲームですと30〜60時間ほど時間がかかりますが、あくまで映像を観る20分〜2時間超という時間間隔を守り、シンプルに二択を選ぶ分かりやすいインターフェースによって、ゲームに疎いユーザでも容易にインタラクティブ性にアクセスできる形を作り上げています。同時に、同じ作品内で異なるストーリー分岐を何度も楽しめる形になったことで、通常の映画よりも高いエンゲージメントをもたらしています。 上記のNetflixの例ではストーリー分岐の選択肢からユーザが選ぶという形でしたが、さらに自由度を増したコンテンツも出現しています。[第一回のXimera MEDIA NEXT TRENDS](https://note.com/ximerainc/n/nf2bcc7d34e02?magazine_key=m8b2dee2656c6)でも紹介したテキストアドベンチャーゲームの「[AI Dungeon](https://play.aidungeon.io/)」は、少ない選択肢を選ぶのではなく、なんと自由記述でユーザが行動を「書く」ことで、ストーリーが分岐していきます。こちらのYouTubeにて日本語訳をしながらプレイするようすを見ることができます。
動画ではゾンビがはびこる世界のストーリーで、話しかけてみたり、その場を離れてみたりという行動をプレイヤーが文章で記載すると、それに応じたストーリーが自動生成されていることがわかります。これは[OpenAI](https://openai.com/)による多量のパラメータを扱うことができるAIモデルのGPT-3によって過去の大量のゲームブックの内容が学習されており、ユーザの記載に応じてシナリオを生成することが可能になっている実例です。 ## インタラクティブメディアの形② パーソナライズ型 2つ目のパターンは、パーソナライズ型です。これは視聴者がコンテンツ自体に介入し自己投影する、もしくは配信者が特定の視聴者に対して強いインタラクションを与えるというパターンを指します。 視聴者がコンテンツ自体に介入する例として、SnapによるBitmoji Storyや[Bitmoji TV](https://jp.techcrunch.com/2019/12/31/2019-12-28-bitmoji-tv-snapchat/)が挙げられます。[Bitmoji](https://www.bitmoji.com/)はSnapが買収したサービスで、顔、服装、アクセサリーなどをカスタマイズできる自身の2Dアバターを作成し、Snap内でアイコンとして使ったり、ARレンズで動く2Dアバターを登場させて遊ぶことができるものです。近年ではバーチャルアバター化が強化されており、Bitmoji StoryやBitmoji TVでは自身のアバターをメインキャラクターとしてSnapchat内の動画やストーリーズの中で登場させることができます。
上記の動画のキャラクターは視聴者毎に自身のアバターや友人のアバターが登場するため、ストーリーは同じですが、登場人物が視聴者毎にまったく異なる動画となっています。このように自身がストーリーに入り込むような体験を2Dアバターを通じて提供しています。SnapはBitmojiを自身のコンテンツのみではなく、外部のコンテンツに対しても開放する取組を進めており、例えばゲームエンジン向けの開発SDKである[Bitmoji for Games](https://www.bitmoji.com/games/)を使うとゲーム開発者はゲームの中にBitmojiキャラクターを登場させることができます。 パーソナライズのもう一つの観点として、コンテンツ配信者側が特定の視聴者に対して強いインタラクションを与えることでエンゲージメントを高めるパターンがあります。そのコンセプトを体現する代表的なスタートアップである[Cameo](https://www.cameo.com/)は、セレブリティが有料で自分向けのパーソナルビデオメッセージを配信してくれるサービスを提供しています。Cameoでは自分だけのパーソナルビデオメッセージであることがエンゲージメント強化のポイントとなっているため、自分以外へのパーソナルビデオメッセージのサンプルを無料で見ることができ、自分もパーソナライズされたメッセージを受け取りたいというユーザニーズを満たすように誘導がされています。 Cameoは2020年1月には週に9000件だったパーソナルメッセージのブッキングが[2020年5月時点では約7万件に増え](https://www.nytimes.com/2020/05/24/business/media/new-model-celebrity.html)、コロナ禍におけるセレブリティの参入増やユーザのデジタル消費増に支えられたことも手伝い、短期間で急成長を果たしました。
上記動画ではCameoに登場するセレブリティのパーソナルメッセージの例や金額感がわかると思います。例えば、ディスニー映画などで声優を務める[ギルバード・ゴッドフィールド](https://en.wikipedia.org/wiki/Gilbert_Gottfried)が、9ヶ月で1600回のパーソナルメッセージを配信し、25万ドル(約2500万円)の売上をあげたと推定されています。Cameoは2020年に100億円の売上を上げると予想されており、インタラクティブメディアの特性を活かしたビジネスの成功例と言えそうです。 ## インタラクティブメディアの形③ リアルタイム参加型 3つ目のパターンはリアルタイム参加型です。これは多数の視聴者側がリアルタイムにコンテンツに対して働きかけることで、コンテンツ自体に変化が起こるパターンです。現在よく目にするものとしては、YouTube LiveやSHOWROOMなどのライブ配信で、視聴者が投げ銭をすることで、配信者や画面ステータスが変わるものです。例えば、配信者が投げ銭をしてくれた視聴者に対してリアルタイムにお礼のメッセージを伝えてくれる、投げ銭額の多かったユーザの名前が画面にリストされるといった例があげられます。近年こうしたコンテンツ配信者と視聴者とのインタラクションにとどまらず、コンテンツそのものに視聴者が介入できる仕組みが出現してきています。 例えば、元SQUARE ENIXのメンバーが立ち上げた[Genvid](https://www.genvidtech.com/ja/)というスタートアップが提供しているインタラクティブストリーミングと呼ばれるインタラクティブな動画配信の仕組みがあります。ゲーム開発者はGenvidのSDKをゲームに導入することで、ゲームプレイ動画の配信において、視聴者側にゲーム自体に介入させる機能を動画プレイヤー上に付加することが可能になり、インタラクティブな動画配信が実現できます。 Nintedo Switch対応のゲーム「[ドンさわぎ](https://don-swagger.com/)」ではGenvidの技術を採用し、ゲーム動画の視聴者はカメラ視点を切り替えたり、動画を見ながらポイントを集める(動画プレイヤー上で特定のアクションを起こすことでポイント獲得)ことができます。集めたポイントでプレイヤー(ゲーム動画の配信者や他のゲーム参加者)を応援するゲーム内アイテムをプレゼントする、といったように、視聴者の行動がゲームプレイに影響を与えられる状態を作り出しています。 Genvidを用いることでTwitchやYouTubeという既存動画PFと連携したインタラクティブ機能の実現ができるため、カジュアルに視聴者がゲームに参加するリアルタイム配信が可能です。下記がGenvidの機能を紹介した動画で、動画プラットフォームであるTwitchの上で視聴者がゲーム配信動画を見ながら、特定のプレイヤーを応援したり、邪魔したりするようすが分かるかと思います(ゲームをプレイしている人ではなく、ゲームのプレイ動画を”視聴”している人の視点でご覧ください)。
こうしたインラクティブストリーミング化はゲームのみならず、ニュース、スポーツ、コンサートなどリアルタイム性の高いコンテンツに対して付加価値を与えるもので、パーソナライズされたカメラ視点や統計情報表示など、コンテンツの見せ方を変えるものや、視聴者投票や応援の可視化などによってリアルタイムにコンテンツ自体が変化していくものなどが考えられ、より高いユーザエンゲージメントをもたらすユースケースが今後広がっていくものと考えられます。 ## おわりに 今回は従来のメディアが新たな技術や手法でインタラクティブ化し、視聴者の間口を広げ、エンゲージメントを強化していることを中心にご紹介しました。これは当初ゲームにしかなかった特性が他のメディアにも伝搬してきているということであり、デジタルコンテンツが全体的に同じ方向へ動き出している流れの一つと考えられます。 ニュースというコンテンツについても既に動画ニュース上に関連するツイートが表示されるなどの簡易的なインタラクティブ性はありますが、同じスポーツニュースでも視聴映像は自分が応援するチームによって異なる映像合成がされている、同じニュース番組でも報道内容が自身の政治的スタンスを選んでチューニングされる、視聴者の意見をリアルタイムに集めて発言してほしいコメンテイターを選ぶなど、さらなる視聴者のコンテンツへの介入やパーソナライズ化により、エンゲージメントが高まり、新たなビジネスモデルが生まれる可能性があります。 この分野はまだ絶対的なベストプラクティスもなく、スタートアップやテックの巨人達も含め実験的な段階であるため、今こそインタラクティブ時代のメディアの形を考えるタイミングと言えそうです。 --- ## そのサブスクは「破滅への道」かも。失敗を避ける4つのポイント URL: https://ximera.com/posts/4b8c3ee82f 公開日: 2021-01-08 著者: Ximera [Business illustrations by Storyset](https://storyset.com/business) # そのサブスクは「破滅への道」かも。失敗を避ける4つのポイント こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスを提供しています。 デジタルメディアのサブスクリプションは、少額の購読料を積み上げて長期的に大きな収益を生み出すビジネスモデルです。すぐに莫大な収益を得られる「魔法の杖」ではありません。むしろ、購読者が定着せず収益性を保てなかったり、かえってメディアのブランドを損なったりするリスクさえあります。 御社が導入しようとしているサブスクリプションは、そんな「破滅の道」を歩んでいませんか? 失敗を避けるためのポイントを解説します。 ### 1. 見切り発車は「遭難」まっしぐら --- 前述の通り、サブスクリプションのビジネスモデルは一攫千金の「魔法の杖」ではありません。事業の方向性があいまいで、プランのない状態のまま事業を成功させるのは至難の業でしょう。「とりあえず始めよう」「コンテンツが充実していれば読者が集まるだろう」という見切り発車は危険です。まずはデジタルメディアの方向性を定め、事業計画を立ててみることから始めましょう。 以下の記事では、事業の方向性を定めるために必要なことを解説しています。 [まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】](https://app.notion.com/p/b5f2eb4b0c334d99a41653ce725ddfaf?pvs=21) 具体的な事業計画の立て方については、以下の記事で解説しています。 [KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】](https://app.notion.com/p/KGI-KPI-OK-71c78d13f53a44f7b5b4fcba6fc64321?pvs=21) ### 2. ツールありきの「これさえあれば」は赤信号 --- 上述の「見切り発車」に並んで、ツールへの期待が大きすぎてビジネス設計や施策の検証が置き去りになってしまうのも、よくある危険な予兆です。 サブスクリプションが「これさえあれば儲かる」魔法の杖ではないように、「これさえあれば購読者が増える」魔法のツールも存在しません。また、自社の事業規模や運用体制にそぐわないツール導入は、かえって赤字を生む原因になりえます。どんなに優れたツールやテクノロジーもあくまで手段であり、導入にはメリット・デメリットの両面があることを心に留めましょう。 以下の記事では主要なサブスクリプション導入方法と、メリット・デメリットを紹介しています。 [自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは](https://app.notion.com/p/SaaS-1320a4b67a29424e9f7552240c4bae96?pvs=21) ### 3. 誰が何をどう決めるか、決まっていますか? --- デジタルメディアのサブスクリプションは購読者の獲得と解約防止の両面に取り組む必要があり、そのためには「実行→検証→改善」をスピーディーに行うことが不可欠です。社内の体制が改善のサイクルを足止めしていませんか? という課題の原因は、意思決定のフローが不明瞭なことにあります。「事業」「コンテンツ」「運用」それぞれの責任者を明確にして、適切な権限を与えましょう。 組織づくりのポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。 [事業成長は強い組織から。パブリッシャーのデジタル組織づくりの3ステップ](https://app.notion.com/p/3-deaa3e4ab6274eb2ac6fcd3783c2c952?pvs=21) [デジタル組織のモヤモヤを解消。チームの「神経伝達回路」を整えよう](https://app.notion.com/p/d36b6b4e26bd446494fc798ce22953c5?pvs=21) ### 4. 安売りより高い代償はない --- 購読者を惹きつけようと、価格設定を安くしすぎるのは考えものです。一度設定したサービス価格を引き上げるのは困難を極めます。事業として収益を生むことを考えれば、コンテンツ制作・メディア運用・マーケティングにかかるコストを回収できる値付けが大前提です。他社の事例をなぞるのではなく、事業計画を引いた上で、自社にとって妥当性のある価格を設定しましょう。 また、「長い無料期間」「割引キャンペーンの乱発」も、むしろ購読者の離脱を生んでしまいます。近年の失敗例として、巨額の調達に成功しながら短命に終わった動画サブスクリプションサービス「Quibi」が挙げられます。Quibiは3ヶ月間もの無料期間を設定していましたが、ユーザーの92%は有料継続に至らず離脱してしまいました。 [動画サブスクQuibiの失敗に学ぶ(2020/11/5)](https://app.notion.com/p/Quibi-2020-11-5-a52a219360e548d59d00382260c46051?pvs=21) 「安いから」「無料だから」と集まった読者は、果たしてあなたのメディアに愛着を持ってくれるでしょうか? 価格競争の世界ではなく、値段に対して納得できる価値を提供することに比重を置きましょう。 ### 学ぶべきは「非凡な成功」よりも「再現性ある失敗」 --- 小説『アンナ・カレーニナ』の一節には、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」という言葉があります。 事業運営は、まさにその逆と言えるでしょう。成功の形や要因はさまざまで、他社が真似をしても同じような成果が得られるとは限りません。一方、失敗のパターンは似通っているものです。非凡な成功をなぞるより、再現性のある失敗を起こさないよう心がけることが近道です。 特にデジタルメディアのサブスクリプションは世界でも成功事例はまだまだ少なく、各社が「走りながら考えている」状態です。自社ならではの成功を掴むために、失敗に学びましょう。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Jan 8, 2021|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## パブリッシャーのサブスクリプションビジネス2021年の展望(2021/2/18) URL: https://ximera.com/posts/0dbff80b2c 公開日: 2021-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、パブリッシャーのサブスクリプションビジネスに関するオンラインイベントを開催しました。 # アーカイブ動画
# ウェビナー資料 [投影資料_パブリッシャーのサブスクリプションビジネス2021年の展望.pdf](%E3%83%91%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%82%B5%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%97%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B92021%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%B1%95%E6%9C%9B%EF%BC%882021%202%2018%EF%BC%89/_2021.pdf) [Ximera Aeの詳しいご紹介はここから](https://ximera.com/ximera-ae) # イベント概要 2020年は新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい、多くの産業に傷痕を残した1年でした。パブリッシャーも例外ではなく、国内外で多くのパブリッシャーが紙媒体の廃刊・縮小を余儀なくされ、事業継続に向けた経営判断を求められています。こうした状況下で、デジタルメディアのサブスクリプション(有料購読)は、収益源としてさらなる期待と注目を集めています。 オックスフォード大学Reuters Institute for the Study of Journalismがとりまとめた業界レポート「Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2021」によれば、43か国のメディア幹部のうち76%が「サブスクリプションが、ディスプレイ広告とネイティブ広告より重要な収益源になる」と回答しました。 2021年、パブリッシャーのサブスクリプションビジネスにはどのような潮流が生じるでしょうか?そして、サブスクリプションビジネスを成功させるために何が必要でしょうか? キメラは国内パブリッシャー22社50媒体に対してサブスクリプション事業をはじめとしたデジタル収益軸の設計やグロース、組織戦略をご支援しています。弊社のノウハウや国内外の事例をデジタル戦略を考えるきっかけにしていただければ幸いです。あわせて、キメラによるサブスクリプション管理・分析プラットフォーム「[Ximera Ae](https://ximera.com/ximera-ae)」のご紹介や今後の事業展開についてもご紹介します。講演後は参加者の皆様での「オンライン交流会」も予定しております。ご所属を超えた情報交換やディスカッションの場としても、ぜひ奮ってご参加ください。 --- ## 音声メディア・コンテンツの未来 URL: https://ximera.com/posts/e98cadea63 公開日: 2020-12-21 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #3 2020年12月21日 ## はじめに メディア・パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていくマガジン「[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)」の第三回となる今回は、音声メディア・コンテンツについて現状のトレンドを見ながら、未来を考えます。 近年はイヤフォンやスピーカーなどのハードウェアの進化と、それによるメディア消費スタイルの変化が、音声メディア・コンテンツの新たな消費機会を作り出しています。そしてその多くがAirPodsシリーズを代表とする無線イヤフォンとAmazon EchoシリーズやGoogle Nestシリーズを代表とするスマートスピーカーによって生み出されていると言っても過言ではありません。AirPodsシリーズは[2021年に1億台の出荷があると予測](https://www.statista.com/chart/16836/estimated-worldwide-sales-of-apple-airpods/#:~:text=According%20to%20Ming%2DChi%20Kuo,%2415%20billion%20in%20annual%20sales.)されており、スマートスピーカーについても[2021年には1.6億台の出荷があると予測](https://www.canalys.com/newsroom/canalys-global-smart-speaker-market-2021-forecast)されています。これらの新たな音声関連ハードウェアの普及によって、人々の音声メディア・コンテンツへのアクセスはさらに容易になってきています。 [アメリカでは1億9200万人が毎月音声コンテンツにアクセスしている](https://www.edisonresearch.com/wp-content/uploads/2020/03/The-Infinite-Dial-2020-from-Edison-Research-and-Triton-Digital.pdf)という調査結果も出ており、ハードウェアもコンテンツも明確に音声の存在感が増しました。この状況を追うように大手プレイヤーからスタートアップまで音声メディア・コンテンツに対する動きが数多く起こっており、このトレンドをおさえていくことでメディアの次世代のあり方を考えるきっかけとなればと思います。 ## テック・ジャイアントたちの音声メディア・コンテンツに対する動き Apple Podcast、Google Podcast、Spotify、AmazonのAudibleとテック・ジャイアントはすでに大きな音声コンテンツプラットフォームを持っています。Spotifyに関しては2019年にポッドキャスト作成プラットフォームの[Anchor](https://anchor.fm/)を買収して以来、[Spotify全体のポッドキャストの70%にあたる130万のポッドキャストがAnchorによって作成・配信](https://www.theverge.com/2020/12/2/21755151/spotify-podcasts-anchor-stats-data-wrapped-2020)されています。SpotifyにはNew York TimesやNPRなど伝統的メディアから[Wondery](https://wondery.com/)(課金型ポッドキャスト配信サービス)といった新興メディア、果ては個人クリエイターまであらゆるタイプのポッドキャスターからコンテンツが配信されており、ポッドキャスト市場の大きな盛り上がりを感じます。 音声ニュースで目立った動きとなったものとしては、Googleの[Your News Update](https://jp.techcrunch.com/2020/09/04/2020-09-02-googles-personalized-audio-news-feature-your-news-update-comes-to-google-podcasts/)があります。Your News Updateは2019年11月にGoogle Assistantの中でパーソナライズされた音声ニュースプレイリストとしてはじまったもので(日本では未提供)、ユーザがフォローして関心を示したトピック、ニュース提供元、地域に加えて、Googleの各サービスの利用履歴を考慮して、各メディアの音声ニュースから5-10本程度をひとまとめにしたニュースキュレーションが提供されています。現在では[Google Podcastでも](https://jp.techcrunch.com/2020/09/04/2020-09-02-googles-personalized-audio-news-feature-your-news-update-comes-to-google-podcasts/)利用可能です。 Your News Updateでは1-5分の短尺音声ニュースにはじまり、徐々に30-60分程度の長尺のオピニオン系音声コンテンツに移行していくようにエンゲージメントの設計がなされていることから、音声コンテンツのパーソナライズによるエンゲージメント向上を狙っていると考えられます。 またNetflixに関しても[アプリの音声バージョンが発見](https://ampmedia.jp/2020/11/09/netflix-audio-media/)され、音声市場への参入可能性が報じられています。こちらもAirPodsやスマートスピーカー利用層を狙った「ながら聞き」のオーディエンスリーチを高めるための動きと考えられます。 ## 音声コンテンツのマネタイズ事例 音声メディア・コンテンツが盛り上がっているのは確かですが、ポッドキャストは無料のものも多く、果たしてマネタイズはどこまで可能なのでしょうか。ここでは音声コンテンツを中心に据えてプレミアム課金のサブスクで勝負している事例をご紹介したいと思います。 音声コンテンツ中心で大きな成功を収めたものと言えば、メンタルヘルスケアアプリの[Calm](https://www.calm.com/)があげられます。2012年にサンフランシスコで創業したCalmはリラックスするための瞑想法、睡眠導入のためのストーリーを音声コンテンツで提供しています。月額15ドル(約1600円)、年額70ドル(約7300円)のプレミアム型のサブスクによるマネタイズをしており、[TechCrunchによると](https://jp.techcrunch.com/2020/12/09/2020-12-08-calm-raises-75m-more-at-2b-valuation/)アプリは1億ダウンロードを超え、400万以上の有料課金ユーザがいます。また同記事にて2020年12月には75Mドル(約78億円)の資金調達を行い、2Bドル(約2070億円)の企業評価額となったことも明らかになりました。[Calmは2016年から黒字化している](https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-12-08/calm-hits-2-billion-value-with-lightspeed-goldman-tpg-backing)と言われており、音声コンテンツで最もマネタイズに成功したサービスの一つと言えるのではないでしょうか。[この12月に日本への本格参入も発表](https://jp.techcrunch.com/2020/12/09/calm-japan/)され、コロナ禍や在宅ワークにおけるメンタルマネジメントの流れもあり、これからさらに注目を集めそうです。 また音声ニュースのマネタイズ事例として興味深い動きを見せているのがNoaというアイルランドのスタートアップです。[Noa](https://newsoveraudio.com/)はNews Over Audioの略語で、「Audio Journalismのホーム」を標榜し、2017年に音声ニュースのアグリゲーションサービスをスタートしました。Bloomberg, Business Insider, The Financial Times, The Washington Post, The Telegraph, Harvard Business Reviewといったビジネス系メディアのニュースをナレーターによる音声化を施した上で、テーマ毎にキュレーションしてユーザにコンテンツを届けるSeriesと呼ばれるプレイリストを出すことで独自性を出しています。ビジネスモデルとしては、フリーミアム型の課金モデルとなっており、広告つきで一部の音声ニュース/記事を聞ける無料モデル(一部メーター型の有料ニュースアクセス含む)と、広告なしで1万8000以上のすべての音声ニュース/記事を楽しめるプレミアム課金モデル(9.99ユーロ/月)が提供されています(2020年12月時点ではHarvard Business Review, The Financial Times, The Economistはプレミアム課金モデルのみ提供)。[売上の30%はNoaの取り分となり、残りがパブリッシャーのレベニューシェア分として配分](https://www.thedrum.com/opinion/2019/11/14/news-over-audio-seals-its-place-millions-cars-it-strives-reimagine-reporting)されます。パブリッシャーは自社コンテンツのエンゲージメント、ストリーム数、視聴時間に応じて売上配分を受け取る設計です。現時点で有料課金ユーザがどの程度いるのかはわかりませんが、Noaはさながらニュースに特化したSpotifyとなっており、パブリッシャーに新たな収益源をもらたす存在なのか今後も注目してきたいところです。 ## 台頭する次世代音声系メディア ここまでは一方向ストリーム型の音声コンテンツのトレンドを紹介していきましたが、近年は新しい音声メディアの形としてUGC型のインタラクティブなオーディプラットフォームが増えてきています。ソーシャルメディアの特性をオーディオに活かしたこれらはAudio Socialと呼ばれており、[前回(第二回)のXimera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/GenZ-49e11c75e77840798e43ccc9a16eccb1?pvs=21)でもご紹介した[Clubhouse](https://jp.techcrunch.com/2020/05/17/clubhouse/#:~:text=Clubhouse%E3%81%AF%E9%9F%B3%E5%A3%B0%E7%89%88Twitter,%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82)や[Rodeo](https://joinrodeo.com/)などが代表例です。これらはルームやトピックを起点にしたリアルタイム音声チャットをベースとしたソーシャルネットワークで、ユーザがコンテンツを制作/提供することを中心にプロダクトが設計されています。 ほかにもオーディオコミュニティの[GENEVA](https://www.genevachat.com/)、空間音響をシミュレートした音声チャットができる[High Fidelity](https://www.highfidelity.com/)、ペイウォール型のルーム課金ができる[bonfire](https://bonfire.camp/)、プライバシーやセキュリティに特化した[chalk](https://chalkapp.com/)、音声版TikTokと呼ばれる[blip](https://blip.audio/)など、さまざまなAudio Socialスタートアップが生まれています。これらのAudio Socialについては、[Digital Nativeのまとめ記事](https://digitalnative.substack.com/p/the-opportunity-in-social-audio)が詳しいです。 これらのサービスは主にオープン型とクローズド型に分けられます。Clubhouseなどが誰でもオープンにルームやトピックを設定して、不特定多数と関わることができるオープン型。Rodeoのように親密な友達のみとカジュアルにお喋りをするのがクローズ型です。 オープン型はこれまでテキストや動画のSNSがたどってきた道と同じように、クリエイターによるさまざまなマネタイズのパターンが考えられます。広告、フリーミアム、サブスクといずれも可能で、ペイウォールについても有料のルーム/サロンという形をとったり、クリエイターと同じ音声になれる音声変換機能をアプリ内アイテムとして売る、投げ銭を得るなどマイクロトランザクションで課金するといった形が考えられます。 一方でクローズ型は、LINEやWhats Appのように広告とビジネスユーザ向け機能でマネタイズするということは考えられそうですが、クローズドなコミュニティである分、親密でないユーザとのつながり方には十分な注意が必要となりそうです。 ## おわりに 若い世代になればなるほど、クリエイターと視聴者の比率が近くなることから、GenZ(Z世代)を中心としたUGC型のAudio Socialに大きなトラフィックが集まってくる可能性は大いにありそうです。ここでも新たなプラットフォームで若い世代を惹きつける音声コンテンツを提供できるパブリッシャーやクリエイターが重要になってくるかと思います。 一方でポッドキャストのような一方向型はすでに飽和に向かいつつあり、競走が激しくなっています。新たなプラットフォームが出てくる度に、時代やオーディエンスに合った形でコンテンツを提供していく必要に迫られることはもう否定することはできません。流れの早い現代ではトレンドが来てからでは競合に勝つことが難しくなることもままあり、音声熱狂時代に入り、次世代音声メディアが出現しつつある今こそ、新しい領域にどうやって入り込んでいくか検討する良いタイミングが来ているのではないでしょうか。 --- ## 個人の台頭に、パブリッシャーはどう向き合うべきか?(2020/12/4) URL: https://ximera.com/posts/70f9127170 公開日: 2020-12-17 著者: Ximera 2020年12月17日 17:29 こんにちは。キメラです。私たちのニュースレターからのアーカイブを掲載しています。今回は【2020年12月4日号】の内容を一部再編集したものです。弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) 話題が流通する起爆剤となる個人、「インフルエンサー」という言葉が浸透して久しく、個人による情報発信はますます台頭してきています。国内外の動向をもとに、この現状にパブリッシャーがどう向き合うべきかを考えてみましょう。 ### 進む、個人メディアのマネタイズ 個人が情報発信するプラットフォームで有料課金が広がっています。筆頭は米国発の有料ニュースレターのプラットフォーム「Substack(サブスタック)」でしょう。コロナ禍による新聞・出版社の倒産や雇い止めもあって、Substackを収益源にするジャーナリストが急激に増えています。その勢いでニュースレターの有料購読者数は25万人を超え、トップ10位の発行者を合わせると、[年間約700万ドル(約7億2600万円)を超える市場へ成長しています](https://www.npr.org/2020/12/02/941020719/tired-of-the-social-media-rat-race-journalists-move-to-writing-substack-newslett)。Substackは広告モデルに対応していないサービスですが、[DIGIDAY](https://digiday.jp/publishers/we-do-it-because-its-profitable-ads-improbably-sprout-on-ad-averse-substack/)によれば配信者自身が企業と広告掲載の契約を結ぶ事例も増えつつあるようです。 日本でも、個人を起点としたコンテンツのマネタイズがじわじわと進んでいます。2020年3月度の「[モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000447.000007597.html)」によると、ブログサービスnoteの利用者のうち「記事の購入をしたことがある」人は49.2%、「記事の定期購読をしたことがある」人は38.5%、「記事を読んでサポートをしたことがある」人は52.3%、90.8%のユーザーに課金経験があることがわかりました。[note社の発表](https://note.jp/n/n705929417079)によると2020年5月の月間アクティブユーザーが6,300万を超え、1日平均2.6万件の投稿がなされています。個人を中心とした課金プラットフォームとしての影響力は、引き続き増していきそうです。 音声プラットフォームの領域でも、個人への課金プログラムの選択肢が増えつつあります。ボイスメディア「Voicy」では、配信者のうち、収益化に至った人数が[50人を超えた](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000164.000021111.html)といいます。これまでの収益化の手段である企業による広告出稿とコンテンツのサブスクリプションに加え、2021年には再生回数に応じた[収益化プログラム](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000167.000021111.html)も提供を開始するといいます。 ### 個人の発信に対してどう向き合うべきか 個人発のメディアが影響力を増すなかで、パブリッシャーはどう価値を提供していけばいいのでしょうか? [米WIREDの編集主幹による考察](https://wired.jp/2020/12/01/plaintext-the-tenuous-promise-of-the-substack-dream/)では、Substackの隆盛に触れ、熱狂的なマニアや小規模な業界のニーズを拾い上げる“周縁部”を担うジャーナリズムとして期待を表しています。一方、購読先の選択肢が多すぎることによる「サブスク疲れ」や、有料購読の恩恵を受けられる個人は少数にとどまると予想しています。 また、個人発のメディアにおいては、情報の信頼性をいかに担保するかも課題でしょう。元毎日新聞社の編集委員である小島正美氏は、安全や健康に関わる内容であっても「だれの査読やチェックもなしに拡散している」[状況を憂いています](https://www.jaif.or.jp/journal/column/kojima/1310.html)。 個人の台頭の影にある「マスコミ不信」について、[認知の観点から分析した記事](https://agenda-note.com/customer/detail/id=3179)では、ゆるやかなメディア批判が長く続いたことでメディアへの信頼が少しずつ毀損され、SNSの拡散力と相まって不信が強くなっていると説いています。 これらの論考からは、個人発のメディアとパブリッシャーにはそれぞれ異なった役割があり、必ずしも共存できないわけではないことが伺えます。パブリッシャーにとっての試練は、日々の情報源としていかに信頼を得られるメディアになれるかに他なりません。 --- ## メディアの次世代トレンド:台頭するGenZメディアとコンテンツ URL: https://ximera.com/posts/1e0b8fabcf 公開日: 2020-11-30 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #2 2020年11月30日 [米国で用いられている世代別定義](https://www.pewresearch.org/fact-tank/2019/01/17/where-millennials-end-and-generation-z-begins/)によれば、「1981~96年までに生まれた人口」が「ミレニアル世代」、1997年以降に生まれた人口層が「ポストミレニアル世代」とされています。 この「ポストミレニアル世代」は「Generation Z(通称GenZ)」と呼ばれ、ミレニアル世代と価値観や嗜好が大きく異なることから、これまでミレニアル世代が中心となって形成してきた文化に反発し、新たな動きを見せています。 メディアについてもそれは例外ではなく、GenZ向けのメディアやコンテンツが多く出てきました。本レポートでは - GenZによるGenZのメディア - 音声を中心としたGenZコミュニケーション - GenZへのブランドマーケティング について、GenZ世代へのアプローチに特徴を持つスタートアップを中心にご紹介し、GenZが求めている次世代メディアのヒントを得ていきたいと思います。 ## GenZの特徴 GenZの特徴はたくさんありますが、特に押さえておくべき点として、下記の4点があります。 1. スマホネイティブでかつSNSを通じて膨大な情報に囲まれて生活しており、新しいものに対する受動性が高く、かつそれが信頼できるものかどうか見極められる能力が高い 2.  2020年時点で、GenZの最も年上は23歳となり、特にアメリカでは人口も大きく、社会の中のあらゆる面でこれからマジョリティを占めていく 3. スマホ+SNSで見える化された世界の問題を理解しており、上の世代がこれまで解決してこなかった問題に対する社会的アクションに価値を感じやすい(例気候変動問題、Black Lives MatterなどGenZ世代のリーダーが主導し、共感を得ている) 4. 主にミレニアル世代で好まれる美麗さ、シンプルさ、ブランドなどよりも、リアルに近い感覚(本物を感じられることや嘘がないこと)や仲間との居心地の良さを求めている参考記事Instagram美学に飽きたZ世代が「居心地の良さ」を求める理由ミレニアル世代 vs Z世代。その違い、特徴とは? GenZがメインストリームとなっていく中で、今後は上記の点を強く意識したメディアやコンテンツが増え、支持を得ていくものと思われます。 ## GenZのためのGenZによるメディア GenZのためのGenZによるニュースメディアとして、注目されているのが2016年にスタートした[The Cramm](https://www.thecramm.com/)です。2020年8月時点で、ニュースレターを中心にInstagram、ウェブサイト、ポッドキャストをあわせて[月間PVは250万、ニュースレターの読者は世界103カ国に上ります](https://wired.jp/2020/10/10/the-cramm-olivia-seltzer/)。前提知識も含め、メディアのトップニュースをGenZが理解できる言葉で届けること、同時にGenZが注目しているニュースを取り上げることに注力しているメディアです。 The Crammがニュースを制作する仕組みとしては、「The Crammers」と呼ばれるボランティアスタッフが世界各国に500人おり、それぞれの得意分野に応じて7つのグループ(TikTok/Reels、Video、Podcast、Media、Social Media、Editorial、Organzing)に分かれ、The Crammを多角的に運営しています。 中でもEditorial(編集)チームのメンバーは自分がその日に注目したニュースを編集長に送る役割を担っています。これにより、トピックの多様性を確保しています。これらのスタッフ全員がGenZとなっており、まさにGenZのためのGenZによるメディアとして運営されています。 また、The Crammは今年のアメリカ大統領選挙にあたり、初めて投票を行う人向けに、各州ごとの[投票ガイド](https://www.thecramm.com/vote.html)、用語集の提供を行いました。これにより、GenZで選挙に関心ある層の投票を促進したことは想像に難くありません。 メインの提供チャネルとしては、e-mailによるニュースレター(無料)ですが、スマホネイティブなGenZではe-mailよりもSMSによるテキストチャットが積極的に利用されることも多いためか、SMS配信にも対応しています(SMS料金がかかるため有料 $0.99/月 または $9.99/年。現状は米国のみ)。 このようなメディアが作られ、同世代に受け入れられるのも、ミレニアル世代が作ってきた既存メディアやコンテンツへのカウンターとしての意味があり、GenZが信頼できるメディアを求めていると言えそうです。 ## 音声を中心としたGenZコミュニケーション AppleからAirPodsが発売されて以来、音声に触れる時間が大きく増え、新たな音声メディアが出てきています。GenZはAirPodsつけっぱなしの世代であり、音声メディアムーブメントの中心に立つ存在と言えます。 その中で注目したいのがライブ音声チャットサービスの[Rodeo](https://joinrodeo.com/)です。Rodeoは、プライベートなグループのコミュニケーションのために用意されたライブ音声チャットアプリ。アプリを立ち上げ、ルームを作り、友達を招待すると、その場でフレキシブルな音声チャットができるようになります。 従来の音声/ビデオチャットであるZoomやSkypeなどでは、事前に時間をあわせ、カレンダーinviteを送るといった手間が必要でしたが、Rodeoではルームを作ったタイミングで、自分が話をしたい時にそれをアプリで表明し、すぐにグループチャットを開始することができます。 先行した類似のサービスとして、Venture Capital界隈から流行り始めたClubhouseがあります。機能的にはほぼRodeoと同様ですが、違うのはClubhouseはよりパブリックドメインなコミュニティを志向していることです。 こちらは投資、スタートアップ、ビジネス、音楽、ソーシャル・ネットワークなど特定のテーマを扱い、人の出入りが多くあるパブリックなルームが多く、ある種カンファレンスセッションのようなチャットが行われます。 一方で、プライベートなルームで親しい友人や友達と友達までとカジュアルに音声チャットを楽しむGenZ世代の利用を想定したRodeoとは立ち位置が大きく異なります。 音声チャットを通じたコミュニケーションの場としては、他にはゲームプラットフォームがあります。ゲーム (Fortnite / Roblox / Minecraft / あつ森 / ...) + 音声チャット (ゲーム内チャット / Discord / HouseParty / ...) の組み合わせで、GenZは毎日のように友達と音声コミュニケーションを行っています。 ゲームを一緒にプレイすることももちろんですが、FortniteやRobloxでのバーチャル音楽コンサートやパーティモードの提供で代表されるように、暇つぶしやおしゃべりの場としてゲームプラットフォームが機能しています。 このように様々な場でGenZの音声を中心したコミュニケーションが促進されていることから、今後のメディア運営の観点では、GenZ世代に対して音声コミュニケーションを中心としたチャネルを通じてどのように自社のコンテンツに接触してもらうのかが大きな意味を持つと考えられます。 ## GenZへのブランドマーケティング 現代は、1000人が$100づつ払うのではなく、100人が$1,000づつ払うようなビジネスモデルに[変化しつつあります](https://a16z.com/2020/02/06/100-true-fans/)。これは、プロアマを問わずクリエイターが自身でプロダクトやサービスを生み出し、熱狂的なファンからマネタイズを行っていくPassion Economyと呼ばれる現状を表しています。メディアやインフルエンサーが乱立し、画一的・均一的なトレンドではなく、自身の個性や好みをより重視する現代(そしてよりその特徴が強いGenZ)において、いかにコアなファンを獲得するかが重要になってきています。 そんな中で興味深い動きを見せているのが、MSCHF(ミスチーフ)というスタートアップです。MSCHFは2週間に1回、全く新しいプロダクト/サービス/キャンペーン(同じことは二度とやらない)を出し続けるという特異なことを実施しており、さらにローンチした[多くの施策がヒットしています](https://note.com/offtopic/n/n39763fd2e693)。 MSCHFが提供するものはNetflixを友達と一緒にリアルタイムに観るためのブラウザエクステンション、AIによって生成された絵、特製スニーカー、インフルエンサーとコラボしたスマホアプリ、時限式福袋、ウィルス感染したコンピュータなど多岐にわたり様々なものが提供されています。 例えば、NikeのAir Max 97をカスタマイズしたJesus shoesはソール部分にヨルダン川の"聖なる水"が注入され、$1425という価格にも関わらずソールドアウトし、[中古市場では$4,000まで跳ね上がりました](https://www.cbsnews.com/news/nike-air-max-97-jesus-shoes-filled-with-holy-water-selling-for-4000-2019-10-11/)。 最近では、[Push Party](https://pushparty.app/)と呼ばれる誰にでもPush Notificationを送信できる招待制のソーシャルネットワークサービスをローンチし、それが[VCから$200M(200億円)の出資も呼び込みました](https://techcrunch.com/2020/11/09/mschfs-push-party-raises-an-unconventional-round-at-a-200-million-valuation/)。Push Partyについてはプロダクトを細かく出し続けた結果、単一事業として成り立つ可能性のあるメディアを作れた事例としても注目したい点です。 MSCHFはプロダクトやサービスが提供される時間や数量で限定されるDropと呼ばれる手法を多様しており、プレミアム感を上手く醸成しています。また同時に社会で話題になっている事象(例えば、Amazon Alexaの疑惑、アート投資家への批判など)を取り上げ、今流行しているテーマを商品化し、さらなるバイラルを起こすことで、認知とロイヤルティを得ることに成功しています。 このことから、MSCHFのように新しいものを細かく限定品として出し続けていくことにより、コアなファンを獲得することがGenZへの有効なブランドマーケティングの方法の一つと言えます。MSCHFのやり方をそのまま真似することは難易度が高いと思われますが、GenZへのアプローチの際に意識すべきポイントとして参考になる部分があるのではないでしょうか。 ## GenZが求めているメディアの形 本記事で紹介した事例は、GenZの求めるメディアのほんの一部でしかありませんが、ミレニアル世代とは大きく価値観が異なり、求められるものも違うことが分かっていただけたかと思います。 日本のGenZ層は少子化後の世代であり、[人口全体の14%](https://markezine.jp/article/detail/33382)に過ぎず、アメリカに比べるとその割合は大きくありません。一方でスマホ・SNSネイティブの第一世代という意味では、後続の世代も含め、今後の日本の文化、消費、生産の中心を担う世代となります。 世界全体では既に[30億人、全人口の約35%がGenZ](https://storage.googleapis.com/zebra-public-uploads/reports/Zebra%20IQ%27s%202020%20State%20of%20Gen%20Z%20Report.pdf)となっており、グローバル市場を狙う上では、欠かせない存在になっています。 GenZを中心とした世代に対応していくために、新しくかつ社会的意義のあることを短い期間で絶え間なく発信し続けること、虚構やうわべのクールさではなくリアルだと思ってもらえるコンテンツを提供することが、今回の事例で共通していたポイントです。 今後はそのポイントを実践していけるメディアが次世代メディアのスタンダードとなる可能性があります。GenZが中心になっていく世界でメディア領域がどう変わっていくのか今後Ximeraとしてもさらに注目していきたいと思います。 --- ## 動画サブスクQuibiの失敗に学ぶ(2020/11/5) URL: https://ximera.com/posts/a4e6b3f6d1 公開日: 2020-11-19 著者: Ximera 2020年11月19日 16:58 こんにちは。キメラです。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここから先は【2020年11月5日号】の内容を一部再編集したものです。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) さて、今日のニュースレターは、短尺の動画サブスク「Quibi(クイビ)」の終了を取りあげます。 最後まで、ゆっくりご覧ください。 ### 1. 動画サブスクQuibiの失敗に学ぶ 2020年10月、短尺動画のサブスクリプションサービス「Quibi(クイビ)」が提供開始からわずか半年で終了することになりました。 [■短尺動画のストリーミングサービスQuibi、早くもサービス終了(英文)](https://www.nytimes.com/2020/10/21/business/media/quibi-shutting-down.html) ローンチ前から約2500億円を調達し、サービス開始時点で50番組の放送を予定するなど、[華々しいスタート](https://jp.techcrunch.com/2020/03/06/2020-03-04-quibi-closes-on-750-million-as-its-date-with-destiny-approaches/)を迎えたはずだったQuibi。この残念なニュースから、パブリッシャーは何を学ぶべきでしょうか? 1)ユーザーにとって有料購読に値するか Quibiの経営陣はユーザー獲得が難航した要因を「新型コロナウイルスの影響で短尺動画のニーズが減った」ことにあると語りますが、理由はそれだけではなさそうです。 [■Quibiの創業者とCEOが、頓挫の理由を語る(英文)](https://www.cnbc.com/2020/10/22/quibi-co-founders-katzenberg-whitman-explain-what-went-wrong.html) Quibiはサービス開始前から、有料購読に値するキラーコンテンツがないことを指摘されていました。以下の記事では、短尺動画のニーズがYouTubeやTikTokなどの無料サービスで満たされていることを指摘しています。また、ユーザーの求める「ながら視聴」に応えられないUI設計についても、競合に勝てなかった原因だと分析しています。 [■Quibiはなぜ終了するのか、何がいけなかったのか(英文)](https://news.yahoo.com/quibi-shut-down-went-wrong-194742492.html) 2)長期の無料トライアルは逆効果 Quibiは有料会員の獲得だけでなく、継続率にも課題がありました。その理由の一つは、長すぎる無料トライアルにあったのではないでしょうか。 [■ショートムービーの「Quibi」は無料トライアル期間終了後にユーザーの92%が離脱との報道](https://jp.techcrunch.com/2020/07/10/2020-07-08-report-says-quibi-lost-92-of-its-earliest-users-after-free-trials-expired/) TechCrunchは、Quibiアプリの公開後3日間でサインアップしたユーザーのうち、3カ月の無料トライアル期間が終わった後に残ったユーザーがわずか約8%だったと報じています。 競合であるNetflixがUS市場で[無料トライアルを廃止](https://www.theverge.com/2020/10/13/21514661/netflix-free-trial-us-cancel-content-sampling-streaming)したことからも、Quibiの失策が見て取れます。Netflixは無料トライアルを行う代わりに、外部ポータルやYouTubeに無料で試聴できる番組を掲載しています。 デジタルメディアのサブスクリプションも同様に、長すぎる無料トライアルは逆効果のようです。[WIRED[日本版]](https://digiday.jp/publishers/piano-recital-2020-wired-subscription-strategy/)は当初2週間だった無料期間を1週間に短縮したところ、コンバージョンが圧倒的に高まったそうです。 3)品質だけでなく収益性を意識する そもそも短尺動画が収益性の確保が難しいビジネスモデルであり、多額のコストをかけた独自プラットフォームが割に合わないという指摘もあります。 [■Quibi の頓挫に学ぶ、短尺動画ビジネスのあるべき姿:「それ専用のプラットフォームは必要か?」(有料記事)](https://digiday.jp/publishers/quibis-shutdown-underscores-economic-challenge-for-big-budget-bite-sized-shows/) 日本でも、動画配信のフィールドは独自プラットフォームからSNSへとシフトしています。女性向け動画メディア「C CHANNEL」は2020年9月にアプリサービスを終了し、SNSでのフォロワー拡大に注力すると表明しました。 [■C Channel、SNS配信とインフルエンサーサービスに集中](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000283.000025680.html) いくらでも無料のコンテンツが手に入る今、「高品質なコンテンツを作りさえすればユーザーが増える」という発信者側の論理だけでマネタイズを行うのは至難の業です。Quibiの直面した課題は、あらゆるサブスクリプションビジネスにとって大切な教訓だといえるでしょう。 ### 2. イベント「デジタル時代のパブリッシャー組織戦略」アーカイブ動画を公開 私たちキメラが10月28日に開催したウェビナー「パブリッシャーのためのインサイト分析」のアーカイブ動画を公開しました。
パブリッシャーが紙メディアの売上と広告収益に頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、組織も事業にあわせて変化が求められます。デジタルメディア時代に適した組織戦略の考え方や成功事例をお伝えするオンラインウェビナーです。 未見の方はぜひご覧ください。 ### 3. キメラの社内Slackでシェアされたリンク集 [■不可能と思われたDXにワシントンポスト紙が成功した理由 | AI新聞 | エクサコミュニティ](https://community.exawizards.com/aishinbun/%e4%b8%8d%e5%8f%af%e8%83%bd%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%9fdx%e3%81%ab%e3%83%af%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b9%e3%83%88%e7%b4%99%e3%81%8c%e6%88%90%e5%8a%9f%e3%81%97/) 『Why Digital Transformations Fail(なぜDXは失敗するのか)』の著者であるTony Saldanha氏は、ワシントンポストがDXに必要な4つの要素、MTP、空気、スキン、パイプラインを満たしていると語る。 [■2020年4月〜6月期、動画によるメディア消費がほぼ2倍に 配信動画をコネクテッドTVで視聴する人は160%増加 | Brightcove](https://www.brightcove.com/ja/company/press/Q22020_GVI_Media_Japan) 日本におけるデバイス別の動画視聴回数でコネクテッドTVが大幅な増加。しかし、ほかのデバイスとの比率ではまだ差があるようです。 [■地方紙がいかにして購読者を増やし、解約を減らせるか(英文)](https://www.mediapost.com/publications/article/357157/how-local-newspapers-can-boost-subscriptions-redu.html) エンゲージメントを獲得するためのニュースレターのカスタマイズのために、オンボーディングの体験を改善した事例が紹介されています。 [■AmazonはAudibleを真のポッドキャストアプリに変えようとしているが、まだまだ先は長い(英文)](https://www.theverge.com/2020/10/27/21536963/amazon-free-podcast-update-catalog) Audibleが大量にコンテンツを追加したものの、競合のSpotifyやApple Musicに比べるとその差は歴然です。 [■ニュースレターをグロースさせる5つの方法… 250万購読で成長中の「MorningBrew」が解説 | Media Innovation](https://media-innovation.jp/2020/10/29/how-to-growth-newsletter-by-morning-brew/) どれもいますぐ真似できそうです。すぐやりますか?それともまた見ているだけですか? [■Gunosy Capital、アクティブユーザー昨対比5倍(※1)と急拡大する音声配信プラットフォーム「Radiotalk」に投資](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000031854.html) Gunosy Capitalは、コアファンを持つ配信者とそのリスナーでRadiotalkに好循環が生まれていると考えているとのこと。 最後までご覧くださり、ありがとうございました🧑🏻‍💻 --- ## コンテンツ制作の次世代トレンド:AIのサポートによるコンテンツの未来 URL: https://ximera.com/posts/12b6089a09 公開日: 2020-11-17 著者: Ximera Ximera Media Next Trends #1 2020年11月17日 こんにちは。キメラです。 新しい連載「[Ximera MEDIA NEXT TRENDS](https://app.notion.com/p/Ximera-Media-Next-Trends-330806e4f7784a799766ca31ba84b341?pvs=21)」を始めます。メディア、パブリッシャーが知っておきたい、次のトレンドについて掘り下げていく連載になる予定です。 第1回となる今回は、AIの発達により変化が訪れているテキスト/音声コンテンツの制作方法について取り上げます。 具体的には、AIによる文章の自動生成、コピーライティングサポート、 音声読み上げの3テーマについて、テクノロジーおよび関連するスタートアップをご紹介し、未来のコンテンツ制作のスタイルを考えてみたいと思います。 ## AIによる文章の自動生成 コンテンツ作成において、文章を書くのは長らく人間の役割でしたが、AIもかなり自然なかたちで文章が生成できることが明らかになってきています。 多くのメディアですでに取り上げられていますが、イーロン・マスク、サム・アルトマン率いるOpenAIによって提供されているAIモデルのGPT-3で、投稿文章をインプットとして学習させ、テーマを与えることで自動的に文章生成を行うことが可能になりました。 OpenAIを使ったとあるユーザは、5000文字ほどのブログを自動生成、人工的に作られたことは伏せた上で公開したところ、シリコンバレーの起業家やエンジニアの間で有名なニュースキュレーションサイトの[hackernewsでランキング1位になる](https://www.axion.zone/a-college-kids-fake-ai-generated-blog-fooled-tens-of-thousands-this-is-how-he-made-it/)ということが起こりました。サイトを訪れたほとんどの人はそれがAIによって生成されたとは気が付かず、AIによるコピーライティングがかなり自然になっていることが証明されたのです。 ほかにもGPT-3は文章生成だけでなくテキストで表現できるものをすべて扱えるため、部分的ですが、Web/アプリ画面のパーツ、ソースコード、ギターのタブ譜など、さまざまなものの生成が可能で、ベータアクセスでその可能性が広く研究されています。 さらに直近ではMicrosoftがGPT-3の独占ライセンス契約を結び、メディアでも実験的にGPT-3をニュース記事作成(新聞寄稿)に使う事例([英: Guardian紙](https://www.theguardian.com/commentisfree/2020/sep/08/robot-wrote-this-article-gpt-3))が現れました。特にオピニオン系では、メディアの記事としても成立することが明らかになりました。生成された文章の原文は英語ですが、[こちらのnote](https://note.com/011235813/n/n39944b047a65)にてGuardian紙がGPT-3を使って行ったこととDeepLを使った全文訳を見ることもできます。 一方でOpenAIの代表であるサム・アルトマンはGPT-3は多くの人が思うほど完璧なものではないとコメントしており、「GPT-3が万能である」、「ライターがいらなくなる」という思い込みは避けるべきだと考えます。ここで考えるべきは、AIがコンテンツ制作の実行部分で大きなサポートになる可能性がある点です。 ビジネス面では、文章自動生成ゲームによるサブスク収益を得ているスタートアップも存在しています。文章自動生成型のシナリオゲーム『AI Dungeon』では、自分の次の行動を自由記述で書くことができます。 例えば、「味方がやられた。次にどうする?」という場面で、自然文で「遠くへ逃げる」とタイプする(選択肢を選ぶのでなく、次にしたい行動を「自由に書く」)と、「遠くへ逃げる」文脈を感じ取り、次のシナリオ展開の文章を自動生成します。 これによって、ゲームは何度やっても、同じ展開になることはなく、ほぼ無限に楽しむことができます。AI Dungeonはユーザ作成シナリオの追加、ランダム性や長さの調整機能など、自動生成シナリオのカスタマイズをプレミアム機能(月額 $9.99 約1,050円)の一部として提供し、マネタイズを図っています。 ## AIによるコピーライティングサポート ニュース記事、ブログ、キャンペーンなどのテキストコンテンツの制作において、どのような文章スタイルで書くかは各社や個人で明示的にしろ、暗黙的にしろ一定のスタイルガイドが存在します。ある会社、あるプロダクト、ある個人の文章スタイルが、ライティング自体の個性、顧客への適切な理解を生み出します。 文法については従来から機械的にレビューすることは可能でしたが、文章スタイルに関しては、人によるレビューによって修正がなされていました。しかし、近年これをAIでカバーしようとするスタートアップが現れています。 USのスタートアップである[Writer](https://writer.com/)は、文章作成においてAIの分析により、スタイルガイドや価値観に合わない言葉にフラグを立て、修正案のレコメンドを行ってくれるサービスを提供しています。 例えば顧客向けの文章で、無神経な言葉を使っていたり、ネガティブな言葉を使っていると思われる場合には、それを知らせ、企業がブランドガイドラインを遵守できるようにしてくれます。また、文章の複雑さや段落の長さ、トーンなども考慮してくれますし、置換対象の言葉にチェックをつけるだけでなく、どのような言葉遣いに置換するのがふさわしいかもレコメンドしてくれます。 これら機能が意図しているのは、通常のスペルや文法の間違いだけでなく、フォーマルさ、文体によるメッセージ性の強弱、活気など、ブランドを定義するのに役立つ指標をチェックすることができる点です。 とくにチームでコンテンツ制作を行っている場合、ブランディングのトーンを揃えることができ、メディアとしての文章スタイルの特徴を均一化できるメリットがあります。 ## AIによる極めて自然な音声読み上げ これまでPodcastや動画を制作するにあたり、人間が内容を考え、発声することでコンテンツを制作してきました。自身の声色や話し方のトーンが強みになる人がいる一方、コンテンツ自体は良いにも関わらず、自身の声や話し方がイマイチで伝えたいことが伝わりきらないことは、従来からあった課題です。 またプライバシーの理由から自身の声色を使いたくない場合もあります。これに対して音声読み上げソフトウェアを使ってコンテンツを生成することは広く行われてきましたが、そのほとんどは人間の発声と比べると自然に聞こえない、また声色についてもカスタマイズができないものがほとんどでした。 そんな中、2017年にGoogleによって、極めて自然な形での音声読み上げの研究プロジェクト「Tacotron」が発表されました。サンプル音声が発表されると、その自然な読み上げに注目が集まりました。2020年10月現在でも最新のサンプル音声を聞くことができ、そのテクノロジーの進化を感じ取ることができます。 Tacotronの研究では、同じ文章でも、ただ自然な音声読み上げることだけではなく、モデル化手法の違い、どの単語にアクセントを強くおくか、発生速度をどの程度にするかなど多数のパラメータ調整によって、微妙なニュアンスの違いを人工的に作れることを示しています。 Tacotronは自然な音声生成を達成しましたが、実用にはまだ問題があると言われています。人工音声スタートアップの[WellSaidLab](https://techcrunch.com/2020/09/22/wellsaid-labs-research-takes-synthetic-speech-from-seconds-long-clips-to-hours/)によると、Tacotronは15秒程度の音声に最適化されており、1秒のオーディオクリップを作成するのに3分かかるという点で、10分以上のコンテンツを作るという現代のコンテンツ制作のスタイルには合わないと主張しています。 これに対してWellSaidLabは制作速度、品質、長さに焦点をあててモデルを再構築しました。その結果15のAI音声モデルを使って、1分程度の極めて自然な人工音声のクリップを約36秒で出力できるソリューションを提供しています。現在はプロの声優による音声モデルが主ですが、今後ユーザ自身の音声モデル、人工的に作成される音声モデルなどが出てくる可能性があります。 AIによる音声読み上げは、テキストさえあればそれを代替するものになるため、記事やBlogコンテンツを音声化/動画化する、それも自分の好きな声色やトーンを自由に使うということが可能になります。 ## コンテンツ制作の未来はどうなるのか これらのテクノロジーの発展を見ていると、人間がコンテンツのテーマ、材料、ブランディングガイドラインを与え、AIがその実行を担うという未来が考えられます。今回ご紹介した3つの事例だけでも、コンテンツの生成のパイプライン(テキスト生成 => テキストブランディング調整 => 音声生成 )を作ることが可能になっています。 技術的には多くの要素が実用可能なレベルに達しており、あとはそれをサポートするソフトウェアの選択肢が多く出てくることで、プロ向けも個人向けもエコシステムがより発展する可能性があります。 こうしたAIのサポートによるコンテンツ生成によって、参入障壁は大きく下がり、コンテンツの量産化、高品質化がさらに進み、今よりも圧倒的な量のコンテンツ生成がなされ、競争が促進されるいうことも考えられます。この流れが起こった場合、コンテンツ自体の価値が下がることにもなり、メディアのビジネスモデル自体にも大きな影響を与えるでしょう。 現時点ではやや早計ですが、コンテンツ制作で強みを出していくために、(1) 企画やネタを考える創造力、(2) いかに多くの学習用のインプットをAIに食わせられるか、 (3) AIの挙動を理解し適切なソフトウェアを組み合わせ、いかに使いこなすか の3点を意識した人材や企業がより価値を出せる時代に突入していくことが予想されます。 --- ## The Wall Street Journal「内部レポート」を解説:サブスクリプション事業のための必読ポイント URL: https://ximera.com/posts/3d416ec412 公開日: 2020-11-17 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラと申します。 私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内50を超えるメディアにサービスをご提供しています。 2020年10月、Wall Street Journal紙(以下WSJ)の社内レポートを[BuzzFeedがリーク](https://www.buzzfeednews.com/article/amberjamieson/internal-wall-street-journal-report)しました。 社内の有志チームによって作成されたレポートは140ページを超える大作です。リークの形式も含め、2014年に発表されたNew York Times紙の「[イノベーションレポート](https://www.niemanlab.org/2014/05/the-leaked-new-york-times-innovation-report-is-one-of-the-key-documents-of-this-media-age/)」を彷彿とさせます。その内容は、デジタルメディアのサブスクリプション事業を運営するパブリッシャーに欠かせない示唆に満ちています。 今回のnoteは、BuzzFeedによるリーク版PDFの内容をもとに、WSJ社内レポートの要点とサブスクリプション事業に役立つポイントを解説します。 ### WSJの課題は「新規獲得」と「エンゲージメント重視のコンテンツ戦略」 まず、レポートの概要をおさえましょう。レポート冒頭の「About This Report」の抄訳をご覧ください。 > The Wall Street Journalのニュースレター「What's News Newsletter」は新規の読者と未購読者向けの無料ニュースレターだが、購読者は26万6000人と伸び悩んでいる。調査の結果、ニュースレター受信者の1/3以上がWSJの購読者で、調査に回答したうち43%は70歳以上だと判明した。 これまでのニュース産業は、読者がその日に知るべきことを供給する「読み捨て」の形態だった。しかし、この20年間で人々がニュースや情報を消費する方法は根本的に変わり、ニュースを見る主要なチャネルはテクノロジー企業になった。WSJはこうした時代の変化に適応しきれておらず、未だに紙が主体のままである。 デジタルメディアにおいては、紙と違って読者からのフィードバックに耳を傾けなければ成功はない。WSJは記事全体のPVが“ヘビーな(月に10日以上訪問)”読者によって独占されすぎている(下図)。WSJでは有料購読者が生むPVを成功指標としているが、こうしたヘビーユーザーばかりが有料購読PVを占めていても事業成長を後押ししてくれるわけではない。”ライトな”有料購読者へのアプローチが必要だ。 > WSJは読者層の高齢化と「お得意様」偏重のトラフィック構成に課題を抱えていることがわかります。レポートに掲載されている以下のグラフからも、それは明らかです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38968475/picture_pc_55a6ecf6f5195a98b281a388da0792fb.png?width=800) 引用元:WSJ社内レポートp.5(BuzzFeedによる報道記事より) レポート内では読者を以下のように定義していますが、有料購読者のうち訪問頻度の高い「ヘビーユーザー」が占めるトラフィックがいかに多いかが分かります。 また、ニュースレターの調査では、WSJの調査に回答してくれるようなロイヤルティが高い(=媒体に愛着を持っている)読者の多くは高齢層であることが判明しています。レポートでは、その理由が、デジタル化に伴うニュース消費の変化に応えられていないことにあると指摘しています。 そして序文の締めくくりでは、以下のような方針を掲げています。 > 1.  私たちが最優先するのはデジタル読者である 2. デジタル事業の成長と配信が、ニュースにおける意思決定の最前線にあるべきだ。紙面の検討事項はワークフローの下流に置き、最後に紙媒体デスクが行えばよい。 3. 意思決定の中核は、組織構造ではなく読者のデータ(Audience data)にするべきだ。読者に寄与しない組織体制はそのままにすべきではない。 4. ライト層と未購読者のニーズに優先して応えるべきだ。幅広いトピックや、時代を問わず読まれる(evergreen)コンテンツやニュース解説といったストーリ性あるコンテンツがそれにあたる。 5. 大切なのは、あらゆるタイプの読者が私たちの企業報道に興味をもっているとデータで明らかになったことだ。ビジネス・仕事・経済に特化した媒体としてのアイデンティティを再確認できた。私たちはビジネスマン必読のビジネス媒体としてのあり方を残しながら、幅広い読者に向けた分かりやすく実用的なストーリーの優先順位を一貫性を保って高めていかねばならない。 > WSJの現状と歩むべき方向性をはっきりと示したこのレポート。ここからは、デジタルメディアのサブスクリプション事業において特に着目すべき3つのポイントを解説します。 ### 1. すべては「ビジョン」と「データ」から始まる まず注目したいのは、レポート本文の開始早々に「ビジョン・ミッション・戦略」を掲げていることです。Chapter1は、以下のスライドで幕を開けます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38969496/picture_pc_629db301f1c37935d49c6b23e08cd7fc.png?width=800) 引用元:WSJ社内レポートp.17(BuzzFeedによる報道記事より) > ダウ・ジョーンズのミッション:世界中の意思決定者のためのニュースと洞察の決定的なソースになること。 WSJのミッション:私たちは、信頼された事実に基づいたジャーナリズムが世界にとって正しく、ビジネスにとっても良いものであると信じる。 戦略:私たちのジャーナリズムを最も特徴づけるものを理解し、そのニュースのミッションと、現在から未来にわたって読者に提供する価値を十分に理解した上で組み合わせること。 ビジョン:私たちの開放性、分かりやすさ、共感できる経験、素晴らしい革新性ばかりでなく、私たちの公平で率直な(down-the-middle)ジャーナリズムが知れ渡ること。 > イノベーションレポートの先駆者であるNew York Timesも、2014年のレポートで長期的な編集方針(long-term editorial vision)への目配りが不足していることを問題点として指摘しています。 また、続編として同社が2017年に公開したレポート「[Journalism That Stands Apart](https://www.nytimes.com/projects/2020-report/index.html)」では、提言の1点目に「すべての部署が、スタッフがよく理解できる明確なビジョンを持つべきである(Every department should have a clear vision that is well understood by its staff)」と述べており、ビジョンを言語化し浸透させることの重要さを説いています。 もう一つ特徴的なのが、定量データによる裏付けが徹底していることです。レポートの各所で、購読者の構成比や訪問頻度といった行動データがグラフ化され、事業上のパフォーマンスが具体的な成長率とともに示されています。 このレポートが社内向けだという背景をふまえると、レポート制作チームが「ビジョン」と「データ」を全社の共通言語にしようとする意気込みが見て取れます。近年のデジタル組織における定石をおさえたアプローチといえるでしょう。 デジタル組織づくりについてもっと知りたい方は、この記事で詳しく解説しています。 [事業成長は強い組織から。パブリッシャーのデジタル組織づくりの3ステップ](https://app.notion.com/p/3-deaa3e4ab6274eb2ac6fcd3783c2c952?pvs=21) ### 2. サブスクリプションの事業成長には「新規獲得」と「維持」のバランスが重要 サブスクリプションビジネスの事業成長は「Acquisition and Retention(「新規読者の獲得」と「既存読者の維持」)」のバランスが重要です。 このレポートで最もセンセーショナルなのは「高齢化している既存読者の満足度を追求するより、若年層(44歳未満)や女性などの新規読者の獲得に注力すべきだ」と、Acquisition(新規読者の獲得)に舵を切るべきと明言していることです。 レポートでは既存読者に報いる姿勢を評価しつつも、新規読者の獲得に課題があると指摘しています。以下のグラフではNew York TimesとWashington Postと比較してトラフィックの成長率が鈍いことを示し、「(WSJが)成人のニュース消費者人口の15%にしかリーチしていない状況では、購読者数の増加を追求することは困難だ」と断じています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38968854/picture_pc_744131f652fb6e0c5d430ab30f7a35ff.png?width=800) 引用元:WSJ社内レポートp.27(BuzzFeedによる報道記事より) また、WSJはp.5のグラフのようにトラフィックの多くをヘビーユーザーが占めている一方で、新規読者の獲得率(コンバージョンレート)と解約率(チャーンレート)は長きにわたって横ばいだといいます。レポートでは、このままの状況が続けば「550万人のデジタル購読者を獲得するために22年かかる試算」だと、厳しい現実を突きつけています(2020年6月時点、New York Timesのデジタル購読者が567万人)。 つまり、WSJは事業の成長性が低いにもかかわらず「お得意様」の地盤が厚い状態なのです。筆者の予想にすぎませんが、現在のWSJは新規・既存どちらの読者を大切にするべきかどっちつかずで、コンテンツや施策の方向性を定めにくい状態にあるのではないでしょうか。この課題はWSJに限ったものではありません。日本でコンテンツのサブスクリプション市場が成熟したとき、多くのパブリッシャーが将来直面する問題だといえるでしょう。 ### 3. 新時代のニュースはエンゲージメントなしに語れない レポートには「エンゲージメント」という言葉が幾度となく登場します。レポート終盤のChapter8「How We Cover Things」では、新たなニュースの消費形態に応えるコンテンツのあり方を、このように提言しています。 > ・リアルな人々の生き様をストーリーとして語る ・エバーグリーンなコンテンツを活用する ・プレゼンテーションやビジュアルを活用する ・動画、音声コンテンツを活用する > 上記の提言は、おしなべて記事の満足度や滞在時間の貢献度――つまり、読者エンゲージメントの向上に寄与するものです。レポート冒頭の「About This Report」で指摘された「読み捨て型」のニュースメディアから脱却するカギは、読者エンゲージメント向上にあるといえます。 なかでも「エバーグリーンなコンテンツ」は多くの方にとって見慣れない言葉でしょう。「evergreen(常緑の)」という英語の意味どおり、時を問わず色褪せない内容のコンテンツを意味します。新聞社や通信社が得意とする、速報性が問われるストレートニュースとは対極にある存在です。 WSJも例に漏れず、コンテンツの多くは「流動的なニュース(Floating news)」と定義されるストレートニュースです。「流動的なニュース」は同紙のコンテンツの75%を占め、その寿命はわずか1.5日しかないと分析されています。 他方「エバーグリーンなコンテンツ」は「流動的なニュース」と比べてPVは28%、消費時間は7%も多く、有料会員へのCV率も高いといいます。時事と関係が薄い内容にもかかわらずコロナウイルス流行下でもトラフィックを獲得していることからも、その強力さは明らかです。 「読者エンゲージメント」についてもっと知りたい方は、この記事をご覧ください。 [その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは](https://app.notion.com/p/ab7e039d90684fbbb8fa37c4f7049b2b?pvs=21) ### 戦略は実行がすべて。あなたのメディアで明日からできますか? ここまで、WSJの社内レポートで着目したい3つのポイントを解説しました。レポートには組織の多様性やジャーナリズムについての提言も含まれていますが、この記事ではサブスクリプション事業運営に役立つ内容をピックアップしてご紹介しました。 WSJのレポートは「The Content Review」と題する通り、コンテンツに関する具体的なプラクティスが盛りだくさんです。特に、レポート終盤に掲載されている「デジタルパブリッシングのチェックリスト」は、日本のデジタルメディアでも明日から実行できることばかりです。最後に、翻訳とともに内容を紹介します。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38969018/picture_pc_99d695447f3cc6d8bfe572c0341af163.png?width=800) 引用元:WSJ社内レポートp.121(BuzzFeedによる報道記事より) > ・検索流入を集めるために最適化した記事タイトルか? ・適切な内部回遊リンクを設置しているか? ・リンクに意味を持たせ、内部回遊を促す適切な行動喚起要素があるか? ・プロモーションでソーシャル言語(カジュアルな口語調の表現)を使っているか? ・ビジュアルはあらゆる画面サイズに対応しているか? 例えばスマートフォンでグラフは読めるか? ・埋め込みやモジュール(動画、読者の声、ニュースレター)を工夫しているか? ・トピック、作者名、キーワード、連載名など、記事に沿ったタグを付けているか? > あらゆる戦略は、実行して初めて物をいうものです。外野から評価するのは簡単ですが(この記事もそうですが……)、実行に移すのは容易ではありません。WSJのレポート制作チームも、そのことを重々分かっているようです。レポートの冒頭で「継続的な対話を開始するためのものであり、単に一回限りの分析ではない」と宣言しているように、WSJの本当の勝負は、このレポートを公開した日から始まっているのです。 そしてWSJに限らず、あらゆるデジタルメディアの未来は、戦略をいかに実行できるかにかかっています。 御社のデジタルメディアでは、明日から「チェックリスト」の内容を実行できますか? ぜひ、ご自身に問いかけてみてください。 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 2020年11月17日 16:54 --- ## 事業成長は強い組織から。パブリッシャーのデジタル組織づくりの3ステップ URL: https://ximera.com/posts/49c78b9fcd 公開日: 2020-11-11 著者: Ximera [illustrations by Storyset](https://storyset.com/work) # 事業成長は強い組織から。パブリッシャーのデジタル組織づくりの3ステップ こんにちは、キメラです。 私たちはメディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援しているスタートアップです。2019年から国内70を超えるメディアにサービスを提供しています。 今回はパブリッシャーがデジタル事業を推進するにあたって必要な組織のあり方とよくある悩みの解消法についてお伝えします。 --- 多くのパブリッシャーが抱えるデジタル組織の悩みは、ある要件を満たせていないために生じている場合がほとんどです。 こんなお悩みに心当たりはありませんか? パブリッシャーのデジタル組織づくりを成功させるためには、以下の3つのステップが必要なのです。 ここからは、3つのステップについてそれぞれ解説します。そのまま読み進めていただいてもよいですし、お悩みにマッチした項目に目次リンクからジャンプしてご覧いただくのもおすすめです。 --- --- ### 1. デジタル事業の方向性を明確にする なによりもまずデジタル事業の方向性を明確にしましょう。そしてこれからチームが何をするのか、ミッションを明確にすることがチームづくりの第一歩です。 目標を定め、そこに至る方針をつくり、現在位置と方角を確かめながら進む。デジタル事業の方向性をつくることは、登山計画にたとえることができます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38495767/picture_pc_9e14971c77e30085296186b59ddd586e.jpg?width=800) これらの3点を明らかにし、チーム内の共通言語になるまで浸透させましょう。これからチームが何を成し遂げるのか、明確なミッションがチームづくりの第一歩であり、要です。テーマはサブスクリプション事業設計とありますが、デジタル事業の設計にもそのまま応用できる考え方です。 方向性づくり、つまりデジタル事業の事業計画については、[まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】](/posts/8f91d866d7)に詳しくまとめました。 ### 2. 意思決定フローと運用体制を整備する さて、実際に事業を動かすチームを構成していきます。ここで何よりも大切なのが、事業全体・運用・コンテンツについて、それぞれ「だれが何をどうやって決めるか」を明らかにすることです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38495976/picture_pc_70f91fe7105c3617fa567a2564d35430.jpg?width=800) デジタル事業のチームを立ち上げて人員も予算も確保しているのに、 - 部門間の調整に時間がかかる - 事業方針がいつまでも決まらない - 施策が行きあたりばったりで、はじめどきも引き際もわからない - 予算調整して動き出せるのは半年先 という課題を抱えているチームは、多くの場合は「誰が何をどうやって決めるか」、つまり意思決定のフロー不明瞭で、意思決定されないことそのものがボトルネックになっています。 これは多くの国内パブリッシャーが陥りがちな罠です。それぞれの領域について責任者を明確に定め、適切な権限を与えることが大切です。 運用体制についても触れておきましょう。デジタル事業の運用体制については大きく2つに分類できます。 横断チーム:メンバーを各部署から集めたチーム体制。ワーキンググループや兼任の形をとることも多い 専任チーム:デジタル事業専任のチームを立ち上げる。外部事業者もこれにあたる それぞれ以下のようなメリットとデメリットがあります。自社の現状に適した体制を選ぶとよいでしょう。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38496138/picture_pc_2ad26c87d05f4bade16742ed7ead44a4.jpg?width=800) もちろん、どちらの体制をとる場合も、上記に紹介した「デジタル事業の方向性」と「意思決定フロー」が明確になっていることが大前提です。どんなに優秀な人材を集めても、進む方向とリーダーがあいまいなチームでは本来の能力を発揮することは難しいものです。 ### 3. 社内ブランディング デジタル事業は動き出してからが正念場です。デジタル事業の多くは、既存のビジネスモデルに比べると単価が少額な「小さく積み上げて儲ける」ビジネスモデルです。また、事業が安定するまでの時間や投資も考えると、社内からの理解と後押しは欠かせません。 しかし、既存事業に携わる社員の多くはデジタル事業に対して「何をやっているかわからない」「自分には関係ない」というイメージを抱きがちです。これはパブリッシャーに限らず、デジタル化を推進する企業にとって大きな課題です。 解決の参考になるのは、P&G社でIT組織の運営とデジタル変革の両方を世界各地で指揮し『Why Digital Transformations Fail(なぜデジタルトランスフォーメーションが失敗するのか)』を著作にもつTony Saldanha氏が提唱する「DXの4カ条」です。 > *DXの4カ条 1. MTP(Massive Transformative Purpose):皆がワクワクさせるような壮大な目的を掲げる 2. 空気:適切なメッセージを発信し、組織が変化する雰囲気をつくる 3. スキン:経営者やオーナーが金銭的・時間的にコミットする 4. パイプライン:小さくスピーディーな成功体験を積む 出典:[エクサウィーズAI新聞](https://community.exawizards.com/aishinbun/%e4%b8%8d%e5%8f%af%e8%83%bd%e3%81%a8%e6%80%9d%e3%82%8f%e3%82%8c%e3%81%9fdx%e3%81%ab%e3%83%af%e3%82%b7%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%b3%e3%83%9d%e3%82%b9%e3%83%88%e7%b4%99%e3%81%8c%e6%88%90%e5%8a%9f%e3%81%97/)* > こう謳われているように、チームをワクワクさせることや組織が変化できる空気をつくること、つまりデジタル事業の社内ブランディングは不可欠です。 また、社内ブランディングはデジタル人材の獲得のためにも重要です。 あらゆる業界でデジタル人材の採用が激化している今、デジタル人材を適切に評価する環境が整っていなければ、見向きもされない可能性さえあります。仮に採用できたとしても、デジタル事業に理解のない組織に優秀な人材が定着するとは考えにくいでしょう。 採用ブランディングも大切ですが、本質的には社内ブランディングが先決だと心得ましょう。 ### さあ、「新天地開拓」に乗り出そう 既存のビジネスモデルから新しい事業軸を生み出そうとするデジタル事業のあり方は、陸地を漕ぎ出して新天地を求める開拓者のようなものです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38496438/picture_pc_34326b1ccf00f3d7086f51ac0c40ae7d.jpg?width=800) 行きあたりばったりでリーダー不在の旅路は、船員(=人員)や資源(=予算、事業の種)をいたずらに消耗してしまいます。また、新天地に辿り着いたあとも孤軍奮闘するのではなく、その活動を知らしめることで適切に追加投資を得られるようにしましょう。 この記事をご覧になっている「開拓者」のみなさまにとって、少しでもお役に立つ内容をお届けできたなら幸いです。 この記事の内容を60分で解説した[動画コンテンツ「デジタル時代のパブリッシャー組織戦略」](https://www.youtube.com/watch?v=oPGjJ1erU98)もご用意しています。あわせてご利用ください。 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Nov 11, 2020|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## 「toB&toC」へ広がるパブリッシャービジネス(2020/10/15) URL: https://ximera.com/posts/19cc77fd6f 公開日: 2020-11-09 著者: Ximera 2020年11月9日 10:42 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここから先は【2020年10月15日号】の内容を一部再編集したものです。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 1. 「B&C」へ広がるパブリッシャービジネス デジタルメディアにおいても、紙面と同じように法人向け(toB)と個人向け(toC)の課金ポイントを併せ持つことが重要です。今回は、収益化を狙ってビジネス領域を拡大している事例を特集します。 国内では法人向けのブランド戦略を支援する事業が続々と始まっています。広告事業の落ち込みも受けてか、メディアの発信力や世界観を生かした付加価値の高いサービスに踏み切っているようです。 [NewsPicksを活用した企業文化の変革に伴走する専門スタジオ「NextCulture Studio」を設立](https://www.uzabase.com/jp/news/newspicks-next-culture-studio/) [博報堂「TEKO」とプレジデント社が クリエイティビティとドキュメンタリーで企業変革を加速する新サービスを開始 |ニュースリリース|博報堂 HAKUHODO Inc.](https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/82758/) [「GO」と「朝日新聞」が連携し、社会課題解決型の広告クリエイティブ を開発するサービス『ブランドニュース』を提供開始 | 朝日新聞社インフォメーション](https://www.asahi.com/corporate/info/12906514) [企業のコミュニケーション戦略支援サービス「HEARST made」プロデュースによる新プロジェクトが始動](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000008128.html) 「TABI LABO」を運営するNEW STANDARD株式会社はブランドスタジオ事業に取り組んできただけでなく、ミレニアル世代の調査レポート提供やD2Cブランドの立ち上げなど、toBからtoCまで記事コンテンツを超えた幅広い事業を展開しています。 [「メディアは儲からない」苦闘の末に辿り着いた"新しい基準"の提案という価値...NEW STANDARD久志代表インタビュー | Media Innovation](https://media-innovation.jp/2020/10/02/new-standard-interview/) 逆に、BloombergはtoBの専門分野からtoCへとメディアブランドを広げようとしています。 [Bloomberg Media launches personal finance site Wealth](https://www.axios.com/bloomberg-media-wealth-personal-finance-64bc97d6-51c9-43e7-9530-874242ebc117.html) 同社はマス向けに金融情報やライフスタイル系コンテンツを提供する新メディアの立ち上げを計画しているようです。近年もThe AthleticやThe Informationとバンドル形式(セット販売)のサブスクリプションを提供するなど、一般読者へと裾野を広げる動きがみられます。 ### 2. パブリッシャー組織戦略イベントのアーカイブ動画を公開
パブリッシャーが紙メディアの売上と広告収益に頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、組織も事業にあわせて変化が求められます。今回のオンラインウェビナーでは、デジタルメディア時代に適した組織戦略の考え方や成功事例をお伝えしました。 ### 3. キメラの社内Slackでシェアされた注目ニュース [■グーグル 新たなニュース配信サービス開始へ 報道機関と提携](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201002/k10012644591000.html) [■toCサブスクリプションを評価するとき考慮すべき10の要素(英文)](https://nbt.substack.com/p/10-factors-to-consider-when-evaluating) [■ユーザベース、経済メディア「クオーツ」買い手求める-報道 - Bloomberg](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-10-07/QHT6AXDWX2PS01) [■IASが、ビューアビリティ、アドフラウド、ブランドセーフティなどメディア品質指標の最新ベンチマーク「メディアクオリティ レポート 2020年上半期版」を発表](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000014440.html) [■目標の6倍を達成、アトランティックのオーディエンス開発術 :「ほかのパブリッシャーでも参考にできる」 | DIGIDAY[日本版](有料記事)](https://digiday.jp/publishers/weve-really-reset-our-floor-how-the-atlantic-gained-300000-new-subscribers-in-the-past-12-months/) [■情報収集のための1カ月間のサブスク料金は「1万円以上」が20.4%!:紀伊民報AGARA](https://www.agara.co.jp/article/83302) [■エフエム東京と博報堂DYメディアパートナーズ オンデマンド音声ビジネス領域における協業を開始|ニュースリリース|博報堂DYメディアパートナーズ](https://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/organization/20200924_28292.html) [■「ニュース」を最適化した音楽プレイリストが登場、Spotifyが拡大する音楽アルゴリズムの活用法 | All Digital Music](https://jaykogami.com/2020/09/17138.html) [■新規クライアント獲得に苦戦する パブリッシャー たち:「広告主は早くて安い、馴染みがあるものを選ぶ」 | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/theyre-gonna-go-with-what-they-know-publishers-struggle-to-win-new-business-amid-pandemic/) [■独自ポッドキャストシステムを構築した、シブステッドの狙い :「自分たちで制御できる」 | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/gives-us-more-control-to-grow-revenue-schibsted-built-its-own-podcast-platform/) [■FIPPがまとめた2020年Q3のサブスクリプションレポート(英文)](https://www.fipp.com/news/launch-of-fipps-global-digital-subscriptions-snapshot/) [■ポッドキャストは回復力のあるメディアなのは間違いない(英文)](https://whatsnewinpublishing.com/its-definitely-a-resilient-media-news-audio-and-the-impact-of-the-pandemic/) [■デイリーのニュースレターをはじめてわかった7つのこと(英文)](https://whatsnewinpublishing.com/7-things-weve-learned-from-launching-a-daily-newsletter/) --- ## KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】 URL: https://ximera.com/posts/ce4ca2a579 公開日: 2020-11-04 著者: Ximera [Travel illustrations by Storyset](https://storyset.com/travel) # KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社・放送局などのパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化の支援を提供しているスタートアップです。 この記事では、サブスクリプションモデルのデジタルメディアで避けて通れない事業計画の作り方について、前後編でお送りしています。事業計画づくりの前に知っておきたい考え方を登山に例えて説明した前編につづき、後編となる今回は、実際に事業計画を立てるときに必要な指標について解説します。 前編を読む [まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】](/posts/8f91d866d7) ## KGI=目標、KPI=戦略 まずは、よく耳にする「KGI」と「KPI」の違いをおさえましょう。両者は混同されがちですが、それぞれ異なる役割を担っています。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37961427/picture_pc_d9608843444dc70bd507381792b4d13f.jpg?width=800) --- KGI(=Key Goal Indicator、 重要目標達成指標)は、組織や事業が達成すべき定量的な目標のことです。サブスクリプション事業においては、売上高や有料購読者数がこれにあたります。 対するKPI(=Key Performance Indicator、重要業績指標)は、KGIを達成するために、業務プロセスが適切に行われているかを定量的に管理・評価する指標です。サブスクリプション事業においては、有料購読者数や収益性の根拠となるいくつかの指標がこれにあたります。詳しくは後述します。 両者の関係性を事業計画づくりの手順にあてはめると、以下のようになります。 事業の方向性を定める(詳しくは[前編](https://app.notion.com/p/e6896241e1da4dcc84ad48e5a3d67f53?pvs=21)をご覧ください) ↓ 方向性に沿った事業目標(=KGI)を設定する ↓ KGI達成のために注力する指標(=KPI)を設定する この段落でお話したKGIとKPIについて噛み砕いて知りたい方は、この[解説動画](https://www.youtube.com/watch?v=f2Y6NgYEkKU)をご覧くださいKGIとKPIの定義や諸説は、徳崎 進氏の論文「[マネジメントにおけるKPIの意義を再考する : 文献研究を基礎として(2015)](https://ci.nii.ac.jp/naid/120005691400)」に詳しいです。 ここから先は、KGIとKPIの具体的な設定方法をご紹介していきます。 ## 事業目標(KGI)は4つの変数コントロールがポイント まずKGIの設定方法です。 はじめにサブスクリプション事業で達成したいゴール=KGIを設定しましょう。基本の指標は「UU数」「有料購読者数」「売上」「利益」です。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37961699/picture_pc_89f2d0c3b067b7d841c87d6d9bb279ab.jpg?width=800) --- これらのそれぞれに達成したい目標を具体的な期間(月次をおすすめします)ごとに定めれば、事業計画のできあがりです。 ……とは簡単に言うものの、有料購読者数の目標設定に多くの方が悩むのではないでしょうか。妥当性のある計画づくりに役立つのが、以下4つのベンチマークです。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37961762/picture_pc_cc0df03b1295659304c0980a6b0b2a11.jpg?width=800) --- まず、1ヶ月あたりの有料購読者数を算出するための数式 有料購読者数=前月の購読者+新規購読者数 - 解約者数 に、以下のように「ロイヤル率」「転換率」「解約率」を変数として組み込みます。 新規購読者数=前月比の純増UU数(当月UU-前月UU)×「ロイヤル率」×「転換率」解約者数=前月の有料購読者数 ×「解約率」 それぞれの変数には、ベンチマークに沿って無理のない数字を設定しましょう。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37961870/picture_pc_3f66f63032f7cfda24497a2e498740b5.jpg?width=800) --- 「ロイヤル率」「転換率」「解約率」を設定できたら、仕上げとして積み上げた有料購読者数(ボリューム)が妥当かどうかを検証します。 事業計画の最終月に設定している有料購読者の総数を全UU数で割った数字=「課金率」が、ベンチマークの範囲内に収まっているかを確かめましょう。 積み上げ式で目標設定をすると「全UUの半分が有料購読者」などと非現実的な事業計画になりがちです。全読者のうち有料購読者が占める割合は、日本国内のサブスクリプション成功例である日経新聞でわずか1%、世界的に成功を収めているNew York Times紙でも3%にとどまることに留意しましょう。 このように、4つの変数を蛇口のように調節しながら、妥当性のあるKGIを設定することが大切です。 ここまで説明したKGIと事業計画づくりを体験できる[フォーマット](https://docs.google.com/spreadsheets/d/1xSMcv_ef13pph61HoVBsPR7w3CW1xNZgPhhIktf59zw/edit#gid=652374272)を提供しています。コピーしてご利用ください。 ## KPIは日々の戦略指標 KGIを設定できたら、その達成のために追うべきKPIを設定しましょう。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37962070/picture_pc_fe63ec0d9adc0289142e50c659a4bef4.jpg?width=800) --- サブスクリプション事業のKPIで重要なのは、メディアに訪れた「一見さん」が有料購読者になるまでの成長を可視化できる指標を設定することです。 日々の運用においては、読者の行動フェーズごとに以下の指標をKPIにするとよいでしょう。 新規獲得(認知〜訪問)フェーズ ①PV数 ②UU数 育成(再訪問〜ロイヤル)フェーズ ③訪問頻度 ④1UUあたりのPV数(≒回遊率) 有料転換(ロイヤル〜購読)フェーズ ⑤CVR(コンバージョンレート) 購読継続フェーズ ⑥退会率(⇔継続率) 大切なのは、KPIを「設定して終わり」「眺めて終わり」にしないことです。 データは日次で取得し、毎日、少なくとも週次でKPIの進捗状況をもとに次のアクションを決めましょう。 KPIは日々の業務プロセスを評価するための指標ですから、現場が次に何をすればいいのかが明確になることが大切です。測定・管理しやすいシンプルな指標を設定しましょう。 ### 1. ユーザーあたりの採算性で事業の収益性を測る あわせて知っておきたいのがユーザー1人あたりの採算性です。SaaS(Software as a Service)ビジネスでよく使われる指標で「ユニットエコノミクス」とも呼ばれます。 低い平均単価でユーザー数を積み上げていくビジネスモデルで収益性を評価するための有用な考え方で、サブスクリプション事業のKPIとしても大いに活用できます。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37962446/picture_pc_a4542e83a534cf1297e21b2514c5e39d.jpg?width=800) --- ユニットエコノミクスの構成要素は「LTV(顧客生涯価値)」と「CAC(顧客獲得コスト)」です。 LTV(顧客生涯価値):1人の顧客がサービス利用中に生み出してくれる売上高のこと CAC(顧客獲得コスト):1人の顧客を獲得するためにかかるコストのこと。広告宣伝費など LTVからCACを差し引いた「LTV利益」が、顧客1人あたりから得られる収益です。LTV利益が低く収益性が悪い状態を放置していると、いくら有料購読者が増えても利益につながらない赤字事業になるおそれがあります。 --- ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37962506/picture_pc_83b317aab605cda4d5404b083b931064.jpg?width=800) --- 具体的には、上のようなユニットエコノミクスが理想的です。CACはLTVの1/3以下に抑えたうえで、1年でCACを回収できるコスト構造になります。 LTVの向上に寄与するのは「平均単価を上げること」と「平均継続期間を延ばすこと」です。つまり、有料購読者の満足度を上げ、解約率を低く抑えているかどうかが分かるKPI=解約率、継続率と連動します。 CACを抑えるには、少ない広告予算でより多くの有料購読者を獲得することが必要です。広告運用を効率化したり、クチコミや自社のメルマガなど広告費用のかからないチャネルでの広報を強化するとよいでしょう。 ユニットエコノミクスの解説は馬田 隆明氏の「[スタートアップのお金と指標入門講座:ユニットエコノミクス (Unit Economics)](https://tumada.medium.com/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%AE%E3%81%8A%E9%87%91%E3%81%A8%E6%8C%87%E6%A8%99%E5%85%A5%E9%96%80%E8%AC%9B%E5%BA%A7-%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A8%E3%82%B3%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9-unit-economics-cac-ltv-53112185fbcd) 」に詳しいです。 ## 事業計画の数字は変わるもの サブスクリプション事業に限らず、事業計画は外部環境や目標の変化にあわせて定期的な見直しが必要です。しかし、事業運営に必要な指標をおさえておけば、細かな変化を恐れることはありません。 さまざまなKGIやKPIを一朝一夕で理解することはなかなか難しいものです。繰り返し試行錯誤しながら理解を深めていきましょう。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Nov 4, 2020|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## パブリッシャーのための愛されるSNSマーケティング(2020/12/2) URL: https://ximera.com/posts/688ece8b07 公開日: 2020-11-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたびトライバルメディアハウスの高野 修平氏をお招きし、「パブリッシャーのためのSNSマーケティング」をテーマにウェビナーを開催しましたので、アーカイブ動画と資料をご覧ください。 高野さんは大手企業のマーケティング支援やソーシャルメディアに関するツールの開発・提供を行うトライバルメディアハウスに所属しており、熱心なファンを生み出す「ファンダムマーケティング」のエキスパートです。デジタルメディアのSNSマーケティングやブランディングの第一歩としてお役立ていただければ幸いです。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# ウェビナー資料 [20201202_高野様講演_パブリッシャーのための愛されるSNSマーケティング (1).pdf](%E3%83%91%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%84%9B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8BSNS%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%882020%2012%202%EF%BC%89/20201202__SNS_(1).pdf) # イベント概要 SNSの普及によって、企業と消費者の関係づくりは新たな局面を迎えました。パブリッシャーもむろん例外ではありません。海外の大手デジタルメディアの多くは、若年層の読者獲得やブランディングのために積極的なSNS活用に乗り出しています。TwitterやInstagramはさることながら、Washington PostがTiktokチャンネルを開設したことも記憶に新しいでしょう。 あなたのデジタルメディアでは、SNSを効果的に活用できていますか? とりあえず記事を投稿するだけになっていたり、何を投稿すればファンが増えるのか分からずに担当者のカンや代理店任せの運用になっている……そんなお悩みを持つ方々に向けたウェビナーを開催します。 今回はトライバルメディアハウスの高野 修平氏をお招きし、「パブリッシャーのためのSNSマーケティング」をテーマにお話をいただきます。トライバルメディアハウスは大手企業のマーケティング支援やソーシャルメディアに関するツールの開発・提供を行う企業で、高野さんは熱心なファンを生み出す「ファンダムマーケティング」のエキスパートです。デジタルメディアのSNSマーケティングやブランディングの第一歩としてお役立ていただければ幸いです。 # スピーカー:高野 修平氏プロフィール ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39444626/picture_pc_e2af7fb71e31ded839d3a34420832377.jpg) 株式会社トライバルメディアハウス所属。『Modern Age/モダンエイジ』事業部 事業部長/レーベルヘッド。チーフコミュニケーションデザイナー、クリエイティブディレクター。 トライバルメディアハウス内にある日本初のブランドマーケティングと音楽マーケティングを融合させたマーケティングレーベルを設立。ナショナルクライアント、テレビ局、音楽配信会社、映画配給会社、レコード会社、アーティストといった幅広いエンターテインメント業界を支援している。最新刊は『始まりを告げる《世界標準》音楽マーケティング』M-ON番組審議会有識者委員、尚美学園大学非常勤講師。‬ # こんな方におすすめのウェビナーです - SNS運用が行きあたりばったりになっている、もしくは代理店任せ - 読者に興味や愛着を持ってもらえるコミュニケーションがしたい - 読者離れを防ぐためのヒントがほしい - マーケティングやブランディングについて基礎から学びたい --- ## まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】 URL: https://ximera.com/posts/8f91d866d7 公開日: 2020-10-26 著者: Ximera [Travel illustrations by Storyset](https://storyset.com/travel) # まず「登山計画」から。サブスクリプション事業計画ことはじめ【前編】 こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。 今回は、パブリッシャーがデジタルメディアのサブスクリプション事業を立ち上げる時にぶつかるの壁のひとつ、「事業計画」について前後編に分けて解説します。前編では、エクセルとにらめっこしながら売上目標やKPIを立てる前に知っておきたい、事業の方向性づくりに必要な要素を紹介します。 ### サブスクリプションの実装について知りたい方におすすめの記事 [海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説](https://app.notion.com/p/5-2a2329c8292b4e0b983ae9f53c6f3b80?pvs=21) [自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは](https://app.notion.com/p/SaaS-1320a4b67a29424e9f7552240c4bae96?pvs=21) ## サブスクリプションの事業設計は「登山」と同じ。見切り発車は遭難まっしぐら デジタルメディアのサブスクリプションを成功させるためには、地道に施策と改善を繰り返す、まるで山道を登るような事業運営が欠かせません。 サブスクリプションは、少額の購読料を積み上げて長期的に大きな収益を生み出すビジネスモデルです。事業設計が不十分な状態で導入しても、単なる「値上げ」とみなされて読者離れを加速してしまったり、メディアのブランドを損なったりするリスクがあるのです。 会社としても、有料購読に見合うコンテンツやシステム導入に腰を据えて取り組まねばなりません。長期的な投資が必要だからこそ、事業の方向性をしっかりと定めることが必要です。 新たな事業の立ち上げには不確実がつきものですが、見切り発車の施策やツール導入は「遭難」コースなのです。ここからは、サブスクリプションの「登山計画」づくりの3要素について説明します。 ## 登る山:事業目標と提供価値を明らかにする 何よりも先に定めるべきは「登る山」です。実際の登山でも、目的地が決まらないことには出発できません。サブスクリプション事業においては、事業目標とデジタルの提供価値に相当します。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37474146/picture_pc_078c9192727b789aec55594f7ab12b79.jpg?width=800) 事業目標とは、「いつまでに、いくらの売上がほしいか」を定量的な数字で定義することです。どのくらいの売上規模を目指す(あるいは、事業存続のために必要か)によって、事業の妥当性・スケジュール・人員・想定コストなどを試算し、無茶な事業計画を未然に防ぐことができます。 ポイントとして、目標を立てるときは既存事業との共存を前提にしましょう。サブスクリプションに限らず、パブリッシャーのデジタル事業は「既存事業に取って代わるもの」「既存事業の損失を埋め合わせるもの」と思われがちです。しかし、事業が安定するまでの時間や投資規模を考えると、既存事業といかに共存するかを念頭に置くべきでしょう。 もう1つの「デジタルの提供価値」とは、「自社のデジタルメディアを通じて、読者に伝えたい価値」を言語化したものです。ここでいう価値とは、社訓や行動指針のような伝える側が主語になっている標語ではありません。デジタルメディアが何のために存在するのか、読者にどんな便益を与えたいのかをシンプルな言葉に落とし込んだ「ビジョン・ミッション」を定義しましょう。 例えば、ニュースメディアひとつとっても「日々の生活を便利にすること」を価値とするか「グローバルな知見を得られること」を価値とするかで、ターゲットやコンテンツの方向性はまったく変わってきます。 「登る山」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。 定量・定性の両面から目指していることを明確にして共有することで、戦略や施策の優先順位を判断するよりどころを持てるのです。 ### 登り方:狙いをもって施策を設定する「戦術」の考え方 目指す山が定まったら、次に考えたいのは「どんなルートで頂上に向かうか」でしょう。「登り方」とは、事業目標の達成に貢献する戦術のことです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37474320/picture_pc_92c025ed5d4350c3ac04f2976e74cedf.jpg?width=800) 戦術と聞くと「こんなサービスをやりたい」「あのツールを導入したい」とあれこれとアイデアを膨らませたくなりますが、ぐっとこらえてください。アイデアありきで施策を展開すると、一貫性のない事業になってしまいます。まずは、先ほど紹介した「登る山」に意識を向けましょう。 サブスクリプションの事業目標は購読料からなる売上です。つまり、購読者を増やすことに狙いを定めた施策を打つことが肝要です。メディアに訪れた「一見さん」が有料購読者になるまでの行動は、以下の図のようにフェーズ分けができます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37474360/picture_pc_04b5fa126b5cfbe4acdd00ae5108e923.jpg?width=800) 行きあたりばったりに施策を量産するのではなく、「何をすれば、読者がひとつ先のフェーズに進んでくれるか?」と仮説を立てながら打ち手を考えていくことが大切です。 「登り方」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。 ## コンパス:事業や施策を評価する基準・手段・体制 最後に手に入れておきたいのが、道に迷わないための「コンパス」です。事業においては事業や施策を評価する基準と、そのために必要な手段や体制がこれにあたります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37474607/picture_pc_f5c3373f4d733d85adf2400e7dd522a7.jpg?width=800) サブスクリプションの事業運営において把握しておきたいKPIは後編で解説しますが、事業の進捗だけでなく、日々の施策単位でも成功・失敗の要因を振り返り、次の施策へと生かすサイクルを回すことが重要です。そのためにチームの分析体制を整えたり、共通言語として参照する指標やツールを決めておくとよいでしょう。 「コンパス」が決まっていないと、こんな課題に直面するかもしれません。 ## 大切なのは、最初にブレない軸を作ること 「壺の中には大きな石から先に入れよう」という格言を聞いたことがあるでしょうか。 壺の中に大きな石・砂粒・水を詰めるとき、大きな石は最初に入れなければならず、砂や水で壺を満たした後では手遅れになってしまいます。物事には優先順位があり、大切なことを決めてから細かなことを決めるべし、という教訓を伝えるたとえ話です。 サブスクリプションの事業設計も同じです。大切なのは、事業環境が変化していく中でもブレない軸を持つことです。この軸を持つために大切なポイントが、今回ご紹介した「登山」の3要素なのです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/37474709/picture_pc_863acdcb0a38f1e3ee3129aeac2cd6e8.jpg?width=800) エクセルに打ち込む事業計画の数字は、状況にあわせて柔軟に変化していくものです。まずは大枠にあたる軸を定めた上で、細かな計画づくりや施策の検討に移っていただきたく思います。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Oct 26, 2020|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) 後編を読む [KGIとKPIはこれでOK。サブスクリプション事業計画ことはじめ【後編】](/posts/ce4ca2a579) --- ## サブスクは「量から質」の時代へ(2020/10/1) URL: https://ximera.com/posts/65edc098ae 公開日: 2020-10-15 著者: Ximera 2020年10月15日 13:42 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここからは【2020年10月1日号】の内容をご覧ください。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 1. サブスクは「量から質」の時代へ 日本ではデジタルサブスクリプションを「たくさんの記事が定額で読み放題」という謳い文句で訴求することが多々あります。しかし、欧米ではその逆に、「量より質」のコンテンツ戦略が主流になりつつあることをご存知でしょうか。 ■より少量の、より良質なコンテンツを:地方紙の課金戦略が転換(英文) [Publish less, but publish better: pivoting to paid in local news](https://reutersinstitute.politics.ox.ac.uk/publish-less-publish-better-pivoting-paid-local-news) 欧州の地方紙における課金戦略を調査した、オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所のレポートです。約2年、20件以上のインタビューを実施した結果、以下の傾向が明らかになりました。 ・「一見さん」を含むリーチ数の拡大よりも読者との濃い関係づくりを重視・課金形式は広告掲載やタイアップからサブスクや寄付へ転換・従来の報道コンテンツだけでなく、深堀りした調査報道や連載、ポッドキャストへも拡大国内の新聞社においても、日本経済新聞が有料購読者のエンゲージメントを高めるため、[電子版のコンテンツ本数を減らす方向で検討をしている](https://digiday.jp/publishers/digiday-plus-talk-nikkei-nobuhisa-iida/)とのことです。 ■「The Atlantic」が年間30万人以上の有料購読者を獲得した方法は「質、質、質」(英文) [How The Atlantic amassed over 300,000 paying subscribers in a year, "by bearing down on quality, quality, quality" | What's New in Publishing | Digital Publishing News](https://whatsnewinpublishing.com/how-the-atlantic-amassed-over-300000-paying-subscribers-in-a-year-by-bearing-down-on-quality-quality-quality/) 雑誌メディアにおいても同じ傾向が見て取れます。米国の「The Atlantic」は昨年9月にペイウォールを設置してからの1年間で、有料購読者数が30万人を超えました。このレポートでは、急成長の要因がコンテンツの質にあると分析しています。同社はニュースレターなども駆使しつつ、「月に3回の訪問で十分なエンゲージメントが得られ、購読者が途絶えないようにすることができる」と明かしています。丁寧に制作された独自のコンテンツによって、無理に訪問数を稼がずともエンゲージメントを高めている事例です。「[The Guardian](https://twitter.com/pilhofer/status/1139537199073058816)」や「[Le Monde](https://twitter.com/lucbronner/status/1219181688149938178)」も、昨年から記事の掲載本数を削減することで、むしろ読者の獲得に成功していることが明らかになっています。 ■「ペイウォール はメディアの収益源として最適ではない」:南ア・デイリーマーベリック創業者 B・ブルキッチ氏 [「 ペイウォール はメディアの収益源として最適ではない」:南ア・デイリーマーベリック創業者 B・ブルキッチ氏 | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/daily-maverick-founder-branko-brkic-hard-hitting-journalism-memberships-south-africa/) 「量より質」の戦略は、ペイウォールによる課金モデル以外でも効果があるようです。南アメリカのニュースサイト「Daily Maverick」は、「The Guardian」のような読者に寄付を求めるモデルで収益を得ています。廃刊となった紙雑誌を引き継いだこのメディアは、競合メディアが手軽なニュース記事を取り扱うなかで、手間をかけた記事で読者の支持を得ています。 ### 2. キメラの社内Slackでシェアされた注目ニュース [■英テレグラフ、購読者の増加で利益押し上げ、通期決算で明らかに(英文)](https://www.pressgazette.co.uk/digital-subscriber-growth-boosts-profits-at-telegraph-in-2019-full-year-results-show/) 2019年の営業利益は73%増の1430万ポンド、週2ポンド以上支払う52.2万人の購読者。発行部数と広告の減少は購読料で「ほぼ完全に相殺された」。 [■米マイクロソフト、話題になった言語モデル「GPT-3」の独占ライセンスを取得(英文)](https://blogs.microsoft.com/blog/2020/09/22/microsoft-teams-up-with-openai-to-exclusively-license-gpt-3-language-model/) 「GPT-3」は非営利の人工知能研究機関であるOpen AIが提供する強力な言語モデル。書き出しのきっかけを与えるだけで、小説、エッセイ、ニュースリリースなどをまるで人間が書いたかのようなクオリティで出力できる。 [■パンデミックによって、ニュースレターでの独立に進むジャーナリスト(英文)](https://www.axios.com/pandemic-spurs-journalists-to-go-it-alone-via-email-613ca2d5-e8d5-4235-9582-48cc028e9d8b.html) Buzzfeed、The Verge、The NewYork Magazineなどで活躍したジャーナリストたちが独立する動きが広がっている。新型コロナウイルス感染症のパンデミック下での環境変化を促しているのは、ニュースレターだ。 [■早川書房に聞く、新型コロナ時代の出版社デジタル戦略](https://www.mediatechnology.jp/entry/2020/08/27/170000) 「(中略)Hayakawa Books & Magazines(β)は、Webメディアの準備段階という位置付けでスタートしました。どういう記事を書いたらどんな反応があるか、書籍販売にWebがどう役立つのか。そうした理解を社内で共有できればいいな、と思って始めたんです」 [■67%の消費者が信頼できるサイト上の広告にエンゲージしている:よりよい収益のための文脈ある広告(英文)](https://whatsnewinpublishing.com/67-consumers-likely-to-engage-with-ads-on-trusted-publisher-sites-why-contextual-advertising-promises-better-revenue-and-control/) DoubleVerify社によるレポート「2020年のメディアと広告の4つの基本的なシフト」から。広告は掲載されているメディアブランドとの適合性が重要である。 [■Apple、2020年末までFacebookの有料オンラインイベントのマージンを取らないことに](https://www.theverge.com/2020/9/25/21455598/facebook-paid-events-apple-ios-30-percent-fees-waived) Facebookからは刺のある言葉もあり、Epic Gamesが「フォートナイト」をApp Storeから削除されたことを巡ってAppleと法廷闘争になっている件と無関係とも思えない。 [■前代未聞!『FGO』が47都道府県の新聞広告を作った狙い 前編](https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/forcast/00004/00158/) 「ゲームからTwitterなどへと、ネットやSNSを媒介としてコミュニケーションが生まれる傾向がある。だからこそ、新聞広告だけにとどまらない可能性を見越して、あえて選んだ」 [■米マイクロソフト、ゲームのサブスクにアニメのサブスクをバンドル開始(英文)](https://www.polygon.com/2020/9/25/21456313/xbox-game-pass-ultimate-anime-funimation-premium-plus-subscription-free-my-hero-naruto) 「Xbox Game Pass Ultimate」は、2021年の前半に日本でもサービス開始予定(おそらく今回のFunimationのアニメバンドルは含まれない)。 [■アップル、ポッドキャストアプリ新興企業スカウトFMを買収-関係者](https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-09-25/QH6QXVDWRGG401) Appleのポッドキャストアプリは、個別の番組を聞かせる構成だが、ScoutFMは視聴履歴とAIベースのソフトウェアから複数の番組をまとめたステーション(プレイリストのようなもの)を作成することができる。 --- ## メディア運営を見直すヒント(2020/9/17) URL: https://ximera.com/posts/faa5ea4e37 公開日: 2020-10-01 著者: Ximera 2020年10月1日 10:39 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 このnoteではそのニュースレターのアーカイブを紹介しています。ここからは【2020年9月17日号】の内容をご覧ください。[ニュースレターはこちらから登録していただけます](https://ximera.us3.list-manage.com/subscribe?u=28aa61b05b8642d24892abfb3&id=290508eb16)。 ### 1. 他社メディアの運営方法からヒントを得よう ■ラーメン→世界経済まで…東洋経済オンラインが見つけた「PVの役割」 [ラーメン→世界経済まで...東洋経済オンラインが見つけた「PVの役割」](https://withnews.jp/article/f0200902000qq000000000000000W0es10105qq000021642A) 2020年5月に月間ページビューが3億を超えた東洋経済新報社「東洋経済オンライン」。その体制と編集方針がインタビュー形式で語られています。この記事はwithnewsの連載「WEB編集者の教科書」第14回。これまで、「ハフポスト」、「withnews」(自メディアですね)、「オモロコ」、「ねとらぼ」などのメディアも取り上げています。自社メディア運営のヒントが、この連載から得られるかもしれません。上記記事で連載はいったん中断、10月中旬からまた新規記事を公開するとのことです。 ■デイリーポータルZのバズるコンテンツ企画術は「高カロリー」「芋」「楽しそう」がキーワード [デイリーポータルZのバズるコンテンツ企画術は「高カロリー」「芋」「楽しそう」がキーワード | 【レポート】Web担当者Forumミーティング 2020 Spring](https://webtan.impress.co.jp/e/2020/09/04/36848) 「バズった記事をきっかけに初めて来訪した人は、どのサイトに来たか意識していない人がほとんど。しかし何度か来ているうちに、ライターを認識するようになる」ーー。同メディアは有料会員制度がありますが、バズはあくまでも入り口で、ロイヤルユーザーを育てて有料会員化する運営をしています。「バズる記事」を体系化して再現性を持たせていること、「ウケると思っても、記事内に悪意があると反感を買ってしまう」という事例は、ソーシャルメディア活用で重要なポイントでしょう。 ■“メディアが自分で技術を持たなくていいの?” ボトムアップで始まった講談社のデジタル変革、その舞台裏 ["メディアが自分で技術を持たなくていいの?" ボトムアップで始まった講談社のデジタル変革、その舞台裏 | 朝日新聞デジタル&M(アンド・エム)](https://www.asahi.com/and_M/20200908/15663022/) CMSやデザインを外部パートナーに委託しているパブリッシャーの方なら経験するであろう「ちょっとした修正にコストと時間がかかる」。その課題感から、講談社のデジタルメディア「現代ビジネス」編集部員だった社員が技術チームを立ち上げたインタビュー記事です。業務委託でフリーランスエンジニアを組織する、合同会社として新会社を設立する、というのは“紙文化”パブリッシャーが技術チームを作るにあたり参考になるかもしれません。 ### 2. 収益を支える広告、「差別」「信頼性」は大丈夫? ■その広告 行き過ぎていませんか? [https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200902/k10012596121000.html](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200902/k10012596121000.html) NHK NEWS WEBが2020年9月2日に公開した特集記事で、外見のコンプレックスを刺激する訴求で商品を買わせようとする「コンプレックス広告」の問題を報じています。記事では動画プラットフォームの動画広告とソーシャルメディアのみ言及していますが、パブリッシャーのメディアにとって対岸の火事ではありません。 ■ヤフー、「コンプレックスを露骨に表現した」広告禁止を改めて通知 「差別を助長する」 [ヤフー、「コンプレックスを露骨に表現した」広告禁止を改めて通知 「差別を助長する」](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2009/03/news074.html) [コンプレックスに関する表現の広告審査について](https://promotionalads.yahoo.co.jp/support/announce/849438.html) 翌日9月3日、ヤフーは「コンプレックスに関する表現」の広告を禁止する広告審査基準の適用を開始しました。ヤフーが広告審査でコンプレックス広告を禁止したとはいえ、他のプログラマティック広告や、特にレコメンドウィジェットの広告では適切にブロックしないと「コンプレックス広告」が出やすい状況です。自社メディアが広告で「差別」に加担しないようにしたいものです。 ■FNNプライムオンラインがセキュリティーツール導入、悪質な広告を排除へ [FNNプライムオンラインがセキュリティーツール導入、悪質な広告を排除へ](https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/08742/) プログラマティック広告を配信しているメディアでは、詐欺サイトに勝手に遷移してしまう「強制リダイレクト広告」が時折問題になります。そのリスクを軽減する対策ツールを、フジテレビジョンの「FNNプライムオンライン」が導入しました。広告でメディアの信頼性が損なわれないよう、対策ツールを導入するのは一考に値します。 ### 3. キメラの社内Slackでシェアされた注目ニュース [■タブーラ と アウトブレイン の合併は、なぜ頓挫したのか?:パブリッシャーにとって意味するところ](https://digiday.jp/platforms/taboola-outbrain-deal-fell-apart-means-publishers/) [■なぜいま、有料 ニュースレター が支持されるのか?: サブスタック CEO クリス・ベスト氏](https://digiday.jp/publishers/substack-ceo-chris-best-growing-paid-newsletters/) [■経済領域に特化した専門家マッチングプラットフォーム「NewsPicks Expert」始動。次世代のエキスパートを募集](https://www.uzabase.com/jp/news/newspicks-expert-start/) [■アップルが新たに無料、割引で提供できる「サブスクリプションオファーコード」を導入](https://jp.techcrunch.com/2020/09/05/2020-09-03-apple-introduces-offer-codes-to-entice-app-users-with-free-and-discounted-subscriptions/) [■ビデオリサーチとNTTドコモら、出版社のデジタルメディアビジネスの共通指標整備に向けた調査開始](https://rtbsquare.work/archives/31533) [■ボイスメディアVoicyが月額課金機能「プレミアムリスナー」を公開、インターネットから「声のプロ」の輩出目指す](https://jp.techcrunch.com/2020/09/07/voicy-premium-listener/) [■マイナビ、仮想ライブ空間『SHOWROOM』を展開するSHOWROOM株式会社と資本業務提携を締結](https://www.mynavi.jp/news/2020/09/post_24440.html) [■Googleが手軽にオンラインイベントをブラウザから開催できるクリエイター向けプラットフォーム「Fundo」を発表](https://gigazine.net/news/20200910-google-fundo/) [■Vogue Business、ローンチから18か月で34万の読者に恵まれ、メンバーシッププログラムを開始(英文)](https://www.mediapost.com/publications/article/355435/vogue-business-launches-membership-program.html) [■スペインの大手新聞デジタル版、ローンチ4か月で早くも有料購読会員6000人超(英文)](https://www.niemanlab.org/2020/09/el-pais-now-has-more-than-64000-digital-subscribers-accounting-for-nearly-a-quarter-of-total-digital-news-subscriptions-in-spain/) [■Apple、App Storeのガイドラインを一部改訂(英文)](https://www.theverge.com/2020/9/11/21432695/apple-new-app-store-guidelines-streaming-game-services-email-purchases) --- ## サブスク・広告だけじゃない。デジタルメディアの収益化(マネタイズ)方法を総まとめ URL: https://ximera.com/posts/9af3a4a394 公開日: 2020-09-24 著者: Ximera [illustrations by Storyset](https://storyset.com/work) # サブスク・広告だけじゃない。デジタルメディアの収益化(マネタイズ)方法を総まとめ こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。2019年1月に活動を始めて以来、国内20社・50メディアにサービスをご提供しています。 今回のnoteでは、デジタルメディアにおける多彩なマネタイズの方法をご紹介します。 ### 広告・サブスク依存は危険。マネタイズの柱を複数持とう 「出版不況」といわれる昨今、パブリッシャーは紙面だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られており、デジタルでいかに売上を生み出すか(=マネタイズ)を模索しています。 国内のデジタルメディアの多くは、主要なマネタイズ手段としてアドネットワークによる広告掲載や、自社の広告商品の販売が行われています。しかしながら、昨今のパンデミックによる景気後退を受け、広告売上は全世界的に低迷しています。世界最大の新聞社である「[New York Times](https://www.thedrum.com/news/2020/05/06/nyt-hastens-transformation-ads-biz-it-braces-55-plunge-ad-sales)」でさえも、広告事業の売上が半減することを見込んでいます。 また、近年注目を集めている記事コンテンツのサブスクリプション(=有料定期購読)も、導入してすぐ莫大な売上につながるわけではありません。デジタルメディアを安定して収益化するためには、特定の手段に依存せず、マネタイズの柱をいくつも育てることが重要です。 「広告」「記事のサブスク」以外に、どんな収益軸があるのでしょうか? この記事では以下の5つのジャンル別に、マネタイズの方法を成功事例とともにお伝えします。 ### 1.コンテンツの収益化 「コンテンツの販売=サブスクリプション」とイメージする方も多いかもしれませんが、コンテンツを収益化する方法は記事コンテンツの定期購読だけに限りません。 記事以外のコンテンツで読者との接点をつくる方法もあります。 海外で成功例が出始めているのが、動画・音声コンテンツです。「The Guardian」や「CNBC」は、自社のYouTubeチャンネルで10分を超える長尺の番組を配信しており、チャンネル登録者は100万人を突破、広告収入も見込めます。とはいえ、プラットフォーマーからの広告価格は下落傾向にあるとの[報道](https://digiday.jp/platforms/were-creating-inventory-faster-than-they-can-fill-it-publishers-see-youtube-ad-prices-drop-20/)もあります。これから動画・音声への参入を検討する場合は「どこで配信するか」もますます大切な視点になります。 ニュースレター(メルマガ)は、動画・音声に比べて低コストで取り組めるのがメリットです。多くのパブリッシャーでは記事の有料購読の「おまけ」的に扱われがちですが、大きなポテンシャルを秘めています。ニュースレターを主軸にしたサブスクリプションを提供している「Quartz」の存在はさることながら、米国ではニュースレターの有料購読に特化したプラットフォーム「Substack」が急成長しています。 [ニュースレターサービス「Substack」とパーソナルメディア帝国 | TechCrunch Japan](https://jp.techcrunch.com/2020/06/22/substack/) 専門性の高い情報を扱っていたり、有識者のネットワークを持っていたりするメディアならば、教育やビジネスに特化したコンテンツにニーズがあるかもしれません。 例えば米国のニュースサイト「ZDnet」は、様々なテーマの[e-ラーニングコンテンツを販売](https://academy.zdnet.com/collections/learn-something-new-while-wfh)しています。「Financial Times」が有料購読者向けに提供している教育コンテンツ「[FT Secondary School](https://www.ft.com/stream/dc4eb395-7eaa-4cea-a0c8-4ad46ec26347)」は、学生向けにコンテンツを無料開放することで若年層へのブランディングにも成功しています。 「The Economis」や「Business Insider(米国版)」のように、調査レポートの販売やコンサルティングなどで法人向けの収益化に取り組んでいる事例もあります。 ### 2.コマース、アフィリエイト メディアが持つ影響力や目利きへの信頼感を活かし、物販によるマネタイズを行う事例です。 米「Buzzfeed」はフードブランドのTasty(テイスティ)を中心に製品へのライセンス提供で収益を生んでいます。2019年度にはBuzzFeedブランド商品の小売店売上が[2億6000万ドル(約286億円)にものぼる](https://digiday.jp/publishers/tasty-centerpiece-buzzfeed-aims-260m-branded-product-sales/)と報じられています。 日本版「Lifehacker」や「GIZMODO」を運営するメディアジーンは、クラウドファンディングサイト「Machi-ya」を運営しています。同社はアフィリエイトにも力を入れており、2019年7月の「Amazonプライムデー」では、記事を通じて数億円の売上と数万件の注文件数を達成しています。 ### 3.オンラインイベント パンデミックの影響でリアルイベントが大打撃を受けるなか、多くのパブリッシャーがオンラインイベントでいかに収益を生むか模索しています。一口にイベント開催といっても、収益化の手段は多岐にわたります。 ・有料参加チケット ・スポンサー獲得 ・リードジェネレーション(参加者リストの販売) ・コマースとの連携・投げ銭 米国のテクノロジー系メディア「VentureBeat」は、主催イベントをオンライン化。会場費などの原価を抑えられただけでなく、引き続き多くの参加者とスポンサーを集めることに成功し、リアルイベントの時よりも高い収益を得られたといいます。 ### 4.コミュニティ メディアのネットワークや集客力を活かしてコミュニティをつくり、収益化する手段もありえます。 「NewsPicks」は、読者のコミュニティ化に成功した国内メディアの好例です。コメント機能やプロピッカー制度に始まり、2017年に「NewsPicksアカデミア」でコミュニティを強化。2020年には経済領域に特化した人材マッチングのプラットフォーム[「NewsPicks Expert」](https://www.uzabase.com/jp/news/newspicks-expert-start/)を発足しました。メディアが持つ専門家のネットワークや集客機能を活用し、ビジネス領域を広げています。 また、地域密着のスモールコミュニティを収益化している例もあります。米国のメディア「Patch」は、事故・事件や店舗の開店など、大手メディアが扱わない地元密着の情報を扱っています。収益源は広告が主体ですが、広告主は中小企業や個人が中心とみられます。結果としてユーザー数は3200万人、推定年商は21億円を超えているといいます。ハイパーローカルメディアの可能性を感じさせる事例でしょう。 [米国で勃興する「超地元密着型メディア」のビジネスモデル](https://forbesjapan.com/articles/detail/34277) ### 5.寄付、サポートプログラム メディアに共感している読者に対し、任意での寄付や月額・年額のサポートプログラムへの加入を求める手法です。世界的な代表例は、動画の事例でも紹介した英国の「The Guardian」です。定期的に財政支援を提供する人は65万5000人に達し、過去1年に一度でも支援した人は約30万人にのぼることが明らかになっています。 [英ガーディアン紙の経営が黒字化 収入の56%をデジタルから 鍵となった会員制とは(小林恭子) - Yahoo!ニュース](https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20190901-00139036/) 日本ではnoteに記事単位の「サポート」機能があるほか、NPO法人が運営する非営利メディア「soar」がサポート会員を募っています。今後はクラウドファンディングによる資金調達も含め、国内でも寄付やサポートの可能性も高まるのではないでしょうか。 ### まとめ:マネタイズは「急がば回れ」プランニングが重要 今回は「広告」「サブスクリプション」のほかにデジタルメディアで収益を生む方法をご紹介しました。デジタルのマネタイズ手法は多岐にわたりますし、一定の初期投資が必要です。 事を急いてあれこれと施策を実行しても、軸と狙いがなければ投資に見合わない取り組みに終わってしまいます。自社のメディアにとって最適なビジネスプランを設計したうえで、施策を検討していただきたいと思います。 まずは、下記の現状分析から始めましょう。 並行して企業や有識者に話を聞き、事例やノウハウを収集するとよいでしょう。 私たちキメラも、デジタルメディアのマネタイズに知見のある企業の一つです。「デジタルメディアのマネタイズを検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という企業様は、ぜひお気軽にキメラまでお問い合わせください。 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Sep 24, 2020|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## パブリッシャー・政府と対立するプラットフォーマー(2020/9/3) URL: https://ximera.com/posts/6e5ea2ac2b 公開日: 2020-09-17 著者: Ximera 2020年9月17日 11:19 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ここからは【2020年9月3日号】の内容をご覧ください。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 1. パブリッシャー・政府と対立するプラットフォーマー パブリッシャーのデジタルメディアで切っても切れない関係にあるプラットフォーマー。米国ではアップルがサブスクリプション手数料とニュースアプリの問題で、豪州ではグーグル、フェイスブックを狙い撃ちにした豪政府のコンテンツ使用料法案で矢面に立っています。 [■新聞の業界団体、アップルにAmazonと同じ手数料15%への値引きを求める](https://japanese.engadget.com/publisher-amazon-030047681.html) 話題のオンラインゲーム「フォートナイト」に端を発したアップルのApp Storeサブスクリプション決済手数料問題。決済手数料は通常30%ですが、アマゾン・プライム・ビデオは特別契約で15%であることが発覚。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルなどが所属する業界団体DCN(Digital Content Next)がアップルに質問状を突きつけています。 [■Apple News+、ニュースサイトのトラフィックを横取り](https://www.axion.zone/apple-news-niyususaitonotorahuitukuwoheng-qu-ri/) アップルが提供するニュースアプリ「Apple News+」。2020年秋にアップルがリリースするiOS 14とmacOS Big Surで、パブリッシャーのサイトアクセスがApple News+アプリにリダイレクト(転送)されることが明らかになりました。ユーザーにとってはApple News+の一貫した体験でコンテンツが閲覧できるものの、パブリッシャーは自社の独自性や広告収益が奪われることになります。 [■豪政府、フェイスブックとグーグルに記事使用料の支払い義務付けへ](https://jp.reuters.com/article/australia-media-regulator-idJPKCN24W0K2) [■公開書簡 - 豪州人のグーグル検索が危険にさらされている(英文)](https://about.google/intl/ALL_au/google-in-australia/an-open-letter/)[■フェイスブック、豪でニュース共有禁止へ 使用料巡る法成立なら](https://jp.reuters.com/article/australia-media-facebook-idJPL4N2FY0FT)豪政府は昨年、グーグルとフェイスブックを監視する専門部署を開設し、両社に豪パブリッシャーと記事使用料の交渉を進めるよう指示しました。しかし交渉は進まず、財務大臣が年内に法制化することを明らかに。当然ながら、グーグル、フェイスブックともに反発しています。 ### 2. 海外パブリッシャーの注目ニュース [■ローカルニュースのプレミアムサブスクリプション、広告なしとその先(英文)](https://medium.com/@rnakashi/premium-tier-subscriptions-for-local-news-ad-free-and-beyond-1d660e2dd04d) [■パブリッシャーはサブスクリプションモデルなしに生き残れるか?(英文)](https://www.thedrum.com/news/2020/08/17/can-publishers-still-survive-without-subscription-model) [■Facebook、パブリッシャーのサブスクアカウントと連携、ログインを省くテストを開始(英文)](https://www.theverge.com/2020/8/29/21406664/facebook-pilot-news-algorithm-publishers-subscriptions) [■Substack、インドでライターが有料サブスクリプション提供が可能に(英文)](https://on.substack.com/p/substack-is-now-available-for-writers) ### 3. 国内パブリッシャーの注目ニュース [■ユーザベースの2Q業績、赤字が続くもののNewsPicksの有料会員数は大幅増](https://media-innovation.jp/2020/08/13/uzabase-half-year-result/) [■Sansan、全文書き起こしメディアを運営するログミーを子会社化](https://jp.corp-sansan.com/news/2020/ir_0826_1.html) [■女性向け動画メディア「C CHANNEL」アプリサービス、2020年9月末終了](https://corp.cchan.tv/5458/) [■radiko快走、利用者1000万人へ 音声配信が急拡大(会員記事)](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62802380Z10C20A8TJ1000/) [■音声配信アプリ「stand.fm」、5億円の資金調達を実施し、配信者の収益化を支援するパートナープログラムを開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000056192.html) --- ## 先をゆくニューヨーク・タイムズ、追いかける各社のサブスクリプション戦略(2020/8/17) URL: https://ximera.com/posts/d9a2fc259e 公開日: 2020-09-03 著者: Ximera 2020年9月3日 15:09 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ### 1. 先をゆくNYT、追いかける各社のサブスクリプション戦略 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、全世界のパブリッシャーのなかでデジタル化がもっとも進んでいると言えるでしょう。同社はパブリッシャー業界内でも動向に注目が集まりますが、新CEO発表や事業内容に関連する報道がこの1か月で数多くありました。NYTに新たなサブスクリプションサービスの動きがあるなか、他のパブリッシャーもサブスクリプション購読者を増やし、パブリッシャーをまたいだ複数メディアのセット契約「バンドルプラン」を投入しています。 <ニューヨーク・タイムズ> [■NYT、新CEOにメレディス・レビアンが9月就任(英文)](https://www.nytimes.com/2020/07/22/business/media/new-york-times-ceo-meredith-kopit-levien.html) [■NYタイムズ、CEOに49歳女性を昇格 史上最年少](https://www.asahi.com/articles/ASN7R3F1KN7RUHBI005.html) 現COOのレディス・コピット・レビアンがCEOに就任します。2012年からNYTのデジタルシフトを指揮してきたマーク・トンプソン現CEOの後を継ぎます。レヴィアン氏は『最高経営責任者として、同社の戦略である「購読を第一とするジャーナリズム」を引き続き拡大していく』と抱負を述べています。 [■NYT新CEOが語る、世界レベルのデジタルメディアビジネスの構築とテック企業のあり方(英文)](https://www.niemanlab.org/2020/07/newsonomics-the-new-york-times-new-ceo-meredith-levien-on-building-a-world-class-digital-media-business-and-a-tech-company/) 読者からの直接収益は、広告収益などを含む全体収益の60%、有料購読者は600万人など、同社の現在の事業数字を明らかにしています。 [■NYTタイムズ、20年以内に印刷やめる? CEOが予測](https://www.asahi.com/articles/ASN8C2VQ2N8CUHBI00C.html) 新型コロナウイルスの影響で高級ブランドの広告出稿が控えられ、4~6月の広告収入は半減。現在の部数なら、広告収入が仮になくても紙の新聞発行で利益を上げられる。しかし、長期的には維持が難しい、という見通しからの現CEOマーク・トンプソン氏の発言です。 [■NYTの絶好調は続く(英文)](https://www.niemanlab.org/2020/08/it-continues-to-be-very-good-to-be-the-new-york-times/) 広告収益の大幅な減少という市場環境の中、NYTは潤沢な現金でポッドキャスト事業者を買収したあとでもまだ余裕があるとのことです。 [■NYT、商品レビューサイト「Wirecutter」のサブスクリプション化を模索(英文)](https://www.axios.com/wirecutter-subscription-new-york-times-08a1c4a9-8f52-4020-b3b9-9884ecc1f6f2.html) NYTが2016年に買収した、アフィリエイト収益モデルの商品レビューサイト「Wirecutter」のサブスクリプション化を模索していることがLinkedInの投稿から明らかになりました。NYTのサブスクリプション購読者は600万人ほどですが、その3分の1が料理やクロスワードなど非ニュースサービスの購読者です。非ニュース購読者のさらなる拡大を狙います。 <サブスクリプション> [■サブスクリプション成長が、新型コロナの打撃を受けたニュース大手を救う(英文)](https://www.pressgazette.co.uk/digital-subscription-growth-offers-respite-to-news-giants-battered-by-covid-19/) 英米豪の6メディアのサブスクリプション契約者数が表でまとまっています。いずれも2019年12月〜2020年6月比で5〜30パーセント増加していますが、収益ベースでは軒並み減少しています。 [■NYTと対抗する方法(英文)](https://www.cjr.org/analysis/nytimes-subscriptions-local-publishers-compete.php) 地方メディアがサブスクリプション事業を拡大するため、NYTと同様に圧倒的なコンテンツ量を用意するのは現実的ではありません。この記事では、米シアトル・タイムズが米ワシントン・ポストと組み、コンテンツ提供を受け、講読料収入を分配するモデルを紹介しています。 [■香港サウス・チャイナ・モーニングポスト、4年ぶりにサブスクリプションモデル復活(英文)](https://www.thedrum.com/news/2020/07/27/south-china-morning-post-returns-subscription-model-after-4-years) 2016年の中国アリババ買収後にペイウォールを廃止していましたが、ウェブとアプリにメーター制ペイウォールを再導入します。 ■米ブルームバーグ・メディア、『The Athletic』セットのサブスクリプション提供へ(英文) 複数のサブスクリプションメディアをセットで契約できる「バンドルモデル」の動きがあります。ブルームバーグのメディアは、2020年2月に米インフォメーションがバンドルモデルをテストしていました。 ### 2. ニュース記事の閲覧体験はさまざま <スマートフォンアプリ> [■Nikkei Wave 知りたいニュースをAIが厳選(App Store)](https://apps.apple.com/jp/app/nikkei-wave/id1521762085) 日本経済新聞社が2020年7月30日に新ニュースアプリをリリース。iPhone、iPad版のみで日経電子版有料会員だけが利用できます。同社はニュースリリースなどで特に発表していませんが、タイムライン形式を採用し、「動画ビュー」でもニュースを“読める”、他メディアのRSSを読み込める――など、パブリッシャー発ニュースアプリとして新機軸を打ち出しています。 [■直感で選んだトレンド記事から 「あなたが本当にやりたいコト」を診断! WEBマガジンアプリ「me time by Harumari TOKYO」を公開](https://www.atpress.ne.jp/news/220729) 毎日表示される10記事のカードから好みの記事を選ぶと、「やりたいこと」が表示される新感覚メディアアプリです。UI/UXが斬新なので「新たなメディア体験」設計のヒントになるかもしれません。 <ソーシャルメディア> [■日常的に利用するメディアは10代ではソーシャルメディアが最多](https://news.mynavi.jp/article/20200727-1177893/) ■Z世代はInstagramで見たものを覚えていない? エスノグラフィ×アンケートでZ世代を理解 20代以下の若い世代はウェブメディアよりソーシャルメディアの利用率が高く、半数以上がソーシャルメディアを日常的に使っています。その若い世代で人気のInstagramの利用実態をレポートした記事が興味深いです。 [■米国成人の大半はニュースをソーシャルメディアに頼っていることが明らかに](https://jp.techcrunch.com/2020/08/02/2020-07-30-study-u-s-adults-who-mostly-rely-on-social-media-for-news-are-less-informed-exposed-to-more-conspiracies/) 調査元の米ピュー・リサーチ・センターは「ソーシャルメディアでニュースを主に入手している米国人は、関与度が低く、知識も少ない」という[タイトルで発表しています](https://www.journalism.org/2020/07/30/americans-who-mainly-get-their-news-on-social-media-are-less-engaged-less-knowledgeable/)。一方で、割合が最も多いのは、ニュースを主にウェブサイトやアプリから得ている人で「高い政治知識」とのこと。自社メディアでニュースを読ませる工夫が、パブリッシャーに求められているといえるでしょう。 ### 3. 海外パブリッシャーの注目ニュース [■「 地方ニュース は、コロナ禍で立ち直れない可能性もある」:ライオン・パブリッシャーズのクリス・クルーソン氏](https://digiday.jp/publishers/lion-publishers-chris-krewson-local-news-industry-recession/) [■米バズフィード、アフィリエイトに加え商品の直接販売を開始(英文)](https://www.wsj.com/articles/buzzfeed-starts-selling-products-directly-to-consumers-11596136660) [■米タウンニュース、地方メディアにデジタルメディアインフラ/運用サービスを提供(英文)](http://www.editorandpublisher.com/stories/townnews-creates-a-new-service-to-fight-news-deserts,168978) [■iOS 14の「News+」アプリは記事提供元のトラフィックを横取りする](https://jp.techcrunch.com/2020/08/11/2020-08-10-apple-news-plus-redirects/) [■広告枠を減らして閲覧体験を向上すれば、読者が増え収益が拡大(英文)](https://www.mediapost.com/publications/article/354299/how-publishers-can-boost-revenue-without-intrusive.html) [■米ハースト・マガジンズの雑誌売上が減少(英文)](https://wwd.com/business-news/media/hearst-magazines-shrinking-print-game-1203688363/) ### 4. 国内パブリッシャーの注目ニュース [■「オーシャンズ」を傘下に収めた「フォーブス」運営会社の成長の秘けつ](https://www.wwdjapan.com/articles/1103462) [■「ライトプラン」新登場 得する人生、始めよう 有料記事100本が読み放題 | 沖縄タイムス+プラス](https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/606223) [■北海道の情報経済誌である「財界さっぽろOnline」をWebメディア化、フルリニューアルいたしました。](https://www.value-press.com/pressrelease/249466) [■複合的な分析で、広告施策の価値を高める - 日本ビジネスプレスのデータ活用](https://news.mynavi.jp/article/20200803-1186550/) [■【LINE NEWS】サービス開始から7周年を迎え月間利用者数7,500万人・月間175億PVを突破!最新利用動向と7年間の変遷を公開](https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3351) [■国内No.1女性向けメディア「TRILL」、Twitterとの共同新広告パッケージ「TRILL×Twitterスポンサーシップ」の販売を開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000019382.html) [■インターネット広告全体売上高は3ヶ月連続で前年比割れ](https://rtbsquare.work/archives/30848) [■老舗学術出版「創文社」解散の波紋…全書籍を講談社などが異例の引継ぎ](https://www.sankei.com/premium/news/200807/prm2008070005-n1.html) --- ## デジタル時代のパブリッシャー組織戦略(2020/10/28) URL: https://ximera.com/posts/6919ed9415 公開日: 2020-09-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、パブリッシャーの組織戦略に関するオンラインイベントを開催しましたので、アーカイブ動画をご覧ください。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-1028-ximeras-insight](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-1028-ximeras-insight) スライド内でご紹介した記事やニュースのリンク先は以下の通りです。 # イベント概要 パブリッシャーが紙メディアの売上と広告収益に頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、組織も事業にあわせて変化が求められます。今回のオンラインウェビナーでは、デジタルメディア時代に適した組織戦略の考え方や成功事例をお伝えします。 キメラは2019年1月以来、国内パブリッシャー20社50媒体に対してデジタル事業の設計やグロース、組織戦略をご支援しています。弊社のノウハウや国内外の事例をデジタル戦略を考えるきっかけにしていただければ幸いです。 # こんな方におすすめのウェビナーです - パブリッシャー組織のデジタル化を実施、検討している - パブリッシャー組織の成功事例を知りたい - デジタル事業にどんな役割や人材が必要か知りたい - 現状の組織戦略に課題を感じている - デジタル人材の採用、育成に関心がある --- ## パブリッシャーのためのインサイト分析(2020/9/17) URL: https://ximera.com/posts/81fa6378b5 公開日: 2020-08-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたびJX通信社の松本健太郎氏をお招きし、「パブリッシャーのためのインサイト分析」をテーマにウェビナーを開催し、100名超のみなさまにご参加いただきました。アーカイブ動画を公開中しますので、ぜひご覧ください。 松本さんはデジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務に携わるスペシャリストです。読者の隠れたニーズをとらえ、サブスクリプションの事業設計、ブランディング、デジタルメディアのグロースに活かす第一歩としてお役立ていただければ幸いです。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# イベント概要 生活様式が多様化し「モノが売れない時代」と言われる現代は、商品設計やマーケティングにはユーザーの需要に応えるだけでなく、隠れた需要を掘り起こす力が問われています。パブリッシャーにおいても、コンテンツの消費手段が広がり続けるなかで、発信者視点のコンテンツを提供するだけに留まらず、読者がまだ発見していないニーズをとらえ、愛される体験設計やコンテンツづくりが必要です。 「なぜ読者離れが起こってしまうのか」 「どうすれば自社メディアを継続的に読んでくれるのか」 多くのパブリッシャーが抱える疑問に対し、定量的なデータ分析や直接的な質問だけで答えを導き出すのは難しいものです。どのように読者の本音をとらえればよいのでしょうか? 今回のウェビナーはJX通信社の松本健太郎氏をお招きし、「パブリッシャーのためのインサイト分析」をテーマにお話をいただきます。読者の隠れたニーズをとらえ、サブスクリプションの事業設計、ブランディング、デジタルメディアのグロースに活かす第一歩としてお役立ていただければ幸いです。 # スピーカー:松本健太郎氏プロフィール ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/33970582/picture_pc_35424c229910541d0f0e9ae653fb05f9.png) 1984年生まれ。龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で"学び直し"。その後、株式会社デコムなどでデジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務に携わり、現在は「テクノロジーで『今起きていること』を明らかにする報道機関」を目指す報道ベンチャーJX通信社にてマーケティング全般を担当している。政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とし、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にも登場している。 # こんな方におすすめのウェビナーです - デジタルメディア事業の方向性づけをしたい - 読者のニーズをコンテンツの改善やマネタイズに反映したい - 自社のデジタルメディアのブランディングを強化したい - 現状の読者分析やアンケート調査が不十分だと感じる --- ## 記事を飛び出す、パブリッシャーのコンテンツ戦略(2020/7/3) URL: https://ximera.com/posts/aa054fed36 公開日: 2020-07-22 著者: Ximera 2020年7月22日 17:38 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ここからは【7月3日号】の内容をご覧ください。 ### 1.記事を飛び出す、パブリッシャーのコンテンツ戦略 パブリッシャーのデジタル戦略を考えるとき、まず思い浮かぶのは記事かもしれません。しかし近年は、記事に限らず幅広いチャネルでコンテンツを訴求する動きが活発になっています。今回は、国内外の最新事例を紹介します。単に情報体験の充実を目指すだけでなく、収益性を意識している事例が多いこともポイントです。 <オンラインイベント> パンデミックの影響でリアルイベントの開催が難しい現在、イベントをマネタイズ手段としてきたパブリッシャーが相次いでオンラインに転換しています。 [■Move it or lose it: now publishers run virtual events, do they hunger for a real return?(英文)](https://www.thedrum.com/news/2020/05/28/move-it-or-lose-it-now-publishers-run-virtual-events-do-they-hunger-real-return) The Next Web、Bloomberg、Financial Times、Verizonら、パブリッシャー4社のオンラインイベント事情をまとめています。オンラインイベントの内容面で考慮すべきポイントが網羅されています。 [■How VentureBeat kept sponsorship revenue on par with in-person events(英文)](https://digiday.com/media/virtual-events-can-be-more-valuable-how-venturebeat-kept-sponsorship-revenue-on-par-with-in-person-events/) テクノロジー系パブリッシャーのVentureBeatの事例です。収益の半数をイベントが占める同社がBtoBイベントのオンライン化をいかに実現したかを報じています。具体的なハウツーが多く、学びの多い記事です。 [■仮想イベントとサブスクを連携させるパブリッシャーたち](https://digiday.jp/publishers/publishers-are-tying-virtual-events-to-subscriptions/) イベントをサブスクリプションの呼び水にする事例を紹介しています。New York Timesのオンラインイベントチームがマーケティングやブランド担当を含めた組織横断チームなのが興味深いです。 [■Creating Sponsorship Revenue for Virtual Events(英文)](https://www.eventbrite.co.uk/blog/sponsorship-revenue-virtual-events-ds00/) 米国のチケット販売会社eventbriteは、オンラインイベントでスポンサーシップを獲得するためのハウツーを公開しています。メール、ソーシャルメディア、自社Webでのコミュニケーションやマネタイズポイントを解説しており、パブリッシャーのオンラインイベント運営においても参考になります。 <メール・SMS> メールやSMSは「時代遅れ」と考える方も多いかもしれませんが、根強く読者にリーチできるチャネルの一つです。 [■ニュースレターは「新しいホームページ」だ(英文)](https://whatsnewinpublishing.com/publishers-are-seeing-revenue-bumps-of-up-to-103-from-email-newsletters-it-is-the-new-homepage/) ニュースレターがもたらす効果をデータをもとに紹介した記事です。ニュースレターを単なる記事コンテンツの宣伝ではなく、読者との関係性づくりのための「新たなホームページ」と定義するコメントが興味深いです。個人クリエイター向け有料ニュースレター配信サービス[「Substack」が非常に好調](https://jp.techcrunch.com/2020/06/22/substack/)なことも、メールの勢いがまだまだ失われていないことを物語ります(いわばメルマガ版「note」のような、注目のサービスです)。 [■US reporters use SMS to reach local audiences with coronavirus coverage(英文)](https://www.journalism.co.uk/news/reporters-turn-from-social-to-sms-to-reach-local-audiences-with-coronavirus-coverage/s2/a753597/) 「Subtext」というサービスで、購読者は気に入った著者のSMSを受信できます。最近ではBuzzfeedがコロナウイルス関連のローカルニュースをSMSで配信しており、日本語では[この記事](https://jp.wsj.com/articles/SB10052181624206244368104586461130114014612)で詳しく報じられています。 <Slackチャンネル> [■ボストングローブ、広告収入は30%減もサブスクは35%増](https://digiday.jp/coronavirus-fallout/boston-globe-media-sees-ads-slump-30-but-subs-increase-by-35/) 米国「Boston Globe」運営元のマネタイズ戦略を報じた記事です。面白いのは、同社が中小企業向けのSlackを立ち上げたことです。新型コロナウイルス対策のための融資制度や条例をコンテンツとして提供しており、Slackチャンネルは広告媒体として販売予定とのこと。パブリッシャーがコミュニティ組成を行いながらマネタイズを実現した例として、他社でも展開できそうなモデルですね。 <スマートフォンアプリ> [■FNNプライムオンライン スマートフォン向けアプリを提供開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000984.000000084.html) 7月1日、フジテレビ系列のニュースサイト『FNNプライムオンライン』のアプリ提供を開始しました。ローカルニュースへのアクセスしやすさとプッシュ通知によるニュース配信の訴求を特徴としており、ニュース体験の向上によって読者のロイヤリティ醸成が期待できそうです。Yappliを利用して開発を軽量化したことも注目に値します。 <音声とソーシャルメディア> ソーシャルメディア運営と音声コンテンツは、注力しているパブリッシャーも多い領域です。TwitterとInstagramで、音声を含んだ投稿に関するニュースが相次いで報じられました。音声専用のプラットフォームに参加する必要がないため、音声コンテンツに参入するパブリッシャーが増えるかもしれませんね。 [■Twitter:音声のツイートが可能に(英文)](https://blog.twitter.com/en_us/topics/product/2020/your-tweet-your-voice.html) [■Instagram:音声を含んだ動画にキャプションを自動追加(英文)](https://www.forbesindia.com/tech/news-analysis/instagrams-thread-app-may-soon-get-a-video-note-feature-that-will-translate-audio-in-a-video-to-live-captions-8537501.html) ### 2.海外パブリッシャーの注目ニュース [■ロイタージャーナリズム研究所『Digital News Report2020』(英文)](http://www.digitalnewsreport.org/survey/2020/overview-key-findings-2020/) 毎年恒例、ニュース業界の動向を報じるレポートが公開されました。日本の調査結果によると、オンラインニュースへの課金率は8%と前年+1%の上昇。一方で、ニュースへの信頼は37%と前年を2%下回っており、過去5年間で10%以上スコアが下がっています。各国の調査データのほか、サブスクリプションに関する調査やメールマガジン、ソーシャルメディアの利用動向についてのデータも興味深いので、ぜひご覧ください。日本語で読める解説記事では[ニュース課金](https://news.yahoo.co.jp/byline/furutadaisuke/20200616-00183700/)とニュースプラットフォームとしての[Instagramの隆盛](https://japan.cnet.com/article/35155423/)について紹介されています。 [■グーグルが「ニュースの対価」支払いを開始、一部メディアに](https://forbesjapan.com/articles/detail/35443) [■Facebook Newsが米国全土で提供開始(英文)](https://techcrunch.com/2020/06/09/facebook-news-launches-to-all-in-u-s-with-addition-of-local-news-and-video/) [■Apple NewsからNew York Timesが離脱、The Guardianは3月に出戻り(英文)](https://www.theverge.com/2020/6/29/21307242/apple-news-new-york-times-app-not-available-free-articles-subscription) ### 3.国内パブリッシャーの注目ニュース [■デジタル広告取引「不透明」 政府、ルール設計検討](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60390910W0A610C2MM0000/) [■地域紙の廃刊・休刊が全国で続々と、“新聞が消えた”地域は何が起きるか](https://www.sbbit.jp/article/cont1/38078) [■28社の有力メディアが「コンテンツメディアコンソーシアム」創設](https://bi.garage.co.jp/news/20200622.html) [■RMBキャピタルがテレビ朝日HDに経営改善を提起](https://www.businesswire.com/news/home/20200615005790/ja/) [■NewsPicks、東急プラザ銀座に「NewsPicks GINZA」を7月1日オープン](https://www.uzabase.com/ex/company/news/newspicks-ginza/) [■学研プラスと日本創発グループの共同出資パブリッシャー「株式会社ワン・パブリッシング」設立](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000060318.html) [■講談社がデジタルメディアの研究・開発に特化した企業「KODANSHAtech合同会社」を立ち上げ](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002691.000001719.html) --- ## 事業成長とブランディングを叶える分析&KPIことはじめ(2020/8/26) URL: https://ximera.com/posts/cfda8fe8f9 公開日: 2020-07-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、メディアの分析とKPIに関するオンラインイベントを開催しました。100名超のみなさまにご参加いただいています。そのアーカイブ動画と、ウェビナーで使用したスライドを公開中します。ぜひご覧ください。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# ウェビナースライド [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0826-ximeras-insight-kpi](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0826-ximeras-insight-kpi) # イベント概要 パブリッシャーが紙メディアの売上と広告収益に頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、デジタル事業に対する期待は高まっています。デジタルメディアは施策の効果がデータで可視化でき、継続的に改善を加えられることが大きな強みです。また、インターネット上に情報があふれる昨今は、ブランディングも継続的な事業成長に欠かせません。そのためにも、施策やブランディングの効果を測定するためのデータ分析とKPIへの理解が肝要です。 御社のデジタルメディアは「データを眺めて終わり」「コンテンツを掲載して終わり」、あるいは「ページビューの上げ下げで一喜一憂」になっていませんか? 今回のオンラインウェビナーでは、デジタルメディアのトラフィックデータを戦略的に活用するための考え方とノウハウをお伝えします。 キメラは新聞社・出版社・放送局に対し、サブスクリプションの事業設計やデジタルメディアのグロースをご支援しています。また、弊社はコンテンツのエンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)(チャートビート)」の日本総代理店として、国内の20社50媒体の分析支援や分析体制づくりにも取り組んでおります。Chartbeatは『New York Times』や『CNN』など、国内外の幅広いパブリッシャーが活用する分析ツールです。ウェビナーでは、Chartbeatの知見や弊社のノウハウをお伝えします。デジタルメディアのさらなる成長にお役立ていただければ幸いです。 # こんな方におすすめのウェビナーです - 現場担当としてデジタルメディアの分析を担当している - 編集担当としてデジタルメディアの反響をコンテンツに反映したい - 事業担当としてデジタルメディアのデータをマネタイズやブランディングに活用したい - PV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)に偏ったコンテンツ評価に疑問や課題を感じている - 統合編集や編集組織のデジタル化にあたり、分析リテラシーを向上したい - 現状の分析指標をどう役立てたらいいか分からない - 今の分析ツールや体制が不十分だと感じる # ウェビナーでお伝えする内容 - あの会社はどうしてる? 海外パブリッシャーのデータ分析事情 - 御社の分析が「データを眺めて終わり」になってしまう理由 - PVとUUだけじゃない、隠れた必須KPI - 今すぐできるコンテンツ改善Tips - デジタルメディアの分析ツール、結局何が必要なのか - 明日から使える「デジタルメディア分析」チェックリスト --- ## 日本新聞協会『新聞技術』にキメラが寄稿しました URL: https://ximera.com/posts/d8d407e788 公開日: 2020-06-23 著者: Ximera 2020年6月23日 17:27 日本新聞協会が2020年3月25日に発行した[『新聞技術 2020年第1号(No.250)』](https://www.pressnet.or.jp/publication/gijutsu/200324_13521.html)に、弊社代表の大東洋克が「サブスクリプションビジネスと新聞メディア――コンテンツ収益化の可能性」というタイトルで寄稿しました。以下、掲載許可をいただき、寄稿内容の一部を抜粋してご紹介します。 ### サブスクリプションの現状 オックスフォード大学とロイター・ジャーナリズム研究所が20年1月9日に発表した2020年のメディアトレンド予測によると、32か国のメディア企業幹部のうち半数が、主要な収入源として「読者への課金」を最重要視すると回答している。パブリッシャーのサブスクリプション重視のトレンドは、今後も更なる盛り上がりを見せるだろう。 ### 「サブスク元年」の甘くない真実 「既存のコンテンツをそのままデジタル化・有料化すれば、紙の売上減をまかなえる」という発想は非常に危険だ。サブスクリプションは、入念な商品設計、長期的な投資戦略、継続的なマーケティングが求められるビジネスモデルだ。導入さえすれば収益に直結する“魔法のソリューション”ではない。 前出のロイター研究所による19年6月の調査報告によれば、読者のニュースに対する信頼度は、調査対象の38か国中25位と低い。日本では「デジタルの情報に対価を支払う」文化が醸成されるには時間が必要だ。 ### デジタルメディア収益化のポイント 成功の鍵は、主体性と目的意識を持つこと。具体的に求められるポイントは以下の通り。 【デジタル収益化のチェックリスト】 (1)組織、人材 ・社内全体がデジタル化による変化を受け入れ、施策の実行と振り返りを素早く行えるか ・事業の立ち上げを想定した体制構築ができるか ・コンテンツの分析体制が整っているか ・継続的なマーケティングを実行できる体制づくりができるか ・事業計画やデジタルにリテラシーのある人材が育っているか (2)事業計画 ・デジタル化の目的と評価指標を設定できているか ・デジタル収益化による既存事業への影響を考慮しているか ・サブスクリプション以外の収益化手段(eコマース、イベントなど)も検討しているか ・投資回収(収支の黒字化)タイミングに目星をつけているか (3)商品設計 ・既存の自社資産(記事コンテンツやイベントなど)を通じて生み出せる価値を理解しているか ・デジタルの読者ターゲットを設定できているか ・ブログサービスなど個人が発信する媒体とのすみ分けを意識できているか サブスクリプションをはじめとするデジタルの収益化においては、緻密な現状分析と事業設計を行える体制づくりが欠かせない。 ### 新聞業界におけるコンテンツ収益化の課題と可能性 日本の新聞業界を語る上で欠かせないのは、紙媒体との共存だ。だからこそ、デジタルメディアのサブスクリプションを「紙媒体の代替手段」として扱ってはならない。「紙は紙」「デジタルはデジタル」と施策をバラバラに行うのではもったいない。情報のプラットフォームにとどまらない、人が集まるプラットフォームとして自社の価値を認識し、最大限に活用することが大切だ。 ### おわりに デジタル化の現場で感じることとしては、ほとんどのパブリッシャーが、現状に対して大きな変化を生み出せずにいるか、変化によって生じる結果を恐れているということだ。大切なのは、時代やニーズに即して一部に変化を加えたり、新たに要素を加えたりしながら、新たな価値をつくり出すことだ。 ### 株式会社キメラへのお問い合わせ 私たちキメラは、デジタルメディアの事業・組織設計やデータ分析をご支援している企業です。「デジタルメディアのマネタイズを検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。 ### ニュースレターを発行しています --- ## ローカルニュースの再評価&出資が進む(2020/6/3) URL: https://ximera.com/posts/ae0d4b7764 公開日: 2020-06-03 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.ローカルニュースの再評価&出資が進む パンデミックを機に、暮らしに密着した情報を届けるローカルニュースの再評価が進んでいます。特に米国では地方紙が失われる「[ニュース砂漠(news desserts)](https://www.usnewsdeserts.com/reports/expanding-news-desert/)」が社会問題となっており、「コロナ破産」で倒れるローカルパブリッシャーが相次いでいます。こうした状況下で、ローカルニュースの収益化と保護の双方が進んでいます。 <注目高まるローカルニュースの収益化> ■[米国で勃興する「超地元密着型メディア」のビジネスモデル](https://forbesjapan.com/articles/detail/34277) 米国の地元密着型メディア「Patch」「Nextdoor」のマネタイズ手法を紹介しています。ローカル特化のコミュニティを生かした掲載型モデルや広告運用の方法が興味深いです。一方で、「広告収益だけでは経営を維持することが困難」とのコメントも見逃せません。特定の収益源に偏らないビジネス設計の重要さを感じさせる記事です。 ■[中国人起業家が作ったローカルニュースアグリゲーター「News Break」が米国で大人気](https://jp.techcrunch.com/2020/05/29/2020-05-27-meet-news-break-the-news-app-trending-in-america-founded-by-a-chinese-media-veteran/) ローカル情報に特化したニュースアプリが米国で人気を集めています。2020年3月には[スマートニュースが6000都市以上のローカルニュース配信に乗り出す](https://jp.techcrunch.com/2020/03/26/2020-03-03-smartnews-local-news-feature-now-covers-more-than-6000-u-s-cities/)など、注目度の高さが見て取れます。「News Break」COOの「高品質で超身近な地方ニュースこそが、価値ある情報を読者に提供する」との発言が興味深いです。 ■[Local News Outlets Drop Paywalls for Pandemic Stories, but Gain Digital Subscribers Anyway(英文)](https://localnewsinitiative.northwestern.edu/posts/2020/03/25/digital-subscriptions-virus/index.html) News BreakのCOOの発言を裏付けるかのような、米国のローカル紙の状況が報じられています。新型コロナウイルス関係の記事を無料開放してもなお、デジタルサブスクリプションの購読者増加・解約率の低減を実感する声が寄せられています。 <テック企業がローカルニュース保護・参入> GAFAら大手テック企業は相次いでローカルニュースへの出資やサービス参入を表明しています。 ■[Providing emergency funding for 5,300+ local news organizations](https://www.blog.google/outreach-initiatives/google-news-initiative/providing-emergency-funding-5300-local-news-orgs/)(英文) Googleは2020年4月にローカルニュースを支援する基金を創設しましたが、5月28日付けで5300のニュース組織への出資を決定したとのことです。日本では埼玉新聞が支援対象として紹介されています。なおGoogleは、オーストラリア政府による「国内メディアと広告収入の共有を義務づける」との法案は[拒否しています](https://www.theguardian.com/media/2020/jun/01/google-rejects-calls-for-it-and-facebook-to-pay-600m-a-year-for-australian-news)。 ■[Facebook Journalism Project Provides $16 Million in Funding to Support More Than 200 Local Newsrooms](https://www.facebook.com/journalismproject/programs/grants/coronavirus-local-news-relief-fund-recipients)(英文) Facebookは3月に「[ローカルニュース救済基金](https://www.facebook.com/journalismproject/coronavirus-update-news-industry-support)」を設立し、継続的にニュース組織への出資を行っています。5月7日には200を超える米国の小規模ローカルニュースに対し、基金から1600万ドル(約17億円)の出資を発表しました。 ■[Scoop: Amazon's local podcast play](https://www.axios.com/amazon-local-podcasts-498bf9bb-91f6-4a72-bbb4-60c2352fc67a.html)(英文) アマゾンがローカルニュースやスポーツ情報を扱うポッドキャストへの出資を検討しているとのこと。アマゾン自身はコメントを拒否しており、続報が待たれます。 ■[Local Media Consortium enters partnership with Zeus on revenue performance platform(英文)](https://www.washingtonpost.com/pr/2020/05/21/local-media-consortium-enters-partnership-with-zeus-revenue-performance-platform/) ワシントン・ポストは、90以上のローカルパブリッシャーを含むコンソーシアムとパートナーシップを結び、同社が提供する広告ターゲティングツール「[Zeus](https://digiday.jp/publishers/were-building-for-media-businesses-of-tomorrow-how-the-washington-post-is-preparing-for-a-cookieless-future/)」をローカルパブリッシャーに提供することを明らかにしました。 # 2.海外パブリッシャーの注目ニュース 広告収入の減少などを理由に、大手メディア企業のレイオフ(解雇・雇い止め)が続々と発表されました。着目したいのは、人員削減の方針です。記者・編集者を減らす企業もあれば、広告・販売部門を縮小する企業もあります。各社の判断軸が見て取れるでしょう。 ■[With cuts at Vice, Quartz and BuzzFeed, even media’s savviest digital players are hurting(英文)](https://www.washingtonpost.com/lifestyle/media/with-cuts-at-vice-quartz-buzzfeed-even-medias-savviest-digital-players-are-hurting/2020/05/19/f15d3dde-96e9-11ea-91d7-cf4423d47683_story.html) ■[米メディア「The Atlantic」が人員削減、社主のジョブズ夫人に非難](https://forbesjapan.com/articles/detail/34678) ■[The Economist Group lays off 90](https://www.axios.com/the-economist-group-layoffs-coronavirus-976ae9f5-9663-45e9-93ad-0440adb60e0b.html)(英文) ■[Microsoft lays off journalists to replace them with AI](https://www.theverge.com/2020/5/30/21275524/microsoft-news-msn-layoffs-artificial-intelligence-ai-replacements)(英文) ■[英BBC、編集部450人解雇へ 「視聴者や環境の変化に適応」](https://www.afpbb.com/articles/-/3265862?act=all) 他方、DIGIDAYはマネタイズの多様化を推し進める動きを報じています。 [トリビューン・パブリッシングの「サブスク」成長戦略:「パンデミック収束後に解約されないために」](https://digiday.jp/publishers/how-tribune-publishing-is-growing-subscription-revenue/) [「巣ごもり消費」に適応した、英・エンタメ系パブリッシャー : コンテンツコマースで取引数100万を突破](https://digiday.jp/publishers/how-future-adapted-commerce-content-to-drive-1m-transactions-in-march/) [Publishers are tying virtual events to subscriptions](https://digiday.com/media/publishers-are-tying-virtual-events-to-subscriptions/) また、加速するパブリッシャーの動画活用を受けてか、Youtubeが「チャンネル登録」と同様の仕組みで有料購読を訴求するツールを開発中とのことです。 [YouTube may let news outlets sell subscriptions to their own services](https://www.engadget.com/youtube-news-publisher-subscriptions-135205931.html) # 3.国内パブリッシャーの注目ニュース ■[現存する日本最古のカメラ雑誌「アサヒカメラ」が休刊に](https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1256119.html) ■[栃木の両毛新聞が休刊 創刊74年、コロナで広告収入減](https://www.asahi.com/articles/ASN5D7DW2N5DUUHB007.html) ■[Viibarが広告動画制作から撤退ーーSaaS、ライバー支援事業などに経営資源集中へ](https://thebridge.jp/2020/06/viibar-give-up-an-ad-video-business-to-concentrate-on-saas) ■[メディアジーンCSO芹澤 樹氏が同社取締役に就任](https://www.mediagene.co.jp/2020/06/13678.html) ■[ZUU、マイクロアドと金融業界向けの広告配信サービスで協業](https://zuu.co.jp/news/detail/id=890) --- ## 日本流・新聞社のデジタル戦略(2020/7/8) URL: https://ximera.com/posts/5eee98098b 公開日: 2020-06-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 このたび、新聞社のデジタル戦略に特化したオンラインイベントを開催しましたので、アーカイブ動画をご覧ください。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0708-ximera-s-insight](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0708-ximera-s-insight) # 株式会社キメラへのお問い合わせ イベント動画をご覧になって「もっと詳しく話を聞きたい」「キメラの提供ソリューションにご興味がある」というパブリッシャーの皆様は、以下の連絡先からお気軽にお問い合わせください。御社の課題をぜひお聞かせいただけますと幸いです。 # イベント開催の背景 新聞社は大きな変化の渦中にあります。インターネットの普及とともに人々の情報消費のしかたは様変わりしました。紙面の発行部数減にともない、米国では地方新聞社が失われる「ニュース砂漠」が社会現象となって久しく、新型コロナウイルスの影響で新聞社が破産する事例が世界中で相次いでいます。『2050年のメディア(下山進 著、文藝春秋社)』が克明に記すように、この苦境は日本も例外ではありません。 2020年は、世界の新聞社にとって勝負の分かれ目になる年だといえるでしょう。しかし、巨大資本の傘下で一気にデジタル化が進んだ欧米と、各社の独立性が高く販売店との密接なつながりをもつ日本とでは、ビジネスプランや組織のあり方が異なります。海外の成功例のエッセンスを活かしながらも、日本ならではの強みを生かす「日本流」の戦略が必要です。 今回のオンラインイベントでは、日本の新聞がデジタル領域で価値を向上し成長を続けていくヒントをお伝えします。 キメラは2019年1月以来、国内パブリッシャー23社46媒体にサブスクリプションの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などをご支援しています。2020年3月には[『新聞技術』に寄稿原稿が掲載](https://note.com/ximerainc/n/neac4594e306b)されるなど、新聞社の方々とも積極的にお取り組みをしています。 弊社のノウハウや国内外の事例をデジタル戦略を考えるきっかけにしていただければ幸いです。講演後は参加者の皆様での「オンライン交流会」も予定しております。ご所属を超えた情報交換やディスカッションの場としても、ぜひ奮ってご参加ください。 --- ## 新型コロナ、パブリッシャーが生き残る道筋は(2020/5/21) URL: https://ximera.com/posts/75d3afb070 公開日: 2020-05-21 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.パブリッシャーの生存戦略 新型コロナウイルスの影響を受けて、パブリッシャーの事業やビジネスモデルは大きな変化を迫られています。 <紙面・広告は大打撃> 新型コロナウイルスの影響を受け、苦境を迎えるパブリッシャーたち。残念ながら、廃刊・破産・雇い止めが相次いでいます。 ■[広告危機に揺れる海外メディア 課金購読やメルマガは好調](https://www.nikkei.com/article/DGXKZO58189030X10C20A4H56A00/) ■[ニュースの需要増えたけど 米メディアにコロナ追い打ち(会員限定記事)](https://www.asahi.com/articles/ASN5G3F2SN4SUHBI002.html) ■[オーストラリア、広告減で60紙発行停止](https://this.kiji.is/618023955021661281?c=113147194022725109) <サブスクは攻めの姿勢> パブリッシャーの明暗を分けたのは、デジタルサブスクリプションといっても過言ではないでしょう。 ■[The New York Times Tops 6 Million Subscribers as Ad Revenue Plummets](https://www.nytimes.com/2020/05/06/business/media/new-york-times-earnings-subscriptions-coronavirus.html) 「New York Times」は2020年1〜3月で新たに60万人の新規購読者を獲得し、同期間のデジタルサブスクリプションの収益が2億8500万ドル(約310億円)にのぼることを明らかにしました。 ■[コロナ危機であっても、一部メディア企業は「 採用 」を継続](https://digiday.jp/coronavirus-fallout/some-media-companies-are-still-hiring-through-the-crisis/) 「New York Times」のほか、「The Washington Post」「Bloomberg」もサブスクリプションが好調で、広告収益の打撃にもかかわらず採用に注力しています。 今後の争点は、獲得した読者のマネタイズです。コロナウイルスのコンテンツを無料開放することで大量のトラフィックを獲得したり、購読者を獲得したりしているパブリッシャーも少なくありません。ロックダウンをピークに全世界的にトラフィックが収束傾向にある中で、どのように読者を維持し、課金してもらうかが鍵を握ります。 ■[The publisher subscription ‘corona bump’ is flattening(英文)](https://digiday.com/media/the-publisher-subscription-corona-bump-is-flattening/) DIGIDAYは[別の記事](https://digiday.jp/publishers/despite-relaxing-paywalls-publishers-like-bloomberg-wsj-atlantic-see-subscription-spikes/)でもこの論点を報じています。 # 2.アフターコロナの世相を読む調査レポート アフターコロナ時代のメディアのありかたを考えるにあたり、専門機関やコンサルティングファームの論考やトレンド予測レポートがヒントになります。 ■[Publishing during a pandemic: Mapping a path through the Covid-19 crisis(英文)](https://shar.es/aHRmsF) FIPP(新聞協会)のレポートです。制作体制、サブスクリプション、広告、イベント、政府との連携に至るまで、アフターコロナで変化が生まれるであろうポイントを一通りカバーしており、一読の価値があります。 ■[Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2020(英文)](http://www.digitalnewsreport.org/publications/2020/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2020) オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所のレポートです。世界のパブリッシャーのうち「主要な収入源として50%が読者課金を重視し、広告のみを重視する割合はわずか14%」との調査結果が明らかになっており、サブスクリプションへの期待感を見て取れます。 コンサルティングファーム発のトレンドレポートは、音声・動画コンテンツを含めたメディア業界を俯瞰するのに役立ちます。 ■[Deloitte:TMT業界のグローバルトレンド 2020](https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology-media-and-telecommunications/articles/et/tmt-predictions.html) レポートは動画広告を中心に論じていますが、無料広告モデルと有料課金が併存するモデルが成功を収めつつある点が興味深いです。日本のメディアマネタイズにおいても同様の戦略を検討できるかもしれません。 ■[PwC:Global Entertainment & Media Outlook 2019‑2023(英文)](https://www.pwc.com/us/en/industries/tmt/library/global-entertainment-media-outlook.html) サブスクリプションの「読み放題・見放題」モデルが飽和しつつあるという指摘や、ポッドキャスト広告市場が年率40%超で急拡大していくとの予測が示されています。 # 3.海外パブリッシャーの注目ニュース 上述の通り多くのパブリッシャーが苦境にあえぐ中、収益の分配をめぐってGoogleやFacebookなどのニュースプラットフォーマーに対する姿勢が硬化しています。 ■[オーストラリア政府、グーグルとFBに国内メディアとの広告収入共有を義務づけへ](https://jp.reuters.com/article/australia-media-regulator-idJPKBN22209Z) ■[フランス規制当局、グーグルに対してパブリッシャーに金銭補償するよう命令](https://media-innovation.jp/2020/04/13/french-order-to-pay-google-for-publishers/) # 4.国内パブリッシャーの注目ニュース ■[PRTIMES、企業内ストーリーを公に発信できる新サービスを開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000997.000000112.html) ■[Teads、コロナウイルス 状況下における消費者のメディア視聴習慣を公開](https://www.exchangewire.jp/2020/05/18/teads-research/) ■[Voicy「文藝春秋channel」が始まります!](https://bungeishunju.com/n/n11e8bcff2f0f) ■[西日本新聞メディアラボ 次世代のトレンドとなる 音声広告配信サービス「MiMiAD(ミミアド)」を提供開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000021690.html) --- ## アフターコロナのメディア成長に必要なこと(2020/6/17) URL: https://ximera.com/posts/437a3f7dca 公開日: 2020-05-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 先日公開したBlog記事[「新型コロナウイルス感染拡大で、メディアはどうなる?何をすべき?国内外のデータで徹底解説」](https://note.com/ximerainc/n/n48d2353945e4)について、多くの方にご覧いただきました。ありがとうございました。 このたび、関連テーマのオンラインイベントを開催しましたので、アーカイブ動画をご覧ください。 # 開催概要 # イベント動画アーカイブ
# ウェビナー資料 [https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0617-ximera-s-insight](https://www.slideshare.net/ssuser56e4b3/2020-0617-ximera-s-insight) # 株式会社キメラへのお問い合わせ イベント動画をご覧になって「もっと詳しく話を聞きたい」「キメラの提供ソリューションにご興味がある」というパブリッシャーの皆様は、以下の連絡先からお気軽にお問い合わせください。御社の課題をぜひお聞かせいただけますと幸いです。 # イベント開催の背景 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、従来の紙面/誌面を中心としたパブリッシャービジネスは転換を迫られています。日本においても「アフターコロナ」「ウィズコロナ」の時代に即したコンテンツ提供や、サブスクリプションをはじめとする新たなマネタイズ手段に取り組む必要性がますます高まるでしょう。 今回は約60分間のウェビナーを通じ、パブリッシャーの皆さまに向けてメディア成長のヒントをお伝えします。 キメラは2019年1月以来、国内パブリッシャー23社40媒体にサブスクリプションの事業設計、デジタルメディアのグロース、分析体制の構築などをご支援している企業です。当社が培ってきたノウハウや国内外の事例・データをもとに、これからの戦略策定に役立つ内容をお届けしてまいります。 --- ## 2020年メディアビジネスの潮流は?(2020/1/24) URL: https://ximera.com/posts/23d501a4cc 公開日: 2020-01-24 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.2020年、世界のメディアビジネスのトレンドを掴もう 新たな1年が始まりました。オリンピックと5Gの到来を控える2020年、メディアビジネスでも新たな展開を考えている方が多いのではないでしょうか。 今回は海外の調査レポートを中心に、2020年のメディアビジネスにおけるトレンドや課題をつかむヒントをお届けします。 ■[Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2020(英文)](http://www.digitalnewsreport.org/publications/2020/journalism-media-and-technology-trends-and-predictions-2020) オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所が、2020年のメディア業界におけるトレンドを予測したレポートを発表しました。32カ国233人のメディア企業幹部に調査を行ったところ「主要な収入源として50%が読者課金を重視し、広告のみを重視する割合はわずか14%」にとどまっており、読者データを取得するためのプラットフォームづくりを含め、会員組織やサブスクリプションへの強い期待感を見て取れます。また、53%がポッドキャストを今年の重要項目ととらえるなど、音声コンテンツへの期待が高まっているのも注目に値します。日本語で読みたい方は、[Media Innovationに掲載されている概説記事](https://media-innovation.jp/2020/01/20/journalism-media-and-technology-trends/)が参考になります。 ■[Global Entertainment & Media Outlook 2019‑2023(英文)](https://www.pwc.com/us/en/industries/tmt/library/global-entertainment-media-outlook.html) コンサルティング会社のPwCは、2019年から2023年までのエンタメ・メディア業界の展望を予測するレポートを公開しています。新聞・雑誌だけでなく音声や動画の予測も掲載されているので、広い視野で市場を見渡すときに役立つ資料です。サブスクリプションの「読み放題・見放題」モデルが飽和しつつあるという指摘や、ポッドキャスト広告市場が年率40%超で急拡大していくと示唆している点が興味深いです。 ■[Digiday Research: Subscription publishers’ biggest challenges, in five charts(英文)](https://digiday.com/media/digiday-research-subscription-publishers-biggest-challenges-five-charts/) DIGIDAYが海外パブリッシャーに対し、サブスクリプションに関する質問を行ったレポートです。調査によると、サブスクリプションの事業課題として「読者を有料購読者にさせること(63%)」を挙げる割合が群を抜いて多く、「購読に値する商品の開発(42%)」が続くなど、購読者の獲得に苦心していることがうかがえます。DIGIDAYの記事は、購読者の獲得に奔走する海外パブリッシャーの動向を多数報じています。テレビや映画に進出する「[New York Times](https://digiday.jp/publishers/new-york-times-building-tv-business-moving-movies/)」、SNSを活用している「[Economist](https://digiday.jp/publishers/how-social-media-is-powering-the-economists-subscription-growth/)」の取り組みのほか、サイバーマンデーセールをもじった[#サブスクライブサンデイ](https://digiday.jp/publishers/boston-globes-invented-subscribesunday/)キャンペーンなど、サブスクリプションの成熟市場では、購読者のパイの奪い合いが激化し、さまざまな施策に取り組んでいることが伝わります。 ■[The Most Engaging Stories of 2019(英文)](https://blog.chartbeat.com/2019/12/18/most-engaging-stories-2019/) 記事エンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)」を提供するChartbeat社は、読者エンゲージメントの高いデジタル記事のグローバルランキングを公開しています。トップ10には日本のYahoo!個人の記事も入賞しました。2019年のトップ記事の特徴を「読者がまだ長編ジャーナリズムに強い興味がある」と紹介しているのが興味深いです。1位、2位の英文記事は約1万ワードと約9000ワード、8位のYahoo!ニュース個人日本語記事は約6000文字と、読み応えがあるとても長い記事です。[キメラのnote](https://note.com/ximerainc/n/n778ffacbe34d)でご紹介している通り、読者エンゲージメントはサブスクリプションでも広告でも大切な指標です。トレンドをもとに自社のコンテンツ戦略を再考してみてはいかがでしょうか。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■[グーグルはChromeでのサードパーティCookieのサポートを2年以内に段階的に廃止](https://jp.techcrunch.com/2020/01/16/2020-01-14-google-wants-to-phase-out-support-for-third-party-cookies-in-chrome-within-two-years/) 2020年1月14日、Chromeがサードパーティ製Cookie(クッキー:ウェブの閲覧記録データ)のサポートを段階的に廃止することが明らかになりました。このニュースは日本経済新聞の1面でも報じるなど、個人データの保護に向けた機運が国内でも高まっています。ユーザーの行動履歴に応じて広告を掲出やサブスクリプションのオファーを掲出する施策に大きな影響を与えるでしょう。ユーザー行動履歴の取得、利用に立ち込める暗雲は、[前回のニュースレター](https://note.com/ximerainc/n/n8637b80494cb)で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。 ■その他のニュース [Appleの無料「News」アプリ、利用者が月1億人突破](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54194170Z00C20A1000000/) [フォーブスが「広告非表示権」を発売、イーサで購入可──ブロックチェーンでNFT活用](https://www.coindeskjapan.com/31860/) # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース [ハーストのデータ活用組織が設立、広告主に行う新たな提案とは](https://markezine.jp/article/detail/32707) [NHK「常時同時配信・見逃し番組配信」4月から開始へ](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200115/k10012246811000.html) --- ## ユーザートラッキングに暗雲(2019/12/12) URL: https://ximera.com/posts/8e8641a493 公開日: 2019-12-12 こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.ユーザートラッキングに暗雲 個人の行動・閲覧履歴データを追跡し、そのデータをもとにユーザーに合わせた広告掲出やオファーを行うトラッキング施策は、長らくウェブマーケティングの定石とされてきました。 しかし、2018年5月にEUで施行が始まったGDPR(一般データ保護規則)はウェブの閲覧履歴も「個人情報」と定義しており、海外ではCookie(クッキー:ウェブの閲覧記録データ)を利用したトラッキングに「待った」がかけられています。 今回はパブリッシャーの広告掲載やサブスクリプション訴求を考える点で避けては通れない、このトピックについてご紹介します。 ■[強まる個人データ保護強化の波 メディアビジネスはどう変わるか?](https://www.mediatechnology.jp/entry/beyond_cookies1) プライバシー保護の文脈から、SafariやChromeといったブラウザが第三者企業のCookie利用に規制を設けています。この前段となるGDPRの説明やメディアビジネス与える影響、今後の展望までを概説する記事です。 ■[ネット閲覧情報の第三者提供 利用者の同意義務化](https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52674070X21C19A1MM8000/) 日本も海外に追随し、Cookieを第三者が利用する際にユーザーの同意を義務化を検討しています。政府の個人情報保護委員会は、2020年の個人情報保護法の改正検討にあたり、新たなルールとして盛り込もうとしています。 こうしたトラッキングにおける課題に対し、対策を講じているパブリッシャーの例が報じられています。 ■[「登録ウォール」を(再)導入する、ニュース企業たち](https://digiday.jp/publishers/the-tip-of-the-iceberg-news-publishers-are-embracing-registration-walls-again/) 「New York Times」や「Hearst Newspapers」は、Cookieに頼らずにユーザーの情報を収集するため、会員登録を促すウォールを設けています。登録ウォールはサイトのトラフィックを短期的に減少させる懸念もありますが、「身元の判明しているユーザーの有料会員登録率は、匿名ユーザーに比べて10倍も伸ばせる」とのデータも記事内に示されています。また、欧州では、GoogleとFacebookによる広告寡占(デュオポリー)に対抗するため、パブリッシャー同士が共通の会員IDを設ける「[ログインアライアンス](https://digiday.jp/publishers/fight-google-facebook-european-publishers-try-login-alliances/)」が進んでるとも報じられています。 ■[New York Timesがソーシャル追跡タグを除去](https://www.axios.com/new-york-times-social-media-trackers-47f547d5-a241-424a-a398-12344c78ac32.html) 2019年11月20日、「New York Times」はFacebookとTwitterの追跡タグの利用をやめることを明らかにしました(少数のマーケティング施策用ページを除く)。今後は自社開発のマーケティングツールを用い、ブラウザの閲覧履歴を取得せずに潜在的な有料購読者をターゲティングするそうです。同社のチーフデータサイエンティストは「私達は人のトラッキングをやめて記事のトラッキングに移行する」と述べています。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■[「Fortune」紙、2020年1月にサブスクリプション開始(英文)](https://digiday.com/media/fortune-rolling-three-tier-membership-program/) 2019年12月11日、米ビジネス誌「Fortune」が2020年1月からデジタルのサブスクリプションを開始することが明らかになりました。現在、同社の収益は60〜70%が広告掲載・スポンサー収入ですが、サブスクリプションが3年以内に総収益の20%、5年以内に30%を占めると見込んでいます。広告モデルからの転換となるでしょうか。提供予定のプランは「デジタル読み放題」「デジタル+紙」「デジタル+紙+プレミアム動画」の3種類と報じられています。 ■[エコノミスト 、YouTube登録者100万人の有料会員化を模索](https://digiday.jp/platforms/the-economist-reaches-1-million-youtube-subscribers/) 英「Economist」と「Financial Times」は、自社のYoutubeチャンネル購読者を記事のサブスクリプションにつなげるべく模索しています。長尺の動画がエンゲージメント向上に効果を発揮することはすでに報じられていますが、今後はYoutubeを始めとしたプラットフォームに抱え込んだ視聴者をいかに記事へと誘導し、有料購読させるかが鍵になりそうです。具体的なマーケティングデータも明かされており、動画戦略を考える上でたいへん有益な記事です。 ■[2019年、四半期のエンゲージメントデータに見る2020年に向けた展望(英文)](https://digitalcontentnext.org/blog/2019/12/09/what-this-past-quarter-of-engagement-data-tells-us-heading-into-2020/) 2019年の第3四半期におけるエンゲージメントデータをもとに、2020年に向けた展望を解説した記事です。モバイルデバイスの利用率の伸びと、世界各地の平均エンゲージメント(滞在)時間が比較されています。デバイスの特性を踏まえながら、回遊率を高めてエンゲージメント時間を伸ばすための施策が肝要です。本文には記事エンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)」のデータが使われています。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース 前号のニュースレターに引き続き、既存のコンテンツの枠組みにとらわれないメディアの取り組みが報じられました。 <PICK UP> ■[メディアジーン・生理化学研究所・医師の三者でサプリメントのサブスクリプションサービスを開始](https://www.mediagene.co.jp/2019/12/12721.html) 2019年12月6日、メディアジーンは分子生理化学研究所と医師と共同でサプリメントのサブスクリプションサービスを開始しました。サービス開発にはメディアジーンが擁するウェルネス・メディア『MYLOHAS』が培ってきた医師・専門家への取材や記事発信のノウハウが活かされているそうです。メディアのブランドとノウハウを生かして新事業を開発した事例として、今後の展開が楽しみですね。 ■[ハースト婦人画報社、企業のコミュニケーション戦略支援サービスを始動](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000117.000008128.html) 2019年11月27日、ハースト婦人画報社は、マンション紹介サービス「R100 TOKYO」のオウンドメディア立ち上げ支援のプロジェクト始動を発表しました。同社のソリューションサービスの一環として、メディアのコンセプト設計、コンテンツ制作、ウェブサイト構築を手掛けたそうです。パブリッシャーが持つコンテンツの制作・編集力やネットワークを強みに、広告コンテンツにとどまらないサービスメニューを提供している例といえるでしょう。 <その他の注目ニュース> [小説・ライトノベル10,000点以上が読み放題! 「角川文庫・ラノベ読み放題」スタート!](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000006569.000007006.html) [NHK次期会長 前田氏会見「質の高い番組 大切にしたい」](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191210/k10012209841000.html) [ユーザベース、TBSと資本業務提携を実施](https://www.uzabase.com/company/news/uzabase-tbs/) --- ## 自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは URL: https://ximera.com/posts/d37339ee19 公開日: 2019-12-06 著者: Ximera [Web illustrations by Storyset](https://storyset.com/web) # 自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 パブリッシャーが広告掲載収益だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、デジタルメディアのサブスクリプション化(=サブスクリプション:有料購読課金化)を検討しているパブリッシャーの方々も増えてきたのではないでしょうか。今まで、弊社のブログではメディアのサブスクリプションの類型や特徴を紹介してきました。 - [海外メディアのサブスクリプション、5種の”定石”モデルを解説します](https://app.notion.com/p/5-2a2329c8292b4e0b983ae9f53c6f3b80?pvs=21) - [「無料会員」「南京錠アイコン」のカラクリとは? 国内メディアのサブスクリプションを解説](https://app.notion.com/p/d536e4d6cb134a13b9ad3bebda8ea6fb?pvs=21) 今回のブログでは、実際にサブスクリプションを導入するための手段について解説します。 目次 ## サブスクリプションの始め方は「自社開発」「SaaS」「プラットフォーム」 デジタルメディアにサブスクリプションモデルを導入する方法としては「自社開発」「SaaSを導入する」「プラットフォームを利用する」の3パターンがあります。この記事では、それぞれ以下のように定義して説明します。 これらの手段には、どんな特徴があるのでしょうか。サブスクリプションモデルを導入・検討しているパブリッシャーの声をもとに、以下の表で比較してみました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/16635650/picture_pc_47e2039b118a85f64b7c74c11eb5eed7.jpg?width=800) 具体的なメリット・デメリットと導入例についても見ていきましょう。 ### 自社開発のメリット・デメリット 自社開発は、これまでサブスクリプションを導入する場合の一般的な選択肢でした。強みは、自社で仕様を決めるため実現したい機能を盛り込めることです。一方で、開発が完了するまでサブスクリプションのサービスが提供できないことや、ローンチ後に仕様にないサービスを提供するには改修が必要であることが弱みといえます。開発リソースが潤沢かつ機動力のある企業に向いた手段といえるでしょう。 ### SaaSのメリット・デメリット SaaSの最大の強みは、自社開発に比べて導入にかかる時間やコストを抑えながら、柔軟にサブスクリプションを運用できることです。日本でサブスクリプション管理SaaSの導入ノウハウはこれから蓄積する段階ですが、海外ではすでに多くのデジタルメディアがSaaSを利用しています。 読者の行動が多様化する昨今、マーケティングプランに沿って柔軟な課金プランや割引クーポンを提供したり、イベントなど記事コンテンツに縛らず課金対象を広げたりするならば、SaaSは有効な選択肢です。 ### プラットフォームのメリット・デメリット 定額読み放題サービスやブログサービスにコンテンツを提供し、コンテンツ課金機能を利用する方法です。自社開発やSaaSと比べて導入コストが非常に低いことや、コンテンツへの集客まで委託できる点で手軽にサブスクリプションを始めやすい手段です。 一方で、プラットフォーム自体のブランドやプラットフォーム共通のUI/UXが印象に残るため、自社メディアのブランドとして読者ロイヤルティを育てにくい、プラットフォーム運営者の都合によって仕様やサービス提供内容が変化する、などのリスクが存在します。サブスクリプション導入を試験的に、もしくは限られたリソースで行いたい場合に有効な選択肢といえます。 このように、近年はサブスクリプション導入の手段が多様化しています。自社開発以外にも選択肢があることを踏まえ、自社のリソースや目指すサブスクリプションビジネスのあり方に合う手段を検討してみてはいかがでしょうか。 ## サブスクリプションSaaSの種類と特徴まとめ 「自社開発」「SaaSを導入する」「プラットフォームを利用する」のうち、特にイメージしにくいのがSaaSではないでしょうか。海外のプロダクトが中心なこともあり、デジタルメディア向けにはどんなSaaSがあり、それぞれどんな特徴があるのか、情報収集が難しいのが現状です。以下に、パブリッシャーの利用実績があるSaaSをまとめました。 ### Zuora(ズオラ):Zuora [Zuora はサブスクリプション・ビジネスの収益向上を支援します](https://jp.zuora.com/) 製品紹介:米Zuora社が提供。サブスクリプションの管理・課金決済に特化し、幅広い業界や製品を扱えるツール 機能: 商品管理、請求、割引、分析レポート 強み:幅広い導入実績、特定の機能を指定して導入できる、他ツールとの連携性が高い 弱み:基本機能の「CENTRAL PLATFORM」はサブスクリプションのコア機能のみを提供しているため自社システムとの連携で追加の開発コストがかかる、ID管理や決済には外部サービスとの連携が必要 導入媒体:英Financial Times、英Telegraph、ダイヤモンド・オンラインほか ### Piano(ピアノ):PIANO SOFTWARE INC [Piano * The Digital Business Platform](https://piano.io/) 製品紹介:米PIANO SOFTWARE社が提供。パブリッシャー向けに特化したツール 機能: 商品管理、請求、オファー掲出、ペイウォール設置、割引、ID認証・管理、メルマガ配信、分析レポート 強み:ペイウォールのユーザー体験が柔軟に設計できる、サブスクリプション管理だけでなく、メルマガなど読者ロイヤルティも醸成できる 弱み:ユーザー体験設計など特定の機能だけを利用する場合は他のツールとの接続設計や開発が必要になる、機能が多く習得期間がかかる、ユーザー体験やオファー設計のための人員が必要 導入媒体:米Bloomberg、英Economist、WIRED[日本版]ほか ### eSuite(イースイート):MPP Global ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/16636179/picture_pc_3a0f00b44aa88b83b133b27b39adb77c.png?width=800) 製品紹介:英MPP Global社が提供。ペイウォールやオファーの掲出、課金管理、分析まで、サブスクリプションに必要な機能をワンストップに備えたツール 機能: 商品管理、請求、オファー掲出、ペイウォール設置、割引、ID認証・管理、分析レポート 強み:匿名ユーザーにパーソナライズしたオファー掲出が可能、特定の機能を指定して導入できる、紙媒体とデジタル媒体の統合管理に実績あり 弱み:管理画面やサポートが英語中心、機能が多く習得期間がかかる 導入媒体:英Daily Mail、デジタル毎日、読売新聞社「The Japan News」ほか ### 番外:Stripe(ストライプ) [インターネットビジネスのためのオンライン支払い処理 - Stripe](https://stripe.com/jp) 製品紹介:米Stripe社が提供するオンライン決済サービス。SaaSではないが、決済機能のみならず、サブスクリプション管理にかかわる一通りの機能を提供している 機能: 決済、商品管理、請求、割引、ID認証・管理、分析レポート 強み:サブスクリプション実現に必要な機能をすべてカバーしている 弱み:ユーザー体験や、オファー掲出などマーケティング機能、ロイヤルティ計測機能は持たない 導入媒体:英Guardian、米National Geographicほか ## サブスクリプションは、導入前の「ビジネス設計が命」 最後に、デジタルメディアのサブスクリプション化を検討している方にお伝えしたいことがあります。サブスクリプションは、決してコンテンツをすぐに収益化できる「魔法のソリューション」ではありません。 事前のビジネス設計が不十分なままサブスクリプションを導入しても読者離れを加速してしまったり、メディアのブランドを損なったりするリスクがあります。実際に[米国の新聞社に対する調査](https://hbswk.hbs.edu/item/are-paywalls-saving-newspapers)では、電子版を有料課金化したことにより、売上高が24%増加した媒体もあれば12%減少した媒体もあったことが分かっています。 特に流入経路がソーシャルやニュースアプリに依存しているデジタルメディアは注意が必要です。流入した読者がサイト内を回遊せずに離脱してしまい、メディアの認知やブランドを十分に形成できていない可能性があります。 サブスクリプション導入の手段を検討することも大切ですが、その前に ・現状のデジタルメディアのブランドが育っているか ・現状のコンテンツが課金に値するものか ・サブスクリプションモデルを導入したら、どんなユーザーが、どれくらい課金してくれるか を分析・可視化し、有料課金に見合うコンテンツを生み出す体制づくりが長期的なサブスクリプションに成功には欠かせません。ツールの選定ももちろん大切ですが、その前のビジネス設計が「サブスクリプションの命」であることを心に留めていただけると幸いです。 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Dec 6, 2019|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## パブリッシャーの人材戦略、変化の時(2019/11/28) URL: https://ximera.com/posts/27db66f1fe 公開日: 2019-11-28 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.パブリッシャーの人材戦略、変化の時 2019年秋は、海外パブリッシャーの組織に様々な動きがありました。11月末までの人事ニュースを振り返りながら、今のパブリッシャーに求められる組織のあり方に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 サブスクリプション(有料購読)の重要性が高まる中で、マーケティングやデータ分析に長けた人材が相次いで要職に就任しています。 ■[Quartz、新経営体制のお知らせ](https://www.uzabase.com/company/news/quartz-new-leadership-team/) 2019年11月13日に日本版を開始したばかりの経済メディア「Quartz」は、10月に経営体制を変更しました。新CEOに就任したZach Seward氏はこれまで製品開発、顧客拡大、データの可視化を担当し、有料課金事業をリードしてきた立役者です。 ■[Hannah Poferl氏を「オーディエンスディレクター」に指名(英文)](https://www.nytco.com/press/hannah-poferl-named-audience-director/) 2019年9月11日、「New York Times」は次期オーディエンスディレクターにHannah Poferl氏を指名しました。同社のオーディエンスディレクターはプラットフォーム横断での読者エンゲージメントの把握や記事の多様化に取り組むポストです。Poferl氏が分析業務を長く経験してきた背景もあり、NYTがデータに基づいた読者エンゲージメントを重視する姿勢が感じられます。 ビジネスモデルの転換とともに人材の需要が変化しているのは、現場社員も同様です。 ■[プロダクトマネージャー職、パブリッシャーで需要高まる:「大きな需要が存在している」](https://digiday.jp/publishers/product-manager-pivotal-role-publishers/) DIGIDAYはパブリッシャーの人材動向について継続的に報じています。NYT、The Atlantic、The Daily Beastなどがマーケティングやビジネス戦略に長けた人材を内部に抱えて[「インハウス化」しようとする風潮](https://digiday.jp/publishers/publishers-eye-growth-marketers-ad-buyers-support-subscription-ambitions/)が高まっており、[各社が人材獲得に苦戦している](https://digiday.jp/publishers/digiday-research-publishers-trouble-hiring-product-roles/)ことが調査で明らかになっています。 一方で、こんな残念なニュースも。 ■[「Sports Illustrated」新経営陣のもとでリストラ進む(英文)](https://www.usatoday.com/story/money/2019/10/03/sports-illustrated-under-new-management-cuts-40-staff-jobs/3859900002/) 米国の老舗スポーツ雑誌「Sports Illustrated」は、新たな経営陣のもと150名のスタッフのうち40名をリストラすると発表しました。代わりに200名のフリー記者と契約し、大学・プロスポーツチームの記事コンテンツをカバーするそうです。どのポストが削減の対象かは明らかではありませんが、社員の執筆記事が減ることは推測できます。スタッフライターとして期待される価値とは何なのか、考えさせられます。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■[WordPress.comサイトにサブスクを受け付ける「定期支払い」機能が登場](https://jp.techcrunch.com/2019/11/16/2019-11-12-wordpress-com-sites-can-now-accept-subscriptions-with-new-recurring-payments-feature/) CMSで世界シェアトップのWordPressを採用する米Automatticのブログサービス「WordPress.com」が、サブスクリプション機能の提供を開始しました。記事だけでなくニュースレターや寄付の受付も可能とあって、幅広く導入が進みそうです。 ■[「Googleアシスタント」、音声ニュースのパーソナライズを開始--まず米国で](https://japan.cnet.com/article/35145656/) 2019年11月19日、Googleは音声ニュースを個人の関心にパーソナライズして再生する「Your News Update」を米国で提供開始しました。仕様は[Googleのブログ(英文)](https://www.blog.google/products/news/your-news-update/)に詳しいです。併せてご覧ください。 ■[シンガポール政府、偽ニュース対策法を初適用](https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52570410V21C19A1FF1000/) 2019年11月25日、シンガポール政府は「偽ニュース・情報操作対策法」に基づく情報の訂正を初めて命じました。これはフェイクニュース対策のため、虚偽と判断したインターネット上の情報について訂正・削除を命じることができる法です。国家によるニュースの虚偽判断がジャーナリズムを制限するものではないかどうか、議論が続きそうです。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース <PICKUP> 今月は、様々な手法で収益化に取り組むメディアの事例が報じられました。 ■[“購買に寄与する”メディアに進化した「GIZMODO」・・・メディアジーン芹澤執行役員に聞くコマースへの取り組み](https://media-innovation.jp/2019/11/20/mediagine-interview/) メディアジーンが運営する「GIZMODO」は、2019年7月の[「Amazon プライムデー」で数億円の売上を達成](https://www.mediagene.co.jp/2019/08/11863.html)しました。インタビューではクラウドファンディングなどコンテンツコマースを促進するための取り組みを紹介しています。オリジナル商品の販売やリアル店舗の展開も展望にあるとのこと。 ■[プレジデント社、サブスク型の有料メルマガ事業にオンライン決済システム導入](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000001047.html) プレジデント社はサブスクリプションモデルの導入に先駆け、有料メルマガやオンラインサロンで収益化に取り組んでいます。誌面以外の収益化は、必ずしもデジタルメディアから始めなければならないわけではありません。その一例として参考になりそうです。 <その他の注目ニュース> [「ジャーナリズムが健全に発展していく場に」ヤフーとLINEの経営統合、ニュースはどうなるの?](https://www.huffingtonpost.jp/entry/yahoo-line-news_jp_5dd25f70e4b02947481a4ca9) [「GO」と「朝日新聞」が連携し、社会課題解決型の広告クリエイティブ を開発するサービス『ブランドニュース』を提供開始](https://www.asahi.com/corporate/info/12906514) --- ## メルマガは時代遅れ?いいえ、強い味方です(2019/11/13) URL: https://ximera.com/posts/e84bb6b826 公開日: 2019-11-13 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.メルマガは時代遅れ? いいえ、強い味方です サブスクリプション(有料購読)導入の重要性が叫ばれる昨今ですが、1日に数千〜数万のコンテンツが配信される中で、単に「有料購読してください」とオファーしても成果にはつながりません。読者に「お金を払ってもコンテンツを読みたい」と思わせるためには、メディアへの定期的な訪問を促し、愛着を持ってもらうことが重要です。 今、その手段として海外パブリッシャーがこぞって活用しているのが「メール」です。日本でいう「メルマガ」は時代遅れに感じるかもしれませんが、海外では自社の記事を読者に直接届ける「ニュースレター」として評価されています。今週は意外と奥深い、デジタルメディアのメール活用についてご紹介します。 <ニュースレターの効果> ■[ニュースレターの技術革新が、いかにパブリッシャーの収益を牽引するか(英文)](https://whatsnewinpublishing.com/how-newsletter-innovations-are-driving-publisher-revenue/) ニュースレターがもたらす効果について、様々な海外パブリッシャーの例とともに解説した記事です。・New York Timesの無料ニュースレターの購読者が有料会員になる確率は通常の2倍・Seattle Timesのニュースレター購読者は、Facebook読者に比べ25倍も有料会員になりやすい・The Timesはニュースレターによって有料購読のキャンセル率を49%減らしたなど、具体的かつ驚くべき効果が紹介されています。 ■[サブスクユーザーを生み出す最も効果的なチャネルは「メール」 広告収益モデルからの脱却を目指すメディアビジネスの処方箋](https://logmi.jp/business/articles/321839) PIANO SOFTWARE社の役員による講演録です。グローバルで幅広く使われているサブスクリプション管理ツールを提供する同社のデータからも、メールがサブスクリプション購読にもたらす効果が語られています。具体例としてBloombergの取り組みを紹介しています。 <パブリッシャーのニュースレター活用事例> パブリッシャー各社の活用事例は、以下の記事に詳しいです。 ■[「いつだって、リエンゲージメントは簡単ではない」: パブリッシャーたちの「メール」活用方法](https://digiday.jp/publishers/always-struggle-reengagement-publishers-rely-email/) ■[英紙・サン、メール活用で「リテンション率」68%を達成:ファンタジー・フットボールで](https://digiday.jp/publishers/how-the-suns-fantasy-football-newsletter-increased-retention-by-68/) ■[「価値は変化する」: 読者の反応、あらゆる手段で集めるパブリッシャーたち](https://digiday.jp/publishers/value-proxy-publishers-soliciting-feedback-readers-one-question-surveys/) また、直近では2019年11月13日に、米国の経済メディア「Quartz」の日本版がローンチしたことが特筆に値します。 ■[なぜ今、日本にQuartzが必要なのか](https://qz.com/1746387/%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%8Cquartz%E3%80%8D%E3%81%8C%E4%BB%8A%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E4%B8%8A%E9%99%B8%E3%81%99%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1/) 月額1000円の会員メニューで提供しているのは、「毎朝のニュースレター」「英語版記事の読み放題」と、ニュースレターにかける熱量がうかがえます。ニュースレターを重視する米国版Quartzの思想をくんだものでしょう。米国版Quartzのニュースレター運営については[DIGIDAYの記事](https://digiday.jp/publishers/newsletter-editors-new-important-person-newsrooms/)に詳しいです。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース 海外からは、2019年10月にリリースされたFacebookのニュースタブに対する賛否が寄せられました。 <PICKUP> ■[Facebook のニュース対価支払は、「新常態」になるか? :パブリッシャー対応をめぐる是非](https://digiday.jp/platforms/facebooks-paying-publishers-directly-new-normal/) このたびのFacebookのニュースタブで話題となっているのが、パブリッシャーに対する利益分配の方法です。限られた媒体を対象にしているとはいえ、支払いを広告収入の分配ではなく直接払いにしている点に注目が集まっています。 しかし、Facebookの度重なる方針変更の歴史を踏まえた辛口な論調も目立ちます。パブリッシャーがプラットフォームに期待・依存しすぎることへ警鐘を鳴らしているのでしょう。 ■[10年間パブリッシャーをいじめてきたFacebook Newsを信頼してはいけない理由](https://jp.techcrunch.com/2019/10/29/2019-10-24-facebooks-news-not-yours/) ■[Facebook News、パブリッシャー5社の取材でわかったこと : ゲームチェンジャーではない](https://digiday.jp/publishers/more-long-term-commitment-hope-springs-eternal-for-news-publishers-on-the-eve-of-facebook-news-launch/) <その他の注目ニュース> ■[ジャーナリズムをドロップシップしている:社員はNewsweekがなぜ存続しているか分からないと語る(英文)](https://www.cjr.org/special_report/newsweek.php) 米国のパブリッシャー「Newsweek」の現状を克明に報じた記事です。トラフィック至上主義に陥った編集部では検索流入やバズを意識せざるをえず、ライターと編集者が時間に追われるあまり杜撰なファクトチェックを避けられないといいます。記事中にはノルマ管理のデータシートや記事エンゲージメント計測ツール「Chartbeat」のスクリーンショットも生々しく掲載されており、メディア運営のあり方を考えさせられる内容です。 ■[New York Timesの広告収入減はデジタル市場への「乱気流」によるもの(英文)](https://www.nytimes.com/2019/11/06/business/media/new-york-times-earnings.html) 2019年11月6日、New York Timesは四半期決算を発表しました。総収入は昨対比2.7%増で、サブスクリプションが売上を牽引。デジタル版の契約者数は前の四半期から27.3万人増加し、計400万人を超えました。一方、広告売上は昨年から6.7%減となっています。この結果に対し、New York Times自身が紙上に発表した見解です。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース <PICK UP> 国内からは、新メディアローンチのニュースが相次いで届きました。 ■[NewsPicksから学生のための新メディア『HOPE by NewsPicks』が誕生。](https://www.uzabase.com/company/news/newspicks-hope-teaser-open/) 2019年11月5日、NewsPicksが発行するフリーマガジン『HOPE』が学生向けに再スタートしました。オンラインと紙面を展開し、参加は基本無料。デジタル版に有料記事が一部配信されるようです。紙媒体を「友人とのシェア用」と位置付け、希望するユーザーにマガジンを3部送るシステムが興味深いです。デジタル主体のサブスクリプションメディアならではの戦略だといえそうです。 ■[創刊96年『文藝春秋』がnoteをビジネスパートナーに選んだ“3つの理由”](https://bunshun.jp/articles/-/15402) 2019年11月7日、『文藝春秋』が初めてのデジタルサブスクリプションサービスをnote上で開始しました。注目すべきは、外部プラットフォームを採用した背景に、開発に時間とコストをかけず即座にサブスクリプションビジネスを始めたいという明確な狙いがあることです。自前主義でないサブスクリプション運用の成功例となるでしょうか。 <その他の注目ニュース> ■[スマートニュースメディア研究所、地方紙・地方局の若手記者の海外取材を支援する「SmartNews Fellowship Program」の募集を開始](https://about.smartnews.com/ja/2019/10/31/20191031/) ■[1つの記事を最後まで読んでもらうためにーー「JBpress」アナリストが伝えたい分析・改善メソッド](https://www.mediatechnology.jp/entry/2019/10/21/105941) --- ## パブリッシャーとプラットフォーマーの付き合い方は?(2019/10/29) URL: https://ximera.com/posts/96f5beb1a9 公開日: 2019-10-29 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.パブリッシャーとプラットフォーマーの付き合い方 Google、Facebook、ニュースサイトを始めとするプラットフォーマーは、デジタルメディアの集客に大きく貢献してくれる存在です。反面、プラットフォーマーへの依存や、特定の企業による寡占が進んでいる現状もあります。 パブリッシャーはプラットフォーマーとどのように付き合っていけばよいのでしょうか?ヒントになる国内外のニュースをご紹介します。 <プラットフォーマーとコンテンツ> ■[「Facebook News」が実装開始(英文)](https://about.fb.com/news/2019/10/introducing-facebook-news/) 2019年10月25日、かねて報じられていたFacebookのニュースタブが実装されました。閲覧履歴によって個別化されたニュースが配信されるほか、Facebookアカウントを用いて有料購読しているデジタルメディアの記事もフィード上で閲覧できるそうです。テスト版として、米国の一部地域でサービス提供が始まっています。 ■[Apple News+が英国とオーストラリアに展開(英文)](https://www.cnet.com/news/apple-news-plus-rolls-out-to-uk-australia-with-new-publications/) 2019年9月30日、Appleの読み放題サービス「Apple News+」が、サービス範囲を英国とオーストラリアへ広げました。「Apple News+」は2019年3月から米国内で提供が始まっており、300以上のメディアを定額で閲覧できます。サービスの概要を日本語で解説した記事としては[WIRED](https://wired.jp/2019/03/26/apple-news-plus-news-subscription-service/)に詳しいです。 ■[Googleの新検索アルゴリズム「BERT」が米国で導入へ(英文)](https://www.buzzfeednews.com/article/nicolenguyen/google-search-bert-natural-language-processing) 2019年10月のプレスイベントで、Googleの新たな検索アルゴリズム「BERT」が米国で導入予定であることが発表されました。訪問者の検索意図を汲んで検索順位が大きく変わるほか、検索結果にパブリッシャーの記事が該当した場合は、スニペットに記事の該当箇所を強調して表示するそうです。日本での導入時期は未定ですが、記事内ではデジタルメディアのトラフィック減を懸念しています。 <プラットフォーマーと広告掲載> ■[IABインターネット広告収入調査 2019年上半期(英文)](https://www.iab.com/insights/internet-advertising-revenue-2019-half-year/) 2019年10月21日、インターネット広告協会(IAB)が2019年上半期の調査レポートを発表しました。米国のデジタル広告費は579億ドル(約6兆2800億円)にのぼりました。注目すべきは、収益の76%を10社の広告企業が占めていることです。具体的な社名は明かされていませんが、筆頭はFacebookとGoogleでしょう。寡占ぶりが改めて伺える調査結果となりました。 ■[政府が巨大IT規制の議論開始 ネット広告の実態調査へ](https://www.asahi.com/articles/ASMBP64MZMBPULFA05W.html) 日本国内でも、プラットフォーマーの寡占を問題視する声が上がっています。政府は2019年10月21日、インターネット広告に関して広告主やメディア、広告事業者へのヒアリングを行うことを決定しました。プラットフォーマーの寡占によるプライバシーの侵害を懸念し、問題点を洗い出すといいます。記事によれば、公正取引委員会も近く実態調査を始めるといいます。 <パブリッシャーによるプラットフォーマーの活用事例> ■[英・テレグラフのサブスク拡大戦略](https://digiday.jp/publishers/to-convert-more-subscribers-the-telegraph-is-monitoring-snapchat-and-instagram-user-journeys/) 英国のメディア「The Telegraph」は、InstagramとSnapchatを活用して若年層の有料購読数を大きく伸ばすことに成功したといいます。インパクトあるサムネイルが目を引く同誌の特性を生かし、プラットフォーマーを上手に活用して集客に成功した事例といえるでしょう。 ■[英紙・ガーディアン 、 YouTube登録者100万人達成の裏側](https://digiday.jp/publishers/the-guardian-reaches-1-million-youtube-subscribers-after-doubling-longer-form-videos/) 過去のニュースレターで報じた、「The Guardian」によるYouTubeチャンネルの快進撃を詳しく解説した記事です。エンゲージメントの高い高品質な長尺コンテンツを増やした結果、広告収入増にも寄与したといいます。 ■[パブリッシャーはサブスク読者獲得のため、ペイドマーケティングにお金をつぎこんでいる(英文)](https://digiday.com/media/publishers-pour-money-paid-marketing-subscription-products/) 反面、パブリッシャーがサブスクリプションの集客のために多額のマーケティングコストを投じていることも明らかになっています。Google・Facebookのプラットフォーマー寡占から脱するために始めたサブスクリプションですが、その集客のために彼らに頼らざるをえない現状を報じています。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■[Facebook、2020年米大統領選に向けたフェイク情報対策などを多数発表](https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1910/22/news020.html) 上述のとおりNewsタブの実装が発表されたFacebookですが、2020年の米国大統領選挙を控えてアップデートが多数発表されました。国営メディアのニュース記事にラベルを付けるほか、大統領候補の広告費を可視化するなど、前回の大統領選を揺るがしたフェイクニュース対策に本腰を入れた内容です。 ■[Safari 新プライベートモード、メーター制課金を無効化に:頭悩ますパブリッシャーたち](https://digiday.jp/publishers/safaris-new-private-browsing-mode-provides-new-path-around-publisher-paywalls/) ブラウザー「Safari」の仕様変更が、サブスクリプションの思わぬ障壁になっています。9月下旬に提供された最新バージョンでは、プライベートブラウズモードのユーザーの訪問を検出できません。今までユーザーの訪問回数をもとにサブスクリプションを提示していた「メーター型」のペイウォールが機能しなくなるおそれがあり、パブリッシャーに懸念が広がっています。 ■[Mediumがライターへの分配金を読まれた時間で計算する方法に変更](https://jp.techcrunch.com/2019/10/24/2019-10-22-medium-reading-time/) 米国発のブログサービスMediumが、ライターにサブスクリプション収益を分配する方法を変更しました。従来は記事内に設置された拍手ボタンに応じて収益が分配されていましたが、今回からは新規ユーザーを含めて、記事が読まれた時間数に応じて分配されるといいます。個人向けプラットフォームが読者のエンゲージメントを重視した収益分配をするようになった点で、興味深いニュースです。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース <PICK UP> ■[集英社、EC・実店舗・メディアを融合したショップを「渋谷スクランブルスクエア」に開業](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000092.000011454.html) 2019年10月25日、集英社は、11月1日開業予定の「渋谷スクランブルスクエア」に、自社のECと女性向けメディアを融合したリアル店舗を開設すると発表しました。紙面に掲載された商品を試着・購買できるほか、店頭在庫がない商品もECと連携して配送可能とのこと。メディアブランドをリアルの購買体験に結びつける試みに注目です。 ■[「お、これいいな」無邪気にコピペする若手ゲームライターが量産され続けた理由](https://news.yahoo.co.jp/byline/shigiharamorihiro/20191023-00147418/) ゲーム攻略系のデジタルメディアでは、他メディアの記事をコピー・ペーストし、言葉尻だけを変えて掲載される事例が後を絶たないといいます。その背景には、パブリッシャー側のリソース不足により、情報の裏取りや若手ライターへのフィードバック・育成といった編集機能に手が回らない状況が伺えます。 <その他の注目ニュース> ■[偽ニュース対策 議論の場 総務省検討 IT大手や学者参加](https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51399030V21C19A0EA4000/) ■[講談社、読者のオタク的要素に着目したネット広告プラットフォーム「OTAKAD」をリリース](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002380.000001719.html) ■[淘汰が始まったネットメディア 生き残りかけパブリッシャーはどう動く? メディアジーンCEO・今田素子氏に聞く](https://blogos.com/outline/412603/) --- ## その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは URL: https://ximera.com/posts/ecb09cf675 公開日: 2019-10-25 著者: Ximera [Internet illustrations by Storyset](https://storyset.com/internet) # その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 過去のブログでは、メディアの成長と収益化のためには単にページビューだけを追いかけるのではなく、「読者ロイヤルティ」の育成が不可欠だということを[お伝えしてきました](/posts/7565c70a79)。 「読者ロイヤルティ」は、メディアに対する読者のブランド認知や愛着度を指します。読者にメディアを認知させ、定着してもらうためには、質の高いコンテンツが求められることは言うまでもありません。 この質の高いコンテンツとは、一体どんなものだと思いますか? 一般的には多くのページビューを獲得した記事が質の高いコンテンツとみなされることが多いかもしれませんが、ページビューさえ獲得していれば良いかといえばそういうわけでもありません。すでに2015年にはFacebookがページビュー目当ての「釣りタイトル」を[規制](https://digiday.jp/publishers/what-to-know-about-facebooks-war-on-clickbait/)しています。 また、2018年にはHearstやThe Boston Globeを始めとする海外パブリッシャーが[ページビューを主要KPIから外すようになった](https://digiday.com/media/era-loyalty-newspaper-publishers-rethink-focus-pageviews/)と報じられています。ならば、読者ロイヤルティを高めるコンテンツを何で判断すればいいのでしょうか。 知っておきたい有用な指標が、「読者エンゲージメント」です。今回のブログでは「読者ロイヤルティ」の醸成に欠かせない「読者エンゲージメント」について解説します。 目次 ## 「読者エンゲージメント」はコンテンツに対する読者の反応を測る指標 そもそも「読者エンゲージメント」とは、何を指すのでしょうか? 米ハーバード大のジャーナリズム研究所である[ニーマン・ラボ](https://www.niemanlab.org/2010/10/getting-beyond-just-pageviews-philly-coms-seven-part-equation-for-measuring-online-engagement/)は、2010年に7つの変数を足し合わせた数式で「読者エンゲージメント」を導き出せると説いています。 $$ Σ(Ci+Di+Ri+Li+Bi+Ii+Pi) $$ それぞれの変数の内容は、以下の通りです。 あまりにも変数が多くて驚いた方もいるかもしれません。「コンテンツ分析のために、これらを全て測定してください!」と言いたいわけではありませんので、どうかご安心ください。 注目していただきたいのは、変数の意味です。「読者エンゲージメント」はユーザーの行動に基づいた指標だということをお伝えできればと思います。ページビューなどの単一の指標さえ追いかければよいわけではないことがお分かりいただけるでしょうか。 ## 「読者エンゲージメント」と「読者ロイヤルティ」は何が違うの? 「読者ロイヤルティ」と「読者エンゲージメント」は密接に関わっているがゆえに両者の線引きは曖昧です。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、ニーマン・ラボの定義には「読者ロイヤルティ」と重複する項目として「Loyalty」と「Brand」が含まれています。 両者を混同すると測定が大変なので、実務においては「読者エンゲージメント」はコンテンツが読者の定着を生み出せているか(=原因)を、「読者ロイヤルティ」は最終的にメディアに対するブランド認知や愛着を醸成できているか(=結果)を測定するものとして捉えるとよいでしょう。 ざっくりと、 ・「読者エンゲージメント」がメディアに掲載されたコンテンツを測る指標 ・「読者ロイヤルティ」がメディアを評価する指標 だと考えてみてください。 ## 明日から測れる、実務に生きる「読者エンゲージメント」 では、コンテンツに特化した「読者エンゲージメント」はどうやって測定すればよいでしょうか?ここからは、ある程度手間を掛けずに測定できる分析軸を紹介します。以下の指標のうち測定できそうなものをピックアップして、可能な範囲でコンテンツごと(1記事ごと)に把握してみましょうしょう。 優先順位としては、まず「コンテンツの回遊率」と「コンテンツの滞在時間」の2つを測り、余力があればそれ以外も測定するとよいでしょう。 大切なのは、極力手間をかけずに分析を行うことです。多くのデータを導き出すことに数時間かかってしまうなら、まずは回遊率と滞在時間を手がかりにコンテンツの改善施策に着手することを強くおすすめします。 デジタルメディアのコンテンツは、基本的に公開直後にトラフィックが集中する傾向にあります。分析に時間をかけすぎるとトラフィックが集まるタイミングで改善に着手できず、みすみす読者を逃してしまうことになりかねません。すでに記事から離脱してしまった読者をどれほど分析しても、残念ながら過去の振り返りにしかなりません。短いスパン(可能なら日次で。理想的なのはリアルタイム)で改善と振り返りを行うのが理想です。 データによる振り返りが有効な場合も勿論ありますが、今回ご紹介する「読者エンゲージメント」を高めるためには、今まさにメディアに訪れている読者をコンテンツから離脱させず、読後もメディア内を回遊してもらうことが必要です。 例えば、 ・回遊率が低い記事に対して関連記事リンクの内容を見直す ・読了率が低い記事をテコ入れする(もしくは、離脱を前提として早い段階で関連記事リンクを差し込む) ・ソーシャルシェアの多い記事に対して自メディアのソーシャルアカウントで反応する など、小さな改善を施すことで、コンテンツの読者エンゲージメントを高めることができます。 ## 日本の「読者エンゲージメント」は伸びしろあり 現在、国内メディアの読者エンゲージメントは、グローバルと比べると残念ながら一歩及ばない状況です。以下の図は、Chartbeat社のデータをもとに、1記事あたりの滞在時間(秒)を世界のエリア別に示したものです。アジア太平洋地域の平均滞在時間32秒に対し、日本はわずか22秒にとどまります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15437613/picture_pc_71b8af58e2f300c0a0bcdff1f1f03a45.jpg?width=800) 背景には、ページビューの獲得で広告収入を得ることを前提としたメディア設計によって、読者エンゲージメントが二の次になってきた経緯があると考えられます。日本では10年以上前から「エンゲージメント」の重要性を説く[声がありました](https://adv.asahi.com/special/contents160005/11052540)が、広告効果やソーシャルメディアでの拡散という文脈で言及されるに[とどまっていました](https://www.advertimes.com/20160822/article232084/3/)。 全世界的に[パブリッシャーの広告収入が頭打ちになりつつある](https://econsultancy.com/40-of-publishers-describe-their-digital-ad-revenue-as-shrinking-or-static/)中で、ページビューだけを見て記事のクオリティを評価することは難しいでしょう。 [メディアビジネスの要、「読者ロイヤルティ」の測り方と育て方](/posts/a667148506)でお伝えした通り、ロイヤルティの高い読者を増やしていくことはサブスクリプション・広告収入の両面で効果を発揮します。コンテンツの「読者エンゲージメント」を把握し、改善を重ねていくことが、メディアの「読者ロイヤルティ」を大きく育てることにつながります。 分析したデータを日々のメディア改善に生かしてくためには、社内のデータアナリストやグロースハッカーとともに複数の指標をバランスよく把握・分析する体制を整えるほか、メディアの「読者ロイヤルティ」やコンテンツの「読者エンゲージメント」の測定に特化した分析ツール([Chartbeat](https://chartbeat.jp/)など)を導入することが近道です。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Oct 25, 2019|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## 動画・音声コンテンツ最前線:メディアにもたらす付加価値とは?(2019/10/16) URL: https://ximera.com/posts/4577dbe691 公開日: 2019-10-16 著者: Ximera こんにちは。キメラです。このnoteは弊社のニュースレターで過去に配信した記事を再編集したアーカイブです。ニュースレターではパブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。最新号を受け取りたい方は、ここから登録できます。 [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) # 1.動画・音声コンテンツの最前線 世界的に、動画・音声コンテンツへの注目が年を追うごとに高まりつつあります。それぞれの動向を把握できるコラム記事と、国内外パブリッシャーの関連ニュースを紹介します。 <動画コンテンツ> 5G時代の到来を目前に、動画はデジタルコンテンツを語る上で欠かせないトピックです。海外パブリッシャーにおいては、メディアブランドを生かしたリッチな動画コンテンツの活用が進んでいます。 [The Guardian](https://www.theguardian.com/gnm-press-office/2019/sep/13/the-guardian-hits-1-million-subscribers-milestone-on-youtube)(英文リリース)や[Buzzfeed](https://www.buzzfeed.com/videos)(英語版) のように自社コンテンツとして配信している例に加え、広告メニューとして高い付加価値を生んでいる成功事例が出てきました。 ■[Vice の新しい動画広告、 開始から1年で成功の兆し](https://digiday.jp/publishers/vice-sees-success-year-old-cross-platform-video-ad-sales-push/) カナダ発のデジタルメディアVice Mediaは、2018年9月に動画広告の提供を開始し、年末までにグローバルの総収益のうち動画収入の割合が20%を超える見込みとのこと。ブランドセーフティを全面に押し出すとともに、プラットフォーム横断で広告をパッケージ販売したことが奏功したようです。 ■[ハースト 、グローバルチームでデジタル広告収益を2倍に](https://digiday.jp/publishers/one-year-in-hearst-digital-medias-revamped-global-ad-team-doubled-revenue/) パブリッシャ―のHearstは、リッツ・カールトンの世界展開キャンペーンに映画ディレクターを起用し、撮影した動画を地域とプラットフォームを横断して配信しています。組織改編の成果もあって、グローバルのデジタル広告収益は高級品業界のマーケティング案件を中心に前年比で2倍に増加したそうです。 <音声コンテンツ> 続いては音声コンテンツについてです。国内外の音声市場を、データや事例ともに現状を分かりやすく整理しているのが以下の電通報の記事です。 ■[“音”による広告は今、なぜ価値を持つのか](https://dentsu-ho.com/articles/6856) 音声コンテンツがストリーミングサービスやホームスピーカーの普及によって存在感を増してきていることが伺えます。 そして、今年の音声コンテンツの話題をさらったのは、なんと言っても米国を中心としたPodcastブームです。 ■[ブームの1年を経た後の、Podcastの未来を先取りしよう(英文)](https://techcrunch.com/2019/08/21/after-a-breakout-year-looking-ahead-to-the-future-of-podcasting/) 上の記事は、海外におけるPodcast人気の要因や収益化の将来像を説いています。記事によれば、今や米国では過半数がPodcastを聴いたことがあり、リスナー率や番組数も昨年から2桁成長を遂げているとのこと。[SpotifyによるPodcast企業2社の買収](https://www.gizmodo.jp/2019/02/spotify-podcast.html)も記憶に新しいところです。記事の後半ではPodcastの収益性についても論じており、ラジオと比較したPodcast広告の収益性が高い反面、トータルの収入では成長に伸びしろを残していることを指摘しています。 日本では米国ほどのPodcastブームはまだ訪れていませんが、音声広告の市場は少しずつ拡大しています。電通は2019年3月に[オーディオアド配信サービスを開始](http://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0508-009808.html)しました。直近では10月8日から、[ニッポン放送](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000035509.html)がポッドキャストに配信している番組の広告枠をバナー広告のようにプログラマティック広告として買い付け可能になりました。 現状、テキストメディアが主事業の国内パブリッシャーにおいては、[日経新聞社のVoicyチャンネル](http://www.nikkei.co.jp/nikkeiinfo/news/press/543.html)やDIGIDAYが翻訳記事にインタビュー音声を埋め込んでいるくらいで、音声コンテンツ配信の取り組みは初期段階にあるといえます。 デジタルメディアの付加価値向上の施策として、音声コンテンツは選択肢の一つになりえます。ぜひ海外の最新動向をウォッチしてみてください。キメラでも引き続き、ニュースレター等で情報をお届けします。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース 前回のニュースレターではVox MediaとNew York Mediaの合併をお伝えしましたが、10月はデジタルメディアでビッグディールが続いています。 以下2つの買収案件の背景には、いずれもFacebook、Googleら巨大プラットフォームによるデジタル広告寡占への対抗意識があると報じられています。 ■[Vice Mediaが女性向けメディアRefinery29を買収(英文)](https://www.nytimes.com/2019/10/02/business/vice-media-refinery29.html) 2019年10月1日、Vice Mediaが女性向けメディアを運営するRefinery29を約400億円で買収しました。上記の通りデジタル広告収入が順調なViceですが、買収によって今まで不足していた女性向けコンテンツを強化し、さらにプレミアムコンテンツを強化していくようです。 ■[広告レコメンドのTaboolaがOutbrainを買収(英文)](https://www.outbrain.com/blog/taboola-outbrain-plan-merger/) 2019年10月3日、デジタル広告のレコメンドエンジンを提供するTaboolaが、同業のOutbrainを買収すると発表しました。約1年間をかけて統合を行う見込みで、統合後の社名は「Taboola」で統一され、50カ国に20,000社以上のクライアントを抱える巨大企業になります。 海外パブリッシャーの課金手法を日本語で解説する記事も続々とリリースされました。 ■[話題のThe Guardianによるラグビー日本戦の記事、寄付が最高の「おもてなし」になる理由](https://news.yahoo.co.jp/byline/fujisiro/20191014-00146866/) ■[ブルームバーグのサブスク登録者、年末までに倍増の見込み](https://digiday.jp/publishers/bloomberg-medias-subscriptions-to-account-for-10-all-digital-revenue-by-2020/) 海外のサブスクリプションの類型は、弊社のnote記事でご紹介しています。併せてご参考ください。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース ■[コンデナスト・ジャパン『WIRED』メンバーシッププランを開始](https://wired.jp/membership/2019/10/14/wired-sz-membership-start/) コンデナスト・ジャパンは、2019年10月15日から『WIRED』日本版のデジタルメディア上での有料購読プログラム開始を発表しました。会員限定記事や編集部からのニュースレター、雑誌『WIRED』日本版のPDFデータの提供などを行うとのことです。「WIRED SZ メンバーシップ(Speculative Zone=特区)」と名がつく本サービスは、社会に新しい価値を実装するためのプラットフォームとして立ち上がっており、既存メディアのブランドを生かしながらサブスクリプションを始める際のブランディング事例として注目です。 ■[MERYの“共感型イベント”から見るメディア主催イベントの形](https://www.wwdjapan.com/articles/955079) 女性向けウェブメディアを運営するMERYは、読者の高いエンゲージメントを生かしてリアルイベントのマネタイズに挑んでいます。イベントの集客はメディア内の告知記事で完結しており、当選倍率が約30倍・参加率90%を超える回もあったとのことです。エンゲージメントを収益化する手法としてリアルイベントの有効性を証明する事例になるか、今後の動向が気になるところです。 また、10月初旬にはデジタル広告配信において、サードパーティCookieの無効化に対応した広告のユニーク配信サービスの発表が相次ぎました。デジタルメディアにおいても、ID発行など、自社でユーザーの行動データを収集する動きが強まるかもしれません。 [ログリー、特許技術を用いた広告配信最適化エンジン「SYNAPSE D-engine」を開発しLOGLY liftに搭載](https://corp.logly.co.jp/news/20191002/000119) [企業のインターネット広告配信において、ユニークリーチを元に意思決定を可能にするアロケーションツール「CyberAgent Unique Reach Viewer」の提供を開始](https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=23758) [LiveRamp、日本でパブリッシャー向けソリューション「アドレッサビリティ」を提供開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000038281.html) --- ## 事件報道に広告主が「NO」広告とジャーナリズムのバランスは?(2019/10/1) URL: https://ximera.com/posts/ae2a48b389 公開日: 2019-10-01 著者: Ximera 株式会社キメラ(XIMERA,inc.)は、出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしている会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ## ニュースレター最新号の購読フォーム [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ブログではバックナンバーを掲載しています。ここからは【2019年10月1日号】の内容をご覧ください。 # 1.問われる「広告とジャーナリズム」のバランス 直近の海外パブリッシャーの動向からは、「広告とジャーナリズムのバランス」の難しさを考えさせられます。 ■ニュースメディアの危機か、広告主が気にするネットの「禁句リスト」 [ニュースメディアの危機か、広告主が気にするネットの「禁句リスト」](https://forbesjapan.com/articles/detail/29747/1/1/1) 米国では、デジタルメディアの掲載コンテンツに特定のワードが含まれている場合、広告主がブランドセーフティの観点で広告掲載を拒否する「禁句リスト」が拡大しているようです。広告主が指定するワードには「殺人」や「銃」などが含まれているため、事件報道に広告掲載ができなくなる事態が起きています。広告掲載がパブリッシャーのコンテンツに影響を及ぼしている事例だといえるでしょう。この記事でも、CNNやUSA Todayなどが広告掲載をしやすい生活・文化欄やテクノロジー、ビジネスやスポーツ欄のコンテンツを増やしていることについて疑問を呈しています。 ■フェイスブック、一部パブリッシャーのみに報酬 [https://jp.wsj.com/articles/SB11431488475868774461504585582811642762420](https://jp.wsj.com/articles/SB11431488475868774461504585582811642762420) Facebookが今秋に導入を予定しているニュース専用タブに関する報道です。Facebookはニュース提供社への報酬を限られたパブリッシャーのみに支払う計画であることが明らかになりました。また、過去のフェイクニュース騒動を受けて、そもそもニュースタブに掲載するパブリッシャーの基準についても綿密に議論が行われているようです。ポイントは、落選基準に「虚偽の情報発信」に加え「大量の広告を流す」ことも含まれている点です。広告がニュースの価値を損なう要素として捉えられているとも解釈できますね。 # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■Vox MediaとNew York Mediaが合併。モダンで独立したメディア企業へ(英文) [Vox Media + New York Media come together to form the leading independent modern media company](https://www.voxmedia.com/2019/9/24/20882755/vox-media-new-york-media-come-together-to-form-the-leading-independent-modern-media-company) 米国の新興WebメディアVox Mediaが、「New York Magazine」等を刊行する老舗パブリッシャーであるNew York Mediaとの合併を発表しました。実質的にはVox Media側が買収を行ったとされており、合併は2019年内に行われる見通しです。Vox Mediaが持つWeb上のプラットフォームやポッドキャストネットワークなどを共同で活用していくようです。新興Webメディアとの合併統合は、近年ファンドによる買収が続いている米国パブリッシャーの中では珍しい例ですね。 ■米メディアThe Atlanticがサブスクリプションを発表「差別化に自信」 [「差別化には強い自信がある」:アトランティック社長、ペイウォールについて語る | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/really-confident-differentiation-atlantic-president-michael-finnegan-discusses-long-awaited-paywall/) 創業160年を超える米国メディア「The Atlantic」が2019年9月5日、新規にデジタルメディアのサブスクリプションを開始しました。サブスクリプションの値付けにおいては5000人に購入意欲の調査を実施したほか、競合調査も念入りに実施したようです。The Atlanticの動向をウォッチすることで、歴史あるパブリッシャーがサブスクリプションに参入するにあたってのヒントが見つかるのではないでしょうか。上記はDIGIDAYによる社長インタビューの日本語訳です。発表されたThe Atlanticのリリースは「[Introducing The Atlantic’s New Subscription Model](https://www.theatlantic.com/news/archive/2019/09/introducing-the-atlantics-new-subscription-model/597304/)」(英文)でご覧になれます。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース ■[IASがメディアクオリティレポート日本語版を発表](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000014440.html) メディアコンテンツ・広告の品質計測ツールを提供するIntegral Ad Science(IAS)が、アドテクのグローバル調査の日本語版を発表しました。世界主要10か国の視認性、アドフラウド、ブランドセーフティを含む最新の調査レポートです。日本ではブランドリスクの指標が大幅に改善され、対策が進んだことがうかがえます。 また、今月は大手パブリッシャーとデジタルサービスの連携事例が報じられました。 ■[CCCグループの「読み放題サービス」小学館・博報堂DYMPと資本業務提携](https://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20190930_26572.html) ■[民放5社とフリークアウト、テレビポータル「TVer」等の動画広告マーケットプレイスを共同開発](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000100.000006798.html) --- ## 世界最大のメディアカンファレンス、今年の重大テーマは?(2019/9/18) URL: https://ximera.com/posts/6168946ffd 公開日: 2019-09-18 著者: Ximera 株式会社キメラ(XIMERA,inc.)は、出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしている会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ## ニュースレター最新号の購読フォーム [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ブログではバックナンバーを掲載しています。ここからは【2019年9月18日号】の内容をご覧ください。 # 1.世界最大のメディアカンファレンス「ONA2019」開催 9月12日〜14日、デジタルジャーナリズムに関する世界最大級のカンファレンス「[Online News Association(ONA)](https://ona19.journalists.org/)」年次総会が米国・ニューオーリンズで開催されました。ONA結成から20周年を迎える今回は、フェイクニュース対策が大きなテーマとなりました。 講演のレポート記事が続々と公開されているほか、当日の様子はソーシャルメディアのハッシュタグ「#ONA19」で実況されています。デジタルメディアの最前線で交わされている議論をぜひチェックしてください。 ■[ONA公式サイト:動画や実況が掲載されています(英文)](https://ona19.journalists.org/resources/) ■[“メディア嫌い”がフェイクを支える、その処方箋と2029年の「人工メディア」:#ONA19 報告](https://news.yahoo.co.jp/byline/kazuhirotaira/20190917-00142933/) ■[All the Highlights From Facebook, Instagram, and CrowdTangle(英文)](https://facebookjournalismproject.com/article/ona19-facebook-instagram-crowdtangle/) # 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ■[「The Guardian」紙、YouTubeチャンネル登録者数100万人到達(英文)](https://www.theguardian.com/gnm-press-office/2019/sep/13/the-guardian-hits-1-million-subscribers-milestone-on-youtube) 9月13日、英国の大手新聞「The Guardian」は、自社が運営するYouTubeチャンネルの登録者数が100万人に到達したと発表しました。成功の秘訣は、ドキュメンタリーなど長尺の動画に若い視聴者の関心とエンゲージメントが集まったことだといいます。The Guardian紙は投げ銭の課金形式を採用しており、記事コンテンツは基本無料で閲覧できます。デジタルメディアが記事以外のコンテンツをマネタイズ装置として育てることができた成功例になりそうです。 ■[「価値は変化する」: 読者の反応、あらゆる手段で集めるパブリッシャーたち](https://digiday.jp/publishers/value-proxy-publishers-soliciting-feedback-readers-one-question-surveys/) サブスクリプションメディアが読者の反応をいかに収集しているかを報じた記事です。事例として、 米国のBUSINESS INSIDERとThe Athleticsが挙がっています。The Athleticsはハードペイウォール型(課金しないと記事を読めない)の課金形式にもかかわらず会員数が50万を超えるデジタルメディアです。彼らがいかに読者のロイヤルティを醸成しているか、その秘訣が伺えます。 # 3.国内パブリッシャーの最新ニュース ■[「 ブランデッドコンテンツ は『提灯記事』とは違う」: 日本のプロダクション現場担当者の告白](https://digiday.jp/publishers/branded_contents_useful_word/) ブランデッドコンテンツはメディアの重要な収入源のひとつではありますが、そのあり方は一意ではなく、現場が振り回されて疲弊したり、クオリティ次第ではメディアのブランド毀損を招いてしまったりすることもありえます。現場の担当者からの悲痛な声を報じた記事です。 ■[codoc株式会社、個人ブログで導入可能な記事・サブスクの販売サービスを開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000048306.html) ■[JBpressがイー・エージェンシーと業務提携 メディア企業へのソリューションサービス強化](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000036705.html) --- ## 「無料会員」「南京錠アイコン」のカラクリとは? 国内メディアのサブスクリプションを解説 URL: https://ximera.com/posts/ff94cb5684 公開日: 2019-09-11 著者: Ximera [User illustrations by Storyset](https://storyset.com/user) 株式会社キメラです。私たちは新聞社や雑誌社、放送局といったパブリッシャーに対して、SaaSの提供やコンサルティングでメディアビジネスを支援しています。 前回のブログ「[海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説](https://app.notion.com/p/5-2a2329c8292b4e0b983ae9f53c6f3b80?pvs=21) 」 はお読みいただけましたか? 今回は海外メディアの状況を踏まえ、国内メディアのサブスクリプション設計がどうなっているか、海外と比較しながらひも解いていきます。 ## 日本のサブスクリプションは、メンバーシップ型とハイブリッド型が大多数 上記のnoteで説明したように、海外メディアのサブスクリプションは、ペイウォール(課金の障壁)の種類で5つに分類できます。 1. フリーミアム型:記事は原則すべて無料で読める。追加の機能やコンテンツを有料提供 2. メンバーシップ型:特定の記事を閲覧するには会員登録が必要 3. メーター課金型:一定回数記事を読むとペイウォール表示。さらに読むには会員登録 4. ハイブリッド型:フリーミアム型とメンバーシップ型の組み合わせ 5. タイマー型:記事を公開してからの時間経過によってペイウォールを表示 海外ではこのようにさまざまなペイウォールがありますが、国内メディアのほとんどは「メンバーシップ型」か「ハイブリッド型」です。メンバーシップと組み合わせていないフリーミアム型や、無料で閲覧できる記事数に制限を設けるだけのメーター課金型を採用するメディアはほどんど見かけません。 例えば、毎日新聞社「[デジタル毎日](https://mainichi.jp/info/plan/)」やダイヤモンド社「[ダイヤモンド・オンライン](https://promo.diamond.jp/select_bks/)」 は有料会員だけがプレミアム記事を読めるメンバーシップ型です。 また、日本経済新聞社「[日経電子版](https://www.nikkei.com/r123/)」や朝日新聞社「[朝日新聞DIGITAL](https://digital.asahi.com/info/price/)」は、会員登録を求めた上で、プレミアム記事を無料会員も一定数読めるので、「メンバーシップ+フリーミアム」のハイブリッド型に分類できます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14298947/picture_pc_a3f341fe4617876c6cf5de60db080095.png?width=800) ## 手厚い無料枠、南京錠アイコン…国内メディアは「無料が基本、有料が特別」 国内メディアのハイブリッド型運用で特徴的なのが「非会員でも、記事公開から一定期間は無料で読める」「無料会員でも、一定数の有料記事を読める」など、購読料を支払わない読者にも手厚くしているケースがあることです。 記事タイトル横に「南京錠」アイコンを表示するのも、国内メディア独特の考え方です。会員でないと読めない記事をアイコンではっきり区別しており、コンテンツ制作でも「有料記事」と位置付けていることがほとんど。南京錠の中でも、無料会員は読める記事と有料会員でないと読めない記事でアイコンのデザインを変えているメディアもあります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14298963/picture_pc_2686ebfd693d62fa6d254f67ad1df50d.png) また、国内メディアのもう一つの特徴として、コンテンツにアクセスするまでのステップ数の多さが挙げられます。ペイウォール表示には会員登録やサブスクリプション契約と関係ない「ログイン」ボタンがかなり目立つ設計になっています。無料会員として登録しようとすると、名前とメールアドレスに加えて、生年月日、住所、職業の入力を必須にしているケースが見受けられます。読者にとってはステップ数が多くなり、登録までのハードルが高くなります。結果、会員登録するのはかなり前向きな意識を持つ読者に絞られてしまいます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14298986/picture_pc_b1541c738b2da4f19efecca031e2ba44.png?width=800) ## 国内メディアの会員制度は広告活用を意識した設計 こうした国内メディアの特性は、サブスクリプション設計の一環ではなく、広告ビジネス向けに作られた当初の会員制度に由来しています。 非会員が一定期間は無料で読めるのは、ページビューを稼ぎ、バナー広告の掲載機会やタイアップ広告(記事広告)への誘導機会を増やすためです。 また、一定数の有料記事を無料会員でも読めるようにしている代わりに、国内メディアは無料会員の登録時に年齢や職業、年収などの細かい属性を登録させることがあります。これは取得した属性を「部長以上の人に広告のメールを送信する」というターゲティングメールや「ホワイトペーパーをダウンロードした読者の属性を広告主に渡す」というリードジェネレーション(見込み顧客の連絡先取得)で収益化に生かしているからです。だからこそ無料でもログイン情報を取ることを重視してステップ数を増やしたり、「無料でも登録してくれてありがとう」という文脈で、有料記事を無料会員にも読めたりする設計にしているのでしょう。 ただし、ステップ数を増やすことは、本来はサブスクリプション契約を見込めるであろう読者を逃すことになりかねません。 ## 海外メディアの会員制度は「有料が基本、無料が特別」 海外メディアにおける無料会員は、匿名の読者をなんらかのコミュニケーションを取れる関係に変化させるためのマーケティングの一環という位置付けです。「有料で記事を読むのが基本で、マーケティングの一環で無料で読めるだけ」という位置付けをはっきりさせているのです。そのため、ペイウォールで無料会員か有料会員を選ばせるなど条件の選択を迫ることはなく、読者の行動を基に、無料会員に登録させるほうが相応しければ無料会員登録を勧め、有料会員にすべき状況であればサブスクリプションを具体的に提示します。無料会員として登録する場合も属性を細かく聞いてくることなく、非常に少ないステップ数で無料会員や有料会員になれます。 The New York Timesなど海外のサブスクリプション先進メディアで、南京錠アイコンを採用するところはほぼ見かけません。どの記事がどの条件でサブスクリプションが必要かをあえて明確にしておらず、最初は自由に読めていた記事も一定のメーターを超えると急に無料で読めなくなります。実際にThe New York Timesは2019年8月末に、[無料会員が読むことができる残り記事数のカウントダウン表示を廃止したことを発表](https://open.nytimes.com/we-re-launched-the-new-york-times-paywall-and-no-one-noticed-5cd1f795f76b)しました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14299003/picture_pc_09ff0a343e88154af0eb3c09167562a1.png?width=800) 国内メディアでよく見る「南京錠」アイコンはその逆です。「無料で記事を読むのが基本で、有料記事をどうしても読みたい人はサブスクリプションを契約して鍵を解除」というメッセージになってしまいます。記事が読めない理由をアイコンで誠実に伝える、のはわかりますが、海外メディアのようにアイコンとは異なるアプローチを検討する余地はあるはずです。 ペイウォール設計や会員制度設計、そして「南京錠」アイコン。国内メディアで見かけるサブスクリプションは、このように海外メディアと比較すると意外なほど違いがあります。読者が初めてメディアに接触したところから、最終的にサブスクリプションを契約するまでのプロセスを改善し続けているのがいまの海外メディアの状況です。国内でも現状の設計が本当に読者のためになっているか、仮説を立て、設計の変更などさまざまな施策を実施し続けることが重要です。 ## “当たり前”を疑い、他社を横目に見つつ自社PDCAを回す ここまで、国内のメディアにおけるサブスクリプションの特徴と、留意すべきポイントを解説しました。最後に、サブスクリプションを導入している、もしくは導入を検討しているパブリッシャーのみなさまにお伝えしたいことがあります。 すでにサブスクリプションに取り組んでいらっしゃるパブリッシャ―の方々は、「いつもログインしたままで自社メディアを開かない」ことに気を付けてみてください。これから導入を検討しているパブリッシャ―の方々は、国内の事例をそのまま真似るのではなく、国内外のサブスクリプションメディアに幅広く目を通し、どのようなペイウオールを意識するとよいでしょう。ペイウォールの設計思想は各メディアそれぞれです。「自分が考える当たり前」は意外と違っているものです。 しかし、日々の業務を遂行しながら、常にさまざまなメディアのサブスクリプション設計をウォッチし続けるのはなかなか大変です。私たちとしては、弊社のようなサブスクリプションに関する知見を持つパートナーと共に事業設計やPDCAを回していただくのがベストだと考えています。 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama|Sep 11, 2019|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## 国内パブリッシャーの模索〜コマース、代理店業、広告会社買収〜(2019/9/2) URL: https://ximera.com/posts/83c5917638 公開日: 2019-09-09 著者: Ximera 2019/09/09 株式会社キメラ(XIMERA,inc.)は、出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしている会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ## ニュースレター最新号の購読フォーム [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ブログではバックナンバーを掲載しています。ここからは【2019年9月2日号】の内容をご覧ください。 ## 1.海外パブリッシャーの最新ニュース ### Buzzfeed USが「MoodFeed」機能公開 気分に合わせて記事リストを提示 [BuzzFeedのMoodFeed機能は気分に合ったコンテンツを勧めてくれる | TechCrunch Japan](https://jp.techcrunch.com/2019/08/22/2019-08-21-buzzfeeds-new-moodfeed-recommends-content-based-on-how-youre-feeling/) 2019年8月22日、Buzzfeedが読者の気分に合わせた記事コンテンツを提供する機能を公開しました。読者は「curious」「stressed」「bored」「nostalgic」「joyful」「hungry」の6つの感情から自分の気分に合ったものを選択すると、おすすめの記事のリストが提示されるとのこと。レコメンドにはインテルのAIツールを導入しているそうです。過去の優良コンテンツを再掲し、読者のロイヤルティを高めるためにも活用できそうな機能です。 ### 豪メディア、TV広告収入の低迷が収益を圧迫(英文) [Seven West Media crashes to a $444 million loss as TV assets continue to lose value](https://www.abc.net.au/news/2019-08-20/seven-west-media-big-loss-as-media-assets-continue-to-lose-value/11431362) オーストラリアの民放大手「Seven West Media」の業績低迷が深刻です。2018/2019年度決算によると、同社はTV広告収入の低迷によって1年間で4億4400万豪ドルの損失を被り、同社の株価は史上最低の水準を推移しているとのこと。監査法人のKPMGも「視聴習慣の変化もあいまって逆境がさらに続く」とコメントしている点が興味深いです。日本も決して対岸の火事とはいえないニュースです。 ### <その他の注目ニュース> [葡・パブリッシャー連合、ようやく初のキャンペーンを実施:デュオポリーの対抗となるか? | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/portugals-publisher-alliance-makes-headway-albeit-slowly/) [PressReaderがNews360を買収しニュースプラットフォームのパーソナライズを目指す | TechCrunch Japan](https://jp.techcrunch.com/2019/08/23/2019-08-20-pressreader-acquires-news360/) [ワシントン・ポストとボックス、自社製 CMS 競争が過熱:アークとコーラスの戦い | DIGIDAY[日本版]](https://digiday.jp/publishers/cms-war-vox-media-washington-post-heating/) # 2.国内パブリッシャーの取り組み 今週は、国内パブリッシャーが記事コンテンツの一歩先の付加価値を求めようとするニュースが印象的でした。 ### 日経、世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ」「スパイクスアジア」国内代理店に [PressReaderがNews360を買収しニュースプラットフォームのパーソナライズを目指す | TechCrunch Japan](https://jp.techcrunch.com/2019/08/23/2019-08-20-pressreader-acquires-news360/) 2019年8月29日、日本経済新聞社は「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」および同事務局が開催するアジア最大級の広告祭「スパイクスアジア」の日本国内における代理店業務を9月1日から務めることを発表しました。広告賞への応募支援や、受賞作品の保存記録の作成を手掛けるとのことです。なお、それまでは株式会社東映エージエンシーが同広告祭の代理店でした。 ### メディアジーン、Amazonのセール期間中において、コンテンツコマースの最多売上と注文件数を達成 [メディアジーン、Amazonのセール期間中において、コンテンツコマースの最多売上と注文件数を達成 || メディアジーン | mediagene](https://www.mediagene.co.jp/2019/08/11863.html) 2019年8月20日、メディアジーンは、2019年7月15〜16日の「Amazonプライムデー」に合わせて掲載した記事を通じて数億円の売上と数万件の注文件数を達成し、過去最多売上を記録したと発表しました。2017年から「ギズモード・ジャパン」「ライフハッカー[日本版]」などの記事で読者に購買を誘引するコンテンツコマースが大きな実を結びました。海外のパブリッシャーでも、[Amazonプライムデーに合わせた記事コンテンツで収益を拡大している事例](https://digiday.jp/brands/amazon-prime-day-shows-important-commerce-revenue-getting-publishers/)がDIGIDAYで報じられています。 ### 朝日新聞社、広告プロダクション・イベント運営会社ディーイーシー・マネージメントオフィスをグループ会社化 [朝日新聞社、広告プロダクション・イベント運営会ディーイーシー・マネージメントオフィスをグループ会社化 | 朝日新聞社インフォメーション](https://www.asahi.com/corporate/info/12640138) 8月19日、朝日新聞社は広告プロダクション・イベント運営会社の「株式会社ディーイーシー・マネージメントオフィス(DEC)」をグループ会社としました。同社は自動車「レクサス」をはじめ、様々なクリエイティブ企画・制作を手掛けています。 DECは朝日新聞社が手がける各種イベントの運営拠点となるほか、広告企画・制作でも協働を進めるとのことです。今後、朝日新聞と組んでさらなる付加価値を生む取り組みが生まれるかどうか、注目です。 ### <その他の注目ニュース> [noteクリエイター支援プログラムに朝日新聞出版、少年ジャンプ+、日経BP、BuzzFeed Japan、Buisiness Insider Japanはじめ10パートナーが参画。合計53パートナーにな|note株式会社](https://www.pieceofcake.co.jp/n/n1552ad429379) --- ## 海外パブリッシャー、進む合併・再編(2019/8/19) URL: https://ximera.com/posts/0e62369c1a 公開日: 2019-08-30 著者: Ximera 2019/08/30 株式会社キメラ(XIMERA,inc.)は、出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしている会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ## ニュースレター最新号を購読フォームで申し込み [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ブログではバックナンバーを掲載しています。ここからは【2019年8月19日号】の内容をご覧ください。 ## 1.海外パブリッシャー、相次ぐ再編 今月は米国メディアの相次ぐ再編が報じられました。 ### 米メディア再編なお途上、CBSとバイアコムが合併合意 [https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48555470U9A810C1TJ2000/](https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48555470U9A810C1TJ2000/) 日経新聞が8月13日、米国3大テレビメディアのCBSと音楽チャンネル「MTV」やパラマウント・ピクチャーズを傘下に持つバイアコムの合併合意を報じました。新会社は世界180カ国以上でテレビの視聴契約を抱え、米国でも視聴シェアで首位となります。記事内では、ここ数年の米国内でのメディア再編にも触れています。 ### 米国の大衆紙『USAトゥデイ』発行元が買収、ソフトバンク運営会社の傘下へ(英文) [New Media to buy Gannett for $1.4 billion, creating biggest U.S. newspaper publisher](https://www.reuters.com/article/us-gannett-co-m-a-new-media-investment-g/new-media-to-buy-gannett-for-1-4-billion-creating-biggest-u-s-newspaper-publisher-idUSKCN1UV21L) 8月5日、米国の大衆紙『USAトゥデイ』発行元のガネットがニュー・メディア・インベストメント・グループに買収されました。同社はソフトバンク傘下のフォートレス・インベストメント・グループが所有するメディア企業です。ニュー・メディア・インベストメント・グループは複数の米国ローカル紙を運営しており、米国最大級のメディアネットワークを保有しています。ガネットはブランド名を残した上で、このメディア網に合併されることになります。 ### 米国で広がる「ニュース砂漠」(英文) [The Expanding News Desert |The Loss of Local News](https://www.usnewsdeserts.com/reports/expanding-news-desert/) 米国では新聞社の業績悪化によってローカル紙が失われる「ニュース砂漠(news desserts)」が社会問題となっています。過去15年間で全米の5分の1もの新聞が廃刊したという衝撃的なデータも存在します。大規模メディア同士が合併再編によって生き残りを懸ける一方で、静かに消えつつあるローカルメディアの存在も見逃せません。 ## 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ### ル・フィガロ、サブスク解約ユーザーを分析 再購読でロイヤルユーザーへ(英文) [How French newspaper Le Figaro finds value in more casual readers - Digiday](https://digiday.com/media/french-newspaper-le-figaro-finds-value-casual-readers/) フランスの新聞『ル・フィガロ』では、サブスク解約者について変わった捉え方をしているようです。 一度サブスクを解約したユーザーを呼び戻すことは難しいと考えられていますが、フィガロが購読と解約を繰り返すユーザーを分析したところ「解約と再購読までのスパンが短くなると、最終的には継続して有料登録する人が多い」という示唆が出ているそうです。具体的には一定期間で4回再登録をした読者は、ロイヤルユーザーとして残留する傾向にあるとのこと。「短期間でのサブスク解約は割引キャンペーンやプロモーションにつきもの」と諦めるのではなく、その後のリテンション施策も検討してみてはいかがでしょうか。 ### フィナンシャル・タイムズ、メルマガの「投票」機能でリテンション強化(英文) [To increase retention, The Financial Times is using newsletter polls - Digiday](https://digiday.com/media/increase-retention-financial-times-using-newsletter-polls/) 英国の経済紙『フィナンシャル・タイムズ』は、3月からメルマガ内に「投票」機能を設けています。質問内容は「ボリス・ジョンソンは英国のEU離脱を実現できると思うか?」など、ニュースレター内の記事に関連した内容を「Yes」「No」形式で問うもので、後日のニュースレターでアンケートの結果を発表しているようです。 具体的な開封率やクリック率は明かしていませんが、「投票」は記事を上回るクリック率だと報じています。記事のPVそのものにはつながらないかもしれませんが、メルマガも「メディア」の紙面だと捉えれば、読者のエンゲージメントを高める有効な施策だといえるでしょう。 ## 注目ニュース2:国内パブリッシャーの取り組み ### メディア不信と新聞離れの時代に、鋭い記事目立つ毎日新聞の「挑戦」 [メディア不信と新聞離れの時代に、鋭い記事目立つ毎日新聞の「挑戦」 | ハーバー・ビジネス・オンライン](https://hbol.jp/199193) ハーバー・ビジネス・オンラインによる取材記事です。法政大学の上西充子教授が、毎日新聞統合デジタル取材センターの齊藤センター長に対し、毎日新聞のデジタルメディア運営について聞いています。デジタルは紙幅を気にせずに書くことができる点で記者のモチベーションにつながっているといいます。毎日新聞では今春から記事の評価を変更したそうで、PVに加えて「有料会員に繋がるような読み方をしてくれた読者の数が多かった記事」のランキングを編集局に共有しているとのこと。ニュースルーム全体でデータに向き合う姿勢が伝わります。 ### ログリー、メディア向けユーザー育成支援ツール「Loyalfarm」に再訪問ブースト機能を搭載 [ログリー、「Loyalfarm」にプッシュ通知コミュニケーション機能を搭載 メディアへの再訪問を促進](https://markezine.jp/article/detail/31749) ログリー株式会社は、同社が提供するメディア向けユーザー育成支援ツール「Loyalfarm(ロイヤルファーム)」において、来訪者ごとにパーソナライズされたブラウザページのプッシュ通知コミュニケーション機能を搭載しました。訪問頻度や好みの閲覧カテゴリーに応じて通知内容を変更できるほか、開封率によって配信時間帯を調整することも可能とのことで、ユーザーのエンゲージメントを能動的に向上させる機能として活用を見込めそうです。 --- ## 海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説 URL: https://ximera.com/posts/7ff45a261a 公開日: 2019-08-28 著者: Ximera [User illustrations by Storyset](https://storyset.com/user) # 海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説 こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしています。 パブリッシャーは広告掲載収益だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られています。こうした状況下で期待が高まっているのが、デジタルメディアのサブスクリプション化(=サブスクリプション:有料購読課金化)です。実際にコンサル会社・デロイトのレポート「[Digital media: the subscription](https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/global/Images/infographics/technologymediatelecommunications/gx-deloitte-tmt-2018-digital-media-report.pdf)(PDF)」によると、2012年に収入の9割を広告が担っていた媒体も、2020年までにサブスクリプションが収入の半分を占めるようになると予測されています。しかし日本でいざサブスクリプション化に取り組もうとしても、国内に事例が少なく具体的なイメージを持ちにくいのが現状かもしれません。 そこで今回は、海外の事例を挙げながら をご紹介していきます。 ## デジタルメディアのサブスクリプションモデルは「5+1」 まず、デジタルメディアのサブスクリプションにはどのようなモデルがあるのでしょうか? サブスクリプションビジネスの成功のためには、ペイウォール(課金の障壁)をどこに、どんな基準で設けるかが重要です。 海外の事例を見てみると、以下のように分類できます。 ここから、それぞれ詳しく解説します。 ## 1.フリーミアム型 フリーミアムとは、サービスを無料で利用できる一方、追加の機能やコンテンツは有料で提供するモデルです。代表例としては米国のニュース放送局CNBCが提供する有料プラン「[CNBC PRO](https://www.cnbc.com/application/pro/)」があります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956777/picture_pc_76c9564fe6c73c89504c642300e01e0f.jpg?width=800) CNBCは無料でニュース記事や動画を閲覧できますが、PRO版は経済界の有識者によるレポートや、ニュース動画の巻き戻し・一時停止機能を追加で提供しています。 オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所の2019年の調査「[FACTSHEET – Pay Models for Online News in the US and Europe: 2019 Update](http://www.digitalnewsreport.org/publications/2019/pay-models-2019-update/)」によると、フリーミアムは新聞の33%、週刊誌・ニュース雑誌の43%に採用されている、最も人気の形式です。メディアのサブスクリプションに限らず、音楽配信のSpotifyやビジネスチャットツールのSlackなど、さまざまな業界で採用されているモデルでもあります。 一方、ペイウォール(課金の障壁)をどの機能やコンテンツに設けるかを見誤ると、いくら運用しても収益につながらないリスクもあることに注意が必要です。読者ロイヤルティの高いコンテンツを特定したり、ユーザーヒアリングなどを実施したりして、課金のラインを見極めることが必要です。 ## 2.メンバーシップ型 特定の記事を閲覧するために会員登録を求めるのが「メンバーシップ型」です。代表例としては米国のニュースメディア「[DAILY BEAST](https://www.thedailybeast.com/membership)」があります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956837/picture_pc_bf7896852207421d0f7b382023bacb0a.jpg?width=800) そして、メンバーシップ型の派生として近年注目を集めているのが、「ハードペイウォール型」のサブスクリプションモデルです。ハード(強固な)ペイウォール(課金障壁)という名の通り、有料購読をして初めて記事を閲覧できる形式です。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956849/picture_pc_18a7d160889db26c685b4ca6bb026f0c.jpg?width=800) 代表例としては、英国の新聞[「The Times」のデジタル版](https://globalstore.thetimes.co.uk/)や、スポーツ特化のデジタルメディアとして米国、カナダ、英国に拠点を広げている「[The Athletic](https://theathletic.com/)」があります。 ハードペイウォールはロイヤルティの高い読者を囲い込みやすい、広告掲載に依存せずに運営できるなどのメリットがあります。実際に「The Athletic」は、ハードペイウォールで直近の成功を収めたメディアの一つです。同媒体はジャーナリズムを掲げ、広告掲載を一切行わないかわりに有料購読を求めています。紙媒体を持たず、2016年に始まった新興メディアにもかかわらず、[2019年7月に購読者が50万人を突破](https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-07-29/the-athletic-sports-news-site-hits-500-000-subscribers)しています。 一方で、フリーミアム型や通常のメンバーシップ型のように無料で記事を試せないため、新規読者の獲得が課題になります。メディアのブランドが確立しており、マーケティング施策が設計されていることが前提になっているサブスクリプションモデルであることに留意が必要です。 ## 3.メーター課金型 さて、「The Athletic」のニュースソースとして参照した金融情報メディア「[Bloomberg](https://www.bloomberg.com/)」もサブスクリプションを実施しています。Bloombergは無料で閲覧できるコンテンツ数を定め、閲覧の上限を超えたユーザーに有料購読をすすめる「メーター課金」の形式を採用しています(Bloombergの場合は1日に閲覧できる記事本数に上限を定めています)。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956863/picture_pc_5aaa85229e4ed81cc89d7523051a59c8.jpg?width=800) Bloombergの記事を何本か読んでいると本文にマスクがかかり、「無料閲覧の上限に達しました」というポップアップ(上記赤枠)とともに課金のオファーが表示されます。 複数の記事を回遊している読者に対してオファーを行うため、購読の可能性が高い層へアプローチしやすい一方、閲覧上限数を多く設定しすぎたり、コンテンツの無料閲覧枠が復活するまで読者が待てるような内容の場合は、課金のモチベーションを喚起しにくいデメリットがあります。 短時間で大量の記事を参照する必要のあるメディア(リサーチ需要、更新される速報、連載の一気読み)で価値を発揮するでしょう。独自性の高いコンテンツやデータを保有しているメディアに向いたモデルです。 ## 4.ハイブリッド型(フリーミアム+メンバーシップ) 上記の「フリーミアム型」「メンバーシップ型」「メーター課金型」を組み合わせた、ハイブリッドなサブスクリプション形式も存在します。代表例としては「[New York Times](https://www.nytimes.com/)」です。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956873/picture_pc_d0b0c86ec84feae3cee481441a281dba.jpg?width=800) New York Timesは無料で閲覧できる記事もありますが、一部の限定記事は会員のみ閲覧可能です。限定記事は無料会員は上限付き(上記赤枠)で、有料会員は上限なしで記事を読めます。日本で同じハイブリッド型を採用している代表例が、[日本経済新聞(日経電子版)](https://www.nikkei.com/)です。 New York Timesはメディアのサブスクリプションビジネスを語る上で欠かせない成功例のひとつです。[2019年第2四半期の決算](https://investors.nytco.com/investors/investor-news/investor-news-details/2019/The-New-York-Times-Company-Reports-2019-Second-Quarter-Results/default.aspx)によると、2019年上半期の収入8.7億ドルのうち61.8%をサブスクリプションが占めています。デジタル版のみの購読者は前年比30.7%増の378万人と順調に伸び続けています。 ハイブリッド型のサブスクリプションモデルは柔軟な課金設計ができるがゆえに、条件設定の難易度が高くなるのが懸念点です。自社メディアのパフォーマンスデータや他社の事例をもとに、最適な条件に至るまでの試行錯誤を重ねなければなりません。 なお、New York Timesは2018年下旬に[サブスクリプション方針の転換](https://digiday.jp/publishers/looking-for-the-next-tier-of-subscribers-the-ny-times-plans-to-try-a-flexible-meter/)を図っており、読者数や収益をにらみながら割引や課金メーターをチューニングしています。現状の成功に甘んじずにビジネスの模索を続ける姿勢もまた、New York Timesの成功要因といえるかもしれません。 ## 5.タイマー型 近年じわじわと導入が増えているのが、記事を公開してからの時間経過によってペイウォールを表示する「タイマー型」のサブスクリプションです。 ドイツで日刊新聞を発行するMadsackは、同社が運営するニュースメディアにおいて時間制限つきで記事を無料公開しています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39600481/picture_pc_d09fdd1d8da19ec7410e24fa8bf3c967.png?width=800) 「MADSACK+」と名付けられた有料プランは、記事公開後の1時間だけ無料でコンテンツを閲覧でき、それ以降は週2.49ユーロ(約307円)のプランに入会する必要があります。この施策によって、同社はわずか6ヶ月間で年間目標の半分にあたる[1万2500名の新規購読者を集客できた](https://www.inma.org/practice-detail.cfm?zyear=2020&id=905BB11A-8FDC-4930-8E23-F681BBFEE2AC)といいます。 時限つきでペイウォールを開放すると、コンテンツを無料で閲覧したい読者は最新記事を読むために頻繁に訪問するようになります。メディアやウェブサービスに対する愛着度(=ロイヤルティ)は、サービスの利用頻度が高まるほど向上することが分かっています。目の前の有料購読者を獲得するだけでなく、将来的な有料購読者を増やすことに寄与する体験設計だといえるでしょう。 ## 番外:投げ銭型 番外編として、「投げ銭」形式の課金をオファーしている事例を紹介します。英国の大手新聞「[The Guardian](https://support.theguardian.com/uk/support)」は広告を取り除くことができるフリーミアム型の有料購読メニューに加えて、有志による寄付を受け付けています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956924/picture_pc_14de72b2cc87a05c777ddaf28ec45e13.jpg?width=800) The Guardianは2016年にこうした取り組みを始め、投げ銭モデルによって経営不振から脱しつつあります。2018年にはこうした実績を受けて「DIGIDAY アワード・ヨーロッパ(Digiday Awards Europe)」で[パブリッシャー・オブ・ザ・イヤーに選ばれています](https://digiday.jp/publishers/guardian-improbably-put-way-path-profits/)。2018年11月時点で100万人以上のユーザーがThe Guardianにお金を払ったと[発表しており](https://www.theguardian.com/media/2018/nov/05/guardian-passes-1m-mark-in-reader-donations-katharine-viner)、2019年中に損益分岐点を迎えると見込まれています。 課金意向のあるユーザーから資金を集めるというクラウドファンディング的な課金形式なので、例えば本格的なペイウォールを設置する前に「読者が現在のコンテンツに対してどれくらい対価を払うか」を探るために試験的に導入する方法もあり得るかもしれません。 以上、大まかなサブスクリプションの形式をご紹介しました。各社が工夫をこらして、新規ユーザー獲得と収益化のバランスを探っていることが分かります。 ## 記事だけではない。サブスクリプションコンテンツ事例 続いて、サブスクリプションを実施しているデジタルメディアが、記事以外に何を課金コンテンツとして提供しているのかを見てみましょう。 ### オーソドックスなのはデジタル購読を狙った「紙+デジタル」 最もイメージしやすいのは、紙媒体との組み合わせでしょう。New York Timesと並んでサブスクリプションの成功例に挙がる「[The Economist](https://www.economist.com/subscribe)」もその一つです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956947/picture_pc_93823e1163483708c3aaa9f6f566a5d4.jpg?width=800) 特筆すべきは、紙媒体とデジタルの組み合わせプランが格安になるよう価格を設定しており、かつデジタル購読が最も安価になっていることです。紙媒体を「おとり」のオファーとしてデジタル版のお得感を喚起し、購読を促進しています。この仕掛けは、行動経済学者ダン・アリエリー氏の著書『予想どおりに不合理』でも語られています。 ### DIGIDAYをヒントに また、記事コンテンツ以外の付加価値を探るうえでは、DIGIDAYが参考になります。[DIGIDAY UKの有料購読プラン](https://digiday.com/subscribe/)では、以下のように多種多様なコンテンツを提供しています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956978/picture_pc_2ed6483fecef5526c2dbce4b17834c98.jpg?width=800) 自社開催のリアルイベントや読者同士のコミュニティなど、メディアのブランドを活かしたコンテンツ展開を行っている事例です。また、「早期アクセス権」も、手間をかけずに付加価値を与えやすい好例でしょう。 ### メディアの独自アセットを「学習コンテンツ」に 米コンデナストの「[Golf Digest](https://www.golfdigest.com/story/all-access)」は、動画でゴルフレッスンやプロからのアドバイスを受けられます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956989/picture_pc_6a3af28f04cb102fc517e24ccfe923fa.jpg?width=800) 専門誌など、独自の知識や人脈を保有しているメディアなら、こうしたアセットを「学習コンテンツ」としてサブスクリプション化できる可能性があります。 自社のメディアにも、価値を生み出せそうなアセットがないか棚卸ししてみてはいかがでしょうか。長期連載のコンテンツや独自データ、会員組織などが意外な課金コンテンツに生まれ変わるかもしれません。 ## サブスクリプションビジネスの注意すべき「落とし穴」 最後に、デジタルメディアのサブスクリプション化を検討しているみなさまにお伝えしたいことがあります。日本のパブリッシャーの中で高い注目を集めるサブスクリプションビジネスですが、実は落とし穴があります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/13956997/picture_pc_89d560d3aaab91375f43a93fc494a4d2.jpg?width=800) 一体どういうことでしょうか?以下で、詳しく解説していきます。 ### 1.サブスクリプションは「今すぐ」始めねばならない サブスクリプションは、決して今ある記事コンテンツをすぐに収益化できる「魔法のビジネス」ではありません。 事前のビジネス設計が不十分な状態でサブスクリプションを導入しても、単なる「値上げ」とみなされかえって読者離れを加速してしまったり、メディアのブランドを損なったりするリスクがあります。以前に弊社の[ニュースレター](https://note.com/ximerainc/n/n172d9b234125?creator_urlname=ximerainc#CmFtz)で紹介した通り、米国の新聞社にはペイウォールを設けたことで売上が12%減少してしまった媒体も存在します。コンテンツの独自性があり読者の回遊率が高い媒体でない場合は、ペイウォールが読者の離脱を招いてしまうのです。 日本も他人事とはいえない状況です。現在、日本国内のデジタルメディアの多くは無料で全記事を閲覧でき、広告掲載を収益源としているビジネスモデルです。[前回のnote](https://note.com/ximerainc/n/n358481e86d2a?creator_urlname=ximerainc#5f38f)で詳しく述べていますが、ページビュー数を増やすことで広告収入を得ようとするメディア設計によって読者のエンゲージメント低下を招いているおそれがあります。 また、トラフィックの構成がソーシャルやニュースアプリに依存しているメディアの場合は、読者がサイト内を回遊せずに離脱してしまい、メディアの認知やブランドを十分に形成できていない可能性があります。 急いでサブスクリプション化を検討する前に、・現状のメディアのブランドが育っているか・現状のコンテンツが課金に値するものか・サブスクリプション化した場合、どんなユーザーが、どれくらい課金してくれるかをデータで可視化し、メディアのブランド価値を高めるコンテンツを生み出す体制づくりが肝要です。ページビューやコンバージョンだけを指標として追うのではなく、メディアに対する読者のエンゲージメントも一緒に育てていくことが必要なのです。 ### 2.サブスクリプションを始めたら広告掲載はNG 「広告に頼らない収益源」という言葉はサブスクリプションのメリットとして挙がりますが、この言葉に引っ張られすぎないよう留意しましょう。 サブスクリプションを始めたからといって既存の広告掲載をすぐに辞めなければならないわけではありませんし、むしろすぐに広告掲載を中止するべきではないと私たちは考えています。上記でご紹介してきたサブスクリプションの事例でも、広告掲載とサブスクリプションを両立しているメディアが多々あります。 購読者数を積み上げ、支払いを継続してもらうことで投資回収を行うサブスクリプションは、長期的な投資が必要なビジネスモデルだということは言うまでもありません。そのためにも、足元の収入を広告掲載で確保した上で、徐々にサブスクリプション主体へとビジネスを移行していくとよいのではないでしょうか。 紙媒体の新聞や雑誌を考えてみれば、読者への有料販売に加えて、紙面にも広告が掲載されていますよね。デジタルメディアでも、同じ手法をとることは非現実的ではないことがお分かりいただけるかと思います。 ## サブスクリプション成功のコツ:素早くプランニング、実行はじっくりと では、サブスクリプション化を進めるためには結局どうしたらいいのでしょう? 「プランニングは素早く、実行はじっくりと」行うことがおすすめです。 ここまでご紹介してきた通り、サブスクリプションには様々な形式があり、課金の対象になりうるコンテンツも多種多様です。サブスクリプション化にあたっては、自社のメディアの現状をしっかりと把握した上で、最適なビジネスプランを設計していかねばなりません。 だからこそ、積極的な情報収集や有識者との接触は、ぜひ今からでも行っていただきたいと思います。 私たちキメラも、そうしたソリューション提供企業の一つです。「メディアのサブスクリプション化・収益化を検討している」「もっと詳しい話を聞きたい」という企業様は、ぜひお気軽にキメラまでお問い合わせください。 じっくりと課題感を伺った上で、メディア収益化をお手伝いするパートナーとして並走させていただきます。 Akiko Nakayama|Aug 28, 2019|[サブスク・メディアビジネス解説](/category/media-business) --- ## 明暗分かれる、新聞社のサブスク戦略(2019/8/5) URL: https://ximera.com/posts/6e55a74185 公開日: 2019-08-19 著者: Ximera 2019/08/19 株式会社キメラ(XIMERA,inc.)は、出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、SaaSの提供やコンサルティングを通じたビジネス支援をしている会社です。 弊社のニュースレターでは、パブリッシャーの方々に向けて国内外の注目ニュースをご紹介するほか、キメラの最新動向を隔週でお届けしています。 ### ▼ニュースレター最新号を購読フォームで申し込み [http://eepurl.com/gy_OBr](http://eepurl.com/gy_OBr) ブログではバックナンバーを掲載しています。ここからは【2019年8月5日号】の内容をご覧ください。 ## 1.海外パブリッシャーのサブスク動向 ### ■明暗分かれる、新聞社のペイウォール設置 ハーバード・ビジネス・スクールは、ウェブ媒体にペイウォール(課金障壁)を設けることは、パブリッシャーにとって諸刃の剣になりうるとの論考を発表しました。 米国の新聞社79社を調査したところ、電子版を有料課金にしてペイウォールを設けたことにより、売上高が24%増加した媒体もあれば12%減少した媒体もあるそうです。コンテンツの独自性があり読者の回遊率が高い媒体であれば、ペイウォールによって印刷媒体の需要増が期待できますが(ニューヨーク・タイムズなどが成功例の一つです)、そうでない媒体の場合はペイウォールが読者の離脱を招いてしまうことが客観的なデータで示されました。サブスクリプションの導入にあたっては、その前に読者のエンゲージメントをしっかりと高めることが重要です。 [Are Paywalls Saving Newspapers?](https://hbswk.hbs.edu/item/are-paywalls-saving-newspapers) ## 2.海外パブリッシャーの最新ニュース ### ■ニューヨーク・タイムズ、フェイクニュース対策でブロックチェーン利用を認める [ニューヨーク・タイムズ、フェイクニュース対策でブロックチェーン利用を認める | coindesk JAPAN | コインデスク・ジャパン](https://www.coindeskjapan.com/15447/) 今年7月、ニューヨーク・タイムズは、ブロックチェーンを利用して報道写真の真正性を証明するプロジェクトを開始しました。写真や動画がいつどこで撮影されたのか、誰が撮影したのか、編集や掲載された方法に関する情報を含むニュース素材の「文脈的メタデータ」をブロックチェーン上に保管することを目指しており、2019年後半まで概念実証(PoC)を実施します。テクノロジーによってフェイクニュースを防ぐ試みは定期的に情報公開され、報告書の公開も予定しています。最新の情報はプロジェクトの公式サイト[「The News Provenance Project」](https://www.newsprovenanceproject.com/)で発表されるようです。 ### ■スポーツに特化した定期購読メディア「The Athletic」購読者数が50万人突破 [](https://subscribejapan.jp/the-athletic-subscribers/) 7月30日、米国発のスポーツニュースに特化したサブスクメディア「The Athletic」は、購読者数が50万人に到達したことを発表しました。2016年に創業された「The Athletic」はデジタル版限定で、広告なしの有料購読メディアです。購読料は月額約10ドルと決して安くありませんが、紙媒体を母体としないメディアがここまで購読者を集めたという点で注目に値するニュースです。現在では米国とカナダの約50都市で展開をしており、数百人もの現地新聞社のスポーツ報道者が報道を手がけています。8月には新たにUK版もリリースし、[有料購読の必要性を説く声明](https://theathletic.com/1116415/2019/08/05/why-the-athletic-has-a-paywall-and-why-you-should-subscribe/)も掲載しています。 ## 注目ニュース2:国内パブリッシャーの取り組み ### ■日経ビジネスで新機能「有料記事のギフト」開始 [新機能、有料記事のギフトであなたのチームが強くなる](https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00062/071100001/) 7月16日、日経ビジネス電子版は非会員に有料記事をプレゼントできる「ギフト機能(β版)」を追加しました。有料会員は有料記事をシェアできるURLを月に3本まで発行でき、URLを発行後の24時間は無料で記事を閲覧できます。URLは不特定多数がアクセスでき、ログイン不要で記事を閲覧できるようです。インフルエンサーが有料記事をギフト機能で拡散し、新規読者が増える…なんてことも期待できそうです。 ### ■小学館×集英社×Fringe81がマンガアプリの広告プラットフォームを共同開発 [小学館と集英社とFringe81、マンガアプリ広告の共同プラットフォーム事業を開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000012781.html) 小学館と集英社は、アドテク企業のFringe81とともに、出版社のマンガアプリに対してワンストップで広告の出稿・運用ができるプラットフォーム「MangaAdPlatform」を3社で共同開発し、8月に提供開始すると発表しました。掲載メディアや広告位置を開示することで広告主の安心感を担保するだけでなく、マンガアプリ内の各種データ(閲覧作品等)を機械学習にかけたターゲティングも実施できるそう。コンテンツ提供者の目線を取り入れた広告プラットフォームとして、この先が非常に楽しみです。 # 4.キメラ最新情報 ### ■中国のニュースアプリは膨大なページビューを粛々と生み出す――グローバルのパブリッシャーが活用する方法 [中国のニュースアプリは膨大なページビューを粛々と生み出す――グローバルのパブリッシャーが活用する方法](https://blog.chartbeat.jp/posts/chinese-news-app-topbuzz-referring-millions-pageviews/) 米国発の記事コンテンツ分析ツール「Chartbeat」の公式ブログを翻訳・公開しました。今回は、動画投稿サービス「TikTok」で有名なByteDance社が運営するキュレーションアプリ「TopBuzz」の急成長を紹介しています。 TopBuzzは日本向けのブランド強化に取り組んでいるそう。これからSmartnewsやGunosyのように、記事のトラフィックリソースとして注目が高まるかもしれません。 ※株式会社キメラは、国内総代理店としてChartbeatを提供しております。Chartbeatの詳細は[案内ページ](https://chartbeat.jp/)よりご覧ください。 --- ## ダイヤモンド社に学ぶ、紙×Webを成功に導く組織づくりのヒント URL: https://ximera.com/posts/7b91333805 公開日: 2019-08-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 2019年9月25日、弊社主催のパブリッシャー向けイベント「PVだけに頼らないKPIって?「人が集まる」「読まれる」メディア戦略」を開催しました。イベントレポートとして当日の様子を前後編でお届けします。 多くのパブリッシャーがデジタルシフトに取り組む昨今ですが、デジタルメディア運営に関する悩みとして多く聞かれるのが「KPI設計」です。PV(ページビュー)など、特定の指標に偏らずにメディアビジネスを成長に導くためには、どのようなKPIを設定すればいいのでしょうか? 今回は4社のパブリッシャーに登壇いただき、デジタルメディアのKPI設計に必要な視点をお聞きしました。 # 第一部:基調講演「紙×Webを成功に導くための組織づくりのヒント」 ダイヤモンド社は、2019年6月から自社のデジタルメディア「ダイヤモンド・オンライン」で有料購読(サブスクリプション)を開始しました。そのための体制づくりとして、同年4月に紙媒体の「週刊ダイヤモンド」とWeb媒体の「ダイヤモンド・オンライン」の組織を一つの編集部へと統合したといいます。パブリッシャーでは異例の組織編成ですが、現在はWebと紙の強みを生かし合い、コンテンツの付加価値化に成功しているといいます。組織・KPI設計において、成功の秘密は一体どこにあるのでしょうか。 今回のサブスクリプション導入のキーパーソンである、同社ビジネスメディア編集局局長の麻生祐司さんにお話を伺いました。弊社シニアメディアアーキテクトの生崎(いくざき)が聞き手を務めました。 # ダイヤモンド社に「3度目の出戻り」 ダイヤモンド・オンライン黎明期のメンバー ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15412941/picture_pc_38894313653b9e5c092490cb25e7b6e5.jpg?width=800) 右:ダイヤモンド社 麻生さん。麻生さんは現在「週刊ダイヤモンド」「ダイヤモンド・オンライン」「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」などの発行人を務める 左:キメラ生崎 生崎:本日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介とご経歴からお聞かせください。 麻生:実は私、ダイヤモンド社に3度の出戻りをしています。とはいえジョブホッパーというわけではなく、その合間に勤めたことがある会社は主にロイター通信(現トムソン・ロイター)だけです。 2度目にダイヤモンド社を退社した時には、もうダイヤモンド社に戻ることはないと思っていました。しかし、私がダイヤモンド社で「やりたかったこと」を実現するために戻ってきてほしいと声がかかり、3度目の出戻りを決めました。現在は「週刊ダイヤモンド」「ダイヤモンド・オンライン」「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」をはじめとするビジネス媒体の発行人のほか、「ダイヤモンド・オンライン」上で展開しているサブスクリプションサービス「ダイヤモンド・プレミアム」の事業責任者を務めています。 麻生さんが3度目の出戻り後に実行した「やりたかったこと」は以下の3つです。 ・半世紀以上続いた編集組織の再編 ・サブスクリプションモデルの導入とビジネス部門の再編 ・記者、編集者、編成者の評価目標の見直し それぞれお話を伺っていきました。 # 紙とWeb、違うベクトルを向いていた組織を1つの編集部にまとめあげた 麻生:元々、紙媒体の「週刊ダイヤモンド」、Web媒体の「ダイヤモンド・オンライン」は別々の編集部で運営されていました。主に記者が記事を書いてコンテンツを作る紙媒体と、外部の著者による連載や単発記事を中心にページビューを獲得するWeb媒体とが、共通の目的を持たずに、別々に存在していたのです。私の着任から半年後の今年4月、この2つの組織を統廃合し、1つの「ダイヤモンド編集部」としました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15436723/picture_pc_ed2775464758af4ea33021554a18b36d.jpg?width=800) 新生『ダイヤモンド』編集部の組織概要。記者集団デスクが紙とWebをつなぐ要に 麻生:『ダイヤモンド』は元々、企業・産業界の出来事を数字やデータで語る経済雑誌として創刊されました。しかし、近年はコンテンツが一般紙的になり、本来ダイヤモンドがやるべきことからは離れてきていました。組織的にも、せっかく証券アナリストの資格保有者や企業・産業・経済分析に長けたジャーナリストが沢山いるのに、その能力を活かし切れていない……という状況を変えたいと思っていました。 そこで、麻生さんは2019年4月以降、サブスクリプションモデルの導入を控えて、組織の再編を断行しました。特に心がけたのは、データを記事制作に生かすことができる体制づくりだったといいます。 麻生:データアナリストやグロースハッカーなど、サブスクリプションの推進力となる人材を編集局内に配置したことで、編集部が直接読者と向き合うようになりました。記者たちも面白がってデジタル部隊にいろいろと質問しながら、コンテンツ作りに数字を生かすようになってきましたね。 実際にダイヤモンド・オンラインは、キメラが提供する読者エンゲージメント分析ツール「[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)」を導入しています。編集部の大きなディスプレイにダッシュボードを映し、リアルタイムで更新される読者の動向を常に把握できるようにしています。 # 「重要なのは組織目標の共有と個人目標のテーラーメイド」記者・編集者の評価基準を見直し ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15412987/picture_pc_872e43b833b800c057a29c2bca7fb2c1.jpg?width=800) 麻生さんは「部員には、個人のステージに合わせて目標をテーラーメイドすることが不可欠」と、中長期キャリアプランを重視する イベントのテーマであるKPIについてもお話しいただきました。麻生さんはビジネス上のKPIにとどまらず、記者・編集者・編成者の目標設定方針も見直したといいます。 生崎:2019年6月のサブスクリプション開始にあたり、KPIはどう設定しましたか。 麻生:KPIの詳細はお伝えできませんが、複数の収益項目を念頭に、道しるべとなる評価指標を設定しました。それらは、編集長と、紙・Web・記者それぞれのチームリーダーに共通の目標として追わせるようにしました。紙とWebで数字の比重は変えていますが、編集部全体が同じ方向を向くために共通の指標を置いています。副編集長以下の部員に対しては、ページビューやサブスクリプション会員の獲得数での個別競争的な評価は行わないことにしました。編集長や副編集長が各人と面談をし、担当分野や得意なテーマに沿って目標とキャリアプランを作っています。 # サブスクリプションを契機に「紙×Web」の新たなKPIを設定 生崎:興味深いです。KPIの達成はマネージャーが責任を負い、部員一人一人に対しては成長を促す評価設計にしたのですね。とはいえ、編集長は売上をにらみながらコンテンツに対する責任も負う役割です。コンテンツの方針については、どのように評価を行っていますか。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15436740/picture_pc_8d016e9e9ad2d4a62b56b5e605785aac.jpg?width=800) 4つの中心にある「Sweet Spot」の狙い具合をKPIとすることでコンテンツの質も向上する 麻生:編集長には、(1)書店販売(2)紙媒体の定期購読(3)デジタルサブスクリプション(4)サイトトラフィック の4つが交わる「Sweet Spot」に入るようなコンテンツ作りを優先してもらいます。この「Sweet Spot」をどれだけ狙えているのかが、第一の評価ポイントになります。もっとも、Sweet Spotを外れるコンテンツを否定しているわけでは決してありません。ただ、その場合は、そのコンテンツは4つの狙いのうち、どれに重きを置いているのか、熟考を重ねるように伝えてあります。 # <基調講演まとめ> 麻生さんのお話のポイントは以下の4点でした。 ・サブスクリプションを皮切りに紙チームとWebチームのベクトルを統一 ・ビジネス部門を編集局内に置き、数字を活用したコンテンツ作りを推進 ・ビジネス上のKPIは編集長・リーダーが責任を負い、記者との役割分担を明確化 ・コンテンツ作りは複数の目標の交差点を狙える「Sweet Spot」を優先 サブスクリプションに耐えうる質の高いデジタルメディアを一朝一夕で生み出すことは困難です。適切なKPIを設定するだけではなく、KPIを追うための組織づくりまでをトップダウンで行うことも大切だといえるでしょう。 後編はパネルディスカッションの様子をお届けします。以下のリンクからぜひご覧ください。 [現場目線で学ぶ、PVだけに頼らない「人が集まる」「読まれる」メディアの作り方](https://app.notion.com/p/PV-b8ed90edff524106b87c151d5982e26f?pvs=21) --- ## 現場目線で学ぶ、PVだけに頼らない「人が集まる」「読まれる」メディアの作り方 URL: https://ximera.com/posts/e06687c9d8 公開日: 2019-08-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 2019年9月25日、弊社主催のパブリッシャー向けイベント「PVだけに頼らないKPIって?「人が集まる」「読まれる」メディア戦略」を開催しました。イベントレポートとして当日の様子を前後編でお届けします。 今回は後編のパネルディスカッションの様子をお送りします。メディアジーン・日本ビジネスプレス・時事通信社でメディアに向き合っているお三方から、現場目線のお話をお聞きしました。 # 第二部:パネルディスカッション「PVだけに頼らない『人が集まる』『読まれる』メディアの作り方」 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15997170/picture_pc_0c6a7f03643dc733b6e6d9ba4d378408.jpg?width=800) 会場のキャパシティの限界まで、たくさんのパブリッシャーの方々に集まっていただいた 第二部のパネルディスカッションでは、より実務的なトピックとして、KPI管理やコンテンツ制作との連携について深掘りしました。登壇者は株式会社メディアジーンの金沢大輔さん、株式会社日本ビジネスプレス(JBpress)の工藤麻里さん、時事通信社の春山達也さんのお三方です。モデレーターを務めたのは、弊社メディアストラテジストの中山です。 中山:まずは自己紹介をお願いいたします。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15997196/picture_pc_28ba65bfb1335fe058e12dc235d78e77.jpg?width=800) 写真左:メディアジーン金沢さん 写真中央:JBpress工藤さん 写真右:時事通信社春山さん 金沢:株式会社メディアジーンの金沢です。弊社は「ギズモード・ジャパン」や「Business Insider Japan」などのメディアを運営しています。私自身はビジネスグロースユニットとメディア開発ユニットの部門長を担当しています。 工藤:JBpressの工藤です。Webアナリストとして、分析ツールを使ってメディアを成長させていく仕事をしています。編集部と向き合いながら「どの数値が上がっているのか」「何が成長のドライバーになっているのか」を伝えています。 春山:時事通信の春山です。2018年の7月から編集局のデジタル編成部長をしていますが、経歴の大半は金融・経済の記者です。時事通信のデジタルメディアの記事編成や数字の管理をしています。これまでの時事通信はYahoo!ニュースからのトラフィックを重視し、ページビューを偏重する組織でした。トラフィックが頭打ちになりつつある中で、わからないながらも「自分が誇れないサイトは見せられない」という思いで日々奔走しています。 中山:ありがとうございます。皆様異なる立場からメディアの運営やKPIに向き合っていらっしゃるのですね。 自己紹介の後は、KPIに関する3つの質問にお答えいただきました。 # Q1.どんなKPIを設定していますか?(ページビュー、再訪問、回遊率、流入etc…) 工藤:JBpressは、部署間共通の指標としてページビューをKPIとしています。ただし編集部内ではより詳細に、ページビューの内訳を見るようにしています。具体的には以下の3つです。 ・流入の6割を占めていたYahoo!以外からの流入数を増やす ・月に2回訪問してもらう ・1回の訪問あたりに2記事(1記事4ページ程度)読んでもらう このように細分化した目標を設定し、それぞれを伸ばすことで全体のページビューの成長につなげています。 春山:社内では、ページビュー至上主義の古い価値観が未だに重視されてしまうことがあります。組織内の行動を変えるために、あらゆる指標を導入しました。コンテンツの評価にあたっては、ページビューに加え、滞在時間や直帰率のほか、記事ごとの収益性も数字で伝えるようにしています。 金沢:かつてはページビューに偏ったKPI設定をしていましたが、現在のメディアジーンは媒体ごとにKPIを設定しています。事業責任者や編集長、ディレクターなどが各KPIを設定していきます。そのKPIを担当者ごとに割り振って、計測・レポート作成・改善提案・施策実施をしています。 といいますのも、弊社では媒体ごとにビジネスモデルが大きく異なっているためです。具体例をお伝えすると、マーケティングメディアの「DIGIDAY[日本版]」はサブスクリプションモデルを導入していますが、KPIとしては、課金者数・デイリーのアクティブユーザー数・新規ユーザー数・継続訪問のユーザー数を追っています。一方、「MASHING UP」というメディアはイベントによる収益がメインなので「どのコンテンツでイベントのチケットが何枚売れたのか」をKPIのひとつになります。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15997245/picture_pc_738aa3fb067bc7f77fc0638319366442.jpg?width=800) KPI設定に関して具体的なメディアごとに解説してくださったメディアジーン金沢さん 中山:メディアジーンさんと時事通信さんは、ページビューだけではない指標を設けるようになったとのこと。どのような経緯があったのでしょうか。 春山:時事通信社はYahoo!ニュースとの連携によって、2011年頃まではどんな記事を流してもトラフィックとそれに伴う広告収入が右肩上がりでした。しかし、その後は段々と成長が頭打ちになり、行き詰まりを感じるようになりました。それでも社内ではページビューを絶対視する状況がなかなか変わらず、ページビューを稼ぐためにメディアのクオリティを損なってしまうような記事もありました。そうした状況に危機感を覚え、今は自分が旗振り役となってページビュー以外も見るように意識作りをしています。具体的には定期的に発行する社内報で、ページビュー以外の指標を含めた記事のパフォーマンスを公開しています。 # Q2.KPIをどんな体制で測定し、現場で生かしていますか。 パネルディスカッションに登壇くださった3社は、キメラが提供する記事のエンゲージメント分析ツール[「Chartbeat」](https://chartbeat.jp/)を導入くださっています。現場の目線から、分析ツールによるKPIの測定法をお聞きしました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15997306/picture_pc_cad1b7d62888621cb575cc4b4e2d3e8c.jpg?width=800) JBpressでは独自にレポート用のデータダッシュボードを作成している 中山:KPIの測定にあたって、Chartbeatをどのように活用していますか。他の分析ツールと使い分けているポイントがあれば併せて教えて下さい。 工藤:JBpressでは、KPIに関わるデータはGoogle Analyticsで取得し、Googleデータポータル(Google社が提供するレポーティングツール)上でいつでも・誰でも数字を閲覧できる状態にしています。Chartbeatはリアルタイム性が高いので、今読まれている記事を確認する際や、読者のクリック箇所や離脱するポイントを確認するために使っています。 春山:Chartbeatは記事を掲載する優先順位を決めるのに役立てています。編成担当(デスク)全員のPC画面に常に表示されるようにしています。併用しているのはGoogle Analyticsなどです。 金沢:メディアジーンでは、Chartbeatを滞在時間の改善目的に特化して活用しています。具体的には記事内で読者が離脱しているポイントを把握し、離脱の理由に仮説を立てながら記事の構成や内容を変えています。文末の「おすすめ記事」のレコメンドも、Chartbeatのデータに応じて位置を入れ替えたりしています。併用しているツールは、Google Analytics、CXENSE、SNS解析ツールやSEOツールなど多岐にわたります。 3社とも、Chartbeatを活用して読者の反応をリアルタイムにメディア運営に生かしている点が共通していました。 # Q3.脱・PV偏重のKPI設計のために何ができますか? 中山:ページビューは分かりやすく、かつ強力な指標です。しかし、考えなしにページビューを偏重するKPIは考えものです。健全なメディア運営のために、ページビューとどのように付き合っていけばよいと思われますか。 工藤: ユーザーを常に「主語」として考えることです。ページビューはあくまで結果でしかなく、その内訳を見て「ユーザーがどう感じ、どう行動をしたのか」まで落とし込む必要があります。 金沢:経営層や事業設計者がビジネスのあり方や収益構造を理解し、共通の認識を持つことですね。それが可能になれば、目的に合わせて「このメディアではPVを重視すべきじゃない」とみんなが言える環境になっていくような気がします。 春山:お二人の意見に同意します。単一の指標に依存するのは不健全だと思いますから。 # Q4.今後の目標設定に関する課題は何ですか? 最後に、3社のKPIに関する今後の課題や展望についてお聞きしました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15997384/picture_pc_ee603dd6a1c8bc404baa2b70b3c38b8b.jpg?width=800) パネラー3名のお話に聞き入る、パブリッシャーの皆様 工藤:今後は記事の質に関するKPIを設計していきたいです。ページビュー順の記事ランキングがつまらないと感じるときはありませんか? 同じような顔触れになったり読者が喜ぶ内容の記事だけが並んだりすることがあります。ページビューの多い記事だけが、必ずしも質が高いとも限らないと思います。例えばJBpressは国際メディアなので、ページビューで評価されにくいニッチなニュースもしっかりカバーすべきだと思っています。今は設計の途上ですが、編集者と話す時にはページビューが多い記事のみに焦点を当てず、「会員登録した人が読んだ記事」など記事の質を示せる指標でも語るようにしています。 春山:弊社は通信社として、長年新聞社と密接に関わってきました。デジタルメディアを通じて読者と触れ合うようになったのは最近のことです。ですから、直近は「いかに読者の意向をリサーチし、記事にフィードバックするか」が課題だと思っています。また、志のある若い記者たちのためにも、記事の質を確保するための基盤作りをしたいですね。 金沢:メディアジーンも、読者をより深く知りたいと思っています。現在は各媒体の読者を「いつも見てくれている人」「今まで好きでいてくれたのに離れてしまった人」「メディアを認知してない人」などと関心別に分類しています。あるメディアではこの分類ごとにユーザーインタビューを行い、「なぜこのメディアを選んだのか」「なぜそのメディアを見なくなったのか」などを聞き取り調査し、メディア運営やサービスに生かしていく取り組みを始めました。この取り組みを社内の全メディアに広げたいと思っています。 中山:ありがとうございました。 # まとめ イベントを通じ、一見成功しているパブリッシャーでも、日々のKPI設計は試行錯誤を重ねていることが伝わってきました。登壇くださった4社に共通しているのは、「読者の目線に立つ」ことです。データはあくまでもデータにすぎません。データを生かせる組織作りや、ユーザーにとってのメディアの意義を考えることで、初めてデータに意味を持たせることができるといえるでしょう。 キメラのイベントでは、今後もパブリッシャー特有のお悩みや成功例をご紹介していきます。どうぞご期待ください。 イベント前編の様子は以下のリンクからご覧いただけます。 [ダイヤモンド社に学ぶ、紙×Webを成功に導く組織づくりのヒント](https://app.notion.com/p/Web-3371126d57b04927818d0f18f9ada368?pvs=21) --- ## 2019年サブスクリプションを始めたメディア一覧と2020年の展望 URL: https://ximera.com/posts/3994fe4e6a 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 弊社のnoteではメディアのサブスクリプション(有料購読)化に役立つ情報を紹介しているほか、業界の最新情報をお伝えしています。 [海外メディアのサブスクリプション、5つの”定石”ペイウォールを解説](https://app.notion.com/p/5-2a2329c8292b4e0b983ae9f53c6f3b80?pvs=21) そんな私たちの2020年最初の記事では、2019年に新たにサブスクリプションを開始した・開始を表明したメディアの一覧をお届けします。 新進気鋭のメディアから歴史あるメディアまで、注目のラインナップをご覧ください。 ※2020/01/16 サブスクリプションを開始したメディアを追記しました。 目次 ## 2019年4月:テニマガ・テニス部 [テニスマガジンONLINE|tennismagazine.jp](https://tennismagazine.jp/psr_index) ベースボール・マガジン社WEBが運営する「テニスマガジンONLINE」は、自社の会員組織「テニマガ・テニス部」の有料会員特典として、限定記事を【月額440円(税込)】で配信するサブスクリプション(定額制)サービスを提供しています。会員組織ではメルマガ配信のほか、プロプレーヤーのレッスンやイベントを提供しており、リアル施策にも力を入れているメディアです。 ## 2019年5月:Webオートバイ [会員サービス - webオートバイ](https://www.autoby.jp/psr_index) モーターマガジン社が運営する「Webオートバイ」は、【月額1,200円(税込)】で会員限定記事と紙媒体の「月刊オートバイ」最新号を送付しています。同媒体と「テニマガ・テニス部」は、リボルバー社が提供するクラウドCMS「[dino](https://revolver.co.jp/Service)」でサブスクリプション化を実現しています。 ## 2019年6月:ダイヤモンド・プレミアム [ダイヤモンド・プレミアム 会員登録](https://promo.diamond.jp/select_bks/) ダイヤモンド社は「週刊ダイヤモンド」のWebオリジナル記事とバックナンバー、同社発行の電子書籍が読み放題になるサービスを【月額1980円(税込)】で提供しています。ダイヤモンド社はサブスクリプション化にあたり、組織体制やKPIの再設計に取り組んだといいます。成功の秘訣は[キメラのnote](https://note.com/ximerainc/n/n9c98c400a108)で記事化していますので、あわせてご覧ください。課金管理には[Zuora](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000042566.html)を使用しています。 ## 2019年10月:WIRED SZメンバーシップ [オンライン版WIRED特区、実装へ /WIRED SZメンバーシップがスタート](https://wired.jp/membership/2019/10/14/wired-sz-membership-start/) コンデナスト・ジャパンは、雑誌『WIRED』デジタル版の有料購読プログラムを【月額980円(税別)】で提供しています。会員限定記事や編集部からのニュースレター、雑誌のPDFデータを利用できるほか、購読者向けのイベント招待などメディアブランドを生かしたリアル施策にも取り組んでいます。WIRED SZメンバーシップのシステムは弊社キメラがサブスクリプション管理SaaS「[Piano](https://ximera.co.jp/piano/)」で構築を支援しました。 ## 2019年11月:Quartz Japan [次世代メディア「Quartz」が今、日本に上陸する理由](https://qz.com/1746387/%E6%AC%A1%E4%B8%96%E4%BB%A3%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%8Cquartz%E3%80%8D%E3%81%8C%E4%BB%8A%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E4%B8%8A%E9%99%B8%E3%81%99%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1/) Newspicksを運営するUZABASEが傘下におさめている米国の経済メディア「Quartz」日本版がローンチしました。【月額1000円(税込)】で提供しているのは「毎朝のニュースレター」「英語版記事の読み放題」と、ニュースレターにかける熱量がうかがえます。ニュースレターを重視する米国版Quartzの思想をくんだものでしょう。サブスクリプション化できるのは記事コンテンツに限らないことを示す好例です。 ## 2019年11月:文藝春秋digital 文藝春秋は月刊誌『文藝春秋』で初となるデジタル化とともに、最新号のコンテンツや過去記事のアーカイブ、デジタル版オリジナルコンテンツの読み放題サービスの提供を【月額900円(税込)】で開始しました。特筆すべきは、同サービスをブログサービス『note』で運営していることです。自社サイトを構築せずプラットフォームを利用することで、サブスクリプションの導入コスト抑制に成功しています。 ## 2019年12月:角川文庫・ラノベ読み放題 [小説・ライトノベル10,000点以上が読み放題! 「角川文庫・ラノベ読み放題」スタート!](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000006569.000007006.html) KADOKAWAは電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」上で、ライトノベルなどの電子書籍10,000点以上が読める定額制読み放題サービスを【月額760円(税抜)〜】で提供しています。電子書籍ストアのプラットフォームを活用していることと、Apple Payやキャリア決済など多彩な決済手段に対応していることが特徴です。 ## 2020年1月:英・Fortune [Fortune is rolling out a three-tier membership program - Digiday](https://digiday.com/media/fortune-rolling-three-tier-membership-program/) 2019年12月11日、米ビジネス誌「Fortune」が2020年1月からデジタルのサブスクリプションを開始することが明らかになりました。現在、同社の収益は60〜70%が広告掲載・スポンサー収入ですが、サブスクリプションが3年以内に総収益の20%、5年以内に30%を占めると見込んでいます。提供予定のプランは「デジタル読み放題」「デジタル+紙」「デジタル+紙+プレミアム動画」の3種類と報じられています。 ## 2020年2月:フットボリスタ [2020年2月、フットボリスタが新しくなります | footballista | フットボリスタ](https://www.footballista.jp/column/77315) サッカー誌「フットボリスタ」はサブスクリプション化にあたり、編集方針やサブスクリプション化に込めた想いを公式サイトで表明しています。海外ではこうした宣言は決して珍しくありません(同じスポーツメディアでは「[The Athletic](https://theathletic.com/1116415/2019/08/05/why-the-athletic-has-a-paywall-and-why-you-should-subscribe/)」などが有名です)が、国内では興味深い例です。 ## 2020年はサブスクリプション化がさらに加速する見込み [出版科学研究所](https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53862420W9A221C1TJ2000/)によると、2019年の出版物の推定販売金額は15年連続で前年を下回る見通しです。紙媒体の減益を補うため、2020年は国内でデジタルメディアの収益化を目指す動きがさらに加速するでしょう。 特にサブスクリプション化は、その収益性の高さから特に注目を集めています。[New York Timesのデータ](https://logmi.jp/business/articles/321839)によると、サブスクリプションのユーザー平均単価はデジタル広告の60倍以上(デジタル広告が約2ドル、サブスクリプションが約138ドル)にのぼります。「2012年に収入の9割を広告が担っていた媒体も、2020年までにサブスクリプションが収入の半分を占めるようになる」との[予測](https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/global/Images/infographics/technologymediatelecommunications/gx-deloitte-tmt-2018-digital-media-report.pdf)もあるほどです。 また英国の[「The Guardian」紙](https://news.yahoo.co.jp/byline/kobayashiginko/20190901-00139036/)のように、サブスクリプションをはじめとするデジタルメディアのユーザー課金(有志の「投げ銭」を含む)によって経営のV字回復を成し遂げた例もあります。 こうした海外の事例も踏まえ、2020年は、日本でもデジタルメディアのサブスクリプション化に向けた動きがさらに活発になるのではないでしょうか。 ## サブスクリプションのトレンドは「主力事業化」「軽量化」 コンテンツの有料課金は国内でも長らく行われていますが、上記で紹介したような近年サブスクリプションを始めたデジタルメディアには特徴的なポイントが2つあります。 1点目の「主力事業化」は前の段落でお伝えした通り、紙中心のパブリッシャーにおいても、デジタルメディアが重要な収益源とみなされていることを示しています。従来、一部のパブリッシャーが「とりあえずデジタル化してみよう」と実験的にデジタルメディアの立ち上げやコンテンツ課金に取り組んでいた状況とは一線を画し、自社の今後を担う「新規事業」としてサブスクリプション化に取り組む事例が増えているのです。これはダイヤモンド社が組織体制やKPIを再設計した例や、Fortuneがローンチ前にサブスクリプションの具体的な収益プランを示していることからも伺えます。 2点目の「軽量化」は、国内パブリッシャーの間で急速に広まりつつあるトレンドです。デジタルメディアにサブスクリプションを導入する方法は、従来は自社開発が中心でしたが、近年は自社開発に比べて導入にかかる時間・コストを抑えてサブスクリプションを運用できるサービスやプラットフォームが多数存在します。実際に、2019年に国内でサブスクリプションを開始した7つのメディアのうち6つが、外部のサービスやプラットフォームを活用していることが明らかになっています(テニマガ・テニス部、Webオートバイ、ダイヤモンド・プレミアム、WIRED SZメンバーシップ、文藝春秋digital、KADOKAWA)。 サブスクリプションを導入する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。 [自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは](https://app.notion.com/p/SaaS-1320a4b67a29424e9f7552240c4bae96?pvs=21) 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 --- ## 「行きあたりばったり施策」から卒業しよう。ファネルを意識したロイヤルティ育成のヒント URL: https://ximera.com/posts/4f5a6eca34 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラと申します。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しているスタートアップです。 メディアでいかにファンを獲得し、購読や購買につなげていくかの問いは多くのパブリッシャーにとっての課題です。施策が行きあたりばったりになってしまい、期待する効果を得られていないお悩みもよく耳にします。そこで今回は、効果的なマネタイズを実現するための施策はどう作っていけばよいのか。そのヒントをお届けします。 ## 読者の成長を「ロイヤルティ」と「ファネル」で把握する メディアに限らず、顧客が商品の購買に至るまでの行動にはいくつかの区切られた段階が存在します。それをマーケティング用語で「ファネル」といいます。 顧客のファネルを前進させて購買に結びつけるためには、[ロイヤルティ](/posts/7565c70a79)と呼ばれる、ブランドに対する認知や愛着の度合いを高めていくことが効果的です。メディアにおいても、有料購読者は未購読者に比べて訪問頻度が高く、1記事あたりの滞在時間が長い――つまり、メディアに対するロイヤルティが高いことが[明らかになっています](https://whatsnewinpublishing.com/why-publishers-should-optimize-for-loyalty-loyal-readers-consume-5x-more-content-and-stay-subscribers/)。 メディアに訪れた「一見さん」がロイヤルティを高め、そのメディアを通して購買するまでの行動を、ファネルを使って表したのが以下の図です。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40079050/picture_pc_e74b17e3d34338057bd481bf6cdbd513.jpg?width=800) このように、「メディアに対する読者のロイヤルティを高めて、(図の右に向かって)ファネルを前進させる」マーケティングの考え方を持っておくことが重要です。 施策が行きあたりばったりになってしまうのは、目的意識があいまいだからです。何をすれば読者がひとつ先のフェーズに進んでくれるか狙いを定めながら打ち手を考えていくことで、効果の高い施策を生み出せるようになります。 ## ファネルを育てるために施策を使い分けよう ここからは、読者のファネルを前進させるための施策について具体的に考えてみましょう。有効な施策はファネルの段階ごとに変わってきます。以下の図にマッピングしました。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40079169/picture_pc_1ec0ebad97fbe4df1f3d40a6ce5e9b1f.jpg?width=800) 認知〜初回訪問フェーズ - 外部Webポータル(Yahoo!やSmartNewsなど) - 検索エンジンからの流入 - イベント 初回訪問〜再訪問フェーズ - ソーシャルメディア(Twitter、Facebook、Instagramなど) - ニュースレター - 検索エンジンからの流入 - イベント - 回遊を促すWebサイトの体験設計 再訪問〜ロイヤルフェーズ - 独自性の高い記事コンテンツ - ニュースレター - スマートフォンアプリ、コミュニティ - 検索エンジンからの流入 - イベント - 回遊を促すWebサイトの体験設計 ロイヤル〜購買フェーズ - デジタルサブスクリプション(有料購読)訴求 - 紙面の購読訴求 - コマースへの誘導 - イベント - 購買を妨げないWebサイトの体験設計 各フェーズでおさえたいポイントを解説します。 ### 1. 認知〜初回訪問フェーズ:偶然の接点をいかに増やすかがポイント 認知〜初回訪問フェーズは、あなたのメディアを知らない・接点がない読者に対し、いかに接点をつくるかが焦点です。Yahoo!やSmartNewsなどの外部プラットフォーム、タイムラインにコンテンツが流れてくるSNS、検索ワードを起点に流入するトラフィックなど、読者が意図していなくてもコンテンツに触れてもらえるチャネルを持つことが大切です。著名人やコンテンツを起点に関心を惹きやすいイベント開催も有効でしょう。 注意点として、認知〜初回訪問フェーズだけに施策を注力しすぎないようにしましょう。このフェーズの成果はPV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)で可視化しやすい反面、その後の「再訪問」「ロイヤル」フェーズに進める意識が希薄なままだと、穴の空いたバケツのように自転車操業的なユーザー獲得に奔走することになってしまいます。 ### 2. 初回訪問〜再訪問フェーズ:回遊と再訪問を促すエンゲージメント戦略が必要 メディアへのロイヤルティを醸成するプロセスは、飲食店の「常連さん」づくりと似ています。初回の訪問で「また来たい」と思える体験を与え、再び足を運んでもらい、訪問のペースを高めて定着してもらう……このプロセスで最もハードルが高いのは、もう一度お店に来てもらうことでしょう。皆さんの生活を振り返ってみても、一度だけ訪問して終わってしまったお店は数え切れないほどあるはずです。 多くのパブリッシャーが壁にぶつかるのも、この「再訪問」を促すフェーズです。[Chartbeat社の調査](https://blog.chartbeat.com/2019/09/10/real-time-data-reader-engagement-for-publishers/)によれば、メディアに訪れた読者の60%以上は1週間以内に再訪問しない――つまり、過半数が二度と戻ってこない「一見さん」であることが明らかになっています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40079527/picture_pc_cc78b251acdb0c5a089db3d90ac1d8f7.jpg?width=800) 偶然メディアに訪れた「一見さん」の心を掴むために大切なことは、以下の2点です。 ・サイトを回遊してもらい、1回の訪問あたりの接触するコンテンツを増やす ・メディアブランドを継続的に意識できる接点(メルマガ、SNS、イベントなど)を持つ 読者がメディアブランドを意識し、メディアと積極的に関わる体験――つまり、「[読者エンゲージメント](/posts/ecb09cf675)」を高める体験設計が重要なのです。 ### 3. 再訪問〜ロイヤルフェーズ:「ここにしかない」を継続的に提供しよう 次のフェーズがメディアにとっての「常連さん」づくりにあたるフェーズです。メディアに再び訪問した読者を定着させ、訪問頻度を高めることでロイヤルティを高めることができます。 そのためには、上段で紹介した一見さんを掴むための2点に加え、以下のような取り組みが効果的です。 - 継続的な訪問を生むコンテンツ(連載、特集ページなど)を提供する - 独自性が高く、かつ読者の関心に応えるコンテンツを提供する - アプリ、コミュニティ、読者向けの限定イベントなど、読者を囲い込む場づくり 再訪問を促すエンゲージメント戦略に加えて、「このメディアにしかない強み」を継続して提供し続けることで訪問頻度を高めることが重要です。 4. ロイヤル〜購買フェーズ:取りこぼしを防ぐ体験設計を ロイヤルティの高い読者を購買に結びつけるには、ただ割引を行うだけでは単なる価格競争の世界に陥ってしまいます。「購買への納得感」「購買体験のスムーズさ」をいかに設計するかが重要です。 実際に会計・経営コンサルで知られるKPMGの調査によると、ロイヤルティの高さを保つ要因として、価格(Pricing)よりも「値段に対する納得感(Value for money)」や「購買体験の容易さ(Easy shopping experience)」が上位をマークしています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40079742/picture_pc_e3da303ad09626d6bb7c7d14a6b5f565.jpg?width=800) [KPMG](https://home.kpmg/xx/en/home/insights/2019/11/customer-loyalty-survey.html) デジタルメディアに限らず、サービス内容は充実しているにもかかわらず、購買に至るまでの体験設計がおざなりになっているために購買のとりこぼしが起きている事例は多々あります。 世界で最もデジタルサブスクリプションに成功している[New York Times](https://open.nytimes.com/we-re-launched-the-new-york-times-paywall-and-no-one-noticed-5cd1f795f76b)は、ペイウォール(=記事内の課金障壁)のテストと改修を幾度となく繰り返しています。フランスの新聞社[Le Monde](https://digiday.jp/publishers/le-monde-site-tweaks-helped-increase-subscriptions-20-percent-2018/)は、2018年に実施したサイトのリニューアルにより、有料購読へのコンバージョン率(CVR)が46%も増えたといいます。 マネタイズの手段を設けて終わりではなく、データをにらみながら購買に至るまでの体験の改善を続けていくことが重要です。 ### アイデアは軸のある戦略によって輝く 今回は、ロイヤルティのファネルを意識した施策のポイントをご紹介しました。メディアの施策を考えようとすると「こんなサービスをやりたい」「あのツールを導入したい」とあれこれとアイデアを膨らませたくなるものです。 しかし、アイデアありきで施策を展開すると、行きあたりばったりで効果検証がしにくい施策に終わってしまいます。目的意識をもつことでアイデアや創意工夫に一貫性をもたせ、成功体験につなげましょう。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama --- ## PVだけで大丈夫?サブスクにも広告にも欠かせない指標「読者ロイヤルティ」とは URL: https://ximera.com/posts/7565c70a79 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 広告掲載収益だけに頼るビジネスモデルからの転換を迫られる中で、デジタルメディアのサブスクリプション化(=サブスクリプション:有料購読課金化)の期待は日増しに高まっています。しかし、サブスクリプションビジネスは、始めた瞬間に莫大な利益が生まれる「魔法のソリューション」ではありません。メディアのサブスクリプションを成功させるためには、「ある指標」を把握することが欠かせません。また、この指標は、多くのメディアにおいて現状の主な収益源となっている広告パフォーマンスをも大きく左右します。 そんな超重要な指標とは、何なのでしょうか? ページビュー数でも、ユニークブラウザ数でも、直帰率でもありません。答えは「読者ロイヤルティ」です。 今回はその定義や効果、そしてあなたのメディアの「読者ロイヤルティ」をチェックできる簡単なテストを紹介します。 目次 ## 「読者ロイヤルティ」はメディアの愛着・ブランドを測る指標 そもそも「読者ロイヤルティ」とは、一体どのような指標なのでしょうか?「読者ロイヤルティ」は、「loyalty=忠誠心」と訳す通り、あるメディアに対して読者がどれほど愛着を抱いていたり、ブランドを認知したりしているかを示すものです。具体的には、以下のようなデータをもとに複合的に測ります。 - 訪問頻度 - 1回の訪問あたりの閲覧記事数 - トップページへのアクセス数 - ブックマーク経由等の直接流入 - メディア名を指名した検索流入 特に訪問頻度は多くのアクセス解析ツールで「読者ロイヤルティ」のベンチマークとされています。各種ツールの判定基準によると「2〜3日に1回以上の訪問」がロイヤルティの高い読者の目安になっているようです。 では、この「読者ロイヤルティ」を把握するとどのようなメリットがあるのでしょう? ## ロイヤルティの高い読者はサブスクリプション契約の可能性が高い「お得意様」 読者ロイヤルティを高めることはメディアの収益化に貢献する「お得意様」を増やすことにつながります。ロイヤルティの高い読者は、サブスクリプションと広告のどちらに対しても高い収益効果を得られることがわかっているのです。 まずサブスクリプションについて。デジタルメディアのサブスクリプションは、メディアに訪れた読者に対して「有料購読をしませんか?」とオファーを出します。つまり自社の商品を営業しているわけですが、このオファーを出す(=営業をする)タイミングが非常に重要です。 たとえば、レストランで飲む高級ワインを想像してみてください。同じお酒でも初めて入った店では尻込みしてしまうのに、何度も訪れたことのある馴染みの店で勧められるとつい飲んでみたくなりませんか? メディアのサブスクリプションも同じです。たまたまサイトに訪れた読者にいきなり購読を迫るのではなく、まずは再訪問を促しファンにしたうえで購読を勧めることでサブスクリプションの契約率を上げられるのです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14699591/picture_pc_5a0701f56b2e7b2648827d44f764b4d7.jpg?width=800) 商品の購買に至るまでの読者の行動には段階があります(マーケティング用語でいうところの「ファネル」です)。同じ商品でもロイヤルティの高い状態で営業されるほうが成約率が高まります。 ## ページビューの過半数は12%の熱心な読者が稼いでいる ロイヤルティの高い読者は広告収益――つまり、ページビューの獲得にも貢献してくれます。 大前提として「世の中のコンテンツの大半は読まれていない」というショッキングなデータがあります。[Chartbeat社の調査](http://blog.chartbeat.com/2019/09/10/real-time-data-reader-engagement-for-publishers/)によると、メディアに訪れた読者の45%がページに15秒以上とどまらずに離脱しており(=記事が読まれていない)、60%以上の読者はそのメディアへ1週間以内に再訪問しない(=過半数が二度と戻ってこない「一見さん」)ことがわかっています。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14699661/picture_pc_3d73bffc099b3c00124248b8c63cc626.jpg?width=800) そんな状況下で、メディアに愛着を持って何度も記事を読んでくれる読者がどれほど貴重かおわかりいただけるでしょうか。 パブリッシャー向けにサブスクリプションツールを提供しているPiano社のデータによると、メディアの読者のうち頻繁に再訪問する――「読者ロイヤルティ」が高い読者の割合はわずか12%であるといいます。しかし、この12%のロイヤルティが高い読者によって、メディアの全ページビューのうち55%が占められていることも明らかになっています。 つまり、ロイヤルティの高い読者はページビューの獲得効率が高いのです。読者ロイヤルティを育てることが広告収益の増加にもつながる……というわけです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14699766/picture_pc_a061293fa503cceb97abc0250c3d98fb.jpg?width=800) ## あなたのメディアの「読者ロイヤルティ」、把握できていますか? ここまで「読者ロイヤルティ」という指標の内容と、その重要性をお伝えしてきました。 この大切な指標をどうやって測定し、育てていけばいいのでしょうか?まずは、あなたのメディアが「読者ロイヤルティ」を測定できる状態にあるかどうかを簡単にチェックしてみましょう。以下の3つの質問に「YES」か「NO」でお答えください。 一つでも「NO」があてはまったら、黄色信号です。Q1.とQ2が「NO」なら、メディアの分析体制が十分に整っていない可能性があります。Q3.が「NO」なら、測定したデータを改善アクションに落とし込めていないのかもしれません。冒頭で定義をご紹介したように「読者ロイヤルティ」は、ページビュー・ユニークブラウザ数・新規訪問率・再訪問率・直帰率といった、よく聞く単一の指標さえ追いかけていればよいわけではありません。 「読者ロイヤルティ」を把握し、日々のメディア改善に生かしてくためには、社内のデータアナリストやグロースハッカーとともに複数の指標をバランスよく把握・分析する体制を整えるほか、読者ロイヤルティの測定に特化した分析ツール([Chartbeat](https://chartbeat.jp/)など)を導入することが近道です。 次回は実際に[「読者ロイヤルティ」を育てる具体的なハウツー](/posts/a667148506)を紹介します。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama --- ## メディアビジネスの要、「読者ロイヤルティ」の測り方と育て方 URL: https://ximera.com/posts/a667148506 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちは出版社・新聞社や放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。 ここではメディアビジネスの重大指標「読者ロイヤルティ」を解説します。「読者ロイヤルティ」とは、メディアに対して読者がどれほど愛着を抱いていたり、ブランドを認知したりしているかを示すものです。 目次 ## あなたのメディアで「読者ロイヤルティ」は測れますか? 現在あなたのメディアが「読者ロイヤルティ」を測定できているかどうかをチェックしてみましょう。以下の3つの質問にお答えください。 今回は、上記の質問に「NO」が浮かんだ方々に向けて、具体的に何ができるかを紹介していきます。 ## 全ては「シンプルな現状分析」から始まる Q1とQ2が「NO」だった場合、あなたのメディアでは「読者ロイヤルティ」の分析体制が十分に整っていない可能性があります。まずは、自分のメディアの分析体制を棚卸ししてみましょう。 日々の業務の中で、急激に分析手法を変えるのは現実的には難しいものです。今の体制や目標を踏まえながら「読者ロイヤルティ」の重要性をチームに浸透させ、KPIとして追いかけていくことが肝要です。そのために大切なのが「現状の分析を、極力シンプルに行うこと」です。 デジタルメディアの運用で陥りがちな罠が「測定できるデータが多すぎて迷子になってしまう」ことです。大量のデータを並べたExcelシートを必死で作った後、「結局この数字で、何をどう改善すればいいんだっけ?」と途方に暮れてしまったことはありませんか。 まずは、測定しているデータを実際のコンテンツやサイト構造の改善に生かせるものへと絞り込むことから始めましょう。 では「読者ロイヤルティ」をシンプルに測定するためには、どんなデータを参照すればよいのでしょうか? ## 「読者ロイヤルティ」は訪問頻度と滞在時間で把握できる 「読者ロイヤルティ」を測定するためには、訪問頻度と滞在時間を定点観測するのがよいでしょう。メディアへの訪問頻度が高く(=愛着がある)滞在時間が長い(=多くの記事を、じっくり読んでくれる)状態は、ロイヤルティが高いと定義できるはずです。 実際に2018年の記事では、Hearst社を始めとする海外パブリッシャーが「読者ロイヤルティ」向上のために訪問頻度と滞在時間の改善に注力していると[報じられています](https://digiday.com/media/era-loyalty-newspaper-publishers-rethink-focus-pageviews/)。 ここからは具体的に、ある程度手間を掛けずに測定しやすい分析軸を紹介します。 訪問頻度については以下を分析できるとよいでしょう。 それが難しい場合は、リファラ別の訪問割合を分析することである程度の代替ができます。ダイレクト流入(リファラなし流入)の割合が高い場合は「ブックマークしている=定期的な訪問者」が多い、検索流入やソーシャル流入の割合が高い場合は「一見さん=初回訪問者」 が多いと推測できます。 滞在時間については以下を分析できるとよいでしょう。 ## 「読者ロイヤルティ」の改善に効くアクションは? では、データが分析できたら一体どんなふうに読者ロイヤルティの改善をすればよいのでしょうか?冒頭の質問でQ3.が「NO」だった場合、測定したデータを実行に落とし込めていないのかもしれません。 データをもとに読者ロイヤルティを向上するためのアクションの具体例としては、以下が挙げられます。 分析したデータをもとに上記のアクションを行い、その結果をデータによって振り返り、次の改善アクションに生かしていく――いわゆる「PDCA」を回していくことが大切です。 ## 今できることから、1%の改善を積み上げよう 上記の改善アクションをご覧になって「意外と地道だな」と感じたでしょうか?大切なのは、小さな改善アクションを積み上げていくことに尽きます。インターネット上のサービスの利点は、どんなに小さな改善であってもデータに結果が表れることです。 実際に、多くのアプリや通販サイトなどは、アイコンや画面の挙動の一つひとつを地道に改善することで大きな成果を挙げています。たとえばフリマアプリ「メルカリ」では、チェックボックスの設置や検索表示のチューニングによって商品のクリック率が大きく増減すると[いいます](https://logmi.jp/tech/articles/321231)。細かな工夫の積み重ねが、最終的に莫大な取引額を生んでいるのです。 デジタルメディアも例外ではありません。サイト改修やコンテンツの拡充を今すぐ行うことは難しくとも、以下のようなことから試してみてはいかがでしょうか。 今、あなたの手元でできることから改善と効果測定を繰り返すことが、将来的に読者ロイヤルティを大きく育てることに繋がります。ぜひ小さな一歩を踏み出してみてください。 そのためにも分析に手間を掛けず、短いスパン(可能なら日次で。理想的なのはリアルタイム)で改善と振り返りを行える体制づくりが必要です。社内のデータアナリストやグロースハッカーと相談しながら、分析の自動化やダッシュボードづくりを検討してみてはいかがでしょうか。また、[Chartbeat](https://chartbeat.jp/)などの読者ロイヤルティの測定に特化したツールを導入するのも近道です。 今回のブログは以上です!少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 Akiko Nakayama --- ## パブリッシャーの「真の危機」は何か。どう戦うべきなのか?【キメラ事業紹介】 URL: https://ximera.com/posts/dcb65bd999 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera 初めまして。株式会社キメラと申します。 私たちは出版社・新聞社・放送局といったパブリッシャーに対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化を支援している会社です。2019年1月に活動を始めたスタートアップ企業ながら、国内19社・51媒体のメディアビジネスをご支援しております(2020年10月時点)。 私たちのパートナーであるパブリッシャーは、今まさに苦況に立たされており、「日本のメディアビジネスが衰退しつつある」という論調さえあります。キメラはこうした現状を憂うメディアの方々と並走し、変革のご支援をしています。 今回のブログでは、そんな私たちキメラの立場から、昨今の「メディアビジネス衰退論」を考えてみたいと思います。 目次 ## メディア衰退の本質は「デジタル化の遅れ」「読者離れ」ではない そもそも「メディアビジネスが衰退している」と言われるのはどうしてでしょうか。一般には以下の3つの理由が挙げられることが多いようです。 ### (1)デジタルシフトへの遅れ:デジタルメディアへの移行が遅れ、読者を取りこぼしている 2018年の調査によると、日本に現存する紙媒体は1860ある一方で、新聞社・出版社が運営するwebニュースサイトは1058にとどまっています。([株式会社内外切抜通信社の調査](https://digitalpr.jp/r/30895)より) ### (2)広告収益の減衰:既存メディアの広告収入減に対し、デジタルメディアの収益化が追いついていない [2018年の「日本の広告費」](https://dentsu-ho.com/articles/6500)によれば、マスコミ4媒体由来のデジタルメディア広告費はわずか582億円。これは紙媒体の広告費が2.7兆円超であることを踏まえると、微々たるものです。 (3)読者のデジタルメディア離れ:コンテンツに対する信頼低下オックスフォード大学 ロイタージャーナリズム研究所の[「Digital News Report2019」](http://www.digitalnewsreport.org/survey/2019/japan-2019/)によると、日本におけるニュースの信頼度は39%で、調査対象の38カ国中25位と低いことがわかります。 確かに、これらは事実ですが、あくまでも結果論です。 こうした肝心な疑問には触れていません。 では、問題の本質は何なのでしょうか? ## 真の危機は「人材・知見の不足」「広告掲載が前提のメディア設計」 現場の方々の声や海外事例を踏まえ、私たちは潜在的な「メディア衰退の理由」を以下のように分析します。 ### (1)デジタルシフトへの遅れ 内外切抜通信社の[調査](https://digitalpr.jp/r/30895)によれば、2018年時点で国内には4000を超えるwebニュースサイトが存在しており、そのうち新聞社・出版社が運営するニュースサイトは全体の26.3%にとどまります。 これはつまり、他業界からマーケティングの手段としてメディアに参入してきている事例が増えてきていることを意味します。純粋にメディアを主力ビジネスとしているパブリッシャーは、収益減によってリソースが逼迫する中で、デジタル人材の獲得を他業界と争っているのです。 こうした焦りは世界共通です。[DIGIDAY UKの記事](https://digiday.com/media/were-not-resourced-like-a-big-tech-company-publisher-product-leaders-sound-off-on-their-biggest-challenges/)では、こうした焦りを象徴するような海外パブリッシャーの声を紹介しています。 > 「テック企業との競争によって、テクノロジー、プロダクト、デザインの専門人材を採用することはどんどん難しくなっている。私たちはこんなに色々なことをする中で、一体どうやって優先順位をつけながらリソースをやりくりすればいいんだ?」“It is getting harder to recruit tech, product and design talent due to the competition with tech companies. How do we manage resources and priorities when we are doing so many different things?” > ### (2)広告収益の減衰 ほぼすべてのデジタルメディアが、収入源として広告(バナー広告、記事広告)を挙げるのではないでしょうか。確かに[「日本の広告費」](https://dentsu-ho.com/articles/6500)ではインターネット広告費の増加が見て取れますが、パブリッシャーがその恩恵を受け続けられるとも限りません。 [2015年の調査](https://econsultancy.com/40-of-publishers-describe-their-digital-ad-revenue-as-shrinking-or-static/)によると、海外パブリッシャーの40%が「デジタル広告の収入が減少傾向」もしくは「横ばい」と回答したとのデータがあります。4年前の情報ではありますが、日本にも同様の停滞が訪れる(あるいは、既に起こっている)可能性は十分にありえるでしょう。 また、スポンサー企業の記事を制作する「記事広告」を収益源とするデジタルメディアも存在しますが、案件ごとに企画・制作・ディレクションの手間が発生するため、労働集約的なビジネスにならざるを得ません。メディアのブランドを損ねたり、記事広告を内部制作する場合は業務を圧迫したりするリスクもあります。 このように広告に頼らない収益源を確保する必要がある一方、新たな事業モデルを生み出すためのノウハウが不足しているのが現状です。 ### (3)読者のメディア離れ 最後の論点である「デジタルメディアが読者の信頼を得られないのはなぜか」という問いについても考えてみましょう。私たちは、その理由の一つが、ユーザーに広告を見せることを大前提としたメディア設計にあると考えます。 - クリックを誘う誇大なタイトル(=“釣りタイトル”) - 記事の読みやすさを損なう多数の広告バナー掲載 - ページビュー数や広告掲載回数を増やすためのページ分割 - ファクトチェックに時間をかけられないまま記事を量産する こうしたデジタルメディアにありがちな特徴は、ページビュー数を増やすことで広告収入を増加させるための定石として知られています。ですが、こうしたユーザービリティを損なう手法が読者に支持されるわけがありません。 実際に[『TIME』の記事](https://time.com/12933/what-you-think-you-know-about-the-web-is-wrong/)によると、本文中にネイティブアドを掲載したコンテンツを最後までスクロールした読者はわずか24%と、通常コンテンツの70%に比べて大幅に減少することが分かっています。実際に広告をクリックしているのであれば広告効果があると考えられますが、単に離脱を招いている可能性も否めません。また、記事が読了されないという点ではメディアに対するユーザーのエンゲージメントが下がっているといえます。 5年前の記事ですが、メディアの広告掲載の方法に大きな変化がないので、広告と読者エンゲージメントのバランスをとる難しさを物語る資料として参考になるでしょう。 とはいえ、メディアの運営が広告収入で成り立つ以上、記事の評価はページビューに偏らざるをえません。通常のアクセス解析ツールでは、こうした読者のエンゲージメントを測定することは非常に困難です。このような現状からユーザビリティに対する指摘はあくまで定性的な評価にとどまってしまい、ページビューを追いかけていたらユーザーの心は離れていた……という事態に陥りかねないのです。 ## パブリッシャーが危機と戦うために。キメラは何をするのか ここまで「メディア衰退論」に対するよくあるコメントと、その背後にある原因を考察してきました。 では、パブリッシャーが危機と戦うために、何が必要なのでしょうか?答えは3つです。 キメラはパブリッシャーの方々とともに、上記の3つに取り組んでいます。最後に改めて、私たちがどんなことをしている会社なのか紹介させてください。 株式会社キメラは、以下を事業として実施しています。 パブリッシャーの現場がビジネス課題に向き合うにあたり、必要な事業設計のノウハウやソリューションを提供しています。現在提供しているのは以下のサービスです。 ### メディアパートナー事業:ビジネス課題の解決支援 デジタルメディアの集客・収益化、サブスクリプションモデルの構築、社内の体制構築など、パブリッシャーが直面しているメディアビジネスの課題に対し、オーダーメイドで戦略策定・実行を支援します。 [キメラ、パブリッシャーのビジネス課題解決を支援するメディアパートナー事業を開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000014379.html) ### 代理店事業:記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat」の販売、導入支援 Chartbeat(チャートビート)は、記事に対する反響や、メディアに訪問するユーザーの属性をリアルタイムで把握できる分析ツールです。ページビューという指標にとらわれず、ユーザーから本当に支持されているコンテンツを可視化できます。 [キメラ、記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat」提供開始](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000014379.html) 私たちキメラは、時代を動かし、カルチャーを築いてきたパブリッシャーの方々を深くリスペクトしています。時代が変わっても、真摯な想いでコンテンツに向き合う方々がビジネスとして報われる世界を作っていきたいと思っています。 --- ## 新型コロナウイルス感染拡大で、メディアはどうなる?何をすべき?国内外のデータで徹底解説 URL: https://ximera.com/posts/e8127739d7 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera こんにちは、株式会社キメラです。私たちはパブリッシャー(出版社・新聞社・放送局)に対し、メディアビジネスをグロースするための課題解決やデジタル化をご支援しています。 弊社のnoteではメディアのパフォーマンス分析やサブスクリプション(有料購読)化に役立つコラムを掲載しているほか、業界の最新情報をお伝えしています。 [自社開発? それともSaaS? メディアがサブスクリプションを導入する方法とは](https://app.notion.com/p/SaaS-1320a4b67a29424e9f7552240c4bae96?pvs=21) [その記事、本当に読まれてる?コンテンツ評価の新常識「読者エンゲージメント」とは](https://app.notion.com/p/ab7e039d90684fbbb8fa37c4f7049b2b?pvs=21) 今回は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大がメディアビジネスに与える影響について紹介します。国内外の調査レポートや報道をもとに「パブリッシャーがパンデミックから何を学び、対処するべきか?」のヒントを探ります。 目次 ## 新型コロナウイルス感染拡大の影響は「PVバブル」「事業破綻」「再評価」 今回のパンデミックによって世界のメディアが受けている影響は、以下の3つです。 具体的なデータや報道をもとに、以下それぞれ説明します。 ## 不安を起点に、ページビュー・滞在時間の「バブル」が起きている 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、世界的にデジタルメディアのパフォーマンスが伸びています。記事コンテンツのエンゲージメント分析ツールを提供する[Chartbeat社の調査](https://blog.chartbeat.jp/posts/coronavirus-data-news-traffic-impact-analysis/)によると、感染拡大とともに新型コロナウイルスに関する記事のページビュー (PV)は急上昇しており、メディアの全PVのうち3分の1も占めています(2020年3月16日週、2600万件の記事の分析結果)。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23092514/picture_pc_eae8ee4f0aca125b1f6a1a0eb2cb5a96.jpg?width=800) 記事をご覧になっている方のなかには、サイト分析ツールで自社メディアを見て「今日もPVが増えている!」「昨日はPVが多かったのに、今日はなぜ急減したの?」と、疑問にお思いの方もいるかもしれません。今はいわばバブル状態ですから、日毎にトラフィックが乱高下しても全く不思議ではないのです。 もう一つ注目したいのは、PVだけでなく、記事の滞在時間も伸びていることです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23092535/picture_pc_a74fd1147e55e7584c1a4ef61cf4394e.jpg?width=800) Chartbeatのデータによると、読者のうち45%が15秒以内に記事ページを離脱することが分かっています。しかし驚くことに、新型コロナウイルスに関する記事は平均40秒も読まれています。新型コロナウイルスに関する記事がいかに関心を集めているかは、疑うべくもありません。 多くの人々が信頼できる情報源を求めていることと、家で過ごす時間が長くなったことで、インターネットでデジタルメディアの記事を読む時間が増えたことが要因と考えられます。 ## 試練は感染ピークを超えてから。「コロナ一辺倒」は読者を失うリスクがある パブリッシャーにとっては、この「バブル状態」が収束した後、どのように読者の関心を自社メディアに留めるかが課題です。以下は、イタリアと米国のデータです。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23092663/picture_pc_e76b3da3c123567d4acc8e6dd32a471e.jpg?width=800) どちらも国がロックダウンを宣言した直後から、トラフィックが減少傾向にあります。感染拡大のペースが和らぐとともに、不安に駆られて情報収集をしていた読者の行動が落ち着いたからだと考えられます。 日本でも4月7日に緊急事態宣言が行われました。感染拡大に歯止めがかかれば、イタリアや米国のようにトラフィックの「バブル状態」が近日中に収束する可能性があります。 ですから、たとえ多くのトラフィックを集めていても、新型コロナウイルスの速報記事ばかりが並ぶ編成は考えものです。メディアの独自性を損なってしまい、パンデミックが収束したあとに読者が戻ってこなくなるリスクがあります。 レストランに例えるなら、今は「一見さん」が殺到している状態です。一見さんに人気のメニューばかりを提供していると常連が離れてしまい、本来の良さを見失ってしまいます。一見さんが定番メニューも味わって常連になってくれたら、継続的にファンを増やせます。メディアでも同じことがいえるでしょう。 Googleの調査によれば、日本では3月頭から「オンライン飲み」「DIY」など、自宅での過ごし方や気晴らしを意識した検索ボリュームが増加しています。 [Google トレンドで探る新型コロナウイルスと「新生活」時期の検索動向](https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/search/covid-19-3/) いわゆる「自粛疲れ」もあいまって、パンデミック報道以外のニーズも高まりつつあります。目先のPVに振り回されず、読者が継続的に訪問したくなるようなコンテンツや施策を今のうちから展開しましょう。 ## 広告・イベントに大打撃の一方、サブスクとECが好調 新型コロナウイルスによる広告出稿減少とイベントの取りやめは、事業面で大きな打撃になっています。[News Media Aliance](https://www.newsmediaalliance.org/covid-drives-traffic-to-news-but-will-publishers-benefit/)の記事によれば、3月中旬時点で62%のパブリッシャーが広告収入の減少を経験しており、各社が記者のレイオフや減給、プリントメディアの発行頻度を下げるなどの対応を迫られています。CNNは記者の大量解雇を報じており、「読まれるのに儲からない」パブリッシャーの窮状が見て取れます。 [Hundreds of journalists are being laid off, right when the public needs them the most](https://edition.cnn.com/2020/03/27/media/media-layoffs/index.html) 他方、デジタルのサブスクリプション(有料購読)とアフィリエイト記事などのEコマース分野は非常に好調です。 [Piano社の調査](https://resources.piano.io/articles/coronavirus-coverage-drives-surge-in-audience-and-subscriptions-for-news-publishers-in-europe-and-u-s)によれば、WHOがパンデミック宣言を行った週の前後でデジタルメディアの有料購読者数は199%増加(欧州で267%、米国で63%)しています。[DIGIDAYの記事](https://digiday.com/media/bidets-meat-thermometers-publishers-commerce-businesses-adapt/)は、New York Timesの運営メディア「Wirecutter」の商品レビュー記事のトラフィックが前年同期+5000%(誤字ではなく、5千パーセントです!)成長した事例や、パブリッシャーのコマースネットワーク運営企業による「1日あたりのクリック数が2週間で25%増加した」とのコメントを掲載しています。 日本のパブリッシャーにおけるパンデミックの影響は、これから広がっていくでしょう。一部の雑誌では取材や撮影ができずに[発行を見合わせる](https://www.fashionsnap.com/article/2020-04-15/magazine-delay/)と発表しており、東京オリンピックの開催延期によって公式スポンサーが広告出稿の延期・取りやめを検討するとの[報道](https://www.asahi.com/articles/ASN3T72KKN3TULFA01R.html)もあります。 さらなる危機や不測の事態に備え、サブスクリプション導入やEコマースとの連携など、デジタルの収益軸を多様化することを強くおすすめします。社内での感染対策やリモートワークへの移行など、日常的な業務に影響が出ているパブリッシャーも少なくありません。パンデミックを契機として、事業・社内環境ともにデジタル化の推進を検討されてはいかがでしょうか。 ## 「ネットニュース=無料」の認識が変わるかもしれない 暗いニュースに肩を落としそうになりますが、今回のパンデミックは「インターネット上の情報は無料で手に入って当たり前」という認識が変わるチャンスともいえそうです。 フェイクニュースへの危機感が世界中に広がり、インターネットで「信頼できる情報」「自分の関心に応えてくれる情報」に価値を見出す読者が増えています。デジタルメディアの有料購読者数は増えていることは上述の通りですが、大手だけでなく、ローカルニュースなどニッチな需要に応えるメディアも恩恵を受けています。[ノーザンウェスタン大学の調査](https://localnewsinitiative.northwestern.edu/posts/2020/03/25/digital-subscriptions-virus/index.html)によると、アメリカの地方紙は減収の打撃を受けつつも、デジタルメディアのサブスクリプションは好調だといいます。例えばフロリダの地方紙「Tampa Bay Times」は、1日の新規購読がに50〜70件と、通常の2〜3倍に達しているそうです。 また、[世界経済フォーラム(WEF)](https://www.weforum.org/agenda/2020/04/covid-19-media-value/)によると、現在ニュースに課金している読者はわずか16%ですが、パンデミックの影響で「将来的にニュースへ課金したい」と考える割合は53%にのぼります。「お金を払ってでも信頼できる情報を手に入れたい」という意向が確実に高まっているといえるでしょう。 [野村総合研究所の調査](https://www.nri.com/jp/keyword/proposal/20200409)によると、日本では7割以上の人が新型コロナウイルスに関するフェイクニュース(と思われる)情報を見聞きしたと回答しており、回答者の7~8割がテレビ・新聞での情報を信頼しているとのことです。注目すべきは、デジタルでの情報収集の手段について、10代・20代でも「検索エンジン」が「SNS」を上回っていることです。若い世代も、信頼できる情報を吟味して手に入れようとしていることが見て取れます。 日本は、ニュースの課金率がわずか7%(2018年)と諸外国に比べて圧倒的に少ないのが現状です。裏を返せば、情報の信頼性を保証し、課金への納得感を訴求できれば、サブスクリプションに伸びしろがあるといえます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23093966/picture_pc_11f779e8708860095f5e5f012fad5496.jpg?width=800) 規模の大小を問わず、質の高い記事を届けようとしているパブリッシャーにとっては大きな追い風といえるでしょう。 ここまで、新型コロナウイルスがメディアにもたらす影響と対策をお伝えしました。内容をまとめます。 ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23093988/picture_pc_c685891e01f7da9bdea218fcf74d4312.jpg?width=800) 日本のパブリッシャーが今回の危機から学べること・備えられることは、以下の通りです。御社は、何から着手できそうでしょうか? ![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/23093998/picture_pc_2f4334968437fff0e8337e42a55b29cd.jpg?width=800) 今回のブログは以上です! 少しでも皆様のお悩みを解決するヒントになれば幸いです。今後も、パブリッシャービジネスに役立つ知見や事例をご紹介していきます。 --- ## サブスクの商品設計、何からはじめたらいい? URL: https://ximera.com/posts/f2813007bc 公開日: 2019-01-01 著者: Ximera この「キメラのサブスク相談室」では、よくお聞きするサブスクリプション事業の課題に一問一答形式でお答えします。みなさんのお悩み解消の入り口として役立てていただければ幸いです。 ひとくちにサブスクリプションの商品設計といっても、実際に読者がプランを購読できる状態になるまでにはいくつかのステップがあります。 ## A. 商品の内容や購読プランの前に考えるべきことがある ![](/images/posts/f2813007bc/Untitled.png) サブスクリプションの商品設計をおこなうステップ 上図のように、そのステップは大きく、戦略と戦術に分けることができます。特に重要なのは、戦略づくりを入念に行うことです。御社にどんな強みがあるのか、サブスクリプションサービスを通じてどんなユーザーに価値を届けたいのか、徹底的に議論することからはじめましょう。 商品の提供内容や価格設定などの戦術づくりからはじめたくなるものですが、そこには落とし穴があります。戦略がないままでは「商品の内容には◯◯と✗✗を含めたい」「こんなプランなら売れるはずだ」などと視野の狭い議論に陥りやすく、サブスクリプションサービスそのものの方向性や、ユーザーが何を求めているのかが置き去りになりがちです。 結果として「手が込んでいるけれど魅力を感じない」「すごそうだけれど誰も求めていない」残念なサービスが生まれるリスクが高まってしまうのです。事業の方向性を見失ったサービスがユーザーに支持されることはありません。戦略づくりの段階ではプロジェクトが前進している実感を得づらいかもしれませんが、「急がば回れ」で足固めを入念に行いましょう。 ## 「必ず売れる商品」は存在しない。小さく生んで大きく育てることが大切 戦術の最終ステップにあたる「④商品/購読プラン/販路」については、サービスを開始した後にも軌道修正を加えやすい要素です。提供価値を明確にしたうえで小規模にサービスを開始し、売れ行きやユーザーの声を参考にしながら改善を重ねる「小さく生んで、大きく育てる」手法も検討しましょう。 以下に示すように、国内で近年スタートしたサブスクリプションサービスは積極的な改善を続けています。 どんなに入念な下調べや仮説立案をしたとしても、初めから売れる保証のある商品をつくることは不可能です。ユーザーのニーズや事業環境が目まぐるしく変化する今の時代は、戦略をしっかりと持ったうえで、戦術を柔軟に変化させていくことが望ましいでしょう。 ## 小さく生んで大きく育てるサブスクリプションを実現できる「AE」 ![](/images/posts/f2813007bc/AE_logoline_black.jpg) 当社が提供するサブスクリプション基盤「AE(エーイー)」は初期費用無料、記事1本単位から手軽に有料課金を実装できます。かんたんに操作できる管理画面で、プランの価格設定や訴求内容の作成・編集も思いのまま。今回ご紹介した「小さく生んで大きく育てる」事業づくりを応援します。サブスクリプション導入検討のご相談も承っていますので、まずはお気軽に[お問い合わせ](https://9531158d.form.kintoneapp.com/public/410a18d2cf581a264ecdc6e323e1d14fa9bf896cf2cffe26cf300f1cb211b030)ください。 [連載:サブスク・メディアビジネスを徹底解説 のトップページへ](/category/media-business) [キメラのコーポレートページへ](https://ximera.com/) ページを最後まで見ていただいてありがとうございます。 この下にはもう何もありません。[私たちのニュースレター](https://mailchi.mp/ximera/magnet-newsletter)に登録いただければ、この連載を含めたコンテンツの更新情報をお知らせします(隔週発行)。またお会いしましょう。